説明

表面処理蛍光体含有硬化性シリコーン樹脂組成物及び発光装置

【解決手段】少なくとも一部が表面処理された無機蛍光体を含有すること特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
【効果】本発明によれば、LEDチップの封止材として、硫化物系蛍光体又はシリケート系蛍光体に表面処理を施した蛍光体を含有する硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物を用いたことで、従来は、時間の経過とともに蛍光体の分解により、信頼性が低下していた発光装置に対し、長期信頼性が確保できる蛍光体含有シリコーン樹脂組成物及び発光装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理された無機蛍光体を含有する硬化性シリコーン樹脂組成物、及び該シリコーン樹脂組成物の硬化物により封止されることによって耐湿性が改良された発光ダイオード(LED)チップを備えた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蛍光体含有LED発光装置は、パッケージにマウントされたLEDチップを外部環境から保護するために透光性のモールド部材が設けられており、該モールド部材に、蛍光体を適宜質量比(例えば0.1〜60%)で混入しておくものである。
【0003】
従来の蛍光体含有LED発光装置では、黄色系のYAG蛍光体を混入するのが一般的であったが、近年更なる演色性の向上のため、硫黄を含んだ硫化物系蛍光体、例えばCaS、ZnS系蛍光体が併用して使用されるようになってきた。また、YAG蛍光体の代わりにシリケート系蛍光体が使用されるようになってきた。
【0004】
しかし、一般にこれらの蛍光体は、耐湿性が低いことが知られている。例えば、硫化物系蛍光体は、蛍光体表面と水が反応することによって硫化水素が発生し、蛍光特性が著しく低下するという問題を有している。同様にシリケート系蛍光体も蛍光体表面と水が反応することにより蛍光体が分解し、蛍光特性が著しく低下するという問題を有している。その結果、高湿下での発光ダイオードの長期信頼性が低下するという問題があった。
【0005】
蛍光体に耐湿性を付与するために、特開2008−50548号公報(特許文献1)、特開2006−124680号公報(特許文献2)に開示されているように、アルコキシシランや金属アルコキシド溶液によって蛍光体に表面処理を施すことが試みられている。しかし、これらの方法による表面処理では、シリコーン樹脂のような透湿性の高い樹脂で使用する場合では、耐湿性が不足していて実用には向かない欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−50548号公報
【特許文献2】特開2006−124680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、耐湿性を付与するために表面処理された硫化物系又はシリケート系蛍光体を含有する硬化性シリコーン樹脂組成物、及び該シリコーン樹脂組成物の硬化物によりLEDチップを封止してなり、高湿下で長期間、蛍光特性を維持できる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、無機蛍光体を混入してなる蛍光体含有硬化性シリコーン樹脂組成物において、該無機蛍光体の表面を、ハイドロアルコキシシラン又はそのオリゴマーで表面処理することにより上記の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記表面処理蛍光体含有硬化性シリコーン樹脂組成物及び発光装置を提供する。
請求項1:
少なくとも一部が表面処理された無機蛍光体を含有することを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項2:
無機蛍光体が、硫化物系又はシリケート系蛍光体であることを特徴とする請求項1記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項3:
無機蛍光体が、ハイドロアルコキシシラン又はそのオリゴマーで表面処理されていることを特徴とする請求項1又は2記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項4:
発光ダイオード(LED)チップの封止用である請求項1〜3のいずれか1項記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項5:
LEDチップを少なくとも一部が表面処理された無機蛍光体を含有するシリコーン樹脂組成物の硬化物により封止してなることを特徴とする発光装置。
請求項6:
無機蛍光体が、硫化物系又はシリケート系蛍光体であることを特徴とする請求項5記載の発光装置。
請求項7:
無機蛍光体が、ハイドロアルコキシシラン又はそのオリゴマーで表面処理されていることを特徴とする請求項5又は6記載の発光装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、LEDチップの封止材として、硫化物系蛍光体又はシリケート系蛍光体に表面処理を施した蛍光体を含有する硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物を用いたことで、従来は、時間の経過とともに蛍光体の分解により、信頼性が低下していた発光装置に対し、長期信頼性が確保できる蛍光体含有シリコーン樹脂組成物及び発光装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る蛍光体含有LED発光装置の実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳しく説明する。
図1は、本発明の代表的な発光装置の基本構成の断面図である。本発明の発光装置は、LEDチップ1とシリコーン樹脂封止部5を備える発光装置であって、シリコーン樹脂封止部5中にLEDチップ1の発光の一部を異なる波長に変換する無機蛍光体3が含有され、該無機蛍光体の少なくとも一部が予め表面処理されているものである。
【0013】
本発明に使用できる蛍光体としては、例えば青色LEDチップから発生される青色光を黄色系の光、例えば緑黄色に変換可能なものとしては、一般的に市中で入手できるものなどどれでも使用できるが、最も好適な酸化物蛍光体としては、YAG系蛍光体が挙げられる。更に、演色性の向上のための蛍光体としては、例えば、CaS、ZnS、Y22S、CdS、Ln22S(Ln:Y,Gd,La)などを母体とし、これに基本構成元素として硫黄を含んだ硫化物系蛍光体が挙げられる。
【0014】
シリケート系蛍光体の青色蛍光体としては、Sr3SiO5:Eu2+、Sr2Si38・2SrCl2:Eu2+などが挙げられる。また、シリケート系蛍光体の赤色蛍光体としては、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)2SiO4:Eu3+,Mn2+などが挙げられる。本発明に用いられる蛍光体としては、以上に例示した蛍光体に限られるものではない。
【0015】
本発明の発光装置は、蛍光体粒子が予め表面処理を施されていることが特徴であり、表面処理を施し、該蛍光体粒子の耐湿性を向上させることによって、蛍光体の蛍光特性を長期間維持し、発光装置の信頼性を向上させるものである。
【0016】
本発明において、蛍光体の表面処理に用いる表面処理剤としては、特にハイドロアルコキシシラン又はそのオリゴマーが好ましい。
【0017】
このようなハイドロアルコキシシラン又はそのオリゴマーは、例えば、下記一般式(i)又は(ii)で表される。なお、下記式中Meはメチル基、Etはエチル基を示す。
【化1】

(但し、Lは0〜8の整数である。)
【0018】
ハイドロアルコキシシラン又はそのオリゴマーの添加量は、蛍光体粒子粉末の比表面積によって異なるが、通常、蛍光体粒子粉末100質量部あたり、処理に用いるハイドロアルコキシシラン又はそのオリゴマーは、1〜50質量部が好ましく、より好ましくは10〜40質量部である。1質量部未満の場合は、十分な耐湿性の効果が得られないことがあり、50質量部を超えると表面処理層が厚くなりすぎて、蛍光体の光変換率が低下し、所望の光特性が得られなくなる。
【0019】
蛍光体粒子粉末とハイドロアルコキシシラン又はそのオリゴマーを混合するための機器としては、転動ボールミル、振動ボールミル等のボール型混練機又はハイブリッドミキサーなどを好適に用いることができる。
【0020】
得られた表面処理蛍光体粒子粉末を室温下で3〜5時間風乾させた後、乾燥機を用いて1〜24時間乾燥させることにより表面処理蛍光体粒子粉末を得ることができる。乾燥温度は、100〜700℃の温度範囲が好ましく、より好ましくは400〜600℃である。100℃未満の場合は、ハイドロアルコキシシラン又はそのオリゴマーの反応が十分ではなく、表面処理の効果が得られないことがあり、700℃を超えると蛍光体の熱分解などが発生し、所望の光変換機能が得られなくなり好ましくない。
【0021】
次に、本発明に使用するモールド部材(封止材)の具体例としては、付加硬化型シリコーン樹脂組成物などが挙げられる。付加硬化型シリコーン樹脂組成物としては、例えば、分子鎖両末端、分子鎖途中、あるいは分子鎖両末端及び分子鎖途中にビニル基等のアルケニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを白金族系触媒の存在下でヒドロシリル化付加反応によって作製したものを挙げることができる。
【0022】
付加硬化型シリコーン樹脂組成物として、具体的には、
(a)1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサン、
(b)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(a)成分中のケイ素原子と結合するアルケニル基に対して、(b)成分のケイ素原子に結合した水素原子がモル比で0.1〜5.0となる量、
(c)触媒量の白金族系触媒
を必須成分とする付加硬化型シリコーン樹脂組成物が挙げられる。
【0023】
付加硬化型シリコーン樹脂組成物に使用される(a)成分の1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサンは、付加硬化型シリコーン樹脂組成物のベースポリマーとして使用されている公知のオルガノポリシロキサンであり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析によるポリスチレン換算重量平均分子量が、通常、3,000〜300,000程度であり、回転粘度計による測定で、室温(25℃)で100〜1,000,000mPa・s、特に200〜100,000mPa・s程度の粘度を有するものが好ましく、下記平均組成式(1)で示されるものが用いられる。
1aSiO(4-a)/2 (1)
(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
【0024】
上記R1で示されるケイ素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換したもの、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられる。
【0025】
この場合、R1のうち少なくとも2個はアルケニル基(特に炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6である)であることが必要である。なお、アルケニル基の含有量は、ケイ素原子に結合する全炭化水素基中(即ち、前記平均組成式(1)におけるR1としての非置換又は置換の一価炭化水素基中)0.01〜20モル%、特に0.1〜10モル%とすることが好ましい。このアルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子、分子鎖途中のケイ素原子、又は両者に結合していてもよいが、組成物の硬化速度、硬化物の物性などの点から、本発明で用いるオルガノポリシロキサンは、分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含んだものが好ましい。
【0026】
上記オルガノポリシロキサンの構造は、通常、主鎖がジオルガノシロキサン単位((R12SiO2/2単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基((R13SiO1/2単位)で封鎖された基本的には直鎖状構造を有するジオルガノポリシロキサンであるが、部分的にはR1SiO3/2単位やSiO4/2単位を含んだ分岐状の構造、環状構造などであってもよい。
【0027】
ケイ素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基は、基本的には上記のいずれであってもよいが、アルケニル基としてはビニル基、その他の基としてはメチル基、フェニル基が望ましい。
【0028】
(a)成分の例としては、下記一般式で示される化合物などが挙げられる。
【化2】

(式中、RはR1と同様であるが、アルケニル基は含まない。m、nはm≧1、n≧0の整数であり、m+nはこのオルガノポリシロキサンの重量平均分子量を、3,000〜300,000程度及び粘度を室温(25℃)で100〜1,000,000mPa・s、特に200〜100,000mPa・s程度の値とする数である。)
【0029】
(b)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。ここで、(b)成分は、(a)成分と反応し、架橋剤として作用するものであり、その分子構造に特に制限はなく、従来製造されている、例えば線状、環状、分岐状、三次元網状構造(樹脂状)など各種のものが使用可能であるが、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を有する必要があり、好ましくは2〜200個、より好ましくは3〜100個である。オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示されるものが用いられる。
2bcSiO(4-b-c)/2 (2)
(式中、R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、このR2としては、上記式(1)中のR1と同様の基が挙げられる。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cが0.8〜3.0を満足する正数であり、好ましくは、bは1.0〜2.0、cは0.01〜1.0、かつb+cは1.5〜2.5である。)
【0030】
(b)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基は、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上含有されるが、前記SiH基は分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、又はこの両方に位置するものであってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、1分子中のケイ素原子の数は通常2〜300個、好ましくは4〜150個程度であり、室温(25℃)で液状のものが望ましい。
【0031】
式(2)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0032】
この(b)成分の添加量は、(a)成分中のケイ素原子と結合するアルケニル基1個に対してケイ素原子に結合した水素原子が、モル比で0.1〜5.0倍当量となる量であり、好ましくは0.5〜3.0倍当量、より好ましくは0.8〜2.0倍当量の範囲である。0.1倍当量より少ない場合は、架橋密度が低くなりすぎ、硬化したシリコーンゴムの耐熱性が低下することがある。また、5.0倍当量より多い場合には脱水素反応による発泡の問題が生じ、更に耐熱性が低下することがある。
【0033】
(c)成分の白金族系触媒は、(a)成分と(b)成分との硬化付加反応(ハイドロサイレーション)を促進させるための触媒として使用されるものである。白金族系触媒は、公知のものを用いることができるが、白金もしくは白金化合物を用いることが好ましい。白金化合物には、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン又はアセチレンアルコール類等との錯体などが例示される。
【0034】
なお、この白金族系触媒の配合量は、希望する硬化速度に応じて適宜増減すればよいが、通常は(a)成分に対して白金量で0.1〜1,000ppm、好ましくは1〜200ppmの範囲である。
【0035】
最後に、上記のような付加硬化型シリコーン樹脂組成物100質量部に対して前記の表面処理を施した蛍光体を0.1〜60質量部、好ましくは0.3〜30質量部添加することにより、表面処理蛍光体含有硬化性シリコーン樹脂組成物を得ることができる。
【0036】
また、本組成物には、上述した成分の他に、必要に応じて、本発明の目的効果を損なわない限度において他の成分を配合することができる。例えば、付加タイプの反応抑制剤、接着を付与する公知成分たとえばアルコキシシラン、シランカップリング剤などを配合することができる。
【0037】
以上のような表面処理蛍光体含有硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させてなるシリコーン樹脂を、LEDチップの封止用樹脂として用いることにより、本発明の発光装置を得ることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記の例で部は質量部、Meはメチル基、Etはエチル基を示す。
【0039】
[実施例1]
硫化物系蛍光体である硫化カルシウム系蛍光体100部に下記式
【化3】

で示されるハイドロトリアルコキシシランオリゴマー40部を加え、ハイブリッドミキサーにて攪拌・混合した。得られた混合溶液を室温下で3時間風乾させた後、乾燥機を用いて550℃で10時間乾燥を行い、表面処理を施した硫化物系蛍光体を得た。
【0040】
次に、下記式(iii)
【化4】

で示される両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100部に、下記式(iv)
【化5】

で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを上記ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(iii)中のビニル基に対するSiH基のモル比が1.5となる量、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液を0.05部、及びYAG系蛍光物質を3部に、前記で表面処理を施した表面処理硫化物系蛍光体を3部加えて混合し、表面処理蛍光体含有硬化性シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0041】
[実施例2]
実施例1と同様にして、シリケート系蛍光体であるSr3SiO5:Eu2+にハイドロトリアルコキシシランを用いて表面処理を施し、表面処理シリケート系蛍光体を得た。
【0042】
次に、両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100部に、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを上記ビニル基含有ジメチルポリシロキサン中のビニル基に対するSiH基のモル比が1.5となる量、及び、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液を0.05部、前記の表面処理を施したシリケート系蛍光体を3部加えて混合し、表面処理蛍光体含有硬化性シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0043】
[比較例1]
実施例1において、表面処理を施さない硫化物系蛍光体を使用する以外は、実施例1と同様の方法で蛍光体含有硬化性シリコーン樹脂組成物を調製し、比較例1とした。
【0044】
[比較例2]
実施例1において、表面処理剤としてシランカップリング剤であるトリメトキシシランを用いて表面処理を施す以外は、実施例1と同様の方法で表面処理蛍光体含有硬化性シリコーン樹脂組成物を調製し、比較例2とした。
【0045】
前記組成物を80℃、4時間の条件で硬化させ、得られた硬化物の物性をJISK6301に従い、測定した。なお、硬さ試験はスプリング式TypeA型試験機を用いて実施した。その結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
次に、主発光ピークが460nmのInGaN半導体を用いたLEDチップを実施例1,2又は比較例1,2で調製した蛍光体含有硬化性シリコーン樹脂組成物で封止し、100℃,1時間で硬化させ、評価用発光装置を作製した。この評価サンプルを85℃,85%RHの恒温恒湿機内にて、25mAの電流を流して点灯させながら表2に示す時間放置し、初期発光強度に対する発光強度の減衰率及び色座標を測定した。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
実施例1,2では、シリコーンゴムの機械的物性の低下もなく、300時間放置しても発光強度の大きな低下及び発光色の色変化は発生しなかった。しかし、比較例1,2では、シリコーンゴムの機械的物性の低下は無かったが、強度低下及び色変化が発生した。
【符号の説明】
【0050】
1 LEDチップ
2 導電性ワイヤー
3 蛍光体
4 パッケージ
5 シリコーン樹脂封止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が表面処理された無機蛍光体を含有することを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
無機蛍光体が、硫化物系又はシリケート系蛍光体であることを特徴とする請求項1記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
無機蛍光体が、ハイドロアルコキシシラン又はそのオリゴマーで表面処理されていることを特徴とする請求項1又は2記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
発光ダイオード(LED)チップの封止用である請求項1〜3のいずれか1項記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
LEDチップを少なくとも一部が表面処理された無機蛍光体を含有するシリコーン樹脂組成物の硬化物により封止してなることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
無機蛍光体が、硫化物系又はシリケート系蛍光体であることを特徴とする請求項5記載の発光装置。
【請求項7】
無機蛍光体が、ハイドロアルコキシシラン又はそのオリゴマーで表面処理されていることを特徴とする請求項5又は6記載の発光装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−248411(P2010−248411A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100921(P2009−100921)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】