説明

表示装置

【課題】 装置内において配置自由度の高い発光体と反射型面対称結像素子の設置を可能にした表示装置を提供する。
【解決手段】 表示装置は、自らの素子面に対して収束又は発散状態で入射される光束を素子面に関して対称に発散又は収束状態で射出する板状の反射型面対称結像素子と、光を反射型面対称結像素子へ収束又は発散状態で入射する中継光学素子と、中継光学素子へ光を供給する発光体と、を備え、発光体の実像または虚像を観察できるように反射型面対称結像素子、中継光学素子及び発光体が配置なされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ、反射鏡に代表される結像光学素子により結像された虚像を実像、または実像を虚像に変換して映像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リアルな3次元空中映像を実現するために、光線を細かく分割する微細加工技術に着目し、鏡に映った像鏡映像を虚像でなく実像で空中に結像させることを可能とするナノ加工技術を用いた反射型面対称結像素子が開発されている(非特許文献1参照)。
【0003】
かかる反射型面対称結像素子の素子面には1辺100μm、深さ100μmの微小な貫通穴が多数開いている。この穴の内壁がマイクロミラーとなっており、隣接する2面のマイクロミラーによって2面コーナーリフレクターが構成されている。穴を通過する光はこのマイクロミラーに2回反射されることで鏡映像が形成される(特許文献1〜3、非特許文献1、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−158114
【特許文献2】特開2009−25776
【特許文献3】特開2009−75483
【非特許文献1】空中映像を結像する「鏡」の開発に成功〜リアルな3次元空中映像の実現に向けて〜、(URL:http://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/h18/061124-2/061124-2.html)[平成20年4月28日現在]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反射型面対称結像素子は、単独で使用する範囲において物体を実像として結像することが可能であり、物体と実像は等倍の関係にある。よって、物体と反射型面対称結像素子は得られる実像の大きさに比例して、大きい物体であれば大きいすなわち大面積の反射型面対称結像素子を必要とする。
【0006】
よって、これらを表示装置に用いる場合など物体と反射型面対称結像素子の設置態様に制限されることが多いという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題には、上記の問題点が一例として挙げられ、配置自由度の高い物体と反射型面対称結像素子の設置を可能にした表示装置を提供することが本発明の目的の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明の表示装置は、
自らの素子面に対して収束又は発散状態で入射される光束を前記素子面に関して対称に発散又は収束状態で射出する板状の反射型面対称結像素子と、
光を前記反射型面対称結像素子へ収束又は発散状態で入射する中継光学素子と、
前記中継光学素子へ前記光を供給する発光体と、を備え、
前記発光体の実像または虚像を観察できるように前記反射型面対称結像素子、前記中継光学素子及び前記発光体が配置なされたことを特徴とする。
【0009】
上記請求項1記載の表示装置においては、前記発光体は、自発光体又は被照射体であることとすることができる。
【0010】
上記の表示装置においては、前記発光体、前記中継光学素子及び前記反射型面対称結像素子を含む遮光体を含むこととすることができる。
【0011】
上記の表示装置においては、前記遮光体の一部が前記反射型面対称結像素子からなることとすることができる。
【0012】
上記の表示装置においては、前記遮光体の内壁面は暗色であることとすることができる。
【0013】
前記中継光学素子は、凸レンズ、凹レンズ、凹面鏡、凸面鏡のいずれかを含む結像光学素子であることとすることができる。
【0014】
上記の表示装置においては、前記中継光学素子において、前記結像光学素子と前記発光体との間に、ハーフミラーが配置され、光が前記ハーフミラーで合成されることとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の表示装置における微小ミラーユニットを概念的に説明するためのXYZ直交座標における微小ミラーユニットの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の表示装置におけるZ軸方向から眺めたXY平面上の微小ミラーユニットの平面図である。
【図3】図2の第1及び第2光反射面のなす角の二等分線とZ軸に直角な方向から眺めた第1及び第2光反射面の側面図である。
【図4】本発明の実施形態の表示装置における反射型面対称結像素子の平面図である。
【図5】本発明の実施形態の表示装置における反射型面対称結像素子の斜視図である。
【図6】本発明の実施形態の表示装置における反射型面対称結像素子の斜視図である。
【図7】本発明の実施形態の表示装置における反射型面対称結像素子の斜視図である。
【図8】本発明の実施形態の表示装置における反射型面対称結像素子の斜視図である。
【図9】本発明の実施形態の表示装置における反射型面対称結像素子を構成する直方体材を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態の表示装置における反射型面対称結像素子を形成する2つのシート部の組み合わせを示す斜視図である。
【図11】本発明の他の実施形態の表示装置における反射型面対称結像素子の形成用の一面に階段状側面を有する直方体形成用の板状体の部分切欠斜視図である。
【図12】本発明の他の実施形態の表示装置における反射型面対称結像素子の形成用の一面に階段状側面を有する直方体形成用の板状体の部分切欠斜視図である。
【図13】本発明の他の実施形態の表示装置における反射型面対称結像素子の形成用の一面に階段状側面を有する直方体形成用の板状体の部分切欠斜視図である。
【図14】本発明の他の実施形態の表示装置における反射型面対称結像素子の形成用の一面に階段状側面を有する直方体形成用の板状体の部分切欠斜視図である。
【図15】本発明の他の実施形態の表示装置における反射型面対称結像素子の形成用の一面に階段状側面を有する直方体形成用の板状体の接着した集合体を示す部分切欠斜視図である。
【図16】本発明の実施形態の表示装置における中継光学素子の凸レンズによる光路を示す概略断面図である。
【図17】図16の中継光学素子の凸レンズと反射型面対称結像素子を含む表示装置における光路を示す概略断面図である。
【図18】本発明の他の実施形態の表示装置における中継光学素子の凸レンズによる光路を示す概略断面図である。
【図19】図18の中継光学素子の凸レンズと反射型面対称結像素子を含む表示装置における光路を示す概略断面図である。
【図20】本発明の他の実施形態の表示装置における中継光学素子の凹面鏡による光路を示す概略断面図である。
【図21】図20の中継光学素子の凹面鏡と反射型面対称結像素子を含む表示装置における光路を示す概略断面図である。
【図22】本発明の他の実施形態の表示装置における中継光学素子の凹面鏡による光路を示す概略断面図である。
【図23】図22の中継光学素子の凹面鏡と反射型面対称結像素子を含む表示装置における光路を示す概略断面図である。
【図24】本発明の他の実施形態の表示装置における中継光学素子の凹面鏡による光路を示す概略断面図である。
【図25】図24の中継光学素子の凹面鏡と反射型面対称結像素子を含む表示装置における光路を示す概略断面図である。
【図26】ディスプレイと拡大光学系レンズと平面ミラーの組み合わせからなるプロジェクタ表示装置における光路を示す概略断面図である。
【図27】本発明の実施例の表示装置のディスプレイと拡大光学系凸レンズと内部平面ミラーと反射型面対称結像素子の組み合わせからなるプロジェクタ表示装置における光路を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 物体
2、2b 反射型面対称結像素子
3 実像
20 直方体材
21、22 シート部
23 光反射膜
24 光吸収膜
31 板状体
32 板状体平行峰部
33 板状体主面
34 板状体集合体
41 ディスプレイ
42 凸レンズ
43 平面ハーフミラー
44 凸レンズ
45 内部平面ミラー
CvL 凸レンズ
CcM 凹面鏡
HM ハーフミラー
Mu 微小ミラーユニット
Mxz 第1光反射面
Myz 第2光反射面
T 光透過面
【発明を実施するための形態】
【0017】
凸レンズ、凹レンズや、凹面鏡、凸面鏡などの従来の結像光学素子は、像の拡大縮小は可能であるが、その像を観察できる位置はそれぞれの光学系の光路により制限されている。また、これら従来の結像光学素子は結ぶ像が実像になるか虚像になるかはそれぞれの光学系の種類と物体の位置関係において決められ、結像される像を実像にするか虚像にするかによって観察位置が大きく制約を受ける。
【0018】
発明者は鋭意研究し、反射型面対称結像素子では、像の拡大縮小をすることができなかったが、今回これらを組み合わせた表示装置とするとこで、虚像を実像に変換、あるいは実像を虚像に変換し、かつ拡大縮小を可能にすると同時に、結像された像を観察できる範囲を変化させることを実現した。
【0019】
かかる表示装置は、自らの素子面に対して収束又は発散状態で入射される光束を素子面に関して対称に発散又は収束状態で射出する板状の反射型面対称結像素子と、光を反射型面対称結像素子へ収束又は発散状態で入射する中継光学素子(上記の従来の結像光学素子)と、中継光学素子へ光を供給する物体と、を備えている。そして、反射型面対称結像素子、中継光学素子及び物体は、物体の実像または虚像を観察できるように配置なされている。
【0020】
以下に本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
<反射型面対称結像素子>
反射型面対称結像素子は微小ミラーユニットの多数配列により構成されるので、1つの微小ミラーユニットから説明する。
【0022】
図1は、微小ミラーユニットを概念的に説明するためのXYZ直交座標における微小ミラーユニットMuの斜視図である。微小ミラーユニットMuは素子面(XY平面)に直交する第1光反射面Mxz及び第2光反射面Myzからなる。
【0023】
微小ミラーユニットMuにおいては、単位格子(1,1,1,)に或る点(黒丸)があるとすると、第1光反射面Mxzの鏡面に黒丸(1,−1,1,)が、第2光反射面Myzの鏡面に黒丸(−1,1,1,)が、それぞれ像空間に投影される。ここでXYZ直交座標値における−1は各軸方向の逆方向を意味し、各軸方向に垂直な平面に反転することを意味する。
【0024】
それぞれ像空間における第1光反射面Mxzの鏡面と第2光反射面Myzの鏡面が、XYZ直交座標で有るために、黒丸(1,−1,1,)と黒丸(−1,1,1,)の像を単位格子(1,1,1,)の実空間の対角位置の空間に星印(−1,−1,1,)を投影する。
【0025】
したがって、対角位置空間の星印(−1,−1,1,)と実空間の黒丸(1,1,1,)の関係は、黒丸の(1,1,1,)のXY軸方向の位置は星印(−1,−1,1,)のXY軸方向の位置と反転する関係にある。
【0026】
図2は、Z軸方向から眺めたXY平面上の微小ミラーユニットMuの平面図である。ここでは、実空間を(1,1,1,)と、第1光反射面Mxzの鏡面による像空間を(1,−1,1,)と、第2光反射面Myzの鏡面による像空間を(−1,1,1,)と、第1及び第2光反射面Mxz,Myzの像空間の鏡面による像空間を(−1,−1,1,)と、表してある。実空間(1,1,1,)に線体Bがあるとすると、像空間(−1,−1,1,)ではXY軸方向で反転する虚像Bvが得られる。実空間(1,1,1,)の第2光反射面Myzの鏡面へ光線を角度θで入射すると光線は反射され、第1光反射面Mxzの鏡面に角度φで反射され、第2光反射面Myzの鏡面への入射光線と平行になって同一方向へ戻される。
【0027】
したがって、第1光反射面Mxz及び第2光反射面Myzのそれぞれの法線方向以外の微小ミラーユニットMuへの入射光線は、XY平面のZ軸から開く第1及び第2光反射面Mxz,Myzの範囲内(90度未満)で反転した光線として同一方向へ戻るすなわち、再帰することになる。因みに、2枚の鏡を用意し、それを直角に合わせ鉛直に立て鏡の交線を覗いてみると、水平方向のいずれの位置でも自分の顔が常に真ん中にあることが観察できることからも再帰性は明らかである。
【0028】
しかしながら、Z軸方向においては、微小ミラーユニットMuの第1及び第2光反射面Mxz,Myzによる再帰性は現れない。図3は図2の第1及び第2光反射面Mxz,Myzのなす角の二等分線とZ軸に直角な方向から眺めた第1及び第2光反射面Mxz,Myzの側面図である。ここで実空間(1,1,1,)の第2光反射面Myzの鏡面へ光線をZ軸に対して角度ψで入射すると光線は反射され、第1光反射面Mxzの鏡面で反射され、Z軸に対して角度ψで反射される。因みに、完全な再帰性を得るためには図1のXY平面に第3光反射面を更に設ければ、図1の白丸の像空間(−1,−1,−1,)による再帰性を得ることができる。この互いに直交する3枚の鏡を合わせたとき、3本の交線に向かう入射光線がいずれの入射位置でも同一入射方向に戻るコーナーキューブ、レトロリフレクタの再帰性として知られている。
【0029】
実施形態の反射型面対称結像素子2においては、Z軸方向成分においては入射光線を正反射するとともにXY軸方向成分については入射光線を再帰性反射をする微小ミラーユニットMuの複数を、図4の平面図に示すように例えばXY軸方向に第1光反射面Mxz及び第2光反射面Myzが一致するようにマトリクス状に平面的に配列して構成されている。なお、反射型面対称結像素子2においてZ軸方向には光が通過(少なくとも一部は2回反射して)できるような構成されていることは云うまでもない。
【0030】
図5に示すように例えば反射型面対称結像素子2のZ軸上の正側(上側)に発散光CvBを発する発光体があれば、反射型面対称結像素子2の微小ミラーユニット有効領域に拡がった全ての光線のうち、各第1及び第2光反射面Mxz,Myzで2回、反射した光線のそれぞれは、当該発光体の反射型面対称結像素子2に対する面対称位置に収束する。
【0031】
一方、図6に示すように例えば反射型面対称結像素子2のZ軸上の正側(上側)から収束光DvBを、反射型面対称結像素子2の微小ミラーユニット有効領域に入射すれば、その中の集光領域内の各第1及び第2光反射面Mxz,Myzで2回、反射した光線は、反射型面対称結像素子2から面対称に発散して発散光として拡がる。
【0032】
このように直交する第1及び第2光反射面Mxz,Myzの法線で作るXY平面内においては光線を再帰的に反射しかつZ軸方向で正反射するので、図7に示すように、自発光体又は被照射体の物体1がZ軸上の負側(下側)に配置されるとき、当該物体1の像を実像Riで結像させることが可能となる。微小ミラーユニットに写った像の裏側からの観察となるので、三次元物体に対しては奥行きが反転する。一つの微小ミラーユニットが数10μm〜数10mm角の大きさで自由に製作することが可能であるので、かかる像の解像度は各微小ミラーユニットMuのサイズを小さくことにより、微小ミラーユニットMuを密に配列することにより像の明るさを向上できる。なお、物体1は自発光体又は被照射体でもよく、液晶ディスプレイなどの表示器の表示面を物体1として用いるがことができる。
【0033】
このような微小ミラーユニットを平面内に並べると、点光源から発せられた光線は、あらゆる微小ミラーユニットによって反射され、必ず面対称位置を通るので、実像の結像或いは虚像の結像が可能となる。反射型面対称結像素子2は、マクロ的に見れば、板状なので、一方の主面から他方の主面へ光を透過する光屈曲透過型光学素子として動作する。
【0034】
図7に示すように、反射型面対称結像素子2の主面上に空中映像を浮かばせ、観察者に対して、所定方向からの観察が可能となる。
【0035】
反射型面対称結像素子2の一例は、例えば、図8に示すように、各々が同数の棒状の直方体材20をその長手側面が並列に密着させることにより形成された2つのシート部(第1集合体及び第2集合体)21,22を有する。シート部21,22の互いの主面同士を接着してある。
【0036】
長手方向に伸長した4面のうちの対向する2面は、図9に示すように、光の透過で使用する光透過面Tである。残る2面の一方は反射面であり鏡面処理を施されている。この鏡面処理は光を反射するという意味ではなく、非常に滑らかな状態にする処理である。残る2面の他方は光の吸収を行う面である。直方体材20はシート部21,22各々で100本〜20000本程度用いられる。例えば、直方体材20は、長手方向に垂直な方向、すなわち短手方向の四角形の断面の一辺が0.1〜10mm前後の透明なアクリルに代表されるプラスチック又はガラスの棒からなる。長さは投影する画像の大きさによって変化するが、100mm〜10m程度である。また、直方体材20の長手方向に伸長した1面(残りの1面の反対側の面)には光反射膜23が形成される。光反射膜23はアルミや銀の蒸着或いはスパッタなどによって形成される。その光反射膜23を形成した面とは反対側の面(残り1面)には光吸収膜24が形成され、それにより光吸収面とされる。光吸収膜24はつや消しの黒塗料などを用いたり、黒色の薄いシートを密着させて形成しても良い。
【0037】
このような複数の直方体材20について、図10に示すように、1つの直方体材20の光吸収膜面と別の直方体材20の光反射膜面を密着させてシート部21,22がそれぞれ形成される。シート部21,22は、図10に示すように、直方体材20の並列方向が交差するようにいずれか一方を90度回転させた状態で貼り合わせられ、それによって反射型面対称結像素子2が形成される。シート部21の各直方体材20とシート部22の各直方体材20とが交差する部分が微小ミラーユニットを構成し、各微小ミラーユニットのシート部21の光反射膜面が第1集合体の第1光反射面であり、シート部22の光反射膜面が第2集合体の第2光反射面である。
【0038】
なお、シート部21,22を形成する際に、1つの直方体材20の光吸収膜面と別の直方体材20の光反射膜面を密着させるので、光吸収膜24は光反射膜23の上に積層して形成しておいても良い。
【0039】
更に、直方体材20はプラスチック樹脂やガラスなどによって形成されているため、約1.5程度の屈折率を持っているが、このことによって表面反射が起こる場合がある。そこで、反射型面対称結像素子2の物体(物体1)側及び実像3側の面に減反射コーティングを施すことにより鮮明な実像を空間に形成することができる。
【0040】
上記の例では、反射型面対称結像素子2の各直方体材20をアクリルやガラス等によって透明層として形成して、メンテナンスなどを容易にする構成を示したが、これらの代わりにごく薄いミラーシートを多数用いても同様の効果は得られる。構造的には平行するミラー群を2層に直交配置する構造である。
【0041】
なお、各直方体材としてガラスミラーを使用する場合には、カットの際に切断面が傾いたり表面に微小な凹凸が発生するが、これが結合像をぼけさせる大きな要因となる。そこで、表面に低粘度のエポキシ樹脂やUV硬化樹脂をコーティングすることにより、反射型面対称結像素子の表面が滑らかになり、結果として光軸ズレの少ない鮮明な実像を得ることができるようになる。コーティングする面は反射型面対称結像素子の両面が最も効果的であり、どこの面でも有効であるが、シート部の貼り合わせ面は接着層を兼ねることができる。
【0042】
他の反射型面対称結像素子の例としては、2シート貼り合わせ構造の他に、単一シート構造でもよい。例えば、図11に示すように、一面に階段状側面を有する直方体の階段状側面を側面として並べて接合した板状体の反射型面対称結像素子2bが挙げられる。図11は反射型面対称結像素子2bの部分斜視図である。図に示す反射型面対称結像素子2bでは階段状側面の一段を90度直交する第1及び第2光反射面の微小ミラーユニットとしている。
【0043】
図12は図11の反射型面対称結像素子2bの形成用の一面に階段状側面を有する直方体形成用の板状体31の部分切欠斜視図である。直方体形成用板状体31はZ軸方向に伸長する複数の同一形状の平行峰部32を一方の主面に有する。その他方の主面は平面である。周期的に等しいピッチの平行峰部32の各々のXY平面における断面は同一形状の直角三角形(頂部)である。
【0044】
図13も一面に階段状側面を有する直方体形成用板状体31の部分切欠斜視図である。この直方体形成用板状体31では、その平行峰部32側の主面33上に、光反射膜及び光吸収膜(図示せず)を順に成膜してある。光反射膜及び光吸収膜を成膜した直方体形成用板状体31の複数枚を製造しておく。直方体形成用板状体の材料は透明なアクリルに代表されるプラスチック又はガラスである。プラスチックの場合、射出成形などで平行峰部付きの金型により複数枚を製造することができる。
【0045】
図14は、製造された直方体形成用板状体31の平面部側に、製造された別の直方体形成用板状体31の平行峰部32側部分を透明接着剤(図示せず)で接着した貼着板状体の部分切欠斜視図である。透明接着剤は、その屈折率が直方体形成用板状体31の屈折率とほぼ等しい材料から選択することが好ましい。接着時に、直方体形成用板状体31の平行峰部に気泡が残留しないように接合することが好ましい。
【0046】
図15は、直方体形成用板状体31の平面部側に次々と別の直方体形成用板状体31の平行峰部32側部分を透明接着剤(図示せず)で接着した集合体34の部分切欠斜視図である。
【0047】
接着硬化後に、XY平面(破線)に平行に等しいピッチで切断して切り分けて、切断面の研磨や、透明保護膜成膜などを施して、図11の反射型面対称結像素子2bが製造される。
【0048】
<中継光学素子及び物体との組み合わせ>
中継光学素子は、凸レンズ、凹レンズや、凹面鏡、凸面鏡などの従来の結像光学素子であり、像の拡大又は縮小を可能とする素子である。また、素子単体での使用に限らずこれらを組み合わせて使用することもでき、その像を観察できる位置はそれぞれの従来の結像光学素子による結像光学系の光路により設定できる。また、これら従来の結像光学素子は結ぶ像が実像になるか虚像になるかは、それぞれの光学系の種類と物体の位置関係において決められ、結像される像を実像にするか虚像にするかによって観察位置を変更できる。
【0049】
中継光学素子すなわち結像光学系には主にレンズを用いる場合と、反射鏡を用いる場合とがあるが、ここでは凸レンズを用いる場合について説明する。
【0050】
図16は、凸レンズCvLの焦点距離をf、凸レンズCvLと物体1との距離をaとし、aがf>a>0の場合の結合光学系の光路図を示す。この場合、倍率f/(f−a)の虚像が得られる。この時、観察者Eの眼で虚像3Vの全体像が観察できる範囲をハッチングで示す。
【0051】
図16の凸レンズCvLと物体1との関係がaがf>a>0の場合、凸レンズCvLと観察者Eの眼の間の空間に、凸レンズCvLの光軸にその法線が45度傾斜するように反射型面対称結像素子2を配置した態様が図17である。図17においては、反射型面対称結像素子2を配置することで、倍率f/(f−a)の実像3が反射型面対称結像素子2と観察者Eの眼の間の空間に得られる。反射型面対称結像素子2により凸レンズCvLで物体1からの発散光が収束光に変換されるからである。この時、観察者Eの眼で実像3の全体像が観察できる範囲をハッチングで示す。
【0052】
aに位置に置かれた物体1から発する光は凸レンズCvLによって屈折された後、反射型面対称結像素子2の微小ミラーユニット有効領域に拡がった全ての光線のうち、各第1及び第2光反射面で2回、反射され全体として実像3を形成する。
【0053】
この例では従来の凸レンズCvLの奥に虚像3Vとして結像されていた像が実像3として形成される。実像3は結像位置にスクリーンなどを設置してその反射光を観察することもできる。また反射型面対称結像素子の手前の空間に結像しているから観察者Eの眼を実像3に最接近して観察することもできる。さらに実像の全体像を直接観察できる範囲も十分広く確保できる。
【0054】
この反射型面対称結像素子は単独で使用した場合は物体から実像を形成する光学素子として機能するが、この反射型面対称結像素子を、他の結合光学系(従来から一般的に光学系に利用されている凸レンズや凹面鏡あるいは凹レンズや凸面鏡およびそれらの組合せで構成される、実像または虚像を形成する光学素子)と組み合わせることで、実像から虚像への変換、あるいは虚像から実像への変換を行うことが可能となる。また、反射型面対称結像素子は面対称結像系であるため像倍率が1であったが、従来の結像光学素子との組み合わせにより任意の像倍率を設定できるようになる。さらに従来の結像拡大光学系の多くが虚像表示であり、有効観察範囲が狭い範囲に限定されていたが、反射型面対称結像素子と組み合わせることによって有効観察範囲を拡大したり、像を手前の空間に結像させスクリーンに投影するなどして広範囲から像を観察できるようにすることが可能となる。
【0055】
<他の中継光学素子及び物体との組み合わせ>
図18は、凸レンズCvLの焦点距離をf、凸レンズCvLと物体1との距離をaとし、aがa>fの場合の結合光学系の光路図を示す。この場合、倍率f/(a−f)の実像が得られる。この時、観察者Eの眼で実像3の全体像が観察できる範囲をハッチングで示す。
【0056】
図18の凸レンズCvLと物体1との関係がaがa>fの場合、凸レンズCvLと観察者Eの眼の間(凸レンズCvLと実像3の間)の空間に、凸レンズCvLの光軸にその法線が45度傾斜するように反射型面対称結像素子2を配置した図が図19である。図18で示した凸レンズCvLに対して物体1を配置した空間とは反対の空間に、反射型面対称結像素子2を配置することで、図19に示すように、凸レンズCvLと反射型面対称結像素子2の間の空間にて、倍率f/(a−f)の虚像3Vが得られる。反射型面対称結像素子2により凸レンズCvLでの物体1からの収束光が発散光に変換されるからである。
【0057】
さらに他の例として凹面鏡を用いて虚像を結像する結像光学系に反射型面対称結像素子を加えて実像を形成する場合について説明する。
【0058】
図20は、凹面鏡CcMの焦点距離をf、凹面鏡CcMと物体1との距離をaとし、aがf>a>0の場合の結合光学系の光路図を示す。この場合、物体1が光を妨害しないようにハーフミラーHMを用いて凹面鏡CcMと物体1の光軸を一致させている。この場合、倍率f/(f−a)の虚像3Vが得られる。この時、観察者Eの眼で虚像3Vの全体像が観察できる範囲をハッチングで示す。
【0059】
図20の凹面鏡CcMと物体1との関係がaがf>a>0の場合、凹面鏡CcMと観察者Eの眼の間(ハーフミラーHMと観察者Eの眼の間)の空間に、物体1の光軸にその法線が45度傾斜するように反射型面対称結像素子2を配置した態様が図21である。
【0060】
図21に示すように、凹面鏡から見てハーフミラーHMの後方空間に、反射型面対称結像素子2を配置することで倍率f/(f−a)の実像3が得られる。反射型面対称結像素子2により凹面鏡CcMでの物体1からの発散光が収束光に変換されるからである。なお、図21の光学系では実像位置に光を拡散させるスクリーンScを配置し、投影された実像3を観察する場合について記載している。
【0061】
もう一つの他の例として凹面鏡を用いて虚像を結像する結像光学系に反射型面対称結像素子を加えて実像を形成する場合について説明する。
【0062】
図22は、凹面鏡CcMの焦点距離をf、凹面鏡CcMと物体1との距離をaとし、aがf>a>0の場合の結合光学系の光路図を示す。この場合、物体1が光を妨害しないようにハーフミラーHMを物体1と凹面鏡CcMとの間に用いて凹面鏡CcMと観察者Eの眼の光軸を一致させている。この場合、ハーフミラーHMから見て凹面鏡CcMの奥側に倍率f/(f−a)の虚像3V(破線)が得られるが、ハーフミラーHMにより凹面鏡CcMからの発散光が観察者Eの眼に届くので、倍率f/(f−a)の虚像3V(実線)が得られる。この時、観察者Eの眼で虚像3Vの全体像が観察できる範囲をハッチングで示す。
【0063】
図22の凹面鏡CcMと物体1との関係がaがf>a>0の場合、ハーフミラーHMと観察者Eの眼の間の空間に、物体1の光軸にその法線が45度傾斜するように反射型面対称結像素子2を配置した態様が図23である。
【0064】
図23に示すように、反射型面対称結像素子2を配置することで倍率f/(f−a)の実像3が得られる。反射型面対称結像素子2により凹面鏡CcMでの物体1からの発散光が収束光に変換されるからである。なお、図23の光学系では実像位置に光を拡散させるスクリーンScを配置し、投影された実像3を観察する場合について記載している。
【0065】
別の例として凹面鏡を用いて実像を結像する光学系に反射型面対称結像素子を加えて虚像を形成する場合について説明する。
【0066】
図24は、凹面鏡CcMの焦点距離がf、凹面鏡CcMと物体1との距離がaであって、aが2f>a>fの条件を満たす場合の結合光学系の光路図を示す。この場合、物体1が光を妨害しないようにハーフミラーHMを用いて凹面鏡CcMと物体1の光軸を一致させている。なお、図24の光学系では実像位置に光を拡散させるスクリーンScを配置し、投影された実像3を観察する場合について記載している。
【0067】
図24の凹面鏡CcMと物体1との関係が2f>a>fの場合、ハーフミラーHMとスクリーンScの間の空間に、物体1の光軸にその法線が45度傾斜するように反射型面対称結像素子2を配置した態様が図25である。
【0068】
図25に示すように、凹面鏡から見てハーフミラーHMの後方空間に、反射型面対称結像素子2を配置することで倍率f/(a−f)の虚像3Vが得られる。反射型面対称結像素子2により凹面鏡CcMでの物体1からの収束光が発散光に変換されるからである。
【0069】
以上のように、本発明によれば、反射型面対称結像素子と結像光学素子(中継光学素子)とを組み合わせ、虚像から実像を作る場合と同様に、実像を形成する光線束から虚像を作ることができる。以上の表示装置の構成は、凸レンズや凹レンズに代表される透過型の光学系のみならず、凹面鏡や凸面鏡を用いた反射型光学系においても同様の作用が得られる。
【0070】
さらに、いずれの実施形態においても、物体1、凸レンズCvL又は凹面鏡CcM、ハーフミラーHM及び反射型面対称結像素子2を含む筐体などの遮光体(図示せず)を含むことができる。また、筐体などの遮光体の一部が反射型面対称結像素子2からなるようにすることもできる。遮光体の内壁面は暗色とすることにより、迷光などを吸収し得られる像のコントラストを向上されることもできる。
【0071】
最後に、本発明の表示装置を車載用のフロントガラスプロジェクタの実施例と比較例とを説明する。車の運転席、操縦席まわりは操作装置が多く有るためフロントガラスプロジェクタの小型化が必要である。また、近年のハイビジョンディスプレイ(16:9)の画角が30度を確保することも必要である。図26はディスプレイ41と拡大光学系の凸レンズ42と平面ハーフミラー43の組み合わせからなるプロジェクタ(比較例)を示す。図27は上述の図19のa>fの場合と同等の実像虚像変換光学系(拡大光学系)を組み合わせからなるプロジェクタを示す。図27の実施例の表示装置は図26装置と同等のディスプレイ41と拡大光学系の凸レンズ44と内部平面ミラー45と反射型面対称結像素子2を配置して構成され、図26の比較例と同一サイズの投射映像(虚像)を形成している。
【0072】
実施例と比較例を比べると焦点距離がほぼ同等の凸レンズ42と凸レンズ44であるが、比較例の凸レンズ42に比べ実施例凸レンズ44の口径は約1/3に減少したものを利用できる。よって、本発明の拡大光学系と反射型面対称結像素子の組み合わせによれば、従来よりも小型化可能でかつ高倍率の表示装置が容易に構成できる効果が得られる。
【0073】
以上のように本実施形態によれば、反射型面対称結像素子と実像(または虚像)形成する従来の結像光学系とを組み合わせることによって、実像を虚像(または虚像を実像に)変換する素子として用いるので、中継光学素子すなわち従来の結像光学系(レンズあるいはミラー)によって結像状態を作り出す光線束を、反射型面対称結像素子に入射することによって、上記従来の結像光学系(レンズあるいはミラー)によって結像される虚像を実像に変換し、あるいは実像を虚像に変換し、変換された結像を取り出すことができる。
【0074】
なお、反射型面対称結像素子は、その光学素子面内に互いに90度直交する第1及び第2光反射面の微小ミラーユニットからなり、それらの交線が素子面に垂直になるように、微小ミラーユニットの多数が配列されて構成される。反射型面対称結像素子の個々の微小ミラーユニットでは、上記従来の結像光学系(レンズあるいはミラー)によって、結像状態を作り出す光線束は上記反射型面対称結像素子の第1及び第2光反射面によりそれぞれ1回ずつ計2回反射させる出射する。
【0075】
上記の表示装置は、顕微鏡、望遠鏡、双眼鏡、空間映像ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、フロントプロジェクター、リアプロジェクター、などの光学製品であって、凸レンズ、凹面鏡、凹レンズ、凸面鏡、またはそれらの組合せにより実像または虚像を結像し、その結像された像を観察できるようにした装置、またはその結像された像を観察するための技術分野に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自らの素子面に対して収束又は発散状態で入射される光束を前記素子面に関して対称に発散又は収束状態で射出する板状の反射型面対称結像素子と、
光を前記反射型面対称結像素子へ収束又は発散状態で入射する中継光学素子と、
前記中継光学素子へ前記光を供給する発光体と、を備え、
前記発光体の実像または虚像を観察できるように前記反射型面対称結像素子、前記中継光学素子及び前記発光体が配置なされたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記発光体は、自発光体又は被照射体であることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記発光体、前記中継光学素子及び前記反射型面対称結像素子を含む遮光体を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の表示装置。
【請求項4】
前記遮光体の一部が前記反射型面対称結像素子からなることを特徴とする請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記遮光体の内壁面は暗色であることを特徴とする請求項3又は4記載の表示装置。
【請求項6】
前記中継光学素子は、凸レンズ、凹レンズ、凹面鏡、凸面鏡のいずれかを含む結像光学素子であることを特徴とする請求項1〜5のいすレか1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記中継光学素子において、前記結像光学素子と前記発光体との間に、ハーフミラーが配置され、光が前記ハーフミラーで合成されることを特徴とする請求項6記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−81296(P2011−81296A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235019(P2009−235019)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】