説明

被覆線の製造装置

【課題】架橋筒で蒸気架橋されている被覆線の外径を、架橋筒内で容易に測定することが可能な被覆線の製造装置を提供する。
【解決手段】導体22上に樹脂を押出被覆して、導体22の外周に押出被覆層を被覆した押出被覆線24を形成する押出機2と、押出被覆線24が挿通され、蒸気により押出被覆層24を架橋して被覆線21を形成する架橋筒3と、架橋筒3の側面に設けられ内部が架橋筒3と連通する空洞となっている蒸気供給部13と蒸気供給部13の架橋筒3と反対側に設けられた検査窓5と検査窓5を介して架橋筒3内を挿通する押出被覆線24の外径を測定する測定器6とを有する外径測定手段4と、蒸気供給部13内を架橋筒3内の圧力よりも高い圧力の蒸気で連続的にパージする蒸気供給装置7と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチーム(蒸気)で架橋されるワーク(被覆線)の連続架橋中の外径を測定することが可能な被覆線の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被覆線など架橋が必要な長尺製品の高効率な製造方法に連続架橋方式がある。
【0003】
図3に示すように、連続架橋方式の被覆線の製造装置31では、導体32上に樹脂を押出被覆して、導体32の外周に押出被覆層(図示せず)を被覆した押出被覆線33を形成する押出機34と、押出被覆線33が挿通され、蒸気により押出被覆層を架橋して被覆線35を形成する架橋筒(架橋装置)36とが直結している。そのため、従来、ワーク(被覆線)の外径測定をする際は、押出機34で押出成形を行い、さらに架橋筒36内で架橋や冷却を行った後に、架橋筒36の下流側に設けた測定器37により外径を測定していた。
【0004】
しかし、この従来の被覆線の製造装置31では、成形中のワーク(被覆線)の外径を測定する際、架橋筒36を出た後(架橋筒36の下流側)でしか測定できないため、作業開始後に外径を規定値に調整するまでに架橋筒36の長さ以上の調整屑が発生してしまうほか、作業中の条件の変化でワーク(被覆線)の外径が変化した際に、部分的に規定値から外れてしまい、不良となってしまう場合があった。
【0005】
このような問題を避けるため、特許文献1では、架橋筒に、該架橋筒を挿通する押出被覆線の外径を測定するための外径測定手段を設けた加硫、架橋装置が提案されている。
【0006】
特許文献1では、架橋筒に設けた検査窓を介して、測定器により押出被覆線の外径を測定するようになっている。また、特許文献1では、検査窓にて被覆線の外径を測定するための保護気体として蒸気を使用し、この蒸気が架橋筒の下部側(下流側)から上部側(上流側)の検査窓へと流れるような機構を有しており、当該蒸気を検査窓と対向する位置に配置された加熱コイルで加熱することで、保護気体である蒸気を上昇させできるだけ長く架橋筒の上部にとどまらせて、熱分解生成物によって生じる汚染粒子が検査窓を汚染することを防止し、また、検査窓の周辺に霧などが発生しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−262213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、検査窓を含む架橋筒の上部側に、加熱コイルの熱源と該熱源を制御するための制御装置を備え、さらに、架橋筒の下部側に、下部側から上部側に流す蒸気の流量等を調節する供給装置を備える必要がある。
【0009】
つまり、特許文献1に記載の装置では、蒸気を架橋筒の下部側から供給する装置と、上部側の検査窓を熱源などによって加熱・制御する装置とが個々に必要であるため、装置が大掛かりになり、さらには、これら複数の装置を用いて、架橋筒の上部側の検査窓周辺に霧などが発生しないように熱源や蒸気の流量等のバランスを調整、制御することが容易ではないという問題がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、架橋筒で蒸気架橋されている被覆線の外径を、架橋筒内で容易に測定することが可能な被覆線の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、導体上に樹脂を押出被覆して、前記導体の外周に押出被覆層を被覆した押出被覆線を形成する押出機と、前記押出被覆線が挿通され、蒸気により前記押出被覆層を架橋して被覆線を形成する架橋筒と、前記架橋筒の側面に設けられ、内部が前記架橋筒と連通する空洞となっている蒸気供給部と、該蒸気供給部の前記架橋筒と反対側に設けられた検査窓と、該検査窓を介して、前記架橋筒内を挿通する前記押出被覆線の外径を測定する測定器とを有する外径測定手段と、前記蒸気供給部内を前記架橋筒内の圧力よりも高い圧力の蒸気で連続的にパージする蒸気供給装置と、を備えた被覆線の製造装置である。
【0012】
前記蒸気供給装置は、パージ用の蒸気からドレンを分離するための分離部を有するとよい。
【0013】
前記蒸気供給装置は、前記分離部から前記蒸気供給部に連結された蒸気供給管を有し、前記分離部にて前記ドレンを分離した蒸気が前記蒸気供給管を介して前記蒸気供給部へ供給されてもよい。
【0014】
前記蒸気供給部は、前記架橋筒の前記押出機側の端部に設けられると共に、前記架橋筒の対向した位置にそれぞれ設けられ、前記蒸気供給部の前記架橋筒と反対側にそれぞれ前記検査窓を設けるように構成し、前記測定器は、一方の前記検査窓を介して前記架橋筒内の前記押出被覆線にレーザ光を照射する投光部と、前記押出被覆線により遮光されずに他方の前記検査窓から出射した前記レーザ光を受光する受光部と、該受光部の出力を基に前記押出被覆線の外径を検出する演算部と、を有するとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、架橋筒で蒸気架橋されている被覆線の外径を、架橋筒内で容易に測定することが可能な被覆線の製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る被覆線の製造装置を示す図であり、(a)は側面から見た概略構成図、(b)はそのB部拡大図、(c)は上側から見た概略構成図、(d)は斜視図である。
【図2】図1の被覆線の製造装置で製造する被覆線の横断面図である。
【図3】従来の被覆線の製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る被覆線の製造装置を示す図であり、(a)は側面から見た概略構成図、(b)はそのB部拡大図、(c)は上側から見た概略構成図、(d)は斜視図である。また、図2は、本実施の形態に係る被覆線の製造装置で製造する被覆線の横断面図である。
【0019】
図2に示すように、本実施の形態で製造する被覆線21は、導体22の外周に絶縁被覆層23を被覆したものである。絶縁被覆層23の材質には、架橋ポリエチレン等の樹脂や架橋剤が配合されたゴム等の樹脂が用いられる。絶縁被覆層23は、導体22上に樹脂を押出被覆して押出被覆層を形成し、その押出被覆層を架橋させることで形成される。本明細書では、導体22の外周に押出被覆層を被覆したものを押出被覆線と呼称する。
【0020】
図1(a)〜(d)に示すように、被覆線の製造装置1は、導体22上に樹脂を押出被覆して、導体22の外周に押出被覆層を被覆した押出被覆線24を形成する押出機(押出し成形機)2と、押出被覆線24が挿通され、蒸気(高圧スチーム)により押出被覆層を架橋して絶縁被覆層23とし、被覆線21を形成する架橋筒(架橋装置、架橋管)3と、架橋筒3内を挿通する押出被覆線24の外径を測定する外径測定手段4と、を備えている。なお、図1(c),(d)では、図の簡略化のため、押出機2を省略している。
【0021】
架橋筒3は押出機2の出口に直結されており、押出機2で成形した押出被覆線24が架橋筒3内に導入されるようになっている。被覆線の製造装置1では、押出機2にてワーク(押出被覆線24)を成形した後、押出機2に接続した架橋筒3内で高圧スチーム(例えば、1.5MPa以上1.8MPa以下)によりワーク(押出被覆線24)を架橋し、冷却水で冷却するように構成される。
【0022】
外径測定手段4は、架橋筒3の側面に設けられ、内部が架橋筒3と連通する空洞となっている蒸気供給部13と、蒸気供給部13の架橋筒3と反対側(架橋筒3と対向する位置)に設けられた検査窓(検出窓、窓部)5と、検査窓5を介して、架橋筒3内を挿通する押出被覆線24の外径を測定する測定器(検出部)6と、を有する。
【0023】
蒸気供給部13は、架橋筒3の押出機2側の端部(押出機2接続部付近)に設けられる。本実施の形態では、架橋筒3の対向した位置に2つの蒸気供給部13a,13bをそれぞれ設け、蒸気供給部13a,13bの架橋筒3と反対側(架橋筒3と対向する位置)にそれぞれ検査窓5a,5bを設けるように構成した。検査窓5は、高圧スチームに耐え得る強度を有する材料(ガラス材料など)からなる。
【0024】
本実施の形態では、測定器6としてレーザ式の外径測定器を用い、そのレーザ式の外径測定器によって架橋中のワーク(押出被覆線24)の外径を測定する。具体的には、測定器6は、一方の検査窓5aを介して架橋筒3内の押出被覆線24にレーザ光を照射する投光部(発光器)6aと、押出被覆線24により遮光されずに他方の検査窓5bから出射したレーザ光を受光する受光部(受光器)6bと、受光部6bの出力を基に押出被覆線24の外径を検出する演算部(図示せず)と、を有している。投光部6aは、例えばLD(レーザダイオード)とレンズ等の光学部品を適宜組み合わせてなり、受光部6bは、例えばPD(フォトダイオード)とレンズ等の光学部品を適宜組み合わせてなる。
【0025】
さて、本実施の形態に係る被覆線の製造装置1は、蒸気供給部13内を架橋筒3内の圧力(架橋に用いている蒸気の圧力)よりも高い圧力(例えば、2.0MPa以上)の蒸気で連続的にパージする蒸気供給装置7をさらに備えている。蒸気供給部13内に供給された蒸気は、適宜、連通されている架橋筒3へ流入することになる。
【0026】
蒸気供給装置7は、パージ用の蒸気からドレンを分離するための分離部(高圧スチーム・ドレン分離部、フィルタ)8を有しており、外径測定手段4(蒸気供給部13内)へパージされる蒸気は、分離部8にてドレン分離後にパージされるよう構成される。
【0027】
分離部8の上部(鉛直方向上方の部分)には、図示しない蒸気発生装置(蒸気ボイラなど)から分離部8にパージ用の蒸気を供給するスチーム投入管9と、分離部8でドレンが分離された蒸気を蒸気供給部13内へ供給する蒸気供給管10と、が接続される。本実施の形態では、架橋筒3に2つの蒸気供給部13a,13bを設けているため、蒸気供給管10は途中で分岐して、両蒸気供給部13a,13b内に蒸気を供給するようにされる。
【0028】
蒸気供給部13a,13bの上部には、蒸気供給口14が形成されており、蒸気供給管10は蒸気供給口14に連結される。
【0029】
また、分離部8の下部(鉛直方向下方の部分)には、分離したドレンを排出するためのドレン排出管11が接続され、そのドレン排出管11には、蒸気を遮断しドレンのみを排出するスチームトラップ12が設けられる。
【0030】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0031】
本実施の形態に係る被覆線の製造装置1では、蒸気供給部13内を架橋筒3内の圧力よりも高い圧力の蒸気で連続的にパージする蒸気供給装置7を備えている。
【0032】
蒸気供給装置7により、架橋筒3内の圧力よりも高い圧力の蒸気で蒸気供給部13内(検査窓5の近辺)を連続的にパージすることで、検査窓5周辺に発生する霧、結露などを防止することが可能になる。その結果、架橋筒3内の高圧スチーム(架橋用の蒸気)による検査窓5の結露によって生じる測定誤差も出難くすることができる。
【0033】
また、被覆線の製造装置1によれば、従来用いていた検査窓5の周辺を加熱する熱源や、架橋筒3の下部側(押出機2と反対側)から上部側(押出機2側)へ流れる蒸気の流量を調整する装置等の複数の装置を用いることなく、検査窓5周辺に発生する霧、結露などを防止することが可能となり、架橋筒3で蒸気により架橋されている押出被覆線24の外径を、架橋筒3内で容易に測定することが可能となる。よって、調整屑や外径の異常に起因する不良の発生を防ぐことができ、ワーク(被覆線21)の機械的、電気的特性に影響を与えることなくワーク(被覆線21)を提供できる。
【0034】
さらに、被覆線の製造装置1では、分離部8でパージ用の蒸気からドレンを分離し、ドレンを分離した蒸気を蒸気供給管10を介して検査窓5の近辺へ供給するよう構成しているため、パージ用の蒸気に起因する霧や結露等の発生を防止し、検査窓5に発生する霧、結露等の防止を効果的に行うことができる。また、検査窓5の結露防止にドレンが分離された蒸気をパージすることにより、パージ用に他の気体や溶剤を使用するよりも良好に結露を防止できる。
【0035】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0036】
例えば、上記実施の形態では、蒸気供給部13内に高圧スチーム(架橋筒3内の圧力よりも高い圧力の蒸気)をパージしたが、検査窓5の結露防止のために、高圧スチーム以外のガスをパージするようにしてもよい。
【0037】
また、必要に応じて検査窓5に(あるいは検査窓5の近辺に)電熱式ヒーターを設置するようにしてもよい。
【0038】
また、必要に応じて検査窓5に熱風を吹き付けるようにしてもよい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
【0040】
本実施例で製造するワーク(被覆線)21は、図2に示すように、導体22と、絶縁被覆層(架橋後の押出被覆層)23とから構成される。絶縁被覆層23の材質は架橋ポリエチレン等の樹脂や架橋剤が配合されたゴム等の樹脂が用いられる。
【0041】
まず、素線径0.18mmで断面積1.25mm2の集合撚線を導体22として準備する。これにクロスヘッドを装備したスクリュー径90mmの押出機2を用いて架橋ポリエチレンからなる樹脂を導体22上に押出被覆して押出被覆層を形成する。
【0042】
押出後の架橋は、押出機2の下流側に設けられた架橋筒3にて架橋した。架橋には高圧スチームを使用し、その圧力(蒸気圧)は約1.8MPaとした。
【0043】
架橋筒3に設けた蒸気供給部13内には高圧スチームに耐え得る強度を有する検査窓5を設置した。検査窓5と対向するようにレーザー式の測定器6を設置し、ワーク(押出被覆線24)の外径測定を行った。
【0044】
架橋筒3内の高圧スチームによる検査窓5の結露を防止するため、架橋筒3内の高圧スチームの圧力(蒸気圧)よりも高い圧力(蒸気圧)からなる蒸気を蒸気供給部13内に供給(パージ)した。この蒸気の圧力(蒸気圧)は2.0MPaとした。
【0045】
蒸気供給部13内にパージする高圧蒸気は、ドレンを除去するため図1(b)のフィルタ(分離部8)を通す。
【0046】
上記方法により外径を測定したワークを架橋筒3の出口で再度外径を測定したところ、測定値に誤差もなく良好な結果であった。
【0047】
他方、高圧スチームをパージする際に、この圧力が架橋のために用いる高圧スチームの圧力よりも低く設定したところ、検査窓5に結露が発生してしまい、その結露によって外径の測定値に誤差が発生してしまうことが確認された。
【符号の説明】
【0048】
1 被覆線の製造装置
2 押出機
3 架橋筒
4 外径測定手段
5 検査窓
6 測定器
7 蒸気供給装置
13 蒸気供給部
21 被覆線
22 導体
24 押出被覆線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体上に樹脂を押出被覆して、前記導体の外周に押出被覆層を被覆した押出被覆線を形成する押出機と、
前記押出被覆線が挿通され、蒸気により前記押出被覆層を架橋して被覆線を形成する架橋筒と、
前記架橋筒の側面に設けられ、内部が前記架橋筒と連通する空洞となっている蒸気供給部と、該蒸気供給部の前記架橋筒と反対側に設けられた検査窓と、該検査窓を介して、前記架橋筒内を挿通する前記押出被覆線の外径を測定する測定器とを有する外径測定手段と、
前記蒸気供給部内を前記架橋筒内の圧力よりも高い圧力の蒸気で連続的にパージする蒸気供給装置と、
を備えたことを特徴とする被覆線の製造装置。
【請求項2】
前記蒸気供給装置は、パージ用の蒸気からドレンを分離するための分離部を有する請求項1記載の被覆線の製造装置。
【請求項3】
前記蒸気供給装置は、前記分離部から前記蒸気供給部に連結された蒸気供給管を有し、前記分離部にて前記ドレンを分離した蒸気が前記蒸気供給管を介して前記蒸気供給部へ供給される請求項2記載の被覆線の製造装置。
【請求項4】
前記蒸気供給部は、前記架橋筒の前記押出機側の端部に設けられると共に、前記架橋筒の対向した位置にそれぞれ設けられ、
前記蒸気供給部の前記架橋筒と反対側にそれぞれ前記検査窓を設けるように構成し、
前記測定器は、一方の前記検査窓を介して前記架橋筒内の前記押出被覆線にレーザ光を照射する投光部と、前記押出被覆線により遮光されずに他方の前記検査窓から出射した前記レーザ光を受光する受光部と、該受光部の出力を基に前記押出被覆線の外径を検出する演算部と、を有する請求項1〜3いずれかに記載の被覆線の製造装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−151003(P2012−151003A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9025(P2011−9025)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】