表皮積層樹脂成形品の成形方法
【課題】表皮積層樹脂成形品において、注入樹脂圧に起因する成形後の表皮の凹凸の発生の防止と、積層表皮の注入樹脂層に対する接合強度確保との両立を簡単な方法により図る。
【解決手段】ソリッドな最表皮層5成形用の第1パウダー14と、この第1パウダー14に比して溶融時粘度が高く、平均粒径が大きく、軟化点が低い、ソリッドな裏面側表皮層6成形用の第2パウダー15とを混合し、第1パウダー14と第2パウダー15との混合パウダーを用いてスラッシュ成形して最表皮層5と裏面側表皮層6とからなる表皮4を成形する。この表皮4を一方の成形型31にセットした状態で裏面側表皮層6上に、軟化点が第2パウダー15の軟化点以上に加熱した接着剤34(注入樹脂材)を注入して充填する。
【解決手段】ソリッドな最表皮層5成形用の第1パウダー14と、この第1パウダー14に比して溶融時粘度が高く、平均粒径が大きく、軟化点が低い、ソリッドな裏面側表皮層6成形用の第2パウダー15とを混合し、第1パウダー14と第2パウダー15との混合パウダーを用いてスラッシュ成形して最表皮層5と裏面側表皮層6とからなる表皮4を成形する。この表皮4を一方の成形型31にセットした状態で裏面側表皮層6上に、軟化点が第2パウダー15の軟化点以上に加熱した接着剤34(注入樹脂材)を注入して充填する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の層からなる表皮を備えた表皮積層樹脂成形品の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のインストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックスなどの樹脂製の内装部材の表皮を製造するために、表皮形成用のパウダーを表皮成形型に投入し、そのパウダーを表皮成形型の加熱された型面に接触させて溶融させ、表皮を成形できる、表皮表面にしぼ付き模様を形成するのに適した、いわゆるパウダースラッシュ成形方法(以下、PS成形方法という)が知られている。このPS成形方法では、通常、容器に表皮成形用のパウダーを収容し、その容器と表皮成形型とを重ね合わせて一体的に回動及び揺動させることにより、容器から表皮成形型内にパウダーを投入し、その所定量を表皮成形型の型面に一様に付着、溶融、冷却及び硬化させて、表皮を成形する。
【0003】
このような表皮材において、裏面側表皮層を発泡層として、さわり心地をソフトにしたものがある。例えば、特許文献1には、接着用治具に基材と発泡層付き表皮とを一定の隙間を空けて配置し、基材と発泡層付き表皮との隙間にホットメルト接着剤(注入樹脂材)を充填圧をかけながら注入して注入樹脂層を形成するものが開示されている。この場合、ホットメルト接着剤が発泡層にある空隙に浸入硬化し、釘又はくさびのような働きをする、いわゆるアンカー効果が発揮されるので、注入樹脂層と発泡層付き表皮との接着が容易となる。
【特許文献1】特開2000−263647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の発泡層を含む表皮積層樹脂成形品の成形方法では、接着剤の注入時にかけられた充填圧により、ソフトな発泡層が圧縮された状態となり、脱型後にその残留応力が開放されることで、表皮に凹凸が発生して見映えが悪いという問題があった。
【0005】
一方、裏面側表皮層をソリッドとすれば、発泡層のときのようなアンカー効果が期待できず、十分に表皮と注入樹脂層とが接着されないという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、注入樹脂圧に起因する成形後の表皮の凹凸の発生の防止と、積層表皮の注入樹脂層に対する接合強度確保との両立を簡単な方法により図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、ソリッドな表皮の裏面側表皮層を一部溶融させながら、注入樹脂材を接着させるようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、複数の層からなる表皮を備えた表皮積層樹脂成形品の成形方法を対象とする。
【0009】
そして、この方法は、ソリッドな最表皮層成形用の第1パウダーと、該第1パウダーに比して溶融時粘度が高く、平均粒径が大きく、軟化点が低い、ソリッドな裏面側表皮層成形用の第2パウダーとを混合し、
上記第1パウダーと第2パウダーとの混合パウダーを用いてスラッシュ成形して上記最表皮層と裏面側表皮層とからなる表皮を成形し、
上記表皮を一方の成形型にセットした状態で上記裏面側表皮層上に、第2パウダーの軟化点以上に加熱した注入樹脂材を注入して充填する構成とする。
【0010】
上記の構成によると、第2パウダーの軟化点(一定温度で加熱するときに変形又は流動し始める温度)が第1パウダーの軟化点よりも低いので、第2パウダーが先に溶融し始め、次いで、第1パウダーが溶融する。しかし、第1パウダーの溶融時粘度が第2パウダーの溶融時粘度よりも低いので、第1パウダーの溶融樹脂は、第2パウダーの溶融樹脂よりも流動しやすく、かつ、第1パウダーの平均粒径が第2パウダーよりも小さいため、第1パウダーは第2パウダーよりも流動しやすくなっている。このため、第1及び第2パウダーを混合して加熱された表皮成形型に投入したときには、まず、第1及び第2パウダーがその型面に一様に付着するが、加熱された表皮成形型の熱を受けて、付着した第1及び第2パウダーが溶融し、第1パウダーの溶融樹脂が表皮成形型側の型面側に、第2パウダーの溶融樹脂がその裏面側に一様に付着して、積層された表皮が成形される。
【0011】
そして、成形された表皮を一方の成形型にセットした状態で裏面側から注入樹脂材を注入して充填すると、注入樹脂材の軟化点が第2パウダーの軟化点以上に加熱され、かつ第1パウダーは第2パウダーを介して該第2パウダー側から断熱された状態にあるので、第2パウダーを一部溶融させ、かつ第1パウダーを溶融させないことで、第1パウダーからなる最表皮層の表面側に成形された模様を壊さないようにしながら、表皮が注入樹脂に結合され、表皮積層樹脂成形品が形成される。
【0012】
ただし、この場合、注入樹脂の加熱温度は、裏面側表皮層を完全に溶融してしまわないように、第2パウダーの軟化点以上で、かつ第2パウダーの融点(略完全に溶融して流動状態になる温度)未満であることが望ましい。
【0013】
第2の発明では、上記第1パウダーの溶融時粘度を表すMFR(メルトフローレート)の値が、第2パウダーのMFR値よりも20g/10min以上大きい構成とする。
【0014】
ここで、MFRは、ポリマーの溶融粘度の指標となるものであり、JISK7210(ASTM1238)に準ずる円筒押出流10分間当たりのポリマー吐出量のグラム数である。円筒押出の条件は、各ポリマー類により試験温度及び試験荷重が選定される。本出願におけるMFRは、試験温度が230°C、試験荷重が21.18Nの条件下で計測されるものとなっている。すなわち、このMFR値が大きい方が粘度が低い、すなわち、流動性が高いことを意味する。
【0015】
上記の構成によると、第2パウダーの方が軟化点が低く、先に溶融し始めるが、第1パウダーの方が溶融時のMFR値が高く、流動性が高いため、確実に型の表面側に流れ込むので、裏面側表皮層が表面側に表れて外観が悪くなることはない。一方、第1パウダーのMFR値と第2パウダーのMFR値との差が20g/10min未満であれば、第1パウダーが第2パウダーを押しのけながら十分に表面側に流れ込むことがなく、裏面側表皮層が表面側に表れて外観が悪くなる。
【0016】
第3の発明では、上記第1パウダーのMFR値は、75g/10min以上である構成とする。
【0017】
すなわち、第1パウダーのMFR値が、75g/10min未満であれば流動性が低下するので、表皮成形型の型面の模様が綺麗に転写されないが、上記の構成によると、最表皮層に模様が綺麗に転写される。
【0018】
第4の発明では、上記第1パウダーの平均粒径と第2パウダーの平均粒径との差を170μm以上に設定する構成とする。
【0019】
すなわち、第1パウダーの平均粒径と第2パウダーの平均粒径との差が170μm未満であれば、第1パウダーが第2パウダーを押しのけながら十分に表面側に流れ込むことがなく、裏面側表皮層が表面側に表れて外観が悪くなる。しかし、上記の構成によると、第2パウダーの方が軟化点が低く、先に溶融し始めるが、第2パウダーの方が平均粒径が大きく、型の表面側に流れ込みにくく、平均粒径の小さい第1パウダーが型の表面側に流れ込むので、裏面側表皮層が表面側に表れて外観が悪くなることはない。
【0020】
第5の発明では、上記第1及び第2パウダーは、ゴム成分を含有し、
上記第1パウダーのゴム成分含有率を、第1パウダーの全体量に対して40質量%以上で、かつ60質量%以下に設定し、
上記第2パウダーのゴム成分含有率を、第2パウダーの全体量に対して60質量%以上に設定する。
【0021】
上記の構成によると、ゴム成分含有量を調整することで最適な溶融時の粘度が調整される。
【0022】
第6の発明では、上記第1及び第2パウダーの混合量に対する第1パウダーの配合量を60質量%以上で、かつ80質量%以下に設定する構成とする。
【0023】
すなわち、第1及び第2パウダーの混合量に対する第1パウダーの配合量を60質量%未満とすると、粘度の高い第2パウダーが表面に表れて、表皮成形型の型面の模様の転写性が悪化して外観が悪くなる。一方、80質量%よりも大きくすると、最表皮層と裏面側表皮層との密着性が悪化する。このため、上記の構成のように、第1及び第2パウダーの混合量に対する第1パウダーの配合量は、60質量%以上で、かつ80質量%以下に設定されている。
【0024】
第7の発明では、他方の成形型に裏面側層部材をセットした状態で、該裏面側層部材と上記裏面側表皮層との間に上記注入樹脂材を注入して充填し、該注入樹脂材により、上記裏面側層部材と裏面側表皮層とを接着する構成とする。
【0025】
上記の構成によると、注入樹脂材が裏面側表皮層を一部溶融させながら、裏面側表皮層と裏面側層部材とを確実に接着する。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、上記第1の発明によれば、表皮が発泡層を含んでいないので、注入樹脂圧に起因する成形後の表皮の凹凸の発生を防止できると共に、裏面側表皮層と注入樹脂材との溶着化により、積層表皮の注入樹脂層に対する接合強度を確保することができる。
【0027】
上記第2及び4の発明によれば、第1パウダーが第2パウダーよりも型面側へ流動しやすくなるように設定しているので、最表皮層と裏面側表皮層とが混ざり合わず、確実に積層することができると共に、最表皮層の型面転写性を確保することができる。
【0028】
上記第3の発明によれば、第1パウダーのMFR値を適切に設定しているので、型面転写性のよい最表皮層を確実に成形することができる。
【0029】
上記第5の発明によれば、ゴム成分含有量を調整して第1及び第2パウダーの溶融時粘度をそれぞれ簡単に調整するようにしているので、最表皮層と裏面側表皮層とを積層状に一括的に確実に成形することができる。
【0030】
上記第6の発明によれば、第1及び第2パウダーの混合量に対する第1パウダーの配合量を適切に設定しているので、最表皮層と裏面側表皮層とを積層状に綺麗に成形することができると共に、最表皮層と裏面側表皮層との高い接着強度を確保することができる。
【0031】
上記第7の発明によれば、注入樹脂材が裏面側表皮層を一部溶融させながら、裏面側表皮層と裏面側層部材とを接着するようにしているので、裏面側層部材と裏面側表皮層との高い接着強度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1に自動車のインストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックスなどの表皮積層樹脂成形品としての内装部材1の断面図を示す。この内装部材1は、裏面側層部材としての基材2、接着層(注入樹脂層)3及びこの接着層3を介して基材2に接着された表皮4で構成されている。表皮4は、最表皮層5と裏面側表皮層6とを積層したものである。最表皮層5の表面には、図示しないが、所定のしぼ付き模様(すなわち、紋)が形成されている。
【0034】
上記内装部材1において、基材2は、オレフィン系の合成樹脂材で構成されている。接着層3もオレフィン系の注入樹脂材で構成されている。表皮4の最表皮層5は、オレフィン系の第1パウダー14より形成されるソリッドな層である。表皮4の裏面側表皮層6も、オレフィン系の第2パウダー15より形成されるソリッドな層である。このように内装部材1を構成する材料をオレフィン系(例えば、ポリプロピレンなど)に統一することで、内装部材1のマテリアルリサイクルとして、内装部材1を粉砕し、溶融して射出成形などにより、種々の基材などの部材を製造することが可能になる。
【0035】
−表皮積層樹脂成形品の成形方法−
次に、本実施形態にかかる表皮積層樹脂成形品の成形方法について説明する。
【0036】
まず、図2乃至図4に示す表皮4を製造するための表皮製造装置10を用意する。
【0037】
この表皮製造装置10は、内面に型面12が形成された表皮成形型11と、表皮成形型11を加熱するヒーター(図示せず)と、表皮成形型11を冷却する冷却機(図示せず)と、表皮4を形成するための第1及び第2パウダー14,15からなる混合パウダーを収容すると共に、表皮成形型11と重ね合わさって内部に密閉空間16を形成可能な容器13と、表皮成形型11と容器13との重ね合わせ、回動、揺動、分離などを可能にする駆動機構(図示せず)とを備えている。上記型面12には、所定のしぼ付き模様を形成する紋が設けられている。
【0038】
次いで、第1及び第2パウダー14,15を用意する。この第1及び第2パウダー14,15は、ゴム成分を含有し、第1パウダー14のゴム成分含有率を、第1パウダー14の全体量に対して40質量%以上で、かつ60質量%以下に設定する。また、第2パウダー15のゴム成分含有率を、第2パウダー15の全体量に対して60質量%以上に設定する。第1及び第2パウダー14,15の混合量に対する第1パウダー14の配合量を60質量%以上で、かつ80質量%以下に設定する。第1パウダー14の溶融時粘度を表すMFR(メルトフローレート)の値は、75g/10min以上とし、第2パウダー15のMFR値差よりも20g/10min以上大きいものとする。第1パウダー14の平均粒径は、230μm以上とし、第2パウダー15の平均粒径よりも小さく、その差は170μm以上とする。
【0039】
次いで、容器13に第1及び第2パウダー14,15を収容した状態で、また、表皮成形型11を第1及び第2パウダー14,15の融点以上(例えば、265°C)にヒーターで加熱した状態で、上下に分離している表皮成形型11と容器13とが重ね合わされ、図3に示すように、表皮成形型11と容器13とが一体的に回動及び揺動され、表皮成形型11が容器13の下側に位置すると、容器13から表皮成形型11内に第1及び第2パウダー14,15が投入される。
【0040】
ここで、第2パウダー15の軟化点が第1パウダー14の軟化点よりも低いので、第2パウダー15が先に溶融し始め、次いで、第1パウダー14が溶融する。しかし、第1パウダー14の溶融時粘度が第2パウダー15の溶融時粘度よりも低いので、第1パウダー14の溶融樹脂は、第2パウダー15の溶融樹脂よりも流動しやすい。また、第1パウダー14の平均粒径が第2パウダー15よりも小さいため、第1パウダー14は第2パウダー15よりも流動しやすい。
【0041】
このため、第1及び第2パウダー14,15を混合して加熱された表皮成形型11に投入したときには、まず、第1及び第2パウダー14,15がその裏面に一様に付着するが、加熱された表皮成形型11の熱を受けて、付着した第1及び第2パウダー14,15が溶融し、表皮成形型11と容器13とが揺動されるに伴い、第1パウダー14の溶融樹脂が表皮成形型11の型面12側に、第2パウダー15の溶融樹脂がその裏面側に一様に付着する。
【0042】
次いで、表皮成形型11と容器13とを元の姿勢に戻すと、未使用の第1及び第2パウダー14,15が表皮成形型11から落下して容器13に再収容される。
【0043】
次いで、図4に示すように、表皮成形型11と容器13とが分離される。
【0044】
次に、冷却機で表皮成形型11を冷却し、表皮成形型11の型面12に付着している第1及び第2パウダー14,15の溶融樹脂を冷却硬化すると、図5に示すように、表皮成形型11の型面12側に第1パウダー14よりなる最表皮層5と、これの裏面側に位置し、第2パウダー15よりなる裏面側表皮層6とが積層された表皮4が一括的に形成される。そして、表皮成形型11から表皮4を剥ぎ取り、表皮4が得られる。すると、図6に拡大して示すように、型面12の紋により、しぼ付き模様が付されたソリッドな最表皮層5と、裏面は多少凸凹が残ったソリッドな裏面側表皮層6とが積層された状態となる。なお、最表皮層5と裏面側表皮層6との境界は、通常、完全な直線状とならず、緩い波形となる。
【0045】
図7に示すように、上記基材2は、射出成形装置20により製造される。その射出成形装置20は、射出成形型21,22と、オレフィン系の合成樹脂の原料ペレットを投入するホッパ24と、ホッパ24に投入された原料ペレットを溶融し、その溶融樹脂を型締めされた射出成形型21,22のキャビティ23に注入するスクリューコンベア25を備えている。
【0046】
次に、図8に示すように、第1及び第2金型31,32を有する成形型30を使用する。予め一方の第1金型31に上記裏面側表皮層6側が第2金型32に対向するように表皮4をセットし、他方の第2金型32に上記基材2をセットしておく。
【0047】
次いで、第1及び第2金型31,32を閉じた状態にして、基材2と表皮4との間に注入樹脂材としての接着剤34を充填して接着層3を形成する。この接着剤34は、第2パウダー15の軟化点以上に加熱されている。ただし、注入樹脂の加熱温度は、表皮側表皮層を完全に溶融してしまわないように、第2パウダーの軟化点以上で、かつ第2パウダーの融点以下であることが望ましい。表皮側表皮層の溶融をより確実に防止する上では、第1パウダー14の軟化点未満とするのがより望ましい。この場合、第2金型32と基材2には、予め小孔32a,2aがそれぞれ形成され、その小孔32a,2aに接着剤ノズル35を貫通させ、その接着剤ノズル35から基材2と表皮4との間に接着剤34を注入する。このことで、第2パウダー15からなる裏面側表皮層6を一部再び溶融させ、かつ第1パウダー14からなる最表皮層5を再び溶融させないことで、表皮4の最表皮層5の表面に形成されているしぼ付き模様を壊さないようにしながら、基材2と表皮4の裏面側表皮層6とが接着され、内装部材1が成形される。
【0048】
次いで、成形型30を開いて、内装部材1を取り出しても、いずれの層にも発泡層が含まれていないので、接着剤34充填時の圧力による残留応力が開放されることに起因する表面の凸凹は発生しない。
【0049】
−実施例−
次に、本発明にかかる表皮積層樹脂成形品の成形方法により、より確実に綺麗な表皮4を製造する適切な条件とするために、本願発明者が実施した表皮成形試験について説明する。
【0050】
まず、図9に示すように、PP(ポリプロピレン)よりなる第1パウダー14と第2パウダー15として、それぞれ、溶融時粘度MFR(g/10min)、平均粒径(μm)、ゴム成分(wt%)を異ならせた3種類のパウダーサンプル(第1パウダー14(1)〜(3)と第2パウダー15(1)〜(3))を用意する。第1パウダー14と第2パウダー15との配合比を60:40にすると共に、表皮成形型11による加熱時間を20秒にして、第1パウダー14と第2パウダー15のパウダーサンプルの総組み合わせ9組について、それぞれ表皮4を成形してみた。なお、接着剤の軟化点は190°Cとする。
【0051】
図10がその結果を示す表であり、各組み合わせの第1及び第2パウダー14,15の軟化点、両者の差が記載されている。そして、成形された各表皮4について、
ピンホールが発生しない(裏面側表皮層6が最表皮層5側に出ない)場合には、「○」とし、発生した(裏面側表皮層6が最表皮層5側に出た)場合には、「×」とし、
型転写性が良好な場合(1層目の転写率を100%とした場合で80%以上)を「○」とし、良好でない場合(80%未満)を「×」とし、
紋の溶解(すなわち、型表面の紋深さを100%とし、表皮の紋深さがどれだけ型表面の紋深さから減少しているかという基準)の少ない場合(第1パウダー14で形成した紋が熱で溶ける転写性低下が20%以下)を「○」とし、良好でない場合(転写性低下が20%よりも大)を「×」とし、
密着性が良好な場合(接着強度10N/25cm超)を「○」とし、10N/25cm以下を「×」とする。
【0052】
これら4項目の結果がいずれも「○」の場合に、「判定」の欄で「○」とした。すなわち、第1パウダー14のMFR値が75g/10min以上で、第2パウダー15とのMFR値の差が20g/10min以上が望ましく、第1パウダー14の平均粒径が230μm以上で、第1パウダー14の平均粒径が第2パウダー15の平均粒径よりも170μm以上小さいのが望ましいことがわかった。軟化点温度は、第1パウダー14が170°C以上で、第2パウダー15が170°C以下で第1パウダー14の軟化点が第2パウダー15の軟化点よりも高く、その差が20°C以上が望ましいことがわかった。
【0053】
以上のように設定することにより、最表皮層5と裏面側表皮層6とを積層状に確実に成形することと、転写性のよい最表皮層5を確実に成形すること、つまり表皮成形型11の型面12の模様を最表皮層5に綺麗に転写することが可能になる。ここで、第1及び第2パウダー14,15は、それぞれゴム成分を有しているが、そのゴム成分含有率を調整することで、第1及び第2パウダー14,15の溶融時粘度をそれぞれ簡単に調整することができる。
【0054】
次に、第1及び第2パウダー14,15の混合量に対する第1パウダー14の配合量について検討した。なお、上記表皮4の成形(図9)において、第1パウダー14の配合量は、60wt%である。そこで、上記望ましい第1及び第2パウダー14,15の4組の組み合わせ:(1)(1)、(1)(2)、(2)(2)、(2)(3)のうち、溶融時粘度MFRの差が最小(20g/min)で平均粒径の差が最大(250μm)となる組み合わせ(1)(1)と、溶融時粘度MFRの差が最大(40g/min)で平均粒径の差が最小(170μm)となる組み合わせ(2)(3)について、それぞれ、第1パウダー14の配合量を100wt%、80wt%、60wt%、50wt%、40wt%として、表皮4を成形してみた。
【0055】
図11がその結果を示す表であり、成形された各表皮4について、外観が良好である(裏面側表皮層6が最表皮層5の表面に出ず、転写性がよい)場合を「○」とし、良好でない(裏面側表皮層6が最表皮層5の表面に出て、転写性が悪い)場合を「×」とし、
最表皮層5と裏面側表皮層6との密着性が良好(接着強度10N/25cm超)である場合には「○」とし、良好でない場合(接着強度10N/25cm以下)には「×」とし、
これら2項目の結果がいずれも「○」の場合に「判定」の欄で「○」とした。
【0056】
その結果、第1及び第2パウダー14,15(1)(1)の組み合わせの場合には、第1パウダー14の配合量を、80wt%、60wt%、50wt%に設定することが望ましく、また、第1及び第2パウダー14,15(2)(3)の組み合わせの場合には、第1パウダー14の配合量を、80wt%、60wt%に設定することが望ましいということが判明した。つまり、第1及び第2パウダー14,15の混合量に対する第1パウダー14の配合量を60wt%〜80wt%に設定することが望ましく、これにより、最表皮層5と裏面側表皮層6とを積層状に綺麗に成形することと、最表皮層5と裏面側表皮層6との高い密着性(接合強度)を確保できることがわかった。
【0057】
−実施形態の効果−
したがって、本実施形態にかかる表皮積層樹脂成形品の成形方法によると、表皮4が発泡層を含んでいないので、注入樹脂圧に起因する成形後の表皮4の凹凸の発生を防止できると共に、裏面側表皮層6と接着剤34との溶着化により、積層表皮4の接着層3に対する接合強度を確保することができる。
【0058】
また、第1パウダー14が第2パウダー15よりも型面12側へ流動しやすくなるように設定しているので、最表皮層5と裏面側表皮層6とが混ざり合わず、確実に積層することができると共に、最表皮層5の型面転写性を確保することができる。
【0059】
また、第1パウダー14のMFR値を適切に設定しているので、型面転写性のよい最表皮層5を確実に成形することができる。
【0060】
また、ゴム成分含有量を調整して第1及び第2パウダー14,15の溶融時粘度をそれぞれ簡単に調整するようにしているので、最表皮層5と裏面側表皮層6とを積層状に一括的に確実に成形することができる。
【0061】
また、第1及び第2パウダー14,15の混合量に対する第1パウダー14の配合量を適切に設定しているので、最表皮層5と裏面側表皮層6とを積層状に綺麗に成形することができると共に、最表皮層5と裏面側表皮層6との高い接着強度を確保することができる。
【0062】
さらに、接着剤34が裏面側表皮層6を一部溶融させながら、裏面側表皮層6と基材2とを接着するようにしているので、基材2と裏面側表皮層6との高い接着強度を確保することができる。
【0063】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0064】
すなわち、上記実施形態では、内装部材1を構成する材料をオレフィン系に統一したが、オレフィン系でなく、他の樹脂材料に統一してもよく、また、必ずしも全てを統一しなくても、本発明の作用効果は発揮される。
【0065】
上記内装部材1は、基材2を有しているが、基材2を有さない内装部材にも適用可能である。
【0066】
上記内装部材1は、自動車のインストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックスなどとしたが、自動車に限らず、家屋内で使用される表皮積層樹脂成形品などにも適用可能である。
【0067】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明は、樹脂製の内装部材などの複数の層からなる表皮4を備えた表皮積層樹脂成形品の成形方法について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態にかかる表皮積層樹脂成形品の表皮の断面図である。
【図2】表皮製造工程(型閉じ揺動前の状態)を示す断面図である。
【図3】表皮製造工程(型閉じ揺動の状態)を示す断面図である。
【図4】表皮製造工程(型開き後の状態)を示す断面図である。
【図5】表皮成形型と表皮を示す断面図である。
【図6】表皮の拡大断面図である。
【図7】基材の製造工程を示す図である。
【図8】内装部材の組立工程を示す断面図である。
【図9】表皮成形試験の条件を示す図表である。
【図10】表皮成形試験の結果を示す図表である。
【図11】表皮成形試験の結果を示す図表である。
【符号の説明】
【0070】
1 内装部材(表皮積層樹脂成形品)
2 基材(裏面側層部材)
4 表皮
5 最表皮層
6 裏面側表皮層
31 第1金型(一方の成形型)
32 第2金型(他方の成形型)
34 接着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の層からなる表皮を備えた表皮積層樹脂成形品の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のインストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックスなどの樹脂製の内装部材の表皮を製造するために、表皮形成用のパウダーを表皮成形型に投入し、そのパウダーを表皮成形型の加熱された型面に接触させて溶融させ、表皮を成形できる、表皮表面にしぼ付き模様を形成するのに適した、いわゆるパウダースラッシュ成形方法(以下、PS成形方法という)が知られている。このPS成形方法では、通常、容器に表皮成形用のパウダーを収容し、その容器と表皮成形型とを重ね合わせて一体的に回動及び揺動させることにより、容器から表皮成形型内にパウダーを投入し、その所定量を表皮成形型の型面に一様に付着、溶融、冷却及び硬化させて、表皮を成形する。
【0003】
このような表皮材において、裏面側表皮層を発泡層として、さわり心地をソフトにしたものがある。例えば、特許文献1には、接着用治具に基材と発泡層付き表皮とを一定の隙間を空けて配置し、基材と発泡層付き表皮との隙間にホットメルト接着剤(注入樹脂材)を充填圧をかけながら注入して注入樹脂層を形成するものが開示されている。この場合、ホットメルト接着剤が発泡層にある空隙に浸入硬化し、釘又はくさびのような働きをする、いわゆるアンカー効果が発揮されるので、注入樹脂層と発泡層付き表皮との接着が容易となる。
【特許文献1】特開2000−263647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の発泡層を含む表皮積層樹脂成形品の成形方法では、接着剤の注入時にかけられた充填圧により、ソフトな発泡層が圧縮された状態となり、脱型後にその残留応力が開放されることで、表皮に凹凸が発生して見映えが悪いという問題があった。
【0005】
一方、裏面側表皮層をソリッドとすれば、発泡層のときのようなアンカー効果が期待できず、十分に表皮と注入樹脂層とが接着されないという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、注入樹脂圧に起因する成形後の表皮の凹凸の発生の防止と、積層表皮の注入樹脂層に対する接合強度確保との両立を簡単な方法により図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、ソリッドな表皮の裏面側表皮層を一部溶融させながら、注入樹脂材を接着させるようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、複数の層からなる表皮を備えた表皮積層樹脂成形品の成形方法を対象とする。
【0009】
そして、この方法は、ソリッドな最表皮層成形用の第1パウダーと、該第1パウダーに比して溶融時粘度が高く、平均粒径が大きく、軟化点が低い、ソリッドな裏面側表皮層成形用の第2パウダーとを混合し、
上記第1パウダーと第2パウダーとの混合パウダーを用いてスラッシュ成形して上記最表皮層と裏面側表皮層とからなる表皮を成形し、
上記表皮を一方の成形型にセットした状態で上記裏面側表皮層上に、第2パウダーの軟化点以上に加熱した注入樹脂材を注入して充填する構成とする。
【0010】
上記の構成によると、第2パウダーの軟化点(一定温度で加熱するときに変形又は流動し始める温度)が第1パウダーの軟化点よりも低いので、第2パウダーが先に溶融し始め、次いで、第1パウダーが溶融する。しかし、第1パウダーの溶融時粘度が第2パウダーの溶融時粘度よりも低いので、第1パウダーの溶融樹脂は、第2パウダーの溶融樹脂よりも流動しやすく、かつ、第1パウダーの平均粒径が第2パウダーよりも小さいため、第1パウダーは第2パウダーよりも流動しやすくなっている。このため、第1及び第2パウダーを混合して加熱された表皮成形型に投入したときには、まず、第1及び第2パウダーがその型面に一様に付着するが、加熱された表皮成形型の熱を受けて、付着した第1及び第2パウダーが溶融し、第1パウダーの溶融樹脂が表皮成形型側の型面側に、第2パウダーの溶融樹脂がその裏面側に一様に付着して、積層された表皮が成形される。
【0011】
そして、成形された表皮を一方の成形型にセットした状態で裏面側から注入樹脂材を注入して充填すると、注入樹脂材の軟化点が第2パウダーの軟化点以上に加熱され、かつ第1パウダーは第2パウダーを介して該第2パウダー側から断熱された状態にあるので、第2パウダーを一部溶融させ、かつ第1パウダーを溶融させないことで、第1パウダーからなる最表皮層の表面側に成形された模様を壊さないようにしながら、表皮が注入樹脂に結合され、表皮積層樹脂成形品が形成される。
【0012】
ただし、この場合、注入樹脂の加熱温度は、裏面側表皮層を完全に溶融してしまわないように、第2パウダーの軟化点以上で、かつ第2パウダーの融点(略完全に溶融して流動状態になる温度)未満であることが望ましい。
【0013】
第2の発明では、上記第1パウダーの溶融時粘度を表すMFR(メルトフローレート)の値が、第2パウダーのMFR値よりも20g/10min以上大きい構成とする。
【0014】
ここで、MFRは、ポリマーの溶融粘度の指標となるものであり、JISK7210(ASTM1238)に準ずる円筒押出流10分間当たりのポリマー吐出量のグラム数である。円筒押出の条件は、各ポリマー類により試験温度及び試験荷重が選定される。本出願におけるMFRは、試験温度が230°C、試験荷重が21.18Nの条件下で計測されるものとなっている。すなわち、このMFR値が大きい方が粘度が低い、すなわち、流動性が高いことを意味する。
【0015】
上記の構成によると、第2パウダーの方が軟化点が低く、先に溶融し始めるが、第1パウダーの方が溶融時のMFR値が高く、流動性が高いため、確実に型の表面側に流れ込むので、裏面側表皮層が表面側に表れて外観が悪くなることはない。一方、第1パウダーのMFR値と第2パウダーのMFR値との差が20g/10min未満であれば、第1パウダーが第2パウダーを押しのけながら十分に表面側に流れ込むことがなく、裏面側表皮層が表面側に表れて外観が悪くなる。
【0016】
第3の発明では、上記第1パウダーのMFR値は、75g/10min以上である構成とする。
【0017】
すなわち、第1パウダーのMFR値が、75g/10min未満であれば流動性が低下するので、表皮成形型の型面の模様が綺麗に転写されないが、上記の構成によると、最表皮層に模様が綺麗に転写される。
【0018】
第4の発明では、上記第1パウダーの平均粒径と第2パウダーの平均粒径との差を170μm以上に設定する構成とする。
【0019】
すなわち、第1パウダーの平均粒径と第2パウダーの平均粒径との差が170μm未満であれば、第1パウダーが第2パウダーを押しのけながら十分に表面側に流れ込むことがなく、裏面側表皮層が表面側に表れて外観が悪くなる。しかし、上記の構成によると、第2パウダーの方が軟化点が低く、先に溶融し始めるが、第2パウダーの方が平均粒径が大きく、型の表面側に流れ込みにくく、平均粒径の小さい第1パウダーが型の表面側に流れ込むので、裏面側表皮層が表面側に表れて外観が悪くなることはない。
【0020】
第5の発明では、上記第1及び第2パウダーは、ゴム成分を含有し、
上記第1パウダーのゴム成分含有率を、第1パウダーの全体量に対して40質量%以上で、かつ60質量%以下に設定し、
上記第2パウダーのゴム成分含有率を、第2パウダーの全体量に対して60質量%以上に設定する。
【0021】
上記の構成によると、ゴム成分含有量を調整することで最適な溶融時の粘度が調整される。
【0022】
第6の発明では、上記第1及び第2パウダーの混合量に対する第1パウダーの配合量を60質量%以上で、かつ80質量%以下に設定する構成とする。
【0023】
すなわち、第1及び第2パウダーの混合量に対する第1パウダーの配合量を60質量%未満とすると、粘度の高い第2パウダーが表面に表れて、表皮成形型の型面の模様の転写性が悪化して外観が悪くなる。一方、80質量%よりも大きくすると、最表皮層と裏面側表皮層との密着性が悪化する。このため、上記の構成のように、第1及び第2パウダーの混合量に対する第1パウダーの配合量は、60質量%以上で、かつ80質量%以下に設定されている。
【0024】
第7の発明では、他方の成形型に裏面側層部材をセットした状態で、該裏面側層部材と上記裏面側表皮層との間に上記注入樹脂材を注入して充填し、該注入樹脂材により、上記裏面側層部材と裏面側表皮層とを接着する構成とする。
【0025】
上記の構成によると、注入樹脂材が裏面側表皮層を一部溶融させながら、裏面側表皮層と裏面側層部材とを確実に接着する。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、上記第1の発明によれば、表皮が発泡層を含んでいないので、注入樹脂圧に起因する成形後の表皮の凹凸の発生を防止できると共に、裏面側表皮層と注入樹脂材との溶着化により、積層表皮の注入樹脂層に対する接合強度を確保することができる。
【0027】
上記第2及び4の発明によれば、第1パウダーが第2パウダーよりも型面側へ流動しやすくなるように設定しているので、最表皮層と裏面側表皮層とが混ざり合わず、確実に積層することができると共に、最表皮層の型面転写性を確保することができる。
【0028】
上記第3の発明によれば、第1パウダーのMFR値を適切に設定しているので、型面転写性のよい最表皮層を確実に成形することができる。
【0029】
上記第5の発明によれば、ゴム成分含有量を調整して第1及び第2パウダーの溶融時粘度をそれぞれ簡単に調整するようにしているので、最表皮層と裏面側表皮層とを積層状に一括的に確実に成形することができる。
【0030】
上記第6の発明によれば、第1及び第2パウダーの混合量に対する第1パウダーの配合量を適切に設定しているので、最表皮層と裏面側表皮層とを積層状に綺麗に成形することができると共に、最表皮層と裏面側表皮層との高い接着強度を確保することができる。
【0031】
上記第7の発明によれば、注入樹脂材が裏面側表皮層を一部溶融させながら、裏面側表皮層と裏面側層部材とを接着するようにしているので、裏面側層部材と裏面側表皮層との高い接着強度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1に自動車のインストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックスなどの表皮積層樹脂成形品としての内装部材1の断面図を示す。この内装部材1は、裏面側層部材としての基材2、接着層(注入樹脂層)3及びこの接着層3を介して基材2に接着された表皮4で構成されている。表皮4は、最表皮層5と裏面側表皮層6とを積層したものである。最表皮層5の表面には、図示しないが、所定のしぼ付き模様(すなわち、紋)が形成されている。
【0034】
上記内装部材1において、基材2は、オレフィン系の合成樹脂材で構成されている。接着層3もオレフィン系の注入樹脂材で構成されている。表皮4の最表皮層5は、オレフィン系の第1パウダー14より形成されるソリッドな層である。表皮4の裏面側表皮層6も、オレフィン系の第2パウダー15より形成されるソリッドな層である。このように内装部材1を構成する材料をオレフィン系(例えば、ポリプロピレンなど)に統一することで、内装部材1のマテリアルリサイクルとして、内装部材1を粉砕し、溶融して射出成形などにより、種々の基材などの部材を製造することが可能になる。
【0035】
−表皮積層樹脂成形品の成形方法−
次に、本実施形態にかかる表皮積層樹脂成形品の成形方法について説明する。
【0036】
まず、図2乃至図4に示す表皮4を製造するための表皮製造装置10を用意する。
【0037】
この表皮製造装置10は、内面に型面12が形成された表皮成形型11と、表皮成形型11を加熱するヒーター(図示せず)と、表皮成形型11を冷却する冷却機(図示せず)と、表皮4を形成するための第1及び第2パウダー14,15からなる混合パウダーを収容すると共に、表皮成形型11と重ね合わさって内部に密閉空間16を形成可能な容器13と、表皮成形型11と容器13との重ね合わせ、回動、揺動、分離などを可能にする駆動機構(図示せず)とを備えている。上記型面12には、所定のしぼ付き模様を形成する紋が設けられている。
【0038】
次いで、第1及び第2パウダー14,15を用意する。この第1及び第2パウダー14,15は、ゴム成分を含有し、第1パウダー14のゴム成分含有率を、第1パウダー14の全体量に対して40質量%以上で、かつ60質量%以下に設定する。また、第2パウダー15のゴム成分含有率を、第2パウダー15の全体量に対して60質量%以上に設定する。第1及び第2パウダー14,15の混合量に対する第1パウダー14の配合量を60質量%以上で、かつ80質量%以下に設定する。第1パウダー14の溶融時粘度を表すMFR(メルトフローレート)の値は、75g/10min以上とし、第2パウダー15のMFR値差よりも20g/10min以上大きいものとする。第1パウダー14の平均粒径は、230μm以上とし、第2パウダー15の平均粒径よりも小さく、その差は170μm以上とする。
【0039】
次いで、容器13に第1及び第2パウダー14,15を収容した状態で、また、表皮成形型11を第1及び第2パウダー14,15の融点以上(例えば、265°C)にヒーターで加熱した状態で、上下に分離している表皮成形型11と容器13とが重ね合わされ、図3に示すように、表皮成形型11と容器13とが一体的に回動及び揺動され、表皮成形型11が容器13の下側に位置すると、容器13から表皮成形型11内に第1及び第2パウダー14,15が投入される。
【0040】
ここで、第2パウダー15の軟化点が第1パウダー14の軟化点よりも低いので、第2パウダー15が先に溶融し始め、次いで、第1パウダー14が溶融する。しかし、第1パウダー14の溶融時粘度が第2パウダー15の溶融時粘度よりも低いので、第1パウダー14の溶融樹脂は、第2パウダー15の溶融樹脂よりも流動しやすい。また、第1パウダー14の平均粒径が第2パウダー15よりも小さいため、第1パウダー14は第2パウダー15よりも流動しやすい。
【0041】
このため、第1及び第2パウダー14,15を混合して加熱された表皮成形型11に投入したときには、まず、第1及び第2パウダー14,15がその裏面に一様に付着するが、加熱された表皮成形型11の熱を受けて、付着した第1及び第2パウダー14,15が溶融し、表皮成形型11と容器13とが揺動されるに伴い、第1パウダー14の溶融樹脂が表皮成形型11の型面12側に、第2パウダー15の溶融樹脂がその裏面側に一様に付着する。
【0042】
次いで、表皮成形型11と容器13とを元の姿勢に戻すと、未使用の第1及び第2パウダー14,15が表皮成形型11から落下して容器13に再収容される。
【0043】
次いで、図4に示すように、表皮成形型11と容器13とが分離される。
【0044】
次に、冷却機で表皮成形型11を冷却し、表皮成形型11の型面12に付着している第1及び第2パウダー14,15の溶融樹脂を冷却硬化すると、図5に示すように、表皮成形型11の型面12側に第1パウダー14よりなる最表皮層5と、これの裏面側に位置し、第2パウダー15よりなる裏面側表皮層6とが積層された表皮4が一括的に形成される。そして、表皮成形型11から表皮4を剥ぎ取り、表皮4が得られる。すると、図6に拡大して示すように、型面12の紋により、しぼ付き模様が付されたソリッドな最表皮層5と、裏面は多少凸凹が残ったソリッドな裏面側表皮層6とが積層された状態となる。なお、最表皮層5と裏面側表皮層6との境界は、通常、完全な直線状とならず、緩い波形となる。
【0045】
図7に示すように、上記基材2は、射出成形装置20により製造される。その射出成形装置20は、射出成形型21,22と、オレフィン系の合成樹脂の原料ペレットを投入するホッパ24と、ホッパ24に投入された原料ペレットを溶融し、その溶融樹脂を型締めされた射出成形型21,22のキャビティ23に注入するスクリューコンベア25を備えている。
【0046】
次に、図8に示すように、第1及び第2金型31,32を有する成形型30を使用する。予め一方の第1金型31に上記裏面側表皮層6側が第2金型32に対向するように表皮4をセットし、他方の第2金型32に上記基材2をセットしておく。
【0047】
次いで、第1及び第2金型31,32を閉じた状態にして、基材2と表皮4との間に注入樹脂材としての接着剤34を充填して接着層3を形成する。この接着剤34は、第2パウダー15の軟化点以上に加熱されている。ただし、注入樹脂の加熱温度は、表皮側表皮層を完全に溶融してしまわないように、第2パウダーの軟化点以上で、かつ第2パウダーの融点以下であることが望ましい。表皮側表皮層の溶融をより確実に防止する上では、第1パウダー14の軟化点未満とするのがより望ましい。この場合、第2金型32と基材2には、予め小孔32a,2aがそれぞれ形成され、その小孔32a,2aに接着剤ノズル35を貫通させ、その接着剤ノズル35から基材2と表皮4との間に接着剤34を注入する。このことで、第2パウダー15からなる裏面側表皮層6を一部再び溶融させ、かつ第1パウダー14からなる最表皮層5を再び溶融させないことで、表皮4の最表皮層5の表面に形成されているしぼ付き模様を壊さないようにしながら、基材2と表皮4の裏面側表皮層6とが接着され、内装部材1が成形される。
【0048】
次いで、成形型30を開いて、内装部材1を取り出しても、いずれの層にも発泡層が含まれていないので、接着剤34充填時の圧力による残留応力が開放されることに起因する表面の凸凹は発生しない。
【0049】
−実施例−
次に、本発明にかかる表皮積層樹脂成形品の成形方法により、より確実に綺麗な表皮4を製造する適切な条件とするために、本願発明者が実施した表皮成形試験について説明する。
【0050】
まず、図9に示すように、PP(ポリプロピレン)よりなる第1パウダー14と第2パウダー15として、それぞれ、溶融時粘度MFR(g/10min)、平均粒径(μm)、ゴム成分(wt%)を異ならせた3種類のパウダーサンプル(第1パウダー14(1)〜(3)と第2パウダー15(1)〜(3))を用意する。第1パウダー14と第2パウダー15との配合比を60:40にすると共に、表皮成形型11による加熱時間を20秒にして、第1パウダー14と第2パウダー15のパウダーサンプルの総組み合わせ9組について、それぞれ表皮4を成形してみた。なお、接着剤の軟化点は190°Cとする。
【0051】
図10がその結果を示す表であり、各組み合わせの第1及び第2パウダー14,15の軟化点、両者の差が記載されている。そして、成形された各表皮4について、
ピンホールが発生しない(裏面側表皮層6が最表皮層5側に出ない)場合には、「○」とし、発生した(裏面側表皮層6が最表皮層5側に出た)場合には、「×」とし、
型転写性が良好な場合(1層目の転写率を100%とした場合で80%以上)を「○」とし、良好でない場合(80%未満)を「×」とし、
紋の溶解(すなわち、型表面の紋深さを100%とし、表皮の紋深さがどれだけ型表面の紋深さから減少しているかという基準)の少ない場合(第1パウダー14で形成した紋が熱で溶ける転写性低下が20%以下)を「○」とし、良好でない場合(転写性低下が20%よりも大)を「×」とし、
密着性が良好な場合(接着強度10N/25cm超)を「○」とし、10N/25cm以下を「×」とする。
【0052】
これら4項目の結果がいずれも「○」の場合に、「判定」の欄で「○」とした。すなわち、第1パウダー14のMFR値が75g/10min以上で、第2パウダー15とのMFR値の差が20g/10min以上が望ましく、第1パウダー14の平均粒径が230μm以上で、第1パウダー14の平均粒径が第2パウダー15の平均粒径よりも170μm以上小さいのが望ましいことがわかった。軟化点温度は、第1パウダー14が170°C以上で、第2パウダー15が170°C以下で第1パウダー14の軟化点が第2パウダー15の軟化点よりも高く、その差が20°C以上が望ましいことがわかった。
【0053】
以上のように設定することにより、最表皮層5と裏面側表皮層6とを積層状に確実に成形することと、転写性のよい最表皮層5を確実に成形すること、つまり表皮成形型11の型面12の模様を最表皮層5に綺麗に転写することが可能になる。ここで、第1及び第2パウダー14,15は、それぞれゴム成分を有しているが、そのゴム成分含有率を調整することで、第1及び第2パウダー14,15の溶融時粘度をそれぞれ簡単に調整することができる。
【0054】
次に、第1及び第2パウダー14,15の混合量に対する第1パウダー14の配合量について検討した。なお、上記表皮4の成形(図9)において、第1パウダー14の配合量は、60wt%である。そこで、上記望ましい第1及び第2パウダー14,15の4組の組み合わせ:(1)(1)、(1)(2)、(2)(2)、(2)(3)のうち、溶融時粘度MFRの差が最小(20g/min)で平均粒径の差が最大(250μm)となる組み合わせ(1)(1)と、溶融時粘度MFRの差が最大(40g/min)で平均粒径の差が最小(170μm)となる組み合わせ(2)(3)について、それぞれ、第1パウダー14の配合量を100wt%、80wt%、60wt%、50wt%、40wt%として、表皮4を成形してみた。
【0055】
図11がその結果を示す表であり、成形された各表皮4について、外観が良好である(裏面側表皮層6が最表皮層5の表面に出ず、転写性がよい)場合を「○」とし、良好でない(裏面側表皮層6が最表皮層5の表面に出て、転写性が悪い)場合を「×」とし、
最表皮層5と裏面側表皮層6との密着性が良好(接着強度10N/25cm超)である場合には「○」とし、良好でない場合(接着強度10N/25cm以下)には「×」とし、
これら2項目の結果がいずれも「○」の場合に「判定」の欄で「○」とした。
【0056】
その結果、第1及び第2パウダー14,15(1)(1)の組み合わせの場合には、第1パウダー14の配合量を、80wt%、60wt%、50wt%に設定することが望ましく、また、第1及び第2パウダー14,15(2)(3)の組み合わせの場合には、第1パウダー14の配合量を、80wt%、60wt%に設定することが望ましいということが判明した。つまり、第1及び第2パウダー14,15の混合量に対する第1パウダー14の配合量を60wt%〜80wt%に設定することが望ましく、これにより、最表皮層5と裏面側表皮層6とを積層状に綺麗に成形することと、最表皮層5と裏面側表皮層6との高い密着性(接合強度)を確保できることがわかった。
【0057】
−実施形態の効果−
したがって、本実施形態にかかる表皮積層樹脂成形品の成形方法によると、表皮4が発泡層を含んでいないので、注入樹脂圧に起因する成形後の表皮4の凹凸の発生を防止できると共に、裏面側表皮層6と接着剤34との溶着化により、積層表皮4の接着層3に対する接合強度を確保することができる。
【0058】
また、第1パウダー14が第2パウダー15よりも型面12側へ流動しやすくなるように設定しているので、最表皮層5と裏面側表皮層6とが混ざり合わず、確実に積層することができると共に、最表皮層5の型面転写性を確保することができる。
【0059】
また、第1パウダー14のMFR値を適切に設定しているので、型面転写性のよい最表皮層5を確実に成形することができる。
【0060】
また、ゴム成分含有量を調整して第1及び第2パウダー14,15の溶融時粘度をそれぞれ簡単に調整するようにしているので、最表皮層5と裏面側表皮層6とを積層状に一括的に確実に成形することができる。
【0061】
また、第1及び第2パウダー14,15の混合量に対する第1パウダー14の配合量を適切に設定しているので、最表皮層5と裏面側表皮層6とを積層状に綺麗に成形することができると共に、最表皮層5と裏面側表皮層6との高い接着強度を確保することができる。
【0062】
さらに、接着剤34が裏面側表皮層6を一部溶融させながら、裏面側表皮層6と基材2とを接着するようにしているので、基材2と裏面側表皮層6との高い接着強度を確保することができる。
【0063】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0064】
すなわち、上記実施形態では、内装部材1を構成する材料をオレフィン系に統一したが、オレフィン系でなく、他の樹脂材料に統一してもよく、また、必ずしも全てを統一しなくても、本発明の作用効果は発揮される。
【0065】
上記内装部材1は、基材2を有しているが、基材2を有さない内装部材にも適用可能である。
【0066】
上記内装部材1は、自動車のインストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックスなどとしたが、自動車に限らず、家屋内で使用される表皮積層樹脂成形品などにも適用可能である。
【0067】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明は、樹脂製の内装部材などの複数の層からなる表皮4を備えた表皮積層樹脂成形品の成形方法について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態にかかる表皮積層樹脂成形品の表皮の断面図である。
【図2】表皮製造工程(型閉じ揺動前の状態)を示す断面図である。
【図3】表皮製造工程(型閉じ揺動の状態)を示す断面図である。
【図4】表皮製造工程(型開き後の状態)を示す断面図である。
【図5】表皮成形型と表皮を示す断面図である。
【図6】表皮の拡大断面図である。
【図7】基材の製造工程を示す図である。
【図8】内装部材の組立工程を示す断面図である。
【図9】表皮成形試験の条件を示す図表である。
【図10】表皮成形試験の結果を示す図表である。
【図11】表皮成形試験の結果を示す図表である。
【符号の説明】
【0070】
1 内装部材(表皮積層樹脂成形品)
2 基材(裏面側層部材)
4 表皮
5 最表皮層
6 裏面側表皮層
31 第1金型(一方の成形型)
32 第2金型(他方の成形型)
34 接着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層からなる表皮を備えた表皮積層樹脂成形品の成形方法であって、
ソリッドな最表皮層成形用の第1パウダーと、該第1パウダーに比して溶融時粘度が高く、平均粒径が大きく、軟化点が低い、ソリッドな裏面側表皮層成形用の第2パウダーとを混合し、
上記第1パウダーと第2パウダーとの混合パウダーを用いてスラッシュ成形して上記最表皮層と裏面側表皮層とからなる表皮を成形し、
上記表皮を一方の成形型にセットした状態で上記裏面側表皮層上に、第2パウダーの軟化点以上に加熱した注入樹脂材を注入して充填することを特徴とする表皮積層樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の表皮積層樹脂成形品の成形方法において、
上記第1パウダーの溶融時粘度を表すMFR(メルトフローレート)の値が、第2パウダーのMFR値よりも20g/10min以上大きいことを特徴とする表皮積層樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
請求項2に記載の表皮積層樹脂成形品の成形方法において、
上記第1パウダーのMFR値が、75g/10min以上であることを特徴とする表皮積層樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の表皮積層樹脂成形品の成形方法において、
上記第1パウダーの平均粒径と第2パウダーの平均粒径との差を170μm以上に設定することを特徴とする表皮積層樹脂成形品の成形方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の表皮積層樹脂成形品の成形方法において、
上記第1及び第2パウダーは、ゴム成分を含有し、
上記第1パウダーのゴム成分含有率を、第1パウダーの全体量に対して40質量%以上で、かつ60質量%以下に設定し、
上記第2パウダーのゴム成分含有率を、第2パウダーの全体量に対して60質量%以上に設定することを特徴とする表皮積層樹脂成形品の成形方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の表皮積層樹脂成形品の成形方法において、
上記第1及び第2パウダーの混合量に対する第1パウダーの配合量を60質量%以上で、かつ80質量%以下に設定することを特徴とする表皮積層樹脂成形品の成形方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の表皮積層樹脂成形品の成形方法において、
他方の成形型に裏面側層部材をセットした状態で、該裏面側層部材と上記裏面側表皮層との間に上記注入樹脂材を注入して充填し、該注入樹脂材により、上記裏面側層部材と裏面側表皮層とを接着することを特徴とする表皮積層樹脂成形品の成形方法。
【請求項1】
複数の層からなる表皮を備えた表皮積層樹脂成形品の成形方法であって、
ソリッドな最表皮層成形用の第1パウダーと、該第1パウダーに比して溶融時粘度が高く、平均粒径が大きく、軟化点が低い、ソリッドな裏面側表皮層成形用の第2パウダーとを混合し、
上記第1パウダーと第2パウダーとの混合パウダーを用いてスラッシュ成形して上記最表皮層と裏面側表皮層とからなる表皮を成形し、
上記表皮を一方の成形型にセットした状態で上記裏面側表皮層上に、第2パウダーの軟化点以上に加熱した注入樹脂材を注入して充填することを特徴とする表皮積層樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の表皮積層樹脂成形品の成形方法において、
上記第1パウダーの溶融時粘度を表すMFR(メルトフローレート)の値が、第2パウダーのMFR値よりも20g/10min以上大きいことを特徴とする表皮積層樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
請求項2に記載の表皮積層樹脂成形品の成形方法において、
上記第1パウダーのMFR値が、75g/10min以上であることを特徴とする表皮積層樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の表皮積層樹脂成形品の成形方法において、
上記第1パウダーの平均粒径と第2パウダーの平均粒径との差を170μm以上に設定することを特徴とする表皮積層樹脂成形品の成形方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の表皮積層樹脂成形品の成形方法において、
上記第1及び第2パウダーは、ゴム成分を含有し、
上記第1パウダーのゴム成分含有率を、第1パウダーの全体量に対して40質量%以上で、かつ60質量%以下に設定し、
上記第2パウダーのゴム成分含有率を、第2パウダーの全体量に対して60質量%以上に設定することを特徴とする表皮積層樹脂成形品の成形方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の表皮積層樹脂成形品の成形方法において、
上記第1及び第2パウダーの混合量に対する第1パウダーの配合量を60質量%以上で、かつ80質量%以下に設定することを特徴とする表皮積層樹脂成形品の成形方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の表皮積層樹脂成形品の成形方法において、
他方の成形型に裏面側層部材をセットした状態で、該裏面側層部材と上記裏面側表皮層との間に上記注入樹脂材を注入して充填し、該注入樹脂材により、上記裏面側層部材と裏面側表皮層とを接着することを特徴とする表皮積層樹脂成形品の成形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−90566(P2007−90566A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280453(P2005−280453)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(390026538)西川化成株式会社 (492)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(390026538)西川化成株式会社 (492)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]