説明

被覆材組成物及びその硬化物が被覆された成型品

【課題】難付着性基材である不飽和ポリエステル樹脂に対しても、耐熱性、及び付着性に優れた金属蒸着用アンダーコート層を形成でき、貯蔵安定性に優れた被覆材組成物を提供する。
【解決手段】1分子中に1個以上のビニル基を有する化合物(フタル酸ジアリル及びフタル酸ジアリルポリマーを除く)である成分(A)と、フタル酸ジアリル及びフタル酸ジアリルポリマーの少なくとも一方である成分(B)とを含有する被覆材組成物を用いて、アンダーコート層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材組成物に関し、より詳しくは、活性エネルギー線照射により、難塗装性樹脂成型品に対して、付着性、耐熱性に優れた金属蒸着用アンダーコート層を形成するのに使用される被覆材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生産性、成型性、耐熱性、軽量化などの利点を有するポリエステル樹脂、例えばポリエチレンフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ガラス繊維強化不飽和ポリエステル樹脂(BMC,SMC)等の樹脂成型品基材の表面上に金属蒸着用アンダーコート層(プライマー層)を形成し、その上に真空蒸着、スパッタリング等の金属化処理を施した金属化樹脂成型品が各種装飾品、反射板などきわめて広汎な分野に利用されている。また、このような金属蒸着用アンダーコート層としては、アクリル系、メラミン系、ウレタン系などの樹脂からなる被覆材組成物を、熱あるいは紫外線を用いて硬化させて形成する方法が知られており、中でも紫外線を用いる紫外線硬化系は、他の方法に比べて生産性に優れているなどの利点がある(特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開平7−48525号公報
【特許文献2】国際公開第95/32250号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが前述した従来技術においては、難付着性基材であるガラス繊維強化不飽和ポリエステル樹脂、例えばBMC、SMC等の樹脂成型品においては、実用に耐えうるアンダーコート層と樹脂成型品基材との付着性を得ることが困難である。また、金属化樹脂成型品をランプリフレクターとして使用する場合には、ランプからの発熱の影響が大きくなることから、特に付着性と耐熱性を両立させることが難しくなりつつある。加えて、被覆材組成物の貯蔵安定性が低く、作業性に劣るなどの問題が挙げられている。
【0004】
したがって、本発明は、難付着性基材であるガラス繊維強化不飽和ポリエステル樹脂に対しても、耐熱性、及び付着性に優れた金属蒸着用アンダーコート層を形成でき、貯蔵安定性に優れた被覆材組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、被覆材組成物特定の化合物を配合することによって、それにより形成した金属蒸着用アンダーコート層の、不飽和ポリエステル樹脂成型品に対する付着性が優れることを見出し、本発明に至った。具体的には、1分子中に1個以上のビニル基を有する化合物(フタル酸ジアリル及びフタル酸ジアリルポリマーを除く)である成分(A)と、フタル酸ジアリル及びフタル酸ジアリルポリマーの少なくとも一方である成分(B)とを含有する被覆材組成物及びその硬化物が被覆された成型品である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、難付着性基材である不飽和ポリエステル樹脂に対しても、耐熱性、及び付着性に優れた金属蒸着用アンダーコート層を形成でき、貯蔵安定性に優れた被覆材組成物を提供できる。すなわち、本発明の被覆材組成物は、不飽和ポリエステル樹脂の表面に塗布し、活性エネルギー線を照射することにより、耐熱性、及び付着性に優れた金属蒸着用アンダーコート層を形成することができる。その結果、優れた耐熱性、付着性に優れた金属化樹脂成型品、特に自動車用ランプリフレクター等の形状が複雑な金属化樹脂成型品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
まず、本発明の被覆材組成物が含有する成分について、詳しく説明する。
【0008】
本発明の被覆材組成物が含有する成分(A)である、1分子中に1個以上のビニル基を有する化合物(フタル酸ジアリル及びフタル酸ジアリルポリマーを除く)は、良好な重合活性を示し、塗膜の表面平滑性、硬度、耐熱性等に優れる金属蒸着用アンダーコート層となる架橋硬化被膜を形成させる主成分である。なお、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」と「メタクリル」との総称であり、その他の「(メタ)アクリ・・・」も同様に、「アクリル」と「メタクリル」から派生する基の総称である。
【0009】
成分(A)の具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル等の6官能(メタ)アクリル酸エステル類;ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリル酸エステル等の5官能(メタ)アクリル酸エステル類;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールエトキシ変性テトラ(メタ)アクリル酸エステル等の4官能(メタ)アクリル酸エステル類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能(メタ)アクリル酸エステル類;ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸メチルペンタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチルペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカンジメタノール、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ジ(メタ)アクリル酸シクロヘキサンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールA、ビスフェノキシフルオレンエタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのγ−ブチロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ブチレングリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、シクロヘキサンジメタノールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンタンジオールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、水添ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル等のジ(メタ)アクリル酸エステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとエチレンオキシドの付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとプロピレンオキシドの付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンの付加物などの2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと有機ラクトン類の付加物等のアクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン又はスチレン誘導体;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;フタル酸、コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応で得られるポリエステルジ(メタ)アクリレート類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類とエピクロルヒドリンの縮合反応で得られるビスフェノール型エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を反応させたエポキシジ(メタ)アクリレート類;アルカンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、スピログリコール化合物等の1種又は2種以上の混合物からなるアルコール類の水酸基に有機ジイソシアネート化合物を付加し、残ったイソシアネート基に、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基、及び1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート類;が挙げられる。
【0010】
これらの中でも、硬化後の被膜の耐熱性、表面平滑性のバランスの観点から、2官能以上の(メタ)アクリル酸エステル類、ウレタンジ(メタ)アクリレート類が好ましく、3官能以上の(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましい。成分(A)は、一種を単独で用いることができ、又は二種以上を併用することができる。
【0011】
本発明の被覆材組成物が含有する成分(B)であるフタル酸ジアリル及びフタル酸ジアリルポリマーは、オルソフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、及びこれらのポリマーである。フタル酸ジアリルポリマーとしては、GPCによる重量平均分子量が20,000〜60,000のものを好適に用いることができる。
【0012】
本発明の被覆材組成物における成分(B)の含有量は、成分(A)100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、また50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましい。この範囲内にすることによって、不飽和ポリエステル基材に対する付着性に優れた金属蒸着用アンダーコート層を形成することができる。なお、成分(B)としてフタル酸ジアリルとフタル酸ジアリルポリマーとの両方を含む場合、成分(B)の含有量は両方の合計を意味する。
【0013】
本発明の被覆材組成物は、本発明の効果を妨げない範囲内であれば、不飽和ポリエステル基材に対する付着性をより向上させるために、アクリルポリマー、アルキッド樹脂などのポリマー成分(フタル酸ジアリルポリマーを除く)を含有することができる。ポリマー成分は、一種を単独で用いることができ、又は二種以上を併用することができる。
【0014】
アクリルポリマーは、(メタ)アクリル酸エステル類の単体、二種以上の(メタ)アクリル酸エステル類の混合物、又はこれらと他のビニル系単量体との混合物を(共)重合して得られる(共)重合体であり、ラジカル重合開始剤の存在下に溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等の採用により得ることができる。なお、「(共)重合」とは「単独重合」と「共重合」との総称である。アクリルポリマーとしては、GPCによる重量平均分子量が5,000〜200,000のものを好適に用いることができる。
【0015】
(共)重合可能な単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとエチレンオキシドの付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとプロピレンオキシドの付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンの付加物などの2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと有機ラクトン類の付加物等の水酸基含有ビニルモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン又はスチレン誘導体;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸類;(メタ)アクリロニトリル等の重合性不飽和ニトリル類;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類以外の不飽和カルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;が挙げられる。(共)重合可能な単量体は、一種を単独で用いることができ、又は二種以上を併用することができる。
【0016】
アルキッド樹脂は、例えば、多価アルコールと、多塩基酸又はその酸無水物と、油脂又は油脂脂肪酸とから合成することができる。多価アルコールは特に限定されず、その具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。多塩基酸又はその酸無水物は特に限定されず、その具体例としては、フタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。油脂又は油脂脂肪酸は特に限定されず、不乾性油、半乾性油、乾性油が使用可能であり、その具体例としては、ヤシ油、大豆油、ヒマシ油、トール油、アマニ油、キリ油等が挙げられる。さらに、フェノール変性、ビニル変性、アマニ油変性等の変性アルキッド樹脂でもよい。
【0017】
本発明の被覆材組成物におけるポリマー成分の含有量は、成分(A)100質量部に対して3質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、また100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。
【0018】
本発明においては、被覆材組成物を硬化させるために紫外線などの活性エネルギー線を用いることが好ましいことから、本発明の被覆材組成物は、光重合開始剤を含有することが適切である。光重合開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−エチルアントラキノン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド;が挙げられる。これらの中でも、ベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンがより好ましい。光重合開始剤は、一種を単独で用いることができ、又は二種以上を併用することができる。
【0019】
本発明の被覆材組成物における光重合開始剤の含有量は、成分(A)100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、また30質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
【0020】
本発明の被覆材組成物は、必要に応じて、その性能を損なわない範囲で、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等の光増感剤を含有することもできる。
【0021】
本発明の被覆材組成物は、必要に応じて、望ましい粘度に調整するために、有機溶剤を含有することができる。有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物;エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系化合物;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系化合物;トルエン、キシレン等の芳香族化合物;ペンタン、ヘキサン、石油ナフサ等の脂肪族化合物;が挙げられる。
【0022】
本発明の被覆材組成物は、レベリング剤、消泡剤、沈降防止剤、潤滑剤、研磨剤、防錆剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤などの添加剤を含有することができる。
【0023】
本発明の被覆材組成物は、被覆材として各種の用途に使用できる。特に、金属蒸着用アンダーコート層を形成するための材料として非常に有用である。この金属蒸着用アンダーコーティングは、不飽和ポリエステル樹脂などの難塗装性樹脂成型品などに対して行われる。以下、その方法を説明する。
【0024】
まず、樹脂成型品等の基材上に被覆材組成物を塗布する。被覆材組成物の塗布方法としては、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、フローコート等の方法が挙げられるが、塗布作業性、被膜の表面平滑性、均一性の点から、スプレーコート法、フローコート法が好ましい。
【0025】
そして、基材上の被覆材組成物を硬化することで、金属蒸着用アンダーコート層を形成する。例えば、被覆材組成物が光重合開始剤を含む場合、被覆材組成物に活性エネルギー線を照射することにより被覆材組成物を硬化することができる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が挙げられる。照射条件としては、例えば高圧水銀灯(波長:340〜380nm)を用いた場合、照射される紫外線エネルギー量が500〜4,000mJ/cm2程度の条件が好ましい。
【0026】
形成される金属蒸着用アンダーコート層の膜厚は、硬化後の厚さで3〜40μmの範囲であることが好ましい。
【0027】
被覆材組成物が前述した有機溶剤を含有する場合には、被覆材組成物を硬化させる前に有機溶剤を揮発させなければならない。その際には、IRヒーターや温風等で加温して、40〜130℃、1〜20分の条件下で有機溶剤を揮発させることが好ましい。
【0028】
この金属蒸着用アンダーコート層上に、さらに薄膜金属層を形成する方法としては、アルミニウム等の金属を真空蒸着する等の公知の方法により行われる。その他の金属膜の形成方法としてはスパッタリング方法やイオンプレーティング方法を用いることができる。さらに金属膜の腐食防止を目的として、形成された金属膜表面に熱硬化型トップコート、紫外線硬化トップコートを形成されていても良く、プラズマ重合膜等で被覆処理されても良い。
【0029】
このようにして、金属化樹脂成型品、特に自動車用ランプリフレクター等の形状が複雑な金属化樹脂成型品を得ることができる。この金属化樹脂成型品は、本発明の被覆材組成物を用いて形成した金属蒸着用アンダーコート層を有するため、耐熱性、及び付着性に優れたものとなる。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明を詳しく説明する。実施例及び比較例における各種の測定評価は次のような方法で実施した。
【0031】
1.[付着性]
碁盤目剥離試験により、付着性を評価した。すなわち、金属化樹脂成型品に1mm間隔で基材まで達するクロスカットをカッターナイフで入れ、1mm2の碁盤目を100個作り、その上にセロハンテープを貼りつけ、急激にはがし、剥離した碁盤目を数えた。評価の判定は以下の基準で行った。
「〇」:剥離なし。
「△」:剥離の数1〜50個。
「×」:剥離の数51〜100個。
【0032】
2.[耐熱性(1)(外観)]
金属化樹脂成型品を150℃の熱風乾燥機に24時間入れ、外観を目視評価した。評価の判定は以下の基準で行った。
「○」:変化なし。
「△」:塗板の一部にクラック、白化、クモリ又はニジ現象が観察される。
「×」:塗板の全部にクラック、白化、クモリ又はニジ現象が観察される。
【0033】
3.[耐熱性(2)(外観)]
金属化樹脂成型品を200℃の熱風乾燥機に24時間入れ、外観を目視評価した。評価の判定は以下の基準で行った。
「○」:変化なし。
「△」:塗板の一部にクラック、白化、クモリ又はニジ現象が観察される。
「×」:塗板の全部にクラック、白化、クモリ又はニジ現象が観察される。
【0034】
4.[耐熱性(付着性)]
金属化樹脂成型品を150℃の熱風乾燥機に24時間入れ、その後サンプルの表面に基材まで達するクロスカットをカッターナイフで傷を入れ、その上にセロハンテープを貼りつけ、急激にはがし、剥離した状態を観察した。また、その付着性が良好なものについは、上記碁盤目剥離試験(熱試験後のサンプル)も実施した。評価の判定は以下の基準で行った。
「◎」:剥離なし。碁盤目剥離試験でも剥離なし。
「○」:剥離なし。碁盤目剥離試験では剥離が見られた。
「△」:やや剥離。
「×」:テープ貼付け面積のほぼ全面が剥離。
【0035】
5.[硬化液の貯蔵安定性]
硬化液を40℃で1ヶ月間保存して観察した。評価の判定は、以下の基準で行った。
「○」:外観及び粘度変化なし。
「×」:粘度変化がある、又はゲル化物が生成している。
【0036】
<実施例1>
表1に示す成分をステンレス容器に計量し、約30分間、全体が均一になるまで攪拌して、被覆材組成物(硬化液)を調製した。次いで、不飽和ポリエステル樹脂(昭和高分子(株)製、商品名:リゴラックBMC,RNC420)の成型品であるテストピース(3cm×5cm)に、この硬化液を硬化後の膜厚が約15μmになるようにスプレー塗装し、さらに、80℃の温風乾燥器中に5分間保持する加熱条件により有機溶剤を揮発させた。その後、空気中で、高圧水銀灯により、波長340〜380nm、積算光量1000mJ/cm2の活性エネルギー線を照射して金属蒸着用アンダーコート層(プライマー層)を形成した。
【0037】
次いで、日本真空技術株式会社製の真空蒸着装置EBX−6D(商品名)を使用した真空蒸着法により、金属蒸着用アンダーコート層の上にアルミニウムを膜厚が約100nmとなるように蒸着した。さらに、金属蒸着膜の上に、保護を目的としてアクリルメラミン硬化系クリアー塗料ダイヤビームUT−047A(商品名、三菱レイヨン(株)製)を、硬化後の膜厚が5μmとなるようにスプレー塗装した。その後、120℃、10分間の条件にて加熱処理して硬化させて、金属化樹脂成型品を得た。
【0038】
得られた金属化樹脂成型品の評価結果を表1に示す。
【0039】
<実施例2〜6、比較例1〜5>
表1に示す成分を用いたこと以外は、実施例1と同様にして硬化液を調製し、金属化樹脂成型品を得た。得られた金属化樹脂成型品の評価結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1中の略号は、以下の化合物を表わす。
・「DPHA」:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・「PETA」:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
・「TMPTA」:トリメチロールプロパントリアクリレート
・「HBADA」:水素化ビスフェノールAジアクリレート
・「DAP1」:オルソフタル酸ジアリル(ダイソー株式会社製、商品名:ダイソーダップモノマー)
・「DAP2」:フタル酸ジアリルポリマー(ダイソー株式会社製、商品名:ダイソーダップK)
・「PA1」:N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド/メチルメタクリレート/スチレン/イソボルニルメタアクリレート(30/20/30/20の質量比)からなる共重合体、GPCによる重量平均分子量2.0×104
・「PA2」:N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド/メチルメタクリレート/スチレン/イソボルニルメタアクリレート/N,N−ジメチルアクリルアミド(20/5/35/30/10の質量比)からなる共重合体、GPCによる重量平均分子量4.5×104
・「AR1」:アマニ油変性アルキッド樹脂[大日本インキ化学工業社製、商品名:ベッコゾールEL−4501−50]
・「BNP」:ベンゾフェノン
・「HCPK」:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
以上説明したように、本発明によれば、不飽和ポリエステル樹脂成型品などの難付着性樹脂成型品に対しても、優れた付着性を有する被覆材組成物を提供できる。また、この被覆材組成物を硬化した塗膜は、耐熱性及び付着性を兼ね備えたものであることから、特に、金属蒸着用アンダーコート層を形成する用途において非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に1個以上のビニル基を有する化合物(フタル酸ジアリル及びフタル酸ジアリルポリマーを除く)である成分(A)と、フタル酸ジアリル及びフタル酸ジアリルポリマーの少なくとも一方である成分(B)とを含有する被覆材組成物。
【請求項2】
前記成分(A)100質量部に対して、前記成分(B)を5〜50質量部含有する請求項1記載の被覆材組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の被覆材組成物の硬化物が被覆された成型品。

【公開番号】特開2009−149735(P2009−149735A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327476(P2007−327476)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】