説明

表示装置および表示装置の製造方法

【課題】可動シャッタ方式のディスプレイにおいて、可動シャッタを、低応力で安定したアモルファスシリコン膜で形成する。
【解決手段】第1基板と、第2基板とを有する表示パネルを有し、前記表示パネルは、複数の画素を有し、前記各画素は、可動シャッタと、前記可動シャッタを駆動する駆動回路とを有し、前記可動シャッタは、アモルファスシリコンで構成される表示装置であって、前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、少なくとも2つのアモルファスシリコン膜で構成され、前記少なくとも2つのアモルファスシリコン膜の中で、互いに隣接する2つのアモルファスシリコン膜を、アモルファスシリコン膜Aと、前記アモルファスシリコン層A上に積層されるアモルファスシリコン膜Bとするとき、アモルファスシリコン膜Aと前記モルファスシリコン膜Bとは、特性値が異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置および表示装置の製造方法に係わり、特に、可動シャッタの位置を電気的に制御して画像を表示する可動シャッタの構成およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可動シャッタの位置を電気的に制御して画像表示を行うディスプレイ(以下、可動シャッタ方式のディスプレイという)が提案されている。可動シャッタ方式のディスプレイは、例えば、下記特許文献1に開示されている。
従来提案されている可動シャッタ方式のディスプレイの画素では、可動シャッタは、一対の電極間に配置され、一対の電極に印加する電圧により、可動シャッタの位置を電気的に制御して画像表示を行う。
例えば、一対の電極の一方の電極の電圧がGNDの電圧、一対の電極の他方の電極の電圧がVddの電圧の場合、可動シャッタは、一対の電極の他方の電極側に移動し、一対の電極の一方の電極の電圧がVddの電圧、一対の電極の他方の電極の電圧がGNDの電圧の場合、可動シャッタは、一対の電極の一方の電極側に高速に移動する。
そして、例えば、可動シャッタが、一対の電極の他方の電極側に移動した場合、バックライト光が透過し画素が発光状態となり、可動シャッタが、一対の電極の一方の電極側に移動した場合、バックライト光が非透過となり画素が非発光状態となる。
これにより、液晶表示パネル、プラズマディスプレイパネルのように、画像を表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−197668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来提案されている可動シャッタ方式のディスプレイでは、可動シャッタに電気信号を入力する必要あるため、可動シャッタは、不純物をドープしたアモルファスシリコン膜(以下、n+a−Si膜という)で構成される。
可動シャッタをn+a−Si膜で構成する場合、応力の強い大きなn+a−Si膜は、可動シャッタの可動部を変形させ駆動ができなくなるので、可動シャッタは、引張り応力、もしくは圧縮応力であっても低応力なn+a−Si膜が必要である。
また、圧縮応力(MPa)が、「0」近傍のn+a−Si膜は、シート抵抗値が低抵抗のものと、シート抵抗値が高抵抗のものとが混在し不安定な膜となる。
さらに、可動シャッタは、基板側から電気信号を伝達するコンタクト層としても機能するが、コンタクト層を、シート抵抗値が高抵抗なn+a−Si膜で構成すると、可動部を動作させるために高電圧が必要となるので、このコンタクト層として、シート抵抗値が低抵抗なn+a−Si膜が好ましい。
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、可動シャッタ方式のディスプレイにおいて、可動シャッタを、低応力で安定したアモルファスシリコン膜で形成することが可能となる技術を提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
(1)第1基板と、第2基板とを有する表示パネルを有し、前記表示パネルは、複数の画素を有し、前記各画素は、可動シャッタと、前記可動シャッタを駆動する駆動回路とを有し、前記可動シャッタは、アモルファスシリコンで構成される表示装置であって、前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、少なくとも2つのアモルファスシリコン膜で構成され、前記少なくとも2つのアモルファスシリコン膜の中で、互いに隣接する2つのアモルファスシリコン膜を、アモルファスシリコン膜Aと、前記アモルファスシリコン層A上に積層されるアモルファスシリコン膜Bとするとき、アモルファスシリコン膜Aと前記モルファスシリコン膜Bとは、特性値が異なっている。
(2)(1)において、前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜の2つのアモルファスシリコン膜で構成され、前記第1のアモルファスシリコン膜の屈折率は、前記第2のアモルファスシリコン膜の屈折率よりも高い。
(3)(1)において、前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜の2つのアモルファスシリコン膜で構成され、前記第1のアモルファスシリコン膜の屈折率は、前記第2のアモルファスシリコン膜の屈折率よりも低い。
【0006】
(4)(1)において、前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜の2つのアモルファスシリコンで構成され、前記第1のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値は、前記第2のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値よりも低い。
(5)(1)において、前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜の2つのアモルファスシリコン膜で構成され、前記第1のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値は、前記第2のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値よりも高い。
(6)(1)において、前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜と、前記第2のアモルファスシリコン膜上に積層される第3のアモルファスシリコン膜の3つのアモルファスシリコン膜で構成され、前記第1および第3のアモルファスシリコン膜の屈折率は、前記第2のアモルファスシリコン膜の屈折率よりも高い。
【0007】
(7)(1)において、前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜と、前記第2のアモルファスシリコン膜上に積層される第3のアモルファスシリコン膜の3つのアモルファスシリコン膜で構成され、前記第1および第3のアモルファスシリコン膜の屈折率は、前記第2のアモルファスシリコン膜の屈折率よりも低い。
(8)(1)において、前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜と、前記第2のアモルファスシリコン膜上に積層される第3のアモルファスシリコン膜の3つのアモルファスシリコン膜で構成され、前記第1および第3のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値は、前記第2のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値よりも低い。
(9)(1)において、前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜と、前記第2のアモルファスシリコン膜上に積層される第3のアモルファスシリコン膜の3つのアモルファスシリコン膜で構成され、前記第1および第3のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値は、前記第2のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値よりも高い。
(10)(1)ないし(9)の何れかにおいて、前記可動シャッタは、前記第1基板と対向する側の面上に形成されるメタル層を有する。
(11)(1)ないし(10)の何れかにおいて、前記可動シャッタは、遮蔽部と、前記遮蔽部に接続されるバネ部と、前記バネ部に接続されるアンカー部とを有し、前記アンカー部は、前記第2基板上に固定され、前記遮蔽部と前記遮蔽部とを支持する。
【0008】
(12)第1基板と、第2基板とを有する表示パネルを有し、前記表示パネルは、複数の画素を有し、前記各画素は、可動シャッタと、前記可動シャッタを駆動する駆動回路とを有し、前記可動シャッタは、アモルファスシリコンで構成される表示装置の製造方法であって、前記第1基板上に、所定形状の第1のレジスト膜を形成する工程1と、前記工程1で形成された第1のレジスト膜上に、少なくとも2つのアモルファスシリコン膜を形成する工程2と、前記少なくとも2つのアモルファスシリコン膜上に所定形状の第2のレジスト膜を形成する工程3と、前記第2のレジストをマスクにして、前記少なくとも2つのアモルファスシリコン膜をエッチングする工程4と、前記工程1で形成した第1レジスト膜を削除する工程5とを有し、前記工程2において形成される前記少なくとも2つのアモルファスシリコン膜の中で、互いに隣接する2つのアモルファスシリコン膜を、アモルファスシリコン膜Aと、前記アモルファスシリコン層A上に積層されるアモルファスシリコン膜Bとするとき、アモルファスシリコン膜Aと前記モルファスシリコン膜Bとは、異なる成膜生成条件下で形成される。
(13)(12)において、前記工程2は、前記工程1で形成された第1のレジスト膜上に、第1のアモルファスシリコン膜を形成する工程21と、前記工程21とは異なる成膜生成条件下で、第2のアモルファスシリコン膜を形成する工程22とを有する。
(14)(12)において、前記工程2は、前記工程1で形成された第1のレジスト膜上に、第1のアモルファスシリコン膜を形成する工程21と、前記工程21とは異なる成膜生成条件下で、第2のアモルファスシリコン膜を形成する工程22と、前記工程22とは異なる成膜生成条件下で、第3のアモルファスシリコン膜を形成する工程23とを有する。
(15)(12)ないし(14)の何れかにおいて、前記工程2で形成されたアモルファスシリコン膜上に、金属膜を形成する工程を有し、前記工程3において、前記アモルファスシリコン膜上に形成された金属膜上に第2のレジスト膜を形成し、前記工程4は、前記第2のレジストをマスクにして、前記工程2で形成されたアモルファスシリコン膜と金属膜をエッチングする工程である。
【発明の効果】
【0009】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
本発明によれば、可動シャッタ方式のディスプレイにおいて、可動シャッタを、低応力で安定したアモルファスシリコン膜で形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の前提となる表示装置の表示パネルの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の前提となる表示装置の表示原理を説明するための図である。
【図3】本発明の前提となる表示装置の一例の断面構造を説明するための模式図である。
【図4】図4は、本発明の前提となる表示装置の他の例の断面構造を説明するための模式図である。
【図5】図5は、図4に示す可動シャッタの一例を説明するための斜視図である。
【図6】図5に示す可動シャッタの平面図である。
【図7A】本発明の実施例の可動シャッタを説明するための平面図である。
【図7B】本発明の実施例の可動シャッタを説明するための側面図である。
【図8】本発明の実施例の可動シャッタを構成するアモルファスシリコン膜の構成を説明するための断面図である。
【図9】本発明の前提となる表示装置の可動シャッタの問題点を説明するための図である。
【図10】アモルファスシリコン膜の膜応力(MPa)と、シート抵抗値との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例の可動シャッタの製造方法を説明するための図である。
【図12】本発明の実施例の可動シャッタの製造方法を説明するための図である。
【図13】本発明の実施例の可動シャッタの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施例は、本発明の特許請求の範囲の解釈を限定するためのものではない。
[本発明の前提となる表示装置]
図1は、本発明の前提となる表示装置の表示パネルの概略構成を示すブロック図である。図1において、100は表示パネルであり、表示パネル100は、走査線駆動回路104と、映像線駆動回路102とを有する。表示パネル100には、フレキシブル基板103を介して外部から、表示データ、表示制御信号が入力される。
図1において、101は表示領域であり、表示領域101には、走査線駆動回路104から選択走査信号を供給される複数の走査線(g1,g2,g3,…)と、映像線駆動回路からデータ電圧が供給される複数の映像線(d1,d2,d3,…)が配置される。
液晶表示パネル等と同様、走査線(g1,g2,g3,…)と、映像線(d1,d2,d3,…)とが交差する位置に画素が配置される。
なお、走査線駆動回路104と、映像線駆動回路102とは、基板上に実装された半導体チップに搭載される回路で構成してもよく、あるいは、走査線駆動回路104と、映像線駆動回路102とは、基板上に形成された、半導体層が多結晶シリコン層で構成される薄膜トランジスタで構成してもよい。
【0012】
図2は、本発明の前提となる表示装置の表示原理を説明するための図である。
図2に示すように、第1基板200の表示領域101には、開口201が複数形成されており、各開口の開閉を可動シャッタ202で制御する。
なお、図2では、全開口が開いた状態であるが、可動シャッタ202が対応する開口201を覆えば、閉状態になる。例えば、可動シャッタ202が対応する開口201を開いた状態において、バックライト光が透過となり画素が発光状態となり、可動シャッタ202が対応する開口201を覆った状態において、バックライト光が非透過となり画素が非発光状態となる。これにより、画像を表示する。
図3は、本発明の前提となる表示装置の一例の断面構造を説明するための模式図であり、図4は、本発明の前提となる表示装置の他の例の断面構造を説明するための模式図である。
図3、図4において、111は第1基板(対向基板)、113は第2基板(MEMS基板)である。第1基板111上には、開口201を除いて、遮光膜112が形成される。また、図3に示すように、第1基板111側にバックライト(BL)が配置される。
第2基板113上には、TFT回路形成部114が設けられる。このTFT回路形成部114には、図示しないラッチ回路などが形成される。なお、TFT回路形成部114の各トランジスタは、半導体層が多結晶シリコン層で構成される薄膜トランジスタで形成される。
TFT回路形成部114上には、可動シャッタ118が配置される。この可動シャッタ118には、コンタクト部117を介して所定の電圧が供給される。
【0013】
図3では、TFT回路形成部114上に、電極116が設けられる。電極116には、コンタクト部115を介して、図示しないラッチ回路から出力される2つの出力電圧の中の一方の出力電圧が供給される。図3では、可動シャッタ118と、電極116との間に電界を印加することで、可動シャッタ118を、電極116側に移動させる。
図4では、TFT回路形成部114上に、電極116と電極122とが設けられる。電極116には、コンタクト部115を介して、図示しないラッチ回路から出力される2つの出力電圧の中の一方の出力電圧が供給され、電極122には、コンタクト部121を介して、図示しないラッチ回路から出力される2つの出力電圧の中の他方の出力電圧が供給される。
図4では、可動シャッタ118と、電極116との間に電界を印加することで、可動シャッタ118を、電極116側に移動させ、同様に、可動シャッタ118と電極122との間に電界を印加することで、可動シャッタ118を電極122側に移動させる。
なお、図3、図4において、119はシール材であり、120は、シール材119とTFT回路形成部114との間に配置されるコンタクト部である。また、図3、図4では、1画素のみの構造を図示している。
【0014】
図5は、図4に示す可動シャッタ118の一例を説明するための斜視図であり、図6は、図5に示す可動シャッタの平面図である。
図5、図6において、211は可動シャッタの遮蔽部、212は可動シャッタの開口部、213は第1バネ、214は第2バネ、215,216はアンカー部である。
アンカー部215は、可動シャッタの遮蔽部211と、第1バネ213を第2基板113への固定するための手段と、可動シャッタの遮蔽部211と、第1バネ213へのTFT回路形成部114からの給電箇所を兼用する。ここで、第1バネ213により、可動シャッタの遮蔽部211と、可動シャッタの開口部212は、空中に浮くように配置される。
また、第1バネ213は、電極116と電極122とを構成する。アンカー部216は、第2バネ214を第2基板113への固定するための手段と、第2バネ214へのTFT回路形成部114からの給電箇所を兼用する。
第1バネ213と第2バネ214との間に電界を印加することにより、第1バネ213が第2バネ214側に移動することにより、可動シャッタの遮蔽部211と、可動シャッタの開口部212が移動する。
図5、図6に示す可動シャッタでは、可動シャッタの遮蔽部211で、第1基板111に形成された開口201を覆うことで、画素を非点灯状態とする。
本発明の前提となる可動シャッタ方式のディスプレイでは、可動シャッタに電気信号を入力する必要があるため、可動シャッタは、不純物をドープしたアモルファスシリコン膜(以下、n+a−Si膜という)で構成される。
【0015】
[実施例]
図7は、本発明の実施例の可動シャッタを説明するための図であり、同図(a)は平面図、同図(b)は側面図である。
本願実施例の可動シャッタ118は、222のアンカー部と、220と221の接続部を設けた点で、図5に示す可動シャッタ118と相違する。
本実施例では、215,222のアンカー部のいずれかに、TFT回路形成部114から給電することにより、可動シャッタ118に給電することができる。
本実施例でも、可動シャッタは、不純物をドープしたn+a−Si膜で構成されるが、本実施例では、可動シャッタを構成するn+a−Si膜は、少なくとも2つのアモルファスシリコン膜が積層されて構成され、互いに隣接する2つのアモルファスシリコン膜を、アモルファスシリコン膜Aと、前記アモルファスシリコン層A上に積層されるアモルファスシリコン膜Bとするとき、アモルファスシリコン膜Aと前記モルファスシリコン膜Bとは、特性値が異なっていることを特徴とする。
例えば、図8(a)に示すように、本実施例では、可動シャッタは、シート抵抗値が低抵抗のn+a−Si膜10と、シート抵抗値が高抵抗なn+a−Si膜11との2つのn+a−Si膜が積層されて構成される。なお、図8において、13は反射膜を構成する金属膜である。
シート抵抗値が低抵抗なn+a−Si膜は、緻密な膜となり圧縮応力の強い膜となるので、例えば、可動シャッタを、シート抵抗値が低抵抗なn+a−Si膜で構成する場合、最悪の場合、図9に示すように、可動シャッタが変形し、可動シャッタの移動部がTFT回路形成部114に接触して、駆動ができなくなる恐れがある。
また、図10に示すように、圧縮応力(MPa)が、「0」近傍のn+a−Si膜は、シート抵抗値が低抵抗のものと、シート抵抗値が高抵抗のものとが混在し不安定な膜となる。
【0016】
これに対して、本実施例では、図8(a)に示すように、可動シャッタが、シート抵抗値が低抵抗のn+a−Si膜10と、シート抵抗値が高抵抗なn+a−Si膜11とが積層されて構成される。
図10に示すように、シート抵抗値が低抵抗のn+a−Si膜10は、圧縮応力の強い膜となり、シート抵抗値が高抵抗のn+a−Si膜11は、引張応力の強い膜となる。そこで、n+a−Si膜10の膜厚と、n+a−Si膜11の膜厚とを制御することにより、n+a−Si膜全体で、膜応力(MPa)の「0」近傍の値とすることができる。さらに、n+a−Si膜全体のシート抵抗値は、シート抵抗値が低抵抗のn+a−Si膜10で決定されるので、本実施例では、n+a−Si膜全体のシート抵抗値と、膜応力(MPa)とを個別に制御することができるので、成膜条件のウィンドウを広げることができる。
なお、図10は、n+a−Si膜の膜応力(MPa)と、シート抵抗値(Ω/□)の関係を示すグラフである。
特に、シート抵抗値が低抵抗なn+a−Si膜10を、下層とすることにより、アンカー部(215,222)の、TFT回路形成部114と接触する側のシート抵抗値を低抵抗とすることができるので、可動シャッタを動作させるために、アンカー部(215,222)に入力する電圧を低くすることができる。なお、前述の説明において、シート抵抗値は、10M(Ω/□)未満であれば低抵抗、10M(Ω/□)以上であれば高抵抗としている。
なお、シート抵抗値が低抵抗のn+a−Si膜10は、緻密な膜となり、シート抵抗値が高抵抗のn+a−Si膜11は、それほど緻密な膜ではないので、n+a−Si膜10と、n+a−Si膜11とは、屈折率が異なることになる。即ち、シート抵抗値が低抵抗のn+a−Si膜10は、緻密な膜となるので、その屈折率は、シート抵抗値が高抵抗のn+a−Si膜11の屈折率よりも高くなる。
【0017】
図11ないし図13は、本実施例の可動シャッタの製造工程を説明するための図である。
以下、図11ないし図13を用いて、本実施例の可動シャッタの製造方法について説明する。
まず始めに、第2基板113上に、TFT回路形成部114を形成する。(図11の(a))
次に、TFT回路形成部114上に、ホトリソグラフィ技術により、アンカーレジスト膜31と可動シャッタ用レジスト膜32とを形成する。(図11の(b))
次に、アンカーレジスト膜31と可動シャッタ用レジスト膜32上に、CVD法により、第1のn+a−Si膜33を形成する。(図11(c))この工程では、シート抵抗値が低抵抗で、圧縮応力の強いn+a−Si膜を形成する。
次に、第1のn+a−Si膜33上に、生成条件を変更して、CVD法により、第2のn+a−Si膜34を形成する。(図11(d))この工程では、シート抵抗値が高抵抗で、引張応力の強いn+a−Si膜を形成する。
ここで、第1のn+a−Si膜33と、第2のn+a−Si膜34とは、成膜生成条件の変更することにより、同一処理室で連続して成膜を行う。
例えば、第1のn+a−Si膜33と、第2のn+a−Si膜34とは、以下の表1に示す成膜生成条件により生成される。
【0018】
【表1】

【0019】
次に、第2のn+a−Si膜34上に、反射膜として機能する金属膜(ALSi)35を形成する。(図12(a))
次に、金属膜35上に、可動シャッタパターンを形成するためのレジスト膜36を形成する。(図12(b))
次に、レジスト膜36をマスクにして、エッチングを施し、第1のn+a−Si膜10と、第2のn+a−Si膜11と、金属膜13とで構成される可動シャッタパターンを形成する。(図13(a))
最後に、TFT回路形成部114上に、形成したアンカーレジスト膜31と可動シャッタ用レジスト膜32とを除去して、遮蔽部211、第1バネ213、アンカー部(215,222)、接続部(220,221)を有する可動シャッタを形成する。(図11の(b))
【0020】
なお、前述の説明では、可動シャッタを構成するアモルファスシリコン膜が、下層(第2基板113側)が、シート抵抗値が低抵抗なn+a−Si膜10からなり、上層が、シート抵抗値が高抵抗なn+a−Si膜11からなる2層構造の場合について説明したが、単に、可動シャッタを、膜応力(MPa)が「0」近傍の値で、安定したシート抵抗値を有するアモルファスシリコン膜で形成する場合であれば、下層(第2基板113側)が、シート抵抗値が高抵抗なn+a−Si膜11で、上層が、シート抵抗値が低抵抗なn+a−Si膜10からなる2層構造であってもよい。
また、図8の(b)に示すように、可動シャッタを構成するアモルファスシリコン膜は、第2基板113側から、シート抵抗値が低抵抗なn+a−Si膜10、シート抵抗値が高抵抗なn+a−Si膜11、シート抵抗値が低抵抗なn+a−Si膜10の3層構造でも、あるいは、図8の(c)に示すように、シート抵抗値が高い抵抗なn+a−Si膜11、シート抵抗値が低抵抗なn+a−Si膜10、シート抵抗値が高抵抗なn+a−Si膜11の3層構造であってもよい。
さらには、可動シャッタを構成するアモルファスシリコン膜は、互いに隣接する2つのn+a−Si膜の特性値が異なる、4層以上のn+a−Si膜の積層構成であってもよい。
【0021】
以上説明したように、本実施例によれば、以下のような作用・効果を得ることが可能である。
(1)可動シャッタを構成するn+a−Si膜を、多層積層化することで、n+a−Si膜全体の膜応力を制御することが可能となる。即ち、シート抵抗値が低抵抗(圧縮応力)なn+a−Si膜と、シート抵抗値が低抵抗(引張応力)を積層し、それぞれの膜厚を制御することで膜全体の応力制御が可能となる。
(2)特に、可動シャッタを構成するn+a−Si膜を2層積層化することで、下層部のシート抵抗値が低抵抗のn+a−Si膜により、TFT回路形成部114から電気信号を受けとり、上層部に、引っ張り応力のかかったシート抵抗値が高抵抗のn+a−Si膜を積層することで、膜全体では引張応力のかかったシート抵抗値が低抵抗なn+a−Si膜を成膜することが可能となる。
(3)可動シャッタを構成するn+a−Si膜を、2層積層化することにより、下層ではn+a−Si膜のシート抵抗値の低抵抗化の条件、上層ではシート抵抗値に関係なく引張応力の条件の成膜を行うことで、単膜でそれぞれの条件を満たす必要が無くなり成膜条件のウィンドウが広がる。
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0022】
10,33 低抵抗なアモルファスシリコン膜
11,34 高抵抗なアモルファスシリコン膜
13,35金属膜
31,32,36 レジスト膜
100 表示パネル
101 表示領域
102 映像線駆動回路
103 フレキシブル基板
104 走査線駆動回路
111,200 第1基板(対向基板)
112 遮光膜
113 第2基板(MEMS基板)
114 TFT回路形成部
115,117,120,121 コンタクト部
116,122 電極
118,202 可動シャッタ
119 シール材
201 開口
211 可動シャッタの遮蔽部
212 可動シャッタの開口部
213 第1バネ
214 第2バネ
215,216,222 アンカー部
220,221 接続部
d 映像線
g 走査線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、第2基板とを有する表示パネルを有し、
前記表示パネルは、複数の画素を有し、
前記各画素は、可動シャッタと、
前記可動シャッタを駆動する駆動回路とを有し、
前記可動シャッタは、アモルファスシリコンで構成される表示装置であって、
前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、少なくとも2つのアモルファスシリコン膜で構成され、
前記少なくとも2つのアモルファスシリコン膜の中で、互いに隣接する2つのアモルファスシリコン膜を、アモルファスシリコン膜Aと、前記アモルファスシリコン層A上に積層されるアモルファスシリコン膜Bとするとき、アモルファスシリコン膜Aと前記モルファスシリコン膜Bとは、特性値が異なっていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、
前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜の2つのアモルファスシリコン膜で構成され、
前記第1のアモルファスシリコン膜の屈折率は、前記第2のアモルファスシリコン膜の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、
前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜の2つのアモルファスシリコン膜で構成され、
前記第1のアモルファスシリコン膜の屈折率は、前記第2のアモルファスシリコン膜の屈折率よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、
前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜の2つのアモルファスシリコンで構成され、
前記第1のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値は、前記第2のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、
前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜の2つのアモルファスシリコン膜で構成され、
前記第1のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値は、前記第2のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、
前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜と、前記第2のアモルファスシリコン膜上に積層される第3のアモルファスシリコン膜の3つのアモルファスシリコン膜で構成され、
前記第1および第3のアモルファスシリコン膜の屈折率は、前記第2のアモルファスシリコン膜の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、
前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜と、前記第2のアモルファスシリコン膜上に積層される第3のアモルファスシリコン膜の3つのアモルファスシリコン膜で構成され、
前記第1および第3のアモルファスシリコン膜の屈折率は、前記第2のアモルファスシリコン膜の屈折率よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、
前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜と、前記第2のアモルファスシリコン膜上に積層される第3のアモルファスシリコン膜の3つのアモルファスシリコン膜で構成され、
前記第1および第3のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値は、前記第2のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記可動シャッタは、前記第2基板上に形成され、
前記可動シャッタの前記アモルファスシリコンは、前記第2基板側から、第1のアモルファスシリコン膜と、前記第1のアモルファスシリコン膜上に積層される第2のアモルファスシリコン膜と、前記第2のアモルファスシリコン膜上に積層される第3のアモルファスシリコン膜の3つのアモルファスシリコン膜で構成され、
前記第1および第3のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値は、前記第2のアモルファスシリコン膜のシート抵抗値よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
前記可動シャッタは、前記第1基板と対向する側の面上に形成されるメタル層を有することを特徴とする請求項1ないし請求項9に記載に記載の表示装置。
【請求項11】
前記可動シャッタは、遮蔽部と、
前記遮蔽部に接続されるバネ部と、
前記バネ部に接続されるアンカー部とを有し、
前記アンカー部は、前記第2基板上に固定され、前記遮蔽部と前記遮蔽部とを支持することを特徴とする請求項1ないし請求項10に記載に記載の表示装置。
【請求項12】
第1基板と、第2基板とを有する表示パネルを有し、
前記表示パネルは、複数の画素を有し、
前記各画素は、可動シャッタと、
前記可動シャッタを駆動する駆動回路とを有し、
前記可動シャッタは、アモルファスシリコンで構成される表示装置の製造方法であって、
前記第1基板上に、所定形状の第1のレジスト膜を形成する工程1と、
前記工程1で形成された第1のレジスト膜上に、少なくとも2つのアモルファスシリコン膜を形成する工程2と、
前記少なくとも2つのアモルファスシリコン膜上に所定形状の第2のレジスト膜を形成する工程3と、
前記第2のレジストをマスクにして、前記少なくとも2つのアモルファスシリコン膜をエッチングする工程4と、
前記工程1で形成した第1レジスト膜を削除する工程5とを有し、
前記工程2において形成される前記少なくとも2つのアモルファスシリコン膜の中で、互いに隣接する2つのアモルファスシリコン膜を、アモルファスシリコン膜Aと、前記アモルファスシリコン層A上に積層されるアモルファスシリコン膜Bとするとき、アモルファスシリコン膜Aと前記モルファスシリコン膜Bとは、異なる成膜生成条件下で形成されることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記工程2は、前記工程1で形成された第1のレジスト膜上に、第1のアモルファスシリコン膜を形成する工程21と、
前記工程21とは異なる成膜生成条件下で、第2のアモルファスシリコン膜を形成する工程22とを有することを特徴とする請求項12に記載の表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記工程2は、前記工程1で形成された第1のレジスト膜上に、第1のアモルファスシリコン膜を形成する工程21と、
前記工程21とは異なる成膜生成条件下で、第2のアモルファスシリコン膜を形成する工程22と、
前記工程22とは異なる成膜生成条件下で、第3のアモルファスシリコン膜を形成する工程23とを有することを特徴とする請求項12に記載の表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記工程2で形成されたアモルファスシリコン膜上に、金属膜を形成する工程を有し、
前記工程3において、前記アモルファスシリコン膜上に形成された金属膜上に第2のレジスト膜を形成し、
前記工程4は、前記第2のレジストをマスクにして、前記工程2で形成されたアモルファスシリコン膜と金属膜をエッチングする工程であることを特徴とする請求項12ないし請求項14のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−252138(P2012−252138A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124295(P2011−124295)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】