説明

装飾フィルムおよび該フィルムを有する複合部材

【課題】良好な耐薬品性および応力亀裂抵抗性ならびに改善された耐引掻性を有するポリアミド組成物からなる装飾目的のための単層もしくは多層のフィルムを提供する。
【解決手段】装飾フィルムはその外部層が以下の成分:a)以下のモノマーから製造することができるポリアミド50〜100質量部:α)m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンおよびこれらの混合物から選択されるジアミン、β)6〜14個の炭素原子を有するその他のジアミンならびにγ)10〜18個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸およびδ)6〜9個の炭素原子を有するその他のジカルボン酸、b)その他のポリアミド0〜50質量部(a)およびb)の質量部は合計して100である)からなるポリアミド組成物からなる。
【効果】該フィルムは堆積物を形成する傾向を有さず、かつ改善された光沢を有し、表面の外観を長期間維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、ポリアミドからなる層を有し、かつ成形部材の装飾のために適切なフィルムである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドの群からの成形材料は、種々の日用品を製造するために有利な特性を有している。特にこれらの特性と、透明であるという特徴との組み合わせは重要であり、このことによって、表面の仕上げまたは装飾のために使用することができる透明フィルムを製造する可能性が開かれる。ここで材料として特に長鎖の脂肪族モノマー成分を含有する全てのポリアミドが考えられる。というのも、この場合、特に低温でも耐衝撃性、良好な耐薬品性および十分に良好な耐引掻性および優れた光沢が存在しているからである。このような例はPA12、PA11、PA1010、PA1012またはこれらのブレンドである。
【0003】
このような特性はたとえばスキー板およびスノーボードの分野における外部層のための材料としての適用に関連する。その例はM.BeyerおよびJ.Lohmarの論文、Kunststoffe 90(2000)、第98〜101頁に記載されており、ここではPA12成形材料からなる印刷可能なフィルムが紹介されている。
【0004】
実用新案DE29519867U1はもう1つの例を提供している。ここにはコポリアミドからなる装飾可能なフィルムが記載されており、該コポリアミドはモノマー単位のラウリンラクタムならびにカプロラクタムおよび/またはヘキサメチレンジアミン/ジカルボン酸から構成されている。このようなコポリアミドは確かに一般に透明であり、かつ良好に装飾可能であるが、しかし該コポリアミドから押出成形により成形部材またはフィルムを製造する際に常にふたたび問題が生じる。特に前記の系の場合、射出成形工具または押出成形工具あるいは引取ロールに堆積物が形成され、これはしばしばクリーニング作業を必要とすることに基づいて生産の中断の原因となる。さらにこのようなフィルムの耐熱性は不十分であるために、装飾の際に昇華圧または熱拡散圧力によって変形する危険が生じる。従ってこれらの方法において本来望ましい温度よりも低い温度で装飾を施さなくてはならない。
【0005】
前記の適用分野のための材料選択に関して一般に重要なことは、堆積物の形成がわずかであること、および耐熱性が良好であること以外に、十分な透明性に加えて同時に一定の結晶度が与えられていることである。これは化学薬品に対する材料の抵抗性のために重要であり、この場合、たとえば該材料を印刷する(印刷インク)か、または洗浄剤と接触する場合に満足のいく応力亀裂抵抗性として現れる。
【0006】
しかし上記の従来技術に対する望ましい改善は、耐引掻性および光沢に関して向上した場合である。
【0007】
さらにポリアミドは自動車分野において塗料に代用されるフィルムの外部層としても使用することができる。自動車の外部表面に装飾を施すために目下標準的な方法は塗装である。しかしこの方法は一方では特殊な装置を維持し、かつ自動車製造業者における関連する操業費用により条件付けられている高い製造コストの原因であり、他方ではこのことにより環境に負荷がかかる。環境に対する負荷はたとえば使用される塗料から放出される溶剤成分に、ならびに着色剤の残分が発生し、これを適切な廃棄処理に供給しなくてはならないことに起因する。さらに、塗装は、近年、自動車製造において質量およびコストの節約に基づいて好まれているプラスチック部材の表面を装飾するために限られた範囲で適切であるにすぎない。
【0008】
車体の部材としてのプラスチック部材の塗装工程はたとえばオンラインで実施することができ、その際、プラスチック部材を金属部材と同一の塗装処理に供する。このことは均一な色につながるが、しかしその際に通常行われる陰極浸漬塗装により高温を伴い、これにより材料選択が困難となる。さらに塗料の付着性は大きく異なった支持体上でも同様に保証されていなくてはならない。プラスチック部材の塗装工程がプラスチックのために有利な方法条件を含む別々の工程(いわゆるオフライン塗装)で実施される場合、カラーマッチングの問題、つまり金属において実現される色調が正確にマッチしなくてはならないという問題が現れる。しかしこのことは支持体、使用可能なベースコート組成および方法条件が異なることに基づいて達成することが極めて困難である。色の違いがデザインにより規定される場合、プラスチック部材のための第二の塗装装置の設備ひいては関連するコストは重大な欠点として残り、その際、自動車を製造するために付加的な時間を必要とすることもまた考慮しなくてはならない。未処理の、通常は射出成形されるプラスチック部材の直接的な使用は美学的な観点から不利である。というのも、この場合、方法条件によって表面の欠陥、たとえば溶接線、気泡、あるいはまた必要とされる補強充填剤、たとえばガラス繊維が明らかに認識可能であるからである。このことは目に見える範囲で認容することができない。従って、たとえば塗装の過程で表面品質の改善を行わなくてはならず、その際、しばしば研磨および比較的厚い層でのプライマーの施与による前処理作業が必要とされる。
【0009】
解決方法のための1つの提案は、部材を覆うために使用され、かつそれ以上塗装する必要のない多層のプラスチック部材を使用することである。支持体と装飾フィルムとの間の結合はこの場合、一連の製造方法で実現することができる。フィルムはたとえば支持体と共にプレスされるか、または部材の製造の際に射出成形工具にフィルムを設置するリバース射出成形法が選択される。装飾の担体としてのフィルムの構想はさらに、自動車において製造される部材の個別化の傾向に対抗する。この傾向はつまり製造プロセスにおいて幅広い範囲のモデルにつながるが、しかしそのつど製造される系列あたりの部材の選択は減少することにつながる。フィルムの使用は迅速であり、デザインを問題なく変更することができるために、これによりこの挑戦は満足される。この場合に重要なことは、自動車産業で要求される表面特性(Aクラス表面)、薬品に対する抵抗性および外観に関する基準をフィルムにより満足しなくてはならないことである。自動車の内部表面の形状においてもこのようなフィルムは良好に使用可能である。
【0010】
このような装飾フィルムは原則として公知である。EP0949120A1はたとえばポリウレタン、ポリアクリレート、フルオロポリマーまたはフルオロポリマーとポリアクリレートとからなる混合物からなる透明な外部層を有する装飾フィルムを記載している。同様の装飾フィルムはWO94/03337およびEP0285071A2から公知である。
【0011】
その特性面、たとえば耐衝撃性および耐薬品性に基づいて、ポリアミド、特にPA12またはPA11をベースとするポリアミドはごく一般的にこのような装飾フィルムを製造するために好適である。相応して特許文献にポリアミドからなる外部層を有する装飾フィルムまたは保護フィルムの記載がみられる。ここではたとえばJP60155239A、JP2003118055A、EP1302309A、EP0522240A、EP0694377A、EP0734833A、WO9212008AおよびEP0568988Aの文献が挙げられる。
【0012】
高いカルボンアミド基密度を有するポリアミドからなる外部層は高い極性に基づいて不十分な耐薬品性および高すぎる吸水性を有する一方で、実地ではラクタムもしくは相応するアミノカルボン酸から製造される低いカルボンアミド基密度を有するポリアミド(AB−ポリアミド)を使用する場合に、周囲の条件下で時間の経過においてフィルムの表面上に堆積物が形成され、これは光沢を著しく低下させ、かつこの適用のために認容することができないことが判明した。このようなポリアミド、たとえばPA11またはPA12はさらに、耐引掻性が不十分である。さらにその光沢は改善の余地がある。
【特許文献1】DE29519867U1
【特許文献2】EP0949120A1
【特許文献3】はWO94/03337
【特許文献4】EP0285071A2
【特許文献5】JP60155239A
【特許文献6】JP2003118055A
【特許文献7】EP1302309A
【特許文献8】EP0522240A
【特許文献9】EP0694377A
【特許文献10】EP0734833A
【特許文献11】WO9212008A
【特許文献12】EP0568988A
【非特許文献1】M.BeyerおよびJ.Lohmar、Kunststoffe 90(2000)、第98〜101頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って本発明の課題は、その1つの層または最上部の層(いずれも以下では外部層とよぶ)が、良好な耐薬品性および応力亀裂抵抗性ならびに改善された耐引掻性を有するポリアミド組成物からなり、堆積物を形成する傾向を有さず、かつ改善された光沢を有し、長期間の使用後でも表面における改善された美学的な要求に応じる、装飾目的のための単層もしくは多層のフィルムを提供することである。この場合、外部層は十分に透明であって十分に輪郭の鮮明な裏面印刷が可能でなくてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題は本発明により、その外部層が以下の成分:
a)以下のモノマーから製造することができるポリアミド50〜100質量部、有利には60〜98質量部、特に有利には70〜95質量部およびとりわけ有利には75〜90質量部:
α)m−キシリレンジアミンおよび/またはp−キシリレンジアミン 70〜100モル%、有利には75〜99モル%、特に有利には80〜98モル%およびとりわけ有利には85〜97モル%
β)6〜14個の炭素原子を有するその他のジアミン 0〜30モル%、有利には1〜25モル%、特に有利には2〜20モル%およびとりわけ有利には3〜15モル%、
その際、ここでモル%の記載はジアミンの合計に対するものである、ならびに
γ)10〜18個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸70〜100モル%、有利には75〜99モル%、特に有利には80〜98モル%およびとりわけ有利には85〜97モル%および
δ)6〜9個の炭素原子を有するその他のジカルボン酸0〜30モル%、有利には1〜25モル%、特に有利には2〜20モル%およびとりわけ有利には3〜15モル%、
その際、ここでモル%の記載はジカルボン酸の合計に対するものである、
b)その他のポリアミド、有利にはモノマー単位中に平均して少なくとも8個の炭素原子を有するポリアミド 0〜50質量部、有利には2〜40質量部、特に有利には5〜30質量部およびとりわけ有利には10〜25質量部、
その際a)およびb)の質量部は合計して100である
を含有するポリアミド組成物からなる単層もしくは多層の装飾フィルムにより解決されることが判明した。
【0015】
ポリアミド組成物はさらに、最大で20質量%、最大で16質量%、最大で12質量%、最大で8質量%または最大で4質量%の助剤または添加剤を含有していてもよく、その際、質量%の記載は全ポリアミド組成物に対するものである。
【0016】
a)β)で場合により併用されるその他のジアミンはたとえば1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、1,14−テトラデカメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−もしくは1,4−ビス(アミノメチル)ヘキサン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンおよび/またはイソホロンジアミンであってよい。
【0017】
成分a)γ)のジカルボン酸は有利には線状である。たとえば1,10−デカン二酸、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸、1,13−トリデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,16−ヘキサデカン酸および1,18−オクタデカン酸が適切であり、その際、1,12−ドデカン二酸および1,14−テトラデカン二酸は有利である。混合物を使用することもできる。
【0018】
a)δ)で場合により併用されるその他のジカルボン酸はたとえばアジピン酸、コルク酸、1,9−ノナン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸および/またはテレフタル酸である。
【0019】
有利な実施態様ではa)に記載のポリアミドは実質的に成分a)β)に由来するモノマー単位を有していない。
【0020】
別の有利な実施態様ではa)に記載のポリアミドは実質的に成分a)δ)に由来するモノマー単位を有していない。
【0021】
さらに、成分a)γ)に由来するモノマー単位が単一のジカルボン酸に由来することが有利である。というのも、ジカルボン酸の混合物はポリアミドの高い透明度を生じるからである。しかしこのことは耐薬品性を損なうことにつながる。
【0022】
本発明の可能な実施態様では成分a)α)は、
− 少なくともそのつど50質量%、60質量%、70質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%または95質量%のm−キシリレンジアミンおよび
− 最大でそのつど50質量%、40質量%、30質量%、25質量%、20質量%、15質量%、10質量%または5質量%のp−キシリレンジアミン
からなる。
【0023】
本発明の別の可能な実施態様では成分a)α)は
− 50質量%以上または少なくともそのつど60質量%、70質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%または95質量%のp−キシリレンジアミンおよび
− 50質量%未満または少なくともそのつど40質量%、30質量%、25質量%、20質量%、15質量%、10質量%または5質量%のm−キシリレンジアミン
からなる。
【0024】
成分a)は、それ自体そのつどa)に記載した組成を有している2種類以上の異なったポリアミドの混合物からなっていてもよい。
【0025】
b)に記載したポリアミドはたしかにPA6またはPA66であってもよいが、しかしモノマー単位中に平均して少なくとも8個の炭素原子を有する高級ポリアミド、たとえばPA88、PA610、PA612、PA614、PA810、PA812、PA814、PA1010、PA1012、PA1014、PA1212、PA11またはPA12が有利である。さらにb)に記載のポリアミドがキシリレンジアミンに立体的に類似の、つまりここから形成されるモノマー単位が類似の長さを有するジアミンに由来することが有利であり、これはたとえばヘキサメチレンジアミンの場合に該当する。さらに、b)に記載のポリアミドが同一の、または類似のジカルボン酸、たとえばポリアミドa)から誘導される場合に有利である。この場合、最も簡単にほぼ透明なブレンドが得られる。
【0026】
ポリアミド組成物はさらに以下の別の成分を含有していてもよい:
a)ナノスケールの充填剤および塩基性の金属塩、金属酸化物または金属水酸化物から選択される成核剤、後者は所望の透明性を保証するために最大でも溶融液中でポリアミドのカルボキシル末端基と反応して溶解することができる量で添加する、
b)通常の助剤または添加剤をポリアミド成形材料のために通例の量で、たとえば安定剤、UV吸収剤または滑剤、
c)透明性に著しい影響を与えない着色剤、
d)屈折率が少量でマトリックスの屈折率とは異なっているか、または完全に一致する充填剤(アイソリフラクティブ・フィラー(isorefractive filler))、
e)屈折率が少量でマトリックスの屈折率とは異なっているか、または完全に一致する別のポリマー成分、ならびに
f)有機化合物をベースとし、透明性に実質的に影響を与えない成核剤。
【0027】
キシリレンジアミンをベースとする重縮合物は文献において公知である。これは二酸としてのドデカン二酸の使用も含む(たとえばUS3803102およびUS4433136)。基本構造MXD6またはMXD12を有するポリアミドは包装分野でのフィルムを製造するために使用される(たとえばEP−A1172202、US5955180、EP−A0941837、WO00/23508)。これらのフィルムは多層であってもよい。FR−A2740385は最後に透明で印刷可能なポリアミドからなる外部層、(官能化された)ポリオレフィンからなる第二の層および繊維ベースの、不織布材料からなる第三の層を有する装飾フィルムを記載している。特許請求の範囲にはポリアミドMXD6もまた外部層のための材料としてあげられている。スポーツ用品、たとえばスキー、サニタリー用品、家具の装飾のための使用以外に、自動車における使用も総括的に挙げられている。しかしポリアミドMXD6の高い吸水率に基づいてこのような構成は自動車分野における適用のために、特に塗料の代用としては不適切である。というのも、関連する化学薬品、たとえばパンクレアチンの水溶液が外部層に浸入し、かつ該層を損ないうるからである(パンクレアチン試験はトリのフンによる作用のシミュレーションに使用される)。
【0028】
耐引掻性の装飾フィルムまたは塗料代用フィルムを製造するための本発明によるポリアミド組成物の使用およびここで特に有利なフィルム構造は、これまで文献において記載されていなかった。同様にスキー板およびスノーボード分野のための本発明による組成物の特別な利点はこれまで知られていなかった。
【0029】
本発明の意味での装飾フィルムは、印刷することができ、かつ/または着色層を有し、かつさらに支持体と結合してその表面を装飾するためのフィルムである。装飾は表面の外観の欠陥、たとえば充填剤もしくは強化材に起因する表面の粗さをカバーすることにより隠すことによりもたらすこともできる。
【0030】
本発明による装飾フィルムは単層であっても多層であってもよい。多層の構成の場合、残りの層の種類および数は適用技術的な要求に適合させるが、重要なことは単に外部層が本発明により使用される成形材料からなることである。たとえば以下の実施態様が可能である:
1.フィルムは単層である。該フィルムはこの場合、定義のとおり、外部層のみからなる。印刷によりたとえば熱昇華圧によって表面側または裏面側に装飾を施すことができる。
【0031】
2.フィルムは外部層以外にその下に存在する着色層を有する。着色層はラッカー層であってもよい。しかし該層は従来技術に相応して、有利には着色された熱可塑性プラスチック層からなる。熱可塑性プラスチックはたとえば外部層と同一もしくは類似の組成を有していてもよく、その1つの成分を含有するか、または外部層上に直接付着するか、またはほぼ透明な定着剤(たとえばカルボキシル基もしくは酸無水物基により、またはエポキシ基により官能化されたポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタンまたは結合すべき層の成分からなるブレンド)によって別のポリアミドもしくは別のポリマーが付着して結合されている。着色剤としてたとえば有機着色剤、無機着色剤もしくは有機顔料または金属光輝顔料を使用することができる。
【0032】
3.フィルムは外部層および場合により着色層以外に、担体層として十分に機械的な強度および場合により付加的に支持体への結合をもたらす別の層を有している。
【0033】
4.フィルムは外部層および場合により着色層と並んでさらに、支持体への結合のためにその下に存在する定着剤層を有する。適切な定着剤はたとえばカルボキシル基もしくは酸無水物基により、またはエポキシ基により官能化されたポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、結合すべき層および支持体の材料からなるブレンドまたは2004年6月16日のドイツ特許出願第102004029217.5に開示されている定着剤である。
【0034】
5.該フィルムは外部層、場合により着色層および担体層以外にさらに支持体への結合のためにその下に存在する定着剤層を有する。定着剤に関しては4.に記載したことが同様に該当する。
【0035】
6.たとえば1.〜5.に記載したフィルムは必要な場合には、たとえば耐引掻性に対する要求が高い場合には、外部層上にさらに保護層、たとえばポリウレタンベースのクリアコートを有する。ラッカーの形の保護層は耐引掻性を高めるために従来技術により変性されていてもよい。さらに、部材上に真空堆積法により保護層を作成することも可能である。該フィルムは場合により剥離可能な保護フィルムがラミネートされていてもよく、これは輸送時の保護または組み立て時の保護として作用し、かつたとえば複合部材の製造後に除去される。
【0036】
実施態様2〜6に関して、まず透明な外部層、たとえば単層フィルムを片側から、または両側から印刷することができ、次いで第二工程で残りの層と結合して多層フィルムにする。多層の、たとえば同時押出により製造されたフィルム中で透明な外部層は上から印刷することができる。外部層は透明であっても、不透明で着色されていてもよい。
【0037】
有利な実施態様では着色層および/または担体層は成形材料、特にポリエーテルアミドまたはポリエーテルエステルアミド、および有利には6〜18個の炭素原子を有する、有利には6〜12個の炭素原子を有する線状の脂肪族ジアミン、6〜18個の炭素原子、有利には6〜12個の炭素原子を有する線状の脂肪族もしくは芳香族ジカルボン酸および酸素原子あたり平均して2.3個の炭素原子を有し、数平均分子量200〜2000を有するポリエーテルをベースとするポリエーテルアミドまたはポリエーテルエステルアミドの成形材料を含有する。この層の成形材料は別のブレンド成分、たとえばカルボキシル基もしくはカルボン酸無水物基またはエポキシ基を有するポリアクリレートまたはポリグルタルイミド、官能性の基を有するゴムおよび/またはポリアミドを含有していてもよい。このような成形材料は従来技術である。これらはたとえばEP1329481A2およびDE10333005Aに記載されており、これらをここで明文をもって引用する。良好な層付着を保証するために、ここでポリアミドエラストマーのポリアミド成分が、外部層の成分中で使用されているのと同じモノマーから構成されていることが有利である。しかしこれは、良好な付着性を達成するために必ずしも必要であるわけではない。ポリアミドエラストマーに代わって着色層および/または担体層はポリアミド以外に通例の耐衝撃性を付与するゴムを含有していてもよい。これらの実施態様において、多くの場合にフィルムの熱成形は別の工程としてリバース射出成形の前に必要ではないことが有利である。というのも、該フィルムはリバース射出成形により同時に変形もされるからである。
【0038】
本発明による外部層を有するフィルムまたは多層フィルムは有利な実施態様では0.02〜1.2mm、特に有利には0.05〜1mm、とりわけ有利には0.1〜0.8mmおよび特に有利には0.2〜0.6mmの厚さを有する。多層フィルムの場合、本発明による外部層は有利な実施態様では0.01〜0.5mm、特に有利には0.02〜0.3mm、とりわけ有利には0.04〜0.2mmおよび特に有利には0.05〜0.15mmの厚さを有する。該フィルムは、公知の方法により、たとえば押出成形により、または多層系の場合には同時押出もしくは積層により製造される。該フィルムを引き続き、場合により変形することができる。
【0039】
フィルムと支持体との凝集結合はたとえば接着、圧縮、積層、同時押出またはリバース射出成形、リバース発泡成形またはリバースプレス成形により製造することができる。改善された付着性を達成するために、該フィルムはあらかじめたとえば火炎処理またはプラズマによる処理を行うことができる。フィルムと支持体との間で結合を形成する前に、フィルムをさらに、たとえば熱成形もしくはその他の方法により加工するか、もしくは変形することができる。表面はたとえばエンボス加工により構造化することができる。表面はフィルムの押出成形の範囲で、たとえば特殊な形状のローラーにより前構造化することができる。得られる複合部材を引き続きさらに変形することができる。
【0040】
適切な支持体はたとえばポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ABS、ポリスチレンまたはスチレンコポリマーをベースとする成形材料である。
【0041】
有利な実施態様では本発明によるフィルムを自動車および輸送用車両において表面の形状付与もしくは装飾のためのフィルム複合材の外部層として使用し、その際、該フィルムはプラスチックの支持体に付着して結合している。相応して構成された部材はシート状に形成されていて、たとえば車体部材、たとえば屋根モジュール、ホイールカバー、ボンネットまたはドアであってもよい。その他に縦長の、程度の差はあるものの、湾曲した部材、たとえば外装、たとえば自動車のいわゆるAカラムの外装またはあらゆる種類の装飾ストリップおよびカバーストリップを製造する実施態様も考えられる。もう1つの例は、ドアシルのための保護ライニングである。自動車の外部領域における適用以外に内装の部材、特に飾り部材、たとえばストリップおよびパネルもまた有利に本発明によるフィルムにより装飾することができる。というのも、内部空間においても耐衝撃性および耐薬品性、たとえば洗浄剤に対する安定性が要求されるからである。
【0042】
もう1つの実施態様では、本発明によるフィルムをスポーツ用品、たとえばあらゆる種類の雪上用の板、たとえばスキー板またはスノーボードのための表面コーティングとして使用する。
【0043】
該フィルムはさらにたとえば汚れ、UV線、天候の影響、火薬薬品または摩擦に対する保護層として、車両の遮断フィルムとして、家庭で、床、トンネル、テントおよび建物において、または装飾の担体として、たとえばスポーツ用品、ブーツ、航空機の表面コーティングのため、家庭用または建物のための装飾担体として使用することができる。
【0044】
本発明を以下では実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0045】
出発ポリアミドの製造:
1.PA MXD6の製造
100lの重縮合反応器を以下の使用物質で充てんした:
m−キシリレンジアミン 14.964kg、
アジピン酸 16.058kg、
脱イオン水 19.618kg、
次亜リン酸の50%水溶液3.074g。
【0046】
使用物質を窒素雰囲気で溶融し、かつ撹拌下に閉じられたオートクレーブ中で約180℃に加熱し、その際、約20バールの内部圧力が生じた。この内部圧力を2時間維持した。その後、溶融液を標準圧力への連続的な放圧下で、さらに280℃に加熱した。引き続き280℃を維持しながら約1時間、所望のトルクが表示されるまで、窒素を溶融液に通過させた。その後、溶融液を歯車ポンプにより排出し、かつ押出成形体として造粒した。該顆粒を16時間、水ポンプによる真空下に80℃で乾燥させた。
【0047】
搬出物:22.7kg、
該生成物は次の特性値を有していた:
クリスタリット融点Tm:243℃(DIN53765)、
相対溶液粘度ηrel:1.59(DIN EN ISO 307)。
【0048】
2.PA MXD10の製造
100lの重縮合反応器を以下の使用物質で充てんした:
m−キシリレンジアミン 11.751kg、
1,10−デカン二酸(セバシン酸) 17.449kg、
脱イオン水 18.326kg、
次亜リン酸の50%水溶液3.281g。
【0049】
上記のとおりに実施した。
【0050】
搬出物:21.3kg、
該生成物は次の特性値を有していた:
クリスタリット融点Tm:188℃、
相対溶液粘度ηrel:1.65。
【0051】
3.PA MXD12の製造
100lの重縮合反応器を以下の使用物質で充てんした:
m−キシリレンジアミン 11.441kg、
1,12−ドデカン二酸 19.347kg、
脱イオン水 19.57kg、
次亜リン酸の50%水溶液3.17g。
【0052】
上記のとおりに実施した。
【0053】
搬出物:24kg、
該生成物は次の特性値を有していた:
クリスタリット融点Tm:183℃、
相対溶液粘度ηrel:1.58。
【0054】
4.PA MXD13の製造
100lの重縮合反応器を以下の使用物質で充てんした:
m−キシリレンジアミン 11.761kg、
1,13−トリデカン二酸(ブラシル酸) 21.100kg、
脱イオン水 21.76kg、
次亜リン酸の50%水溶液3.373g。
【0055】
上記のとおりに実施した。
【0056】
搬出物:24.1kg、
該生成物は次の特性値を有していた:
クリスタリット融点Tm:167℃、
相対溶液粘度ηrel:1.57。
【0057】
5.PA MXD14の製造
100lの重縮合反応器を以下の使用物質で充てんした:
m−キシリレンジアミン 12.939kg、
1,14−テトラデカン二酸 24.544kg、
脱イオン水 11.11kg、
次亜リン酸の50%水溶液3.88g。
【0058】
上記のとおりに実施した。
【0059】
搬出物:31.2kg、
該生成物は次の特性値を有していた:
クリスタリット融点Tm:183℃、
相対溶液粘度ηrel:1.60。
【0060】
6.PA MXD18の製造
100lの重縮合反応器を以下の使用物質で充てんした:
m−キシリレンジアミン 10.880kg、
1,18−オクタデカン二酸 25.120kg、
脱イオン水 9.08kg、
次亜リン酸の50%水溶液4.14g。
【0061】
上記のとおりに実施した。
【0062】
搬出物:29.5kg、
該生成物は次の特性値を有していた:
クリスタリット融点Tm:173℃、
相対溶液粘度ηrel:1.56。
【0063】
7.Co−PA MXD12/PXD12の製造
100lの重縮合反応器を以下の使用物質で充てんした:
m−キシリレンジアミン 8.174kg、
p−キシリレンジアミン 3.407kg、
1,12−ドデカン二酸 19.577kg、
脱イオン水 19.86kg、
次亜リン酸の50%水溶液3.230g。
【0064】
上記のとおりに実施した。
【0065】
搬出物:24.9kg、
該生成物は次の特性値を有していた:
クリスタリット融点Tm:197℃、
相対溶液粘度ηrel:1.55。
【0066】
加工
1.コンパウンディング
製造されたポリアミドを、場合により表に記載されているポリアミドと一緒に、安定剤混合物0.75質量%および成核剤0.05質量%(そのつどポリアミドに対する)と共にシリンダ温度240℃(PA MXD6:280℃)を有するWerner+Pfleiderer ZSK30タイプの二軸スクリュー混練機で150rpmおよび20kg/時の処理量でコンパウンディングした。
【0067】
2.フィルムの押出成形
単層フィルムの製造はCollin社の装置でチルロール法で引取速度2.5m/分で材料温度250℃(PA MXD6:280℃)で行った。多層フィルムはカレンダー法により168/400のタイプのカレンダーユニットを用いてCollin多層フィルム装置で製造した。
【0068】
3.リバース射出成形
フィルムを洗浄ブラシ試験ならびに耐引掻性の試験のために、高光沢工具中でEngel Victory 540/200タイプの射出成形装置でPA12成形材料をリバース射出成形した。プレートの寸法は150×105×3mmであった。
【0069】
耐薬品性に関する単層フィルムの試験
試験物質の試験は2610タイプの勾配炉(製造元:BYK Gardner)で行った。熱伝導性を促進するために、フィルムは背面から粘着アルミニウムフィルムを設置した。薬品の施与の直後に該フィルムは直接、勾配により段階的に加熱されるセラン(Ceran)面に配置した。勾配炉のスライダはスタート時にフィルム上に移動し、かつ細いエッジによりフィルムを前後に押して加熱面へと移動させた。30分後にスライダは後退し、フィルムは加熱面から除去され、かつ洗浄された。フィルムの目視による評価は実施の1時間後および改めて実施の24時間後に行った。24時間後の結果は有効値である。第1表を参照のこと。記載の値は目視による評価の際に表面の最初の変化が認識可能であった温度である。
【0070】
本発明によるフィルムは自動車の外部部材用の物質に対して明らかに改善された抵抗性を有することがわかる。
【0071】
光沢度の測定
測定をDIN67530により多層フィルムにおいて実施した。詳細は第2表から明らかである。その外部層がPA12からなる多層フィルムと比較した。本発明により光沢は明らかに改善されていることがわかる。
【0072】
透過率の測定
透過率をISO13468−2により厚さ50μmの単層フィルムにおいて測定した。第3表を参照のこと。透過率はPA12に匹敵し、ひいては問題となる適用のために完全に十分であることがわかる。
【0073】
洗浄ブラシ安定性試験
リバース射出成形した多層フィルムを、Amtec−Kistler、DIN55668:2002−08により洗浄ブラシ安定性試験で試験した。結果は第4表に記載されている。本発明によるフィルムもしくは複合部材は明らかによりわずかな損傷を示すことがわかる。
【0074】
耐引掻性の測定
Degussa社内部の方法によりリバース射出成形した多層フィルムの表面光沢をひっかき試験の前および後に測定した。その際、Renault V.I.、 31.03.406/A、94−06版による摩擦試験装置を使用した。まず試験すべき試験体において種々の箇所で光沢を測定した。次いで試験体を水平にこのために備えられたホルダーに設置した。てこの柄の下側の2つのピストンをポリアミドからなるふるい布(メッシュ幅25μm)に設置し、これを0.1%のパーシル溶液で濡らした。摩擦ピストンを有するてこの柄を引き続き方向転換し、ピストンは試験体と接触し、かつそれぞれ3kgの追加のおもりを加えた。次いで試験体を80往復させ、その際、ピストンは表面を引っ掻いた。引っ掻かれた箇所で引き続き再び光沢を測定した。その結果は第5表に記載されている。本発明によるフィルムもしくは複合材は実質的に、PA12の表面と比較してより高い耐引掻性を有することがわかる。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
【表6】

【0081】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾フィルムにおいて、その外部層が以下の成分:
a)以下のモノマーから製造することができるポリアミド50〜100質量部:
α)m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンおよびこれらの混合物から選択されるジアミン 70〜100モル%、
β)6〜14個の炭素原子を有するその他のジアミン 0〜30モル%、
その際、ここでモル%の記載はジアミンの合計に対するものである、ならびに
γ)10〜18個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸70〜100モル%および
δ)6〜9個の炭素原子を有するその他のジカルボン酸0〜30モル%、
その際、ここでモル%の記載はジカルボン酸の合計に対するものである、
b)その他のポリアミド0〜50質量部、
その際a)およびb)の質量部は合計して100である
を含有するポリアミド組成物からなる装飾フィルム。
【請求項2】
成分a)α)が、m−キシリレンジアミン少なくとも50質量%およびp−キシリレンジアミン最大で50質量%からなることを特徴とする、請求項1記載の装飾フィルム。
【請求項3】
成分a)α)がp−キシリレンジアミン50質量%以上およびm−キシリレンジアミン50質量%未満からなることを特徴とする、請求項1記載の装飾フィルム。
【請求項4】
前記の層のみからなる、請求項1から3までのいずれか1項記載の装飾フィルム。
【請求項5】
複数の層からなる、請求項1から3までのいずれか1項記載の装飾フィルム。
【請求項6】
着色層、担体層および/または定着剤層を有することを特徴とする、請求項5記載の装飾フィルム。
【請求項7】
着色層および/または担体層がポリアミドエラストマーまたは耐衝撃性を付与するゴムを含有することを特徴とする、請求項6記載の装飾フィルム。
【請求項8】
0.02〜1.2mmの厚さを有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の装飾フィルム。
【請求項9】
外部層が0.01〜0.5mmの厚さを有することを特徴とする、請求項1から3ならびに5から8までのいずれか1項記載の装飾フィルム。
【請求項10】
押出成形、同時押出成形または積層により製造され、かつ引き続き場合により変形されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のシート。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載のフィルムと支持体とからなる複合部材。
【請求項12】
自動車の車体部材、自動車の車内の構成部材、外装、装飾ストリップ、カバーストリップ、パネルまたは装飾部材であることを特徴とする、請求項11記載の複合部材。
【請求項13】
スポーツ用品である、請求項11記載の複合部材。
【請求項14】
接着、圧縮、積層、同時押出、射出成形、発泡成形またはプレス成形によるリバース被覆により製造されることを特徴とする、請求項11から13までのいずれか1項記載の複合部材。

【公開番号】特開2007−119782(P2007−119782A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291408(P2006−291408)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(501073862)デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】