説明

被着体の貼付方法

【課題】プリント基板と補強用フィルムとを積層し、接着させる手段で、その積層面に気泡を発生させず、且つ、一般的なラミネート装置で実施可能な手段を提供する。
【解決手段】半硬化状態の反応型接着剤からなる接着剤層の両面に平面ライナが着けられた積層体を用意し、この平面ライナ一枚を取り外し、その接着剤層の一の面に、第1の被着体(補強用フィルム)の当該平面を接着する第1の工程と、積層体から他の平面ライナを取り外し、その接着剤層面に、微細エンボスパターン面を有するエンボスライナを圧着して、微細エンボスパターンを形成する第2の工程と、接着剤層の他の面からエンボスライナを取り外し現れる、微細エンボスパターンが形成された接着剤層の他の面に、第2の被着体(フレキシブルプリント基板)を熱圧着する第3の工程と、を含む被着体の貼付方法の提供による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体と接着剤層との間に気泡が生じ難い被着体の貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機械や電子機器の回路基板や、可動部の連絡配線基板として、あるいはチップレベルのパッケージにおける配線基板等として、薄く、柔軟性に富み、優れた屈曲特性を有するフレキシブルプリント基板 (FPC、Flexible Printed Circuit)が、広く用いられている。一般に、FPCは、フィルム状の基体の一面に回路パターンが形成されたものであって、フィルム状の基体が柔軟性を有する高分子樹脂等でなることにより、屈曲特性を発現する。そして、このようなFPCは、接着剤フィルムを挟んで補強用フィルムを160℃程度の高温で熱圧着し、FPCと補強用フィルムとを接着剤フィルムを用いて接着することにより、補強される。
【0003】
しかし、この接着の際に、圧着が十分でないと、接着に用いる接着剤フィルムとFPCの基体との間に、気泡が発生するという問題があった。又、FPCに補強用フィルムを接着する場合に限らず、一般に、被着体どうしを接着剤フィルムを介して貼付する際には、圧着が不十分であったり、被着体の接着面に凹凸があったり粗面であったりすると、接着面に気泡が発取り残されるという問題が生じていた。
【0004】
接着面の気泡を除去する手段としては、従来、真空装置で吸引したり、ロール装置により加圧して行う方法が知られているが(例えば、装飾フィルムの貼付技術につき特許文献1を参照)、設備が大掛かりになるという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開昭56−113420号公報
【特許文献2】特許第3550096号公報
【特許文献3】特表平7−508303号公報
【特許文献4】米国特許第5,677,376号明細書
【特許文献5】米国特許第5,650,215号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、接着面に気泡を発生させることなく接着剤フィルムを挟んで被着体どうしを接着させる手段を提供することにあり、特に、被着体がFPCと補強用フィルムである場合に、それらを積層し接着するのに好適な手段であって、その積層・接着面に気泡を発生させることなく、且つ、大掛かりな設備を用いず一般的なラミネート装置や平板熱圧着装置を用いて実施可能な手段を提供することにある。検討が重ねられた結果、以下に示す手段により、上記目的を達成出来ることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、先ず、半硬化状態(Bステージ)の反応型接着剤からなる接着剤層の一の面に平面な基材が着けられ、且つ接着剤層の他の面に微細エンボスパターンが形成された積層体を用意し、その積層体の、微細エンボスパターンが形成された上記他の面に、被着体を熱圧着する工程を含む被着体の貼付方法が提供される(本明細書において、本発明の第1の態様ともいう)。
次に、本発明によれば、半硬化状態(Bステージ)の反応型接着剤からなる接着剤層の両面に平面ライナが着けられた積層体を用意し、その積層体から一の平面ライナを取り外し、その一の平面ライナが取り外されて現れる前記接着剤層の一の面(B面)に、平面を有する第1の被着体の平面を接着する第1の工程と、積層体から他の平面ライナを取り外し、その他の平面ライナが取り外されて現れる前記接着剤層の他の面(A面)に、微細エンボスパターン面を有するエンボスライナの前記微細エンボスパターン面を圧着して、微細エンボスパターンを形成する第2の工程と、接着剤層の他の面(A面)からエンボスライナを取り外し、そのエンボスライナが取り外されて現れる、微細エンボスパターンが形成された接着剤層の他の面(A面)に、第2の被着体を熱圧着する第3の工程と、を含む被着体の貼付方法が提供される(本明細書において、本発明の第2の態様ともいう)。
【0008】
本発明の第2の態様においては、微細エンボスパターン面を有するエンボスライナは、ピッチが300μm以下の格子状パターンを呈するとともにその高さが5〜30μmである連続した凸条部が自身の端面に至るまで形成されているライナであることが好ましい。
【0009】
次に、本発明によれば、微細エンボスパターン面を有するエンボスライナを用意し、そのエンボスライナの微細エンボスパターン面に半硬化状態(Bステージ)の反応型接着剤を塗布することにより、一の面(A面)に微細エンボスパターンが形成された接着剤層を得る第1の工程と、接着剤層の他の面(B面)に、平面を有する第1の被着体の平面を接着する第2の工程と、接着剤層の一の面(A面)からエンボスライナを取り外し、そのエンボスライナが取り外されて現れる、微細エンボスパターンが形成された接着剤層の一の面(A面)に、第2の被着体を熱圧着する第3の工程と、を含む被着体の貼付方法が提供される(本明細書において、本発明の第3の態様ともいう)。
【0010】
本発明の第3の態様においては、微細エンボスパターン面を有するエンボスライナは、ピッチが300μm以下の格子状パターンを呈するとともにその高さが5〜30μmである連続した凸条部が自身の端面に至るまで形成されているライナであることが好ましい。
【0011】
尚、本明細書において、単に本発明の被着体の貼付方法というときには、本発明の第1の態様、本発明の第2の態様、及び本発明の第3の態様の全てを指すものとする。又、本明細書において、接着剤層の2つの面のうち、微細エンボスパターンが形成される(された)面をA面とよび、微細エンボスパターンが形成されない(されていない)面をB面とよぶ。
【0012】
本発明の被着体の貼付方法は、微細エンボスパターン面を有するエンボスライナを用いて、接着剤層に微細エンボスパターンを形成し、その微細エンボスパターンを形成した接着剤層の面(A面)に、一方の被着体に貼付する工程を含む方法である。本発明の被着体の貼付方法において、接着剤層を構成するBステージの接着剤として熱硬化性接着剤を採用し、第1の被着体として厚さが50〜200μmであり融点が200℃以上の高分子樹脂からなる基材を用いこれを接着剤層のB面に接着し、第2の被着体としてFPCを用いこれをA面に接着することが可能である。このような態様によって、本発明の被着体の貼付方法は、柔軟性、耐熱性の観点より、FPCを補強する好適な手段として利用出来る。第3の工程における熱圧着において一般的なラミネート装置や平板熱圧着装置を用いて、接着剤層にFPCと基材を貼付するだけで、少なくとも微細エンボスパターンを形成した接着剤層の面(A面)とFPCとの積層面には気泡を発生させることなく、FPCの強度の調整をすることが可能である。
【0013】
本発明の被着体の貼付方法は、本発明の第2の態様においては第2の工程で、本発明の第3の態様においては第1の工程で、微細エンボスパターン面を有するエンボスライナを用いて、接着剤層のA面に微細エンボスパターンを形成する。この微細エンボスパターンは、原則として平面に形成され、その平面に、格子状パターンを呈する連続した凹条部が接着剤層の端面に至るまで形成され、凹条部は、その格子状パターンのピッチが300μm以下であるとともに、その深さが5〜30μmであることが好ましい。更には、凹条部が、その開口面から底部に向けて連続的に幅が狭くなるように形成され、開口面における幅が10〜30μmであり、底部における幅が0〜5μmであることが好ましい。微細エンボスパターンがこのような態様であることにより、空気等の流体が、凹条部を通って、より流出し易く(即ち、閉じこめられ難く)なるからである。尚、原則として平面、との表現は、主として平面であることを前提として、凹条部等の間に平面が存在し、凹条部等を除いて平面であることを意味する。又、開口面とは、実体の存在しない面であり、凹条部において仮にその凹条部が存在しないとした場合の、接着剤層の面(平面)に等しい面である。
【0014】
接着剤層のA面に微細エンボスパターンを形成するための、微細エンボスパターン面を有するエンボスライナは、微細エンボスパターンの上記凹条部を形成する凸条部を有するものである。そして、本発明の被着体の貼付方法においては、第3の工程において、第2の被着体に熱圧着されるまでは、エンボスライナが、接着剤層のA面に積層されているため、接着剤層が半硬化状態(Bステージ)の熱硬化性接着剤からなるものであっても、凹条部が型崩れしない。従って、貼付する直前(第3の工程)にエンボスライナを取り外すことにより、空気を流出させ且つ貼付後に検知不能となるという効果を、安定して発揮し得る。
【0015】
本発明の被着体の貼付方法においては、接着剤層のA面に上記凹条部とは別に、概ね等間隔に配置された凸部を形成することが好ましい。凸部の形成により、第3の工程において、最終的に貼付(完全に接着)させるべく十分な圧力を加える前に、第2の被着体の表面にその凸部を接触させながら滑らせて位置調整を行うことが出来る。従って、接着剤層(A面)に第2の被着体(例えばFPC)に貼付するにあたり、位置決めが、より正確に、より容易に行える。
【0016】
本発明の被着体の貼付方法において、第3の工程における熱圧着の条件は、好ましくは、ラミネート装置を用いて、ロールの温度が80〜95℃、速度が0.5〜1.5m/min、圧力が200〜400kPaである。
【0017】
本発明の被着体の貼付方法において、第1の被着体としては、カバーレイフィルム、ドライフィルム、FPC等を適用することが出来、第2の被着体としては、基板やFPC等を用いることが出来る。又、本発明の被着体の貼付方法は、第1の被着体がIC(集積回路)チップであり第2の被着体が基板(リードフレーム含む)である場合、あるいは、第1の被着体が半導体のヒートシンクであり第2の被着体が半導体の一の面(例えば上面)である場合に、好適に利用され、第1の被着体と第2の被着体とを、それらの間に気泡を発生させることなく、接着(熱圧着)させることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の被着体の貼付方法は、被着体と接着剤層との積層面に気泡を生じさせることなく、接着剤層に被着体を貼付することが可能である。より具体的には、本発明の被着体の貼付方法は、微細エンボスパターン面を有するエンボスライナを用いて接着剤層に微細エンボスパターンを形成するので、その面(A面)に被着体(例えばFPC)が貼付されたときに、微細エンボスパターンが空気等の流体を被着体及び接着剤層の間から外へ流出させるとともに、接着剤層がBステージであるために、被着体に対して充分に接着する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参酌しながら説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は以下に記述される手段である。
【0020】
本発明の被着体の貼付方法は、微細エンボスパターンが形成されない接着剤層の面(B面)に平面を有する被着体(第1の被着体)を接着する工程と、微細エンボスパターン面を有するエンボスライナを用いて接着剤層に微細エンボスパターンを形成しその微細エンボスパターンを形成した接着剤層の面(A面)に被着体(第2の被着体)を熱圧着する工程と、を含む方法である。本発明の被着体の貼付方法においては、平面を有する第1の被着体として、カバーレイフィルム、ドライフィルム等のフィルム状基材を好適に採用出来、又、接着剤層のA面に第2の被着体を熱圧着する前に、接着剤層のB面に第1の被着体を接着するとともに、接着剤層のA面にエンボスライナによって微細エンボスパターンを形成する。本明細書において、フィルム状基材(第1の被着体)を接着剤層のB面に接着し、接着剤層のA面に微細エンボスパターンを形成した状態のものを、本発明に係るエンボス接着剤フィルムとよぶ。以下、先ず、この本発明に係るエンボス接着剤フィルムについて説明する。
【0021】
図1〜図4は、本発明に係るエンボス接着剤フィルムの一の実施形態を示す図であり、図1は端面を表した側面図であり、図2は接着剤層側を表した平面図であり、図3及び図4は接着剤層の表面を示しており、凹条部の長手方向に垂直な断面における凹条部の拡大図である。
【0022】
図示されるエンボス接着剤フィルム1は、基材層2(フィルム状基材で構成される層)と接着剤層3とが積層されてなるものであり、接着剤層3は、基材層2とは反対側の面が原則として平面であり、その平面に、格子状パターンを呈する連続した凹条部4が接着剤層3の端面5に至るまで形成されている。凹条部4を形成する凸条部を有する(図示されない)エンボスライナが、接着剤層3の基材層2とは反対側の面に更に積層されてなることが好ましいが、エンボス接着剤フィルム1は、これを外したものである。
【0023】
格子状パターンとは、図2に示されるように、複数の凹条部4どうしが交差して形成される微細エンボスパターンの一例である。但し、格子状である限りにおいて、エンボス接着剤フィルム1の如く、格子が正方形を描くものに限定されるわけではない。エンボスとは、この凹条部4が形成されて凹凸が存在する態様を表している。連続した凹条部4とは、途切れることなく筋状に形成された凹みを指し、凹条部4とは概ね溝と同義である。接着剤層3の端面5に至るまで形成されとは、連続した凹条部4が接着剤層3の端面5に至るまで形成されていて、その端面5で開放されており、端面5で凹条部4が視認出来る状態(図1参照)を意味する。
【0024】
エンボス接着剤フィルム1において、基材層2の厚さt2は、実施の一形態としては、125μmであり、接着剤層3の厚さt3は、実施の一形態としては、40μmである(図1参照)。本発明に係るエンボス接着剤フィルムにおいては、基材層は、通常、厚さが50〜200μmであり、接着剤層は、通常、厚さが15〜100μmである。
【0025】
エンボス接着剤フィルム1の基材層2を構成する材料は、耐熱性を有するものであれば限定されない。この耐熱性を有するとは、具体的には、ハンダリフロー工程等の200℃を超える温度下においても耐熱性を有することをいう。基材層を構成する材料として好ましい材料は、ポリイミド、ガラスエポキシ、等の樹脂材料や、銅、ステンレス、アルミニウム等の金属材料である。
【0026】
一方、エンボス接着剤フィルム1の接着剤層3は、Bステージの反応型接着剤、より具体的には、熱硬化性接着剤であるエポキシ系接着剤で構成されている。この熱硬化性接着剤は、感圧型接着剤(粘着剤)とは異なり、熱によって反応が進み、その反応によって接着性能を発揮するものであり、エポキシ系の他に、例えば、ポリエステル系、フェノール系、ポリウレタン系等の熱硬化性接着剤を採用することが出来る。その他に、Bステージの反応型接着剤として、熱可塑性接着剤を採用することも可能であるが、より好ましいものはエポキシ系の熱硬化性接着剤である。
【0027】
エンボス接着剤フィルム1において、実施の一形態としては、凹条部4は、その格子状パターンのピッチPが197μmであり、その深さDは10μmである。ピッチPは、隣接する凹条部4間の距離を指し、凹条部4の深さDは、その開口面Sから底部E(最深部)までの距離を指す。本発明に係るエンボス接着剤フィルムにおいては、実施の一形態としては、格子状パターンのピッチは、全ての凹条部間において300μm以下であればよい。より好ましくは250μm以下、更に好ましくは200μm以下である。又、凹条部の深さは、5〜30μmであればよく、より好ましくは8〜12μmである。
【0028】
エンボス接着剤フィルム1は、実施の一形態としては、凹条部4が、その開口面Sから底部Eに向けて連続的に幅が狭くなるように形成され、角度θ(図4参照)は60°であり、開口面Sにおける幅WSが14.5μmであり、底部Eにおける幅WEが3μmである。本発明に係るエンボス接着剤フィルムにおいては、開口面における幅が10〜30μmであり、好ましい底部における幅が0〜5μmであればよい。角度θはそれら2つの幅(の比)で決まり、通常、7〜90°である。幅とは、上記幅WS、幅WEで示されるように、途切れることなく筋状に形成された凹みである凹条部の、短手方向の距離である。開口面とは、実体の存在しない面であり、凹条部において仮にその凹条部が存在しないとした場合において、接着剤層の基材層とは反対側の平面に等しい面である。開口面における幅は、より好ましくは15〜25μmである。底部とは、上記底部Eで示されるように、凹条部における(開口面からみた)最深部を含む部分であり、底部における幅が0とは、凹条部の短手方向の断面形状(図3及び図4参照)が頂点を有する場合、例えば逆三角形になる場合を意味する。エンボス接着剤フィルム1の如く、底部における幅が0より大きい場合には、底部は一定の面を形成し、凹条部の短手方向の断面形状は(上辺が長い)台形になる。底部における幅は、より好ましくは2〜4μmである。
【0029】
次に、図5〜図9は、本発明に係るエンボス接着剤フィルムの他の実施形態を示す図であり、図5は接着剤層側を表した平面図であり、図6,7,9は接着剤層の表面を示しており、凹条部の長手方向に垂直な断面における凹条部及び凸部の拡大図であり、図8は凹条部及び凸部を拡大した平面図である。尚、端面を表した側面図は省略している。
【0030】
図示されるエンボス接着剤フィルム51は、上記したエンボス接着剤フィルム1と同様に、基材層(図示されない)と接着剤層3とが積層されてなるものであり、接着剤層3は、基材層側の面(B面)とは反対側の面(A面)が原則として平面であり、その平面に、格子状パターンを呈する連続した凹条部4が接着剤層3の端面5に至るまで形成されている。凹条部4を形成する凸条部を有する(図示されない)エンボスライナが、接着剤層3の基材層とは反対側の面に更に積層されてなることが好ましいが、エンボス接着剤フィルム51は、これを外している。
【0031】
エンボス接着剤フィルム51は、接着剤層3の基材層とは反対側の面(A面)に、概ね等間隔に配置された凸部6が形成されているところが、エンボス接着剤フィルム1と異なる。その他はエンボス接着剤フィルム1と同様であるので、繰り返し記載は避け省略する。
【0032】
エンボス接着剤フィルム51においては、凸部6は角錐状を呈しており(図8及び図9参照)、複数の凹条部4どうしが交差して形成される格子状パターンの凹条部4で囲われた部分(格子の空間に相当する部分)の中心に、1つ存在している(図5及び図8参照)。本発明に係るエンボス接着剤フィルムにおいては、凸部は、錐状を呈していることが好ましく、円錐状であってもよい。概ね等間隔に配置された複数個であれば、数は限定されない。
【0033】
エンボス接着剤フィルム51において、実施の一形態としては、凸部6の幅WNは38μmであり、その高さHは10μmであり、角度φは125°である。本発明に係るエンボス接着剤フィルムにおいては、凸部の幅は5〜50μmであればよく、高さHは5〜15μmであればよい。角度φはそれらで定まり、20〜180°であればよい。
【0034】
尚、エンボス接着剤フィルム1,51において、接着剤層の基材層とは反対側の面(A面)は、原則として平面、と表現されるが、これは、主として平面であることを前提として、凹条部等の間に平面が存在し、凹条部(及び場合により凸部)を除いて平面であることを意味する。これとは異なる態様を図10及び図11に示す。
【0035】
図10、図11は、本発明に係るエンボス接着剤フィルムの更に他の実施形態を示す図であり、図10は接着剤層側を表した平面図(図2及び図5に準じる図)であり、図11は接着剤層の表面の拡大図(図3及び図6に準じる図)である。図示されるエンボス接着剤フィルム101は、基材層と接着剤層3とが積層されてなるものであり、接着剤層3の基材層2とは反対側の面(A面)が凹凸の連続で形成されており、凹条部4の間に平面が存在せず、凹条部4を除くと面が存在しなくなるものである。換言すれば、実体部分である接着剤層3の表面が、錐状を呈する凸部の連続で構成されている。エンボス接着剤フィルム101では、格子状パターンのピッチP(又は凹条部4の幅)は、好ましくは10〜300μmであり、深さDは、好ましくは5〜30μmである。
【0036】
次に、本発明の被着体の貼付方法について、具体的態様を示して説明する。以下の具体的態様は、接着剤層として接着剤フィルムを用い、第1の被着体が基材フィルムであり、第2の被着体がフレキシブルプリント基板である場合の態様であり、これを本発明に係るフレキシブルプリント基板の補強用フィルム貼付方法とよぶ。
【0037】
図12は、本発明に係るフレキシブルプリント基板の補強用フィルム貼付方法の一の実施形態を示す図であり、その工程を(a)〜(e)の順に矢印で示す説明図である。先ず、熱硬化性接着剤からなり両面に平面ライナ7a,7bが着けられた平面の接着剤フィルム123を用意する(図12における(a)参照)。接着剤フィルム123は、のちに接着剤層を構成するフィルムであり、作製してもよいが市販のものを購入することが出来る。エポキシ系、ポリエステル系、フェノール系、ポリウレタン系等の熱硬化性の高分子樹脂からなる接着剤フィルムが市販されている。又は、熱可塑性の接着剤フィルムであってもよい。接着剤フィルム123の厚さは、例えば自身の組成、後述するエンボスライナの種類、被着体であるFPCの種類等によって異なり、当業者は任意に厚さを調節することが出来る。好ましい厚さは30〜200μm以下である。
【0038】
次に、接着剤フィルム123の一の片面の平面ライナ7bを取り外し、そこへ基材フィルム122を接着させる(図12における(b)参照)。基材フィルム122は、のちに基材層を構成するフィルムであり、ハンダリフロー工程では200℃以上の高温にさらされるため、耐熱性を有するものである。基材フィルム122は、作製してもよいが、市販のフィルムを購入することが出来る。ポリイミド、ガラスエポキシ等の樹脂材料、銅、ステンレス、アルミニウム等の金属材料等からなる耐熱性に優れたフィルムが市販されている。厚さは50〜200μm以下であることが好ましい。
【0039】
接着剤フィルム123と基材フィルム122との間の接着を強化するために、プライマーを使用してもよい。プライマーの種類は接着剤フィルム123と基材フィルム122を構成する材料の種類に応じて異なり、当業者は適切なプライマーを選択することが出来る(特許文献4参照)。
【0040】
そして、接着剤フィルム123の他の片面の平面ライナ7aを取り外し、そこへ、凸条部124が形成された微細エンボスパターン面を有するエンボスライナ8を仮貼し、更に、好ましくはラミネート装置を用いて熱圧着をする(図12における(c)参照)。熱圧着をする場合、使用するラミネート装置の好ましい設定は、そのロールの温度が80〜95℃、ロールの速度が0.5〜1.5m/min、圧力が200〜400kPaである。この工程により、接着剤フィルム123に凹条部が形成された、エンボスライナ8付のエンボス接着剤フィルム125を得ることが出来る。エンボス接着剤フィルム125は、基材フィルム122が補強の役割を果たすFPCの補強用フィルムである。
【0041】
尚、エンボスライナ8として、概ね等間隔に配置された凹部を有しているものを採用し、それを仮貼する前に、その凹部の中に接着剤フィルムと同質の熱硬化性接着剤とビーズとを混合したスラリーを投入することにより、接着剤フィルム上に凸部を形成してもよい(特許文献3参照)。
【0042】
凸条部124は接着剤フィルム123に凹条部4を形成するものであり(図12における(d)参照)、凸条部124は格子状パターンを呈しエンボスライナ8の端面に至るまで連続して形成されている。凸条部124は、その格子状パターンのピッチが300μm以下になり、その高さが5〜30μmになるように形成する。又、好ましくは、凸条部124は、その裾野面から頂部に向けて連続的に幅が狭くなるように、且つ裾野面における幅が10〜30μmになるように、頂部における幅が0〜5μmになるように形成する。
【0043】
エンボスライナ8は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の高分子樹脂材料又はこれらのような高分子樹脂材料で被覆された他の材料からなる平面の剥離ライナに対し、加熱されたエンボスロール等を用いて浮き出し加工を施し凸条部124を形成することにより得ることが出来(特許文献2参照)、更に、特許文献5に開示されている技術を用いて作製することが可能である。エンボスライナ8は、剥離処理を施し、剥離特性を向上させることが好ましい。
【0044】
次に、回路パターン層10と基体層9とを有する別途用意したフレキシブルプリント基板11をエンボス接着剤フィルム125に接着する。これは、エンボス接着剤フィルム125からエンボスライナ8を取り外し、エンボス接着剤フィルム125の凹条部4が形成された平面を、フレキシブルプリント基板11の基体層9に接合させて仮貼し、更にラミネート装置を用いて熱圧着することにより行う(図12における(d)参照)。この工程における熱圧着をする際のラミネート装置の好ましい設定は、そのロールの温度が80〜95℃、ロールの速度が0.5〜1.5m/min、圧力が200〜400kPaである。このような設定で、フレキシブルプリント基板11をエンボス接着剤フィルム125に押しつけることにより、凹条部4に閉じこめられた流体(空気)を系外へと流出させ気泡を除去出来る。更に、この際に、接着剤フィルム123の凹条部4が少なくとも視覚的には全て潰れて、フレキシブルプリント基板11と接着剤フィルム123との接触面積を増加させ、所望の接着力を発現するとともに、全体的な外観を向上させる。
【0045】
以上の工程により、基材層2によって補強されたフレキシブルプリント基板121を得ることが出来る(図12における(e)参照)。補強されたフレキシブルプリント基板121において、基材層2は基材フィルム122で構成され、接着剤層3は接着剤フィルム123で構成される。尚、上記の実施態様において、接着剤フィルム123及び平面ライナ7aを用いずに、エンボスライナ8に、直接、接着剤を塗布してフィルム状にすることによっても、微細エンボスパターンを形成した接着剤フィルムを得ることが可能である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に基づき、更に具体的に説明する。
【0047】
(実施例1)厚さが125μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製のApicalTM NPI)と、厚さが40μmのエポキシ系接着剤フィルム(ニッカン工業(株)製のニカフレックスSAFW)と、FPC(厚さが25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製カプトンTME)に、厚さが12μmの銅をアディティブ方によってメッキしたもの)を用意した。又、ポリエチレン製の平面剥離ライナ(株式会社巴川製紙所製)を用意し、エンボス加工機を用いて浮き出し加工を施すことで、凸条部が形成されたエンボスライナを作製した。尚、エンボスライナは、のちに、このエンボスライナによってエンボス加工される接着剤フィルムの微細エンボスパターンが、図3において、P=197μm、D=10μm、図4において、θ=60°、WE=3μm、WS=14.5μmとなるように、作製した。
【0048】
エポキシ系接着剤フィルムの一の片面の平面ライナを取り外し、そこへポリイミドフィルムを接着した。そして、エポキシ系接着剤フィルムの他の片面の平面ライナを取り外し、そこへ、エンボスライナを仮貼し、更に、ラミネート装置を用いて、ロールの温度を90℃、ロールの速度を1m/min、圧力を300kPaとして、熱圧着をして、エンボス接着剤フィルムを得た。得られたエンボス接着剤フィルムは、図1〜4に示されるエンボス接着剤フィルム1と同態様のものである。
【0049】
得られたエンボス接着剤フィルムを、38×8.1mmの大きさに切断し、エンボスライナを剥がして、FPCに仮貼付し、更に、ラミネート装置を用いて、ロールの温度を90℃、ロールの速度を1m/min、圧力を300kPaとして、熱圧着をして、補強されたフレキシブルプリント基板を得た。
【0050】
得られた補強されたフレキシブルプリント基板の気泡の有無を検査し(検査1)、更に、補強されたフレキシブルプリント基板に対し、80℃で30分間、仮キュアーし、その後、160℃で60分間、本キュアーした後に、補強されたフレキシブルプリント基板の気泡の有無を検査した(検査2)。結果を表1に示す。尚、検査は、5人の裸眼による目視観察によるものであり、気泡を確認した人数/全人数(5人)で評価し、更に、気泡の大きさを付け加えた。
【0051】
(実施例2)ラミネート装置に代えて平板熱圧着装置を使用し、熱板温度を150℃、圧力を500kPa、熱圧着時間を30秒として、熱圧着を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、補強されたフレキシブルプリント基板を得て、仮キュアー、本キュアーを行い、気泡の有無を検査した。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例3)エンボスライナの加工法、エンボス加工機、ライナ、その他の材料として実施例1と同じものを採用し、エポキシ系接着剤フィルム上に凸部を形成して、エンボス接着剤フィルムの態様を、図5〜9に示されるエンボス接着剤フィルム51と同態様のものとした。尚、エンボスライナは、のちに、このエンボスライナによってエンボス加工される接着剤フィルムの微細エンボスパターンが、図5〜9に示される態様において、P=197μm、WS=20μm、WE=3μm、θ=60°、D=15μm、WN=38μm、H=10μmとなるように、作製した。それ以外は、実施例1と同様にして、補強されたフレキシブルプリント基板を得て、仮キュアー、本キュアーを行い、気泡の有無を検査した。結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1)エンボスライナを用いずに、エポキシ系接着剤フィルムの一の片面の平面ライナを取り外し、そこへポリイミドフィルムを接着し、平面のみからなる接着剤付フィルムを得て、エポキシ系接着剤フィルムの他の片面の平面ライナを取り外して、FPCに仮貼付し、更に、ラミネート装置を用いて熱圧着をし、それ以外は、実施例1と同様にして、補強されたフレキシブルプリント基板を得た。そして、実施例1に準じて、仮キュアー、本キュアーを行い、気泡の有無を検査した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
(考察)表1に示されるように、実施例1〜3における結果は、良好な空気流出性を発揮し、気泡がみられず良好な外観を得ることが出来た。一方、比較例1では、観察した検査者全員により気泡が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の被着体の貼付方法は、フレキシブルプリント基板に補強用フィルムを貼付する手段として好適に利用出来る。又、フレキシブルプリント基板に、カバーレイフィルムや回路パターン形成時に使用されるドライフィルムを貼付する手段として利用出来る。更に、半導体の上面にヒートシンクを貼付し固定する手段や、フレキシブルプリント基板の上にIC(集積回路)チップを固定する手段としても利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るエンボス接着剤フィルムの一の実施形態を示す側面図である。
【図2】図1に示されるエンボス接着剤フィルムの平面図である。
【図3】図1に示されるエンボス接着剤フィルムの凹条部の拡大図である。
【図4】図1に示されるエンボス接着剤フィルムの凹条部の拡大図である。
【図5】本発明に係るエンボス接着剤フィルムの他の実施形態を示す平面図である。
【図6】図5に示されるエンボス接着剤フィルムの凹条部及び凸部の拡大図である。
【図7】図5に示されるエンボス接着剤フィルムの凹条部の拡大図である。
【図8】図5に示されるエンボス接着剤フィルムの凹条部及び凸部を拡大した平面図である。
【図9】図5に示されるエンボス接着剤フィルムの凸部の拡大図である。
【図10】本発明に係るエンボス接着剤フィルムの更に他の実施形態を示す平面図である。
【図11】図10に示されるエンボス接着剤フィルムの接着剤層の表面の拡大図である。
【図12】(a)〜(e)は、本発明に係るフレキシブルプリント基板の補強用フィルム貼付方法の工程の説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1,51,101 エンボス接着剤フィルム
2 基材層
3 接着剤層
4 凹条部
5 端面
6 凸部
7a,7b 平面ライナ
8 エンボスライナ
9 基体層
10 回路パターン層
11 フレキシブルプリント基板
121 (補強された)フレキシブルプリント基板
122 基材フィルム
123 接着剤フィルム
124 凸条部
125 (エンボスライナ付)エンボス接着剤フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半硬化状態の反応型接着剤からなる接着剤層の一の面に平面な基材が着けられ、且つ前記接着剤層の他の面に微細エンボスパターンが形成された積層体を用意し、
その積層体の、微細エンボスパターンが形成された前記他の面に、被着体を熱圧着する工程を含む被着体の貼付方法。
【請求項2】
半硬化状態の反応型接着剤からなる接着剤層の両面に平面ライナが着けられた積層体を用意し、その積層体から一の平面ライナを取り外し、その一の平面ライナが取り外されて現れる前記接着剤層の一の面に、平面を有する第1の被着体の前記平面を接着する第1の工程と、
前記積層体から他の平面ライナを取り外し、その他の平面ライナが取り外されて現れる前記接着剤層の他の面に、微細エンボスパターン面を有するエンボスライナの前記微細エンボスパターン面を圧着して、微細エンボスパターンを形成する第2の工程と、
前記接着剤層の他の面から前記エンボスライナを取り外し、そのエンボスライナが取り外されて現れる、前記微細エンボスパターンが形成された前記接着剤層の他の面に、第2の被着体を熱圧着する第3の工程と、
を含む被着体の貼付方法。
【請求項3】
前記微細エンボスパターン面を有するエンボスライナは、ピッチが300μm以下の格子状パターンを呈するとともにその高さが5〜30μmである連続した凸条部が自身の端面に至るまで形成されているライナである請求項2に記載の被着体の貼付方法。
【請求項4】
微細エンボスパターン面を有するエンボスライナを用意し、そのエンボスライナの前記微細エンボスパターン面に半硬化状態の反応型接着剤を塗布することにより、一の面に微細エンボスパターンが形成された接着剤層を得る第1の工程と、
前記接着剤層の他の面に、平面を有する第1の被着体の前記平面を接着する第2の工程と、
前記接着剤層の一の面から前記エンボスライナを取り外し、そのエンボスライナが取り外されて現れる、前記微細エンボスパターンが形成された前記接着剤層の一の面に、第2の被着体を熱圧着する第3の工程と、
を含む被着体の貼付方法。
【請求項5】
前記微細エンボスパターン面を有するエンボスライナは、ピッチが300μm以下の格子状パターンを呈するとともにその高さが5〜30μmである連続した凸条部が自身の端面に至るまで形成されているライナである請求項4に記載の被着体の貼付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−46003(P2007−46003A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234315(P2005−234315)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】