説明

表示システム

【課題】利便性がよい表示システムを提供する。
【解決手段】表示システム1は、第1プロジェクター10及び第2プロジェクター11を含む投写部2と、互いに積層された液晶層と偏光板とを有する光学素子12、13を、液晶層の配置側が投写部2の光射出面に対向する第1状態と偏光板の配置側が投写部2の光射出面に対向する第2状態とで変更可能に、保持する保持部3と、第1状態で第1プロジェクター10から射出された光と第2プロジェクター11から射出された光とが時間的に交互に光学素子12、13を通るように液晶層を制御し、第2状態で第1プロジェクター10から射出されて光学素子12を通った光と第2プロジェクター11から射出されて光学素子13を通った光とが互いに直交する偏光になるように液晶層を制御する制御部5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表示画像を立体的に表現する表示システムが提案されている(例えば、下記の特許文献1から4参照)。この技術において、観察者は、右眼と左眼の視点分だけずれた2つの視差画像をそれぞれの眼で選択的に見ることで、表示画像を立体的に視認できる。また、複数の観察者が互いに異なる方向から投写面を見たときに、複数の観察者で互いに異なる画像を視認できる技術も提案されている。
【0003】
画像を立体的に表示する方式としては、波長分割方式や時分割方式、偏光方式等が知られている。波長分離方式は、波長が互いに異なる2つの視差画像を投写し、2つの視差画像を波長の違いにより分離して左眼と右眼とに振り分ける方式である。時分割方式や偏光方式は、波長分離方式よりも色再現性の点で有利である。
【0004】
時分割方式は、2つの視差画像を時分割で投写し、投写されている視差画像を左眼と右眼のいずれで観察可能にするかをシャッター眼鏡で時間的に切替える方式である。シャッター眼鏡は、液晶シャッター等を利用して透過率を切替えることができる。時分割方式では、シャッター眼鏡へ入射する光の偏光方向による透過率の依存性を低くする等の観点で、光が散乱しやすいマットスクリーン等が用いられる。
【0005】
偏光方式は、液晶プロジェクター等により偏光方向が互いに異なる2つの視差画像を投写し、2つの視差画像を偏光方向の違いにより偏光眼鏡等で分離して左眼と右眼とに振り分ける方式である。偏光方式では、プロジェクターからの光が投写面で反射する前後で偏光方向を保持するように、光が散乱しにくいシルバースクリーン等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−18894号公報
【特許文献2】特開平2−144516号公報
【特許文献3】特開平10―28275号公報
【特許文献4】特表2009−507401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、マットスクリーンに偏光方式で視差画像を投写すると、マットスクリーンで光が散乱して偏光が解消され、右眼用の視差画像(以下、R画像という)と左眼用の視差画像(以下、L画像という)を分離して表示することが難しくなる。また、シルバースクリーンに時分割方式で視差画像を投写すると、シルバースクリーンで反射する前後で偏光が保持されるので、所望の視差画像を表示することが難しくなることがある。例えば、時分割方式において、緑色光が他の色光とは異なる偏光で射出するプロジェクターが用いられる場合には、片眼用の視差画像のうち緑色光と他の色光とでシャッター眼鏡の透過率が異なってしまい、視差画像が所望の色で観察されなくなる。
【0008】
このように、従来の表示システムは、時分割方式と偏光方式とでスクリーンを使い分ける必要が生じるので、利便性が悪くなるおそれがある。また、マットスクリーンに時分割方式で立体画像を表示しようとすれば、例えば高周波数で動作可能な液晶パネルや駆動回路が必要になり、装置コストが高くなってしまう。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑み成されたものであって、利便性がよい表示システムを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の表示システムは、第1プロジェクターと第2プロジェクターとを含む投写部と、互いに積層された液晶層と偏光板とを有する光学素子と、前記光学素子を、前記液晶層の配置側が前記投写部の光射出面に対向する第1状態と前記偏光板の配置側が前記投写部の光射出面に対向する第2状態とで変更可能に、保持する保持部と、前記第1状態で前記第1プロジェクターから射出された光と前記第2プロジェクターから射出された光とが時間的に交互に前記光学素子を通るように前記液晶層を制御し、前記第2状態で前記第1プロジェクターから射出されて前記光学素子を通った光と前記第2プロジェクターから射出されて前記光学素子を通った光とが互いに直交する偏光になるように前記液晶層を制御する制御部と、を備える。
【0011】
上記の表示システムは、第1状態において、第1プロジェクターから射出された光と第2プロジェクターから射出された光とが時間的に交互に光学素子を通るので、第1プロジェクターによる第1画像と第2プロジェクターによる第2画像とを時分割方式で表示することができる。また、上記の表示システムは、第2状態において、第1プロジェクターから射出されて光学素子を通った光と第2プロジェクターから射出されて光学素子を通った光とが互いに直交する偏光になるので、第1プロジェクターによる第1画像と第2プロジェクターによる第2画像とを偏光方式で表示することができる。
【0012】
上記の表示システムは、保持部が光学素子を第1状態と第2状態とで変更可能に保持するので、スクリーンの特性に応じて時分割方式と偏光方式とを切替えることができる。したがって、上記の表示システムは、例えばマットスクリーンとシルバースクリーンのいずれを用いる場合でも第1画像と第2画像と分けて表示することができ、利便性が高くなる。また、上記の表示システムは、第1プロジェクターと第2プロジェクターとで視差画像を表示するので、明るい視差画像を表示することができる。
【0013】
上記の表示システムにおいて、前記光学素子の前記液晶層は、互いに積層された第1液晶層と第2液晶層とを含み、前記光学素子の厚み方向から見て前記第1液晶層の遅相軸が前記偏光板の透過軸に対して22.5°の角度をなしているとともに前記第2液晶層の遅相軸が前記偏光板の透過軸に対して67.5°の角度をなしていてもよい。
【0014】
このようにすれば、光学素子の波長依存性を減らすことができるので、第1状態において光学素子を通った各色光の光量を高精度に制御することができ、高品質な画像を表示することができる。また、第2状態において光学素子を通った各色光の偏光状態を高精度に制御することができ、第1プロジェクターにより表示される第1画像と第2プロジェクターにより表示される第2画像とのクロストークを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】表示システムを示す図である。
【図2】光学素子及び保持部を示す図である。
【図3】表示システムの第1状態での動作の一例を示す図である。
【図4】表示システムの各部の第1状態での動作タイミングの一例を示す図である。
【図5】表示システムの第2状態での動作の一例を示す図である。
【図6】表示システムの各部の第2状態での動作タイミングの一例を示す図である。
【図7】光学素子の変形例を示す図である。
【図8】光学素子及び保持部材の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本実施形態の表示システムの概略構成を模式的に示す図である。図2は、本実施形態の光学素子及び保持部の概略構成を示す図である。
【0017】
図1に示す表示システム1は、スクリーンSC上のほぼ同じ領域にR画像P1とL画像P2とを投写し、R画像P1とL画像P2とを眼鏡Gにより観察者の右眼と左眼に分けて示すことができ、立体画像を表示すること等ができる。表示システム1は、スクリーンの種類等によって時分割方式と偏光方式を切替えて、R画像P1とL画像P2とを表示することができる。
【0018】
表示システム1は、投写部2と、投写部2の光射出側に配置された偏光調整部3と、偏光調整部3を保持する保持部4と、偏光調整部3を制御する制御部5とを備える。投写部2から射出された光は、偏光調整部3を介してスクリーンSCへ入射し、スクリーンSCで反射した後に観察者の左眼又は右眼に到達する。
【0019】
本実施形態の投写部2は、所謂スタック型のプロジェクターであり、DVDプレイヤーやPC等の信号源等から入力される画像データに基づいて、画像を投写することができる。投写部2は、R画像P1を投写する第1プロジェクター10と、L画像P2を投写する第2プロジェクター11とを含む。第1プロジェクター10及び第2プロジェクター11は、同様の構成であり、例えば3板式の液晶プロジェクターで構成される。
【0020】
液晶プロジェクターは、例えば、超高圧水銀ランプやレーザーダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)等の光源と、液晶ライトバルブと、ダイクロイックプリズム等の色合成素子と、投写レンズとを備える。液晶プロジェクターは、光源から射出された3色(例えば、赤、緑、青)の色光を色光ごとに画像データに基づいて液晶ライトバルブで変調し、変調された3色の光を色合成素子で合成した後に投写レンズで投写することができる。
【0021】
本実施形態の制御部5は、信号源等から供給される立体画像を示す画像データから、R画像を示す第1画像データとL画像を示す第2画像データとを抽出することができる。制御部5は、抽出した第1画像データを例えば第1プロジェクター10に供給し、第2画像データを第2プロジェクター11に供給することができる。
【0022】
第1プロジェクター10から射出されて偏光調整部3へ入射する前の3色の色光は、いずれも直線偏光であり、偏光方向が3色の色光で揃っている。また、第2プロジェクター11から射出されて偏光調整部3へ入射する前の3色の色光は、第1プロジェクター10から射出された色光と偏光方向がほぼ同じである。ここでは、説明の便宜上、投写部2から射出されて偏光調整部3に入射する前の偏光の軸方向が水平走査方向(図中X軸方向)に平行であるとし、水平走査方向に平行な軸方向を有する直線偏光をP偏光という。また、垂直走査方向(図中Z軸方向)に平行な軸方向を有する直線偏光をS偏光という。
【0023】
偏光調整部3は、第1光学素子12及び第2光学素子13を含む。保持部4は、第1保持部材14及び第2保持部材15を含む。第1保持部材14は、第1光学素子12を保持しており、少なくとも表示システム1で画像を表示するときには、第1プロジェクター10から射出された光が入射する位置に図示略の固定部材で固定される。この固定部材は、保持部4の一部であってもよい。
【0024】
図2に示す第1光学素子12は、透過型の液晶パネル16と、液晶パネル16の厚み方向に積層された偏光板17とを含む。液晶パネル16は、制御部5と電気的に接続された1対の電極と、制御部5から1対の電極を介して印加される電界により駆動される液晶層とを含む。すなわち、液晶層と偏光板17は、液晶パネル16を構成する電極や基板等を介して互いに積層されている。
【0025】
本実施形態において、液晶パネル16の1対の電極は、第1プロジェクター10から光が入射する領域にベタ状に形成されている。すなわち、液晶パネル16は、第1プロジェクター10から光が入射する領域を含む単一の画素で構成されている。液晶層は、例えば垂直配向(VA)モードの液晶層であり、そのリタデーション値は、例えば第1プロジェクター10から射出されえる光の中心波長の1/2に設定される。電界が印加されていない状態で液晶層を通る直線偏光は、その偏光方向がほぼ変化しないで液晶層から射出される。また、電界が印加された状態で液晶層を通る直線偏光は、液晶層へ入射前の直線偏光とは直交する直交偏光となって液晶層からされる。偏光板17は、透過軸に平行な直線偏光が透過し、透過軸に直交する吸収軸に平行な直線偏光を吸収する特性を有する。
【0026】
本実施形態の第1保持部材14は、第1光学素子12の厚み方向と直交する向きに第1光学素子12をスライドさせることが可能なガイド溝18と、ガイド溝18が延びる方向(図中Z軸方向)の端に配置された端部と、底部19に設けられた接点20とを含む。
【0027】
第1保持部材14は、ガイド溝18に沿って第1光学素子12を挿入できるように構成されている。第1光学素子12は、表裏両面を結ぶ側面が底部19まで挿入されて、その周縁部がガイド溝18の内壁に保持される。ユーザーは、第1保持部材14から第1光学素子12をスライドして取り外し、第1保持部材14に対して第1光学素子12の表裏面を反転させた状態で第1光学素子12を第1保持部材14に取り付けることができる。第1光学素子12は、その表裏両面のいずれの面が液晶パネル16(又は偏光板17)の配置側であるかを示す印(図示略)を有している。この印は、視覚で感知できるものでもよいし、触覚で感知できるものでもよい。
【0028】
このように第1保持部材14は、第1光学素子12の液晶パネル16と偏光板17に関して、液晶パネル16の配置側が第1プロジェクター10の光射出面21に対向する第1状態と、偏光板17の配置側が第1プロジェクター10の光射出面21に対向する第2状態とで変更可能に、第1光学素子12保持することができる。本実施形態において、光射出面21は、第1プロジェクター10の投写レンズのうち終端に配置されるレンズ等の光学要素の表面である。第1状態において、偏光板17は、液晶パネル16に対して第1プロジェクター10の反対側(スクリーンSCとは同じ側)に配置される。第2状態において、偏光板17は、液晶パネル16に対して第1プロジェクター10と同じ側(スクリーンSCとは反対側)に配置される。ユーザーは、第1光学素子12の配置状態が第1状態であるか第2状態であるかを、第1光学素子12に設けられた印によって容易に知ることができる。
【0029】
第1保持部材14の接点20は、図示略の配線等で制御部5と電気的に接続されている。液晶パネル16は、第1保持部材14の底部19まで挿入された状態で、液晶パネル16の1対の電極と電気的に接続された接点が第1保持部材14の接点と接触し、接点20を介して制御部5と電気的に接続される。接点20は、第1状態と第2状態のいずれにおいて液晶パネル16の接点と接触するように、配置されている。
【0030】
図1の説明に戻り、本実施形態において、第2光学素子13は第1光学素子12と同様の構成であり、第2保持部材15は第1保持部材14と同様の構成である。第2保持部材15は、第2光学素子13を保持しており、少なくとも表示システム1で画像を表示するときには、第2プロジェクター11から射出された光が入射する位置に図示略の固定部材で固定される。
【0031】
スクリーンSCは、マットスクリーンや壁等のように入射した光が散乱されて反射する散乱型でもよいし、シルバースクリーン等のように入射した光が入射前後で偏光状態を保持して反射する非散乱型でもよい。スクリーンSCは、表示システム1の一部であってもよい。
【0032】
次に、表示システム1の動作について説明する。表示システム1は、時分割方式と偏光方式を切替えることができ、いずれかの方式で立体画像を表示することができる。眼鏡Gは、立体画像を表示する方式に応じて選択される。眼鏡Gは、表示システム1の一部であってもよい。
【0033】
図3(A)及び図3(B)は、表示システムの第1状態での動作の一例を示す図である。図4は、表示システムの各部の第1状態での動作タイミングの一例を示す図である。表示システム1は、スクリーンSCが散乱型である場合に、時分割方式で立体画像を表示することができる。表示システム1により時分割方式で立体画像を表示する場合に、第1光学素子12及び第2光学素子13は、それぞれの液晶パネルの配置側が投写部2の光射出面を向く第1状態に配置され、また、眼鏡Gとしてシャッター眼鏡が用いられる。
【0034】
このシャッター眼鏡は、その左眼と右眼のそれぞれが液晶シャッター等で構成される。シャッター眼鏡は、その左眼と右眼のそれぞれについて、入射した光が透過するモードと遮光されるモードとを切替えることができる。本実施形態において、表示システム1がシャッター眼鏡を利用して立体画像を表示する場合に、制御部5は、シャッター眼鏡の左眼と右眼の一方が透過モードであって他方が遮光モードになるように、また遮光モードと透過モードとが時間的に交互に切替わるように、シャッター眼鏡を制御することができる。
【0035】
図4(A)及び図4(B)に示すように、第1プロジェクター10(図中第1PJ)及び第2プロジェクター11(図中第2PJ)は、それぞれ、垂直走査方向(図中画面縦方向)に並ぶ走査線を線順次に走査する。この動作例において、第1プロジェクター10及び第2プロジェクター11は、それぞれ、1フレームの画像分の走査を開始しから1/60秒後にこのフレームの画像全体分の走査が終了する。第1プロジェクター10は、R画像を投写し、第2プロジェクター11は、第1プロジェクター10がR画像を投写するのとほぼ同じタイミングで、このR画像に対応するL画像を投写する。
【0036】
まず、R画像が観察者に示される仕組みについて説明する。第1光学素子12は、その液晶パネル16が制御部5に制御されて、図4(C)に示すように、1/120秒の期間ごとに、透過モードと遮光モードとを交互に繰り返す。第1光学素子12は、透過モードにおいて液晶パネル16を通った光が偏光板17を透過し、遮光モードにおいて液晶パネル16を通った光が偏光板17に吸収されるように、偏光板17の透過軸あるいは吸収軸の方向を加味して配置される。
【0037】
眼鏡Gの右眼GRは、制御部5に制御されて、図4(E)に示すように第1光学素子12が透過モードである期間に、透過モードに保持される。また、眼鏡Gの左眼GLは、制御部5に制御されて、図4(F)に示すように第1光学素子12が透過モードである期間に、遮光モードに保持される。すなわち、第1光学素子12が透過モードである期間では、図3(B)に示すように第1プロジェクター10から射出された光L1(R画像)は、スクリーンSCで散乱されて反射し、眼鏡Gの右眼GRを透過して観察者の右眼に到達する一方、眼鏡Gの左眼GLで遮光されて観察者の左眼にほとんど到達しない。このように、観察者は、R画像を右眼のみで観察することになる。
【0038】
また、第2光学素子13は、その液晶パネルが制御部5に制御され、図4(D)に示すように第1光学素子12が透過モードである期間に、遮光モードに保持される。第2光学素子13についても、透過モードにおいて液晶パネルを通った光が偏光板17を透過し、遮光モードにおいて液晶パネルを通った光が偏光板に吸収されるように、偏光板の透過軸あるいは吸収軸の方向を加味して配置される。第1プロジェクター10から射出された光L1(R画像)が眼鏡Gの右目GRを透過している間、図3(B)に示すように第2プロジェクター11から射出された光L2(L画像)は、第2光学素子13に遮光されて観察者の右眼と左眼のいずれにもほとんど到達しない。このように、観察者がR画像を観察している期間に、L画像は観察者にほとんど観察されないことになる。
【0039】
次に、L画像が観察者に示される仕組みについて説明する。第2光学素子13は、図4(D)に示すように、1/120秒の期間ごとに、透過モードと遮光モードとを交互に繰り返す。なお、第2光学素子13は、第1光学素子12が透過モードである場合は、遮光モードであり、第1光学素子12が遮光モードである場合は、透過モードであるように、制御部5によって制御される。眼鏡Gの左眼GLは、図4(F)に示すように第2光学素子13が透過モードである期間に、透過モードに保持される。また、眼鏡Gの右眼GRは、図4(E)に示すように第2光学素子13が透過モードである期間に、遮光モードに保持される。すなわち、第2光学素子13が透過モードである期間では、図3(A)に示すように第2プロジェクター11から射出された光L2(L画像)は、スクリーンSCで散乱されて反射し、眼鏡Gの左眼GLを透過して観察者の左眼に到達する一方、眼鏡Gの右眼GRで遮光されて観察者の右眼にほとんど到達しない。このように、観察者は、L画像を左眼のみで観察することになる。また、第2プロジェクター11から射出された光L2(L画像)が眼鏡Gの左目GLを透過している間、第1光学素子12は、図4(C)に示すように第2光学素子13が透過モードである期間に、遮光モードに保持される。すなわち、図3(A)に示すように第1プロジェクター10から射出された光L1(R画像)は、第1光学素子12に遮光されて観察者の右眼と左眼のいずれにもほとんど到達しない。このように、観察者がL画像を観察している期間に、R画像は、観察者にほとんど観察されないことになる。
【0040】
以上のように、R画像が観察者の右眼のみに示される期間と、L画像が観察者の左眼のみに示される期間とが交互に高速で切替わることによって、観察者にはR画像とL画像とがほとんど同時に認識されて立体画像が観察される。
【0041】
次に、表示システム1により偏光方式で立体画像を表示する場合について説明する。図5は、表示システムの第2状態での動作の一例を示す図である。図6は、表示システムの各部の第2状態での動作タイミングの一例を示す図である。表示システム1は、スクリーンSCが非散乱型である場合に、偏光方式と上記の時分割方式のいずれの方式でも立体画像を表示することができる。
【0042】
表示システム1により偏光方式で立体画像を表示する場合に、第1光学素子12及び第2光学素子13は、それぞれの偏光板の配置側が投写部2の光射出面を向く第2状態に配置され、また、眼鏡Gとして偏光眼鏡が用いられる。
【0043】
この偏光眼鏡の左眼と右眼は、それぞれ直線偏光が透過する特性を有する。偏光眼鏡は、左眼を透過する直線偏光の偏光軸が右眼を透過する直線偏光の偏光軸と直交するように、構成されている。すなわち、偏光眼鏡は、P偏光とS偏光の一方が偏光眼鏡の右眼を透過し、他方が偏光眼鏡の左眼を透過するように構成されている。
【0044】
図6(A)及び図6(B)に示すように、第1プロジェクター10(図中第1PJ)及び第2プロジェクター11(図中第2PJ)は、それぞれ、垂直走査方向(図中画面縦方向)に並ぶ走査線を線順次に走査する。この動作例において、第1プロジェクター10及び第2プロジェクター11は、それぞれ、1フレームの画像分の走査を開始してから1/60秒後にこのフレームの画像全体分の走査を終了する。第1プロジェクター10は、R画像を投写し、第2プロジェクター11は、第1プロジェクター10がR画像を投写するのとほぼ同じタイミングで、このR画像に対応するL画像を投写する。
【0045】
第1光学素子12は、観察者の右眼だけにR画像だけを示すように、第1プロジェクター10から射出されて第1光学素子12を通った光L3(R画像)が眼鏡Gの右眼GRを透過する偏光状態になるように、その液晶パネル16が制御部5に制御される。また、第2光学素子13は、観察者の左眼だけにL画像だけを示すように、第2プロジェクター11から射出されて第2光学素子13を通った光L4(L画像)が眼鏡Gの左眼GLを透過する偏光状態になるように、その液晶パネルが制御部5に制御される。
【0046】
ここでは、説明の便宜上、第1プロジェクター10及び第2プロジェクター11がP偏光を射出し、第1光学素子12の液晶パネル16及び第2光学素子13の液晶パネルがVAモードであるとする。この場合に、第1光学素子12の偏光板と第2光学素子13の偏光板は、P偏光が透過するように偏光板の透過軸の方向を加味して、配置される。また、偏光眼鏡の右眼GRはP偏光が透過する特性を有し、偏光眼鏡の左眼GLはS偏光が透過する特性を有するとする。
【0047】
この場合に、制御部5は、観察者の右眼だけにR画像だけを示すように、第1光学素子12の液晶パネル16の液晶層に電圧(電界)が印加されないように第1光学素子12を制御する。また、制御部5は、観察者の左眼だけにL画像だけを示すよう、第2光学素子13の液晶パネルの液晶層に電圧(電界)が印加されるように、第2光学素子13を制御する。
【0048】
図5に示すように、第1プロジェクター10から第1光学素子12へ入射した光(P偏光)は、偏光状態がほとんど変化せずに第1光学素子12を透過し、スクリーンSCで偏光状態がほとんど変化せずに反射する。また、第2プロジェクター11から第2光学素子13へ入射した光(P偏光)は、第2光学素子13を通って偏光状態がS偏光に変化した後に、スクリーンSCで偏光状態がほとんど変化せずに反射する。第1プロジェクター10から射出されてスクリーンSCで反射したP偏光(R画像)と第2プロジェクター11から射出されてスクリーンSCで反射したS偏光(L画像)のうち、P偏光は、眼鏡Gの右眼GRを通って観察者の右眼に到達し、S偏光は、眼鏡Gの右眼GRで遮光されて観察者の右眼にほとんど到達しない。すなわち、観察者は、右眼でR画像のみを観察することになる。同様に、S偏光は、眼鏡Gの左眼GLを通って観察者の左眼に到達し、P偏光は、眼鏡Gの左眼GLで遮光されて観察者の左眼にほとんど到達しない。すなわち、観察者は、左眼でL画像のみを観察することになる。以上のように、R画像が観察者の右眼のみで観察され、L画像が左眼のみで観察されることによって、観察者に立体画像が観察される。
【0049】
以上のような構成の本実施形態の表示システム1は、マットスクリーン等の散乱型のスクリーンを用いる場合に、第1状態に配置された第1光学素子12及び第2光学素子13を制御部5が制御することによって、立体画像を時分割方式で表示することができる。また、シルバースクリーン等の非散乱型のスクリーンに対して、第2状態に配置された第1光学素子12及び第2光学素子13を制御部5が制御することによって、立体画像を偏光方式で表示することができる。このように、表示システム1は、散乱型のスクリーンと非散乱型のスクリーンのいずれを用いる場合でも立体画像を表示することができるので、使い勝手がよい(利便性が高い)。また、表示システム1は、第1プロジェクター10でR画像を投写し、第2プロジェクター11でL画像を表示するので、1台のプロジェクターでL画像とR画像とを投写する構成と比較して、明るい立体画像を表示すること容易である。
【0050】
ところで、第1プロジェクター10や第2プロジェクター11において液晶ライトバルブで変調された光は、光学素子に到達するまでの間に色合成素子や投写レンズで偏光状態が乱れることがありえる。表示システム1は、第1光学素子12及び第2光学素子13を第2状態に配置して表示する場合に、光学素子へ入射する光のうち偏光状態が乱れた成分を偏光板17で除去することができる。したがって、偏光眼鏡へ入射する偏光の偏光方向を高精度に制御することができ、R画像とL画像とのクロストークを減らすこと等ができる。
【0051】
次に、変形例について説明する。図7は、光学素子の変形例を示す図である。図8は、保持部の変形例を示す図である。以下の説明において、上記の実施形態と同様の構成要素については、上記の実施形態と同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略することがある。
【0052】
図7に示す光学素子30は、第1液晶層を有する第1液晶パネル31と、第2液晶層を有する第2液晶パネル32と、上記の実施形態と同様の偏光板17とを含む。第1液晶パネル31と第2液晶パネル32は、光学素子30の厚み方向から見て第1液晶層と第2液晶層とが重なり合うように、互いに積層されている。すなわち、光学素子30の液晶層は、第1液晶層と第2液晶層とを含み、第1液晶層と第2液晶層とが基板等を介して光学素子30の厚み方向に互いに積層された構成である。光学素子30の厚み方向から見たときに、第1液晶層の遅相軸33が偏光板17の吸収軸34となす角度αが略67.5°(透過軸36となす角度が略22.5°)であり、第2液晶層の遅相軸35が偏光板17の吸収軸34に対してなす角度βは略22.5°(透過軸36に対してなす角度が略67.5°)である。
【0053】
ところで、液晶層のリタデーション値は、屈折率の関数であるので入射する波長によって変化する。例えば、液晶層のリタデーション値を緑色光の中心波長に対して1/2に設定すると、赤色光と青色光については、液晶層のリタデーション値が1/2波長にならなくなり、液晶層を通った後の偏光状態が実際には直線偏光に近い楕円偏光になる。変形例の光学素子30は、第1液晶層の遅相軸33と第2液晶層の遅相軸35とが上記の条件を満たすように設定されているので、光学素子の波長依存性を減らすことができる。したがって、第1状態において光学素子30を通った各色光の光量を高精度に制御することができ、カラーバランスを高精度に制御することができるので、高品質な画像を表示することができる。また、第2状態において光学素子30を通った各色光の偏光状態を高精度に制御することができ、第1プロジェクター10により表示される画像と第2プロジェクターにより表示される画像とのクロストークを減らすことができる。
【0054】
なお、光学素子30は、上記の実施形態の第1光学素子12や第2光学素子13として利用可能である。また、第1液晶層と第2液晶層は、そのいずれが偏光板17側に配置されていてもよい。
【0055】
図8に示す保持部材40は、第1プロジェクター10の投写レンズ41(鏡筒)に取り付け可能である。本変形例の光学素子42は、円板状であり、保持部材40は光学素子42の外周面を囲んで保持する円環状である。保持部材40の軸方向の両端部には、投写レンズ41の先端部とかみあわせることが可能なネジ山又はネジ溝が設けられている。
【0056】
光学素子42は、保持部材40に保持された状態で保持部材40が投写レンズ41の先端部にネジ込まれることによって、投写レンズ41に対して着脱可能に固定される。光学素子42は、その軸方向の一端部と他端部のいずれを投写レンズ41の先端部にねじ込むかによって、第1状態あるいは第2状態のいずれの配置状態になるかを選択可能になっている。
【0057】
ここでは、光学素子42を投写レンズ41の先端部に対して最大限にねじ込んだ状態で、偏光板の透過軸の方向が所定の方向になるように、上記のネジ山とネジ溝が形成されている。保持部材40は、第1プロジェクター10に対して直接的に取り付けることができるので、第1プロジェクター10に対する位置決めが容易である。なお、光学素子42は、上記の実施形態の第1光学素子12や第2光学素子13として利用可能であり、保持部材40は上記の実施形態の第1保持部材14や第2保持部材15として利用可能である。
【0058】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、上記の実施形態で説明した要件の少なくとも1つは、省略されることある。
【符号の説明】
【0059】
1・・・表示システム、2・・・投写部、4・・・保持部、5・・・制御部、10・・・第1プロジェクター、11・・・第2プロジェクター、12・・・第1光学素子(光学素子)、13・・・第2光学素子(光学素子)、17・・・偏光板、21・・・光射出面、30・・・光学素子、33・・・第1液晶層の遅相軸、35・・・第2液晶層の遅相軸、36・・・偏光板の透過軸、42・・・光学素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プロジェクター及び第2プロジェクターを含む投写部と、
互いに積層された液晶層と偏光板とを有する光学素子と、
前記光学素子を、前記液晶層の配置側が前記投写部の光射出面に対向する第1状態と前記偏光板の配置側が前記投写部の光射出面に対向する第2状態とで変更可能に、保持する保持部と、
前記第1状態で前記第1プロジェクターから射出された光と前記第2プロジェクターから射出された光とが時間的に交互に前記光学素子を通るように前記液晶層を制御し、前記第2状態で前記第1プロジェクターから射出されて前記光学素子を通った光と前記第2プロジェクターから射出されて前記光学素子を通った光とが互いに直交する偏光になるように前記液晶層を制御する制御部と、
を備える表示システム。
【請求項2】
前記光学素子の前記液晶層は、互いに積層された第1液晶層と第2液晶層とを含み、前記光学素子の厚み方向から見て前記第1液晶層の遅相軸は、前記偏光板の透過軸に対して22.5°の角度をなしているとともに前記第2液晶層の遅相軸が前記偏光板の透過軸に対して67.5°の角度をなしている請求項1に記載の表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−5309(P2013−5309A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136014(P2011−136014)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】