説明

表示装置

【課題】静止画における画質が従来と同等である事を維持したまま、動画表示におけるぼやけの低減を簡単な回路で実現する。
【解決手段】表示装置は、1フレーム期間前の前フレーム表示データDPと現フレーム表示データDNに基づき表示データの時間方向の変化を強調する機能と弱調する機能と、表示データの空間方向の変化を強調する機能と弱調する機能を有する。前フレーム表示データDPと現フレーム表示データDNで略一致する場合は、外部システムから要求された輝度を表示する。一致しない場合は、mフィールドのうち、1フィールドに対しては、高周波数成分の強調と時間方向の変化の強調を行う強調工程を行う。前記1フィールドに続く(m−1)フィールドに対しては、高周波数成分の弱調と時間方向の変化の弱調を行う弱調工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置及びその駆動方法に関し、例えば、動画表示における動画ぼやけの低減を簡易な回路を用いて図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
表示ディスプレイを特に動画表示の観点で分類した場合、インパルス応答型ディスプレイとホールド応答型ディスプレイに大別される。インパルス応答型ディスプレイとは、ブラウン管の残光特性のように、輝度応答が走査直後から低下するタイプであり、ホールド応答型ディスプレイとは、液晶ディスプレイのように、表示データに基づく輝度を次の走査まで保持し続けるタイプである。
【0003】
ホールド応答型ディスプレイの特徴としては、静止画の場合はちらつきのない良好な表示品質を得ることができるが、動画の場合には移動する物体の周囲がぼやけて見える、所謂動画ぼやけが発生し、著しく表示品質が低下するという課題がある。動画ぼやけの発生要因は、物体の移動に伴い視線を移動する際、輝度のホールドされた表示画像に対して移動前後の表示イメージを観測者が補間する、所謂網膜残像に起因するため、表示ディスプレイの応答速度をどれだけ向上させても動画ぼやけは完全に解消しないことが知られており、これを解決するためには、より短い周波数で表示画像を更新するか、黒画面の挿入によって一旦網膜残像をキャンセルすることで、インパルス応答型ディスプレイに近づける方法が有効であると知られている。
【0004】
一方、動画が求められるディスプレイとしてはテレビ受像機が代表的なものであり、その走査周波数は例えばNTSC信号では60Hzの飛び越し走査、PAL信号では50Hzの順次走査といったように規格化された信号であり、この周波数に基づき表示画像のフレーム周波数を60Hz乃至50Hzとした場合、周波数は十分高くないために動画ぼやけを生じてしまう。
【0005】
この動画ぼやけを改善するための手段として、上記のより短い周波数で画像を更新する技術としては、特許文献1に記されるように、走査周波数を高めると共に、フレーム間の表示データに基づき補間フレームの表示データを生成し、画像の更新速度を高める手法(以下、補間フレーム生成方法と略す)がある。黒フレームを挿入する技術としては、特許文献2に記されるように表示データの間で黒表示データを挿入する技術等が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の手法は、本来存在しない表示データを生成する事であり、より正確なデータを生成しようとすると回路規模が増大してしまい、逆に回路規模を抑えると補間生成ミスが発生し、表示品質の点では著しく低下する恐れがある。
【0007】
一方、特許文献2の手法では、黒フレームと映像フレームで輝度差がある為に、周波数が低くなるとちらつき(フリッカ)が観測され、前記PAL圏に対して適用する事が困難となる。
【0008】
それ以外の手法として、動画ぼやけを低減する方法が、特許文献3に開示されている。
【0009】
特許文献3においては、入力された画像信号のフレーム周波数を整数倍し、増加したフレームに新たな画像信号を生成し、入力画像信号および生成画像信号を用いて画像表示を行う画像表示方法であって、連続する入力画像信号の線形和を取って第1次中間画像信号を生成する工程と、第1次中間画像信号をローパスフィルタで処理して第2次中間画像信号を生成する工程と、連続する入力画像信号の変動領域に対応する第2次中間画像信号のみを抽出して、第3次中間画像信号を生成する工程と、連続する入力画像信号の非変動領域における画像信号のみを抽出して、共通画像信号を生成する工程と、第3次中間画像信号および共通画像信号を合成して、生成画像信号を生成する工程とを有する、としている。
【0010】
【特許文献1】特開2005−6275号公報
【特許文献2】特開2003−280599号公報
【特許文献3】特開2006−259689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記特許文献3の手法は特許文献1の手法と比較して、簡易な回路で実現できるものの、以下の課題を有している。
【0012】
第一に、増加したフレームの映像データは、フレーム間の平均値に応じて決定するとしている。しかしながら、ローパスフィルタのカットオフ周波数によっては、生成された映像データが最適とは限らない。更に表示装置として液晶表示素子を用いたディスプレイは、その応答時間が一般にmsオーダーであり、且つその応答時間は階調間で異なる。従って動画ぼやけに対しては安定した低減効果を得られない可能性がある。
【0013】
第二に、第3次中間画像信号および共通画像信号を合成しているが、合成部分は必ずしも連続性を有せず、合成画像は高周波成分が含まれる事となる。この高周波成分が動いた場合にぼやけとして視認され、動画ぼやけに対しては十分な低減効果を得られない可能性がある。
【0014】
第三に、生成した画像信号と、入力画像信号を交互に表示するとしているが、この場合、生成画像に対しては時間方向に平均処理、空間方向にローパスフィルタ処理を行うものの、一方の入力信号には何ら変換を行わない為、動画ぼやけに対しては十分な低減効果を得られない可能性がある。
【0015】
本発明は上記課題を鑑み、簡易な回路でより効果の高い動画ぼやけ低減を図る事が可能な表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下、話を整理する為に、1画面分の表示データが転送されてくる期間を1入力フレーム期間、マトリックス表示ディスプレイ1画面分の表示データに基づく書き換えが行われる期間を1描画フレーム期間とする。前記特許文献3の場合、1入力フレーム期間は、2描画フレーム期間から成立している。
【0017】
本発明の表示装置は、少なくとも1入力フレーム分の表示データを記憶するメモリを有する。このメモリからの出力表示データは、入力フレーム周波数に対しn倍速(nは1以上の整数)とし、1入力フレームに対して同一の画像からなるn描画フレーム分の表示データを生成する。n=1の場合は、現フレームの表示データはメモリから出力する必要はない。又、前フレームの表示データは、変化を調べる為の比較データとする為、全てのビットを必要とする訳ではない。n=2の場合の例を実施例1に、n=1の場合の例を実施例2に示す。
【0018】
このような表示データから、該当画素近傍における表示データの時間方向の変化に基づき、その変化を強調するように変換する時間方向強調工程と、該当画素近傍における表示データの空間方向の変化である空間周波数の高周波数成分を増加せしめることによって、変化を強調するように変換する空間方向強調工程を1描画フレーム期間行う。時間方向強調と空間方向強調工程はどちらを先に行っても良く、初めに時間方向強調工程を行い、次に空間方向強調工程を行う例を実施例1に、初めに空間方向強調工程を行い、次に時間方向強調工程を行う例を実施例3に示す。
【0019】
前記1描画フレーム期間に続く(m−1)描画フレーム期間(mはnと独立な2以上の整数)では、該当画素近傍における表示データの時間方向の変化に基づき、その変化を弱調するように変換する時間方向弱調工程と、該当画素近傍における表示データの空間方向の変化に基づき、その変化を弱調するように変換する空間方向弱調工程を行う。
【0020】
一方、表示データが入力フレーム間で変化していない場合は、入力された表示データを変換する事なく描画用のデータとする。
【0021】
以上の結果、静止画の場合には表示データの変化が無い為、入力された表示データに基づく輝度表示を実現できる。動画の場合には、同一の入力表示データに基づく映像がn描画フレーム期間、強調工程と弱調工程の周期がm描画フレーム期間となる。このような表示を行った場合、人の目の網膜残像効果から、nとmの最小公倍数:LCM(n,m)(但し、LCM(x,y)はxとyの最小公倍数を示す)からなる映像を視認されるため、この輝度が入力された表示データと略同一となるように変換することで、映像への違和感を抑えることが可能となる。更に、動画の場合においては、強調工程から弱調工程を経て、次の強調工程に至る期間はm描画フレーム期間から成る。この周期が低い場合には、描画フレーム毎の輝度特性の違いから、動きがぶれて見えるジャダーの為に、不快な映像として見える。従って、このジャダーを抑える為には、強調工程から次の強調工程に至るm描画フレーム期間を、24Hz以上とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡易な回路でより効果の高い動画ぼやけ低減を図る事が可能な表示装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態における表示装置は、1フレーム期間前の入力映像データと現フレームの入力映像データに基づき表示データの時間方向の変化を強調する機能と弱調する機能と、表示データの空間方向の変化を強調する機能と弱調する機能を有し、フレーム間での映像が変化した近傍画素に対し、時間方向、空間方向共に表示の変化を強調する画像を1描画フレーム期間、時間方向、空間方向共に表示の変化を弱調する画像を前記1描画フレーム期間に続く(m−1)描画フレーム期間行う。
【実施例1】
【0024】
以下、1入力フレームを2描画フレームで駆動した場合の本発明の実施例について、図1〜10を用いて説明する。以下、「描画フレーム」を「フィールド」という。
【0025】
図1は本実施例における表示装置の構成を示すブロック図である。101は入力表示データ、102は入力制御信号であり、入力表示データ101、入力制御信号102は図説しない外部システムから入力されるものとする。103は制御信号生成回路、104は列電極制御信号、105は行電極制御信号、106はメモリ制御信号、107は演算制御信号である。104〜107の各制御信号は、制御信号生成回路103において入力制御信号102に基づき生成されるものとする。108はフレームダブラ、109は現フレーム表示データ、110は前フレーム表示データである。フレームダブラ108は、メモリ制御信号106に基づき、入力表示データ101の書き込みがなされると共に、入力表示データの、ある画面の表示領域先頭から次の画面の表示領域先頭までの期間(フレーム期間)に対して、2倍の速度で2回の読み出しが行われる。ここで、1フレーム期間に対し、前半の読み出しデータに基づき表示される期間を前半フィールド、後半の読み出しデータに基づき表示される期間を後半フィールドとする。又、現フレーム表示データ109と前フレーム表示データ110は1フレーム分の位相差を有するものとする。111は演算パラメータ格納部、112は演算パラメータであり、演算パラメータ格納部111は演算制御信号107に基づき、格納されたパラメータの読み出しが行われる。113は演算回路、114は時間・空間方向変換表示データである。115は列電極駆動回路、116は列電極駆動信号、117は行電極駆動回路、118は行電極駆動信号である。119は行方向と列方向の構成からなるマトリックス表示ディスプレイである。
【0026】
図2は演算回路113の構成を示すブロック図である。201は時間方向演算パラメータ、202は空間方向演算パラメータであり、演算パラメータ112は、201と202によって構成している。203は現フレーム解析範囲取り出し回路、204は現フレーム取り出し表示データ、205は前フレーム解析範囲取り出し回路、206は前フレーム取り出し表示データ、207は時間方向データ変換回路、208は時間方向データ一致フラグ、209は時間方向変換表示データ、210は空間方向データ変換回路、である。
【0027】
図3は本表示装置に対する表示データの入力から列電極駆動回路までのタイミング関係を示す図である。図において、nフレーム目の入力表示データ101をDI(n)と表す。現フレーム表示データ109において、DI(n)と表した部分は入力表示データ101におけるDI(n)と等しい事を示している。前フレーム表示データ110において、DI’(n)は、入力表示データ101におけるDI(n)と等しいか若しくは表示データのビット数を圧縮したデータである事を示している。
【0028】
時間方向演算パラメータ201において、ODO(i,j)は前半フィールドの時間方向演算パラメータである事を、ODE(i,j)は後半フィールドの時間方向演算パラメータである事を示している。時間方向変換表示データ209において、DTO(n)はnフレーム目前半フィールドの時間方向変換表示データである事を、DTE(n)はnフレーム目後半フィールドの時間方向変換表示データである事を示している。空間方向演算パラメータ202において、CVO(d,i,j)は前半フィールドの空間方向演算パラメータである事を、CVE(d,i,j)は後半フィールドの空間方向演算パラメータである事を示している。時間・空間方向変換表示データ114において、DSO(n)はnフレーム目前半フィールドの時間・空間方向変換表示データである事を、DSE(n)はnフレーム目後半フィールドの時間・空間方向変換表示データである事を示している。
【0029】
図4は時間方向データ変換回路207における動作の流れを示すフローチャートである。
【0030】
図5は空間方向データ変換回路210における動作の流れを示すフローチャートである。
【0031】
図6は本実施例におけるデータ変換の概略を示す図である。
【0032】
図7(A)は時間方向データ演算パラメータの例、図7(B)は空間方向演算パラメータの例である。
【0033】
図8は本実施例の結果得られる表示データの出力画像の例である。
【0034】
図9は本実施例の結果得られる動画特性を示す図である。
【0035】
図10は時間方向データ一致フラグ208と変換データの関係を示す図であり、各フレームにおける輝度を示しており、斜線部分はデータの変換がなされる領域である。
【0036】
以上の図面に基づき、実施例1の動作について詳細に説明する。
【0037】
図説しない外部システムから入力する入力制御信号102に基づき、制御信号生成回路103においては、フレームダブラ108を制御するメモリ制御信号106、演算パラメータ格納部111と演算回路113を制御する演算制御信号107、並びに列電極制御信号104、行電極制御信号105を生成する。フレームダブラ108はメモリ制御信号106に基づき、外部システムから転送されるマトリックスディスプレイの各画素に対応した入力表示データ101の書き込み動作を行う共に、現フレーム表示データ109、前フレーム表示データ110として読み出し動作を行う。入力表示データ101、現フレーム表示データ109、前フレーム表示データ110の関係は、図3に示すように、ある画面の表示領域先頭から次の画面の表示領域先頭までの期間(フレーム期間)に対して、2倍の速度で2回の読み出しを行う。ここで、1フレーム期間に対し、前半の読み出しデータに基づく期間を前半フィールド、後半の読み出しデータに基づく期間を後半フィールドとする。又、現フレーム表示データ109と前フレーム表示データ110は図説するように1フレーム分の位相差を有するものとする。
【0038】
このようなタイミングとなる現フレーム表示データ109、前フレーム表示データ110は演算回路113に転送される。演算回路113は図2に示すような構成となり、現フレーム表示データ109は現フレーム解析範囲取り出し回路203に転送される。現フレーム解析範囲取り出し回路203はラッチ回路並びにラインメモリ回路によって構成される。これによって、M行(例えば768行)N列(例えば1366×RGB列)で構成されるマトリックス表示ディスプレイのm行n列目(このm、nは「課題を解決するための手段」の項で述べたn、mとは異なる)の現フレーム表示データをDN(m,n)とすると、現フレーム解析範囲取り出し回路203はDN(m,n)を中心とする2×I行2×J列分の表示データ:DN(m−I,n−J)〜DN(m+I,n+J)を出力する。尚、m、nの値によっては表示データが存在しない場合があるが、その場合は存在する表示画面淵部分、即ちm=1若しくはM、或いはn=1若しくはNにおける表示データを当てはめれば良い。同様に、前フレーム表示データ110は前フレーム解析範囲取り出し回路205によって、m行n列目の前フレーム表示データDP(m,n)に対して、2×I行2×J列分の表示データ:DP(m−I,n−J)〜DP(m+I,n+J)を出力する。
【0039】
ここで、I=1、J=1の場合に対するDN(m−I,n−J)〜DN(m+I,n+J)とDP(m−I,n−J)〜DP(m+I,n+J)は、図6に示すような関係となる。
【0040】
このようにして生成された現フレーム表示データ109、前フレーム表示データ110は、時間方向データ変換回路207によって、データ変換がなされる。時間方向データ変換回路207のアルゴリズムは、図4のフローチャートに示す流れとなる。即ち、m行n列目の表示データに対して、iを−Iから+Iまで、jを−JからJまでとした解析範囲内の現フレーム表示データ:DN(m+i,n+j)と前フレーム表示データ:DP(m+i,n+j)のデータ比較を行う。ここで、DP(m+i,n+j)は表示すべき全てのビットデータを保持する必要はない為、DN(m+i,n+j)に対しても同様のアルゴリズムでビット削減したものを用いる。比較した結果が、一致した場合、m行n列目に対応し、その表示位置から+i行+j列目の時間方向変換表示データ:DT(m+i,n+j)として、該当箇所の現フレーム表示データ:DN(m+i,n+j)を代入すると共に、時間方向データ一致フラグ:FLAGはその論理を保持する。一方、DP(m+i,n+j)とDN(m+i,n+j)が一致しない場合、FLAGを論理1とすると共に、両者のデータ量と、時間方向演算パラメータ201の値に応じたデータ変換を行う。この変換パラメータは、前半フィールドか後半フィールドかで異なる。図4のフローチャートでは理解しやすくする為に前半フィールドと後半フィールドで場合分けを行うと示しているが、実際の回路では、図1で示した演算制御信号107に基づき、図3に示すように前半フィールドと後半フィールドで時間方向演算パラメータの値を変化させて行う事ができる。この時間方向変換パラメータを、前半フィールドでは、ODO{i,j}(DN(m+i,n+j),DP(m+i,n+i)、後半フィールドではODE{i,j}(DN(m+i,n+j),DP(m+i,n+i)と表現している。これは最終的にm行n列目の表示に係るデータに対し、その表示位置から+i行+j列目の現フレーム表示データ:DN(m+i,n+j)と前フレーム表示データ:DP(m+i,n+j)に基づき変換する事を示している。より具体的にi=0、j=0の場合の例としては、図7(A)に示すようなテーブル形状となり、例えば、DP(m,n)が64、DN(m,n)が192である場合、前半フィールドであれば、両者の交差部に位置する7をODO{0,0}(DN(m,n),DP(m,n))の値とし、後半フィールドであれば、−16をODE{0,0}(DN(m,n),DP(m,n))の値とする。尚、図7(A)では64階調毎に設定してあるが、これは全ての階調間で設定しても、又、テーブルとして存在しない階調間を補間しても良い。又、図ではi=0、j=0の場合についてのみ示しているが、i、jの値に応じて加算データテーブルの値を適宜変化させることも、任意のi、jに対して同じ設定とする事も可能である。i、jに応じて加算データテーブルの値を変えた場合はそれだけ高精度な設定が可能であり、i、jに拠らず同じ加算値とした場合は、m行n列に対応した表示データを生成における、その位置から+i行+j列目の表示データの演算結果は、(m−1)行n列に対応した表示データを生成する際に、その位置から+i+1行+j列目の表示データの演算結果と等しい為、演算回路規模を削減する事が可能となる。この演算においては、図7に示すように、前半フィールドでは、前フレーム表示データから現フレーム表示データへの変化が正である場合(図7(A)(i)の加算データテーブルの右上の部分に対応する場合)は、現フレーム表示データに対してテーブル値に基づき加算動作を行い、逆に変化が負である場合(図7(A)(i)の加算データテーブルの左下の部分に対応する場合)は減算動作を行う。これに対し、後半フィールドではデータの変化が正である場合(図7(A)(ii)の加算データテーブルの右上の部分に対応する場合)には減算動作を行い、負である場合(図7(A)(ii)の加算データテーブルの左下の部分に対応する場合)には加算動作を行う。
【0041】
以上の動作を2I×2Jの範囲に対して行う。以上の演算の結果、m行n列目の表示データを生成する為の、2I×2Jの範囲からなる時間方向変換表示データ209、及び時間方向データ一致フラグ208を生成する。時間方向データ一致フラグ208は上記演算の結果、解析範囲内で前フレームと現フレームで全ての表示データが一致すれば論理0、一致しないデータがあれば論理1となる。
【0042】
このような動作に基づき生成された時間方向データ一致フラグ208及び時間方向変換表示データ209は空間方向データ変換回路210に転送され、空間方向演算パラメータ202に基づき変換がなされ、時間・空間方向変換表示データ114を生成する。
【0043】
この変換アルゴリズムは図5に示す流れとなる。初めに時間方向データ一致フラグ:FLAGが論理0であれば、解析範囲内にフレーム間で異なる表示データが存在しない事を意味し、この場合、m行n列目の時間・空間方向変換表示データ:DS(m,n)として、同じくm行n列目に対応した時間方向変換表示データ:DT(m,n)を転送する。この場合、前述した時間方向データ変換回路207では変換がなされていない為、DS(m,n)としては、入力表示データDN(m,n)と同値となる。これに対し、FLAGが論理1である場合、前半フィールドであれば2×I行2×J列の構成からなる空間方向演算パラメータ:CVO(DTO(m,n),i,j)と、同じく2×I行2×J列の構成となる前半フィールドの時間方向変換表示データ:DTO(m−i,n−j)との間で畳み込み演算を行い、時間・空間方向変換表示データ:DS(m,n)を生成する。ここで、CVO(DTO(m,n),i,j)は、解析画素の時間方向変換表示データDTO(m,n)と、その画素からの位置関係i、jによって決定する値であり、具体的には図7(B)で示すようなテーブルとなる。図7(B)は、I=2、J=2の例であり、高域強調フィルタとなっている。同様に、後半フィールドの場合には、空間方向演算パラメータ:CVE(DTE(m,n),i,j)と後半フィールドの時間方向変換表示データ:DTE(m−i,n−j)との間で畳み込み演算を行い、時間・空間方向変換表示データ:DS(m,n)を生成する。この場合の空間方向演算パラメータCVE(DTE(m,n),i,j)は、前半フィールドと同じように、DTE(m,n)、i、jにて決定するテーブルにて構成され、具体的には図7(B)に示すような低域強調フィルタとなっている。
【0044】
以上の動作に基づき生成された時間・空間方向変換表示データ114に、マトリックス表示ディスプレイ119が転送され、そのm行n列目に対しては、入力表示データDN(m,n)から変換されたDS(m,n)に基づき表示を行う。
【0045】
以上の動作の概要は、図6に示すようにm行n列に対して、その画素位置を中心とする前フレームデータ:DP(m−I,n−J)〜DP(m+I,n+J)と、現フレームデータ:DN(m−I,n−J)〜DN(m+I,n+J)の各々の値と、フィールド毎に異なる変換パラメータに基づき、時間方向の変換処理を行い、時間方向変換表示データ:DT(m−I,n−J)〜DT(m+I,n+J)を生成し、生成された時間方向変換データと、フィールド毎に異なる空間方向演算パラメータに基づき、畳み込み演算を行う事で、空間方向の変換を行い、時間・空間方向変換表示データ:DS(m,n)を生成する。
【0046】
以上の動作の結果、フレーム間で近傍画素の表示データが変化しなければ、時間・空間方向変換表示データ114は、入力表示データ101と等しくなり、従って静止画表示では従来と同等の表示品質を保つ事が可能となる。これに対して、フレーム間で映像が変化した場合を図8に示す。図8(A)はマトリックス表示ディスプレイ119を観測した場合を示す図であり、暗い網掛けをした背景領域に対して、明るい網掛けをした領域が画面右から左へと水平方向に移動している事を示す。ここで、画面中央部分を水平方向に記した場合、図8(B)に示すように、フレーム番号が増えると共に、輝度の異なるエッジ部分が移動する事となる(図8(B)の入力画像の欄参照)。これに対して、本実施例の駆動方式を行った場合、エッジ部分を中心とし、前半フィールドでは、時間方向、空間方向共に、画像の差分を強調した画像となり(図8(B)の前半フィールド出力画像の欄参照)、後半フィールドでは逆に、時間方向、空間方向共に、画像の差分を低減した画像となる(図8(B)の後半フィールド出力画像の欄参照)。
【0047】
この結果、表示に対する影響を図9に示す。入力画像を直接表示した場合、仮にマトリックス表示ディスプレイの応答時間が0であると仮定しても、図9(A)の斜め方向の矢印に示す視線追随によって、フレーム間の移動距離に応じ、(b)で示した領域分のぼやけ幅を有する。これに対し、本実施例においては、図9(B)で示すように、入力とは異なる輝度を有する斜線部分の輝度を有する事となる。この場合、(a)の領域では表示データが変化しない為、図9(A)の同じ位置と同様の輝度となる。これに対して、(c)の領域では輝度が変化しつつある領域となる。これは時間方向、空間方向に変換を行っている為であるが、この変化の割合は前半フィールドの高域強調と、後半フィールドの低域強調が互いに相殺する為、なだらかな変化となる。これに対して、(d)の領域では、高域強調した後半フィールドに係る輝度変化がエッジとして観測される事となる。観測者の目には、(c)の領域や、前半フィールドの低域を強調した映像に係る輝度変化は、エッジが判別し難いのに対し、高域側の輝度変化のみが認識される事となり、従ってぼやけ幅は(d)の範囲となり、これは図9(A)で示した(b)の範囲よりも小さくなる為、結果としてぼやけの少ない望ましい映像として認識される。
【0048】
尚、本実施例において、時間方向データ一致フラグ208の算出範囲は、次のステップである空間方向データ変換回路210における一画素分のデータ変換範囲と同一としたが、これに限る必要はなく、例えば該当画素における現フレーム表示データ109と前フレーム表示データ110の比較のみから算出する方法や、或いはその間の範囲とする事も可能である。この場合、入力表示データ101と時間・空間方向変換表示データ114が異なる範囲は、図10に示すように異なる事となるが、我々の評価では、元々の解像度が低くSN比が悪い信号、例えばNTSC信号を拡大して高解像度のディスプレイに表示する場合は、1画素のみの比較から時間方向データ一致フラグ208を生成した場合が望ましく、ハイビジョン信号を表示する場合は、より広い範囲から時間方向データ一致フラグ208を生成した場合が望ましい表示品質を得る事ができた。
【実施例2】
【0049】
次に入力表示データに対して周波数変換を行わず、直接表示する場合の例を図11、12を用いて説明する。
【0050】
図11は第二の実施例の構成を示すブロック図である。実施例1と機能的に同様である場合は、タイミング仕様等が異なる場合も同じ符号としている。
【0051】
1101はメモリコントロール信号、1102はフレームメモリ、1103は前フレーム表示データである。
【0052】
図12は本表示装置に対する表示データの入力から列電極駆動回路までのタイミング関係を示す図である。本実施例では入力表示データ101は倍速データである。
【0053】
以上の図面に基づき、実施例2の動作について詳細に説明する。
【0054】
外部システムから入力する入力表示データ101は、同じく外部システムから入力する入力制御信号102に基づき制御信号生成回路103で生成されるメモリコントロール信号1101に基づきデータの書き込み、読み出し動作が行われる。実施例1ではフレームダブラを用いて、書き込みの倍速で読み出しを行っていたが、実施例2においては、図12に示すようにフレームメモリ1102を用いて、書き込みと等速で読み出しを行う。
【0055】
この場合、マトリックス表示ディスプレイの走査速度は入力の走査速度と等しくなるが、その周波数は60Hzは勿論の事、120Hz等といった周波数でも何ら問題は無い。
【実施例3】
【0056】
次に第三の実施例として、実施例1とは異なる演算方法の場合の例を図13、図14を用いて説明する。
【0057】
図13は第三の実施例における演算回路113の構成を示す図であり、実施例1と機能的に同様である場合は、タイミング仕様等が異なる場合も同じ符号としている。1301は現空間方向データ変換回路、1302は現空間方向データ変換回路1301で生成された現空間方向変換表示データ、1303は前空間方向データ変換回路、1304は前空間方向データ変換回路1303で生成された前空間方向変換表示データ、1305は時間方向データ変換回路、1306は時間方向データ変換回路1305で生成された、空間・時間方向変換表示データである。
【0058】
図14は本実施例におけるデータ変換の概略を示す図である。
【0059】
以上の図面に基づき、第三の実施例の動作について説明する。
【0060】
初めに現フレーム表示データ109から現フレーム解析範囲取り出し回路203によって現フレーム取り出しデータ204を生成し、前フレーム表示データ110から前フレーム解析範囲取り出し回路205によって前フレーム取り出し表示データ206を生成する。ここまでは実施例1と同じである。
【0061】
次に、各々の表示データは現空間方向データ変換回路1301、前空間方向データ変換回路1303によって、フィールド毎に異なる空間方向演算パラメータ202に基づき、現空間方向変換表示データ1302、前空間方向変換表示データ1304を生成する。空間方向データ変換回路1301と前空間方向データ変換回路1303のアルゴリズム並びに空間方向演算パラメータは同等である為、フレーム間で表示データが変化していない場合は、両者の出力は等しくなる。
【0062】
時間方向データ変換回路1305は、このように生成された現空間方向変換表示データ1302と前空間方向変換表示データ1304、並びに現フレーム表示データ109の間で時間方向の変換を行い、空間・時間方向変換表示データ1306を生成する。ここで、空間・時間方向変換表示データ1306は、現空間方向変換表示データ1302と前空間方向変換表示データ1304が一致する場合は、現フレーム表示データ109を出力し、一致しない場合は、現空間方向変換表示データ1302と前空間方向変換表示データ1304の間で、実施例1において説明した時間方向データ変換回路207のアルゴリズムに基づき、空間・時間方向変換表示データ1306を生成、マトリックス表示ディスプレイに転送し、表示を行う。
【0063】
以上の変換の概念は、図14に示すように、初めに現フレーム表示データと前フレーム表示データ各々に対して該当画素近傍のマトリックスからなる表示データから、空間方向変換処理を行う事で該当画素の空間方向変換データを生成し、各々の空間方向変換データから空間・時間方向変換データを生成する。
【0064】
以上の動作においても、実施例1と同じく、画面の複雑さに関わらず、静止画の場合には入力画像と同等の表示品質を保ちつつ、フレーム間で映像が動いた場合の動画性能を向上させる事が可能となる。
【0065】
以上のように、本技術を適用することによって、液晶表示装置のようなマトリックス表示装置において、静止画像の表示品質を保ったまま、動画表示における動画ぼやけを低減せしめることが可能となる。従って、液晶表示パネルを用いたTV受像機や、PC等の表示モニタ、更に携帯電話やゲーム機等に対しても適用することが可能である。更に本方式は、画素部発光素子に有機EL(Electro Luminescence)を用いた有機ELディスプレイや反射層の下に画素部制御素子を用いたLCOS(Liquid Crystal On Silicon)ディスプレイといったホールド型ディスプレイのみならず、PDP(plasma display panel)等に対しても適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第一の実施例の構成を示すブロック図
【図2】演算回路113の構成を示すブロック図
【図3】フレーム単位でのデータの流れを示すタイミング図
【図4】時間方向データ変換回路207の動作を示すフローチャート
【図5】空間方向データ変換回路210の動作を示すフローチャート
【図6】第一の実施例でのデータ変換の概念を示す図
【図7】演算パラメータの設定例を示す図
【図8】動画表示における変換画像の例
【図9】動画品質改善の効果を示す図
【図10】時間方向データ一致フラグ208と変換データの関係を示す図
【図11】第二の実施例の構成を示すブロック図
【図12】第二の実施例のフレーム単位でのデータの流れを示すタイミング図
【図13】第三の実施例における演算回路113の構成を示すブロック図
【図14】第一の実施例でのデータ変換の概念を示す図
【符号の説明】
【0067】
101…入力表示データ
102…入力制御信号
103…制御信号生成回路
104…列電極制御信号
105…行電極制御信号
106…メモリ制御信号
107…演算制御信号
108…フレームダブラ
109…現フレーム表示データ
110…前フレーム表示データ
111…演算パラメータ格納部
112…演算パラメータ
113…演算回路
114…時間・空間方向変換表示データ
115…列電極駆動回路
116…列電極駆動信号
117…行電極駆動回路
118…行電極駆動信号
119…マトリックス表示ディスプレイ
201…時間方向演算パラメータ
202…空間方向演算パラメータ
203…現フレーム解析範囲取り出し回路
204…現フレーム取り出し表示データ
205…前フレーム解析範囲取り出し回路
206…前フレーム取り出し表示データ
207…時間方向データ変換回路
208…時間方向データ一致フラグ
209…時間方向変換表示データ
210…空間方向データ変換回路
1101…メモリコントロール信号
1102…フレームメモリ
1103…前フレーム表示データ
1301…現空間方向データ変換回路
1302…現空間方向変換表示データ
1303…前空間方向データ変換回路
1304…前空間方向変換表示データ
1305…時間方向データ変換回路
1306…空間・時間方向変換表示データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された表示データに基づき表示する表示パネルと、
前記表示データを空間方向に変調する空間周波数変調回路と、
前記表示データのフレーム間の差分に基づき前記表示データを補正する時間方向変調回路と、を備え、1フレームのフレーム周波数に対してn倍のフィールド周波数(nは1以上の整数)で前記表示パネルを駆動する表示装置であって、
第1のフィールドの表示データに対して、前記空間周波数変調回路による高周波成分の強調と前記時間変調回路による時間方向の変化の強調を行う強調処理と、
前記第1のフィールドに続く第2のフィールドに対して、前記空間周波数変調回路による高周波成分の弱調と前記時間変調回路による時間方向の変化の弱調を行う弱調処理と、を繰り返し行って前記表示データを前記表示パネルに表示することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の表示装置において、
前記表示データのフレーム間の差分が所定値よりも小さいときは前記強調処理と弱調処理を行わず、前記表示データのフレーム間の差分が所定値よりも大きいときは前記強調処理と弱調処理を行うことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の表示装置において、
前記表示データのフレーム間の差分が第1の値であるときは前記強調処理と弱調処理を行わず、前記表示データのフレーム間の差分が前記第1の値よりも大きい第2の値であるときは前記強調処理と弱調処理を行うことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1記載の表示装置において、
前記表示データが静止画であるときは前記強調処理と弱調処理を行わず、
前記表示データが動画であるときは前記強調処理と弱調処理を行うことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1記載の表示装置において、
第1のフィールドと第2のフィールドにおける輝度の平均値が、外部システムから得られる輝度と、略同等であることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
複数の画素から構成され、表示データに対応した画面の輝度を変化させることで階調表示を行う表示パネルと、少なくとも一画面分の入力画像を保持する記憶装置と、入力表示データを空間方向に変調する空間周波数変調回路と、フレーム間の表示データの差分値に基づき補正を行う時間方向変調回路を具備し、外部システムから入力される、一画面分の入力表示データを構成するフレーム周波数に対して、n倍のフィールド周波数(nは1以上の整数)でパネルを駆動するマトリックス型表示装置において、
前記入力画像の表示データが前フレームと現フレームで略一致する場合は、外部システムから要求された輝度を表示し、
一致しない場合は、mフィールド(mはnと独立な2以上の整数)のうち、
1フィールドに対しては、前記空間周波数変調回路による高周波数成分の強調と前記時間方向変調回路による時間方向の変化の強調を行う強調工程を行い、
前記1フィールドに続く(m−1)フィールドに対しては、前記空間周波数変調回路によって高周波数成分の弱調と前記時間方向変調回路による時間方向の変化の弱調を行う弱調工程を行い、
これを繰り返すことで、表示を行うことを特徴とした表示装置。
【請求項7】
請求項6記載の表示装置において、
一画面分の表示データに基づくフィールド数であるnと、強調工程と弱調工程の繰り返しフィールド数であるmの最小公倍数における輝度の平均値が、外部システムから得られる輝度と、略同等であることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−91711(P2010−91711A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260460(P2008−260460)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】