説明

表示装置および電子機器

【課題】副画素を形成するトランジスタのチャネルにエネルギーの強い光が入射することによって発生するトランジスタの特性シフトを抑える。
【解決手段】B画素20Bに隣接する例えばG画素20Gについて、B画素20Bとの間に、書込みトランジスタ23のチャネル幅よりも大きい幅の遮光体303Gを設けることで、B画素20Bで発光された青色光が画素20R,20Gに入射するのを阻止(遮光)し、書込みトランジスタ23のチャネルへの青色光の照射の影響による特性シフトを抑えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置および電子機器に関し、特に電気光学素子を含む画素が行列状(マトリクス状)に2次元配置された平面型(フラットパネル型)の表示装置および当該表示装置を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示を行う表示装置の分野では、発光素子を含む画素(以下、「画素回路」と記述する場合もある)が行列状に2次元配置されてなる平面型の表示装置が急速に普及している。平面型の表示装置の一つとして、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化するいわゆる電流駆動型の電気光学素子を画素の発光素子として用いた表示装置がある。電流駆動型の電気光学素子としては、有機薄膜に電界をかけると発光する現象を利用した有機EL(Electro Luminescence)素子が知られている。
【0003】
この有機EL素子を画素の発光素子として用いた有機EL表示装置は次のような特長を持っている。すなわち、有機EL素子は、10V以下の印加電圧で駆動できるために低消費電力である。有機EL素子は、自発光素子であるために、画素ごとに液晶にて光源からの光強度を制御することによって画像を表示する液晶表示装置に比べて、画像の視認性が高く、しかもバックライト等の光源を必要としないために軽量化および薄型化が容易である。さらに、有機EL素子の応答速度が数μsec程度と非常に高速であるために動画表示時の残像が発生しない。
【0004】
有機EL表示装置では、液晶表示装置と同様に、その駆動方式として単純(パッシブ)マトリクス方式とアクティブマトリクス方式とを採ることができる。ただし、単純マトリクス方式の表示装置は、構造が簡単であるものの、電気光学素子の発光期間が走査線(即ち、画素数)の増加によって減少するために、大型でかつ高精細な表示装置の実現が難しいなどの問題がある。
【0005】
そのため、近年、電気光学素子に流れる電流を、当該電気光学素子と同じ画素内に設けた能動素子、例えば絶縁ゲート型電界効果トランジスタによって制御するアクティブマトリクス方式の表示装置の開発が盛んに行われている。絶縁ゲート型電界効果トランジスタとしては、一般には、TFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)が用いられる。アクティブマトリクス方式の表示装置は、電気光学素子が1フレームの期間に亘って発光を持続するために、大型でかつ高精細な表示装置の実現が容易である。
【0006】
ところで、一般的に、有機EL素子のI(電流)−V(電圧)特性は、時間が経過すると劣化(いわゆる、経時劣化)することが知られている。有機EL素子を電流駆動するトランジスタ(以下、「駆動トランジスタ」と記述する)として特にNチャネル型のTFTを用いた画素回路では、有機EL素子のI−V特性が経時劣化すると、駆動トランジスタのゲート−ソース間電圧Vgsが変化する。その結果、有機EL素子の発光輝度が変化する。これは、有機EL素子が駆動トランジスタのソース電極側に接続されることに起因する。
【0007】
このことについてより具体的に説明する。駆動トランジスタのソース電圧は、駆動トランジスタと有機EL素子の動作点で決まる。そして、有機EL素子のI−V特性が劣化すると、駆動トランジスタと有機EL素子の動作点が変動してしまうために、駆動トランジスタのゲート電極に同じ電圧を印加したとしても駆動トランジスタのソース電圧が変化する。これにより、駆動トランジスタのソース−ゲート間電圧Vgsが変化するために、駆動トランジスタに流れる電流値が変化する。その結果、有機EL素子に流れる電流値も変化するために、有機EL素子の発光輝度が変化することになる。
【0008】
また、特にポリシリコンTFTを用いた画素回路では、有機EL素子のI−V特性の経時劣化に加えて、駆動トランジスタのトランジスタ特性が経時的に変化したり、製造プロセスのばらつきによってトランジスタ特性が画素ごとに異なったりする。すなわち、画素個々に駆動トランジスタのトランジスタ特性にばらつきがある。トランジスタ特性としては、駆動トランジスタの閾値電圧Vthや、駆動トランジスタのチャネルを構成する半導体薄膜の移動度μ(以下、単に「駆動トランジスタの移動度μ」と記述する)等が挙げられる。
【0009】
駆動トランジスタのトランジスタ特性が画素ごとに異なると、画素ごとに駆動トランジスタに流れる電流値にばらつきが生じるために、駆動トランジスタのゲート電極に画素間で同じ電圧を印加しても、有機EL素子の発光輝度に画素間でばらつきが生じる。その結果、画面のユニフォーミティ(一様性)が損なわれる。
【0010】
そこで、有機EL素子のI−V特性の経時劣化や、駆動トランジスタのトランジスタ特性の経時変化等の影響を受けることなく、有機EL素子の発光輝度を一定に維持するために、各種の補正(補償)機能を画素回路に持たせる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
補正機能としては、有機EL素子のI−V特性の変動に対する補償機能、駆動トランジスタの閾値電圧Vthの変動に対する補正機能、駆動トランジスタの移動度μの変動に対する補正機能などが挙げられる。以下、駆動トランジスタの閾値電圧Vthの変動に対する補正を「閾値補正」と呼び、駆動トランジスタの移動度μの変動に対する補正を「移動度補正」と呼ぶこととする。
【0012】
このように、画素回路の各々に、各種の補正機能を持たせることで、有機EL素子のI−V特性の経時劣化や、駆動トランジスタのトランジスタ特性の経時変化の影響を受けることなく、有機EL素子の発光輝度を一定に保つことができる。その結果、有機EL表示装置の表示品質を向上できる。
【0013】
【特許文献1】特開2007−310311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、画素内のトランジスタにある一定の電圧が印加されている状態で、画素内のトランジスタのチャネルにエネルギーの強い光が入射すると、トランジスタの閾値電圧が負側にシフトする。具体的には、相対的に波長が短く、エネルギーが強い青色光がトランジスタに入射すると、図26に示すように、トランジスタの特性シフトは光が入射しないときと比べて非常に大きなものとなる。
【0015】
ここで、一例として、R(赤)G(緑)B(青)の3つの副画素を単位として、これら副画素がBの副画素を真ん中にして配置されている場合の各副画素について考える。Bの副画素は青色光の影響を受けるのは自発光時のみである。
【0016】
しかしながら、RGの副画素はBの副画素に隣接しているため、自発光でなくても隣接のBの副画素の発光の影響を受けることとなる。自発光の影響のみならず隣接の副画素の発光の影響を受けるとなると、補正処理等において電流変化を補正するのが非常に難しくなる。
【0017】
ここでは、RGBのカラーコーディングにおけるBの副画素の場合を例に挙げたが、他のカラーコーディングにおいて、最も波長が短く、エネルギーが強い発光を得る副画素についても同様のことが言える。
【0018】
そこで、本発明は、副画素を形成するトランジスタのチャネルにエネルギーの強い光が入射することによって発生するトランジスタの特性シフトを抑えることが可能な表示装置および当該表示装置を有する電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明は、
カラー画像を形成する単位となる1つの画素を構成する複数の副画素が隣接して配置された表示装置において、
前記複数の副画素のうち、少なくとも最も波長が短い発光を得る第1副画素に隣接する第2副画素は、
当該第2副画素を形成するトランジスタのチャネル長またはチャネル幅よりも長い幅をもって少なくとも前記第1副画素との間に配置された遮光体を有する
構成となっている。
【0020】
相対的に波長が短い発光はエネルギーが強い。第1副画素から波長が短く、エネルギーの強い光が、電圧が印加されている隣接する第2副画素内のトランジスタのチャネルに入射すると、当該トランジスタの特性シフトが生ずる。ここで、第2副画素が第1副画素との間に配置された遮光体を有することで、当該遮光体は第1副画素で発光した光が第2副画素に入射するのを阻止するように作用する。これにより、トランジスタのチャネルにエネルギーの強い光が入射することによって発生するトランジスタの特性シフトを抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、トランジスタのチャネルにエネルギーの強い光が入射することによって発生するトランジスタの特性シフトを抑えることができるために、電気光学素子に流れる電流の低下や、スジや輝度ムラといった画質不良の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」と記述する)について図面を用いて詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施形態(画素の遮光レイアウト)
1−1.実施例1
1−2.実施例2
2.変形例
3.適用例(電子機器)
【0023】
<1.実施形態>
[システム構成]
図1は、本発明が適用されるアクティブマトリクス型表示装置の構成の概略を示すシステム構成図である。ここでは、一例として、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子、例えば有機EL素子を画素(画素回路)の発光素子として用いたアクティブマトリクス型有機EL表示装置の場合を例に挙げて説明するものとする。
【0024】
図1に示すように、本適用例に係る有機EL表示装置10は、発光素子を含む複数の画素20と、当該画素20が行列状に2次元配置された画素アレイ部30と、当該画素アレイ部30の周辺に配置された駆動部とを有する構成となっている。駆動部は、画素アレイ部30の各画素20を発光駆動する。
【0025】
画素20の駆動部としては、例えば、書込み走査回路40および電源供給走査回路50からなる走査駆動系と、信号出力回路60からなる信号供給系とが設けられている。本適用例に係る有機EL表示装置10の場合には、画素アレイ部30が形成された表示パネル70上に信号出力回路60が設けられているのに対して、走査駆動系である書込み走査回路40および電源供給走査回路50はそれぞれ、表示パネル(基板)70の外部に設けられている。
【0026】
ここで、有機EL表示装置10が白黒表示対応の場合は、白黒画像を形成する単位となる1つの画素が画素20に相当する。一方、有機EL表示装置10がカラー表示対応の場合は、カラー画像を形成する単位となる1つの画素は複数の副画素(サブピクセル)から構成され、この副画素が画素20に相当する。より具体的には、カラー表示用の表示装置では、1つの画素は、例えば、赤色(R)光を発光する副画素、緑色(G)光を発光する副画素、青色(B)光を発光する副画素の3つの副画素から構成される。
【0027】
ただし、1つの画素としては、RGBの3原色の副画素の組み合わせに限られるものではない。すなわち、3原色の副画素にさらに1色あるいは複数色の副画素を加えて1つの画素を構成するようにすることも可能である。より具体的には、例えば、輝度向上のために白色(W)光を発光する副画素を加えて1つの画素を構成したり、色再現範囲を拡大するために補色光を発光する少なくとも1つの副画素を加えて1つの画素を構成したりすることも可能である。
【0028】
画素アレイ部30には、m行n列の画素20の配列に対して、行方向(画素行の画素の配列方向)に沿って走査線31−1〜31−mと電源供給線32−1〜32−mとが画素行ごとに配線されている。さらに、列方向(画素列の画素の配列方向)に沿って信号線33−1〜33−nが画素列ごとに配線されている。
【0029】
走査線31−1〜31−mは、書込み走査回路40の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。電源供給線32−1〜32−mは、電源供給走査回路50の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。信号線33−1〜33−nは、信号出力回路60の対応する列の出力端にそれぞれ接続されている。
【0030】
画素アレイ部30は、通常、ガラス基板などの透明絶縁基板上に形成されている。これにより、有機EL表示装置10は、平面型(フラット型)のパネル構造となっている。画素アレイ部30の各画素20の駆動回路は、アモルファスシリコンTFTまたは低温ポリシリコンTFTを用いて形成することができる。低温ポリシリコンTFTを用いる場合には、書込み走査回路40および電源供給走査回路50についても、表示パネル70上に実装することができる。
【0031】
書込み走査回路40は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフト(転送)するシフトレジスタ等によって構成されている。この書込み走査回路40は、画素アレイ部30の各画素20への映像信号の書込みに際して、走査線31−1〜31−mに順次書込み走査信号WS(WS1〜WSm)を供給することによって画素アレイ部30の各画素20を行単位で順番に走査する(線順次走査)。
【0032】
電源供給走査回路50は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフトするシフトレジスタ等によって構成されている。この電源供給走査回路50は、書込み走査回路40による線順次走査に同期して、第1電源電位Vccpと当該第1電源電位Vccpよりも低い第2電源電位Viniで切り替わる電源電位DS(DS1〜DSm)を電源供給線32−1〜32−mに供給する。この電源電位DSのVccp/Viniの切替えにより、画素20の発光/非発光の制御が行なわれる。
【0033】
信号出力回路60は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧(以下、単に「信号電圧」と記述する場合もある)Vsigと基準電位Vofsのいずれか一方を適宜選択して出力する。ここで、信号出力回路60から選択的に出力される基準電位Vofsは、映像信号の信号電圧Vsigの基準となる電位(例えば、映像信号の黒レベルに相当する電位)である。
【0034】
信号出力回路60としては、例えば、周知の時分割駆動方式の回路構成を用いることができる。時分割駆動方式は、セレクタ方式とも呼ばれ、信号供給源であるドライバ(図示せず)の1つの出力端に対して複数の信号線を単位(組)として割り当る。そして、この複数の信号線を時分割にて順次選択する一方、その選択した信号線に対してドライバの各出力端ごとに時系列で出力される映像信号を時分割で振り分けて供給することによって各信号線を駆動する方式である。
【0035】
一例として、カラー表示対応の場合を例に挙げると、隣り合うR,G,Bの3つの画素列を単位とし、ドライバからは1水平期間内にR,G,Bの各映像信号が時系列で信号出力回路60に入力するようにする。信号出力回路60は、R,G,Bの3つの画素列に対応して設けられたセレクタ(選択スイッチ)によって構成され、当該セレクタが時分割にて順次オン動作を行うことで、R,G,Bの各映像信号を対応する信号線に対して時分割で書き込む。
【0036】
ここでは、R,G,Bの3つの画素列(信号線)を単位としたが、これに限られるものではない。そして、この時分割駆動方式(セレクタ方式)を採用することで、時分割数をx(xは2以上の整数)とすると、ドライバの出力数および当該ドライバと信号出力回路60、ひいては表示パネル70との間の配線数を、信号線の本数の1/xに削減できる利点がある。
【0037】
信号出力回路60から選択的に出力される信号電圧Vsig/基準電位Vofsは、信号線33−1〜33−nを介して画素アレイ部30の各画素20に対して行単位で書き込まれる。すなわち、信号出力回路60は、信号電圧Vsigを行(ライン)単位で書き込む線順次書込みの駆動形態を採っている。
【0038】
(画素回路)
図2は、本適用例に係る有機EL表示装置10に用いられる画素(画素回路)20の具体的な構成例を示す回路図である。
【0039】
図2に示すように、画素20は、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子、例えば有機EL素子21と、当該有機EL素子21を駆動する駆動回路とによって構成されている。有機EL素子21は、全ての画素20に対して共通に配線(いわゆる、ベタ配線)された共通電源供給線34にカソード電極が接続されている。
【0040】
有機EL素子21を駆動する駆動回路は、駆動トランジスタ22、書込みトランジスタ(サンプリングトランジスタ)23および保持容量24を有する構成となっている。ここでは、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23としてNチャネル型のTFTを用いている。ただし、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23の導電型の組み合わせは一例に過ぎず、これらの組み合わせに限られるものではない。
【0041】
なお、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23としてNチャネル型のTFTを用いると、アモルファスシリコン(a−Si)プロセスを用いることができる。a−Siプロセスを用いることで、TFTを作成する基板の低コスト化、ひいては本有機EL表示装置10の低コスト化を図ることが可能になる。また、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23を同じ導電型の組み合わせにすると、両トランジスタ22,23を同じプロセスで作成することができるため低コスト化に寄与できる。
【0042】
駆動トランジスタ22は、一方の電極(ソース/ドレイン電極)が有機EL素子21のアノード電極に接続され、他方の電極(ドレイン/ソース電極)が電源供給線32(32−1〜32−m)に接続されている。
【0043】
書込みトランジスタ23は、ゲート電極が走査線31(31−1〜31−m)に接続され、一方の電極(ソース/ドレイン電極)が信号線33(33−1〜33−n)に接続され、他方の電極(ドレイン/ソース電極)が駆動トランジスタ22のゲート電極に接続されている。
【0044】
駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23において、一方の電極とは、ソース/ドレイン領域に電気的に接続された金属配線を言い、他方の電極とは、ドレイン/ソース領域に電気的に接続された金属配線を言う。また、一方の電極と他方の電極との電位関係によって一方の電極がソース電極ともなればドレイン電極ともなり、他方の電極がドレイン電極ともなればソース電極ともなる。
【0045】
保持容量24は、一方の電極が駆動トランジスタ22のゲート電極に接続され、他方の電極が駆動トランジスタ22の他方の電極および有機EL素子21のアノード電極に接続されている。
【0046】
なお、有機EL素子21の駆動回路としては、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23の2つのトランジスタと保持容量24の1つの容量素子とからなる回路構成のものに限られるものではない。例えば、一方の電極が有機EL素子21のアノード電極に、他方の電極が固定電位にそれぞれ接続されることで、有機EL素子21の容量不足分を補う補助容量を必要に応じて設けた回路構成を採ることも可能である。
【0047】
上記構成の画素20において、書込みトランジスタ23は、書込み走査回路40から走査線31を通してゲート電極に印加されるHighアクティブの書込み走査信号WSに応答して導通状態となる。これにより、書込みトランジスタ23は、信号線33を通して信号出力回路60から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧Vsigまたは基準電位Vofsをサンプリングして画素20内に書き込む。この書き込まれた信号電圧Vsigまたは基準電位Vofsは、駆動トランジスタ22のゲート電極に印加されるとともに保持容量24に保持される。
【0048】
駆動トランジスタ22は、電源供給線32(32−1〜32−m)の電位(以下、「電源電位」と記述する場合もある)DSが第1電源電位Vccpにあるときには、一方の電極がドレイン電極、他方の電極がソース電極となって飽和領域で動作する。これにより、駆動トランジスタ22は、電源供給線32から電流の供給を受けて有機EL素子21を電流駆動にて発光駆動する。より具体的には、駆動トランジスタ22は、飽和領域で動作することにより、保持容量24に保持されている信号電圧Vsigの電圧値に応じた電流値の駆動電流を有機EL素子21に供給し、当該有機EL素子21を電流駆動することによって発光させる。
【0049】
駆動トランジスタ22はさらに、電源電位DSが第1電源電位Vccpから第2電源電位Viniに切り替わったときは、一方の電極がソース電極、他方の電極がドレイン電極となってスイッチングトランジスタとして動作する。そして、駆動トランジスタ22は、スイッチング動作によって有機EL素子21への駆動電流の供給を停止し、有機EL素子21を非発光状態にする。すなわち、駆動トランジスタ22は、有機EL素子21の発光/非発光を制御するトランジスタとしての機能をも併せ持っている。
【0050】
このようにして、駆動トランジスタ22のスイッチング動作により、有機EL素子21が非発光状態となる期間(非発光期間)を設け、有機EL素子21の発光期間と非発光期間との割合を制御する(いわゆる、デューティ制御)。このデューティ制御により、1フレーム期間に亘って画素20が発光することに伴う残像ボケを低減できるために、特に動画の画品位をより優れたものとすることができる。
【0051】
電源供給走査回路50から電源供給線32を通して選択的に供給される第1,第2電源電位Vccp,Viniのうち、第1電源電位Vccpは有機EL素子21を発光駆動する駆動電流を駆動トランジスタ22に供給するための電源電位である。また、第2電源電位Viniは、有機EL素子21に対して逆バイアスを掛けるための電源電位である。この第2電源電位Viniは、信号電圧の基準となる基準電位Vofsよりも低い電位、例えば、駆動トランジスタ22の閾値電圧をVthとするときVofs−Vthよりも低い電位、好ましくはVofs−Vthよりも十分に低い電位に設定される。
【0052】
(画素構造)
図3は、画素20の断面構造の一例を示す断面図である。図3に示すように、画素20は、駆動トランジスタ22等を含む駆動回路が形成されたガラス基板201上に形成されている。具体的には、ガラス基板201上に絶縁膜202、絶縁平坦化膜203およびウインド絶縁膜204がその順に形成され、当該ウインド絶縁膜204の凹部204Aに有機EL素子21が設けられた構成となっている。ここでは、駆動回路の各構成素子のうち、駆動トランジスタ22のみを図示し、他の構成素子については省略している。
【0053】
有機EL素子21は、金属等からなるアノード電極205と、当該アノード電極205上に形成された有機層206と、当該有機層206上に全画素共通に形成された透明導電膜等からなるカソード電極207とから構成されている。アノード電極205は、上記ウインド絶縁膜204の凹部204Aの底部に形成されている。
【0054】
この有機EL素子21において、有機層206は、アノード電極205上にホール輸送層/ホール注入層2061、発光層2062、電子輸送層2063および電子注入層(図示せず)が順次堆積されることによって形成される。そして、図2の駆動トランジスタ22による電流駆動の下に、駆動トランジスタ22からアノード電極205を通して有機層206に電流が流れることで、当該有機層206内の発光層2062において電子と正孔が再結合する際に発光するようになっている。
【0055】
駆動トランジスタ22は、ゲート電極221と、半導体層222のゲート電極221と対向する部分のチャネル形成領域225と、半導体層222のチャネル形成領域225の両側のドレイン/ソース領域223,224とから構成されている。ソース/ドレイン領域223は、コンタクトホールを介して有機EL素子21のアノード電極205と電気的に接続されている。
【0056】
そして、図3に示すように、駆動トランジスタ22を含む駆動回路が形成されたガラス基板201上に、絶縁膜202、絶縁平坦化膜203およびウインド絶縁膜204を介して有機EL素子21が画素単位で形成される。そして、パッシベーション膜208を介して封止基板209が接着剤210によって接合され、当該封止基板209によって有機EL素子21が封止されることによって表示パネル70が形成される。
【0057】
[有機EL表示装置の回路動作]
次に、上記構成の画素20が行列状に2次元配置されてなる有機EL表示装置10の回路動作について、図4のタイミング波形図を基に図5および図6の動作説明図を用いて説明する。
【0058】
なお、図5および図6の動作説明図では、図面の簡略化のために、書込みトランジスタ23をスイッチのシンボルで図示している。また、周知の通り、有機EL素子21は等価容量(寄生容量)Celを持っている。したがって、ここでは、等価容量Celについても図示している。
【0059】
図4のタイミング波形図には、走査線31(31−1〜31−m)の電位(書込み走査信号)WSの変化、電源供給線32(32−1〜32−m)の電位(電源電位)DSの変化、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgおよびソース電圧Vsの変化を示している。
【0060】
〔前フレームの発光期間〕
図4のタイミング波形図において、時刻t1以前は、前のフレーム(フィールド)における有機EL素子21の発光期間となる。この前フレームの発光期間では、電源供給線32の電位DSが第1電源電位(以下、「高電位」と記述する)Vccpにあり、また、書込みトランジスタ23が非導通状態にある。
【0061】
このとき、駆動トランジスタ22は飽和領域で動作するように設計されている。これにより、図5(A)に示すように、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsに応じた駆動電流(ドレイン−ソース間電流)Idsが、電源供給線32から駆動トランジスタ22を通して有機EL素子21に供給される。よって、有機EL素子21が駆動電流Idsの電流値に応じた輝度で発光する。
【0062】
〔閾値補正準備期間〕
時刻t1になると、線順次走査の新しいフレーム(現フレーム)に入る。そして、図5(B)に示すように、電源供給線32の電位DSが高電位Vccpから、信号線33の基準電位Vofsに対してVofs−Vthよりも十分に低い第2電源電位(以下、「低電位」と記述する)Viniに切り替わる。
【0063】
ここで、有機EL素子21の閾値電圧をVthel、共通電源供給線34の電位(カソード電位)をVcathとする。このとき、低電位ViniをVini<Vthel+Vcathとすると、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsが低電位Viniにほぼ等しくなるために、有機EL素子21は逆バイアス状態となる。したがって、有機EL素子21は消光する。
【0064】
次に、時刻t2で走査線31の電位WSが低電位側から高電位側に遷移することで、図5(C)に示すように、書込みトランジスタ23が導通状態となる。このとき、信号出力回路60から信号線33に対して基準電位Vofsが供給されているために、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgが基準電位Vofsになる。また、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsは、基準電位Vofsよりも十分に低い電位Viniにある。
【0065】
このとき、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧VgsはVofs−Viniとなる。ここで、Vofs−Viniが駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthよりも大きくないと、後述する閾値補正処理を行うことができないために、Vofs−Vini>Vthなる電位関係に設定する必要がある。
【0066】
このように、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgを基準電位Vofsに、ソース電圧Vsを低電位Viniにそれぞれ固定して(確定させて)初期化する処理が、後述する閾値補正処理を行う前段階の準備(閾値補正準備)の処理である。したがって、基準電位Vofsおよび低電位Viniは、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgおよびソース電圧Vsの各初期化電位となる。
【0067】
〔閾値補正期間〕
次に、時刻t3で、図5(D)に示すように、電源供給線32の電位DSが低電位Viniから高電位Vccpに切り替わると、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgが保たれた状態で閾値補正処理が開始される。すなわち、ゲート電圧Vgから駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthを減じた電位に向けて駆動トランジスタ22のソース電圧Vsが上昇を開始する。
【0068】
ここでは、駆動トランジスタ22のゲート電極の初期化電位Vofsを基準として、当該初期化電位Vofsから駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthを減じた電位に向けてソース電圧Vsを変化させる処理を閾値補正処理と呼んでいる。この閾値補正処理が進むと、やがて、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsが駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに収束する。この閾値電圧Vthに相当する電圧は保持容量24に保持される。
【0069】
なお、閾値補正処理を行う期間(閾値補正期間)において、電流が専ら保持容量24側に流れ、有機EL素子21側には流れないようにする必要がある。そのために、有機EL素子21がカットオフ状態となるように共通電源供給線34の電位Vcathを設定しておくこととする。
【0070】
次に、時刻t4で走査線31の電位WSが低電位側に遷移することで、図6(A)に示すように、書込みトランジスタ23が非導通状態となる。このとき、駆動トランジスタ22のゲート電極が信号線33から電気的に切り離されることによってフローティング状態になる。しかし、ゲート−ソース間電圧Vgsが駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに等しいために、当該駆動トランジスタ22はカットオフ状態にある。したがって、駆動トランジスタ22に流れるドレイン−ソース間電流Idsは非常に小さい。
【0071】
〔信号書込み&移動度補正期間〕
次に、時刻t5で、図6(B)に示すように、信号線33の電位が基準電位Vofsから映像信号の信号電圧Vsigに切り替わる。続いて、時刻t6で、走査線31の電位WSが高電位側に遷移することで、図6(C)に示すように、書込みトランジスタ23が導通状態になって映像信号の信号電圧Vsigをサンプリングし、当該信号電圧Vsigを画素20内に書き込む。
【0072】
この書込みトランジスタ23による信号電圧Vsigの書込みにより、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgが信号電圧Vsigとなる。そして、映像信号の信号電圧Vsigによる駆動トランジスタ22の駆動の際に、当該駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが保持容量24に保持された閾値電圧Vthに相当する電圧とキャンセルされる。この閾値キャンセルの原理の詳細については後述する。
【0073】
このとき、有機EL素子21はカットオフ状態(ハイインピーダンス状態)にある。したがって、映像信号の信号電圧Vsigに応じて電源供給線32から駆動トランジスタ22に流れる電流(ドレイン−ソース間電流Ids)は有機EL素子21の等価容量Celに流れ込む。このドレイン−ソース間電流Idsにより、有機EL素子21の等価容量Celの充電が開始される。
【0074】
この等価容量Celの充電により、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsが時間の経過と共に上昇していく。このとき既に、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthの画素ごとのばらつきがキャンセルされており、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsは当該駆動トランジスタ22の移動度μに依存したものとなる。
【0075】
ここで、映像信号の信号電圧Vsigに対する保持容量24の保持電圧Vgsの比率が1(理想値)であると仮定する。この信号電圧Vsigに対する保持電圧Vgsの比率を書込みゲインと呼ぶ場合もある。すると、駆動トランジスタ22のソース電圧VsがVofs−Vth+ΔVの電位まで上昇することで、駆動トランジスタ22のゲート‐ソース間電圧VgsはVsig−Vofs+Vth−ΔVとなる。
【0076】
すなわち、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsの上昇分ΔVは、保持容量24に保持された電圧(Vsig−Vofs+Vth)から差し引かれるように作用する。換言すれば、ソース電圧Vsの上昇分ΔVは、保持容量24の充電電荷を放電するように作用し、負帰還がかけられたことになる。したがって、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsの上昇分ΔVは負帰還の帰還量となる。
【0077】
このように、駆動トランジスタ22に流れるドレイン−ソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVでゲート‐ソース間電圧Vgsに負帰還をかけることで、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsの移動度μに対する依存性を打ち消すことができる。この移動度μに対する依存性を打ち消す処理が、駆動トランジスタ22の移動度μの画素ごとのばらつきを補正する移動度補正処理である。
【0078】
より具体的には、駆動トランジスタ22のゲート電極に書き込まれる映像信号の信号振幅Vin(=Vsig−Vofs)が高いほどドレイン−ソース間電流Idsが大きくなるために、負帰還の帰還量ΔVの絶対値も大きくなる。したがって、発光輝度レベルに応じた移動度補正処理が行われる。
【0079】
また、映像信号の信号振幅Vinを一定とした場合、駆動トランジスタ22の移動度μが大きいほど負帰還の帰還量ΔVの絶対値も大きくなるために、画素ごとの移動度μのばらつきを取り除くことができる。したがって、負帰還の帰還量ΔVは移動度補正の補正量とも言える。移動度補正の原理の詳細については後述する。
【0080】
〔発光期間〕
次に、時刻t7で走査線31の電位WSが低電位側に遷移することで、図6(D)に示すように、書込みトランジスタ23が非導通状態となる。これにより、駆動トランジスタ22のゲート電極は、信号線33から電気的に切り離されるためにフローティング状態になる。
【0081】
ここで、駆動トランジスタ22のゲート電極がフローティング状態にあるときは、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間に保持容量24が接続されていることにより、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsの変動に連動して(追従して)ゲート電圧Vgも変動する。このように、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgがソース電圧Vsの変動に連動して変動する動作を、本明細書では保持容量24によるブートストラップ動作と呼ぶこととする。
【0082】
駆動トランジスタ22のゲート電極がフローティング状態になり、それと同時に、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsが有機EL素子21に流れ始めることにより、当該ドレイン−ソース間電流Idsに応じて有機EL素子21のアノード電位が上昇する。
【0083】
そして、有機EL素子21のアノード電位がVthel+Vcathを越えると、有機EL素子21に駆動電流が流れ始めるため有機EL素子21が発光を開始する。また、有機EL素子21のアノード電位の上昇は、即ち駆動トランジスタ22のソース電圧Vsの上昇に他ならない。駆動トランジスタ22のソース電圧Vsが上昇すると、保持容量24のブートストラップ動作により、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgも連動して上昇する。
【0084】
このとき、ブートストラップゲインが1(理想値)であると仮定した場合、ゲート電圧Vgの上昇量はソース電圧Vsの上昇量に等しくなる。故に、発光期間中駆動トランジスタ22のゲート‐ソース間電圧VgsはVsig−Vofs+Vth−ΔVで一定に保持される。そして、時刻t8で信号線33の電位が映像信号の信号電圧Vsigから基準電位Vofsに切り替わる。
【0085】
以上説明した一連の回路動作において、閾値補正準備、閾値補正、信号電圧Vsigの書込み(信号書込み)および移動度補正の各処理動作は、1水平走査期間(1H)において実行される。また、信号書込みおよび移動度補正の各処理動作は、時刻t6−t7の期間において並行して実行される。
【0086】
なお、ここでは、閾値補正処理を1回だけ実行する駆動法を採る場合を例に挙げて説明したが、この駆動法は一例に過ぎず、この駆動法に限られるものではない。例えば、閾値補正処理を移動度補正および信号書込み処理と共に行う1H期間に加えて、当該1H期間に先行する複数の水平走査期間に分割して複数回実行する、いわゆる分割閾値補正を行う駆動法を採ることも可能である。
【0087】
この分割閾値補正の駆動法を採用することにより、高精細化に伴う多画素化によって1水平走査期間に割り当てられる時間が短くなったとしても、閾値補正期間として複数の水平走査期間に亘って十分な時間を確保することができるために、閾値補正処理を確実に行うことができる。
【0088】
(閾値キャンセルの原理)
ここで、駆動トランジスタ22の閾値補正(即ち、閾値キャンセル)の原理について説明する。閾値補正処理は、先述したように、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgの初期化電位Vofsを基準として当該電位Vofsから駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsを変化させる処理である。
【0089】
駆動トランジスタ22は、飽和領域で動作するように設計されているために定電流源として動作する。定電流源として動作することで、有機EL素子21に対して駆動トランジスタ22から、次式(1)で与えられる一定のドレイン−ソース間電流(駆動電流)Idsが供給される。
Ids=(1/2)・μ(W/L)Cox(Vgs−Vth)2 ……(1)
ここで、Wは駆動トランジスタ22のチャネル幅、Lはチャネル長、Coxは単位面積当たりのゲート容量である。
【0090】
図7に、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Ids対ゲート−ソース間電圧Vgsの特性を示す。
【0091】
この特性図に示すように、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthの画素ごとのばらつきに対する補正を行わないと、閾値電圧VthがVth1のとき、ゲート−ソース間電圧Vgsに対応するドレイン−ソース間電流IdsがIds1になる。
【0092】
これに対して、閾値電圧VthがVth2(Vth2>Vth1)のとき、同じゲート−ソース間電圧Vgsに対応するドレイン−ソース間電流IdsがIds2(Ids2<Ids)になる。すなわち、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが変動すると、当該駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsが一定であってもドレイン−ソース間電流Idsが変動する。
【0093】
一方、上記構成の画素(画素回路)20では、先述したように、発光時の駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧VgsがVsig−Vofs+Vth−ΔVであるために、これを式(1)に代入すると、ドレイン−ソース間電流Idsは、次式(2)で表される。
Ids=(1/2)・μ(W/L)Cox(Vsig−Vofs−ΔV)2
……(2)
【0094】
すなわち、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthの項がキャンセルされており、駆動トランジスタ22から有機EL素子21に供給されるドレイン−ソース間電流Idsは、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに依存しない。その結果、駆動トランジスタ22の製造プロセスのばらつきや経時変化により、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが画素ごとに変動したとしても、ドレイン−ソース間電流Idsが変動しないために、有機EL素子21の発光輝度を一定に保つことができる。
【0095】
(移動度補正の原理)
続いて、駆動トランジスタ22の移動度補正の原理について説明する。移動度補正処理は、先述したように、駆動トランジスタ22に流れるドレイン−ソース間電流Idsに応じた補正量ΔVで駆動トランジスタ22のゲート−ソース間の電位差に負帰還をかける処理である。この移動度補正処理により、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsの移動度μに対する依存性を打ち消すことができる。
【0096】
図8に、駆動トランジスタ22の移動度μが相対的に大きい画素Aと、駆動トランジスタ22の移動度μが相対的に小さい画素Bとを比較した状態で特性カーブを示す。駆動トランジスタ22をポリシリコン薄膜トランジスタなどで構成した場合、画素Aや画素Bのように、画素間で移動度μがばらつくことは避けられない。
【0097】
画素Aと画素Bで移動度μにばらつきがある状態で、駆動トランジスタ22のゲート電極に例えば両画素A,Bに対して同レベルの信号振幅Vin(=Vsig−Vofs)を書き込んだ場合を考える。この場合、移動度μの補正を何ら行わないと、移動度μの大きい画素Aに流れるドレイン−ソース間電流Ids1′と移動度μの小さい画素Bに流れるドレイン−ソース間電流Ids2′との間には大きな差が生じてしまう。このように、移動度μの画素ごとのばらつきに起因してドレイン−ソース間電流Idsに画素間で大きな差が生じると、画面のユニフォーミティが損なわれる。
【0098】
ここで、先述した式(1)のトランジスタ特性式から明らかなように、移動度μが大きいとドレイン−ソース間電流Idsが大きくなる。したがって、負帰還における帰還量ΔVは移動度μが大きくなるほど大きくなる。図8に示すように、移動度μの大きな画素Aの帰還量ΔV1は、移動度の小さな画素Bの帰還量ΔV2に比べて大きい。
【0099】
そこで、移動度補正処理によって駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVでゲート−ソース間電圧Vgsに負帰還をかけることにより、移動度μが大きいほど負帰還が大きくかかることになる。その結果、移動度μの画素ごとのばらつきを抑制することができる。
【0100】
具体的には、移動度μの大きな画素Aで帰還量ΔV1の補正をかけると、ドレイン−ソース間電流IdsはIds1′からIds1まで大きく下降する。一方、移動度μの小さな画素Bの帰還量ΔV2は小さいために、ドレイン−ソース間電流IdsはIds2′からIds2までの下降となり、それ程大きく下降しない。結果的に、画素Aのドレイン−ソース間電流Ids1と画素Bのドレイン−ソース間電流Ids2とはほぼ等しくなるために、移動度μの画素ごとのばらつきが補正される。
【0101】
以上をまとめると、移動度μの異なる画素Aと画素Bがあった場合、移動度μの大きい画素Aの帰還量ΔV1は移動度μの小さい画素Bの帰還量ΔV2に比べて大きくなる。つまり、移動度μが大きい画素ほど帰還量ΔVが大きく、ドレイン−ソース間電流Idsの減少量が大きくなる。
【0102】
したがって、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVで、ゲート−ソース間電圧Vgsに負帰還をかけることで、移動度μの異なる画素のドレイン−ソース間電流Idsの電流値が均一化される。その結果、移動度μの画素ごとのばらつきを補正することができる。すなわち、駆動トランジスタ22に流れる電流(ドレイン−ソース間電流Ids)に応じた帰還量ΔVで、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsに負帰還をかける処理が移動度補正処理となる。
【0103】
ここで、図2に示した画素(画素回路)20において、閾値補正、移動度補正の有無による映像信号の信号電位(サンプリング電位)Vsigと駆動トランジスタ22のドレイン・ソース間電流Idsとの関係について図9を用いて説明する。
【0104】
図9において、(A)は閾値補正処理および移動度補正処理を共に行わない場合、(B)は移動度補正処理を行わず、閾値補正処理のみを行った場合、(C)は閾値補正処理および移動度補正処理を共に行った場合をそれぞれ示している。図9(A)に示すように、閾値補正処理および移動度補正処理を共に行わない場合には、閾値電圧Vthおよび移動度μの画素A,Bごとのばらつきに起因してドレイン−ソース間電流Idsに画素A,B間で大きな差が生じることになる。
【0105】
これに対して、閾値補正処理のみを行った場合は、図9(B)に示すように、ドレイン−ソース間電流Idsのばらつきをある程度低減できるものの、移動度μの画素A,Bごとのばらつきに起因する画素A,B間でのドレイン−ソース間電流Idsの差は残る。そして、閾値補正処理および移動度補正処理を共に行うことで、図9(C)に示すように、閾値電圧Vthおよび移動度μの画素A,Bごとのばらつきに起因する画素A,B間でのドレイン−ソース間電流Idsの差をほぼ無くすことができる。したがって、どの階調においても有機EL素子21の輝度ばらつきは発生せず、良好な画質の表示画像を得ることができる。
【0106】
また、図2に示した画素20は、閾値補正および移動度補正の各補正機能に加えて、先述した保持容量24によるブートストラップ動作の機能を備えていることで、次のような作用効果を得ることができる。
【0107】
すなわち、有機EL素子21のI−V特性の経時変化に伴って駆動トランジスタ22のソース電圧Vsが変化したとしても、保持容量24によるブートストラップ動作により、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電位Vgsを一定に維持することができる。したがって、有機EL素子21に流れる電流は変化せず一定となる。その結果、有機EL素子21の発光輝度も一定に保たれるために、有機EL素子21のI−V特性が経時変化したとしても、それに伴う輝度劣化のない画像表示を実現できる。
【0108】
(書込みトランジスタの閾値電圧のシフトによる不具合について)
ここで、有機EL素子21の発光時、特に白表示時の書込みトランジスタ23の動作点について考える。先述した回路動作から明らかなように、映像信号の信号電圧Vsigの書込みが終わり、書込みトランジスタ23が非導通状態になった後は、ブートストラップ動作によって駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgがソース電圧Vsの上昇に連動して上昇する。このため、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgは信号電圧Vsigよりも高い電圧になる。
【0109】
一方、閾値補正処理を実行するに当たって、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgを初期化するための基準電位Vofsを、信号線33を通して与える構成を採ると、信号線33の電位は1Hの周期で基準電圧Vofsと信号電圧Vsigとを繰り返す。
【0110】
図10に、白表示時の書込みトランジスタ23の各電極の電位関係を示す。白表示時には、書込みトランジスタ23のゲート電極(G)に当該書込みトランジスタ23を非導通状態にするオフ電圧Vsswsが、ソース電極(S)に基準電位Vofsが、ドレイン電極(D)に白階調に対応した白電圧Vwがそれぞれ印加される。これらの電圧の大小関係はVssws<Vofs<Vwである。
【0111】
図11に、書込みトランジスタ23の断面構造の一例を示す。図11に示すように、基板(図3のガラス基板201に相当)上にモリブデン(Mo)等によってゲート電極231が形成され、当該ゲート電極231の上にゲート絶縁膜232を介して例えばアモルファスシリコン(a−Si)の半導体層233が積層されている。
【0112】
半導体層(a−Si)233において、ゲート電極231と対向する部位がチャネル形成領域となっている。そして、チャネル形成領域上に絶縁膜234が形成されている。また、チャネル形成領域を挟むソース領域およびドレイン領域には、アルミニウム(Al)等からなるソース電極235およびドレイン電極236がそれぞれ電気的に接続されている。
【0113】
上記構成の書込みトランジスタ23において、白表示時には、ゲート電極にオフ電圧Vsswsが、ドレイン電極に白電圧Vwがそれぞれ印加されることで、ゲート−ドレイン間には大きな電界がかかることになる。ここで、書込みトランジスタ23のドレイン電圧は駆動トランジスタのゲート電圧と同じである。
【0114】
そして、書込みトランジスタ23のゲート−ドレイン間に電界が発生し続けると、チャネルを形成する半導体層233内の電子がその上の絶縁膜234にトラップされてしまい、電界を打ち消す方向に逆電界を発生させようとする。このトラップされた電子は、書込みトランジスタ23が導通する際にも存在するために、この逆側の電界によって書込みトランジスタ23の閾値電圧Vthwsが負側へシフト(変動)してしまう。また、この閾値電圧Vthwsが負側へシフトする現象は、時間の経過とともに顕著に現れてくる。
【0115】
ところで、表示パネルの大型化・高精細化が進んでくると、書込みトランジスタ23のゲート電極に印加する書込み走査信号(パルス)WSを伝送する走査線31の配線抵抗や寄生容量が大きくなる。そして、走査線31の配線抵抗や寄生容量が大きくなると、表示パネル70の入力端から距離が遠くなるにつれて、書込み走査信号WSの波形がなまってしまう。
【0116】
一方、移動度補正処理は、書込みトランジスタ23による映像信号の信号電圧Vsigの書込み処理と並行して実行される。そして、図4のタイミング波形図から明らかなように、移動度補正時間(信号書込み時間)は書込み走査信号WSの波形によって決まる。したがって、書込み走査信号WSの波形がなまった状態で書込みトランジスタ23の閾値電圧Vthwsが負側へシフトしてしまうと、白表示時や黒表示時における移動度補正時間が、シフトした閾値電圧分だけ長くなってしまう。
【0117】
図12に、書込み走査信号WSの立ち上がりおよび立ち下がりがなまった状態の遷移波形を示す。図12において、VsigWは白階調に対応した白信号電圧、VsigBは黒階調に対応した黒信号電圧、ΔVthwsは書込みトランジスタ23の閾値電圧Vthwsのシフト量をそれぞれ表わしている。
【0118】
図12の波形図から明らかなように、特に白表示時や黒表示時において、書込みトランジスタ23の閾値電圧VthwsがΔVthwsだけ負側にシフトすることで、移動度補正時間が閾値電圧Vthwsのシフト分ΔVthwsだけ長くなる。この移動度補正時間の変動は、特に書込み走査信号WSの波形の立ち下がりにおいて顕著に現れる。その理由は次の通りである。
【0119】
図12の波形図に示すように、書込み走査信号WSの遷移波形において、立ち上がり/立下がりの遷移開始部分よりも遷移終了部分の方が波形のなまりの度合いが大きい。この書込み走査信号WSに対して、白信号電圧VsigWの振幅が半分以下である。したがって、図12の波形図から明らかなように、書込みトランジスタ23の閾値電圧Vthwsの負側へのシフトに起因する移動度補正時間の変動は、特に書込み走査信号WSの波形の立ち下がりにおいて顕著に現れることになる。
【0120】
また、先述した回路動作の説明から明らかなように、移動度補正処理は、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsを上昇させながら行われる。このため、移動度補正時間が長くなると、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsの上昇が大きくなる。すると、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsが低下し、その低下分だけ有機EL素子21に流れる電流が減少するために、発光輝度が時間の経過とともに減少したり、スジや輝度ムラといった画質不良が発生したりする。
【0121】
さらに、前にも述べたように、書込みトランジスタ23のチャネルにエネルギーの強い光が入射することによっても書込みトランジスタ23の閾値電圧が負側にシフトする(図26参照)。ここで、RGB画素(副画素)がB画素を真ん中にして配置されている場合において、B画素は青色光の影響を受けるのは自発光時のみである。
【0122】
これに対して、RG画素はB画素に隣接しているために、自発光でなくても隣接のB画素の発光の影響を受けることとなる。このとき、書込みトランジスタ23のみならず、駆動トランジスタ22についても青色光の影響を受けてその特性がシフトする。自発光の影響のみならず隣接画素の発光の影響を受けるとなると、移動度補正処理等の補正処理において電流変化を補正するのが非常に難しくなる。
【0123】
隣接画素からの青色光の影響を受けないようにする方法として、図13に示すように、有機EL素子21のアノード電極と同じ層の金属配線層301で書込みトランジスタ23を覆うことで、青色光を遮光する方法が考えられる。しかし、この方法ではある程度遮光の効果は見込めるものの、平坦性を保つために平坦化膜302(図3の絶縁平坦化膜203に相当)の膜厚を厚くする必要があるため、書込みトランジスタ23上に金属配線層301が配置されても完全に遮光することはできない。
【0124】
[本実施形態の特徴部分]
そこで、本実施形態では、カラー画像を形成する単位となる1つの画素を構成する複数の副画素が隣接して配置された有機EL表示装置において、次のような画素の遮光レイアウト構造を採るようにする。すなわち、複数の副画素のうち、少なくとも最も波長が短い発光を得る第1副画素に隣接する第2副画素に対して、当該第2副画素を形成するトランジスタのチャネル長またはチャネル幅よりも大きい幅を有する遮光体を第1副画素との間に設けた遮光レイアウト構造とする。
【0125】
ここでは、カラー画像を形成する単位となる1つの画素を構成する複数の副画素が例えばRGBの画素(副画素)の組み合わせからなる場合について説明するが、この組み合わせに限られるものではない。RGBの画素の組み合わせの場合には、B画素が発光する青色光が最も波長が短い。したがって、本例では、B画素が第1副画素となり、RGの各画素が第2副画素となる。
【0126】
また、第2副画素を形成するトランジスタとしては、例えば書込みトランジスタ23を挙げる。ただし、先述したように、B画素の青色光の影響を受けて特性シフトが生じるのは書込みトランジスタ23だけでなく、駆動トランジスタ22についても青色光の影響を受けてその特性がシフトする。したがって、第2副画素を形成するトランジスタとしては書込みトランジスタ23に限られるものではない。
【0127】
上述したように、第2副画素に対して第1副画素との間に遮光体を設け、当該遮光体の幅を、第2副画素を形成するトランジスタのチャネル長またはチャネル幅よりも大きくすることで、第1副画素で発光した光が第2副画素に入射するのを確実に阻止(遮光)できる。したがって、第2副画素を形成するトランジスタのチャネルにエネルギーの強い光が入射することによって生ずる特性シフト、特に閾値電圧Vthの負側へのシフトを抑えることができる。
【0128】
書込みトランジスタ23において、その閾値電圧のシフトが抑えられることで、書込み走査信号WSの波形で決まる移動度補正時間(信号書込み時間)の変動を小さくすることが可能になる。移動度補正時間の変動が小さくなることで、当該変動に起因する駆動トランジスタ22のソース電圧Vsの上昇を抑えることができる。これにより、有機EL素子21に流れる電流の減少が抑えられるために、発光輝度の時間に対する減少や、スジや輝度ムラといった画質不良の発生を抑制することができる。
【0129】
これらの作用効果は、本実施形態に係る画素の遮光レイアウト構造によって得られる。以下に、遮光レイアウト構造の具体的な実施例について説明する。
【0130】
(実施例1)
図14は、実施例1に係る遮光レイアウト構造を示す平面図である。ここでは、一例として、RGBの画素(副画素)20R,20G,20Bが、B画素20Bを真ん中にしてその両側にRGの各画素20R,20Gが配置された色配列となっている。図15に、図14のA−A´線に沿った断面構造を示す。
【0131】
図14に示すように、B画素20Bを真ん中に配置されていることで、両側に隣接するRGの各画素20R,20G内のトランジスタは、B画素20Bが発光する青色光の照射による影響を受ける。このB画素20Bからの青色光の入射を阻止するために、図13の遮光レイアウト構造の場合と同様に、G画素20Gの書込みトランジスタ23上(図3の有機EL素子21側)のアノード電極と同じ層に平坦化膜302を介して金属配線層301Gを設ける。この金属配線層301Gは、アノード電極の配線と同じアルミニウム等の高反射性を有する金属材料によって形成される。
【0132】
G画素20Gにはさらに、図14および図15に示すように、金属配線層301Gの領域内において、B画素20Bとの間に画素の長手方向に対して平行に遮光体303Gを設ける。この遮光体303Gは、特に図14から明らかなように、書込みトランジスタ23のチャネル幅よりも大きい幅を有しており、平坦化膜301Gに形成された穴内に埋設される。遮光体303Gの材質としては、例えば金属配線層301Gと同じ材質、即ちアルミニウム等の高反射性を有する金属材料が用いられる。
【0133】
ここでは、G画素20Gの遮光レイアウト構造について説明したが、R画素20Rについても基本的に、G画素20Gの遮光レイアウト構造と同じである。そして、G画素20Gの遮光レイアウト構造とR画素20Rの遮光レイアウト構造とは、B画素20Bの中心線に関して線対称となっている。
【0134】
このように、B画素20Bの両側に隣接するRGの各画素20R,20Gについて、B画素20Bとの間に遮光体303G,303Rを設けることで、B画素20Bで発光された青色光が画素20R,20Gに入射するのを確実に阻止(遮光)することができる。これにより、書込みトランジスタ23のチャネルへの青色光の照射の影響による特性シフトを小さく抑えることができるため、有機EL素子21に流れる電流の低下や、スジや輝度ムラといった画質不良の発生を抑制することができる。
【0135】
〔実施例1の変形例1〕
図16は、実施例1の変形例1に係る遮光レイアウト構造を示す平面図であり、図中、図14と同等部分には同一符号を付して示している。本変形例1に係る遮光レイアウト構造は、B画素20Bが両側に隣接するRGの各画素20R,20Gとの間に、書込みトランジスタ23のチャネル幅よりも大きい幅の遮光体303B−1,3303B−2を有する構成となっている。
【0136】
この変形例1に係る遮光レイアウト構造によれば、B画素20Bが発光した青色光が、隣接画素の遮光体303G,303Rで反射されてB画素20Bに入射するのを防ぐことができる。したがって、画素20R,20GのみならずB画素20Bにおいても、青色光の照射の影響による特性シフトを小さく抑えることができる。
【0137】
〔実施例1の変形例2〕
図17は、実施例1の変形例2に係る遮光レイアウト構造を示す平面図であり、図中、図16と同等部分には同一符号を付して示している。本変形例2に係る遮光レイアウト構造は、GBRの画素20G,20B,20Rの各々について、書込みトランジスタ23の左右上下の4方向において遮光体303−1〜303−4で遮光する構成となっている。
【0138】
具体的には、G画素20Gにおいて、書込みトランジスタ23の左右が遮光体303G−1,303G−2によって遮光されている。遮光体303G−1,303G−2は、書込みトランジスタ23のチャネル幅よりも大きい幅を有している。また、書込みトランジスタ23の上下が遮光体303G−3,303G−4によって遮光されている。遮光体303G−3,303G−4は、書込みトランジスタ23のチャネル長よりも大きい幅を有している。
【0139】
BRの各画素20B,20Rの各遮光レイアウト構造についても、基本的に、G画素20Gの遮光レイアウト構造と同様の構成となっている。
【0140】
この変形例2に係る遮光レイアウト構造によれば、GBRの各画素20G,20B,20Rにおいて、書込みトランジスタ23をB画素20Bが発光する青色光から光学的にほぼ完全に覆うことができる。したがって、画素20G,20B,20Rの各々において、青色光の照射の影響による特性シフトをより確実に抑えることができる。
【0141】
〔実施例1の変形例3〕
図18は、実施例1の変形例3に係る遮光レイアウト構造を示す断面図であり、図中、図15と同等部分には同一符号を付して示している。本変形例3に係る遮光レイアウト構造は、遮光体303Bの下端部を基板上のゲート絶縁膜232(図3の絶縁膜202に相当)に埋設した構成となっている。
【0142】
ここでは、B画素20Bとの間の遮光体303Bについて示しているが、変形例1の遮光体303B−1,3303B−2や、変形例2の遮光体303G−1〜303G−4についても同様に、下端部をゲート絶縁膜304に埋設するようにするようにしてもよい。また、BRの各画素20B,20Rについても同様である。
【0143】
この変形例3に係る遮光レイアウト構造によれば、遮光体303Bの下端部をゲート絶縁膜304に埋め込むことで、遮光体303Bの下端部とゲート絶縁膜304との間からの漏れ光についても確実に遮光できる。したがって、画素20G,20B,20Rの各々において、青色光の照射の影響による特性シフトをより確実に抑えることができる。
【0144】
〔実施例1の変形例4〕
図19は、実施例1の変形例4に係る遮光レイアウト構造を示す断面図であり、図中、図15と同等部分には同一符号を付して示している。本変形例4に係る遮光レイアウト構造は、遮光体303Bの下端部を駆動トランジスタ22のソース電極の配線305と鈍化的に接続した構成となっている。
【0145】
この変形例4に係る遮光レイアウト構造によれば、遮光体303Bが駆動トランジスタ22のソース電極と有機EL素子21のアノード電極との電気的接続を担うことで、当該電気的接続のためのコンタクト部として遮光体303Bを兼用できる。これにより、遮光体303Bを設けることによる画素構造の複雑化を招くことなく、青色光に対する遮光レイアウト構造を実現できる。
【0146】
(実施例2)
図20は、実施例2に係る遮光レイアウト構造を示す断面図であり、図中、図15と同等部分には同一符号を付して示している。
【0147】
実施例1に係る遮光レイアウト構造は、遮光体303Gを金属配線層301Gの下に設ける構成を採っている。これに対して、本実施例2に係る遮光レイアウト構造は、遮光体303Gを画素間における金属配線層301Gと同じ層に設けられる補助配線306の下に設ける構成を採っている。ここで、補助配線306は、有機EL素子21のカソード電極にカソード電位Vcathを供給するために、一般的に、画素の各々を取り囲むように配線されている。
【0148】
遮光体303Gの材質としては、例えば補助配線306と同じ材質、即ちアルミニウム等の高反射性を有する金属材料が用いられる。ここでは、B画素20Bとの間の遮光体303Bについて示しているが、実施例1の変形例1や変形例2の遮光体303G−1〜303G−4についても同様に、下端部をゲート絶縁膜304に埋設するようにするようにしてもよい。また、BRの各画素20B,20Rについても同様である。
【0149】
このように、遮光体303Bを補助配線306の下に設けた場合にも、実施例1の場合と同様に、B画素20Bで発光された青色光が画素20R,20Gに入射するのを確実に阻止(遮光)することができる。加えて、補助配線306の下は画素外であり、金属配線層301Gの下に設ける場合よりもスペース的に遮光体303Gを作り易いとともに、開口を大きくとれるという利点がある。
【0150】
<2.変形例>
上記実施形態では、有機EL素子21の駆動回路が、基本的に、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23の2つのトランジスタ(Tr)を有する2Tr構成の場合を例に挙げて説明したが、本発明はこの2Tr構成への適用に限られるものではない。2Tr以外には、例えば、有機EL素子21の発光/非発光を制御するトランジスタを有したり、駆動トランジスタ22のゲート電極に基準電位Vofsを選択的に書き込むスイッチングトランジスタを有したりする画素構成など、種々の画素構成のものが考えられる。
【0151】
また、上記実施形態では、画素の電気光学素子として、有機EL素子を用いた有機EL表示装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明はこの適用例に限られるものではない。具体的には、本発明は、無機EL素子、LED素子、半導体レーザ素子等、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子(発光素子)を用いた表示装置全般に対して適用可能である。
【0152】
<3.適用例>
以上説明した本発明による表示装置は、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0153】
本発明による表示装置によれば、エネルギーが強い光の画素トランジスタのチャネルへの照射の影響による特性シフトを抑え、有機EL素子に流れる電流の低下や、スジや輝度ムラといった画質不良の発生を抑制することができる。したがって、あらゆる分野の電子機器の表示装置として本発明による表示装置を用いることで、当該電子機器の表示装置の表示品質の向上を図ることができる。
【0154】
本発明による表示装置は、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。このモジュール形状のものとしては、例えば、画素アレイ部に透明なガラス等の対向部が貼り付けられて形成された表示モジュールが該当する。この透明な対向部には、カラーフィルタ、保護膜等、さらには、上記した遮光膜が設けられてもよい。なお、表示モジュールには、外部から画素アレイ部への信号等を入出力するための回路部やFPC(フレキシブルプリントサーキット)等が設けられていてもよい。
【0155】
以下に、本発明が適用される電子機器の具体例について説明する。一例として、図21〜図25に示す様々な電子機器、例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話機等の携帯端末装置、ビデオカメラなどの表示装置に本発明を適用することが可能である。
【0156】
図21は、本発明が適用されるテレビジョンセットの外観を示す斜視図である。本適用例に係るテレビジョンセットは、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される映像表示画面部101を含んでいる。そして、映像表示画面部101として本発明による表示装置を用いることにより、本適用例に係るテレビジョンセットが作製される。
【0157】
図22は、本発明が適用されるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含んでいる。そして、表示部112として本発明による表示装置を用いることにより、本適用例に係るデジタルカメラが作製される。
【0158】
図23は、本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するときに操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含んでいる。そして、表示部123として本発明による表示装置を用いることにより、本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータが作製される。
【0159】
図242は、本発明が適用されるビデオカメラの外観を示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含んでいる。そして、表示部134として本発明による表示装置を用いることにより、本適用例に係るビデオカメラが作製される。
【0160】
図25は、本発明が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す外観図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【0161】
本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含んでいる。そして、ディスプレイ144やサブディスプレイ145として本発明による表示装置を用いることにより、本適用例に係る携帯電話機が作製される。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】本発明が適用される有機EL表示装置の構成の概略を示すシステム構成図である。
【図2】画素の基本的な回路構成を示す回路図である。
【図3】画素の断面構造の一例を示す断面図である。
【図4】本適用例に係る有機EL表示装置の回路動作の説明に供するタイミング波形図である。
【図5】本適用例に係る有機EL表示装置の回路動作の説明に供する動作説明図(その1)である。
【図6】本適用例に係る有機EL表示装置の回路動作の説明に供する動作説明図(その2)である。
【図7】駆動トランジスタの閾値電圧Vthのばらつきに起因する課題の説明に供する特性図である。
【図8】駆動トランジスタの移動度μのばらつきに起因する課題の説明に供する特性図である。
【図9】閾値補正、移動度補正の有無による映像信号の信号電圧Vsigと駆動トランジスタのドレイン・ソース間電流Idsとの関係の説明に供する特性図である。
【図10】白表示時の書込みトランジスタの各電極の電位関係を示す等価回路図である。
【図11】書込みトランジスタの断面構造の一例を示す断面図である。
【図12】書込み走査信号WSの立ち上がりおよび立ち下がりがなまった状態の遷移波形を示す波形図である。
【図13】隣接画素からの青色光の影響を受けないようにする方法の一例を示す画素部の断面図である。
【図14】実施例1に係る遮光レイアウト構造を示す平面図である。
【図15】図14のA−A´線に沿った断面構造を示す断面図である。
【図16】実施例1の変形例1に係る遮光レイアウト構造を示す平面図である。
【図17】実施例1の変形例2に係る遮光レイアウト構造を示す平面図である。
【図18】実施例1の変形例3に係る遮光レイアウト構造を示す断面図である。
【図19】実施例1の変形例4に係る遮光レイアウト構造を示す断面図である。
【図20】実施例2に係る遮光レイアウト構造を示す断面図である。
【図21】本発明が適用されるテレビジョンセットの外観を示す斜視図である。
【図22】本発明が適用されるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。
【図23】本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。
【図24】本発明が適用されるビデオカメラの外観を示す斜視図である。
【図25】本発明が適用される携帯電話機を示す外観図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【図26】トランジスタのチャネルに青色光が入射することで大きく特性がシフトする様子を示すトランジスタ特性図である。
【符号の説明】
【0163】
10…有機EL表示装置、20(20R,20G,20B)…画素(画素回路)、21…有機EL素子、22…駆動トランジスタ、23…書込みトランジスタ、24…保持容量、25…発光制御トランジスタ、26,27…スイッチングトランジスタ、30…画素アレイ部、31(31−1〜31−m)…走査線、32(32−1〜32−m)…電源供給線、33(33−1〜33−n)…信号線、34…共通電源供給線、40…書込み走査回路、40B…出力バッファ部、50…電源供給走査回路、60…信号出力回路、70…表示パネル、303G,303G−1〜303G−4,303B−1〜303B−4,303R−1〜303R−4…遮光体、WS(WS1〜WSm)…走査線の電位(書込み走査信号)、DS(DS1〜DSm)…電源供給線の電位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー画像を形成する単位となる1つの画素を構成する複数の副画素が隣接して配置され、
前記複数の副画素のうち、少なくとも最も波長が短い発光を得る第1副画素に隣接する第2副画素は、
当該第2副画素を形成するトランジスタのチャネル長またはチャネル幅よりも大きい幅をもって少なくとも前記第1副画素との間に配置された遮光体を有する
表示装置。
【請求項2】
前記遮光体は、前記第2副画素の長手方向に対して平行に配置されている
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記遮光体は、前記第1副画素の発光から前記トランジスタを光学的に覆うように配置されている
請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記遮光体の材質は、前記第2副画素内の電気光学素子のアノード電極を構成する金属配線と同じ材質である
請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
前記遮光体は、前記第1副画素と前記第2副画素との間に配線された補助配線の下に配置されている
請求項1記載の表示装置。
【請求項6】
前記遮光体の材質は、前記補助配線と同じ材質である
請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1副画素は、当該第1副画素を形成するトランジスタのチャネル長またはチャネル幅よりも大きい幅をもって前記第2副画素との間に配置された遮光体を有する
請求項1記載の表示装置。
【請求項8】
前記複数の副画素は、映像信号を書き込む書込みトランジスタと、当該書込みトランジスタによって書き込まれた前記映像信号に応じて電気光学素子を駆動する駆動トランジスタとを有する
請求項1記載の表示装置。
【請求項9】
前記複数の副画素は、前記駆動トランジスタに流れる電流に応じた補正量で当該駆動トランジスタのゲート−ソース間の電位差に負帰還をかけることによって前記駆動トランジスタの移動度を補正する移動度補正処理の機能を有する
請求項8記載の表示装置。
【請求項10】
前記移動度補正処理は、前記書込みトランジスタによる前記映像信号の書込み処理と並行して行われる
請求項9記載の表示装置。
【請求項11】
前記移動度補正処理は、前記駆動トランジスタのソース電圧を上昇させながら行われる
請求項9記載の表示装置。
【請求項12】
カラー画像を形成する単位となる1つの画素を構成する複数の副画素が隣接して配置され、
前記複数の副画素のうち、少なくとも最も波長が短い発光を得る第1副画素に隣接する第2副画素は、
当該第2副画素を形成するトランジスタのチャネル長またはチャネル幅よりも大きい幅をもって少なくとも前記第1副画素との間に配置された遮光体を有する
表示装置を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−145894(P2010−145894A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325072(P2008−325072)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】