説明

表面処理無機粉体

【課題】各樹脂への分散性に優れ、成形物の諸物性を低下させずに難燃性を付与でき、更に耐水性を向上できる表面処理無機粉体を提供する。
【解決手段】無機粉体を、Xm(R2nSi(OR1(4-m-n)
(X、R1、R2は1価炭化水素基、mは1又は2、nは0又は1、m+nは1又は2)
の化合物或いはその部分加水分解縮合物、又はこれと、
(OR13-q(R2qSi−Y−Si(R2p(OR13-p
(Yは2価有機基又は−(R4−Si(R32s−(OSi(R32r−R5t−、R3は1価炭化水素基、R4は2価炭化水素基、R5はO又は2価炭化水素基、rは1〜40、s,tは0又は1、p,qは0〜3、p+qは0〜4)
の化合物或いはその部分加水分解縮合物を含む原料を、生成するポリシロキサンと分離状態となる液状加水分解縮合触媒を用いて得たオルガノポリシロキサンで表面処理してなる表面処理無機粉体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種樹脂や色々なマトリックス中への分散性、難燃性に優れ、更に耐水性にも優れた表面処理無機粉体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂に粉体を配合したコンパウンドが使用されるケースは多く、粉体の配合により、補強効果、難燃性、導電性、熱伝導性等の特性が付与されている。しかし、粉体を大量配合するような場合では、樹脂本来の引張強度や伸びといった特性が低下することがある。粉体を大量に使用する用途として、ノンハロゲン難燃剤としての用途が挙げられる。特に、電線やケーブルの絶縁体又はシースとして使用されるポリオレフィン系樹脂の難燃処方に対しては、近年、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物粉体を用いた様々な技術が提案されており、金属水酸化物とオルガノポリシロキサンを併用添加した場合に難燃性が大きく向上することが開示されている(特許文献1〜8:特公昭59−30178号公報、特公昭58−55181号公報、特公平01−13730号公報、特公平01−20652号公報、特公平06−76524号公報、特公平05−64656号公報、特開昭62−81435号公報、特開昭62−236838号公報)。しかしながら、従来行われている通常の混練方法(樹脂とシリコーンガムのマスターペレットを作製したり、粉体と樹脂ペレットを2軸押出機で混練後成形する方法)では、オルガノポリシロキサンが均一に分散しきれていないため、成形性が悪く、難燃効果も十分ではなかった。
【0003】
また、このような問題を解決するものとして、側鎖の全てがメチル基であるジメチルポリシロキサンで表面処理した粉体を使用することが有効である(特許文献9:特開2004−51990号公報)とされており、成形性などは改善される傾向にあるが、成形物の耐水性が良くなく、耐湿試験後の成形物の諸性能が悪化する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭59−30178号公報
【特許文献2】特公昭58−55181号公報
【特許文献3】特公平01−13730号公報
【特許文献4】特公平01−20652号公報
【特許文献5】特公平06−76524号公報
【特許文献6】特公平05−64656号公報
【特許文献7】特開昭62−81435号公報
【特許文献8】特開昭62−236838号公報
【特許文献9】特開2004−51990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、各種樹脂への分散性に優れ、成形物の諸物性を低下させることなく難燃性を付与することが可能であり、更に耐水性を向上させることができる表面処理無機粉体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、無機粉体を下記(A)のオルガノポリシロキサン成分により表面処理してなる表面処理無機粉体を樹脂に配合した場合、該樹脂への分散性に優れ、成形物の諸物性を低下させることなく難燃性を付与することが可能であり、更に耐水性を向上させ得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
従って、本発明は、下記に示す表面処理無機粉体を提供する。
〔請求項1〕
無機粉体を下記(A)オルガノポリシロキサンにより表面処理してなることを特徴とする表面処理無機粉体。
(A)オルガノポリシロキサン
下記一般式(1)
m(R2nSi(OR1(4-m-n)・・・(1)
(式中、Xは炭素原子数6〜18の非置換又は置換の1価炭化水素基、R1は炭素原子数1〜4の1価炭化水素基であり、R2は炭素原子数1〜3の1価炭化水素基であり、mは1又は2、nは0又は1であり、m+nは1又は2である。)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物、又はこの有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物と、下記一般式(2)
(OR13-q(R2qSi−Y−Si(R2p(OR13-p・・・(2)
(式中、R1及びR2は上記と同じであり、Yは2価の有機基又は−(R4−Si(R32s−(OSi(R32r−R5t−基であり、ここでR3は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基、R4は炭素原子数1〜6の2価の炭化水素基、R5は酸素原子又は炭素原子数1〜6の2価の炭化水素基、rは1〜40の整数、sは0又は1、tは0又は1である。p、qは独立に0〜3の整数であるが、p+qは0〜4の整数である。)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物とを含む有機ケイ素化合物原料を、生成するオルガノポリシロキサンと分離状態となる液状の加水分解縮合触媒を用いて加水分解、重縮合したオルガノポリシロキサン。
〔請求項2〕
加水分解縮合触媒が、尿素塩酸塩であることを特徴とする請求項1記載の表面処理無機粉体。
〔請求項3〕
無機粉体が、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、アンチモン化合物、亜鉛化合物、ホウ素化合物及びリン化合物から選ばれるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理無機粉体。
〔請求項4〕
無機粉体が、アルミニウム化合物及び/又はマグネシウム化合物である請求項1又は2に記載の表面処理無機粉体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表面処理無機粉体は、各種樹脂への分散性に優れ、成形物の諸物性を低下させることなく難燃性を付与することが可能であり、更に耐水性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】合成例2で得られたオルガノポリシロキサン1のケイ素核磁気共鳴スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明で使用する無機粉体としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、四酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム化合物、モリブデン化合物、炭酸カルシウム、シリカ、シリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダー、タルク、アクリルシリコーンパウダー、酸化チタン、ろう石、石英、けいそう土、硫化鉱、硫化焼鉱、黒鉛、ベントナイト、カオリナイト、活性炭、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化鉄、大理石、ベークライト、ポートランドセメント、SiOパウダー、窒化ホウ素、合成マイカ、ガラスビーズ、マイカ、セリサイト、ドロマイト、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウムなどのリン系難燃剤、膨脹性黒鉛、光酸化チタン等が挙げられるが、本発明はこれらの無機粉体に限定されるものではない。
【0011】
本発明においては、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、アンチモン化合物、亜鉛化合物、ホウ素化合物、リン化合物等が好適に用いられ、とりわけ難燃材料用粉体としては、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物が好ましく、中でも水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが好ましい。
また、上記した各種無機粉体は、未処理のものであっても、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、チタネートカップリング剤、シランカップリング剤、熱可塑性樹脂等の表面処理剤で処理されているものであってもよい。
【0012】
本発明で使用する無機粉体は、平均粒子径が0.01〜10μmのものが分散性において好ましく、特に0.01〜5μm、最も好ましい平均粒子径は0.01〜3μmである。平均粒子径が小さすぎると安定的な入手が困難となる場合があり、大きすぎると樹脂に配合した場合、分散性が低下するおそれがある。なお、本発明において、平均粒子径は、コールターマルチサイザーIIによる電気抵抗法により測定できる。
【0013】
本発明の表面処理剤となる(A)オルガノポリシロキサン成分は、上述したように下記一般式(1)
m(R2nSi(OR1(4-m-n)・・・(1)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物単独、又は
これと、下記一般式(2)
(OR13-q(R2qSi−Y−Si(R2p(OR13-p・・・(2)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物とを含む有機ケイ素化合物原料を加水分解縮合したものであり、生成するオルガノポリシロキサンと分離状態となる液状の加水分解縮合触媒を使用して加水分解、重縮合することにより得られるオルガノポリシロキサンを使用することが特徴である。
【0014】
式(1)におけるXは、炭素原子数6〜18の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、アルキル基、特に直鎖状のアルキル基であることが好ましく、また置換基としては、炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられ、好ましくは非置換の基である。例えば、C613−基、C817−基、C1021−基、C1225−基、C1429−基、C1633−基、C1837−基等が挙げられる。R1は炭素原子数1〜4の1価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基などが挙げられる。R2は炭素原子数1〜3の1価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基などが挙げられる。また、mは1又は2であり、好ましくは1である。nは0又は1であり、好ましくは0である。m+nは1又は2であり、好ましくは1である。
【0015】
このような式(1)で表される有機ケイ素化合物の例としては、
613Si(OCH33、C613SiCH3(OCH32
613Si(OCH2CH33、C613SiCH3(OCH2CH32
817Si(OCH33、C817SiCH3(OCH32
817Si(OCH2CH33、C817SiCH3(OCH2CH32
1021Si(OCH33、C1021SiCH3(OCH32
1021Si(OCH2CH33、C1021SiCH3(OCH2CH32
1225Si(OCH33、C1225SiCH3(OCH32
1225Si(OCH2CH33、C1225SiCH3(OCH2CH32
1429Si(OCH33、C1429SiCH3(OCH32
1429Si(OCH2CH33、C1429SiCH3(OCH2CH32
1633Si(OCH33、C1633SiCH3(OCH32
1633Si(OCH2CH33、C1633SiCH3(OCH2CH32
1837Si(OCH33、C1837SiCH3(OCH32
1837Si(OCH2CH33、C1837SiCH3(OCH2CH32
などが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0016】
式(2)中のR1、R2は上記式(1)で例示した基と同じである。また、Yはハロゲン原子を含んでもよい炭素原子数1〜20のアルキレン基等の2価の有機基、又は−(R4−Si(R32s−(OSi(R32r−R5t−基である。ここで、R3は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基などが挙げられ、特にメチル基が好ましい。また、R4は炭素原子数1〜6の2価の炭化水素基であり、具体的には−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−等のアルキレン基などが挙げられる。R5は酸素原子又は炭素原子数1〜6の2価の炭化水素基であり、具体的には、−O−、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−等のアルキレン基などが挙げられる。rは1〜40、好ましくは5〜30の整数、sは0又は1、tは0又は1である。
【0017】
Yとして具体的には下記のものを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、
−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、
−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、
−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、
−CH248CH2−、−CH2612CH2−、
−CH2CH248CH2CH2−、−CH2CH2612CH2CH2−、
−CH2CH2816CH2CH2−、−CH2CH21020CH2CH2−、
−(OSi(CH32)O−、−(OSi(CH322O−、
−(OSi(CH324O−、−(OSi(CH326O−、
−(OSi(CH328O−、−(OSi(CH329O−、
−(OSi(CH3210O−、−(OSi(CH3220O−、
−(OSi(CH3230O−、−(OSi(CH3240O−、
−(OSi(CH322−CH2−、−(OSi(CH324−CH2−、
−(OSi(CH326−CH2−、−(OSi(CH328−CH2−、
−(OSi(CH3210−CH2−、−(OSi(CH3220−CH2−、
−(OSi(CH3230−CH2−、
−(OSi(CH322−CH2CH2−、
−(OSi(CH324−CH2CH2−、
−(OSi(CH326−CH2CH2−、
−(OSi(CH328−CH2CH2−、
−(OSi(CH329−CH2CH2−、
−(OSi(CH3210−CH2CH2−、
−(OSi(CH3220−CH2CH2−、
−(OSi(CH3230−CH2CH2−、
−(OSi(CH3240−CH2CH2−、
−CH2CH2−Si(CH32(OSi(CH322−CH2CH2−、
−CH2CH2−Si(CH32(OSi(CH324−CH2CH2−、
−CH2CH2−Si(CH32(OSi(CH326−CH2CH2−、
−CH2CH2−Si(CH32(OSi(CH328−CH2CH2−、
−CH2CH2−Si(CH32(OSi(CH329−CH2CH2−、
−CH2CH2−Si(CH32(OSi(CH3210−CH2CH2−、
−CH2CH2−Si(CH32(OSi(CH3218−CH2CH2−、
−CH2CH2−Si(CH32(OSi(CH3220−CH2CH2−、
−CH2CH2−Si(CH32(OSi(CH3228−CH2CH2−、
−CH2CH2−Si(CH32(OSi(CH3230−CH2CH2−。
【0018】
pは0,1,2又は3であり、特に処理される無機粉体の耐水耐久性を高めるには0又は1が好ましく、0であることが特に好ましい。また、qは0,1,2又は3であり、特に処理される無機粉体の耐水耐久性を高めるには0又は1が好ましく、0であることが特に好ましい。
【0019】
このような式(2)で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、
(CH3O)3SiCH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)2(CH3)SiCH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)3SiCH2CH248CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2612CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2816CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH21020CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH248CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2612CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2816CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH21020CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)3Si(OSi(CH32)OSi(OCH33
(CH3O)3Si(OSi(CH322OSi(OCH33
(CH3O)3Si(OSi(CH324OSi(OCH33
(CH3O)3Si(OSi(CH326OSi(OCH33
(CH3O)3Si(OSi(CH328OSi(OCH33
(CH3O)3Si(OSi(CH3210OSi(OCH33
(CH3O)3Si(OSi(CH3220OSi(OCH33
(CH3O)3Si(OSi(CH3230OSi(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH322CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH324CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH326CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH328CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH329CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH3210CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH3218CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH3228CH2CH2Si(OCH33
(CH33Si(OSi(CH324OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH326OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH328OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH329OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH3210OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH3220OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH3230OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH3240OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH324CH2CH2Si(OCH33
(CH33Si(OSi(CH326CH2CH2Si(OCH33
(CH33Si(OSi(CH328CH2CH2Si(OCH33
(CH33Si(OSi(CH329CH2CH2Si(OCH33
(CH33Si(OSi(CH3210CH2CH2Si(OCH33
(CH33Si(OSi(CH3220CH2CH2Si(OCH33
(CH33Si(OSi(CH3230CH2CH2Si(OCH33
(CH33Si(OSi(CH3240CH2CH2Si(OCH33
などが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を加水分解、縮合する場合において、各有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物のmol比は特に限定されない。式(1)の化合物単独でもよいが、耐水特性、特に耐水耐久性を付与する目的で式(2)の化合物を加えた方がより好ましい。その際のmol比は、式(1)の化合物1molに対して式(2)の化合物を0〜0.5molとすることが好ましく、より好ましくは0〜0.3molである。この式(2)の化合物の比率が大きすぎると耐水性能がやや悪くなる場合がある。
【0021】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、式(1)及び式(2)以外のシラン或いはシロキサン化合物を必要に応じて使用してもよい。
【0022】
本発明の(A)オルガノポリシロキサンを製造する際には、生成するオルガノポリシロキサンと分離状態となる液状の加水分解縮合触媒を使用する。このようなオルガノポリシロキサンと分離状態となる液状の加水分解縮合触媒は、特に限定されないが、酸と塩基の塩が好ましく、特に尿素と塩酸との塩である尿素塩酸塩が好ましく、更に好ましくは尿素塩酸塩のアルコール溶液が好ましい。使用されるアルコールは、特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
【0023】
本発明に用いる加水分解縮合触媒の使用量は特に限定されないが、式(1)の化合物1mol、又は式(1)の化合物と式(2)の化合物のトータルの1molに対し、0.001mol以上加えればよく、好ましくは0.01〜20mol程度であり、より好ましくは0.1〜5mol程度である。これよりも少ない場合、加水分解縮合に時間がかかり、またモノマー残存量が多くなるおそれがあり、これよりも多い場合、オルガノポリシロキサンとの分離状態が悪くなるおそれがあり、また経済的にも不利である。
【0024】
アルコールの添加量も任意であるが、加水分解縮合触媒とアルコールとの合計中に1〜99質量%程度であり、特に10〜60質量%程度が好ましい。
【0025】
特に好ましく使用する触媒である尿素塩酸塩の調製方法は、特に限定されないが、尿素をアルコール中に分散させ、濃塩酸或いは塩酸水を加えて調製した尿素塩酸塩の含水アルコール溶液を使用してもよく、またハロゲノシランと尿素を分散させた中に、アルコールを加えてハロゲノシランをアルコキシ化し、その際に生成する尿素塩酸塩をそのまま加水分解縮合触媒として使用してもよく、また、このようにして調製した尿素塩酸塩を分離し、本発明で使用する有機ケイ素化合物の加水分解縮合触媒として使用することも可能である。
【0026】
(A)成分のオルガノポリシロキサンを製造する際の加水分解、重縮合に使用する水の使用量は、生成させるオルガノポリシロキサンにはモノマーを含まず、なるべく重合度が高いことが好ましく、使用する有機ケイ素化合物の加水分解可能な全アルコキシ基1molに対して、水を0.5〜3mol使用することが好ましく、より好ましくは0.8〜2molである。この水量が少なすぎると分子量が上がらず、耐水性能や耐水耐久性が不十分となる場合がある。またこの水量が多すぎると保存安定性が悪くなる場合がある。
【0027】
加水分解反応を行う際の水の添加方法は任意であり、例えば、有機ケイ素化合物と無水状態の加水分解縮合触媒存在下に、水を加えて加水分解反応を行えばよく、その際アルコール等の溶剤に希釈して加えてもよい。
【0028】
また、前述したように尿素と濃塩酸或いは塩酸水を混合することで加水分解縮合触媒を調製した場合には、有機ケイ素化合物に調製した含水加水分解縮合触媒を加えることで反応を行ってもよい。
更に、調製した含水加水分解縮合触媒中に有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を加えて、加水分解、縮合反応を行ってもよい。
【0029】
加水分解、縮合反応の際、必要に応じてアルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などの有機溶媒を使用してもよい。これらの有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。但し、これらの溶媒を加えた場合も有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を加水分解、重縮合して生成されるオルガノポリシロキサンと加水分解縮合触媒とが分離状態となっている必要があるため、このような溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等がより好ましい。
【0030】
加水分解、縮合反応は−10℃〜150℃の温度範囲で実施すればよいが、一般的に、0℃より低い温度では反応の進行が遅くなるため実用的でなく、また高温すぎる場合もゲル状物となったり、有機官能基への悪影響が発生するため、0℃〜130℃の温度範囲とすることが好ましく、更に好ましくは10℃〜100℃の温度範囲である。
【0031】
反応後、使用した触媒は分離して除去すればよく、また加水分解して生成したアルコール類、或いは使用した溶剤、低沸点類の留去などによる精製工程を行った後、触媒を分離してもよい。
【0032】
本発明における(A)成分を得るための加水分解、縮合反応は、加水分解縮合触媒と生成したオルガノポリシロキサンとが分離状態となることが重要であり、これにより加水分解縮合触媒の溶液に溶解しやすいモノマー或いは低分子量体が優先的に加水分解されることでモノマー或いは低分子量体成分含有量が少なくなり、高分子量体を得ることができる。一般的に炭化水素基が長くなるにつれて、有機ケイ素化合物の加水分解性は悪くなり、モノマーが残存したり、分子量が上がらない傾向があり、そのようなものを無機粉体の表面処理剤として使用しても良好な分散性や耐水性能を得ることが今まではできなかったが、この方法ではモノマーを残存させずに容易に高分子化することが可能である。
【0033】
また、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における式(1)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物由来のピークのアルコキシ基が2つ加水分解縮合してシロキサン単位となった成分(T2)において、環状体成分を表すピーク成分(T2a)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b)との比率(T2a/T2b)が0.9以上となり、環状体成分量の多いオルガノポリシロキサン混合物が得られることもこの方法の特徴であり、このようなものを無機粉体処理剤として使用することにより、難燃性を低下させることなく、樹脂との分散性、耐水性能や耐水耐久性にも優れることが特徴である。
【0034】
無機粉体を表面処理する(A)オルガノポリシロキサンの被覆量は、無機粉体100質量部に対して0.1〜20質量部、特に0.5〜10質量部が好ましい。この量が多すぎるとコスト的に不利である。また、少なすぎると望まれる性能が発現しない場合がある。
【0035】
本発明において、無機粉体に(A)オルガノポリシロキサンを表面処理する方法としては、例えば、有機溶媒中で湿式処理後乾燥、もしくは(A)オルガノポリシロキサンを噴霧する、又は噴霧乾燥することが挙げられ、その表面処理する際の温度は、好ましくは20℃〜150℃、より好ましくは20℃〜80℃である。
【0036】
(A)オルガノポリシロキサンを表面処理する際の反応雰囲気は、空気中もしくは不活性ガス雰囲気下のどちらでもよいが、不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。
【0037】
上記の湿式による表面処理する際の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、シクロヘキサノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、イソプロピルアルコール、n−アミルアルコール、エチレングリコールなどのアルコール系化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物、エチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、グリセロールホルムアミドなどのアミド系化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニリン、ピリジン、ベンゾニトリルなどの芳香族系化合物、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトンなどのケトン系化合物、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系化合物、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロへキサンなどの炭化水素系化合物、メチルアミン、ジエチルアミンなどのアミン系化合物、四塩化炭素、クロロホルム、イソブチルクロリド、トリクロロエチレン、塩化メチレンなどのハロゲン系有機化合物、その他にニトロメタン、アクリル酸、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。上記例示の有機溶媒は単独もしくは2種類以上を混合して用いることができる。
【0038】
本発明で使用する無機粉体を、(A)オルガノポリシロキサンで表面処理後、熱処理(乾燥)する際の温度は20℃〜200℃が好ましく、より好ましくは80℃〜150℃、特に好ましくは100℃〜120℃である。
【0039】
本発明の表面処理無機粉体は、成形加工可能な任意の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂に添加可能である。このような樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−4−メチルペンテン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系の重合体又は共重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル共重合体などのスチレン系の重合体又は共重合体;塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合体などのビニル系の重合体又は共重合体;フェノキシ樹脂、ブタジエン樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリケトン樹脂、メタクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂;その他に、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトリルゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴムなどのゴム類が例示でき、これら樹脂に添加することにより、良好な分散性や難燃性、耐水性を付与することが可能である。
【0040】
また、色々な無機粉体に容易に処理することが可能であるので、その用途は難燃用途に限定されるものでなく、化粧品用途や補強剤(フィラー)用途他、色々な用途に使用可能である。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を合成例、処理例、実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示を意図するものに過ぎない。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されることはない。
【0042】
なお、実施例で得られたオルガノポリシロキサンの分析は、以下に示した方法で実施した。
(1)オルガノポリシロキサンの平均分子量であるポリスチレン換算分子量における重量平均分子量(Mw)をポリスチレン標準サンプルから作成した検量線を基準として算出した。
(2)ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析におけるアルコキシ基が2つ加水分解縮合し、シロキサン単位となった成分(T2)は、例えば官能基がアルキル基の場合、−55〜−61ppmのピークであり、
環状体成分を表すピーク成分(T2a)はT2成分のうちの前半部分のピークであり、例えば官能基がアルキル基の場合、−55〜−59ppmの範囲のピークの積分値であり、リニア体成分を表すピーク成分(T2b)は−59〜−61ppmの範囲のピークの積分値である。このT2成分のピーク範囲は官能基の種類によって異なるが、全体のピーク形状から、どの位置がT2成分であること、そのうちの前半部分がT2a成分であることは判断可能である(図1を参考例として示す)。
【0043】
[合成例1]触媒の調製
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量300mlのフラスコに、メタノール60g(1.875mol)、尿素66g(1.1mol)を仕込み、内温22℃にて、濃塩酸(塩酸濃度35質量%)100gをゆっくり滴下した。溶液は発熱し、35℃まで上昇した。滴下終了後、撹拌を続けたところ、30分で25℃まで温度が低下したことから撹拌を停止し、尿素塩酸塩の含水メタノール溶液を得た。
【0044】
[合成例2]
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量2Lのフラスコに、C1225SiCl3152g(0.5mol)及びC1429SiCl3167g(0.5mol)を仕込み、65℃にて、メタノール64g(2.0mol)を滴下し、脱塩酸反応を行った。その後、尿素を66g(1.1mol)添加し、撹拌を続けた。更に、65℃にて、メタノール38.4g(1.2mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、更に65℃にて、2時間撹拌を続けた。撹拌を停止すると、フラスコ内は、メトキシ化して生じたC1225Si(OCH33145g及びC1429Si(OCH33と発生した塩酸により生成した尿素塩酸の混合物を得た。この反応液を再度撹拌し、65℃にて、水54g(3mol)をゆっくり滴下した。滴下には15分を要した。滴下終了後、65℃にて3時間撹拌を続けた。撹拌を停止すると、生成したポリシロキサンと尿素塩酸塩触媒層は分離状態であった。その後、冷却を行い、トルエン200gを加えて静置し、下層の触媒層を分離した。得られた上層を90℃、減圧度0.7kPaにて減圧濃縮を行い、更に濾過による精製を行ったところ、得られたオルガノポリシロキサン1は251gであった。
このもののキャノンフェンスケ粘度計による(以下同じ)25℃における粘度は239mm2/sであり、25℃における比重は0.948であった。また、このもののゲルパーミュエーションクロマトグラフィー分析における重量平均分子量(Mw)は1,778であった。
更に、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における環状体成分を表すピーク成分(T2a)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b)との比率(T2a/T2b)は5.5であった。
【0045】
[合成例3]
合成例2における水の量を108g(6.0mol)とし、他は同様に操作を行ったところ、オルガノポリシロキサン2を267g得た。なお、反応終了後、生成したポリシロキサンと尿素塩酸塩触媒層は分離状態であった。
このものの25℃における粘度は251mm2/sであり、25℃における比重は0.94であった。また、このもののゲルパーミュエーションクロマトグラフィー分析における重量平均分子量(Mw)は1,796であった。
更に、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における環状体成分を表すピーク成分(T2a)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b)との比率(T2a/T2b)は8.6であった。
【0046】
[合成例4]
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量1Lのフラスコに、C1021Si(OCH33262g(1.0mol)を仕込み、65℃にて、合成例1にて調製した尿素塩酸塩の含水メタノール溶液93.8g(水1.5mol)をゆっくり滴下した。滴下には30分を要した。滴下終了後、70℃〜65℃にて3時間撹拌を続けた。撹拌を停止すると、生成したポリシロキサンと尿素塩酸塩触媒層は分離状態であった。その後、冷却を行い、トルエン200gを加えて静置し、下層の触媒層を分離した。得られた上層を90℃、減圧度0.7kPaにて減圧濃縮を行い、更に濾過による精製を行ったところ、得られたオルガノポリシロキサン3は203gであった。
このものの25℃における粘度は93.0mm2/sであり、25℃における比重は0.941であった。また、このもののゲルパーミュエーションクロマトグラフィー分析における重量平均分子量(Mw)は1,430であった。
更に、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における環状体成分を表すピーク成分(T2a)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b)との比率(T2a/T2b)は2.3であった。
【0047】
[合成例5]
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量2Lのフラスコに、C1225SiCl3152g(0.5mol)及びC1429SiCl3167g(0.5mol)を仕込み、65℃にて、メタノール64g(2.0mol)を滴下し、脱塩酸反応を行った。その後、尿素を66g(1.1mol)添加し、撹拌を続けた。更に、65℃にて、メタノール38.4g(1.2mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、更に65℃にて、2時間撹拌を続けた。撹拌を停止すると、フラスコ内は、メトキシ化して生じたC1225Si(OCH33145g及びC1429Si(OCH33と発生した塩酸により生成した尿素塩酸塩が分離した状態であることが確認できた。ここに(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH328OSi(CH32CH2CH2Si(OCH337.8g(0.01mol)を添加し、再度撹拌し、65℃にて、水54g(3mol)をゆっくり滴下した。滴下には15分を要した。滴下終了後、65℃にて3時間撹拌を続けた。撹拌を停止すると、生成したポリシロキサンと尿素塩酸塩触媒層は分離状態であった。その後、冷却を行い、トルエン200gを加えて静置し、下層の触媒層を分離した。得られた上層を90℃、減圧度0.7kPaにて減圧濃縮を行い、更に濾過による精製を行ったところ、得られたオルガノポリシロキサン4は257gであった。
このものの25℃における粘度は263mm2/sであり、25℃における比重は0.940であった。また、このもののゲルパーミュエーションクロマトグラフィー分析における重量平均分子量(Mw)は1,944であった。
更に、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における環状体成分を表すピーク成分(T2a)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b)との比率(T2a/T2b)は3.6であった。
【0048】
[比較合成例1]
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量1Lのフラスコに、C1021Si(OCH33262g(1.0mol)及びメタノール772g(24.1mol)を仕込み、25℃にて、5質量%塩酸水56.8g(水3mol)を滴下し、加水分解反応を行った。更に65℃にて、3時間撹拌を続けた。その後、冷却を行い、90℃、減圧度0.7kPaにて減圧濃縮を行い、更に濾過による精製を行ったところ、得られたオルガノポリシロキサン5は164gであった。
このもののゲルパーミュエーションクロマトグラフィー分析における重量平均分子量(Mw)は710であった。本合成方法では、モノマー成分であるデシルトリメトキシシランが15.6モル%含まれていた。
更に、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における環状体成分を表すピーク成分(T2a)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b)との比率(T2a/T2b)は0.79であった。
【0049】
[比較合成例2]
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量2Lのフラスコに、C1225Si(OCH33145g(0.5mol)及びC1429Si(OCH33159g(0.5mol)を仕込み、25℃にて、5質量%塩酸水56.8g(水3mol)を滴下し、加水分解反応を行った。更に65℃にて、3時間撹拌を続けた。その後、冷却を行い、90℃、減圧度0.7kPaにて減圧濃縮を行い、更に濾過による精製を行ったところ、得られたオルガノポリシロキサン6は232gであった。
このものの25℃における粘度は110mm2/sであり、25℃における比重は0.941であった。また、このもののゲルパーミュエーションクロマトグラフィー分析における重量平均分子量(Mw)は1,320であった。
更に、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における環状体成分を表すピーク成分(T2a)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b)との比率(T2a/T2b)は0.82であった。
【0050】
[表面処理例1〜10]
上記のように合成したオルガノポリシロキサンを用いて無機難燃粉体に表面処理を施した。
(使用無機難燃粉体) 平均粒子径2.1μmの水酸化マグネシウム
平均粒子径2.5μmの炭酸マグネシウム
平均粒子径1.9μmの水酸化アルミニウム
その方法は以下の通りである。
【0051】
<湿式表面処理方法>
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計を取り付けた容量0.5Lのフラスコに、無機難燃粉体100g、トルエン300g、オルガノポリシロキサンXgを仕込み、80℃に加熱して3時間撹拌した。その後、エステルアダプターを取り付け、常圧下内温を120℃まで上げて、溶媒であるトルエンを除去し、得られた表面処理無機難燃粉体を取り出し、常圧下105℃で24時間乾燥した。
【0052】
<表面処理無機難燃粉体の評価>
得られた表面処理無機難燃粉体の評価として、以下に示すような疎水化度測定とコールターマルチサイザーII(コールター社製)を使用して平均粒子径及び10μm以上の塊の有無の測定を行った。それぞれの結果を表1に示す。
【0053】
≪疎水化度の測定方法≫
(1)500mlの三角フラスコにサンプル0.2gを秤量した。
(2)イオン交換水50mlを(1)に加え、スターラーにて撹拌した。
(3)撹拌をしたままビュレットよりメタノールを滴下させ、試料の全量がイオン交換水に懸濁された時の滴下量を測定した。
(4)次式より疎水化度を求めた。
疎水化度(%)=(メタノール滴下量(ml))×100/(メタノール滴下量(ml)+イオン交換水量(ml))
【0054】
≪平均粒子径の測定方法≫
粉体0.1質量部に対してノニオン界面活性剤0.6質量部と水20質量部を加え、超音波振動機等を用いて粉体を分散した後、コールターマルチサイザーIIを用いて測定を行った。
≪10μm以上の塊の有無の測定方法≫
上記のコールターマルチサイザーIIの測定結果より判断した。
【0055】
【表1】

【0056】
[実施例1〜7、比較例1〜6]
上記表面処理例1〜10で作製した表面処理無機難燃粉体又は未処理の無機難燃粉体150質量部、ポリプロピレン樹脂100質量部、酸化防止剤1質量部の割合で混合(使用した無機難燃粉体を表2,3に示す)したものを10kg用意した。その混合物を2軸押出機により混練し、ペレットを作製した。更に、このペレットを用いて射出成形し、テストピース作製後、物性、難燃性及び熱安定性を測定した。その結果を表2,3に示す。
【0057】
(1)テストピースの作製法、(2)引張強度試験、及び(3)曲げ強度、曲げ弾性率試験、(4)難燃性試験は下記の方法により行った。
(1)テストピースの作製法
粉体を105℃×16時間、更に120℃×2時間の前処理乾燥後、樹脂(ポリプロピレン)及び酸化防止剤とともに2軸押出機により230℃で混練し、そのサンプルを再び120℃×2時間乾燥を行い、射出成形機により230℃で成形した。
2軸押出機:プラスチック工学研究所製 BT−30−S2−30−L
射出成形機:日清樹脂工業(株)製 FS 120S 18A SE
(2)引張強度試験
JIS K 7113による
(3)曲げ強度、曲げ弾性率試験
JIS K 7203による
(4)難燃性試験
UL−94垂直燃焼試験による
【0058】
また、熱安定性は、各成形サンプルを1ヶ月間80℃の温水中に浸漬した後の質量増加率を測定し、また該成形サンプルにより上記の(2)、(3)の試験も行った。その結果を表3に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉体を下記(A)オルガノポリシロキサンにより表面処理してなることを特徴とする表面処理無機粉体。
(A)オルガノポリシロキサン
下記一般式(1)
m(R2nSi(OR1(4-m-n)・・・(1)
(式中、Xは炭素原子数6〜18の非置換又は置換の1価炭化水素基、R1は炭素原子数1〜4の1価炭化水素基であり、R2は炭素原子数1〜3の1価炭化水素基であり、mは1又は2、nは0又は1であり、m+nは1又は2である。)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物、又はこの有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物と、下記一般式(2)
(OR13-q(R2qSi−Y−Si(R2p(OR13-p・・・(2)
(式中、R1及びR2は上記と同じであり、Yは2価の有機基又は−(R4−Si(R32s−(OSi(R32r−R5t−基であり、ここでR3は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基、R4は炭素原子数1〜6の2価の炭化水素基、R5は酸素原子又は炭素原子数1〜6の2価の炭化水素基、rは1〜40の整数、sは0又は1、tは0又は1である。p、qは独立に0〜3の整数であるが、p+qは0〜4の整数である。)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物とを含む有機ケイ素化合物原料を、生成するオルガノポリシロキサンと分離状態となる液状の加水分解縮合触媒を用いて加水分解、重縮合したオルガノポリシロキサン。
【請求項2】
加水分解縮合触媒が、尿素塩酸塩であることを特徴とする請求項1記載の表面処理無機粉体。
【請求項3】
無機粉体が、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、アンチモン化合物、亜鉛化合物、ホウ素化合物及びリン化合物から選ばれるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理無機粉体。
【請求項4】
無機粉体が、アルミニウム化合物及び/又はマグネシウム化合物である請求項1又は2に記載の表面処理無機粉体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−190153(P2011−190153A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58863(P2010−58863)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】