説明

被検対象物の材料界面を決定するための方法及び装置

本発明は、被検対象物(1)の材料界面を決定するための方法及び装置に関し、透過放射線を用いて、画像データの画像値を取得することによって被検対象物(1)の三次元画像データを生成するか、或いは取得して置いた画像データの画像値によって被検対象物(1)の三次元画像データを取得し、被検対象物(1)に対して相対的に、画像データを評価するための評価線(17)を決定し、評価線(17)の方向における画像値の第1の部分導関数の絶対値が材料界面の位置に極大値を有するように、この評価線に沿って存在する画像値を評価することによって、被検対象物(1)の材料界面の位置を決定するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検対象物の材料界面を決定するための方法及び装置に関する。本発明は、有利には、工業的に製造される対象物の品質管理分野、特に、大量生産において利用又は使用することができる。複雑な幾何学的形状を有する構成部品の検査の際に利用するのが、特に有利である。特に、材料内の欠陥(例えば、望ましくない空洞又は異なる材料の混入)又は材料領域の所定の形状からの望ましくない偏差を検知することができる。工業的に製造される対象物の品質制御において特に関心が持たれていることは、被検対象物の寸法が製造基準と合致するか否かを検査することである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影法(CT)は、被検対象物の内部構造を確認するのに適している。CTは、特に、医学で知られているが、無生物の測定にも使用されている。CTによって(空間的に)、例えば、特許文献1又は特許文献2により公知の通り、再構成された画像データである三次元画像データを生成することが知られている。再構成の場合、三次元画像データは、多数の二次元画像から得られ、それらの二次元画像は、更に、放射線源及び放射線検出器に対して相対的に被検対象物を回転して得られている。このような公知の方法及び装置は、三次元画像データの生成のために、本発明と関連して利用又は使用することもできる。しかし、本発明は、それに限定されるものではない。
【0003】
特許文献3により、三次元画像において境界面に対応する画素(ボクセル)を決定するための画像選択器を備えた、三次元画像を生成するためのシステムが公知である。この画像選択器は、使用者の入力に応じて動作する。画像選択器は、不透明度が所定の閾値よりも大きなボクセルの境界面を決定するか、或いは不透明度の勾配が所定の閾値よりも大きなボクセルの境界を決定している。このシステムは、医学目的での使用を目指したものである。
【0004】
工業的に製造される対象物の三次元画像データでは、特殊なアーティファクトが出現し、その原因は、特に、相異なる材料から成る隣接する材料領域、材料領域の平坦な境界面の存在及び材料領域の直線的な鋭いエッジに帰せられる。これらのアーティファクトは、相異なる方向から撮像された2次元画像から画像値を再構成する際に生じる。アーティファクトは、例えば、
・同一の材料から成る領域内における相異なる画像値であり、その結果これらの領域は、見掛け上異なる材料特性を有し、同一の材料から成る隣接領域は、それらの間に見掛け上材料界面を有することとなり、
・均質な材料から成る領域の内部又は周縁部における、画像値が誤って変更された筋、即ち、縞模様の領域である。
【0005】
固定的な閾値を使用する場合、これらのアーティファクトは、境界面の決定の際に誤りを生じさせることがある。実際には存在しないか、或いは材料界面の正しい位置に対して間違って大幅にずれた材料界面が決定されてしまうこととなる。
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第10245116号明細書
【特許文献2】ドイツ国特許出願公開第10248770号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2001/0055016号明細書
【特許文献4】米国特許第6,125,164号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、特に、工業的に製造される対象物における材料界面の正確な決定を可能にする冒頭に述べた種類の方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、材料界面を個別に検査することを提案する。この場合、特に、材料界面領域内における画像値の変化を観察する。特に、その負担(例えば、コンピュータの計算時間)に関して、本発明による評価を単純化するために、評価線を決定して、その評価線に沿って存在する画像値を材料界面の決定に使用する。
【0008】
特に、
・透過放射線を用いて、画像データの画像値を取得することによって被検対象物の三次元画像データを生成するか、或いは取得して置いた画像データの画像値によって被検対象物の三次元画像データを取得し、
・被検対象物に対して相対的に、画像データを評価するための評価線を決定し、
・評価線の方向における画像値の第1の部分導関数の絶対値が材料界面の位置に極大値を有するように、この評価線に沿って存在する画像値を評価することによって、被検対象物の材料界面の位置を決定する、被検対象物の材料界面を決定するための方法を提案する。
【0009】
このようにして、評価線の方向において画像値が最も大きく変化する位置を材料界面の位置として決定することができる。このことは、部分導関数の最も大きな変化又は最大値が、上述のアーティファクトにも関わらず、通常材料界面の実際の位置上に有るという知見を根拠としている。
【0010】
それに対して、透過放射線に関する吸収度の固定的な閾値を判断基準として使用する場合、例えば、材料界面の近傍に位置する縞模様の領域も、この判断基準に含まれる可能性が有る。吸収率の勾配の固定的な閾値を判断基準として使用する場合、考えられる全ての材料界面を検知するには、この閾値を十分に小さく選択しなければならない。例えば、1つの材料界面において、吸収率の偏差が比較的小さい2つの材料が互いに隣接することがある。従って、材料界面に1つの縞模様が有る場合、場合によっては2つの材料界面が検知されてしまうこととなる。
【0011】
これに対して、本発明による解決策では、部分導関数の値が最大となる位置が材料界面の位置として決定される。特に、そのために、評価線の方向に延びる位置の領域を定義することができる。この位置領域内に、第1の部分導関数の極大値が複数有る場合、極大値が最も大きい位置が材料界面の位置として決定される。この場合、位置領域は、例えば、評価線の一部と一致する。従って、この場合、位置領域は、その部分の長さを設定することによって定義することができる。特に、被検対象物の目標とする状態に関する情報を使用する場合(これに関しては、更に詳細に説明する)、その部分の長さは、対象物の材料界面の予想される最大の位置の誤差よりもほんの僅か大きくなるように短く選択することができる。従って、材料界面の決定は、予想される領域に目的通り限定することができる。例えば、その部分の長さは、100又は100未満、有利には、50又は50未満の単位長とすることができ、この場合、単位長は、画像データの空間解像度の逆数として定義される。単位長は、解像度に応じて、例えば、0.02μm〜0.05mmの範囲内の値である。
【0012】
絶対的な最大値を判断基準として使用する位置領域の使用法に追加して、或いはそれに代わって、本発明による方法の実施形態では、評価線の方向における画像値の第1の部分導関数の絶対値が、所定の閾値(限界値)を上回るか、或いはその閾値以上である場合にのみ、1つの位置が材料界面の位置として検知される。こうすることによって、縞模様による、或いは画像値の様々な変動による材料界面の誤った検知を回避することも可能となる。
【0013】
特に、画像データは、被検対象物の少なくとも1つの材料特性、例えば、使用する透過放射線に関する材料の吸収能力及び/又は材料密度に関する情報を包含する画像値を有する。三次元画像データは、被検対象物の第2の材料(及び場合によっては、それよりも多い材料)の対応する材料特性及び/又は場合によっては、空洞又は溝に関する情報を包含する画像値を有することもできる。従って、「材料」とは、被検対象物内の空気、その他のガス又は真空であるとも解釈する。
【0014】
画像値は、通常位置領域又は体積領域の絶対的な位置又は相対的な位置に割り当てられるか、或いは次の通り割り当てることができる。より一般的に述べると、相異なる画像値は、互いに被検対象物の部分領域の実際の空間的な関係に対応する空間的な位置関係に有るものとする。特に、離散的な体積要素(ボクセル)が画像データを有し、それらの体積要素には、例えば、特許文献2により公知の通り、少なくとも1つの材料特性又はそれから導き出された値が画像値として割り当てられる。
【0015】
透過放射線は、特に、X線であり、X線は、多数の材料に対して大きな浸入度を有するので、工業的に製造される測定対象物の検査、特に、対象物を大量生産する際の品質保証工程の枠組内における検査にとって特に有利である。しかし、例えば、陽電子線及び/又は電子線などのその他の種類の透過放射線も使用することができる。磁気共鳴測定で使用される電磁界及び信号も、「透過放射線」であると解釈する。
【0016】
有利には、被検対象物の貫通後に依然として存在する放射線の強度(放射線フラックス密度)が、一次測定値としての役割を果たす。それによって、放射線の吸収又は減少を検出することができる。しかし、それに代わって、或いはそれに追加して、三次元画像データを生成するために、材料界面における放射線の回折及び/又は反射などのその他の効果を利用することもできる。
【0017】
画像データの評価のための評価線は、被検対象物に対して相対的に決定される。このことは、座標系に対して相対的な被検対象物の位置及び向きを検知して、その座標系に対して評価線を決定するものであると理解する。
【0018】
特に、被検対象物に対する評価線の位置及び向きを決定する。この場合、位置及び向きを明確に示す必要はない。詳しくは、例えば、評価線に対して垂直な平面を与えたり、評価線がそのような平面を貫通する平面内の点を与えるなどのそれと同等に定義することでも十分である。
【0019】
評価線に沿って存在する画像値とは、それに対応する位置が評価線の直ぐ近くに有るか、或いはそれに対応する体積領域(例えば、ボクセルが体積領域に割り当てられている)を評価線が貫通する画像値のみではないものと解釈する。少なくとも任意選択として、それに対応する位置又は体積領域が評価線から一定の間隔内に有る画像値も考慮することができる。特に、本発明による方法の有利な実施形態では、評価線に沿って存在する画像値の評価の際に、評価線に対する画像値の間隔に基づく画像値の重み付けを行う。特に、そのことは、例えば、画像値の補間により、評価線と交差する方向における画像値の連続的な(もはや位置が離散的でない)推移を検出することによって達成される。即ち、(特に、画像データが座標系の軸に対して傾斜して推移する場合)評価線が、画像値に対応する位置の近くを延びているか、そこから遠く離れて延びているか、或いは体積領域の中心を貫通していないことを考慮することができる。
【0020】
材料界面の位置を検出するために、本発明では、評価線の方向における画像値の第1の部分導関数の絶対値が材料界面の位置において極大値を有するとの条件を設定する。しかし、このことは、本発明による方法を実施する際に、第1の部分導関数を必ず計算しなければならないことを意味するものではない。詳しくは、例えば、評価線の方向における第2の部分導関数がゼロであるという(変曲点の判断基準)同等の判断基準を使用することもできる、或いは例えば、画像データ(例えば、ボクセル)の位置が離散的である場合には、画像値の偏差を直接評価することができる。評価線の方向に対して隣接する画像値を比較した場合に、それらの画像値の偏差が最大であったということは、第1の部分導関数の絶対値が最大であったことに対応する。この場合、直接隣接する画像値間の偏差を観察することができるのみならず、例えば、各画像値について、直接隣接する画像値間のn個の間隔又はボクセルのn個の辺の長さに相当する大きさの位置領域内における偏差も考慮することができ、この場合、nは、1よりも大きな整数である。
【0021】
特に、三次元画像データは、被検対象物の内部構造に関する情報を有する。この場合、「内部」構造という用語は、被検対象物の1つ以上の材料領域によって形成される全ての境界構造を含むとともに、被検対象物の外面も含む。後者の例では、例えば、内部構造が単一の材料から成る材料領域を有し、その領域内を透過放射線が浸入する。
【0022】
特に、透過放射線を用いて、被検対象物の1つ以上の材料の周縁部及び/又は表面の形状及び位置を決定することができる。周縁部及び表面とは、1つ以上の材料の外側と内側の境界面であると解釈する。逆に、材料の境界面には、例えば、外側の表面、(例えば、空洞の)内側の表面又は被検対象物の異なる材料への材料移行部が有る。
【0023】
本発明による方法の特に有利な実施形態では、評価線は、それが材料の予想される境界面上の1点を通って延びるとともに、その点において、予想される境界面に対して垂直な方向を有するように決定される。有利には、そのような点及び予想される境界面は、被検対象物の目標とする状態に関する情報から、特に、被検対象物のCAD(コンピュータ支援設計)データから算出される。被検対象物の目標とする状態に関する情報は、工業的に製造される対象物の場合、通常本来存在するものである。特に、目標とする状態と実際の状態とを比較する時には、そのような点又は境界面が目標とする状態からずれている場合の誤差を決定するために、予想される点の位置に関する情報を使用することもできる。
【0024】
更に、目標とする状態に関する情報の使用は、三次元画像データの限定された領域だけを評価すれば良いという利点を有する。例えば、被検対象物の複数の領域について、それぞれ予想される境界面上において、少なくとも1つの点を算出し、次に、それらの点について、それぞれ1つの評価線を決定する。境界面の推移の完全な算出は、品質管理には不必要である。
【0025】
更に、目標とする状態に関する情報の使用は、縞模様を有する、或いは画像値が変化しているが、材料界面が予想されない領域を考慮しないで済むという利点を有する。従って、被検対象物に関する予備知識無しに体系的に評価する場合と異なり、「見掛け上」の材料界面が決定されてしまうことはない。
【0026】
評価線が予想される境界面に対して垂直に延びていることによって、画像値の第1の部分導関数の特に大きな値を予想することができる。従って、評価線の方向における第1の部分導関数の偏差は、通常特に大きくなる。このことにより、材料界面の位置を決定する際の信頼性が向上される。
【0027】
特に、評価結果に対する統計的変動及びその他の擾乱原因の作用を低減するために、画像値の取得の際に、特に、デジタルフィルタリングによって、場所が隣接する画像値間の偏差を部分的に補正するか、或いは部分的に防止することができる。好適なフィルタリング手法は、公知であり、例えば、特許文献2に記載されており、その内容全体を参考としてここに組み込むこととする。「部分的」とは、そうでないと材料界面を決定するための情報が排除されてしまうので、当然のことながら完全には偏差が補正されないものであると解釈する。それに代わって、或いはそれに追加して、評価線に沿って存在する画像値を評価する際の擾乱を除去又は低減することができる。特に、評価線に沿って存在する場所が隣接する画像値の偏差及び/又は評価線に沿って存在する画像値から導き出される値の偏差は、材料界面の位置を決定する前又は決定する際に、特に、デジタルフィルタリングによって、部分的に補正することができる。それには、例えば、評価線の方向にスライドする形で使用されるガウスフィルターが適している。評価線に沿って存在する画像値を評価する際のフィルタリングは、評価線の方向における各評価領域に対してのみ、更に、単に線形的にフィルタリングプロセスを実施すれば良いという利点を有する。従って、コンピュータを使用する際に計算時間又は計算能力を節約することができる。
【0028】
フィルタリングにも関わらず、隣接する画像値間の偏差が依然として存在する可能性が有り、その偏差は、評価線の方向における第1の部分導関数の極大値を生じさせるが、その極大値の位置には材料界面が存在しない。その原因は、材料特性の変動及び/又は同一の材料から製造された領域内における不均一性である。特に、このため、評価線の方向における画像値の第1の部分導関数の絶対値が、所定の限界値を上回るか、或いはその限界値以上である場合にのみ、1つの位置を材料界面の位置として検知するのが有利である。この場合、部分導関数の限界値を使用する必要はない。詳しくは、同等の限界値を使用することも可能である。例えば、材料界面の位置を算出するための具体的な手順に応じて、隣接する画像値間の偏差に関して同等の限界値を定めて、それに対応する画像値の位置の間隔を与えれば十分である。
【0029】
特に、材料界面の少なくとも第1の位置が、前述の方法に基づき決定され、複数の別の位置が、同じ材料界面の境界面上で決定され、第1の位置の評価線が、少なくともこれらの別の位置によって規定される境界面に対して垂直に延びるか否かが算出されるか、それらの垂線と評価線との偏差の大きさが算出されるか、或いはその両方が行われる、本発明による方法の実施形態が有利である。このようにして、第1の位置を決定する際の誤差の算出及び/又は補正を行うことができる。特に、それらの垂線の方向に延びるように、評価線を変更することによって、第1の位置の決定を繰り返すことが可能である。このような検証と新たな決定の手順を複数回繰り返すこともできる。
【0030】
評価線の方向の検証は、評価線の方向における第1の部分導関数の最大値が評価線の境界面の貫通角度に依存する(垂線に対する評価線の角度の余弦に比例する)という考えに基づいている。垂線に対する角度が非常に大きい場合、材料界面が検知されないか、画像値の通常の変動として観察されるか、その両方の結果になる可能性が有る。
【0031】
有利には、第1の位置に隣接する別の位置は、例えば、又もや評価線を用いて、少なくとも部分的に決定することができる。それに代わって、或いはそれに追加して、そのような境界面上の別の位置は、例えば、それらの位置が(特に、許容範囲内において)第1の位置の画像値と同じ画像値を有することによって決定することができる。
【0032】
更に、コンピュータ又はコンピュータネットワーク上で実施する場合、本発明による方法の実施形態の中の1つを実行するコンピュータプログラムは、本発明の範囲に含まれる。三次元画像データは、特に、コンピュータ又はコンピュータネットワークの不揮発性メモリに記憶されるか、インタフェースを介して不揮発性メモリに供給されるか、その両方が行われる。コンピュータ又はコンピュータネットワークは、(例えば、CTにおける所謂逆投影によって)三次元画像データを生成するために使用することもできる。
【0033】
更に、コンピュータ又はコンピュータネットワークでプログラムを実行する場合、本発明による方法の実施形態の中の1つを実行するためのプログラムコード手段を有するコンピュータプログラムは、本発明の範囲に含まれる。特に、プログラムコード手段は、コンピュータ読み取り可能なデータ記憶媒体に記憶することができる。
【0034】
更に、コンピュータ又はコンピュータネットワークの作業メモリ及び/又はメインメモリにロードした後に、本発明による方法の実施形態の中の1つを実施することができるデータ構造で記憶されたデータ記憶媒体は、本発明の範囲に含まれる。
【0035】
また、コンピュータ又はコンピュータネットワークでプログラムを実行する場合、本発明による方法の実施形態の中の1つを実施するために、機械読み取り可能な記憶媒体に記憶されたプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品は、本発明の範囲に含まれる。
【0036】
この場合、コンピュータプログラム製品とは、販売可能な製品としてのプログラムであると解釈する。この製品は、基本的に任意の形態、即ち、例えば、紙又はコンピュータ読み取り可能なデータ記憶媒体で提供することができるとともに、特に、データ伝送ネットワークを介して配布することができる。
【0037】
更に、被検対象物の材料界面を決定するための装置であって、
・透過放射線を用いて、被検対象物の三次元画像データの画像値を取得し、その画像データを受信するためのインタフェースと、
・被検対象物に対して相対的に評価線を決定するための決定機器と、
・インタフェースと決定機器に接続された評価機器であって、評価線の方向における画像値の第1の部分導関数の絶対値が材料界面の位置に極大値を有するように、評価線に沿って存在する画像値を評価することによって、被検対象物の材料界面の位置を決定するように構成された評価機器と、
を備えた装置を提案する。
【0038】
決定機器及び評価機器は、特に、三次元画像データを評価するように構成されたソフトウェアとして実装することができる。しかし、(例えば、特別に構成されたマイクロエレクトロニクス構成部品を有する)ハードウェア又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせによる実現形態も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下において、図面に模式的に図示した実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
図1に図示した被検対象物1の画像は長方形である。実際には、このような画像に対して、グレースケールによる図面が使用される。この場合、領域が暗い程、その領域が吸収する放射線が少なくなる。しかし、ここで詳細に説明するアーティファクトが出現している。
【0041】
図1の暗いほぼ黒色の領域は、画像情報の記録中に実際の被検対象物1を取り囲んでいた空気に対応する。被検対象物1は、上方にボール状の頭部9が配置された切頭円錐10から構成される。これらの切頭円錐及び頭部は、チェス用の通常の駒としての輪郭を形成している。しかし、切頭円錐10及び頭部9と同じ材料から成る、切頭円錐10を出発点として下方に拡がる底部11も形成されている。切頭円錐10と底部11との間には、図1から見掛け上分かる通り、材料界面は存在しない。しかし、実際には、底部11の材料界面は、黒で図示した空気層13に対して下方に存在し、底部11の下で、その底面全体に沿って延びるとともに、別の材料から成る底部プレート12に対して、それぞれ右側と左側に延びている。底部11の右側及び左側の材料界面は、それぞれ垂直上方に延びる境界線によって認識することができる。底部プレート12は、相応に形成された切欠き内に底部11を完全に収容している。底部プレート12は、断面図では、ほぼ長方形の外側輪郭を有する。
【0042】
図1に輪郭図として図示した断面図は、コンピュータトモグラムの画像データから生成したものである。本来の断面図は、グレースケールによる画像であった。CT撮像の際に、ほぼ水平に延びる放射線が、被検対象物を透過した。その場合、被検対象物は、垂直方向に延びる軸の周りを回転した。従って、底部11に関する情報は、同じ放射線経路で底部プレート12も貫通した放射線のみによって得られたものである。その結果、底部11は、体積単位当り切頭円錐10及び頭部9と全く同じ量の放射線を吸収したにも関わらず、底部11に関して(斜線によって示された)強調されたグレースケール値が得られた。更に、図1に対応するグレースケール画像において、空気層13の左右の側方には、それらの周辺部よりも明るく見える縞模様14,15が形成された。これらの縞模様は、空気層13と同じ高さ位置で筋状に延びている。これらの縞模様は、図1に線で図示されている。
【0043】
ここで、本発明による方法の特に有利な実施形態について述べる。この場合、図3を参照する。
【0044】
工程S1では、被検対象物の予想される材料界面上の検査位置を決定するために、被検対象物の目標とする状態に関する目標とする状態の情報(例えば、CADデータ)を使用する。
【0045】
次の工程S2では、各検査位置に関して、それに対応する境界面の法線、即ち、各検査位置で境界面を貫通する、境界面に対して垂直に延びる線(又はその方向)が、評価線として決定される。
【0046】
工程S1とS2の結果が、図2に模式的に図示されている。複数の評価線を認識することができ、その中の幾つかが符号17で表示されている。これらの評価線に沿って、以下に記載する通りの本発明による材料界面の各位置の決定が行われる。
【0047】
工程S1とS2は、対象物の所定の1種類に対して、1回だけ実施することができる。対象物の種類に従って製造された検査すべき各被検対象物に関して、1つの評価線に対応して、それぞれ1組の検査位置が提供される。従って、これ以降の工程は、各被検対象物に対して、任意の回数だけ繰り返すことができる。このことは、対応するループによって示されている。
【0048】
工程S3では、被検対象物、例えば、図1の被検対象物1の三次元画像データ及び被検対象物の目標とする状態に関する目標とする状態の情報が登録される、即ち、それらの座標系が互いに関連付けられる。その結果ここで、決定した検査位置及び評価線に対応する三次元画像データの画像点及び方向を検出、定義することができる。この場合、評価線の正しい位置と向きのみが重要である。それに対して、検査位置は、必ずしも三次元画像データセットに移行する必要はない。
【0049】
この登録のためには、特に、被検対象物を特徴付ける形状の特徴をマーカーとして使用することができる。目標とする状態の三次元データ(例えば、被検対象物のCAD設計データ)が存在する場合、目標とする状態のデータと三次元画像データの相関による画像情報の最大化手法に従って登録を行うことも可能である。好適な登録方法は、例えば、特許文献4により公知である。この特許文献による方法は、放射線治療の際に、三次元CTデータに関して患者を登録するために使用されている。この場合、デジタルで再構成化された放射線写真画像(所謂DRR)が、CTデータから生成されて、患者のその時々の位置及び向きの画像と比較されている。特に、それらから、患者の瞬間的な位置及び向きの偏差に関する情報を導き出すことができる。特許文献4に記載された方法は、その内容全体を参照して本明細書に組み込むこととする。この場合、三次元画像データは、そのようなCTデータに対応し、被検対象物の目標とする状態の情報は、患者のその時々の位置及び向きに対応する。その結果、両方のデータセット間の位置及び向きに関する偏差を最小化した形で登録を行うことができる。
【0050】
工程S3及びこれ以降の工程は、各評価線に対して個別に実施することもできる。
【0051】
ここで、工程S4では、これらの評価線又は各評価線に対して、評価線に沿って存在する画像値を算出する。この場合、図4と図5に基づき詳細に説明する具体的な実施例では、ボクセルに分解された形で存在する三次元画像データを出発点とする。
【0052】
図4は、三次元画像データの体積単位、即ち、立方体を図示している。立方体の各頂点は、1つの画像値が割り当てられている、三次元画像データの座標系内の1つの位置を定義している。この図面は、立方体の各頂点が三次元画像データの1つのボクセルの中心点を示していると解釈することもできる。評価線は、又もや符号17で表示され、図4では右上から左下に向かって延びており、この場合、評価線は、更に、三次元図面に従って後方上から前方下に向かって延びている。このことは、貫通点18(体積単位の右側側面)及び19(体積単位の底部)によって示されている。材料界面の位置を算出するために、評価線17上の等間隔の点に関して、評価線17に沿って存在する画像値の重み付けによって決まる値を算出する。図示されている体積単位内では、これらの点の1つ、即ち、点16が含まれている。図5には、二次元の場合に関して、評価線17上における(黒色の円によって図示された)等間隔の点の原理が図示されている。この場合、特に、1つ以上の点が(図5に正方形で図示されている)1つの体積単位内に含まれていると考えることができる。それ以外の場合、各体積単位内には、1つの点も含まれていない。しかし、それによって、それに該当する情報は利用されないこととなる。従って、有利には、評価線17上の点間の間隔は、三次元画像データの単位長である(例えば、立方体の辺の長さに等しい)。
【0053】
有利には、図4の点16(とそれに対応して評価線17上のその他の全ての点)の画像値は、立方体の頂点における画像値の三次元線形(3つの座標軸に関する)補間によって算出される、例えば、次の方法に従って算出される。先ずは、点16が立方体の8つの辺部分に対して垂直に投影される。この場合、立方体の1つの側面は、それぞれ4つの辺を構成している。これらの辺のそれぞれ4つの辺によって囲まれた二つの側面は、互いに向き合っている。それらに対応する投影された点A〜H(図4参照)に対して、それぞれ辺の二つの頂点における画像値を線形補間した画像値が、次の式に従って算出される。
int =We1*a+We2*(1−a)
【0054】
ここで、Wint は、投影された点における補間された画像値であり、We1は、一方の頂点の画像値であり、We2は、他方の頂点の画像値である。このようにして、更に補間して行くことができ、そして、立方体の側面上への点16の垂直投影によって得られた6つの点に関して、画像値が補間されることとなる。次に、それぞれ互いに対向する側面上の点の対に対して、更に3回の補間を行って、点16の画像値を算出することができる。例えば、3つの補間値の和を演算して、三次元線形補間された画像値として使用する。
【0055】
これらの方法及びその他の方法は、評価線に沿って存在する相異なる画像値の重み付けによって、画像値と評価線間の間隔を考慮しており、従って、評価線上の材料界面の位置を決定する際に、より正確な結果を生じさせることとなる。
【0056】
工程4の結果(重み付けを行うか否かに関係なく)、1次元による位置にのみ依存する画像値が得られる。この場合、有利には、前述した重み付けを行う。しかし、それ以外のことを実行することもできる。例えば、常に評価線上の点に最も近い頂点の画像値だけを取得することができる。
【0057】
ここで、工程S5において、評価線上の材料界面の位置が決定される。そのために、任意選択により、画像値の偏差の平滑化(例えば、ガウスフィルターによるフィルタリング)を実施することができる。図6は、前述の工程から得られた情報の例として、画像値(y軸、任意の単位で約0〜10000の範囲の値)が評価線によって定義される座標軸(x軸)に渡ってプロットされたグラフを図示している。この場合、画像値は、(ここでは、約−17〜+1まで図示されている)評価線上の点の序数の関数である。この図面では、関数は階段関数であり、各階段のレベルは画像値に対応している。
【0058】
更に、図6には、例えば、階段関数の線形補間に従って演算された、評価線の方向における画像値の第1の部分導関数(実線)及び第2の部分導関数(点線)が図示されている。ほぼ−9.6の位置、即ち、序数−9と−10の点の間に、第2の部分導関数の零点が有る。それは、第1の部分導関数の最も大きな絶対値に対応している。この点に対応する評価線上の位置は、材料界面の位置として決定される。
【0059】
任意選択の工程S6では、材料界面の決定された位置と目標値情報から算出された検査位置との間の間隔の計算が行われる。その間隔が所定の閾値を越えた場合、エラーメッセージを出力することができる(工程S7)。
【0060】
図7は、特に、本発明による方法の前述した特に有利な実施形態を実現するように構成することができる、被検対象物の材料界面を決定するための装置を図示している。
【0061】
被検対象物の三次元画像データ及び目標とする状態の情報は、不揮発性データメモリ21に記憶されている。材料界面を決定するための装置23は、インタフェース22を介して、データメモリ21と接続されている。装置23は、インタフェース22を介して、目標とする状態の情報をデータメモリ21から読み出すか、(例えば、図示していないワークメモリに)ロードするか、或いはその両方を実行することができる決定機器24を備えている。
【0062】
評価機器25は、インタフェース22及び決定機器24と接続されている。この評価機器は、(例えば、上述の工程S3〜S6に従って)決定機器24によって与えられた評価線上において、材料界面の位置を決定するように構成されている。
【0063】
それに代わって、決定機器24の結果は、再度データメモリ21に記憶することができ、その結果決定機器24と評価機器25間の接続は、必ずしも必要ではない。
【0064】
誤差決定機器26は、評価機器25と接続されており、評価機器の結果から、材料界面の位置の所における場合によっては生じる誤差を算出して、出力するように構成されている。それに代わって、或いはそれに追加して、誤差決定機器26は、同じ材料界面の1つの境界面上における複数の別の位置を決定する上述した方法を実施するように構成され、その場合第1の位置の評価線が、少なくともこれらの別の位置によって定義される境界面に対して垂直に延びるか否かを算出するか、それらの垂線と評価線間の偏差の大きさを算出するか、或いはその両方を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】被検対象物の1組の三次元画像データから生成された平坦な二次元断面を模式的に図示した輪郭図
【図2】複数の評価線を有する図1の断面図
【図3】本発明による方法の特に有利な実施形態の方法の工程を説明するためのフローチャート図
【図4】評価線に沿って存在する画像値の重み付けを示すための体積単位の図
【図5】評価線上の点を算出する方法を説明するための簡略化した二次元図面
【図6】評価線上の位置の関数としての画像値グラフ
【図7】材料界面を決定するための装置の模式図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検対象物(1)の材料界面を決定するための方法であって、
・透過放射線を用いて、画像データの画像値を取得することによって被検対象物(1)の三次元画像データを生成するか、或いは取得して置いた画像データの画像値によって被検対象物(1)の三次元画像データを取得し、
・被検対象物(1)に対して相対的に、画像データを評価するための評価線(17)を決定し、
・評価線(17)の方向における画像値の第1の部分導関数の絶対値が材料界面の位置に極大値を有するように、この評価線に沿って存在する画像値を評価することによって、被検対象物(1)の材料界面の位置を決定する方法。
【請求項2】
評価線(17)が、材料の予想される境界面上の1点を通って延びるとともに、その点において予想される境界面に対して垂直な方向を有するように決定される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
当該の点及び予想される境界面が、被検対象物(1)の目標とする状態に関する情報から、特に、被検対象物(1)のCAD(コンピュータ支援設計)データから算出される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
当該の画像値を取得する際に、場所が隣接する画像値間の偏差が、特に、デジタルフィルタリングによって、部分的に補正される請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
評価線(17)に沿って存在する場所が隣接する画像値の偏差及び/又は評価線(17)に沿って存在する画像値から導き出される値の偏差が、材料界面の位置を決定する前又は決定する際に、特に、デジタルフィルタリングによって、部分的に補正される請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
評価線(17)に沿って存在する画像値を評価する際に、評価線(17)と画像値間の間隔に応じて画像値の重み付けを行う請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
評価線(17)の方向における画像値の第1の部分導関数の絶対値が、所定の限界値を上回るか、或いはその限界値以上である場合にのみ、1つの位置が材料界面の位置として検出される請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法に従って材料界面の少なくとも1つの第1の位置を決定する方法であって、同じ材料界面の境界面上において、複数の別の位置を決定し、第1の位置における評価線(17)が、少なくともこれらの別の位置において定義される境界面に対して垂直に延びるか否かを算出するか、それらの垂線と評価線(17)間の偏差の大きさを算出するか、或いはその両方を行う方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法を実施するように構成されたコンピュータプログラムであって、このコンピュータプログラムが、コンピュータ又はコンピュータネットワーク上で実行されるコンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータ読み取り可能なデータ記憶媒体に記憶されたプログラムコード手段を有する請求項9に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
被検対象物(1)の材料界面を決定するための装置(22、23)であって、
・透過放射線を用いて、被検対象物(1)の三次元画像データの画像値を取得して置き、その画像データを受信するためのインタフェースと、
・被検対象物に対して相対的に評価線(17)を決定するための決定機器(24)と、
・インタフェース(22)及び決定機器(24)と接続された評価機器(25)であって、評価線(17)の方向における画像値の第1の部分導関数の絶対値が材料界面の位置に極大値を有するように、評価線(17)に沿って存在する画像値を評価することによって、被検対象物(1)の材料界面の位置を決定するように構成された評価機器(25)と、
を備えた装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−541110(P2008−541110A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511612(P2008−511612)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004625
【国際公開番号】WO2006/122756
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(504258804)カール ツァイス インドゥストリエレ メステヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (11)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Industrielle Messtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Carl Zeiss Strasse 22, D−73447 Oberkochen,Germany
【Fターム(参考)】