説明

被覆系

(a)分子あたり平均で1を超えるエポキシ基を含むエポキシ樹脂;及び
(b)硬化剤として、
(b1)脂肪族、脂環式、芳香脂肪族アミン、一塩基酸又は多塩基酸をベースとするイミダゾリン基含有アミドアミン、グリシジル化合物から製造される該アミン又はアミドアミンの付加体、環式カーボネートから製造される該アミン又はアミドアミンの付加体から選択され、分子あたり平均で少なくとも2個の窒素原子に結合している反応性水素原子を含むアミン性化合物;及び
(b2)ポリフェノールノボラック;のブレンドであり、ポリフェノールノボラックが、(b1)及び(b2)を含む硬化剤ブレンドの全重量を基準として30重量%〜45重量%の量で用いられる複合硬化剤;
を含み、土木工事、船舶、建築及び保守のような用途分野における迅速硬化性の保護被覆及び接着剤のために有用な硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂、並びに硬化剤としてアミン及びノボラック樹脂のブレンドをベースとする、金属及び無機基材のための保護被覆として用いるための迅速硬化性被覆系に関する。
【背景技術】
【0002】
グリシジル化合物及び従来のポリアミン又はポリアミドアミンをベースとする硬化性組成物は、土木工事、船舶、建築及び保守のような用途分野での接着剤及び被覆における雰囲気温度硬化性エポキシ系のために広く用いられている。
【0003】
しかしながら、高い反応性と迅速な硬化速度を有するアミンは、迅速に運用状態に戻すことや、より短い製造時間が要求される特定の用途に関してますます不可欠になってきている。例えば、船舶の建造や、迅速に運用状態に戻す水パイプラインの再ライニングが応用分野であり、ここでは従来のエポキシ/アミン化学物質では満足できず、現在のところ特に低い温度において迅速な硬化が要求されている。
【0004】
第3級アミン、酸、ヒドロキシルアミン及びマンニッヒ塩基(例えばWO 00/15687に記載されている)のようなエポキシ/アミン系を促進するために通常用いられる他の化合物は、低温においてこのような迅速な硬化特性を達成することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、エポキシと組み合わせて、0℃付近の温度においても極めて迅速な硬化速度を示す、アミン及びフェノール樹脂をベースとする新規な複合硬化剤を提供する。アミン又はフェノール樹脂と混合したアミンのブレンドに依存して、最終的なエポキシ組成物は、驚くべき許容しうる粘度範囲を、非常に迅速な硬化速度と共に示す。更に、かかる硬化エポキシ系の良好な耐化学薬品性が、エポキシ/アミンネットワーク中にフェノール樹脂を導入することによって変性されなかったことが観察されたことは驚くべきことであった。それどころか、かかる系の耐化学薬品性は、未加工のエポキシ/アミン系と比較して、5%及び10%の酢酸のような化学物質に対して改良された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい態様においては、脂肪族、脂環式及び芳香脂肪族アミンを用いた。場合によっては、一塩基酸又は多塩基酸をベースとするイミダゾリン基含有ポリアミドアミン、それらの付加体及びマンニッヒ塩基を同様に用いることができる。
【0007】
更に、タンク又はパイプラインのような食品又は飲用水と接触する装置に関しては、被覆の迅速な硬化性及び長期の耐久性に加えて更なる重要な性質は、保護被覆として用いる硬化エポキシ系の毒性である。食品又は飲用水中へのプラスチック材料及び物品の構成成分のマイグレーションは、一定の限界を超えてならない。これに関連して、「プラスチック」という用語は、重合、重付加等のようなプロセスによって得られる巨大分子化合物として理解される。かかる巨大分子化合物に他の材料又は物質を加えることができる。いずれの場合においても、これらの物質は、最終食品において技術的な作用を有する量で材料又は物品から食品中にマイグレーションしてはならない。例えば英国法を考慮すると、飲用水パイプの(再)ライニング系に関する有機材料のマイグレーションレベルは、5mg/L(5ppm)TOC(全有機炭素)を超えてはならない。また、フィルムからのアミンのマイグレーションは、かかるタイプの用途に関して、用いるアミンに依存し、個々の国の公式指針において示されている一定の限界を超えてはならない。
【0008】
上述したように、本発明は、とりわけ飲用水を輸送するパイプの内部(再)ライニングのために有用な、エポキシ樹脂をベースとする迅速硬化性保護被覆系に関する。更なる可能な用途としては、短時間のうちに運用状態に戻さなければならない現存するタンク、配管等の改修が挙げられる。実際には、これは、硬化を0℃付近の低温においても数時間、通常は2〜5時間以内で行わなければならないことを意味する。
【0009】
したがって、本発明の目的は、低い温度(水パイプの再ライニングに関しては3℃程度の低温)において良好な硬化速度を有すると共に、マイグレーション試験から得られる低い遊離アミン含量を有する毒性的に安全で、低いTOC値を与える迅速硬化性エポキシ系を提供することである。
【0010】
更に、かかる新規な複合硬化剤は、更に、タンクのライニングのような浸食又は化学薬品に対する保護が要求される用途のためにも有用である。この後者のケースにおいては、従来のエポキシ/アミン系は、希酸に対して劣った耐性を示す。芳香族アミン(例えば、ジアミノジフェニルメタン(DDM)及び誘導体)のみが、酢酸のような希酸に対して注目すべき耐性を示す。しかしながら、かかる芳香族アミンは、毒性の理由のために将来においては市場から締め出されるであろう。したがって、新規な複合硬化剤が、例外的に、用いるアミンのタイプに依存して酢酸のような希酸に対する耐化学薬品性を向上することが示された。この点に関し、m−キシリレンジアミン(MXDA)をベースとする複合組成物は、かかる化学物質に対して最良の耐性を示す。
【0011】
他の可能な用途分野は、船舶であり、ここでは船舶上の多くの鋼製工作物が塩に曝露され、電気化学的な浸食及び錆の形成を引き起こす。一般に、耐食性被覆が新しいサンドブラスト鋼に施され、これは0℃程度の低い温度においても24時間後に好ましくは硬化し粘着性がない状態にならなければならない。かかる新規な種類のアミン/フェノール樹脂組成物は、DIN 53167及びDIN 50021−SS法にしたがって行った塩噴霧試験から分かるように、迅速な硬化と改良された耐食性の両方を提供する。同様に低温硬化のために好適なフェンアルカミンのような硬化剤と比較して、かかる複合系は、良好な耐食性を確保しながら更に一層迅速硬化性である。最後に、この新規な複合硬化剤は、不飽和二重結合を有し多かれ少なかれ褐色がかった色の原材料である天然のアルキルフェノールカルダノールを除いて、フェンアルカミンよりも着色が非常に少ない。
【0012】
本発明の第1の目的は、
(a)分子あたり平均で1を超えるエポキシ基を含むエポキシ樹脂;及び
(b)硬化剤として、
(b1)脂肪族、脂環式、芳香脂肪族アミン、一塩基酸又は多塩基酸をベースとするイミダゾリン基含有アミドアミン、グリシジル化合物から製造される該アミン又はアミドアミンの付加体、環式カーボネートから製造される該アミン又はアミドアミンの付加体から選択され、分子あたり平均で少なくとも2個の窒素原子に結合している反応性水素原子を含むアミン性化合物;及び
(b2)ポリフェノールノボラック;のブレンドであり、ポリフェノールノボラックが、硬化剤ブレンド(b1)及び(b2)の合計重量を基準として30重量%〜45重量%の量で用いられる複合硬化剤;
を含む硬化性組成物である。
【0013】
本発明による組成物は、土木工事、船舶、建築及び保守のような用途分野における保護被覆及び接着剤を提供するために用いられる。
本発明において用いるノボラックは、周知の方法にしたがって、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドを、フェノール、メチルフェノール(クレゾール)、ジメチルフェノール(キシレノール)、他のアルキルフェノール、ビスフェノールタイプのもの、ビフェニル−フェノール又はフェニル−フェノールタイプのものなどのようなフェノール性化合物と、所望の場合にはシュウ酸のような触媒を用いて反応させることによって調製することができる。一般に、フェノール性化合物及び触媒量のシュウ酸を、溶媒又は水と共に又はこれらを用いずに、容器内に配置し、ホルムアルデヒド、好ましくはパラホルムアルデヒドを少しずつ加える。次に、減圧下の蒸留によって揮発性成分を除去する。ノボラックは、1種又は異なるフェノール性化合物の混合物から製造することができる。かかる生成物は、とりわけHouben−Weyl, 4th−ed, Methoden der Organischen Chemie, vol.E20, Makromolekulare Stoffe, Part 3, p.1800−1806に記載されている。
【0014】
本発明の好ましい態様においては、ポリフェノールノボラックは、式(I)又は(II):
【0015】
【化1】

【0016】
(式(I)及び(II)において、R、R、R、Rは、互いに独立して、H、1〜15個の炭素原子を有する分岐鎖又は非分岐鎖アルキル基であり、R、Rは、互いに独立して、H、CH、CFを表す)
のフェノール性化合物とホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)との縮合から得られるホモポリマー、或いは式(I)及び/又は(II)の異なるフェノール性化合物とホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)とのコポリマーである。
【0017】
式(I)の化合物から誘導される好ましいノボラックは、式(I)において、R、R、R、RがH(フェノール)又はアルキルフェノールのいずれかであり、基R〜Rの一つ又は二つが基−CHであるか、或いは基R〜Rの一つがtert−ブチル基であるか、或いは基R〜Rの一つが8〜15個の炭素原子を有する長鎖の分岐鎖又は非分岐鎖アルキル基であり、残りの基R〜RがHであるものである。
【0018】
式(II)の化合物から誘導される好ましいノボラックは、式(II)においてR、Rがいずれも−H又は−CHのいずれかであるものである。
本発明によれば、式(I)及び/又は(II)の異なるフェノール性化合物とホルムアルデヒドとのコポリマーであるポリフェノールノボラックは、ノボラックを合成する際に少なくとも二つの異なるフェノール性化合物の混合物を用いることによって得られると理解される。
【0019】
好ましくは式(I)及び/又は(II)のフェノール性化合物のいずれかから誘導されるノボラックは、雰囲気条件において液体の硬化剤組成物を得るために、硬化剤ブレンドの全重量を基準として少なくとも30重量%、好ましくは35重量%〜45重量%の量で存在していなければならない。この点に関連して、雰囲気条件とは、20±5℃の通常の室温と理解される。
【0020】
同様の組成物がWO 99/29757及びEP 0266306A2から公知である。WO 99/29757においては、フェノールノボラックを、促進のために通常的な量、即ちアミン硬化剤を基準として1〜25重量%の量で用いる硬化性エポキシ組成物が開示されている。EP 0266306A2においては、液体エポキシ樹脂、及び50/50〜80/20の比のノボラックとポリアミンとの固体ブレンドである、樹脂中に分散される固体の潜在性硬化剤を含む硬化性液体エポキシ組成物が開示されている。
【0021】
本発明の他の好ましい態様においては、ポリフェノールノボラックは、硬化剤ブレンド(b1)及び(b2)の合計重量を基準として20重量%以下、好ましくは15重量%未満、最も好ましくは10重量%未満の量の、未反応の遊離フェノール性化合物、好ましくは式(I)及び/又は(II)の化合物を含む。
【0022】
製造されるノボラックは、明確な多分散指数を有する統計的組成物である。約1.0のポリマー指数Iを有するポリマーの狭い分布により、より低い粘度範囲のポリマー溶液が導かれる。したがって、最終系の粘度を可能な限り低下させるためには、約1の多分散指数Iが好ましい。市販のフェノールノボラックの良好な例は、多分散指数Mw/Mnが約1.39であるSud−West−Chemie GmbHからのSupraplast 3616である。フェノールノボラックの分子量は、(パラ)ホルムアルデヒドの量に対して好適な過剰量のフェノール成分を用いることによって容易に変動させることができる。
【0023】
アミン/ノボラック複合硬化剤は、例えば、窒素流下及び撹拌下で、約90℃で約0.5時間、ノボラックをアミン中に溶解することによって調製することができる。
本発明にしたがってポリフェノールノボラック樹脂とブレンドし、エポキシ樹脂と共に硬化させるアミン性化合物は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族アミン、一塩基酸又は多塩基酸をベースとするイミダゾリン基含有アミドアミン、グリシジル化合物から製造される該アミン又はアミドアミンの付加体、環式カーボネートから製造される該アミン又はアミドアミンの付加体であり、該アミン性化合物は分子あたり平均で少なくとも2個の窒素原子に結合している反応性水素原子を含む。
【0024】
これらの化合物は、当該技術において一般的な知識の一部であり、とりわけLee&Neville,”Handbook of Epoxy Resins”, McGraw Hill Book Company, 1987, 6−1章〜10−19章に記載されている。
【0025】
本発明に従って用いられるアミンは、脂肪族、脂環式又は芳香脂肪族アミン、例えば、1,2−ジアミノエタン(エチレンジアミン(EDA));1,2−プロパンジアミン;1,3−プロパンジアミン;1,4−ジアミノブタン;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(ネオペンタンジアミン);ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA);2−メチル−1,5−ジアミノペンタン;1,3−ジアミノペンタン;2,2,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン;2,4,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン及びこれらの混合物(TMD);1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;ヘキサメチレンジアミン(HMD);1,2−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン(1,2−DACH及び1,4−DACH);ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン;ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン;ジエチレントリアミン(DETA);2−アザヘプタン−1,7−ジアミン;1,11−ジアミノ−3,6,9−トリオキサウンデカン;1,8−ジアミノ−3,6−ジオキサオクタン;1,5−ジアミノ−メチル−3−アザペンタン;1,10−ジアミノ−4,7−ジオキサデカン;ビス(3−アミノプロピル)アミン;1,13−ジアミノ−4,7,10−トリオキサトリデカン;4−アミノメチル−1,8−ジアミノオクタン;2−ブチル−2−エチル−1,5−ジアミノペンタン;N,N,−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン;トリエチレンテトラミン(TETA);テトラエチレンペンタミン(TEPA);ペンタエチレンヘキサミン(PEHA);ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン;m−キシリレンジアミン(MXDA);5−(アミノメチル)ビシクロ[[2.2.1]ヘプト−2−イル]メチルアミン(NBDAノルボルナンジアミン);ジメチルジプロピレントリアミン;ジメチルアミノプロピル−アミノプロピルアミン(DMAPAPA);3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(又はイソホロンジアミン(IPD));ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM);混合多環アミン(MPCA)(例えばAncamine 2168);ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン(Laromin C260);2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン;ビスアミノメチル−ジシクロペンタジエン(トリシクロデシルジアミン(TCD));脂肪族ポリエチレンポリアミン及び二量体化又は三量体化脂肪酸から誘導されるイミダゾリン基含有ポリアミノアミド並びにグリシジル化合物から製造されるそれらの付加体である。
【0026】
更に、D−230、D−400、D−2000、T−403、T−3000、T−5000、ED−600、ED−900、EDR148などのHuntsmanからのJeffamineとして知られているポリオキシアルキレンポリアミン、並びにPolyminとして知られているポリイミノアルキレンポリアミンも、同様に本発明の範囲内でフェノール樹脂とブレンドして用いることができる。
【0027】
更に好適なポリアミンは、1,14−ジアミノ−4,11−ジオキサテトラデカン;ジプロピレントリアミン;2−メチル−1,5−ペンタンジアミン;N,N’−ジシクロヘキシル−1,6−ヘキサンジアミン;N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン;N,N’−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン;N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン;第2級ポリオキシプロピレンジ−及びトリアミン;2,5−ジアミノ−2,5−ジメチルヘキサン;ビス(アミノ−メチル)トリシクロペンタジエン;1,8−ジアミノ−p−メンタン;ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルシクロヘキシル)メタン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC);ジペンチルアミン;N−2−(アミノエチル)ピペラジン(N−AEP);N−3−(アミノプロピル)ピペラジン;ピペラジン;である。
【0028】
成分(b1)としては、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族アミンから選択されるアミンが好ましく用いられる。好ましいアミンは、MXDA、IPD、TMD、1,2−DACH、1,3−BAC、DETA及びジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)から選択される。
【0029】
上記記載のアミンの幾つかからの混合物を用いることも同様に可能である。
更に、飲用水パイプラインの場合のように用途が食品に関連する場合には、複合硬化剤の組成物中に加える脂肪族、脂環式又は芳香脂肪族アミンは、食品又は飲用水と接触するプラスチックに関する地域的規制に違反してはならない。例えば、ヨーロッパにおいては、ポリアミン並びに本発明の新規な複合系において用いる他の成分の全ては、「欧州共同体委員会」によって2002年8月6日の「指針2002/72/EC」及び2004年3月1日の「指針2004/19/EC」において公表された「肯定的リスト」において見られた。したがって、1,6−ジアミノ−2,2,4−トリメチルヘキサンと1,6−ジアミノ−2,4,4−トリメチルヘキサン(TMD)、キシリレンジアミン(MXDA)、イソホロンジアミン(IPD)及びこれらのブレンドの混合物の場合と同様に、EU規制の「肯定的リスト」のこの第1草案において見られるアミンを、飲用水パイプラインのために用いることができる。
【0030】
硬化性組成物の調製のために本発明にしたがって更に用いられる好適なエポキシ化合物は、分子あたり平均で1を超えるエポキシ基を含む市販の製品であり、飽和又は不飽和で線状又は分岐鎖の脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式のものであり、硬化反応を大きく阻害しない置換基を有することができる。
【0031】
用いるのに好適なエポキシ樹脂の例としては、一価及び/又は多価及び/又は多核フェノール、特にビスフェノール及びノボラックから誘導されるものが挙げられる。これらは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、及びフェノール(又はアルキルフェノール)とホルムアルデヒドのようなアルデヒドの反応から得られる多価フェノールのポリグリシジルエーテルである。
【0032】
アルコール、グリコール又はポリグリコールのポリグリシジルエーテル、及びポリカルボン酸のポリグリシジルエーテルも同様に用いることができる。
これらの化合物の広範囲の一覧は、概論であるA.M.Paquinの”Epoxidverbindungen und Epoxidharze”, Springer Verlag, Berlin, 1958,IV章及びLee&Nevilleの”Handbook of Epoxy Resins”, 1967, 2章, p.257−307において見られる。
【0033】
また、2種類又は2種類を超える異なるエポキシ化合物の混合物を用いることも可能である。
エポキシ化合物は、液体、特に液体ビスフェノール又は液体ノボラックであることができる。また、半固体又は固体の樹脂、特にタイプ1のものを用いることができる。タイプ1の幾つかの市販の固体樹脂は、Araldite GT7071及びGT6071の商品名でHuntsmanから入手することができる。半固体又は固体の樹脂を用いる場合には、船舶用途の場合のように、製品を噴霧できるようにエポキシ樹脂を溶解して粘度を低下させるための溶媒が必要である。更に、高機能化反応から誘導されるエポキシ化合物、例えばビスフェノールAで高機能化したノボラックを同様に用いることができる。
【0034】
本発明によれば、化合物(a)は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、多価フェノール又はクレゾールノボラックのポリグリシジルエーテル、一価又は多価の脂環式アルコールのモノ又はポリグリシジルエーテル、一価又は多価の脂肪族アルコールのモノ又はポリグリシジルエーテルから選択することが好ましい。
【0035】
エポキシ樹脂と、所謂反応性希釈剤、例えば一価又は多価フェノール、一価又は多価脂肪族アルコール、一価又は多価脂環式アルコールのグリシジルエーテルとのブレンドを同様に用いることができる。幾つかの好適な例は、クレシルグリシジルエーテル、p−tert−ブチル−フェニルグリシジルエーテル、n−ドデシル−/n−テトラデシルグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオール−ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリグリシジルエーテル、例えばポリオキシプロピレンジグリシジルエーテル、シクロヘキサン−ジメタノールジグリシジルエーテル、ネオデカン酸及びシクロヘキサンジカルボン酸のグリシジルエステルである。
【0036】
必要な場合には、かかる反応性希釈剤を加えることによってエポキシ樹脂の粘度を更に低下させることができるが、希釈剤が熱硬化性樹脂の最終特性に悪影響を与えないように適度な量で用いなければならない。例として記載したエポキシ樹脂は、硬化性組成物のため及びアミン−エポキシ付加体の製造のための両方で用いることができ、フェノールノボラック樹脂とブレンドすることができる。
【0037】
本発明の好ましい態様においては、エポキシ樹脂と少なくとも一つの反応性希釈剤とを予備混合することによってエポキシ化合物(a)と反応性希釈剤とのブレンドを用いる。
また、上述の環式カーボネートは、アミン付加体の調製のためのみならず、硬化性組成物のためにエポキシと組み合わせて用いることもできる。これらのカーボネートは種々のタイプのものであることができ、例えばアルキレンオキシド化合物と二酸化炭素との反応生成物であることができ、或いはグリシジル化合物と二酸化炭素との反応生成物をベースとするものであることができる。好ましい化合物は、C〜Cアルキレンカーボネートのような一価の環式カーボネートである。
【0038】
本発明の他の好ましい態様においては、エポキシ樹脂とプロピレンカーボネートとの組み合わせによって配合物の粘度が大きく低下し、したがって、系は噴霧適用可能とするために溶媒をさほど必要としない。これは、ますます厳しくなっていて高い固形分の用途を与える(低VOC塗料)VOCに対する環境規制に適合している。上述の環式カーボネートは、異なる重量比で加えることができるが、熱硬化性樹脂の硬化速度及び最終特性に悪影響を与えてはならない。環式カーボネート及び硬化するエポキシ樹脂は、簡単に一緒に混合することができる。エポキシ樹脂とカーボネートとの好適な比(重量%)は、75:25〜99:1、好ましくは80:20〜99:1、最も好ましくは85:15〜98:2である。他の好ましい態様においては、環式カーボネートによる予備変性(アミン又はアミンのブレンドと環式カーボネートとの予備反応)が行われる。これは、層間接着を多少向上するという有利性を有する。しかしながら、環式カーボネートによる変性は、最終的な複合硬化剤の粘度の上昇につながる。好ましくは、アミンの予備変性は、変性硬化剤を基準として30重量%未満、最も好ましくは25重量%未満の環式カーボネートによって行う。この態様のために用いられる好適で好ましいアミンは、上記に記載したものと同じである。
【0039】
複合硬化剤及びエポキシ化合物は、好ましくは、ほぼ当量、即ちアミノ窒素原子に結合した活性水素及び反応性エポキシ基を基準としてほぼ当量で用いる。しかしながら、複合硬化剤又はグリシジル成分を、当量よりも多いか又は少ない量で用いることも可能である。用いる量は、当業者に公知のように、反応生成物の所望の最終特性に依存する。
【0040】
エポキシ樹脂組成物は、場合によっては、例えば流動性制御添加剤、消泡剤、垂れ防止剤、顔料、強化剤、充填剤、エラストマー、安定剤、増量剤、可塑剤、難燃剤、促進剤、着色剤、繊維状物質、チキソトロープ剤、耐食性顔料、及び溶媒から選択される他の添加剤を更に含むことができる。
【0041】
明らかに、飲用水又は食品の品質に悪影響を与えないという条件でかかる添加剤のみを用いることができる。
上記のように、エポキシ/アミンの反応のために、新規なアミン/ポリフェノール複合硬化剤に加えて触媒量の促進剤を用いることができる。好適な例は、例えば、Huntsman Advanced MaterialsからのAccelerators 2950及び960−1のようなマンニッヒ塩基タイプの促進剤、ベンジルジメチルアミン(BDMA)のような第3級アミン、EP 0083813A1及びEP 0471988A1において記載されているようなカルシウム、リチウム等のような第I族及び第II族金属の塩として最も知られている水酸化物及び硝酸塩のような金属塩であり、或いはサリチル酸のような酸を同様に加えることができる。本発明の好ましい態様においては、促進剤はサリチル酸である。促進剤の量は、アミン/ノボラック/促進剤の合計重量を基準として0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%である。
【0042】
フェノール樹脂の量は、主として、アミン又はアミンの混合物のタイプ、並びに複合硬化剤を製造するのに用いるフェノール樹脂のタイプ、及び与えられた用途のために目標とする粘度/特性に依存する。この点に関して、複合硬化剤の粘度は、好ましくは、雰囲気温度において20000mPa・s未満である。高い硬化剤ブレンド粘度或いは高い動的剪断粘度を有する半固体の組成物の場合においてのみ、最終配合物の粘度を低下させて、かかる配合物を噴霧又はブラシ塗布可能にするために、溶媒を硬化剤ブレンドに加えることが望ましい。キシレン/ブタノール混合物、或いはメトキシプロパノールのような純粋なアルコールなどの標準的な溶媒が通常用いられる。しかしながら、例えば飲用水パイプの(再)ライニングやワインタンクのライニング用途においては推奨されないが、特定の場合においてのみ有機溶媒を用いることができる。
【0043】
本発明の場合においては、驚くべきことに硬化速度及び耐化学薬品性の点で最も有効なアミン/ノボラックの比が70/30〜55/45の間、好ましくは65/35〜55/45の間であることが見出されたので、アミン/ノボラック複合硬化剤に言及することが適当である。驚くべきことに、アミン/ノボラックブレンドは約60/40の比においても液体のままであった。例えば、Supraplast 3616をフェノール樹脂として用いると、アミン/ノボラックブレンドの最良の比は、トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMD)又はm−キシリレンジアミン(MXDA)のアミンの場合に60/40であることが分かった。
【0044】
上記のように、アミン/ポリフェノールノボラックの割合は、粘度、硬化速度、耐化学薬品性及び浸食保護性に関する所望の特性に依存して変動させることができる。驚くべきことに、アミン及びポリフェノールノボラックを含む複合硬化剤の全重量を基準として少なくとも30重量%、好ましくは35〜45重量%の濃度のポリフェノールノボラックを用いることによって、酢酸の5又は10%水溶液のような浸食性の化学物質に対する耐化学薬品性を大きく向上させることができたことが観察された。これは、アミンとポリフェノールノボラックの組み合わせの低下したネットワーク密度の理由から特に驚くべきことである。
【0045】
本発明の硬化性組成物は、−40℃、好ましくは約−10℃から約150℃の範囲内の温度で、エポキシ樹脂を完全に硬化させるのに十分な時間、硬化させることができる。標準的な雰囲気硬化用途のためには、組成物は、好ましくは約−5℃〜約50℃の温度で硬化させる。
【0046】
本発明の更なる目的は、本発明の組成物を硬化することによって得られる硬化材料である。
本発明は、更に、小数の用途が指定された、被覆、接着結合のため、或いは床材、注型材、金型又は被包材料としての硬化性組成物を提供する。エポキシ組成物は、特に顔料と組み合わせると、被覆のための特に良好な適用性を有する。上記記載の新規な複合硬化剤を用いたエポキシ組成物は、例えば、リン酸亜鉛又は亜鉛粉末のような耐食性顔料と有利に組み合わせて、船舶及びヘビーデューティーな用途のための高い耐食性を有する塗料配合物を製造することができる。更に、組成物に、酸化鉄及び二酸化チタンのような顔料、及び硫酸バリウムのような充填剤を含ませて、ワインのタンク及び配管のための保護被覆を与えることもできる。得られる配合物は、従来の方法で、系のゲル化時間に依存して、噴霧、ローラー塗布、ブラシ塗布などによって、或いは二重供給噴霧装置のような特別な装置を用いて、被覆すべき基材の少なくとも一つの表面上に施すことができる。
【0047】
本発明の更なる目的は、(b1)脂肪族、脂環式、芳香脂肪族アミン、或いは、一塩基酸又は多塩基酸をベースとするイミダゾリン基含有アミドアミン、或いはグリシジル化合物又は環式カーボネートから製造されるそれらの付加体から選択され、分子あたり平均で少なくとも2個のアミノ窒素原子に結合している反応性活性水素原子を含むアミン;及び(b2)ポリフェノールノボラック;のブレンドであり、ポリフェノールノボラックが、成分(b1)及び(b2)を含む硬化剤ブレンドの全重量を基準として30重量%〜45重量%、好ましくは35重量%〜45重量%の量で用いられる硬化剤ブレンド(b)の硬化剤としての使用である。
【0048】
この目的のために用いることができる好適で好ましいアミン、環式カーボネート及びポリフェノールノボラックは、硬化性エポキシ樹脂組成物に関して上述したものと同じである。アミン/ポリフェノールノボラック硬化剤ブレンドに加えて更なる促進剤を用いることができる。好適で好ましい触媒及び適当な量は、上述したものと同じである。
【実施例】
【0049】
(A)アミン及びノボラックのブレンドをベースとする複合硬化剤の硬化特性
80℃の温度で異なるアミン又はアミン混合物中にノボラック樹脂Supraplast 3616を溶解することによって、下記の複合硬化剤を調製した。複合硬化剤の特性を下表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
下表2に、0℃及び5℃の両方の温度で硬化させたアミン/ノボラック樹脂の異なるブレンドを含む異なるエポキシ系の硬化特性を示す。
【0052】
【表2】

【0053】
本発明の組成物に関する結果は、特に表2に示す二つの比較例と比較すると、0℃においても完全硬化及びダストフリーの両方の測定法に関して優れた硬化時間を示し、これはエポキシ系に関して極めて異例のものである。
【0054】
下表3は、表2に示す配合物1、2及び3に関して、異なる硬化温度及び相対空気湿度条件における硬化時間の関数としてのショアD硬度を示す。
【0055】
【表3】

【0056】
表3の結果は、3種類の配合物の全てが、5℃において1日硬化後に60を超える値の極めて高いショアD硬度を示すことを示し、これはかかる系の非常に優れた迅速な硬化速度を示す。
【0057】
(B)アミンMXDAと異なるタイプのノボラック:ビスフェノールAノボラック、ビスフェノールFノボラックとをベースとする複合硬化剤の硬化特性
周知の方法にしたがって、シュウ酸のような触媒を用いて、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドを、ビスフェノールA及びビスフェノールFのようなフェノール性化合物と反応させることによって下記のノボラックを調製した。
【0058】
ビスフェノールAからのノボラックの合成の実施例
114.15g(0.5モル)のビスフェノールA、37%のホルムアルデヒド水溶液34.5g、及び2.02gのシュウ酸を一緒に混合し、撹拌下、窒素気流下で25分以内で130℃に加熱し、この温度で1時間30分保持した。この時間の後に、50mbarの減圧下、170℃で2時間20分蒸留することによって形成された水を除去し、最終的に温度を190℃に昇温して、形成されたポリマーを排出した。ポリマーの特性を表4に示す。
【0059】
ビスフェノールFからのノボラックの調製の実施例
100g(0.5モル)のビスフェノールF、37%のホルムアルデヒド水溶液30.44g、及び2.02gのシュウ酸を一緒に混合し、撹拌下、窒素気流下で20分以内で130℃に加熱し、この温度で2時間30分保持した。この時間の後に、30mbarの減圧下、170℃で2時間35分蒸留することによって形成された水を除去し、形成されたポリマーを最終的にこの170℃の温度で排出した。ポリマーの特性を表4に示す。
【0060】
【表4】

【0061】
100℃の温度においてMXDA中に上記記載のノボラック樹脂を溶解することによって下記の複合硬化剤を調製した。複合硬化剤ブレンドの特性を下表5に示す。
【0062】
【表5】

【0063】
また、表6に示すように、他のタイプのノボラックをベースとする複合硬化剤の硬化特性を測定した。ビスフェノールAからのノボラックとMXDAとの組み合わせ(硬化剤ブレンドD)及びビスフェノールFからのノボラックとMXDAとの組み合わせ(硬化剤ブレンドE)は、いずれも、系の硬化速度が向上したが、ノボラックSupraplast 3616をベースとするフェノールとMXDAとの組み合わせよりも有効でなかった。
【0064】
【表6】

【0065】
(C)プロピレンカーボネートによるアミン混合物MXDA/TMDの付加、並びにポリフェノール(Supraplast 3616)による更なる変性
以下の手順にしたがって、90/10の比のMXDA/TMDのアミン混合物を、プロピレンカーボネートによって変性した。
【0066】
76.50g(0.562モル)のアミン:メタ−キシリレンジアミン(MXDA)及び8.50g(0.054モル)のトリメチルヘキサメチレンジアミン異性体混合物(TMD)を80℃に加熱し、次に15gのプロピレンカーボネート(0.147モル)を30分以内で反応混合物に加えた。次に、反応混合物を更に80℃で3時間加熱した。最終的なアミン付加体硬化剤Fは、100mPa・s(CAP2000、コーン3、900rpmによって測定)未満の粘度を有していた。次に、70gのMXDA/TMD−プロピレンカーボネート付加体Fを、80℃において30gのSupraplast 3616と混合して、最終的に表7に示す複合硬化剤Gを得た。次に、この複合硬化剤をエポキシ樹脂(Araldite GY250)と組み合わせて配合及び試験し、得られた硬化特性を表8に示す。プロピレンカーボネートをエポキシ成分に直接加えて硬化段階中にカーボネート−アミンの間の反応を行わせることも可能であることは、この段階において注目して言及すべき点である。両方のタイプの配合物の硬化特性を表8に示す。
【0067】
【表7】

【0068】
25℃における配合物の粘度に関する結果は、エポキシ樹脂をプロピレンカーボネートと予め混合すると本発明の配合物の粘度が大きく低下することを示す。実施例8及び10を非変性複合硬化剤Hを用いた実施例12と比較して参照されたい。これとは反対に、アミンをプロピレンカーボネートで予備変性すると(予備反応硬化剤Gを用いた実施例6)、最終配合物の粘度が上昇するが、かかる濃度のプロピレンカーボネートを用い、溶媒の不存在下の非変性硬化剤とほぼ同等の硬化時間であった。しかしながら、変性の有利な点は、かかるレベルの変性或いはより高い濃度のプロピレンカーボネートにおいても観察される層間接着の顕著な改良がもたらされることである。
【0069】
概して、硬化時間は、5重量%未満の濃度のプロピレンカーボネートを用いて系を変性することによって僅かに変動させることができ、これはアミンを予備変性し、溶媒を添加する場合にはより明確で、この場合には硬化時間の増大が常に観察される。しかしながら、複合硬化剤を用いたかかるタイプの系は、未変性のアミン系と比較すると、未だ極めて迅速な硬化性を有すると判断される。
【0070】
プロピレンカーボネートのより高い濃度(GY250/プロピレンカーボネートの全混合物を基準として約5重量%を超えるプロピレンカーボネート)においては、かかる変性によって硬化時間がより影響を受ける。
【0071】
アミン成分と反応しうる単官能性環式カーボネートを加えることによる変性によって、系の架橋密度が多少低下し、これにより耐化学薬品性が低下する可能性がある。
【0072】
【表8】

【0073】
(*) 極めて反応性であり、粘度を測定するのが困難であった
ガラス上で測定した被覆厚さは150〜200μmの間であった
(1) 重量%;
(2) アミン/ノボラックブレンドの粘度は、CAP2000粘度計を用いて25℃で、コーン6によって500rpmで測定した
(3)(4) 硬化時間は、上記の配合物で被覆したガラスシートを用いてLandolt装置上で測定した(上記に記載の方法を参照)。
(5) ISO 1519/73によるマンドレル曲げ試験
(D)複合硬化剤の水(再)ライニング系でのマイグレーション試験
試料の調製に関して、硬化の内部法及び配管洗浄のシミュレーションを用いてTOC(全有機炭素)結果を得た。以下の調製法を用いることによって結果を得た。
【0074】
8cmの直径を有するガラスビーカーの底をアセトン及び脱イオン水で清浄化した。1mm厚の材料をガラスビーカーの底の上に流延し、材料を3℃で3時間硬化させ、この時間の後、材料の表面を水流で1時間清浄化して、配管の清浄化をシミュレートした。次に、材料を200mLの脱イオン水で24時間抽出し、抽出物をそのTOC含量に関して分析した(Norm ISO 8245:1999の方法を用いた)。また、抽出物中の遊離アミン含量を、HPLC及びGC−MSによって測定した。最終的なマイグレーション結果を表9に示す。
【0075】
【表9】

【0076】
これらの結果は、最終的に、系を3℃程度の低い温度で硬化させた場合においても、食品用のプラスチックの製造において用いられる評価物質の欧州肯定的リストにおいて示されている限界を下回る、水による抽出後の遊離アミンの極めて低い濃度を与えることを示す。したがって、これらの硬化剤は、飲用水に関して、将来の欧州指針、及び個々の国々において定められるマイグレーションレベルの要求をも満足するであろう。
【0077】
(E)エポキシ樹脂と組み合わせた複合硬化剤ブレンドの耐化学薬品性
サンドブラスト鋼パネルSa21/2上に約500ミクロン厚で施し、23℃、50%rhで10日間硬化させた被覆について、耐化学薬品性を試験した。
【0078】
本発明の複合硬化剤ブレンドの耐化学薬品性を、非変性アミン、例えばTMD又はMXDAのもの、並びに特許WO 99/29757において特許請求されている組成の上限、例えば75/25のアミン/ノボラックの比のアミン/ノボラック樹脂混合物のものと比較した。
【0079】
第1に、TMD及びMXDAのような純粋なアミンの耐化学薬品性に関する結果を、下表10及び11に示す。いずれのアミンも、5及び10重量%の酢酸水溶液に対して耐性を全く示さず、フィルムはかかる浸食性の化学物質と接触して3日未満で破壊された。
【0080】
【表10】

【0081】
【表11】

【0082】
特許WO 99/29757において言及されている上限である約25重量%のSupraplast 3616を含む上記アミンを用いて製造された被覆の耐化学薬品性を、表12及び13に示す。TMD及びMXDAの両方の場合の未変性系と比較すると耐化学薬品性が僅かに改良されたが、被覆は、10重量%の酢酸水溶液の形態の浸食性化学物質の場合には、短い時間で攻撃又は破壊された。
【0083】
【表12】

【0084】
【表13】

【0085】
高い量のSupraplast 3616を含む本発明の複合組成物の耐化学薬品性を、MXDA及びTMDの両方の場合に関してそれぞれ下表14及び15に示す。被覆の耐性は、特にTMD硬化剤の場合に改良され、5重量%の酢酸水溶液に対して7月の間耐性を示し、5重量%の酢酸水溶液によって12月の曝露後に僅かしか攻撃されなかった。また、10重量%の酢酸水溶液の形態の極めて浸食性の化学物質に対する耐性時間は、いずれの場合においても数ヶ月延長された。
【0086】
【表14】

【0087】
【表15】

【0088】
1又は2重量%の少量のサリチル酸を加えることによって更に変性した本発明の複合硬化剤ブレンドを用いて硬化した系の耐化学薬品性に関する結果を、下表16及び17に示す。10重量%の酢酸水溶液に対する耐化学薬品性の得られた結果は、驚くべきほど極めて良好であった。かかる変性系は、これまではジアミノジフェニルメタン(DDM)をベースとする芳香族アミンの混合物によってのみ可能であった、かかる化学物質に対する耐性の大きな改良を示す。
【0089】
【表16】

【0090】
【表17】

【0091】
(F)TMD/Supraplast 3616をベースとする複合系の耐食性
DIN 35167及びDIN 50021−SSの塩噴霧試験にしたがって耐食性を測定した。表1の複合硬化剤C(TMD/Supraplast 60/40)を、表18に示す耐食性プライマーとして配合し、スプレーガンを用いて、100mm×70mmのサンドブラスト鋼パネルSa21/2上に160μm及び80μmの厚さで施した。被覆パネルを、23℃/50%rhで7日間硬化させた。この時間の後に、被覆パネルを、ErichsenからのScratch Stylus 463を用いて、それぞれのレッグ部が長さ約5cmでX形状にスクラビングした。次に、パネルを、異なる時間、例えば500時間、1000時間、2000時間及び4000時間、塩噴霧に曝露した。
【0092】
【表18】

【0093】
複合硬化剤C(表1参照)を用いたプライマー配合物に関する浸食試験の結果を、下表19に示す。式(III)におけるWの値は、曝露時間中に生成したアンダーコート浸食領域に依存する。この値が高くなるほど、被覆の耐食性が悪くなる。この場合においては、最小アンダーコート浸食はほぼ4000時間の曝露時間の間に観察された。
【0094】
【数1】

【0095】
【表19】

【0096】
=スクラブ線(scrubbed line)の表面積(mm)=10×1mm
L=スクラブ線の長さ(mm)=10mm
TMDをベースとするかかる複合硬化剤を用いて製造された被覆は、最小のアンダーコート浸食で優れた耐食性を示し、例えば船舶用プライマー配合物において更に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分子あたり平均で1を超えるエポキシ基を含むエポキシ樹脂;及び
(b)硬化剤として、
(b1)脂肪族、脂環式、芳香脂肪族アミン、一塩基酸又は多塩基酸をベースとするイミダゾリン基含有アミドアミン、グリシジル化合物から製造される該アミン又はアミドアミンの付加体、環式カーボネートから製造される該アミン又はアミドアミンの付加体から選択され、分子あたり平均で少なくとも2個の窒素原子に結合している反応性水素原子を含むアミン性化合物;及び
(b2)ポリフェノールノボラック;のブレンドであり、ポリフェノールノボラックが、硬化剤ブレンド(b1)及び(b2)の合計重量を基準として30重量%〜45重量%の量で用いられる複合硬化剤;
を含む硬化性組成物。
【請求項2】
ポリフェノールノボラックが、硬化剤ブレンド(b1)及び(b2)の合計重量を基準として35重量%〜45重量%の量で用いられる請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリフェノールノボラックが、式(I)又は(II):
【化1】

(式(I)及び(II)において、R、R、R、Rは、互いに独立して、H、1〜15個の炭素原子を有する分岐鎖又は非分岐鎖アルキル基であり、R、Rは、互いに独立して、H、CH、CFを表す)
のフェノール性化合物とホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)との縮合から得られるホモポリマー、或いは式(I)及び/又は(II)の異なるフェノール性化合物とホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)とのコポリマーである請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリフェノールノボラックが、硬化剤ブレンド(b1)及び(b2)の合計重量を基準として20重量%以下、好ましくは15重量%未満、最も好ましくは10重量%未満の量の、未反応の遊離フェノール性化合物、好ましくは式(I)及び/又は(II)の化合物を含む請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
成分(b1)として、脂肪族、脂環式及び芳香脂肪族アミンから選択されるアミンが用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
アミンが、m−キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジエチレンテトラミン及びジアミノジシクロヘキシルメタンから選択される請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
環式カーボネートが、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート及び1,2−ブチレンカーボネートから選択される請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
成分(a)が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、多価フェノール又はクレゾールノボラックのポリグリシジルエーテル、一価又は多価脂環式アルコールのモノ又はポリグリシジルエーテル、一価又は多価脂肪族アルコールのモノ又はポリグリシジルエーテルから選択される請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
成分(a)が、反応性希釈剤と予備混合される請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
成分(a)が、環式カーボネートと予備混合される請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
流動性制御添加剤、消泡剤、垂れ防止剤、顔料、強化剤、充填剤、エラストマー、安定剤、増量剤、可塑剤、難燃剤、促進剤、着色剤、繊維状物質、チキソトロープ剤、耐食性顔料、及び溶媒から選択される無機及び/又は有機添加剤を更に含む請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
添加剤としてサリチル酸が用いられる請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の組成物を硬化させることによって得られる硬化材料。
【請求項14】
保護被覆及び接着剤を提供するための請求項1〜12のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項15】
(b1)脂肪族、脂環式、芳香脂肪族アミン、一塩基酸又は多塩基酸をベースとするイミダゾリン基含有アミドアミン、グリシジル化合物から製造される該アミン又はアミドアミンの付加体、環式カーボネートから製造される該アミン又はアミドアミンの付加体から選択され、分子あたり平均で少なくとも2個の窒素原子に結合している反応性水素原子を含むアミン性化合物;及び
(b2)ポリフェノールノボラック;のブレンドであり、ポリフェノールノボラックが、成分(b1)及び(b2)を含む硬化剤ブレンドの全重量を基準として30重量%〜45重量%、好ましくは35重量%〜45重量%の量で用いられる硬化剤ブレンド(b)の、硬化剤としての使用。

【公表番号】特表2008−525553(P2008−525553A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547525(P2007−547525)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/057055
【国際公開番号】WO2006/067195
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(504177804)ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー (43)
【Fターム(参考)】