説明

表面処理粉体及び化粧料

【目的】化粧持ち効果に優れ、かつ使用感触に優れた粉体化粧料を提供する。
【構成】(A)粉体100に、(B)25℃における粘度が30000mm/s以上である高重合メチルポリシロキサン
及び(C)下記一般式(1);
【化1】


(式中、a及びbは平均数であって、a=0〜40、b=8〜40である。)で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサンを含む混合物で被覆処理した後、加熱処理して得られる表面処理粉体、及びそれを配合することを特徴とする化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(A)粉体に、(B)高重合メチルポリシロキサン及び(C)メチルハイドロジェンポリシロキサンを被覆処理した後、加熱処理して得られる表面処理粉体に関するものであり、更に該表面処理粉体が、汗や皮脂に対する高い耐性と皮膚に対する強い付着力を製品処方中でも安定的に発揮することで、優れた化粧持ち効果を示す化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
メチルハイドロジェンポリシロキサンなどのシリコーンオイルを、粉体表面に被覆処理した後、加熱して架橋させる粉体表面処理技術は、一般に広く使われている技術である。このシリコーン表面処理は粉体に適度なすべり感や滑らかさ、撥水性を与える表面処理として知られており、処理量としては粉体100質量部に対して、0.1〜10質量部で効果を発揮する(特許文献1〜3参照)。
【0003】
また、特に架橋反応部を持たない高重合度のオルガノポリシロキサンで粉体の表面処理を行う方法も知られており、加熱による化学反応等を利用せずに、その粘性だけを利用して粉体に表面処理する技術も報告されている(特許文献4)。高重合度のオルガノポリシロキサンは汗や皮脂に対する耐性が高く、化粧持ち素材として好適な素材であるが、高粘性であるとはいえ粉体との化学結合などを有さないシリコーン表面処理膜は、化粧料の製造過程及び化粧料の経日変化にて粉体から剥離する可能性が大きく、その機能を発現させたい粉体の表面上において十分な効果を発揮するものではない。
【0004】
一方、粉体を含む化粧料の化粧持ち技術の考え方の1つに、粉体の肌への付着性を高めるという考え方がある。例えば、製品処方中に高粘性の油剤を加えることや、長鎖アルキル基を持つ表面処理剤を用いることで肌への付着性を高めるといった技術があるが、前者は高粘性油による感触悪化を引き起こし、一方、後者は肌と粉体との親和性のみに依存し、積極的に肌へ付着させる技術ではなかった。
【0005】
【特許文献1】特公昭45−2915号公報
【特許文献2】特公昭49−1769号公報
【特許文献3】特開昭55−136213号公報
【特許文献4】特公平5−86368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明では、汗や皮脂に対する高い耐性と皮膚に対する強い付着力を製品処方中でも安定的に発揮できる表面処理粉体を提供し、優れた化粧持ち効果を示す化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記事情に鑑み、如何にして高重合メチルポリシロキサンを粉体上に留め、目的とする粉体に汗や皮脂に対する耐性と肌への付着性とを与えることが可能となるかを検討し、鋭意研究を重ねた結果、反応性を持たない高重合メチルポリシロキサンと反応性を持つメチルハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせて被覆処理を行うことで、この問題を解決できることを見出した。つまり、メチルハイドロジェンポリシロキサンが加熱によって架橋し更に粉体表面と結合して樹脂化することを利用し、高重合メチルポリシロキサンを粉体表面に安定的に留め、且つその性能を十分に発揮させることに成功した
。そして、該表面処理粉体を化粧料に配合したところ、化粧持ち効果が高く、且つ使用感に優れる化粧料を提供できるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、(A)粉体に、(B)25℃における粘度が30000mm/s以上である高重合メチルポリシロキサン
及び(C)下記一般式(1);
【化1】

(式中、a及びbは平均数であって、a=0〜40、b=8〜40である。)で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサンを含む混合物で被覆処理した後、加熱処理して得られる表面処理粉体にあり、さらに該表面処理粉体を含有する化粧料にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、汗や皮脂に対する優れた耐性と皮膚への強い付着性を示す表面処理粉体を提供することができ、また高い化粧持ち効果と優れた使用感触を持つ化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
【0011】
本発明で用いる(B)高重合メチルポリシロキサンは、25℃における粘度が30000mm/s以上のものであり、好適には50000〜1000000mm/s、特に好適には、100000〜500000mm/sのものである。粘度が30000mm/s未満であると、汗や皮脂に対する耐性や皮膚への付着性が弱まり、十分な化粧持ち効果を得ることができない。具体的な例としては、信越化学工業社製KF−96Hなどが挙げられる。
【0012】
本発明で用いるメチルハイドロジェンポリシロキサンとしては下記一般式(1);
【化2】

(式中、a及びbは平均数であって、a=0〜40、b=8〜40である。)で表されるシリコーンオイルを用いる。具体的な例としては、信越化学工業社製KF−99P、KF−9901、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製TSF−484などが挙げられる。
【0013】
本発明で用いる(A)粉体の例としては、赤色104号、赤色102号、赤色226号、赤色201号、赤色202号、黄色4号、黒色401号などの色素、青色1号アルミニウムレーキ、黄色4号アルミニウムレーキ、黄色5号アルミニウムレーキ、黄色203号バリウムレーキなどのレーキ色素、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、テフロン(登録商標)パウダー、シリコーンパウダー、ポリメタクリル酸メチルパウダー、セルロースパウダー、シリコーンエラストマー球状粉体、ポリエチレン末などの高分子、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青などの有色顔料、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムなどの白色顔料、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、板状硫酸バリウムなどの体質顔料、雲母チタン、ベンガラ被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、黒酸化鉄被覆雲母チタンなどのパール顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウムなどの金属塩、シリカ、アルミナなどの無機粉体、ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素、ラウロイルリジン、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛などが挙げられる。これらの粉体の形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、燐片状、紡錘状など)、大きさに特に制限はない。これら各種の粉体は、それぞれ単独で処理したものを混合しても、混合物としてまとめて処理しても構わない。また、混合物の色を肌色などに調色したものを処理することも可能である。更に、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛などの紫外線散乱成分を使用することで紫外線防御機能を有する処理粉体とすることも可能である。
【0014】
本発明で用いる(A)粉体として、特に化粧料の化粧持ち効果をより効果的に上げるためには、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物は、メイクアップ化粧料のカバー効果に影響を与える粉体であり、これを長時間肌上に留めることによって、より効果的に化粧持ち効果を上げることができる。
【0015】
本発明では、上記各種の粉体をそのまま本発明の処理に用いても、他の従来公知の表面処理を施した処理粉体を用いても構わない。他の表面処理としては、例えばフッ素化合物処理、シリコーン樹脂処理、ペンダント処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、油剤処理、N−アシル化リジン処理、金属石鹸処理、アミノ酸処理、無機化合物処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理などが挙げられる。また、本発明の表面処理を施した後で、配合する化粧料の剤型やその目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、前記各種の表面処理を施しても良い。
【0016】
本発明で用いる(D)溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどの低級アルコール、フッ素系溶剤、トリクロロエチレン、ジクロロメタンなどの塩素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、イソパラフィンなどの石油系溶剤などが挙げられるが、低コストで入手が容易な低級アルコール、石油系溶剤が好ましい。
【0017】
本発明の表面処理粉体は、(A)粉体100質量部に対して、(B)高重合メチルポリシロキサン0.01〜10質量部及び(C)メチルハイドロジェン0.01〜10質量部を含む混合物で被覆処理することが好ましい。上記の処理量を上回ると凝集や過剰なべたつきの原因となる場合があり、逆に下回ると十分な効果が得られない場合がある。
【0018】
(B)高重合メチルポリシロキサンと(C)メチルハイドロジェンポリシロキサンの配合質量比としては1:0.1〜1:10が好ましい。当該範囲内であると、(C)メチルハイドロジェンポリシロキサンによる粉体表面に処理剤を安定的に留める効果が十分に発揮され、且つ(B)高重合メチルポリシロキサンによる汗や皮脂に対する耐性や皮膚に対する付着力がより十分に得られる。
【0019】
被覆処理の方法としては、(D)溶剤に2種類のシリコーンを溶解させたものと(A)粉体とのスラリーを形成させた後、溶剤を留去する湿式被覆処理が好ましい。溶剤を使用しない乾式処理では、高粘度である(B)高重合メチルポリシロキサンを粉体表面に均一に被覆することが困難なためである。(D)溶剤の使用量としては、(A)粉体100質量部に対し、5〜300質量部の範囲で使用されることが好ましい。
【0020】
(A)粉体と処理剤の混合物を加熱する条件は、100〜200℃にて2〜24時間が好ましく、より好適には110〜150℃にて6〜12時間である。加熱温度が100℃未満では反応が十分には進行せず、また200℃を超えると火災の危険性など生産技術上の問題がある。
【0021】
本発明の表面処理粉体を配合した化粧料は、2種類のシリコーンによる表面処理の効果により、化粧持ちに優れたものとなる。またシリコーン特有の滑らかな感触も併せ持っていることから、使用感に優れた化粧料を提供できる。化粧料中における本発明の表面処理粉体の配合量は、化粧料の総量を基準として、0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは1〜50質量%である。当該範囲内で化粧持ち効果と、優れた使用感が十分に発揮される。また化粧料中の全粉体量に対しては、本発明の表面処理粉体が1質量%以上であることが好ましい。
【0022】
本発明の表面処理粉体を用いた化粧料には、本発明の表面処理粉体以外に、通常化粧料に用いられる油剤、粉体(顔料、色素、樹脂)、フッ素化合物、樹脂、界面活性剤、粘剤、防腐剤、香料、紫外線吸収剤(有機系、無機系を含み、UV−A、Bのいずれに対応していても構わない)、保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤などの成分を使用することができる。
【0023】
上記の油剤としては、通常化粧料に用いられる揮発性及び不揮発性の油剤、溶剤、並びに樹脂などが挙げられ、常温で液体、ペースト、固体のいずれであっても構わない。油剤の例としては、セチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノールなどの高級アルコール、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸などの脂肪酸、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチルなどのエステル類、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、スクワランなどの炭化水素、ラノリン、還元ラノリン、カルナバロウ、キャンデリラロウ、セレシン、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックスなどのロウ、ミンク油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油などの油脂、ポリエチレンワックス、エチレン・α−オレフィン・コオリゴマー、エチレンプロピレンポリマーなどが挙げられる。
【0024】
また、別の形態の油剤の例としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、末端変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンRTVゴムなどのシリコーン化合物、パーフルオロポリエーテル、フッ化ピッチ、フルオロカーボン、フルオロアルコールなどのフッ素化合物が挙げられる。
【0025】
粉体の例としては、前記の粉体とその一般的な表面処理物が挙げられる。
【0026】
溶媒の例としては、精製水、環状シリコーン、エタノール、軽質流動イソパラフィン、低級アルコール、エーテル類、LPG、フルオロカーボン、N−メチルピロリドン、フルオロアルコール、揮発性直鎖状シリコーン、次世代フロンなどが挙げられる。
【0027】
界面活性剤としては、例えばアニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤、ベタイン型界面活性剤などを用いることができる。
【0028】
粘剤、樹脂の例としては、ポリアクリル酸ナトリウム、セルロースエーテル、アルギン酸カルシウム、カルボキシビニルポリマー、エチレン/アクリル酸共重合体、ビニルピロリドン系ポリマー、ビニルアルコール/ビニルピロリドン共重合体、窒素置換アクリルアミド系ポリマー、ポリアクリルアミド、カチオン化ガーガムなどのカチオン系ポリマー、ジメチルアクリルアンモニウム系ポリマー、アクリル酸メタクリル酸アクリル共重合体、POE/POP共重合体、ポリビニルアルコール、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、ガーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン、セルロース、ポリエチレンイミン、高重合ポリエチレングリコール、カチオン化シリコーン重合体、合成ラテックスなどが挙げられる。
【0029】
本発明における化粧料とは、粉体を構成成分として含有する化粧料を指し、例えばファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、チーク、口紅、ネイルカラーなどのメイクアップ化粧料や、ボディパウダーやベビーパウダーのようなボディ用化粧料などが挙げられる。特に、パウダーファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイブロー、チーク、ボディパウダー、ベビーパウダーなどの粉末化粧料において、より大きな化粧持ち効果が得られる。尚、本発明の粉末化粧料とは、粉体を主な構成成分とする化粧料であり、粉体を60質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有する化粧料である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例、及び比較例に基づいて本発明を詳明する。また、実施例及び比較例の表面処理粉体、化粧料の各種特性に対する評価方法を以下に示す。
【0031】
[表面処理膜の安定性試験]
表面処理粉体10gをヘキサン20gと混合し、ボルテックス[MS−1 ミニシェーカー(イカジャパン社製)]を用いて十分な攪拌を行い、スラリーを作成する。このスラリーを吸引濾過することで粉体と溶剤を分離する。得られた溶剤を減圧乾燥することで溶剤中に溶け出した表面処理剤を回収する。これを表1に示す基準に従って評価した。粉体に処理した処理剤総量に対して流出量が30%未満であれば、表面処理膜が安定であり、製剤中にて表面処理粉体の効果が十分に得られることを示す。
【0032】
[表1]
基 準 評 価
------------------------------------------------------------------
粉体に処理した処理剤総量に対して流出量が30%未満 ○
粉体に処理した処理剤総量に対して流出量が30%以上 ×
【0033】
[化粧料の有用性評価試験]
専門パネラーを各評価品目ごとに10名ずつ用意し(但し、品目によりパネラーが重複
する場合もある)、表2に示す評価基準に従って評価を行い、全パネラーの合計点数を以って評価結果とした。従って、点数が高いほど評価項目に対する有用性が高いことを示す(満点:50点)。
【0034】
[表2]
基 準 点 数
--------------------------------------
効果が高く感じられる 5
効果が感じられる 4
効果がやや感じられる 3
効果がわずかしか感じられない 2
効果が感じられない 1
【0035】
処理粉体の製造例1
酸化チタン100質量部に対し、信越化学工業社製KF−96H−10万cs(高重合ジメチルポリシロキサン)2質量部及び信越化学工業社製KF−9901(メチルハイドロジェンポリシロキサン)2質量部をヘキサン200質量部を溶剤としたものでスラリー化して、湿式処理にて被覆処理した後、減圧乾燥にてヘキサンを留去した。その後、乾熱オーブンにて140℃にて8時間加熱し、処理粉体1を得た。
【0036】
処理粉体の製造例2
酸化チタン100質量部に対し、信越化学工業社製KF−96H−30万cs(高重合ジメチルポリシロキサン)2質量部及び信越化学工業社製KF−99P(メチルハイドロジェンポリシロキサン)1質量部をヘキサン200質量部を溶剤としたものでスラリー化して、湿式処理にて被覆処理した後、減圧乾燥にてヘキサンを留去した。その後、乾熱オーブンにて140℃にて8時間加熱し、処理粉体2を得た。
【0037】
処理粉体の製造例3
酸化チタン100質量部に対し、信越化学工業社製KF−96H−50万cs(高重合ジメチルポリシロキサン)2質量部及び信越化学工業社製KF−99P(メチルハイドロジェンポリシロキサン)1質量部をヘキサン200質量部を溶剤としたものでスラリー化して、湿式処理にて被覆処理した後、減圧乾燥にてヘキサンを留去した。その後、乾熱オーブンにて120℃にて10時間加熱し、処理粉体3を得た。
【0038】
処理粉体の製造例4
酸化チタン100質量部に対し、信越化学工業社製KF−96H−50万cs(高重合ジメチルポリシロキサン)2質量部及び信越化学工業社製KF−9901(メチルハイドロジェンポリシロキサン)2質量部をヘキサン200質量部を溶剤としたものでスラリー化して、湿式処理にて被覆処理した後、減圧乾燥にてヘキサンを留去した。その後、乾熱オーブンにて120℃にて10時間加熱し、処理粉体4を得た。
【0039】
処理粉体の製造例5(比較例で用いる処理粉体)
酸化チタン100質量部に対し、信越化学工業社製KF−96H−30万cs(高重合ジメチルポリシロキサン)3質量部をヘキサン200質量部を溶剤としたものでスラリー化して、湿式処理にて被覆処理した後、減圧乾燥にてヘキサンを留去した。その後、乾熱オーブンにて140℃にて8時間加熱し、処理粉体5を得た。
【0040】
処理粉体の製造例6(比較例で用いる処理粉体)
酸化チタン100質量部に対し、信越化学工業社製KF−9901(メチルハイドロジェンポリシロキサン)3質量部をヘキサン200質量部を溶剤としたものでスラリー化し
て、湿式処理にて被覆処理した後、減圧乾燥にてヘキサンを留去した。その後、乾熱オーブンにて140℃にて8時間加熱し、処理粉体6を得た。
【0041】
処理粉体の製造例7(比較例で用いる処理粉体)
酸化チタン100質量部に対し、信越化学工業社製KF−96H−1万cs(高重合ジメチルポリシロキサン)2質量部及び信越化学工業社製KF−9901(メチルハイドロジェンポリシロキサン)2質量部をヘキサン200質量部を溶剤としたものでスラリー化して、湿式処理にて被覆処理した後、減圧乾燥にてヘキサンを留去した。その後、乾熱オーブンにて140℃にて8時間加熱し、処理粉体7を得た。
【0042】
上記の各製造例で得られた表面処理粉体の評価結果を表3に示す。
【0043】
[表3]
(表面処理膜の安定性結果)
結 果
----------------------------------
処理粉体1 ○
処理粉体2 ○
処理粉体3 ○
処理粉体4 ○
処理粉体5 ×
処理粉体6 ○
処理粉体7 ○
【0044】
表3の結果より、本発明の表面処理粉体は粉体表面に安定的に処理膜が形成されていることが判った。処理粉体1〜4は本発明を用いた表面処理粉体に関するものであり、ヘキサン中でも処理剤の流出が少ないか、あるいは全くないものであった。これにより、粉体表面上に処理膜が安定的に存在することが判り、目的とする粉体上で効果が発揮されることが期待される。これに対して、処理粉体5は高重合メチルポリシロキサンのみで表面処理したものであり、一見、粉体に安定的に処理されているように見えるが、ヘキサンによって処理剤が流出してしまうことが判った。これは、化粧料の製造過程や製剤中における経日変化によって粉体表面から処理膜が剥離する可能性があることを示す。つまりは目的とする粉体に汗や皮脂に対する耐性や高い付着性を与えられないということである。また、処理粉体6はメチルハイドロジェンポリシロキサンのみで表面処理した例であるが、ヘキサンによる処理剤の流出はないものの、皮膚への付着性などの機能を全く持たないものであった。
【0045】
実施例1
下記表4に示す処方と下記製造方法に従い、ファンデーションを調製した。尚、処理粉体としては処理粉体の製造例1で製造した処理粉体1を用いた。尚、以下の実施例にてシリコーンで被覆処理した粉体とは、メチルハイドロジェンポリシロキサン(KF−9901、信越化学工業社製)にて被覆焼き付け処理を行った粉体を意味する。
【0046】
[表4]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
成分名 配合量(質量%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
成分A
(1)ベンガラ 0.56
(2)黄酸化鉄 2.00
(3)黒酸化鉄 0.28
(4)処理粉体1 10.00
(5)ラウロイルリジン(5%)処理セリサイト 30.00
(6)シリコーン(2%)処理タルク 32.16
(7)雲母チタン 10.00
(8)球状ナイロンパウダー*1 5.00
成分B
(9)ジメチルポリシロキサン*2 4.00
(10)α−オレフィンオリゴマー*3 3.00
(11)ワセリン 2.00
(12)ジカプリル酸プロピレングリコール 1.00
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
*1;SP−500(東レ社製)
*2;KF−96A−20cs(信越化学工業社製)
*3;ノムコートHPD−C(日清オイリオグループ社製)
【0047】
製造方法
成分Aをミキサーにて混合した。次いで、均一に混合・溶解した成分Bを成分Aに加えてさらに混合した。得られた粉末をアトマイザーにて粉砕し、メッシュを通した後、金型を用いて金皿に打型して製品を得た。
【0048】
実施例2
実施例1で用いた処理粉体1の代わりに、処理粉体の製造例2で製造した処理粉体2を用いた他は全て実施例1と同様に行い、ファンデーションを得た。
【0049】
実施例3
実施例1で用いた処理粉体1の代わりに、処理粉体の製造例3で製造した処理粉体3を用いた他は全て実施例1と同様に行い、ファンデーションを得た。
【0050】
実施例4
実施例1で用いた処理粉体1の代わりに、処理粉体の製造例4で製造した処理粉体4を用いた他は全て実施例1と同様に行い、ファンデーションを得た。
【0051】
比較例1
実施例1で用いた処理粉体1の代わりに、処理粉体の製造例5で製造した処理粉体5を用いた他は全て実施例1と同様に行い、ファンデーションを得た。
【0052】
比較例2
実施例1で用いた処理粉体1の代わりに、処理粉体の製造例6で製造した処理粉体6を用いた他は全て実施例1と同様に行い、ファンデーションを得た。
【0053】
比較例3
実施例1で用いた処理粉体1の代わりに、処理粉体の製造例7で製造した処理粉体7を用いた他は全て実施例1と同様に行い、ファンデーションを得た。
【0054】
上記の各実施例及び比較例で得られた化粧料の評価結果をそれぞれ表5〜7に示す。
【0055】
(化粧料の有用性評価結果)
【表5】

【0056】
【表6】

【0057】
【表7】

【0058】
表5〜7の結果においても、本発明の各実施例は比較例と比べてより高い効果を示していることが判った。実施例1〜4は本発明の処理粉体を用いたファンデーションに関するものであり、各評価項目に関して高い評価を得た。これに対して、比較例1は高重合メチルポリシロキサンのみで表面処理した粉体で製造した例であり、化粧持ち効果に関してはある程度高い効果を得たが、感触のなめらかさやとれの良さにおいて評価が低かった。比較例2に関しては、感触のなめらかさやとれの良さで高評価を得たが、化粧持ち効果における評価は低いものであった。また比較例3は、粘度の低い高重合メチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとで表面処理した粉体で製造した例であるが、化粧持ち効果において十分な評価を得ることができなかった。
【0059】
以下に示す処方の粉体化粧料を常法により調製し、上記の評価を行ったところ、化粧料の有用性評価試験において優れた結果を示すものであった。
【0060】
・処方例5(パウダーファンデーション)
処方例5
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
シリコーン(2%)処理ベンガラ 0.5
シリコーン(2%)処理黄酸化鉄 2.0
シリコーン(2%)処理黒酸化鉄 0.3
処理粉体1 15.0
ラウロイルリジン(5%)処理マイカ 25.0
ミリスチン酸亜鉛(2%)処理タルク 残 量
架橋型シリコーン末*4 3.0
ジメチルポリシロキサン*2 4.0
イソノナン酸イソノニル 2.0
流動パラフィン 2.0
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 2.0
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.1
メチルパラベン 0.2
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
*2;KF−96A−20cs(信越化学工業社製)
*4;KSP−300(信越化学工業社製)
【0061】
・処方例6(パウダーファンデーション)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
寒天(4%)処理ベンガラ 0.5
寒天(4%)処理黄酸化鉄 2.0
寒天(4%)処理黒酸化鉄 0.3
処理粉体2 20.0
ミリスチン酸亜鉛(2%)処理マイカ 10.0
ラウロイルリジン(5%)処理合成金雲母 15.0
ラウロイルリジン(5%)処理タルク 残 量
ポリアクリル酸アルキル*5 3.0
無水ケイ酸 3.0
ジメチルポリシロキサン*6 4.0
ワセリン 2.0
ジカプリル酸プロピレングリコール 2.0
ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシル 2.0
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.23
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
*5;マツモトマイクロスフェア−M(松本油脂製薬社製)
*6;KF−96A−6cs(信越化学工業社製)
【0062】
・処方例7〜10(パウダーアイシャドウ)
処方例7 処方例8 処方例9 処方例10−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−タルク 15.0 15.0 15.0 15.0
マイカ 残 量 残 量 残 量 残 量
ナイロン末*1 5.0 5.0 5.0 5.0
硫酸バリウム 10.0 10.0 10.0 10.0
グンジョウ 3.0 3.0 3.0 3.0
赤色226号 0.5 0.5 0.5 0.5
黄酸化鉄 5.0 5.0 5.0 5.0
処理粉体1 1.0 1.0 1.0 1.0
雲母チタン 5.0 5.0 5.0 5.0
メチルフェニルポリシロキサン*7 3.0 3.0 3.0 3.0
オクチルドデカノール 5.0 5.0 5.0 5.0
ワセリン 2.0 2.0 2.0 2.0
蛍光PET/Al/エポキシ
積層末*8 1.0 − 3.0 −
蛍光PET/ポリメチルメタクリレート
積層末*9 − 3.0 3.0 −
PET/Al/エポキシ積層末*10 − − 2.0 3.0
メチルパラベン 0.1 0.1 0.2 0.2
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−*1;SP−500(東レ社製)
*7;FZ−209(東レ・ダウコーニング社製)
*8;ダイヤモンドビーズ CO−3EP シルバー 蛍光タイプ(ダイヤ工業社製)
*9;レインボーフレークII No.501-S No.7 蛍光タイプ(ダイヤ工業社製)
*10;DCグリッター シルバーC(0.001) (ダイヤケムコ社製)
【0063】
・処方例11(ルースパウダー)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
流動パラフィン 3.0
アセチルチロソール 0.2
ベンガラ 0.2
黄酸化鉄 0.2
処理粉体1 0.5
タルク 50.0
マイカ 残 量
板状硫酸バリウム 10.0
球状シリカ 3.0
アクリル酸アルキル共重合体*11 3.0
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
*11;スノーリーフS(昭立プラスティックス工業社製)
【0064】
・処方例12〜14(プレストパウダー)
処方例12 処方例13 処方例14
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
流動パラフィン 2.0 2.0 2.0
ジメチルポリシロキサン*2 3.0 3.0 3.0
イソノナン酸イソノニル 1.0 1.0 1.0
メチルパラベン 0.2 0.3 0.3
香料 0.1 − 0.1
ベンガラ 0.1 0.1 −
黄酸化鉄 0.3 0.3 1.0
赤色226号 − − 0.3
雲母チタン − 10.0 −
処理粉体1 0.5 0.5 0.5
タルク 50.0 50.0 50.0
マイカ 残 量 残 量 残 量
無水ケイ酸 2.0 2.0 2.0
ナイロン末*1 3.0 3.0 3.0
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
*1;SP−500(東レ社製)
*2;KF−96A−20cs(信越化学工業社製)
【0065】
・処方例15(油性ファンデーション)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
パラフィンワックス 1.5
セレシン 2.0
流動パラフィン 10.0
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリド 5.0
オキシステアリン酸オクチル 31.5
ベンガラ 0.5
黄酸化鉄 4.0
黒酸化鉄 0.1
処理粉体2 30.0
マイカ 残 量
架橋型メチルポリシロキサン*12 7.0
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
*12;トレフィルE−508(東レ・ダウコーニング社製)
【0066】
・処方例16(クリーム頬紅)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
シリコーン(2%)処理タルク 残 量
処理粉体1 3.0
シリコーン(2%)処理セリサイト 15.0
酸化鉄 2.0
流動パラフィン 29.0
ワセリン 15.0
固形パラフィン 7.0
セレシンワックス 8.0
メチルフェニルポリシロキサン*7 2.0
ジメチルポリシロキサン*13 0.6
香料 0.3
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
*7;FZ−209(東レ・ダウコーニング社製)
*13;KF−96A−100cs(信越化学工業社製)
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の、高重合メチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとで表面処理した粉体は、汗や皮脂に対する優れた耐性を持ち、かつ皮膚に対する高い付着性を有する。そして、この表面処理粉体を用いることで、化粧持ち効果に優れた化粧料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)粉体に、(B)25℃における粘度が30000mm/s以上である高重合メチルポリシロキサン
及び(C)下記一般式(1);
【化1】

(式中、a及びbは平均数であって、a=0〜40、b=8〜40である。)で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサンを含む混合物で被覆処理した後、加熱処理して得られる表面処理粉体。
【請求項2】
(A)粉体100質量部に対して、(B)25℃における粘度が30000mm/s以上である高重合メチルポリシロキサン0.01〜10質量部
及び(C)下記一般式(1);
【化2】

(式中、a及びbは平均数であって、a=0〜40、b=8〜40である。)で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン0.01〜10質量部を含む混合物で被覆処理した後、加熱処理して得られる表面処理粉体。
【請求項3】
(B)高重合メチルポリシロキサンと(C)メチルハイドロジェンポリシロキサンとの配合質量比が1:0.1〜1:10であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理粉体。
【請求項4】
被覆処理時に(D)溶剤を使うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理粉体。
【請求項5】
(A)粉体が金属酸化物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面処理粉体。
【請求項6】
(A)粉体が酸化チタン、酸化亜鉛、及び酸化鉄からなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理粉体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理粉体を含有する化粧料。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理粉体を含有する粉末化粧料。

【公開番号】特開2010−163374(P2010−163374A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5255(P2009−5255)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】