補体活性化の阻害剤
本発明は、炎症、アポトーシス、自己免疫、凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した病状の治療において使用され、また、バイオマーカーとして使用される、新規フィコリン結合ポリペプチド、並びに、斯かるフィコリン結合ポリペプチドに由来するポリペプチドに関する。本発明はさらに、この新規フィコリン結合ポリペプチドを認識する抗体、及びそれ由来のポリペプチド、このポリペプチドをコードする核酸分子、ポリペプチドの生成において使用されるベクター及び宿主細胞に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症、アポトーシス、自己免疫、凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した病状の治療において使用され、また、バイオマーカーとして使用される、新規フィコリン結合ポリペプチド、並びに、斯かるフィコリン結合ポリペプチド由来のポリペプチドに関する。本発明はさらに、このような新規フィコリン結合ポリペプチド及びそれに由来するポリペプチドを認識する抗体、このようなポリペプチドをコードする核酸分子、そのポリペプチドの生成において使用されるベクター及び宿主細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
補体系(C)の活性化は、3つの相違する開始経路:代替経路(AP)、古典経路(CP)、又はレクチン経路(LCP)を通して達成される。
APの活性化は異種表面上で生じ、C3の緩徐の自然加水分解及び機能的C3転換酵素C3bBbを形成するためのプロパージン因子、B因子及びD因子の活性によって引き起こされる。APはまた、2つの他の経路の増幅経路(増幅ループ)として機能する。近頃、代替の酵素アセンブリーがプロパージンの標的表面への非共有結合によって開始され得ることもまた示された。一方、CPの活性化は、C1qが抗原と複合体を形成して免疫グロブリンに結合する場合に開始され、Clq結合セリンプロテアーゼC1r及びC1sの活性化を誘発する。C1sは、C4及びC2を切断して活性化し、CPC3転換酵素C4b2aを形成する。LCPは、例えば、微生物の表面上でマンノース結合レクチン(MBL)又はフィコリンが炭水化物又はアセチル化化合物の制限型に結合する場合又は臨死の宿主細胞上に曝露される場合に活性化される。結合セリンプロテアーゼMASP-2はリガンドに結合すると、C4及びC2を活性化し切断し、LCPC3転換酵素C4b2aを形成する。MASP-1の機能は、C2のMASP-2切断の安定化を含み、C3の低度の切断を指示すると示唆されている。しかしながら、他の研究は、MASP-1及びMASP-2の機能及び活性をプロトロンビン、フィブリノゲン及び第XIII因子を含む凝固系クロストークと関連付けている。MASP1/3ノックアウトマウスを使用して、実際にMASP-1が補体活性に寄与することが近頃示された。極最近に発見されたMBL結合セリンプロテアーゼMASP-3の正確な機能は、解明されていない。MASP-3が制限範囲のMBLオリゴマーと結合し、MASP-3及び低分子MBL結合タンパク質(sMAP)がMBL依存性LCP補体活性化の制御又は抑制に関与することを示す研究が報告されている。
【0003】
MASP-1及び-3は、選択的スプライシングを通した同一のMASP1/3遺伝子(染色体3q27-q28上に存在する)に由来する。それらは、15C末端残基を除いた同一のA鎖を含む。A鎖は、EGF(上皮増殖因子)ドメインによって分離される2つのCUB(C1r/C1s, Urchin-EGF, 骨形成タンパク質)ドメインから成り、2つのCCPドメイン(補体調節タンパク質)が続く。セリンプロテアーゼドメインを含むB鎖は、MASP-1及びMASP-3に関して異なる。MASP-2及びsMAPはまた、同一遺伝子(染色体1p36-p36.2上に存在する)に由来し、当該sMAPはセリンプロテアーゼドメインを欠如する切断型でありA鎖の主要部である。MASP1/3遺伝子は多型であることが示されているが、この機能的重要性はまだあまり理解されていない。しかしながら、MASP2/sMAP遺伝子における多型は感染症のリスク増加と関連するという証拠が存在する。MASPsの発現は肝細胞に局在されるが、最近の研究で、ヒトMASP-3 mRNA(唯一のMASP-mRNAとして)は広範囲の組織で発現される、と記載された。
【0004】
本発明の目的
本発明の実施形態は、炎症、アポトーシス、自己免疫、凝固、及び/又は血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した病状の治療に適したポリペプチドを供することを目的とする。本発明のポリペプチドはさらに、これらの徴候の診断及び/又は予後診断、及び癌等の悪性疾患に適したバイオマーカーとなり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者によって、レクチン補体経路の認識分子と結合する新規ポリペプチド、及び例えばそれに由来する断片等のポリペプチドが、炎症、アポトーシス、自己免疫、凝固、及び/又は血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した特定の病状の治療に使用することができることが見出された。
【0006】
従って、第一の側面において、本発明は単離フィコリン結合ポリペプチドに関する。第二の側面において、本発明は配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド又はその変異体又は免疫性断片に関する。
【0007】
第3の側面において、本発明は、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体に関する。
【0008】
第4の側面において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離核酸分子に関する。
【0009】
さらなる側面において、本発明は、配列番号2の配列と少なくとも70%同一のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子に関する。
【0010】
さらなる側面において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離核酸分子を含むベクターに関する。
【0011】
さらなる側面において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞に関する。
【0012】
さらなる側面において、本発明は、本発明のポリペプチドを生成するための方法に関する。当該方法は、ポリヌクレオチドのコンストラクトの発現が可能な条件下で適切な成長培地において本発明の細胞を培養する工程、及び生じるポリペプチドを培地から回収する工程を含む。
【0013】
さらなる側面において、本発明は、本発明のポリペプチドを含む組成物に関する。さらなる側面において、本発明は、本発明のポリペプチドを含む医薬組成物に関する。
【0014】
さらなる側面において、本発明は、生物試料において本発明のポリペプチドを検出するための方法に関する。当該方法は:
a) 生物試料を得る工程;
b) 生物試料を本発明抗体と接触させる工程;
c) 抗体とポリペプチドとの複合体が存在する場合、試料中のポリペプチドの存在の指標として、当該複合体を検出する工程、
を含む。
【0015】
さらなる側面において、本発明は、医薬としての使用のための本発明のポリペプチドに関する。
【0016】
さらなる側面において、本発明は、医薬の調製のための本発明のポリペプチドの使用に関する。
【0017】
さらなる側面において、本発明は、炎症、アポトーシス及び/又は自己免疫と関連した任意の徴候の治療のための本発明のポリペプチドに関する。
【0018】
さらなる側面において、本発明は、凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した任意の徴候の治療のための本発明のポリペプチドに関する。
【0019】
さらなる側面において、本発明は、特定のハイリスク患者、例えば手術を受けている患者又はうっ血性心不全に罹患する患者等における、血栓塞栓性合併症の発生を予防するための本発明のポリペプチドに関する。
【0020】
さらなる側面において、本発明は、心臓と関連した病状の治療のための本発明のポリペプチドに関する。
【0021】
さらなる側面において、本発明は、フィコリン結合ポリペプチドの欠乏と関連した病状の治療のための本発明のポリペプチドに関する。
【0022】
さらなる側面において、本発明は、炎症、アポトーシス及び/又は自己免疫と関連した任意の徴候の治療のための方法に関する。当該方法は、本発明のポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0023】
さらなる側面において、本発明は、凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した任意の徴候の治療のための方法に関し、本発明のポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0024】
さらなる側面において、本発明は、例えば手術を受けている患者又はうっ血性心不全に罹患する患者等の特定のハイリスク患者において血栓塞栓性合併症を予防するための方法に関し、当該方法は、治療又は予防のための有効量の本発明のポリペプチドを、それを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0025】
さらなる側面において、本発明は、心臓と関連した病状の治療のための方法に関する。当該方法は、本発明のポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0026】
さらなる側面において、本発明は、フィコリン結合ポリペプチドの欠乏と関連した病状の治療のための方法に関し、当該方法は、本発明のポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0027】
さらなる側面において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列にストリンジェントな条件下でハイブリッド形成する能力がある核酸プローブに関する。
【0028】
さらなる側面において、本発明は、生物試料において本発明のポリペプチドをコードする核酸の存在を検出するための方法に関し、当該方法は
a) 生物試料を得る工程;
b) 生物試料を本発明の核酸プローブと接触させる工程;
c) 核酸プローブとポリペプチドをコードする核酸との複合体が存在する場合、試料におけるポリペプチドをコードする核酸の存在の指標として、当該複合体を検出する工程、
を含む。
【0029】
さらなる側面において、本発明は、フィコリン結合ポリペプチドの異常な発現と関連した障害を診断するための方法に関する。当該方法は、患者から生物試料を得る工程及びフィコリン結合ポリペプチドの生物試料においてその発現を測定する工程を含み、対照との比較による生物試料中のフィコリン結合ポリペプチドの発現の増加又は減少は、患者がフィコリン結合ポリペプチドの異常な発現と関連した障害に罹患することを示す。
【0030】
さらなる側面において、本発明は、フィコリン-1、2、3、マンノース結合レクチン(MBL)、C1q、肺サーファクタントタンパク質SP-A及び/又はSP-D、及び例えばCLL-11等の細胞内コラーゲン様防御分子から選択される1又は2以上のタンパク質との本発明のポリペプチドの組合せを含む単離組成物に関する。
【0031】
さらなる側面において、本発明は、本発明のポリペプチドを含む医薬組成物である組成物に関する。
【0032】
さらなる側面において、本発明は、医薬としての使用のための本発明の医薬組成物に関する。
【0033】
さらなる側面において、本発明は、医薬の調製のための本発明の組成物の使用に関する。
【0034】
さらなる側面において、本発明は、炎症、アポトーシス及び/又は自己免疫と関連した任意の徴候の治療のための本発明の医薬組成物に関する。
【0035】
さらなる側面において、本発明は、本願明細書において定義される任意の徴候の治療のための本発明の医薬組成物に関する。
【0036】
さらなる側面において、本発明は、本願明細書において定義される任意の徴候の治療のための方法に関し、当該方法は、本発明のポリペプチドの治療又は予防のための有効量と、フィコリン-1、2、3、及びマンノース結合レクチン(MBL)、C1q、肺サーファクタントタンパク質SP-A及び/又はSP-D、及び例えばCLL-11等の細胞内コラーゲン様防御分子から選択される1又は2以上のタンパク質を同時又は経時的に投与する工程を含む。
【0037】
さらなる側面において、本発明は、例えば脳腫瘍、肝腫瘍及び生殖器系における腫瘍等の癌疾患等の悪性疾患の診断及び/又は予後診断のための、本発明のポリペプチドの血液及び組織におけるバイオマーカーとしての使用に関する。
【0038】
さらなる側面において、本発明は、本願明細書において定義される自己免疫、代謝及び/又は炎症性病状の診断及び/又は予後診断のための、本発明のポリペプチドの血液及び組織におけるバイオマーカーとしての使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、MASP-1遺伝子の代替転写を表す。肝臓cDNAにおいてMASPl遺伝子の代替転写が検出された。MASPl、MASP3、及びFAP転写物は、エクソン6に位置する共通の順方向プライマー及びエクソン12(MASPl)、エクソン11(MASP3)、及びエクソン8a(FAP)に位置する特異的逆方向プライマーを使用して増幅した。MASPlは500 bpの断片を産生し、MASP3は506 bpの断片を産生し、FAPは309 bpの断片を産生する。
【図2】図2は、MASPl遺伝子の代替スプライシングを表す。MASPlは、共に終止コドン配列(黒枠で標識される)を含む8a及びエクソン11の切り出しによって生じる。MASPl配列は、エクソン17に終止コドンを含む。MASP3はエクソン8aの切り出しによって生じ、FAPはエクソン8aの切り出しが生じない場合に生じる。FAPタンパク質は、2つのCUBドメイン、EFGドメイン及び第一のCCP1ドメインを含む。
【図3】図3は、FAP断片の組織発現を表す。MASP-1、MASP3、及びFAP遺伝子の組織分布を、クロンテックから購入したcDNAパネルにおいて調べた。共通の順方向プライマー及び特異的逆方向プライマーを使用して、MASP-1、MASP-3、及びFAP転写物を増幅した。参照遺伝子としてGADPHを使用した。3つの遺伝子は何れも肝臓において高発現されており、さらに、心臓組織ではFAPが強く発現されていた(黒矢印で標識される)。FAP遺伝子の微量の発現が、脳、結腸、前立腺、骨格筋、及び小腸で検出された(白色矢印で標識される)。
【図4】図4は、MASP-1、MASP-3、及びFAPのアライメントを表す。MASP-1、MASP-3、及びFAPのタンパク質配列をBioEdit Softwareを使用して整列させた。MASP-1及びMASP-3は、異なるC末端セリンプロテアーゼドメインを含み、一方FAPは任意のセリンプロテアーゼドメインを含まない。代わりに、当該タンパク質はC末端領域に17個の新たなアミノ酸を含む。
【図5】図5は、FAPのcDNA配列及び対応するタンパク質配列を表す。cDNA配列を上列に示し、対応するタンパク質配列をその下に示す。エクソン領域を黒色の直線で分けた。MBL/フィコリンへの結合に関与すると考えられるアミノ酸を淡黄色枠で示す。
【図6】図6は、MASP-1の補体活性化を表す。ヒトMBLを増加量のMASP-1でインキュベートした。MASP-1は、C3及びC4補体タンパク質双方を活性化することができた。
【図7】図7は、MASP-2の補体活性化を表す。増加量のMASP-2でヒトMBLをインキュベートした。MASP-2は、C3とC4補体タンパクの両方を強く活性化することができた。
【図8】図8は、MASP-3の補体抑制を表す。ヒトMBLを増加量のMASP-3でインキュベートした。MASP-3は、C3及びC4補体タンパク質両方の活性化を抑制することができた。
【図9】図9は、免疫沈降を表す。mAb抗MBL131-11、抗フィコリン-2 クローン 219、及び抗フィコリン-3 クローン 334での血清フィコリン/MBLの免疫沈降。続いて、Dynal 磁気ビーズ分離、SDS-PAGE、シグナル抗体としてのビオチン標識抗MASP-l/MASP-3 クローン 8B3でのウエスタンブロットを行った。
【図10】図10は、FAPがアセチル化ヒト血清アルブミン(AcHSA)に結合される場合にフィコリンと相互作用することを表す。AcHSAに結合している溶出血清フィコリン。シグナル抗体としてのビオチン標識抗MASP-l/MASP-3 クローン8B3でのウエスタンブロット。
【図11】図11は、MASP-1及びMASP-3及び rフィコリン-2との間の相互作用に関する速度及び解離定数を表す(Hummelshoj T et al., MoI. Immunol., 2007)。
【図12】図12は、GULFとFAPの17個の特有のアミノ酸とのアライメントを表す。
【図13】図13は、マンナン/MBL ELISA アッセイにおけるC4の補体活性化を表す。マンナンコーティングのウェルを組換え型ヒトMBLの存在下又は不在下でインキュベートし、続いて段階希釈したMBL ホモ接合型欠乏血清とともにインキュベーションした。C4析出を、ポリクローナル抗C4c抗体を使用して測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図14】図14は、アセチル化BSA/フィコリン-3 ELISAアッセイにおけるC4の補体活性化を表す。AcBSAコーティングのウェルを、組換え型ヒトフィコリン3の存在下又は不在下でインキュベートし、続いて段階希釈したフィコリン-3ホモ接合型欠乏血清とともにインキュベートした。ポリクローナル抗C4c抗体を使用して、C4析出を測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図15】図15は、マンナン/MBL ELISA アッセイにおけるC4の補体活性化を表す。マンナンコーティングのウェルに組換え型ヒトMBLを加えてインキュベートし、続いて血清不含有培地上清としてrMASP-1の段階希釈物を一方の次元に沿って加えてインキュベートした。続いて、MBLホモ接合型欠乏血清の段階希釈物を第2の次元に沿って加えてインキュベートした。ポリクローナル抗C4c抗体を使用してC4析出を測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図16】図16は、AcBSA/フィコリン-3 ELISA アッセイにおけるC4の補体活性化を表す。AcBSA コーティングのウェルに組換え型ヒトフィコリン3を加えてインキュベートし、続いて血清不含有培地上清としてrMASP-1の段階希釈物を一方の次元に沿って加えてインキュベートした。続いて、フィコリン-3ホモ接合型欠乏血清の段階希釈物を第2の次元に沿って加えてインキュベートした。C4析出をポリクローナル抗C4c抗体を使用して測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図17】図17は、マンナン/MBL ELISAにおけるC4の補体活性化を表す。マンナンコーティングのウェルを組換え型ヒトMBLでインキュベートし、続いて血清不含有培地上清としてのrMASP-2の段階希釈物を一方の次元に沿って加えてインキュベートした。続いて、MBL ホモ接合型欠乏血清の段階希釈物を他方の次元に沿って加えてインキュベートした。ポリクローナル抗C4c抗体を使用してC4析出を測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図18】図18は、AcBSA/フィコリン-3 ELISAアッセイにおけるC4の補体活性化を表す。AcBSAコーティングのウェルに組換え型ヒトフィコリン3を加えてインキュベートし、続いて、血清不含有培地上清としてのrMASP-2の段階希釈物を一方の次元に沿って加えてインキュベーションした。フィコリン-3ホモ接合型欠乏血清の段階希釈物を他方の次元に沿って加えてインキュベートした。ポリクローナル抗C4c抗体を使用して、C4析出を測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図19】図19は、マンナン/MBL ELISAアッセイにおけるC4の補体活性化を表す。マンナンコーティングのウェルに組換え型ヒトMBLを加えてインキュベートし、続いて血清不含有培地上清としてのrMASP-3の段階希釈物を一方の次元に沿って加えてインキュベーションした。続いて、MBLホモ接合型欠乏血清の段階希釈物を他方の次元に沿って加えてインキュベートした。ポリクローナル抗C4c抗体を使用して、C4析出を測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図20】図20は、AcBSA/フィコリン-3 ELISAアッセイにおけるC4の補体活性化を表す。AcBSAコーティングのウェルに組換え型ヒトフィコリン3を加えてインキュベートし、続いて、血清不含有培地上清としてのrMASP-3の段階希釈物を一方の次元に沿って加えてインキュベーションした。続いて、フィコリン-3ホモ接合型欠乏血清の段階希釈物を他方の次元に沿って加えてインキュベートした。C4析出をポリクローナル抗C4c抗体を使用して測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図21】図21は、FAP、MASP1及びMASP3の組織分布を表す。FAPは、MASP1及びMASP3と比較して心臓組織において非常に多量に発現された。FAPは、肝臓におけるFAP発現と比較して、心臓組織において3倍多く発現された。さらに、肝臓におけるMASP1及びMASP3発現と比較して、肝臓における高FAP発現が確認された。脳、骨格筋及び前立腺組織において、相当なFAP発現がまた検出された。実験を2通りに3回実施した。平均値の標準誤差を示す。
【図22】図22は、ポリクローナルマウス抗血清を使用したMAP-1の免疫組織化学的肝臓局在性が、タンパク質の17 FAP 特異的C末端残基に対して産生されたことを表す。対照染色は陰性であった。FAP(ウサギ及びマウス)に対して産生された複数の異なるポリクローナル抗体は、同一のパターンの染色を呈した。
【図23】図23は、MAP-1組織局在性の免疫組織化学的分析を表す(OM XlO)。左側のパネルは、mAb(12B11)でのMAP-1への染色を示す。右側パネルは、非関連 IgG1k mAbでのアイソタイプ対照染色を示す。(A-B): 心筋、(C-D): 骨格筋、(E-F): 肝臓試料、(G-H): 大動脈組織。下部の右側隅部のバーは、全てのスライド上で50 μmを示す。
【図24】図24は、MAP-1及びMASP-1/3血清複合体の免疫沈降を表す。(A) mAb 20C4(抗MAP-1) 及びmAb 8B3(抗MASP-1/3, 共通の重鎖上のエピトープを有する)を使用して、MAP-1及びMASP-1/3を血清から免疫沈降させた。減少量の試料をエレクトロブロットし、pAbでMAP-1へ又はビオチン標識mAbsでフィコリン-3(FCN334)及びMBL (Hyb 131-1) へ展開した。(B)1 ml、300 μl及び100 μl の血清からの、MBL(Hyb 131-11) 、フィコリン-2(FCN219) 及びフィコリン-3 (FCN334)へのmAbsでのそれぞれの免疫沈降(左側)。対照は、抗MAP-1 mAb 20C4を使用した、血清から沈殿させたMAP-1(sMAP-1) 及び培養上清由来のrMAP-1(rMAP-1)であった(右側)。MAP-1へのpAbでプローブしたウエスタンブロッティングによって試料を分析した。
【図25−1】図25−1は、MBL及びフィコリン-3媒介補体C4析出へのMASP-2及びMAP-1の影響を表す。C4析出は、C4へのポリクローナル抗体を使用して測定し、OD490-650nm 値として供する。エラーバーは、二重測定の標準偏差の2倍を示す。rMBL、rフィコリン-3 rMAP-1及びrMASP-2の近似濃度を図のラベルに供する。(A)MBL欠乏血清を使用した、マンナンコーティングされた表面上での、400ng/mlのrMBLでのC4析出の再構成。対照は、rMBLを添加しかなった。(B)rMASP-2のrMBL媒介C4析出への用量依存性効果。(C) rMAP-1のrMBL媒介C4析出への用量依存性効果。
【図25−2】図25−2は、MBL及びフィコリン-3媒介補体C4析出へのMASP-2及びMAP-1の影響を表す。C4析出は、C4へのポリクローナル抗体を使用して測定し、OD490-650nm 値として供する。エラーバーは、二重測定の標準偏差の2倍を示す。rMBL、rフィコリン-3 rMAP-1及びrMASP-2の近似濃度を図のラベルに供する。(D) フィコリン-3欠乏血清を使用した、AcBSA コーティングされ表面上での、400ng/ml のrフィコリン-3でのC4析出の再構成。対照は、rフィコリン-3を添加しなかった。(E) rMASP-2のrフィコリン-3媒介C4析出への用量依存性効果。(F) rMAP-1のrフィコリン-3媒介C4析出への用量依存性効果。
【図26】図26は、純系におけるMASP-2及びMAP-1の補体C4析出への影響を表す。マンナン表面上のrMBLに、rMASP-2の段階希釈物を一方の次元に沿って加えてプレインキュベートした。続いて、rMAP-1の段階希釈物を第2の次元に沿って加えて、続いて精製した1 μg/mlのC4を適用した。C4へのpAbでC4析出を測定し、OD490-650nm値として供する。エラーバーは、二重測定の標準偏差の2倍を示す。rMAP-1及びrMASP-2の近似濃度を図のラベルに供する。
【図27】図27は、rMAP-1のSDS-PAGE分析を表す。左側は、免疫ブロット分析 +/- N-グリコシダーゼ F 処置(ENDO-F)を示す。右側は、対応するクーマシー染色を示す。
【図28】図28は、較正曲線を表す。A) 正常ヒト血清(pNHS)のMAP-1欠乏プールへ適用したrMAP-1の2倍の段階希釈、又はPBS/0.05%tween/10 mM EDTAに希釈したrMAP-1の段階希釈での、mAb 20C4/mAb-8B3 両側ELISA によって生じた較正曲線。エラーバーは、8回測定の標準偏差の2倍を示す。B) MAP-1欠乏血清、正常ヒト血清及びrMAP-1を添加したMAP-1欠乏血清の免疫ブロット。
【図29−1】図29−1は、MAP-1血清濃度を表す。A) 100人のデンマーク人の供血者のMAP-1の血清濃度及び分布範囲。平均血清レベル: 240 ng/ml。範囲: 115-466 ng/ml。B) MASP-3とMAP-1血清レベルとの間の相関関係。
【図29−2】図29−2は、MAP-1血清濃度を表す。C) 血清の凍結及び融解の影響。血清を8回凍結、融解し、MAP-1レベルを各回で測定した。エラーバーは、二重測定の標準偏差の2倍を示す。
【図30A】図30Aは、100人のデンマーク人の供血者における、MAP-1とMBL、フィコリン-2及びフィコリン-3間の結合レベル(相対的O.D.490-650 nm単位)をそれぞれ表す。P値は、ノンパラメトリック両側t-検定によって得た。
【図30B】図30Bは、MAP-1血清レベルとMBL、フィコリン-2及びフィコリン-3への相対的結合との間の相関関係(左側)、及びMBL、フィコリン-2及びフィコリン-3血清レベルとMAP-1への相対的結合との相関関係(右側)を表す。ノンパラメトリックスピアマンの順位相関テストを使用して、相関関係のp-及びr-値を算出した。
【図31A】図31Aは、スクロース勾配超遠心分離法を表す。血清から採取した画分(1-27)を、10-30% スクロース密度勾配に供した。画分を特異的ELISAによって、MAP-1、MASP-3、MBL、フィコリン-2及び-3に関して分析した。血清IgM(19S)及びIgG (7S)のピークがグラフの最上部に示された。
【図31B】図31Bは、スクロース勾配超遠心分離法を表す。画分番号8-23を、免疫ブロッティングによって、MAP-1、MASP-1、MASP-3、sMAP、MASP-2、MBL、フィコリン-2及びフィコリン-3に関して分析した。
【図31C】図31Cは、スクロース勾配超遠心分離法を表す。画分1-27を、固定化アセチル化BSA(フィコリン-3リガンド)又はマンナン(MBLリガンド)上での、外因的に適用したヒトC4を活性化する能力によって分析した。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明者は、レクチン補体経路の認識分子と関連する40 kDaの新規血漿タンパク質を発見し、MASP-l/MASP-3の新規の代替転写物変異体としてこれを同定した。
【0041】
新規タンパク質 (本発明者は、FAP (フィコリン結合タンパク質)又はMAP-1 (MBL/フィコリン結合タンパク質-1)と名付けた)は、本発明者によって酵素ドメインを欠如するが、フィコリン/MBL 結合ドメインを含むことが示され、従ってMASPsの競合及び置換を通して補体及び凝固機能の制御及び抑制に関与すること、あるいはスカベンジャー又はシグナル機能に関与するタンパク質として相互排他的でないことが期待される。
【0042】
補体系及び/又は凝固カスケードの無制御の活性化は、全身性炎症及び敗血症から心筋梗塞及び 自己免疫に渡る様々な疾患における致死的な重度の転帰と強く関連する。
【0043】
凝固及び 補体活性化の抑制は、治療手段の候補であることが示される。
【0044】
本発明は、補体の新規な阻害剤候補及び凝固機能の双方を説明する。また、本発明のポリペプチドは、例えばスカベンジャー及び/又はシグナル機能等の他の機能も有することができる。さらに、悪性疾患、自己免疫、代謝及び/又は炎症性病状を含む複数の疾患症状において、それは新規のバイオマーカーとして使用することができる。
【0045】
本発明者は、インビボ(in vivo)で存在する血漿タンパク質、名称フィコリン結合タンパク質(FAP)を発見し、それが主にフィコリンと関連するが(図9)、マンノース結合レクチンと関連する可能性もあることを示した。NCBIのヌクレオチドデータベースを検索することによって、本発明者はそれがMASP-1の切断型に相当する転写変異体の候補であることを発見した。この配列に基づいて、推定の新規の遺伝子転写物を増幅するためにプライマーをデザインした。続いて、ヒト肝臓cDNAを使用して、MASP-1遺伝子の新規の代替転写物変異体(図1)を同定した。このmRNA系の配列を決定し、それによりアミノ酸配列を決定したが、これは血漿/血清中の40 kDaの観察されたタンパク質の分子量に相当する(図 5)。新規タンパク質は、MASP-1及びMASP-3と部分的に同一であるが、セリンプロテアーゼドメインを欠如するものの、17個のアミノ酸、続く終止コドンをコードする新規エクソンを含む。このエクソンをMASP1及びMASP3の転写物中で切り出した(図2)。mRNA発現ライブラリーのパネルを使用することによって、本発明者はこのタンパク質が心臓及び肝臓、続いて骨格筋において強く発現される証拠を発見した(図3)。弱い発現が、脳、消化管、前立腺及び脾臓において観察された(図3)。Taqmanアッセイによって、発現が心臓及び肝臓細胞において確認された。FAPは、MASP1及びMASP3と比較して心臓組織において多量に発現された。FAPは、肝臓におけるFAP発現と比較して3倍高く心臓組織において発現された。さらに、肝臓におけるMASP1及びMASP3発現と比較して、高FAP発現が肝臓において観察された。相当なFAP発現が、脳、骨格筋及び前立腺組織においてもまた検出された。実験を2通りに3回実施した。
【0046】
心臓における高発現は非常に顕著であり、これにより本発明者は、自己免疫、 代謝及び/又は例えば心臓と関連した病状等の炎症性病状における組織損傷に対する非常に有用なプロテクターとしての、本発明のポリペプチドの使用を提案することとなった。本発明者は、フィコリン及びマンノース結合レクチンによって開始される補体活性を評価するアッセイを確立し、これによりFAPの機能的補体抑制の可能性を示すことができた。
【0047】
本発明者は、異なる組織における正確な相対発現レベルを測定するためのリアルタイム定量的アッセイを確立した。本発明のポリペプチドは、組換え技術によって産生することができる。FAPポリクローナル及びモノクローナル特異的抗体それぞれを得るために、ウサギ又はマウスを特有の17個のアミノ酸長のペプチドで免疫することができる。
【0048】
特異的FAP抗体は、異なる組織におけるFAPの定量的測定及び免疫組織化学的検出のために使用することができる。
【0049】
本願明細書で説明されるように、FAPと異なる結合パートナーとの間の結合定数は、ELISAにおいて及び表面プラスモン共鳴技術(Biacore)を使用することによって決定することができる。
【0050】
例えば特異的細胞表面結合受容体等のFAP特異的受容タンパク質は、例えばタンパク質が細胞に直接結合されるアッセイ等の、当業者に周知の標準的なアッセイによって同定することができる。
【0051】
新規タンパク質フィコリン結合タンパク質(FAP)は、MASPlの代替スプライシング変異体である。タンパク質は、セリンプロテアーゼドメインを欠如するが、補体系のレクチン経路の発動因子への結合に関与するドメインを含む。従って、本発明者は、MASPsの競合及び置換を通して当該タンパク質がMASP-1及びMASP-3の機能(補体, 凝固機能及び他の酵素基質)の制御及び抑制に関与することを期待する。あるいは、相互排他的でないFAPが、内因性老棄物又は病原体に結合されるFAP/MBL/フィコリン複合体の除去を促進するスカベンジャー分子として機能し得る。
【0052】
補体系の無制御な活性化及び凝固カスケードは有害転帰と関連し、例えば本発明のポリペプチド等の機能的阻害剤は、補体系の制御及び凝固カスケードに非常に有用となり得る。さらに、本発明のポリペプチドは、他の状況において使用することができる。他の側面は、異なる疾患状態においてタンパク質をバイオマーカーとして使用することであろう。
【0053】
タンパク質は特有であり、新規薬剤及び/又は新規診断用手段の基盤を提供することができる。
【0054】
配列番号4のアミノ酸配列又はその免疫性断片又は変異体を含む本発明のポリペプチドは、このアミノ酸配列と関連した特異的機能を有することができる。本発明者によって、当該ポリペプチドが、DNMTl DNA(シトシン-5-)-メチルトランスフェラーゼ 1 (DNMTl)、ゴルジサブファミリーBメンバー1 (GOLGBl)、Aキナーゼアンカータンパク質9(AKAP9)、B及びTリンパ球結合タンパク質(CD272抗原)、PTBドメイン含有貪食受容タンパク質1(GULP)、及びMACROドメイン含有タンパク質2から選択される1又は2以上のタンパク質の活性に相当する機能又は活性を有し得るということが示唆されている。
【0055】
特定の興味深い一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、PTBドメイン含有貪食受容タンパク質1(GULP)の活性に相当する機能又は活性を有する。
【0056】
定義
本願明細書において用語「フィコリン結合ポリペプチド」とは、天然のヒトフィコリン結合タンパク質(FAP)(配列番号 1)のアミノ酸配列20-380又は配列番号9の16-363のアミノ酸配列を含む任意のタンパク質又はポリペプチド、それらの機能的変異体、機能的切断型、及び機能的誘導体又は複合物であって、ポリペプチドが補体活性を有しないが、フィコリン-3、MBL、C1q、肺サーファクタントタンパク質SP-A及び/又はSP-D及び/又はCL-L1(及び他のコレクチンファミリーメンバー)への結合のためのMASP-1、MASP-2、又はMASP-3と競合する能力を有するものを意味する。これは、配列番号1を有するヒトフィコリン結合ポリペプチド(FAP)及びその変異体を含むがこれらに限定されない。
【0057】
本願明細書において用語「フィコリン結合タンパク質(FAP)」とは、(例えばアミノ酸配列20-380等のシグナルペプチドを有する又は有しない)天然のヒトFAP(配列番号1)のアミノ酸配列1-380を有するタンパク質、その天然の対立遺伝子変種及びその相同体を意味する。それはまた、それらのタンパク質が実質的にFAPの活性を有する限り、例えばN又はC末端アミノ酸の欠損又は付加を含む修飾N又はC末端等の一部が修飾されたアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。用語「フィコリン結合タンパク質(FAP)」とは、本明細書において用語「MAP-1」又は「MBL/フィコリン結合タンパク質-1」と互換的に使用される。上記定義内の「FAP」はまた、一個体から他の個体へ存在し且つ生じ得る天然の対立遺伝子変種を含む。当該用語はまた、例えばウシ、ブタ、イヌ、ウマ、ラット、及びマウス等のヒト以外の他種由来の相同配列及び同様の機能を有するタンパク質を含む。また、グリコシル化又は他の翻訳後の修飾の程度及び位置は、選択の宿主細胞及び宿主細胞環境に応じて変化しうる。
【0058】
用語「MBL結合セリンプロテアーゼ-1」又は「MASP-1」とは、本願明細書において、天然のヒトMASP-1(配列番号5)のアミノ酸配列1-699(例えばアミノ酸配列20-699等のシグナルペプチドを有する又は有しない)を有するタンパク質、その天然の対立遺伝子変種及び相同体を意味する。当該配列は、1又は2以上のペプチド鎖中に、例えば天然のヒトタンパク質の2本鎖中に、すなわち、H及び軽鎖中に存在し得ることが理解される。
【0059】
用語「MBL結合セリンプロテアーゼ-3」又は「MASP-3」とは、本願明細書において、天然のヒトMASP-3(配列番号7)のアミノ酸配列1-728(例えばアミノ酸配列20-728等のシグナルペプチドを有する又は有しない)を有するタンパク質、その天然の対立遺伝子変種及び相同体を意味する。当該配列は、1又は2以上のペプチド鎖中、例えば天然のヒトタンパク質の2本鎖中、すなわち、H及び軽鎖等の中に存在し得ることが理解される。
【0060】
用語「MBL結合セリンプロテアーゼ-2」又は「MASP-2」とは、本願明細書において、天然のヒトMASP-2(配列番号9)のアミノ酸配列1-686(例えばアミノ酸配列 16-686等のシグナルペプチドを有する又は有しない)を有するタンパク質、その天然の対立遺伝子変種及び相同体を意味する。当該配列は、1又は2以上のペプチド鎖中に、例えば天然のヒトタンパク質の2本鎖中に、すなわち、H及び軽鎖に存在し得ることが理解される。
【0061】
用語「低分子MBL結合タンパク質」、「sMAP」、「19 kD のMBL結合血漿タンパク質」又は、「MApl9」とは、本願明細書において、天然のヒトsMAP(配列番号 11)のアミノ酸配列 1-185(例えばアミノ酸配列 16-185等のシグナルペプチドを有する又は有しない)を有するタンパク質、その天然の対立遺伝子変種及び相同体意味する。
【0062】
用語「変異体」は、本願明細書において、1又は2以上のアミノ酸が他のアミノ酸によって置換されている、及び/又は1又は2以上のアミノ酸が欠損している及び/又は1又は2以上のアミノ酸がポリペプチド中に挿入されている、及び/又は1又は2以上のアミノ酸が当該ポリペプチドへ付加されている配列番号 1の配列を有するフィコリン結合ポリペプチド又は配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドを指定することを目的とする。このような付加は、N末端又はC末端又は双方で起こり得る。本定義中の「変異体」は、さらに機能的活性を有する。一部の実施形態において、変異体は、配列番号1の配列と70 % 配列同一性を有する。一部の実施形態において、変異体は配列番号1の配列と80 % 配列同一性を有する。他の実施形態において、変異体は、配列番号 1の配列と90 % 配列同一性を有する。さらなる実施形態において、変異体は、配列番号1の配列と95 % 配列同一性を有する。一部の実施形態において、変異体は、配列番号4の配列と70 % 配列同一性を有する。一部の実施形態において、変異体は、配列番号4の配列と80%配列同一性を有する。他の実施形態において、変異体は、配列番号4の配列と90 % 配列同一性を有する。さらなる実施形態において、変異体は、配列番号4の配列と95 % 配列同一性を有する。用語「機能的変異体」、「機能的切断型」、及び「機能的誘導体」は、本願明細書において、ポリペプチドが配列番号1の不可欠な配列部分を含み、補体活性及び/又はセリンプロテアーゼ活性を有することなしに少なくともフィコリン又はMBLへの結合のためのMASP-1 又は MASP-3と競合する能力を有する、配列番号 1の変異体、切断型、及び誘導体を意味する。フィコリン結合ポリペプチドは、変異体、及び/又は切断型及び/又は誘導体であることから選択される2又は3個の特徴を有することができることが理解される。
【0063】
フィコリン結合ポリペプチドの機能的変異体は、本明細書において説明するアッセイにおいて試験した場合に、同一細胞型において産生された野生型FAPの特異的活性の、少なくとも約25%、例えば少なくとも約50%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約90%を示すものを含む。
【0064】
用語「免疫性断片」とは、本願明細書において、本質的に同一の機能活性及び抗体によって認識される同一の空間方向性を有するアミノ酸配列の断片を意味する。従って、特異的抗体は、ポリペプチド及びその免疫性断片の両方を結合し得る。
【0065】
用語「他のアミノ酸」は、本願明細書において、その位置において天然に存在するアミノ酸と異なるアミノ酸を意味する。これは、ポリヌクレオチドによってコードされ得るアミノ酸を含むがこれに限定されない。一部の実施形態において、異なるアミノ酸は、天然のL型中に存在し、ポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【0066】
用語「誘導体」とは、本願明細書において、親ペプチドの1又は2以上のアミノ酸が、例えば、アルキル化、ペグ化、アシル化、エステル形成又はアミド形成等によって化学的に修飾されている、野生型ヒトFAPに関連した実質的に同一又は改良された生物活性を示しているフィコリン結合ポリペプチドを指定することを目的とする。
【0067】
用語「補体活性」とは、本願明細書において、補体系を活性化する能力を意味する。補体活性は、「アッセイ」との見出し部分で説明するアッセイで測定することができる。
【0068】
用語「マンノース結合レクチン(MBL)」とは、本願明細書において、マンナン結合レクチン、マンノース結合タンパク質(MBPl)、及びマンナン結合タンパク質もまた意味し、これらの用語は互換的に使用することができる。
【0069】
用語「結合する能力がある」とは、本願明細書において、補体系のレクチン経路の1又は2以上の発動因子又は当該ポリペプチドの効果に関与し得る他のタンパク質に溶液中で特異的に結合する本発明のタンパク質の能力を意味する。
【0070】
用語「コンストラクト」とは、目的のポリペプチドをコードする完全又は部分的な天然に生じるヌクレオチド配列に基づき得るポリヌクレオチドセグメントを示すことを目的とする。コンストラクトは、任意には他のポリヌクレオチドセグメントを含んでよい。同様に、用語「ポリヌクレオチドコンストラクトによってコードされ得るアミノ酸」とは、上記のポリヌクレオチドコンストラクトによってコードされ得るアミノ酸、すなわち、例えばAla、VaI、Leu、He、Met、Phe、Trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp及びGln等のアミノ酸を含む。
【0071】
用語「ベクター」とは、本願明細書において、宿主細胞中で増幅能力がある任意の核酸を意味する。従って、ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、染色体外の核酸として存在し、その複製が染色体複製から独立しているベクターとすることができ、例えば、プラスミドである。あるいは、ベクターは、宿主細胞中に導入された場合に、宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、そして組み込まれている染色体と共に複製されるベクターである。ベクターの選択は、度々それが導入される宿主細胞次第となり得る。ベクターは、プラスミドベクター、ファージベクター、ウイルス又はコスミドベクターを含むがこれに限定されない。ベクターは通常、複製開始点及び少なくとも1つの選択可能な遺伝子、すなわち、容易に検出可能な生成物又は細胞成長に必須であるその生成物をコードする遺伝子を含む。
【0072】
さらなる側面において、本発明は、上記ポリヌクレオチドコンストラクト又はベクターを含む組換え型宿主細胞を供する。一部の実施形態において、組換え型宿主細胞は、真核細胞である。他の実施形態において、組換え型宿主細胞は、哺乳類起源である。さらなる実施形態において、組換え型宿主細胞は、CHO細胞、HEK細胞及びBHK細胞から成る群から選択される。
【0073】
用語「宿主細胞」とは、本願明細書において、異種性DNAが発現され得るハイブリッド細胞を含む任意の細胞を表す。典型的な宿主細胞は、昆虫細胞、酵母細胞、例えばBHK、CHO、HEK、及びCOS細胞等のヒト細胞を含む哺乳類細胞を含むがこれに限定されない。本発明の実施において、培養されている宿主細胞は、好ましくは哺乳類細胞であり、より好ましくは確立された哺乳類株細胞であり、CHO(例えば、ATCC CCL 61)、COS-1(例えば、ATCC CRL 1650)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞及びHEK293(例えば、ATCC CRL 1573; Graham et al., J. Gen. Virol. 36: 59-72, 1977)株細胞を含むがそれらに限定されない。好適なBHK株細胞は、tk- ts13 BHK 株細胞(Waechter and Baserga, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79: 1106-1110, 1982)であり、以下BHK570細胞と呼ぶ。BHK 570株細胞は、ATCC受入番号CRL10314で、American Type Culture Collection, 12301 Parklawn Dr., Rockville, MD 20852から利用できる。tk- ts13 BHK株細胞は、受入番号CRL 1632でATCCからもまた利用できる。他の適した株細胞は、ラット Hep I (ラット肝細胞腫; ATCC CRL 1600)、ラットHep II(ラット肝細胞腫; ATCC CRL 1548)、TCMK(ATCC CCL 139)、ヒトの肺(ATCC HB 8065)、NCTC 1469 (ATCC CCL 9.1)及びDUKX細胞(Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. ScL USA 77:4216-4220, 1980)を含むがそれに限定されない。3T3細胞、Namalwa細胞、骨髄腫及び骨髄腫と他の細胞との融合もまた有用である。
【0074】
さらなる側面において、本発明は、ポリヌクレオチドコンストラクトを含有及び発現している遺伝子導入動物を供する。
【0075】
さらなる側面において、本発明は、ポリヌクレオチドコンストラクトを含有及び発現している遺伝子導入植物を供する。さらなる側面において、本発明は、本発明のフィコリン結合ポリペプチドを生成するための方法であって、ポリヌクレオチドコンストラクトの発現が可能な条件下で適切な成長培地においてポリヌクレオチドコンストラクトを含む細胞を培養する工程、及び生じるポリペプチドを培地から回収する工程を含む方法に関する。
【0076】
本願明細書において、用語「適切な成長培地」とは、細胞の成長及び本発明のフィコリン結合ポリペプチドをコードする核酸配列の発現に必要な栄養分及び他の成分を含有する培地を意味する。
【0077】
さらなる側面において、本発明は、フィコリン結合ポリペプチドを生成するための方法であって、遺伝子導入動物によって産生された乳からポリペプチドを回収する工程を含む方法に関する。
【0078】
さらなる側面において、本発明は、フィコリン結合ポリペプチドを生成するための方法であって、ポリヌクレオチドコンストラクトを含む遺伝子導入植物の細胞を培養する工程、及び生じる植物からポリペプチドを回収する工程を含む方法に関する。
【0079】
本明細書において、用語「治療」とは、組織損傷を抑制又は最小化することを目的とした、適切な補体活性化に関与する、例えば炎症及び再灌流傷害等の予期病状の予防、及び例えば心筋梗塞及び脳卒中等の既に生じている病状の制御のいずれも含むことを意味する。従って、本発明のフィコリン結合ポリペプチドの予防投与は、用語「治療」に含まれる。
【0080】
用語「対象」とは、本願明細書において、任意の動物、特にヒト等の哺乳類を意味することを目的とし、必要に応じて用語「患者」と互換的に使用することができる。
【0081】
用語「配列同一性」とは、当技術分野で周知のように、2つ又はそれ以上のポリペプチド分子及び2つ又はそれ以上の核酸分子の配列間の関係を意味し、その配列を比較することによって決定される。当技術分野で、「同一性」はまた、核酸分子間又はポリペプチド間の配列関連性の程度を意味し、場合によっては、2つ又はそれ以上のヌクレオチド残基又は2つ又はそれ以上のアミノ酸残基の配列間の一致の数によって決定される。「同一性」は、特定の数学モデル又はコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって検討されるギャップアライメント(存在する場合)で2つ又はそれ以上の配列の中の短いものとの間の一致のパーセントを測定する。
【0082】
用語「類似性」とは、「同一性」と関連した概念であるがそれとは大きく異なり、同一の一致及び保存的置換(conservative substitution)の一致の双方を含む配列関係性を意味する。例えば、2つのポリペプチド配列が(割合(10/20)の)同一のアミノ酸を有し、残りがすべて非保存的置換である場合、パーセント同一性及び類似性はいずれも50%である。同一の例において、保存的置換が5以上の位置に存在する場合、パーセント同一性は50%のままであるが、パーセント類似性は75%((割合(15/20)))である。従って、保存的置換が存在する場合、2つのポリペプチド間の類似性の程度は、それらの2つのポリペプチド間のパーセント同一性より高くなるであろう。
【0083】
配列番号1のアミノ酸配列への保存的修飾(及びコード化ヌクレオチドへの対応する修飾)は、天然に生じるFAPと同様の機能的及び化学的特性を有するフィコリン結合ポリペプチドを生成するであろう。対照的に、フィコリン結合ポリペプチドの機能的及び/又は化学的特性における実質的な修飾は、(a) 例えば、シート又はらせん形構造として、置換領域における分子骨格の構造、(b) 標的部位における分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の大部分を維持することへのそれらの影響の点で顕著に異なる置換を配列番号1のアミノ酸配列において選択することによって達成される。
【0084】
例えば、「保存的アミノ酸置換」は、置換位置におけるアミノ酸残基の極性又は電荷への影響がほとんど又は全くないような、天然のアミノ酸残基の非天然の残基との置換を含んでよい。さらに、「アラニン系統的変異導入法」に関してこれまでに説明されるように、ポリペプチド中の任意の天然の残基はアラニンと置換されてもよい(例えば、アラニン系統的変異導入法について考察される、MacLennan et al., 1998, Acta Physiol. Scand. Suppl. 643: 55-67; Sasaki et al., 1998, Adv. Biophys. 35: 1-24を参照されたい)。
【0085】
望ましいアミノ酸置換(保存的又は非保存的)は、このような置換が望まれる時に当業者によって決定することができる。例えば、アミノ酸置換は、本明細書において説明するように、フィコリン結合ポリペプチドの重要な残基を同定する、又はフィコリン結合ポリペプチドの親和性を増大又は減少するために使用することができる。
【0086】
天然に生じる残基は、共通の側鎖特性に基づいて分類することができる:
1) 疎水性: ノルロイシン、Met、Ala、VaI、Leu、Ile;
2) 中性の親水性: Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
3) 酸性: Asp、Glu;
4) 塩基性: His、Lys、Arg;
5) 鎖の方向性に影響する残基: Gly、Pro;
6) 芳香族: Trp、Tyr、Phe。
【0087】
例えば、非保存的置換は、これらの中の1つの分類の1つのメンバーの他の分類からの交換を含むことができる。これらの置換された残基は、非ヒトフィコリン結合ポリペプチドと相同であるヒトフィコリン結合ポリペプチドの領域、又はその分子の非相同領域中に導入され得る。
【0088】
このような変更において、アミノ酸の疎水性親水性指標を考慮することができる。各アミノ酸に、その疎水性及び電荷特性に基づいて疎水性親水性指標が割り当てられている。これらは次の通りである:
イソロイシン(+4.5); バリン(+4.2); ロイシン (+3.8); フェニルアラニン (+2.8); システイン/シスチン (+2.5); メチオニン (+1.9); アラニン (+1.8); グリシン (- 0.4); スレオニン (-0.7); セリン (-0.8); トリプトファン (-0.9); チロシン (-1.3); プロリン (-1.6); ヒスチジン (-3.2); グルタマート (-3.5); グルタミン (-3.5); アスパルタート (-3.5); アスパラギン (-3.5); リジン (-3.9); 及びアルギニン (-4.5)。
【0089】
タンパク質に相互作用的生物機能を与えることにおけるアミノ酸の疎水性親水性指標の重要性は、当技術分野で理解されている(例えば、Kyte et al., J. MoI. Biol., 157: 105-131 (1982)を参照されたい)。特定のアミノ酸が、同様の疎水性親水性指標又はスコアを有し、且つ同様の生物活性を有する他のアミノ酸に置換され得ることは周知である。疎水性親水性指標に基づいた置換において、疎水性親水性指標の違いが+2以内であるアミノ酸の置換が好適であり、+1以内であるものが特に好適であり、+0.5以内であるものがより特に好適である。
【0090】
今回の場合など、特に置換によって作られる生物学的、機能的に等価なタンパク質又はペプチドが免疫具現化における使用を対象とする場合に、親水性に基づいて同類アミノ酸の置換を効率的に行うことができることはまた、技術的に理解されている。その隣接アミノ酸の親水性によって支配されるタンパク質の最も高い局所平均親水性は、その免疫原性及び抗原性と、すなわち、タンパク質の生物学的特性と相関がある。
【0091】
次の親水性値は、アミノ酸残基に割り当てられている: アルギニン (+3.0); リジン ('3.O); アスパルタート (+3.0+1); グルタマート (+3.0+1); セリン (+0.3); アスパラギン (+0.2); グルタミン (+0.2); グリシン (0); スレオニン (-0.4); プロリン (-0.5+1); アラニン (-0.5); ヒスチジン (-0.5); システイン (-1.0); メチオニン (-1.3); バリン (-1.5); ロイシン (-1.8); イソロイシン (- 1.8); チロシン (-2.3); フェニルアラニン (-2.5); トリプトファン (-3.4)。同様の親水性値に基づいて置換することにおいて、親水性値の差が+2以内であるアミノ酸の置換が好適であり、+1以内であることが特に好適であり、+0.5以内であることがより特に好適である。親水性に基づいた一次アミノ酸配列からエピトープを同定することもまたできる。これらの領域は、「エピトープコア領域」とも呼ぶ。
【0092】
当業者は、周知技術を使用して、配列番号1において説明されるポリペプチドの適した変異体を決定することができるであろう。活性を損失することなく置換することができる分子の適した領域を同定するために、当業者は活性に重要と考えられていない領域を標的とするであろう。例えば、同一種又は他種由来の同様の活性を有する類似ポリペプチドが知られている場合、当業者はフィコリン結合ポリペプチドのアミノ酸配列をこのような類似ポリペプチドと比較するかもしれない。このような比較で、類似ポリペプチド間で保存されている分子の残基及び部分を同定することができる。当然のことながら、このような類似ポリペプチドに関連がある、保存されていないフィコリン結合ポリペプチドの領域における変化は、フィコリン結合ポリペプチドの生物活性及び/又は構造に悪影響を与える可能性は低いであろう。当業者は、相対的に保存された領域でさえ、活性を有しながら、化学的に同様のアミノ酸を天然に生じる残基と置換することができることもまた分かるであろう(保存的アミノ酸残基置換)。従って、生物活性又は構造に重要となり得る領域でさえ、生物活性を損失することなく又はポリペプチド構造に悪影響することなく保存的アミノ酸置換に供することができるであろう。
【0093】
さらに、当業者は、類似ポリペプチド中の活性又は構造に重要な残基を同定する構造機能試験を再考察することができる。このような比較を考慮して、類似ポリペプチドの活性又は構造に重要であるアミノ酸残基に対応するフィコリン結合ポリペプチドにおけるアミノ酸残基の重要性を予測することができる。当業者は、本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドのこのような予想される重要なアミノ酸残基に関する化学的に類似のアミノ酸の置換を選択することができる。
【0094】
当業者は、三次元構造及びアミノ酸配列もまた、類似ポリペプチド中のその構造との関連で分析することができる。その情報を考慮して、当業者はその三次元構造に関してフィコリン結合ポリペプチドのアミノ酸残基のアライメントを予測することができる。このような残基は他の分子との重要な相互作用に関与し得るので、当業者は、タンパク質の表面上にあることが予想されるアミノ酸残基の根本的な変化とならないように選択することができる。さらに、当業者は、各目的のアミノ酸残基における単一アミノ酸置換を含有する試験変異体を生成することができる。続いて変異体は、本明細書において説明する活性アッセイを使用してスクリーニングすることができる。このような変異体は、適した変異体について情報を収集するために使用することができるであろう。例えば、活性の損失、望まない活性の減少、又は不適当な活性をもたらす特定のアミノ酸残基への変化を発見した場合、かかる変化を有する変異体を回避することができるであろう。言い換えると、このような通例の実験から収集した情報に基づいて、当業者はさらなる置換を単独で又は他の突然変異と共に回避すべきであるアミノ酸を容易に決定することができる。
【0095】
多数の科学論文が、二次構造の予測を扱ってきた。Moult J., Curr. Op. in Biotech., 7(4):422-427 (1996), Chou et al., Biochemistry, 13(2):222-245 (1974); Chou et al., Biochemistry, 113(2):211-222 (1974); Chou et al., Adv. Enzymol. Relat. Areas MoI. Biol, 47:45-148 (1978); Chou et al., Ann. Rev. Biochem., 47:251-276及びChou et al., Biophys. J., 26:367-384 (1979)を参照されたい。さらに、コンピュータプログラムは、二次構造の予測の補助として現在利用できる。二次構造を予測する1つの方法は、相同的モデル化に基づいている。例えば、30%以上の配列同一性、又は40%以上の配列類似性を有する2つのポリペプチド又はタンパク質はしばしば同様の構造形態を有する。タンパク質構造データベースの最近の発展(PDB)は、ポリペプチド又はタンパク質の構造内の折り畳みの数の予測を含む二次構造の予測の改善を供している。Holm et al., Nucl. Acid. Res., 27(l):244-247 (1999)を参照されたい。一定のポリペプチド又はタンパク質中の折り畳みの数には限りがあり、一度構造の臨界数が分解されると、構造予測の正確性が著しく増大するであろうということが示唆されている(Brenner et al., Curr. Op. Struct. Biol., 7(3):369-376 (1997))。
【0096】
二次構造を予測するさらなる方法は、「スレディング法」を含む(Jones, D., Curr. Opin. Struct. Biol., 7(3):377-87 (1997); Sippl et al., Structre, 4(l): 15-9 (1996)), 「profile analysis」 (Bowie et al., Science, 253: 164-170 (1991); Gribskov et al., Meth. Enzymol., 183: 146-159 (1990); Gribskov et al., Proc. Nat. Acad. Sci., 84(13):4355-4358 (1987)), 及び 「evolutionary liinkage」 (Home, supra, and Brenner, supraを参照されたい)。
【0097】
関連ポリペプチドの同一性及び類似性は、周知の方法によって容易に算出することができる。このような方法は、以下において説明される方法を含むがこれに限定されない。Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analusis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analusis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; Sequence Analusis primaer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York, 1991; 及びCarillo et al., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988)。
【0098】
同一性及び/又は類似性を決定する好適な方法は、試験される配列間の最大の一致を供するようデザインされる。同一性及び類似性を決定する方法は、公的に利用できるコンピュータプログラムにおいて説明される。2つの配列間の同一性及び類似性を決定する好適なコンピュータプログラム方法は、GAPを含むGCG program packageを含むがこれに限定されない(Devereux et al., Nucl. Acid. Res., 12:387 (1984); Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.), BLASTP, BLASTN, and FASTA (Altschul et al., J. MoI. Biol., 215:403-410 (1990))。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information (NCBI)及び他の供給源から公的に利用できる(BLAST Manual, Altschul et al. NCB/NLM/NIH Bethesda, Md. 20894; Altschul et al., supra)。周知のSmith Waterman アルゴリズムもまた同一性を決定するために使用することができる。
【0099】
2つのアミノ酸配列を整列するための特定のアライメント模式図は、2つの配列の短領域のみの一致をもたらし、2つの全長配列間には顕著な関係がなくてもこの小さな整列領域は非常に高い配列同一性を有するであろう。従って、好適な実施形態において、選択アライメント方法 (GAPプログラム)は、標的ポリペプチドの少なくとも50個の近接アミノ酸に及ぶアライメントをもたらすであろう。例えば、コンピュータアルゴリズム GAP (Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.)を使用して、パーセント配列同一性が決定される2つのポリペプチドを、それらの各アミノ酸の最適な一致(アルゴリズムによって決定される「一致スパン」)のために整列させる。ギャップ開始ペナルティ(gap opening penalty)(3回算出される, 平均対角(diagonal)であり; 「平均対角」とは、使用されている比較マトリックスの対角の平均であり; 「対角」とは、特定の比較マトリックスによって各完全なアミノ酸一致に割り当てられるスコア又は数である)及びギャップ伸長ペナルティ(通常、{割合(1/10)}×ギャップ開始ペナルティである)、及び例えばPAM 250又はBLOSUM 62等の比較マトリックスを、アルゴリズムと併せて使用する。標準比較マトリックス(Dayhoff et al., Atlas of Protein Sequence and Structure, vol. 5, supp.3 (1978) for the PAM 250 cpmparison matrix; Henikoff et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 89: 10915-10919 (1992) for the BLOSUM 62 comparison matrixを参照されたい)は、アルゴリズムによっても使用できる。
【0100】
ポリペプチドの配列比較のための好適なパラメータは、以下を含む: Algorithm : Needleman et al., J. MoI. Biol, 48:443-453 (1970); Comparison matrix: BLOSUM 62 from Henikoff et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10915-10919 (1992); ギャップペナルティ: 12、 ギャップ長ペナルティ: 4、 類似性の閾値: 0。
【0101】
GAPプログラムは、上記パラメータと共に有用である。上記パラメータは、(末端ギャップに関するペナルティがないと共に)GAPアルゴリズムを使用したポリペプチド比較のためのデフォルトパラメータである。
【0102】
核酸分子配列比較のための好適なパラメータは、以下を含む: Algorithm : Needleman et al., J. MoI Biol., 48:443-453 (1970); 比較マトリックス: 一致= + 10、不一致= O、ギャップペナルティ: 50、ギャップ長ペナルティ: 3。
【0103】
GAPプログラムは、上記パラメータと共に有用でもある。上記パラメータは、核酸分子比較のためのデフォルトパラメータである。
【0104】
他の好例のアルゴリズム、ギャップ開始ペナルティ、ギャップ伸長ペナルティ、比較マトリックス、類似性の閾値等を使用することができ、Program Manual, Wisconsin Package, Version 9, September, 1997において説明されるものが含まれる。行われる特定の選択は当業者に明らかであり、例えばDNAとDNA、タンパク質とタンパク質、タンパク質とDNA; さらに、比較が所定の配列ペア間であるか(この場合、GAP又はBestFitが通常好適である)又は1つの配列と大規模な配列データベース間であるか(この場合、FASTA又はBLASTAが好適である)等の行われる特定の比較次第であろう。
【0105】
本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドの調製
本発明はまた、上記の本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドを調製する方法に関する。本明細書において説明する本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドは、組換え型核酸技術によって産生することができる。一般に、クローン化野生型FAP核酸配列は、目的のタンパク質をコードするために修飾される。続いてこの修飾された配列は、順に発現ベクター中に挿入され、形質転換又は宿主細胞中に形質移入される。より高等の真核細胞、特に培養哺乳類細胞は、宿主細胞として好適である。ヒトFAPに関する完全なアミノ酸及びヌクレオチド配列を、配列番号1及び配列番号2で供する。
【0106】
アミノ酸配列の変更は、様々な技術によって達成されることができる。核酸配列の修飾は、部位特異的変異誘発によって生じさせることができる。部位特異的変異誘発に関する技術は当技術分野で周知であり、例えば、Zoller and Smith (DNA 3:479-488, 1984) 又は「Splicing by extension overlap」, Horton et al., Gene 77, 1989, pp. 61-68において説明される。従って、FAPのヌクレオチド及びアミノ酸配列を使用して、選択の変更を導入することができる。同様に、特異的プライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応を使用したDNAコンストラクトを調製する手順は、当業者に周知である(PCR プロトコールs, 1990, Academic Press, San Diego, California, USAを参照されたい)。
【0107】
本発明のポリペプチドは、天然発生でないアミノ酸残基を含むこともできる。天然発生でないアミノ酸は、βアラニン、デスアミノヒスチジン(desaminohistidine)、トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノプロリン,-シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、N-メチルグリシン、アロ-スレオニン、メチルスレオニン、ヒドロキシエチルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトログルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、カルボン酸チアゾリジン、デヒドロプロリン、3-及び4-メチルプロリン、3,3-ジメチルプロリン、tert-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、及び4-フルオロフェニルアラニンを含むがそれに限定されない。天然発生でないアミノ酸残基をポリペプチド中に取り込むための複数の方法は、当技術分野で周知である。例えば、化学的にアミノアシル化抑制tRNAを使用して、ナンセンス突然変異が抑制されるインビトロ(in vitro)での系を採用することができる。アミノ酸の合成及びtRNAのアミノアシル化のための方法は、当技術分野で周知である。ナンセンス突然変異を含有するプラスミドの転写及び翻訳は、大腸菌(E. coli)S30 抽出物及び市販の酵素及び他の試薬を含む無細胞系において行われる。ポリペプチドをクロマトグラフィーによって精製する。例えば、Robertson et al., J. Am. Chem. Soc. 113:2722, 1991; Ellman et al., Methods Enzymol 202:301, 1991; Chung et al., Science 259:806-9, 1993; 及び Chung et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10145-9, 1993を参照されたい。第二の方法において、突然変異mRNA及び化学的にアミノアシル化された抑制tRNAの微量注入によって、アフリカツメガエル卵母細胞において翻訳を実行する(Turcatti et al., J. Biol. Chem. 271: 19991-8, 1996)。第三の方法において、置換される天然のアミノ酸(例えば、フェニルアラニン)のない状態且つ目的の天然発生でないアミノ酸(例えば、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、又は4-フルオロフェニルアラニン)の存在下で、大腸菌(E. coli)細胞を培養する。天然発生でないアミノ酸は、その天然の対応物の代わりにポリペプチド中に取り込まれる。Koide et al., Biochem. 33:7470-6, 1994を参照されたい。天然に生じるアミノ酸残基は、インビトロ(in vitro)における化学修飾によって天然発生でない種に転換され得る。化学修飾は、さらに置換の範囲を伸長するために、部位特異的変異誘発と組合せることができる(Wynn and Richards, Protein Sci. 2:395-403, 1993)。
【0108】
本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードする核酸コンストラクトは、例えば標準技術に従ってゲノム又はcDNAライブラリーを調製すること、及び合成オリゴヌクレオチドプローブを使用したハイブリダイゼーションによってポリペプチドの全て又は一部をコードするDNA配列のためにスクリーニングすることによって得られる、ゲノム又はcDNA起源と適宜成り得る(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd. Ed. Cold Spring Harbor Labora-tory, Cold Spring Harbor, New York, 1989を参照されたい)。
【0109】
フィコリン結合ポリペプチドをコードする核酸コンストラクトは、例えば、Beaucage and Caruthers, Tetrahedron Letters 22 (1981), 1859-1869によって説明される亜りん酸アミダイト(phosphoamidite)法、 又はMatthese et al., EMBO Journal 3 (1984), 801-805によって説明される方法等の確立された標準的な方法によって合成的に調製することもできる。亜りん酸アミダイト法に従って、オリゴヌクレオチドを、例えば自動DNAシンセサイザー中で合成し、精製し、アニール化し、結合し、そして適したベクター中でクローン化する。本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列は、例えば米国特許第4,683,202号, Saiki et al., Science 239 (1988), 487-491, 又は Sambrook et al., supraによって説明される、特異的プライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応によって調製することもできる。
【0110】
さらに、核酸コンストラクトは、標準技術に従って、合成の、ゲノム又はcDNAの起源の断片であって、核酸コンストラクトの全体の様々な部分に相当する断片を(適切に)混合することによって調製される、混合性合成及びゲノム、混合性合成及びcDNA又は混合性ゲノム及びcDNAの起源と成り得る
【0111】
核酸コンストラクトは、好ましくはDNAコンストラクトである。本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドの生成における使用のためのDNA配列は、FAPのアミノ終端おいてプレプロポリペプチドを典型的にコードし、適切な翻訳後のプロセシング及び宿主細胞からの分泌が得られるであろう。
【0112】
本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列は、任意のベクターである組換え型ベクター中に通常挿入され、好都合に組換え型DNA手順に供することができ、このベクターの選択はそれが導入される宿主細胞に度々依存するであろう。従って、ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、染色体外のものとして存在し、その複製が染色体複製から独立しているベクター、例えば、プラスミドとすることができる。あるいは、ベクターは、宿主細胞中に導入される場合に、宿主細胞ゲノム中に組み込まれそれが組み込まれている染色体と共に複製されるものである。
【0113】
ベクターは、好ましくは、本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列が、DNAの転写に必要なさらなるセグメントに動作可能に結合されている、発現ベクターである。一般に、発現ベクターは、プラスミド又はウイルス性DNAに由来する、又は双方の要素を含むことができる。用語「動作可能に結合」とは、セグメントが配置され、それらが意図される目的のために協調して機能し、例えば、ポリペプチドをコードするDNA配列を通して転写がプロモーター中で開始し進行することを示す。
【0114】
本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドの発現における使用のための発現ベクターは、クローン化遺伝子又はcDNAの転写を指示する能力があるプロモーターを含むことができる。プロモーターは、選択した宿主細胞において転写活性を示す任意のDNA配列とすることができ、宿主細胞と相同又は異種性のタンパク質をコードする遺伝子に由来することができる。
【0115】
哺乳類細胞においてヒトフィコリン結合ポリペプチドをコードするDNAの転写を指示するのに適したプロモーターの例は、SV40 プロモーター (Subramani et al., MoI. Cell Biol. 1 (1981), 854 -864), the MT-1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター(Palmiter et al., Science 222 (1983), 809-814), CMVプロモーター(Boshart et al., Cell 41: 521-530, 1985)又はアデノウイルス 2 主要後期プロモーター(Kaufman and Sharp, MoI. Cell. Biol, 2: 1304-1319, 1982)である。
【0116】
昆虫細胞における使用に適したプロモーターの例は、ポリヘドリンプロモーター(US 4,745,051; Vasuvedan et al., FEBS Lett. 311, (1992) 7-11)、P10プロモーター(J. M. Vlak et al., J. Gen. Virology 69, 1988, pp. 765-776)、 オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica) 多核体病ウイルス塩基性タンパク質プロモーター(EP 397 485)、バキュロウイルス極初期(immediate early)遺伝子 1 プロモーター(US 5,155,037; US 5,162,222)、又はバキュロウイルス 39K 後初期(delayed-early)遺伝子プロモーター(US 5,155,037; US 5,162,222)である。
【0117】
酵母宿主細胞における使用に適したプロモーターの例は、酵母解糖遺伝子(Hitzeman et al., J. Biol. Chem. 255 (1980), 12073 - 12080; Alber and Kawasaki, J. MoI. Appl. Gen. 1 (1982), 419-434)又はアルコール脱水素酵素遺伝子(Young et al., in Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals (Hollaender et al, eds.), Plenum Press, New York, 1982)由来のプロモーター、又はTPIl(US 4,599,311)又はADH2-4C(Russell et al., Nature 304 (1983), 652-654) プロモーターを含む。
【0118】
糸状菌宿主細胞における使用に適したプロモーターの例は、例えばADH3プロモーター(McKnight et al., The EMBO J. 4 (1985), 2093-2099) 又はtpiAプロモーターである。他の有用なプロモーターの例は、アスペルギルス・オリザエ・TAKA(A. oryzae TAKA)アミラーゼ、リゾムコール・ミーヘイアスパラギン酸(Rhizomucor miehei aspartic)プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー・ニュートラル(A. niger neutral)α−アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー酸安定(A. niger acid stable)α−アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(A. niger)又は糸状菌(A. awamori )グルコアミラーゼ(gluA)、リゾムコール・ミーヘイリパーゼ(Rhizomucor miehei lipase)、アスペルギルス・オリザエ(A. oryzae)アルカリプロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエ・トリオース(A. oryzae triose)リン酸イソメラーゼ又はアスペルギルス・ニダランス(A. nidulans)アセトアミダーゼをコードする遺伝子由来のものである。TAKAアミラーゼ及びgluA プロモーターが好適である。適したプロモーターは、例えば、欧州特許第238 023号及び第383 779号において言及される。
【0119】
本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列はまた、必要に応じて、例えばヒト成長ホルモンターミネーター(Palmiter et al., Science 222, 1983, pp. 809-814) 又はTPI1(Alber and Kawasaki, J. MoI. Appl. Gen. 1, 1982, pp. 419-434)又はADH3(McKnight et al., The EMBO J. 4, 1985, pp. 2093-2099)ターミネーター等の適したターミネーターに動作可能に結合することができる。発現ベクターはまた、プロモーターの下流且つFAP配列のための挿入部位の上流に位置する一組のRNAスプライス部位を含む。好適なRNAスプライス部位は、アデノウイルス及び/又は免疫グロブリン遺伝子から得られてよい。また、挿入部位の下流に位置するポリアデニル化シグナルが、発現ベクター中に含有されてよい。特に好適なポリアデニル化シグナルは、SV40由来の初期又は後期ポリアデニル化シグナル(Kaufman and Sharp, 同書)、アデノウイルス5 Elb 領域由来のポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモン遺伝子ターミネーター(DeNoto et al. Nucl. Acids Res. 9:3719-3730, 1981)又はヒトFAP遺伝子又はウシFAP遺伝子由来のポリアデニル化シグナルを含む。発現ベクターは、例えばアデノウイルス 2 三分裂(tripartite)リーダー等の、プロモーターとRNAスプライス部位との間に位置する非翻訳領域ウイルス性リーダー配列、及び例えばSV40 エンハンサー等のエンハンサー配列もまた含む。
【0120】
宿主細胞の分泌経路中に本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドを指示するために、分泌シグナル配列(リーダー配列, プレプロ配列又はプレ配列としても知られる)を、組換え型ベクター中に供することができる。分泌シグナル配列は、正確な読み枠において本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列に結合される。分泌シグナル配列は通常、ペプチドをコードするDNA配列の5'に位置する。分泌シグナル配列は通常は、そのタンパク質と結合する又は他の分泌タンパク質をコードする遺伝子に由来してよい。
【0121】
酵母細胞からの分泌のために、分泌シグナル配列は、発現された本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドの細胞分泌経路中への効率的な方向性を保証する、任意のシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドは、天然に生じるシグナルペプチド、又はその機能的部分であってよく、又は合成ペプチドであってよい。適したシグナルペプチドは、アルファ-因子シグナルペプチド(US 4,870,008を参照されたい)、マウス唾液アミラーゼのシグナルペプチド(O. Hagenbuchle et al., Nature 289, 1981, pp. 643-646を参照されたい)、修飾カルボキシペプチダーゼシグナルペプチド(L.A. VaIIs et al., Cell 48, 1987, pp. 887-897を参照されたい)、酵母BARlシグナルペプチド(WO 87/02670を参照されたい)、又は酵母アスパラギン酸プロテアーゼ 3 (YAP3)シグナルペプチド(M. Egel-Mitani et al., Yeast 6, 1990, pp. 127-137を参照されたい)であることが分かっている。
【0122】
酵母における効率的な分泌のために、リーダーペプチドをコードする配列を、シグナル配列の下流及び本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列の上流中に挿入することもできる。リーダーペプチドの機能は、発現ペプチドを小胞体からゴルジ体へ、さらに培地中への分泌(すなわち、細胞壁を通って又は少なくとも細胞膜を通して酵母細胞の細胞膜周辺腔中への、本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドの排出)のために分泌小胞へ指示することができる。リーダーペプチドは、酵母アルファ-因子リーダーとすることができる(その使用は、例えば、US 4,546,082, US 4,870,008, EP 16 201, EP 123 294, EP 123 544 及びEP 163 529において説明される)。あるいは、リーダーペプチドは、合成リーダーペプチド、つまり自然において発見することができないリーダーペプチドとすることができる。合成リーダーペプチドは、例えば、国際公開公報第89/02463号又は第92/11378号において説明されるように構築される。
【0123】
糸状菌における使用に関して、シグナルペプチドは、好都合には、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)アミラーゼ又はグルコアミラーゼをコードする遺伝子、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ又はプロテアーゼ又はヒュウーミコーラ・ラニュギノサ(Humicola lanuginosa)リパーゼをコードする遺伝子に由来し得る。シグナルペプチドは、好ましくは、アスペルギルス・オリザエ・TAKA(A. oryzae TAKA)、アスペルギルス・ニガー・ニュートラル(A. niger neutral)アルファ-アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー・酸安定(A. niger acid-stable)アミラーゼ、又はアスペルギルス・ニガー(A. niger)グルコアミラーゼをコードする遺伝子に由来する。適したシグナルペプチドは、例えば、欧州特許第238 023号及び第215 594号に開示される。
【0124】
昆虫細胞における使用に関して、シグナルペプチドは、好都合には、例えば鱗翅目マンドュカ・セクタ・アヂポカイネティック(Manduca sexta adipokinetic)ホルモン前駆体シグナルペプチド(US 5,023,328を参照されたい)等、昆虫遺伝子に由来する(WO 90/05783を参照されたい)。
【0125】
本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列、プロモーター及び任意にはターミネーター及び/又は分泌シグナル配列をそれぞれ結合する、且つ複製に必要な情報を含有する適したベクター中にそれらを挿入するために使用される手順は、当業者に周知である(例えば, Sambrook et al., Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989を参照されたい)。
【0126】
哺乳類細胞に形質移入し、その細胞に導入されたDNA配列を発現する方法は、例えば、Kaufman and Sharp, J. MoI. Biol. 159 (1982), 601 - 621; Southern and Berg, J. MoI. Appl. Genet. 1 (1982), 327 - 341; Loyter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79 (1982), 422-426; Wigler et al., Cell 14 (1978), 725; Corsaro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7 (1981), 603, Graham and van der Eb, Virology 52 (1973), 456; 及びNeumann et al., EMBO J. 1 (1982), 841-845において説明される。
【0127】
クローン化DNA配列は、例えば、リン酸カルシウム媒介形質移入(Wigler et al., Cell 14:725-732, 1978; Corsaro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7:603-616, 1981; Graham and Van der Eb, Virology 52d:456-467, 1973)又は電気穿孔 (Neumann et al., EMBO J. 1:841-845, 1982) によって培養哺乳類細胞中に導入される。外因性DNAを発現する細胞を同定し選択するために、選択可能な表現型(選択可能なマーカー)を与える遺伝子は、通常目的の遺伝子又はcDNAと共に細胞中に導入される。好適な選択可能なマーカーは、例えばネオマイシン、ハイグロマイシン、及びメトトレキサート等の薬剤に対する耐性を与える遺伝子を含む。選択可能なマーカーは、増幅可能な選択可能マーカーとすることができる。好適な増幅可能な選択可能マーカーは、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)配列である。選択可能なマーカーは、Thillyによって概説されている(Mammalian Cell Technology, Butterworth Publishers, Stoneham, MA, これは参照により本明細書に組み込まれる)。当業者は、適した選択可能なマーカーを容易に選択することができるであろう。
【0128】
選択可能なマーカーは、目的の遺伝子として別々のプラスミド上の細胞中に同時に導入することができるか、又はそれらは同一プラスミド上で導入することができる。同一プラスミド上の場合、選択可能なマーカー及び目的の遺伝子は、異なるプロモーター又は同一プロモーターの制御下にあり、後者の配置はジシストロニックメッセージを生じる。この型のコンストラクトは、当技術分野で周知である(例えば、Levinson and Simonsen, U.S. 4,713,339)。細胞中に導入された混合物に、「キャリアDNA」として周知のさらなるDNAを添加することもまた好適である。
【0129】
細胞がDNAを取り込んだ後に、それらを適切な成長培地において典型的には1-2日間成長させ、目的の遺伝子の発現が開始される。本願明細書において用語「適切な成長培地」とは、細胞の成長及び目的のヒトフィコリン結合ポリペプチドの発現に必要な栄養分及び他の成分を含有する培地を意味する。培地は、通常炭素源、窒素源、必須アミノ酸、必須の糖、ビタミン、塩、リン脂質、タンパク質及び成長因子を含む。続いて、安定して選択可能なマーカーを発現している細胞の成長のために薬剤が選択される。増幅可能な選択可能なマーカーが形質移入された細胞に対して、クローン化配列のコピー数の増加のために選択されるその薬剤濃度を増加することができ、その結果発現レベルを増加する。安定に形質移入された細胞のクローンを、続いて目的のヒトフィコリン結合ポリペプチドの発現のためにスクリーニングする。
【0130】
本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列が導入されている宿主細胞は、翻訳後の修飾ヒトポリペプチドを生成する能力がある任意の細胞であってよく、酵母、真菌及び高等真核性細胞を含む。
【0131】
本発明における使用のための哺乳類株細胞の例は、COS-1 (ATCC CRL 1650)、ベビーハムスター腎臓(BHK)及び293(ATCC CRL 1573; Graham et al., J. Gen. Virol. 36: 59-72, 1977)株細胞である。好適なBHK 株細胞は、tk- ts13 BHK 株細胞(Waechter and Baserga, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 1106-1110, 1982, これは参照により本明細書に組み込まれる) であり、以下BHK 570 細胞と呼ぶ。BHK 570株細胞は、ATCC 受入番号 CRL 10314でAmerican Type Culture Collection, 12301 Parklawn Dr., Rockville, Md. 20852に寄託されている。tk- ts13 BHK 株細胞は、受入番号 CRL 1632でATCC からもまた利用できる。さらに、本発明内で、ラット Hep I (ラット肝細胞腫; ATCC CRL 1600)、 ラット Hep II (ラット肝細胞腫; ATCC CRL 1548)、TCMK (ATCC CCL 139)、ヒト肺(ATCC HB 8065)、NCTC 1469 (ATCC CCL 9.1)、CHO(ATCC CCL 61)及びDUKX 細胞(Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220, 1980) を含む多数の他の株細胞を使用することができる。
【0132】
適した酵母細胞の例は、酵母菌属(Saccharomyces spp.)又は分裂酵母菌属(Schizosac-charomyces spp.)、特にサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)又はサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)株の細胞を含む。異種性DNAで酵母細胞を形質転換し、これにより異種性ポリペプチドを生成するための方法は、例えば、米国特許第4,599,311号、第4,931,373号、第4,870,008号、第5,037,743号、及び第4,845,075号において説明され、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。形質転換された細胞を、選択可能なマーカーによって決定される表現型、通常薬剤耐性又は特定の栄養分、例えば、ロイシンがない状態で成長する能力によって選択する。酵母における使用のための好適なベクターは、米国特許第4,931,373号に開示されるPOT1ベクターである。本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列は、シグナル配列、例えば上記のように任意にはリーダー配列の前に置くことができる。さらに適した酵母細胞の例は、クリベロミセス属(Kluyveromyces)、例えばクルイベロミセス・ラクチス(K. lactis)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、例えば、ハンセヌラ・ポリモルファ(H. polymorpha)、又はピキア属(Pichia)、例えば、ピキア・パストリス(P. pastoris)の株である(Gleeson et al., J. Gen. Microbiol. 132, 1986, pp. 3459-3465; US 4,882,279を参照されたい)。
【0133】
他の真菌細胞の例は、糸状菌の細胞であり、例えば、アスペルギルス属(Aspergillus spp.)、ニューロスポラ属(Neurospora spp.)、フサリウム属(Fusarium spp.)又はトリコデルマ属(Trichoderma spp. )、特に株アスペルギルス・オリザエ(A. oryzae)、アスペルギルス・ニダランス(A. nidulans)又はアスペルギルス・ニガー(A. niger)である。タンパク質の発現のためのアスペルギルス属(Aspergillus spp.)の使用は、例えば、欧州特許第272 277号、第238 023号、第184 438号において説明される。フザリウム・オキシスポラム(F. oxysporum)の形質転換は、例えば、Malardier et al., 1989, Gene 78: 147-156によって説明されるように実行することができる。トリコデルマ属(Trichoderma spp.)の形質転換は、例えば欧州特許第244 234号において説明されるように行うことができる。
【0134】
宿主細胞として糸状菌を使用する場合、本発明のDNAコンストラクトで、好都合にはDNAコンストラクトを宿主染色体に組み込むことによって、形質転換することができ、組換え型宿主細胞が得られる。DNA配列が細胞中で安定に維持される可能性がより高い場合、この組込みが有利であると通常考えられている。DNAコンストラクトの宿主染色体への組込みは、従来の方法に従って、例えば、相同又は異種組換えによって行うことができる。
【0135】
昆虫細胞の形質転換及びその異種性ポリペプチドの生成は、米国特許第4,745,051号; 第4,879,236号; 第5,155,037号; 第5,162,222号; 欧州特許第397,485号に説明されるように行うことができ、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。宿主として使用される昆虫株細胞は、適切には、例えばヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞又はイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)細胞等の鱗翅類株細胞である(US 5,077,214を参照されたい)。培養条件は、適切には、例えば、国際公開公報第89/01029号又は第89/01028号、又は上記参考文献のいずれかにおいて説明される通りとすることができる。
【0136】
上記の形質転換又は形質移入された宿主細胞を続いて、ヒトフィコリン結合ポリペプチドの発現が可能な条件下で適した栄養培地で培養し、その後生じるペプチドの全て又は一部を培養物から回収することができる。細胞を培養するために使用する培地は、例えば適切な栄養を含有する最少培地又は複合培地等の、宿主細胞の成長に適した任意の従来の培地とすることができる。適した培地は市販業者から利用できるか、又は公開された(例えば、American Type Culture Collectionのカタログにおいて)処方に従って調製することができる。細胞によって生成されたヒトフィコリン結合ポリペプチドを、続いて、遠心分離又はろ過によって宿主細胞を培地から分離する工程、上清のタンパク質水性成分を沈殿させる工程、又は例えば、硫酸アンモニウム等の塩でろ過する工程、問題とするポリペプチド型に依存した、様々なクロマトグラフィー、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー等の手順による精製を含む従来の手順によって培地から回収することができる。
【0137】
本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドを生成するために、遺伝子導入動物技術を利用することができる。宿主雌性哺乳類の乳腺内にタンパク質を生成することが好適である。乳腺における発現及びそれに続く目的のタンパク質の乳の中への分泌は、タンパク質を他の源から単離することにおいて直面する多くの困難を克服する。乳は、容易に採取され、大量に利用でき、そして生化学的に十分特徴を有する。さらに、主要乳タンパク質は、乳中に高濃度(典型的には、約1-15 g/l)で存在する。
【0138】
商業的観点から、大量の乳生産量を有する種を宿主として使用することが明らかに好まし。例えばマウスやラット等の小動物を使用することができる(及び原理段階の証拠において好適である)一方で、ブタ、ヤギ、ヒツジ及びウシを含むがそれに限定されない家畜哺乳類を使用することが好適である。ヒツジは、この種における遺伝子組換えの以前の経緯、乳産生量、コスト及びヒツジ乳を採取するための設備の入手しやすさのような因子のために特に好適である(例えば、宿主種の選択に影響する因子の比較に関するWO 88/00239 を参照されたい)。例えばイースト・フライズランド・シープ(East Friesland sheep)等の乳業使用のために繁殖されてきた宿主動物の品種を選択する、又は後日の遺伝子導入系の繁殖によって搾乳用家畜を導入することが通常望ましい。いずれにしても、周知の良好な健康状態の動物を使用すべきである。
【0139】
乳腺において発現を得るために、乳タンパク質遺伝子由来の転写プロモーターを使用する。乳タンパク質遺伝子は、カゼイン(U.S. 5,304,489を参照されたい)、βラクトグロブリン、ラクトアルブミン、及び乳清酸性タンパク質をコードする遺伝子を含む。βラクトグロブリン(BLG)プロモーターが好適である。ヒツジβラクトグロブリン遺伝子の場合は、βラクトグロブリン遺伝子の5'隣接プロモーター及び非翻訳領域部分を含む、例えば-4.25kbp DNA セグメント等の5'隣接配列の最大約5 kbpの大きな部分が好適であるにもかかわらず、遺伝子の5'隣接配列の少なくとも近位の406 bpの領域が通常使用されるであろう(Whitelaw et al., Biochem. J. 286: 31 39 (1992) を参照されたい)。他種由来のプロモーターDNAの同様の断片もまた適する。
【0140】
発現される遺伝子のゲノム領域かもしれない、βラクトグロブリン遺伝子の他の領域も、コンストラクト中に取り込むことができる。技術的に通常認められる、イントロンを欠如するコンストラクトは、例えば、そのようなDNA配列を含むものと比較して発現が乏しい(Brinster et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 836 840 (1988); Palmiter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 478 482 (1991); Whitelaw et al., Transgenic Res. 1: 3 13 (1991); WO 89/01343; 及びWO 91/02318を参照されたい。これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる)。この点について、可能であれば、目的のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子の天然のイントロンの全て又は一部を含有するゲノムの配列を使用することが通常好適であり、従って、例えば、βラクトグロブリン遺伝子由来の少なくとも一部のイントロンのさらなる包含が好適である。このような領域は、ヒツジβラクトグロブリン遺伝子の3'非翻訳領域からイントロンスプライシング及びRNA ポリアデニル化を供するDNAセグメントである。遺伝子の天然の3'非翻訳領域配列に関して置換される場合、このヒツジβラクトグロブリンセグメントは、目的のタンパク質又はポリペプチドの発現レベルの増強及び安定化のいずれもできる。他の実施形態において、FAP配列の開始ATGを囲む領域は、乳特異的タンパク質遺伝子由来の対応する配列と置換される。このような置換は、発現を増強する推定組織特異的開始環境を供する。より小さな領域を置換することができるにもかかわらず、FAPプレプロ及び5'非翻訳領域配列全体を、例えば、BLG遺伝子のものと置換することが好都合である。
【0141】
遺伝子導入動物における本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドの発現に関して、FAPをコードするDNA セグメントが、発現単位を生成するためのその発現に必要なさらなるDNAセグメントに動作可能に結合される。このようなさらなるセグメントは、上記プロモーター、及びmRNAの転写及びポリアデニル化の終了のために供される配列を含む。発現単位は、修飾FAPをコードするセグメントに動作可能に結合された分泌シグナル配列をコードするDNAセグメントをさらに含むことができる。分泌シグナル配列は、天然のFAP分泌シグナル配列か、例えば乳タンパク質等の他のタンパク質のものとすることができる(例えば、von Heijne, Nucl. Acids Res. 14: 4683 4690 (1986); 及び Meade et al., U.S. 4,873,316を参照されたい。これらは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0142】
本質的に任意の連結配列によって発現単位は構築することができるにもかかわらず、遺伝子導入動物における使用のための発現単位の構築は、FAP配列をさらなるDNAセグメントを含有するプラスミド又はファージベクター中に挿入することによって好都合に実行される。乳タンパク質をコードするDNAセグメントを含有するベクターを提供すること、及び乳タンパク質のためのコード配列をFAP変異体のものと置換することが特に好都合であり、その結果、乳タンパク質遺伝子の発現制御配列を含む遺伝子融合が生じる。いずれにしろ、プラスミド又は他のベクターにおける発現単位のクローニングは、FAP配列の増幅を促進する。細菌性(例えば、大腸菌(E. coli))宿主細胞において増幅は好都合に実行され、従って、ベクターは典型的に複製の起源及び細菌性宿主細胞において機能する選択可能なマーカーを含むであろう。発現単位は、続いて選択宿主種の受精卵(初期段階胎仔を含む)中に導入する。異種性DNAの導入は、微量注入法(例えば、U.S. Patent No. 4,873,191)、レトロウイルス感染(Jaenisch, Science 240: 1468 1474 (1988)) 又は胚性幹細胞(ES)を使用した部位特異的組込み(reviewed by Bradley et al., Bio/Technology 10: 534 539 (1992)) を含む複数のルートの中の1つによって達成することができる。卵は、続いて偽妊娠雌の卵管又は子宮中に移植され、所定の期間まで発育させる。それらの生殖系において導入されたDNAを運ぶ子孫は、通常のメンデル遺伝においてDNAを後代に継代することができ、遺伝子導入群を発達させることができる。遺伝子導入動物を生成するための一般的な手順は、当技術分野で周知である(例えば、Hogan et al., Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1986; Simons et al., Bio/Technology 6: 179 183 (1988); Wall et al., Biol. Reprod. 32: 645 651 (1985); Buhler et al., Bio/Technology 8: 140 143 (1990); Ebert et al., Bio/Technology 9: 835 838 (1991); Krimpenfort et al., Bio/Technology 9: 844 847 (1991); Wall et al., J. Cell. Biochem. 49: 113 120 (1992); U.S. 4,873,191; U.S. 4,873,316; WO 88/00239, WO 90/05188, WO 92/11757; 及びGB 87/00458を参照されたい)。異種DNA配列を哺乳類及びそれらの生殖細胞中に導入するための技術は、元々マウスにおいて発展されていた(例えば、., Gordon et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 7380 7384 (1980); Gordon and Ruddle, Science 214: 1244 1246 (1981); Palmiter and Brinster, Cell 41: 343 345 (1985); Brinster et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 4438 4442 (1985); 及びHogan et al. (同書)を参照されたい)。これらの技術は、続いて家畜種を含む大動物との使用のために採用される(例えば、WO 88/00239, WO 90/05188, 及びWO 92/11757; 及び Simons et al., Bio/Technology 6: 179 183 (1988) を参照されたい)。要約すると、遺伝子導入マウス又は家畜の発生において今日まで使用される最も効率的なルートで、確立された技術に従って受精卵の前核の1つの中に目的のDNAの数百の線状分子が注入される。接合体の細胞質中へのDNAの注入もまた、利用することができる。
【0143】
遺伝子導入植物における生成もまた、利用することができる。発現は、全体的か又は例えば塊茎等の特定の器官に向けることができる(Hiatt, Nature 344:469 479 (1990); Edelbaum et al., J. Interferon Res. 12:449 453 (1992); Sijmons et al., Bio/Technology 8:217 221 (1990); 及びEP 0 255 378を参照されたい)。
【0144】
FAP精製
本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドを、細胞培地又は乳から回収することができる。本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドは、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換性, 親和性, 疎水性, 等電点電気泳動, 及び分子ふるいクロマトグラフィー)、電気泳動手順(例えば、調製用等電点電気泳動(IEF), 選択的溶解(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、又は抽出(例えば、Protein Purification, J.-C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照されたい)を含むがそれに限定されない、当技術分野で周知の様々な手順によって精製することができる。好ましくは、抗FAP抗体カラム上で親和性クロマトグラフィーによってそれらを精製することができる。例えば高速液体クロマトグラフィー等の、従来の化学精製手段によってさらなる精製を達成することができる。クエン酸バリウム沈殿を含む精製の他の方法は、当技術分野で周知であり、本明細書の新規フィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドの精製に適用することができる(例えば、Scopes, R., Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y., 1982を参照されたい)。
【0145】
治療目的に関して、本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドが実質的に純粋であることが好適である。従って、本発明の好適な実施形態において、本発明のポリペプチド及び本発明の他のポリペプチドは少なくとも約90-95%均一まで、好ましくは少なくとも約98% 均一まで精製される。純度は、例えば、ゲル電気泳動及びアミノ末端アミノ酸配列決定によって評価することができる。
【0146】
用語「単離ポリペプチド」とは、(1) それが自然に結合されるポリヌクレオチド、脂質、炭水化物又は他の物質(すなわち、混入物)の少なくとも約50パーセントから分離されている本発明のポリペプチドを意味する。好ましくは、単離ポリペプチドは、その天然環境において発見され、その治療、診断、予防又は調査使用を妨害する可能性のある任意の他の混入ポリペプチド又は他の混入物から実質的に遊離している。
【0147】
用語「微生物」とは、本願明細書において、細菌、真菌、古細菌、原生生物、微小植物及び動物(例えば、緑藻類又はプランクトン等)、プラナリア及びアメーバを意味する。病原体微生物は、本定義内に含まれる。
【0148】
アッセイ
SDS-PAGE及びウエスタンブロッティングのための一般的な手順:
電気泳動を、10 % 又は4-12 % (w/v) Bis-トリス ポリアクリルアミド-ゲル上で非連続的緩衝液と共に、NuPAGE(R)システム(Invitrogen)を使用して製造者に推奨されるとおり行った。ポリビニリデンジフルオリド膜(PVDF-HyBond, GE-healthcare, Hilleroed, Denmark, cat. no. RPN303F)、2 μg/mlのビオチン標識一次モノクローナル抗体及びPBS、0.05 % Tween20中で1 : 1500に希釈したHRP 複合ストレプトアビジン(P0397, Dako, Glostrup, Denmark) による二次可視化を使用して、ウエスタンブロッティングを行った。アセトン中の0.04 % 3-アミノ-9-エチルカルバゾール(Sigma-aldrich, Broenby, Denmark, cat. no. A5754-100G)及び50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液 pH 5中の0.015 % H2O2で膜を展開した。
【0149】
免疫共沈降:
マンノース結合レクチン(MBL)血清複合体の免疫沈降: 1 mlの正常ヒト血清をTBS(10 mM トリス, 140 mM NaCl, pH 7.5)中で1: 1に希釈し、5 μgのMBL 特異的マウスモノクローナル抗体Hyb 131-11(Bioporto, Gentofte, Denmark)で4℃で1時間回転してインキュベートした。
【0150】
フィコリン-2血清複合体の免疫沈降: 0.5 mlの正常ヒト血清をTBS (10 mM トリス, 140 mM NaCl, pH 7.5)中に1: 1に希釈し、4℃で1時間5 μgのフィコリン-2特異的マウスモノクローナル抗体Hyb219(Munthe-Fog L, et al)で、回転してインキュベートした。
【0151】
フィコリン-3 血清複合体の免疫沈降: 0.2 mlの正常ヒト血清をTBS(10 mM トリス, 140 mM NaCl, pH 7.5)中で1: 1に希釈し、4℃で1時間、5 μgのフィコリン-3 特異的マウスモノクローナル抗体Hyb 334で回転してインキュベートした(Munthe-Fog L, et al)。
【0152】
免疫複合体沈殿を、ヒツジ抗マウスIgG 複合磁気 dynal ビーズ(Dynal-Invitrogen, Cat. No. 112.02D)で行い: 血清及び一次抗体でインキュベーション後(上記の通り)、 5x107 ヒツジ 抗マウス複合磁気 dynal ビーズを添加し、4℃で30分間インキュベートした。ビーズを磁力的に分離し、TBS-tween-Ca2+(10 mM トリス, 140 mM NaCl, 0.05 % tween, 5 mM CaCl2, pH 7.5) で3回洗浄し、SDS-負荷した緩衝液中で最終的に沸騰させ、SDS-PAGE及びビオチン標識モノクローナル抗体 mAb-8B3(MASP-1及び-3で共有される重鎖/A鎖上でエピトープと反応する)でのウエスタンブロッティングで分析した。
【0153】
FAPの免疫親和性精製: 製造者に推奨されるとおり、10 mgのmAb-8B3 (FAP, MASP-1及び-3 によって共有される重鎖/A鎖上でエピトープと反応する) 又は10 mgのウサギポリクローナル抗FAP抗体をCNBr活性化セファロースに結合させ(GE-healthcare, Hilleroed, Denmark, cat. no. 17-0430-01)、カラム上に充填した。
【0154】
血清からの精製: 150 mlの正常ヒト血清のプールを、TBS + 0.5 M NaCl + 10 mM EDTA (10 mM トリス, 640 mM NaCl, 10 mM EDTA, pH 7.5) で1 : 1に希釈し、上記のカラム上に負荷した。カラムを 1 lのTBS + 0.5 M NaCl + 10 mM EDTA で洗浄し、1 ml 画分を1 M グリシン- HCl、 pH 2.5で溶出させ、SDS-PAGE及びビオチン標識モノクローナル抗体mAb-8B3でのウエスタンブロッティングによって分析した。
【0155】
組換え型FAPの精製: 組換え型FAP(rFAP) を発現しているチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)由来の2-3 lの培養上清(CHO 血清を含まない培地/ Gibco-Invitrogen, cat. no. 12651-014由来)を上記の抗体カラム上に負荷した。カラムを1.5 lのTBS + 0.5 M NaCl + 10 mM EDTAで洗浄し、1 ml 画分を1 M グリシン- HCl、pH 2.5で溶出した。溶出画分を、SDS-PAGE及びクーマシー染色によって分析した。
【0156】
FAPの組換え型発現: pcDNA5/FRT ベクター(Invitrogen, cat. no. V6010-20)中に挿入した全長cDNAをGenscript (Genscript, New Jersey, USA)に注文し、pOG44 ベクター(Invitrogen, cat. no. V6005-20) でCHO Flp-In株細胞(Invitrogen, cat. no. R758-07) 中に同時導入し、選択し製造者によって推奨されるとおりクローン化した(Invitrogen)。細胞をFreestyle CHOの血清を含まない培地(Invitrogen, cat. no. 12651-014) 中で成長させ、培養上清を回収し分析した。
【0157】
モノ及びポリクローナル抗体の生成: FAP特異的17C末端残基のペプチドコンストラクト(Genscript, New Jersey, USAに注文した)を、製造者によって推奨されるとおり、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルとのシステインカップリング方法を使用して、破傷風及びジフテリアのトキソイド形態に結合させた(Thermo Fisher Scientific/Pierce, Illinois, USA)。
【0158】
6匹のマウス及び2頭のウサギをそれぞれ、Al(OH)3上に吸着された25 μg 抗原及びFreundsの不完全アジュバントで、3回免疫化した(14日間隔で)。ポリクローナル抗体価を、タンパク質キャリアに結合された異なるFAPペプチドでのELISAを使用して評価した。ポリクローナルウサギ抗血清(≒10 ml)を、第一、第ニ及び第三の免疫化の14日後に回収した。
【0159】
2匹のマウスを、モノクローナル抗体の生成のために使用した。融合の4日前に、マウスに25 μg 抗原の静脈内注入を行った。他で説明されるように融合を行った(Kohler, G. and C. Milstein. 1975. Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity. Nature 256:495-497)。
【0160】
異なるタンパク質担体結合されたペプチドに対する選択的ELISAスクリーニングによって、クローンを選択した。
【0161】
機能的補体アッセイ: FAPの機能を検討するために、フィコリン-3及び MBL ホモ接合型欠乏血清を使用した。
【0162】
フィコリン-3 アッセイ: Maxisorp プレート(NUNC, Roskilde, Denmark, cat. no. 439454)を、コーティング緩衝液(15 mM Na2CO3, 35 mM NaHCO3, pH 9.5)中で、5 μg/mlのアセチル化ウシ血清アルブミンで12時間4℃でコーティングした。バルビタール/tween 緩衝液(4 mM バルビタール, 145 mM NaCl, 2 mM CaCl2, 1 mM MgCl2, pH 7.4 + 0.05% Tween)中での4回のブロッキング/洗浄後、組換え型ヒトフィコリン3 を500ng/ml I バルビタール /tween 緩衝液に添加し、1.5時間20℃で振盪しながらインキュベートした。バルビタール /tween 緩衝液中での2回のプレートの洗浄後、血清不含有培地上清として組換え型FAP、ヒトMASP-1、-2又は-3を一方の次元に沿って別々のプレート上で段階希釈で添加し、振盪しながら20℃で1時間インキュベートした。バルビタール /tween 緩衝液中での2回のプレートの洗浄後、フィコリン-3 又は MASP-2欠乏血清をプレート上で段階希釈で他方の次元に沿ってに添加し、37℃で30分間インキュベートした。バルビタール /tween 緩衝液中での4回のプレートの洗浄後、補体因子C4の析出を、1 :2000に希釈したヒトC4cへのポリクローナルウサギ抗体(Dako, Glostrup, Denmark cat. no Q0369)での20℃で1時間のインキュベーションによって測定し、続いて4つの洗浄工程及び西洋ワサビペルオキシダーゼ複合ブタ抗ウサギ抗体(Dako, Glostrup, Denmark cat. no P0399)での20℃で45分間のインキュベーションを行った。0.12 %o (v/v) H2O2を有するクエン酸緩衝液(35 mM クエン酸, 65 mM Na2PO4, pH 5)中に溶解したlOOμl/ウェルのオルト-フェニレン-ジアミン(OPD)(0.4 mg/ml)でプレートを展開したことによってシグナルを得た。酵素反応を1 M H2SO4 で停止し、光学濃度(OD)レベルを、V-max Kinetic-reader (Molecular Devices) を使用して490 nm-650 nmで測定した。
【0163】
マンノース結合レクチンアッセイ: Maxisorp プレート (NUNC, Roskilde, Denmark, cat. no. 439454)を、コーティング緩衝液(15 mM Na2CO3, 35 mM Na2CO3, pH 9.5)中で4℃で12時間10 μg/mlでマンナン(Sigma-aldrich, Broenby, Denmark, cat. no. M7504-1G)でコーティングした。バルビタール /tween 緩衝液(4 mM バルビタール , 145 mM NaCl, 2 mM CaCl2, 1 mM MgCl2, pH 7.4 + 0.05% Tween)中での4回のブロッキング/洗浄後、0.5 μg/ml l バルビタール /tween 緩衝液に組換え型ヒトマンノース結合レクチンを添加し、20℃で振盪しながら1.5時間インキュベートした。バルビタール /tween 緩衝液中でのプレートの2回の洗浄後、血清不含有培地上清としての組換え型FAP、ヒトMASP-1、-2又は-3を、一方の次元に沿って別々のプレート上で段階希釈で添加し、20℃で振盪しながら1時間インキュベートした。バルビタール /tween 緩衝液中でプレートを2回洗浄後、MBL 又は MASP-2欠乏血清を、段階希釈で他方の次元に沿ってプレート上に添加し、45分間37℃でインキュベートした。バルビタール /tween 緩衝液中で4回プレートを洗浄後、補体因子 C4の析出を、1:2000に希釈したヒト C4cへのポリクローナルウサギ抗体(Dako, Glostrup, Denmark cat. no Q0369)で20℃で1時間のインキュベーションによって測定し、続いて4回の洗浄工程及び西洋ワサビペルオキシダーゼ複合ブタ抗ウサギ抗体(Dako, Glostrup, Denmark cat. no P0399) でのインキュベーションを20℃で45分間行った。0.12 %o (v/v) H2O2を有するクエン酸緩衝液(35 mM クエン酸, 65 mM Na2PO4, pH 5)中に溶解したオルト-フェニレン-ジアミン(OPD)(0.4 mg/ml)の100 μl/ウェルでプレートを展開し、シグナルを得た。酵素反応を1 M H2SO4で停止し、光学濃度(OD)レベルを490 nm-650 nmで、V-max Kinetic-reader(Molecular Devices) を使用して測定した。
【0164】
遺伝子型判定アッセイ: 生物学的アッセイを使用して、個体において遺伝子型を決定する異なる遺伝子型判定アッセイを行うことができる。例えば以下の異なる種類のアッセイを使用することができる:
-ハイブリダイゼーションに基づく方法
ダイナミックアレル特異的ハイブリダイゼーション
分子ビーコン
SNPマイクロアレイ
-酵素に基づく方法
制限断片長多型
PCRに基づく方法
Flap エンドヌクレアーゼ
プライマー伸長
5'-ヌクレアーゼ
オリゴヌクレオチドリガーゼアッセイ
-DNAの物理的特性に基づく他の増幅後の方法
一本鎖立体構造多型
温度勾配ゲル電気泳動
変性高速液体クロマトグラフィー
増幅産物全体の高分解能融解
SNPIex
-配列決定
【0165】
投与及び医薬組成物
組合せ処置
本明細書に定義されるフィコリン結合ポリペプチドは、フィコリン-1、2、3、及びマンノース結合レクチン(MBL)から選択される1又は2以上のタンパク質と共に、同時又は経時的に投与することができる。因子を、単一用量形態が両方の化合物を含む単一用量形態、又は第一の単位用量形態としてのフィコリン結合ポリペプチドの製剤及び第二の単位用量形態としての1又は2以上の他の化合物の製剤を含むキットの一部分の形態中に供給することができる。本明細書を通して第一、第二又は第三等の単位用量に言及する場合、これは好適な投与順番を示すものではなく、単に好都合な目的とするものである。
【0166】
フィコリン結合ポリペプチドの製剤と1又は2以上の他の化合物の製剤との「同時」投与とは、単一用量形態での当該化合物の投与、又は第一薬剤の投与後の15分、好ましくは10、より好適には5、さらに好適には2分以上の時間を隔てない第ニ薬剤の投与を意味する。いずれかの因子をまず投与することができる。
【0167】
「連続的」投与とは、第一薬剤の投与及び続く15分以上の時間を隔てた第ニ薬剤の投与を意味する。2つの単位用量形態のいずれかをまず投与することができる。好ましくは、両方の生成物を、同一静脈内アクセスを通して注入する。
【0168】
本発明の他の目的は、血清/血漿濃度が0 mg/ml-1 mg/mlであり、製剤がpH2.0-10.0を有する、フィコリン結合ポリペプチドを含む医薬製剤を供することである。製剤は、さらに緩衝液系、保存料、浸透薬剤、キレート剤、安定化剤及び界面活性剤を含んでよい。本発明の一部の実施形態において、医薬製剤は水性製剤、すなわち、水含む製剤である。このような製剤は、典型的には溶液又は懸濁液である。本発明のさらなる実施形態において、医薬製剤は水溶液である。用語「水性製剤」とは、少なくとも50 % w/w 水を含む製剤として定義する。同様に、用語「水溶液」とは、少なくとも50 %w/w 水を含む溶液として定義し、用語「水性懸濁液」とは、少なくとも50 % w/w 水を含む懸濁液として定義する。他の実施形態において、医薬製剤は、医師又は患者が使用の前に溶媒及び/又は希釈剤を添加する、凍結乾燥された製剤である。
【0169】
他の実施形態において、医薬製剤は、事前の溶解なしに即使用できる乾燥製剤(例えば、凍結乾燥又はスプレー乾燥)である。
【0170】
さらなる側面において、本発明は、フィコリン結合ポリペプチドの水溶液及び緩衝液を含む医薬製剤に関し、この中でフィコリン結合ポリペプチドは、血清/血漿濃度0-1 mg/ml又はそれ以上で存在し、製剤はpH 約2.0-約10.0を有する。
【0171】
本発明の他の実施形態において、製剤のpHは、次の2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、及び10.0から成るリストから選択される。
【0172】
本発明のさらなる実施形態において、緩衝液は、酢酸ナトリウム、炭素ナトリウム、クエン酸、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸ニ水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、ビシン、トリシン、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸又はそれらの混合物から成る群から選択される。これらの特定の緩衝液各々は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0173】
本発明のさらなる実施形態において、製剤は、医薬的に許容し得る保存料をさらに含む。本発明のさらなる実施形態において、保存料は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、メチルp-ヒドロキシベンゾエート、プロピルp-ヒドロキシベンゾエート、2-フェノキシエタノール、ブチルp-ヒドロキシベンゾエート、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、及びチメロサール、ブロノポール、安息香酸、イミドウレア、クロロヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、エチルp-ヒドロキシベンゾエート、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネシン(3p-クロロフェノキシプロパン-l,2-ジオール)又はそれらの混合物から成る群から選択される。本発明のさらなる実施形態において、保存料は、濃度0.1 mg/ml-20 mg/mlで存在する。本発明のさらなる実施形態において、保存料は濃度0.1 mg/ml-5 mg/mlで存在する。本発明のさらなる実施形態において、保存料は濃度5 mg/ml-10 mg/mlで存在する。本発明のさらなる実施形態において、保存料は濃度10 mg/ml-20 mg/mlで存在する。これらの特定の保存剤は各々、本発明の代替実施形態を構成する。医薬組成物における保存料の使用は、当業者に周知である。便宜上、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照されたい。
【0174】
本発明のさらなる実施形態において、製剤は、等張剤をさらに含む。本発明のさらなる実施形態において、等張剤は、塩(例えば、塩化ナトリウム)、糖又は糖アルコール、アミノ酸(例えば、L-グリシン, L-ヒスチジン, アルギニン, リジン, イソロイシン, アスパラギン酸, トリプトファン, スレオニン)、アルジトール(例えば、グリセロール(グリセリン)、1,2-プロパンジオール (プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール)ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、又はそれらの混合物から成る群から選択される。例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン及びカルボキシメチルセルロース-Na等を含む、例えばモノ、ジ、又は多糖、又は水溶解性グルカン等の任意の糖を使用することができる。一部の実施形態において、糖添加物は、スクロースである。糖アルコールは、少なくとも1つの--OH基を有するC4-C8炭化水素と定義し、例えば、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールを含む。一部の実施形態において、糖アルコール添加物は、マンニトールである。上記の糖又は糖アルコールは、個々に又は組合せて使用することができる。液体製剤中で糖又は糖アルコールが可溶性である限り、使用される量に制限はなく、本発明の方法を使用して達成される安定効果に悪影響しない。一部の実施形態において、糖又は糖アルコール濃度は、約1 mg/ml -約150mg/mlである。本発明のさらなる実施形態において、等張剤は濃度1 mg/ml-50 mg/mlで存在する。本発明のさらなる実施形態において、等張剤は、濃度1 mg/ml-7 mg/mlで存在する。本発明のさらなる実施形態において、等張剤は、濃度8 mg/ml-24 mg/mlで存在する。本発明のさらなる実施形態において、等張剤は、濃度25 mg/ml-50 mg/mlで存在する。これらの特異的等張剤の各々は、本発明の代替実施形態を構成する。医薬組成物における等張剤の使用は、当業者に周知である。便宜上、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照されたい。
【0175】
本発明のさらなる実施形態において、製剤はキレート剤である。本発明のさらなる実施形態において、キレート剤は、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、クエン酸、及びアスパラギン酸の塩、及びそれらの混合物から選択される。本発明のさらなる実施形態において、キレート剤は、0.1 mg/ml -5 mg/ml濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態において、キレート剤は、濃度 0.1 mg/ml-2 mg/mlで存在する。本発明のさらなる実施形態において、キレート剤は濃度2 mg/ml-5 mg/mlで存在する。これらの特定のキレート剤は、本発明の代替実施形態を構成する。医薬組成物におけるキレート剤の使用は、当業者に周知である。便宜上、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照されたい。
【0176】
本発明のさらなる実施形態において、製剤は、安定剤をさらに含む。医薬組成物における安定剤の使用は、当業者に周知である。便宜上、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照されたい。
【0177】
詳細には、本発明の組成物は、治療上活性のある成分が、液体医薬製剤中の保存中に凝集形成を示す可能性のあるポリペプチドを含む安定化液体医薬組成物である。「凝集形成」とは、可溶性状態であるオリゴマーの形成を生じるポリペプチド分子間の物理的相互作用、又は溶液から沈殿する巨大な可視凝集を意味する。「保存中」とは、一旦調製されても、即座に対象に投与されない医薬組成物又は製剤を意味する。むしろ、調製後に、それは、対象への投与に適した液体形態、凍結状態、又は液体形態又は他の形態中への後の再構成のための乾燥形態で、保存のためにパッケージされる。「乾燥形態」とは、凍結乾燥(freeze drying)(すなわち、凍結乾燥(lyophilization); 例えば、Williams and PoIIi (1984) J. Parenteral Sci. Technol. 38:48-59を参照されたい)、噴霧乾燥(Masters (1991) in Spray Drying Handbook (5th ed; Longman Scientific and Technical, Essez, U.K.), pp. 491- 676; Broadhead et al. (1992) Drug Devel. Ind. Pharm. 18: 1169-1206; 及び Mumenthaler et al. (1994) Pharm. Res. 11: 12-20を参照されたい), 又は風乾(Carpenter and Crowe (1988) Cryobiology 25:459-470; 及びRoser (1991) Biopharm 4:47-53)によって乾燥される液体医薬組成物又は製剤を意味する。液体医薬組成物の保存中のポリペプチドによる凝集形成は、そのポリペプチドの生物活性に悪影響する可能性があり、医薬組成物の治療有効性の減少を生じる。さらに、注入系を使用してポリペプチド含有医薬組成物を投与する場合、凝集形成は例えば管組織、膜、又はポンプの妨害等の他の問題を生じうる。
【0178】
本発明の医薬組成物は、組成物の保存中ポリペプチドによる凝集形成を減少するのに十分な量のアミノ酸塩基をさらに含むことができる。「アミノ酸塩基」とは、いずれかの特定のアミノ酸が遊離塩基形態又は塩形態で存在する、アミノ酸又はアミノ酸の組合せを意味する。アミノ酸の組合せが使用される場合、アミノ酸の全てが遊離塩基形態で存在する、全てが塩形態で存在する、又は一部が塩形態で存在し他が遊離塩基形態で存在し得る。一部の実施形態において、本発明の組成物の調製における使用のためのアミノ酸は、例えばアルギニン、リジン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸等の荷電側鎖を保有するものである。特定のアミノ酸(例えば、グリシン、メチオニン、ヒスチジン、イミダゾール、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン及びそれらの混合物)の任意の立体異性体(すなわち、L, D, 又はDL異性体)又はこれらの立体異性体の組合せは、特定のアミノ酸がその遊離塩基形態又は塩形態で存在する限り、本発明医薬組成物中に存在し得る。一部の実施形態において、L-立体異性体が使用される。本発明の組成物は、これらのアミノ酸の類似体で製剤することもできる。「アミノ酸類似体」とは、本発明の液体医薬組成物の保存中に、ポリペプチドによる凝集形成を減少する目的の効果を生じる天然に生じるアミノ酸の誘導体を意味する。適したアルギニン類似体は、例えば、アミノグアニジン、オルニチン及びN-モノエチルL-アルギニンを含み、適したメチオニン類似体は、エチオニン及びブチオニンを含み、適したシステイン類似体はs-メチル-Lシステインを含む。他のアミノ酸のように、アミノ酸類似体はその遊離塩基形態又は塩形態で組成物中に取り込まれる。本発明のさらなる実施形態において、タンパク質の凝集を予防又は遅延させるのに十分な濃度でアミノ酸又はアミノ酸類似体を使用する。
【0179】
本発明のさらなる実施形態において、治療剤として機能しているポリペプチドがこのような酸化の影響を受けやすい少なくとも1つのメチオニン残基を含むポリペプチドである場合、メチオニン(又は他の硫酸アミノ酸又はアミノ酸類似体)を、メチオニン残基のメチオニンスルホキシドへの酸化を抑制するために添加することができる。「抑制する」とは、時間とともにメチオニン酸化される種の最少量の蓄積を意味する。メチオニン酸化を抑制することは、適切な分子形態でのポリペプチドの強固の保存を生じる。メチオニンの任意の立体異性体(L, D, 又はDL異性体)又はその組合せを使用することができる。添加する量は、メチオニンスルホキシドの量が規制当局に容認され得るように、メチオニン残基の酸化を抑制するのに十分な量にすべきである。典型的には、これは、組成物が約10% - 約30%未満のメチオニンスルホキシドを含むことを意味する。通常、これは、メチオニン残基に添加されるメチオニンの割合が約1: 1 -約1000: 1、例えば 10: 1- 約100: 1の範囲であるように、メチオニンを添加することによって達成することができる。本発明のさらなる実施形態において、製剤は、高分子重合体又は低分子化合物の群から選択される安定剤をさらに含む。本発明のさらなる実施形態において、安定剤は、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 3350)、ポリビニル アルコール (PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシ-/ヒドロキシセルロース又はその誘導体(例えば、HPC, HPC-SL, HPC-L及びHPMC)、シクロデキストリン、モノチオグリセロール、チオグリコール酸及び2-メチルチオエタノールとしての硫黄含有物質、及び異なる塩(例えば、塩化ナトリウム)から選択される。これらの特定の安定化剤はそれぞれ、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0180】
医薬組成物は、その中の治療上活性ポリペプチドの安定性をさらに増強する、さらなる安定化剤もまた含むことができる。本発明に対する特定の目的の安定化剤は、ポリペプチドをメチオニン酸化から保護するメチオニン及びEDTA、及び凍結融解又は機械的せん断と関連した凝集からポリペプチドを保護する非イオン性界面活性剤を含むがこれに限定されない。
【0181】
本発明のさらなる実施形態において、製剤は界面活性剤をさらに含む。本発明のさらなる実施形態において、界面活性剤は、洗剤、エトキシル化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロック重合体(例えば、例えばプルロニック(登録商標)F68、ポロキサマー188及び407、トリトンX-100等のポロキサマー)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,例えばアルキル化及びアルコキシル化誘導体等のポリオキシエチレン及びポリエチレン誘導体(tweens, 例えば、Tween-20, Tween-40, Tween-80及びBrij-35)、モノグリセリド又はそのエトキシル化誘導体、ジグリセリド又はそのポリオキシエチレン誘導体、アルコール、グリセロール、レクチン及びリン脂質(例えば、ホスファチジルセリン、フォスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール及びスフィンゴミエリン)、リン脂質の誘導体(例えば、ジパルミトイルホスファチジン酸)及びリゾリン脂質(例えば、パルミトイルリゾホスファチジル-L-セリン及びエタノールアミン、コリン、セリン又はスレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-リン酸エステル)及びアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、リゾホスファチジル及びフォスファチジルコリンのアルコキシ(アルキルエーテル)-誘導体、例えば、リゾフォスファチジルコリンのラウロイル及びミリストイル誘導体、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、及び極性頭部の修飾、すなわちコリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、スレオニン、グリセロール、イノシトール及び陽性荷電DODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリン及びリゾホスファチジルスレオニン、及びグリセロリン脂質(例えば、セファリン)、グリセロ糖脂質(例えば、ガラクトピラノシド)、スフィンゴ糖脂質(例えば、セラミド、ガングリオシド)、ドデシルホスホコリン、鶏卵リゾレシチン、フシジン酸誘導体(例えば、タウロジヒドロフシド酸ナトリウム等)、長鎖脂肪酸及びそのC6-C12の塩(例えば、オレイン酸及びカプリル酸)、アシルカルニチン及び誘導体、リジンのNα-アシル化誘導体、アルギニン又はヒスチジン、又はリジン又はアルギニンの側鎖アシル化誘導体,リジン、アルギニン又はヒスチジンの任意の組合せを含むジペプチドNα-アシル化誘導体及び中性又は酸性アミノ酸、中性アミノ酸及び2つの荷電アミノ酸の任意の組合せを含むトリペプチドのNα-アシル化誘導体、DSS(ドクサートナトリウム、CAS 登録簿 no [577-11- 7])、ドクサートカルシウム、CAS登録簿 no [128-49-4])、ドクサートカリウム、CAS登録簿 no [7491-09-0])、SDS (ドデシル硫酸ナトリウム 又は ラウリル硫酸ナトリウム)、カプリル酸ナトリウム、コール酸又はその誘導体、胆汁酸及びその塩及びグリシン又はタウリン複合物、ウルソデオキシコール酸、ナトリウムコール酸、ナトリウムデオキシコール酸,タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-l-プロパンスルホナート、アニオン(アルキル-アリール-スルホン酸)一価界面活性剤、双性イオン界面活性剤(例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-l-プロパンスルホナート、3-コラミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート、カチオン界面活性剤(四級アンモニウム塩基)(例えば、セチル-トリメチル臭化アンモニウム、塩化セチルピリジニウム)、非イオン界面活性剤(例えば、ドデシルβ-D-グルコピラノシド)、酸化プロピレン及び酸化エチレンのエチレンジアミンへの連続的添加に由来する四官能基ブロック共重合体である、ポロキサミン(例えば、Tetronic)から選択されるか、又は界面活性剤はイミダゾリン誘導体、又はそれらの混合物の群から選択することができる。これらの特定の界面活性剤はそれぞれ、本発明の代替実施形態を構成する。
【0182】
医薬組成物における界面活性剤の使用は、当業者に周知である。便宜上、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照されたい。
【0183】
他の成分が本発明のペプチド医薬製剤中に存在することが可能である。このようなさらなる成分は、潤滑剤、乳化剤、抗酸化剤、膨張剤、浸透調整剤、キレート剤、金属イオン、油性溶媒、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン, ゼラチン又はタンパク質)及び双性イオン(例えば、例えばベタイン, タウリン, アルギニン, グリシン, リジン及び ヒスチジン等のアミノ酸)を含むことができる。もちろん、このようなさらなる成分は、本発明の医薬製剤の全体的な安定性に悪影響すべきでない。
【0184】
本発明のフィコリン結合ポリペプチドを含有する医薬組成物は、そのような処置を必要とする患者に、例えば、皮膚及び粘膜部位等の複数の部位に、例えば、局所部位に、例えば、動脈、静脈、心臓における投与等のバイパス吸収部位に、及び例えば、皮膚、皮膚下、筋肉中又は腹部等、吸収を含む部位に投与することができる。
【0185】
局所投与は、例えば火傷と関連した炎症又は皮膚関連の他の症状の治療等の、局所性炎症と関連した症状の治療において、特定の有利なものとすることができる。従って、一部の実施形態において、投与は、局所投与による。
【0186】
一部の特定の実施形態において、眼と関連した症状、例えば角膜炎、例えば層間角膜炎角膜炎(DLK)において点眼薬を使用することができる。
【0187】
本発明の医薬組成物の投与は、例えば、舌、舌下、頬、口内、経口、胃及び腸、鼻、肺、例えば、気管支梢及び肺胞又はそれらの組合せを通して、上皮、真皮、経皮、膣、直腸、眼球、例えば結膜を通して、尿管、及び非経口等の複数の投与経路を通してこのような処置を必要とする患者へ行うことができる。
【0188】
本発明の組成物は、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、微小乳濁液、複合乳濁液(multiple emulsion)、泡沫剤、軟膏、ペースト剤、硬膏剤、軟膏剤、錠剤、コーティング錠剤、リンス、カプセル、例えば、ハードゼラチンカプセル及びソフトゼラチンカプセル、坐薬、直腸カプセル、ドロップ、ゲル、スプレー、粉剤、噴霧剤、吸入薬、目薬、点眼用軟膏剤、点眼用リンス、膣ペッサリー、膣リング、膣軟膏剤、注入液、インサイツ(in situ)の形質転換溶液、例えばインサイツ(in situ)のゲル化、インサイツ(in situ)の硬化、インサイツ(in situ)の沈殿、インサイツ(in situ)の結晶化、注入液、及びインプラント等の複数の投与形態で投与することができる。
【0189】
本発明の組成物は、例えば共有結合、疎水性及び静電相互作用、薬物担体、薬物送達系及び高度薬物送達系を通して、さらにフィコリン結合ポリペプチドの安定性を増強する、生物学的利用率を増加する、溶解性を増加する、有害作用を減少する、当業者に周知の時間治療を達成する、且つ患者服薬率又はそれらの任意の組合せを増加するために、さらに配合又は結合させることができる。担体、薬物送達系及び高度薬物送達系の例は、重合体、例えばセルロース及び誘導体、多糖、例えばデキストラン及び誘導体、デンプン及び誘導体、ポリ(ビニルアルコール)、アクリル酸及びメタクリル酸重合体、ポリ乳酸及びポリグリコール酸及びそれらのブロック共重合体、ポリエチレングリコール、担体タンパク質、例えばアルブミン、ゲル、例えば、サーモゲル化系、例えば当業者に周知のブロック共重合体系、ミセル、リポソーム、微粒子、ナノ粒子、液体結晶及びその分散剤、L2相及び脂質水系における相挙動の当業者に周知のその分散剤、重合体ミセル、複合乳濁液、自己乳化、自己微小乳濁化における、シクロデキストリン及びその誘導体、及びデンドリマーを含むがこれに限定されない。
【0190】
本発明の組成物は、例えば定量噴霧式吸入器、ドライパウダー吸入器及び噴霧器等の、当業者に周知のあらゆる装置を使用した、フィコリン結合ポリペプチドの肺投与のための固体、半固体、粉体及び溶液の製剤において有用である。
【0191】
本発明の組成物は、制御、持効性、遅滞性(protracting)、遅延性、及び徐放性薬剤送達系製剤において特に有用である。さらに特に、組成物は、当業者に周知の非経口制御放出及び持効性放出系(いずれの系も投与数の何倍もの減少につながる)の製剤において有用であるが限定されない。さらに好ましくは、皮下投与の制御放出及び持効放出系である。本発明の範囲を限定することなく、有用な制御放出系及び組成物の例は、ハイドロゲル、油性ゲル、液体結晶、重合体ミセル、微粒子、ナノ粒子である。
【0192】
本発明の組成物に有用な制御放出系を生成するための方法は、結晶化、凝縮、共結晶化、沈殿、共沈殿、乳化、分散、高圧均質化、カプセル封入、噴霧乾燥、マイクロカプセル化、コアセルベーション、相分離,微粒子を生成するための溶媒蒸発、押し出し及び超臨界流動法を含むがこれに限定されない。一般的な参考文献は、Handbook of Pharmaceutical Controlled Release (Wise, D. L., ed. Marcel Dekker, New York, 2000) 及びDrug and the Pharmaceutical Sciences vol. 99: Protein Formulation and Delivery (MacNally, EJ., ed. Marcel Dekker, New York, 2000)である。
【0193】
非経口投与は、シリンジ、任意にはペンのようなシリンジによって、皮下、筋肉内、腹腔内又は静脈内注入で行うことができる。あるいは、非経口投与は、注入ポンプによって行うことができる。さらなる選択肢として、組成物は、鼻又は肺スプレーの形態でのフィコリン結合ポリペプチドの投与のための溶液又は懸濁液とすることができる。さらなる選択肢として、本発明のフィコリン結合ポリペプチドを含有する医薬組成物は、例えば、無針注入によって又はパッチ、任意にはイオン注入パッチ、又は経粘膜、例えば、頬投与から経皮投与に適用することができる。
【0194】
用語「安定化製剤」とは、物理的安定性、化学安定性又は物理的及び化学安定性を増加させた製剤を意味する。
【0195】
本願明細書において、タンパク質製剤の用語「物理的安定性」とは、タンパク質の熱機械ストレス及び/又は例えば疎水性表面及び界面等の不安定化界面及び表面との相互作用への曝露の結果として、生物学的に不活性及び/又は不溶性のタンパク質凝集を形成するタンパク質の傾向を意味する。水性タンパク質製剤の物理的安定性は、機械/物理的ストレス(例えば、撹拌)に適した容器(例えば、薬包又はバイアル)に製剤を充填した後、様々な時間異なる温度で、目視検査及び/又は濁度測定によって評価する。製剤の目視検査は、黒色背景で鋭いピントの合った光中で行う。製剤の濁度は、例えばスケール0-3(濁度のない製剤は視覚スコア0に相当し、昼光で視覚濁度を示す製剤は視覚スコア3に相当する)の濁度の程度の視覚スコア順位を特徴とする。製剤は、昼光で視覚濁度を示す場合、タンパク質凝集に関して物理的に不安定と分類する。あるいは、製剤の濁度は当業者に周知の単純な濁度測定によって評価することができる。水性タンパク質製剤の物理的安定性は、分光学的薬剤又はタンパク質の立体構造状態のプローブを使用して評価することができる。プローブは、好ましくは、優先的にタンパク質の非天然配座異性体に結合する低分子である。タンパク質構造の低分子分光プローブの一例は、チオフラビンTである。チオフラビンTは、アミロイド原線維の検出に広く使用されている蛍光色素である。原線維、及びおそらく他のタンパク質の立体構造の存在下で、原線維タンパク質形態に結合する場合、チオフラビンTは、約450 nmで新規励起極大、及び約482 nmで増強発光を生じる。非結合性チオフラビンTは、波長において本質的に非蛍光である。
【0196】
天然から非天然状態へのタンパク質構造形態における変化のプローブとして他の低分子を使用することができる。例えば「疎水性パッチ」プローブは、優先的にタンパク質の曝露疎水性パッチへ結合する。疎水性パッチは、その自然状態においてタンパク質の三次構造内に通常埋没されるが、タンパク質がほどかれる又は変性し始める場合に曝露される。これらの低分子、分光プローブの例は、例えばアントラセン、アクリジン、フェナントロリン等の芳香族、疎水性染料である。他の分光プローブは、例えばフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、及びバリン等の疎水性アミノ酸等の、例えばコバルト金属複合体等の金属アミノ酸複合体である。
【0197】
本願明細書において、用語タンパク質製剤の「化学安定性」とは、天然のタンパク質構造と比較して生物学的効力を有する可能性が低い及び/又は免疫原性特性を有する可能性が高い化学分解産物の形成につながるタンパク質構造における化学共有結合変化を意味する。天然のタンパク質型及び性質及びタンパク質が曝露される環境に応じて、様々な化学分解産物を形成することができる。当業者に周知なように、化学分解の除去は完全に回避できる確実性が最も低く、化学分解産物の量の増加はタンパク質製剤の保存中及び使用中に度々観察される。大抵のタンパク質は、アミド分解する傾向があり、その過程においてグルタミニル又はアスパラギニル残基中の側鎖アミド基は加水分解され、遊離カルボン酸を形成する。他の分解経路は、共有結合で結合された二量体、オリゴマー及び重合体分解産物の形成につながるアミド基転移及び/又はジスルフィド相互作用を通して2つ又はそれ以上のタンパク質分子が共有結合で互いに結合する、高分子量の形質転換生成物の形成を含む(Stability of Protein Pharmaceuticals, Ahem. T.J. & Manning M. C, Plenum Press, New York 1992)。酸化(例えばメチオニン残基)は、化学分解の他の変異体と呼ぶことができる。タンパク質製剤の化学安定性は、異なる環境条件への曝露後に、様々な時点において化学分解産物量を測定することによって評価することができる(分解産物の形成は、例えば温度の上昇によって度々加速することができる)。各々の分解産物の量は、様々なクロマトグラフィー技術(例えば、SEC-HPLC 及び/又は RP-HPLC)を使用した分子サイズ及び/又は電荷に応じた分解産物の分離によって度々決定される。
【0198】
従って、上記のように、「安定化製剤」とは、物理的安定性の増加、化学安定性の増加又は物理的且つ化学安定性の増加された製剤を意味する。一般に、使用期限に達するまで、(推奨の用途及び保存条件での服薬遵守における)使用及び保存中、製剤は安定状態でなければならない。
【0199】
本発明の一部の実施形態において、フィコリン結合ポリペプチドを含む医薬製剤は、使用の6週間以上且つ保存の3年以上安定である。本発明他の実施形態において、フィコリン結合ポリペプチドを含む医薬製剤は、使用の4週間以上且つ保存の3年以上安定である。本発明のさらなる実施形態において、フィコリン結合ポリペプチドを含む医薬製剤は、使用の4週間以上且つ保存の2年以上安定である。本発明のさらなる実施形態において、フィコリン結合ポリペプチドを含む医薬製剤は、使用の2週間以上且つ保存の2年以上安定である。
【0200】
本発明の特定の実施形態
上記の通り、本発明は、単離フィコリン結合ポリペプチド及び配列番号4のアミノ酸配列又はその変異体又は免疫性断片を含むポリペプチドに関する。一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは実質的に純粋である。
【0201】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、マンノース結合レクチン(MBL)と結合するの能力がある。
【0202】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、フィコリン-1、フィコリン-2、又はフィコリン-3のいずれか1つと結合するの能力がある。
【0203】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、C1q、肺サーファクタントタンパク質SP-A及び/又はSP-D、及び例えばCLL-11等の細胞内コラーゲン様防御分子のいずれか1つと結合するの能力がある。
【0204】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、例えば特異的受容体等の特異的受容タンパク質と結合するの能力がある。
【0205】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列20-297、又はその機能的変異体を含む。
【0206】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列20-380又はその機能的変異体を含む。
【0207】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列16-296又はその機能的変異体を含む。一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、SDS-PAGE上で非還元条件下で約40 kDaの分子量を有する。
【0208】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1の49及び178から選択される位置に相当する1又は2個のアミノ酸において、N結合型グリコシル化されている。
【0209】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、遺伝子組換えタンパク質である。
【0210】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、ホモ二量体形態で存在する。
【0211】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列20-380から成る。
【0212】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列又はその変異体又は免疫性断片を含む。
【0213】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号4、又はその変異体又は免疫性断片から成る。
【0214】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、例えばポトーシス細胞等の臨死又は死滅細胞、及び/又は細胞残屑の食作用を媒介する。
【0215】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、微生物の食作用を媒介する。
【0216】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。
【0217】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体は、ポリクローナル抗体である。
【0218】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、例えば貪食受容タンパク質(GULP)等の、配列相同性を有する他のタンパク質と同様の活性を有する。
【0219】
一部の実施形態において、単離核酸分子は、配列番号2の配列と少なくとも70%同一であるヌクレオチド配列を含む本発明のポリペプチドをコードする。
【0220】
一部の実施形態において、本発明の宿主細胞は、真核細胞である。
【0221】
一部の実施形態において、本発明の宿主細胞は、哺乳類起源の細胞である。
【0222】
一部の実施形態において、本発明の宿主細胞は、CHO細胞、HEK細胞及びBHK細胞から成る群から選択される。
【0223】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、炎症、アポトーシス及び/又は自己免疫と関連した任意の徴候の治療用である。
【0224】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、例えばアジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、クローン病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ及びぶどう膜炎、喘息、粥状動脈硬化、1型糖尿病、乾癬、様々なアレルギー等の任意の自己免疫症状の治療用である。
【0225】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎、虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、食道通過障害、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、アレルギー、免疫複合体病、臓器虚血、再灌流傷害、臓器壊死、枯草熱、敗血症(sepsis)、敗血症(septicemia)、エンドトキシンショック、悪液質、異常高熱症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、腟炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、間質性肺炎、塵肺症(pneumotransmicroscopicsilicovolcanoconiosis)、肺胞炎(alvealitis)、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、インフルエンザ、呼吸器多核体ウイルス感染症、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、単包虫症、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日光皮膚炎、じん麻疹、疣贅、膨疹、血管炎(vasulitis)、血管炎、心内膜炎、動脈炎、粥状動脈硬化、血栓性静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、アルツハイマー病、セリアック病、うっ血性心不全、成人呼吸促迫症候群、髄膜炎、脳炎、多発性硬化症、大脳梗塞、脳塞栓症、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ぶどう膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、同種移植片拒絶、移植片対宿主病、1型糖尿病、強直性脊椎炎,ベルジェ病、ライター症候群及びホジキン病、角膜炎、2型糖尿病、嚢胞性線維症、心筋梗塞、再灌流傷害、脳卒中、皮膚筋炎、メタボリックシンドローム、全身性炎症反応症候群、敗血症、複合臓器不全、播種性血管内凝固症候群、アナフィラキシーショック、1型及び/又は2型糖尿病と関連した血管合併症及び腎症、髄膜炎、細菌性敗血症、重症マラリア、非典型的溶血性尿毒症症候群、溶血性尿毒症症候群、加齢黄斑変性、発作性夜間血色素尿症、ヘビ毒咬傷、火傷、及び臓器移植への合併症から成る群から選択される任意の炎症性障害の治療用である。
【0226】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、臓器虚血、再灌流傷害、臓器壊死、血管炎、心内膜炎、粥状動脈硬化、血栓性静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、うっ血性心不全、成人呼吸促迫症候群、大脳梗塞、脳塞栓症、1型及び/又は2型糖尿病と関連した血管合併症及び腎症から成る群から選択される任意の炎症性障害の治療用である。
【0227】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した任意の徴候の治療用である。
【0228】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、凝固、血栓又は凝固障害関連疾患又は炎症反応を含む障害及び慢性血栓塞栓性疾患又は血管障害を含むフィブリン形成と関連した障害、例えば血栓症等、例えば深部静脈血栓症、動脈血栓症、術後血栓症、冠動脈バイパス術(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、血小板沈着性脳卒中、腫瘍増殖、腫瘍転移、血管新生、血栓溶解、粥状動脈硬化、再狭窄、例えば動脈硬化症及び/又は血管形成術後の再狭窄等、急性及び慢性徴候、例えば炎症等、敗血症、敗血症性ショック、敗血症、低血圧症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、播種性血管内凝固障害(DIC)、肺塞栓症、病的血小板沈着、心筋梗塞と関連した徴候の治療、又は血栓症のリスクのある動脈硬化血管、末梢血前駆細胞(PBPC)移植後の静脈閉塞性疾患、溶血性尿毒症症候群(HUS)、及び血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)及びリウマチ熱を有する哺乳類の予防治療用である。
【0229】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患又は炎症反応を含む障害及び慢性血栓塞栓性疾患又は血管障害を含むフィブリン形成と関連した障害、例えば血栓症等、例えば深部静脈血栓症等、動脈血栓症、術後血栓症、冠動脈バイパス術(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、血小板沈着性脳卒中、腫瘍増殖、腫瘍転移、血管新生、血栓溶解、粥状動脈硬化、再狭窄、例えば動脈硬化症等及び/又は血管形成術後の再狭窄等、急性及び慢性徴候、例えば炎症等、病的血小板沈着、心筋梗塞と関連した徴候の治療、又は血栓症のリスクがある動脈硬化血管、末梢血前駆細胞(PBPC)移植後の静脈閉塞性疾患、溶血性尿毒症症候群(HUS)、及び血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)及びリウマチ熱を有する哺乳類の予防治療用である。
【0230】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、例えば手術を受けている又はうっ血性心不全に罹患する患者等の特定のハイリスク患者における血栓塞栓性合併症の発生の予防用である。
【0231】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、心臓と関連した病状の治療用である。
【0232】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、フィコリン結合ポリペプチドの欠乏と関連した病状の治療用である。
【実施例】
【0233】
実施例1
MASPl遺伝子の代替転写の検出
方法: MASPlの3つの転写変異体: MASPl, MASP3及び FAPを検出するために、各変異体のための特異的プライマーをデザインした。PCRを、エクソン6における共通の順方向プライマー(5'-gcacccagagccacagtg-3')及び特異的逆方向プライマー: エクソン12におけるMASPl(5'-gccttccagtgtgtgggc-3')、エクソン11におけるMASP3(5-gccttccagagtgtggtca-3') 及びエクソン8aにおけるFAP (5'-cgatctggagagcgaactc-3') でセットアップした(図1)。50 ng 肝臓cDNA (クロンテック) 、0.25 μMの各プライマー、2.5 mM MgCl2、0.2 mM dNTP、50 mM KCl、10 mM トリス-HCl、pH 8.4、及び0.4 単位の白金 Taq DNAポリメラーゼ (Invitrogen)、を含有する20-μl容積中でPCR増幅を実行した。次のサイクルパラメータでPCR反応を行った: 10分94℃、30又は40サイクル(30秒94℃, 50秒58℃, 90秒72℃) 、10分72℃。2% アガロースゲル上で試料を分析した。
【0234】
結果: MASPl遺伝子の代替転写が肝臓cDNA中で検出された。エクソン6 に位置する共通の順方向プライマー及びエクソン 12 (MASPl) 、エクソン 11 (MASP3) 、及びエクソン 8a (FAP) に位置する特異的逆方向プライマーを使用して、MASPl、MASP3、及びFAP転写物は増幅された。MASPlは、500 bpの断片、MASP3は506 bpの断片、及び FAPは309 bpの断片を産生する。
【0235】
FAP断片の組織発現
方法: 上記のように同一のPCRアッセイで、MASPl、MASP3、及び FAP 発現に関して市販のヒト組織cDNAパネル(クロンテック)を調べた。2% アガロースゲル上で試料を分析した。
【0236】
結果: クロンテックから購入したcDNAパネルにおいて、MASPl、MASP3、及び FAP遺伝子の組織分布を調べた(図2)。共通の順方向プライマー及び特異的逆方向プライマーを使用して、MASPl、MASP3、及びFAP転写物は増幅された。参照遺伝子としてGADPHを使用した。全ての3つの遺伝子が肝臓において高発現され、さらに、FAPが心臓組織において強く発現された(黒矢印で標識)。FAP 遺伝子の微量な発現が、脳、結腸、前立腺、骨格筋、及び小腸検出された(白色矢印で標識)。
【0237】
100個体のFAPexon8aのDNA配列決定
方法: 翻訳ATG開始部位に関連する位置+44,083から+44,431に及ぶMASP1/MASP3/FAP 遺伝子のイントロン-エクソン境界を含むエクソン8aの直接配列決定を、100人の健常なコーカサス人由来のゲノムDNAテンプレート上で行った。順方向プライマーが5'-T7 配列(5'-ttatacgactcacta-3') を含有する、単一プライマーセット(順方向: 5'-ctgttcttcacactggctg-3'、逆方向: 5'-ctgctgagatcatgttgttc-3') を使用して、断片を増幅した。50 ng ゲノムDNA、0.25μM の各プライマー、2.5 mM MgCl2、0.2 mM dNTP、50 mM KCl、10 mM トリス-HCl、pH 8.4、及び白金Taq DNA ポリメラーゼの0.4単位(Invitrogen) を含有する20-μl容積中で、PCR増幅を実行した。以下のサイクルパラメータ: 2分94℃、15サイクル(30秒94℃, 60秒64℃, 60秒72℃) 、15サイクル(30秒94℃, 60秒58℃, 60秒72℃) 、5分72℃、でPCR反応を行い、そして5'-ビオチン標識配列プライマーを使用して、ABI BigDyeサイクル配列決定ターミネーターキット(Applied Biosystems, Foster City, CA) を使用してプロトコールに従って順方向に配列決定した。ストレプトアビジンビーズ(GenoVision) を使用してPyroMark Vacuum Prep Workstation (Biotage)上で、配列反応物を精製した。
【0238】
ABI Prism 3100 Genetic Analyser (Applied Biosystems)上で、配列分析を行った。得られたDNA配列を、BioEdit ソフトウェアを使用して整列させ、配列電気泳動図からDNA多型を視覚的に確認した。
【0239】
結果: BioEdit ソフトウェアを使用して全配列を整列させた。100人の健常個体において、エクソン8a又はエクソン-イントロン領域において遺伝的変異は観察されなかった。
【0240】
実施例2
免疫沈降
血清由来のMAP-1の特異的免疫沈降を、MAP-1特異的mAb 20C4 (17 MAP-1特異的C末端ペプチドに対して産生された)又はmAb 8B3で行い、モノクローナル抗体は対照沈殿抗体として使用したMASP-1/3の共通の重鎖に対して反応した。総量10μgの抗MAP-1又はMASP-1/3 抗体を、ヒツジ抗マウス又はウサギIgG Dynaビーズ (M-280, cat. 112.02D/112.04D, Dynal/Invitrogen) に結合させた。洗浄工程後、ビーズを正常ヒト血清のプール (TBS中に1 : 1に希釈した) に適用し、4℃で1時間回転させながらインキュベートした。最終洗浄工程及び磁気分離後、ビーズを緩衝液を負荷したSDS中で沸騰し、SDS-PAGE及び、MAP-1、MBL、及びフィコリン-3への抗体でプローブしたウエスタンブロッティングに供した。
【0241】
上記と同一の沈殿手順を、MBL (Hyb 131-11, Bioporto, Denmark) 、フィコリン-2 (FCN219)及びフィコリン-3 (FCN334) へのmAbsで行った。MBL、フィコリン-2及び-3の血清濃度の違いを相殺するために、1 ml、300 μl及び100 μlの血清から、これらをそれぞれ沈殿させた。試料を、SDS-PAGE及びMAP-1に対するpAbでプローブしたウエスタンブロッティングによって分析した。
【0242】
免疫組織化学
rMAP-1を発現しているCHO細胞を、培養フラスコ中でRPMI+10%中で成長させた。80-90% コンフルエンスで細胞を回収し、4% ホルムアルデヒド-PBS中で24時間固定し、続いてパラフィン中に包埋した。6つの異なるヒト肝臓組織及び2つの異なる心筋組織、2つの骨格筋組織由来の試料及びヒト大動脈から得た2つの試料もまた固定し、上記のようにパラフィン包埋した。Leitz Wetzlar ミクロトームで5 μm の切片を得て、スライドガラス上に置き、アッセイを行うまで4℃で保管した。前処理及び分析を上述の通り行った。一次抗体はMAP-1特異的モノクローナル抗体mAb 12B11又は親和性精製した、モノ特異的ウサギ抗MAP-1であり、これらは全て5 μg/mlに希釈したものであった。アイソタイプ抗体対照を、同一濃度で組織に適用した。二次抗体は、Envision(登録商標)抗体(HRP-抗マウス又はHRP-抗ウサギ, Dako, Glostrup, Denmark)であった。Leica DMLB2 顕微鏡下で染色パターン分析を行った。
【0243】
SDS-PAGE及びウエスタンブロッティング
本質的には製造者によって説明されるように、NuPAGE(R)システム(Invitrogen) を使用して、10%又は4-12% (w/v) Bis-トリスポリアクリルアミドゲル上で非連続的緩衝液で電気泳動を行った。ポリビニリデンジフルオリド膜 (PVDF-HyBond, Amersham Bioscience)、2μg/mlの一次mAbsを使用したウエスタンブロッティング、及びPBS、0.05% Tween20中で1: 1500に希釈したHRP複合ストレプトアビジン(P0397, Dako) 又はPBS、0.05% Tween20中で1: 1000に希釈したHRP-ウサギ抗マウスIgG (PO260, Dako)による二次可視化を行った。5OmM酢酸ナトリウム緩衝液 pH 5中の3-アミノ-9-エチルカルバゾール(Sigma)(アセトン中に0.04%) 及び0.015% H2O2で膜を展開した。
【0244】
補体活性化アッセイ
本質的に上述のように、MBL及びフィコリン-3媒介補体因子C4析出へのMAP-1の影響を評価した。簡潔には、マンナン(MBLリガンド)(Sigma-Aldrich M7504)又はアセチル化ウシ血清アルブミン(フィコリン-3リガンド)をlOμg/ml でMaxisorp ELISA プレート(Nunc, Denmark)に固定した。洗浄後、rMBL又はrフィコリン-3(0.4μg/ml)を添加し、1.5時間インキュベートした。rMAP-1又はrMASP-2の2倍の段階希釈物を一方の次元に沿って1時間加え、他方の次元に沿ってMBL又はフィコリン-3の血清欠乏の段階希釈物を添加し37℃で45分間インキュベーションした。C4cへのpAbを使用してC4析出を測定した(Q0369, Dako, Glostrup/Denmark)。
【0245】
さらに、純系を使用して、MASP-2のMAP-1での置換を評価した。上記の通り、rMASP-2の段階希釈物をrMBL/マンナンマトリックス上で一方の次元に沿って加えて、20℃で45分間プレインキュベートし、続いて他方の次元に沿ってrMAP-1の希釈物を加えて20℃で45分間インキュベーションした。精製C4 (Quidel, CA, USAから購入)を濃度1 μg/ml で添加し、37℃で45分間インキュベートした。上記の通り検出を行った。
【0246】
結果
MAP-1は、フィコリン-2、フィコリン-3及びMBLと共沈殿する。
MAP-1のMBL及びフィコリン-3との結合の可能性を検討するために、抗MAP-1 mAb20C4及びMASP-1及びMASP-3の共通の重鎖に対するmAb (mAb8B3)を共に使用して血清複合体を沈殿させた。続いて沈殿物を、MAP-1、MBL、及びフィコリン-3それぞれへの抗体でプローブしたウエスタンブロッティングによって分析した。明確なフィコリン-3共沈殿バンドを観察したが、それより弱いバンドもまたMBLで観察された(図 24A)。フィコリン-2に対する抗体はウエスタンブロットにおいて機能しなかったので、試料はフィコリン-2に対する抗体でプローブされなかった。続いて、MBL、フィコリン-2及びフィコリン-3に対するmAbsを使用して免疫沈降を逆行させ、1 ml、300 μl及び100 μlの血清をそれぞれ沈殿させたが、これはMBLの血清濃度(2 μg/ml) 、フィコリン-2の血清濃度(5 μg/ml) 及びフィコリン-3の血清濃度(20 μg/ml)の違いの調整に機能する。続いて試料をMAP-1への抗体でプローブしたウエスタンブロッティングによって分析した。顕著なMAP-1バンドがフィコリン-2及び-3由来の沈殿物中で観察され、はるかに弱いバンドがMBL沈殿物中に生じ、免疫沈降rMAP-1及び血清MAP-1は対照として機能した(図24B)。
【0247】
MAP-1はレクチン経路の補体活性を抑制する。
rMBL及びrフィコリン-3との組合せでのMBL及びフィコリン-3欠乏血清を、MBL及びフィコリン-3補体C4活性化活性のための再構成のために使用した。マンナン及びアセチル化BSAはMBL及びフィコリン-3のリガンドとしてそれぞれ機能した。rMBL及びrフィコリン-3は共に、MBL及び フィコリン-3欠乏血清中でC4析出をそれぞれ開始することができた(図25A及び25D)。rMASP-2の適用は、フィコリン-3及びMBL活性化経路の双方を介して、C4析出の強度の正の用量依存性の増強をもたらす(図25B及び25E)。一方、rMAP-1の適用は、双方の経路を介してC4析出の明白な用量依存性抑制をもたらす(図25C及び25F)。
【0248】
さらに、rMBL、rMASP-2、rMAP-1及び精製C4のみを含む純粋成分系を使用して、MASP-2のMAP-1との置換可能性を検討した。rMASP-2をマンナン/rMBL 複合体を段階希釈でプレインキュベートした。その後、rMAP-1を様々な濃度で添加し、続いて精製C4を添加した。rMAP-1のシステムへの適用は明らかに、C4析出の用量依存性抑制をもたらした(図26)。
【0249】
実施例3
新規MBL/フィコリン結合タンパク質1(MAP-1)の血清濃度及び結合特性の決定
MAP-1の全長の非標識組換え型コンストラクトがCHO-DG44 細胞中で生成され、安定に発現された。MAP-1に対する特異的モノクローナル抗体が産生された。また、MAP-1血清測定のための定量的ELISAを確立し、血清MAP-1とフィコリン-2、-3及びMBLと間の結合をELISA及び密度勾配分画で調べた。
【0250】
遺伝子組換えタンパク質
PowerCHO1 血清不含有培地(Lonza, Vallensbaek/Denmark, www.lonza.com) を発現培地として使用した変更を行ってが、他で説明されるように非標識ヒトMAP-1の全長コンストラクトがCHO-DG44 細胞中で発現された(Hummelshoj et al., MoI Immunol 44, 401-11, 2007; Larsen et al., J Biol Chem 279, 21302-11, 2004; Ma et al., 2009 J Biol Chem, Oct 9;284(41))。これまで記載されるように(Skjoedt et al., 2009; Immunobiology, Nov 23)、rMAP-1を生成するために抗体親和性精製を使用した。簡潔に言えば、本質的にはPfeiffer等によって説明されるように(Pfeiffer et al., J Immunol Methods 97, 1-9, 1987)、15 mgの抗MAP-1 抗体(mAb 20C4) をCNBr活性化セファロースに共有結合で結合させ、精製マトリックスとして使用した。抗MAP-1カラムもまた、血清からMAP-1を除去するために使用した。
【0251】
モノクローナル抗体の産生を、以前に説明されるように行った(Skjoedt et al., J Biol Chem 285, 8234-43, 2010)。
【0252】
推奨されるようにNuPAGE(R)システム(Invitrogen) を使用して、非連続的緩衝液で、10%又は4-12% (w/v) のBis-トリスポリアクリルアミド-ゲル上で電気泳動を行った。ポリビニリデンジフルオリド膜 (PVDF-HyBond, GE Healthcare) を使用して、ウエスタンブロッティングを行った。2 μg/mlの一次mAbs、及び1: 1500に希釈したHRP複合ストレプトアビジン又はHRP-ウサギ抗マウスIgG (P0397/PO260, Dako, Glostrup/Denmark, www.dako.com) による二次可視化によって、基質としての5OmM酢酸ナトリウム緩衝液pH5 中の0.04% 3-アミノ-9-エチルカルバゾール(Sigma-Aldrich, Broendby/Denmark, www.sigmaaldrich.com)+ 0.015% H2O2 を使用して膜を展開した。以前に推奨され且つ説明されるように(Skjoedt et al., 2009)、rMAP-1をN-グリコシダーゼ-F/ENDO-F(N-グリコシダーゼ-F脱グリコシルキット, Roche, Mannheim/Germany, www.roche.com)で処理した。生成物をSDS-PAGEによって還元条件下で分析し、続いてクーマシー染色又はウエスタンブロッティングを行った。
【0253】
抗MAP-1 mAb 20C4の特異性は、以前に説明される(Skjoedt et al., 2010)。mAb 20C4 を捕捉(catching)抗体として、6 μg/mlでMaxisorb ELISA プレート (NUNC(商標登録), Roskilde/Denmark, www.nuncbrand.com)に固定された定量的MAP-1 ELISAで使用した。検量用試料の段階希釈(MAP-1欠乏血清に添加したrMAP-1又はrMAP-1)又はドナー血清試料を、PBS + 0.05% Tween20 + 0.5% ウシ血清及び10 mM EDTA中に適用した。3 μg/mlで適用した検出抗体は、以前に説明されるMASP-1、-3及びMAP-1の共通鎖と反応するビオチン標識したmAb 8B3であった(Skjoedt et al., 2010; Skjoedt et al., 2009)。
【0254】
フィコリン-2及び-3血清濃度を、Munthe-Fog等及びHummelshoj等(Hummelshoj et al., Hum MoI Genet 14, 1651-8, 2005; Munthe-Fog et al., Scand J Immunol 65, 383-92, 2007; Munthe-Fog et al., MoI Immunol 45, 2660-6, 2008) によって説明されるように測定し、MBL及びMASP-3血清濃度を以前に説明されるように測定した(Skjoedt et al., 2009)。
【0255】
推奨されるように、オルト-フェニレン-ジアミン (Dako, Glostrup/Denmark)で展開を得て、1M H2SO4で酵素反応を停止させた。V-max Kinetic-リーダー(Molecular Devices, Sunnyvale/CA/U.S) を使用して、光学濃度(OD490nm-650nm)レベルを測定した。
【0256】
捕捉用抗体としてMAP-1 特異的 mAb 20C4 を使用したという変更を行ったが (6 μg/mlでコーティングした)、本質的には以前に説明されるように(Skjoedt et al., 2009)、MAP-1及びMBL、フィコリン-2及び-3の間の相対的結合を評価した。検出mAbsは、ビオチン-標識FCN-219 (フィコリン-2特異的) 又はFCN-334 (フィコリン-3特異的)(24-25)、又はHyb 131-11であり、全て2 μg/mlで適用した。同一の100人のデンマーク人の供血者由来の血清試料を上記の通り分析した。
【0257】
正常ヒト血清を、スクロース勾配分離に供した。10 mM トリス中で緩衝化した10-30% スクロース勾配、145 mM NaCl、3 mM CaCl2及び30 μg/mlのヒト血清アルブミンから成る40 ml の遠心分離カラム上に0.75 mlの血清を負荷した。負荷したカラムを、SW28 ローターヘッドのL70 Beckmann 超遠心分離機中で、4℃で24時間、真空中で 150.000 x gで遠心分離した。1.5 mlの画分を、底部から採取し、特異的ELISA又は免疫ブロッティングによって、次の抗原に関して分析した: MAP-1、MASP-1、MASP-2、MASP-3、sMAP、MBL、フィコリン-2及びフィコリン-3。血清IgM(19S)及びIgG (7S) のピークもまた評価し、これは質量に対する分子表面比を示す。さらに、外因的に適用したC4を活性化するする能力に関して画分を分析した。簡潔には、以前に説明されるように(Skjoedt et al., 2010)、アセチル化 BSA (a フィコリン-3 リガンド) 又はマンナン(MBLリガンド)でコーティングしたELISAプレートに画分を段階希釈で適用し、続いて振盪しながら4℃で1時間インキュベーションした。続いてプレートを洗浄し、37℃で1時間、1 μg/mlの精製C4 でインキュベートした。続いて、C4cへのポリクローナル抗体(Q 0369, Dako, Glostrup, Denmark) でC4析出を測定した。
【0258】
統計分析
統計(スピアマンノンパラメトリック相関関係, ノンパラメトリック両側t-検定)及びMAP-1、MBL、フィコリン-2及び-3血清レベルを、Prism4 ソフトウェア (GraphPad Software, Inc., La Jolla/CA/US, www.gaphpad.com)を使用して算出した。
【0259】
結果
rMAP-1の精製及び特性決定
CHO DG44 細胞におけるrMAP-1の発現は、150 nM メトトレキサートの存在下で高産生量となった(産生量: 血清非含有培地中、10-20 μg/ml)。精製後、rMAP-1をSDS-PAGEで分析し、続いてクーマシーブリリアントブルー染色又は免疫ブロッティングを行った。SDS-PAGE/クーマシー染色分析から、推定-45 kDa減少の分子量のバンドが明らかとなった(図27)。rMAP-1のN-グリコシダーゼ Fでの脱グリコシル化は、シグナルペプチドを含まない理論的質量に相当する〜40 kDaへの分子量変化をもたらす。このパターンはまた、MAP-1への特異的抗体を使用した免疫ブロットで観察された。
【0260】
MAP-1 血清レベル
MAP-1の血清レベルを測定するために、定量的ELISAを展開した。アッセイは、捕捉用抗体及びMASP-1、-3及びMAP-1の共通の重鎖を認識する検出抗体(mAb 8B3)としてのMAP-1 特異的mAb 20C4に基づく。既知濃度の精製rMAP-1 検量用試料及び精製MAP-1添加のMAP-1欠乏血清間で、完全な平行が検量線で観察された(図28A)。100人のデンマーク人の供血者において、MAP-1の血清レベルを分析し、範囲115-466 ng/ml、平均値240 ng/mlと分かった(図29A)。以前に説明されるように(Skjoedt et al., 2009) 同一群でMASP-3血清レベルを測定し、MAP-1及びMASP-3濃度をプロットした(図29B)。MAP-1及びMASP-3の血清は同一遺伝子由来の代替転写物を表すにもかかわらず、MAP-1及びMASP-3の血清濃度間に、相関関係がないことが分かった。
【0261】
抗原及びアッセイ安定性を血清中で凍結融解サイクル中評価した(図29C)。凍結融解サイクルにも係わらず、MAP-1の非常に強く示された評価を観察した。
【0262】
MAP-1及びフィコリン-2、-3及びMBLの間の結合
MAP-1及びMBL、フィコリン-2及び-3の間の相互作用を測定するために、捕捉用抗体としてmAb 20C4 を使用し且つビオチン標識mAbs: FCN-219 (フィコリン-2特異的)、FCN-334 (フィコリン-3 特異的)又はHyb 131-11 (MBL特異的)でプローブして、3つの異なるELISAを展開した。MAP-1測定に使用した同一の100人のドナー血清試料を分析し、MAP-1及びフィコリン-2、-3及びMBL間の血清結合レベルを、相対的O.D.490-650nmとして評価した(図30A)。さらに、以前に記載のように(Skjoedt et al., 2009)、MBL、フィコリン-2及び-3の血清濃度を測定した。
【0263】
MBL、フィコリン-2及び-3と複合体を形成してMAP-1が存在することが分かった。しかしながら、MAP-1の主要部はフィコリン、特にフィコリン-3に結合する (p<0.0001) ようであり、このパターンもまたMASP-3に関して以前に観察されていた(Skjoedt et al., 2009)。
【0264】
相対的結合レベルに対してMAP-1、MBL、フィコリン-2及び-3の血清濃度をプロットし、MAP-1及びMBL間の結合がMBLレベルと高く相関することが分かった(スピアマン r: 0.92, p<0.0001)(図3OB, 上部右側)。これと対照的に、フィコリン-2及び-3への相対的MAP-1結合は、MAP-1の血清レベルと相関する(スピアマン r: それぞれ0.45及び0.61, p<0.0001, 図3OB 左側)。MAP-1濃度とMBLへの結合及びフィコリン-3濃度との一定の相関関係が観察されたにもかかわらず、傾向はあまり明白でなかった。
【0265】
密度勾配分画
結合分子に関してMAP-1の分布を検討し、どれほど関係が無いか調べるために、10-30% スクロース勾配及び超遠心分離法を使用して正常ヒト血清を密度分画に供した。続いて、採取した画分をMAP-1、MASP-3、MBL、フィコリン-2及び-3に関してELISAで(図31A)、MAP-1、MASP-1、-2及び-3、sMAP、MBL、フィコリン-2及び-3に関してウエスタンブロッティングで分析した(図31B)。結果は、血清MAP-1がフィコリンを有する画分に唯一存在することを示し、MBLはMAP-1が非結合分子として存在しないことを示した。sMAP、MASP-1、-2及び-3に関して、同一のパターンが観察された。さらに、データは、MAP-1、sMAP及びMASP-1、-2及び-3の大部分がフィコリン-3のピーク画分中に共局在することを示す。この分布をまた、サイズ排除クロマトグラフィーによってsephadex-200 カラム上で分析した。分子の等価な分布パターンが観察された(データは図示せず)。
【0266】
最終的に、外因的に適用したC4を活性化するスクロース勾配画分の能力を評価した。固相マンナン及びアセチル化BSAを、MBL及びフィコリン-3、それぞれのためのリガンドとして使用した。スクロース勾配によって分離されたフィコリン-3及びMBL複合体のピークを反映する、2つの異なるC4析出曲線を観察した(図31C)。
【0267】
考察
新規MBL/フィコリン結合タンパク質1 (MAP-1) 構造側面を検討し血清レベルを証明するために、非標識、組換え型MAP-1を発現させ、それに対する特異的抗体を産生した。N-グリコシダーゼ F 処理及びSDS-PAGE 分析は、MAP-1がグリコシル化され、シグナルペプチドのない推定アミノ酸配列から算出される分子量に等価な、N-グリカンを有する分子量-45 kDa及び脱グリコシル化後の-40 kDaを生じることを示した。
【0268】
MAP-1 特異的C末端に対して産生されたモノクローナル抗体を使用して、定量的MAP-1 ELISAを確立し、100人の健康的なデンマーク人の供血者において血清濃度範囲を測定した。MASP-3濃度(平均: 6500 ng/ml) と比較して、ドナー群において相対的に低い血清濃度(平均: 240 ng/ml, 範囲 115-466 ng/ml)であることが分かった。さらに、2つのタンパク質の血清濃度間に相関関係はなく、2つの分子は同一遺伝子の選択的変異体であるが、発現の制御は異なることを示している。近頃、MASP-1、-3及びMAP-1の組織分布における顕著な違いが記載された(Degn et al., 2009; Skjoedt et al., 2010)。MASP-3及びMAP-1間の血清濃度の大きな違いの発見は、MASPl 遺伝子由来の転写物変異体の選択的制御機構の概念をさらに支持する。
【0269】
我々は、ELISAに基づくアッセイを展開し、血清 AP-1及びMBL、フィコリン-2及び-3それぞれの間の相対的相関を評価した。さらに、フィコリン-2、-3及びMBLの血清濃度を、相対的結合レベルと関係付けるために測定した。結果は、MAP-1が主にフィコリン-3及びフィコリン-2に結合され、MBLへの相対的結合性があまり明白でないことを示す。この分布が、MBL、フィコリン-2及び-3の平均血清濃度の相違を反映することを主張することができる。しかしながら、MAP-1血清濃度がフィコリン-2との結合レベルと相関するが、MBL-MAP-1結合はMBL濃度と相関するが、フィコリン-2に関してこれは同一であるとは明らかでない。フィコリン-3及びMAP-1間の相対的結合は、MAP-1血清濃度と非常に相関したが、フィコリン-3血清レベルへの正の相関関係は非常に弱かった。上記発見は、MAP-1及びフィコリン-2及び-3間の主たる結合が、単純にフィコリン-2及び-3の一般的な高濃度に起因するものでないことを示す。この分布パターンは、密度勾配分離に供した血清の分析によってさらに立証された。我々は、MAP-1だけでなく、sMAP、MASP-1、-2及び-3もまたフィコリン-3ピーク画分で共局在する明らかな傾向を発見した。これは、我々がMASP-3に関して以前に観察した現象である(Skjoedt et al., 2009)。フィコリン-3及びMBLピーク画分の分離はまた、アセチル化 BSA (フィコリン-3 リガンド)及びマンナン(MBLリガンド) 上に外因的に添加したC4を活性化する能力によって評価した。2つの異なる活性化表面上のC4析出は、MBL又はフィコリン-3複合体を含有する異なるピーク画分を明らかに説明した。
【0270】
スクロース勾配密度分析由来のデータはまた、MBLに関する質量に対する表面比が、フィコリン-2及びフィコリン-3より高く、これはMBLが四次構造において非常に緩いオープン構造を有することを示す最近の研究 (Jensenius et al., 2009) からの所見を支持することを示した。しかしながら、フィコリンの質量に対する表面比の小ささもまた、例えばMAP-1、sMAP及びMASPs等の結合分子との分子分布を反映し得る。この点に関して、MAP-1/sMAP/MASPsへより結合することは、高い質量及び密度勾配を通したさらなる移動をもたらすかもしれない。
【0271】
結論として、我々は、MASP-3と比較してMAP-1は低血清濃度で存在し、MAP-1は主にフィコリン、しかしながら幾分MBLとの複合体で循環することを示した。さらに我々は、フィコリン-3がLCP認識分子の間で主たるMAP-1結合分子であることを実証し得る。
【0272】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症、アポトーシス、自己免疫、凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した病状の治療において使用され、また、バイオマーカーとして使用される、新規フィコリン結合ポリペプチド、並びに、斯かるフィコリン結合ポリペプチド由来のポリペプチドに関する。本発明はさらに、このような新規フィコリン結合ポリペプチド及びそれに由来するポリペプチドを認識する抗体、このようなポリペプチドをコードする核酸分子、そのポリペプチドの生成において使用されるベクター及び宿主細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
補体系(C)の活性化は、3つの相違する開始経路:代替経路(AP)、古典経路(CP)、又はレクチン経路(LCP)を通して達成される。
APの活性化は異種表面上で生じ、C3の緩徐の自然加水分解及び機能的C3転換酵素C3bBbを形成するためのプロパージン因子、B因子及びD因子の活性によって引き起こされる。APはまた、2つの他の経路の増幅経路(増幅ループ)として機能する。近頃、代替の酵素アセンブリーがプロパージンの標的表面への非共有結合によって開始され得ることもまた示された。一方、CPの活性化は、C1qが抗原と複合体を形成して免疫グロブリンに結合する場合に開始され、Clq結合セリンプロテアーゼC1r及びC1sの活性化を誘発する。C1sは、C4及びC2を切断して活性化し、CPC3転換酵素C4b2aを形成する。LCPは、例えば、微生物の表面上でマンノース結合レクチン(MBL)又はフィコリンが炭水化物又はアセチル化化合物の制限型に結合する場合又は臨死の宿主細胞上に曝露される場合に活性化される。結合セリンプロテアーゼMASP-2はリガンドに結合すると、C4及びC2を活性化し切断し、LCPC3転換酵素C4b2aを形成する。MASP-1の機能は、C2のMASP-2切断の安定化を含み、C3の低度の切断を指示すると示唆されている。しかしながら、他の研究は、MASP-1及びMASP-2の機能及び活性をプロトロンビン、フィブリノゲン及び第XIII因子を含む凝固系クロストークと関連付けている。MASP1/3ノックアウトマウスを使用して、実際にMASP-1が補体活性に寄与することが近頃示された。極最近に発見されたMBL結合セリンプロテアーゼMASP-3の正確な機能は、解明されていない。MASP-3が制限範囲のMBLオリゴマーと結合し、MASP-3及び低分子MBL結合タンパク質(sMAP)がMBL依存性LCP補体活性化の制御又は抑制に関与することを示す研究が報告されている。
【0003】
MASP-1及び-3は、選択的スプライシングを通した同一のMASP1/3遺伝子(染色体3q27-q28上に存在する)に由来する。それらは、15C末端残基を除いた同一のA鎖を含む。A鎖は、EGF(上皮増殖因子)ドメインによって分離される2つのCUB(C1r/C1s, Urchin-EGF, 骨形成タンパク質)ドメインから成り、2つのCCPドメイン(補体調節タンパク質)が続く。セリンプロテアーゼドメインを含むB鎖は、MASP-1及びMASP-3に関して異なる。MASP-2及びsMAPはまた、同一遺伝子(染色体1p36-p36.2上に存在する)に由来し、当該sMAPはセリンプロテアーゼドメインを欠如する切断型でありA鎖の主要部である。MASP1/3遺伝子は多型であることが示されているが、この機能的重要性はまだあまり理解されていない。しかしながら、MASP2/sMAP遺伝子における多型は感染症のリスク増加と関連するという証拠が存在する。MASPsの発現は肝細胞に局在されるが、最近の研究で、ヒトMASP-3 mRNA(唯一のMASP-mRNAとして)は広範囲の組織で発現される、と記載された。
【0004】
本発明の目的
本発明の実施形態は、炎症、アポトーシス、自己免疫、凝固、及び/又は血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した病状の治療に適したポリペプチドを供することを目的とする。本発明のポリペプチドはさらに、これらの徴候の診断及び/又は予後診断、及び癌等の悪性疾患に適したバイオマーカーとなり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者によって、レクチン補体経路の認識分子と結合する新規ポリペプチド、及び例えばそれに由来する断片等のポリペプチドが、炎症、アポトーシス、自己免疫、凝固、及び/又は血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した特定の病状の治療に使用することができることが見出された。
【0006】
従って、第一の側面において、本発明は単離フィコリン結合ポリペプチドに関する。第二の側面において、本発明は配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド又はその変異体又は免疫性断片に関する。
【0007】
第3の側面において、本発明は、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体に関する。
【0008】
第4の側面において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離核酸分子に関する。
【0009】
さらなる側面において、本発明は、配列番号2の配列と少なくとも70%同一のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子に関する。
【0010】
さらなる側面において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離核酸分子を含むベクターに関する。
【0011】
さらなる側面において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞に関する。
【0012】
さらなる側面において、本発明は、本発明のポリペプチドを生成するための方法に関する。当該方法は、ポリヌクレオチドのコンストラクトの発現が可能な条件下で適切な成長培地において本発明の細胞を培養する工程、及び生じるポリペプチドを培地から回収する工程を含む。
【0013】
さらなる側面において、本発明は、本発明のポリペプチドを含む組成物に関する。さらなる側面において、本発明は、本発明のポリペプチドを含む医薬組成物に関する。
【0014】
さらなる側面において、本発明は、生物試料において本発明のポリペプチドを検出するための方法に関する。当該方法は:
a) 生物試料を得る工程;
b) 生物試料を本発明抗体と接触させる工程;
c) 抗体とポリペプチドとの複合体が存在する場合、試料中のポリペプチドの存在の指標として、当該複合体を検出する工程、
を含む。
【0015】
さらなる側面において、本発明は、医薬としての使用のための本発明のポリペプチドに関する。
【0016】
さらなる側面において、本発明は、医薬の調製のための本発明のポリペプチドの使用に関する。
【0017】
さらなる側面において、本発明は、炎症、アポトーシス及び/又は自己免疫と関連した任意の徴候の治療のための本発明のポリペプチドに関する。
【0018】
さらなる側面において、本発明は、凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した任意の徴候の治療のための本発明のポリペプチドに関する。
【0019】
さらなる側面において、本発明は、特定のハイリスク患者、例えば手術を受けている患者又はうっ血性心不全に罹患する患者等における、血栓塞栓性合併症の発生を予防するための本発明のポリペプチドに関する。
【0020】
さらなる側面において、本発明は、心臓と関連した病状の治療のための本発明のポリペプチドに関する。
【0021】
さらなる側面において、本発明は、フィコリン結合ポリペプチドの欠乏と関連した病状の治療のための本発明のポリペプチドに関する。
【0022】
さらなる側面において、本発明は、炎症、アポトーシス及び/又は自己免疫と関連した任意の徴候の治療のための方法に関する。当該方法は、本発明のポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0023】
さらなる側面において、本発明は、凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した任意の徴候の治療のための方法に関し、本発明のポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0024】
さらなる側面において、本発明は、例えば手術を受けている患者又はうっ血性心不全に罹患する患者等の特定のハイリスク患者において血栓塞栓性合併症を予防するための方法に関し、当該方法は、治療又は予防のための有効量の本発明のポリペプチドを、それを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0025】
さらなる側面において、本発明は、心臓と関連した病状の治療のための方法に関する。当該方法は、本発明のポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0026】
さらなる側面において、本発明は、フィコリン結合ポリペプチドの欠乏と関連した病状の治療のための方法に関し、当該方法は、本発明のポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0027】
さらなる側面において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列にストリンジェントな条件下でハイブリッド形成する能力がある核酸プローブに関する。
【0028】
さらなる側面において、本発明は、生物試料において本発明のポリペプチドをコードする核酸の存在を検出するための方法に関し、当該方法は
a) 生物試料を得る工程;
b) 生物試料を本発明の核酸プローブと接触させる工程;
c) 核酸プローブとポリペプチドをコードする核酸との複合体が存在する場合、試料におけるポリペプチドをコードする核酸の存在の指標として、当該複合体を検出する工程、
を含む。
【0029】
さらなる側面において、本発明は、フィコリン結合ポリペプチドの異常な発現と関連した障害を診断するための方法に関する。当該方法は、患者から生物試料を得る工程及びフィコリン結合ポリペプチドの生物試料においてその発現を測定する工程を含み、対照との比較による生物試料中のフィコリン結合ポリペプチドの発現の増加又は減少は、患者がフィコリン結合ポリペプチドの異常な発現と関連した障害に罹患することを示す。
【0030】
さらなる側面において、本発明は、フィコリン-1、2、3、マンノース結合レクチン(MBL)、C1q、肺サーファクタントタンパク質SP-A及び/又はSP-D、及び例えばCLL-11等の細胞内コラーゲン様防御分子から選択される1又は2以上のタンパク質との本発明のポリペプチドの組合せを含む単離組成物に関する。
【0031】
さらなる側面において、本発明は、本発明のポリペプチドを含む医薬組成物である組成物に関する。
【0032】
さらなる側面において、本発明は、医薬としての使用のための本発明の医薬組成物に関する。
【0033】
さらなる側面において、本発明は、医薬の調製のための本発明の組成物の使用に関する。
【0034】
さらなる側面において、本発明は、炎症、アポトーシス及び/又は自己免疫と関連した任意の徴候の治療のための本発明の医薬組成物に関する。
【0035】
さらなる側面において、本発明は、本願明細書において定義される任意の徴候の治療のための本発明の医薬組成物に関する。
【0036】
さらなる側面において、本発明は、本願明細書において定義される任意の徴候の治療のための方法に関し、当該方法は、本発明のポリペプチドの治療又は予防のための有効量と、フィコリン-1、2、3、及びマンノース結合レクチン(MBL)、C1q、肺サーファクタントタンパク質SP-A及び/又はSP-D、及び例えばCLL-11等の細胞内コラーゲン様防御分子から選択される1又は2以上のタンパク質を同時又は経時的に投与する工程を含む。
【0037】
さらなる側面において、本発明は、例えば脳腫瘍、肝腫瘍及び生殖器系における腫瘍等の癌疾患等の悪性疾患の診断及び/又は予後診断のための、本発明のポリペプチドの血液及び組織におけるバイオマーカーとしての使用に関する。
【0038】
さらなる側面において、本発明は、本願明細書において定義される自己免疫、代謝及び/又は炎症性病状の診断及び/又は予後診断のための、本発明のポリペプチドの血液及び組織におけるバイオマーカーとしての使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、MASP-1遺伝子の代替転写を表す。肝臓cDNAにおいてMASPl遺伝子の代替転写が検出された。MASPl、MASP3、及びFAP転写物は、エクソン6に位置する共通の順方向プライマー及びエクソン12(MASPl)、エクソン11(MASP3)、及びエクソン8a(FAP)に位置する特異的逆方向プライマーを使用して増幅した。MASPlは500 bpの断片を産生し、MASP3は506 bpの断片を産生し、FAPは309 bpの断片を産生する。
【図2】図2は、MASPl遺伝子の代替スプライシングを表す。MASPlは、共に終止コドン配列(黒枠で標識される)を含む8a及びエクソン11の切り出しによって生じる。MASPl配列は、エクソン17に終止コドンを含む。MASP3はエクソン8aの切り出しによって生じ、FAPはエクソン8aの切り出しが生じない場合に生じる。FAPタンパク質は、2つのCUBドメイン、EFGドメイン及び第一のCCP1ドメインを含む。
【図3】図3は、FAP断片の組織発現を表す。MASP-1、MASP3、及びFAP遺伝子の組織分布を、クロンテックから購入したcDNAパネルにおいて調べた。共通の順方向プライマー及び特異的逆方向プライマーを使用して、MASP-1、MASP-3、及びFAP転写物を増幅した。参照遺伝子としてGADPHを使用した。3つの遺伝子は何れも肝臓において高発現されており、さらに、心臓組織ではFAPが強く発現されていた(黒矢印で標識される)。FAP遺伝子の微量の発現が、脳、結腸、前立腺、骨格筋、及び小腸で検出された(白色矢印で標識される)。
【図4】図4は、MASP-1、MASP-3、及びFAPのアライメントを表す。MASP-1、MASP-3、及びFAPのタンパク質配列をBioEdit Softwareを使用して整列させた。MASP-1及びMASP-3は、異なるC末端セリンプロテアーゼドメインを含み、一方FAPは任意のセリンプロテアーゼドメインを含まない。代わりに、当該タンパク質はC末端領域に17個の新たなアミノ酸を含む。
【図5】図5は、FAPのcDNA配列及び対応するタンパク質配列を表す。cDNA配列を上列に示し、対応するタンパク質配列をその下に示す。エクソン領域を黒色の直線で分けた。MBL/フィコリンへの結合に関与すると考えられるアミノ酸を淡黄色枠で示す。
【図6】図6は、MASP-1の補体活性化を表す。ヒトMBLを増加量のMASP-1でインキュベートした。MASP-1は、C3及びC4補体タンパク質双方を活性化することができた。
【図7】図7は、MASP-2の補体活性化を表す。増加量のMASP-2でヒトMBLをインキュベートした。MASP-2は、C3とC4補体タンパクの両方を強く活性化することができた。
【図8】図8は、MASP-3の補体抑制を表す。ヒトMBLを増加量のMASP-3でインキュベートした。MASP-3は、C3及びC4補体タンパク質両方の活性化を抑制することができた。
【図9】図9は、免疫沈降を表す。mAb抗MBL131-11、抗フィコリン-2 クローン 219、及び抗フィコリン-3 クローン 334での血清フィコリン/MBLの免疫沈降。続いて、Dynal 磁気ビーズ分離、SDS-PAGE、シグナル抗体としてのビオチン標識抗MASP-l/MASP-3 クローン 8B3でのウエスタンブロットを行った。
【図10】図10は、FAPがアセチル化ヒト血清アルブミン(AcHSA)に結合される場合にフィコリンと相互作用することを表す。AcHSAに結合している溶出血清フィコリン。シグナル抗体としてのビオチン標識抗MASP-l/MASP-3 クローン8B3でのウエスタンブロット。
【図11】図11は、MASP-1及びMASP-3及び rフィコリン-2との間の相互作用に関する速度及び解離定数を表す(Hummelshoj T et al., MoI. Immunol., 2007)。
【図12】図12は、GULFとFAPの17個の特有のアミノ酸とのアライメントを表す。
【図13】図13は、マンナン/MBL ELISA アッセイにおけるC4の補体活性化を表す。マンナンコーティングのウェルを組換え型ヒトMBLの存在下又は不在下でインキュベートし、続いて段階希釈したMBL ホモ接合型欠乏血清とともにインキュベーションした。C4析出を、ポリクローナル抗C4c抗体を使用して測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図14】図14は、アセチル化BSA/フィコリン-3 ELISAアッセイにおけるC4の補体活性化を表す。AcBSAコーティングのウェルを、組換え型ヒトフィコリン3の存在下又は不在下でインキュベートし、続いて段階希釈したフィコリン-3ホモ接合型欠乏血清とともにインキュベートした。ポリクローナル抗C4c抗体を使用して、C4析出を測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図15】図15は、マンナン/MBL ELISA アッセイにおけるC4の補体活性化を表す。マンナンコーティングのウェルに組換え型ヒトMBLを加えてインキュベートし、続いて血清不含有培地上清としてrMASP-1の段階希釈物を一方の次元に沿って加えてインキュベートした。続いて、MBLホモ接合型欠乏血清の段階希釈物を第2の次元に沿って加えてインキュベートした。ポリクローナル抗C4c抗体を使用してC4析出を測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図16】図16は、AcBSA/フィコリン-3 ELISA アッセイにおけるC4の補体活性化を表す。AcBSA コーティングのウェルに組換え型ヒトフィコリン3を加えてインキュベートし、続いて血清不含有培地上清としてrMASP-1の段階希釈物を一方の次元に沿って加えてインキュベートした。続いて、フィコリン-3ホモ接合型欠乏血清の段階希釈物を第2の次元に沿って加えてインキュベートした。C4析出をポリクローナル抗C4c抗体を使用して測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図17】図17は、マンナン/MBL ELISAにおけるC4の補体活性化を表す。マンナンコーティングのウェルを組換え型ヒトMBLでインキュベートし、続いて血清不含有培地上清としてのrMASP-2の段階希釈物を一方の次元に沿って加えてインキュベートした。続いて、MBL ホモ接合型欠乏血清の段階希釈物を他方の次元に沿って加えてインキュベートした。ポリクローナル抗C4c抗体を使用してC4析出を測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図18】図18は、AcBSA/フィコリン-3 ELISAアッセイにおけるC4の補体活性化を表す。AcBSAコーティングのウェルに組換え型ヒトフィコリン3を加えてインキュベートし、続いて、血清不含有培地上清としてのrMASP-2の段階希釈物を一方の次元に沿って加えてインキュベーションした。フィコリン-3ホモ接合型欠乏血清の段階希釈物を他方の次元に沿って加えてインキュベートした。ポリクローナル抗C4c抗体を使用して、C4析出を測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図19】図19は、マンナン/MBL ELISAアッセイにおけるC4の補体活性化を表す。マンナンコーティングのウェルに組換え型ヒトMBLを加えてインキュベートし、続いて血清不含有培地上清としてのrMASP-3の段階希釈物を一方の次元に沿って加えてインキュベーションした。続いて、MBLホモ接合型欠乏血清の段階希釈物を他方の次元に沿って加えてインキュベートした。ポリクローナル抗C4c抗体を使用して、C4析出を測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図20】図20は、AcBSA/フィコリン-3 ELISAアッセイにおけるC4の補体活性化を表す。AcBSAコーティングのウェルに組換え型ヒトフィコリン3を加えてインキュベートし、続いて、血清不含有培地上清としてのrMASP-3の段階希釈物を一方の次元に沿って加えてインキュベーションした。続いて、フィコリン-3ホモ接合型欠乏血清の段階希釈物を他方の次元に沿って加えてインキュベートした。C4析出をポリクローナル抗C4c抗体を使用して測定した。エラーバーは、曲線上の各点の二重測定における標準偏差の2倍を示す。
【図21】図21は、FAP、MASP1及びMASP3の組織分布を表す。FAPは、MASP1及びMASP3と比較して心臓組織において非常に多量に発現された。FAPは、肝臓におけるFAP発現と比較して、心臓組織において3倍多く発現された。さらに、肝臓におけるMASP1及びMASP3発現と比較して、肝臓における高FAP発現が確認された。脳、骨格筋及び前立腺組織において、相当なFAP発現がまた検出された。実験を2通りに3回実施した。平均値の標準誤差を示す。
【図22】図22は、ポリクローナルマウス抗血清を使用したMAP-1の免疫組織化学的肝臓局在性が、タンパク質の17 FAP 特異的C末端残基に対して産生されたことを表す。対照染色は陰性であった。FAP(ウサギ及びマウス)に対して産生された複数の異なるポリクローナル抗体は、同一のパターンの染色を呈した。
【図23】図23は、MAP-1組織局在性の免疫組織化学的分析を表す(OM XlO)。左側のパネルは、mAb(12B11)でのMAP-1への染色を示す。右側パネルは、非関連 IgG1k mAbでのアイソタイプ対照染色を示す。(A-B): 心筋、(C-D): 骨格筋、(E-F): 肝臓試料、(G-H): 大動脈組織。下部の右側隅部のバーは、全てのスライド上で50 μmを示す。
【図24】図24は、MAP-1及びMASP-1/3血清複合体の免疫沈降を表す。(A) mAb 20C4(抗MAP-1) 及びmAb 8B3(抗MASP-1/3, 共通の重鎖上のエピトープを有する)を使用して、MAP-1及びMASP-1/3を血清から免疫沈降させた。減少量の試料をエレクトロブロットし、pAbでMAP-1へ又はビオチン標識mAbsでフィコリン-3(FCN334)及びMBL (Hyb 131-1) へ展開した。(B)1 ml、300 μl及び100 μl の血清からの、MBL(Hyb 131-11) 、フィコリン-2(FCN219) 及びフィコリン-3 (FCN334)へのmAbsでのそれぞれの免疫沈降(左側)。対照は、抗MAP-1 mAb 20C4を使用した、血清から沈殿させたMAP-1(sMAP-1) 及び培養上清由来のrMAP-1(rMAP-1)であった(右側)。MAP-1へのpAbでプローブしたウエスタンブロッティングによって試料を分析した。
【図25−1】図25−1は、MBL及びフィコリン-3媒介補体C4析出へのMASP-2及びMAP-1の影響を表す。C4析出は、C4へのポリクローナル抗体を使用して測定し、OD490-650nm 値として供する。エラーバーは、二重測定の標準偏差の2倍を示す。rMBL、rフィコリン-3 rMAP-1及びrMASP-2の近似濃度を図のラベルに供する。(A)MBL欠乏血清を使用した、マンナンコーティングされた表面上での、400ng/mlのrMBLでのC4析出の再構成。対照は、rMBLを添加しかなった。(B)rMASP-2のrMBL媒介C4析出への用量依存性効果。(C) rMAP-1のrMBL媒介C4析出への用量依存性効果。
【図25−2】図25−2は、MBL及びフィコリン-3媒介補体C4析出へのMASP-2及びMAP-1の影響を表す。C4析出は、C4へのポリクローナル抗体を使用して測定し、OD490-650nm 値として供する。エラーバーは、二重測定の標準偏差の2倍を示す。rMBL、rフィコリン-3 rMAP-1及びrMASP-2の近似濃度を図のラベルに供する。(D) フィコリン-3欠乏血清を使用した、AcBSA コーティングされ表面上での、400ng/ml のrフィコリン-3でのC4析出の再構成。対照は、rフィコリン-3を添加しなかった。(E) rMASP-2のrフィコリン-3媒介C4析出への用量依存性効果。(F) rMAP-1のrフィコリン-3媒介C4析出への用量依存性効果。
【図26】図26は、純系におけるMASP-2及びMAP-1の補体C4析出への影響を表す。マンナン表面上のrMBLに、rMASP-2の段階希釈物を一方の次元に沿って加えてプレインキュベートした。続いて、rMAP-1の段階希釈物を第2の次元に沿って加えて、続いて精製した1 μg/mlのC4を適用した。C4へのpAbでC4析出を測定し、OD490-650nm値として供する。エラーバーは、二重測定の標準偏差の2倍を示す。rMAP-1及びrMASP-2の近似濃度を図のラベルに供する。
【図27】図27は、rMAP-1のSDS-PAGE分析を表す。左側は、免疫ブロット分析 +/- N-グリコシダーゼ F 処置(ENDO-F)を示す。右側は、対応するクーマシー染色を示す。
【図28】図28は、較正曲線を表す。A) 正常ヒト血清(pNHS)のMAP-1欠乏プールへ適用したrMAP-1の2倍の段階希釈、又はPBS/0.05%tween/10 mM EDTAに希釈したrMAP-1の段階希釈での、mAb 20C4/mAb-8B3 両側ELISA によって生じた較正曲線。エラーバーは、8回測定の標準偏差の2倍を示す。B) MAP-1欠乏血清、正常ヒト血清及びrMAP-1を添加したMAP-1欠乏血清の免疫ブロット。
【図29−1】図29−1は、MAP-1血清濃度を表す。A) 100人のデンマーク人の供血者のMAP-1の血清濃度及び分布範囲。平均血清レベル: 240 ng/ml。範囲: 115-466 ng/ml。B) MASP-3とMAP-1血清レベルとの間の相関関係。
【図29−2】図29−2は、MAP-1血清濃度を表す。C) 血清の凍結及び融解の影響。血清を8回凍結、融解し、MAP-1レベルを各回で測定した。エラーバーは、二重測定の標準偏差の2倍を示す。
【図30A】図30Aは、100人のデンマーク人の供血者における、MAP-1とMBL、フィコリン-2及びフィコリン-3間の結合レベル(相対的O.D.490-650 nm単位)をそれぞれ表す。P値は、ノンパラメトリック両側t-検定によって得た。
【図30B】図30Bは、MAP-1血清レベルとMBL、フィコリン-2及びフィコリン-3への相対的結合との間の相関関係(左側)、及びMBL、フィコリン-2及びフィコリン-3血清レベルとMAP-1への相対的結合との相関関係(右側)を表す。ノンパラメトリックスピアマンの順位相関テストを使用して、相関関係のp-及びr-値を算出した。
【図31A】図31Aは、スクロース勾配超遠心分離法を表す。血清から採取した画分(1-27)を、10-30% スクロース密度勾配に供した。画分を特異的ELISAによって、MAP-1、MASP-3、MBL、フィコリン-2及び-3に関して分析した。血清IgM(19S)及びIgG (7S)のピークがグラフの最上部に示された。
【図31B】図31Bは、スクロース勾配超遠心分離法を表す。画分番号8-23を、免疫ブロッティングによって、MAP-1、MASP-1、MASP-3、sMAP、MASP-2、MBL、フィコリン-2及びフィコリン-3に関して分析した。
【図31C】図31Cは、スクロース勾配超遠心分離法を表す。画分1-27を、固定化アセチル化BSA(フィコリン-3リガンド)又はマンナン(MBLリガンド)上での、外因的に適用したヒトC4を活性化する能力によって分析した。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明者は、レクチン補体経路の認識分子と関連する40 kDaの新規血漿タンパク質を発見し、MASP-l/MASP-3の新規の代替転写物変異体としてこれを同定した。
【0041】
新規タンパク質 (本発明者は、FAP (フィコリン結合タンパク質)又はMAP-1 (MBL/フィコリン結合タンパク質-1)と名付けた)は、本発明者によって酵素ドメインを欠如するが、フィコリン/MBL 結合ドメインを含むことが示され、従ってMASPsの競合及び置換を通して補体及び凝固機能の制御及び抑制に関与すること、あるいはスカベンジャー又はシグナル機能に関与するタンパク質として相互排他的でないことが期待される。
【0042】
補体系及び/又は凝固カスケードの無制御の活性化は、全身性炎症及び敗血症から心筋梗塞及び 自己免疫に渡る様々な疾患における致死的な重度の転帰と強く関連する。
【0043】
凝固及び 補体活性化の抑制は、治療手段の候補であることが示される。
【0044】
本発明は、補体の新規な阻害剤候補及び凝固機能の双方を説明する。また、本発明のポリペプチドは、例えばスカベンジャー及び/又はシグナル機能等の他の機能も有することができる。さらに、悪性疾患、自己免疫、代謝及び/又は炎症性病状を含む複数の疾患症状において、それは新規のバイオマーカーとして使用することができる。
【0045】
本発明者は、インビボ(in vivo)で存在する血漿タンパク質、名称フィコリン結合タンパク質(FAP)を発見し、それが主にフィコリンと関連するが(図9)、マンノース結合レクチンと関連する可能性もあることを示した。NCBIのヌクレオチドデータベースを検索することによって、本発明者はそれがMASP-1の切断型に相当する転写変異体の候補であることを発見した。この配列に基づいて、推定の新規の遺伝子転写物を増幅するためにプライマーをデザインした。続いて、ヒト肝臓cDNAを使用して、MASP-1遺伝子の新規の代替転写物変異体(図1)を同定した。このmRNA系の配列を決定し、それによりアミノ酸配列を決定したが、これは血漿/血清中の40 kDaの観察されたタンパク質の分子量に相当する(図 5)。新規タンパク質は、MASP-1及びMASP-3と部分的に同一であるが、セリンプロテアーゼドメインを欠如するものの、17個のアミノ酸、続く終止コドンをコードする新規エクソンを含む。このエクソンをMASP1及びMASP3の転写物中で切り出した(図2)。mRNA発現ライブラリーのパネルを使用することによって、本発明者はこのタンパク質が心臓及び肝臓、続いて骨格筋において強く発現される証拠を発見した(図3)。弱い発現が、脳、消化管、前立腺及び脾臓において観察された(図3)。Taqmanアッセイによって、発現が心臓及び肝臓細胞において確認された。FAPは、MASP1及びMASP3と比較して心臓組織において多量に発現された。FAPは、肝臓におけるFAP発現と比較して3倍高く心臓組織において発現された。さらに、肝臓におけるMASP1及びMASP3発現と比較して、高FAP発現が肝臓において観察された。相当なFAP発現が、脳、骨格筋及び前立腺組織においてもまた検出された。実験を2通りに3回実施した。
【0046】
心臓における高発現は非常に顕著であり、これにより本発明者は、自己免疫、 代謝及び/又は例えば心臓と関連した病状等の炎症性病状における組織損傷に対する非常に有用なプロテクターとしての、本発明のポリペプチドの使用を提案することとなった。本発明者は、フィコリン及びマンノース結合レクチンによって開始される補体活性を評価するアッセイを確立し、これによりFAPの機能的補体抑制の可能性を示すことができた。
【0047】
本発明者は、異なる組織における正確な相対発現レベルを測定するためのリアルタイム定量的アッセイを確立した。本発明のポリペプチドは、組換え技術によって産生することができる。FAPポリクローナル及びモノクローナル特異的抗体それぞれを得るために、ウサギ又はマウスを特有の17個のアミノ酸長のペプチドで免疫することができる。
【0048】
特異的FAP抗体は、異なる組織におけるFAPの定量的測定及び免疫組織化学的検出のために使用することができる。
【0049】
本願明細書で説明されるように、FAPと異なる結合パートナーとの間の結合定数は、ELISAにおいて及び表面プラスモン共鳴技術(Biacore)を使用することによって決定することができる。
【0050】
例えば特異的細胞表面結合受容体等のFAP特異的受容タンパク質は、例えばタンパク質が細胞に直接結合されるアッセイ等の、当業者に周知の標準的なアッセイによって同定することができる。
【0051】
新規タンパク質フィコリン結合タンパク質(FAP)は、MASPlの代替スプライシング変異体である。タンパク質は、セリンプロテアーゼドメインを欠如するが、補体系のレクチン経路の発動因子への結合に関与するドメインを含む。従って、本発明者は、MASPsの競合及び置換を通して当該タンパク質がMASP-1及びMASP-3の機能(補体, 凝固機能及び他の酵素基質)の制御及び抑制に関与することを期待する。あるいは、相互排他的でないFAPが、内因性老棄物又は病原体に結合されるFAP/MBL/フィコリン複合体の除去を促進するスカベンジャー分子として機能し得る。
【0052】
補体系の無制御な活性化及び凝固カスケードは有害転帰と関連し、例えば本発明のポリペプチド等の機能的阻害剤は、補体系の制御及び凝固カスケードに非常に有用となり得る。さらに、本発明のポリペプチドは、他の状況において使用することができる。他の側面は、異なる疾患状態においてタンパク質をバイオマーカーとして使用することであろう。
【0053】
タンパク質は特有であり、新規薬剤及び/又は新規診断用手段の基盤を提供することができる。
【0054】
配列番号4のアミノ酸配列又はその免疫性断片又は変異体を含む本発明のポリペプチドは、このアミノ酸配列と関連した特異的機能を有することができる。本発明者によって、当該ポリペプチドが、DNMTl DNA(シトシン-5-)-メチルトランスフェラーゼ 1 (DNMTl)、ゴルジサブファミリーBメンバー1 (GOLGBl)、Aキナーゼアンカータンパク質9(AKAP9)、B及びTリンパ球結合タンパク質(CD272抗原)、PTBドメイン含有貪食受容タンパク質1(GULP)、及びMACROドメイン含有タンパク質2から選択される1又は2以上のタンパク質の活性に相当する機能又は活性を有し得るということが示唆されている。
【0055】
特定の興味深い一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、PTBドメイン含有貪食受容タンパク質1(GULP)の活性に相当する機能又は活性を有する。
【0056】
定義
本願明細書において用語「フィコリン結合ポリペプチド」とは、天然のヒトフィコリン結合タンパク質(FAP)(配列番号 1)のアミノ酸配列20-380又は配列番号9の16-363のアミノ酸配列を含む任意のタンパク質又はポリペプチド、それらの機能的変異体、機能的切断型、及び機能的誘導体又は複合物であって、ポリペプチドが補体活性を有しないが、フィコリン-3、MBL、C1q、肺サーファクタントタンパク質SP-A及び/又はSP-D及び/又はCL-L1(及び他のコレクチンファミリーメンバー)への結合のためのMASP-1、MASP-2、又はMASP-3と競合する能力を有するものを意味する。これは、配列番号1を有するヒトフィコリン結合ポリペプチド(FAP)及びその変異体を含むがこれらに限定されない。
【0057】
本願明細書において用語「フィコリン結合タンパク質(FAP)」とは、(例えばアミノ酸配列20-380等のシグナルペプチドを有する又は有しない)天然のヒトFAP(配列番号1)のアミノ酸配列1-380を有するタンパク質、その天然の対立遺伝子変種及びその相同体を意味する。それはまた、それらのタンパク質が実質的にFAPの活性を有する限り、例えばN又はC末端アミノ酸の欠損又は付加を含む修飾N又はC末端等の一部が修飾されたアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。用語「フィコリン結合タンパク質(FAP)」とは、本明細書において用語「MAP-1」又は「MBL/フィコリン結合タンパク質-1」と互換的に使用される。上記定義内の「FAP」はまた、一個体から他の個体へ存在し且つ生じ得る天然の対立遺伝子変種を含む。当該用語はまた、例えばウシ、ブタ、イヌ、ウマ、ラット、及びマウス等のヒト以外の他種由来の相同配列及び同様の機能を有するタンパク質を含む。また、グリコシル化又は他の翻訳後の修飾の程度及び位置は、選択の宿主細胞及び宿主細胞環境に応じて変化しうる。
【0058】
用語「MBL結合セリンプロテアーゼ-1」又は「MASP-1」とは、本願明細書において、天然のヒトMASP-1(配列番号5)のアミノ酸配列1-699(例えばアミノ酸配列20-699等のシグナルペプチドを有する又は有しない)を有するタンパク質、その天然の対立遺伝子変種及び相同体を意味する。当該配列は、1又は2以上のペプチド鎖中に、例えば天然のヒトタンパク質の2本鎖中に、すなわち、H及び軽鎖中に存在し得ることが理解される。
【0059】
用語「MBL結合セリンプロテアーゼ-3」又は「MASP-3」とは、本願明細書において、天然のヒトMASP-3(配列番号7)のアミノ酸配列1-728(例えばアミノ酸配列20-728等のシグナルペプチドを有する又は有しない)を有するタンパク質、その天然の対立遺伝子変種及び相同体を意味する。当該配列は、1又は2以上のペプチド鎖中、例えば天然のヒトタンパク質の2本鎖中、すなわち、H及び軽鎖等の中に存在し得ることが理解される。
【0060】
用語「MBL結合セリンプロテアーゼ-2」又は「MASP-2」とは、本願明細書において、天然のヒトMASP-2(配列番号9)のアミノ酸配列1-686(例えばアミノ酸配列 16-686等のシグナルペプチドを有する又は有しない)を有するタンパク質、その天然の対立遺伝子変種及び相同体を意味する。当該配列は、1又は2以上のペプチド鎖中に、例えば天然のヒトタンパク質の2本鎖中に、すなわち、H及び軽鎖に存在し得ることが理解される。
【0061】
用語「低分子MBL結合タンパク質」、「sMAP」、「19 kD のMBL結合血漿タンパク質」又は、「MApl9」とは、本願明細書において、天然のヒトsMAP(配列番号 11)のアミノ酸配列 1-185(例えばアミノ酸配列 16-185等のシグナルペプチドを有する又は有しない)を有するタンパク質、その天然の対立遺伝子変種及び相同体意味する。
【0062】
用語「変異体」は、本願明細書において、1又は2以上のアミノ酸が他のアミノ酸によって置換されている、及び/又は1又は2以上のアミノ酸が欠損している及び/又は1又は2以上のアミノ酸がポリペプチド中に挿入されている、及び/又は1又は2以上のアミノ酸が当該ポリペプチドへ付加されている配列番号 1の配列を有するフィコリン結合ポリペプチド又は配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドを指定することを目的とする。このような付加は、N末端又はC末端又は双方で起こり得る。本定義中の「変異体」は、さらに機能的活性を有する。一部の実施形態において、変異体は、配列番号1の配列と70 % 配列同一性を有する。一部の実施形態において、変異体は配列番号1の配列と80 % 配列同一性を有する。他の実施形態において、変異体は、配列番号 1の配列と90 % 配列同一性を有する。さらなる実施形態において、変異体は、配列番号1の配列と95 % 配列同一性を有する。一部の実施形態において、変異体は、配列番号4の配列と70 % 配列同一性を有する。一部の実施形態において、変異体は、配列番号4の配列と80%配列同一性を有する。他の実施形態において、変異体は、配列番号4の配列と90 % 配列同一性を有する。さらなる実施形態において、変異体は、配列番号4の配列と95 % 配列同一性を有する。用語「機能的変異体」、「機能的切断型」、及び「機能的誘導体」は、本願明細書において、ポリペプチドが配列番号1の不可欠な配列部分を含み、補体活性及び/又はセリンプロテアーゼ活性を有することなしに少なくともフィコリン又はMBLへの結合のためのMASP-1 又は MASP-3と競合する能力を有する、配列番号 1の変異体、切断型、及び誘導体を意味する。フィコリン結合ポリペプチドは、変異体、及び/又は切断型及び/又は誘導体であることから選択される2又は3個の特徴を有することができることが理解される。
【0063】
フィコリン結合ポリペプチドの機能的変異体は、本明細書において説明するアッセイにおいて試験した場合に、同一細胞型において産生された野生型FAPの特異的活性の、少なくとも約25%、例えば少なくとも約50%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約90%を示すものを含む。
【0064】
用語「免疫性断片」とは、本願明細書において、本質的に同一の機能活性及び抗体によって認識される同一の空間方向性を有するアミノ酸配列の断片を意味する。従って、特異的抗体は、ポリペプチド及びその免疫性断片の両方を結合し得る。
【0065】
用語「他のアミノ酸」は、本願明細書において、その位置において天然に存在するアミノ酸と異なるアミノ酸を意味する。これは、ポリヌクレオチドによってコードされ得るアミノ酸を含むがこれに限定されない。一部の実施形態において、異なるアミノ酸は、天然のL型中に存在し、ポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【0066】
用語「誘導体」とは、本願明細書において、親ペプチドの1又は2以上のアミノ酸が、例えば、アルキル化、ペグ化、アシル化、エステル形成又はアミド形成等によって化学的に修飾されている、野生型ヒトFAPに関連した実質的に同一又は改良された生物活性を示しているフィコリン結合ポリペプチドを指定することを目的とする。
【0067】
用語「補体活性」とは、本願明細書において、補体系を活性化する能力を意味する。補体活性は、「アッセイ」との見出し部分で説明するアッセイで測定することができる。
【0068】
用語「マンノース結合レクチン(MBL)」とは、本願明細書において、マンナン結合レクチン、マンノース結合タンパク質(MBPl)、及びマンナン結合タンパク質もまた意味し、これらの用語は互換的に使用することができる。
【0069】
用語「結合する能力がある」とは、本願明細書において、補体系のレクチン経路の1又は2以上の発動因子又は当該ポリペプチドの効果に関与し得る他のタンパク質に溶液中で特異的に結合する本発明のタンパク質の能力を意味する。
【0070】
用語「コンストラクト」とは、目的のポリペプチドをコードする完全又は部分的な天然に生じるヌクレオチド配列に基づき得るポリヌクレオチドセグメントを示すことを目的とする。コンストラクトは、任意には他のポリヌクレオチドセグメントを含んでよい。同様に、用語「ポリヌクレオチドコンストラクトによってコードされ得るアミノ酸」とは、上記のポリヌクレオチドコンストラクトによってコードされ得るアミノ酸、すなわち、例えばAla、VaI、Leu、He、Met、Phe、Trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp及びGln等のアミノ酸を含む。
【0071】
用語「ベクター」とは、本願明細書において、宿主細胞中で増幅能力がある任意の核酸を意味する。従って、ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、染色体外の核酸として存在し、その複製が染色体複製から独立しているベクターとすることができ、例えば、プラスミドである。あるいは、ベクターは、宿主細胞中に導入された場合に、宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、そして組み込まれている染色体と共に複製されるベクターである。ベクターの選択は、度々それが導入される宿主細胞次第となり得る。ベクターは、プラスミドベクター、ファージベクター、ウイルス又はコスミドベクターを含むがこれに限定されない。ベクターは通常、複製開始点及び少なくとも1つの選択可能な遺伝子、すなわち、容易に検出可能な生成物又は細胞成長に必須であるその生成物をコードする遺伝子を含む。
【0072】
さらなる側面において、本発明は、上記ポリヌクレオチドコンストラクト又はベクターを含む組換え型宿主細胞を供する。一部の実施形態において、組換え型宿主細胞は、真核細胞である。他の実施形態において、組換え型宿主細胞は、哺乳類起源である。さらなる実施形態において、組換え型宿主細胞は、CHO細胞、HEK細胞及びBHK細胞から成る群から選択される。
【0073】
用語「宿主細胞」とは、本願明細書において、異種性DNAが発現され得るハイブリッド細胞を含む任意の細胞を表す。典型的な宿主細胞は、昆虫細胞、酵母細胞、例えばBHK、CHO、HEK、及びCOS細胞等のヒト細胞を含む哺乳類細胞を含むがこれに限定されない。本発明の実施において、培養されている宿主細胞は、好ましくは哺乳類細胞であり、より好ましくは確立された哺乳類株細胞であり、CHO(例えば、ATCC CCL 61)、COS-1(例えば、ATCC CRL 1650)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞及びHEK293(例えば、ATCC CRL 1573; Graham et al., J. Gen. Virol. 36: 59-72, 1977)株細胞を含むがそれらに限定されない。好適なBHK株細胞は、tk- ts13 BHK 株細胞(Waechter and Baserga, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79: 1106-1110, 1982)であり、以下BHK570細胞と呼ぶ。BHK 570株細胞は、ATCC受入番号CRL10314で、American Type Culture Collection, 12301 Parklawn Dr., Rockville, MD 20852から利用できる。tk- ts13 BHK株細胞は、受入番号CRL 1632でATCCからもまた利用できる。他の適した株細胞は、ラット Hep I (ラット肝細胞腫; ATCC CRL 1600)、ラットHep II(ラット肝細胞腫; ATCC CRL 1548)、TCMK(ATCC CCL 139)、ヒトの肺(ATCC HB 8065)、NCTC 1469 (ATCC CCL 9.1)及びDUKX細胞(Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. ScL USA 77:4216-4220, 1980)を含むがそれに限定されない。3T3細胞、Namalwa細胞、骨髄腫及び骨髄腫と他の細胞との融合もまた有用である。
【0074】
さらなる側面において、本発明は、ポリヌクレオチドコンストラクトを含有及び発現している遺伝子導入動物を供する。
【0075】
さらなる側面において、本発明は、ポリヌクレオチドコンストラクトを含有及び発現している遺伝子導入植物を供する。さらなる側面において、本発明は、本発明のフィコリン結合ポリペプチドを生成するための方法であって、ポリヌクレオチドコンストラクトの発現が可能な条件下で適切な成長培地においてポリヌクレオチドコンストラクトを含む細胞を培養する工程、及び生じるポリペプチドを培地から回収する工程を含む方法に関する。
【0076】
本願明細書において、用語「適切な成長培地」とは、細胞の成長及び本発明のフィコリン結合ポリペプチドをコードする核酸配列の発現に必要な栄養分及び他の成分を含有する培地を意味する。
【0077】
さらなる側面において、本発明は、フィコリン結合ポリペプチドを生成するための方法であって、遺伝子導入動物によって産生された乳からポリペプチドを回収する工程を含む方法に関する。
【0078】
さらなる側面において、本発明は、フィコリン結合ポリペプチドを生成するための方法であって、ポリヌクレオチドコンストラクトを含む遺伝子導入植物の細胞を培養する工程、及び生じる植物からポリペプチドを回収する工程を含む方法に関する。
【0079】
本明細書において、用語「治療」とは、組織損傷を抑制又は最小化することを目的とした、適切な補体活性化に関与する、例えば炎症及び再灌流傷害等の予期病状の予防、及び例えば心筋梗塞及び脳卒中等の既に生じている病状の制御のいずれも含むことを意味する。従って、本発明のフィコリン結合ポリペプチドの予防投与は、用語「治療」に含まれる。
【0080】
用語「対象」とは、本願明細書において、任意の動物、特にヒト等の哺乳類を意味することを目的とし、必要に応じて用語「患者」と互換的に使用することができる。
【0081】
用語「配列同一性」とは、当技術分野で周知のように、2つ又はそれ以上のポリペプチド分子及び2つ又はそれ以上の核酸分子の配列間の関係を意味し、その配列を比較することによって決定される。当技術分野で、「同一性」はまた、核酸分子間又はポリペプチド間の配列関連性の程度を意味し、場合によっては、2つ又はそれ以上のヌクレオチド残基又は2つ又はそれ以上のアミノ酸残基の配列間の一致の数によって決定される。「同一性」は、特定の数学モデル又はコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって検討されるギャップアライメント(存在する場合)で2つ又はそれ以上の配列の中の短いものとの間の一致のパーセントを測定する。
【0082】
用語「類似性」とは、「同一性」と関連した概念であるがそれとは大きく異なり、同一の一致及び保存的置換(conservative substitution)の一致の双方を含む配列関係性を意味する。例えば、2つのポリペプチド配列が(割合(10/20)の)同一のアミノ酸を有し、残りがすべて非保存的置換である場合、パーセント同一性及び類似性はいずれも50%である。同一の例において、保存的置換が5以上の位置に存在する場合、パーセント同一性は50%のままであるが、パーセント類似性は75%((割合(15/20)))である。従って、保存的置換が存在する場合、2つのポリペプチド間の類似性の程度は、それらの2つのポリペプチド間のパーセント同一性より高くなるであろう。
【0083】
配列番号1のアミノ酸配列への保存的修飾(及びコード化ヌクレオチドへの対応する修飾)は、天然に生じるFAPと同様の機能的及び化学的特性を有するフィコリン結合ポリペプチドを生成するであろう。対照的に、フィコリン結合ポリペプチドの機能的及び/又は化学的特性における実質的な修飾は、(a) 例えば、シート又はらせん形構造として、置換領域における分子骨格の構造、(b) 標的部位における分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の大部分を維持することへのそれらの影響の点で顕著に異なる置換を配列番号1のアミノ酸配列において選択することによって達成される。
【0084】
例えば、「保存的アミノ酸置換」は、置換位置におけるアミノ酸残基の極性又は電荷への影響がほとんど又は全くないような、天然のアミノ酸残基の非天然の残基との置換を含んでよい。さらに、「アラニン系統的変異導入法」に関してこれまでに説明されるように、ポリペプチド中の任意の天然の残基はアラニンと置換されてもよい(例えば、アラニン系統的変異導入法について考察される、MacLennan et al., 1998, Acta Physiol. Scand. Suppl. 643: 55-67; Sasaki et al., 1998, Adv. Biophys. 35: 1-24を参照されたい)。
【0085】
望ましいアミノ酸置換(保存的又は非保存的)は、このような置換が望まれる時に当業者によって決定することができる。例えば、アミノ酸置換は、本明細書において説明するように、フィコリン結合ポリペプチドの重要な残基を同定する、又はフィコリン結合ポリペプチドの親和性を増大又は減少するために使用することができる。
【0086】
天然に生じる残基は、共通の側鎖特性に基づいて分類することができる:
1) 疎水性: ノルロイシン、Met、Ala、VaI、Leu、Ile;
2) 中性の親水性: Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
3) 酸性: Asp、Glu;
4) 塩基性: His、Lys、Arg;
5) 鎖の方向性に影響する残基: Gly、Pro;
6) 芳香族: Trp、Tyr、Phe。
【0087】
例えば、非保存的置換は、これらの中の1つの分類の1つのメンバーの他の分類からの交換を含むことができる。これらの置換された残基は、非ヒトフィコリン結合ポリペプチドと相同であるヒトフィコリン結合ポリペプチドの領域、又はその分子の非相同領域中に導入され得る。
【0088】
このような変更において、アミノ酸の疎水性親水性指標を考慮することができる。各アミノ酸に、その疎水性及び電荷特性に基づいて疎水性親水性指標が割り当てられている。これらは次の通りである:
イソロイシン(+4.5); バリン(+4.2); ロイシン (+3.8); フェニルアラニン (+2.8); システイン/シスチン (+2.5); メチオニン (+1.9); アラニン (+1.8); グリシン (- 0.4); スレオニン (-0.7); セリン (-0.8); トリプトファン (-0.9); チロシン (-1.3); プロリン (-1.6); ヒスチジン (-3.2); グルタマート (-3.5); グルタミン (-3.5); アスパルタート (-3.5); アスパラギン (-3.5); リジン (-3.9); 及びアルギニン (-4.5)。
【0089】
タンパク質に相互作用的生物機能を与えることにおけるアミノ酸の疎水性親水性指標の重要性は、当技術分野で理解されている(例えば、Kyte et al., J. MoI. Biol., 157: 105-131 (1982)を参照されたい)。特定のアミノ酸が、同様の疎水性親水性指標又はスコアを有し、且つ同様の生物活性を有する他のアミノ酸に置換され得ることは周知である。疎水性親水性指標に基づいた置換において、疎水性親水性指標の違いが+2以内であるアミノ酸の置換が好適であり、+1以内であるものが特に好適であり、+0.5以内であるものがより特に好適である。
【0090】
今回の場合など、特に置換によって作られる生物学的、機能的に等価なタンパク質又はペプチドが免疫具現化における使用を対象とする場合に、親水性に基づいて同類アミノ酸の置換を効率的に行うことができることはまた、技術的に理解されている。その隣接アミノ酸の親水性によって支配されるタンパク質の最も高い局所平均親水性は、その免疫原性及び抗原性と、すなわち、タンパク質の生物学的特性と相関がある。
【0091】
次の親水性値は、アミノ酸残基に割り当てられている: アルギニン (+3.0); リジン ('3.O); アスパルタート (+3.0+1); グルタマート (+3.0+1); セリン (+0.3); アスパラギン (+0.2); グルタミン (+0.2); グリシン (0); スレオニン (-0.4); プロリン (-0.5+1); アラニン (-0.5); ヒスチジン (-0.5); システイン (-1.0); メチオニン (-1.3); バリン (-1.5); ロイシン (-1.8); イソロイシン (- 1.8); チロシン (-2.3); フェニルアラニン (-2.5); トリプトファン (-3.4)。同様の親水性値に基づいて置換することにおいて、親水性値の差が+2以内であるアミノ酸の置換が好適であり、+1以内であることが特に好適であり、+0.5以内であることがより特に好適である。親水性に基づいた一次アミノ酸配列からエピトープを同定することもまたできる。これらの領域は、「エピトープコア領域」とも呼ぶ。
【0092】
当業者は、周知技術を使用して、配列番号1において説明されるポリペプチドの適した変異体を決定することができるであろう。活性を損失することなく置換することができる分子の適した領域を同定するために、当業者は活性に重要と考えられていない領域を標的とするであろう。例えば、同一種又は他種由来の同様の活性を有する類似ポリペプチドが知られている場合、当業者はフィコリン結合ポリペプチドのアミノ酸配列をこのような類似ポリペプチドと比較するかもしれない。このような比較で、類似ポリペプチド間で保存されている分子の残基及び部分を同定することができる。当然のことながら、このような類似ポリペプチドに関連がある、保存されていないフィコリン結合ポリペプチドの領域における変化は、フィコリン結合ポリペプチドの生物活性及び/又は構造に悪影響を与える可能性は低いであろう。当業者は、相対的に保存された領域でさえ、活性を有しながら、化学的に同様のアミノ酸を天然に生じる残基と置換することができることもまた分かるであろう(保存的アミノ酸残基置換)。従って、生物活性又は構造に重要となり得る領域でさえ、生物活性を損失することなく又はポリペプチド構造に悪影響することなく保存的アミノ酸置換に供することができるであろう。
【0093】
さらに、当業者は、類似ポリペプチド中の活性又は構造に重要な残基を同定する構造機能試験を再考察することができる。このような比較を考慮して、類似ポリペプチドの活性又は構造に重要であるアミノ酸残基に対応するフィコリン結合ポリペプチドにおけるアミノ酸残基の重要性を予測することができる。当業者は、本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドのこのような予想される重要なアミノ酸残基に関する化学的に類似のアミノ酸の置換を選択することができる。
【0094】
当業者は、三次元構造及びアミノ酸配列もまた、類似ポリペプチド中のその構造との関連で分析することができる。その情報を考慮して、当業者はその三次元構造に関してフィコリン結合ポリペプチドのアミノ酸残基のアライメントを予測することができる。このような残基は他の分子との重要な相互作用に関与し得るので、当業者は、タンパク質の表面上にあることが予想されるアミノ酸残基の根本的な変化とならないように選択することができる。さらに、当業者は、各目的のアミノ酸残基における単一アミノ酸置換を含有する試験変異体を生成することができる。続いて変異体は、本明細書において説明する活性アッセイを使用してスクリーニングすることができる。このような変異体は、適した変異体について情報を収集するために使用することができるであろう。例えば、活性の損失、望まない活性の減少、又は不適当な活性をもたらす特定のアミノ酸残基への変化を発見した場合、かかる変化を有する変異体を回避することができるであろう。言い換えると、このような通例の実験から収集した情報に基づいて、当業者はさらなる置換を単独で又は他の突然変異と共に回避すべきであるアミノ酸を容易に決定することができる。
【0095】
多数の科学論文が、二次構造の予測を扱ってきた。Moult J., Curr. Op. in Biotech., 7(4):422-427 (1996), Chou et al., Biochemistry, 13(2):222-245 (1974); Chou et al., Biochemistry, 113(2):211-222 (1974); Chou et al., Adv. Enzymol. Relat. Areas MoI. Biol, 47:45-148 (1978); Chou et al., Ann. Rev. Biochem., 47:251-276及びChou et al., Biophys. J., 26:367-384 (1979)を参照されたい。さらに、コンピュータプログラムは、二次構造の予測の補助として現在利用できる。二次構造を予測する1つの方法は、相同的モデル化に基づいている。例えば、30%以上の配列同一性、又は40%以上の配列類似性を有する2つのポリペプチド又はタンパク質はしばしば同様の構造形態を有する。タンパク質構造データベースの最近の発展(PDB)は、ポリペプチド又はタンパク質の構造内の折り畳みの数の予測を含む二次構造の予測の改善を供している。Holm et al., Nucl. Acid. Res., 27(l):244-247 (1999)を参照されたい。一定のポリペプチド又はタンパク質中の折り畳みの数には限りがあり、一度構造の臨界数が分解されると、構造予測の正確性が著しく増大するであろうということが示唆されている(Brenner et al., Curr. Op. Struct. Biol., 7(3):369-376 (1997))。
【0096】
二次構造を予測するさらなる方法は、「スレディング法」を含む(Jones, D., Curr. Opin. Struct. Biol., 7(3):377-87 (1997); Sippl et al., Structre, 4(l): 15-9 (1996)), 「profile analysis」 (Bowie et al., Science, 253: 164-170 (1991); Gribskov et al., Meth. Enzymol., 183: 146-159 (1990); Gribskov et al., Proc. Nat. Acad. Sci., 84(13):4355-4358 (1987)), 及び 「evolutionary liinkage」 (Home, supra, and Brenner, supraを参照されたい)。
【0097】
関連ポリペプチドの同一性及び類似性は、周知の方法によって容易に算出することができる。このような方法は、以下において説明される方法を含むがこれに限定されない。Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analusis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analusis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; Sequence Analusis primaer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York, 1991; 及びCarillo et al., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988)。
【0098】
同一性及び/又は類似性を決定する好適な方法は、試験される配列間の最大の一致を供するようデザインされる。同一性及び類似性を決定する方法は、公的に利用できるコンピュータプログラムにおいて説明される。2つの配列間の同一性及び類似性を決定する好適なコンピュータプログラム方法は、GAPを含むGCG program packageを含むがこれに限定されない(Devereux et al., Nucl. Acid. Res., 12:387 (1984); Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.), BLASTP, BLASTN, and FASTA (Altschul et al., J. MoI. Biol., 215:403-410 (1990))。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information (NCBI)及び他の供給源から公的に利用できる(BLAST Manual, Altschul et al. NCB/NLM/NIH Bethesda, Md. 20894; Altschul et al., supra)。周知のSmith Waterman アルゴリズムもまた同一性を決定するために使用することができる。
【0099】
2つのアミノ酸配列を整列するための特定のアライメント模式図は、2つの配列の短領域のみの一致をもたらし、2つの全長配列間には顕著な関係がなくてもこの小さな整列領域は非常に高い配列同一性を有するであろう。従って、好適な実施形態において、選択アライメント方法 (GAPプログラム)は、標的ポリペプチドの少なくとも50個の近接アミノ酸に及ぶアライメントをもたらすであろう。例えば、コンピュータアルゴリズム GAP (Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.)を使用して、パーセント配列同一性が決定される2つのポリペプチドを、それらの各アミノ酸の最適な一致(アルゴリズムによって決定される「一致スパン」)のために整列させる。ギャップ開始ペナルティ(gap opening penalty)(3回算出される, 平均対角(diagonal)であり; 「平均対角」とは、使用されている比較マトリックスの対角の平均であり; 「対角」とは、特定の比較マトリックスによって各完全なアミノ酸一致に割り当てられるスコア又は数である)及びギャップ伸長ペナルティ(通常、{割合(1/10)}×ギャップ開始ペナルティである)、及び例えばPAM 250又はBLOSUM 62等の比較マトリックスを、アルゴリズムと併せて使用する。標準比較マトリックス(Dayhoff et al., Atlas of Protein Sequence and Structure, vol. 5, supp.3 (1978) for the PAM 250 cpmparison matrix; Henikoff et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 89: 10915-10919 (1992) for the BLOSUM 62 comparison matrixを参照されたい)は、アルゴリズムによっても使用できる。
【0100】
ポリペプチドの配列比較のための好適なパラメータは、以下を含む: Algorithm : Needleman et al., J. MoI. Biol, 48:443-453 (1970); Comparison matrix: BLOSUM 62 from Henikoff et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10915-10919 (1992); ギャップペナルティ: 12、 ギャップ長ペナルティ: 4、 類似性の閾値: 0。
【0101】
GAPプログラムは、上記パラメータと共に有用である。上記パラメータは、(末端ギャップに関するペナルティがないと共に)GAPアルゴリズムを使用したポリペプチド比較のためのデフォルトパラメータである。
【0102】
核酸分子配列比較のための好適なパラメータは、以下を含む: Algorithm : Needleman et al., J. MoI Biol., 48:443-453 (1970); 比較マトリックス: 一致= + 10、不一致= O、ギャップペナルティ: 50、ギャップ長ペナルティ: 3。
【0103】
GAPプログラムは、上記パラメータと共に有用でもある。上記パラメータは、核酸分子比較のためのデフォルトパラメータである。
【0104】
他の好例のアルゴリズム、ギャップ開始ペナルティ、ギャップ伸長ペナルティ、比較マトリックス、類似性の閾値等を使用することができ、Program Manual, Wisconsin Package, Version 9, September, 1997において説明されるものが含まれる。行われる特定の選択は当業者に明らかであり、例えばDNAとDNA、タンパク質とタンパク質、タンパク質とDNA; さらに、比較が所定の配列ペア間であるか(この場合、GAP又はBestFitが通常好適である)又は1つの配列と大規模な配列データベース間であるか(この場合、FASTA又はBLASTAが好適である)等の行われる特定の比較次第であろう。
【0105】
本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドの調製
本発明はまた、上記の本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドを調製する方法に関する。本明細書において説明する本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドは、組換え型核酸技術によって産生することができる。一般に、クローン化野生型FAP核酸配列は、目的のタンパク質をコードするために修飾される。続いてこの修飾された配列は、順に発現ベクター中に挿入され、形質転換又は宿主細胞中に形質移入される。より高等の真核細胞、特に培養哺乳類細胞は、宿主細胞として好適である。ヒトFAPに関する完全なアミノ酸及びヌクレオチド配列を、配列番号1及び配列番号2で供する。
【0106】
アミノ酸配列の変更は、様々な技術によって達成されることができる。核酸配列の修飾は、部位特異的変異誘発によって生じさせることができる。部位特異的変異誘発に関する技術は当技術分野で周知であり、例えば、Zoller and Smith (DNA 3:479-488, 1984) 又は「Splicing by extension overlap」, Horton et al., Gene 77, 1989, pp. 61-68において説明される。従って、FAPのヌクレオチド及びアミノ酸配列を使用して、選択の変更を導入することができる。同様に、特異的プライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応を使用したDNAコンストラクトを調製する手順は、当業者に周知である(PCR プロトコールs, 1990, Academic Press, San Diego, California, USAを参照されたい)。
【0107】
本発明のポリペプチドは、天然発生でないアミノ酸残基を含むこともできる。天然発生でないアミノ酸は、βアラニン、デスアミノヒスチジン(desaminohistidine)、トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノプロリン,-シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、N-メチルグリシン、アロ-スレオニン、メチルスレオニン、ヒドロキシエチルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトログルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、カルボン酸チアゾリジン、デヒドロプロリン、3-及び4-メチルプロリン、3,3-ジメチルプロリン、tert-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、及び4-フルオロフェニルアラニンを含むがそれに限定されない。天然発生でないアミノ酸残基をポリペプチド中に取り込むための複数の方法は、当技術分野で周知である。例えば、化学的にアミノアシル化抑制tRNAを使用して、ナンセンス突然変異が抑制されるインビトロ(in vitro)での系を採用することができる。アミノ酸の合成及びtRNAのアミノアシル化のための方法は、当技術分野で周知である。ナンセンス突然変異を含有するプラスミドの転写及び翻訳は、大腸菌(E. coli)S30 抽出物及び市販の酵素及び他の試薬を含む無細胞系において行われる。ポリペプチドをクロマトグラフィーによって精製する。例えば、Robertson et al., J. Am. Chem. Soc. 113:2722, 1991; Ellman et al., Methods Enzymol 202:301, 1991; Chung et al., Science 259:806-9, 1993; 及び Chung et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10145-9, 1993を参照されたい。第二の方法において、突然変異mRNA及び化学的にアミノアシル化された抑制tRNAの微量注入によって、アフリカツメガエル卵母細胞において翻訳を実行する(Turcatti et al., J. Biol. Chem. 271: 19991-8, 1996)。第三の方法において、置換される天然のアミノ酸(例えば、フェニルアラニン)のない状態且つ目的の天然発生でないアミノ酸(例えば、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、又は4-フルオロフェニルアラニン)の存在下で、大腸菌(E. coli)細胞を培養する。天然発生でないアミノ酸は、その天然の対応物の代わりにポリペプチド中に取り込まれる。Koide et al., Biochem. 33:7470-6, 1994を参照されたい。天然に生じるアミノ酸残基は、インビトロ(in vitro)における化学修飾によって天然発生でない種に転換され得る。化学修飾は、さらに置換の範囲を伸長するために、部位特異的変異誘発と組合せることができる(Wynn and Richards, Protein Sci. 2:395-403, 1993)。
【0108】
本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードする核酸コンストラクトは、例えば標準技術に従ってゲノム又はcDNAライブラリーを調製すること、及び合成オリゴヌクレオチドプローブを使用したハイブリダイゼーションによってポリペプチドの全て又は一部をコードするDNA配列のためにスクリーニングすることによって得られる、ゲノム又はcDNA起源と適宜成り得る(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd. Ed. Cold Spring Harbor Labora-tory, Cold Spring Harbor, New York, 1989を参照されたい)。
【0109】
フィコリン結合ポリペプチドをコードする核酸コンストラクトは、例えば、Beaucage and Caruthers, Tetrahedron Letters 22 (1981), 1859-1869によって説明される亜りん酸アミダイト(phosphoamidite)法、 又はMatthese et al., EMBO Journal 3 (1984), 801-805によって説明される方法等の確立された標準的な方法によって合成的に調製することもできる。亜りん酸アミダイト法に従って、オリゴヌクレオチドを、例えば自動DNAシンセサイザー中で合成し、精製し、アニール化し、結合し、そして適したベクター中でクローン化する。本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列は、例えば米国特許第4,683,202号, Saiki et al., Science 239 (1988), 487-491, 又は Sambrook et al., supraによって説明される、特異的プライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応によって調製することもできる。
【0110】
さらに、核酸コンストラクトは、標準技術に従って、合成の、ゲノム又はcDNAの起源の断片であって、核酸コンストラクトの全体の様々な部分に相当する断片を(適切に)混合することによって調製される、混合性合成及びゲノム、混合性合成及びcDNA又は混合性ゲノム及びcDNAの起源と成り得る
【0111】
核酸コンストラクトは、好ましくはDNAコンストラクトである。本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドの生成における使用のためのDNA配列は、FAPのアミノ終端おいてプレプロポリペプチドを典型的にコードし、適切な翻訳後のプロセシング及び宿主細胞からの分泌が得られるであろう。
【0112】
本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列は、任意のベクターである組換え型ベクター中に通常挿入され、好都合に組換え型DNA手順に供することができ、このベクターの選択はそれが導入される宿主細胞に度々依存するであろう。従って、ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、染色体外のものとして存在し、その複製が染色体複製から独立しているベクター、例えば、プラスミドとすることができる。あるいは、ベクターは、宿主細胞中に導入される場合に、宿主細胞ゲノム中に組み込まれそれが組み込まれている染色体と共に複製されるものである。
【0113】
ベクターは、好ましくは、本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列が、DNAの転写に必要なさらなるセグメントに動作可能に結合されている、発現ベクターである。一般に、発現ベクターは、プラスミド又はウイルス性DNAに由来する、又は双方の要素を含むことができる。用語「動作可能に結合」とは、セグメントが配置され、それらが意図される目的のために協調して機能し、例えば、ポリペプチドをコードするDNA配列を通して転写がプロモーター中で開始し進行することを示す。
【0114】
本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドの発現における使用のための発現ベクターは、クローン化遺伝子又はcDNAの転写を指示する能力があるプロモーターを含むことができる。プロモーターは、選択した宿主細胞において転写活性を示す任意のDNA配列とすることができ、宿主細胞と相同又は異種性のタンパク質をコードする遺伝子に由来することができる。
【0115】
哺乳類細胞においてヒトフィコリン結合ポリペプチドをコードするDNAの転写を指示するのに適したプロモーターの例は、SV40 プロモーター (Subramani et al., MoI. Cell Biol. 1 (1981), 854 -864), the MT-1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター(Palmiter et al., Science 222 (1983), 809-814), CMVプロモーター(Boshart et al., Cell 41: 521-530, 1985)又はアデノウイルス 2 主要後期プロモーター(Kaufman and Sharp, MoI. Cell. Biol, 2: 1304-1319, 1982)である。
【0116】
昆虫細胞における使用に適したプロモーターの例は、ポリヘドリンプロモーター(US 4,745,051; Vasuvedan et al., FEBS Lett. 311, (1992) 7-11)、P10プロモーター(J. M. Vlak et al., J. Gen. Virology 69, 1988, pp. 765-776)、 オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica) 多核体病ウイルス塩基性タンパク質プロモーター(EP 397 485)、バキュロウイルス極初期(immediate early)遺伝子 1 プロモーター(US 5,155,037; US 5,162,222)、又はバキュロウイルス 39K 後初期(delayed-early)遺伝子プロモーター(US 5,155,037; US 5,162,222)である。
【0117】
酵母宿主細胞における使用に適したプロモーターの例は、酵母解糖遺伝子(Hitzeman et al., J. Biol. Chem. 255 (1980), 12073 - 12080; Alber and Kawasaki, J. MoI. Appl. Gen. 1 (1982), 419-434)又はアルコール脱水素酵素遺伝子(Young et al., in Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals (Hollaender et al, eds.), Plenum Press, New York, 1982)由来のプロモーター、又はTPIl(US 4,599,311)又はADH2-4C(Russell et al., Nature 304 (1983), 652-654) プロモーターを含む。
【0118】
糸状菌宿主細胞における使用に適したプロモーターの例は、例えばADH3プロモーター(McKnight et al., The EMBO J. 4 (1985), 2093-2099) 又はtpiAプロモーターである。他の有用なプロモーターの例は、アスペルギルス・オリザエ・TAKA(A. oryzae TAKA)アミラーゼ、リゾムコール・ミーヘイアスパラギン酸(Rhizomucor miehei aspartic)プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー・ニュートラル(A. niger neutral)α−アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー酸安定(A. niger acid stable)α−アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(A. niger)又は糸状菌(A. awamori )グルコアミラーゼ(gluA)、リゾムコール・ミーヘイリパーゼ(Rhizomucor miehei lipase)、アスペルギルス・オリザエ(A. oryzae)アルカリプロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエ・トリオース(A. oryzae triose)リン酸イソメラーゼ又はアスペルギルス・ニダランス(A. nidulans)アセトアミダーゼをコードする遺伝子由来のものである。TAKAアミラーゼ及びgluA プロモーターが好適である。適したプロモーターは、例えば、欧州特許第238 023号及び第383 779号において言及される。
【0119】
本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列はまた、必要に応じて、例えばヒト成長ホルモンターミネーター(Palmiter et al., Science 222, 1983, pp. 809-814) 又はTPI1(Alber and Kawasaki, J. MoI. Appl. Gen. 1, 1982, pp. 419-434)又はADH3(McKnight et al., The EMBO J. 4, 1985, pp. 2093-2099)ターミネーター等の適したターミネーターに動作可能に結合することができる。発現ベクターはまた、プロモーターの下流且つFAP配列のための挿入部位の上流に位置する一組のRNAスプライス部位を含む。好適なRNAスプライス部位は、アデノウイルス及び/又は免疫グロブリン遺伝子から得られてよい。また、挿入部位の下流に位置するポリアデニル化シグナルが、発現ベクター中に含有されてよい。特に好適なポリアデニル化シグナルは、SV40由来の初期又は後期ポリアデニル化シグナル(Kaufman and Sharp, 同書)、アデノウイルス5 Elb 領域由来のポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモン遺伝子ターミネーター(DeNoto et al. Nucl. Acids Res. 9:3719-3730, 1981)又はヒトFAP遺伝子又はウシFAP遺伝子由来のポリアデニル化シグナルを含む。発現ベクターは、例えばアデノウイルス 2 三分裂(tripartite)リーダー等の、プロモーターとRNAスプライス部位との間に位置する非翻訳領域ウイルス性リーダー配列、及び例えばSV40 エンハンサー等のエンハンサー配列もまた含む。
【0120】
宿主細胞の分泌経路中に本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドを指示するために、分泌シグナル配列(リーダー配列, プレプロ配列又はプレ配列としても知られる)を、組換え型ベクター中に供することができる。分泌シグナル配列は、正確な読み枠において本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列に結合される。分泌シグナル配列は通常、ペプチドをコードするDNA配列の5'に位置する。分泌シグナル配列は通常は、そのタンパク質と結合する又は他の分泌タンパク質をコードする遺伝子に由来してよい。
【0121】
酵母細胞からの分泌のために、分泌シグナル配列は、発現された本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドの細胞分泌経路中への効率的な方向性を保証する、任意のシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドは、天然に生じるシグナルペプチド、又はその機能的部分であってよく、又は合成ペプチドであってよい。適したシグナルペプチドは、アルファ-因子シグナルペプチド(US 4,870,008を参照されたい)、マウス唾液アミラーゼのシグナルペプチド(O. Hagenbuchle et al., Nature 289, 1981, pp. 643-646を参照されたい)、修飾カルボキシペプチダーゼシグナルペプチド(L.A. VaIIs et al., Cell 48, 1987, pp. 887-897を参照されたい)、酵母BARlシグナルペプチド(WO 87/02670を参照されたい)、又は酵母アスパラギン酸プロテアーゼ 3 (YAP3)シグナルペプチド(M. Egel-Mitani et al., Yeast 6, 1990, pp. 127-137を参照されたい)であることが分かっている。
【0122】
酵母における効率的な分泌のために、リーダーペプチドをコードする配列を、シグナル配列の下流及び本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列の上流中に挿入することもできる。リーダーペプチドの機能は、発現ペプチドを小胞体からゴルジ体へ、さらに培地中への分泌(すなわち、細胞壁を通って又は少なくとも細胞膜を通して酵母細胞の細胞膜周辺腔中への、本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドの排出)のために分泌小胞へ指示することができる。リーダーペプチドは、酵母アルファ-因子リーダーとすることができる(その使用は、例えば、US 4,546,082, US 4,870,008, EP 16 201, EP 123 294, EP 123 544 及びEP 163 529において説明される)。あるいは、リーダーペプチドは、合成リーダーペプチド、つまり自然において発見することができないリーダーペプチドとすることができる。合成リーダーペプチドは、例えば、国際公開公報第89/02463号又は第92/11378号において説明されるように構築される。
【0123】
糸状菌における使用に関して、シグナルペプチドは、好都合には、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)アミラーゼ又はグルコアミラーゼをコードする遺伝子、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ又はプロテアーゼ又はヒュウーミコーラ・ラニュギノサ(Humicola lanuginosa)リパーゼをコードする遺伝子に由来し得る。シグナルペプチドは、好ましくは、アスペルギルス・オリザエ・TAKA(A. oryzae TAKA)、アスペルギルス・ニガー・ニュートラル(A. niger neutral)アルファ-アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー・酸安定(A. niger acid-stable)アミラーゼ、又はアスペルギルス・ニガー(A. niger)グルコアミラーゼをコードする遺伝子に由来する。適したシグナルペプチドは、例えば、欧州特許第238 023号及び第215 594号に開示される。
【0124】
昆虫細胞における使用に関して、シグナルペプチドは、好都合には、例えば鱗翅目マンドュカ・セクタ・アヂポカイネティック(Manduca sexta adipokinetic)ホルモン前駆体シグナルペプチド(US 5,023,328を参照されたい)等、昆虫遺伝子に由来する(WO 90/05783を参照されたい)。
【0125】
本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列、プロモーター及び任意にはターミネーター及び/又は分泌シグナル配列をそれぞれ結合する、且つ複製に必要な情報を含有する適したベクター中にそれらを挿入するために使用される手順は、当業者に周知である(例えば, Sambrook et al., Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989を参照されたい)。
【0126】
哺乳類細胞に形質移入し、その細胞に導入されたDNA配列を発現する方法は、例えば、Kaufman and Sharp, J. MoI. Biol. 159 (1982), 601 - 621; Southern and Berg, J. MoI. Appl. Genet. 1 (1982), 327 - 341; Loyter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79 (1982), 422-426; Wigler et al., Cell 14 (1978), 725; Corsaro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7 (1981), 603, Graham and van der Eb, Virology 52 (1973), 456; 及びNeumann et al., EMBO J. 1 (1982), 841-845において説明される。
【0127】
クローン化DNA配列は、例えば、リン酸カルシウム媒介形質移入(Wigler et al., Cell 14:725-732, 1978; Corsaro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7:603-616, 1981; Graham and Van der Eb, Virology 52d:456-467, 1973)又は電気穿孔 (Neumann et al., EMBO J. 1:841-845, 1982) によって培養哺乳類細胞中に導入される。外因性DNAを発現する細胞を同定し選択するために、選択可能な表現型(選択可能なマーカー)を与える遺伝子は、通常目的の遺伝子又はcDNAと共に細胞中に導入される。好適な選択可能なマーカーは、例えばネオマイシン、ハイグロマイシン、及びメトトレキサート等の薬剤に対する耐性を与える遺伝子を含む。選択可能なマーカーは、増幅可能な選択可能マーカーとすることができる。好適な増幅可能な選択可能マーカーは、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)配列である。選択可能なマーカーは、Thillyによって概説されている(Mammalian Cell Technology, Butterworth Publishers, Stoneham, MA, これは参照により本明細書に組み込まれる)。当業者は、適した選択可能なマーカーを容易に選択することができるであろう。
【0128】
選択可能なマーカーは、目的の遺伝子として別々のプラスミド上の細胞中に同時に導入することができるか、又はそれらは同一プラスミド上で導入することができる。同一プラスミド上の場合、選択可能なマーカー及び目的の遺伝子は、異なるプロモーター又は同一プロモーターの制御下にあり、後者の配置はジシストロニックメッセージを生じる。この型のコンストラクトは、当技術分野で周知である(例えば、Levinson and Simonsen, U.S. 4,713,339)。細胞中に導入された混合物に、「キャリアDNA」として周知のさらなるDNAを添加することもまた好適である。
【0129】
細胞がDNAを取り込んだ後に、それらを適切な成長培地において典型的には1-2日間成長させ、目的の遺伝子の発現が開始される。本願明細書において用語「適切な成長培地」とは、細胞の成長及び目的のヒトフィコリン結合ポリペプチドの発現に必要な栄養分及び他の成分を含有する培地を意味する。培地は、通常炭素源、窒素源、必須アミノ酸、必須の糖、ビタミン、塩、リン脂質、タンパク質及び成長因子を含む。続いて、安定して選択可能なマーカーを発現している細胞の成長のために薬剤が選択される。増幅可能な選択可能なマーカーが形質移入された細胞に対して、クローン化配列のコピー数の増加のために選択されるその薬剤濃度を増加することができ、その結果発現レベルを増加する。安定に形質移入された細胞のクローンを、続いて目的のヒトフィコリン結合ポリペプチドの発現のためにスクリーニングする。
【0130】
本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列が導入されている宿主細胞は、翻訳後の修飾ヒトポリペプチドを生成する能力がある任意の細胞であってよく、酵母、真菌及び高等真核性細胞を含む。
【0131】
本発明における使用のための哺乳類株細胞の例は、COS-1 (ATCC CRL 1650)、ベビーハムスター腎臓(BHK)及び293(ATCC CRL 1573; Graham et al., J. Gen. Virol. 36: 59-72, 1977)株細胞である。好適なBHK 株細胞は、tk- ts13 BHK 株細胞(Waechter and Baserga, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 1106-1110, 1982, これは参照により本明細書に組み込まれる) であり、以下BHK 570 細胞と呼ぶ。BHK 570株細胞は、ATCC 受入番号 CRL 10314でAmerican Type Culture Collection, 12301 Parklawn Dr., Rockville, Md. 20852に寄託されている。tk- ts13 BHK 株細胞は、受入番号 CRL 1632でATCC からもまた利用できる。さらに、本発明内で、ラット Hep I (ラット肝細胞腫; ATCC CRL 1600)、 ラット Hep II (ラット肝細胞腫; ATCC CRL 1548)、TCMK (ATCC CCL 139)、ヒト肺(ATCC HB 8065)、NCTC 1469 (ATCC CCL 9.1)、CHO(ATCC CCL 61)及びDUKX 細胞(Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220, 1980) を含む多数の他の株細胞を使用することができる。
【0132】
適した酵母細胞の例は、酵母菌属(Saccharomyces spp.)又は分裂酵母菌属(Schizosac-charomyces spp.)、特にサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)又はサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)株の細胞を含む。異種性DNAで酵母細胞を形質転換し、これにより異種性ポリペプチドを生成するための方法は、例えば、米国特許第4,599,311号、第4,931,373号、第4,870,008号、第5,037,743号、及び第4,845,075号において説明され、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。形質転換された細胞を、選択可能なマーカーによって決定される表現型、通常薬剤耐性又は特定の栄養分、例えば、ロイシンがない状態で成長する能力によって選択する。酵母における使用のための好適なベクターは、米国特許第4,931,373号に開示されるPOT1ベクターである。本発明のヒトフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドをコードするDNA配列は、シグナル配列、例えば上記のように任意にはリーダー配列の前に置くことができる。さらに適した酵母細胞の例は、クリベロミセス属(Kluyveromyces)、例えばクルイベロミセス・ラクチス(K. lactis)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、例えば、ハンセヌラ・ポリモルファ(H. polymorpha)、又はピキア属(Pichia)、例えば、ピキア・パストリス(P. pastoris)の株である(Gleeson et al., J. Gen. Microbiol. 132, 1986, pp. 3459-3465; US 4,882,279を参照されたい)。
【0133】
他の真菌細胞の例は、糸状菌の細胞であり、例えば、アスペルギルス属(Aspergillus spp.)、ニューロスポラ属(Neurospora spp.)、フサリウム属(Fusarium spp.)又はトリコデルマ属(Trichoderma spp. )、特に株アスペルギルス・オリザエ(A. oryzae)、アスペルギルス・ニダランス(A. nidulans)又はアスペルギルス・ニガー(A. niger)である。タンパク質の発現のためのアスペルギルス属(Aspergillus spp.)の使用は、例えば、欧州特許第272 277号、第238 023号、第184 438号において説明される。フザリウム・オキシスポラム(F. oxysporum)の形質転換は、例えば、Malardier et al., 1989, Gene 78: 147-156によって説明されるように実行することができる。トリコデルマ属(Trichoderma spp.)の形質転換は、例えば欧州特許第244 234号において説明されるように行うことができる。
【0134】
宿主細胞として糸状菌を使用する場合、本発明のDNAコンストラクトで、好都合にはDNAコンストラクトを宿主染色体に組み込むことによって、形質転換することができ、組換え型宿主細胞が得られる。DNA配列が細胞中で安定に維持される可能性がより高い場合、この組込みが有利であると通常考えられている。DNAコンストラクトの宿主染色体への組込みは、従来の方法に従って、例えば、相同又は異種組換えによって行うことができる。
【0135】
昆虫細胞の形質転換及びその異種性ポリペプチドの生成は、米国特許第4,745,051号; 第4,879,236号; 第5,155,037号; 第5,162,222号; 欧州特許第397,485号に説明されるように行うことができ、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。宿主として使用される昆虫株細胞は、適切には、例えばヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞又はイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)細胞等の鱗翅類株細胞である(US 5,077,214を参照されたい)。培養条件は、適切には、例えば、国際公開公報第89/01029号又は第89/01028号、又は上記参考文献のいずれかにおいて説明される通りとすることができる。
【0136】
上記の形質転換又は形質移入された宿主細胞を続いて、ヒトフィコリン結合ポリペプチドの発現が可能な条件下で適した栄養培地で培養し、その後生じるペプチドの全て又は一部を培養物から回収することができる。細胞を培養するために使用する培地は、例えば適切な栄養を含有する最少培地又は複合培地等の、宿主細胞の成長に適した任意の従来の培地とすることができる。適した培地は市販業者から利用できるか、又は公開された(例えば、American Type Culture Collectionのカタログにおいて)処方に従って調製することができる。細胞によって生成されたヒトフィコリン結合ポリペプチドを、続いて、遠心分離又はろ過によって宿主細胞を培地から分離する工程、上清のタンパク質水性成分を沈殿させる工程、又は例えば、硫酸アンモニウム等の塩でろ過する工程、問題とするポリペプチド型に依存した、様々なクロマトグラフィー、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー等の手順による精製を含む従来の手順によって培地から回収することができる。
【0137】
本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドを生成するために、遺伝子導入動物技術を利用することができる。宿主雌性哺乳類の乳腺内にタンパク質を生成することが好適である。乳腺における発現及びそれに続く目的のタンパク質の乳の中への分泌は、タンパク質を他の源から単離することにおいて直面する多くの困難を克服する。乳は、容易に採取され、大量に利用でき、そして生化学的に十分特徴を有する。さらに、主要乳タンパク質は、乳中に高濃度(典型的には、約1-15 g/l)で存在する。
【0138】
商業的観点から、大量の乳生産量を有する種を宿主として使用することが明らかに好まし。例えばマウスやラット等の小動物を使用することができる(及び原理段階の証拠において好適である)一方で、ブタ、ヤギ、ヒツジ及びウシを含むがそれに限定されない家畜哺乳類を使用することが好適である。ヒツジは、この種における遺伝子組換えの以前の経緯、乳産生量、コスト及びヒツジ乳を採取するための設備の入手しやすさのような因子のために特に好適である(例えば、宿主種の選択に影響する因子の比較に関するWO 88/00239 を参照されたい)。例えばイースト・フライズランド・シープ(East Friesland sheep)等の乳業使用のために繁殖されてきた宿主動物の品種を選択する、又は後日の遺伝子導入系の繁殖によって搾乳用家畜を導入することが通常望ましい。いずれにしても、周知の良好な健康状態の動物を使用すべきである。
【0139】
乳腺において発現を得るために、乳タンパク質遺伝子由来の転写プロモーターを使用する。乳タンパク質遺伝子は、カゼイン(U.S. 5,304,489を参照されたい)、βラクトグロブリン、ラクトアルブミン、及び乳清酸性タンパク質をコードする遺伝子を含む。βラクトグロブリン(BLG)プロモーターが好適である。ヒツジβラクトグロブリン遺伝子の場合は、βラクトグロブリン遺伝子の5'隣接プロモーター及び非翻訳領域部分を含む、例えば-4.25kbp DNA セグメント等の5'隣接配列の最大約5 kbpの大きな部分が好適であるにもかかわらず、遺伝子の5'隣接配列の少なくとも近位の406 bpの領域が通常使用されるであろう(Whitelaw et al., Biochem. J. 286: 31 39 (1992) を参照されたい)。他種由来のプロモーターDNAの同様の断片もまた適する。
【0140】
発現される遺伝子のゲノム領域かもしれない、βラクトグロブリン遺伝子の他の領域も、コンストラクト中に取り込むことができる。技術的に通常認められる、イントロンを欠如するコンストラクトは、例えば、そのようなDNA配列を含むものと比較して発現が乏しい(Brinster et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 836 840 (1988); Palmiter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 478 482 (1991); Whitelaw et al., Transgenic Res. 1: 3 13 (1991); WO 89/01343; 及びWO 91/02318を参照されたい。これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる)。この点について、可能であれば、目的のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子の天然のイントロンの全て又は一部を含有するゲノムの配列を使用することが通常好適であり、従って、例えば、βラクトグロブリン遺伝子由来の少なくとも一部のイントロンのさらなる包含が好適である。このような領域は、ヒツジβラクトグロブリン遺伝子の3'非翻訳領域からイントロンスプライシング及びRNA ポリアデニル化を供するDNAセグメントである。遺伝子の天然の3'非翻訳領域配列に関して置換される場合、このヒツジβラクトグロブリンセグメントは、目的のタンパク質又はポリペプチドの発現レベルの増強及び安定化のいずれもできる。他の実施形態において、FAP配列の開始ATGを囲む領域は、乳特異的タンパク質遺伝子由来の対応する配列と置換される。このような置換は、発現を増強する推定組織特異的開始環境を供する。より小さな領域を置換することができるにもかかわらず、FAPプレプロ及び5'非翻訳領域配列全体を、例えば、BLG遺伝子のものと置換することが好都合である。
【0141】
遺伝子導入動物における本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドの発現に関して、FAPをコードするDNA セグメントが、発現単位を生成するためのその発現に必要なさらなるDNAセグメントに動作可能に結合される。このようなさらなるセグメントは、上記プロモーター、及びmRNAの転写及びポリアデニル化の終了のために供される配列を含む。発現単位は、修飾FAPをコードするセグメントに動作可能に結合された分泌シグナル配列をコードするDNAセグメントをさらに含むことができる。分泌シグナル配列は、天然のFAP分泌シグナル配列か、例えば乳タンパク質等の他のタンパク質のものとすることができる(例えば、von Heijne, Nucl. Acids Res. 14: 4683 4690 (1986); 及び Meade et al., U.S. 4,873,316を参照されたい。これらは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0142】
本質的に任意の連結配列によって発現単位は構築することができるにもかかわらず、遺伝子導入動物における使用のための発現単位の構築は、FAP配列をさらなるDNAセグメントを含有するプラスミド又はファージベクター中に挿入することによって好都合に実行される。乳タンパク質をコードするDNAセグメントを含有するベクターを提供すること、及び乳タンパク質のためのコード配列をFAP変異体のものと置換することが特に好都合であり、その結果、乳タンパク質遺伝子の発現制御配列を含む遺伝子融合が生じる。いずれにしろ、プラスミド又は他のベクターにおける発現単位のクローニングは、FAP配列の増幅を促進する。細菌性(例えば、大腸菌(E. coli))宿主細胞において増幅は好都合に実行され、従って、ベクターは典型的に複製の起源及び細菌性宿主細胞において機能する選択可能なマーカーを含むであろう。発現単位は、続いて選択宿主種の受精卵(初期段階胎仔を含む)中に導入する。異種性DNAの導入は、微量注入法(例えば、U.S. Patent No. 4,873,191)、レトロウイルス感染(Jaenisch, Science 240: 1468 1474 (1988)) 又は胚性幹細胞(ES)を使用した部位特異的組込み(reviewed by Bradley et al., Bio/Technology 10: 534 539 (1992)) を含む複数のルートの中の1つによって達成することができる。卵は、続いて偽妊娠雌の卵管又は子宮中に移植され、所定の期間まで発育させる。それらの生殖系において導入されたDNAを運ぶ子孫は、通常のメンデル遺伝においてDNAを後代に継代することができ、遺伝子導入群を発達させることができる。遺伝子導入動物を生成するための一般的な手順は、当技術分野で周知である(例えば、Hogan et al., Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1986; Simons et al., Bio/Technology 6: 179 183 (1988); Wall et al., Biol. Reprod. 32: 645 651 (1985); Buhler et al., Bio/Technology 8: 140 143 (1990); Ebert et al., Bio/Technology 9: 835 838 (1991); Krimpenfort et al., Bio/Technology 9: 844 847 (1991); Wall et al., J. Cell. Biochem. 49: 113 120 (1992); U.S. 4,873,191; U.S. 4,873,316; WO 88/00239, WO 90/05188, WO 92/11757; 及びGB 87/00458を参照されたい)。異種DNA配列を哺乳類及びそれらの生殖細胞中に導入するための技術は、元々マウスにおいて発展されていた(例えば、., Gordon et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 7380 7384 (1980); Gordon and Ruddle, Science 214: 1244 1246 (1981); Palmiter and Brinster, Cell 41: 343 345 (1985); Brinster et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 4438 4442 (1985); 及びHogan et al. (同書)を参照されたい)。これらの技術は、続いて家畜種を含む大動物との使用のために採用される(例えば、WO 88/00239, WO 90/05188, 及びWO 92/11757; 及び Simons et al., Bio/Technology 6: 179 183 (1988) を参照されたい)。要約すると、遺伝子導入マウス又は家畜の発生において今日まで使用される最も効率的なルートで、確立された技術に従って受精卵の前核の1つの中に目的のDNAの数百の線状分子が注入される。接合体の細胞質中へのDNAの注入もまた、利用することができる。
【0143】
遺伝子導入植物における生成もまた、利用することができる。発現は、全体的か又は例えば塊茎等の特定の器官に向けることができる(Hiatt, Nature 344:469 479 (1990); Edelbaum et al., J. Interferon Res. 12:449 453 (1992); Sijmons et al., Bio/Technology 8:217 221 (1990); 及びEP 0 255 378を参照されたい)。
【0144】
FAP精製
本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドを、細胞培地又は乳から回収することができる。本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドは、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換性, 親和性, 疎水性, 等電点電気泳動, 及び分子ふるいクロマトグラフィー)、電気泳動手順(例えば、調製用等電点電気泳動(IEF), 選択的溶解(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、又は抽出(例えば、Protein Purification, J.-C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照されたい)を含むがそれに限定されない、当技術分野で周知の様々な手順によって精製することができる。好ましくは、抗FAP抗体カラム上で親和性クロマトグラフィーによってそれらを精製することができる。例えば高速液体クロマトグラフィー等の、従来の化学精製手段によってさらなる精製を達成することができる。クエン酸バリウム沈殿を含む精製の他の方法は、当技術分野で周知であり、本明細書の新規フィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドの精製に適用することができる(例えば、Scopes, R., Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y., 1982を参照されたい)。
【0145】
治療目的に関して、本発明のフィコリン結合ポリペプチド及び他のポリペプチドが実質的に純粋であることが好適である。従って、本発明の好適な実施形態において、本発明のポリペプチド及び本発明の他のポリペプチドは少なくとも約90-95%均一まで、好ましくは少なくとも約98% 均一まで精製される。純度は、例えば、ゲル電気泳動及びアミノ末端アミノ酸配列決定によって評価することができる。
【0146】
用語「単離ポリペプチド」とは、(1) それが自然に結合されるポリヌクレオチド、脂質、炭水化物又は他の物質(すなわち、混入物)の少なくとも約50パーセントから分離されている本発明のポリペプチドを意味する。好ましくは、単離ポリペプチドは、その天然環境において発見され、その治療、診断、予防又は調査使用を妨害する可能性のある任意の他の混入ポリペプチド又は他の混入物から実質的に遊離している。
【0147】
用語「微生物」とは、本願明細書において、細菌、真菌、古細菌、原生生物、微小植物及び動物(例えば、緑藻類又はプランクトン等)、プラナリア及びアメーバを意味する。病原体微生物は、本定義内に含まれる。
【0148】
アッセイ
SDS-PAGE及びウエスタンブロッティングのための一般的な手順:
電気泳動を、10 % 又は4-12 % (w/v) Bis-トリス ポリアクリルアミド-ゲル上で非連続的緩衝液と共に、NuPAGE(R)システム(Invitrogen)を使用して製造者に推奨されるとおり行った。ポリビニリデンジフルオリド膜(PVDF-HyBond, GE-healthcare, Hilleroed, Denmark, cat. no. RPN303F)、2 μg/mlのビオチン標識一次モノクローナル抗体及びPBS、0.05 % Tween20中で1 : 1500に希釈したHRP 複合ストレプトアビジン(P0397, Dako, Glostrup, Denmark) による二次可視化を使用して、ウエスタンブロッティングを行った。アセトン中の0.04 % 3-アミノ-9-エチルカルバゾール(Sigma-aldrich, Broenby, Denmark, cat. no. A5754-100G)及び50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液 pH 5中の0.015 % H2O2で膜を展開した。
【0149】
免疫共沈降:
マンノース結合レクチン(MBL)血清複合体の免疫沈降: 1 mlの正常ヒト血清をTBS(10 mM トリス, 140 mM NaCl, pH 7.5)中で1: 1に希釈し、5 μgのMBL 特異的マウスモノクローナル抗体Hyb 131-11(Bioporto, Gentofte, Denmark)で4℃で1時間回転してインキュベートした。
【0150】
フィコリン-2血清複合体の免疫沈降: 0.5 mlの正常ヒト血清をTBS (10 mM トリス, 140 mM NaCl, pH 7.5)中に1: 1に希釈し、4℃で1時間5 μgのフィコリン-2特異的マウスモノクローナル抗体Hyb219(Munthe-Fog L, et al)で、回転してインキュベートした。
【0151】
フィコリン-3 血清複合体の免疫沈降: 0.2 mlの正常ヒト血清をTBS(10 mM トリス, 140 mM NaCl, pH 7.5)中で1: 1に希釈し、4℃で1時間、5 μgのフィコリン-3 特異的マウスモノクローナル抗体Hyb 334で回転してインキュベートした(Munthe-Fog L, et al)。
【0152】
免疫複合体沈殿を、ヒツジ抗マウスIgG 複合磁気 dynal ビーズ(Dynal-Invitrogen, Cat. No. 112.02D)で行い: 血清及び一次抗体でインキュベーション後(上記の通り)、 5x107 ヒツジ 抗マウス複合磁気 dynal ビーズを添加し、4℃で30分間インキュベートした。ビーズを磁力的に分離し、TBS-tween-Ca2+(10 mM トリス, 140 mM NaCl, 0.05 % tween, 5 mM CaCl2, pH 7.5) で3回洗浄し、SDS-負荷した緩衝液中で最終的に沸騰させ、SDS-PAGE及びビオチン標識モノクローナル抗体 mAb-8B3(MASP-1及び-3で共有される重鎖/A鎖上でエピトープと反応する)でのウエスタンブロッティングで分析した。
【0153】
FAPの免疫親和性精製: 製造者に推奨されるとおり、10 mgのmAb-8B3 (FAP, MASP-1及び-3 によって共有される重鎖/A鎖上でエピトープと反応する) 又は10 mgのウサギポリクローナル抗FAP抗体をCNBr活性化セファロースに結合させ(GE-healthcare, Hilleroed, Denmark, cat. no. 17-0430-01)、カラム上に充填した。
【0154】
血清からの精製: 150 mlの正常ヒト血清のプールを、TBS + 0.5 M NaCl + 10 mM EDTA (10 mM トリス, 640 mM NaCl, 10 mM EDTA, pH 7.5) で1 : 1に希釈し、上記のカラム上に負荷した。カラムを 1 lのTBS + 0.5 M NaCl + 10 mM EDTA で洗浄し、1 ml 画分を1 M グリシン- HCl、 pH 2.5で溶出させ、SDS-PAGE及びビオチン標識モノクローナル抗体mAb-8B3でのウエスタンブロッティングによって分析した。
【0155】
組換え型FAPの精製: 組換え型FAP(rFAP) を発現しているチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)由来の2-3 lの培養上清(CHO 血清を含まない培地/ Gibco-Invitrogen, cat. no. 12651-014由来)を上記の抗体カラム上に負荷した。カラムを1.5 lのTBS + 0.5 M NaCl + 10 mM EDTAで洗浄し、1 ml 画分を1 M グリシン- HCl、pH 2.5で溶出した。溶出画分を、SDS-PAGE及びクーマシー染色によって分析した。
【0156】
FAPの組換え型発現: pcDNA5/FRT ベクター(Invitrogen, cat. no. V6010-20)中に挿入した全長cDNAをGenscript (Genscript, New Jersey, USA)に注文し、pOG44 ベクター(Invitrogen, cat. no. V6005-20) でCHO Flp-In株細胞(Invitrogen, cat. no. R758-07) 中に同時導入し、選択し製造者によって推奨されるとおりクローン化した(Invitrogen)。細胞をFreestyle CHOの血清を含まない培地(Invitrogen, cat. no. 12651-014) 中で成長させ、培養上清を回収し分析した。
【0157】
モノ及びポリクローナル抗体の生成: FAP特異的17C末端残基のペプチドコンストラクト(Genscript, New Jersey, USAに注文した)を、製造者によって推奨されるとおり、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルとのシステインカップリング方法を使用して、破傷風及びジフテリアのトキソイド形態に結合させた(Thermo Fisher Scientific/Pierce, Illinois, USA)。
【0158】
6匹のマウス及び2頭のウサギをそれぞれ、Al(OH)3上に吸着された25 μg 抗原及びFreundsの不完全アジュバントで、3回免疫化した(14日間隔で)。ポリクローナル抗体価を、タンパク質キャリアに結合された異なるFAPペプチドでのELISAを使用して評価した。ポリクローナルウサギ抗血清(≒10 ml)を、第一、第ニ及び第三の免疫化の14日後に回収した。
【0159】
2匹のマウスを、モノクローナル抗体の生成のために使用した。融合の4日前に、マウスに25 μg 抗原の静脈内注入を行った。他で説明されるように融合を行った(Kohler, G. and C. Milstein. 1975. Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity. Nature 256:495-497)。
【0160】
異なるタンパク質担体結合されたペプチドに対する選択的ELISAスクリーニングによって、クローンを選択した。
【0161】
機能的補体アッセイ: FAPの機能を検討するために、フィコリン-3及び MBL ホモ接合型欠乏血清を使用した。
【0162】
フィコリン-3 アッセイ: Maxisorp プレート(NUNC, Roskilde, Denmark, cat. no. 439454)を、コーティング緩衝液(15 mM Na2CO3, 35 mM NaHCO3, pH 9.5)中で、5 μg/mlのアセチル化ウシ血清アルブミンで12時間4℃でコーティングした。バルビタール/tween 緩衝液(4 mM バルビタール, 145 mM NaCl, 2 mM CaCl2, 1 mM MgCl2, pH 7.4 + 0.05% Tween)中での4回のブロッキング/洗浄後、組換え型ヒトフィコリン3 を500ng/ml I バルビタール /tween 緩衝液に添加し、1.5時間20℃で振盪しながらインキュベートした。バルビタール /tween 緩衝液中での2回のプレートの洗浄後、血清不含有培地上清として組換え型FAP、ヒトMASP-1、-2又は-3を一方の次元に沿って別々のプレート上で段階希釈で添加し、振盪しながら20℃で1時間インキュベートした。バルビタール /tween 緩衝液中での2回のプレートの洗浄後、フィコリン-3 又は MASP-2欠乏血清をプレート上で段階希釈で他方の次元に沿ってに添加し、37℃で30分間インキュベートした。バルビタール /tween 緩衝液中での4回のプレートの洗浄後、補体因子C4の析出を、1 :2000に希釈したヒトC4cへのポリクローナルウサギ抗体(Dako, Glostrup, Denmark cat. no Q0369)での20℃で1時間のインキュベーションによって測定し、続いて4つの洗浄工程及び西洋ワサビペルオキシダーゼ複合ブタ抗ウサギ抗体(Dako, Glostrup, Denmark cat. no P0399)での20℃で45分間のインキュベーションを行った。0.12 %o (v/v) H2O2を有するクエン酸緩衝液(35 mM クエン酸, 65 mM Na2PO4, pH 5)中に溶解したlOOμl/ウェルのオルト-フェニレン-ジアミン(OPD)(0.4 mg/ml)でプレートを展開したことによってシグナルを得た。酵素反応を1 M H2SO4 で停止し、光学濃度(OD)レベルを、V-max Kinetic-reader (Molecular Devices) を使用して490 nm-650 nmで測定した。
【0163】
マンノース結合レクチンアッセイ: Maxisorp プレート (NUNC, Roskilde, Denmark, cat. no. 439454)を、コーティング緩衝液(15 mM Na2CO3, 35 mM Na2CO3, pH 9.5)中で4℃で12時間10 μg/mlでマンナン(Sigma-aldrich, Broenby, Denmark, cat. no. M7504-1G)でコーティングした。バルビタール /tween 緩衝液(4 mM バルビタール , 145 mM NaCl, 2 mM CaCl2, 1 mM MgCl2, pH 7.4 + 0.05% Tween)中での4回のブロッキング/洗浄後、0.5 μg/ml l バルビタール /tween 緩衝液に組換え型ヒトマンノース結合レクチンを添加し、20℃で振盪しながら1.5時間インキュベートした。バルビタール /tween 緩衝液中でのプレートの2回の洗浄後、血清不含有培地上清としての組換え型FAP、ヒトMASP-1、-2又は-3を、一方の次元に沿って別々のプレート上で段階希釈で添加し、20℃で振盪しながら1時間インキュベートした。バルビタール /tween 緩衝液中でプレートを2回洗浄後、MBL 又は MASP-2欠乏血清を、段階希釈で他方の次元に沿ってプレート上に添加し、45分間37℃でインキュベートした。バルビタール /tween 緩衝液中で4回プレートを洗浄後、補体因子 C4の析出を、1:2000に希釈したヒト C4cへのポリクローナルウサギ抗体(Dako, Glostrup, Denmark cat. no Q0369)で20℃で1時間のインキュベーションによって測定し、続いて4回の洗浄工程及び西洋ワサビペルオキシダーゼ複合ブタ抗ウサギ抗体(Dako, Glostrup, Denmark cat. no P0399) でのインキュベーションを20℃で45分間行った。0.12 %o (v/v) H2O2を有するクエン酸緩衝液(35 mM クエン酸, 65 mM Na2PO4, pH 5)中に溶解したオルト-フェニレン-ジアミン(OPD)(0.4 mg/ml)の100 μl/ウェルでプレートを展開し、シグナルを得た。酵素反応を1 M H2SO4で停止し、光学濃度(OD)レベルを490 nm-650 nmで、V-max Kinetic-reader(Molecular Devices) を使用して測定した。
【0164】
遺伝子型判定アッセイ: 生物学的アッセイを使用して、個体において遺伝子型を決定する異なる遺伝子型判定アッセイを行うことができる。例えば以下の異なる種類のアッセイを使用することができる:
-ハイブリダイゼーションに基づく方法
ダイナミックアレル特異的ハイブリダイゼーション
分子ビーコン
SNPマイクロアレイ
-酵素に基づく方法
制限断片長多型
PCRに基づく方法
Flap エンドヌクレアーゼ
プライマー伸長
5'-ヌクレアーゼ
オリゴヌクレオチドリガーゼアッセイ
-DNAの物理的特性に基づく他の増幅後の方法
一本鎖立体構造多型
温度勾配ゲル電気泳動
変性高速液体クロマトグラフィー
増幅産物全体の高分解能融解
SNPIex
-配列決定
【0165】
投与及び医薬組成物
組合せ処置
本明細書に定義されるフィコリン結合ポリペプチドは、フィコリン-1、2、3、及びマンノース結合レクチン(MBL)から選択される1又は2以上のタンパク質と共に、同時又は経時的に投与することができる。因子を、単一用量形態が両方の化合物を含む単一用量形態、又は第一の単位用量形態としてのフィコリン結合ポリペプチドの製剤及び第二の単位用量形態としての1又は2以上の他の化合物の製剤を含むキットの一部分の形態中に供給することができる。本明細書を通して第一、第二又は第三等の単位用量に言及する場合、これは好適な投与順番を示すものではなく、単に好都合な目的とするものである。
【0166】
フィコリン結合ポリペプチドの製剤と1又は2以上の他の化合物の製剤との「同時」投与とは、単一用量形態での当該化合物の投与、又は第一薬剤の投与後の15分、好ましくは10、より好適には5、さらに好適には2分以上の時間を隔てない第ニ薬剤の投与を意味する。いずれかの因子をまず投与することができる。
【0167】
「連続的」投与とは、第一薬剤の投与及び続く15分以上の時間を隔てた第ニ薬剤の投与を意味する。2つの単位用量形態のいずれかをまず投与することができる。好ましくは、両方の生成物を、同一静脈内アクセスを通して注入する。
【0168】
本発明の他の目的は、血清/血漿濃度が0 mg/ml-1 mg/mlであり、製剤がpH2.0-10.0を有する、フィコリン結合ポリペプチドを含む医薬製剤を供することである。製剤は、さらに緩衝液系、保存料、浸透薬剤、キレート剤、安定化剤及び界面活性剤を含んでよい。本発明の一部の実施形態において、医薬製剤は水性製剤、すなわち、水含む製剤である。このような製剤は、典型的には溶液又は懸濁液である。本発明のさらなる実施形態において、医薬製剤は水溶液である。用語「水性製剤」とは、少なくとも50 % w/w 水を含む製剤として定義する。同様に、用語「水溶液」とは、少なくとも50 %w/w 水を含む溶液として定義し、用語「水性懸濁液」とは、少なくとも50 % w/w 水を含む懸濁液として定義する。他の実施形態において、医薬製剤は、医師又は患者が使用の前に溶媒及び/又は希釈剤を添加する、凍結乾燥された製剤である。
【0169】
他の実施形態において、医薬製剤は、事前の溶解なしに即使用できる乾燥製剤(例えば、凍結乾燥又はスプレー乾燥)である。
【0170】
さらなる側面において、本発明は、フィコリン結合ポリペプチドの水溶液及び緩衝液を含む医薬製剤に関し、この中でフィコリン結合ポリペプチドは、血清/血漿濃度0-1 mg/ml又はそれ以上で存在し、製剤はpH 約2.0-約10.0を有する。
【0171】
本発明の他の実施形態において、製剤のpHは、次の2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、及び10.0から成るリストから選択される。
【0172】
本発明のさらなる実施形態において、緩衝液は、酢酸ナトリウム、炭素ナトリウム、クエン酸、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸ニ水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、ビシン、トリシン、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸又はそれらの混合物から成る群から選択される。これらの特定の緩衝液各々は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0173】
本発明のさらなる実施形態において、製剤は、医薬的に許容し得る保存料をさらに含む。本発明のさらなる実施形態において、保存料は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、メチルp-ヒドロキシベンゾエート、プロピルp-ヒドロキシベンゾエート、2-フェノキシエタノール、ブチルp-ヒドロキシベンゾエート、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、及びチメロサール、ブロノポール、安息香酸、イミドウレア、クロロヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、エチルp-ヒドロキシベンゾエート、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネシン(3p-クロロフェノキシプロパン-l,2-ジオール)又はそれらの混合物から成る群から選択される。本発明のさらなる実施形態において、保存料は、濃度0.1 mg/ml-20 mg/mlで存在する。本発明のさらなる実施形態において、保存料は濃度0.1 mg/ml-5 mg/mlで存在する。本発明のさらなる実施形態において、保存料は濃度5 mg/ml-10 mg/mlで存在する。本発明のさらなる実施形態において、保存料は濃度10 mg/ml-20 mg/mlで存在する。これらの特定の保存剤は各々、本発明の代替実施形態を構成する。医薬組成物における保存料の使用は、当業者に周知である。便宜上、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照されたい。
【0174】
本発明のさらなる実施形態において、製剤は、等張剤をさらに含む。本発明のさらなる実施形態において、等張剤は、塩(例えば、塩化ナトリウム)、糖又は糖アルコール、アミノ酸(例えば、L-グリシン, L-ヒスチジン, アルギニン, リジン, イソロイシン, アスパラギン酸, トリプトファン, スレオニン)、アルジトール(例えば、グリセロール(グリセリン)、1,2-プロパンジオール (プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール)ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、又はそれらの混合物から成る群から選択される。例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン及びカルボキシメチルセルロース-Na等を含む、例えばモノ、ジ、又は多糖、又は水溶解性グルカン等の任意の糖を使用することができる。一部の実施形態において、糖添加物は、スクロースである。糖アルコールは、少なくとも1つの--OH基を有するC4-C8炭化水素と定義し、例えば、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールを含む。一部の実施形態において、糖アルコール添加物は、マンニトールである。上記の糖又は糖アルコールは、個々に又は組合せて使用することができる。液体製剤中で糖又は糖アルコールが可溶性である限り、使用される量に制限はなく、本発明の方法を使用して達成される安定効果に悪影響しない。一部の実施形態において、糖又は糖アルコール濃度は、約1 mg/ml -約150mg/mlである。本発明のさらなる実施形態において、等張剤は濃度1 mg/ml-50 mg/mlで存在する。本発明のさらなる実施形態において、等張剤は、濃度1 mg/ml-7 mg/mlで存在する。本発明のさらなる実施形態において、等張剤は、濃度8 mg/ml-24 mg/mlで存在する。本発明のさらなる実施形態において、等張剤は、濃度25 mg/ml-50 mg/mlで存在する。これらの特異的等張剤の各々は、本発明の代替実施形態を構成する。医薬組成物における等張剤の使用は、当業者に周知である。便宜上、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照されたい。
【0175】
本発明のさらなる実施形態において、製剤はキレート剤である。本発明のさらなる実施形態において、キレート剤は、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、クエン酸、及びアスパラギン酸の塩、及びそれらの混合物から選択される。本発明のさらなる実施形態において、キレート剤は、0.1 mg/ml -5 mg/ml濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態において、キレート剤は、濃度 0.1 mg/ml-2 mg/mlで存在する。本発明のさらなる実施形態において、キレート剤は濃度2 mg/ml-5 mg/mlで存在する。これらの特定のキレート剤は、本発明の代替実施形態を構成する。医薬組成物におけるキレート剤の使用は、当業者に周知である。便宜上、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照されたい。
【0176】
本発明のさらなる実施形態において、製剤は、安定剤をさらに含む。医薬組成物における安定剤の使用は、当業者に周知である。便宜上、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照されたい。
【0177】
詳細には、本発明の組成物は、治療上活性のある成分が、液体医薬製剤中の保存中に凝集形成を示す可能性のあるポリペプチドを含む安定化液体医薬組成物である。「凝集形成」とは、可溶性状態であるオリゴマーの形成を生じるポリペプチド分子間の物理的相互作用、又は溶液から沈殿する巨大な可視凝集を意味する。「保存中」とは、一旦調製されても、即座に対象に投与されない医薬組成物又は製剤を意味する。むしろ、調製後に、それは、対象への投与に適した液体形態、凍結状態、又は液体形態又は他の形態中への後の再構成のための乾燥形態で、保存のためにパッケージされる。「乾燥形態」とは、凍結乾燥(freeze drying)(すなわち、凍結乾燥(lyophilization); 例えば、Williams and PoIIi (1984) J. Parenteral Sci. Technol. 38:48-59を参照されたい)、噴霧乾燥(Masters (1991) in Spray Drying Handbook (5th ed; Longman Scientific and Technical, Essez, U.K.), pp. 491- 676; Broadhead et al. (1992) Drug Devel. Ind. Pharm. 18: 1169-1206; 及び Mumenthaler et al. (1994) Pharm. Res. 11: 12-20を参照されたい), 又は風乾(Carpenter and Crowe (1988) Cryobiology 25:459-470; 及びRoser (1991) Biopharm 4:47-53)によって乾燥される液体医薬組成物又は製剤を意味する。液体医薬組成物の保存中のポリペプチドによる凝集形成は、そのポリペプチドの生物活性に悪影響する可能性があり、医薬組成物の治療有効性の減少を生じる。さらに、注入系を使用してポリペプチド含有医薬組成物を投与する場合、凝集形成は例えば管組織、膜、又はポンプの妨害等の他の問題を生じうる。
【0178】
本発明の医薬組成物は、組成物の保存中ポリペプチドによる凝集形成を減少するのに十分な量のアミノ酸塩基をさらに含むことができる。「アミノ酸塩基」とは、いずれかの特定のアミノ酸が遊離塩基形態又は塩形態で存在する、アミノ酸又はアミノ酸の組合せを意味する。アミノ酸の組合せが使用される場合、アミノ酸の全てが遊離塩基形態で存在する、全てが塩形態で存在する、又は一部が塩形態で存在し他が遊離塩基形態で存在し得る。一部の実施形態において、本発明の組成物の調製における使用のためのアミノ酸は、例えばアルギニン、リジン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸等の荷電側鎖を保有するものである。特定のアミノ酸(例えば、グリシン、メチオニン、ヒスチジン、イミダゾール、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン及びそれらの混合物)の任意の立体異性体(すなわち、L, D, 又はDL異性体)又はこれらの立体異性体の組合せは、特定のアミノ酸がその遊離塩基形態又は塩形態で存在する限り、本発明医薬組成物中に存在し得る。一部の実施形態において、L-立体異性体が使用される。本発明の組成物は、これらのアミノ酸の類似体で製剤することもできる。「アミノ酸類似体」とは、本発明の液体医薬組成物の保存中に、ポリペプチドによる凝集形成を減少する目的の効果を生じる天然に生じるアミノ酸の誘導体を意味する。適したアルギニン類似体は、例えば、アミノグアニジン、オルニチン及びN-モノエチルL-アルギニンを含み、適したメチオニン類似体は、エチオニン及びブチオニンを含み、適したシステイン類似体はs-メチル-Lシステインを含む。他のアミノ酸のように、アミノ酸類似体はその遊離塩基形態又は塩形態で組成物中に取り込まれる。本発明のさらなる実施形態において、タンパク質の凝集を予防又は遅延させるのに十分な濃度でアミノ酸又はアミノ酸類似体を使用する。
【0179】
本発明のさらなる実施形態において、治療剤として機能しているポリペプチドがこのような酸化の影響を受けやすい少なくとも1つのメチオニン残基を含むポリペプチドである場合、メチオニン(又は他の硫酸アミノ酸又はアミノ酸類似体)を、メチオニン残基のメチオニンスルホキシドへの酸化を抑制するために添加することができる。「抑制する」とは、時間とともにメチオニン酸化される種の最少量の蓄積を意味する。メチオニン酸化を抑制することは、適切な分子形態でのポリペプチドの強固の保存を生じる。メチオニンの任意の立体異性体(L, D, 又はDL異性体)又はその組合せを使用することができる。添加する量は、メチオニンスルホキシドの量が規制当局に容認され得るように、メチオニン残基の酸化を抑制するのに十分な量にすべきである。典型的には、これは、組成物が約10% - 約30%未満のメチオニンスルホキシドを含むことを意味する。通常、これは、メチオニン残基に添加されるメチオニンの割合が約1: 1 -約1000: 1、例えば 10: 1- 約100: 1の範囲であるように、メチオニンを添加することによって達成することができる。本発明のさらなる実施形態において、製剤は、高分子重合体又は低分子化合物の群から選択される安定剤をさらに含む。本発明のさらなる実施形態において、安定剤は、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 3350)、ポリビニル アルコール (PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシ-/ヒドロキシセルロース又はその誘導体(例えば、HPC, HPC-SL, HPC-L及びHPMC)、シクロデキストリン、モノチオグリセロール、チオグリコール酸及び2-メチルチオエタノールとしての硫黄含有物質、及び異なる塩(例えば、塩化ナトリウム)から選択される。これらの特定の安定化剤はそれぞれ、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0180】
医薬組成物は、その中の治療上活性ポリペプチドの安定性をさらに増強する、さらなる安定化剤もまた含むことができる。本発明に対する特定の目的の安定化剤は、ポリペプチドをメチオニン酸化から保護するメチオニン及びEDTA、及び凍結融解又は機械的せん断と関連した凝集からポリペプチドを保護する非イオン性界面活性剤を含むがこれに限定されない。
【0181】
本発明のさらなる実施形態において、製剤は界面活性剤をさらに含む。本発明のさらなる実施形態において、界面活性剤は、洗剤、エトキシル化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロック重合体(例えば、例えばプルロニック(登録商標)F68、ポロキサマー188及び407、トリトンX-100等のポロキサマー)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,例えばアルキル化及びアルコキシル化誘導体等のポリオキシエチレン及びポリエチレン誘導体(tweens, 例えば、Tween-20, Tween-40, Tween-80及びBrij-35)、モノグリセリド又はそのエトキシル化誘導体、ジグリセリド又はそのポリオキシエチレン誘導体、アルコール、グリセロール、レクチン及びリン脂質(例えば、ホスファチジルセリン、フォスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール及びスフィンゴミエリン)、リン脂質の誘導体(例えば、ジパルミトイルホスファチジン酸)及びリゾリン脂質(例えば、パルミトイルリゾホスファチジル-L-セリン及びエタノールアミン、コリン、セリン又はスレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-リン酸エステル)及びアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、リゾホスファチジル及びフォスファチジルコリンのアルコキシ(アルキルエーテル)-誘導体、例えば、リゾフォスファチジルコリンのラウロイル及びミリストイル誘導体、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、及び極性頭部の修飾、すなわちコリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、スレオニン、グリセロール、イノシトール及び陽性荷電DODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリン及びリゾホスファチジルスレオニン、及びグリセロリン脂質(例えば、セファリン)、グリセロ糖脂質(例えば、ガラクトピラノシド)、スフィンゴ糖脂質(例えば、セラミド、ガングリオシド)、ドデシルホスホコリン、鶏卵リゾレシチン、フシジン酸誘導体(例えば、タウロジヒドロフシド酸ナトリウム等)、長鎖脂肪酸及びそのC6-C12の塩(例えば、オレイン酸及びカプリル酸)、アシルカルニチン及び誘導体、リジンのNα-アシル化誘導体、アルギニン又はヒスチジン、又はリジン又はアルギニンの側鎖アシル化誘導体,リジン、アルギニン又はヒスチジンの任意の組合せを含むジペプチドNα-アシル化誘導体及び中性又は酸性アミノ酸、中性アミノ酸及び2つの荷電アミノ酸の任意の組合せを含むトリペプチドのNα-アシル化誘導体、DSS(ドクサートナトリウム、CAS 登録簿 no [577-11- 7])、ドクサートカルシウム、CAS登録簿 no [128-49-4])、ドクサートカリウム、CAS登録簿 no [7491-09-0])、SDS (ドデシル硫酸ナトリウム 又は ラウリル硫酸ナトリウム)、カプリル酸ナトリウム、コール酸又はその誘導体、胆汁酸及びその塩及びグリシン又はタウリン複合物、ウルソデオキシコール酸、ナトリウムコール酸、ナトリウムデオキシコール酸,タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-l-プロパンスルホナート、アニオン(アルキル-アリール-スルホン酸)一価界面活性剤、双性イオン界面活性剤(例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-l-プロパンスルホナート、3-コラミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート、カチオン界面活性剤(四級アンモニウム塩基)(例えば、セチル-トリメチル臭化アンモニウム、塩化セチルピリジニウム)、非イオン界面活性剤(例えば、ドデシルβ-D-グルコピラノシド)、酸化プロピレン及び酸化エチレンのエチレンジアミンへの連続的添加に由来する四官能基ブロック共重合体である、ポロキサミン(例えば、Tetronic)から選択されるか、又は界面活性剤はイミダゾリン誘導体、又はそれらの混合物の群から選択することができる。これらの特定の界面活性剤はそれぞれ、本発明の代替実施形態を構成する。
【0182】
医薬組成物における界面活性剤の使用は、当業者に周知である。便宜上、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照されたい。
【0183】
他の成分が本発明のペプチド医薬製剤中に存在することが可能である。このようなさらなる成分は、潤滑剤、乳化剤、抗酸化剤、膨張剤、浸透調整剤、キレート剤、金属イオン、油性溶媒、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン, ゼラチン又はタンパク質)及び双性イオン(例えば、例えばベタイン, タウリン, アルギニン, グリシン, リジン及び ヒスチジン等のアミノ酸)を含むことができる。もちろん、このようなさらなる成分は、本発明の医薬製剤の全体的な安定性に悪影響すべきでない。
【0184】
本発明のフィコリン結合ポリペプチドを含有する医薬組成物は、そのような処置を必要とする患者に、例えば、皮膚及び粘膜部位等の複数の部位に、例えば、局所部位に、例えば、動脈、静脈、心臓における投与等のバイパス吸収部位に、及び例えば、皮膚、皮膚下、筋肉中又は腹部等、吸収を含む部位に投与することができる。
【0185】
局所投与は、例えば火傷と関連した炎症又は皮膚関連の他の症状の治療等の、局所性炎症と関連した症状の治療において、特定の有利なものとすることができる。従って、一部の実施形態において、投与は、局所投与による。
【0186】
一部の特定の実施形態において、眼と関連した症状、例えば角膜炎、例えば層間角膜炎角膜炎(DLK)において点眼薬を使用することができる。
【0187】
本発明の医薬組成物の投与は、例えば、舌、舌下、頬、口内、経口、胃及び腸、鼻、肺、例えば、気管支梢及び肺胞又はそれらの組合せを通して、上皮、真皮、経皮、膣、直腸、眼球、例えば結膜を通して、尿管、及び非経口等の複数の投与経路を通してこのような処置を必要とする患者へ行うことができる。
【0188】
本発明の組成物は、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、微小乳濁液、複合乳濁液(multiple emulsion)、泡沫剤、軟膏、ペースト剤、硬膏剤、軟膏剤、錠剤、コーティング錠剤、リンス、カプセル、例えば、ハードゼラチンカプセル及びソフトゼラチンカプセル、坐薬、直腸カプセル、ドロップ、ゲル、スプレー、粉剤、噴霧剤、吸入薬、目薬、点眼用軟膏剤、点眼用リンス、膣ペッサリー、膣リング、膣軟膏剤、注入液、インサイツ(in situ)の形質転換溶液、例えばインサイツ(in situ)のゲル化、インサイツ(in situ)の硬化、インサイツ(in situ)の沈殿、インサイツ(in situ)の結晶化、注入液、及びインプラント等の複数の投与形態で投与することができる。
【0189】
本発明の組成物は、例えば共有結合、疎水性及び静電相互作用、薬物担体、薬物送達系及び高度薬物送達系を通して、さらにフィコリン結合ポリペプチドの安定性を増強する、生物学的利用率を増加する、溶解性を増加する、有害作用を減少する、当業者に周知の時間治療を達成する、且つ患者服薬率又はそれらの任意の組合せを増加するために、さらに配合又は結合させることができる。担体、薬物送達系及び高度薬物送達系の例は、重合体、例えばセルロース及び誘導体、多糖、例えばデキストラン及び誘導体、デンプン及び誘導体、ポリ(ビニルアルコール)、アクリル酸及びメタクリル酸重合体、ポリ乳酸及びポリグリコール酸及びそれらのブロック共重合体、ポリエチレングリコール、担体タンパク質、例えばアルブミン、ゲル、例えば、サーモゲル化系、例えば当業者に周知のブロック共重合体系、ミセル、リポソーム、微粒子、ナノ粒子、液体結晶及びその分散剤、L2相及び脂質水系における相挙動の当業者に周知のその分散剤、重合体ミセル、複合乳濁液、自己乳化、自己微小乳濁化における、シクロデキストリン及びその誘導体、及びデンドリマーを含むがこれに限定されない。
【0190】
本発明の組成物は、例えば定量噴霧式吸入器、ドライパウダー吸入器及び噴霧器等の、当業者に周知のあらゆる装置を使用した、フィコリン結合ポリペプチドの肺投与のための固体、半固体、粉体及び溶液の製剤において有用である。
【0191】
本発明の組成物は、制御、持効性、遅滞性(protracting)、遅延性、及び徐放性薬剤送達系製剤において特に有用である。さらに特に、組成物は、当業者に周知の非経口制御放出及び持効性放出系(いずれの系も投与数の何倍もの減少につながる)の製剤において有用であるが限定されない。さらに好ましくは、皮下投与の制御放出及び持効放出系である。本発明の範囲を限定することなく、有用な制御放出系及び組成物の例は、ハイドロゲル、油性ゲル、液体結晶、重合体ミセル、微粒子、ナノ粒子である。
【0192】
本発明の組成物に有用な制御放出系を生成するための方法は、結晶化、凝縮、共結晶化、沈殿、共沈殿、乳化、分散、高圧均質化、カプセル封入、噴霧乾燥、マイクロカプセル化、コアセルベーション、相分離,微粒子を生成するための溶媒蒸発、押し出し及び超臨界流動法を含むがこれに限定されない。一般的な参考文献は、Handbook of Pharmaceutical Controlled Release (Wise, D. L., ed. Marcel Dekker, New York, 2000) 及びDrug and the Pharmaceutical Sciences vol. 99: Protein Formulation and Delivery (MacNally, EJ., ed. Marcel Dekker, New York, 2000)である。
【0193】
非経口投与は、シリンジ、任意にはペンのようなシリンジによって、皮下、筋肉内、腹腔内又は静脈内注入で行うことができる。あるいは、非経口投与は、注入ポンプによって行うことができる。さらなる選択肢として、組成物は、鼻又は肺スプレーの形態でのフィコリン結合ポリペプチドの投与のための溶液又は懸濁液とすることができる。さらなる選択肢として、本発明のフィコリン結合ポリペプチドを含有する医薬組成物は、例えば、無針注入によって又はパッチ、任意にはイオン注入パッチ、又は経粘膜、例えば、頬投与から経皮投与に適用することができる。
【0194】
用語「安定化製剤」とは、物理的安定性、化学安定性又は物理的及び化学安定性を増加させた製剤を意味する。
【0195】
本願明細書において、タンパク質製剤の用語「物理的安定性」とは、タンパク質の熱機械ストレス及び/又は例えば疎水性表面及び界面等の不安定化界面及び表面との相互作用への曝露の結果として、生物学的に不活性及び/又は不溶性のタンパク質凝集を形成するタンパク質の傾向を意味する。水性タンパク質製剤の物理的安定性は、機械/物理的ストレス(例えば、撹拌)に適した容器(例えば、薬包又はバイアル)に製剤を充填した後、様々な時間異なる温度で、目視検査及び/又は濁度測定によって評価する。製剤の目視検査は、黒色背景で鋭いピントの合った光中で行う。製剤の濁度は、例えばスケール0-3(濁度のない製剤は視覚スコア0に相当し、昼光で視覚濁度を示す製剤は視覚スコア3に相当する)の濁度の程度の視覚スコア順位を特徴とする。製剤は、昼光で視覚濁度を示す場合、タンパク質凝集に関して物理的に不安定と分類する。あるいは、製剤の濁度は当業者に周知の単純な濁度測定によって評価することができる。水性タンパク質製剤の物理的安定性は、分光学的薬剤又はタンパク質の立体構造状態のプローブを使用して評価することができる。プローブは、好ましくは、優先的にタンパク質の非天然配座異性体に結合する低分子である。タンパク質構造の低分子分光プローブの一例は、チオフラビンTである。チオフラビンTは、アミロイド原線維の検出に広く使用されている蛍光色素である。原線維、及びおそらく他のタンパク質の立体構造の存在下で、原線維タンパク質形態に結合する場合、チオフラビンTは、約450 nmで新規励起極大、及び約482 nmで増強発光を生じる。非結合性チオフラビンTは、波長において本質的に非蛍光である。
【0196】
天然から非天然状態へのタンパク質構造形態における変化のプローブとして他の低分子を使用することができる。例えば「疎水性パッチ」プローブは、優先的にタンパク質の曝露疎水性パッチへ結合する。疎水性パッチは、その自然状態においてタンパク質の三次構造内に通常埋没されるが、タンパク質がほどかれる又は変性し始める場合に曝露される。これらの低分子、分光プローブの例は、例えばアントラセン、アクリジン、フェナントロリン等の芳香族、疎水性染料である。他の分光プローブは、例えばフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、及びバリン等の疎水性アミノ酸等の、例えばコバルト金属複合体等の金属アミノ酸複合体である。
【0197】
本願明細書において、用語タンパク質製剤の「化学安定性」とは、天然のタンパク質構造と比較して生物学的効力を有する可能性が低い及び/又は免疫原性特性を有する可能性が高い化学分解産物の形成につながるタンパク質構造における化学共有結合変化を意味する。天然のタンパク質型及び性質及びタンパク質が曝露される環境に応じて、様々な化学分解産物を形成することができる。当業者に周知なように、化学分解の除去は完全に回避できる確実性が最も低く、化学分解産物の量の増加はタンパク質製剤の保存中及び使用中に度々観察される。大抵のタンパク質は、アミド分解する傾向があり、その過程においてグルタミニル又はアスパラギニル残基中の側鎖アミド基は加水分解され、遊離カルボン酸を形成する。他の分解経路は、共有結合で結合された二量体、オリゴマー及び重合体分解産物の形成につながるアミド基転移及び/又はジスルフィド相互作用を通して2つ又はそれ以上のタンパク質分子が共有結合で互いに結合する、高分子量の形質転換生成物の形成を含む(Stability of Protein Pharmaceuticals, Ahem. T.J. & Manning M. C, Plenum Press, New York 1992)。酸化(例えばメチオニン残基)は、化学分解の他の変異体と呼ぶことができる。タンパク質製剤の化学安定性は、異なる環境条件への曝露後に、様々な時点において化学分解産物量を測定することによって評価することができる(分解産物の形成は、例えば温度の上昇によって度々加速することができる)。各々の分解産物の量は、様々なクロマトグラフィー技術(例えば、SEC-HPLC 及び/又は RP-HPLC)を使用した分子サイズ及び/又は電荷に応じた分解産物の分離によって度々決定される。
【0198】
従って、上記のように、「安定化製剤」とは、物理的安定性の増加、化学安定性の増加又は物理的且つ化学安定性の増加された製剤を意味する。一般に、使用期限に達するまで、(推奨の用途及び保存条件での服薬遵守における)使用及び保存中、製剤は安定状態でなければならない。
【0199】
本発明の一部の実施形態において、フィコリン結合ポリペプチドを含む医薬製剤は、使用の6週間以上且つ保存の3年以上安定である。本発明他の実施形態において、フィコリン結合ポリペプチドを含む医薬製剤は、使用の4週間以上且つ保存の3年以上安定である。本発明のさらなる実施形態において、フィコリン結合ポリペプチドを含む医薬製剤は、使用の4週間以上且つ保存の2年以上安定である。本発明のさらなる実施形態において、フィコリン結合ポリペプチドを含む医薬製剤は、使用の2週間以上且つ保存の2年以上安定である。
【0200】
本発明の特定の実施形態
上記の通り、本発明は、単離フィコリン結合ポリペプチド及び配列番号4のアミノ酸配列又はその変異体又は免疫性断片を含むポリペプチドに関する。一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは実質的に純粋である。
【0201】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、マンノース結合レクチン(MBL)と結合するの能力がある。
【0202】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、フィコリン-1、フィコリン-2、又はフィコリン-3のいずれか1つと結合するの能力がある。
【0203】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、C1q、肺サーファクタントタンパク質SP-A及び/又はSP-D、及び例えばCLL-11等の細胞内コラーゲン様防御分子のいずれか1つと結合するの能力がある。
【0204】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、例えば特異的受容体等の特異的受容タンパク質と結合するの能力がある。
【0205】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列20-297、又はその機能的変異体を含む。
【0206】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列20-380又はその機能的変異体を含む。
【0207】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列16-296又はその機能的変異体を含む。一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、SDS-PAGE上で非還元条件下で約40 kDaの分子量を有する。
【0208】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1の49及び178から選択される位置に相当する1又は2個のアミノ酸において、N結合型グリコシル化されている。
【0209】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、遺伝子組換えタンパク質である。
【0210】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、ホモ二量体形態で存在する。
【0211】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列20-380から成る。
【0212】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列又はその変異体又は免疫性断片を含む。
【0213】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号4、又はその変異体又は免疫性断片から成る。
【0214】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、例えばポトーシス細胞等の臨死又は死滅細胞、及び/又は細胞残屑の食作用を媒介する。
【0215】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、微生物の食作用を媒介する。
【0216】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。
【0217】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体は、ポリクローナル抗体である。
【0218】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、例えば貪食受容タンパク質(GULP)等の、配列相同性を有する他のタンパク質と同様の活性を有する。
【0219】
一部の実施形態において、単離核酸分子は、配列番号2の配列と少なくとも70%同一であるヌクレオチド配列を含む本発明のポリペプチドをコードする。
【0220】
一部の実施形態において、本発明の宿主細胞は、真核細胞である。
【0221】
一部の実施形態において、本発明の宿主細胞は、哺乳類起源の細胞である。
【0222】
一部の実施形態において、本発明の宿主細胞は、CHO細胞、HEK細胞及びBHK細胞から成る群から選択される。
【0223】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、炎症、アポトーシス及び/又は自己免疫と関連した任意の徴候の治療用である。
【0224】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、例えばアジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、クローン病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ及びぶどう膜炎、喘息、粥状動脈硬化、1型糖尿病、乾癬、様々なアレルギー等の任意の自己免疫症状の治療用である。
【0225】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎、虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、食道通過障害、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、アレルギー、免疫複合体病、臓器虚血、再灌流傷害、臓器壊死、枯草熱、敗血症(sepsis)、敗血症(septicemia)、エンドトキシンショック、悪液質、異常高熱症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、腟炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、間質性肺炎、塵肺症(pneumotransmicroscopicsilicovolcanoconiosis)、肺胞炎(alvealitis)、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、インフルエンザ、呼吸器多核体ウイルス感染症、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、単包虫症、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日光皮膚炎、じん麻疹、疣贅、膨疹、血管炎(vasulitis)、血管炎、心内膜炎、動脈炎、粥状動脈硬化、血栓性静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、アルツハイマー病、セリアック病、うっ血性心不全、成人呼吸促迫症候群、髄膜炎、脳炎、多発性硬化症、大脳梗塞、脳塞栓症、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ぶどう膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、同種移植片拒絶、移植片対宿主病、1型糖尿病、強直性脊椎炎,ベルジェ病、ライター症候群及びホジキン病、角膜炎、2型糖尿病、嚢胞性線維症、心筋梗塞、再灌流傷害、脳卒中、皮膚筋炎、メタボリックシンドローム、全身性炎症反応症候群、敗血症、複合臓器不全、播種性血管内凝固症候群、アナフィラキシーショック、1型及び/又は2型糖尿病と関連した血管合併症及び腎症、髄膜炎、細菌性敗血症、重症マラリア、非典型的溶血性尿毒症症候群、溶血性尿毒症症候群、加齢黄斑変性、発作性夜間血色素尿症、ヘビ毒咬傷、火傷、及び臓器移植への合併症から成る群から選択される任意の炎症性障害の治療用である。
【0226】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、臓器虚血、再灌流傷害、臓器壊死、血管炎、心内膜炎、粥状動脈硬化、血栓性静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、うっ血性心不全、成人呼吸促迫症候群、大脳梗塞、脳塞栓症、1型及び/又は2型糖尿病と関連した血管合併症及び腎症から成る群から選択される任意の炎症性障害の治療用である。
【0227】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した任意の徴候の治療用である。
【0228】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、凝固、血栓又は凝固障害関連疾患又は炎症反応を含む障害及び慢性血栓塞栓性疾患又は血管障害を含むフィブリン形成と関連した障害、例えば血栓症等、例えば深部静脈血栓症、動脈血栓症、術後血栓症、冠動脈バイパス術(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、血小板沈着性脳卒中、腫瘍増殖、腫瘍転移、血管新生、血栓溶解、粥状動脈硬化、再狭窄、例えば動脈硬化症及び/又は血管形成術後の再狭窄等、急性及び慢性徴候、例えば炎症等、敗血症、敗血症性ショック、敗血症、低血圧症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、播種性血管内凝固障害(DIC)、肺塞栓症、病的血小板沈着、心筋梗塞と関連した徴候の治療、又は血栓症のリスクのある動脈硬化血管、末梢血前駆細胞(PBPC)移植後の静脈閉塞性疾患、溶血性尿毒症症候群(HUS)、及び血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)及びリウマチ熱を有する哺乳類の予防治療用である。
【0229】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患又は炎症反応を含む障害及び慢性血栓塞栓性疾患又は血管障害を含むフィブリン形成と関連した障害、例えば血栓症等、例えば深部静脈血栓症等、動脈血栓症、術後血栓症、冠動脈バイパス術(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、血小板沈着性脳卒中、腫瘍増殖、腫瘍転移、血管新生、血栓溶解、粥状動脈硬化、再狭窄、例えば動脈硬化症等及び/又は血管形成術後の再狭窄等、急性及び慢性徴候、例えば炎症等、病的血小板沈着、心筋梗塞と関連した徴候の治療、又は血栓症のリスクがある動脈硬化血管、末梢血前駆細胞(PBPC)移植後の静脈閉塞性疾患、溶血性尿毒症症候群(HUS)、及び血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)及びリウマチ熱を有する哺乳類の予防治療用である。
【0230】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、例えば手術を受けている又はうっ血性心不全に罹患する患者等の特定のハイリスク患者における血栓塞栓性合併症の発生の予防用である。
【0231】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、心臓と関連した病状の治療用である。
【0232】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、フィコリン結合ポリペプチドの欠乏と関連した病状の治療用である。
【実施例】
【0233】
実施例1
MASPl遺伝子の代替転写の検出
方法: MASPlの3つの転写変異体: MASPl, MASP3及び FAPを検出するために、各変異体のための特異的プライマーをデザインした。PCRを、エクソン6における共通の順方向プライマー(5'-gcacccagagccacagtg-3')及び特異的逆方向プライマー: エクソン12におけるMASPl(5'-gccttccagtgtgtgggc-3')、エクソン11におけるMASP3(5-gccttccagagtgtggtca-3') 及びエクソン8aにおけるFAP (5'-cgatctggagagcgaactc-3') でセットアップした(図1)。50 ng 肝臓cDNA (クロンテック) 、0.25 μMの各プライマー、2.5 mM MgCl2、0.2 mM dNTP、50 mM KCl、10 mM トリス-HCl、pH 8.4、及び0.4 単位の白金 Taq DNAポリメラーゼ (Invitrogen)、を含有する20-μl容積中でPCR増幅を実行した。次のサイクルパラメータでPCR反応を行った: 10分94℃、30又は40サイクル(30秒94℃, 50秒58℃, 90秒72℃) 、10分72℃。2% アガロースゲル上で試料を分析した。
【0234】
結果: MASPl遺伝子の代替転写が肝臓cDNA中で検出された。エクソン6 に位置する共通の順方向プライマー及びエクソン 12 (MASPl) 、エクソン 11 (MASP3) 、及びエクソン 8a (FAP) に位置する特異的逆方向プライマーを使用して、MASPl、MASP3、及びFAP転写物は増幅された。MASPlは、500 bpの断片、MASP3は506 bpの断片、及び FAPは309 bpの断片を産生する。
【0235】
FAP断片の組織発現
方法: 上記のように同一のPCRアッセイで、MASPl、MASP3、及び FAP 発現に関して市販のヒト組織cDNAパネル(クロンテック)を調べた。2% アガロースゲル上で試料を分析した。
【0236】
結果: クロンテックから購入したcDNAパネルにおいて、MASPl、MASP3、及び FAP遺伝子の組織分布を調べた(図2)。共通の順方向プライマー及び特異的逆方向プライマーを使用して、MASPl、MASP3、及びFAP転写物は増幅された。参照遺伝子としてGADPHを使用した。全ての3つの遺伝子が肝臓において高発現され、さらに、FAPが心臓組織において強く発現された(黒矢印で標識)。FAP 遺伝子の微量な発現が、脳、結腸、前立腺、骨格筋、及び小腸検出された(白色矢印で標識)。
【0237】
100個体のFAPexon8aのDNA配列決定
方法: 翻訳ATG開始部位に関連する位置+44,083から+44,431に及ぶMASP1/MASP3/FAP 遺伝子のイントロン-エクソン境界を含むエクソン8aの直接配列決定を、100人の健常なコーカサス人由来のゲノムDNAテンプレート上で行った。順方向プライマーが5'-T7 配列(5'-ttatacgactcacta-3') を含有する、単一プライマーセット(順方向: 5'-ctgttcttcacactggctg-3'、逆方向: 5'-ctgctgagatcatgttgttc-3') を使用して、断片を増幅した。50 ng ゲノムDNA、0.25μM の各プライマー、2.5 mM MgCl2、0.2 mM dNTP、50 mM KCl、10 mM トリス-HCl、pH 8.4、及び白金Taq DNA ポリメラーゼの0.4単位(Invitrogen) を含有する20-μl容積中で、PCR増幅を実行した。以下のサイクルパラメータ: 2分94℃、15サイクル(30秒94℃, 60秒64℃, 60秒72℃) 、15サイクル(30秒94℃, 60秒58℃, 60秒72℃) 、5分72℃、でPCR反応を行い、そして5'-ビオチン標識配列プライマーを使用して、ABI BigDyeサイクル配列決定ターミネーターキット(Applied Biosystems, Foster City, CA) を使用してプロトコールに従って順方向に配列決定した。ストレプトアビジンビーズ(GenoVision) を使用してPyroMark Vacuum Prep Workstation (Biotage)上で、配列反応物を精製した。
【0238】
ABI Prism 3100 Genetic Analyser (Applied Biosystems)上で、配列分析を行った。得られたDNA配列を、BioEdit ソフトウェアを使用して整列させ、配列電気泳動図からDNA多型を視覚的に確認した。
【0239】
結果: BioEdit ソフトウェアを使用して全配列を整列させた。100人の健常個体において、エクソン8a又はエクソン-イントロン領域において遺伝的変異は観察されなかった。
【0240】
実施例2
免疫沈降
血清由来のMAP-1の特異的免疫沈降を、MAP-1特異的mAb 20C4 (17 MAP-1特異的C末端ペプチドに対して産生された)又はmAb 8B3で行い、モノクローナル抗体は対照沈殿抗体として使用したMASP-1/3の共通の重鎖に対して反応した。総量10μgの抗MAP-1又はMASP-1/3 抗体を、ヒツジ抗マウス又はウサギIgG Dynaビーズ (M-280, cat. 112.02D/112.04D, Dynal/Invitrogen) に結合させた。洗浄工程後、ビーズを正常ヒト血清のプール (TBS中に1 : 1に希釈した) に適用し、4℃で1時間回転させながらインキュベートした。最終洗浄工程及び磁気分離後、ビーズを緩衝液を負荷したSDS中で沸騰し、SDS-PAGE及び、MAP-1、MBL、及びフィコリン-3への抗体でプローブしたウエスタンブロッティングに供した。
【0241】
上記と同一の沈殿手順を、MBL (Hyb 131-11, Bioporto, Denmark) 、フィコリン-2 (FCN219)及びフィコリン-3 (FCN334) へのmAbsで行った。MBL、フィコリン-2及び-3の血清濃度の違いを相殺するために、1 ml、300 μl及び100 μlの血清から、これらをそれぞれ沈殿させた。試料を、SDS-PAGE及びMAP-1に対するpAbでプローブしたウエスタンブロッティングによって分析した。
【0242】
免疫組織化学
rMAP-1を発現しているCHO細胞を、培養フラスコ中でRPMI+10%中で成長させた。80-90% コンフルエンスで細胞を回収し、4% ホルムアルデヒド-PBS中で24時間固定し、続いてパラフィン中に包埋した。6つの異なるヒト肝臓組織及び2つの異なる心筋組織、2つの骨格筋組織由来の試料及びヒト大動脈から得た2つの試料もまた固定し、上記のようにパラフィン包埋した。Leitz Wetzlar ミクロトームで5 μm の切片を得て、スライドガラス上に置き、アッセイを行うまで4℃で保管した。前処理及び分析を上述の通り行った。一次抗体はMAP-1特異的モノクローナル抗体mAb 12B11又は親和性精製した、モノ特異的ウサギ抗MAP-1であり、これらは全て5 μg/mlに希釈したものであった。アイソタイプ抗体対照を、同一濃度で組織に適用した。二次抗体は、Envision(登録商標)抗体(HRP-抗マウス又はHRP-抗ウサギ, Dako, Glostrup, Denmark)であった。Leica DMLB2 顕微鏡下で染色パターン分析を行った。
【0243】
SDS-PAGE及びウエスタンブロッティング
本質的には製造者によって説明されるように、NuPAGE(R)システム(Invitrogen) を使用して、10%又は4-12% (w/v) Bis-トリスポリアクリルアミドゲル上で非連続的緩衝液で電気泳動を行った。ポリビニリデンジフルオリド膜 (PVDF-HyBond, Amersham Bioscience)、2μg/mlの一次mAbsを使用したウエスタンブロッティング、及びPBS、0.05% Tween20中で1: 1500に希釈したHRP複合ストレプトアビジン(P0397, Dako) 又はPBS、0.05% Tween20中で1: 1000に希釈したHRP-ウサギ抗マウスIgG (PO260, Dako)による二次可視化を行った。5OmM酢酸ナトリウム緩衝液 pH 5中の3-アミノ-9-エチルカルバゾール(Sigma)(アセトン中に0.04%) 及び0.015% H2O2で膜を展開した。
【0244】
補体活性化アッセイ
本質的に上述のように、MBL及びフィコリン-3媒介補体因子C4析出へのMAP-1の影響を評価した。簡潔には、マンナン(MBLリガンド)(Sigma-Aldrich M7504)又はアセチル化ウシ血清アルブミン(フィコリン-3リガンド)をlOμg/ml でMaxisorp ELISA プレート(Nunc, Denmark)に固定した。洗浄後、rMBL又はrフィコリン-3(0.4μg/ml)を添加し、1.5時間インキュベートした。rMAP-1又はrMASP-2の2倍の段階希釈物を一方の次元に沿って1時間加え、他方の次元に沿ってMBL又はフィコリン-3の血清欠乏の段階希釈物を添加し37℃で45分間インキュベーションした。C4cへのpAbを使用してC4析出を測定した(Q0369, Dako, Glostrup/Denmark)。
【0245】
さらに、純系を使用して、MASP-2のMAP-1での置換を評価した。上記の通り、rMASP-2の段階希釈物をrMBL/マンナンマトリックス上で一方の次元に沿って加えて、20℃で45分間プレインキュベートし、続いて他方の次元に沿ってrMAP-1の希釈物を加えて20℃で45分間インキュベーションした。精製C4 (Quidel, CA, USAから購入)を濃度1 μg/ml で添加し、37℃で45分間インキュベートした。上記の通り検出を行った。
【0246】
結果
MAP-1は、フィコリン-2、フィコリン-3及びMBLと共沈殿する。
MAP-1のMBL及びフィコリン-3との結合の可能性を検討するために、抗MAP-1 mAb20C4及びMASP-1及びMASP-3の共通の重鎖に対するmAb (mAb8B3)を共に使用して血清複合体を沈殿させた。続いて沈殿物を、MAP-1、MBL、及びフィコリン-3それぞれへの抗体でプローブしたウエスタンブロッティングによって分析した。明確なフィコリン-3共沈殿バンドを観察したが、それより弱いバンドもまたMBLで観察された(図 24A)。フィコリン-2に対する抗体はウエスタンブロットにおいて機能しなかったので、試料はフィコリン-2に対する抗体でプローブされなかった。続いて、MBL、フィコリン-2及びフィコリン-3に対するmAbsを使用して免疫沈降を逆行させ、1 ml、300 μl及び100 μlの血清をそれぞれ沈殿させたが、これはMBLの血清濃度(2 μg/ml) 、フィコリン-2の血清濃度(5 μg/ml) 及びフィコリン-3の血清濃度(20 μg/ml)の違いの調整に機能する。続いて試料をMAP-1への抗体でプローブしたウエスタンブロッティングによって分析した。顕著なMAP-1バンドがフィコリン-2及び-3由来の沈殿物中で観察され、はるかに弱いバンドがMBL沈殿物中に生じ、免疫沈降rMAP-1及び血清MAP-1は対照として機能した(図24B)。
【0247】
MAP-1はレクチン経路の補体活性を抑制する。
rMBL及びrフィコリン-3との組合せでのMBL及びフィコリン-3欠乏血清を、MBL及びフィコリン-3補体C4活性化活性のための再構成のために使用した。マンナン及びアセチル化BSAはMBL及びフィコリン-3のリガンドとしてそれぞれ機能した。rMBL及びrフィコリン-3は共に、MBL及び フィコリン-3欠乏血清中でC4析出をそれぞれ開始することができた(図25A及び25D)。rMASP-2の適用は、フィコリン-3及びMBL活性化経路の双方を介して、C4析出の強度の正の用量依存性の増強をもたらす(図25B及び25E)。一方、rMAP-1の適用は、双方の経路を介してC4析出の明白な用量依存性抑制をもたらす(図25C及び25F)。
【0248】
さらに、rMBL、rMASP-2、rMAP-1及び精製C4のみを含む純粋成分系を使用して、MASP-2のMAP-1との置換可能性を検討した。rMASP-2をマンナン/rMBL 複合体を段階希釈でプレインキュベートした。その後、rMAP-1を様々な濃度で添加し、続いて精製C4を添加した。rMAP-1のシステムへの適用は明らかに、C4析出の用量依存性抑制をもたらした(図26)。
【0249】
実施例3
新規MBL/フィコリン結合タンパク質1(MAP-1)の血清濃度及び結合特性の決定
MAP-1の全長の非標識組換え型コンストラクトがCHO-DG44 細胞中で生成され、安定に発現された。MAP-1に対する特異的モノクローナル抗体が産生された。また、MAP-1血清測定のための定量的ELISAを確立し、血清MAP-1とフィコリン-2、-3及びMBLと間の結合をELISA及び密度勾配分画で調べた。
【0250】
遺伝子組換えタンパク質
PowerCHO1 血清不含有培地(Lonza, Vallensbaek/Denmark, www.lonza.com) を発現培地として使用した変更を行ってが、他で説明されるように非標識ヒトMAP-1の全長コンストラクトがCHO-DG44 細胞中で発現された(Hummelshoj et al., MoI Immunol 44, 401-11, 2007; Larsen et al., J Biol Chem 279, 21302-11, 2004; Ma et al., 2009 J Biol Chem, Oct 9;284(41))。これまで記載されるように(Skjoedt et al., 2009; Immunobiology, Nov 23)、rMAP-1を生成するために抗体親和性精製を使用した。簡潔に言えば、本質的にはPfeiffer等によって説明されるように(Pfeiffer et al., J Immunol Methods 97, 1-9, 1987)、15 mgの抗MAP-1 抗体(mAb 20C4) をCNBr活性化セファロースに共有結合で結合させ、精製マトリックスとして使用した。抗MAP-1カラムもまた、血清からMAP-1を除去するために使用した。
【0251】
モノクローナル抗体の産生を、以前に説明されるように行った(Skjoedt et al., J Biol Chem 285, 8234-43, 2010)。
【0252】
推奨されるようにNuPAGE(R)システム(Invitrogen) を使用して、非連続的緩衝液で、10%又は4-12% (w/v) のBis-トリスポリアクリルアミド-ゲル上で電気泳動を行った。ポリビニリデンジフルオリド膜 (PVDF-HyBond, GE Healthcare) を使用して、ウエスタンブロッティングを行った。2 μg/mlの一次mAbs、及び1: 1500に希釈したHRP複合ストレプトアビジン又はHRP-ウサギ抗マウスIgG (P0397/PO260, Dako, Glostrup/Denmark, www.dako.com) による二次可視化によって、基質としての5OmM酢酸ナトリウム緩衝液pH5 中の0.04% 3-アミノ-9-エチルカルバゾール(Sigma-Aldrich, Broendby/Denmark, www.sigmaaldrich.com)+ 0.015% H2O2 を使用して膜を展開した。以前に推奨され且つ説明されるように(Skjoedt et al., 2009)、rMAP-1をN-グリコシダーゼ-F/ENDO-F(N-グリコシダーゼ-F脱グリコシルキット, Roche, Mannheim/Germany, www.roche.com)で処理した。生成物をSDS-PAGEによって還元条件下で分析し、続いてクーマシー染色又はウエスタンブロッティングを行った。
【0253】
抗MAP-1 mAb 20C4の特異性は、以前に説明される(Skjoedt et al., 2010)。mAb 20C4 を捕捉(catching)抗体として、6 μg/mlでMaxisorb ELISA プレート (NUNC(商標登録), Roskilde/Denmark, www.nuncbrand.com)に固定された定量的MAP-1 ELISAで使用した。検量用試料の段階希釈(MAP-1欠乏血清に添加したrMAP-1又はrMAP-1)又はドナー血清試料を、PBS + 0.05% Tween20 + 0.5% ウシ血清及び10 mM EDTA中に適用した。3 μg/mlで適用した検出抗体は、以前に説明されるMASP-1、-3及びMAP-1の共通鎖と反応するビオチン標識したmAb 8B3であった(Skjoedt et al., 2010; Skjoedt et al., 2009)。
【0254】
フィコリン-2及び-3血清濃度を、Munthe-Fog等及びHummelshoj等(Hummelshoj et al., Hum MoI Genet 14, 1651-8, 2005; Munthe-Fog et al., Scand J Immunol 65, 383-92, 2007; Munthe-Fog et al., MoI Immunol 45, 2660-6, 2008) によって説明されるように測定し、MBL及びMASP-3血清濃度を以前に説明されるように測定した(Skjoedt et al., 2009)。
【0255】
推奨されるように、オルト-フェニレン-ジアミン (Dako, Glostrup/Denmark)で展開を得て、1M H2SO4で酵素反応を停止させた。V-max Kinetic-リーダー(Molecular Devices, Sunnyvale/CA/U.S) を使用して、光学濃度(OD490nm-650nm)レベルを測定した。
【0256】
捕捉用抗体としてMAP-1 特異的 mAb 20C4 を使用したという変更を行ったが (6 μg/mlでコーティングした)、本質的には以前に説明されるように(Skjoedt et al., 2009)、MAP-1及びMBL、フィコリン-2及び-3の間の相対的結合を評価した。検出mAbsは、ビオチン-標識FCN-219 (フィコリン-2特異的) 又はFCN-334 (フィコリン-3特異的)(24-25)、又はHyb 131-11であり、全て2 μg/mlで適用した。同一の100人のデンマーク人の供血者由来の血清試料を上記の通り分析した。
【0257】
正常ヒト血清を、スクロース勾配分離に供した。10 mM トリス中で緩衝化した10-30% スクロース勾配、145 mM NaCl、3 mM CaCl2及び30 μg/mlのヒト血清アルブミンから成る40 ml の遠心分離カラム上に0.75 mlの血清を負荷した。負荷したカラムを、SW28 ローターヘッドのL70 Beckmann 超遠心分離機中で、4℃で24時間、真空中で 150.000 x gで遠心分離した。1.5 mlの画分を、底部から採取し、特異的ELISA又は免疫ブロッティングによって、次の抗原に関して分析した: MAP-1、MASP-1、MASP-2、MASP-3、sMAP、MBL、フィコリン-2及びフィコリン-3。血清IgM(19S)及びIgG (7S) のピークもまた評価し、これは質量に対する分子表面比を示す。さらに、外因的に適用したC4を活性化するする能力に関して画分を分析した。簡潔には、以前に説明されるように(Skjoedt et al., 2010)、アセチル化 BSA (a フィコリン-3 リガンド) 又はマンナン(MBLリガンド)でコーティングしたELISAプレートに画分を段階希釈で適用し、続いて振盪しながら4℃で1時間インキュベーションした。続いてプレートを洗浄し、37℃で1時間、1 μg/mlの精製C4 でインキュベートした。続いて、C4cへのポリクローナル抗体(Q 0369, Dako, Glostrup, Denmark) でC4析出を測定した。
【0258】
統計分析
統計(スピアマンノンパラメトリック相関関係, ノンパラメトリック両側t-検定)及びMAP-1、MBL、フィコリン-2及び-3血清レベルを、Prism4 ソフトウェア (GraphPad Software, Inc., La Jolla/CA/US, www.gaphpad.com)を使用して算出した。
【0259】
結果
rMAP-1の精製及び特性決定
CHO DG44 細胞におけるrMAP-1の発現は、150 nM メトトレキサートの存在下で高産生量となった(産生量: 血清非含有培地中、10-20 μg/ml)。精製後、rMAP-1をSDS-PAGEで分析し、続いてクーマシーブリリアントブルー染色又は免疫ブロッティングを行った。SDS-PAGE/クーマシー染色分析から、推定-45 kDa減少の分子量のバンドが明らかとなった(図27)。rMAP-1のN-グリコシダーゼ Fでの脱グリコシル化は、シグナルペプチドを含まない理論的質量に相当する〜40 kDaへの分子量変化をもたらす。このパターンはまた、MAP-1への特異的抗体を使用した免疫ブロットで観察された。
【0260】
MAP-1 血清レベル
MAP-1の血清レベルを測定するために、定量的ELISAを展開した。アッセイは、捕捉用抗体及びMASP-1、-3及びMAP-1の共通の重鎖を認識する検出抗体(mAb 8B3)としてのMAP-1 特異的mAb 20C4に基づく。既知濃度の精製rMAP-1 検量用試料及び精製MAP-1添加のMAP-1欠乏血清間で、完全な平行が検量線で観察された(図28A)。100人のデンマーク人の供血者において、MAP-1の血清レベルを分析し、範囲115-466 ng/ml、平均値240 ng/mlと分かった(図29A)。以前に説明されるように(Skjoedt et al., 2009) 同一群でMASP-3血清レベルを測定し、MAP-1及びMASP-3濃度をプロットした(図29B)。MAP-1及びMASP-3の血清は同一遺伝子由来の代替転写物を表すにもかかわらず、MAP-1及びMASP-3の血清濃度間に、相関関係がないことが分かった。
【0261】
抗原及びアッセイ安定性を血清中で凍結融解サイクル中評価した(図29C)。凍結融解サイクルにも係わらず、MAP-1の非常に強く示された評価を観察した。
【0262】
MAP-1及びフィコリン-2、-3及びMBLの間の結合
MAP-1及びMBL、フィコリン-2及び-3の間の相互作用を測定するために、捕捉用抗体としてmAb 20C4 を使用し且つビオチン標識mAbs: FCN-219 (フィコリン-2特異的)、FCN-334 (フィコリン-3 特異的)又はHyb 131-11 (MBL特異的)でプローブして、3つの異なるELISAを展開した。MAP-1測定に使用した同一の100人のドナー血清試料を分析し、MAP-1及びフィコリン-2、-3及びMBL間の血清結合レベルを、相対的O.D.490-650nmとして評価した(図30A)。さらに、以前に記載のように(Skjoedt et al., 2009)、MBL、フィコリン-2及び-3の血清濃度を測定した。
【0263】
MBL、フィコリン-2及び-3と複合体を形成してMAP-1が存在することが分かった。しかしながら、MAP-1の主要部はフィコリン、特にフィコリン-3に結合する (p<0.0001) ようであり、このパターンもまたMASP-3に関して以前に観察されていた(Skjoedt et al., 2009)。
【0264】
相対的結合レベルに対してMAP-1、MBL、フィコリン-2及び-3の血清濃度をプロットし、MAP-1及びMBL間の結合がMBLレベルと高く相関することが分かった(スピアマン r: 0.92, p<0.0001)(図3OB, 上部右側)。これと対照的に、フィコリン-2及び-3への相対的MAP-1結合は、MAP-1の血清レベルと相関する(スピアマン r: それぞれ0.45及び0.61, p<0.0001, 図3OB 左側)。MAP-1濃度とMBLへの結合及びフィコリン-3濃度との一定の相関関係が観察されたにもかかわらず、傾向はあまり明白でなかった。
【0265】
密度勾配分画
結合分子に関してMAP-1の分布を検討し、どれほど関係が無いか調べるために、10-30% スクロース勾配及び超遠心分離法を使用して正常ヒト血清を密度分画に供した。続いて、採取した画分をMAP-1、MASP-3、MBL、フィコリン-2及び-3に関してELISAで(図31A)、MAP-1、MASP-1、-2及び-3、sMAP、MBL、フィコリン-2及び-3に関してウエスタンブロッティングで分析した(図31B)。結果は、血清MAP-1がフィコリンを有する画分に唯一存在することを示し、MBLはMAP-1が非結合分子として存在しないことを示した。sMAP、MASP-1、-2及び-3に関して、同一のパターンが観察された。さらに、データは、MAP-1、sMAP及びMASP-1、-2及び-3の大部分がフィコリン-3のピーク画分中に共局在することを示す。この分布をまた、サイズ排除クロマトグラフィーによってsephadex-200 カラム上で分析した。分子の等価な分布パターンが観察された(データは図示せず)。
【0266】
最終的に、外因的に適用したC4を活性化するスクロース勾配画分の能力を評価した。固相マンナン及びアセチル化BSAを、MBL及びフィコリン-3、それぞれのためのリガンドとして使用した。スクロース勾配によって分離されたフィコリン-3及びMBL複合体のピークを反映する、2つの異なるC4析出曲線を観察した(図31C)。
【0267】
考察
新規MBL/フィコリン結合タンパク質1 (MAP-1) 構造側面を検討し血清レベルを証明するために、非標識、組換え型MAP-1を発現させ、それに対する特異的抗体を産生した。N-グリコシダーゼ F 処理及びSDS-PAGE 分析は、MAP-1がグリコシル化され、シグナルペプチドのない推定アミノ酸配列から算出される分子量に等価な、N-グリカンを有する分子量-45 kDa及び脱グリコシル化後の-40 kDaを生じることを示した。
【0268】
MAP-1 特異的C末端に対して産生されたモノクローナル抗体を使用して、定量的MAP-1 ELISAを確立し、100人の健康的なデンマーク人の供血者において血清濃度範囲を測定した。MASP-3濃度(平均: 6500 ng/ml) と比較して、ドナー群において相対的に低い血清濃度(平均: 240 ng/ml, 範囲 115-466 ng/ml)であることが分かった。さらに、2つのタンパク質の血清濃度間に相関関係はなく、2つの分子は同一遺伝子の選択的変異体であるが、発現の制御は異なることを示している。近頃、MASP-1、-3及びMAP-1の組織分布における顕著な違いが記載された(Degn et al., 2009; Skjoedt et al., 2010)。MASP-3及びMAP-1間の血清濃度の大きな違いの発見は、MASPl 遺伝子由来の転写物変異体の選択的制御機構の概念をさらに支持する。
【0269】
我々は、ELISAに基づくアッセイを展開し、血清 AP-1及びMBL、フィコリン-2及び-3それぞれの間の相対的相関を評価した。さらに、フィコリン-2、-3及びMBLの血清濃度を、相対的結合レベルと関係付けるために測定した。結果は、MAP-1が主にフィコリン-3及びフィコリン-2に結合され、MBLへの相対的結合性があまり明白でないことを示す。この分布が、MBL、フィコリン-2及び-3の平均血清濃度の相違を反映することを主張することができる。しかしながら、MAP-1血清濃度がフィコリン-2との結合レベルと相関するが、MBL-MAP-1結合はMBL濃度と相関するが、フィコリン-2に関してこれは同一であるとは明らかでない。フィコリン-3及びMAP-1間の相対的結合は、MAP-1血清濃度と非常に相関したが、フィコリン-3血清レベルへの正の相関関係は非常に弱かった。上記発見は、MAP-1及びフィコリン-2及び-3間の主たる結合が、単純にフィコリン-2及び-3の一般的な高濃度に起因するものでないことを示す。この分布パターンは、密度勾配分離に供した血清の分析によってさらに立証された。我々は、MAP-1だけでなく、sMAP、MASP-1、-2及び-3もまたフィコリン-3ピーク画分で共局在する明らかな傾向を発見した。これは、我々がMASP-3に関して以前に観察した現象である(Skjoedt et al., 2009)。フィコリン-3及びMBLピーク画分の分離はまた、アセチル化 BSA (フィコリン-3 リガンド)及びマンナン(MBLリガンド) 上に外因的に添加したC4を活性化する能力によって評価した。2つの異なる活性化表面上のC4析出は、MBL又はフィコリン-3複合体を含有する異なるピーク画分を明らかに説明した。
【0270】
スクロース勾配密度分析由来のデータはまた、MBLに関する質量に対する表面比が、フィコリン-2及びフィコリン-3より高く、これはMBLが四次構造において非常に緩いオープン構造を有することを示す最近の研究 (Jensenius et al., 2009) からの所見を支持することを示した。しかしながら、フィコリンの質量に対する表面比の小ささもまた、例えばMAP-1、sMAP及びMASPs等の結合分子との分子分布を反映し得る。この点に関して、MAP-1/sMAP/MASPsへより結合することは、高い質量及び密度勾配を通したさらなる移動をもたらすかもしれない。
【0271】
結論として、我々は、MASP-3と比較してMAP-1は低血清濃度で存在し、MAP-1は主にフィコリン、しかしながら幾分MBLとの複合体で循環することを示した。さらに我々は、フィコリン-3がLCP認識分子の間で主たるMAP-1結合分子であることを実証し得る。
【0272】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離フィコリン結合ポリペプチド。
【請求項2】
実質的に純粋である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
ポリペプチドが、マンノース結合レクチン(MBL)との結合能を有する、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
ポリペプチドが、フィコリン-1、フィコリン-2、又はフィコリン-3のいずれか1つとの結合能を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
ポリペプチドが、C1q、肺サーファクタントタンパク質SP-A及び/又はSP-D、及び例えばCL-L1等の細胞内コラーゲン様防御分子のいずれか1つとの結合能を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
ポリペプチドが、例えば特異的受容体等の特異的受容タンパク質と結合するの能力がある、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
ポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列20〜297を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド、又はその機能的変異体。
【請求項8】
ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列20〜380を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチド、又はその機能的変異体。
【請求項9】
ポリペプチドが、配列番号9のアミノ酸配列16〜296を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリペプチド、又はその機能的変異体。
【請求項10】
ポリペプチドが、SDS-PAGEにおいて非還元条件下で分子量約40 kDaを有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
ポリペプチドが、配列番号1の49及び178から選択される位置に相当する1又は2個のアミノ酸においてN結合型グリコシル化されている、請求項1〜8又は10のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
ポリペプチドが遺伝子組換えタンパク質である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
ポリペプチドがホモ二量体形態である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列20〜380から成る、請求項1〜8又は10〜13のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリペプチド、又はその変異体若しくは免疫性断片。
【請求項16】
配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又はその変異体若しくは免疫性断片。
【請求項17】
配列番号4から成る請求項16に記載のポリペプチド、又はその変異体若しくは免疫性断片。
【請求項18】
ポリペプチドが、例えばアポトーシス細胞等の臨死又は死滅細胞及び/又は細胞残屑の食作用を媒介する、請求項1〜17のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項19】
ポリペプチドが、微生物の食作用を媒介する、請求項1〜18のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
ポリペプチドが、例えば貪食受容タンパク質(GULP)等の、配列相同性を有する他のタンパク質と同様の活性を有する、請求項1〜19のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のポリペプチドに特異的に結合する、抗体。
【請求項22】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
【請求項23】
配列番号2の配列と少なくとも70 %同一であるヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
【請求項24】
請求項22又は23に記載の単離核酸分子を含む、ベクター。
【請求項25】
請求項24に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項26】
真核細胞である、請求項25に記載の宿主細胞。
【請求項27】
哺乳類起源である、請求項26に記載の宿主細胞。
【請求項28】
細胞が、CHO細胞、HEK細胞及びBHK細胞から成る群から選択される、請求項27に記載の宿主細胞。
【請求項29】
請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドを生成するための方法であって、ポリヌクレオチドコンストラクトの発現が可能な条件下で、適切な成長培地において請求項25〜28のいずれか1項に定義される細胞を培養する工程、及び培地から生じるポリペプチドを回収する工程を含む、方法。
【請求項30】
請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドを含む、組成物。
【請求項31】
請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項32】
生物試料中の請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドを検出するための方法であって:
a) 生物試料を得る工程;
b) 生物試料を請求項21に記載の抗体と接触させる工程;
c) 抗体とポリペプチドとの複合体が存在する場合、試料中のポリペプチドの存在の指標として、当該複合体を検出する工程、
を含む、方法。
【請求項33】
医薬としての使用のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項34】
医薬の調製のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの、使用。
【請求項35】
炎症、アポトーシス及び/又は自己免疫と関連した任意の徴候の治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項36】
例えばアジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、クローン病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ及びぶどう膜炎、喘息、粥状動脈硬化、1型糖尿病、乾癬、様々なアレルギー等の任意の自己免疫症状の治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項37】
虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎、虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、食道通過障害、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、アレルギー、免疫複合体病、臓器虚血、再灌流傷害、臓器壊死、枯草熱、敗血症(sepsis)、敗血症(septicemia)、エンドトキシンショック、悪液質、異常高熱症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、腟炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、間質性肺炎,塵肺症、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、インフルエンザ、呼吸器多核体ウイルス感染症、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、単包虫症、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日光皮膚炎、じん麻疹、疣贅、膨疹、血管炎、血管炎、心内膜炎、動脈炎、粥状動脈硬化、血栓性静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、アルツハイマー病、セリアック病、うっ血性心不全、成人呼吸促迫症候群、髄膜炎、脳炎、多発性硬化症、大脳梗塞、脳塞栓症、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ぶどう膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、同種移植片拒絶、移植片対宿主病、1型糖尿病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、ライター症候群及びホジキン病、角膜炎、2型糖尿病、嚢胞性線維症、心筋梗塞、再灌流傷害、脳卒中、皮膚筋炎、メタボリックシンドローム、全身性炎症反応症候群、敗血症、多臓器不全、播種性血管内凝固症候群、アナフィラキシーショック、1型及び/又は2型糖尿病と関連した血管合併症及び腎症、髄膜炎、細菌性敗血症、重症マラリア、非典型的溶血性尿毒症症候群、溶血性尿毒症症候群、加齢黄斑変性、発作性夜間血色素尿症、ヘビ毒咬傷、火傷、及び臓器移植への合併症から成る群から選択される任意の炎症性障害の治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項38】
臓器虚血、再灌流傷害、臓器壊死、血管炎、心内膜炎、粥状動脈硬化、血栓性静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、うっ血性心不全、成人呼吸促迫症候群、大脳梗塞、脳塞栓症、1型及び/又は2型糖尿病と関連した血管合併症及び腎症から成る群から選択される任意の炎症性障害の治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項39】
凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した任意の徴候の治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項40】
凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患又は炎症反応を含む障害及び慢性血栓塞栓性疾患又はフィブリン形成と関連した障害、例えば深部静脈血栓症、動脈血栓症、術後血栓症等の血栓症等の血管障害、冠動脈バイパス術(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、血小板沈着性脳卒中、腫瘍増殖、腫瘍転移、血管新生、血栓溶解、粥状動脈硬化、再狭窄、例えば動脈硬化症及び/又は血管形成術後の再狭窄等、急性及び慢性徴候、例えば炎症等、敗血症、敗血症性ショック、敗血症、低血圧症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、播種性血管内凝固障害(DIC)、肺塞栓症、病的血小板沈着、心筋梗塞と関連した徴候の治療、又は血栓症のリスクがある動脈硬化血管、末梢血前駆細胞(PBPC)移植後の静脈閉塞性疾患、溶血性尿毒症症候群(HUS)、及び血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)及びリウマチ熱を有する哺乳類の予防治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項41】
凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患又は炎症反応を含む障害及び慢性血栓塞栓性疾患又は血管障害を含むフィブリン形成と関連した障害、例えば血栓症等、例えば深部静脈血栓症等、動脈血栓症、術後血栓症、冠動脈バイパス術(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、血小板沈着性脳卒中、腫瘍増殖、腫瘍転移、血管新生、血栓溶解、粥状動脈硬化、再狭窄、例えば動脈硬化症及び/又は血管形成術後の再狭窄等、急性及び慢性徴候、例えば炎症等、病的血小板沈着、心筋梗塞と関連した徴候の治療、又は血栓症のリスクがある動脈硬化血管、末梢血前駆細胞(PBPC)移植後の静脈閉塞性疾患、溶血性尿毒症症候群(HUS)、及び血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)及びリウマチ熱を有する哺乳類の予防治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項42】
例えば手術を受けている患者又はうっ血性心不全に罹患する患者等の、特定のハイリスク患者において、血栓塞栓性合併症の発生を予防するための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項43】
心臓と関連した病状の治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項44】
フィコリン結合ポリペプチドの欠乏と関連した病状の治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項45】
炎症、アポトーシス及び/又は自己免疫と関連した任意の徴候の治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項46】
例えばアジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、クローン病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ及びぶどう膜炎、喘息、粥状動脈硬化、1型糖尿病、乾癬、及び様々なアレルギー等と関連した任意の自己免疫疾患又は自己免疫症状の治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項47】
虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎、虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、食道通過障害、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再灌流傷害、臓器壊死、枯草熱、敗血症、敗血症、エンドトキシンショック、悪液質、異常高熱症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、腟炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、間質性肺炎、塵肺症、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、インフルエンザ、呼吸器多核体ウイルス感染症、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、単包虫症、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日光皮膚炎、じん麻疹、疣贅、膨疹、血管炎、血管炎、心内膜炎、動脈炎、粥状動脈硬化、血栓性静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、アルツハイマー病、セリアック病、うっ血性心不全、成人呼吸促迫症候群、髄膜炎、脳炎、多発性硬化症、大脳梗塞、脳塞栓症、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ぶどう膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、同種移植片拒絶、移植片対宿主病、1型糖尿病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、ライター症候群及びホジキン病から成る群から選択される任意の炎症性障害の治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項48】
凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した任意の徴候の治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項49】
凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患又は炎症反応を含む障害及び慢性血栓塞栓性疾患又は血管障害を含むフィブリン形成と関連した障害、例えば血栓症等、例えば深部静脈血栓症等、動脈血栓症、術後血栓症、冠動脈バイパス術(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、血小板沈着性脳卒中、腫瘍増殖、腫瘍転移、血管新生、血栓溶解、粥状動脈硬化、再狭窄、例えば動脈硬化症及び/又は血管形成術後の再狭窄等、急性及び慢性徴候、例えば炎症等、敗血症、敗血症性ショック、敗血症、低血圧症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、播種性血管内凝固障害(DIC)、肺塞栓症、病的血小板沈着、心筋梗塞と関連した徴候の治療、又は血栓症のリスクがある動脈硬化血管、末梢血前駆細胞(PBPC)移植後の静脈閉塞性疾患、溶血性尿毒症症候群(HUS)、及び血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)を有する哺乳類の予防治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項50】
例えば手術を受けている患者又はうっ血性心不全に罹患する患者等の特定のハイリスク患者において血栓塞栓性合併症の発生を予防するための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項51】
心臓と関連した病状の治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項52】
フィコリン結合ポリペプチドの欠乏と関連した病状の治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項53】
ストリンジェントな条件下で請求項22〜23のいずれか1項に記載の核酸配列とハイブリッド形成する能力がある、核酸プローブ。
【請求項54】
生物試料において請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドをコードする核酸の存在を検出する方法であって、
a) 生物試料を得る工程;
b) 生物試料を請求項53に記載の核酸プローブと接触させる工程;
c) 核酸プローブとポリペプチドをコードする核酸との複合体が存在する場合、試料におけるポリペプチドをコードする核酸の存在の指標として、当該複合体を検出する工程、
を含む、方法。
【請求項55】
フィコリン結合ポリペプチドの異常発現と関連した障害を診断するための方法であって、
患者から生物試料を得る工程及び生物試料におけるフィコリン結合ポリペプチドの発現を測定する工程を含むとともに、対照と比較した生物試料中のフィコリン結合ポリペプチドの発現の増加又は減少が、患者がフィコリン結合ポリペプチドの異常な発現と関連した障害に罹患するかを示す、方法。
【請求項56】
請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドと、フィコリン1、2、3、マンノース結合レクチン(MBL)、C1q、肺サーファクタントタンパク質SP-A及び/又はSP-D、及び例えばCL-L1等の細胞内コラーゲン様防御分子、から選択される1又は2以上のタンパク質との組合せを含む、単離組成物。
【請求項57】
医薬組成物である、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
医薬としての使用のための、請求項57に定義される医薬組成物。
【請求項59】
医薬の調製のための、請求項56に定義される組成物の使用。
【請求項60】
炎症、アポトーシス及び/又は自己免疫と関連した任意の徴候の治療のための、請求項57に定義される医薬組成物。
【請求項61】
請求項36〜44のいずれか1項に定義される任意の徴候の治療のための、請求項57に定義される医薬組成物。
【請求項62】
請求項35〜44のいずれか1項に定義される任意の徴候の治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドと、フィコリン1、2、3、及びマンノース結合レクチン(MBL)、C1q、肺サーファクタントタンパク質SP-A及び/又はSP-D、及び例えばCL-L1等の細胞内コラーゲン様防御分子から選択される1又は2以上のタンパク質の治療又は予防のための有効量を、同時又は経時的に投与する工程を含む、方法。
【請求項63】
例えば脳腫瘍、肝腫瘍及び生殖器系における腫瘍等の癌疾患等の悪性疾患の診断及び/又は予後診断のための、血液及び組織における請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドのバイオマーカーとしての、使用。
【請求項64】
請求項35〜44のいずれか1項に定義される自己免疫、代謝及び/又は炎症性病状の診断及び/又は予後診断のための、血液及び組織における請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドのバイオマーカーとしての、使用。
【請求項1】
単離フィコリン結合ポリペプチド。
【請求項2】
実質的に純粋である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
ポリペプチドが、マンノース結合レクチン(MBL)との結合能を有する、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
ポリペプチドが、フィコリン-1、フィコリン-2、又はフィコリン-3のいずれか1つとの結合能を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
ポリペプチドが、C1q、肺サーファクタントタンパク質SP-A及び/又はSP-D、及び例えばCL-L1等の細胞内コラーゲン様防御分子のいずれか1つとの結合能を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
ポリペプチドが、例えば特異的受容体等の特異的受容タンパク質と結合するの能力がある、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
ポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列20〜297を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド、又はその機能的変異体。
【請求項8】
ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列20〜380を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチド、又はその機能的変異体。
【請求項9】
ポリペプチドが、配列番号9のアミノ酸配列16〜296を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリペプチド、又はその機能的変異体。
【請求項10】
ポリペプチドが、SDS-PAGEにおいて非還元条件下で分子量約40 kDaを有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
ポリペプチドが、配列番号1の49及び178から選択される位置に相当する1又は2個のアミノ酸においてN結合型グリコシル化されている、請求項1〜8又は10のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
ポリペプチドが遺伝子組換えタンパク質である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
ポリペプチドがホモ二量体形態である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列20〜380から成る、請求項1〜8又は10〜13のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリペプチド、又はその変異体若しくは免疫性断片。
【請求項16】
配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又はその変異体若しくは免疫性断片。
【請求項17】
配列番号4から成る請求項16に記載のポリペプチド、又はその変異体若しくは免疫性断片。
【請求項18】
ポリペプチドが、例えばアポトーシス細胞等の臨死又は死滅細胞及び/又は細胞残屑の食作用を媒介する、請求項1〜17のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項19】
ポリペプチドが、微生物の食作用を媒介する、請求項1〜18のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
ポリペプチドが、例えば貪食受容タンパク質(GULP)等の、配列相同性を有する他のタンパク質と同様の活性を有する、請求項1〜19のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のポリペプチドに特異的に結合する、抗体。
【請求項22】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
【請求項23】
配列番号2の配列と少なくとも70 %同一であるヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
【請求項24】
請求項22又は23に記載の単離核酸分子を含む、ベクター。
【請求項25】
請求項24に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項26】
真核細胞である、請求項25に記載の宿主細胞。
【請求項27】
哺乳類起源である、請求項26に記載の宿主細胞。
【請求項28】
細胞が、CHO細胞、HEK細胞及びBHK細胞から成る群から選択される、請求項27に記載の宿主細胞。
【請求項29】
請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドを生成するための方法であって、ポリヌクレオチドコンストラクトの発現が可能な条件下で、適切な成長培地において請求項25〜28のいずれか1項に定義される細胞を培養する工程、及び培地から生じるポリペプチドを回収する工程を含む、方法。
【請求項30】
請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドを含む、組成物。
【請求項31】
請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項32】
生物試料中の請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドを検出するための方法であって:
a) 生物試料を得る工程;
b) 生物試料を請求項21に記載の抗体と接触させる工程;
c) 抗体とポリペプチドとの複合体が存在する場合、試料中のポリペプチドの存在の指標として、当該複合体を検出する工程、
を含む、方法。
【請求項33】
医薬としての使用のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項34】
医薬の調製のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの、使用。
【請求項35】
炎症、アポトーシス及び/又は自己免疫と関連した任意の徴候の治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項36】
例えばアジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、クローン病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ及びぶどう膜炎、喘息、粥状動脈硬化、1型糖尿病、乾癬、様々なアレルギー等の任意の自己免疫症状の治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項37】
虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎、虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、食道通過障害、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、アレルギー、免疫複合体病、臓器虚血、再灌流傷害、臓器壊死、枯草熱、敗血症(sepsis)、敗血症(septicemia)、エンドトキシンショック、悪液質、異常高熱症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、腟炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、間質性肺炎,塵肺症、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、インフルエンザ、呼吸器多核体ウイルス感染症、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、単包虫症、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日光皮膚炎、じん麻疹、疣贅、膨疹、血管炎、血管炎、心内膜炎、動脈炎、粥状動脈硬化、血栓性静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、アルツハイマー病、セリアック病、うっ血性心不全、成人呼吸促迫症候群、髄膜炎、脳炎、多発性硬化症、大脳梗塞、脳塞栓症、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ぶどう膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、同種移植片拒絶、移植片対宿主病、1型糖尿病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、ライター症候群及びホジキン病、角膜炎、2型糖尿病、嚢胞性線維症、心筋梗塞、再灌流傷害、脳卒中、皮膚筋炎、メタボリックシンドローム、全身性炎症反応症候群、敗血症、多臓器不全、播種性血管内凝固症候群、アナフィラキシーショック、1型及び/又は2型糖尿病と関連した血管合併症及び腎症、髄膜炎、細菌性敗血症、重症マラリア、非典型的溶血性尿毒症症候群、溶血性尿毒症症候群、加齢黄斑変性、発作性夜間血色素尿症、ヘビ毒咬傷、火傷、及び臓器移植への合併症から成る群から選択される任意の炎症性障害の治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項38】
臓器虚血、再灌流傷害、臓器壊死、血管炎、心内膜炎、粥状動脈硬化、血栓性静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、うっ血性心不全、成人呼吸促迫症候群、大脳梗塞、脳塞栓症、1型及び/又は2型糖尿病と関連した血管合併症及び腎症から成る群から選択される任意の炎症性障害の治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項39】
凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した任意の徴候の治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項40】
凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患又は炎症反応を含む障害及び慢性血栓塞栓性疾患又はフィブリン形成と関連した障害、例えば深部静脈血栓症、動脈血栓症、術後血栓症等の血栓症等の血管障害、冠動脈バイパス術(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、血小板沈着性脳卒中、腫瘍増殖、腫瘍転移、血管新生、血栓溶解、粥状動脈硬化、再狭窄、例えば動脈硬化症及び/又は血管形成術後の再狭窄等、急性及び慢性徴候、例えば炎症等、敗血症、敗血症性ショック、敗血症、低血圧症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、播種性血管内凝固障害(DIC)、肺塞栓症、病的血小板沈着、心筋梗塞と関連した徴候の治療、又は血栓症のリスクがある動脈硬化血管、末梢血前駆細胞(PBPC)移植後の静脈閉塞性疾患、溶血性尿毒症症候群(HUS)、及び血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)及びリウマチ熱を有する哺乳類の予防治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項41】
凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患又は炎症反応を含む障害及び慢性血栓塞栓性疾患又は血管障害を含むフィブリン形成と関連した障害、例えば血栓症等、例えば深部静脈血栓症等、動脈血栓症、術後血栓症、冠動脈バイパス術(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、血小板沈着性脳卒中、腫瘍増殖、腫瘍転移、血管新生、血栓溶解、粥状動脈硬化、再狭窄、例えば動脈硬化症及び/又は血管形成術後の再狭窄等、急性及び慢性徴候、例えば炎症等、病的血小板沈着、心筋梗塞と関連した徴候の治療、又は血栓症のリスクがある動脈硬化血管、末梢血前駆細胞(PBPC)移植後の静脈閉塞性疾患、溶血性尿毒症症候群(HUS)、及び血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)及びリウマチ熱を有する哺乳類の予防治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項42】
例えば手術を受けている患者又はうっ血性心不全に罹患する患者等の、特定のハイリスク患者において、血栓塞栓性合併症の発生を予防するための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項43】
心臓と関連した病状の治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項44】
フィコリン結合ポリペプチドの欠乏と関連した病状の治療のための、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチド。
【請求項45】
炎症、アポトーシス及び/又は自己免疫と関連した任意の徴候の治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項46】
例えばアジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、クローン病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ及びぶどう膜炎、喘息、粥状動脈硬化、1型糖尿病、乾癬、及び様々なアレルギー等と関連した任意の自己免疫疾患又は自己免疫症状の治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項47】
虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎、虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、食道通過障害、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再灌流傷害、臓器壊死、枯草熱、敗血症、敗血症、エンドトキシンショック、悪液質、異常高熱症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、腟炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、間質性肺炎、塵肺症、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、インフルエンザ、呼吸器多核体ウイルス感染症、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、単包虫症、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日光皮膚炎、じん麻疹、疣贅、膨疹、血管炎、血管炎、心内膜炎、動脈炎、粥状動脈硬化、血栓性静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、アルツハイマー病、セリアック病、うっ血性心不全、成人呼吸促迫症候群、髄膜炎、脳炎、多発性硬化症、大脳梗塞、脳塞栓症、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ぶどう膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、同種移植片拒絶、移植片対宿主病、1型糖尿病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、ライター症候群及びホジキン病から成る群から選択される任意の炎症性障害の治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項48】
凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患と関連した任意の徴候の治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項49】
凝固、血栓性又は凝固障害関連疾患又は炎症反応を含む障害及び慢性血栓塞栓性疾患又は血管障害を含むフィブリン形成と関連した障害、例えば血栓症等、例えば深部静脈血栓症等、動脈血栓症、術後血栓症、冠動脈バイパス術(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、血小板沈着性脳卒中、腫瘍増殖、腫瘍転移、血管新生、血栓溶解、粥状動脈硬化、再狭窄、例えば動脈硬化症及び/又は血管形成術後の再狭窄等、急性及び慢性徴候、例えば炎症等、敗血症、敗血症性ショック、敗血症、低血圧症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、播種性血管内凝固障害(DIC)、肺塞栓症、病的血小板沈着、心筋梗塞と関連した徴候の治療、又は血栓症のリスクがある動脈硬化血管、末梢血前駆細胞(PBPC)移植後の静脈閉塞性疾患、溶血性尿毒症症候群(HUS)、及び血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)を有する哺乳類の予防治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項50】
例えば手術を受けている患者又はうっ血性心不全に罹患する患者等の特定のハイリスク患者において血栓塞栓性合併症の発生を予防するための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項51】
心臓と関連した病状の治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項52】
フィコリン結合ポリペプチドの欠乏と関連した病状の治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドの治療又は予防のための有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項53】
ストリンジェントな条件下で請求項22〜23のいずれか1項に記載の核酸配列とハイブリッド形成する能力がある、核酸プローブ。
【請求項54】
生物試料において請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドをコードする核酸の存在を検出する方法であって、
a) 生物試料を得る工程;
b) 生物試料を請求項53に記載の核酸プローブと接触させる工程;
c) 核酸プローブとポリペプチドをコードする核酸との複合体が存在する場合、試料におけるポリペプチドをコードする核酸の存在の指標として、当該複合体を検出する工程、
を含む、方法。
【請求項55】
フィコリン結合ポリペプチドの異常発現と関連した障害を診断するための方法であって、
患者から生物試料を得る工程及び生物試料におけるフィコリン結合ポリペプチドの発現を測定する工程を含むとともに、対照と比較した生物試料中のフィコリン結合ポリペプチドの発現の増加又は減少が、患者がフィコリン結合ポリペプチドの異常な発現と関連した障害に罹患するかを示す、方法。
【請求項56】
請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドと、フィコリン1、2、3、マンノース結合レクチン(MBL)、C1q、肺サーファクタントタンパク質SP-A及び/又はSP-D、及び例えばCL-L1等の細胞内コラーゲン様防御分子、から選択される1又は2以上のタンパク質との組合せを含む、単離組成物。
【請求項57】
医薬組成物である、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
医薬としての使用のための、請求項57に定義される医薬組成物。
【請求項59】
医薬の調製のための、請求項56に定義される組成物の使用。
【請求項60】
炎症、アポトーシス及び/又は自己免疫と関連した任意の徴候の治療のための、請求項57に定義される医薬組成物。
【請求項61】
請求項36〜44のいずれか1項に定義される任意の徴候の治療のための、請求項57に定義される医薬組成物。
【請求項62】
請求項35〜44のいずれか1項に定義される任意の徴候の治療のための方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドと、フィコリン1、2、3、及びマンノース結合レクチン(MBL)、C1q、肺サーファクタントタンパク質SP-A及び/又はSP-D、及び例えばCL-L1等の細胞内コラーゲン様防御分子から選択される1又は2以上のタンパク質の治療又は予防のための有効量を、同時又は経時的に投与する工程を含む、方法。
【請求項63】
例えば脳腫瘍、肝腫瘍及び生殖器系における腫瘍等の癌疾患等の悪性疾患の診断及び/又は予後診断のための、血液及び組織における請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドのバイオマーカーとしての、使用。
【請求項64】
請求項35〜44のいずれか1項に定義される自己免疫、代謝及び/又は炎症性病状の診断及び/又は予後診断のための、血液及び組織における請求項1〜20のいずれか1項に定義されるポリペプチドのバイオマーカーとしての、使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25−1】
【図25−2】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29−1】
【図29−2】
【図30A】
【図30B】
【図31A】
【図31B】
【図31C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25−1】
【図25−2】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29−1】
【図29−2】
【図30A】
【図30B】
【図31A】
【図31B】
【図31C】
【公表番号】特表2012−533288(P2012−533288A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520048(P2012−520048)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060279
【国際公開番号】WO2011/006982
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(506330139)
【出願人】(512012285)ケベンハウンス ウニベルシテット (2)
【出願人】(512012573)シダンスク ウニベルシテット (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060279
【国際公開番号】WO2011/006982
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(506330139)
【出願人】(512012285)ケベンハウンス ウニベルシテット (2)
【出願人】(512012573)シダンスク ウニベルシテット (2)
【Fターム(参考)】
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