説明

表示装置

【課題】表示装置において、暗所視下における表示を明るく感じさせて誘目性を向上する。
【解決手段】表示装置1は、青色光を発する光源3B及び青色光よりも長波長の光を発する光源3G、3Rを有する面状発光素子3と、明るさセンサ6と、制御部7と、を備え、光源3B、3G、3Rから発せられる光が混色されて発光する。制御部7は、明るさセンサ6による測定結果が所定の値以下になったとき、光源3B、3G、3Rの総出力に対する光源3Bの出力の割合を増加させる。これにより、表示装置1から発せられる光の分光スペクトルが変化し、暗所視における感度効率が高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導灯などとして用いられる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から非常時等に人を誘導するための誘導灯がある(例えば、特許文献1参照)。非常時等に停電した場合、通常の照明器具は消灯するが、誘導灯は発光を維持する。例えば、屋内に照明器具と誘導灯が設置されている場合、停電時には、照明器具が消灯して誘導灯の周囲が暗くなり、誘導灯のみが発光する状態となる。周囲が暗くなった状態において、誘導灯は、その発光輝度が変わらなくても、人の眼の感度特性に起因して、発光が暗く感じられる。このため、停電時に誘導灯の誘目性が低下する。
【0003】
図6は、人の眼の感度特性としての、光の波長λ(nm)に対するCIE(国際照明委員会)分光感度効率を示す(「色彩光学ハンドブック」、日本色彩学会編、1998年、p.9参照)。人は、発光体の分光スペクトルに分光感度効率を積算した値(輝度)に応じて発光体の明るさを感じる。人が普段生活しているような環境(環境輝度が数cd/m以上)における視覚を明所視という。V(λ)は、明所視の分光感度効率であり、波長555nmにピークを持った感度特性を示す。人の視覚は、周囲が非常に暗くなった場合(環境輝度が1分の数cd/m以下)、暗所視に変化する。V’(λ)は、暗所視の分光感度効率であり、波長507nmにピークを持った感度特性を示す。明所視と暗所視の中間の明るさにおける視覚は、薄明視といわれ、明所視と暗所視とが組み合わされたものとなる。明所視の分光感度効率V(λ)から暗所視の分光感度効率V’(λ)への感度特性の変化は、暗順応と言われ、時間をかけて行われ、約30分で完全に切り替わる。
【0004】
誘導灯は、停電などによる暗所視下でも非常口の場所や方向等の表示を視認させる必要がある。一方、発光体の性能規定で用いられる輝度は、周囲の明るさに関わらず一般的に明所視の分光感度効率V(λ)のみを用いて計算されている。このため、従来の誘導灯において、暗所視下では、眼の感度特性が暗所視の分光感度効率V’(λ)であるため、人が感じる発光体の明るさは、明所視の分光感度効率V(λ)を用いて算出される輝度よりも低下する。また、誘導灯は、停電時に発光時間を長くするために減光されることがあり、そのため、人が感じる明るさがさらに低下し、誘目性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−171204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するものであり、発光する表示装置において、暗所視下における表示を明るく感じさせて誘目性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、青色光を発する光源及び青色光よりも長波長の光を発する光源を有する面状発光素子を備え、前記複数の光源から発せられる光が混色されて発光する表示装置であって、周囲の明るさを測定する明るさセンサと、前記明るさセンサによる測定結果に基づいて前記各々の光源の出力を制御する制御部と、をさらに備え、前記制御部は、前記明るさセンサによる測定結果が所定の値以下になったとき、前記複数の光源の総出力に対する青色光を発する前記光源の出力の割合を増加させるものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、周囲が暗くなると青色光を発する光源の出力の割合を増加させるようにしたので、表示装置から発せられる光の分光スペクトルが変化し、暗所視における感度効率が高まり、暗所視下における表示を明るく感じさせて誘目性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態における表示装置のブロック構成図。
【図2】同装置における面状発光素子の断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態における表示装置のブロック構成図。
【図4】同装置における面状発光素子の断面図。
【図5】本発明の第3の実施形態における表示装置のブロック構成図。
【図6】光の波長に対する人の眼の感度特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る表示装置を図1及び図2を参照して説明する。これらの図において、本実施形態の表示装置1は、例えば誘導灯として用いられる発光部2を有する。発光部2は、面状発光素子3と、面状発光素子3を点灯させる点灯装置4とを有する。面状発光素子3は、青色光を発する光源3Bと、緑色光を発する光源3Gと、赤色光を発する光源3Rとを有する。青色光は青色を主成分とする光である。緑色光と赤色光は、それぞれ緑色、赤色を主成分とする光であり、青色光よりも長波長である。表示装置1は、光源3B、3G、3Rから発せられる光が混色された光、例えば白色光を発光する。また、表示装置1は、表示装置1の周囲の明るさを測定する明るさセンサ6と、明るさセンサ6による測定結果に基づいて各々の光源3B、3G、3Rの出力を制御する制御部7とを有する。制御部7は、明るさセンサ6による測定結果が所定の値以下になったとき、複数の光源3B、3G、3Rの総出力に対する青色光を発する光源3Bの出力の割合を増加させ、混色された光の分光スペクトルを変化させる。表示装置1は、商用電源から電力供給を受けており、商用電源の停電時に電力を供給するバッテリー8を有する。
【0011】
面状発光素子3は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子であり、ガラス又は樹脂等から成る透明基板31上に、光源3B、3G、3Rを有する。各々の光源3B、3G、3Rは、矩形、又は図2において紙面に直交する方向に長い帯状等に形成される。面状発光素子3は、光源3B、3G、及び3Rの組が複数組平面的に配置されて面状に発光する。
【0012】
光源3Bは、透明基板31上に、透明電極32、発光層33B、対向電極34がこの順に積層されて成る。光源3Bは、その他の層、例えば、透明電極32と発光層33Bとの間に正孔輸送層、発光層33Bと対向電極34との間に電子供与性の金属から成る電子注入層を設けてもよい。透明電極32は、例えばITO(酸化インジウム錫)から成る陽極である。発光層33Bは、青色光を発する発光材料、例えばTPB(テトラフェニルブタジエン)を有する。対向電極34は、例えばアルミニウム等の金属から成る陰極である。透明電極32と対向電極34との間に電圧が印加されると、透明電極32から発光層33Bに正孔が供給され、対向電極34から発光層33Bに電子が供給される。その正孔と電子は、発光層33B内で結合する。発光層33Bは、この結合の際のエネルギーによって青色光を発する。発光層33Bの発光は、透明基板31を通して大気中に取り出される。
【0013】
光源3G、3Rは、光源3Bと同様の構成を有し、発光層33G、33Rの材料が異なる。発光層33Gは、緑色光を発する発光材料、例えばIr(ppy)(トリス(2‐フェニルピリジナト)イリジウム(III))を有する。発光層33Rは、赤色光を発する発光材料、例えばIr(piq)(燐光性イリジウム錯体)を有する。
【0014】
光源3B、3G、3Rを小さな矩形又は細い帯状に形成することにより、面状発光素子3の発光は、青色光、緑色光、赤色光が混色された色光となる。光拡散材料を透明基板31に含有又は塗布等して混色を促進してもよい。なお、面状発光素子3は、有機ELに限られず、例えば、複数の発光ダイオードを面状に配置することによって構成してもよい。
【0015】
光源3B、3G、3Rの各々の透明電極32及び対向電極34は、点灯装置4の出力側に接続される。点灯装置4は、例えば、PWM(パルス幅変調)インバータを有し、各々の光源3B、3G、3Rの出力を独立に変える(図1参照)。面状発光素子3から発せられる光の分光スペクトルは、光源3B、3G、3Rから発せられる光の分光スペクトルを重ね合わせたものになる。従って、光源3B、3G、3Rの出力の割合を変えることにより、面状発光素子3から発せられる光の分光スペクトルが変化する。
【0016】
明るさセンサ6は、光電素子を有し、表示装置1の周囲の明るさを測定し、測定結果を制御部7に伝達する。
【0017】
制御部7は、マイクロコントローラ等を有し、発光部2、明るさセンサ6、商用電源及びバッテリー8と接続される。制御部7は、明るさセンサ6による測定結果に基づいて、発光部2の点灯状態、すなわち光源3B、3G、3Rの出力を制御する。
【0018】
制御部7は、商用電源を降圧及び整流して直流を出力する電源回路を有する。この電源回路は、制御部7とは別に設けてもよい。電源回路の出力に、負荷(発光部2、明るさセンサ6)とバッテリー8が並列に接続される。また、制御部7は、商用電源に停電が発生したことを検出するための不足電圧検出用の電圧センサと、時間経過を計測するためのタイマとを有する(図示せず)。
【0019】
上記のように構成された表示装置1の動作について説明する。商用電源が正常なとき、発光部2、明るさセンサ6、及び制御部7は、商用電源から電力が供給される。バッテリー8は、商用電源によって充電状態が保たれる。
【0020】
商用電源に停電が発生したとき、発光部2、明るさセンサ6、及び制御部7は、バッテリー8から電力が供給される。制御部7は、電圧センサによって停電を検出する。
【0021】
制御部7は、停電を検出すると、各色の光源3B、3G、3Rの出力を略同率に減少させる。このため、発光部2は、分光スペクトルが変わらずに減光する。発光部2の減光によってバッテリー8の消費電流が減少し、発光部2の発光可能時間が延びる。
【0022】
明るさセンサ6は、表示装置1の周囲の明るさを測定する。周囲の明るさは、停電のため低下する。
【0023】
明るさセンサ6による測定結果が所定の値、例えば1cd/m以下になったとき、制御部7は、測定結果が所定の値以下となっている経過時間をタイマによって計測する。
【0024】
周囲の明るさが所定の値以下となった状態が一定時間経過すると、人の眼は暗順応し、人は暗所視下にあると判断される。眼が暗順応したことにより、表示装置1のさらなる減光が可能となる。このため、制御部7は、計測している経過時間が一定時間(例えば30分)に達したとき、発光部2をさらに減光させる。
【0025】
このとき、眼の感度は、感度ピークが波長555nmである明所視の感度特性から短波長側にシフトし、感度ピークが波長507nmである暗所視の感度特性に変化している。制御部7は、発光部2を減光する際、光源3B、3G、3Rの総出力に対する光源3Bの出力の割合(出力比)を、減光前より増加させる。このため、発光部2から発せられる光の分光スペクトルは、暗所視において感度効率の高い短波長側にシフトするように変化する。分光スペクトルは、眼の感度特性に対応して変化させることが望ましい。
【0026】
このように、表示装置1は、周囲が暗くなると青色光を発する光源3Bの出力の割合を増加させるようにしたので、発光部2から発せられる光の分光スペクトルが変化し、暗所視における感度効率が高まり、暗所視下における表示を明るく感じさせて誘目性を向上することができる。表示装置1は、明所視の感度特性から計算される輝度を従来の表示装置よりも下げても、暗所視下における表示装置1の分光スペクトルを暗所視の眼の感度特性に合わせることにより、表示を明るく感じさせることができる。表示装置1を誘導灯に用いた場合、停電時において表示を明るく感じさせることができ、誘導灯の誘目性を向上することができる。
【0027】
商用電源が停電から復帰すると、発光部2、明るさセンサ6、及び制御部7は、商用電源から電力が供給される。制御部7は、電圧センサによって商用電源の復帰を検出し、光源3B、3G、3Rの出力を増加させて、発光部2の減光状態を終了する。
【0028】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る表示装置を図3及び図4を参照して説明する。本実施形態の表示装置1は、第1の実施形態と同様の構成を有し、面状発光素子3の構成が異なる。図3に示されるように、面状発光素子3は、青色光を発する光源3Bと、黄色光を発する光源3Yとを有する。青色光は青色を主成分とする光である。黄色光は、黄色を主成分とする光であり、青色光よりも長波長である。表示装置1は、光源3B及び3Yから発せられる光が混色された光、例えば白色光を発光する。
【0029】
面状発光素子3は、図4に示されるように、有機EL素子であり、透明基板31上に、面状の光源3B、透明絶縁層35、及び面状の光源3Yをこの順に有する。光源3Bは、透明基板31上に、透明電極32B、発光層33B、透明な対向電極34Bがこの順に積層されて成る。光源3Yは、透明絶縁層35上に、透明電極32Y、発光層33Y、対向電極34Yがこの順に積層されて成る。
【0030】
透明電極32B、32Yは、ITO等からなる陽極である。対向電極34Bは、ITO等から成る陰極である。対向電極34Yは、金属から成る陰極である。透明絶縁層35は、ポリイミド等から成り、対向電極34Bと透明電極32Yとの間を絶縁する。発光層33B、発光層33Yの材料は、例えば、それぞれ、青、黄の蛍光色素をPVK等から成るホストポリマーに分散したものである。発光層33B、33Yの発光は、透明基板31を通して大気中に取り出される。
【0031】
透明電極32B、32Y、及び対向電極34B、34Yは、点灯装置4の出力側に接続される。点灯装置4は、各々の光源3B、3Yの出力を独立に変える(図3参照)。本実施形態の表示装置1の動作は、第1の実施形態と同様である。
【0032】
本実施形態の表示装置1は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。また、青色光を発する光源3Bと、黄色光を発する光源3Yとを厚さ方向に重ねたので、光源3B、3Yの面積が大きくても青色光と黄色光が良好に混色される。
【0033】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る表示装置を図5を参照して説明する。本実施形態の表示装置1は、第1の実施形態と同様の構成を有し、面状発光素子3に光源3Sをさらに設けた。光源3Sは、光色の主成分が波長507nm近傍の青緑色となる分光スペクトルを有する。光源3Sの分光スペクトルと暗所視の分光感度効率V’(λ)を積算した積算値が、光源3B、3G、3R各々の同様の積算値よりも高くなるように、光源3Sを構成してもよい。光源3Sの分光スペクトルは、暗所視の眼の感度特性に最適化することが望ましい。光源3Sは、発光層に、例えば、青色光を発する発光材料であるTPBと緑色光を発する発光材料Ir(ppy)とを含有し、TPBとIr(ppy)の調合比率によって分光スペクトルが調整される。
【0034】
上記のように構成された表示装置1の動作について、第1の実施形態との相違点を説明する。商用電源が正常なとき、光源3Sは消灯している。商用電源に停電が発生した後、明るさセンサ6の測定結果が所定の値以下である状態が一定時間(例えば30分)に達したとき、制御部7は、光源3B、3G、3Rを消灯させ、光源3Sを点灯させる。
【0035】
このように、本実施形態の表示装置1は、暗視下において暗所視下用の光源Sのみを点灯するので、第1の実施形態よりもさらに少ないエネルギーで暗所視下における表示を明るく感じさせることができる。このため、発光部2の発光可能時間がさらに延びる。
【0036】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、面状発光素子は、青色光を発する有機ELと、緑色光を発する有機ELと、赤色光を発する有機ELとを透明絶縁層を介して厚さ方向に重ねたものであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 表示装置
3 面状発光素子
3B、3B 光源(青色光を発する光源)
3G、3R、3Y 光源(青色光よりも長波長の光を発する光源)
3S 光源
6 明るさセンサ
7 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色光を発する光源及び青色光よりも長波長の光を発する光源を有する面状発光素子を備え、前記複数の光源から発せられる光が混色されて発光する表示装置であって、
周囲の明るさを測定する明るさセンサと、
前記明るさセンサによる測定結果に基づいて前記各々の光源の出力を制御する制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記明るさセンサによる測定結果が所定の値以下になったとき、前記複数の光源の総出力に対する青色光を発する前記光源の出力の割合を増加させることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−165626(P2011−165626A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30479(P2010−30479)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】