説明

表面処理防眩板の製造方法

【課題】 防眩性基板(10)の防眩面(10a)に表面処理液(C)を塗布し、乾燥して、ムラを生ずることなく、表面処理膜(11)を形成して、表面処理防眩板(1)を製造しうる方法を提供する。
【解決手段】 本発明の製造方法は、防眩面(10a)に、過剰量の表面処理液(C)を16秒以上接触させた後、この表面処理液(C)の過剰分を除去することにより、表面処理液(C)を塗布することを特徴とする。通常は、眩性基板(10)の防眩面(10a)にマスキングフィルム(12)が貼合されたマスキングフィルム貼合防眩性基板(13)からマスキングフィルム(12)を剥離した後、この防眩面(10a)に、本発明の方法により、表面処理液(C)を塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理防眩板の製造方法に関し、詳しくは防眩性基板の防眩面に表面処理膜が形成された表面処理防眩板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の表面(10a)に細かな凹凸を設けて防眩面とし、この凹凸により、外光などの写り込みを防止した防眩性基板(10)は、例えば画像表示装置の最前面に配置される前面板などとして広く用いられており、例えば図1に示すように、防眩面(10a)に、傷付き防止のためのハードコート膜などのような表面処理膜(11)を形成して表面処理防眩面(1a)とした、表面処理防眩板(1)も広く用いられている。
【0003】
このような表面処理防眩性基板(1)の製造方法としては、防眩面(10a)に表面処理液(C)を塗布し、乾燥させて表面処理膜(11)を形成する方法が知られている〔特許文献1:特開2004−1372号公報、特許文献2:特開2003−311891号公報〕。表面処理液(C)は、例えば防眩性基板(10)を大過剰の表面処理液(C)中に浸漬した後、引き上げて塗布するディップコート法、バーやロールを用いて防眩面(10a)上で表面処理液(C)を均一に引き延ばして塗布するバーコート法またはロールコート法、防眩面(10a)に表面処理液(C)を吹き付けて塗布するスプレーコート法など塗布方法により、防眩面(10a)に塗布することができる。生産速度を上げ、表面処理液(C)の使用量を最小限とするため、従来、ディップコート法により塗布する場合には、防眩基板(10)を表面処理液(C)中に浸漬した後、速やかに引き上げ、過剰分があれば速やかに除去して、乾燥させている。バーコート法やロールコート法により塗布する場合には、過剰量の表面処理液(C)を用いないよう、目的の表面処理膜(11)を形成するに要するだけの表面処理液(C)を防眩面(10a)上で引き延ばし、乾燥させている。スプレーコート法により塗布する場合にも、過剰量の表面処理液(C)を用いないよう、目的の表面処理膜(11)を形成するに要するだけの表面処理液(C)を吹き付けて、乾燥させている。
【0004】
また、防眩性基板(10)は通常、防眩面(10a)の傷付き、汚染などを防止するために、マスキングフィルム(12)が貼合されたマスキングフィルム貼合防眩性基板(13)として保管、運搬等されており、通常は、表面処理液(C)を塗布する直前に、このマスキングフィルム(12)を剥離している。
【0005】
しかし、従来の製造方法では、防眩面(10a)の細かな凹凸のためか、保管等の間にマスキングフィルム(12)の上から強く押さえ付けられた箇所があると、この箇所で、表面処理膜(11)にムラが生ずることがあった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−1372号公報
【特許文献2】特開2003−311891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明者は、ムラを生ずることなく表面処理膜(11)を形成して表面処理防眩板(1)を製造しうる方法を開発するべく鋭意検討した結果、防眩面(10a)に過剰量の表面処理液(C)を比較的長時間接触させたのち、過剰分を除去することにより表面処理液(C)を塗布すると、ムラのない表面処理膜(11)を形成しうることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、防眩性基板(10)の防眩面(10a)に、表面処理液(C)を塗布し、乾燥させて、前記防眩面(10a)に表面処理膜(11)が形成された表面処理防眩板(1)を製造する方法であり、
前記防眩面(10a)に、過剰量の表面処理液(C)を20秒以上接触させた後、該表面処理液(C)の過剰分を除去することにより、前記表面処理液(C)を塗布することを特徴とする前記表面処理防眩板(1)の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、ムラのない表面処理膜(11)を形成して、表面処理防眩板(1)を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に示すように、本発明の製造方法に用いられる防眩性基板(10)として、通常は樹脂製のものが用いられ、吸湿による反りが少ない点で、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂(MS樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、環状ポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂からなるものが好ましく用いられる。
【0011】
MS樹脂とは、メタクリル酸メチルおよびスチレンを共重合させて得られる熱可塑性樹脂であって、メタクリル酸メチル単位とスチレン単位との質量比は通常20:80〜80:20、好ましくは40:60〜70:30程度である。MS樹脂は、メタクリル酸メチル、スチレン以外の単量体単位を含んでいてもよい。
【0012】
防眩性基板(10)の表面(10a)には細かな凹凸が形成されており、その程度は、例えば法線(a)から60°の方向(Li)から光を入射させたときに、その正反射方向(Lo)から測定される60°光沢度〔G60(10)〕が50グロス以下、好ましくは15グロス〜40グロスとなる程度である。
【0013】
このような60°光沢度〔G60(10)〕を示す基板(10)は、例えば表面に凹凸を有するロールを用いて、加熱溶融状態でダイから板状に押出された直後の樹脂の表面に凹凸を設ける押出ロール転写成形法、内面に凹凸を有する金型内に樹脂を射出して成形する射出成形方法、内面に凹凸を有するセル内で原料単量体を重合させる注型成形法などの方法により製造することができる。
【0014】
防眩性基板(10)は、例えば図2に示すように、熱可塑性樹脂(A)に不溶性樹脂粒子(B)を分散させて熱可塑性樹脂組成物(P)とし、これを加熱し、溶融状態としてダイ(D)から押出したのち、表面(10a)を押圧することなく、そのまま冷却させる押出成形方法により製造することもできる。ダイ(D)から板状に押し出された熱可塑性樹脂組成物(P)は、その表面(10a)に不溶性樹脂粒子(B)による細かな凹凸が形成され、これにより防眩性の基板表面(10a)を得ることができる。
【0015】
不溶性樹脂粒子(B)とは、熱可塑性樹脂(A)と共に加熱し、熱可塑性樹脂(A)を溶融させても、自らは溶融することなく、粒子状のままで熱可塑性樹脂(A)中に分散しうる樹脂粒子(B)である。不溶性樹脂粒子(B)としては、架橋樹脂粒子が用いることができ、具体的には、基板(10)を構成する樹脂としてMS樹脂を用いた場合には、メタクリル酸メチルおよびスチレンと、ラジカル重合可能な官能基を2個以上有する多官能単量体とを共重合させて得られるものが挙げられる。
【0016】
不溶性樹脂粒子(B)の粒子径は、十分な防眩性を発揮できる点で通常10μm以上であり、上記60°光沢度(G60)を示す防眩性表面処理板(1)が容易に得られる点で、通常20μm以下であり、粒子径の最小値と最大値との差が10μm以下、さらには4μm以下であることが好ましい。
【0017】
不溶性樹脂粒子(B)の使用量は、押出条件、特に押出し後の冷却条件により異なるが、例えば基板(10)を構成する樹脂100質量部あたり5質量部〜15質量部程度である。
【0018】
不溶性樹脂粒子(B)は、基板(10)の厚み方向にわたって均一に存在していてもよいが、不溶性樹脂粒子(B)が分散された表面層と、不溶性樹脂粒子(B)を含まないか、または表面層よりも含有量の少ない基材層とを含む多層構造とすることが、不溶性樹脂粒子(B)の使用量を削減できて好ましい。このような多層構造の基板(10)は、例えば不溶性樹脂粒子を分散させた熱可塑性樹脂組成物(P)と、不溶性樹脂粒子を含まない熱可塑性樹脂とを共押出しする多層押出成形法により、2種2層板として製造することができる。
【0019】
本発明の製造方法で用いる防眩性基板(10)は、製造後、通常は、防眩面(10a)にマスキングフィルム(12)を貼合したマスキングフィルム貼合基板(13)として保管、運搬等される。マスキングフィルム(12)は、樹脂製であってもよいし、紙製であってもよい。マスキングフィルム(12)の貼合面(12a)には通常、粘着剤が塗布されており、この粘着剤により、防眩面(10a)にマスキングフィルム(12)を貼合することができる。粘着剤としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする粘着剤、アクリル系粘着剤、オレフィン系粘着剤などが挙げられ、例えばエチレンビスステアリルアミドなどの離型剤を含んでいてもよい。
【0020】
マスキングフィルム(12)を防眩性基板(10)に貼合するには、通常と同様に、防眩性基板(10)の防眩面(10a)にマスキングフィルム(12)を重ね合わせ、加圧すればよい。加圧するには、例えば一対の貼合ロールを用い、この貼合ロールの間に、防眩性基板(10)およびマスキングフィルム(12)を重ね合わせて供給し、加圧すればよい。
【0021】
このマスキングフィルム(12)の剥離強度は、防眩性基板(10)の保管等の際に容易に剥離することがなくて取り扱いが容易な点で、通常は50g/25mm以上であり、よりムラが少ない表面処理防眩板(1)を製造し易いことから、100g/25mm以下、さらには80g/25mm以下であることが好ましい。
【0022】
剥離強度は、マスキングフィルム(12)の貼合面(12a)に塗布される粘着剤の種類、塗布量、マスキングフィルム(12)を加圧する加圧圧力、貼合時の貼合温度などにより調整することができ、例えば剥離強度を低くするには、粘着力の低い粘着剤を用いたり、マスキングフィルム(12)として粘着剤の塗布量の少ないものを用いたり、マスキングフィルム(12)の加圧圧力を低くしたり、貼合温度を低くすればよい。剥離強度を低くするには、粘着力の高い粘着剤を用いたり、粘着剤の塗布量の多いマスキングフィルム(12)を用いたり、マスキングフィルム(12)の加圧圧力を高め足り、貼合温度を高くすればよい。
【0023】
マスキングフィルム貼合防眩性基板(13)において、マスキングフィルフィルム(12)は防眩性基板(10)の防眩面(10a)に貼合されており、両面が防眩面(10a)である場合には、両面に貼合される。図2に示すように片面が防眩面(10a)である場合には、片面の防眩面(10a)にだけマスキングフィルム(12)が貼合されていてもよいし、その反対側の凹凸のない平坦面にも、汚染防止などの観点から、マスキングフィルム(12)が貼合されていてもよい。
【0024】
防眩性基板(10)に表面処理液(C)を塗布するには、マスキングフィルム貼合基板(13)からマスキングフィルム(12)を剥離した後、防眩面(10a)に表面処理液(C)を塗布すればよい。マスキングフィルム(12)は通常、表面処理液(C)を塗布する直前に剥離される。
【0025】
表面処理液(C)は、表面処理剤が溶剤で希釈された液であり、例えば表面処理膜(11)として耐擦傷性膜を形成するためのハードコート剤が溶剤に溶解されたハードコート液(C)が挙げられる。
【0026】
ハードコート剤としては、紫外線などのエネルギー線を照射されることにより硬化するエネルギー線硬化性のハードコート剤、加熱されることにより硬化する熱硬化性のハードコート剤などが挙げられる。このようなハードコート剤としては種々のものが知られているが、例えば基板(10)を構成する樹脂としてMS樹脂を用いた場合には、分子中に芳香族環および(メタ)アクリロイルオキシ基を有する硬化性化合物を含有し、芳香族環1個あたりの(メタ)アクリロイルオキシ基の数が3個以上となる割合で存在するハードコート剤〔特許文献1:特開2004−1372号公報〕、
分子中に脂環式環および(メタ)アクリロイルオキシ基を有する硬化性化合物と、分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する硬化性化合物またはそのオリゴマーを含むハードコート剤〔特許文献2:特開2003−311891号公報〕などが好ましく用いられる。なお、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、メタクリロイルオキシ基またはアクリロイルオキシ基をいう。このようなハードコート剤を塗布することにより、ハードコート膜として表面処理膜(11)を形成することができる。
【0027】
溶剤としては、表面処理剤を溶解することができ、塗布後に揮発し得るものであればよく例えばジアセトンアルコール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、酢酸エチルのようなエステル類、水などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を混合して用いられる。表面処理液(C)における溶剤の含有量は、表面処理液を基準として通常50質量%〜80質量%、好ましくは60質量%〜70質量%程度である。
【0028】
表面処理液(C)は、例えば導電性無機化合物の微粒子が分散されていてもよい。この微粒子の粒子径は、例えば0.1μm以下である〔特許文献1:特開2004−1372号公報、特許文献2:特開2003−311891号公報〕。このような微粒子が分散された表面処理液(C)を用いることで、帯電防止性の表面処理膜(11)が形成されて、帯電防止性の表面処理防眩板(1)とすることができる。
【0029】
表面処理液(C)を防眩性基板の防眩面(10a)に接触させるには、例えば防眩性基板(10)の全体を表面処理液(C)中に浸漬するディップコート法、防眩面(10a)に表面処理液(C)を吹き付けて付着させるスプレーコート法、防眩面(10a)上でバー、ロールにより表面処理液(C)を引き延ばすバーコート法またはロールコート法などの塗布方法で塗布すればよい。
【0030】
表面処理液(C)の使用量は、目的の表面処理膜(11)を形成するに要する量を超える過剰量である。表面処理膜(11)を形成するには、単位面積当たり、概ね10g/m2〜25g/cm2程度の表面処理液(C)を塗布すればよいが、本発明の製造方法は、これを上回る量、具体的には通常50g/cm2以上、好ましくは100g/cm2以上程度、上回る量の表面処理液(C)と接触させるものであり、例えば前記ディップコート法により接触させる場合のように、防眩性基板(10)の全体を浸漬しうる程度の大過剰量の表面処理液(C)と接触させてもよい。
【0031】
過剰量の表面処理液(C)と接触させる時間は20秒以上、好ましくは25秒以上であり、生産速度の点で、通常は120秒以下、好ましくは90秒以下である。接触温度は、表面処理剤が硬化したり、溶剤が揮発せず、表面処理液(C)を塗布しうる温度であればよく、通常は0℃〜40℃程度である。
【0032】
次いで、防眩面(10a)から、表面処理膜(11)を形成するに要する量を上回る過剰分の表面処理液(C)を除去する。過剰分を除去するには、例えばディップコート法により接触させた場合には、表面処理液(C)から防眩性基板(10)を引き上げればよく、引き上げた後、さらに圧縮空気などを吹き付けて、過剰分を吹き飛ばして除去してもよい。スプレーコート法により接触させた場合には、表面処理液(C)の吹き付けを停止すればよく、吹き付けの停止後、さらに圧縮空気などを吹き付けて、過剰分を吹き飛ばして除去してもよい。バーコート法やロールコート法により除去した場合には、バーにより、更に防眩面(10a)上の表面処理液(C)を引き延ばして過剰分を除去すればよい。
【0033】
このようにして、過剰分の表面処理液(C)を除去することにより、目的の表面処理膜(11)を形成するに適した量の表面処理液(C)を防眩面(10a)上に塗布することができる。
【0034】
過剰分を除去したのち、乾燥することにより溶剤を揮発させ、必要により硬化させて、目的の表面処理膜(11)を形成することができる。溶剤を揮発させるには、そのまま室温で風乾する方法、加熱して乾燥させる方法、減圧して揮発させる方法などが挙げられる。硬化させる方法は、表面処理剤の種類により異なり、エネルギー線硬化性の表面処理剤を用いた場合には、エネルギー線を照射すればよく、エネルギー線の強度や照射時間などは、用いた表面処理剤の種類、平均膜厚などにより適宜選択される。また熱硬化性の表面処理剤を用いた場合には加熱すればよく、加熱時間や加熱温度などは、用いた表面処理剤の種類、平均膜厚などにより適宜選択される。硬化は、溶剤を揮発させた後に行ってもよいし、溶剤の揮発と同時に行ってもよい。
【0035】
本発明の製造方法により得られる表面処理防眩板(1)は、例えば陰極線管(CRT)、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、発光ダイオードディスプレイなどの画像表示装置の最前面に配置される前面板として有用である。
【0036】
また、本発明の製造方法により得られる表面処理防眩板(1)は、図4に示すような、プロジェクションテレビ(2)の最前面に配置される前面板として用いることもできる。プロジェクションテレビ(2)とは、スクリーン(3)の背面側に投影機(4)から画像を映し出して表示する装置である。投影機(4)からの画像は通常、プロジェクションテレビの奥行きを短くするために、反射板(5)により反射されてスクリーン(3)に映し出される。これら投影機(4)および反射板(5)は通常、外光の影響をさけるために、筐体(図示せず)の中に納められている。
【0037】
本発明の製造方法により得られる表面処理防眩板(1)をプロジェクションテレビの前面板として用いる場合には、例えば図5に示すように、プロジェクションテレビのスクリーン(3)を構成するフィルム状のレンチキュラーレンズ(6)を貼合するための支持板(1)として用いることができる。フィルム状レンチキュラーレンズ(6)は通常、表面処理防眩面(1a)とは反対側の面(1b)に貼合される。フィルム状レンチキュラーレンズ(3)側には、通常、これ(3)と間隔を開けてフレネルレンズ(7)が配置される。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。
【0039】
なお、各実施例における評価方法は以下のとおりである。
(1)60°光沢度〔G60(10)、グロス〕
JIS Z8741に準拠して、光沢計〔ミノルタ(株)製、「GM−268」〕を用いて測定した(単位はグロス)。
(2)表面処理膜の平均膜厚〔μm〕
各実施例で得た防眩性基板(10)に代えて、メタクリル酸メチル単位60質量%とスチレン単位40質量%の共重合体〔住友化学(株)製、「スミペックスHS」〕を押出成形して得られ、表面が平滑なMS樹脂押出板を用いた以外は各実施例と同様に操作して、表面処理剤を塗布し、硬化させて表面処理膜(11)を形成し、この表面処理膜(11)の膜厚〔t(11)〕を瞬間マルチ測光システム〔大塚電子(株)製、「「MCPD−2000」」により測定した(単位はμm)。
(3)剥離強度〔g/25mm〕
JIS Z8741に従い測定した。
(4)外観
表面処理膜(11)のムラの有無を目視にて判定した。ムラが見られなかったものを「○」とし、見られたものを「×」とした。
【0040】
実施例1
〔防眩性の基板の製造〕
メタクリル酸メチル単位60質量%とスチレン単位40質量%の共重合体樹脂〔住友化学(株)製、「スミペックスHS」〕(C)100質量部に、架橋樹脂粒子〔メタクリル酸メチルおよびスチレンを主成分とし、エチレングリコールジメタクリレート(多官能単量体)を含む単量体の重合体、粒子径は11μm〜14μm、重量平均粒子径12.5μm、屈折率1.50〕(B)9質量部を加えて得た熱可塑性樹脂組成物(P)を表層とし、上記と同じ共重合体樹脂(C)100質量部に上記と同じ架橋樹脂粒子(B)1.3質量部を加えて得た熱可塑性樹脂組成物(P)を基材層として、加熱溶融状態で混練しながらダイ(D)から押し出して成形して、2種2層構成〔表層130μm、層厚み2.0mm〕で、表層側表面(10a)の60°光沢度〔G60(10)〕が31グロスの基板(10)を得た。
【0041】
〔マスキングフィルム貼合防眩性基板の製造〕
上記で得た防眩性基板(10)の表層側表面(10a)に、マスキングフィルム〔積水フィルム(株)製、「6312C」〕(12)を重ね合わせ、加圧により貼合して、マスキングフィルム貼合防眩性基板(13)を得、マスキングフィルム(13)の上から、鉄製で略球状の治具を押さえ付けて、マスキングフィルム(13)が破れないよう、約1mm幅でスジ状の痕を付けた。マスキングフィルム(12)の剥離強度は73g/25mmであった。なお、用いたマスキングフィルム(12)は、離型剤〔エチレンビスステアリルアミド〕を含む粘着剤からなる層が貼合面(12a)に設けられたものである。
【0042】
なお、このマスキングフィルム貼合防眩性基板(13)のマスキングフィルム(12)を剥離し、X線光電子分光法〔XPS、クレイトス(Craytos)社製、「μ−XPS」〕により、表面(10a)の元素組成比を分析して窒素(N)、炭素(C)および酸素(O)の合計量に対する窒素(N)の割合(原子数比)は、押さえ付けた部分で1.0%であり、押さえ付けなかった部分では0.6%であった。また、飛行時間型二次イオン質量分析装置〔TOF−SIMS、アルバック・ファイ(Ulvac PHI)社製、「PHI TRIFT(TM) II」〕により、表面(10a)の窒素(N)を分析したところ、離型剤として用いたエチレンビスステアリルアミドに由来する窒素原子であった。
【0043】
〔帯電防止耐擦傷性塗料の調製〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔新中村化学(株)、「NKエステルA−9530」〕20質量部、2,2’−ビス(4−アクリロイルオキシジエトキシ)フェニルプロパン−2−プロパノール〔共栄社化学(株)、「ライトアクリレート BP−4EA」〕5質量部、2−メチル−1−プロパノール25質量部の混合物に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔チバ・スペシャリティーケミカルズ社、「イルガキュア 184」、重合開始剤〕1.25質量部を加えて混合して、耐擦傷性塗料を調製した。
【0044】
この耐擦傷性塗料90質量部に五酸化二アンチモン分散液〔Sb25、触媒化成工業(株)、「ELECOM PC−14」、溶剤はイソプロピルアルコールおよびエタノール、濃度20質量%、五酸化二アンチモンの粒子径は20nm〜30nm〕10質量部を添加して、帯電防止耐擦傷性塗料(C)を得た。
【0045】
〔帯電防止耐擦傷性膜の形成〕
上記で得たマスキングフィルム貼合防眩性基板(13)からマスキングフィルム(12)を剥がしたのちの防眩性基板(10)を、剥離後、直ちに、上記で得た帯電防止耐擦傷性塗料(C)中に浸漬し、30秒後、450mm/分の速度で引き上げた。その後、溶剤を揮発させて乾燥し、紫外線を照射して硬化させることにより、帯電防止耐擦傷性膜(11)を形成して、表面処理防眩板(1)を得た。表面処理膜(11)の平均膜厚は5.1μmであり、ムラは見られなかった。この表面処理防眩板(1)の評価結果を第1表に示す。
【0046】
比較例1
表面処理液(C)と表層側表面(10a)との接触時間を15秒とした以外は実施例1と同様に操作して、表面処理防眩板(1)を得た。この表面処理防眩板の表面処理膜の平均膜厚は5.1μmであった。この表面処理膜は、治具により付けられた痕の位置に、スジ状のムラが見られた。
【0047】
第 1 表
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基板(10) 接触時間 表面処理膜 外観
G60(10) 平均膜厚
(グロス) (秒) (μm)
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実施例1 31 20 5.1 ○
比較例1 31 15 5.1 ×
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【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】表面処理防眩板の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】基板の製造方法を模式的に示す図である。
【図3】本発明の製造方法に用いるマスキングフィルム貼合防眩性基板の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】表面処理防眩板を前面板として用いたプロジェクションテレビの一例を模式的に示す断面図である。
【図5】表面処理防眩板を用いたプロジェクションテレビ用スクリーンの一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1:表面処理防眩板(支持板)
1a:表面処理防眩面 1b:反対面
10:防眩性基板 10a:基板表面
11:表面処理層 a:法線
12:マスキングフィルム
13:マスキングフィルム貼合防眩性基板
2:プロジェクションテレビ
3:スクリーン 4:投影機 5:反射板
6:フィルム状レンチキュラーレンズ 7:フレネルレンズ
P:熱可塑性樹脂組成物
A:熱可塑性樹脂 B:不溶性樹脂粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防眩性基板の防眩面に、表面処理液を塗布し、乾燥させて、前記防眩面に表面処理膜が形成された表面処理防眩板を製造する方法であり、
前記防眩面に、過剰量の表面処理液を20秒以上接触させた後、該表面処理液の過剰分を除去することにより、前記表面処理液を塗布することを特徴とする前記表面処理防眩板の製造方法。
【請求項2】
防眩性基板の防眩面にマスキングフィルムが貼合されたマスキングフィルム貼合防眩性基板から前記マスキングフィルムを剥離した後、前記防眩面に前記表面処理液を塗布する請求項1に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−159080(P2006−159080A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353774(P2004−353774)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】