説明

表面開始原子移動ラジカル重合により合成されるメトキシエチルアクリレート単位を含むポリマーコーティング

本発明は、表面開始原子移動ラジカル重合(SI ATRP)、例えば、ARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRPによって合成される、2−メトキシエチルアクリレートの単位を含むもしくはから成るポリマー鎖を、含むかまたはから成るポリマー被覆剤の調製、および該ポリマー被覆剤の使用に関する。本発明はまた、2−メトキシエチルアクリレートの反復単位に共有結合した1つ以上の表面を含むデバイスに関する。該デバイスは、容器、埋め込み可能デバイス、管デバイス、膜、フィルム、または医療デバイスであり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願に引用されている全ての特許および非特許文献の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
多くの従来の生体材料は、該生体材料と接触する生物学的物質と適切に相互作用するかまたはそれを支持する能力が欠けており、所望されない生物学的反応が生じる。しかし、これらの所望されない反応は、該生体材料の表面の化学的および物理的特性を変化させることによって制御しうる。これに関して、表面改質は、好適な生体適合性材料を与える周知の方法である。本発明は、表面開始原子移動ラジカル重合(SI ATRP)、例えば、ARGET(電子移動によって再生する活性剤)SI ATRP、またはAGET(電子移動によって発生する活性剤)SI ATRPによって合成される、ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(PMEA)から成るかまたはそれを含むポリマーを含む生体適合性材料の調製、および該生体適合性材料の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ポリマーは、これまで、原子移動ラジカル重合(ATRP)法によって合成されてきた。ATRP法は、種々の触媒系を使用してMatyjaszewskiおよびSawamoto[1−3]によって導入された。ATRPは、ラジカル重合を使用してモノマーをポリマーに変換する制御された方法である。ATRPに使用される開始剤は、一般に、単純ハロゲン化アルキルである。ハロゲン原子Xは、重合の間に移動する。さらに、1つ以上のリガンドによって錯化された遷移金属から成る触媒系が存在する。触媒は、活性形と不活性形(休止状態と称される)との平衡を与える。平衡は休止状態に向かって移り;従って、ポリマー鎖は短時間だけ活性であり、それによって連鎖停止反応の抑制を可能にし、それによって重合を制御する。ATRPのような制御重合法は、制御モル質量、制御ポリマー構成、および狭い分子量分布を生じる(図1におけるATRPの概略図参照)。
【0004】
PMEA被覆心肺バイパス回路および酸素供給器を包含するPMEA被覆物が、これまでに開示されている[4−6]。PMEA上でのタンパク質吸着試験も開示されている[7−8]。
【0005】
PMEAポリマーは、これまでは、フリーラジカル重合によって作製された。例えば、ATRPによるMEAのホモ重合がこれまでに記載されている[9−11(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)]。しかし、以前に記載されたPMEA被覆剤は、表面に物理的に吸着されるが、SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRPによって作製される本発明のPMEAは、表面に共有結合される。共有結合は、向上した特性、例えば向上した長期間安定性を有するPMEA被覆剤を生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Bednarek,M.、Jankova,K.、Hvilsted,S.J.、Polym.Sci.Pol.Chem.、2007、45、333−340
【非特許文献2】Hansen,N.M.L.、Haddleton,D.M.、Hvilsted,S.J.、Polym.Sci.Pol.Chem.、2007、45、5770−5780
【非特許文献3】Brar,A.S.、Saini,T.、Eur.Polym.J.、2007、43、1046−1054
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1つ以上の表面に共有結合した2−メトキシエチルアクリレート(MEA)の1つ以上の反復単位から成るポリマー被覆剤に関する。本発明は、SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRPによって得られる、かつ/または得ることができる、PMEAに関する。
【0008】
他の実施形態において、本発明は、2−メトキシエチルアクリレート(MEA)の反復単位に共有結合した1つ以上の表面を含むデバイスに関する。該デバイスは、容器(例えば、ボトル、フラスコ、ボックス、バッグまたはアンプル)、埋め込み可能デバイス(例えば、ステントまたはポンプ)、管デバイス、膜、フィルム、または医療デバイス(例えば、輸液セット、透析デバイス、カテーテルまたはポンプ)であり得る。
【0009】
本発明は、さらに、SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRPによって、PMEA被覆剤を作製する方法に関する。
【0010】
1つの実施形態において、前記SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRP法は、1つ以上の下記工程:
i) 基材の1つ以上の表面に共有結合した開始基を使用する工程;
ii) 前記開始基を含む1つ以上の表面を有する1つ以上の基材を含む反応器に、1種以上の触媒、1つ以上のリガンド、2−メトキシエチルアクリレート、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iii) 反応を生じさせる工程;および任意に、
iv) 1種以上の還元剤を使用する工程;
を含み、それによって基材の表面に共有結合したPMEA被覆剤を作製する。
【0011】
本発明は、さらに、1つ以上の表面に共有結合したPMEAの被覆剤の使用に関する。該被覆剤は、1つ以上のタンパク質、1つ以上のペプチド、1種以上の体液、1つ以上の組織、および肉から成る群から選択される1つ以上の対象物を接触させるために使用することができる。1種以上の体液は、下記から成る群から選択することができる:
血液、血漿、血清、羊水、房水、耳垢、クーパー腺液または射精前液、キームス、女性精液、間質液、リンパ液、母乳、粘液(鼻水および痰を包含する)、胸膜液、膿、唾液、皮脂(皮膚油)、精液、汗、涙、尿、膣分泌液および嘔吐物。
【0012】
1つの好ましい実施形態において、本発明は、さらに、全血または血液画分のような血液の貯蔵中のような接触のための、1つ以上の表面に共有結合したPMEAの被覆剤の使用に関する。血液分画は、全血を分画する、または血液をその構成部分に分離する方法である。この分画は、1つの実施形態において、血液の遠心分離によって行なうことができる。
【0013】
1つの実施形態において、血液分画で得られる成分は、下記の成分である:
・上相における、血漿の透明溶液;
・中間における、血小板と混合した白血球(白色血液細胞)の薄層である白血球層;および
・遠心分離管の下部における、赤血球(赤色血液細胞)。
【0014】
本発明のPMEA被覆剤は、任意のこれら血液画分またはそれらの混合物の貯蔵または接触に使用することができる。
【0015】
本発明のPMEA被覆剤は、任意の下記試料の貯蔵または接触に使用することができる:
― 血漿タンパク質または血漿タンパク質混合物(例えば、アルブミンおよび/または免疫グロブリン、および/または凝固タンパク質、例えばフィブリノーゲンを包含する);
― 臨床用および/または治療用の、血漿タンパク質または血漿タンパク質混合物;
― 臨床用の、血漿成分、例えば、第VIII因子、第IX因子複合体、免疫グロブリン、アンチトロンビンIII、アルファ−I−アンチトリプシン;
― 注入または輸液用の精製血漿成分;
― 分析用の血漿または血漿タンパク質または血漿成分;
― 疾患の臨床診断において役割を果たすことができる1つ以上の生物マーカーを含有する血漿;
― 臨床診断用の血漿。
【0016】
本発明のPMEA被覆剤は、細菌増殖の制限または予防のために使用することができる。PMEA被覆剤は、細菌忌避のために使用することができる。
【0017】
PMEA被覆剤は、さらに、長期間安定性を有するので、長期間にわたって使用することができる。従って、PMEA被覆剤は、例えば、好適な物質(例えば、本出願に記載されている任意の物質)を、該物質へのPMEA被覆剤の有意な漏出なしに、1ヵ月以上、3ヶ月以上、6ヶ月以上、1年以上、5年以上または10年以上にわたって長期貯蔵するのに使用されるデバイスを被覆するために使用することができる。該物質への有意な漏出なしにとは、1つの実施形態において、5%未満、例えば1%未満または0.1%未満のPMEA被覆剤が該物質へ漏出していることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、原子移動ラジカル重合(ATRP)の原理を示す図式である。
【図2】図2は、ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(PMEA)の構造を示す図である。
【図3】図3は、ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(PMEA)の調製を示す図である。
【図4】図4は、表面開始ATRP(SI ATRP)の原理を示す図式である。
【図5−1】図5は、SI ATRPに使用することができる、PEEKおよびPPの表面に結合した開始基の調製例を示す図である。
【図5−2】図5は、SI ATRPに使用することができる、PEEKおよびPPの表面に結合した開始基の調製例を示す図である。
【図6−1】図6は、細菌付着における作用を示す図である。
【図6−2】図6は、細菌付着における作用を示す図である。
【図7】図7は、減衰全反射フーリエ変換赤外(ATR FT−IR)分光を示す図である。
【図8A】図8は、水接触角(WCA)測定を示す図である。
【図8B】図8は、水接触角(WCA)測定を示す図である。
【図9】図9は、ARGET SI ATRPの原理を示す図式である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義および略語
ATRPは、原子移動ラジカル重合の略語である。
【0020】
生体適合性表面: 生物学的物質と相互作用する際に、生物学的物質を妨害しない、例えば、自然防御反応を刺激しない、または例えば、急性または慢性炎症反応を誘発しない、または例えば、インプラント周囲組織の適切な分化を妨げない、または例えば、タンパク質および/またはペプチドの安定性に影響を及ぼさない物質。
【0021】
本明細書において使用される生体適合性は、生物学的系に毒性または有害作用を有さない性質を意味する。1つの実施形態において、生体適合性は、医学的療法のレシピエントまたは受容者において、どのような望ましくない局所または全身作用も誘発せずに、特定の状況において最も適切な有益な細胞または組織反応を生じ、その療法の臨床関連性能を最適化する、医学的療法に関して所望される機能を果たす生体材料の能力を意味する。
【0022】
生物学的物質: 植物、動物およびヒトまたはその生体部分、例えば、器官、組織または細胞を包含する生きている実体(living entity)に由来する任意の物質。好ましい生物学的系は、哺乳動物系、好ましくはヒト系である。生物学的物質は、例えば、タンパク質、ペプチドおよび酵素を包含する。
【0023】
体液は、動物またはヒトの体内に存在する液体である。それらは、体から排泄または分泌される液体、ならびに通常は体から排泄または分泌されない液体を包含する。
【0024】
容器は、貯蔵用の空洞を有する任意タイプの容器(蓋付きまたは蓋無し)、例えば、ボトル、フラスコ、バッグ、血液バッグ、ポット、タブ、皿、トレー、ボウル、深皿、ピルボトル、薬瓶、アンプル、フラゴン、シリンジ、針、チューブ、細胞培養皿またはフラスコ、組織培養皿またはフラスコであり得る。
【0025】
汚損: 汚損は、例えば水生環境での、表面における所望されない物質の集積を意味する。汚損物質は、生物(生物汚損)または非生物質(無機または有機)から成ることができる。汚損を記述するために文献に使用されている他の用語は下記を包含する:沈殿物形成、外被形成、凝結、沈着、剥がれ、鱗片形成およびスラッジ形成。最後の5つの用語は、汚損科学技術の範囲内の汚損より狭い意味を有する。
【0026】
HMTETAは、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミンの略語である。
【0027】
埋め込み可能デバイス: 本明細書に使用されている埋め込み可能デバイスは、ヒトまたは獣医学患者に埋め込むことができる任意の好適な医療基材であってよい。
【0028】
MEAは、2−メトキシエチルアクリレートの略語である。
【0029】
医療デバイスは、任意のタイプの診断、治療、療法または手術において、動物またはヒトにおいて医療目的に使用される製品である。
【0030】
膜: 2相の間のバリヤーであり、吸着/拡散による、かつ/または孔を通る輸送を可能にする。
【0031】
PEEKは、ポリ(エーテルエーテルケトン)の略語である。
【0032】
PMDETAは、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミンの略語である。
【0033】
PMEAは、ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)の略語である。
【0034】
PPは、ポリプロピレンの略語である。
【0035】
プロテーゼ(複数のプロテーゼ)は、欠損した身体部分に取って代わる人口的補綴物である。
【0036】
比率:本明細書において記載されている比率は、特に指定されない限りモル比である。
【0037】
SI ATRPは、表面開始原子移動ラジカル重合の略語である。1つの実施形態において、SI ATRPは、還元剤を使用せずに行なうことができる。通常のSI ATRPは、還元剤を使用せずに行なわれるSI ATRPを意味する。
【0038】
「基材」という用語は、本発明のポリマーを該基材の表面に共有結合させることができる任意の物質であり得る。
【0039】
AGET:電子移動によって発生する活性剤
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
ARGET:電子移動によって再生する活性剤
ICAR:連続的開始剤再生用の開始剤
L:リガンド
M:モノマー
RA:還元剤
RAFT:可逆性付加−切断連鎖移動
SR&NI:同時逆および通常開始
X:ハロゲン原子。
【0040】
発明の詳細な説明
基材の1つ以上の表面からの、SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRP ATRPによるPMEA被覆剤の調製は、表面開始電子移動ラジカル重合(SI ATRP)と称される。本発明は、SI ATRP(図2〜4参照)またはARGET SI ATRP(図9参照)によって、PMEA被覆剤を作製する方法に関する。SI ATRP法において、2−メトキシエチルアクリレート(MEA)を1つ以上の表面から重合し、図2に示されている反復単位を有するポリマーが得られる。従って、MEAが、ATRP用の開始剤を使用して1つ以上の表面から重合され、溶解状態で重合されない。SI ATRPの反応速度論は、ATRPのそれと異なることに注目すべきである。本発明は、SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRPによって得られる、かつ/または得ることができるPMEA被覆剤に関する。
【0041】
本発明は、さらに、SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRPによってPMEA被覆剤を作製する方法に関する。
【0042】
1つの実施形態において、前記SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRP法は、1つ以上の下記工程:
i)基材の1つ以上の表面に共有結合した開始基を使用する工程;
ii)前記開始基を含む1つ以上の表面を有する1つ以上の基材を含む反応器に、1種以上の触媒、1つ以上のリガンド、2−メトキシエチルアクリレート、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iii)反応を生じさせる工程;および任意に、
iv)1種以上の還元剤を使用する工程;
を含み、それによって基材の表面に共有結合したPMEA被覆剤を作製する。
【0043】
他の実施形態において、前記SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRP法は、1つ以上の下記工程:
i)基材の1つ以上の表面に共有結合した開始基を使用する工程;
ii)前記開始基を含む1つ以上の表面を有する1つ以上の基材を含む第一反応器に、1種以上の触媒、1つ以上のリガンド、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iii)第二反応器に、2−メトキシエチルアクリレートおよび任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iv)任意に、脱気および/またはフラッシング(flushing)および/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍(freeze−pump−thaw)サイクルによって、前記第一反応器および/または前記第二反応器から酸素を除去する工程;
v)前記第二反応器の含有物を、前記第一反応器に移す工程;
vi)反応を生じさせる工程;および任意に、
vii)1種以上の還元剤を使用する工程;
を含み、それによって基材の表面に共有結合したPMEA被覆剤を作製する。
【0044】
他の実施形態において、前記SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRP法は、1つ以上の下記工程:
i)基材の1つ以上の表面に共有結合した開始基を使用する工程;
ii)前記開始基を含む1つ以上の表面を有する1つ以上の基材を含む第一反応器に、1種以上の触媒、2−メトキシエチルアクリレート、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iii)第二反応器に、1つ以上のリガンドおよび任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iv)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、前記第一反応器および/または前記第二反応器から酸素を除去する工程;
v)前記第二反応器の含有物を、前記第一反応器に移す工程;
vi)反応を生じさせる工程;および任意に、
vii)1種以上の還元剤を使用する工程;
を含み、それによって基材の表面に共有結合したPMEA被覆剤を作製する。
【0045】
他の実施形態において、前記SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRP法は、1つ以上の下記工程:
i)基材の1つ以上の表面に共有結合した開始基を使用する工程;
ii)前記開始基を含む1つ以上の表面を有する1つ以上の基材を含む反応器に、1種以上の触媒、1つ以上のリガンド、2−メトキシエチルアクリレート、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iii)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、前記反応器から酸素を除去する工程;
iv)反応を生じさせる工程;および任意に、
v)1種以上の還元剤を使用する工程;
を含み、それによって基材の表面に共有結合したPMEA被覆剤を作製する。
【0046】
他の実施形態において、前記SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRP法は、1つ以上の下記工程:
i)1つ以上の基材を含む反応器に、1種以上の触媒、1つ以上のリガンド、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
ii)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、前記反応器から酸素を除去する工程;
iii)前記反応器から酸素を除去した後に、前記反応器に2−メトキシエチルアクリレートおよび任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iv)反応を生じさせる工程;および任意に、
v)1種以上の還元剤を使用する工程;
を含み、それによってPMEA被覆面を調製する。
【0047】
他の実施形態において、前記SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRP法は、1つ以上の下記工程:
i)1つ以上の基材を含む反応器に、1種以上の触媒、2−メトキシエチルアクリレート、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
ii)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、前記反応器から酸素を除去する工程;
iii)前記反応器から酸素を除去した後に、前記反応器に、1つ以上のリガンドおよび任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iv)反応を生じさせる工程;および任意に、
v)1種以上の還元剤を使用する工程;
を含み、それによってPMEA被覆面を調製する。
【0048】
他の実施形態において、前記SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRP法は、1つ以上の下記工程:
i)グローブボックスにおけるような不活性雰囲気下で、1種以上の触媒、2−メトキシエチルアクリレート、1つ以上のリガンド、および任意に1種以上の溶媒を、反応器に加える工程;
ii)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、前記反応器から酸素を除去する工程;
iii)不活性雰囲気下で、前記反応器に、1つ以上の基材を加える工程;
iv)反応を生じさせる工程;および任意に、
v)1種以上の還元剤を使用する工程;
を含み、それによってPMEA被覆面を調製する。
【0049】
1つの実施形態において、1種以上の還元剤が反応物に過剰に添加される。
【0050】
PMEA被覆剤の調製に使用される1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルは、2、3、4、5、6、7、8、または8より多いサイクルの凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルであり得る。
【0051】
SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRPによるPMEA被覆剤の生成の反応は、下記の任意の温度で行なうことができる:例えば20℃〜25℃、例えば25℃〜30℃、例えば30℃〜35℃、例えば35℃〜40℃、例えば40℃〜45℃、例えば45℃〜50℃、例えば50℃〜55℃、例えば55℃〜60℃、例えば60℃〜65℃、例えば65℃〜70℃、例えば70℃〜75℃、例えば75℃〜80℃、例えば80℃〜85℃、例えば85℃〜90℃、例えば90℃〜95℃、例えば95℃〜100℃、またはそれらの任意組合せ)。反応は、例えば、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、90℃、95℃または100℃、またはそれらの任意組合せにおいて行なうことができる。
【0052】
SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRPによるPMEA被覆剤の生成の反応は、下記の任意の時間にわたって行なうことができる:例えば1時間〜2時間、例えば2時間〜3時間、例えば3時間〜4時間、例えば4時間〜5時間、5時間〜6時間、例えば6時間〜7時間、例えば7時間〜8時間、例えば8時間〜9時間、例えば9時間〜10時間、例えば10時間〜11時間、例えば11時間〜12時間、例えば12時間〜13時間、例えば13時間〜14時間、例えば14時間〜15時間、例えば15時間〜16時間、例えば16時間〜17時間、例えば17時間〜18時間、例えば18時間〜19時間、例えば19時間〜20時間、例えば20時間〜21時間、例えば21時間〜22時間、例えば22時間〜23時間、または例えば23時間〜24時間、またはそれらの任意組合せ。または、反応を下記の時間にわたって行なうこともできる:24時間未満、例えば23時間未満、例えば22時間未満、例えば21時間未満、例えば20時間未満、例えば19時間未満、例えば18時間未満、例えば17時間未満、例えば16時間未満、例えば15時間未満、例えば14時間未満、例えば13時間未満、例えば12時間未満、例えば11時間未満、例えば10時間未満、例えば9時間未満、例えば8時間未満、例えば7時間未満、例えば6時間未満、例えば5時間未満、例えば4時間未満、例えば3時間未満、例えば2時間未満、例えば1時間未満、例えば50分未満、例えば40分未満、例えば30分未満、例えば20分未満、例えば10分未満、例えば5分未満、例えば1分未満。
【0053】
SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRPによるPMEA被覆剤の生成の反応時間は、ポリマー鎖の長さおよび分子量を決定する。
【0054】
1つの実施形態において、SI ATRP法、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRPによって得られるPMEA被覆剤は、下記のMEA単位から成るPMEAの鎖を含む:少なくとも5MEA単位、例えば少なくとも10MEA単位、例えば少なくとも15MEA単位、例えば少なくとも20MEA単位、例えば少なくとも25MEA単位、例えば少なくとも30MEA単位、例えば少なくとも35MEA単位、例えば少なくとも40MEA単位、例えば少なくとも45MEA単位、例えば少なくとも50MEA単位、例えば少なくとも55MEA単位、例えば少なくとも60MEA単位、例えば少なくとも65MEA単位、例えば少なくとも70MEA単位、例えば少なくとも75MEA単位、例えば少なくとも80MEA単位、例えば少なくとも85MEA単位、例えば少なくとも90MEA単位、例えば少なくとも95MEA単位、例えば少なくとも100MEA単位、例えば少なくとも200MEA単位、例えば少なくとも300MEA単位、例えば少なくとも400MEA単位、例えば少なくとも500MEA単位、例えば少なくとも600MEA単位、例えば少なくとも700MEA単位、例えば少なくとも800MEA単位、例えば少なくとも900MEA単位、例えば少なくとも1000MEA単位。
【0055】
他の実施形態において、SI ATRP法、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRPによって得られるPMEA被覆剤が、PMEAの鎖を含み、ここで、少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%のMEA鎖が、下記のMEA単位から成る:少なくとも5MEA単位、例えば少なくとも10MEA単位、例えば少なくとも15MEA単位、例えば少なくとも20MEA単位、例えば少なくとも25MEA単位、例えば少なくとも30MEA単位、例えば少なくとも35MEA単位、例えば少なくとも40MEA単位、例えば少なくとも45MEA単位、例えば少なくとも50MEA単位、例えば少なくとも55MEA単位、例えば少なくとも60MEA単位、例えば少なくとも65MEA単位、例えば少なくとも70MEA単位、例えば少なくとも75MEA単位、例えば少なくとも80MEA単位、例えば少なくとも85MEA単位、例えば少なくとも90MEA単位、例えば少なくとも95MEA単位、例えば少なくとも100MEA単位、例えば少なくとも200MEA単位、例えば少なくとも300MEA単位、例えば少なくとも400MEA単位、例えば少なくとも500MEA単位、例えば少なくとも600MEA単位、例えば少なくとも700MEA単位、例えば少なくとも800MEA単位、例えば少なくとも900MEA単位、例えば少なくとも1000MEA単位。
【0056】
PMEA被覆剤を、種々の基材の表面から重合させることができ、これは、PMEA被覆剤が該基材の表面に共有結合することを意味する[15]。
【0057】
1種以上の触媒は、CuBrおよびCuClから成る群から選択することができる。1つの好ましい実施形態において、触媒中の金属イオンは銅である。他の実施形態において、金属イオンは、下記から成る群から選択することができる:ルテニウム、鉄、ニッケル、パラジウム、コバルト、ロジウム、レニウム、オスミウム、チタン、リチウム、モリブデンおよびクロム。従って、ルテニウム、鉄、ニッケル、パラジウム、コバルト、ロジウム、レニウム、オスミウム、チタン、リチウム、モリブデン、クロムおよび銅は、種々の錯体において触媒として作用し得る。さらに、種々のリガンドと組み合わせた他の触媒を使用することもできる。
【0058】
1つ以上のリガンドは、下記から成る群から選択することができる:2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、5,5’−イソプロピル−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジヘプチル−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジトリデシル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジ(5−ノニル)−2,2’−ビピリジン(dNbpy)、1,10−フェナントロリン(1,10−Phen)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、2,2’:6’,2”−テルピリジン(tpy)、4,4’,4”−トリス(5−ノニル)−2,2’:6’,2”−テルピリジン(tNtpy)、N,N−ビス(2−ピリジルメチル)アミン(BPMA)、N,N−ビス(2−ピリジルメチル)オクチルアミン(BPMOA)、N,N−ビス(2−ピリジルメチル)プロピルアミン(BPMPrA)、N,N−ビス(2−ピリジルメチル)オクタデシルアミン(BPMODA)、トリス[2−アミノエチル]アミン(TREN)、トリス(2−(ジメチルアミノ)エチル)アミン(MeTREN)、トリス(2−(ジエチルアミノ)エチル)アミン(EtTREN)、トリス(2−アミノエチル)−アミン−トリス[ジ(2−ブトキシカルボニルエチル)アミノエチル]アミン(BuATREN)、トリス(2−ジ(メチルアクリレート)アミノエチル)アミン(MATREN)、トリス(2−ジ(ブチルアクリレート)アミノエチル)アミン(BATREN)、トリス[(2−ピリジル)メチル]アミン(TPMA)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン(CYCLAM)、1,4,8,11−テトラアザ−1,4,8,11−テトラメチルシクロテトラデカン(MeCYCLAM)、4,11−ジメチル−1,4,8,11−テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(ジメチル架橋シクラム(DMCBCy)と称される)、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン(TPEN)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(HMTETA)、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、1,1,4,7,7−ペンタ(メチルアクリレート)ジエチレントリアミン(MADETA)、グリオキサルジイミン型(GIIm−R)リガンド、Haddletonリガンド(US6310149):N−(n−ペンチル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Pen−1)、N−エチル−2−ピリジルメタンイミン(Et−1)、N−(n−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Pr−1)、N−(シクロプロピル)−2−ピリジルメタンイミン(シクロ−Pr−1)、N−(イソ−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン(iso−Pr−1)、N−(n−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Pr−3)、N−(n−ヘキシル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Hex−1)、N−(n−ヘプチル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Hep−1)、N−(n−オクチル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Oct−1)、N−(n−ノニル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Non−1)、N−(n−オクタデシル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Octadec−1)、n−プロピルジアザブタジエン(n−Pr−2)、イソプロピルジアザブタジエン(iso−Pr−2)、シクロプロピルジアザブタジエン(cyclo−Pr−2)、1,4−ジヘキシル−2,3−ジフェニルメチル−1,4−ジアザ−1,3−ブタジエン、およびN−(n−ヘキシル)−2−ピリジルフェニルメタンイミン。
【0059】
1種以上の溶媒は、水、エタノール、メタノール、エタノール/水、メタノール/水、トルエン、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールまたはアニソールから成る群から選択することができる。エタノール/水、またはメタノール/水は、1つの実施形態において、下記の比率(容積比)で混合することができる:1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、3:1、4:1、5:1、(0.1〜1):1、1:(0.1〜1)、または任意の他の比率。
【0060】
溶媒:MEAの比率は、下記の任意の比率(容積比)であり得る:例えば(0.1〜3):1、例えば(0.1〜0.2):1、例えば(0.2〜0.3):1、例えば(0.3〜0.4):1、例えば(0.4〜0.5):1、例えば(0.5〜0.6):1、例えば(0.6〜0.7):1、例えば(0.7〜0.8):1、例えば(0.8〜0.9):1、例えば(0.9〜1.0):1、例えば(1.0〜1.1):1、例えば(1.1〜1.2):1、例えば(1.2〜1.3):1、例えば(1.3〜1.4):1、例えば(1.4〜1.5):1、例えば(1.5〜1.6):1、例えば(1.6〜1.7):1、例えば(1.7〜1.8):1、例えば(1.8〜1.9):1、例えば(1.9〜2.0):1、例えば(2.0〜2.1):1、例えば(2.1〜2.2):1、例えば(2.2〜2.3):1、例えば(2.3〜2.4):1、例えば(2.4〜2.5):1、例えば(2.5〜2.6):1、例えば(2.6〜2.7):1、例えば(2.7〜2.8):1、例えば(2.8〜2.9):1、またはそれらの任意組合せ。
【0061】
MEA:溶媒の比率は、下記の任意の比率(容積比)であり得る:例えば(0.1〜3):1、例えば(0.1〜0.2):1、例えば(0.2〜0.3):1、例えば(0.3〜0.4):1、例えば(0.4〜0.5):1、例えば(0.5〜0.6):1、例えば(0.6〜0.7):1、例えば(0.7〜0.8):1、例えば(0.8〜0.9):1、例えば(0.9〜1.0):1、例えば(1.0〜1.1):1、例えば(1.1〜1.2):1、例えば(1.2〜1.3):1、例えば(1.3〜1.4):1、例えば(1.4〜1.5):1、例えば(1.5〜1.6):1、例えば(1.6〜1.7):1、例えば(1.7〜1.8):1、例えば(1.8〜1.9):1、例えば(1.9〜2.0):1、例えば(2.0〜2.1):1、例えば(2.1〜2.2):1、例えば(2.2〜2.3):1、例えば(2.3〜2.4):1、例えば(2.4〜2.5):1、例えば(2.5〜2.6):1、例えば(2.6〜2.7):1、例えば(2.7〜2.8):1、例えば(2.8〜2.9):1、またはそれらの任意組合せ。
【0062】
他の実施形態において、溶媒:MEAの比率は、1:1(容積比)である。
【0063】
MEA:触媒:リガンドの比率は、下記の任意の比率(モル比)であり得る:例えば(30〜1000):1:(1〜3)、例えば(30〜50):1:(1〜3)、例えば(50〜100):1:(1〜3)、例えば(100〜150):1:(1〜3)、例えば(150〜200):1:(1〜3)、例えば(200〜250):1:(1〜3)、例えば(250〜300):1:(1〜3)、例えば(300〜350):1:(1〜3)、例えば(350〜400):1:(1〜3)、例えば(400〜450):1:(1〜3)、例えば(450〜500):1:(1〜3)、例えば(500〜550):1:(1〜3)、例えば(550〜600):1:(1〜3)、例えば(600〜650):1:(1〜3)、例えば(650〜700):1:(1〜3)、例えば(700〜750):1:(1〜3)、例えば(750〜800):1:(1〜3)、例えば(800〜850):1:(1〜3)、例えば(850〜900):1:(1〜3)、例えば(900〜950):1:(1〜3)、例えば(950〜1000):1:(1〜3)、例えば(30〜50):1:(1〜2)、例えば(50〜100):1:(1〜2)、例えば(100〜150):1:(1〜2)、例えば(150〜200):1:(1〜2)、例えば(200〜250):1:(1〜2)、例えば(250〜300):1:(1〜2)、例えば(300〜350):1:(1〜2)、例えば(350〜400):1:(1〜2)、例えば(400〜450):1:(1〜2)、例えば(450〜500):1:(1〜2)、例えば(500〜550):1:(1〜2)、例えば(550〜600):1:(1〜2)、例えば(600〜650):1:(1〜2)、例えば(650〜700):1:(1〜2)、例えば(700〜750):1:(1〜2)、例えば(750〜800):1:(1〜2)、例えば(800〜850):1:(1〜2)、例えば(850〜900):1:(1〜2)、例えば(900〜950):1:(1〜2)、例えば(950〜1000):1:(1〜2)、例えば(30〜50):1:(2〜3)、例えば(50〜100):1:(2〜3)、例えば(100〜150):1:(2〜3)、例えば(150〜200):1:(2〜3)、例えば(200〜250):1:(2〜3)、例えば(250〜300):1:(2〜3)、例えば(300〜350):1:(2〜3)、例えば(350〜400):1:(2〜3)、例えば(400〜450):1:(2〜3)、例えば(450〜500):1:(2〜3)、例えば(500〜550):1:(2〜3)、例えば(550〜600):1:(2〜3)、例えば(600〜650):1:(2〜3)、例えば(650〜700):1:(2〜3)、例えば(700〜750):1:(2〜3)、例えば(750〜800):1:(2〜3)、例えば(800〜850):1:(2〜3)、例えば(850〜900):1:(2〜3)、例えば(900〜950):1:(2〜3)、例えば(950〜1000):1:(2〜3)、またはそれらの任意組合せ。
【0064】
他の実施形態において、MEA:触媒:リガンドの比率(当量;モル比)は、(1〜2000):1:(0.1〜50)である。
【0065】
基材の非限定的な例を以下に挙げる。
【0066】
ポリマー基材または有機基材: ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)(直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、および架橋ポリエチレン(PEX)を包含する)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(プロピレンテレフタレート)(PPT)、PPT/PETコポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(ビニルクロリド)(PVC)、ポリアミド/ナイロン(PA)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィンコポリマー(COC)、濾紙、綿、セルロース、ポリ(4−ビニルベンジルクロリド)(PVBC)、ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVDF)、ポリスチレン(PS)、Toyopearl(登録商標)、ヒドロゲル、ポリイミド(PI)、1,2−ポリブタジエン(PB)、液体シリコーンゴム(LSR)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、フルオロポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ペルフルオロエチレンプロピレンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリビニルフルオリド(PVF)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE))、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、液晶ポリマー(LCP)、エポキシ、ポリウレタン(PU)、熱可塑性エラストマー(TPE)、天然または合成ゴム、ポリブタジエン(PB)等。天然合成ゴムは、下記を含む:ポリイソブチレン(PIB)、ポリイソプレン、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)、Kratonポリマー:ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−スチレン)(SBS)、ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−スチレン)(SIS)、 ポリ(スチレン−b−(エチレン/ブチレン)−b−スチレン)(SEBS)、ポリ(スチレン−b−(エチレン/プロピレン)−b−スチレン)(SEPS)。
【0067】
金属または無機基材: チタン、金、ガラス、シリコン、ゲルマニウム(geranium)、石英、酸化ケイ素、シリカ、ステンレス鋼、ダイヤモンド、磁性ナノ粒子(例えば、Fe)等。
【0068】
その他: ナノ多孔性物質、膜、メソ構造セルラーフォーム(MCF:Mesostructured Cellular Foam)、および単層または多層カーボンナノチューブ(SWCNT、MWCNT)。
【0069】
原則的に、表面開始原子移動ラジカル重合(SI−ATRP)は、ATRP用の開始剤にカップリングできることを条件として、あらゆる物質上で行なうことができる。[15]ある物質は、カップリングに直接使用することができる官能基を有し、他の物質は、開始剤へのカップリング反応が生じる前に活性化する必要がある[14、15、16、17]。
【0070】
開始系
標準ATRP開始系は、本発明の背景において記載されている。逆ATRPは、1つの実施形態において、標準フリーラジカル開始剤(例えば、AIBN)およびCuII塩からのCuのインサイチュー形成を含み、これは酸化されやすい問題をより小さいものとし、商業的利用に対してより有用なものにする。移動可能ハロゲン原子は、逆ATRPにおける銅塩の一部であり、即ち、ATRP開始剤が添加されない;従って、触媒濃度は、開始剤の濃度と同等であるべきである。SR&NI ATRP法については、標準フリーラジカル開始剤、および移動可能原子または基を有する開始剤から成る二重開始系が存在する。AIBNによって形成されるラジカルが酸化的に安定なCuII塩によって不活性化され、そのようにしてCuおよびいくつかのハロゲン化鎖が生じる。このようにして、Cuがハロゲン化アルキル開始剤を再活性化し、通常ATRPを仲介することができる。ICAR ATRP法は、触媒に対して大過剰のフリーラジカル開始剤の使用によって、SR&NIと異なる。ラジカルは、反応の間にゆっくり形成され、機構的研究は、ICARおよびRAFTの動態の類似を示している。AGET ATRPは、新しい鎖を開始することができない還元剤を使用する。還元剤は、1つの実施形態において、CuII錯体と反応し、Cu ATRP活性剤を形成する。Cu、スズII2−エチルヘキサノエート、アスコルビン酸、およびトリエチルアミンが、AGET ATRP用の還元剤として報告されている。ARGET ATRPにおいて、銅に対して充分に大過剰の還元剤が利用されるので、CuIIが連続的にCuに還元される。これは、開始剤に対する触媒の濃度を、有意に低くすることを可能にする。アクリレートのARGET ATRP用に50ppmの銅、およびスチレン重合用に10ppmの銅を使用して、良好な制御が得られた。AGET ATRP用の還元剤に加えて、ヒドラジン、フェノール、糖およびアスコルビン酸の多くの有機誘導体、ならびに無機化学種、例えばSnIIおよびCuを、ARGET ATRPに使用することができる[18]。下記の表Aは、前記技術に適用できる比率および試薬の概要を示している。
【表A】

【0071】
1つの実施形態において、本発明は、開始剤に対して低い濃度の触媒が使用されるARGET ATRPに関する。
【0072】
PMEA被覆剤
本発明の被覆剤は、生体適合性被覆剤であり、例えば、タンパク質、ペプチド、体液(例えば血液)、皮膚、組織(例えば脂肪組織)のような生物学的物質に適合性である。
【0073】
従来の物理的に付着するPMEA被覆剤と比較して、本発明の共有結合PMEA被覆剤の利点は、例えば、本発明被覆剤の下記特性である:
― 細菌増殖の予防または抑制
― 細菌忌避活性
― 向上した長期間安定性
― 摩擦および摩耗の変化
前記の細菌増殖の抑制は、PMEAで被覆していない表面と比較して、50%以上、例えば60%以上、例えば70%以上、例えば80%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、または例えば99%以上の細菌増殖の抑制であり得る。
【0074】
他の利点は、物理付着PMEA被覆剤と比較して、共有結合PMEA被覆剤からのPMEAの漏出が少ないことである。これは、例えば、埋め込み可能デバイスにおける被覆剤にとって利点となりうる。1つの実施形態において、例えば、穏やかな条件下で共有結合PMEA被覆剤からの漏出がない。他の実施形態において、10%未満の漏出、例えば9%未満、例えば8%未満、例えば7%未満、例えば6%未満、例えば5%未満、例えば4%未満、例えば3%未満、例えば2%未満、例えば1%未満、例えば0.5%未満、例えば0.1%未満、例えば0.01%未満の漏出である。
【0075】
重要なことに、1つ以上の表面に共有結合しているPMEA被覆剤は、物理付着PMEA被覆剤と比較して、向上した安定性を有する。この向上は、医療デバイスの分野における用途に極めて重要である。さらに、SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRP法は、PMEA被覆剤の生成のためのATRP法と比較して、より特異的かつ効果的である。
【0076】
1つの実施形態において、SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRPによって調製されたPMEA被覆剤は、基材の水接触角を減少させる。
【0077】
PMEA被覆剤の使用
PMEA被覆剤は、生体適合性表面の領域、即ち、プロテーゼ、治療、診断、貯蔵またはその他の用途用の生組織または死組織および生物学的液体との接触に使用される物質、に使用することができる。多くの従来の生体適合性表面は、該生体適合性表面と接触する生物学的物質と適切に相互作用するかまたはそれを支持する能力に欠け、それによって所望されない生物学的反応を生じる。
【0078】
例えば、1つ以上のタンパク質、1つ以上のペプチド、1つ以上のタンパク質を含む1つ以上の液体、1つ以上のペプチドを含む1種以上の液体、1つ以上の薬剤、1種以上の体液、1つ以上の組織、および肉から成る群から選択される1つ以上の対象物との接触用の生体適合性表面を製造するために、PMEA被覆剤を使用することができる。体液は、1つの実施形態において、下記から成る群から選択することができる:血液、血清、血漿、羊水、房水、耳垢、クーパー腺液または射精前液、キームス、女性精液、間質液、リンパ液、母乳、粘液(鼻水および痰を包含する)、胸膜液、膿、唾液、皮脂(皮膚油)、精液、汗、涙、尿、膣分泌液および嘔吐物。1つの好ましい実施形態において、PMEA被覆剤を、例えば医療デバイス用の、血液接触面として使用することができる。
【0079】
従って、基材のPMEA被覆生体適合性表面を、容器、細胞培養皿、バイオリアクター、インプラント、バイオハイブリッド器官、例えばペースメーカー、バイオ人工膵臓、肝臓または腎臓等として使用しうる。
【0080】
本発明は、さらに、下記の使用に関する:生体内での細胞成長および/または細胞増殖および/または細胞分化を制御する方法における、PMEA被覆剤の使用;あるいは、生体内での生物学的物質を分離および/または単離する方法における、該物質の使用;あるいは、生体外において細胞成長および/または細胞増殖および/または細胞分化を制御する方法における、該物質の使用;あるいは、生体外において生物学的物質を分離および/または単離する方法における、該物質の使用;あるいは、生体外においてバイオハイブリッド器官を製造する方法における、該物質の使用;および、埋め込み可能器官またはその一部の製造における、該物質の使用。
【0081】
本発明のPMEA被覆剤は、薬学的活性成分または薬学的配合物もしくは薬学的組成物用の担体としても使用しうる。
【0082】
本発明は、さらに、下記の方法に関する:
― ヒトまたは動物の体において行なわれる治療の方法であって、該方法は、該体を本発明のPMEA被覆剤と接触させる工程を含む;
― ヒトまたは動物の体において行なわれる手術の方法であって、該方法は、該体を本発明のPMEA被覆剤と接触させる工程を含む;
― ヒトまたは動物の体において行なわれる診断の方法であって、該方法は、該体を本発明のPMEA被覆剤と接触させる工程、および該PMEA被覆剤によって直接的または間接的に発生するシグナルを検出する工程を含む。
【0083】
容器
1つの実施形態において、本発明のPMEA被覆剤は、容器の被覆に使用することができる。該容器は、例えば、下記から成る群から選択される1つ以上の対象物の貯蔵に使用することができる:1つ以上のタンパク質、1つ以上のペプチド、1つ以上のタンパク質を含む1種以上の液体、1つ以上のペプチドを含む1種以上の液体、1つ以上の酵素、1つ以上の薬剤、1種以上の体液、1つ以上の組織、肉、細胞(細菌および哺乳動物細胞、例えばヒト細胞を包含する)。
【0084】
共有結合PMEA被覆剤で被覆された容器は、1つの実施形態において、1種以上の体液の貯蔵に使用することができる。体液は、1つの実施形態において、下記から成る群から選択することができる:血液、血清、血漿、羊水、房水、耳垢、クーパー腺液または射精前液、キームス、女性精液、間質液、リンパ液、母乳、粘液(鼻水および痰を包含する)、胸膜液、膿、唾液、皮脂(皮膚油)、精液、汗、涙、尿、膣分泌液および嘔吐物。
【0085】
1つの実施形態において、本発明のPMEA被覆剤で被覆された容器は、該容器中での細菌増殖を予防または制限するための貯蔵に使用することができる。従って、被覆剤は、非特異的汚損を阻止および/または予防するために使用することができる。
【0086】
本発明によって開示されるPMEA被覆剤は、容器、例えば、下記のような貯蔵に好適な空洞を有する任意の容器(蓋付きまたは蓋無し)を被覆するために使用することができる:ボトル、フラスコ、バッグ、血液バッグ、ポット、タブ、皿、トレー、ボウル、深皿、ピルボトル、薬瓶、アンプル、フラゴン、シリンジ、針、チューブ、細胞培養皿またはフラスコ、組織培養皿またはフラスコ、バイオリアクター、ピペットチップ、またはパスツールピペットの被覆に使用することができる。必要に応じて、蓋も被覆することができる。
【0087】
1つの実施形態において、本発明は、例えば、診断の際に実験室において試料採取するのに使用することができる下記のような容器を被覆するための、PMEA被覆剤の使用に関する:試験管、PCR管、エッペンドルフ管、血液試料グラス、または円錐形試験管、組織培養皿またはフラスコ、細胞培養皿またはフラスコ、顕微鏡検査用スライド、チャンバースライド、バイオプシー針。
【0088】
埋め込み可能デバイスを包含する医療デバイス
本発明によって開示されるPMEA被覆剤は、医療デバイス、例えば埋め込み可能デバイス、例えば股関節置換物またはステントを被覆するために使用することができる。医療デバイスは、下記から成る群から選択することができる:血液フィルター、血液貯蔵バッグ、血液回路、留置針、カテーテル、ポンプ、輸液セット、ガイドワイヤー、ステント、酸素供給器、ダイアライザー、および組織用接着剤。
【0089】
医療デバイスは、さらに、採血に使用される装置、例えば、プラスチックハブ、皮下注入針および真空管から成る採血器具でもあり得る。1つの実施形態において、採血器具は、真空管系、例えばBD Vacutainer系である。または、採血器具は、翼状針を有するシリンジ(これは、短い針に結合したプラスチックカテーテルである)を含む。他の実施形態において、採血器具は、1つ以上の真空管を含む。
【0090】
医療デバイスは、さらに、下記から成る群から選択することができる:採血管、真空採血管、真空管、陰圧採血管、毛細管血採取管、輸血器具、血液試料器具、輸血セット、輸液セット、採血針、血清管、血漿管、血液管、二方向血液針、心肺バイパス回路、および酸素供給器。
【0091】
医療デバイスは、さらに、薬剤送達デバイスでもあり得る。薬剤送達デバイスは、特定の投与経路によって薬剤または治療薬を送達するための専用用具である。そのようなデバイスは、1つ以上の医療処置の一部として使用される。
【0092】
薬剤送達デバイスは、下記を包含するが、それらに限定されない:
― 自動注入装置、例えば、特定の(例えば、救命)薬剤の単一用量を送達するように設計された医療デバイスであるデュアルチャンバー自動注入装置。ほとんどの自動注入装置は、バネ付きシリンジである。
― 薬剤溶出性ステント(DES)であって、これは、狭窄疾患冠状動脈に配置される冠状動脈ステント(足場)であり、例えば細胞増殖をブロックするために、薬剤をゆっくり放出する。
― 乾燥粉末吸入器(DPI)であって、これは、薬剤を乾燥粉末の形態で肺に送達するデバイスである。DPIは、呼吸器疾患、例えば、喘息、気管支炎、肺気腫、COPDおよび真性糖尿病を治療するために使用することができる。
― 吸入器、計量吸入器またはRespimat。
― 針ベースの注入器、例えば、コンピューター制御電池式医療用薬剤送達デバイス(例えば、組換えヒト成長ホルモンであるソマトロピンの送達用)。
― 針なし注入器薬剤送達デバイスであって、これは、他の針なし注入器のように皮膚を通る液体噴射(liquid jet)を加速する代わりに、固体用量を使用する。その用量自体が、送達ビヒクルである。
― 例えばインスリンの、正確な用量を送達するための、短い針を使用するペン型注入器。
― 輸液ポンプは、液体、薬剤または栄養を、患者の循環系に注入する。それは、一般に、静脈内的に使用されるが、皮下、動脈および硬膜外輸液が場合により使用される。
― イントラジェクトは、針なし注入器医療デバイス(薬剤送達デバイス)であり、これは、用量を送達するために、皮膚を通る液体噴射を加速させる。それは、針なし、プレフィル、一回使用、廃棄処分の、皮下薬剤注入システムである。
― 噴射式注入器は、表皮を貫通する皮下注入針の代わりに、注入液の高圧細噴射(narrow jet)を使用するタイプの医療用注入器であり、その目的は、針注入に伴う痛みを軽減することである。
【0093】
埋め込み可能デバイスは、下記のような障害を治療または予防するために、患者に埋め込むことができる:アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離または穿孔、動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、静脈および人工グラフトのための吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞、またはそれらの組合せ。
【0094】
そのような埋め込み可能デバイスの例は、下記を包含する:自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、ステント−グラフト、グラフト(例えば、大動脈グラフト)、人工心臓弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカー電極、および心内膜リード(FINELINEおよびENDOTAK;Guidant Corporation(Santa Clara,CA)から入手可能)。デバイスの基本構造は、実質的にどのようなデザインであってもよい。デバイスは、下記のような金属材料または合金から作製することができるが、それらに限定されない:コバルトクロム合金(ELGILOY)、ステンレス鋼(316L)、高窒素ステンレス鋼、例えばBIODUR 108、コバルトクロム合金L−605、「MP35N」、「MP20N」、ELASTINITE(ニチノール)、タンタル、ニッケル−チタン合金、白金−イリジウム合金、金、マグネシウム、またはそれらの組合せ。「MP35N」および「MP20N」は、Standard Press Steel Co.(Jenkintown,PA)から入手可能な、コバルト、ニッケル、クロムおよびモリブデンの合金の商標名である。「MP35N」は、35%コバルト、35%ニッケル、20%クロムおよび10%モリブデンから成る。「MP20N」は、50%コバルト、20%ニッケル、20%クロムおよび10%モリブデンから成る。生体吸収性または生体安定性ポリマーから作製したデバイスを、本発明の実施形態と共に使用することもできる。デバイス自体、例えばステントを、記載されている本発明のPMEA被覆剤から作製することもできる。
【0095】
埋め込み可能デバイスの他の例は、下記を包含する:ペースメーカー、股関節代替物、ステント、脳インプラント、乳房インプラント、臀部インプラント、蝸牛インプラント、歯科インプラント、眼外インプラント、ハリントンインプラント、マイクロチップインプラント、網膜インプラント、皮下インプラントおよび経皮的インプラント。
【0096】
医療デバイスは、1つ以上のプロテーゼでもあり得る。プロテーゼは、傷害によって失われた(外傷性)または生れつき欠けている(先天性)身体部分と置き換えるため、または欠損身体部分を補充するために、使用することができる。体内で、人工心臓弁は、一般に人工心臓および肺と共に使用され、あまり慣用されていないが、活発に技術開発中である。プロテーゼとみなすことができる他の医療デバイスおよび補助物は、下記を包含する:人工眼球、口蓋栓子、胃バンド、義歯、義肢、人工臓器、人工膝、義足、股義足、膝義足、サイム義足。
【0097】
本発明のPMEA被覆剤は、神経運動プロテーゼまたは神経認知プロテーゼ、例えば、脳卒中、外傷性脳損傷、脳性麻痺、自閉症およびアルツハイマー病のような症状および/または疾患の治療用の、埋め込み可能神経認知脳−コンピューターインターフェースの被覆に使用することもできる。
【0098】
PMEA被覆剤は、バイオセンサーの被覆に使用することもできる。バイオセンサーは、使用者の神経系または筋肉系からの信号を検出する。バイオセンサーの例は、皮膚おける電気活動を検出するワイヤー、筋肉に埋め込まれる針電極、または固体電極配列(それらによって神経が生長する)を包含する。これらバイオセンサーの1つのタイプが、筋電性プロテーゼに使用される。
【0099】
1つの実施形態において、PMEA被覆剤を、医療デバイスおよび/またはインプラントに関連した感染の予防および/または阻止に使用することができる。
【0100】
管デバイス
本発明のPMEA被覆剤は、管の被覆に使用することができる。管は、任意のタイプの管、例えば、ガラスまたはプラスチック製の管であり得る。管は、下記から成る群から選択される1つ以上の対象物の輸送に使用することができる:1つ以上のタンパク質、1つ以上のペプチド、1つ以上のタンパク質を含む1種以上の液体、1つ以上のペプチドを含む1種以上の液体、1つ以上の酵素、1つ以上の薬剤、1種以上の体液、例えば、血液、血漿または血清、1つ以上の組織、肉、細胞(細菌および哺乳動物細胞、例えばヒト細胞を包含する)
管は、例えば、輸液セットまたは輸血器具の管であり得る。管は、クロマトグラフィー分離用デバイスのような実験室器具の一部でもあり得る。
【0101】
本発明のPMEA被覆剤は、カテーテルの被覆に使用することができる。
【0102】
カテーテルは、1つの実施形態において、体腔、管または血管に挿入することができる管である。従って、カテーテルは、液体の排出、注入、または外科用器具によるアクセスを可能にする。ほとんどの使用において、カテーテルは、細い可撓性の管(「ソフト」カテーテル)であるが、ある使用において、それはより大きいソリッド(「ハード」)カテーテルである。カテーテルは、一時的または永久に、体内に残すことができる(留置カテーテルと称される)。永久挿入カテーテルは、永久カテーテルと呼んでもよい。
【0103】
体の特定部位へのPMEA被覆カテーテルの配置は、例えば、下記を可能にしうる:
・尿カテーテル法、例えばフォーリーカテーテル、または尿道が損傷している場合の恥骨上カテーテル法におけるような、膀胱からの尿の排出。
・腎フィステル形成術による腎臓からの尿の排出。
・液体貯留物、例えば腹部膿瘍の排出。
・末梢静脈カテーテルを用いる静脈内液、薬剤または非経口栄養の投与。
・血管形成術、血管造影、バルーン中隔開口術、バルーン副鼻腔形成術、カテーテルアブレーション。
・動脈または静脈における血圧の直接測定。
・頭蓋内圧の直接測定。
・硬膜上腔、クモ膜下腔、または腕神経叢のような主要神経束の周囲への麻酔薬投与。
・例えば輸液セットおよび/またはインスリンポンプを使用する、インスリンまたは他の薬剤の皮下投与。
・中心静脈カテーテルは、心臓に近い静脈または心房の中に配置される大口径カテーテルに薬剤または液体を与える導管である。
・ スワン−ガンツカテーテルは、心臓内の圧力を測定するために肺動脈に配置される特殊タイプのカテーテルである。
・アンビリカルラインは、未熟児の中心循環への迅速アクセスをもたらす新生児集中治療室(NICU)で使用されるカテーテルである。
・Touhy borstアダプターは、カテーテルを種々の他のデバイスに取り付けるために使用される医療デバイスである。
・クイントンカテーテルは、血液透析に使用される二または三腔管外部カテーテルである。
【0104】
分離媒体
本発明のPMEA被覆剤は、特定の生物学的成分、例えば、タンパク質、ペプチドおよび細胞を、生物学的液体から選択的に分離または精製するための分離媒体、例えば、膜またはフィルターの調製に使用することができる。そのような分離媒体は、固定化、分離等に適した下記のような任意の分離媒体であり得る:フィルター、膜、限外濾過膜、ナノ多孔性膜、防汚膜、シリコーンベースの膜、ナノ濾過膜、血液精製膜、逆浸透脱塩用の膜、逆浸透膜、中空糸膜、イオン交換膜、ビーズ、ファイバー、ウェブ、焼結物または篩。
【0105】
分離媒体は、生物学的液体から成分(例えば、血液および血液製剤から白血球)を、選択的に除去する濾過材であり得る。
【0106】
本発明は、例えば、ホスト免疫系からの異種および/または同種細胞の空間分離を確実にする向上した膜の使用を可能にする。
【0107】
本発明のPMEA被覆剤での膜の改質は、膜の平面のタンパク質、ペプチドまたは細胞の吸着量を減少させることができ、同時に、吸着されたタンパク質、ペプチドまたは細胞のコンホメーション/機能状態/形態を向上させることができる。
【0108】
本発明の被覆剤は、さらに、例えば、センサー、ポンプ、バイオリアクター、脱塩、透析、血液精製等において、防汚膜上に使用することもできる。
【0109】
フィルム
本発明のPMEA被覆剤は、例えば、食品および/または飼料包装、薬剤包装、血液バック等のために、1つ以上のフィルム、例えば、ポリマーフィルム、単層または多層フィルムを被覆するのに使用することもできる。
【0110】
本発明は、1つの実施形態において、下記の項目を特徴とする。
【0111】
項目:
1.2−メトキシエチルアクリレートの反復単位を含むもしくはから成るポリマー鎖を、含むかまたはから成るポリマー被覆剤であって、前記ポリマー鎖が、1つ以上の基材の1つ以上の表面に共有結合しているポリマー被覆剤。
【0112】
2.項目1に記載のポリマー被覆剤であって、前記ポリマー被覆剤が、SI ATRP、逆ATRP、SRおよびNI ATRP、ICAR ATRP、AGET ATRPおよび/もしくはARGET ATRPによって得られるかまたは得ることができるポリマー被覆剤。
【0113】
3.項目1に記載のポリマー被覆剤であって、前記ポリマー被覆鎖が、下記のMEA単位から成るPMEAの鎖を含むポリマー被覆剤:少なくとも5MEA単位、例えば少なくとも10MEA単位、例えば少なくとも15MEA単位、例えば少なくとも20MEA単位、例えば少なくとも25MEA単位、例えば少なくとも30MEA単位、例えば少なくとも35MEA単位、例えば少なくとも40MEA単位、例えば少なくとも45MEA単位、例えば少なくとも50MEA単位、例えば少なくとも55MEA単位、例えば少なくとも60MEA単位、例えば少なくとも65MEA単位、例えば少なくとも70MEA単位、例えば少なくとも75MEA単位、例えば少なくとも80MEA単位、例えば少なくとも85MEA単位、例えば少なくとも90MEA単位、例えば少なくとも95MEA単位、例えば少なくとも100MEA単位、例えば少なくとも200MEA単位、例えば少なくとも300MEA単位、例えば少なくとも400MEA単位、例えば少なくとも500MEA単位、例えば少なくとも600MEA単位、例えば少なくとも700MEA単位、例えば少なくとも800MEA単位、例えば少なくとも900MEA単位、例えば少なくとも1000MEA単位。
【0114】
4.項目1に記載のポリマー被覆剤であって、前記ポリマー被覆鎖がPMEAの鎖を含み、それにおいて、少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%のMEA鎖が、下記のMEA単位から成るホリマー被覆剤:少なくとも5MEA単位、例えば少なくとも10MEA単位、例えば少なくとも15MEA単位、例えば少なくとも20MEA単位、例えば少なくとも25MEA単位、例えば少なくとも30MEA単位、例えば少なくとも35MEA単位、例えば少なくとも40MEA単位、例えば少なくとも45MEA単位、例えば少なくとも50MEA単位、例えば少なくとも55MEA単位、例えば少なくとも60MEA単位、例えば少なくとも65MEA単位、例えば少なくとも70MEA単位、例えば少なくとも75MEA単位、例えば少なくとも80MEA単位、例えば少なくとも85MEA単位、例えば少なくとも90MEA単位、例えば少なくとも95MEA単位、例えば少なくとも100MEA単位、例えば少なくとも200MEA単位、例えば少なくとも300MEA単位、例えば少なくとも400MEA単位、例えば少なくとも500MEA単位、例えば少なくとも600MEA単位、例えば少なくとも700MEA単位、例えば少なくとも800MEA単位、例えば少なくとも900MEA単位、例えば少なくとも1000MEA単位。
【0115】
5.項目1〜4のいずれかに記載のポリマー被覆剤に共有結合した1つ以上の表面を含むデバイス。
【0116】
6.前記デバイスが容器である、項目5に記載のデバイス。
【0117】
7.前記デバイスが埋め込み可能デバイスである、項目5に記載のデバイス。
【0118】
8.前記デバイスが管デバイスである、項目5に記載のデバイス。
【0119】
9.前記デバイスが膜である、項目5に記載のデバイス。
【0120】
10.前記デバイスがフィルムである、項目5に記載デバイス。
【0121】
11.前記デバイスが医療デバイスである、項目5に記載のデバイス。
【0122】
12.前記デバイスを、下記から成る群から選択することができる、項目5に記載のデバイス:細胞培養皿またはフラスコ、バイオリアクター、シリンジ、針、バイオプシー針、ピペットチップ、試験管、顕微鏡検査用スライド、薬瓶またはアンプル、バッグ、ポーチ、埋め込み可能デバイス、ステント、血液フィルター、血液貯蔵バッグ、血液試料グラスまたはチューブ、血液フィルター、血液回路、輸液セット、ポンプ、カテーテル、ポンプ、酸素供給器、プロテーゼ、およびバイオセンサー。
【0123】
13.項目1〜4のいずれかに記載のポリマー被覆剤を作製する方法。
【0124】
14.前記方法が、SI ATRP、例えばARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRPを含む、項目13に記載の方法。
【0125】
15.MEAが、1つ以上の基材の1つ以上の表面から重合する、項目13に記載の方法。
【0126】
16.1つ以上の下記工程を含み、それによって項目1に記載のポリマー被覆剤を作製する、項目13に記載の方法:
i)基材の1つ以上の表面に共有結合した開始基を使用する工程;
ii)前記開始基を含む1つ以上の表面を有する1つ以上の基材を含む反応器に、1種以上の触媒、1つ以上のリガンド、2−メトキシエチルアクリレート、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iii)反応を生じさせる工程;および任意に、
iv)1種以上の還元剤を使用する工程。
【0127】
17.1つ以上の下記工程を含み、それによって基材の表面に共有結合したPMEA被覆剤を作製する、項目13に記載の方法:
i)基材の1つ以上の表面に共有結合した開始基を使用する工程;
ii)前記開始基を含む1つ以上の表面を有する1つ以上の基材を含む第一反応器に、1種以上の触媒、1つ以上のリガンド、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iii)第二反応器に、2−メトキシエチルアクリレートおよび任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iv)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、前記第一反応器および/または前記第二反応器から酸素を除去する工程;
v)前記第二反応器の含有物を、前記第一反応器に移す工程;
vi)反応を生じさせる工程;および任意に、
vii)1種以上の還元剤を使用する工程。
【0128】
18.1つ以上の下記工程を含み、それによって基材の表面に共有結合したPMEA被覆剤を作製する、項目13に記載の方法:
i)基材の1つ以上の表面に共有結合した開始基を使用する工程;
ii)前記開始基を含む1つ以上の表面を有する1つ以上の基材を含む第一反応器に、1種以上の触媒、2−メトキシエチルアクリレート、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iii)第二反応器に、1つ以上のリガンドおよび任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iv)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、前記第一反応器および/または前記第二反応器から酸素を除去する工程;
v)前記第二反応器の含有物を、前記第一反応器に移す工程;
vi)反応を生じさせる工程;および任意に、
vii)1種以上の還元剤を使用する工程。
【0129】
19.1つ以上の下記工程を含み、それによって基材の表面に共有結合したPMEA被覆剤を作製する、項目13に記載の方法:
i)基材の1つ以上の表面に共有結合した開始基を使用する工程;
ii)前記開始基を含む1つ以上の表面を有する1つ以上の基材を含む反応器に、1種以上の触媒、1つ以上のリガンド、2−メトキシエチルアクリレート、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iii)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、前記反応器から酸素を除去する工程;
iv)反応を生じさせる工程;および任意に、
v)1種以上の還元剤を使用する工程。
【0130】
20.1つ以上の下記工程を含み、それによってPMEA被覆面を調製する、項目13に記載の方法:
i)1つ以上の基材を含む反応器に、1種以上の触媒、1つ以上のリガンド、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
ii)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、前記反応器から酸素を除去する工程;
iii)前記反応器から酸素を除去した後に、前記反応器に、2−メトキシエチルアクリレートおよび任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iv)反応を生じさせる工程;および任意に、
v)1種以上の還元剤を使用する工程。
【0131】
21.1つ以上の下記工程を含み、それによってPMEA被覆面を調製する、項目13に記載の方法:
i)1つ以上の基材を含む反応器に、1種以上の触媒、2−メトキシエチルアクリレート、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
ii)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、前記反応器から酸素を除去する工程;
iii)前記反応器から酸素を除去した後に、前記反応器に、1つ以上のリガンドおよび任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iv)反応を生じさせる工程;および任意に、
v)1種以上の還元剤を使用する工程。
【0132】
22.1つ以上の下記工程を含み、それによってPMEA被覆面を調製する、項目13に記載の方法:
i)グローブボックスにおけるような不活性雰囲気下で、1種以上の触媒、2−メトキシエチルアクリレート、1つ以上のリガンド、および任意に1種以上の溶媒を、反応器に加える工程;
ii)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、前記反応器から酸素を除去する工程;
iii)不活性雰囲気下で、前記反応器に1つ以上の基材を加える工程;
iv)反応を生じさせる工程;および任意に、
v)1種以上の還元剤を使用する工程。
【0133】
23.反応を20℃〜100℃の温度で生じさせる、項目13〜22のいずれかに記載の方法。
【0134】
24.反応を下記の温度間隔で生じさせる、項目13〜23のいずれかに記載の方法:20℃〜100℃、例えば20℃〜25℃、例えば25℃〜30℃、例えば30℃〜35℃、例えば35℃〜40℃、例えば40℃〜45℃、例えば45℃〜50℃、例えば50℃〜55℃、例えば55℃〜60℃、例えば60℃〜65℃、例えば65℃〜70℃、例えば70℃〜75℃、例えば75℃〜80℃、例えば80℃〜85℃、例えば85℃〜90℃、例えば90℃〜95℃、例えば95℃〜100℃、またはそれらの任意組合せ)。反応は、例えば、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、90℃、95℃または100℃、またはそれらの任意組合せにおいて行なうことができる。
【0135】
25.反応を1時間〜24時間の下記の任意時間にわたって生じさせる、項目13〜24のいずれかに記載の方法:例えば1時間〜2時間、例えば2時間〜3時間、例えば3時間〜4時間、例えば4時間〜5時間、例えば5時間〜6時間、例えば6時間〜7時間、例えば7時間〜8時間、例えば8時間〜9時間、例えば9時間〜10時間、例えば10時間〜11時間、例えば11時間〜12時間、例えば12時間〜13時間、例えば13時間〜14時間、例えば14時間〜15時間、例えば15時間〜16時間、例えば16時間〜17時間、例えば17時間〜18時間、例えば18時間〜19時間、例えば19時間〜20時間、例えば20時間〜21時間、例えば21時間〜22時間、例えば22時間〜23時間、または例えば23時間〜24時間、またはそれらの任意組合せ。
【0136】
26.反応を下記の任意の時間にわたって生じさせる、項目13〜25のいずれかに記載の方法:例えば24時間未満、例えば23時間未満、例えば22時間未満、例えば21時間未満、例えば20時間未満、例えば19時間未満、例えば18時間未満、例えば17時間未満、例えば16時間未満、例えば15時間未満、例えば14時間未満、例えば13時間未満、例えば12時間未満、例えば11時間未満、例えば10時間未満、例えば9時間未満、例えば8時間未満、例えば7時間未満、例えば6時間未満、例えば5時間未満、例えば4時間未満、例えば3時間未満、例えば2時間未満、例えば1時間未満、例えば50分未満、例えば40分未満、例えば30分未満、例えば20分未満、例えば10分未満、例えば5分未満、例えば1分未満。
【0137】
27.1種以上の触媒がCuBrである、項目13〜26のいずれかに記載の方法。
【0138】
28.1種以上の触媒がCuClである、項目13〜27のいずれかに記載の方法。
【0139】
29.1種以上の触媒が、その中の金属イオンが銅である触媒である、項目13〜28のいずれかに記載の方法。
【0140】
30.1種以上の触媒が、その中の金属イオンがルテニウム、鉄、ニッケル、パラジウム、コバルト、ロジウム、レニウム、オスミウム、チタン、リチウム、モリブデンおよびクロムから成る群から選択される触媒である、項目13〜29のいずれかに記載の方法。
【0141】
31.1種以上の触媒がCuBrおよび/またはCuClである、項目13〜30のいずれかに記載の方法。
【0142】
32.1種以上の触媒がCuBrおよび/またはCuClであり、1種以上の還元剤が使用される、項目13〜31のいずれかに記載の方法。
【0143】
33.1種以上の還元剤が、スズII2−エチルヘキサノエート;アスコルビン酸;トリエチルアミン;ヒドラジン、フェノール、糖の多くの有機誘導体;ならびに無機化学種、例えばSnIIおよびCu;から成る群から選択される、項目32に記載の方法。
【0144】
34.1つ以上のリガンドが、下記から成る群から選択することができる、項目13〜33のいずれかに記載の方法:2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、5,5’−イソプロピル−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジヘプチル−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジトリデシル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジ(5−ノニル)−2,2’−ビピリジン(dNbpy)、1,10−フェナントロリン(1,10−Phen)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、2,2’:6’,2”−テルピリジン(tpy)、4,4’,4”−トリス(5−ノニル)−2,2’:6’,2”−テルピリジン(tNtpy)、N,N−ビス(2−ピリジルメチル)アミン(BPMA)、N,N−ビス(2−ピリジルメチル)オクチルアミン(BPMOA)、N,N−ビス(2−ピリジルメチル)プロピルアミン(BPMPrA)、N,N−ビス(2−ピリジルメチル)オクタデシルアミン(BPMODA)、トリス[2−アミノエチル]アミン(TREN)、トリス(2−(ジメチルアミノ)エチル)アミン(MeTREN)、トリス(2−(ジエチルアミノ)エチル)アミン(EtTREN)、トリス(2−アミノエチル)−アミン−トリス[ジ(2−ブトキシカルボニルエチル)アミノエチル]アミン(BuATREN)、トリス(2−ジ(メチルアクリレート)アミノエチル)アミン(MATREN)、トリス(2−ジ(ブチルアクリレート)アミノエチル)アミン(BATREN)、トリス[(2−ピリジル)メチル]アミン(TPMA)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン(CYCLAM)、1,4,8,11−テトラアザ−1,4,8,11−テトラメチルシクロテトラデカン(MeCYCLAM)、4,11−ジメチル−1,4,8,11−テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(ジメチル架橋シクラム(DMCBCy)と称される)、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン(TPEN)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(HMTETA)、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、1,1,4,7,7−ペンタ(メチルアクリレート)ジエチレントリアミン(MADETA)、グリオキサルジイミン型(GIIm−R)リガンド、Haddletonリガンド(US6310149):N−(n−ペンチル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Pen−1)、N−エチル−2−ピリジルメタンイミン(Et−1)、N−(n−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Pr−1)、N−(シクロプロピル)−2−ピリジルメタンイミン(シクロ−Pr−1)、N−(イソ−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン(Iso−Pr−1)、N−(n−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Pr−3)、N−(n−ヘキシル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Hex−1)、N−(n−ヘプチル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Hep−1)、N−(n−オクチル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Oct−1)、N−(n−ノニル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Non−1)、N−(n−オクタデシル)−2−ピリジルメタンイミン(n−Octadec−1)、n−プロピルジアザブタジエン(n−Pr−2)、イソプロピルジアザブタジエン(iso−Pr−2)、シクロプロピルジアザブタジエン(cyclo−Pr−2)、1,4−ジヘキシル−2,3−ジフェニルメチル−1,4−ジアザ−1,3−ブタジエン、およびN−(n−ヘキシル)−2−ピリジルフェニルメタンイミン、またはそれらの任意組合せ。
【0145】
35. 1種以上の溶媒が、水、エタノール、メタノール、エタノール/水、トルエン、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールから成る群から選択することができる、項目13〜34のいずれかに記載の方法。
【0146】
36.1種以上の溶媒が、以下の比率(容積比):1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、3:1、4:1、5:1、(0.1〜1):1、1:(0.1〜1)または任意の他の比率で混合されたエタノール/水またはメタノール/水である、項目13〜35のいずれかに記載の方法。
【0147】
37.溶媒:MEAの比率が、下記の任意の比率(容積比)であり得る、項目13〜36のいずれかに記載の方法:例えば(0.1〜3):1、例えば(0.1〜0.2):1、例えば(0.2〜0.3):1、例えば(0.3〜0.4):1、例えば(0.4〜0.5):1、例えば(0.5〜0.6):1、例えば(0.6〜0.7):1、例えば(0.7〜0.8):1、例えば(0.8〜0.9):1、例えば(0.9〜1.0):1、例えば(1.0〜1.1):1、例えば(1.1〜1.2):1、例えば(1.2〜1.3):1、例えば(1.3〜1.4):1、例えば(1.4〜1.5):1、例えば(1.5〜1.6):1、例えば(1.6〜1.7):1、例えば(1.7〜1.8):1、例えば(1.8〜1.9):1、例えば(1.9〜2.0):1、例えば(2.0〜2.1):1、例えば(2.1〜2.2):1、例えば(2.2〜2.3):1、例えば(2.3〜2.4):1、例えば(2.4〜2.5):1、例えば(2.5〜2.6):1、例えば(2.6〜2.7):1、例えば(2.7〜2.8):1、例えば(2.8〜2.9):1、またはそれらの任意組合せ。
【0148】
38.MEA:溶媒の比率が、下記の任意の比率(容積比)であり得る、項目13〜37のいずれかに記載の方法:例えば(0.1〜3):1、例えば(0.1〜0.2):1、例えば(0.2〜0.3):1、例えば(0.3〜0.4):1、例えば(0.4〜0.5):1、例えば(0.5〜0.6):1、例えば(0.6〜0.7):1、例えば(0.7〜0.8):1、例えば(0.8〜0.9):1、例えば(0.9〜1.0):1、例えば(1.0〜1.1):1、例えば(1.1〜1.2):1、例えば(1.2〜1.3):1、例えば(1.3〜1.4):1、例えば(1.4〜1.5):1、例えば(1.5〜1.6):1、例えば(1.6〜1.7):1、例えば(1.7〜1.8):1、例えば(1.8〜1.9):1、例えば(1.9〜2.0):1、例えば(2.0〜2.1):1、例えば(2.1〜2.2):1、例えば(2.2〜2.3):1、例えば(2.3〜2.4):1、例えば(2.4〜2.5):1、例えば(2.5〜2.6):1、例えば(2.6〜2.7):1、例えば(2.7〜2.8):1、例えば(2.8〜2.9):1、またはそれらの任意組合せ。
【0149】
39.溶媒:MEAの比率が1:1(容積比)である、項目13〜38のいずれかに記載の方法。
【0150】
40.MEA:触媒:リガンドの比率が、下記の任意の比率(モル比)であり得る、項目13〜39のいずれかに記載の方法:例えば、(30〜1000):1:(1〜3)、例えば(30〜50):1:(1〜3)、例えば(50〜100):1:(1〜3)、例えば(100〜150):1:(1〜3)、例えば(150〜200):1:(1〜3)、例えば(200〜250):1:(1〜3)、例えば(250〜300):1:(1〜3)、例えば(300〜350):1:(1〜3)、例えば(350〜400):1:(1〜3)、例えば(400〜450):1:(1〜3)、例えば(450〜500):1:(1〜3)、例えば(500〜550):1:(1〜3)、例えば(550〜600):1:(1〜3)、例えば(600〜650):1:(1〜3)、例えば(650〜700):1:(1〜3)、例えば(700〜750):1:(1〜3)、例えば(750〜800):1:(1〜3)、例えば(800〜850):1:(1〜3)、例えば(850〜900):1:(1〜3)、例えば(900〜950):1:(1〜3)、例えば(950〜1000):1:(1〜3)、例えば(30〜50):1:(1〜2)、例えば(50〜100):1:(1〜2)、例えば(100〜150):1:(1〜2)、例えば(150〜200):1:(1〜2)、例えば(200〜250):1:(1〜2)、例えば(250〜300):1:(1〜2)、例えば(300〜350):1:(1〜2)、例えば(350〜400):1:(1〜2)、例えば(400〜450):1:(1〜2)、例えば(450〜500):1:(1〜2)、例えば(500〜550):1:(1〜2)、例えば(550〜600):1:(1〜2)、例えば(600〜650):1:(1〜2)、例えば(650〜700):1:(1〜2)、例えば(700〜750):1:(1〜2)、例えば(750〜800):1:(1〜2)、例えば(800〜850):1:(1〜2)、例えば(850〜900):1:(1〜2)、例えば(900〜950):1:(1〜2)、例えば(950〜1000):1:(1〜2)、例えば(30〜50):1:(2〜3)、例えば(50〜100):1:(2〜3)、例えば(100〜150):1:(2〜3)、例えば(150〜200):1:(2〜3)、例えば(200〜250):1:(2〜3)、例えば(250〜300):1:(2〜3)、例えば(300〜350):1:(2〜3)、例えば(350〜400):1:(2〜3)、例えば(400〜450):1:(2〜3)、例えば(450〜500):1:(2〜3)、例えば(500〜550):1:(2〜3)、例えば(550〜600):1:(2〜3)、例えば(600〜650):1:(2〜3)、例えば(650〜700):1:(2〜3)、例えば(700〜750):1:(2〜3)、例えば(750〜800):1:(2〜3)、例えば(800〜850):1:(2〜3)、例えば(850〜900):1:(2〜3)、例えば(900〜950):1:(2〜3)、例えば(950〜1000):1:(2〜3)、またはそれらの任意組合せ。
【0151】
41.MEA:触媒:リガンド:還元剤の比率が、下記の任意の比率(モル比)であり得る、項目13〜40のいずれかに記載の方法:
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.00001〜0.01):(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.0001〜0.01):(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.001〜0.01):(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.001):(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.0001):(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.0001):(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.00001〜0.01):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.0001〜0.01):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.001〜0.01):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.001):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.0001):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.00001):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01):(0.00001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01):(0.0001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01):(0.001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.001)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.0001)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.0001)、
例えば1:(0.000001〜0.00001):(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.00001〜0.0001):(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.0001〜0.001):(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.001〜0.01):(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.00001):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.00001〜0.0001):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.0001〜0.001):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.01):(0.001〜0.01):(0.000001〜0.01)、
例えば1:(0.000001〜0.001):(0.000001〜0.01):(0.000001〜0.00001)、
例えば1:(0.000001〜0.001):(0.000001〜0.01):(0.00001〜0.0001)、
例えば1:(0.000001〜0.001):(0.000001〜0.01):(0.0001〜0.001)、
例えば1:(0.000001〜0.001):(0.000001〜0.01):(0.001〜0.01)、またはそれらの任意組合せ。
【0152】
42.触媒:リガンド:還元剤の比率が、下記の任意の比率(モル比)であり得る、項目13〜41のいずれかに記載の方法:例えば1:(1〜500):(1〜500)、例えば1:(25〜500):(1〜500)、例えば1:(50〜500):(1〜500)、例えば1:(75〜500):(1〜500)、例えば1:(100〜500):(1〜500)、例えば1:(150〜500):(1〜500)、例えば1:(200〜500):(1〜500)、例えば1:(250〜500):(1〜500)、例えば1:(300〜500):(1〜500)、例えば1:(350〜500):(1〜500)、例えば1:(400〜500):(1〜500)、例えば1:(1〜50):(1〜500)、例えば1:(1〜100):(1〜500)、例えば1:(1〜150):(1〜500)、例えば1:(1〜200):(1〜500)、例えば1:(1〜250):(1〜500)、例えば1:(1〜300):(1〜500)、例えば1:(1〜350):(1〜500)、例えば1:(1〜400):(1〜500)、例えば1:(1〜450):(1〜500)、例えば1:(50〜500):(1〜500)、例えば1:(1〜50):(1〜500)、例えば1:(50〜100):(1〜500)、例えば1:(100〜150):(1〜500)、例えば1:(150〜200):(1〜500)、例えば1:(200〜250):(1〜500)、例えば1:(250〜300):(1〜500)、例えば1:(300〜350):(1〜500)、例えば1:(350〜400):(1〜500)、例えば1:(400〜450):(1〜500)、例えば1:(450〜500):(1〜500)、またはそれらの任意組合せ。
【0153】
43.触媒:還元剤:リガンドの比率が、下記の任意の比率(モル比)であり得る、項目13〜42のいずれかに記載の方法:例えば1:(1〜500):(1〜500)、例えば1:(25〜500):(1〜500)、例えば1:(50〜500):(1〜500)、例えば1:(75〜500):(1〜500)、例えば1:(100〜500):(1〜500)、例えば1:(150〜500):(1〜500)、例えば1:(200〜500):(1〜500)、例えば1:(250〜500):(1〜500)、例えば1:(300〜500):(1〜500)、例えば1:(350〜500):(1〜500)、例えば1:(400〜500):(1〜500)、例えば1:(1〜50):(1〜500)、例えば1:(1〜100):(1〜500)、例えば1:(1〜150):(1〜500)、例えば1:(1〜200):(1〜500)、例えば1:(1〜250):(1〜500)、例えば1:(1〜300):(1〜500)、例えば1:(1〜350):(1〜500)、例えば1:(1〜400):(1〜500)、例えば1:(1〜450):(1〜500)、例えば1:(50〜500):(1〜500)、例えば1:(1〜50):(1〜500)、例えば1:(50〜100):(1〜500)、例えば1:(100〜150):(1〜500)、例えば1:(150〜200):(1〜500)、例えば1:(200〜250):(1〜500)、例えば1:(250〜300):(1〜500)、例えば1:(300〜350):(1〜500)、例えば1:(350〜400):(1〜500)、例えば1:(400〜450):(1〜500)、例えば1:(450〜500):(1〜500)、またはそれらの任意組合せ。
【0154】
44.MEA:触媒:リガンドの比率(当量;モル比)が、(1〜2000):1:(0.1〜50)である、項目13〜43のいずれかに記載の方法。
【0155】
45.1つ以上の基材が、ポリマー基材または有機基材である、項目13〜44のいずれかに記載の方法。
【0156】
46.1つ以上の基材が、下記から成る群から選択される、項目13〜45のいずれかに記載の方法:ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)(直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、および架橋ポリエチレン(PEX)を包含する)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(プロピレンテレフタレート)(PPT)、PPT/PETコポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(ビニルクロリド)(PVC)、ポリアミド/ナイロン(PA)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィンコポリマー(COC)、濾紙、綿、セルロース、ポリ(4−ビニルベンジルクロリド)(PVBC)、ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVDF)、ポリスチレン(PS)、Toyopearl(登録商標)、ヒドロゲル、ポリイミド(PI)、1,2−ポリブタジエン(PB)、液体シリコーンゴム(LSR)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、フルオロポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ペルフルオロエチレンプロピレンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリビニルフルオリド(PVF)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE))、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、液晶ポリマー(LCP)、エポキシ、ポリウレタン(PU)、熱可塑性エラストマー(TPE)、天然または合成ゴム、ポリイソブチレン(PIB)、ポリイソプレン、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)、Kratonポリマー:ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−スチレン)(SBS)、ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−スチレン)(SIS)、 ポリ(スチレン−b−(エチレン/ブチレン)−b−スチレン)(SEBS)、およびポリ(スチレン−b−(エチレン/プロピレン)−b−スチレン)(SEPS)。
【0157】
47.1つ以上の基材が、1つ以上の金属または無機基材である、項目13〜46のいずれかに記載の方法。
【0158】
48.1つ以上の基材が、下記から成る群から選択される、項目13〜47のいずれかに記載の方法:チタン、金、ガラス、シリコン、ゲルマニウム(geranium)、石英、酸化ケイ素、シリカ、ステンレス鋼、ダイヤモンド、および磁性ナノ粒子(例えば、Fe)。
【0159】
49.1つ以上の基材が、1つ以上のナノ多孔性物質である、項目13〜48のいずれかに記載の方法。
【0160】
50.1つ以上の基材が、1つ以上の膜である、項目13〜49のいずれかに記載の方法。
【0161】
51.1つ以上の基材が、1つ以上のメソ構造セルラーフォーム(MCF)である、項目13〜50のいずれかに記載の方法。
【0162】
52.1つ以上の基材が、1つ以上の単層または多層カーボンナノチューブ(SWCNT、MWCNT)である、項目13〜51のいずれかに記載の方法。
【0163】
53.1つ以上の基材が、開始基を結合させるために直接的に使用することができる官能基を有する1つ以上の物質である、項目13〜52のいずれかに記載の方法。
【0164】
54.1つ以上の基材が、開始剤のカップリング反応が生じうる前に活性化する必要がある1つ以上の物質である、項目13〜53のいずれかに記載の方法。
【0165】
55.2−メトキシエチルアクリレートの反復単位を含むもしくはから成るポリマー鎖を、含むかまたはから成るポリマー被覆剤であって、それにおいて、前記ポリマー鎖が1つ以上の基材の1つ以上の表面に共有結合し、前記ポリマー被覆剤が項目13〜54のいずれかに記載の方法によって得られるかまたは得ることができる、ポリマー被覆剤。
【0166】
56.1つ以上のタンパク質、1つ以上のペプチド、1つ以上の薬剤、1種以上の体液、1つ以上の生組織または死組織、皮膚、脂肪組織および肉から成る群から選択される1つ以上の対象物を接触させるための、項目1〜4および55に記載の被覆剤の使用。
【0167】
57.1種以上の体液が、下記から成る群から選択される1種以上の体液であり得る項目56に記載の使用:血液、血漿、血清、羊水、房水、耳垢、クーパー腺液または射精前液、キームス、女性精液、間質液、リンパ液、母乳、粘液(鼻水および痰を包含する)、胸膜液、膿、唾液、皮脂(皮膚油)、精液、汗、涙、尿、膣分泌液および嘔吐物。
【0168】
58.使用が、細菌増殖の制限または予防をもたらす、項目56および57に記載の使用。
【0169】
59.使用が、細菌忌避活性を生じる、項目56および57に記載の使用。
【0170】
60.項目5〜12のいずれかに記載のデバイスの使用。
【0171】
61.使用が、医療処置を必要とする個体の医療処置のためである、項目56〜60のいずれかに記載の使用。
【0172】
62. 使用が、医療手術を必要とする個体の医療手術のためである、項目56〜61のいずれかに記載の使用。
【0173】
63.使用が、診断分析を必要とする個体の診断分析のためである、項目56〜62のいずれかに記載の使用。
【0174】
図面の詳細な説明
図1:原子移動ラジカル重合(ATRP)の原理を示す図式。それは、ラジカル重合を使用することによってモノマー(M)をポリマー(P)に変換する制御された方法である。ATRPに使用される開始剤は、一般に、単純ハロゲン化アルキルである。ハロゲン原子Xは、重合の間に移動する。さらに、1つ以上のリガンドによって錯化された遷移金属(M)から成る触媒系が存在する(X−Mx+1/リガンド)。触媒は、活性形Pと不活性形P−X(休止状態と称される)との平衡を与える。この平衡は、休止状態に向かって移る。従って、ポリマー鎖は短時間だけ活性であり、それによって連鎖停止反応の抑制を可能にし、それによって重合を制御する。ATRPのような制御された重合法は、制御されたモル質量、制御されたポリマー構成、および狭い分子量分布をもたらす。活性化、不活性化、生長および停止の速度定数は、kact、kdeact、k、およびkである。
【0175】
図2:ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(PMEA)の構造。文字nは、反復単位の数を示す。
【0176】
図3:ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(PMEA)の調製。2−メトキシエチルアクリレート(MEA)の重合のための、いくつかの可能な条件が示されている。R−XはATRPの開始剤であり、それはハロゲン化アルキルから成り、Rはアルキルであり、Xはハロゲン化物(塩素または臭素)である。重合反応の触媒系は、例えばCuBrまたはCuClであり、1つ以上のリガンドは、例えば、2,2’−ビピリジン(Bipy)、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(HMTETA)、または1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)である。溶媒の例は、列記されている水(HO)、またはエタノール(EtOH)、またはエタノールと水の混合物(EtOH:HO)、またはトルエンである。重合は、20〜95℃の間の温度で行なわれる。重合時間は、1〜24時間の間である。nは、PMEAにおける反復単位の数である。
【0177】
図4:表面開始原子移動ラジカル重合(SI ATRP)法の説明。ヒドロキシル基が存在する場合、それらはATRP用の開始基をカップリングするために使用することができる。そうでなければ、カップリング反応に使用することができる官能基を形成するために、基材の表面を活性化する必要がある。開始基を固定した後に、SI ATRPが行なわれ得る。重合反応は、活性形態と不活性形態との平衡であり、不活性形態が好都合な状態である。M/リガンドまたはX−Mx+1/リガンドは、平衡のいずれかの側における触媒系である。ポリマー鎖が活性である場合、原子X(塩素または臭素)は触媒に結合する。最後の段階は、触媒系および残留モノマーを除去するために基材を濯ぐことである。
【0178】
図5:ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)上での開始基の調製の例:
A)PEEK中のいくつかのケトン基を、ジメチスルホキシド(DMSO)中120℃で3時間にわたって水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)と反応させることによって、ヒドロキシル基に還元する。nは、PEEK中の反復単位の数である。
B)テトラヒドロフラン(THF)中、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)およびトリエチルアミン(TEA)の存在下で2−ブロモイソブチリルブロミド(Br−iBuBr)を使用することによって、PEEK上のヒドロキシル基を、SI ATRP用の開始基に変換する。反応が18時間以内で行なわれる。Br−iBuBrを添加した際に、温度を0℃に維持すべきである。Br−iBuBrを添加した際に、反応混合物の温度が上昇する。反応混合物を冷却せずに放置し、温度が室温(rt.)に達する。
【0179】
図6:細菌付着に対する作用
A)対照およびPMEA被覆ガラススライドにおける3時間および24時間に基づく、黄色ブドウ球菌静電気付着の結果(左画像:対照プレート、右画像:PMEA被覆プレート、緑色の点は細菌である)。
B)対照およびPMEA被覆ガラススライドにおける、表皮ブドウ球菌細菌付着(左画像:対照プレート、右画像:PMEA被覆プレート、緑色の点は細菌である)。
C)96穴プレートへの、表皮ブドウ球菌(下画像)付着(24時間バイオフィルム形成)(左画像:対照プレート、右画像:PMEA被覆プレート)。
D)37℃で24時間培養した黄色ブドウ球菌が、黄色ブドウ球菌バイオフィルム形成の90%減少を示す(右画像は対照プレートであり、左画像はPMEA被覆プレートである)。
【0180】
図7.減衰全反射フーリエ変換赤外(ATR FT−IR)分光法を使用して、基材の改質が生じたことを確認する。緑色は、非改質ポリプロピレン(PP)を表わし、赤色は、メタノール/水 1:1中でCuBr/BiPyを使用して、PPからグラフトされたPMEAを表わし、青色は、大量にCuBr/HMTETAを使用してPPからグラフトされたPMEAを表わし、黒色は、大量にCuBr/PMDETAを使用してPPからグラフトされたPMEAを表わす。PMEA被覆剤は、例えば、基材PPが含有しないエステル基およびエーテル基を含有する。PMEAのエステル基からのカルボニル(C=O)吸収帯が、1736cm−1に存在する。一方、PMEAのエーテル基からのC−O伸長帯が、1131cm−1に存在する)。
【0181】
図8.A)ATRPによって調製したPMEAで被覆した基材における水接触角(WCA)測定。非改質液体シリコーンゴム(LSR)の前進(advancing)WCAは120°であり、PMEAで被覆した場合、それは69°に減少する。低密度ポリエチレン(LDPE)の場合、前進WCAは90°であり、PMEAで被覆した場合は50°である。ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の静止WCAは、PMEAで被覆した場合に、82°から51°に変化する。B)SI ATRPによって調製したPMEAで被覆した基材における、水接触角(WCA)測定。
B)SI ATRPによってポリプロピレン(PP)からグラフトしたPMEA、PP−g−PMEA、および非改質PPにおける、水接触角(WCA)測定。測定は、前進(adv.)接触角および後退(rec.)接触角を与える動的方法によって行なわれる。前進角は、表面における疎水性領域に感受性であり、後退(receding)角は、表面における親水性領域を特徴付ける。前進WCAおよび後退WCAの違いを使用して、表面の不均質性および粗さを特徴付けるのを助けることができる。触媒系CuBr/HMTETAを、このPMEA被覆剤の調製に使用した。MEAをPPから重合した場合に、前進WCAは106°から78°に減少し、後退WCAは90°〜41°に減少する。図面において、前進および後退は、それぞれadv.およびrec.で略記されている。
【0182】
図9.電子移動によって再生する活性剤(ARGET)SI ATRPは、より少ない量の触媒およびリガンド、ならびに還元剤の存在という点でSI ATRPと異なる。さらに、CuIIが、Cuに代わって利用される。重合反応は、休止状態(表面−X)と活性形態(表面−)との平衡である。鎖が活性である場合、もう1つのモノマーが付加される(+M)。CuIIが、還元剤によって、連続的にCuに還元される。銅触媒は、X(塩素または臭素)を含有し、リガンドによって錯化される。活性化、不活性化および生長の速度定数は、k、kおよびkである。
【0183】
参考文献
【0184】
【数1】

【実施例】
【0185】
実施例1:PMEA被覆剤の調製
反応器に、触媒、リガンドおよび基材、ならびに溶媒の半分(重合が大量で行なわれなかった場合)を入れた。モノマー、2−メトキシエチルアクリレート(MEA)、および、もしあれば残りの半分の溶媒を、(シュレンク)管に加えた。反応器および(シュレンク)管の両方を、アルゴンまたは窒素で15〜60分間、脱気(2〜3回)またはフラッシングした後、シュレンク管の内容物(MEA、またはMEAおよび溶媒)を、基材および触媒系を含む反応器に移した。次に、重合を、不活性雰囲気(例えば、窒素またはアルゴンガス)下に高温で行なった。
【0186】
溶媒は、2つの管に分けずに、1つの管に加えることもできる。リガンドが液体でない場合、脱気中の触媒系の除去を防止するために、いくらかの溶媒またはモノマーを使用して、触媒系を湿潤させるべきである。湿潤させるためにモノマーを使用する場合、触媒およびリガンドは、同じ反応器/管に入れるべきでない。
【0187】
【表1】

モノマー=MEA
M:CuX:L=モノマー:触媒:L(当量)、X=BrまたはCl
Bipy:2,2’−ビピリジン
PMDETA:1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン
HMTETA:1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン。
【0188】
触媒系の例は、触媒中の金属が銅である触媒を含む。しかし、触媒中の金属は、必ずしも銅である必要はない。種々のリガンドと組み合わせた他の触媒を使用することができる。
【0189】
実施例2:MEAのSI ATRP
ATRP用の開始基を有する3つのポリプロピレン(PP)プレート(それぞれ約1×1cm)(実施例3におけるPPの改質工程を参照)、CuBr(0.0299g)、PMDETA(43.16μL)、および撹拌子を、シュレンク管に加えた。MEA(4mL)を、もう1つのシュレンク管に加えた。各管について3回の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクル後に、MEAをもう一方の管に移した。入れたシュレンク管を油浴に浸し、50℃に加熱した。種々の重合時間を使用した(表2参照)。
【0190】
【表2】

モノマー=MEA
M:CuX:L=モノマー:触媒:リガンド(当量)、X=BrまたはCl
Bipy:2,2’−ビピリジン
PMDETA:1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン
HMTETA:1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン。
【0191】
実施例3:SI ATRP
SI ATRPの非限定的実施例を、以下に開示する。PEEKは、ジメチルスルホキシド(DMSO)中、NaBHによってヒドロキシル基に還元することができるケトンを含有する[10](図5A参照)。
【0192】
次に、テトラヒドロフラン(THF)中、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)およびトリエチルアミン(TEA)の存在下に、2−ブロモイソブチリルブロミド(Br−iBuBr)を用いて、ヒドロキシル基を修飾することによって、開始基を形成することができる(図5B参照)。
【0193】
PPは極めて不活性な物質である一方、例えば、放射線照射、プラズマ処理等によって、活性化することができる。1つの方法は、トルエンおよび4−ヒドロキシベンゾフェノン(BP−iBuBr)の溶液へPPを浸漬した後、365nmでUV照射することである。C−C結合が、PPと、星印()を付けた炭素の間に形成される[11](図5C参照)。
【0194】
次に、SI−ATRPを、例えばMEAを用いて、前記条件を使用して行なうことができる(図5D参照)。他の非限定的実施例については、[12−13]を参照。
【0195】
実施例4:細菌付着に対する作用
黄色ブドウ球菌(S.aureus)、表皮ブドウ球菌および緑膿菌を使用した細菌試験は、本発明において開示されるPMEA被覆剤によって、細菌付着が実質的に減少することを示している。さらに、表皮ブドウ球菌バイオフィルム形成が95%減少する(図6A−D参照)。
【0196】
図6Aは、それぞれ、対照およびPMEA被覆ガラススライド上で3時間および24時間に基づく、黄色ブドウ球菌静電気付着の結果を示している(図6A)。これは、PMEA被覆ガラススライドへの黄色ブドウ球菌のより少ない付着を明示している。
【0197】
図6Bは、それぞれ、対照およびPMEA被覆ガラススライドにおける、表皮ブドウ球菌付着を示している(図6B)。PMEA被覆プレートは、より少ない細菌付着を有する。
【0198】
図6Cは、96穴プレートへの、表皮ブドウ球菌(下画像)付着(24時間バイオフィルム形成)を示している(図6C)。PMEA被覆剤は、表皮ブドウ球菌のより少ない付着を有する。
【0199】
37℃で24時間培養した黄色ブドウ球菌は、対照プレートと比較して、PMEA被覆プレートにおいて、黄色ブドウ球菌バイオフィルム形成の90%減少を示す(図6D)。
【0200】
実施例5:減衰全反射フーリエ変換赤外(ATR FT−IR)分光法
本発明のPMEA被覆剤の、減衰全反射フーリエ変換赤外(ATR FT−IR)分光(図7の結果を参照、緑色は、非改質PPを表わし、赤色は、メタノール/水 1:1中でCuBr/BiPyを使用してPPからグラフトされたPMEAを表わし、青色は、大量にCuBr/HMTETAを使用してPPからグラフトされたPMEAを表わし、黒色は、大量にCuBr/PMDETAを使用してPPからグラフトされたPMEAを表わす)および図8A)。
【0201】
減衰全反射(ATR)フーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルは、ユニバーサルATRサンプルアクセサリーを取り付けたPerkin ElmerからのSpectrum Oneスペクトロメーターを使用して得た。
【0202】
SI−ATRPによるPPからのPMEAのグラフトを、ATR FR−IRで確認した。1736cm−1におけるカルボニル(C=O)吸収帯は、PMEAからのエステル基の存在を示した。さらに、C−O伸長帯が、PMEAのエーテル基(1131cm−1)から見られた(図7参照)。基材および被覆剤が同じ官能基を含有していない場合に、ATR FTIR分光法を使用することができる。スペクトルにおける吸収帯は、存在する官能基に関する情報を与える。該技術は、試料の内側に向かって約2〜3μmを測定する;従って、スペクトルは、被覆剤および基材の両方からの吸収帯を含有する。
【0203】
実施例6:水接触角(WCA)測定の結果
ATRPによって調製し、種々の基材に被覆したPMEAにおける、水接触角(WCA)が、図8Aに示されている。該方法は、PMEA被覆基材の親水性を測定するのに使用できる。示されている測定値、前進角および後退角を与える動的方法、または一方の値だけを与える静的方法によって行なわれる。水で試験する場合、前進角は、表面の疎水性領域に感受性であり、後退角は、親水性領域を特徴付ける。前進CAおよび後退CAの違いを使用して、表面の不均質性および粗さを特徴付けるのを助けることができる。
【0204】
図8Bにおける測定は、温度調節器の付いたDataphysicsからのOCA20接触角システムで行なった。温度を25℃に設定した。「液滴(針刺し)」と称される動的方法を使用し、「Ellipse Fitting」を使用してWCAをコンピューターで計算した。PMEAは、SI−ATRPを使用してポリプロピレン(PP)からグラフトした。種々の触媒系を使用し、種々の水接触角をもたらした(下記の表を参照)。イタリック体のPMEA被覆PP(PP−g−PMEA)が、図8Bの画像に使用されている。
【0205】
【表3】

Bipy:2,2’−ビピリジン
PMDETA:1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン
HMTETA:1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン。
【0206】
WCAは、PMEAがPP基材の表面からグラフトされている場合に、減少する。特に、後退WCAは、改質PPの場合に、親水性の変化により、非改質PPより小さい。重合条件、例えば触媒系は、グラフト密度および鎖長に影響しうるので、PP−g−PMEAのWCAに影響を有することが表に示されている。
【0207】
実施例7:低い触媒濃度を使用するMEAのARGET SI ATPR
MEAのARGET SI ATPRを、188PPプレート(それぞれ3.5×0.6×0.1cm)から行なった。PPプレートを、PMEAのグラフト前に、ATPR用の開始基で官能化した(実施例3参照)。プレート、CuBr(21.1mg)、MeTREN(213.6mg)、L−アスコルビン酸(164.0mg)、120mLアニソール、および撹拌子を、丸底フラスコに加えた。MEA(180mL)を、別の丸底フラスコに加えた。2回の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルを各フラスコについて行ない、MEAを他方のフラスコに移した。入れた丸底フラスコの1回の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクル後に、60℃油浴への浸漬により重合を開始した。重合時間は20時間であった。改質プレートの洗浄は、各1時間の3つの工程から成った:1)ヘキサン、2)1:1 水/メタノール、および3)5:1 水/エタノール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−メトキシエチルアクリレートの反復単位を含むもしくはから成るポリマー鎖を、含むかまたはから成るポリマー被覆剤であって、該ポリマー鎖が1つ以上の基材の1つ以上の表面に共有結合しているポリマー被覆剤。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマー被覆剤に共有結合した1つ以上の表面を含むデバイス。
【請求項3】
容器、埋め込み可能デバイス、管デバイス、膜、フィルム、医療デバイス、細胞培養皿またはフラスコ、バイオリアクター、シリンジ、針、バイオプシー針、ピペットチップ、試験管、顕微鏡検査用スライド、薬瓶またはアンプル、バッグ、ポーチ、埋め込み可能デバイス、ステント、血液フィルター、血液貯蔵バッグ、血液試料グラスまたはチューブ、血液フィルター、血液回路、輸液セット、ポンプ、カテーテル、ポンプ、酸素供給器、プロテーゼおよびバイオセンサーから成る群から選択することができる、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のポリマー被覆剤を作製する方法。
【請求項5】
SI ATRP、例えば、ARGET SI ATRPまたはAGET SI ATRPを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
MEAが、1つ以上の基材の1つ以上の表面から重合する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
1つ以上の下記工程を含み、それによって請求項1に記載のポリマー被覆剤を作製する、請求項4に記載の方法:
i)基材の1つ以上の表面に共有結合した開始基を使用する工程;
ii)該開始基を含む1つ以上の表面を有する1つ以上の基材を含む反応器に、1種以上の触媒、1つ以上のリガンド、2−メトキシエチルアクリレート、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iii)反応を生じさせる工程;および任意に、
iv)1種以上の還元剤を使用する工程。
【請求項8】
1つ以上の下記工程を含み、それによって基材の表面に共有結合したPMEA被覆剤を作製する、請求項4に記載の方法:
i)基材の1つ以上の表面に共有結合した開始基を使用する工程;
ii)該開始基を含む1つ以上の表面を有する1つ以上の基材を含む第一反応器に、1種以上の触媒、1つ以上のリガンド、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iii)第二反応器に、2−メトキシエチルアクリレートおよび任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iv)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、該第一反応器および/または該第二反応器から酸素を除去する工程;
v)該第二反応器の内容物を、該第一反応器に移す工程;
vi)反応を生じさせる工程;および任意に、
vii)1種以上の還元剤を使用する工程。
【請求項9】
1つ以上の下記工程を含み、それによって基材の表面に共有結合したPMEA被覆剤を作製する、請求項4に記載の方法:
i)基材の1つ以上の表面に共有結合した開始基を使用する工程;
ii)該開始基を含む1つ以上の表面を有する1つ以上の基材を含む第一反応器に、1種以上の触媒、2−メトキシエチルアクリレート、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iii)第二反応器に、1つ以上のリガンドおよび任意に1つ以上の溶媒を加える工程;
iv)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、該第一反応器および/または該第二反応器から酸素を除去する工程;
v)該第二反応器の内容物を、該第一反応器に移す工程;
vi)反応を生じさせる工程;および任意に、
vii)1種以上の還元剤を使用する工程。
【請求項10】
1つ以上の下記工程を含み、それによって基材の表面に共有結合したPMEA被覆剤を作製する、請求項4に記載の方法:
i)基材の1つ以上の表面に共有結合した開始基を使用する工程;
ii)該開始基を含む1つ以上の表面を有する1つ以上の基材を含む反応器に、1種以上の触媒、1つ以上のリガンド、2−メトキシエチルアクリレート、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iii)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、該反応器から酸素を除去する工程;
iv)反応を生じさせる工程;および任意に、
v)1種以上の還元剤を使用する工程。
【請求項11】
1つ以上の下記工程を含み、それによってPMEA被覆面を調製する、請求項4に記載の方法:
i)1つ以上の基材を含む反応器に、1種以上の触媒、1つ以上のリガンド、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
ii)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、該反応器から酸素を除去する工程;
iii)該反応器から酸素を除去した後に、該反応器に2−メトキシエチルアクリレートおよび任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iv)反応を生じさせる工程;および任意に、
v)1種以上の還元剤を使用する工程。
【請求項12】
1つ以上の下記工程を含み、それによってPMEA被覆面を調製する、請求項4に記載の方法:
i)1つ以上の基材を含む反応器に、1種以上の触媒、2−メトキシエチルアクリレート、および任意に1種以上の溶媒を加える工程;
ii)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、該反応器から酸素を除去する工程;
iii)該反応器から酸素を除去した後に、該反応器に1つ以上のリガンドおよび任意に1種以上の溶媒を加える工程;
iv)反応を生じさせる工程;および任意に、
v)1種以上の還元剤を使用する工程。
【請求項13】
1つ以上の下記工程を含み、それによってPMEA被覆面を調製する、請求項4に記載の方法:
i)グローブボックスにおけるような不活性雰囲気下で、1種以上の触媒、2−メトキシエチルアクリレート、1つ以上のリガンド、および任意に1種以上の溶媒を、反応器に加える工程;
ii)任意に、脱気および/またはフラッシングおよび/または1回以上の凍結−ポンプ吸引−解凍サイクルによって、該反応器から酸素を除去する工程;
iii)不活性雰囲気下で該反応器に1つ以上の基材を加える工程;
iv)反応を生じさせる工程;および任意に、
v)1種以上の還元剤を使用する工程。
【請求項14】
1つ以上のタンパク質、1つ以上のペプチド、1つ以上の薬剤、1種以上の体液、1つ以上の生組織または死組織、皮膚、脂肪組織および肉から成る群から選択される1つ以上の対象物を接触させるための、請求項1に記載の被覆剤の使用。
【請求項15】
医療処置を必要とする個体の医療処置、医療手術を必要とする個体の医療手術、診断分析を必要とする個体の診断分析のための、請求項2または3に記載のデバイスの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−532966(P2012−532966A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519886(P2012−519886)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/DK2010/050187
【国際公開番号】WO2011/006507
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(504213249)テクニカル ユニバーシティ オブ デンマーク (5)
【Fターム(参考)】