説明

表示用駆動装置

【課題】安価に安定品質の表示用駆動装置を提供する。
【解決手段】別ウェルの差動段71P,71Nと出力段72P,72Nとに対してそれぞれバイアス回路50からバイアス信号VBH,VBLを供給し、そのバイアス回路50内でそれぞれの同極性のバイアス信号VBH,VBLはバイアス回路50内で縦配線60P,60Nによって短絡し、且つ、この縦配線60P,60Nに対してシールド配線61P,61Nを併設してシールドを行っている。そのため、従来のソースアンプ内の縦配線を止めたことで、他信号との隣接がなくなりカップリング容量を削除できる。しかも、従来の縦配線に代えて、横配線のバイアス信号配線62P−1,62P−2,62N−1,62N−2を増設したので、対VDD、対VSSとの容量が増加し、バイアス信号VBH,VBLがより安定化し、ソースアンプ70の出力遅延時間が従来よりも速くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置(以下「LCD」という。)等の表示装置を駆動するための表示用駆動装置、例えば、薄膜トランジスタ(以下「TFT」という。)を用いたLCD(以下「TFT−LCD」という。)を駆動するためのTFTソースドライバにおけるソース用増幅回路(以下「アンプ」という。)の定電流制御信号であるバイアス信号の配線レイアウト(配置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、アクティブマトリクス方式を利用したTFT−LCDに関する技術が、下記の特許文献1に記載され、それらの内部に設けられる多数の信号配線間に生じるクロストークノイズを抑制するためのシールド配線に関する技術が、下記の特許文献2に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−29409号公報
【特許文献2】特開2006−179554号公報
【0004】
図5は、特許文献1等に記載された従来の表示装置の1つであるTFT−LCDを示す概略の構成図である。
【0005】
このTFT−LCDは、液晶(以下「LC」という。)パネル1と、走査側のゲート駆動用の半導体集積回路(以下「IC」という。)2と、表示用データDIN側のソース駆動用IC3等とを備えている。LCパネル1は、図示しないが、画素電極とスイッチング機能を持つTFTとを配置した透明なTFT側基板と、面全体に1つの対向電極を形成した透明な対向電極側基板と、これら2枚の基板を対向させて間にLCを封入した構造になっている。そして、対向電極に所定のコモン電圧Vcomを供給すると共に、TFTを制御することにより各画素電極に所定の電圧を印加し、各画素電極と対向電極との間の電位差によりLCの透過率を変化させて画像を表示するようになっている。
【0006】
画像を中間調表示(階調表示)するために、各画素電極には所定の電圧として可変の階調電圧が印加される。TFT側基板上には、各画素電極へ印加する階調電圧を送るソース線と、TFTのスイッチング制御信号(走査信号)を送る走査線とが配線されている。複数のソース線は、ソース駆動用IC3の出力側に接続され、複数の走査線が、ゲート駆動用IC2の出力側に接続されている。
【0007】
図示しない制御回路からクロック信号CK等がゲート駆動用IC2へ供給されると共に、その制御回路からクロック信号CK等のタイミング信号や表示用データDIN等がソース駆動用IC3へ供給されると、図5のTFT−LCDは以下のように動作する。
【0008】
先ず、ゲート駆動用IC2から各走査線に対してパルス状の走査信号が送られる。走査線に印加された走査信号が高レベル(以下「Hレベル」という。)の時には、この走査線に繋がるTFTが全てオン状態となる。この時、ソース駆動用IC3からソース線へ送られた階調電圧が、オン状態のTFTを介して画素電極に印加される。その後、走査信号が低レベル(以下「Lレベル」という。)になってTFTがオフ状態に変化すると、画素電極と対向電極との電位差が、次の階調電圧が画素電極に印加されるまでの間保持される。そして、各走査線に順次走査信号を送ることにより、全ての画素電極に所定の階調電圧が印加され、フレーム周期で階調電圧の書き替えを行うことにより、LCパネル1に画像を表示することができる。
【0009】
ソース駆動用IC3によって各画素電極を駆動する場合、LC固有の特性から対向電極の電位に対して交流駆動する必要がある。この交流駆動方法の代表的なものとしては、ライン反転駆動法やドット反転駆動法がある。ライン反転駆動法は、ソース駆動用IC3からの階調電圧を1走査線を駆動する期間( 以下「水平期間」という。)毎にコモン電圧Vcomに対して正電圧と負電圧を、1走査線単位で切り換える方法である。これに対し、ドット反転駆動法は、1画素電極単位で切り換える方法である。
【0010】
即ち、ライン反転駆動法は、ソース駆動用IC3からの階調電圧を、例えば、+5V以下の低電圧に設定し、コモン電圧Vcomを1水平期間毎に変化させることにより極性反転して交流駆動する方法である。これに対し、ドット反転駆動法は、コモン電圧Vcomを一定電圧に固定し、ソース駆動用IC3からの階調電圧としてコモン電圧Vcomに対して、極性が正(P)の電圧(以下「正極性階調電圧」」という。)と、極性が負(N)の電圧(以下「負極性階調電圧」という。)をそれぞれ対称となるように設定して、正極性階調電圧と負極性階調電圧を1水平期間毎に交互に供給する方法である。例えば、64階調表示の場合、正極性階調電圧VP1〜VP64としてVcom<VP64<…<VP1、及び負極性階調電圧VN1〜VN64としてVcom>VN64>…>VN1で、正極性階調電圧VP1〜VP64と負極性階調電圧VN1〜VN64とがコモン電圧Vcomに対してそれぞれ対称に設定される。そして、正極性階調電圧VP1〜VP64のうちの1つの階調電圧VPxと、負極性階調電圧VN1〜VN64のうちの1つの階調電圧VNxとが1水平期間毎に交互に供給される。
【0011】
図5のTFT−LCDにおいて、例えば、ドット反転駆動法を用いたソース駆動用IC3は、表示用データDINを取り込んでストローブ信号STBに同期して保持し、内部で発生された多数の階調電圧のうち、保持された表示用データDINに応じた階調電圧を選択し、アナログ信号に変換して階調電圧VPx,VNxを生成し、出力回路により、その階調電圧VPx,VNxを駆動し、ストローブ信号STBに同期して各ソース線へ出力する構成になっている。
【0012】
図6は、図5中のソース駆動用IC3内の出力回路を示す概略の構成図である。
出力回路は、この中央に配置され、H側のバイアス信号VBH及びL側のバイアス信号VBLを生成するバイアス回路10と、このバイアス回路10の左右に多数(例えば、数百個)配置され、バイアス信号VBH,VBLによりそれぞれ定電流を流して、入力された階調電圧VPx,VNxをそれぞれ増幅するためのセル構造をなすソース側増幅回路(以下「ソースアンプ」という。)20等とを有している。
【0013】
バイアス回路10の上下左右には、横配線であるP側バイアス信号(VBH)配線11PとN側バイアス信号(VBL)配線11Nとが配置され、これらのバイアス信号配線11P,11Nにより、バイアス回路10とセル構造の各ソースアンプ20とが電気的に接続されている。バイアス信号VBH,VBLの精度によって出力信号が変動してしまうため、一般的には、特許文献2に記載されているように、P側バイアス信号配線11P及びN側バイアス信号配線11Nに対し、信号配線間のクロストークノイズの影響による信号伝送の遅延変動や誤動作等を防止するために、シールド配線12P,12Nがそれぞれ併設されている。即ち、P側バイアス信号配線11Pには、電源電圧(以下「VDD」という。)が印加されたVDDシールド配線12Pが併設され、N側バイアス信号配線11Nにも、接地電圧(以下「VSS」という。)に保持されたVSSシールド配線11Nが併設されている。
【0014】
各セルのソースアンプ20は、P側バイアス信号配線11Pに接続されたP側ソースアンプ部20Pと、N側バイアス信号配線11Nに接続されたN側ソースアンプ部20Nとにより構成されている。P側ソースアンプ部20Pは、P側バイアス信号配線11Pに接続されてP側バイアス信号VBHにより定電流制御され、入力された階調電圧VPxを増幅するP側差動段21Pと、このP側差動段21Pに縦配線23Pを介して接続されてP側バイアス信号VBHにより定電流制御され、そのP側差動段21Pの出力信号をソース線へ供給して駆動するP側出力段22Pとを有している。N側ソースアンプ部20Nは、Nバイアス信号配線11Nに接続されてN側バイアス信号VBLにより定電流制御され、入力された階調電圧VNxを増幅するN側差動段21Nと、このN側差動段21Nに縦配線23Nを介して接続されてN側バイアス信号VBLにより定電流制御され、そのN側差動段21Nの出力信号をソース線へ供給して駆動するN側出力段22Nとを有している。
【0015】
このような構成の出力回路において、バイアス回路10により生成されたバイアス信号VBH,VBLが、P側バイアス信号配線11P及びN側バイアス信号配線11Nを介して、各セルのソースアンプ20へそれぞれ供給される共に、VDD,VSS及びストローブ信号STBが、その各セルのソースアンプ20へそれぞれ供給される。すると、各ソースアンプ20では、入力された階調電圧VPx,VNxをそれぞれ駆動し、ストローブ信号STBに同期して各ソース線へ出力する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
近年出力用のソースアンプ20の精度向上から、このソースアンプ20内の差動段21P,21Nと出力段22P,22Nとを構成するトランジスタを別々の半導体ウェルに形成し、互いの影響を減らす技術が検討されている。差動段21P,21Nと出力段22P,22Nとを別ウェルに形成する場合、それぞれに対してバイアス信号VBH,VBLNを供給しなければならず、出力回路の横方向に配置されたバイアス信号配線11P,11Nから縦配線23P,23Nで供給しなければならない。例えば、ソースアンプ20内の1つのバイアス信号VBH(VBL)が電源の異なる(ソースアンプ20の差動段21P(21N)と出力段22P(22N)の差で電位は同じ)複数のMOSトランジスタのゲート信号となる場合、ソースアンプ20内でバイアス信号VBH(VBL)の縦配線23P(23N)を設けなければならない。各ソースアンプ20内において、縦方向のバイアス信号配線である縦配線23P,23Hの増加に応じて、シールド配線も同様に追加しなければならない状況が生じている。
【0017】
しかしながら、従来の技術では、チップサイズ縮小から追加の配線領域、特に縦配線23P,23Nの余裕が少ないため(即ち、セル幅が狭く他配線が密のため)、この縦配線23P,23Nに対してシールド配線を配置することが困難である。シールド配線を行わずに設計した場合、ソースアンプ20の出力の遅延時間が増大してしまい、表示品質を保つことが困難である。例えば、ソースアンプ20内でバイアス信号がシールドされていない場合、バイアス信号と他信号間に数fFのカップリング容量が付き、全体では数pF(ソースアンプ個数分)のカップリング容量となる。バイアス信号VBH,VBLのカップリング対象となる信号が頻繁に動作するデジタル信号の場合、この信号の影響を受けてバイアス信号VBH,VBLが不安定になり、ソースアンプ20の出力遅延時間が増大してしまい、表示品質が劣化してしまう。
【0018】
又、シールド配線を配置するように再設計するには、非常に工数増大を招くと共にチップサイズ増大を招きかねない。
【0019】
本発明は、このような従来の課題を解決し、安価に安定品質の表示用駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の表示用駆動装置は、複数の表示素子を駆動する出力回路を備えた表示用駆動装置であって、前記出力回路は、定電流制御信号である同極性の第1のバイアス信号及び第2のバイアス信号を含む複数のバイアス信号を生成するバイアス回路と、半導体基板内において分離して形成された第1のウェル及び第2のウェルのうち、前記第1のウェル内に形成され、前記第1のバイアス信号により定電流制御され、入力された表示用信号を増幅する増幅段と、前記第2のウェル内に形成され、前記第2のバイアス信号により定電流制御され、前記増幅段の出力信号を前記表示素子へ供給して駆動する出力段とを有している。そして、前記バイアス回路内において、前記第1のバイアス信号と前記第2のバイアス信号とは縦配線によって短絡され、且つ、前記縦配線はシールドされている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来のアンプ内の縦配線を止めたことで、他信号との隣接がなくなりカップリング容量を削除できる。しかも、従来の縦配線に代えて、横配線のバイアス信号配線を増設可能な構成にしたので、対電源配線との容量が増加し、バイアス信号がより安定化し、アンプの出力遅延時間が従来より速くなる。従って、安価に安定品質のソース駆動用IC等の表示用駆動装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0023】
(実施例1のTFT−LCD)
図2は、本発明の実施例1における表示装置の1つであるTFT−LCDを示す概略の構成図である。
【0024】
このTFT−LCDは、LCパネル30と、走査側のゲート駆動用IC35と、表示用データDIN側のソース駆動用IC40等とを備えている。
【0025】
LCパネル30は、従来の図5と同様に、画素電極とスイッチング機能を持つTFT31とを配置した透明なTFT側基板と、面全体に1つの対向電極を形成した透明な対向電極側基板と、これら2枚の基板を対向させて間にLC32を封入した構造になっている。そして、対向電極に所定のコモン電圧Vcomを供給すると共に、TFT31を制御することにより各画素電極に所定の電圧を印加し、各画素電極と対向電極との間の電位差によりLC32の透過率を変化させて画像を表示するようになっている。
【0026】
画像を階調表示するために、各画素電極には所定の電圧として可変の階調電圧VPx,VNxが印加される。TFT側基板上には、各画素電極へ印加する階調電圧を送るソース線33と、TFT31のスイッチング制御信号(走査信号)を送る走査線34とが配線されている。複数のソース線33は、ソース駆動用IC40の出力側に接続され、多数の走査線34が、ゲート駆動用IC35の出力側に接続されている。なお、対向電極には、コモン電圧Vcomを供給するための電源回路が接続されている。
【0027】
ソース駆動用IC40は、例えば、ドット反転駆動法を用いて構成され、多数の階調電圧を発生する階調電圧発生回路41と、この出力側に接続されたドライバセル42等とを有している。ドライバセル42は、D/Aコンバータ43、及び出力回路44等により構成されている。D/Aコンバータ43は、表示用データDINを取り込んでストローブ信号STBに同期して保持し、発生された多数の階調電圧のうち、保持された表示用データDINに応じた階調電圧を選択し、アナログ信号に変換して階調電圧VPx,VNxを出力する回路である。更に、出力回路44は、D/Aコンバータ43から出力された階調電圧VPx,VNxを駆動し、ストローブ信号STBに同期して各ソース線33へ出力する回路である。
【0028】
このように構成されるTFT−LCDの概略の動作を説明する。
例えば、図示しない制御回路からクロック信号CK等がゲート駆動用IC35へ供給されると共に、その制御回路からクロック信号CK等のタイミング信号、表示用データDIN、及びストローブ信号STB等がソース駆動用IC40へ供給される。すると、ゲート駆動用IC35から各走査線34に対してパルス状の走査信号が送られる。同時に、ソース駆動IC40において、階調電圧発生回路41から多数の階調電圧が発生し、デジタル/アナログコンバータ(以下「D/Aコンバータ」という。)43へ供給される。D/Aコンバータ43は、表示用データDINを取り込んでストローブ信号STBに同期して保持し、供給された多数の階調電圧のうち、保持された表示用データDINに応じた階調電圧を選択し、アナログ信号に変換して階調電圧VPx,VNxを出力する。これにより、出力回路44では、D/Aコンバータ43から出力された階調電圧VPx,VNxを駆動し、ストローブ信号STBに同期して各ソース線33へ出力する。
【0029】
走査線34に印加された走査信号がHレベルの時には、この走査線34に繋がるTFT31が全てオン状態となる。この時、ソース駆動用IC40からソース線33へ送られた階調電圧VPx,VNxが、オン状態のTFT31を介して画素電極に印加される。同時に、図示しない電源回路から対向電極へコモン電圧Vcomが供給される。その後、走査信号がLレベルになってTFT31がオフ状態に変化すると、画素電極と対向電極との電位差が、次の階調電圧VPx,VNxが画素電極に印加されるまでの間保持される。そして、各走査線34に順次走査信号を送ることにより、全ての画素電極に所定の階調電圧VPx,VNxが印加され、フレーム周期で階調電圧VPx,VNxの書き替えを行うことにより、LCパネル30に画像等が表示される。
【0030】
(実施例1の出力回路)
図1は、本発明の実施例1における図2のTFT−LCD中の出力回路44を示す概略の構成図である。
【0031】
出力回路44は、この中央に配置され、H側のバイアス信号VBH及びL側のバイアス信号VBLを生成するバイアス回路50と、このバイアス回路50の左右に多数(例えば、数百個)配置され、バイアス信号VBH,VBLによりそれぞれ定電流を流して、入力された階調電圧VPx,VNxをそれぞれ増幅するためのセル構造をなすソースアンプ70等とを有している。
【0032】
バイアス回路50は、H側のバイアス信号VBHを生成するP側バイアス回路部50Pと、L側のバイアス信号VBLを生成するN側バイアス回路部50Nとにより構成されている。
【0033】
P側バイアス回路部50Pは、短絡用の縦配線60Pを有し、この縦配線60Pの両端部からP側バイアス信号VBHをそれぞれ出力する構成になっている。縦配線60Pには、VDDが印加されたVDDシールド配線61Pが併設されている。縦配線60Pの一端部は、横方向に延設された横配線であるP側バイアス信号(VBH)配線62P−1と接続され、更に、縦配線60Pの他端部が、横方向に延設された横配線であるP側バイアス信号(VBH)配線62P−2と接続されている。P側バイアス信号配線62P−1には、VDDシールド配線63P−1が併設され、更に、P側バイアス信号配線62P−2にも、VDDシールド配線63P−2が併設されている。
【0034】
同様に、N側バイアス回路部50Nは、短絡用の縦配線60Nを有し、この縦配線60Nの両端部からN側バイアス信号VBLをそれぞれ出力する構成になっている。縦配線60Nには、VSSに保持されたVSSシールド配線61Nが併設されている。縦配線60Nの一端部は、横方向に延設された横配線であるN側バイアス信号(VBL)配線62N−1と接続され、更に、縦配線60Nの他端部が、横方向に延設された横配線であるN側バイアス信号(VBL)配線62L−2と接続されている。N側バイアス信号配線62L−1には、VSSシールド配線63N−1が併設され、更に、N側バイアス信号配線62L−2にも、VSSシールド配線63N−2が併設されている。
【0035】
P側バイアス信号配線62P−1,62P−2、及びN側バイアス信号配線62N−1,62N−2の左右には、セル構造をなす多数のソースアンプ70が接続されている。各セルのソースアンプ70は、P側バイアス信号配線62P−1,62P−2に接続されたP側ソースアンプ部70Pと、N側バイアス信号配線62N−1,62N−2に接続されたN側ソースアンプ部70Nとにより構成されている。
【0036】
P側ソースアンプ部70Pは、半導体基板内において分離して形成された第1のウェル及び第2のウェルのうち、第1のウェル内に形成されたP側増幅段(例えば、P側差動段)71Pと、第2のウェルに形成されたP側出力段72Pとを有している。P側差動段71Pは、P側バイアス信号配線62P−1に接続されてP側バイアス信号VBHにより定電流制御され、入力された階調電圧VPxを増幅する回路である。P側出力段72Pは、P側バイアス信号配線62P−2に接続されてP側バイアス信号VBHにより定電流制御され、P側差動段71Pの出力信号をソース線33へ供給する回路である。
【0037】
同様に、N側ソースアンプ部70Nは、半導体基板内において分離して形成された第3のウェル及び第4のウェルのうち、第3のウェル内に形成されたN側増幅段(例えば、N側差動段)71Nと、第4のウェルに形成されたN側出力段72Nとを有している。N側差動段71Nは、N側バイアス信号配線62N−1に接続されてN側バイアス信号VBLにより定電流制御され、入力された階調電圧VNxを増幅する回路である。N側出力段72Nは、N側バイアス信号配線62N−2に接続されてN側バイアス信号VBLにより定電流制御され、N側差動段71Nの出力信号をソース線33へ供給する回路である。
【0038】
図3は、図1の出力回路44における一部の回路構成例を示す回路図である。
この図3には、バイアス回路50と、これに接続された1つのセルのソースアンプ70とが示されている。バイアス回路50及びソースアンプ70は、横配線のVDD配線64−1,64−2及びVSS配線65−1,65−2により、電源が供給される構成になっている。
【0039】
バイアス回路50は、P側バイアス回路部50P、及びN側バイアス回路部50Nにより構成されている。P側バイアス回路部50Pは、VDD配線64−1に接続され、バイアス電流を生成するバイアス電流源51Pと、そのバイアス電流をバイアス信号VBHの形で取り出すバイアス信号取り出し部52Pとにより構成されている。バイアス信号取り出し部52Pは、バイアス電流源51Pの出力側とVSS配線65−1との間に接続され、2つのNチャネルMOSトランジスタ(以下「NMOS」という。)52Pa,52Pbからなる第1のカレントミラー回路と、この第1のカレントミラー回路とVDD配線64−1との間に接続され、第1のカレントミラー回路の出力電流に対応したバイアス信号VBHを出力するための2つのPチャネルMOSトランジスタ(以下「PMOS」という。)52Pc,52Pdからなる第2のカレントミラー回路と、この第2のカレントミラー回路の出力側とVSS配線65−1との間にダイオード接続されたNMOS52Pe等とにより構成されている。PMOS52PdとNMOS52Peとの接続点の電圧は、VPCBである。
【0040】
N側バイアス回路部50Nは、VDD配線64−2に接続され、バイアス電流を生成するバイアス電流源51Nと、そのバイアス電流をバイアス信号VBLの形で取り出すバイアス信号取り出し部52Nとにより構成されている。バイアス信号取り出し部52Nは、バイアス電流源51Nの出力側とVSS配線65−2との間に接続され、そのバイアス電流源51Nのバイアス電流に対応したバイアス信号VBLを出力するための2つのNMOS52Na,52Nbからなる第3のカレントミラー回路と、この第3のカレントミラー回路とVDD配線64−2との間に接続され、第3のカレントミラー回路の出力電流に対応した電流を流すための2つのPMOS52Nc,52Ndからなる第4のカレントミラー回路と、この第4のカレントミラー回路の出力側とVSS配線65−2との間にダイオード接続されたNMOS52Ne等とにより構成されている。PMOS52NdとNMOS52Neとの接続点の電圧は、VNCBである。
【0041】
ソースアンプ70は、P側ソースアンプ部70Pと、N側ソースアンプ部70Nとにより構成されている。P側ソースアンプ部70Pは、D/Aコンバータ43から供給される階調電圧VPxを増幅するP側差動段71Pと、その増幅された階調電圧VPxをストローブ信号STBに同期してソース線33へ出力するP側出力段71Pとにより構成されている。同様に、N側ソースアンプ部70Nは、D/Aコンバータ43から供給される階調電圧VNxを増幅するN側差動段71Nと、その増幅された階調電圧VNxをストローブ信号STBに同期してソース線33へ出力するN側出力段71Nとにより構成されている。
【0042】
P側差動段71Pは、例えば、VDD配線64−1に接続され、P側バイアス信号配線62P−1から供給されるP側バイアス信号VBHにより制御されて一定電流を流す電流源71Paと、この電流源71Paの出力側に接続され、階調電圧VPxによりオン/オフ動作する入力用のPMOS71Pbと、電流源71Paの出力側に分岐接続され、基準電圧Vth1によりオン/オフ動作する入力用のPMOS71Pcと、PMOS71Pbの出力側とVSS配線65−1との間に接続され、抵抗又は負荷MOSトランジスタ等で構成された抵抗素子71Pdと、PMOS71PcとVSS配線65−1との間に接続され、抵抗又は負荷MOSトランジスタ等で構成された抵抗素子71Pe等とを有している。
【0043】
P側出力段72Pは、VDD配線64−1に接続され、P側バイアス信号配線62P−2から供給されるP側バイアス信号VBHにより制御されて一定電流をN側出力段72Nへ流す電流源72Paと、VDD配線64−1に接続され、N側差動段71Nの出力電圧によりオン/オフ動作してN側出力段72Nに流れる一定電流を導通/遮断するPMOS72Pbと、VDD配線64−1に接続され、N側差動段71Nの出力電圧によりオン/オフ動作してそのVDD配線64−1からの電源電流を導通/遮断するPMOS72Pcと、このPMOS72Pcの出力側に接続され、ストローブ信号STBによりオン/オフ動作して増幅された階調電圧VPxをソース線33へ出力する出力スイッチ72Pd等とを有している。
【0044】
N側差動段71Nは、例えば、VDD配線64−2に接続された抵抗又は負荷MOSトランジスタ等で構成された抵抗素子71Na,71Nbと、この抵抗素子71Naに接続され、階調電圧VNxによりオン/オフ動作する入力用のNMOS71Ncと、抵抗素子71Nbに接続され、基準電圧Vth2によりオン/オフ動作する入力用のNMOS71Ndと、このNMOS71Nc,71NdとVSS配線65−2との間に接続され、N側バイアス信号配線62N−2から供給されるN側バイアス信号VBLにより制御されて一定電流を流す電流源71Ne等とを有している。
【0045】
N側出力段72Nは、VSS配線65−2に接続され、P側差動段71Pの出力電圧によりオン/オフ動作して電流源71Paから流れる一定電流を導通/遮断するPMOS72Naと、VSS配線65−2に接続され、N側バイアス信号配線6N−1から供給されるN側バイアス信号VBLにより制御され、PMOS72Pbに対して一定電流を流す電流源72Nbと、VSS配線65−2に接続され、P側差動段71Pの出力電圧によりオン/オフ動作してそのVSS配線65−2へ流れる電源電流を導通/遮断するNMOS72Ncと、このNMOS72Ncの出力側に接続され、ストローブ信号STBによりオン/オフ動作して増幅された階調電圧VNxをソース線33へ出力する出力スイッチ72Nd等とを有している。
【0046】
次に、図1及び図3の出力回路44における動作を説明する。
先ず、バイアス回路50において、バイアス電流源51P,51Nにてそれぞれ一定のバイアス電流が生成され、これらのバイアス電流に対応するP側バイアス信号VBH及びN側バイアス信号VBLが、バイアス信号取り出し部52P,52Nによりそれぞれ取り出される。取り出されたP側バイアス信号VBHは、P側縦配線60P、及びP側バイアス信号配線62P−1,62P−2を介して、各セルのソースアンプ70内のP側ソースアンプ部70Pへそれぞれ供給される。同様に、取り出されたN側バイアス信号VBLも、N側縦配線60N、及びN側バイアス信号配線62N−1,62N−2を介して、各セルのソースアンプ70内のN側ソースアンプ部70Nへそれぞれ供給される。この際、VDD配線64−1,64−1のVDD、VSS配線65−1,65−2のVSS、及びストローブ信号STBが、各セルのソースアンプ70へそれぞれ供給される。
【0047】
すると、各ソースアンプ70におけるP側ソースアンプ部70P及びN側ソースアンプ部70Nは、次のように動作する。即ち、P側ソースアンプ部70Pにおいて、バイアス信号VBHにより電流源71Pa,72Paが制御されて一定電流が流れ、P側差動段71Pにて階調電圧VPxが増幅され、この増幅された階調電圧VPxが、ストローブ信号STBに同期してP側出力段72Pの出力スイッチ72Pdから各ソース線33へ出力される。同様に、N側ソースアンプ部70Nにおいて、バイアス信号VBLにより電流源71Ne,72Nbが制御されて一定電流が流れ、N側差動段71Nにて階調電圧VNxが増幅され、この増幅された階調電圧VNxが、ストローブ信号STBに同期してN側出力段72Nの出力スイッチ72Ndから各ソース線33へ出力される。
【0048】
そして、ゲート駆動用IC35から各走査線34へ順次送られた走査信号により、全ての画素電極に所定の階調電圧VPx,VNxが印加され、フレーム周期で階調電圧VPx,VNxの書き替えが行われ、LCパネル30に所望の画像等が表示される。
【0049】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、次の(1)、(2)のような効果がある。
【0050】
(1) 従来の図6に示すようなバイアス信号VBH,VBLにおけるソースアンプ20内の縦配線23P,23Nを止め、本実施例1の図1及び図3に示すように、別ウェルの差動段71P,71Nと出力段72P,72Nとに対してそれぞれバイアス回路50からバイアス信号VBH,VBLを供給し、そのバイアス回路50内でそれぞれの同極性のバイアス信号VBH,VBLはバイアス回路50内で縦配線60P,60Nによって短絡し、且つ、この縦配線60P,60Nに対してシールド配線61P,61Nを併設してシールドを行っている。そのため、従来のソースアンプ20内の縦配線23P、23Nを止めたことで、他信号との隣接がなくなりカップリング容量を削除できる。しかも、従来の縦配線23P,23Nに代えて、横配線のバイアス信号配線62P−1,62P−2,62N−1,62N−2を増設したので、対VDD、対VSSとの容量が増加し、バイアス信号VBH,VBLがより安定化し、ソースアンプ70の出力遅延時間が従来よりも速くなる。従って、安価に安定品質のソース駆動用IC40を実現できる。
【0051】
(2) 図4−1は、本発明の実施例1のバイアス信号配線時におけるソースアンプ70のシミュレーション波形を示す図、図4−2は、図4−1に対応する従来のバイアス信号配線時におけるソースアンプ20のシミュレーション波形を示す図である。
【0052】
この図4−1及び図4−2において、バイアス信号VBH(1),VBH(2),VBH(3)とバイアス信号VBL(1),VBL(2),VBL(3)は、シミュレーション条件を変えてバイアス信号VBH,VBLをそれぞれ3回シミュレーションした結果を示している。この結果より、本実施例1では、ソースアンプ70の出力遅延時間が従来よりも速くなっていることが分かる。
【0053】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)、(b)のようなものがある。
【0054】
(a) 図2の表示装置であるTFT−LCDは、図示以外の他の回路構成に変更しても良い。又、本発明が適用される表示用駆動装置は、TFT−LCD以外の他の表示装置にも適用できる。
【0055】
(b) 図1及び図3の出力回路44は、図示以外の回路構成や、信号配線のレイアウト構成に変更しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例1における図2のTFT−LCD中の出力回路44を示す概略の構成図である。
【図2】本発明の実施例1における表示装置の1つであるTFT−LCDを示す概略の構成図である。
【図3】図1の出力回路44における一部の回路構成例を示す回路図である。
【図4−1】本発明の実施例1のバイアス信号配線時におけるソースアンプ70のシミュレーション波形を示す図である。
【図4−2】図4−1に対応する従来のバイアス信号配線時におけるソースアンプ20のシミュレーション波形を示す図である。
【図5】従来の表示装置の1つであるTFT−LCDを示す概略の構成図である。
【図6】図5中のソース駆動用IC3内の出力回路を示す概略の構成図である。
【符号の説明】
【0057】
30 LCパネル
31 TFT
32 LC
33 ソース線
34 走査線
35 ゲート駆動用IC
40 ソース駆動用IC
44 出力回路
50 バイアス回路
50P,50N バイアス回路部
51P,51N バイアス電流源
52P,52N バイアス信号取り出し部
60P,60N 縦配線
61P,61N,63P−1,63P−2,63N−1,63N−2 シールド配線
62P−1,62P−2,62N−1,62N−2 バイアス信号配線
70 ソースアンプ
70P,70N ソースアンプ部
71P,71N 差動段
72P,72N 出力段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示素子を駆動する出力回路を備えた表示用駆動装置であって、
前記出力回路は、
定電流制御信号である同極性の第1のバイアス信号及び第2のバイアス信号を含む複数のバイアス信号を生成するバイアス回路と、
半導体基板内において分離して形成された第1のウェル及び第2のウェルのうち、前記第1のウェル内に形成され、前記第1のバイアス信号により定電流制御され、入力された表示用信号を増幅する増幅段と、
前記第2のウェル内に形成され、前記第2のバイアス信号により定電流制御され、前記増幅段の出力信号を前記表示素子へ供給して駆動する出力段とを有し、
前記バイアス回路内において、前記第1のバイアス信号と前記第2のバイアス信号とは縦配線によって短絡され、且つ、前記縦配線はシールドされていることを特徴とする表示用駆動装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のバイアス信号は、それぞれ横配線により伝送され、且つ、前記各横配線はシールドされていることを特徴とする請求項1記載の表示用駆動装置。
【請求項3】
前記増幅段は、差動増幅回路による差動段により構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の表示用駆動装置。
【請求項4】
前記表示素子は、前記出力段の出力信号により駆動される薄膜トランジスタによってオン/オフ制御されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示用駆動装置。
【請求項5】
前記表示素子は、液晶表示素子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示用駆動装置。
【請求項6】
前記出力回路は、ソース駆動用の出力回路であることを特徴とする請求項5記載の表示用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−39152(P2010−39152A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201441(P2008−201441)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【出願人】(591049893)株式会社 沖マイクロデザイン (127)
【Fターム(参考)】