説明

表面実装型水晶発振器

【課題】金属カバーを被せた水晶発振器の内部に湿分が浸入し、水晶発振器の周波数が変化するのを及び発熱素子からの熱の逃げを防止する。
【解決手段】ベース基板2に設けた複数の貫通孔2bに立設した金属ピン4に、底面に複数の突出部5bを設けた金属ベース5を係合して載置し、前記金属ピン4の上端部に回路基板6を取り付け、前記回路基板6に発熱素子を介して水晶振動子7を配設して、前記金属ベース5に金属カバー9を被せて前記水晶振動子7を密閉構造とする。そして、前記ベース基板2の底面に第1段目ザグリ部または、テーパ部3a及びこれより大きい径の第2段目ザグリ部3bからなる二段ザグリ部3を形成して、前記貫通孔2bに挿入した前記金属ピン4の周囲に形成した前記第1段目ザグリ部及び前記貫通孔2bと前記金属ピン4との間の隙間に半田または導電性樹脂を充填して前記金属ピン4を前記貫通孔2bに固着するとともに、前記金属ピン4の周囲にスリット11a,11bを形成して発熱素子からの熱の逃げを防止する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装型水晶発振器(以下、“水晶発振器”という)に係り、とくに密閉構造とし、湿分が水晶発振器の内部へ浸入しないようにして、湿度の変化により周波数変化が生じないようにするとともに、水晶発振器の発熱素子からの熱の逃げを防止した水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の恒温槽付水晶発振器(OCXO)20は、添付した図に示すように、ガラスエポキシ基板21に立設した、例えば4本の、アースピン22a,22bの上端部に、ガラスエポキシ樹脂からなる回路基板23が取り付けられ、その下面に放熱シート25を介して金属板24が取り付けられ、さらに、金属板24の下面に水晶振動子26が取り付けられている。また、回路基板23の上面には、回路素子等の電子部品27が装着されるとともに、水晶振動子26の端子29が突出して設けられている。さらに、金属カバー28をガラスエポキシ基板21に被せて、金属カバー28をガラスエポキシ基板21の外周縁部の数個所W(例えば、2カ所)で半田付けして封止した構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−154227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の恒温槽付水晶発振器(OCXO)では、前述したように、ガラスエポキシ基板の上に発振器の部品を配設し、金属ベースに金属カバーを被せた後に、金属ベースに金属カバーをその外周縁部数個所(例えば、2個所)で半田付けして封止する構造であるため、完全な密閉構造となっていない。そのため、半田付けした金属カバーの外周縁部から、湿分が水晶発振器の内部に浸入し、さらにガラスエポキシ樹脂からなる回路基板自体が湿分を通してしまい、水晶発振器の周波数が湿分により変化し、環境湿度が水晶発振器の内部に影響を与えて、水晶発振器の周波数変化が生じていた。そのため、周波数安定度に対する高い顧客の要求に対して、この種の表面実装型水晶発振器では、十分対応できない問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、本発明の表面実装型水晶発振器では、ベース基板に設けた複数の貫通孔に立設した金属ピンに、底面に複数の突出部を設けた金属ベースを係合載置し、前記金属ピンの上端部に回路基板を取り付け、前記回路基板に発熱素子を介して水晶振動子を配設し、前記金属ベースに金属カバーを被せて前記水晶振動子を密閉構造とし、前記ベース基板の底面に第1段目ザグリ部及びこれより大きい径の第2段目ザグリ部とからなる二段ザグリ部を形成して、前記貫通孔に挿入した前記金属ピンの周囲に形成した前記第1段目ザグリ部及び前記貫通孔と前記金属ピンとの間の隙間に半田または導電性樹脂を充填して前記金属ピンを前記貫通孔に固着したことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の表面実装型水晶発振器では、前記貫通孔の周囲の前記ベース基板の上面に銅箔を付着させるとともに、銅メッキ部を前記貫通孔の内面及び前記銅箔の上面、さらに、前記第1段目ザグリ部を被うように形成したことを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明の表面実装型発振器では、前記第1段目ザグリ部が、テーパ状であることを特徴とする。
【0008】
またさらに、本発明の表面実装型発振器では、前記ベース基板に固着された各前記金属ピンの四方にスリットを貫通して形成したことを特徴とする。
【0009】
本発明の表面実装型発振器では、前記ベース基板に固着された複数の前記金属ピンを囲むようにして前記ベース基板の二辺または四辺に平行にスリットを貫通して形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ベース基板に水晶発振器の端子(金属ピン)を通す貫通孔の底部を二段ザグリ加工し、端子を半田あるいは導電性樹脂により貫通孔に固着したので、貫通孔に施したメッキ部、半田または導電性樹脂あるいは端子がベース基板の地面(底面)から突出せず、客先での実装基板への搭載が正確かつ確実にでき、完全な密閉構造の、かつ、発熱素子からの熱の逃げを防止した水晶発振器が構成できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の表面実装型水晶発振器の実施例の縦断面図である。
【図2】図1に示した本発明の表面実装型水晶発振器をベース基板の地面(底面)方向から見た底面図である。
【図3】図1にA矢視で示す二段ザグリ部の拡大縦断面図を示し、(a)は、ベース基板の地面(底面)側に二段ザグリ部を形成し、一段目のザグリ部に銅メッキを施した状態を、また、(b)は、銅メッキを施した貫通孔に端子(金属ピン)を挿入し、半田または導電性接着剤を貫通孔に充填し端子の先端部を仮想線に示すように切断した状態を示す図である。
【図4】図3に示した二段ザグリ部に代えて、(a)ベース基板の地面(底面)側にテーパ部を形成し、テーパ部に銅メッキを施した状態を、また、(b)は、銅メッキを施した貫通孔に端子(金属ピン)を挿入し、半田または導電性接着剤を貫通孔に充填した後、端子の先端部を仮想線で示すように切断した状態を示す図である。
【図5】図1及び図2に示した水晶発振器のベース基板に形成した金属ピンを固着するザグリ部の周囲に発熱素子から実装基板への熱の逃げを防止する長円形状のスリットを設けた図であって、(a)は四方向から囲むスリットを各金属ピンに設けた図を、また、(b)は複数の金属ピンを囲むようにベース基板の四辺に平行に細長い溝状の貫通したスリットを設けた図である。
【図6】従来の表面実装型水晶発振器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施例
図1は、本発明の表面実装型水晶発振器(以下、“水晶発振器”という)の一実施例である恒温槽付水晶発振器(OCXO)の縦断面図を、また、図2は、その実施例の恒温槽付水晶発振器を、そのベース基板の地面(底面)方向から見た平面(底面)図である。
【0013】
図1と図2に示すように、本発明の実施例の水晶発振器1は、ガラスエポキシ樹脂からなるベース基板2を上下方向に貫通した複数の貫通孔2b及び金属ベース5を貫通した複数の貫通孔にシール部材(ガラス)5aを介して金属ピン(端子)4を挿入して立設させ、金属ベース5の底面に突出して設けた、例えば4個の、スタンド・オフ(突出部)5bを介して金属ベース5をベース基板2の上面に載置し、複数個の金属ピン4の上端部に、回路素子8等をその上面6aに設けた、ガラスエポキシ樹脂からなる回路基板6が取り付けられている。金属ベース5の底面にスタンド・オフ5bを突出して設けることにより、金属ベース5とガラスエポキシ樹脂からなるベース基板2との間に、図1に示すように、隙間gが形成され、OCXO内部で発生した熱がベース基板2へ逃げにくくなる。そして、この回路基板6の底面6bには、発熱素子(図示せず)を介して、水晶振動片7aを収納した水晶振動子7が配設されている。さらに、ベース基板2の各辺の側面には、顧客の装置基板と半田付けされる、端面スルーホール10a,10bが形成されている。
【0014】
そして、金属カバー9を水晶振動子7の上方から被せて、金属ベース5の上面外周縁部に載置し、外周縁部を半田もしくは抵抗溶接で封止して密閉構造とする。
【0015】
ここで、本発明の実施例の水晶発振器1では、図1にA矢視で示すザグリ部3を図3(a)に示すように二段ザグリ部3として形成して、金属ピン(端子)4を貫通孔2bに挿入し、金属ピン4を半田または導電性接着剤により、図3(b)に示すように、貫通孔2bに固着する。この構成により、ベース基板2の地面(底面)2aから、金属ピン(端子)4、銅メッキ部3d、半田または導電性接着剤3eが突出して、客先での実装基板への本発明の水晶発振器の実装の際、これらの部材が実装基板と当接しないようになる。
【0016】
すなわち、図3(a)に示すように、ベース基板2の地面(底面)2a方向から見て、ザグリドリル等により、平面視円形の一段目ザグリ部3a及び、この一段目ザグリ部3aよりも大径の二段目ザグリ部3bを、ベース基板2に形成した貫通孔2bの周囲に形成して、二段ザグリ部3を構成する。
【0017】
次いで、銅箔3cを貫通孔2bの周囲のベース基板2の上面に形成し、この銅箔3cの上面と貫通孔2bの内面及び一段目ザグリ部3aを被うようにして、銅メッキ部3dを電解メッキで形成して電極を形成する。なお、ここで、銅メッキ部3dの上に、さらに、Niメッキ部、金メッキ部を無電解メッキで形成してもよい。
【0018】
その後、図3(b)に示すように、銅メッキ部3dを形成した貫通孔2b内に金属ピン4を挿入し、半田または導電性樹脂剤3dを金属ピン4の周囲に充填して金属ピン4を銅メッキ部3dを介して貫通孔2b内に固着させる。
【0019】
そして、金属ピン4の先端を水晶発振器1の特性調整用機器に装着して、その特性調整を行い、特性調整後、図3(b)に示す金属ピン4の先端の仮想線で示す部を、ベース基板2に通した後にベース基板2から突出しない長さに、かつ、ベース基板2と金属ピン4を接合できる程度の長さに切断あるいはL型に折り曲げて、ベース基板2の地面(底面)2aから金属ピン4の先端4aが突出しないようにする。
【0020】
また、図4に示すように、図3に示した二段ザグリ部に代えてテーパ部(皿状円錐部)を形成して、金属ピンを貫通孔に半田または導電性接着剤により固着してもよい。
【0021】
すなわち、図4(a)に示すように、ベース基板2の地面(底面)2a方向から見て、平面視円形のテーパ部3a′及び、このテーパ部3a′よりも大径のザグリ部3bを、ベース基板2に形成した貫通孔2bの周囲にドリル等により形成して、テーパ(皿)状のザグリ部3を構成する。
【0022】
次いで、銅箔3cを貫通孔2bの周囲のベース基板2の上面に形成し、この銅箔3cの上面と貫通孔2bの内面及びテーパ部3a′を被うようにして、銅メッキ部3dを電解メッキで形成して電極を形成する。なお、ここで、銅メッキ部3dの上に、さらに、Niメッキ部、金メッキ部を無電解メッキで形成してもよい。
【0023】
その後、図4(b)に示すように、銅メッキ部3dを形成した貫通孔2b内に金属ピン4を挿入し、半田または導電性樹脂剤3dを金属ピン4の周囲に充填して金属ピン4を銅メッキ部3dを介して貫通孔2b内に固着させる。
【0024】
さらに、図1に示した、回路基板6の底面に配設した発熱素子(図示せず)からの熱が金属ピン4を介してベース基板2に形成した端面スルーホール10a,10bから実装基板へ、発熱素子の加熱温度と実装基板の実装温度との温度差のために逃げてしまい、水晶発振器(OCXO)1自身の内部熱分布が変化し、その周波数安定度が劣化するおそれがある。
【0025】
そのため、図5に示すように、金属ピン4を囲むようにして、スリット(切欠き)をベース基板2を貫通するようにして形成する。
【0026】
すなわち、図5(a)に示すように、ベース基板2に固着した各金属ピン4の四方にザグリ部3の外周部から所定寸法離間した位置に平面視長円形状のスリット11a,11bをベース基板2を貫通して設ける。また、図5(b)に示すように、ベース基板2に固着した複数の金属ピン4をそれらの四方向から囲むようにして平行に、ザグリ部3と端面スルーホール10a,10bとの間の所定位置に細長い溝状の貫通したスリット(切欠き)11bを設ける。
【0027】
これらのスリット(切欠き)11a,11bより水晶発振器1の発熱素子からの熱の逃げが防止されて、水晶発振器1の周波数の安定度が維持されるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の表面実装用水晶発振器は、恒温槽付水晶発振器(OCXO)の他に、電圧制御水晶発振器(VCXO)、温度補償水晶発振器(TCXO)等の圧電発振器に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 表面実装型水晶発振器
2 ガラスエポキシ樹脂ベース基板
2a ベース基板地面(底面)
2b 貫通孔
3 二段ザグリ部
3a 一段目ザグリ部
3a′ テーパ部
3b 二段目ザグリ部
3c 銅箔
3d 銅メッキ部
3e 半田または導電性接着剤
4 金属ピン(端子)
5 金属ベース
5a シール部材
5b スタンド・オフ(突出部)
6 ガラスエポキシ樹脂回路基板
7 水晶振動子
7a 水晶振動片
8 回路素子
9 金属カバー
10a,10b 端面スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板に設けた複数の貫通孔に立設した金属ピンに、底面に複数の突出部を設けた金属ベースを係合載置し、前記金属ピンの上端部に回路基板を取り付け、前記回路基板に発熱素子を介して水晶振動子を配設し、前記金属ベースに金属カバーを被せて前記水晶振動子を密閉構造とした表面実装型水晶発振器において、
前記ベース基板の底面の前記金属ピンの周囲に第1段目ザグリ部及びこれより大きい径の第2段目ザグリ部からなる二段ザグリ部を形成して、前記第1段目ザグリ部及び前記貫通孔と前記金属ピンとの間の隙間に半田または導電性樹脂を充填して前記金属ピンを前記貫通孔に固着することを特徴とする表面実装型発振器。
【請求項2】
前記貫通孔の周囲の前記ベース基板の上面に銅箔を付着させるとともに、銅メッキ部を前記貫通孔の内面及び前記銅箔の上面、さらに、前記第1段目ザグリ部を被うように形成したことを特徴とする請求項1に記載の表面実装型発振器。
【請求項3】
前記第1段目ザグリ部が、テーパ状であることを特徴とする請求項1に記載の表面実装型発振器。
【請求項4】
前記ベース基板に固着された各前記金属ピンの四方にスリットを貫通して形成したことを特徴とする請求項1に記載の表面実装型発振器。
【請求項5】
前記ベース基板に固着された複数の前記金属ピンを囲むようにして前記ベース基板の二辺または四辺に平行にスリットを貫通して形成したことを特徴とする請求項1に記載の表面実装型発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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