被収容物の処理方法及び当該方法に用いられる蓋開閉システム
【課題】FIMSシステムに固定されて開放状態にあるFOUPを閉鎖する際に内部の酸化性ガスの分圧の低減を図る。
【解決手段】FIMS内部における開口部10の両側辺外方に拝されたパージガス供給用のノズルに加え、開口部10の上辺上方にパージガスによるガスカーテンを形成可能とするカーテンノズルを配置する。蓋4によるポッド2の閉鎖時では、ドア開閉機構を用いて蓋4をカーテンガスの流れ方向に対して所定角度傾斜させて所定時間これを維持することとし、蓋4によってガスカーテンに供せられたパージガスもポッド内のパージに用いることとする。
【解決手段】FIMS内部における開口部10の両側辺外方に拝されたパージガス供給用のノズルに加え、開口部10の上辺上方にパージガスによるガスカーテンを形成可能とするカーテンノズルを配置する。蓋4によるポッド2の閉鎖時では、ドア開閉機構を用いて蓋4をカーテンガスの流れ方向に対して所定角度傾斜させて所定時間これを維持することとし、蓋4によってガスカーテンに供せられたパージガスもポッド内のパージに用いることとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス等において、ポッドと呼ばれる搬送容器に内部保持されたウエハを半導体処理装置間にて移送する際に用いられる、所謂FIMS(Front-Opening Interface Mechanical Standard)システムに関する。より詳細には、ウエハを収容する密閉容器たる所謂FOUP(Front-Opening Unified Pod)と呼ばれるポッドが載置され、当該ポッドの蓋を開閉して該ポッドに対するウエハの移載を行うFIMSシステムにおいて、該ポッド内部の清浄化を行うパージ機構を有したFIMSシステム、即ち蓋開閉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前、半導体製造プロセスは、半導体ウエハを取り扱う部屋内部を高清浄化した所謂クリーンルーム内において行われていた。しかしウエハサイズの大型化への対処とクリーンルームの管理に要するコスト削減の観点から、近年では処理装置内部、ポッド(ウエハの収容容器)、及び当該ポッドから処理装置への基板受け渡しを行う微小空間のみを高清浄状態に保つ手法が採用されるに至っている。
【0003】
ポッドは、その内部に複数のウエハを平行且つ隔置した状態で保持可能な棚と、外面を構成する面の一つにウエハ出し入れに用いられる開口とを有する略立方体形状を有する本体と、その開口を閉鎖する蓋とから構成される。この開口が形成されている面がポッドの底面ではなく一側面(微小空間に対して正対する面)に位置するポッドは、FOUP(front-opening unified pod)と総称され、本発明はこのFOUPを用いる構成を主たる対象としている。
【0004】
上述した微小空間は、ポッド開口と向かい合う開口部と、開口部を閉鎖するドアと、半導体処理装置側に設けられた第二の開口部と、開口部からポッド内部に侵入してウエハを保持すると共に第二の開口部を通過して処理装置側にウエハを搬送する移載ロボットとを有している。微小空間を形成する構成は、同時にドア正面にポッド開口部が正対するようポッドを支持する載置台を有している。
【0005】
載置台上面には、ポッド下面に設けられた位置決め用の穴に嵌合されてポッドの載置位置を規定する位置決めピンと、ポッド下面に設けられた被クランプ部と係合してポッドを載置台に対して固定するクランプユニットとが配置されている。通常、載置台はドア方向に対して所定距離の前後移動が可能となっている。ポッド内のウエハを処理装置に移載する際には、ポッドが載置された状態でポッドの蓋がドアと接触するまでポッドを移動させ、接触後にドアによってポッド開口部からその蓋が取り除かれる。これら操作によって、ポッド内部と処理装置内部とが微小空間を介して連通することとなり、以降ウエハの移載操作が繰り返して行われる。この載置台、ドア、開口部、ドアの開閉機構、開口部が構成された微小空間の一部を構成する壁等を含めて、FIMS(front-opening interface mechanical standard)システムと総称される。
【0006】
ここで、通常、ウエハ等を収容した状態でのポッド内部は、高清浄に管理された乾燥窒素等によって満たされており、汚染物質、酸化性のガス等のポッド内部への侵入を防止している。しかし、ポッド内のウエハを各種処理装置に持ち込んで所定の処理を施す際には、ポッド内部と処理装置内部とは常に連通した状態に維持されることとなる。移載ロボットが配置される室の上部にはファン及びフィルタが配置され、当該室内部には通常パーティクル等が管理された清浄空気が導入されている。しかし、このような空気がポッド内部に侵入した場合、空気中の酸素或いは水分によってウエハ表面が酸化される恐れがあった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−145245号公報
【特許文献2】特開2003−007799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体素子の小型化・高性能化に伴って、従来はそれほど問題とならなかった、ポッド内部に侵入した酸素等による酸化が留意され始めている。これら酸化性の気体は、ウエハ表面或いはウエハ上に形成された各種層に極薄の酸化膜を形成する。このような酸化膜の存在により、微細素子が所望の特性を確保できない可能性が出てきている。対策として、酸素分圧等が制御されていない気体のポッド外部からポッド内部への侵入を抑制することが考えられる。具体的な方法として、特許文献1には、FIMSシステムにおけるポッド開口に隣接する領域に気体の供給ノズルと吸引ノズルとを設けてポッド開口部を略閉鎖する気流膜を形成する構成が示されている。当該気流膜の形成により、外部気体のポッド内部への侵入を防止している。
【0009】
半導体製造装置において、処理装置内部においては、エッチング工程等ウエハ上に形成された各種配線等を汚染する気体を用いた工程が実施される場合がある。この場合、処理装置内部からポッド内部への当該気体の侵入を抑制する方法が特許文献2に開示されている。当該方法も、ファンを用いて、FIMSシステムにおけるポッド開口正面に気流膜を形成し、処理装置からポッド内部への気体の流入を防止している。当該方法は、当然ポッド内部に対する酸素流入を抑制する上でも効果的と考えられる。
【0010】
しかしながら、これら方法を実用化した場合、実際には、ポッド開口を開放した直後から、ポッド内部での顕著な酸素分圧の増加が確認された。従って、上述の要求を満たす上で、これら方法は更なる改善を施す必要がある。このような状況に対して、本発明者は、気流膜の生成に際して用いられた気体放出用ノズルの形状等を種々改変し、ノズルから離れた位置においても気流膜中の酸素濃度を抑えることによってポッド内部への酸化性気体の侵入を抑制する構成を提案している。また、気流膜の生成と同時にポッド内部に対するパージ用気体の導入を実施し、更にポッド内部の酸化性気体の低減を図る構成も提案している。しかし、半導体の高性能化、或いは半導体製造装置の処理能力の向上等の種々の要望からFIMSシステムに固定された状態にあるポッドについて更なる酸化性気体の分圧の低減が望まれている。
本発明は、以上の背景に鑑み、ポッド解放後においても、ポッド内部における酸素等酸化性の気体の分圧を所定の低いレベルに抑制することを可能とする被収容物たるウエハの処理方法、及び当該方法に用いられる密閉容器たるポッドの蓋開閉システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る被収容物の処理方法は、被収容物を内部に収容可能であって一面に開口を有する略箱状の本体と、該本体から分離可能であって開口を塞いで本体と共に密閉空間を形成する蓋と、を備える収容容器から蓋を取り外すことによって開口を開放して被収容物の挿脱を可能とする、収容容器に対して被収容物を挿脱し、収容容器外部において被収容物に所定の処理を施す被収容物の処理方法であって、パーティクルが管理された微小空間を構成する壁に設けられた略矩形状の開口部に対して開口を正対させて配置し、開口部を略閉鎖するドアによって蓋を保持し、開口部の下方であって壁と平行な水平軸を回転中心として蓋を保持したドアを所定角度回動することで蓋を微小空間内に移動させて退避姿勢をとらせ、その後退避姿勢を維持したドアを鉛直下方に駆動して開口部を開放し、開口及び開口部を介して被収容物の挿脱を行い、退避姿勢にあるドアを鉛直上方に駆動して所定角度の回動後の停止位置に戻り、更に所定角度の逆方向の回動を行うことで蓋による開口の閉止を行い、ドアによる蓋の保持を開放する工程を有し、開口部の上辺から下辺に向かう方向に沿って流れる所定のガスによるガスカーテンが形成可能であり、ドアが回動を停止して退避姿勢を維持した状態でガスカーテンをドアが保持する蓋に突き当て、ガスカーテンを形成する所定のガスの流れを収容容器内部に向けて収容容器内のパージ操作を行う工程を更に有することを特徴としている。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る蓋開閉システムは、被収容物を内部に収容可能であって一面に開口を有する略箱状の本体と、本体から分離可能であって開口を塞いで本体と共に密閉空間を形成する蓋と、を備える収容容器から蓋を取り外すことによって開口を開放して被収容物の挿脱を可能とする、蓋の開閉システムであって、収容容器が載置される載置台と、載置台と隣接して配置され、上部に配置されたファンフィルタユニットを介してパーティクルが管理されたダウンフローが内部に形成され、被収容物を搬送する機構が収容される微小空間と、載置台に隣接して微小空間の一部を確定する壁に形成されて、載置台に載置された収容容器における開口と正対可能な配置に設けられた略矩形状の開口部と、蓋を保持可能であると共に開口部を略閉止可能であり、蓋を保持して開口部を開放することにより開口と開口部とを連通させるドアと、微小空間の内部であって開口部における両側辺の外方に配置されて、開口部及び開口を介して収容容器内部に所定のガスを供給可能なパージノズルと、微小空間の内部であって開口部の直前且つ開口部における上辺の上部に配置されて、ダウンフローの開口部直前への流入を抑制する流入防止部材と、を有し、流入防止部材は、開口の上辺から開口部の下辺に向かう、ダウンフローの流れ方向と平行な方向に沿って所定のガスを供給可能なカーテンノズルを含み、ドアは蓋を保持して開口を開放する際に開口部の下方であって壁と平行な水平軸周りに所定角度回動することで蓋を微小空間内に移動させ、流入防止部材はドアが所定角度回動した状態において形成される蓋の上辺と壁とを対向する二辺とする矩形領域を、ダウンフローの流れ方向に関して覆うと共に、カーテンノズルからの所定のガスは矩形領域に向けて供給されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポッドの開口に隣接し且つ該開口を閉鎖する位置に不活性ガス流によるガスカーテンが形成され、且つポッド内部をパージする際には当該ガスカーテンもポッド内部に対するパージガスの供給経路として利用される。従って、従来であれば本来的なパージ用のガス供給経路からのみしかパージ操作が行えなかったものが、更なる経路を介しても付加的なパージ操作が行えることとなり、パージ操作の迅速化或いはパージ効率を向上させることが可能となる。
【0014】
また、本発明によれば、ガスカーテン自体を構成する不活性ガス流内の不活性ガス濃度を高濃度に維持することを可能とする。例えばノズルから気体を噴出させた場合、当該気体はノズル開口近傍に存在する他の気体を巻き込み、混合気となって気体流を形成することが知られている。即ち、ガスカーテン形成時に当該ガスがノズル周囲に存在する気体を巻き込むことにより、ガスカーテンを構成する不活性ガスの濃度が低下し、該ガスカーテンから酸化性気体がポッド内部に供給される恐れがある。また、ガスカーテンが周囲の気体を巻き込んでしまうことによってガスカーテンを構成する不活性ガスの濃度が低下する恐れもある。本発明によれば、周囲気体を構成するダウンフローと、カーテンノズル或いはその周囲空間とをカーテンカバーによって分離し、ノズル開口部近傍に存在する気体をも高濃度の不活性ガスとしている。さらに、カーテンカバーによってガスカーテンが蓋に突き当たってポッド内に向かう際の壁−蓋間の領域にダウンフローが流入することを抑制している。従って、当該領域に至るガスカーテン内にダウンフロー等酸化性気体含む気体が流入或いは拡散することが抑制でき、ポッド内部に対する酸化性気体の侵入を効果的に抑制することが可能となる。
【0015】
また、ガスカーテンの形成によりポッド内部への周囲に存在する気体の拡散を抑制することが可能となる。ポッド内部に対する不活性ガスの供給は、該ガスカーテンに影響を与えないように、所定の方向性を付与して行われる。即ち、ガスカーテンによってポッド外部からポッド内部への気体の侵入を抑制すると同時に、ポッド内部に不活性ガスを供給することでポッド内部の不活性ガスの濃度を一定に維持することとしている。これら効果を組み合わせることにより、ポッドが開口された状態であっても、ポッド内部の酸化性気体の分圧は常に所定の低圧力に維持される。また、これら効果を組み合わせることにより、単にポッド内部に不活性ガスを供給することによって該ポッド内部への酸化性気体の侵入を防止する多大な不活性ガスを必要とする場合と比較して、極僅かな量の不活性ガスによって同等以上の酸化性気体の低分圧維持効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を参照し、本発明の実施形態に付いて説明する。図1は、本発明の第一の実施形態に係る蓋開閉装置(FIMS、以下ロードポートと称する。)の要部についての概略構成を示すものであり、前述した載置台、ドア、開口部、ドアの開閉機構の一部、開口部が構成された微小空間の一部を構成する壁、本発明において新たに加えられた流入防止部材、及び付随する構成のみを微小空間側から見た場合の概略斜視図である。また、図2Aは、ロードポート(載置台)に対してポッドを載置し、且つポッドの蓋がドアに当接した状態におけるロードポート及びポッドの断面の概略構成を示す図であり、図2Bは図2Aにおける線B−Bに沿った断面を微小空間側から見た状態を示している。なお、載置台等には種々の構成が付随しているが、これら構成は本発明と直接の関係を有さないため、ここでの詳細な図示および説明は省略する。
【0017】
ここで、ロードポートに対して載置されるポッド及び該ポッドに収容されるウエハについて先に述べる(図2A参照)。ポッド2における本体2aの内部には、被処理物たるウエハ1を内部に収めるための空間が形成されている。本体2aは、水平方向に存在するいずれか一面に開口を有する略箱状の形状を有する。また、ポッド2は、本体2aの開口2bを密閉するための蓋4を備えている。本体2aの内部に水平に保持されたウエハ1を鉛直方向に重ねる為の複数の段を有する棚(不図示)が配置されており、ここに載置されるウエハ1各々はその間隔を一定としてポッド2内部に収容される。ウエハ1は本発明における被収容物に、ポッド2は収容容器に、本体2aは基本的な形状が箱体であることから略箱上の形状を有するとして定義される本体に、また、ポッド2の開口2bは基本形状が矩形であることから略矩形状として定義される開口に対応する。
【0018】
本発明に係るロードポート51は、載置台53、ドア6、ロードポートの開口部として機能する開口部10、ドアの開閉機構60、開口部が構成された微小空間(後述する搬送室52)を構成する一部材たる壁11を含む。載置台53は、実際にポッド2が載置され、且つ載置されたポッドを開口部10方向に向けて接近或いは離間させる動作が可能な、上部に平坦面を有する可動プレート54を含む。可動プレート54の平坦面表面には位置決めピン54aが埋設されており、ポッド本体2a下面に設けられた位置決め凹部2cに当該位置決めピン54aが嵌合することにより、ポッド2と可動プレート54との位置関係が一義的に決定される。
【0019】
壁11に設けられた開口部10は、可動プレート54上で位置決めされたポッド2が該プレートによって開口部10に最も接近させられた際に、ポッド開口2bを閉鎖する蓋4が嵌まり込む大きさ、即ち蓋4の矩形外形より一回り大きな矩形状とされている。なお、可動プレート54がポッド2を停止させる位置は、ドア6がポッド2の蓋4をポッド本体2aから取り外し可能な位置であれば良い。ドア6は、ドアアーム6aを介してドア開閉機構60に支持されている。ドア開閉機構60は、ドア6を、開口部10を略閉鎖する位置、及び該開口部10を完全に開放し且つ不図示の搬送機構が該開口部10を介してポッド2内部に対するウエハ1の挿脱が可能となる退避位置の間での移動を可能とする。
【0020】
また、ドア開閉機構60は、不図示の複数のエアシリンダ等から構成されており、支点61を中心としてドアアーム6aと共にドア6を回動する。当該回転動作は、開口部10の閉鎖位置と、ドア6が鉛直下方の退避位置に駆動される際の退避姿勢をとる位置の間で為される。該退避姿勢において、ドア6の開口部10に対向する面6cは、開口部10の上辺側から下辺側に向かうに従って、当該面と開口部10が形成される平面(壁11)との距離が連続的に小さくなっている。即ち、ドア6における開口部10に対向する対向面6cは、退避姿勢において壁11を含む面に対して所定の仰角を持って配置される。なお、当該退避姿勢において、後述するポッド内パージを行う関係上、開口部10の下辺に対して対向面6cが大きく離れることは好ましくない。本発明においては、ドア6が蓋4を保持した状態において、退避姿勢における開口部10の下辺と蓋4のポッド内側に向かう面との間隔は、蓋4の厚さを考慮した上で後述するパージノズルからのパージガスがポッド内部に対して供給される際に、当該ガスの流れが蓋4に干渉されないだけの距離を保持するものとされている。
【0021】
開口部10の直前の空間の上部(第一の開口の上辺の上部)にはカーテンノズル12が配置される。当該カーテンノズル12は、開口部10における微小空間52側の直前にダウンフローによるガスカーテンを形成するために配置される。本実施形態では、カーテンノズル12は直方体形状を有し、開口部10の直前の空間に向かう下面12aには複数のノズル開口12bが形成されている。また、開口部10の微小空間52側であってその両側辺の外側には、ポッド2内部をパージするためにパージガスを供給するパージノズル21も配置される。パージノズル21は一方向に延びる管状のパージノズル本体21aを有し不図示のパージガス供給系と接続されている。該パージノズル本体21aは、ロードポート開口部10の両側辺における該開口部外側に隣接して該側辺と平行に延在するように一対として配置される。
【0022】
図3は、パージノズル本体21a、ポッド2、及びウエハ1に関して、これらを上方より見た際の概略構成を示している。パージノズル本体21aには、ポッド2におけるウエハ1の収容間隔と一致し且つ各々のウエハ1間の間と一致するようにパージノズル開口部21bが複数個その延在方向に等間隔で配置されていることが好ましい。また、パージノズル開口部21bは、ウエハ1の中心部に向かうようにも形成されている。即ち、パージノズルからのガス供給の方向は、カーテンノズルからのガスの供給方向に対して垂直に延在する平面に平行出会って、当該平面内において両パージノズルから均等な距離にある点に向かう方向であることが好ましい。
【0023】
カーテンガスの流れ方向と垂直な方向とすることで確実にポッド2内部にパージガスを供給することが可能となる。ここで、本来はパージガスがウエハ表面に向かうようパージガスを噴出すことが最も効果的であるが、ポッド2内部ではウエハ1同時の間隔が狭いこと等からウエハ面に対して平行にガス供給されることとしている。なお、パージノズル21及び前述したカーテンノズル12は、実際には不図示のガス供給系に接続されているが、本発明の構成の理解を容易なものとするために当該図面注では省略して示されている。また、このガス供給系は、ガスソース、レギュレータ等から構成される一般的なものであることからここでの説明は省略する。
【0024】
次に、実際にポッド2に対するウエハ1の挿脱を実施する場合の当該構成の動作について述べる。ポッド2が載置台53上に載置される時点で、ドア6は開口部10を略閉鎖している。なお、本実施形態において、ドア6は、開口部10を閉鎖する位置にあるときに周囲に微小空間52と外部空間とを連通させる隙間を形成する大きさとされている。従って、本実施形態ではドア6は開口部10を概略閉鎖することしかできない。ポッド2の載置後、可動プレート54が開口部10方向に移動し、蓋4をドア6に当接させる位置で停止する。ドア6は不図示の係合機構によって蓋4を保持する。ここで、ファンフィルタユニット63による微小空間52内のダウンフローの形成、及びカーテンノズル12からのガス供給による開口部10直前でのガスカーテンの形成は、ポッド2の載置が行われる前から常時行われている。
【0025】
続いて、ドア開閉機構60が支点61を中心としてドアアーム6aを回動し、ドア6に対して図4Aに示す退避姿勢をとらせ、ポッド2を微小空間52に対して部分的に開放させる。なお、図4A及び後述する図4Bは、図2Aと同様の様式に開口部10の周囲を側面から見た状態を示している。先にも述べたように当該退避姿勢において、ドア6に保持された蓋4の下端は開口部10をほぼ閉鎖した状態にあり、蓋4の上端は開口部10から所定の間隔を保持した状態にある。蓋4が開口部10から離れて上方に開いて形成された隙間は、カーテンノズル12のノズル開口12bの形成範囲以内に収められている。この時点よりパージノズル21からのパージガスの供給が開始される。ドア開閉機構60は、ドア6に対してこの退避姿勢を維持させた状態で該ドア6をその駆動範囲の最下端である退避位置まで後退させる。図4Bに、ドア6が退避位置に配置された状態を示す。当該状態において、ポッド2の開口2bは開放され、微小空間52に配置された不図示の搬送機構によるポッド2内部に対するウエハ1の移送操作が可能となる。
【0026】
図4Cに図2Bと同様の様式にて開口部10を微小空間52側から見た状態の概略構成を示す。カーテンノズル12からは、壁11に平行なダウンフローを形成するようにパージガスと同様のガスが供給される。また、一対のパージノズル21各々からは、ポッド2内部に収容されたウエハ1の中央部に各々パージガスの流れが向かうように、パージガスの供給が為される。当該状態にて、ウエハ1の搬送が行われる。当該搬送操作時の間、ポッド2の内部に対するパージ操作は継続して行われ、ポッド内部の酸化性気体の分圧を低く抑える。ポッド2内部に対して収容すべきウエハ1の搬入操作が終了した後、以下の蓋4の閉鎖操作が行われる。
【0027】
当該閉鎖操作においては、ドア開閉機構60がドア6を上昇させ、図4Aに示すドア6が回動を停止して退避姿勢をとった位置まで戻す。この状態にて、ドア開閉機構60は一旦動作を停止し、ドア6を回動前の姿勢にて維持する。その際、ドア6に保持された蓋4は、ガスカーテンに対して流れある角度を持って位置することとなり、ガスの流れ方向を下向きからポッド内部方向に変更させる。当該退避姿勢においては、先に述べたように蓋4の下端部のみが開口部10を略閉鎖した状態にあることから、蓋上端部に形成された隙間に向けて供給されたカーテンガスはその大部分がポッド2の内部に向けて送られることとなる。
【0028】
これにより、蓋によるポッドの閉鎖直前時においてポッド内部にむけて供給されるパージガスの総量を、通常のパージノズルのみによるパージガスの総量に比して格段に大きくすることが可能となる。図4Aに示す状態を所定時間維持して、ポッド2内部のパージが十分に為されて当該空間の酸化性気体の存在量を十分に低減した後、ドア開閉機構60はドア6を回動し、蓋4によってポッド開口部2aを閉鎖する。以上の操作によって、従来構成では得られない低酸化性気体濃度でのポッド2に対するウエハ1の封入が可能となる。
【0029】
なお、上述した動作においては、ウエハの挿脱動作を実施している際、全てのウエハの挿脱の開始時から終了時までドア6が退避することとしている。しかし、パージノズルから供給されるパージガスのみの場合、ポッド2の開放時間が長い場合には、微小空間52からの大気の拡散によってポッド2内部の酸化性気体の分圧が徐々に増加することも考えられる。このような場合、ウエハ1を一枚挿脱する毎に、ドア6を退避位置から上昇させて図4Aに示す状態としてパージ効率を上げた状態を保持する。或いは当該状態の後一旦ポッドを閉鎖する動作を加えることが望ましい。これにより、酸化性気体の分圧の上昇をより効果的に抑制することが可能となる。
【0030】
以上述べた実施形態において、ポッド内部の酸化性気体の分圧を効果的に抑制するという観点から、ガスカーテンの形成は常時行うこととしている。しかしながら、パージガスの使用量を抑制してコストを削減するという観点に立った場合、ガスカーテンの形成を必要最小限とすることが好ましい。ここでポッドに対するウエハの挿脱を行う上で、極論すればポッドを閉鎖する際にポッド内部の酸化性気体の分圧を低下できれば良いとも言える。以下、この場合のパージ方法について述べる。図5Aはポッド2から蓋4を取り外してウエハ1の挿脱を開始するまでの操作を示すフローチャートであり、図5Bはポッド2に対するウエハ1の挿脱が終了して蓋4をポッド2に取り付ける操作を示すフローチャートである。
【0031】
図5Aに示すように、ステップ1におけるポッド2の載置、ステップ2における後述する可動プレート54の移動による蓋4とドア6との係合、ステップ3におけるドア6によるポッド2からの蓋4の分離操作、及びステップ4におけるドア6の退避姿勢をとった後の退避位置への移動と同時に行われる不図示のマッピング機構によるポッド2内のウエハマッピングが行われる。ステップ5において、ドア6の退避位置での停止が不図示のドア下端センサによって検知される。ステップ6では、この検知結果に応じてパージノズル21からのパージガスの供給が開始される。以上一連の操作の終了によって、ポッド2の所謂ロード操作が終了したと確認され、ポッド2からのウエハ1の取り出し及び挿入操作が行われる。なお、ステップ6で開始されたパージガスの供給は、ウエハ1の挿脱操作時を通じて継続される。
【0032】
図5Bでは、ポッド2の所謂アンロード操作について示している。まず、ステップ11でウエハ1の挿脱操作が終了し、アンロード操作を開始する旨の指示が出される。本実施形態ではドア等の移動中の構成にパージガスが吹き付けられることによるパーティクル等の発塵抑制のために、ステップ12においてパージガスの供給が一旦停止される。続いて、ステップ13のドア6の上昇操作が行われ、ステップ14においてドア6が上昇端(回動後の退避姿勢をとった位置)に達したことを検知する。ステップ15では、この検知結果に応じてパージノズル21からのパージガスの供給及びカーテンノズル12からのカーテンガスの供給が同時に開始される。前述したように、カーテンガスは蓋4に突き当たってその流れ方向がポッド2の内部に向けられ、ポッド内部はパージガス及びカーテンガスの両者が供給される。
【0033】
当該状態は、ステップ16において所定時間経過したことが検知されるまで維持される。所定時間経過後、ステップ17においてこれらガスの供給が停止され、続くステップ18でドア6によるポッド2に対する蓋4の取り付け操作が行われる。蓋4がポッド本体2aに固定後、ステップ19で可動プレート54の後退が為され、ステップ20でポッド2の所謂アンロード操作の終了が確認される。以上のアンロード操作では、蓋閉止時直前に、本来パージノズルから供給されるパージガスのみによるパージしか行われなかったところに、更にカーテンノズルからのカーテンガス(パージガスと同じガス)も付加的に供給される。従って、短時間で従来構成では不可能であった多量のパージガスを供給することが可能となり、ポッド内部の酸化性気体の分圧を効果的に抑制してポッドを閉止することが可能となる。
【0034】
なお、以上の実施形態において、カーテンノズル12は直方体形状を有しその下面全域にガス噴出孔が設けられることとしているが、噴出孔の形状、配置、或いは数等は供給するガスの流量、及び後述する退避姿勢における蓋4と開口部10各々の上辺での間隔等に応じて適宜変更されることが望ましい。この場合パージノズル21も同様に、ガス噴出用の開口部21bの形状、配置等、適宜変更することが好ましい。また、ドア6は開口部10を略閉鎖することとしているが、これを完全に閉鎖する構成としても良い。
【0035】
ここで、パージガス等のガス流れが存在する場合、当該流れの周囲に存在する気体も当該流れによってある程度巻き込まれ、該ガスの純度を周辺部から徐々に低下させる。このような現象に鑑みて、上述した実施形態においては、カーテンノズル12に設けられたガスカーテン形成用のノズル開口12bの形成範囲は、ドア6が開口部10の閉鎖位置から回動いて停止した退避姿勢をとった状態で開口部10の上辺とドア6に保持された蓋4の上辺との間に形成される矩形領域より、微小空間52側において広くなるように設定されている。これにより、ガスカーテンが微小空間52内に形成されるダウンフローからの気体の巻き込みが生じた場合であっても、当該巻き込まれた気体を含むカーテンガスが開口部10と蓋4との間に流れていくことを抑制することとしている。
【0036】
また、パージノズル等から不活性ガス等のパージガスを供給しようとする場合、ノズル穴から噴出したパージガスが穴周囲に存在する気体を巻き込み、当該気体の混入によってパージガスの純度が低下することが考えられる。また、ノズル穴周辺の気体の巻き込みを抑制することを考慮した、本発明を実施する更なる構成例を以下に図面を参照して述べる。図6は、当該構成例を図2Aと同様の様式であって要部を拡大して示す側面図である。なお、同図において図2に示した構成と同様の作用効果を呈する構成に関しては同様の参照番号を付記することとしてその説明を省略する。
【0037】
本形態においては、カーテンノズル12の上面の更に上部を覆い、且つ微小空間52側の端面12cの更に微小空間側に延在するカーテンカバー23が配されている。当該カーテンカバー23は、直方体形状のカーテンノズル12を覆う断面L字形状を有し、カーテンノズル12の端面12cと対向する垂直面23aは、ドア6が退避姿勢をとった上体で当該ドア6の最上に位置する辺と鉛直方向においてほぼ同じ高さとなるまで伸ばされている。当該カーテンカバー23を配することによって、ノズル近傍に周囲の気体(ダウンフローによって供給されるパーティクルのみ管理された気体)常時供給される状態を無くしている。また、垂直面23aの下方に延在させることにより、ガスカーテンに対するダウンフローの巻き込みも抑制している。従って、カーテンノズル12から蓋4に至るカーテンガスの純度を、上記実施形態の構成と比較して更に高純度に維持することが可能となる。
【0038】
図7は、図6に示す形態の更なる変形例について、図6と同様の様式にてこれを示している。なお、図6に示した形態と同様に、個々の構成と同様の作用効果を呈する構成に関しては同様の参照番号を付記することとしてその説明を省略する。本形態においては、カーテンノズル12のポッド2の駆動方向に沿った辺の長さを短くして、ノズル開口12bの形成範囲を、ドア6が退避姿勢をとった状態で開口部10の上辺とドア6に保持された蓋4の上辺との間に形成される矩形領域より小さくしている。当該構成により、ガスカーテンの厚さが薄くなる。これにより、カーテンガスに用いるパージガスの流量をそれほど大きくせずとも、カーテンガスの流速を大きくすることが可能となり、ポッド2の奥までカーテンガスを供給することが可能となる。例えば、パージノズルから供給されるガスをポッド2の比較的開口側の領域に送ることとし、カーテンガスを奥の領域に送ることとして、少ない流量にてポッド内のパージを行うことが考えられる。
【0039】
この場合、上述したノズル開口での周囲雰囲気の巻き込み及びカーテンガス流れによる周囲気体の巻き込みを抑制する必要性は、上述した構成よりも高くなる。このため、カーテンノズル12から、開口部10の上辺(壁11の微小空間側面)とドア6に保持された蓋4の上辺との間に形成される矩形領域までの間に構成される空間を、カーテンカバー23によって効果的に覆う必要がある。本形態においては、カーテンカバー23の水平面23bの幅(壁11との連結部となる辺からその対辺までの長さ)は、カーテンノズル12の対応する幅の長さとほぼ等しくし、垂直面との連結部分には傾斜面23cを配して当該空間を小さくし、且つ垂直面23aをドア6の最上に位置する辺の微小空間側下方に延在させることとしている。カーテンカバー23を当該形状とすることにより、カーテンノズル12を小さくした場合であっても、微小空間内のダウンフローからの大気の巻き込みを抑制することが可能となる。
【0040】
上述したカーテンノズル12及びカーテンカバー23の両者は、微小空間内に形成されるダウンフローの流れ方向に関して、壁11と蓋4とを対向する二辺として形成される上述した矩形領域とファンフィルタユニットとの間に配置される。これらカーテンノズル12とカーテンカバー23とは、ダウンフローに起因しファンフィルタユニットから微小空間内に供給された大気が該矩形領域に至ることを抑制或いは防止する流入防止部材として作用する。当該目的を達成するために、カーテンノズル単体にて該流入防止部材を構成する場合にはカーテンノズルの形状を該矩形領域の形状より大きくして、該矩形領域を覆う効果を確実に持たせることを要する。この場合、上述した形態の如くノズル開口の形成領域を矩形領域以上とすると好ましい。また、カーテンノズルの形状を矩形領域の形状より小さい場合には、カーテンカバーを配して矩形領域を覆うこととすることが好ましい。また、カーテンカバーの形状としては、ファンフィルタユニットからのダウンフロー及びガスカーテン両者を整流する効果を得るために、前述した垂直面を更に配することが好ましい。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施した実際の蓋開閉システムであるFIMSシステム、及び当該システムを用いた半導体ウエハ処理装置について説明する。図8は、所謂ミニエンバイロメント方式に対応した半導体ウエハ処理装置50の概略構成を示す図である。半導体ウエハ処理装置50は、主にロードポート部(FIMSシステム、蓋開閉装置)51、搬送室(微小空間)52、および処理室59から構成されている。それぞれの接合部分は、ロードポート側の仕切り55aおよびカバー58aと、処理室側の仕切り55bおよびカバー58bとにより区画されている。半導体ウエハ処理装置50における搬送室52では塵を排出して高清浄度を保つ為、その上部に設けられたファンフィルタユニット63により搬送室52の上方から下方に向かって空気流(ダウンフロー)を発生させている。また、搬送室52の下面にはダウンフローの排出経路が設けられる。以上の構成により、塵は常に下側に向かって排出されることになる。
【0042】
ロードポート部51上には、シリコンウエハ等(以下、単にウエハと呼ぶ)の保管用容器たるポッド2が載置台53上に据え付けられる。先にも述べたように、搬送室52の内部はウエハ1を処理する為に高清浄度に保たれており、更にその内部には搬送機構において実際にウエハを保持可能なロボットアーム55が設けられている。このロボットアーム55によって、ウエハはポッド2内部と処理室59の内部との間を移送される。処理室59には、通常ウエハ表面等に薄膜形成、薄膜加工等の処理を施すための各種機構が内包されているが、これら構成は本発明と直接の関係を有さないためにここでの説明は省略する。
【0043】
ポッド2は、前述したように、被処理物たるウエハ1を内部に収めるための空間を有し、いずれか一面に開口を有する箱状の本体2aと、該開口を密閉するための蓋4とを備えている。本体2aの内部にはウエハ1を一方向に重ねる為の複数の段を有する棚が配置されており、ここに載置されるウエハ1各々はその間隔を一定としてポッド2内部に収容される。なお、ここで示した例においては、ウエハ1を重ねる方向は、鉛直方向となっている。搬送室52のロードポート部51側には、開口部10及び上述した流入防止部材が設けられている。開口部10は、ポッド2が開口部10に近接するようにロードポート部51上で配置された際に、ポッド2の開口部と対向する位置に配置されている。なお、カーテンノズル12、ドア6等の本発明に係る主たる構成は、上記実施形態において述べていること、及び図面の理解を容易なものとするという観点から、ここでの説明及び図示を省略する。
【0044】
図9Aおよび図9Bは、当該装置におけるドア6及びドア開閉機構60を拡大した側断面図および搬送室52側からこれら見た正面図をそれぞれ示している。図9Cは、ドア開閉機構60を用いてポッド2から蓋4を取り外した状態についてその側断面概略を示している。ドア6には固定部材46が取り付けられており、ドア6は、当該固定部材46を介してドアアーム6aの一端に対して回動可能に連結されている。ドアアーム6aの他端は、エアー駆動式のシリンダ57の一部であるロッド37の先端部に対して、枢軸40を介して、当該枢軸40に対して回転可能に支持されている。
【0045】
ドアアーム42の該一端と該他端との間には、貫通穴が設けられている。当該穴と、ドアアーム42等のドア開閉を行う構成を昇降させる可動部56の支持部材60に固定される固定部材39の穴とを不図示のピンが貫通することにより、支点61が構成されている。従って、シリンダ57の駆動によるロッド37の伸縮に応じて、ドアアーム42は支点61を中心に回動可能となる。ドアアーム42の支点61は、昇降が可能な可動部56に設けられる支持部材60に固定されている。
【0046】
これら構成によってウエハ1の処理を行う際には、まず搬送室開口部10に近接するように載置台53上に配置して、ドア6により蓋4を保持する。なお、ドア6の表面には不図示の係合機構が、また蓋4の表面には不図示の被係合機構が各々配置されており、蓋4及びドア6各々の表面同士が当接しあった状態においてこれら機構が作動することにより、ドア6による蓋4の保持が行われる。ここで、シリンダ57のロッドを縮めるとドアアーム42が支点61を中心にして、ドア6が開口部10から離れるように動作する。この動作によりドア6は蓋4とともに回動して蓋4をポッド2から取り外す。その状態が図9Cに示されている。その後、可動部56を下降させて蓋4を所定の待避位置まで搬送する。移行の操作に関しては上述の実施形態において述べていることからここでの説明は省略する。
【0047】
なお、本実施例においては、FOUP及びFIMSを対象として述べているが、本発明の適用例はこれらに限定されない。内部に複数の被保持物を収容するフロントオープンタイプの容器と、当該容器の蓋を開閉して該容器より被保持物の挿脱を行う系であれば、本発明に係る蓋開閉装置を適用し、容器内部の酸化性雰囲気の分圧を低圧に維持することが可能である。また、容器内部を満たすガスとして、不活性ガスではなく所望の特性を有する特定のガスと用いる場合に、本発明に係る蓋開閉システムを用いて、当該容器内部の該特定のガスの分圧を高度に維持することも可能である。
【0048】
本発明によれば、ポッド内部のパージを行う際に従来のパージノズルからのパージガスの供給のみならず、ガスカーテンを用い、パージノズルとは異なる方向からのパージガス供給が可能となる。ガスカーテンによる微小空間側からのポッド内への大気の進入の抑制とは別個にパージガスをウエハに向けて供給し、更にポッド閉止時には当該カーテンガスもパージに用いるとによってポッド内部の気体の酸化性気体の分圧の上昇を効果的に抑制することが可能となる。また、本発明は、既存のFIMSシステムに対してカーテンノズル、パージノズル、等を付加するのみで実施可能であり、規格化されたシステムに対して安価且つ簡便に取り付けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る蓋開閉システムの主要部における概略構成を示す斜視図である。
【図2A】図1に示した本発明の一実施に形態係る蓋開閉システム、即ちロードポート、ポッド、ポッド用の蓋およびオープナの一部に関し、これらのポッド開口に垂直な切断面の概略構成を示す図である。
【図2B】図1に示した開口部10を矢印2B方向からから見た状態を示す図である。
【図3】パージノズルからポッド内部に向けて供給されるパージガスの供給方向を説明する図である。
【図4A】図1に示す蓋開閉システムにおいて、蓋を開閉する動作の一段階を示す図である。
【図4B】図1に示す蓋開閉システムにおいて、蓋を開閉する動作の一段階を示す図である。
【図4C】図4Bに示す状態において、開口部10を図2Bと同様の様式にて見た状態を示す図である。
【図5A】本発明に係る蓋開閉機構に対してポッドをローディングする際の動作手順を示すフローチャートである。
【図5B】本発明に係る蓋開閉機構に対してポッドをアンローディングする際の動作手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る蓋開閉システムの更なる形態を示す図である。
【図7】本発明に係る蓋開閉システムの更なる形態を示す図である。
【図8】本発明が適用される一般的な半導体ウエハ処理装置の概略構成を示す全体側面図である。
【図9A】図8に示す装置におけるドア開閉機構及びその近傍の構成を拡大し、これを側面から見た状態の概略構成を示す図である。
【図9B】図9Aに示す構成を、搬送室側から見た場合の概略構成を示す図である。
【図9C】図9Aに示す構成であって、ドアが蓋をポッドから取り外した状態を、図9Aと同様の様式にて示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1:ウエハ、 2:ポッド、 4:蓋、 6:ドア、 10:開口部、 11:壁 12:カーテンノズル、 13:ガス導入経路、 14:ガスカーテン、 21:パージノズル、 23:カーテンカバー、 37:ロッド、 39:固定部材、 40:枢軸、 46:固定部材、 50:半導体処理装置、 51:ロードポート、 52:搬送室(微小空間)、 53:載置台、 54:可動プレート、 55:ロボットアーム、 57:シリンダ、 60:ドア開閉機構、 61:支点
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス等において、ポッドと呼ばれる搬送容器に内部保持されたウエハを半導体処理装置間にて移送する際に用いられる、所謂FIMS(Front-Opening Interface Mechanical Standard)システムに関する。より詳細には、ウエハを収容する密閉容器たる所謂FOUP(Front-Opening Unified Pod)と呼ばれるポッドが載置され、当該ポッドの蓋を開閉して該ポッドに対するウエハの移載を行うFIMSシステムにおいて、該ポッド内部の清浄化を行うパージ機構を有したFIMSシステム、即ち蓋開閉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前、半導体製造プロセスは、半導体ウエハを取り扱う部屋内部を高清浄化した所謂クリーンルーム内において行われていた。しかしウエハサイズの大型化への対処とクリーンルームの管理に要するコスト削減の観点から、近年では処理装置内部、ポッド(ウエハの収容容器)、及び当該ポッドから処理装置への基板受け渡しを行う微小空間のみを高清浄状態に保つ手法が採用されるに至っている。
【0003】
ポッドは、その内部に複数のウエハを平行且つ隔置した状態で保持可能な棚と、外面を構成する面の一つにウエハ出し入れに用いられる開口とを有する略立方体形状を有する本体と、その開口を閉鎖する蓋とから構成される。この開口が形成されている面がポッドの底面ではなく一側面(微小空間に対して正対する面)に位置するポッドは、FOUP(front-opening unified pod)と総称され、本発明はこのFOUPを用いる構成を主たる対象としている。
【0004】
上述した微小空間は、ポッド開口と向かい合う開口部と、開口部を閉鎖するドアと、半導体処理装置側に設けられた第二の開口部と、開口部からポッド内部に侵入してウエハを保持すると共に第二の開口部を通過して処理装置側にウエハを搬送する移載ロボットとを有している。微小空間を形成する構成は、同時にドア正面にポッド開口部が正対するようポッドを支持する載置台を有している。
【0005】
載置台上面には、ポッド下面に設けられた位置決め用の穴に嵌合されてポッドの載置位置を規定する位置決めピンと、ポッド下面に設けられた被クランプ部と係合してポッドを載置台に対して固定するクランプユニットとが配置されている。通常、載置台はドア方向に対して所定距離の前後移動が可能となっている。ポッド内のウエハを処理装置に移載する際には、ポッドが載置された状態でポッドの蓋がドアと接触するまでポッドを移動させ、接触後にドアによってポッド開口部からその蓋が取り除かれる。これら操作によって、ポッド内部と処理装置内部とが微小空間を介して連通することとなり、以降ウエハの移載操作が繰り返して行われる。この載置台、ドア、開口部、ドアの開閉機構、開口部が構成された微小空間の一部を構成する壁等を含めて、FIMS(front-opening interface mechanical standard)システムと総称される。
【0006】
ここで、通常、ウエハ等を収容した状態でのポッド内部は、高清浄に管理された乾燥窒素等によって満たされており、汚染物質、酸化性のガス等のポッド内部への侵入を防止している。しかし、ポッド内のウエハを各種処理装置に持ち込んで所定の処理を施す際には、ポッド内部と処理装置内部とは常に連通した状態に維持されることとなる。移載ロボットが配置される室の上部にはファン及びフィルタが配置され、当該室内部には通常パーティクル等が管理された清浄空気が導入されている。しかし、このような空気がポッド内部に侵入した場合、空気中の酸素或いは水分によってウエハ表面が酸化される恐れがあった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−145245号公報
【特許文献2】特開2003−007799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体素子の小型化・高性能化に伴って、従来はそれほど問題とならなかった、ポッド内部に侵入した酸素等による酸化が留意され始めている。これら酸化性の気体は、ウエハ表面或いはウエハ上に形成された各種層に極薄の酸化膜を形成する。このような酸化膜の存在により、微細素子が所望の特性を確保できない可能性が出てきている。対策として、酸素分圧等が制御されていない気体のポッド外部からポッド内部への侵入を抑制することが考えられる。具体的な方法として、特許文献1には、FIMSシステムにおけるポッド開口に隣接する領域に気体の供給ノズルと吸引ノズルとを設けてポッド開口部を略閉鎖する気流膜を形成する構成が示されている。当該気流膜の形成により、外部気体のポッド内部への侵入を防止している。
【0009】
半導体製造装置において、処理装置内部においては、エッチング工程等ウエハ上に形成された各種配線等を汚染する気体を用いた工程が実施される場合がある。この場合、処理装置内部からポッド内部への当該気体の侵入を抑制する方法が特許文献2に開示されている。当該方法も、ファンを用いて、FIMSシステムにおけるポッド開口正面に気流膜を形成し、処理装置からポッド内部への気体の流入を防止している。当該方法は、当然ポッド内部に対する酸素流入を抑制する上でも効果的と考えられる。
【0010】
しかしながら、これら方法を実用化した場合、実際には、ポッド開口を開放した直後から、ポッド内部での顕著な酸素分圧の増加が確認された。従って、上述の要求を満たす上で、これら方法は更なる改善を施す必要がある。このような状況に対して、本発明者は、気流膜の生成に際して用いられた気体放出用ノズルの形状等を種々改変し、ノズルから離れた位置においても気流膜中の酸素濃度を抑えることによってポッド内部への酸化性気体の侵入を抑制する構成を提案している。また、気流膜の生成と同時にポッド内部に対するパージ用気体の導入を実施し、更にポッド内部の酸化性気体の低減を図る構成も提案している。しかし、半導体の高性能化、或いは半導体製造装置の処理能力の向上等の種々の要望からFIMSシステムに固定された状態にあるポッドについて更なる酸化性気体の分圧の低減が望まれている。
本発明は、以上の背景に鑑み、ポッド解放後においても、ポッド内部における酸素等酸化性の気体の分圧を所定の低いレベルに抑制することを可能とする被収容物たるウエハの処理方法、及び当該方法に用いられる密閉容器たるポッドの蓋開閉システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る被収容物の処理方法は、被収容物を内部に収容可能であって一面に開口を有する略箱状の本体と、該本体から分離可能であって開口を塞いで本体と共に密閉空間を形成する蓋と、を備える収容容器から蓋を取り外すことによって開口を開放して被収容物の挿脱を可能とする、収容容器に対して被収容物を挿脱し、収容容器外部において被収容物に所定の処理を施す被収容物の処理方法であって、パーティクルが管理された微小空間を構成する壁に設けられた略矩形状の開口部に対して開口を正対させて配置し、開口部を略閉鎖するドアによって蓋を保持し、開口部の下方であって壁と平行な水平軸を回転中心として蓋を保持したドアを所定角度回動することで蓋を微小空間内に移動させて退避姿勢をとらせ、その後退避姿勢を維持したドアを鉛直下方に駆動して開口部を開放し、開口及び開口部を介して被収容物の挿脱を行い、退避姿勢にあるドアを鉛直上方に駆動して所定角度の回動後の停止位置に戻り、更に所定角度の逆方向の回動を行うことで蓋による開口の閉止を行い、ドアによる蓋の保持を開放する工程を有し、開口部の上辺から下辺に向かう方向に沿って流れる所定のガスによるガスカーテンが形成可能であり、ドアが回動を停止して退避姿勢を維持した状態でガスカーテンをドアが保持する蓋に突き当て、ガスカーテンを形成する所定のガスの流れを収容容器内部に向けて収容容器内のパージ操作を行う工程を更に有することを特徴としている。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る蓋開閉システムは、被収容物を内部に収容可能であって一面に開口を有する略箱状の本体と、本体から分離可能であって開口を塞いで本体と共に密閉空間を形成する蓋と、を備える収容容器から蓋を取り外すことによって開口を開放して被収容物の挿脱を可能とする、蓋の開閉システムであって、収容容器が載置される載置台と、載置台と隣接して配置され、上部に配置されたファンフィルタユニットを介してパーティクルが管理されたダウンフローが内部に形成され、被収容物を搬送する機構が収容される微小空間と、載置台に隣接して微小空間の一部を確定する壁に形成されて、載置台に載置された収容容器における開口と正対可能な配置に設けられた略矩形状の開口部と、蓋を保持可能であると共に開口部を略閉止可能であり、蓋を保持して開口部を開放することにより開口と開口部とを連通させるドアと、微小空間の内部であって開口部における両側辺の外方に配置されて、開口部及び開口を介して収容容器内部に所定のガスを供給可能なパージノズルと、微小空間の内部であって開口部の直前且つ開口部における上辺の上部に配置されて、ダウンフローの開口部直前への流入を抑制する流入防止部材と、を有し、流入防止部材は、開口の上辺から開口部の下辺に向かう、ダウンフローの流れ方向と平行な方向に沿って所定のガスを供給可能なカーテンノズルを含み、ドアは蓋を保持して開口を開放する際に開口部の下方であって壁と平行な水平軸周りに所定角度回動することで蓋を微小空間内に移動させ、流入防止部材はドアが所定角度回動した状態において形成される蓋の上辺と壁とを対向する二辺とする矩形領域を、ダウンフローの流れ方向に関して覆うと共に、カーテンノズルからの所定のガスは矩形領域に向けて供給されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポッドの開口に隣接し且つ該開口を閉鎖する位置に不活性ガス流によるガスカーテンが形成され、且つポッド内部をパージする際には当該ガスカーテンもポッド内部に対するパージガスの供給経路として利用される。従って、従来であれば本来的なパージ用のガス供給経路からのみしかパージ操作が行えなかったものが、更なる経路を介しても付加的なパージ操作が行えることとなり、パージ操作の迅速化或いはパージ効率を向上させることが可能となる。
【0014】
また、本発明によれば、ガスカーテン自体を構成する不活性ガス流内の不活性ガス濃度を高濃度に維持することを可能とする。例えばノズルから気体を噴出させた場合、当該気体はノズル開口近傍に存在する他の気体を巻き込み、混合気となって気体流を形成することが知られている。即ち、ガスカーテン形成時に当該ガスがノズル周囲に存在する気体を巻き込むことにより、ガスカーテンを構成する不活性ガスの濃度が低下し、該ガスカーテンから酸化性気体がポッド内部に供給される恐れがある。また、ガスカーテンが周囲の気体を巻き込んでしまうことによってガスカーテンを構成する不活性ガスの濃度が低下する恐れもある。本発明によれば、周囲気体を構成するダウンフローと、カーテンノズル或いはその周囲空間とをカーテンカバーによって分離し、ノズル開口部近傍に存在する気体をも高濃度の不活性ガスとしている。さらに、カーテンカバーによってガスカーテンが蓋に突き当たってポッド内に向かう際の壁−蓋間の領域にダウンフローが流入することを抑制している。従って、当該領域に至るガスカーテン内にダウンフロー等酸化性気体含む気体が流入或いは拡散することが抑制でき、ポッド内部に対する酸化性気体の侵入を効果的に抑制することが可能となる。
【0015】
また、ガスカーテンの形成によりポッド内部への周囲に存在する気体の拡散を抑制することが可能となる。ポッド内部に対する不活性ガスの供給は、該ガスカーテンに影響を与えないように、所定の方向性を付与して行われる。即ち、ガスカーテンによってポッド外部からポッド内部への気体の侵入を抑制すると同時に、ポッド内部に不活性ガスを供給することでポッド内部の不活性ガスの濃度を一定に維持することとしている。これら効果を組み合わせることにより、ポッドが開口された状態であっても、ポッド内部の酸化性気体の分圧は常に所定の低圧力に維持される。また、これら効果を組み合わせることにより、単にポッド内部に不活性ガスを供給することによって該ポッド内部への酸化性気体の侵入を防止する多大な不活性ガスを必要とする場合と比較して、極僅かな量の不活性ガスによって同等以上の酸化性気体の低分圧維持効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を参照し、本発明の実施形態に付いて説明する。図1は、本発明の第一の実施形態に係る蓋開閉装置(FIMS、以下ロードポートと称する。)の要部についての概略構成を示すものであり、前述した載置台、ドア、開口部、ドアの開閉機構の一部、開口部が構成された微小空間の一部を構成する壁、本発明において新たに加えられた流入防止部材、及び付随する構成のみを微小空間側から見た場合の概略斜視図である。また、図2Aは、ロードポート(載置台)に対してポッドを載置し、且つポッドの蓋がドアに当接した状態におけるロードポート及びポッドの断面の概略構成を示す図であり、図2Bは図2Aにおける線B−Bに沿った断面を微小空間側から見た状態を示している。なお、載置台等には種々の構成が付随しているが、これら構成は本発明と直接の関係を有さないため、ここでの詳細な図示および説明は省略する。
【0017】
ここで、ロードポートに対して載置されるポッド及び該ポッドに収容されるウエハについて先に述べる(図2A参照)。ポッド2における本体2aの内部には、被処理物たるウエハ1を内部に収めるための空間が形成されている。本体2aは、水平方向に存在するいずれか一面に開口を有する略箱状の形状を有する。また、ポッド2は、本体2aの開口2bを密閉するための蓋4を備えている。本体2aの内部に水平に保持されたウエハ1を鉛直方向に重ねる為の複数の段を有する棚(不図示)が配置されており、ここに載置されるウエハ1各々はその間隔を一定としてポッド2内部に収容される。ウエハ1は本発明における被収容物に、ポッド2は収容容器に、本体2aは基本的な形状が箱体であることから略箱上の形状を有するとして定義される本体に、また、ポッド2の開口2bは基本形状が矩形であることから略矩形状として定義される開口に対応する。
【0018】
本発明に係るロードポート51は、載置台53、ドア6、ロードポートの開口部として機能する開口部10、ドアの開閉機構60、開口部が構成された微小空間(後述する搬送室52)を構成する一部材たる壁11を含む。載置台53は、実際にポッド2が載置され、且つ載置されたポッドを開口部10方向に向けて接近或いは離間させる動作が可能な、上部に平坦面を有する可動プレート54を含む。可動プレート54の平坦面表面には位置決めピン54aが埋設されており、ポッド本体2a下面に設けられた位置決め凹部2cに当該位置決めピン54aが嵌合することにより、ポッド2と可動プレート54との位置関係が一義的に決定される。
【0019】
壁11に設けられた開口部10は、可動プレート54上で位置決めされたポッド2が該プレートによって開口部10に最も接近させられた際に、ポッド開口2bを閉鎖する蓋4が嵌まり込む大きさ、即ち蓋4の矩形外形より一回り大きな矩形状とされている。なお、可動プレート54がポッド2を停止させる位置は、ドア6がポッド2の蓋4をポッド本体2aから取り外し可能な位置であれば良い。ドア6は、ドアアーム6aを介してドア開閉機構60に支持されている。ドア開閉機構60は、ドア6を、開口部10を略閉鎖する位置、及び該開口部10を完全に開放し且つ不図示の搬送機構が該開口部10を介してポッド2内部に対するウエハ1の挿脱が可能となる退避位置の間での移動を可能とする。
【0020】
また、ドア開閉機構60は、不図示の複数のエアシリンダ等から構成されており、支点61を中心としてドアアーム6aと共にドア6を回動する。当該回転動作は、開口部10の閉鎖位置と、ドア6が鉛直下方の退避位置に駆動される際の退避姿勢をとる位置の間で為される。該退避姿勢において、ドア6の開口部10に対向する面6cは、開口部10の上辺側から下辺側に向かうに従って、当該面と開口部10が形成される平面(壁11)との距離が連続的に小さくなっている。即ち、ドア6における開口部10に対向する対向面6cは、退避姿勢において壁11を含む面に対して所定の仰角を持って配置される。なお、当該退避姿勢において、後述するポッド内パージを行う関係上、開口部10の下辺に対して対向面6cが大きく離れることは好ましくない。本発明においては、ドア6が蓋4を保持した状態において、退避姿勢における開口部10の下辺と蓋4のポッド内側に向かう面との間隔は、蓋4の厚さを考慮した上で後述するパージノズルからのパージガスがポッド内部に対して供給される際に、当該ガスの流れが蓋4に干渉されないだけの距離を保持するものとされている。
【0021】
開口部10の直前の空間の上部(第一の開口の上辺の上部)にはカーテンノズル12が配置される。当該カーテンノズル12は、開口部10における微小空間52側の直前にダウンフローによるガスカーテンを形成するために配置される。本実施形態では、カーテンノズル12は直方体形状を有し、開口部10の直前の空間に向かう下面12aには複数のノズル開口12bが形成されている。また、開口部10の微小空間52側であってその両側辺の外側には、ポッド2内部をパージするためにパージガスを供給するパージノズル21も配置される。パージノズル21は一方向に延びる管状のパージノズル本体21aを有し不図示のパージガス供給系と接続されている。該パージノズル本体21aは、ロードポート開口部10の両側辺における該開口部外側に隣接して該側辺と平行に延在するように一対として配置される。
【0022】
図3は、パージノズル本体21a、ポッド2、及びウエハ1に関して、これらを上方より見た際の概略構成を示している。パージノズル本体21aには、ポッド2におけるウエハ1の収容間隔と一致し且つ各々のウエハ1間の間と一致するようにパージノズル開口部21bが複数個その延在方向に等間隔で配置されていることが好ましい。また、パージノズル開口部21bは、ウエハ1の中心部に向かうようにも形成されている。即ち、パージノズルからのガス供給の方向は、カーテンノズルからのガスの供給方向に対して垂直に延在する平面に平行出会って、当該平面内において両パージノズルから均等な距離にある点に向かう方向であることが好ましい。
【0023】
カーテンガスの流れ方向と垂直な方向とすることで確実にポッド2内部にパージガスを供給することが可能となる。ここで、本来はパージガスがウエハ表面に向かうようパージガスを噴出すことが最も効果的であるが、ポッド2内部ではウエハ1同時の間隔が狭いこと等からウエハ面に対して平行にガス供給されることとしている。なお、パージノズル21及び前述したカーテンノズル12は、実際には不図示のガス供給系に接続されているが、本発明の構成の理解を容易なものとするために当該図面注では省略して示されている。また、このガス供給系は、ガスソース、レギュレータ等から構成される一般的なものであることからここでの説明は省略する。
【0024】
次に、実際にポッド2に対するウエハ1の挿脱を実施する場合の当該構成の動作について述べる。ポッド2が載置台53上に載置される時点で、ドア6は開口部10を略閉鎖している。なお、本実施形態において、ドア6は、開口部10を閉鎖する位置にあるときに周囲に微小空間52と外部空間とを連通させる隙間を形成する大きさとされている。従って、本実施形態ではドア6は開口部10を概略閉鎖することしかできない。ポッド2の載置後、可動プレート54が開口部10方向に移動し、蓋4をドア6に当接させる位置で停止する。ドア6は不図示の係合機構によって蓋4を保持する。ここで、ファンフィルタユニット63による微小空間52内のダウンフローの形成、及びカーテンノズル12からのガス供給による開口部10直前でのガスカーテンの形成は、ポッド2の載置が行われる前から常時行われている。
【0025】
続いて、ドア開閉機構60が支点61を中心としてドアアーム6aを回動し、ドア6に対して図4Aに示す退避姿勢をとらせ、ポッド2を微小空間52に対して部分的に開放させる。なお、図4A及び後述する図4Bは、図2Aと同様の様式に開口部10の周囲を側面から見た状態を示している。先にも述べたように当該退避姿勢において、ドア6に保持された蓋4の下端は開口部10をほぼ閉鎖した状態にあり、蓋4の上端は開口部10から所定の間隔を保持した状態にある。蓋4が開口部10から離れて上方に開いて形成された隙間は、カーテンノズル12のノズル開口12bの形成範囲以内に収められている。この時点よりパージノズル21からのパージガスの供給が開始される。ドア開閉機構60は、ドア6に対してこの退避姿勢を維持させた状態で該ドア6をその駆動範囲の最下端である退避位置まで後退させる。図4Bに、ドア6が退避位置に配置された状態を示す。当該状態において、ポッド2の開口2bは開放され、微小空間52に配置された不図示の搬送機構によるポッド2内部に対するウエハ1の移送操作が可能となる。
【0026】
図4Cに図2Bと同様の様式にて開口部10を微小空間52側から見た状態の概略構成を示す。カーテンノズル12からは、壁11に平行なダウンフローを形成するようにパージガスと同様のガスが供給される。また、一対のパージノズル21各々からは、ポッド2内部に収容されたウエハ1の中央部に各々パージガスの流れが向かうように、パージガスの供給が為される。当該状態にて、ウエハ1の搬送が行われる。当該搬送操作時の間、ポッド2の内部に対するパージ操作は継続して行われ、ポッド内部の酸化性気体の分圧を低く抑える。ポッド2内部に対して収容すべきウエハ1の搬入操作が終了した後、以下の蓋4の閉鎖操作が行われる。
【0027】
当該閉鎖操作においては、ドア開閉機構60がドア6を上昇させ、図4Aに示すドア6が回動を停止して退避姿勢をとった位置まで戻す。この状態にて、ドア開閉機構60は一旦動作を停止し、ドア6を回動前の姿勢にて維持する。その際、ドア6に保持された蓋4は、ガスカーテンに対して流れある角度を持って位置することとなり、ガスの流れ方向を下向きからポッド内部方向に変更させる。当該退避姿勢においては、先に述べたように蓋4の下端部のみが開口部10を略閉鎖した状態にあることから、蓋上端部に形成された隙間に向けて供給されたカーテンガスはその大部分がポッド2の内部に向けて送られることとなる。
【0028】
これにより、蓋によるポッドの閉鎖直前時においてポッド内部にむけて供給されるパージガスの総量を、通常のパージノズルのみによるパージガスの総量に比して格段に大きくすることが可能となる。図4Aに示す状態を所定時間維持して、ポッド2内部のパージが十分に為されて当該空間の酸化性気体の存在量を十分に低減した後、ドア開閉機構60はドア6を回動し、蓋4によってポッド開口部2aを閉鎖する。以上の操作によって、従来構成では得られない低酸化性気体濃度でのポッド2に対するウエハ1の封入が可能となる。
【0029】
なお、上述した動作においては、ウエハの挿脱動作を実施している際、全てのウエハの挿脱の開始時から終了時までドア6が退避することとしている。しかし、パージノズルから供給されるパージガスのみの場合、ポッド2の開放時間が長い場合には、微小空間52からの大気の拡散によってポッド2内部の酸化性気体の分圧が徐々に増加することも考えられる。このような場合、ウエハ1を一枚挿脱する毎に、ドア6を退避位置から上昇させて図4Aに示す状態としてパージ効率を上げた状態を保持する。或いは当該状態の後一旦ポッドを閉鎖する動作を加えることが望ましい。これにより、酸化性気体の分圧の上昇をより効果的に抑制することが可能となる。
【0030】
以上述べた実施形態において、ポッド内部の酸化性気体の分圧を効果的に抑制するという観点から、ガスカーテンの形成は常時行うこととしている。しかしながら、パージガスの使用量を抑制してコストを削減するという観点に立った場合、ガスカーテンの形成を必要最小限とすることが好ましい。ここでポッドに対するウエハの挿脱を行う上で、極論すればポッドを閉鎖する際にポッド内部の酸化性気体の分圧を低下できれば良いとも言える。以下、この場合のパージ方法について述べる。図5Aはポッド2から蓋4を取り外してウエハ1の挿脱を開始するまでの操作を示すフローチャートであり、図5Bはポッド2に対するウエハ1の挿脱が終了して蓋4をポッド2に取り付ける操作を示すフローチャートである。
【0031】
図5Aに示すように、ステップ1におけるポッド2の載置、ステップ2における後述する可動プレート54の移動による蓋4とドア6との係合、ステップ3におけるドア6によるポッド2からの蓋4の分離操作、及びステップ4におけるドア6の退避姿勢をとった後の退避位置への移動と同時に行われる不図示のマッピング機構によるポッド2内のウエハマッピングが行われる。ステップ5において、ドア6の退避位置での停止が不図示のドア下端センサによって検知される。ステップ6では、この検知結果に応じてパージノズル21からのパージガスの供給が開始される。以上一連の操作の終了によって、ポッド2の所謂ロード操作が終了したと確認され、ポッド2からのウエハ1の取り出し及び挿入操作が行われる。なお、ステップ6で開始されたパージガスの供給は、ウエハ1の挿脱操作時を通じて継続される。
【0032】
図5Bでは、ポッド2の所謂アンロード操作について示している。まず、ステップ11でウエハ1の挿脱操作が終了し、アンロード操作を開始する旨の指示が出される。本実施形態ではドア等の移動中の構成にパージガスが吹き付けられることによるパーティクル等の発塵抑制のために、ステップ12においてパージガスの供給が一旦停止される。続いて、ステップ13のドア6の上昇操作が行われ、ステップ14においてドア6が上昇端(回動後の退避姿勢をとった位置)に達したことを検知する。ステップ15では、この検知結果に応じてパージノズル21からのパージガスの供給及びカーテンノズル12からのカーテンガスの供給が同時に開始される。前述したように、カーテンガスは蓋4に突き当たってその流れ方向がポッド2の内部に向けられ、ポッド内部はパージガス及びカーテンガスの両者が供給される。
【0033】
当該状態は、ステップ16において所定時間経過したことが検知されるまで維持される。所定時間経過後、ステップ17においてこれらガスの供給が停止され、続くステップ18でドア6によるポッド2に対する蓋4の取り付け操作が行われる。蓋4がポッド本体2aに固定後、ステップ19で可動プレート54の後退が為され、ステップ20でポッド2の所謂アンロード操作の終了が確認される。以上のアンロード操作では、蓋閉止時直前に、本来パージノズルから供給されるパージガスのみによるパージしか行われなかったところに、更にカーテンノズルからのカーテンガス(パージガスと同じガス)も付加的に供給される。従って、短時間で従来構成では不可能であった多量のパージガスを供給することが可能となり、ポッド内部の酸化性気体の分圧を効果的に抑制してポッドを閉止することが可能となる。
【0034】
なお、以上の実施形態において、カーテンノズル12は直方体形状を有しその下面全域にガス噴出孔が設けられることとしているが、噴出孔の形状、配置、或いは数等は供給するガスの流量、及び後述する退避姿勢における蓋4と開口部10各々の上辺での間隔等に応じて適宜変更されることが望ましい。この場合パージノズル21も同様に、ガス噴出用の開口部21bの形状、配置等、適宜変更することが好ましい。また、ドア6は開口部10を略閉鎖することとしているが、これを完全に閉鎖する構成としても良い。
【0035】
ここで、パージガス等のガス流れが存在する場合、当該流れの周囲に存在する気体も当該流れによってある程度巻き込まれ、該ガスの純度を周辺部から徐々に低下させる。このような現象に鑑みて、上述した実施形態においては、カーテンノズル12に設けられたガスカーテン形成用のノズル開口12bの形成範囲は、ドア6が開口部10の閉鎖位置から回動いて停止した退避姿勢をとった状態で開口部10の上辺とドア6に保持された蓋4の上辺との間に形成される矩形領域より、微小空間52側において広くなるように設定されている。これにより、ガスカーテンが微小空間52内に形成されるダウンフローからの気体の巻き込みが生じた場合であっても、当該巻き込まれた気体を含むカーテンガスが開口部10と蓋4との間に流れていくことを抑制することとしている。
【0036】
また、パージノズル等から不活性ガス等のパージガスを供給しようとする場合、ノズル穴から噴出したパージガスが穴周囲に存在する気体を巻き込み、当該気体の混入によってパージガスの純度が低下することが考えられる。また、ノズル穴周辺の気体の巻き込みを抑制することを考慮した、本発明を実施する更なる構成例を以下に図面を参照して述べる。図6は、当該構成例を図2Aと同様の様式であって要部を拡大して示す側面図である。なお、同図において図2に示した構成と同様の作用効果を呈する構成に関しては同様の参照番号を付記することとしてその説明を省略する。
【0037】
本形態においては、カーテンノズル12の上面の更に上部を覆い、且つ微小空間52側の端面12cの更に微小空間側に延在するカーテンカバー23が配されている。当該カーテンカバー23は、直方体形状のカーテンノズル12を覆う断面L字形状を有し、カーテンノズル12の端面12cと対向する垂直面23aは、ドア6が退避姿勢をとった上体で当該ドア6の最上に位置する辺と鉛直方向においてほぼ同じ高さとなるまで伸ばされている。当該カーテンカバー23を配することによって、ノズル近傍に周囲の気体(ダウンフローによって供給されるパーティクルのみ管理された気体)常時供給される状態を無くしている。また、垂直面23aの下方に延在させることにより、ガスカーテンに対するダウンフローの巻き込みも抑制している。従って、カーテンノズル12から蓋4に至るカーテンガスの純度を、上記実施形態の構成と比較して更に高純度に維持することが可能となる。
【0038】
図7は、図6に示す形態の更なる変形例について、図6と同様の様式にてこれを示している。なお、図6に示した形態と同様に、個々の構成と同様の作用効果を呈する構成に関しては同様の参照番号を付記することとしてその説明を省略する。本形態においては、カーテンノズル12のポッド2の駆動方向に沿った辺の長さを短くして、ノズル開口12bの形成範囲を、ドア6が退避姿勢をとった状態で開口部10の上辺とドア6に保持された蓋4の上辺との間に形成される矩形領域より小さくしている。当該構成により、ガスカーテンの厚さが薄くなる。これにより、カーテンガスに用いるパージガスの流量をそれほど大きくせずとも、カーテンガスの流速を大きくすることが可能となり、ポッド2の奥までカーテンガスを供給することが可能となる。例えば、パージノズルから供給されるガスをポッド2の比較的開口側の領域に送ることとし、カーテンガスを奥の領域に送ることとして、少ない流量にてポッド内のパージを行うことが考えられる。
【0039】
この場合、上述したノズル開口での周囲雰囲気の巻き込み及びカーテンガス流れによる周囲気体の巻き込みを抑制する必要性は、上述した構成よりも高くなる。このため、カーテンノズル12から、開口部10の上辺(壁11の微小空間側面)とドア6に保持された蓋4の上辺との間に形成される矩形領域までの間に構成される空間を、カーテンカバー23によって効果的に覆う必要がある。本形態においては、カーテンカバー23の水平面23bの幅(壁11との連結部となる辺からその対辺までの長さ)は、カーテンノズル12の対応する幅の長さとほぼ等しくし、垂直面との連結部分には傾斜面23cを配して当該空間を小さくし、且つ垂直面23aをドア6の最上に位置する辺の微小空間側下方に延在させることとしている。カーテンカバー23を当該形状とすることにより、カーテンノズル12を小さくした場合であっても、微小空間内のダウンフローからの大気の巻き込みを抑制することが可能となる。
【0040】
上述したカーテンノズル12及びカーテンカバー23の両者は、微小空間内に形成されるダウンフローの流れ方向に関して、壁11と蓋4とを対向する二辺として形成される上述した矩形領域とファンフィルタユニットとの間に配置される。これらカーテンノズル12とカーテンカバー23とは、ダウンフローに起因しファンフィルタユニットから微小空間内に供給された大気が該矩形領域に至ることを抑制或いは防止する流入防止部材として作用する。当該目的を達成するために、カーテンノズル単体にて該流入防止部材を構成する場合にはカーテンノズルの形状を該矩形領域の形状より大きくして、該矩形領域を覆う効果を確実に持たせることを要する。この場合、上述した形態の如くノズル開口の形成領域を矩形領域以上とすると好ましい。また、カーテンノズルの形状を矩形領域の形状より小さい場合には、カーテンカバーを配して矩形領域を覆うこととすることが好ましい。また、カーテンカバーの形状としては、ファンフィルタユニットからのダウンフロー及びガスカーテン両者を整流する効果を得るために、前述した垂直面を更に配することが好ましい。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施した実際の蓋開閉システムであるFIMSシステム、及び当該システムを用いた半導体ウエハ処理装置について説明する。図8は、所謂ミニエンバイロメント方式に対応した半導体ウエハ処理装置50の概略構成を示す図である。半導体ウエハ処理装置50は、主にロードポート部(FIMSシステム、蓋開閉装置)51、搬送室(微小空間)52、および処理室59から構成されている。それぞれの接合部分は、ロードポート側の仕切り55aおよびカバー58aと、処理室側の仕切り55bおよびカバー58bとにより区画されている。半導体ウエハ処理装置50における搬送室52では塵を排出して高清浄度を保つ為、その上部に設けられたファンフィルタユニット63により搬送室52の上方から下方に向かって空気流(ダウンフロー)を発生させている。また、搬送室52の下面にはダウンフローの排出経路が設けられる。以上の構成により、塵は常に下側に向かって排出されることになる。
【0042】
ロードポート部51上には、シリコンウエハ等(以下、単にウエハと呼ぶ)の保管用容器たるポッド2が載置台53上に据え付けられる。先にも述べたように、搬送室52の内部はウエハ1を処理する為に高清浄度に保たれており、更にその内部には搬送機構において実際にウエハを保持可能なロボットアーム55が設けられている。このロボットアーム55によって、ウエハはポッド2内部と処理室59の内部との間を移送される。処理室59には、通常ウエハ表面等に薄膜形成、薄膜加工等の処理を施すための各種機構が内包されているが、これら構成は本発明と直接の関係を有さないためにここでの説明は省略する。
【0043】
ポッド2は、前述したように、被処理物たるウエハ1を内部に収めるための空間を有し、いずれか一面に開口を有する箱状の本体2aと、該開口を密閉するための蓋4とを備えている。本体2aの内部にはウエハ1を一方向に重ねる為の複数の段を有する棚が配置されており、ここに載置されるウエハ1各々はその間隔を一定としてポッド2内部に収容される。なお、ここで示した例においては、ウエハ1を重ねる方向は、鉛直方向となっている。搬送室52のロードポート部51側には、開口部10及び上述した流入防止部材が設けられている。開口部10は、ポッド2が開口部10に近接するようにロードポート部51上で配置された際に、ポッド2の開口部と対向する位置に配置されている。なお、カーテンノズル12、ドア6等の本発明に係る主たる構成は、上記実施形態において述べていること、及び図面の理解を容易なものとするという観点から、ここでの説明及び図示を省略する。
【0044】
図9Aおよび図9Bは、当該装置におけるドア6及びドア開閉機構60を拡大した側断面図および搬送室52側からこれら見た正面図をそれぞれ示している。図9Cは、ドア開閉機構60を用いてポッド2から蓋4を取り外した状態についてその側断面概略を示している。ドア6には固定部材46が取り付けられており、ドア6は、当該固定部材46を介してドアアーム6aの一端に対して回動可能に連結されている。ドアアーム6aの他端は、エアー駆動式のシリンダ57の一部であるロッド37の先端部に対して、枢軸40を介して、当該枢軸40に対して回転可能に支持されている。
【0045】
ドアアーム42の該一端と該他端との間には、貫通穴が設けられている。当該穴と、ドアアーム42等のドア開閉を行う構成を昇降させる可動部56の支持部材60に固定される固定部材39の穴とを不図示のピンが貫通することにより、支点61が構成されている。従って、シリンダ57の駆動によるロッド37の伸縮に応じて、ドアアーム42は支点61を中心に回動可能となる。ドアアーム42の支点61は、昇降が可能な可動部56に設けられる支持部材60に固定されている。
【0046】
これら構成によってウエハ1の処理を行う際には、まず搬送室開口部10に近接するように載置台53上に配置して、ドア6により蓋4を保持する。なお、ドア6の表面には不図示の係合機構が、また蓋4の表面には不図示の被係合機構が各々配置されており、蓋4及びドア6各々の表面同士が当接しあった状態においてこれら機構が作動することにより、ドア6による蓋4の保持が行われる。ここで、シリンダ57のロッドを縮めるとドアアーム42が支点61を中心にして、ドア6が開口部10から離れるように動作する。この動作によりドア6は蓋4とともに回動して蓋4をポッド2から取り外す。その状態が図9Cに示されている。その後、可動部56を下降させて蓋4を所定の待避位置まで搬送する。移行の操作に関しては上述の実施形態において述べていることからここでの説明は省略する。
【0047】
なお、本実施例においては、FOUP及びFIMSを対象として述べているが、本発明の適用例はこれらに限定されない。内部に複数の被保持物を収容するフロントオープンタイプの容器と、当該容器の蓋を開閉して該容器より被保持物の挿脱を行う系であれば、本発明に係る蓋開閉装置を適用し、容器内部の酸化性雰囲気の分圧を低圧に維持することが可能である。また、容器内部を満たすガスとして、不活性ガスではなく所望の特性を有する特定のガスと用いる場合に、本発明に係る蓋開閉システムを用いて、当該容器内部の該特定のガスの分圧を高度に維持することも可能である。
【0048】
本発明によれば、ポッド内部のパージを行う際に従来のパージノズルからのパージガスの供給のみならず、ガスカーテンを用い、パージノズルとは異なる方向からのパージガス供給が可能となる。ガスカーテンによる微小空間側からのポッド内への大気の進入の抑制とは別個にパージガスをウエハに向けて供給し、更にポッド閉止時には当該カーテンガスもパージに用いるとによってポッド内部の気体の酸化性気体の分圧の上昇を効果的に抑制することが可能となる。また、本発明は、既存のFIMSシステムに対してカーテンノズル、パージノズル、等を付加するのみで実施可能であり、規格化されたシステムに対して安価且つ簡便に取り付けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る蓋開閉システムの主要部における概略構成を示す斜視図である。
【図2A】図1に示した本発明の一実施に形態係る蓋開閉システム、即ちロードポート、ポッド、ポッド用の蓋およびオープナの一部に関し、これらのポッド開口に垂直な切断面の概略構成を示す図である。
【図2B】図1に示した開口部10を矢印2B方向からから見た状態を示す図である。
【図3】パージノズルからポッド内部に向けて供給されるパージガスの供給方向を説明する図である。
【図4A】図1に示す蓋開閉システムにおいて、蓋を開閉する動作の一段階を示す図である。
【図4B】図1に示す蓋開閉システムにおいて、蓋を開閉する動作の一段階を示す図である。
【図4C】図4Bに示す状態において、開口部10を図2Bと同様の様式にて見た状態を示す図である。
【図5A】本発明に係る蓋開閉機構に対してポッドをローディングする際の動作手順を示すフローチャートである。
【図5B】本発明に係る蓋開閉機構に対してポッドをアンローディングする際の動作手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る蓋開閉システムの更なる形態を示す図である。
【図7】本発明に係る蓋開閉システムの更なる形態を示す図である。
【図8】本発明が適用される一般的な半導体ウエハ処理装置の概略構成を示す全体側面図である。
【図9A】図8に示す装置におけるドア開閉機構及びその近傍の構成を拡大し、これを側面から見た状態の概略構成を示す図である。
【図9B】図9Aに示す構成を、搬送室側から見た場合の概略構成を示す図である。
【図9C】図9Aに示す構成であって、ドアが蓋をポッドから取り外した状態を、図9Aと同様の様式にて示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1:ウエハ、 2:ポッド、 4:蓋、 6:ドア、 10:開口部、 11:壁 12:カーテンノズル、 13:ガス導入経路、 14:ガスカーテン、 21:パージノズル、 23:カーテンカバー、 37:ロッド、 39:固定部材、 40:枢軸、 46:固定部材、 50:半導体処理装置、 51:ロードポート、 52:搬送室(微小空間)、 53:載置台、 54:可動プレート、 55:ロボットアーム、 57:シリンダ、 60:ドア開閉機構、 61:支点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収容物を内部に収容可能であって一面に開口を有する略箱状の本体と、前記本体から分離可能であって前記開口を塞いで前記本体と共に密閉空間を形成する蓋と、を備える収容容器から前記蓋を取り外すことによって前記開口を開放して前記被収容物の挿脱を可能とする、前記収容容器に対して前記被収容物を挿脱し、前記収容容器外部において前記被収容物に所定の処理を施す被収容物の処理方法であって、
パーティクルが管理された微小空間を構成する壁に設けられた略矩形状の開口部に対して前記開口を正対させて配置し、
前記開口部を略閉鎖するドアによって前記蓋を保持し、
前記開口部の下方であって前記壁と平行な水平軸を回転中心として前記蓋を保持した前記ドアを所定角度回動することで前記蓋を前記微小空間内に移動させて退避姿勢をとらせ、その後前記退避姿勢を維持した前記ドアを鉛直下方に駆動して前記開口部を開放し、
前記開口及び前記開口部を介して前記被収容物の挿脱を行い、
前記退避姿勢にある前記ドアを鉛直上方に駆動して前記所定角度の回動後の停止位置に戻り、更に前記所定角度の逆方向の回動を行うことで前記蓋による前記開口の閉止を行い、
前記ドアによる前記蓋の保持を開放する工程を有し、
前記開口部の上辺から下辺に向かう方向に沿って流れる所定のガスによるガスカーテンが形成可能であり、前記ドアが回動を停止して退避姿勢を維持した状態で前記ガスカーテンを前記ドアが保持する前記蓋に突き当て、前記ガスカーテンを形成する前記所定のガスの流れを前記収容容器内部に向けて前記収容容器内のパージ操作を行う工程を更に有することを特徴とする基板の処理方法。
【請求項2】
被収容物を内部に収容可能であって一面に開口を有する略箱状の本体と、前記本体から分離可能であって前記開口を塞いで前記本体と共に密閉空間を形成する蓋と、を備える収容容器から前記蓋を取り外すことによって前記開口を開放して前記被収容物の挿脱を可能とする、前記蓋の開閉システムであって、
前記収容容器が載置される載置台と、
前記載置台と隣接して配置され、上部に配置されたファンフィルタユニットを介してパーティクルが管理されたダウンフローが内部に形成され、前記被収容物を搬送する機構が収容される微小空間と、
前記載置台に隣接して前記微小空間の一部を確定する壁に形成されて、前記載置台に載置された前記収容容器における前記開口と正対可能な配置に設けられた略矩形状の開口部と、
前記蓋を保持可能であると共に前記開口部を略閉止可能であり、前記蓋を保持して前記開口部を開放することにより前記開口と前記開口部とを連通させるドアと、
前記微小空間の内部であって前記開口部における両側辺の外方に配置されて、前記開口部及び前記開口を介して前記収容容器内部に所定のガスを供給可能なパージノズルと、
前記微小空間の内部であって前記開口部の直前且つ前記開口部における上辺の上部に配置されて、前記ダウンフローの前記開口部直前への流入を抑制する流入防止部材と、を有し、
前記流入防止部材は、前記開口の前記上辺から前記開口部の下辺に向かう、前記ダウンフローの流れ方向と平行な方向に沿って所定のガスを供給可能なカーテンノズルを含み、
前記ドアは前記蓋を保持して前記開口を開放する際に前記開口部の下方であって前記壁と平行な水平軸周りに所定角度回動することで前記蓋を前記微小空間内に移動させ、
前記流入防止部材は前記ドアが所定角度回動した状態において形成される前記蓋の上辺と前記壁とを対向する二辺とする矩形領域を、前記ダウンフローの流れ方向に関して覆うと共に、前記カーテンノズルからの所定のガスは前記矩形領域に向けて供給されることを特徴とする蓋開閉システム。
【請求項1】
被収容物を内部に収容可能であって一面に開口を有する略箱状の本体と、前記本体から分離可能であって前記開口を塞いで前記本体と共に密閉空間を形成する蓋と、を備える収容容器から前記蓋を取り外すことによって前記開口を開放して前記被収容物の挿脱を可能とする、前記収容容器に対して前記被収容物を挿脱し、前記収容容器外部において前記被収容物に所定の処理を施す被収容物の処理方法であって、
パーティクルが管理された微小空間を構成する壁に設けられた略矩形状の開口部に対して前記開口を正対させて配置し、
前記開口部を略閉鎖するドアによって前記蓋を保持し、
前記開口部の下方であって前記壁と平行な水平軸を回転中心として前記蓋を保持した前記ドアを所定角度回動することで前記蓋を前記微小空間内に移動させて退避姿勢をとらせ、その後前記退避姿勢を維持した前記ドアを鉛直下方に駆動して前記開口部を開放し、
前記開口及び前記開口部を介して前記被収容物の挿脱を行い、
前記退避姿勢にある前記ドアを鉛直上方に駆動して前記所定角度の回動後の停止位置に戻り、更に前記所定角度の逆方向の回動を行うことで前記蓋による前記開口の閉止を行い、
前記ドアによる前記蓋の保持を開放する工程を有し、
前記開口部の上辺から下辺に向かう方向に沿って流れる所定のガスによるガスカーテンが形成可能であり、前記ドアが回動を停止して退避姿勢を維持した状態で前記ガスカーテンを前記ドアが保持する前記蓋に突き当て、前記ガスカーテンを形成する前記所定のガスの流れを前記収容容器内部に向けて前記収容容器内のパージ操作を行う工程を更に有することを特徴とする基板の処理方法。
【請求項2】
被収容物を内部に収容可能であって一面に開口を有する略箱状の本体と、前記本体から分離可能であって前記開口を塞いで前記本体と共に密閉空間を形成する蓋と、を備える収容容器から前記蓋を取り外すことによって前記開口を開放して前記被収容物の挿脱を可能とする、前記蓋の開閉システムであって、
前記収容容器が載置される載置台と、
前記載置台と隣接して配置され、上部に配置されたファンフィルタユニットを介してパーティクルが管理されたダウンフローが内部に形成され、前記被収容物を搬送する機構が収容される微小空間と、
前記載置台に隣接して前記微小空間の一部を確定する壁に形成されて、前記載置台に載置された前記収容容器における前記開口と正対可能な配置に設けられた略矩形状の開口部と、
前記蓋を保持可能であると共に前記開口部を略閉止可能であり、前記蓋を保持して前記開口部を開放することにより前記開口と前記開口部とを連通させるドアと、
前記微小空間の内部であって前記開口部における両側辺の外方に配置されて、前記開口部及び前記開口を介して前記収容容器内部に所定のガスを供給可能なパージノズルと、
前記微小空間の内部であって前記開口部の直前且つ前記開口部における上辺の上部に配置されて、前記ダウンフローの前記開口部直前への流入を抑制する流入防止部材と、を有し、
前記流入防止部材は、前記開口の前記上辺から前記開口部の下辺に向かう、前記ダウンフローの流れ方向と平行な方向に沿って所定のガスを供給可能なカーテンノズルを含み、
前記ドアは前記蓋を保持して前記開口を開放する際に前記開口部の下方であって前記壁と平行な水平軸周りに所定角度回動することで前記蓋を前記微小空間内に移動させ、
前記流入防止部材は前記ドアが所定角度回動した状態において形成される前記蓋の上辺と前記壁とを対向する二辺とする矩形領域を、前記ダウンフローの流れ方向に関して覆うと共に、前記カーテンノズルからの所定のガスは前記矩形領域に向けて供給されることを特徴とする蓋開閉システム。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【公開番号】特開2009−38074(P2009−38074A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198622(P2007−198622)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]