説明

被覆粉体の製造方法

【課題】 粉体の表面にゼイン又はシェラックを被覆する際に、粉体の表面に均一に被覆でき、団粒の発生を防止し、粒度分布がシャープな被覆粉体の製造方法および被覆粉体を提供する。
【解決手段】 粒径20〜200μmの粉体の表面にゼイン又はシェラックを被覆する際に、装置の底部に回転軸を中心として水平に回転する、円錐形のコーン部を設けた回転ディスクを備えた転動流動層装置を用い、粉体に下記組成で処方されたゼイン又はシェラックのエタノール水溶液を噴霧することを特徴とするゼイン又はシェラックにより被覆された粉体の製造方法である。ゼイン又はシェラック:10〜20質量部、中鎖トリグリセリド:1〜5質量部、エタノール水:100質量部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼイン又はシェラックにより被覆された粉体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体を被膜材で被覆する目的には、(1)安定性の向上:吸湿防止、酸化防止、芳香成分の保護など、(2)生理活性物質の放出制御:耐酸性、腸溶性の付与など、(3)表面改質:流動性、付着性、成形性などの向上、(4)風味のマスキング:味、臭いのマスキングなどがある。特に、酸化を防止することにより安定性を向上させる被膜材としてプルラン、また、耐酸性付与、腸溶性付与を可能とする被膜材としてゼイン又はシェラックなどが知られている。
【0003】
特許文献1では、酸化に対して不安定な食品、医薬品、その他の物質をプルランにて被覆することにより空気を遮断し、それらの被覆物質を安定化させる方法が提案されている。しかしながら、プルラン水溶液は付着性が大きく、粒子間の凝集による団粒が形成されやすいため、均一な被覆が不可能となる。
また、特許文献2ではプロリン、リジン、ヒスチジン、システイン等の吸水性のあるアミノ酸を含む粉体を造粒した後に、シェラック又はゼインで被覆し、吸水性を抑えることで保存性や打錠性を改善する方法が提案されている。しかしながら、この方法で製造されるシェラック又はゼインにより被覆された粉体は吸水性は改善されるが、造粒時に団粒が発生しやすく、粒度分布がブロードになる傾向がある。さらに、アミノ酸が持つ独特の苦味、えぐ味のマスキングが不十分なため、チュアブルやクッキー、パンなどの食品原料として利用するには問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開昭48−51777号公報
【特許文献2】特開2004−269384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、粉体の表面にゼイン又はシェラックを被覆する際に、粉体の表面に均一に被覆でき、団粒の発生を防止し、粒度分布がシャープな被覆粉体の製造方法および被覆粉体を提供することを目的とする。また、粉体が持つ苦味、えぐ味など独特の味をマスキングでき、チュアブルや、クッキー、パンなどの原料として利用出来る被覆粉体の製造方法およびその被覆粉体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(1)粒径20〜200μmの粉体の表面にゼイン又はシェラックを被覆する際に、装置の底部に回転軸を中心として水平に回転する、円錐形のコーン部を設けた回転ディスクを備えた転動流動層装置を用い、粉体に下記組成で処方されたゼイン又はシェラックのエタノール水溶液を噴霧することを特徴とするゼイン又はシェラックにより被覆された粉体の製造方法である。
ゼイン又はシェラック:10〜20質量部、
中鎖トリグリセリド:1〜5質量部、
エタノール水:100質量部。
【0007】
(2)円錐形のコーン部を設けた回転ディスクがブレードを設けられたものである前記(1)の被覆粉体の製造方法である。
【0008】
(3)前記(1)又は(2)の製造方法にて製造されたゼイン又はシェラックにより被覆された粉体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の被覆粉体の製造方法によると、粉体の表面にゼイン又はシェラックを均一に被覆でき、粒度分布がシャープな被覆粉体を製造することが出来る。また、被覆時の団粒の発生を抑えることが出来る。その結果得られる被覆粉体は、溶出率が小さく、口に含んだ場合でも粉体の溶出を遅延できるため、アミノ酸類、ビタミン類、ポリフェノール類などの粉体が持つ独特の味もマスキングすることが出来る。また、均一かつ強固な被覆が可能となるため、その被覆粉体をクッキーなどにも使用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いる粉体としては、アミノ酸類、ビタミン類、ペプチド類、ポリフェノール類など食品、医薬品分野で使用されている種々の生理活性物質が挙げられる。これら粉体は、一種単独、又は二種以上を混合して使用してもよい。粉体の形態は室温で固体であり、粒径は20〜200μmであることが好ましい。20μm以下では転動流動層装置内での粉体の流動化が困難となるため、均一な被覆が不可能となる。また、200μm以上では団粒が形成されやすくなる。ここで粒径の測定はレーザー回折法を用い、装置としてはレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100(株式会社島津製作所)によって容易に測定できる。
【0011】
本発明において、ゼイン又はシェラックを被膜材として使用する。ゼインおよびシェラックは、錠剤等のコーティングに利用されている被膜材であり、どちらも耐酸性および腸溶性の性質を持つことから、胃内における生理活性物質の放出を抑え、腸内で放出させる腸溶性被膜材として利用頻度が高い。ゼインは、トウモロコシ由来の蛋白質であり、分子量は21,000〜25,000である。市販品としては、小林ツェインDP(小林香料株式会社)が挙げられる。
シェラックは、ラックカイガラムシの分泌物を精製して得られる樹脂状物質であり、アリューリット酸、セロリン酸、セラック樹脂酸から構成されている。市販品としては、GBN−D(株式会社岐阜セラツク製造所)が挙げられ、通常、シェラック固形分を99質量%エタノール水に溶解させたセラツク製剤として市販されている。
ゼイン又はシェラックの被覆量は、粉体100質量部に対して10〜40質量部、さらには15〜30質量部が好ましい。
【0012】
本発明の被覆粉体の製造方法は、粉体の表面にゼイン又はシェラックを被覆する際に、転動流動層装置を用い、処理室内で流動化エアーによって流動化状態にした粉体に、ゼイン又はシェラックのエタノール水溶液を噴霧することを特徴とする。
噴霧するゼインのエタノール水溶液は、エタノール水100質量部に対して、ゼインを10〜20質量部、中鎖トリグリセリドを1〜5質量部溶解させた溶液である。溶解させるエタノール水は60〜90質量%エタノール水が好ましい。ここでエタノール水中のエタノール濃度が60質量%未満ではゼインは溶解し難くなる。また、90質量%を超えるとゼインのゲル化が起き易くなる。噴霧するシェラックのエタノール水溶液は、エタノール水100質量部に対して、シェラックを10〜20質量部、中鎖トリグリセリドを1〜5質量部溶解させた溶液である。溶解させるエタノール水は95質量%以上のエタノール水が好ましい。ここでエタノール水中のエタノール濃度が95質量%未満では、シェラックが溶解し難くなる。
【0013】
エタノール水100質量部に対して、ゼイン又はシェラックを10質量部未満使用する際は、製造効率が悪くなってしまうおそれがある。また、20質量部を超えるとゼイン又はシェラックのエタノール水溶液の粘性が大きくなり、接着度が大きくなってしまうため、粉体間での凝集が起こり団粒形成の原因となるおそれがある。
【0014】
本発明において、エタノール水溶液には中鎖トリグリセリドを溶解する。中鎖トリグリセリドとは、グリセリン骨格に炭素数8〜10の脂肪酸がエステル化結合した油脂化合物であり、例えばカプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリドが挙げられる。本発明において使用する中鎖トリグリセリドは炭素数8と炭素数10の脂肪酸の両方を有する中鎖トリグリセリドが好ましい。中鎖トリグリセリドの市販品としてはパナセート810(日本油脂株式会社)、ココナードMT(花王株式会社)などが挙げられる。本発明において、中鎖トリグリセリドを使用することにより、コーティング時の団粒形成を防止し、かつ被膜の耐性、特に耐水性を強化することができる。中鎖トリグリセリドの使用量がエタノール水溶液100質量部に対して1質量%未満ではその効果は期待できず、5質量%を超えるとエタノール水溶液との分離が起こり、均一な被覆が不可能となるため好ましくない。
【0015】
以下に転動流動層装置を用いる製造法について図1を用いて説明する。図1は、転動流動層装置の一構成例を概念的に示している。転動流動層装置1の処理室2の底部に回転軸3を中心として回転する回転ディスク4が設置される。回転ディスク4の上面には、円錐形のコーン部と複数のブレードが設けられていることが好ましく、ブレードによる転動圧密作用により、団粒の発生が抑えられ、シャープな粒度分布を有する被覆粉体を得ることが可能となる。また、被膜が展延作用を受け、均一および強度の高い被覆粉体を得ることができる。処理室2の下方には給気室6が設けられ、給気室6には外部から所定温度、所定風量の流動化エアーが供給され、それは処理室2内に導入される。回転ディスク4上の粉体は、ブレードによる転動圧密作用を強く受け、回転ディスク4の外周部に転動してきたときに流動化エアーに乗って中央上部に吹き上げられ、コーン部の外周面に沿って循環する。粉体はこの動きを繰り返すようになり、処理室2内に粉体の循環による流動層7が形成されるようになる。この流動層7に向けてスプレーノズル8からエタノール溶液が噴霧され、流動化エアーにより乾燥されることで、粉体はゼイン又はシェラックにより被覆がなされる。流動化エアーは、処理室2の上方に配置された微粉粒子捕獲用のバグフィルター5によってろ過された後、排気室9より外部へ排気される。スプレー方式は、回転ディスク上で転動運動する粉体の流れに、処理室2の下方の側面から接線方向(回転ディスクの回転方向)にスプレー液を噴霧するタンジェンシャルスプレー方式が好ましい。タンジェンシャルスプレー方式は、コーティングゾーン内を運動する粉体に集中的にスプレー液を噴霧でき、粉体とスプレーノズルとの距離が常に一定に保たれるため、良好な被覆が可能となる。
【0016】
本発明の製造方法によって製造されるゼイン又はシェラックにより被覆された粉体は、粒径を50〜300μmにすることが好ましい。そうした場合、団粒が形成されにくくなり、ハンドリング性も良好となる。また、溶出率も小さく、口に含んだ場合でも粉体の溶出を遅延できるため、アミノ酸類、ビタミン類、ポリフェノール類などが持つ独特の苦味、えぐ味をマスキングすることが可能である。また、均一かつ強固な被覆が可能となるため、その被覆粉体はチュアブル、クッキーなどにも使用することが可能である。
【実施例】
【0017】
以下実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。初めに本実施例に用いた試験方法を以下に示す。
(1)被覆粉体の平均粒径(μm)、標準偏差:
被覆粉体の平均粒径はレーザー回折式粒度分布測定装置「SALD−2100」(株式会社島津製作所)を用いて測定した。標準偏差に関しては、本装置での粒子径スケールが対数スケールの粒度分布グラフとなっているため、対数スケール上で定義された標準偏差を用いた。
(2)被覆粉体の溶出率(%):
被覆粉体中の粉体の溶出率は、第14改正日本薬局方一般試験溶出試験(パドル法)(廣川書店)の方法により測定した。ただし、試験溶液には精製水を使用し、20分後の溶出率を評価した。
(3)被覆粉体の団粒率(%):
全被覆粉体重量に対する目開き1mm篩いを通過しなかった被覆粉体の重量の割合を団粒率(%)として算出した。
(4)苦味マスキング程度の評価:
苦味マスキング程度の評価は5名のパネラーの官能評価にて行った。すなわち被覆前のL−ロイシンの苦味を基準とし、マスキングの程度を5段階(5点:非常に良い、4点:良い、3点:やや良い、2点:同等、1点:劣る)にて評価し、その平均点を算出した。また、クッキー配合時の評価においても、L−ロイシンを配合したクッキーの苦味を基準とし、同様に5段階(5点:非常に良い、4点:良い、3点:やや良い、2点:同等、1点:劣る)にて評価し、その平均点を算出した。L−ロイシンを含むクッキーは以下の配合で焼成した。
【0018】
<クッキー配合>
L−ロイシン 24g
薄力粉 150g
ベーキングパウダー 0.45g
砂糖 67.5g
マーガリン 67.5g
全卵 42.5g
ホバートミキサー・ビーターを使用し、マーガリン67.5g、砂糖67.5gを中高速で3分間混合しながら全卵42.5gを2〜3回に分けて混合した。次に薄力粉150g、ベーキングパウダー0.45g、L−ロイシン24gを入れ、低速で1分間混合した。この生地を冷蔵庫で一旦休ませてから麺棒で延ばして成型し、上火170℃、下火140℃で15分間焼成した。
【0019】
実施例1
70質量%エタノール水100質量部に対し、ゼイン(小林ツェインDP、小林香料株式会社)10質量部、中鎖トリグリセリド(パナセート810、日本油脂株式会社)2質量部を溶解させ、スプレー液を調製した。リボフラビン(第一ファインケミカル株式会社、粒径30μm)600gを転動流動層装置に仕込み、以下の条件でスプレー液990gを噴霧、乾燥しコーティングを行った。被覆粉体の平均粒径、標準偏差、溶出率、団粒率の結果を表1に示す。
<コーティング条件>
装置 転動流動層装置:ニューマルメライザーNQ−LABO
(株式会社不二パウダル)
タンジェンシャルスプレー方式
回転ディスク回転数 500回転/分
流動化エアー風量 1m3/分
流動化エアー温度 70℃
製品温度 35℃
噴霧速度 15g/分
【0020】
実施例2
70質量%エタノール水100質量部に対し、ゼイン(小林ツェインDP、小林香料株式会社)10質量部、中鎖トリグリセリド(パナセート810、日本油脂株式会社)4質量部を溶解させ、スプレー液を調製した。リボフラビン(第一ファインケミカル株式会社、粒径30μm)600gを転動流動層装置に仕込み、スプレー液860gを噴霧、乾燥し、コーティングを行った。コーティングは、実施例1と同様のコーティング条件で行った。被覆粉体の平均粒径、標準偏差、溶出率、団粒率の結果を表1に示す。
【0021】
実施例3
70質量%エタノール水100質量部に対し、ゼイン(小林ツェインDP、小林香料株式会社)20質量部、中鎖トリグリセリド(パナセート810、日本油脂株式会社)2質量部を溶解させ、スプレー液を調製した。リボフラビン(第一ファインケミカル株式会社、粒径30μm)600gを転動流動層装置に仕込み、スプレー液585gを噴霧、乾燥し、コーティングを行った。コーティングは、実施例1と同様のコーティング条件で行った。被覆粉体の平均粒径、標準偏差、溶出率、団粒率の結果を表1に示す。
【0022】
実施例4
99質量%エタノール水100質量部に対し、GBN−D(株式会社岐阜セラツク製造所)15質量部、中鎖トリグリセリド(パナセート810、日本油脂株式会社)2質量部を溶解させ、スプレー液を調製した。リボフラビン(第一ファインケミカル株式会社、粒径30μm)600gを転動流動層装置に仕込み、以下の条件でスプレー液695gを噴霧、乾燥し、コーティングを行った。被覆粉体の平均粒径、標準偏差、溶出率、団粒率の結果を表1に示す。
<コーティング条件>
装置 転動流動層装置:ニューマルメライザーNQ−LABO
(株式会社不二パウダル)
タンジェンシャルスプレー方式
回転ディスク回転数 500回転/分
流動化エアー風量 1m3/分
流動化エアー温度 65℃
製品温度 25℃
噴霧速度 15g/分
【0023】
実施例5
70質量%エタノール水100質量部に対し、ゼイン(小林ツェインDP、小林香料株式会社)20質量部、中鎖トリグリセリド(パナセート810、日本油脂株式会社)2質量部を溶解させ、スプレー液を調製した。L−ロイシン(協和発酵工業株式会社、粒径100μm)600gを転動流動層装置に仕込み、スプレー液585gを噴霧、乾燥し、コーティングを行った。コーティングは、実施例1と同様のコーティング条件で行った。被覆粉体の平均粒径、標準偏差、溶出率、団粒率の結果を表1に示す。
【0024】
比較例1
70質量%エタノール水100質量部に対し、ゼイン(小林ツェインDP、小林香料株式会社)10質量部を溶解させ、スプレー液を調製した。リボフラビン(第一ファインケミカル株式会社、粒径30μm)600gを転動流動層装置に仕込み、スプレー液1165gを噴霧、乾燥し、コーティングを行った。コーティングは、実施例1と同様のコーティング条件で行った。被覆粉体の平均粒径、標準偏差、溶出率、団粒率の結果を表1に示す。
【0025】
比較例2
70質量%エタノール水100質量部に対し、ゼイン(小林ツェインDP、小林香料株式会社)20質量部、中鎖トリグリセリド(パナセート810、日本油脂株式会社)2質量部を溶解させ、スプレー液を調製した。リボフラビン(第一ファインケミカル株式会社、粒径30μm)600gを転動流動層装置に仕込み、スプレー液585gを噴霧、乾燥し、コーティングを行った。被覆粉体の平均粒径、標準偏差、溶出率、団粒率の結果を表1に示す。
<コーティング条件>
装置 転動流動層装置:ニューマルメライザーNQ−LABO
(株式会社不二パウダル)
タンジェンシャルスプレー方式
回転ディスク回転数 0回転/分
流動化エアー風量 1m3/分
流動化エアー温度 70℃
製品温度 35℃
噴霧速度 15g/分
【0026】
比較例3
70質量%エタノール水100質量部に対し、ゼイン(小林ツェインDP、小林香料株式会社)20質量部、中鎖トリグリセリド(パナセート810、日本油脂株式会社)10質量部を溶解させ、スプレー液を調製したが、スプレー液中で中鎖トリグリセリドの分離が起こり、均一な溶液を得ることが出来なかった。リボフラビン(第一ファインケミカル株式会社、粒径30μm)600gを転動流動層装置に仕込み、スプレー液460gを噴霧、乾燥し、コーティングを行った。被覆粉体の平均粒径、標準偏差、溶出率、団粒率の結果を表1に示す。
【0027】
比較例4
水100質量部に対し、プルラン(プルランPF−20、株式会社林原)10質量部を溶解させ、スプレー液を調製した。リボフラビン(第一ファインケミカル株式会社、粒径30μm)600gを転動流動層装置に仕込み、スプレー液1165gを噴霧、乾燥し、コーティングを行った。コーティングは、実施例1と同様のコーティング条件で行った。被覆粉体の平均粒径、標準偏差、溶出率、団粒率の結果を表1に示す。
【0028】
比較例5
70質量%エタノール水100質量部に対し、ゼイン(小林ツェインDP、小林香料株式会社)20質量部、中鎖トリグリセリド(パナセート810、日本油脂株式会社)2質量部を溶解させ、スプレー液を調製した。L−ロイシン(協和発酵工業株式会社、粒径100μm)600gを転動流動層装置に仕込み、スプレー液585gを噴霧、乾燥し、コーティングを行った。コーティングは、比較例2と同様のコーティング条件で行った。被覆粉体の平均粒径、標準偏差、溶出率、団粒率の結果を表1に示す。
【0029】
実施例6
実施例5で作成したL−ロイシンの被覆粉体を含むクッキーを以下の配合で焼成し、苦味マスキングの程度を評価した。
<クッキー生地配合>
実施例5で作成したL−ロイシンの被覆粉体 28g
薄力粉 150g
ベーキングパウダー 0.45g
砂糖 67.5g
マーガリン 67.5g
全卵 42.5g
ホバートミキサー・ビーターを使用し、マーガリン67.5g、砂糖67.5gを中高速で3分間混合しながら全卵42.5gを2〜3回に分けて混合した。次に薄力粉150g、ベーキングパウダー0.45g、実施例5で作成したL−ロイシンの被覆粉体28gを入れ、低速で1分間混合した。この生地を冷蔵庫で一旦休ませてから麺棒で延ばして成型し、上火170℃、下火140℃で15分間焼成した。苦味マスキングの程度の評価を表2に示す。
【0030】
比較例6
比較例5で作成したL−ロイシンの被覆粉体を含むクッキーを以下の配合で焼成し、苦味マスキングの程度を評価した。
<クッキー生地配合>
比較例5で作成したL−ロイシンの被覆粉体 28g
薄力粉 150g
ベーキングパウダー 0.45g
砂糖 67.5g
マーガリン 67.5g
全卵 42.5g
ホバートミキサー・ビーターを使用し、マーガリン67.5g、砂糖67.5gを中高速で3分間混合しながら全卵42.5gを2〜3回に分けて混合した。次に薄力粉150g、ベーキングパウダー0.45g、比較例5で作成したL−ロイシンの被覆粉体28gを入れ、低速で1分間混合した。この生地を冷蔵庫で一旦休ませてから麺棒で延ばして成型し、上火170℃、下火140℃で15分間焼成した。苦味マスキングの程度の評価を表2に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
表1にまとめた実施例1〜5と比較例1〜5の結果から明らかな通り、粉体にゼイン又はシェラックを被覆する際に、エタノール水溶液100質量部に、ゼイン又はシェラックを10〜20質量部溶解させた溶液に、中鎖トリグリセリドを1〜5質量部溶解させたスプレー液を噴霧し、かつ円錐形のコーン部とブレードが設けられた回転ディスクが設置された転動流動層装置を使用することで、粒度分布がシャープで、団粒の形成がなく、溶出率の小さい被覆粉体を得ることが出来る。また、表2の通り、粉体が持つ独特の味もマスキングでき、その被覆粉体は焼成したクッキーにも使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の方法によりゼイン又はシェラックにより被覆された粉体の製造するための転動流動層装置の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1、転動流動層装置
2、処理室
4、回転ディスク
8、スプレーノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径20〜200μmの粉体の表面にゼイン又はシェラックを被覆する際に、装置の底部に回転軸を中心として水平に回転する、円錐形のコーン部を設けた回転ディスクを備えた転動流動層装置を用い、粉体に下記組成で処方されたゼイン又はシェラックのエタノール水溶液を噴霧することを特徴とする、ゼイン又はシェラックにより被覆された粉体の製造方法。
ゼイン又はシェラック:10〜20質量部、
中鎖トリグリセリド:1〜5質量部、
エタノール水:100質量部。
【請求項2】
円錐形のコーン部を設けた回転ディスクがブレードを設けられたものである請求項1記載の被覆粉体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2で製造されたゼイン又はシェラックにより被覆された粉体。

【図1】
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【公開番号】特開2007−89519(P2007−89519A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285439(P2005−285439)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】