説明

被覆剤、その用途および該被覆剤を塗布する方法

【課題】従来技術の欠点を有さない、晩秋−冬期の気候の場合でも、即ち凍結点近くでも使用することができる被覆剤、該被覆剤の用途および塗装法の提供。
【解決手段】この課題は、少なくとも二成分よりなる、溶剤の蒸発がなく且つ最高15質量%の水を蒸発して反応硬化する反応性被覆剤において、第一成分がビチューメンと50〜100質量部の量の水、0〜50質量部の合成ラテックスまたは天然ラテックス、ポリ酢酸ビニル−またはアクリレート−、パラフィン−またはワックスエマルジョンおよび0〜10質量部の粘度調整剤、揺変性添加物および接着改善性添加物との60〜70%の混合物を含有し、その際に第一成分の質量部の合計は100質量部でありそして第二成分が20〜50質量部の充填剤、40〜80質量部の可塑性非揮発性油および0〜10質量部の粘度調整剤、分散助剤および油相用湿潤剤を含有し、その際に第二成分の合計は100質量部でありそして第一成分と第二成分とが100:(10〜50)質量%の混合比で存在していることを特徴とする、上記反応性被覆剤によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤の蒸発がなく且つ最高15質量%の水を蒸発して反応硬化し得る被覆剤並びにこれをあらゆる種類の建設部材に塗布する用途および方法に関する。垂直の表面(コンクリートまたはレンガ製の壁、工業用家屋の(つり下げ)薄板、玄関用部材等)並びに水平の表面(天井、平らな屋根、床、橋梁および道路の一部分等)、傾斜面(防波堤、水路、溝等)および種々の建築部分の変わり目(床板に接する壁の接続部)は本発明に従って被覆できる。
【背景技術】
【0002】
建設工業においては、コンクリートまたは他の建材、例えば道路用アスファルトよりなる建設物は水の侵入に対して色々な方法で被覆することが一般的である。コンクリート、アスファルト等はひび割れ(静止状態および熱に起因する沈降および応力ひび割れ)または貫通孔(漏水)が発生し易い。この種のひび割れは水が侵入し易くする。これを避けるために、永久弾性のまたは粘弾性の被覆物が、建築物の上の、侵入する水が移動する側に塗布される。他の建材、例えば木材、レンガ、ローム等よりなる建築物も同様なまたは類似の方法で封止されている。
【0003】
従来技術によればこの種の封止(シーリング)用被覆物は以下の色々な方法で製造される:
a. シートまたはフィルム、例えば屋根用シート、防炎シート、自己接着性ビチューメン −シートまたはポリマー変性したビチューメン−シート等。シートの敷設は下塗り塗 装、足場組上げ作業、開放枠での取扱(Hantieren mit offenen Flammen)、シートの切 断および重ね合わせ作業等の様な前作業を必要とする。屋外作業の場合には風が作業を 著しく困難にさせる恐れがある。狭い通路、コーナーおよびエッジがシートおよびフィ ルムを用いる作業を困難にし、しばしば雨漏りに弱い場所が生じる。作業チームは、不 足ない作業を実施できるためには、熟練した技能を有していなければならず、相応して 鍛練されておりそして良好なチームワークで作業しなければならない。
b. 熱溶融性の熱可塑性物質、例えばビチューメン、ポリマー変性したビチューメン、合 成樹脂での塗装または吹き付け塗装。非常に費用の掛かる加熱噴霧技術の他に、この作 業は乾燥した熱い天候、乾燥した下地を必要としそして多大な作業費用をもたらしそし て作業者を危険にさらし、多大なエネルギー費用等を必要とする。
c. 溶剤含有物質での塗装または噴霧塗装。この方法は環境保護(環境を害する溶剤が塗 膜からの蒸発)の理由から近年では実質的にもはや利用されていないかまたは小さい構 造部材に限定されている。
d. 液状物、大抵はビチューメンエマルジョン、ポリマー変性されたビチューメン−エマ ルジョン、合成樹脂分散物または天然ゴム分散物での塗装または噴霧塗装。この種類の 被覆物は、適度に濡れた基体にも塗布することができるが、一方においては水平面での 流れ落ちが厚い層を許容せずそしてもう一方においては層の乾燥の際に水を蒸発させな ければならないので、一つの作業工程では薄い層しか塗布することができない。一般に バインダー系は約30%の水を含有している。閉じ込められた水は気泡形成および密度 不足をもたらす。この層は原則としてエマルジョン中の発泡性乳化剤によって発泡気泡 を含有しており、それ故に決して完璧で問題のないものではない。これは中間乾燥工程 を伴い少なくとも3〜4層が塗り重ねられる。このことは高過ぎる作業費用および多過 ぎる作業時間を必要とする。基体の温度は、水が問題なく蒸発しそしてエマルジョン粒 子が造膜する程度の高さでなければならず、一般に少なくとも+15℃である。塗装直 後の雨は未だ乾燥していない層に部分的に損傷を与えるかまたは完全に洗い流し、この ことが別の作業費用および建築場所に著しく悪い影響を及ぼす汚染を生じさせる。霜、 短期間の夜露でも重大な損傷をもたらし得る。非常に熱い季節(夏期)ではしばしば皮 膜形成し、それによって水が層中に閉じ込められたままとなりそして気泡を生じさせる 恐れがある。この欠点を回避するために、二成分噴霧系が開発されたが、この場合には エマルジョンを速やかに解乳化する(一般に水をやはり含有している)沈殿剤が一緒に 噴霧される。それによって流れ落ちや雨での流れ出しを十分に避けることができるが、 それにもかかわらず乾燥時間が厳守しなければならずそして最低造膜温度が必要とされ る。この被覆物系も低温の建築シーズンには適していない。
e. 密封用バインダー膜を塗布するための補修。実地の建築においては、建造物の一部に 断熱板を合わせそして耐久性のある接合をすることがしばしば必要とされる。上述の全 ての方法の場合には、この断熱板を別の費用の掛かる作業段階で接合するかまたはくぎ で止める必要がある。一般に後者の方法の場合には封止作業は機械的に損傷を与え、こ のことが密度の低減をもたらすかまたは断熱板が接着剤分散物からの水を封じ込め、結 果として不満足な接着耐久性をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上述の欠点を回避することができそして晩秋−冬期の気候の場合でも、即ち凍結点近くでも使用することができる被覆剤、該被覆剤の用途および塗装法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は請求項1〜6のいずれか一つに記載の被覆剤、請求項7〜9のいずれか一つの用途並びに請求項10〜12のいずれか一つの方法によって解決される。
【0006】
従来に使用された方法と反対に建築物表面を被覆するために本発明の被覆剤は+1℃の温度から、即ち晩秋−冬期気候でも作業できる。
【0007】
それ故に、本発明の被覆剤の以下の用途特性および従来技術に比較してのそれに伴う長所をもたらすことができる:
i. 被覆のための反応硬化性被覆剤は少なくとも85〜100%の有効物質よりなるの で、エマルジョン系に比較して所望の有効な全層厚を達成するために1/3までの塗装 材料を節約できる。更にこの被覆剤はびひ割れ、目地、隙間に注入あるいは充填するた のにもおよび種々の建築部材、例えば薄板、アスファルト、ボードレンガ等の間の連結 部を形成するのにも適している。
ii. 層から水が蒸発することによる欠点および最低造膜温度の厳守による欠点が僅かし かないかまたは全く無くなり、被覆物は塗布後に速やかに(数分から数時間後に)完全 に機能する。塗膜は、乳化剤により惹き起こされる発泡気泡を有していないので緊密で 耐水性もある。
iii. 気候の影響は、最初に水の蒸発の恐れがないかまたは短時間しかないので、殆ど問 題でない。しかしながら最低造膜温度は0℃より遥かに低い。それ故に本発明の被覆剤 は0℃近辺の温度でもおよび比較的に高い湿度でも、中部ヨーロッパ気候における晩秋 および温かい冬期においても使用できる。
iv. 本発明の被覆剤および本発明の方法は該被覆剤が燃焼する危険のある加工温度を決 して必要とせずそしてそれ故に作業する建設業者にも非常に高い安全基準を提供する。
v. 本発明の方法は溶融性フィルムをシームレスで製造することを可能とし、それ故に封 止用シートの場合に必要とされる様な費用の掛かる切断作業および重ね合わせ作業が省 ける。それ故にエッジ部、コーナー、狭い通路の様な困難な建築形状部を機能的に確実 に且つ水に対して簡単に封止することができる。
vi. 硬化反応が、即ち冷間状態で流動性がありそしてそれ故に冷間加工性のある、薄い 液状の蜂蜜のコンシステンシーに相当するコンシステンシーから、硬化した生成物が垂 直の壁からもはや流れ落ちない高い安定性のコンシステンシーへの変換が、4mmの厚 さまでの層を一つの作業工程で噴霧塗装できるかまたは塗布できる程に速やかに行われ 得る。
vii. 混合比および混合強度に対しては、両方の反応成分が簡単なポンプ系(例えば歯車 式ポンプ)で混合−噴霧ノズルに搬送でき、そこにおいて共通の材料流で一緒にされそ して被塗装基材に吹き付けるという僅かな要求しかない。始まる硬化反応によって既に 自由飛散状態で粘度増加が始まる。材料への要求が少ない建築を実施するためには、例 えば改築目的のためには、この方法は容器状の既成品、例えばスタティクミキサー装備 を備えた2成分系容器にも適している。
viii. 両反応成分の十分な低温加工性および良好なポンプ搬送性によって、しばしば基 礎石穴である様な近寄りがたい敷地においてもできるだけ僅かな装置費用で実施するこ とが作業技術的に可能である。材料貯蔵容器、ポンプおよび場合によっては圧縮空気コ ンプレッサーを作業場所から遥かに離し、楽に近ずける敷地に置くことができる。材料 は加熱されていない薄いチューブで、100メートルまで離れた所から搬送でき、その 結果建設作業員は3つのチューブ(圧縮空気および2種類の材料成分)を備えた簡単に 造られた重量的に軽いスプレーガン(たった数kgの重量)だけを取り扱うだけでよ い。それ故に建設作業は非常に経済的な方法で可能である。
ix. 硬化状態で存在する本発明の被覆物の優れた接着性によって、後続のだ作業段階の 作業課程においてあらゆる種類の断熱板または−マット、または熱に過敏なまたは溶剤 に敏感なそれ、例えば発泡ポリスチレン板を接合してもよい。断熱板の下の物質の揮発 除去は、被覆物が反応しそして蒸発しないので必要ない。
x. 更に本発明の被覆物は腐食防止性をも有しており、このことは特に金属構造物におい て興味ある用途可能性を提供する。
xi. 例えば久しい依然から公知のアクリレート樹脂系、ポリウレタン樹脂系またはエポ キシ樹脂系の様な純粋な反応硬化性合成樹脂系に比較して、ビチューメン原料および鉱 物原料をベースとする本発明の方法は、価格レベルが著しく低い点、並びにひび割れを 完全に橋架けする粘弾性固体特性が健在する点で優れている。更にこれらの旧来の反応 性樹脂系は、垂直面を流れ落ちるのを阻止するには硬化時間がゆっくりとし過ぎ、冷間 作業のために低い粘度を必要とするので、一般に一つの作業工程において4mmまでの 層厚を塗布するのに適していない。
【0008】
本発明の被覆剤は略0℃の作業温度のためには好ましくは以下の組成である:
成分A:

【0009】
成分B:

【0010】
成分Aを100:(10〜50)質量%の混合比で成分Bと混合し、次いでスパチュラ、歯付きスパチュラ、フロート(Reibbrett)によって被塗装基体に速やかに均一な層厚で塗布する。混合および塗装は好ましくは二成分-スプレー法でも有利に行うことができる。
【0011】
低温で建設するには実施例として二成分を次の様に互いに混合する:
成分A:
ビチューメンと水との混合物・・・・・・・・50質量%、
合成ラテックスまたは天然ラテックス・・・・48質量%、
粘度調整剤・・・・・・・・・・・・・・・・・2質量%。
成分B:
充填剤、例えば石分、タルク、セメント・・・・50質量%、
亜麻仁油、トール油または木油・・・・・・・・45質量%、
粘度調整剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・5質量%。
【0012】
両成分を100:20で混合した。混合物は所望の性質を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二成分よりなる、溶剤の蒸発がなく且つ最高15質量%の水を蒸発して反応硬化する反応性被覆剤において、第一成分がビチューメンと50〜100質量部の量の水、0〜50質量部の合成ラテックスまたは天然ラテックス、ポリ酢酸ビニル−またはアクリレート−、パラフィン−またはワックスエマルジョンおよび0〜10質量部の粘度調整剤、揺変性添加物および接着改善性添加物との60〜70%の混合物を含有し、その際に第一成分の質量部の合計は100質量部でありそして第二成分が20〜50質量部の充填剤、40〜80質量部の可塑性非揮発性油および0〜10質量部の粘度調整剤、分散助剤および油相用湿潤剤を含有し、その際に第二成分の合計は100質量部でありそして第一成分と第二成分とが100:(10〜50)質量%の混合比で存在していることを特徴とする、上記反応性被覆剤。
【請求項2】
可塑性非揮発性油が鉱油、植物性油またはそれらから誘導される誘導体または合成油である、請求項1に記載の被覆剤。
【請求項3】
充填剤が石粉、タルク、セメント、石灰粉、石膏、フライアッシュセメントおよび鉄または鋼鉄製造からの粉砕スラッジより成る群から選択される、請求項1または2に記載の被覆剤。
【請求項4】
揺変性添加物が繊維、ガラス製微小中空球状物、無機系または有機系珪素誘導体よりなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一つに記載の被覆剤。
【請求項5】
接着改善性添加物が脂肪アミン類、接着性樹脂およびワックスよりなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一つに記載の被覆剤。
【請求項6】
粘度調整剤がポリエチレングリコール類、エーテルアルコール類、ポリエーテルおよび高沸点炭化水素よりなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一つに記載の被覆剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の被覆剤を、壁、天井、防波堤、溝、床、橋梁、道路またはその他の交通路、板金(例えば玄関周りのそれ)、断熱要素またはマットの表面を湿分断絶被覆するためにおよび/または目地および隙間の封止のために用いる方法。
【請求項8】
被覆剤が同時に面の上に載せられる断熱板のための接着剤として使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
被覆剤が同時に腐食防止用被覆として使用される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の被覆剤を表面に塗布する方法において、第一成分および第二成分を互いに別々に混合機に搬送しそしてその中で混合することおよび各成分よりなる混合物を噴霧ノズルによって表面に噴霧することを特徴とする、上記方法。
【請求項11】
混合機の一部が噴霧ノズルでありそして各成分を噴霧ノズル中で混合する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各成分を容器から搬送しそしてスタティクミキサーのトップに供給する、請求項10または11に記載の方法。

【公表番号】特表2006−519282(P2006−519282A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501936(P2006−501936)
【出願日】平成16年2月24日(2004.2.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001795
【国際公開番号】WO2004/076573
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(505323448)エスターライヒッシェ・フィアリット・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】