説明

表示装置及び電子機器

【課題】画素アレイ部の各画素を駆動する周辺回路部の機能を制限することなく、表示パネルの更なる狭額縁化を図ることを可能にする。
【解決手段】表示パネル70を構成する基板として、折り曲げ可能な基板、例えば、ステンレス基板やプラスチック基板を用いる。そして、画素アレイ部30を基板本体部70Aに搭載し、画素アレイ部30の周辺の少なくとも1辺において折り曲げられて表示裏面側に位置する基板端部70B,70C,70Dに周辺回路部80A,80B,80Cを配置する。これにより、周辺回路部80A,80B,80Cの機能を制限することなく、表示パネル70の更なる狭額縁化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及び電子機器に関し、特に、電気光学素子を含む画素が行列状(マトリクス状)に2次元配置されてなる表示装置及び当該表示装置を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示を行う表示装置の分野では、画素(画素回路)が行列状に配置されてなる平面型(フラットパネル型)の表示装置が急速に普及している。平面型の表示装置の一つとして、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する、所謂電流駆動型の電気光学素子を画素の発光素子として用いた表示装置がある。電流駆動型の電気光学素子としては、有機材料のエレクトロルミネッセンス(Electroluminescence;EL)を利用し、有機薄膜に電界をかけると発光する現象を用いた有機EL素子が知られている。
【0003】
画素の発光素子として有機EL素子を用いた有機EL表示装置は次のような特長を持っている。すなわち、有機EL素子は、10V以下の印加電圧で駆動できるために低消費電力である。有機EL素子は、自発光素子であるために液晶表示装置に比べて、画像の視認性が高く、しかもバックライト等の照明部材を必要としないために軽量化及び薄型化が容易である。更に、有機EL素子は、応答速度が数μsec程度と非常に高速であるために動画表示時の残像が発生しない。
【0004】
有機EL表示装置では、液晶表示装置と同様に、その駆動方式として単純(パッシブ)マトリクス方式とアクティブマトリクス方式とを採ることができる。但し、単純マトリクス方式の表示装置は、構造が簡単であるものの、電気光学素子の発光期間が走査線(即ち、画素数)の増加によって減少するために、大型でかつ高精細な表示装置の実現が難しいなどの問題がある。
【0005】
そのため、近年、電気光学素子に流れる電流を、当該電気光学素子と同じ画素内に設けられる能動素子、例えば、絶縁ゲート型電界効果トランジスタによって制御するアクティブマトリクス方式の表示装置の開発が盛んに行われている。絶縁ゲート型電界効果トランジスタとしては、一般には、TFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)が用いられる。アクティブマトリクス方式の表示装置は、電気光学素子が1表示フレームの期間に亘って発光を持続するために、大型でかつ高精細な表示装置の実現が容易である。
【0006】
アクティブマトリクス方式によって駆動される、電流駆動型の電気光学素子を含む画素回路は、電気光学素子に加えて、当該電気光学素子を駆動するための駆動回路を備えている。この駆動回路として、電流駆動型の電気光学素子、例えば有機EL素子21を駆動する駆動トランジスタ22、書込みトランジスタ23、及び、保持容量24を有する構成の画素回路が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0007】
特許文献1には、単位画素20bが多数されてなる画素アレイ部30が搭載された表示パネル70上に、周辺回路部(40,50,60)が搭載された有機EL表示装置10Bが記載されている(特許文献1の段落番号0027、図1、及び、図10等を参照)。
【0008】
また、特許文献1には、同一の単位画素20bを構成する上下2行に属する4つのサブピクセル20W,20R,20G,20Bに対して、1本の電源供給線32(32-1〜32-m)を共通化することが記載されている。特許文献1には更に、1本の電源供給線32を共通化することにより、書込み走査回路40について回路規模を削減できるために、表示パネル70の狭額縁化を図ることができる旨が記載されている(特許文献1の段落番号0136等を参照)。ここで、「額縁」とは、表示パネル70上の画素アレイ部30の周囲の画像表示に寄与しない領域部分を言う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−103868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、画素アレイ部の各画素を駆動する周辺回路部を構成する回路素子数や配線数を削減し、周辺回路部の回路規模を縮小することにより、表示パネルの狭額縁化を図ることができる。しかしながら、周辺回路部を構成する回路素子数や配線数の削減による回路規模の縮小化には限界があるため、表示パネルの狭額縁化にも限界が生ずる。そして、表示パネルの更なる狭額縁化の要求に応えるには、周辺回路部の機能を制限することで、周辺回路部の回路規模の縮小化を図らざるを得ない場合がある。
【0011】
そこで、本発明は、画素アレイ部の各画素を駆動する周辺回路部の機能を制限することなく、表示パネルの更なる狭額縁化を図ることが可能な表示装置及び当該表示装置を有する電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明による表示装置は、
折り曲げ可能な基板と、
電気光学素子を含む画素が前記基板上に配置されてなる画素アレイ部と、
前記基板上の前記画素アレイ部の周辺の少なくとも1辺において折り曲げられた基板端部と、
前記基板端部に配置され、前記画素アレイ部の各画素を駆動する周辺回路部と
前記周辺回路部と同じ基板端部上に設けられ、前記周辺回路部と基板外部とを電気的に接続するパッド部と
を備える。
【0013】
上記構成の表示装置において、基板が画素アレイ部の周辺の少なくとも1辺において折り曲げられることで、その折り曲げられた基板端部の領域の分だけ、画素アレイ部の周囲の画像表示に寄与しない領域部分、即ち、額縁を縮小化できる。その際、周辺回路部は、画素アレイ部とは、折り曲げ部を介して同じ基板上に位置する。従って、周辺回路部と画素アレイ部との間に端子等のコンタクト部が介在しなくても、周辺回路部と画素アレイ部との間を電気的に接続できる。
【0014】
また、基板端部については、画素アレイ部が搭載される基板本体の大きさの範囲内であればその大きさが制限されることはない。従って、基板端部に配置される周辺回路部の規模、ひいては当該周辺回路部の機能が制限されることもない。しかも、周辺回路部と基板外部とを電気的に接続するパッド部が、周辺回路部と同じ基板端部に設けられているために、基板端部の折り曲げ部と周辺回路部との間の間隔が狭く、配線を引き回すことができなくても、周辺回路部と基板外部との間の電気的接続を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、折り曲げ可能な基板を用い、画素アレイ部の周辺の少なくとも1辺において折り曲げられた基板端部に周辺回路部を配置することで、当該周辺回路部の機能を制限することなく、表示パネルの更なる狭額縁化を図ることができる。しかも、基板端部の折り曲げ部と周辺回路部との間の間隔が狭く、配線を引き回すことができなくても、周辺回路部と基板外部との間の電気的接続を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る表示装置の表示パネルの構造の概略を示す平面図である。
【図2】実施形態に係る表示装置の表示パネルを示す断面図であり、(A)は表示パネルの折り曲げ前の断面図を、(B)は表示パネルの折り曲げ後の断面図をそれぞれ示している。
【図3】表示装置の表示パネルの他の構造の概略を示す正面図である。
【図4】基板端部の折り曲げ前(A)と折り曲げ後(B)の状態を示すイメージ図である。
【図5】基板端部の折り曲げ方の手順の一例を示す図である。
【図6】表示パネルの構造の一例を示す要部の断面図である。
【図7】基本本体部に水分浸入防止溝を有するパネル構造を示す平面図である。
【図8】基本本体部及び基板端部に水分浸入防止溝を有するパネル構造を示す平面図である。
【図9】本発明が適用される有機EL表示装置の構成の概略を示すシステム構成図である。
【図10】本発明が適用される有機EL表示装置の画素の回路構成の一例を示す回路図である。
【図11】本発明が適用される有機EL表示装置の基本的な回路動作の説明に供するタイミング波形図である。
【図12】本発明が適用される有機EL表示装置の基本的な回路動作の動作説明図(その1)である。
【図13】本発明が適用される有機EL表示装置の基本的な回路動作の動作説明図(その2)である。
【図14】駆動トランジスタの閾値電圧Vthのばらつきに起因する課題の説明(A)、及び、駆動トランジスタの移動度μのばらつきに起因する課題の説明(B)に供する特性図である。
【図15】書込み走査回路についての説明図であり、(A)は書込み走査回路の構成の一例を、(B)は書込み走査回路を構成するシフトレジスタの回路例をそれぞれ示している。
【図16】片チャネルのトランジスタと容量素子との組み合わせからなるインバータ回路についての説明図であり、(A)は回路構成の一例を示し、(B)は入力パルス信号INVin及び出力INVoutの各波形を示している。
【図17】信号出力回路の構成の一例を示す回路図である。
【図18】走査回路部をパネル内に設ける場合の基板外部との電気的接続の構成例を示す概略平面図である。
【図19】走査回路部をパネル外に設ける場合の基板外部との電気的接続の構成例を示す概略平面図である。
【図20】本発明が適用されるテレビジョンセットの外観を示す斜視図である。
【図21】本発明が適用されるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。
【図22】本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。
【図23】本発明が適用されるビデオカメラの外観を示す斜視図である。
【図24】本発明が適用される携帯電話機を示す外観図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と記述する)について図面を用いて詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施形態に関する説明
2.本発明が適用される有機EL表示装置
2−1.システム構成
2−2.基本的な回路動作
2−3.駆動回路部の構成例
3.変形例
4.電子機器
【0018】
<1.実施形態に関する説明>
図1は、本発明の一実施形態に係る表示装置の表示パネルの構造の概略を示す平面図である。図2に、一実施形態に係る表示装置の表示パネルの断面図を示す。図2において、(A)は表示パネルの折り曲げ前の断面図を、(B)は表示パネルの折り曲げ後の断面図をそれぞれ示している。
【0019】
本実施形態に係る表示装置10は、表示パネル70を構成する基板として、より具体的には、画素回路を形成する基板として、折り曲げ可能な基板を用いる点を最大の特徴としている。折り曲げ可能な基板としては、金属基板(金属の薄板)や、プラスチック基板等の周知の基板を用いることができる。
【0020】
金属基板としては、例えば、耐腐食性の観点からするとステンレス基板を用いるのが好ましい。また、絶縁性の観点からすると、金属基板よりもプラスチック基板を用いる方が好ましい。ステンレス基板やプラスチック基板等の薄板については、周知の折り曲げ治具(冶具)を用いることで、容易に折り曲げることができる。
【0021】
表示パネル70は、基板本体部70Aと、基板周縁部の例えば4辺で裏面側に折り曲げられた4つの基板端部70B〜70Eとから構成されている。図1では、4つの基板端部70B〜70Eのうち、基板本体部70Aの左右両側の基板端部70B,70C、及び、下側の基板端部70Dについて一点鎖線にて模式的に図示している。尚、上側の基板端部70Eについては図示を省略している。
【0022】
表示パネル70の基板本体部70Aにはほぼ全面に亘って、電気光学素子、例えば、自発光型の電気光学素子を含む画素(画素回路)20が行列状に2次元配列されて画素アレイ部30を構成している。ここで、自発光型の電気光学素子としては、有機EL素子、無機EL素子、LED素子、半導体レーザー素子などが広く知られている。これら自発光型の電気光学素子は、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の発光素子である。
【0023】
一方、図1において、基板本体部70Aの左右両側の基板端部70B,70C、及び、下側の基板端部70Dには、画素アレイ部30の各画素20を駆動する周辺回路部80A〜80Cが設けられている。そして、図2に示すように、周辺回路部80A〜80Cは、画素アレイ部30に対して配線部81の各配線を介して電気的に接続される。周辺回路部80A〜80Cの具体例については後述する。
【0024】
表示パネル70の製造に当っては、先ず、図2(A)に示すように、平板状の折り曲げ可能な基板(70A〜70D)に対して、画素アレイ部30の各画素20を形成するとともに、周辺回路部80A〜80Cの各回路素子を形成する。更に、画素アレイ部30と周辺回路部80A〜80Cとを電気的に接続するための配線部81の各配線を形成する(配線する)。
【0025】
このように、画素アレイ部30、周辺回路部80A〜80C、及び、配線部81が形成された、平板状の状態にある表示パネル70について、例えば図2(A)に示すように、配線部81の裏側に配置した折り曲げ治具82を始点として折り曲げる作業を行う。この折り曲げ作業により、図2(B)に示すように、折り曲げられた、周辺回路部80A,80B(80C)を搭載した基板端部70B,70C(70D)は、基板本体部70Aの裏側、即ち、表示面と反対側(表示裏面側)に位置することになる。
【0026】
従って、表示パネル70において、画素アレイ部30の周辺の額縁としては、配線部81の一部が存在するだけとなるため、表示パネル70の狭額縁化を図ることができる。すなわち、画素アレイ部30の周辺の、画像表示に寄与しない余分な領域の面積を必要最小限に抑えることができる。
【0027】
しかも、画素アレイ部30と周辺回路部80A〜80Cとの間は、折り曲げられた状態にあるものの、一枚の基板上に形成された配線部81の各配線によって電気的に接続される。これにより、例えば、基板本体部70Aに対してフレキシブルケーブル等を用いて外部基板を接続する場合のような、端子等のパッド部を設ける必要がない。従って、パッド部を設けるための領域を確保する必要が無いため、表示パネル70のより狭額縁化を図ることができる。
【0028】
また、基板端部70B,70C(70D)ついては、画素アレイ部30が搭載される基板本体部70Aの大きさの範囲内であればその大きさが制限されることはない。従って、基板端部70B,70C(70D)に配置される周辺回路部80A,80B(80C)の回路規模、ひいては、当該周辺回路部80A,80B(80C)の機能が制限されることもない。
【0029】
本実施形態では、表示パネル70について、画素アレイ部30の周辺部の4辺で折り曲げ、そのうちの3つの基板端部70B,70C,70Dに対して周辺回路部80A,80B,80Cを搭載する場合を例に挙げたが、このパネル構造に限定されるものではない。例えば、図3に示すように、周辺回路部80A,80B,80Cを搭載する、画素アレイ部30の周辺部の3辺だけ折り曲げるようにしても良い。このとき、折り曲げずに残った基板部分70Eは、額縁の大半を占める余白部分となるため、4辺で折り曲げる方が好ましいと言うことができる。また、4辺、3辺の折り曲げに限らず、画素アレイ部30の周辺部の少なくとも1辺を折り曲げることにより、全く折り曲げない場合に比べて狭額縁化の効果を得ることができる。
【0030】
上述したように、表示パネル70を構成する基板として、折り曲げ可能な基板を用いるようにする。そして、画素アレイ部30の周辺の少なくとも1辺にて折り曲げた基板端部70B,70C,70Dに周辺回路部80A,80B,80Cを配置することにより、額縁サイズの制約にとらわれることなく、周辺回路部80A,80B,80Cとして様々な機能を持った回路を搭載することが可能になる。従って、周辺回路部80A,80B,80Cの機能を制限することなく、表示パネル70の更なる狭額縁化を図ることができる。特に、画素アレイ部30の周辺部の4辺で折り曲げるようにすることで、実質的に額縁をほぼ無くし、表示パネル70の表示面全面を表示エリアにした表示装置を実現できる。
【0031】
図4に、基板端部70B,70C,70Dの折り曲げ前(A)と折り曲げ後(B)のイメージを示す。ここでは、画素アレイ部30の周辺部の4辺のうち、周辺回路部80A,80B,80Cを搭載する、画素アレイ部30の周辺部の3辺だけ折り曲げ、残りの1辺(上側)については切り離す(切り落とす)場合を例に挙げて示している。
【0032】
図4において、画素アレイ部30は、画像の表示に寄与する有効画素部、即ち、表示エリア部となる。この画素アレイ部30の左右両側、即ち、基板本体部70Aの左右両側の基板端部70B,70C、及び、下側の基板端部70Dについては折り曲げ、上側の基板端部70Eについては切り離すことになる訳であるが、その詳細について以下に具体的に説明する。
【0033】
先ず、上側の基板端部70Eの切り離しに当り、基板本体部70Aの上端と基板端部70Eとの間の、基板本体部70Aの両端間に水平方向に沿って切断部83Aを形成し、更に、切断部83Aの両端と基板端部70Eの上端との間に切り込み部83B,83Cを形成する。これにより、上側の基板端部70Eを基板本体部70Aから切り離すことができる。
【0034】
次に、左右両側の基板端部70B,70Cの折り曲げに当り、基板端部70B,70Cに対して左右両側から基板本体部70Aの下端に沿って切り込み部83D,83Eを形成する。そして、基板端部70B,70Cの折り曲げに先立って、それらの上端部70B0,70C0を太線の点線に沿って折り曲げ、その後に、基板端部70B,70Cを基板本体部70Aとの境界の太線の点線に沿って折り曲げる。
【0035】
ここで、基板端部70B,70Cの上端部70B0,70C0の例えば上端には、周辺回路部80A,80Bと基板外部とを電気的に接続する、具体的には、周辺回路部80A,80Bの電源電圧や各種の信号を基板外部から取り込むパッド部84A,84Bが設けられている。すなわち、パッド部84A,84Bは、周辺回路部80A,80Bと同じ基板端部70B,70C上、より具体的には、当該基板端部70B,70C内における折り曲げ部を越えた部位(上端部70B0,70C0)に設けられている。そして、パッド部84A,84Bと周辺回路部80A,80Bとは、基板端部70B,70C内における折り曲げ部の配線を通して電気的に接続される。
【0036】
次に、下側の基板端部70Dの折り曲げに当り、先ず、切り込み部83D,83Eを境界として、基板端部70Dの両端部70D1,70D2を、基板端部70B,70Cの折り曲げ線の延長戦上の太線の点線に沿って折り曲げる。次いで、基板端部70Dを基板本体部70Aとの境界の太線の点線、即ち、切り込み部83D,83Eを結ぶ太線の点線に沿って折り曲げる。
【0037】
ここで、一例として、基板端部70Dに搭載される周辺回路部80Cが、後述するように、基板外部に設けられた信号供給源(図示せず)から供給される映像信号を画素アレイ部30の各画素に対して出力する信号出力回路であるとする。この場合、基板端部70Dの下端には、画素アレイ部30の画素列毎に映像信号を基板外部から取り込むパット部群84Cが設けられている。このパット部群84Cは、画素アレイ部30の水平方向の幅に亘って、画素アレイ部30の画素列にほぼ対応して設けられる。
【0038】
基板端部70Dの両端部70D1,70D2の例えば下端には、周辺回路部80Cと基板外部とを電気的に接続する、具体的には、上記信号出力回路を構成する例えばトランジスタを制御するゲート制御信号を基板外部から取り込むパッド部84D,84Eが設けられている。すなわち、パッド部84D,84Eは、周辺回路部80Cである信号出力回路と同じ基板端部70D上、より具体的には、当該基板端部70D内における折り曲げ部を越えた部位(両端部70D1,70D2)に設けられている。そして、パッド部84D,84Eと周辺回路部80Cとは、基板端部70D内における折り曲げ部の配線を通して電気的に接続される。
【0039】
上述したように、基板本体部70Aに対して、上側の基板端部70Eを切り離し、左右両側の基板端部70B,70C、及び、下側の基板端部70Dを折り曲げることで、ほぼ基板本体部70Aのサイズの表示パネル70を実現できる。但し、基板端部70B,70C,70Dの折り曲げ部には曲げしろを確保する必要があることから、最終的な表示パネル70は、図4(B)に示すように、基板本体部70Aの周囲に若干の額縁70Fを有するものとなる。
【0040】
そして、折り曲げた基板端部70B,70C,70Dに周辺回路部80A,80B,80Cを配置することで、額縁サイズの制約にとらわれることなく、周辺回路部80A,80B,80Cとして様々な機能を持った回路を搭載することが可能になる。従って、周辺回路部80A,80B,80Cの機能を制限することなく、表示パネル70の更なる狭額縁化を図ることができる。
【0041】
しかも、周辺回路部70B,70C,70Dと基板外部とを電気的に接続するパッド部84A,84B,84D,84Eが周辺回路部70B,70C,70Dと同じ基板端部70B,70C,70D上に設けられている。より具体的には、パッド部84A,84B,84D,84Eは、基板端部70B,70C,70D上であって当該基板端部70B,70C,70D内における折り曲げ部を越えた部位、即ち、上端部70B0,70C0及び両端部70D1,70D2に設けられている。これにより、基板端部70B,70C,70D内における折り曲げ部と周辺回路部70B,70C,70Dとの間の間隔が狭く、配線を引き回すことができなくても、周辺回路部70B,70C,70Dと基板外部との間の電気的接続を確実に行うことができる。
【0042】
ここで、上記の基板構造の場合の基板端部70B,70C,70Dの折り曲げ方の手順の一例について、図5を用いて説明する。図5(A)は図4(A)に対応している。
【0043】
図5(A)の状態から、上側の基板端部70Eを基板本体部70Aから切り離す。次いで、図5(B)に示すように、左右両側の基板端部70B,70Cの上端部70B0,70C0を基板端部70B,70Cの裏面側に矢印で示すように折り曲げ、更に、下側の基板端部70Dの両端部70D1,70D2を基板端部70Dの裏面側に矢印で示すように折り曲げる。
【0044】
そして、左右両側の基板端部70B,70Cを基板本体部70Aの裏面側に矢印で示すように折り曲げ、更に、下側の基板端部70Dを基板本体部70Aの裏面側に矢印で示すように折り曲げる。これにより、図5(D)に示すように、基板本体部70Aの周囲に若干の額縁70Fを有する表示パネル70が形成される。図5(D)は図4(B)に対応している。
【0045】
続いて、表示パネル70の構造について、図6を用いて説明する。図6は、表示パネル70の構造の一例を示す要部の断面図である。
【0046】
先述したように、表示パネル70は、画素アレイ部30が形成される基板本体部70Aと、周辺回路部80A(80B)が形成される基板端部70B(70C)と、両者間に位置する折り曲げ領域(折り曲げ部)85とから構成されている(図2参照)。そして、折り曲げ領域85には、周辺回路部80A(80B)と画素アレイ部30とを電気的に接続する配線部81が形成されている。すなわち、折り曲げ領域85の配線部81には、単純メタル配線のみがレイアウトされ、トランジスタなどを含む回路部はレイアウトされない構成となっている。
【0047】
図6において、折り曲げ可能な基板201上には、ゲート電極221を含むTFT(薄膜トランジスタ)22などを含む回路部が形成されている。基板201上には更に、絶縁膜(ゲート絶縁膜)202、平坦化膜203及びウインド絶縁膜204がその順に積層されている。そして、ウインド絶縁膜204の凹部に電気光学素子として例えば有機EL素子21が形成されている。TFT22は、例えば、有機EL素子21を駆動する駆動トランジスタである。
【0048】
有機EL素子21は、アノード電極205と、有機層206と、カソード電極207とから構成されている。アノード電極205は、ウインド絶縁膜204の凹部の底部に形成された金属等からなる。有機層206は、アノード電極205上に形成されている。カソード電極207は、有機層206上に全画素共通に形成された透明導電膜等からなる。
【0049】
この有機EL素子21において、有機層206は、アノード電極205上にホール輸送層/ホール注入層、発光層、電子輸送層、及び、電子注入層が順次堆積されることによって形成される。そして、TFT22による電流駆動の下に、当該TFT22からアノード電極205を通して有機層206に電流が流れることで、当該有機層206内の発光層において電子と正孔が再結合する際に発光するようになっている。
【0050】
有機EL素子21やTFT22を含む画素部の上は保護膜208によって保護されている。そして、基板201の全面に亘ってシート樹脂209によって覆われている。また、画素アレイ部30が形成される基板本体部70Aにおけるシート樹脂209の上には、封止フィルムやガラス基板などからなる第2の基板である対向基板210が配されている。すなわち、対向基板210は、折り曲げ領域85にかからないように基板本体部70Aの領域にだけ配されている。
【0051】
図6から明らかなように、折り曲げ領域85の配線部81には、メタル配線811のみがレイアウトされ、トランジスタなどを含む回路部はレイアウトされない。すなわち、折り曲げ領域85は、基板201上に絶縁膜202を介してメタル配線811が形成され、その上に平坦化膜203及びウインド絶縁膜204が順に積層され、その上をシート樹脂209によって覆われた構成となっている。
【0052】
ところで、上述したパネル構造の表示パネル70において、当該表示パネル70を折り曲げ領域85で折り曲げた際にひび割れ、所謂、クラックが生ずる場合がある。そして、クラックが生ずることで、当該クラックを通して水分等が表示パネル70内に浸入し、画素アレイ部30の回路素子が劣化する懸念がある。
【0053】
そこで、クラックから水分等が浸入し、回路素子が劣化するのを防ぐために、本実施形態に係る表示パネル70は、基板201上の折り曲げ領域85よりも画素アレイ部30側に水分浸入防止溝86を有するパネル構造となっている。この水分浸入防止溝86は、図7の平面図に示すように、画素アレイ部30を囲むように形成されている。また、水分浸入防止溝86は、図6の断面図から明らかなように、平坦化膜203及びウインド絶縁膜204を切除することによって形成されている。
【0054】
このように、水分浸入防止溝86を有するパネル構造とすることで、表示パネル70を折り曲げた際にたとえクラックが発生したとしても、クラックから浸入した水分等は水分浸入防止溝86に溜まり、当該防止溝86によって画素アレイ部30側への更なる侵入を阻止される。従って、クラックを通して浸入した水分等に起因する回路素子の劣化を未然に防ぐことができるため、表示パネル70の電気的な信頼性を損なうことはない。すなわち、表示パネル70の電気的な信頼性を維持しつつ、基板の折り曲げによる表示パネル70の狭額縁化を図ることができる。
【0055】
尚、ここでは、水分浸入防止溝86を基板201上の折り曲げ領域85よりも画素アレイ部30側に、当該画素アレイ部30を囲むように形成するとしたが、基板本体部70A側への形成に限られるものではない。すなわち、画素アレイ部30側の水分浸入防止溝86Aに加えて、必要に応じて、図8に示すように、基板端部70B,70C,70Dの少なくとも一方にも形成する構成を採るようにしても良い。
【0056】
具体的には、基板端部70B,70C,70D上の折り曲げ領域85よりも周辺回路部80A,80B,80C側に、これら周辺回路部80A,80B,80Cを囲むように水分浸入防止溝86B,86C,86Dを形成するようにしても良い。ここでは、基板端部70B,70C,70Dの全てに水分浸入防止溝86(86B,86C,86D)を形成するとしたが、いずれか1つに形成するようにしても良い。
【0057】
このように、基板端部70B,70C,70D側にも水分浸入防止溝86を形成することで、表示パネル70を折り曲げた際に基板端部70B,70C,70D側にクラックが発生したとしても、基板本体部70A側と同様の作用、効果を得ることができる。すなわち、クラックから浸入した水分等は水分浸入防止溝86B,86C,86Dに溜まり、これら防止溝86B,86C,86Dによって周辺回路部80A,80B,80C側への更なる侵入を阻止される。従って、クラックを通して浸入した水分等に起因する周辺回路部80A,80B,80Cの回路素子の劣化を未然に防ぐことができるため、表示パネル70の電気的な信頼性を損なうことはない。すなわち、表示パネル70の電気的な信頼性を更に維持しつつ、基板の折り曲げによる表示パネル70の狭額縁化を図ることができる。
【0058】
<2.本発明が適用される有機EL表示装置>
折り曲げ可能な基板を用いて表示パネルを構成可能な表示装置は、例えば、画素20の電気光学素子として、自発光型の発光素子を用いるフラットパネル型(平面型)の表示装置である。以下に、自発光型の発光素子として有機EL素子を用いた有機EL表示装置について説明する。
【0059】
[2−1.システム構成]
図9は、本発明が適用されるアクティブマトリクス型有機EL表示装置の構成の概略を示すシステム構成図である。
【0060】
図9に示すように、本適用例に係る有機EL表示装置10Aは、有機EL素子を含む複数の画素20が行列状に2次元配列されてなる画素アレイ部30と、当該画素アレイ部30の周辺に配置された周辺回路部とを有する構成となっている。周辺回路部は、書込み走査回路40、電源供給走査回路50及び信号出力回路60等からなり、画素アレイ部30の各画素20を駆動する。
【0061】
ここで、有機EL表示装置10Aがカラー表示対応の場合は、1つの画素は複数の副画素(サブピクセル)から構成され、この副画素の各々が画素20に相当することになる。より具体的には、カラー表示用の表示装置では、1つの画素は、赤色光(R)を発光する副画素、緑色光(G)を発光する副画素、青色光(B)を発光する副画素の3つの副画素から構成される。
【0062】
但し、1つの画素としては、RGBの3原色の副画素の組み合わせに限られるものではなく、3原色の副画素に更に1色あるいは複数色の副画素を加えて1つの画素を構成することも可能である。より具体的には、例えば、輝度向上のために白色光(W)を発光する副画素を加えて1つの画素を構成したり、色再現範囲を拡大するために補色光を発光する少なくとも1つの副画素を加えて1つの画素を構成したりすることも可能である。
【0063】
画素アレイ部30は、先述した実施形態における画素アレイ部30に相当し、折り曲げ可能な基板(201)、即ち、先述した実施形態の基板本体部70A上に形成される。画素アレイ部30は、走査線311〜31m、電源供給線321〜32m、及び、信号線331〜33nを含む。走査線311〜31mと電源供給線321〜32mとは、m行n列の画素20の配列に対し、行方向(画素行の画素の配列方向)に沿って画素行毎に配線されている。信号線331〜33nは、列方向(画素列の画素の配列方向)に沿って画素列毎に配線されている。
【0064】
ここで、走査線311〜31m、電源供給線321〜32m、及び、信号線331〜33nは、先述した実施形態における配線部81の各配線に相当する。また、書込み走査回路40、電源供給走査回路50、及び、信号出力回路60は、先述した実施形態における周辺回路部80A,80B,80Cに相当する。
【0065】
走査線311〜31mは、書込み走査回路40の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。電源供給線321〜32mは、電源供給走査回路50の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。信号線331〜33nは、信号出力回路60の対応する列の出力端にそれぞれ接続されている。
【0066】
書込み走査回路40は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフト(転送)するシフトレジスタ回路等によって構成されている(書込み走査回路40の具体的な構成の詳細については後述する)。この書込み走査回路40は、画素アレイ部30の各画素20への映像信号の書込みに際し、走査線31(311〜31m)に対して書込み走査信号WS(WS1〜WSm)を順次供給することによって画素アレイ部30の各画素20を行単位で順番に走査(線順次走査)する。
【0067】
電源供給走査回路50は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフトするシフトレジスタ回路等によって構成されている。この電源供給走査回路50は、書込み走査回路40による線順次走査に同期して、第1電源電位Vccpと当該第1電源電位Vccpよりも低い第2電源電位Viniとで切り替わることが可能な電源電位DS(DS1〜DSm)を電源供給線32(321〜32m)に供給する。後述するように、電源電位DSのVccp/Viniの切替えにより、画素20の発光/非発光の制御が行なわれる。
【0068】
信号出力回路60は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧(以下、単に「信号電圧」と記述する場合もある)Vsigと基準電位Vofsとを選択的に出力する。ここで、基準電位Vofsは、映像信号の信号電圧Vsigの基準となる電位(例えば、映像信号の黒レベルに相当する電位)であり、後述する閾値補正処理の際に用いられる。
【0069】
信号出力回路60から出力される信号電圧Vsig/基準電位Vofsは、信号線33(331〜33n)を介して画素アレイ部30の各画素20に対して、書込み走査回路40による走査によって選択された画素行の単位で書き込まれる。すなわち、信号出力回路60は、信号電圧Vsigを行(ライン)単位で書き込む線順次書込みの駆動形態を採っている。
【0070】
上述したように、画素アレイ部30、書込み走査回路40、電源供給走査回路50、及び、信号出力回路60を搭載した表示パネル70は、折り曲げ可能な基板からなり、画素アレイ部30の周辺における一点鎖線で示す部分で折り曲げられる。これにより、書込み走査回路40、電源供給走査回路50、及び、信号出力回路60の各機能を制限することなく、表示パネル70の狭額縁化を図ることができる。書込み走査回路40、電源供給走査回路50、及び、信号出力回路60の各機能については後述する。
【0071】
(画素回路)
図10は、画素(画素回路)20の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。画素20の発光部は、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子である有機EL素子21から成る。
【0072】
図10に示すように、画素20は、有機EL素子21と、有機EL素子21に電流を流すことによって当該有機EL素子21を駆動する駆動回路とによって構成されている。有機EL素子21は、全ての画素20に対して共通に配線(所謂、ベタ配線)された共通電源供給線34にカソード電極が接続されている。
【0073】
有機EL素子21を駆動する駆動回路は、駆動トランジスタ22、書込みトランジスタ23、保持容量24、及び、補助容量25を有する構成となっている。駆動トランジスタ22及び書込みトランジスタ23としてNチャネル型のTFTを用いることができる。但し、ここで示した、駆動トランジスタ22及び書込みトランジスタ23の導電型の組み合わせは一例に過ぎず、これらの組み合わせに限られるものではない。
【0074】
駆動トランジスタ22は、一方の電極(ソース/ドレイン電極)が有機EL素子21のアノード電極に接続され、他方の電極(ドレイン/ソース電極)が電源供給線32(321〜32m)に接続されている。
【0075】
書込みトランジスタ23は、一方の電極(ソース/ドレイン電極)が信号線33(331〜33n)に接続され、他方の電極(ドレイン/ソース電極)が駆動トランジスタ22のゲート電極に接続されている。また、書込みトランジスタ23のゲート電極は、走査線31(311〜31m)に接続されている。
【0076】
駆動トランジスタ22及び書込みトランジスタ23において、一方の電極とは、ソース/ドレイン領域に電気的に接続された金属配線を言い、他方の電極とは、ドレイン/ソース領域に電気的に接続された金属配線を言う。また、一方の電極と他方の電極との電位関係によって一方の電極がソース電極ともなればドレイン電極ともなり、他方の電極がドレイン電極ともなればソース電極ともなる。
【0077】
保持容量24は、一方の電極が駆動トランジスタ22のゲート電極に接続され、他方の電極が駆動トランジスタ22の他方の電極、及び、有機EL素子21のアノード電極に接続されている。
【0078】
補助容量25は、一方の電極が有機EL素子21のアノード電極に、他方の電極が共通電源供給線34にそれぞれ接続されている。この補助容量25は、有機EL素子21の容量不足分を補い、保持容量24に対する映像信号の書込みゲインを高めるために、必要に応じて設けられるものである。すなわち、補助容量25は必須の構成要素ではなく、有機EL素子21の等価容量が十分に大きい場合は省略可能である。
【0079】
ここでは、補助容量25の他方の電極を共通電源供給線34に接続するとしているが、他方の電極の接続先としては、共通電源供給線34に限られるものではなく、固定電位のノードであればよい。補助容量25の他方の電極を固定電位のノードに接続することで、有機EL素子21の容量不足分を補い、保持容量24に対する映像信号の書込みゲインを高めるという所期の目的を達成することができる。
【0080】
上記構成の画素20において、書込みトランジスタ23は、書込み走査回路40から走査線31を通してゲート電極に印加されるHighアクティブの書込み走査信号WSに応答して導通状態となる。これにより、書込みトランジスタ23は、信号線33を通して信号出力回路60から供給される、輝度情報に応じた映像信号の信号電圧Vsigまたは基準電圧Vofsをサンプリングして画素20内に書き込む。この書き込まれた信号電圧Vsigまたは基準電圧Vofsは、駆動トランジスタ22のゲート電極に印加されるとともに保持容量24に保持される。
【0081】
駆動トランジスタ22は、電源供給線32(321〜32m)の電源電位DSが第1電源電位Vccpにあるときには、一方の電極がドレイン電極、他方の電極がソース電極となって飽和領域で動作する。これにより、駆動トランジスタ22は、電源供給線32から電流の供給を受けて有機EL素子21を電流駆動にて発光駆動する。より具体的には、駆動トランジスタ22は、飽和領域で動作することにより、保持容量24に保持された信号電圧Vsigの電圧値に応じた電流値の駆動電流を有機EL素子21に供給し、当該有機EL素子21を電流駆動することによって発光させる。
【0082】
駆動トランジスタ22は更に、電源電位DSが第1電源電位Vccpから第2電源電位Viniに切り替わったときには、一方の電極がソース電極、他方の電極がドレイン電極となってスイッチングトランジスタとして動作する。そして、駆動トランジスタ22は、非導通状態になることで、有機EL素子21への駆動電流の供給を停止し、有機EL素子21を非発光状態にする。すなわち、駆動トランジスタ22は、有機EL素子21の発光/非発光を制御するトランジスタとしての機能をも併せ持っている。
【0083】
この駆動トランジスタ22のスイッチング動作により、有機EL素子21が非発光状態となる期間(非発光期間)を設け、有機EL素子21の発光期間と非発光期間の割合(デューティ)を制御することができる。このデューティ制御により、1表示フレーム期間に亘って画素が発光することに伴う残像ボケを低減できるために、特に動画の画品位をより優れたものとすることができる。
【0084】
電源供給走査回路50から電源供給線32を通して選択的に供給される第1,第2電源電位Vccp,Viniのうち、第1電源電位Vccpは有機EL素子21を発光駆動する駆動電流を駆動トランジスタ22に供給するための電源電位である。また、第2電源電位Viniは、有機EL素子21に対して逆バイアスを掛けるための電源電位である。この第2電源電位Viniは、基準電圧Vofsよりも低い電位、例えば、駆動トランジスタ22の閾値電圧をVthとするときVofs−Vthよりも低い電位、好ましくは、Vofs−Vthよりも十分に低い電位に設定される。
【0085】
[2−2.基本的な回路動作]
続いて、上記構成の有機EL表示装置10の基本的な回路動作について、図11のタイミング波形図を基に図12及び図13の動作説明図を用いて説明する。尚、図12及び図13の動作説明図では、図面の簡略化のために、書込みトランジスタ23をスイッチのシンボルで図示している。
【0086】
図11のタイミング波形図には、走査線31の電位(書込み走査信号)WS、電源供給線32の電位(電源電位)DS、信号線33の電位(Vsig/Vofs)、駆動トランジスタ22のゲート電位Vg及びソース電位Vsのそれぞれの変化を示している。また、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgの波形を一点鎖線で示し、ソース電位Vsの波形を点線で示すことで、両者を識別できるようにしている。
【0087】
(前表示フレームの発光期間)
図11のタイミング波形図において、時刻t11以前は、前の表示フレームにおける有機EL素子21の発光期間となる。この前表示フレームの発光期間では、電源供給線32の電位DSが第1電源電位(以下、「高電位」と記述する)Vccpにあり、また、書込みトランジスタ23が非導通状態にある。
【0088】
このとき、駆動トランジスタ22は飽和領域で動作するように設計されている。これにより、図12(A)に示すように、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsに応じた駆動電流(ドレイン−ソース間電流)Idsが、電源供給線32から駆動トランジスタ22を通して有機EL素子21に供給される。これにより、有機EL素子21が駆動電流Idsの電流値に応じた輝度で発光する。
【0089】
(閾値補正準備期間)
時刻t11になると、線順次走査の新しい表示フレーム(現表示フレーム)に入る。そして、図12(B)に示すように、電源供給線32の電位DSが高電位Vccpから、信号線33の基準電圧Vofsに対してVofs−Vthよりも十分に低い第2電源電位(以下、「低電位」と記述する)Viniに切り替わる。
【0090】
ここで、有機EL素子21の閾値電圧をVthel、共通電源供給線34の電位(カソード電位)をVcathとする。このとき、低電位ViniをVini<Vthel+Vcathとすると、駆動トランジスタ22のソース電位Vsが低電位Viniにほぼ等しくなるために、有機EL素子21は逆バイアス状態となって消光する。
【0091】
次に、時刻t12で走査線31の電位WSが低電位側から高電位側に遷移することで、図12(C)に示すように、書込みトランジスタ23が導通状態となる。このとき、信号出力回路60から信号線33に対して基準電圧Vofsが供給された状態にあるために、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgが基準電圧Vofsになる。また、駆動トランジスタ22のソース電位Vsは、基準電圧Vofsよりも十分に低い電位Viniにある。
【0092】
このとき、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧VgsはVofs−Viniとなる。ここで、Vofs−Viniが駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthよりも大きくないと、後述する閾値補正処理を行うことができないために、Vofs−Vini>Vthなる電位関係に設定することが必要となる。
【0093】
このように、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgを基準電位Vofsに固定し、かつ、ソース電位Vsを低電位Viniに固定して(確定させて)初期化する処理が、後述する閾値補正処理(閾値補正動作)を行う前の準備(閾値補正準備)の処理である。従って、基準電位Vofs及び低電位Viniが、駆動トランジスタ22のゲート電位Vg及びソース電位Vsの各初期化電位となる。
【0094】
(閾値補正期間)
続いて、時刻t13で、図12(D)に示すように、電源供給線32の電位DSが低電位Viniから高電位Vccpに切り替わると、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgが基準電位Vofsに保たれた状態で閾値補正処理が開始される。すなわち、ゲート電位Vgから駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthを減じた電位に向けて駆動トランジスタ22のソース電位Vsが上昇を開始する。
【0095】
ここでは、便宜上、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgの初期化電位Vofsを基準とし、当該初期化電位Vofsから駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthを減じた電位に向けてソース電位Vsを変化させる処理を閾値補正処理と呼んでいる。この閾値補正処理が進むと、やがて、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsが駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに収束する。この閾値電圧Vthに相当する電圧は保持容量24に保持される。
【0096】
尚、閾値補正処理を行う期間(閾値補正期間)において、電流が専ら保持容量24側に流れ、有機EL素子21側には流れないようにするために、有機EL素子21がカットオフ状態となるように共通電源供給線34の電位Vcathを設定しておくこととする。
【0097】
次に、時刻t14で走査線31の電位WSが低電位側に遷移することで、図13(A)に示すように、書込みトランジスタ23が非導通状態となる。このとき、駆動トランジスタ22のゲート電極が信号線33から電気的に切り離されることによってフローティング状態になる。しかし、ゲート−ソース間電圧Vgsが駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに等しいために、当該駆動トランジスタ22はカットオフ状態にある。従って、駆動トランジスタ22にドレイン−ソース間電流Idsは流れない。
【0098】
(信号書込み&移動度補正期間)
次に、時刻t15で、図13(B)に示すように、信号線33の電位が基準電位Vofsから映像信号の信号電圧Vsigに切り替わる。続いて、時刻t16で、走査線31の電位WSが高電位側に遷移することで、図13(C)に示すように、書込みトランジスタ23が導通状態になって映像信号の信号電圧Vsigをサンプリングして画素20内に書き込む。
【0099】
この書込みトランジスタ23による信号電圧Vsigの書込みにより、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgが信号電圧Vsigとなる。そして、映像信号の信号電圧Vsigによる駆動トランジスタ22の駆動の際に、当該駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが保持容量24に保持された閾値電圧Vthに相当する電圧と相殺される。この閾値キャンセルの原理の詳細については後述する。
【0100】
このとき、有機EL素子21はカットオフ状態(ハイインピーダンス状態)にある。従って、映像信号の信号電圧Vsigに応じて電源供給線32から駆動トランジスタ22に流れる電流(ドレイン−ソース間電流Ids)は、有機EL素子21の等価容量及び補助容量25に流れ込み、これらの容量の充電が開始される。
【0101】
有機EL素子21の等価容量及び補助容量25が充電されることにより、駆動トランジスタ22のソース電位Vsが時間の経過とともに上昇していく。このとき既に、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthの画素毎のばらつきがキャンセルされており、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsは当該駆動トランジスタ22の移動度μに依存したものとなる。尚、駆動トランジスタ22の移動度μは、当該駆動トランジスタ22のチャネルを構成する半導体薄膜の移動度である。
【0102】
ここで、映像信号の信号電圧Vsigに対する保持容量24の保持電圧Vgsの比率、即ち、書込みゲインGが1(理想値)であると仮定する。すると、駆動トランジスタ22のソース電位VsがVofs−Vth+ΔVの電位まで上昇することで、駆動トランジスタ22のゲート‐ソース間電圧VgsはVsig−Vofs+Vth−ΔVとなる。
【0103】
すなわち、駆動トランジスタ22のソース電位Vsの上昇分ΔVは、保持容量24に保持された電圧(Vsig−Vofs+Vth)から差し引かれるように、換言すれば、保持容量24の充電電荷を放電するように作用し、当該保持容量24に対して負帰還がかけられることになる。従って、ソース電位Vsの上昇分ΔVは負帰還の帰還量となる。
【0104】
このように、駆動トランジスタ22に流れるドレイン−ソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVでゲート‐ソース間電圧Vgsに負帰還をかけることで、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsの移動度μに対する依存性を打ち消すことができる。この打ち消す処理が、駆動トランジスタ22の移動度μの画素毎のばらつきを補正する移動度補正処理である。
【0105】
より具体的には、駆動トランジスタ22のゲート電極に書き込まれる映像信号の信号振幅Vin(=Vsig−Vofs)が高い程ドレイン−ソース間電流Idsが大きくなるため、負帰還の帰還量ΔVの絶対値も大きくなる。従って、発光輝度レベルに応じた移動度補正処理が行われる。
【0106】
また、映像信号の信号振幅Vinを一定とした場合、駆動トランジスタ22の移動度μが大きいほど負帰還の帰還量ΔVの絶対値も大きくなるため、画素毎の移動度μのばらつきを取り除くことができる。従って、負帰還の帰還量ΔVは、移動度補正処理の補正量とも言える。移動度補正の原理の詳細については後述する。
【0107】
(発光期間)
次に、時刻t17で走査線31の電位WSが低電位側に遷移することで、図13(D)に示すように、書込みトランジスタ23が非導通状態となる。これにより、駆動トランジスタ22のゲート電極は、信号線33から電気的に切り離されるためにフローティング状態になる。
【0108】
ここで、駆動トランジスタ22のゲート電極がフローティング状態にあるときは、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間に保持容量24が接続されていることにより、駆動トランジスタ22のソース電位Vsの変動に連動してゲート電位Vgも変動する。このように、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgがソース電位Vsの変動に連動して変動する動作が、保持容量24によるブートストラップ動作である。
【0109】
駆動トランジスタ22のゲート電極がフローティング状態になり、それと同時に、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsが有機EL素子21に流れ始めることにより、当該電流Idsに応じて有機EL素子21のアノード電位が上昇する。
【0110】
そして、有機EL素子21のアノード電位がVthel+Vcathを越えると、有機EL素子21に駆動電流が流れ始めるため有機EL素子21が発光を開始する。また、有機EL素子21のアノード電位の上昇は、即ち、駆動トランジスタ22のソース電位Vsの上昇に他ならない。そして、駆動トランジスタ22のソース電位Vsが上昇すると、保持容量24のブートストラップ動作により、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgも連動して上昇する。
【0111】
このとき、ブートストラップゲインが1(理想値)であると仮定した場合、ゲート電位Vgの上昇量はソース電位Vsの上昇量に等しくなる。故に、発光期間中、駆動トランジスタ22のゲート‐ソース間電圧Vgsは、Vsig−Vofs+Vth−ΔVで一定に保持される。そして、時刻t18で信号線33の電位が映像信号の信号電圧Vsigから基準電位Vofsに切り替わる。
【0112】
以上説明した一連の回路動作において、閾値補正準備、閾値補正、信号電圧Vsigの書込み(信号書込み)、及び、移動度補正の各処理動作は、1水平走査期間(1H)において実行される。また、信号書込み及び移動度補正の各処理動作は、時刻t6−t7の期間において並行して実行される。
【0113】
〔分割閾値補正〕
尚、ここでは、閾値補正処理を1回だけ実行する駆動法を採る場合を例に挙げて説明したが、この駆動法は一例に過ぎず、この駆動法に限られるものではない。例えば、閾値補正処理を移動度補正及び信号書込み処理と共に行う1H期間に加えて、当該1H期間に先行する複数の水平走査期間に亘って分割して複数回閾値補正処理を実行する、所謂分割閾値補正を行う駆動法を採ることも可能である。
【0114】
この分割閾値補正の駆動法によれば、高精細化に伴う多画素化によって1水平走査期間として割り当てられる時間が短くなったとしても、閾値補正期間として複数の水平走査期間に亘って十分な時間を確保することができる。従って、1水平走査期間として割り当てられる時間が短くなっても、閾値補正処理を確実に実行できることになる。
【0115】
〔閾値キャンセルの原理〕
ここで、駆動トランジスタ22の閾値キャンセル(即ち、閾値補正)の原理について説明する。駆動トランジスタ22は、飽和領域で動作するように設計されているために定電流源として動作する。これにより、有機EL素子21には駆動トランジスタ22から、次式(1)で与えられる一定のドレイン−ソース間電流(駆動電流)Idsが供給される。
ds=(1/2)・μ(W/L)Cox(Vgs−Vth2 ……(1)
ここで、Wは駆動トランジスタ22のチャネル幅、Lはチャネル長、Coxは単位面積当たりのゲート容量である。
【0116】
図14(A)に、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Ids対ゲート−ソース間電圧Vgsの特性を示す。図14(A)の特性図に示すように、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthの画素毎のばらつきに対するキャンセル処理(補正処理)を行わないと、閾値電圧VthがVth1のときに、ゲート−ソース間電圧Vgsに対応するドレイン−ソース間電流IdsがIds1になる。
【0117】
これに対して、閾値電圧VthがVth2(Vth2>Vth1)のとき、同じゲート−ソース間電圧Vgsに対応するドレイン−ソース間電流IdsがIds2(Ids2<Ids1)になる。すなわち、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが変動すると、ゲート−ソース間電圧Vgsが一定であってもドレイン−ソース間電流Idsが変動する。
【0118】
一方、上記構成の画素(画素回路)20では、先述したように、発光時の駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧VgsはVsig−Vofs+Vth−ΔVである。従って、これを式(1)に代入すると、ドレイン−ソース間電流Idsは、次式(2)で表される。
ds=(1/2)・μ(W/L)Cox(Vsig−Vofs−ΔV)2 ……(2)
【0119】
すなわち、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthの項がキャンセルされており、駆動トランジスタ22から有機EL素子21に供給されるドレイン−ソース間電流Idsは、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに依存しない。その結果、駆動トランジスタ22の製造プロセスのばらつきや経時変化等により、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが画素毎に変動したとしても、ドレイン−ソース間電流Idsが変動しないために、有機EL素子21の発光輝度を一定に保つことができる。
【0120】
〔移動度補正の原理〕
次に、駆動トランジスタ22の移動度補正の原理について説明する。図14(B)に、駆動トランジスタ22の移動度μが相対的に大きい画素Aと、駆動トランジスタ22の移動度μが相対的に小さい画素Bとを比較した状態で特性カーブを示す。駆動トランジスタ22をポリシリコン薄膜トランジスタなどで構成した場合、画素Aや画素Bのように、画素間で移動度μがばらつくことは避けられない。
【0121】
画素Aと画素Bで移動度μにばらつきがある状態で、駆動トランジスタ22のゲート電極に例えば両画素A,Bに同レベルの信号振幅Vin(=Vsig−Vofs)を書き込んだ場合を考える。この場合、何ら移動度μの補正を行わないと、移動度μの大きい画素Aに流れるドレイン−ソース間電流Ids1′と移動度μの小さい画素Bに流れるドレイン−ソース間電流Ids2′との間には大きな差が生じてしまう。このように、移動度μの画素毎のばらつきに起因してドレイン−ソース間電流Idsに画素間で大きな差が生じると、画面のユニフォーミティ(一様性)が損なわれる。
【0122】
ここで、先述した式(1)のトランジスタ特性式から明らかなように、移動度μが大きいとドレイン−ソース間電流Idsが大きくなる。従って、負帰還における帰還量ΔVは移動度μが大きくなるほど大きくなる。図14(B)に示すように、移動度μの大きな画素Aの帰還量ΔV1は、移動度の小さな画素Bの帰還量ΔV2に比べて大きい。
【0123】
そこで、移動度補正処理によって駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVでゲート−ソース間電圧Vgsに負帰還をかけることにより、移動度μが大きいほど負帰還が大きくかかることになる。その結果、移動度μの画素毎のばらつきを抑制することができる。
【0124】
具体的には、移動度μの大きな画素Aで帰還量ΔV1の補正をかけると、ドレイン−ソース間電流IdsはIds1′からIds1まで大きく下降する。一方、移動度μの小さな画素Bの帰還量ΔV2は小さいために、ドレイン−ソース間電流IdsはIds2′からIds2までの下降となり、それ程大きく下降しない。結果的に、画素Aのドレイン−ソース間電流Ids1と画素Bのドレイン−ソース間電流Ids2とはほぼ等しくなるために、移動度μの画素毎のばらつきが補正される。
【0125】
以上をまとめると、移動度μの異なる画素Aと画素Bがあった場合、移動度μの大きい画素Aの帰還量ΔV1は移動度μの小さい画素Bの帰還量ΔV2に比べて大きくなる。つまり、移動度μが大きい画素ほど帰還量ΔVが大きく、ドレイン−ソース間電流Idsの減少量が大きくなる。
【0126】
従って、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVで、ゲート−ソース間電圧Vgsに負帰還をかけることで、移動度μの異なる画素のドレイン−ソース間電流Idsの電流値が均一化される。その結果、移動度μの画素毎のばらつきを補正することができる。すなわち、駆動トランジスタ22に流れる電流(ドレイン−ソース間電流Ids)に応じた帰還量(補正量)ΔVで、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsに対して、即ち、保持容量24に対して負帰還をかける処理が移動度補正処理となる。
【0127】
[2−3.駆動回路部の構成例]
ここで、画素アレイ部30の周辺に配置される回路部、即ち、画素アレイ部30の各画素20を駆動する駆動回路部の構成例について説明する。
【0128】
(A.書込み走査回路)
先ず、駆動回路部として、画素アレイ部30の各画素20への信号電圧Vsig/基準電位Vofsの書込みに際し、各画素20を行単位で順次選択走査する書込み走査回路40を例に挙げて説明する。
【0129】
図15は、書込み走査回路40の構成例についての説明図である。図15において、(A)は書込み走査回路40の構成の一例を示し、(B)は書込み走査回路40を構成するシフトレジスタの回路例を示している。
【0130】
図15(A)において、書込み走査回路40は、基本的に、図示せぬクロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフト(転送)するシフトレジスタ回路41を主要部として構成されている。また、書込み走査回路40は、画素アレイ部30の各行に対応して、シフトレジスタ回路41の各転送段(単位回路)…,41i,41i+1,…毎にバッファ回路…,42i,42i+1,…を備えている。
【0131】
ここでは、シフトレジスタ回路41として、i行目、i+1行目の2段分の転送段41i,41i+1が縦続接続された構成を図示しているが、実際には、画素アレイ部30の行数分の転送段411〜41mが縦続接続されることになる。シフトレジスタ回路41の各転送段、例えばi行目の転送段41iは、シフトレジスタ(SR)411、インバータ(INV)412、シフトレジスタ413、及び、インバータ414が縦続接続されて単位回路を構成している。
【0132】
インバータ412,414の具体的な回路例については後述する。シフトレジスタ413は、図15(B)に示すように、クロックパルスckで動作するトランジスタQ1、クロックパルスxckで動作するトランジスタQ2、及び、容量c1によって構成されている。尚、シフトレジスタ413の出力端とインバータ414の入力端との間には寄生容量C2が介在する。
【0133】
再び図15(A)において。バッファ回路42iは、インバータ421、論理回路422、及び、インバータ423が縦続接続された構成となっている。このように、シフトレジスタ回路41の各転送段41i,41i+1や、バッファ回路42(42i,42i+1)は、インバータ回路を用いて構成されている。
【0134】
(B.片チャネルトランジスタのインバータ回路)
ところで、書込み走査回路40等の駆動回路部の作製に当っては、当該駆動回路部を片チャネル(Nチャネルのみ、または、Pチャネルのみ)のトランジスタを用いて構成すれば、両チャネルのトランジスタを用いて構成する場合に比べて製造コストを低減できる。従って、有機EL表示装置10の低コスト化を図るには、例えば書込み走査回路40において、シフトレジスタ回路41やバッファ回路42を構成するインバータ回路を、片チャネルのトランジスタを用いて構成するのが好ましい。
【0135】
そして、インバータ回路を片チャネルのトランジスタを用いて構成する場合、インバータ回路の回路動作を確実なものにするために、片チャネルのトランジスタと容量素子との組み合わせによる回路構成が採られる。以下に、例えばシフトレジスタ回路41を構成するインバータ412,414として用いる、片チャネルのトランジスタと容量素子との組み合わせからなるインバータ回路について説明する。
【0136】
《回路構成》
図16は、片チャネルのトランジスタと容量素子との組み合わせからなるインバータ回路についての説明図であり、(A)は回路構成の一例を示し、(B)は入力パルス信号INVin及び出力パルス信号INVoutの各波形を示している。
【0137】
本回路例に係るインバータ回路90は、入力端子91を介して入力されるパルス信号INVinをほぼ反転させ、パルス信号INVinと逆相のパルス信号INVoutとして出力端子92から出力する。このインバータ回路90においては、電源電圧として、正側については、例えば4つの電源電圧Vcc1,Vcc2,Vcc3,Vcc4を用い、負側については、例えば4つの電源電圧Vss1,Vss2,Vss3,Vss4を用いている。但し、ここで示した電源電圧は一例であって、これに限られるものではなく、もっと少ない数の電源電圧であっても良いし、正側、負側それぞれ1種類の電源電圧とすることも可能である。
【0138】
インバータ回路90は、例えば、7つのトランジスタTr1〜Tr7、5つの容量素子C1〜C5、及び、遅延回路93を有する回路構成となっている。7つのトランジスタTr1〜Tr7は、互いに同一チャネル(片チャネル)、例えばNチャネルのMOS(Metal Oxide Semiconductor:金属酸化膜半導体)型の薄膜トランジスタ(TFT)である。ここでは、トランジスタTr1〜Tr7として、Nチャネルのみのトランジスタを用いるとしたが、Pチャネルのみのトランジスタを用いることも可能である。
【0139】
トランジスタTr1は、ドレイン電極が正側電源電圧Vcc2の電源線L12に接続され、ソース電極がノードN1に接続され、入力端子91を介して入力される入力電圧(パルス信号INVin)に応じた電圧をゲート入力とする。トランジスタTr2は、ドレイン電極が正側電源電圧Vcc3の電源線L13に接続され、ソース電極がノードN2に接続され、ゲート電極がノードN1に接続されている。トランジスタTr3は、ドレイン電極が正側電源電圧Vcc4の電源線L14に接続され、ソース電極が出力端子92に接続され、ゲート電極がノードN2に接続されている。
【0140】
遅延回路93は、例えば、互いに並列に接続された2つのトランジスタTr91,Tr92によって構成されている。2つのトランジスタTr91,Tr92は、当然のことながら、トランジスタTr1〜Tr7と同じ、NチャネルのMOSトランジスタである。トランジスタTr91,Tr92の共通接続された一方の電極(ソース電極/ドレイン電極)は遅延回路93の回路入力端となり、他方の電極(ドレイン電極/ソース電極)は遅延回路93の回路出力端となる。
【0141】
この遅延回路93において、回路入力端は入力端子91に接続されている。トランジスタTr91のゲート電極も入力端子91に接続されている。トランジスタTr92のゲート電極は、正側電源電圧Vcc1の電源線L11に接続されている。
【0142】
トランジスタTr4は、ドレイン電極がトランジスタTr1のゲート電極に接続され、ソース電極が負側電源電圧Vss1の電源線L21に接続され、ゲート電極が遅延回路93の回路出力端に接続されている。トランジスタTr5は、ドレイン電極がノードN1に接続され、ソース電極が負側電源電圧Vss2の電源線L22に接続されている。すなわち、トランジスタTr5は、トランジスタTr1に対して直列に接続され、ゲート電極が入力端子91に接続されている。
【0143】
トランジスタTr6は、ドレイン電極がノードN2に接続され、ソース電極が負側電源電圧Vss3の電源線L23に接続されている。すなわち、トランジスタTr6は、トランジスタTr2に対して直列に接続され、ゲート電極が入力端子91に接続されている。トランジスタTr7は、ドレイン電極が出力端子92に接続され、ソース電極が負側電源電圧Vss4の電源線L24に接続され、ゲート電極が入力端子91に接続されている。
【0144】
容量素子C1は、一方の電極がトランジスタTr1のゲート電極に接続され、他方の電極がノードN1に接続されている。すなわち、容量素子C1はトランジスタTr1のゲート−ソース間に接続されている。容量素子C2は、一方の電極がノードN1に接続され、他方の電極が入力端子91に接続されている。ノードN1は、トランジスタTr1及びトランジスタTr5の共通接続ノードでもある。
【0145】
容量素子C3は、一方の電極がトランジスタTr2のゲート電極に接続され、他方の電極がノードN2に接続されている。容量素子C4は、一方の電極がトランジスタTr3のゲート電極に接続され、他方の電極が出力端子92に接続されている。容量素子C5は、一方の電極がトランジスタTr4のゲート電極に接続され、他方の電極が負側電源電圧Vss1の電源線L21に接続されている。
【0146】
ここで、トランジスタTr91,Tr92によって構成された遅延回路93は、入力端子91とトランジスタTr4のゲート電極とをつなぐ高抵抗素子の役割を持っている。これにより、入力端子91を介して入力されるパルス信号INVinが遅延回路93を通過することで、パルス信号INVinの電位の変化が時間的に遅れてトランジスタTr4のゲート電極に伝わる。遅延回路93の遅延量については、正側電源電圧Vcc1の電圧値及び容量素子C5の容量値を変えることによってコントロールすることができる。
【0147】
トランジスタTr1は、容量素子C1の端子間電圧に応じて、正側電源電圧Vcc2の電源線L12とノードN1との間を電気的に接続したり、切断したりする。トランジスタTr2は、ノードN1の電位とノードN2の電位との電位差、即ち、容量素子C3の両端間電圧に応じて、正側電源電圧Vcc3の電源線L13とノードN2との間を電気的に接続したり、切断したりする。トランジスタTr3は、ノードN2の電位と出力端子92の電位との電位差、即ち、容量素子C4の両端間電圧に応じて、正側電源電圧Vcc4の電源線L14と出力端子92との間を電気的に接続したり、切断したりする。
【0148】
トランジスタTr4は、遅延回路93の出力端の電位と負側電源電圧Vss1との電位差、即ち、容量素子C5の端子間電圧に応じて、トランジスタTr1のゲート電極と負側電源電圧Vss1の電源線L21との間を電気的に接続したり、切断したりする。トランジスタTr5は、入力端子91の電位と負側電源電圧Vss2との電位差に応じて、ノードN1と負側電源電圧Vss2の電源線L22との間を電気的に接続したり、切断したりする。トランジスタTr6は、入力端子91の電位と負側電源電圧Vss3との電位差に応じて、ノードN2と負側電源電圧Vss3の電源線L23との間を電気的に接続したり、切断したりする。トランジスタTr7は、入力端子91の電位と負側電源電圧Vss4との電位差に応じて、出力端子92と負側電源電圧Vss4の電源線L24との間を電気的に接続したり、切断したりする。
【0149】
《回路動作》
次に、上記構成のインバータ回路90において、入力端子91を介して入力されるパルス信号INVinがアクティブ状態(高電位状態)になったとき、及び、非アクティブ状態(低電位状態)になったときの回路動作について説明する。
【0150】
・パルス信号INVinがアクティブ状態になったとき
パルス信号INVinがアクティブ状態になると、トランジスタTr7のゲート電位が高電位状態になり、トランジスタTr7が導通状態になるために、出力端子92からは負側電源電圧Vss4がパルス信号INVoutの低電位として導出される。このとき同時に、トランジスタTr5,Tr6も導通状態になるために、ノードN1,N2の電位はそれぞれ負側電源電位Vss2,Vss3に固定される。
【0151】
これにより、トランジスタTr2,Tr3が共に非導通状態になる。また、トランジスタTr4が遅延回路93の遅延出力に応答して導通状態になるため、トランジスタTr1のゲート電位が負側電源電圧Vss1に固定される。これにより、トランジスタTr1も非導通状態になる。すなわち、パルス信号INVinがアクティブ状態になったときは、正側のトランジスタTr1,Tr2,Tr3が全て非導通状態になる。
【0152】
・パルス信号INVinが非アクティブ状態になったとき
パルス信号INVinが非アクティブ状態になると、これと同時に、負電位側のトランジスタTr5,Tr6,Tr7が全て非導通状態になる。加えて、パルス信号INVinが高電位から低電位に遷移するときの変動量に応じた、容量素子C2の容量カップリングによってノードN1の電位、即ち、トランジスタTr2のゲート電位が降下する。
【0153】
この容量カップリングによる電位降下の瞬間には、遅延回路93による遅延によってトランジスタTr4のゲート電位は高電位の状態を保っているために、トランジスタTr1のゲート電位が負側電源電圧Vss1の状態にある。従って、トランジスタTr1のゲート−ソース間電圧VgsがノードN1の電位降下に伴って大きくなり、閾値電圧を超えることによってトランジスタTr1が導通状態になる。これにより、ノードN1の電位が正側電源電圧Vcc1へと上昇する。
【0154】
すると、トランジスタTr2のゲート−ソース間電圧Vgsも大きくなるためトランジスタTr2も導通状態になる。これにより、ノードN2の電位が正側電源電圧Vcc2へと上昇し、トランジスタTr3のゲート−ソース間電圧Vgsも大きくなるため、トランジスタTr2に続いてトランジスタTr3も導通状態になる。そして、トランジスタTr3が導通状態になることで、出力端子92からは正側電源電圧Vcc4がパルス信号INVoutの正電位して導出される。
【0155】
ここで、容量素子C2の容量カップリングによるトランジスタTr2のゲート電位の降下によってトランジスタTr1をより迅速に導通状態に移行させるには、容量素子C2の容量値をある程度大きく設定すると良い。そして、トランジスタTr1が迅速に導通状態に移行することで、パルス信号INVoutの遷移タイミング(立ち上がり/立ち下がりのタイミング)をより正確に確定できる。
【0156】
パルス信号INVoutの遷移タイミングは、当該パルス信号INVoutのパルス幅を決める。そして、駆動回路部が書込み走査回路40の場合には、パルス信号INVoutは書込み走査信号WSを生成する基準の信号として用いられる。従って、パルス信号INVoutのパルス幅は、書込み走査信号WSのパルス幅を決める基準となり、先述した移動度補正処理の動作時間、即ち、移動度補正時間を決める基準となる。
【0157】
ここで、最適な移動度補正時間が長いときと短いときで書込み走査信号WSのパルス幅に同じ量(時間)のばらつきがあっても、最適な移動度補正時間が短いときの書込み走査信号WSのパルス幅のばらつきは相対的に大きくなってしまう。そして、書込み走査信号WSのパルス幅のばらつきが輝度ばらつきとなって画質を悪化させる一因となる。このような観点からも、容量素子C2の容量値を大きく設定し、トランジスタTr1をより迅速に導通状態に移行させることによって、移動度補正時間を決める基準となるパルス信号INVoutの遷移タイミングをより正確に確定することが重要になる。
【0158】
上述した回路動作の説明から明らかなように、片チャネルのトランジスタによって構成されるインバータ回路90においては、回路動作を確実なものにするためには、特に、容量カップリングによってノードN1の電位を降下させる容量素子C2が不可欠となる。また、容量素子C2以外にも、トランジスタTr1,Tr2,Tr3のゲート−ソース間電圧Vgsを保持するための容量素子C1、容量素子C2及び容量素子C4も必要である。これらの容量素子C1〜C4は、両チャネルのトランジスタによって構成されるインバータ回路では不要なものである。
【0159】
以上説明した、片チャネルのトランジスタと容量素子との組合せからなるインバータ回路90は、図15(A)に示す書込み走査回路40のシフトレジスタ回路41を構成するインバータ412,414の他に、バッファ回路42を構成するインバータ421,423等として用いることができる。電源供給走査回路50も基本的に書込み走査回路40と同様の構成となることから、インバータ回路90は、電源供給走査回路50を構成するインバータとしても用いることができる。
【0160】
(C.信号出力回路)
次に、駆動回路部として、書込み走査回路40によって選択走査された画素行の各画素20に対して、輝度情報に応じた信号電圧Vsig/基準電位Vofsを選択的に出力する信号出力回路60を例に挙げて説明する。
【0161】
図17は、信号出力回路60の構成の一例を示す回路図である。本例に係る信号出力回路60は、1本のデータ線を通して時系列に供給される映像信号DATAを、複数の画素列を単位として時分割で供給する時分割駆動方式(セレクタ方式)を採用している。ここでは一例として、例えばRGBの映像信号DATAをRGBに対応した3本の画素列(信号線)を単位として時分割で供給する時分割駆動方式を例に挙げる。
【0162】
図17において、Rの信号線33i-1の一端には2個の選択スイッチ61R,62Rの各出力端が共通に接続されている。G信号の線33iの一端には2個の選択スイッチ61G,62Gの各出力端が共通に接続されている。Bの信号線33i+1の一端には2個の選択スイッチ61B,62Bの各出力端が共通に接続されている。
【0163】
選択スイッチ61R,61G,61B及び選択スイッチ62R,62G,62Bは、例えば、NchMOSトランジスタによって構成されている。但し、選択スイッチ61R,61G,61B及び選択スイッチ62R,62G,62Bについては、PchMOSトランジスタからなる構成や、NchMOSトランジスタとPchMOSトランジスタとが並列接続されてなる構成とすることも可能である。
【0164】
映像信号DATAは、RGBの各信号電圧が例えばRGBの順に供給される時系列の信号であり、図示せぬドライバIC(信号生成部)からデータ線63を通して選択スイッチ61R,61G,61Bの各入力端に共通に与えられる。基準電位Vofsは、図示せぬ基準電位生成部から信号線645を通して選択スイッチ62R,62G,62Bの各入力端に共通に与えられる。
【0165】
選択スイッチ61R,61G,61Bの各ゲートは、制御線641,642,643にそれぞれ接続されている。選択スイッチ62R,62G,62Bの各ゲートは、制御線644に共通に接続されている。制御線641,642,643,644には、図示せぬタイミング発生部からスイッチ制御信号SELR,SELG,SELB,GATEofsが与えられる。
【0166】
スイッチ制御信号SELRは、時系列の信号のうちRの信号電圧に同期してアクティブ(本例では、高レベル)となる。スイッチ制御信号SELGは、時系列の信号のうちGの信号電圧に同期してアクティブとなる。スイッチ制御信号SELBは、時系列の信号のうちBの信号電圧に同期してアクティブとなる。スイッチ制御信号GATEofsは、先述した基準電位Vofsの書込みタイミングでアクティブとなる。
【0167】
上記の構成において、選択スイッチ61Rは、スイッチ制御信号SELRに応答して導通状態になることで、Rの信号電圧を選択して信号線33i-1に出力する。選択スイッチ61Gは、スイッチ制御信号SELGに応答して導通状態になることで、Gの信号電圧を選択して信号線33iに出力する。選択スイッチ61Bは、スイッチ制御信号SELBに応答して導通状態になることで、Bの信号電圧を選択して信号線33i+1に出力する。選択スイッチ62R,62G,62Bは、スイッチ制御信号GATEofsに応答して導通状態になることで、基準電位Vofsを選択して信号線33i-1,33i,33i+1に出力する。
【0168】
以上説明した本適用例に係る有機EL表示装置10Aにおいて、書込み走査回路40、電源供給走査回路50、及び、信号出力回路60が、先述した実施形態に係る表示装置10における周辺駆動部80A〜80C(図1、図4、図7を参照)に相当する。そして、例えば図7において、周辺駆動部80A〜80Cと基板外部とを電気的に接続するのに、パッド部84A,84B、パッド群84C、及び、パッド84D,84Eが用いられる。
【0169】
具体的には、図18において、基板端部70Bに搭載される周辺駆動部80Aが書込み走査回路40に、基板端部70Cに搭載される周辺駆動部80Bが電源供給走査回路50に、基板端部70Dに搭載される周辺駆動部80Cが信号出力回路60にそれぞれ対応している。因みに、図18は図7に対応する図面である。
【0170】
周辺駆動部80Aである書込み走査回路40は、基板端部70Bの上端部70B0に設けられたパッド部84Aにて、例えばフレキシブル基板87Aを介して基板外部と電気的に接続される。そして、書込み走査回路40には、フレキシブル基板87A及びパッド部84Aを通して電源電圧、先述したクロックパルスckやスタートパルスsp等が基板外部から入力される。
【0171】
周辺駆動部80Bである電源供給走査回路50は、基板端部70Cの上端部70C0に設けられたパッド部84Bにて、例えばフレキシブル基板87Bを介して基板外部と電気的に接続される。そして、電源供給走査回路50には書込み走査回路40と同様に、フレキシブル基板87B及びパッド部84Bを通して電源電圧、先述したクロックパルスckやスタートパルスsp等が基板外部から入力される。
【0172】
周辺駆動部80Cである信号出力回路60は、基板端部70Dに設けられたパッド部群84Cにて、例えばフレキシブル基板群87Cを介して基板外部に設けられた信号供給源であるドライバIC88と電気的に接続される。そして、信号出力回路60には、ドライバIC88からフレキシブル基板群87C及びパッド部群84Cを通して映像信号の信号電圧Vsigが入力される。
【0173】
信号出力回路60は更に、基板端部70Dの両端部70D1,70D2に設けられたパッド部84D,84Eにて、例えばフレキシブル基板87D,87Eを介して基板外部と電気的に接続される。そして、信号出力回路60には、フレキシブル基板87D,87E及びパッド部84D,84Eを通して、信号出力回路60を制御する信号が基板外部から入力される。
【0174】
具体的には、図17に示すように、信号出力回路60が時分割駆動方式を採用しているものとすると、選択スイッチ61R,61G,61B及び選択スイッチ62R,62G,62Bを構成するトランジスタを制御するゲート制御信号が入力される。ここで、ゲート制御信号は、先述したスイッチ制御信号SELR,SELG,SELB,GATEofsである。信号出力回路60には、ゲート制御信号以外にも基準電位Vofsが、フレキシブル基板87D,87E及びパッド部84D,84Eを通して基板外部から入力される。
【0175】
ここで、周辺駆動部80Cが特に信号出力回路60の場合は、画素アレイ部30の画素列毎に映像信号を基板外部から取り込むパット部群84Cが、画素アレイ部30の水平方向の幅に亘って、画素アレイ部30の画素列にほぼ対応して基板端部70Dの下端に設けられる。しかも、折り曲げ領域と信号出力回路60との間の間隔が狭いため、この部分に周辺回路部の配線を引き回すことができない。
【0176】
このような理由から、ゲート制御信号(スイッチ制御信号SELR,SELG,SELB,GATEofs)や基準電位Vofsを基板外部から取り込むためのパッド部を設けるためのスペースを基板端部70Dに確保することができない。従って、信号出力回路60に対してゲート制御信号や基準電位Vofsを基板外部から取り込むためのパッド部84D,84Eを、基板端部70D上であって当該基板端部70D内における折り曲げ部を越えた部位、即ち、両端部70D1,70D2に設けるようにする。換言すれば、基板端部70Dの両端部70D1,70D2にパッド部84D,84Eを設けることで、折り曲げ領域と信号出力回路60との間が狭くても、信号出力回路60に対してゲート制御信号や基準電位Vofsを基板外部から確実に与えることができる。
【0177】
<3.変形例>
上記適用例では、走査回路部、即ち、書込み走査回路40及び電源供給走査回路50を表示パネル70内に設ける、具体的には、基板端部70B,70Cに実装する構成を採る有機EL表示装置10Aに適用した場合を例に挙げたが、本発明はこの適用例に限られるものではない。
【0178】
すなわち、図19に示すように、書込み走査回路40及び電源供給走査回路50を内蔵させずに、外部ドライバを用いる構成を採る有機EL表示装置10Bに対しても同様に適用可能である。この場合には、基板端部70B,70Cにパッド部群84F,84Gを配置し、これらパッド部群84F,84Gを介して画素アレイ部30と基板外部とを電気的に接続するようにすれば良い。
【0179】
また、上記適用例では、画素20の電気光学素子として、有機EL素子を用いた有機EL表示装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明はこの適用例に限られるものではない。具体的には、本発明は、無機EL素子、LED素子、半導体レーザー素子などの電気光学素子(発光素子)を用いた表示装置全般に対して適用可能である。
【0180】
<4.電子機器>
以上説明した本発明による表示装置は、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。一例として、図20〜図24に示す様々な電子機器、例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラなどの表示装置に適用することが可能である。
【0181】
このように、あらゆる分野の電子機器において、その表示装置として、本発明による表示装置を用いることができる。先述した実施形態の説明から明らかなように、本発明による表示装置は、画素アレイ部の各画素を駆動する周辺回路部の機能を制限することなく、表示パネルの更なる狭額縁化を図ることができる。従って、各種の電子機器において、その表示装置として、本発明による表示装置を用いることで、画質を維持しつつ表示装置のコンパクト化を図ることができる。
【0182】
本発明による表示装置は、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。例えば、画素アレイ部30に透明なガラス等の対向部が貼り付けられて形成された表示モジュールが該当する。この透明な対向部には、カラーフィルタや保護膜などが設けられてもよい。尚、表示モジュールには、外部から画素アレイ部への信号等を入出力するための回路部やFPC(フレキシブルプリントサーキット)等が設けられていてもよい。
【0183】
以下に、本発明が適用される電子機器の具体例について説明する。
【0184】
図20は、本発明が適用されるテレビジョンセットの外観を示す斜視図である。本適用例に係るテレビジョンセットは、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される映像表示画面部101を含み、その映像表示画面部101として本発明による表示装置を用いることにより作成される。
【0185】
図21は、本発明が適用されるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含み、その表示部112として本発明による表示装置を用いることにより作製される。
【0186】
図22は、本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するとき操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含み、その表示部123として本発明による表示装置を用いることにより作製される。
【0187】
図23は、本発明が適用されるビデオカメラの外観を示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含み、その表示部134として本発明による表示装置を用いることにより作製される。
【0188】
図24は、本発明が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す外観図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含んでいる。そして、ディスプレイ144やサブディスプレイ145として本発明による表示装置を用いることにより本適用例に係る携帯電話機が作製される。
【符号の説明】
【0189】
10…表示装置、10A…有機EL表示装置、20…画素、21…有機EL素子、22…駆動トランジスタ、23…書込みトランジスタ、24…保持容量、30…画素アレイ部、40…書込み走査回路、50…電源供給走査回路、60…信号出力回路、70…表示パネル、70A…基板本体部、70B,70C,70D…基板端部、71…絶縁性基板、72,74…絶縁膜、73…導電性基板、81…配線部、80(80A,80B,80C)…周辺回路部、85…折り曲げ領域(折り曲げ部)、86(86A,86B,86C,86D)…水分浸入防止溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げ可能な基板と、
電気光学素子を含む画素が前記基板上に配置されてなる画素アレイ部と、
前記基板上の前記画素アレイ部の周辺の少なくとも1辺において折り曲げられた基板端部と、
前記基板端部に配置され、前記画素アレイ部の各画素を駆動する周辺回路部と、
前記周辺回路部と同じ基板端部上に設けられ、前記周辺回路部と基板外部とを電気的に接続するパッド部と
を備える表示装置。
【請求項2】
前記パッド部は、前記周辺回路部と同じ基板端部上であって当該基板端部内における折り曲げ部を越えた部位に設けられている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記基板上の前記折り曲げ部よりも前記画素アレイ部側に、当該画素アレイ部を囲むように水分浸入防止溝が形成されている
請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記水分浸入防止溝は、前記基板端部上の前記折り曲げ部よりも前記周辺回路部側に、当該周辺回路部を囲むように形成されている
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記基板の上に前記電気光学素子を駆動する回路部を構成する回路素子が形成され、当該回路素子の上に平坦化膜及びウインド絶縁膜が積層され、その上方に第2の基板が配されており、
前記第2の基板は、前記基板における前記基板端部及び当該基板端部の折り曲げ部を除く領域に配されている
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記水分浸入防止溝は、前記平坦化膜及び前記ウインド絶縁膜を切除することによって形成されている
請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記周辺回路部は、前記画素アレイ部の各画素に対して画素列毎に映像信号を出力する信号出力回路であり、
前記信号出力回路が設けられる基板端部は、当該基板端部の両端部が折り曲げられており、
前記信号出力回路を制御する制御信号を取り込むパッド部は、前記信号出力回路が設けられる基板端部の折り曲げ部を越えた両端部に設けられている
請求項2に記載の表示装置。
【請求項8】
前記信号出力回路は、1本のデータ線を通して時系列に供給される映像信号を、複数の画素列を単位として時分割で供給する時分割駆動方式を採る
請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
折り曲げ可能な基板と、
電気光学素子を含む画素が前記基板上に配置されてなる画素アレイ部と、
前記基板上の前記画素アレイ部の周辺の少なくとも1辺において折り曲げられた基板端部と、
前記基板端部に配置され、前記画素アレイ部の各画素を駆動する周辺回路部と、
前記周辺回路部と同じ基板端部上に設けられ、前記周辺回路部と基板外部とを電気的に接続するパッド部と
を備える表示装置を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−128006(P2012−128006A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276940(P2010−276940)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】