説明

表面弾性波ディバイス

【課題】 湿気の浸入を防止して、性能の良好なものが得られると共に、薄型の表面弾性波ディバイスを提供すること。
【解決手段】 本発明の表面弾性波ディバイスにおいて、櫛歯部2aを囲んだ状態で振動空間部5を形成するための空間形成部材4の外周面には、振動空間部5への湿気浸入防止用の封止膜6が設けられため、振動空間部5内(櫛歯部2a側)への水分や気体の浸入防止を確実にできて、性能の良好なものが得られると共に、封止膜6によって、振動空間部5の密封度を向上することができ、また、圧電基板1からの封止膜6の高さは、導体バンプ3の先端よりも小さいため、厚みが薄く、薄型化が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の電気機器に使用される共振器やフィルタ等に適用して好適な表面弾性波ディバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の表面弾性波ディバイスの図面を説明すると、図3は従来の表面弾性波ディバイスに係る要部断面図であり、次に、従来の表面弾性波ディバイスの構成を図3に基づいて説明すると、圧電基板51には、ここでは図示しないが、櫛歯部と電極を有する櫛歯電極が設けられると共に、この圧電基板51には、櫛歯部を囲んだ状態で、振動空間部52を形成するためのドライフィルムレジストからなる空間形成部材53が設けられている。
【0003】
導体バンプ54が櫛歯電極の電極に設けられると共に、絶縁樹脂からなる保護樹脂部55は、導体バンプ54の先端部を露出し、空間形成部材53を覆った状態で、圧電基板51の下面に設けられる。
【0004】
圧電基板51からの保護樹脂部55の高さは、導体バンプ54の先端部よりも大きく、この保護樹脂部55に埋設され、外部機器のマザー基板に接続される端子56が導体バンプ54に接続されて、従来の表面弾性波ディバイスが形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−232260号公報(第4−第5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の表面弾性波ディバイスは、振動空間部52を形成するための空間形成部材53がドライフィルムレジストで形成されているため、湿気が振動空間部52内に浸入して性能を悪くし、また、保護樹脂部55によって空間形成部材53を覆っても、保護樹脂部55も湿気が浸入するため、性能を改善することができないばかりか、保護樹脂部55が導体バンプ54の先端部を越えた状態になっているため、厚み方向に大きくなって、薄型化が図れないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、湿気の浸入を防止して、性能の良好なものが得られると共に、薄型の表面弾性波ディバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の解決手段として、一面側に櫛歯電極を設けた圧電基板と、振動空間部を形成するために前記圧電基板に設けられた空間形成部材とを備え、前記櫛歯電極は、櫛歯部と、この櫛歯部に接続された電極を有すると共に、前記電極には、導体バンプが接続され、前記空間形成部材は、前記櫛歯部を囲んだ状態で前記圧電基板に付着され、前記櫛歯部の厚みより厚い環状の側壁と、この側壁の開口部を塞ぐ蓋体を有し、前記空間形成部材の外周面には、前記振動空間部への湿気浸入防止用の封止膜が設けられると共に、前記圧電基板からの前記封止膜の高さは、前記導体バンプの先端よりも小さい構成とした。
【0008】
また、第2の解決手段として、前記封止膜は、前記側壁から繋がって前記圧電基板上に設けられて、前記圧電基板と前記側壁との間を前記封止膜によって覆った構成とした。
【0009】
また、第3の解決手段として、前記封止膜は、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、シリコン酸化物、シリコン窒化物、又はシリコン酸窒化物の1つ以上の製膜で形成される構成とした。
【0010】
また、第4の解決手段として、前記封止膜が多層の膜で形成された構成とした。
【0011】
また、第5の解決手段として、前記封止膜がスパッタ、又はCVDによって製膜された構成とした。
【0012】
また、第6の解決手段として、前記空間形成部材の前記側壁と前記蓋体は、別部材で形成されると共に、同一材料、或いは異なる材料で形成された構成とした。
【0013】
また、第7の解決手段として、前記封止膜上には、前記導体バンプを露出した状態で、第1の保護樹脂部が設けられると共に、前記圧電基板からの前記第1の保護樹脂部の高さは、前記導体バンプの先端よりも小さい構成とした。
【0014】
また、第8の解決手段として、前記圧電基板の他面には、第2の保護樹脂部が設けられた構成とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明の表面弾性波ディバイスにおいて、櫛歯部を囲んだ状態で振動空間部を形成するための空間形成部材の外周面には、振動空間部への湿気浸入防止用の封止膜が設けられため、振動空間部内(櫛歯部側)への水分や気体の浸入防止を確実にできて、性能の良好なものが得られると共に、封止膜によって、振動空間部の密封度を向上することができ、また、圧電基板からの封止膜の高さは、導体バンプの先端よりも小さいため、厚みが薄く、薄型化が図れる。
【0016】
また、封止膜は、側壁から繋がって圧電基板上に設けられて、圧電基板と側壁との間を封止膜によって覆ったため、圧電基板と側壁の境目にも封止膜が存在して、振動空間部内への水分や気体の浸入防止と密封を一層確実にできる。
【0017】
また、封止膜は、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、シリコン酸化物、シリコン窒化物、又はシリコン酸窒化物の1つ以上の製膜で形成されたため、耐湿に優れた封止膜を形成できる。
【0018】
また、封止膜が多層の膜で形成されたため、水分や気体の浸入防止と密封のより確実なものが得られる。
【0019】
また、封止膜がスパッタ、又はCVDによって製膜されたため、封止膜は、密着性が良く、薄く精度の良いものが得られる。
【0020】
また、空間形成部材の側壁と蓋体は、別部材で形成されたため、空間形成部
部材の形成が容易となると共に、同一材料、或いは異なる材料で形成されたため、適宜の材料が選択できて、自由度のあるものが得られる。
【0021】
また、封止膜上には、導体バンプを露出した状態で、第1の保護樹脂部が設けられたため、外力からの空間形成部材の保護が図れると共に、圧電基板からの第1の保護樹脂部の高さは、導体バンプの先端よりも小さいため、厚みが薄く、薄型化が図れる。
【0022】
また、圧電基板の他面には、第2の保護樹脂部が設けられたため、外力からの圧電基板の保護が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の表面弾性波ディバイスの第1実施例に係る要部断面図、図2は本発明の表面弾性波ディバイスの第2実施例に係る要部断面図であり、次に、本発明の表面弾性波ディバイスの第1実施例に係る構成を図1に基づいて説明すると、四角形の圧電基板1の一面(下面)には、櫛歯電極2が設けられ、この櫛歯電極2は、櫛歯部2aと、この櫛歯部2aに繋がった電極2bを有すると共に、電極2bには、半田等で形成された導体バンプ3が設けられている。
【0024】
箱形の空間形成部材4は、圧電基板1の下面に付着(接着)された環状の側壁4aと、この側壁4aの開口部を塞ぐ蓋体4bとで形成され、この空間形成部材4の側壁4aは、櫛歯部2aの厚みより厚く形成され、櫛歯部2aを囲んで配置されており、空間形成部材4が圧電基板1に設けられることによって、密封された振動空間部5が形成されると共に、空間形成部材4は、導体バンプ3間内に配置されたものとなっている。
【0025】
また、空間形成部材4の側壁4aと蓋体4bは、この実施例では別部材によって形成されており、側壁4aは、例えば、酸化シリコン等の無機絶縁材や、エポキシ、ポリイミド、アクリル等の紫外線硬化性樹脂からなる絶縁材が使用され、また、蓋体4bは、例えば、エポキシ、ポリイミド、アクリル等の紫外線硬化性樹脂からなる絶縁材や、ガラス等の無機材料が使用され、これ等の材料は、適宜に選択して使用可能である。
【0026】
なお、側壁4aと蓋体4bは、この実施例では別部材によって形成されたもので説明したが、側壁4aと蓋体4bが一体化されて1部品になったものでも良い。
【0027】
振動空間部5への湿気浸入防止用の封止膜6は、空間形成部材4の全外周面と、この空間形成部材4から圧電基板1の下面に跨って形成されおり、封止膜6が空間形成部材4の全外周面に設けられることによって、空間形成部材4側からの振動空間部5への湿気や気体の浸入を防止し、また、封止膜6が空間形成部材4から圧電基板1の下面に跨って設けられることによって、圧電基板1と側壁4aの境目からの振動空間部5への湿気や気体の浸入を防止するものである。
【0028】
また、封止膜6は、電極2bへの導体バンプ3の接続箇所を除く圧電基板1の下面に設けられると共に、この封止膜6は、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、シリコン酸化物、シリコン窒化物、又はシリコン酸窒化物の1つの膜、或いは同種や異種からなる多層の膜で形成され、そして、封止膜6は、スパッタ、或いはCVD(気相蒸着)によって製膜される。
【0029】
絶縁材からなる第1の保護樹脂部7は、導体バンプ3の先端部を露出した状態で、封止膜6を覆うように圧電基板1の下面設けられると共に、圧電基板1からの第1の保護樹脂部7の高さは、導体バンプ3の先端よりも小さく形成されており、この第1の保護樹脂部7は、例えば、エポキシ、ポリイミド、シリコーン等の熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂で形成されている。
【0030】
また、絶縁材からなる第2の保護樹脂部8は、圧電基板1の他面(上面)を覆うように設けられており、この第2の保護樹脂部8は、例えば、エポキシ、ポリイミド、シリコーン等の熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂で形成されて、本発明の表面弾性波ディバイスが形成されている。
【0031】
このような構成を有する本発明の表面弾性波ディバイスは、ここでは図示しないが、導体バンプ3が外部機器のマザー基板の配線パターン上に載置されて、配線パターンに接続されるようになっている。
【0032】
また、図2は本発明の表面弾性波ディバイスの第2実施例を示し、この第2実施例について説明すると、導電材からなる引出端子9が電極2bに接続された状態で、絶縁膜である封止膜6上に引き出され、導体バンプ3が電極2bから離れた位置の引出端子9に接続されて、マザー基板の配線パターンに対応できるようにしたものであり、その他の構成は、前記第1実施例と同様の構成を有し、同一部品に同一番号を付し、ここではその説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の表面弾性波ディバイスの第1実施例に係る要部断面図である。
【図2】本発明の表面弾性波ディバイスの第2実施例に係る要部断面図である。
【図3】従来の表面弾性波ディバイスに係る要部断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 圧電基板
2 櫛歯電極
2a 櫛歯部
2b 電極
3 導体バンプ
4 空間形成部材
4a 側壁
4b 蓋体
5 振動空間部
6 封止膜
7 第1の保護樹脂部
8 第2の保護樹脂部
9 引出端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側に櫛歯電極を設けた圧電基板と、振動空間部を形成するために前記圧電基板に設けられた空間形成部材とを備え、前記櫛歯電極は、櫛歯部と、この櫛歯部に接続された電極を有すると共に、前記電極には、導体バンプが接続され、前記空間形成部材は、前記櫛歯部を囲んだ状態で前記圧電基板に付着され、前記櫛歯部の厚みより厚い環状の側壁と、この側壁の開口部を塞ぐ蓋体を有し、前記空間形成部材の外周面には、前記振動空間部への湿気浸入防止用の封止膜が設けられると共に、前記圧電基板からの前記封止膜の高さは、前記導体バンプの先端よりも小さいことを特徴とする表面弾性波ディバイス。
【請求項2】
前記封止膜は、前記側壁から繋がって前記圧電基板上に設けられて、前記圧電基板と前記側壁との間を前記封止膜によって覆ったことを特徴とする請求項1記載の表面弾性波ディバイス。
【請求項3】
前記封止膜は、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、シリコン酸化物、シリコン窒化物、又はシリコン酸窒化物の1つ以上の製膜で形成されることを特徴とする請求項1、又は2記載の表面弾性波ディバイス。
【請求項4】
前記封止膜が多層の膜で形成されたことを特徴とする請求項3記載の表面弾性波ディバイス。
【請求項5】
前記封止膜がスパッタ、又はCVDによって製膜されたことを特徴とする請求項3,又は4記載の表面弾性波ディバイス。
【請求項6】
前記空間形成部材の前記側壁と前記蓋体は、別部材で形成されると共に、同一材料、或いは異なる材料で形成されたことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の表面弾性波ディバイス。
【請求項7】
前記封止膜上には、前記導体バンプを露出した状態で、第1の保護樹脂部が設けられると共に、前記圧電基板からの前記第1の保護樹脂部の高さは、前記導体バンプの先端よりも小さいことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の表面弾性波ディバイス。
【請求項8】
前記圧電基板の他面には、第2の保護樹脂部が設けられたことを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の表面弾性波ディバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−19943(P2007−19943A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200060(P2005−200060)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】