補修塗料を整合させるカラークラスタリング技術
元の塗料の色に整合できる補修塗料配合を決定するコンピュータ実施方法を用いて車両またはその一部の損傷塗装領域を補修または再塗装する方法であって、この方法においてa)整合される元の塗料の色データ値が決定され、b)色データ値がカラークラスタデータベースと、各々重心と各重心に関連する補修塗料配合とを有するカラークラスタとを含むコンピュータに入力されるとともに、c)元の塗料の色データ値がコンピュータ実施によりカラークラスタ内に位置決めされるとともに、元の塗料の色特徴に近い色特徴を有するカラークラスタの重心に関連する補修塗料が得られ、さらにd)ステップc)の補修塗料を、従来技術を用いて損傷塗装領域に吹付塗布することにより補修塗料の色特徴を車両の損傷していない元の塗料と整合させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、トラックのような車両またはその部品の修理または補修時に補修塗料の色を元の塗色と整合させる方法に関し、特に、本発明は、カラークラスタリングおよび塗料シェーディングおよび混合技術を利用する塗色を整合させるコンピュータ実施方法に関する。
【背景技術】
【0002】
相手先商標での製品製造(OEM)において用いられる塗料配合の色または塗布条件の僅かな変動により、同じ元の色に車両塗色ばらつきが存在する恐れがある。これらのばらつきは製造場所毎に、または同じ車両モデルに関する所与の色の製作ラン毎に、または特定の製作ランの進行中にさえ発生し得る。これらの差は別々の車両上では気づかないが、同一車両のボンネットおよびフェンダーなどの隣接車体パネル上にある場合、差は視覚的に知覚できる。これらの色のばらつきは自動車修理ステップにおける良好な色整合の達成を困難にする。
【0003】
車の車体が修理される場合、修理領域を通常再塗装しなければならない。修理の色は修理領域が観察者に識別できないように車の残部の色と整合しなければならない。所与のカラーコード内では色が概して車毎にまたは車の部分毎にも変わるため、利用可能な補修塗料は十分に近い色整合を提供しないことが多い。補修者はその後少量の着色ティントを追加することにより塗料の色を調整しなければならず、多くの例では容認可能な色整合を有する塗料を形成するために補修者が数回の繰り返しを行うことが必要である。
【0004】
塗料マッチングのプロセスを自動化するために多数の方法が考案されている。典型的な方法は塗装面の色特徴を測定する装置(例えば分光光度計)を用いるとともにその測定値を以前に開発された塗料配合に関連するコンピュータデータベースで達成されるものと整合させる。この方法ではコンピュータデータベースは修理施設に配置されている。補修または再塗装される車両の塗装面のものに最も近い色特徴を有する塗料配合が選択されるとともに塗料を配合するために用いられ、その後テストパネルに塗布されて補修または再塗装されている車両上の塗料と比較される。通例、この配合された塗料は補修または再塗装されている車両の色に適正に整合せず、色整合が得られるまで手動で調整しなければならない。これはかなり非効率的なプロセスであるとともに、仕上げ手順の人件費に大幅に影響する。
【0005】
関連する方法が米国特許第6,522,977号明細書に示されており、この方法は車両上に用いられている色に関連し得るシリアルナンバーを含むVIN(車両識別番号)を用いるとともに中央コンピュータにそのシリアル番号を提供し、コンピュータは車両上の損傷塗料を補償または修理するための塗料を配合するために用いることができる推奨塗料配合を提供する。この方法は色整合を得るための塗料配合の変更を可能にするようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
他の従来の手法はすべての色および利用可能なこれらの色の代替物のカラーチップを提供することであった。カラーチップは単に色塗装パネルであり、利用可能な塗料または塗料配合を表わす。そして補修者は目標色範囲を選択するとともに、カラーチップのライブラリから最良の整合塗料配合を選択し得る。残念なことに、顧客はカラーチップの代金を支払うつもりがないため、この手法は塗料供給業者にとって非常に費用がかかる。またカラーチップ作製プロセスのばらつきにより、カラーチップは時々ユーザにより吹付けられる実際の目標色とは色特性が異なる。
【0007】
さらなる他の手法は分光光度計によるカラーマッチングシステム(例えばDuPont ChromaVision(登録商標))である。このシステムは整合される塗料の色を測定するとともに、色整合を提供するための配合を算出する。しかし、これら上記のシステムは色整合の適正な視覚的表示を提供しない。カラークラスタ表示の追加が配合者に色整合により大きな自信を持たせることもある。またこれらのシステムが概して高価であるため、多くのユーザはこのような高い代価を支払うことを望まない。
【0008】
米国特許出願公開第2002/0184171A1号明細書は、「System and Method for Organizing Color Values using an Artificial Intelligence Based Cluster Model」について記載している。これはニューラルネットワークおよびファジー理論を始めとする人工知能方法の利用を教示しているが、カラーマッチングを実施するための具体的な方法は教示していない。これは各色群に関連する配合を教示しているが、再塗装される車両の色をカラークラスタの重心に対応する配合に整合させることは提案していない。
【0009】
補修塗料供給業者は所与の車色のすべてのばらつきに整合可能にする代替配合を提供することが多い。また、これらの配合の各々には色の視覚的確認用カラーチップが添付されている場合がある。通例塗料製造業者は多数の車から車の部品を収集するとともに、視覚的にそれらを調べて代替物をどこに位置付けるべきかを決定する。視覚的判断は主観的であるとともに退屈である。代替物が過剰に提供される場合には、補修者が最良の代替物を選択することはややこしく且つ困難である。少なすぎる場合には、すべての車のマッチングを可能にするには適当でない場合がある。補修者が代替物の1つおよび吹付塗布混合技術を用いることによりその色のすべての車が整合され得るように、代替物の数およびそれらの色位置を最適化する客観的方法が必要である。
【0010】
車両またはその一部の補修または再塗装時に最適色整合塗料を選択するための修理施設の補修者を支援するコンピュータ実施方法が必要である。この方法は、例えば異なる製造現場からまたは鉄道端末駅または埠頭のような入国地点から生じる車両の元の色の色ばらつきを特徴付けるために、車両または車両部品上の塗料の、計器による多角度色測定値(標準CIEL*,a*,b*値)を利用しなければならない。このような方法は好適にはコンピュータシステムを用いてこれらの測定値を利用して、塗料に配合される場合に標準塗布技術を用いて塗布できる最適塗料配合を得ることにより、再塗装または補修されている車両または一部の元の色に整合させることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、損傷塗装領域の修理のために用いられる補修塗料を形成するとともに元の塗料の色に整合させるために用いられる色整合可能補修塗料配合を決定するコンピュータ実施方法を用いて車両またはその一部の損傷塗装領域を補修またはそれを再塗装する方法に関し、この方法は、
a)整合される元の塗料の色データ値を決定するステップと、
b)色データ値をカラークラスタデータベースとカラークラスタとを含むコンピュータに入力するステップと、
c)元の塗料の色データ値をコンピュータ実施によりカラークラスタ内に位置決めし、元の塗料の色特徴に近い色特徴を有するカラークラスタの重心に関連する補修塗料配合を特定するとともに、そのような色特徴を有する補修塗料を得るステップと、
d)ステップc)の補修塗料を用いるとともに、従来の吹付、混合およびシェーディング技術を用いて、作業員によって補修塗料を損傷塗装領域に吹付塗布することにより補修塗料の色特徴を車両の損傷していない元の塗料と整合させるとともに、補修塗料を乾燥および硬化させるステップとを含み、
各カラークラスタが重心とカラークラスタの各重心に関連する補修塗料配合とを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の特徴と利点とは以下の詳細な説明を読むことで当業者によってより容易に理解されよう。明瞭化のため、別々の実施形態のコンテクスト内で上記および下記に説明した本発明のそれらの特徴は、単一の実施形態における組み合わせでも設け得ることは評価されよう。逆に簡潔にするため、単一の実施形態のコンテクストで説明した本発明の様々な特徴は、別々にまたは任意の下位の組み合わせでも設け得る。加えてコンテクストが特に注記しない限り、単数形での参照は複数も含み得る(例えば単数形(「a」および「an」)は1つもしくは1つまたは複数を意味し得る)。
【0013】
本出願で特定される様々な範囲の数値の使用は明確に示していない限り、記載された範囲内の最小および最大値が共に単語「約」を前に付した近似値として記されている。このように記載した範囲上下の僅かな変動を用いて、範囲内の値と同じ結果を実質的に達成することができる。またこれらの範囲の開示は、最小値と最大値との間のすべての値を含む連続範囲を意図するものである。
【0014】
本明細書で参照されるすべての特許、特許出願および公報はその全体を参照により本明細書に援用する。
【0015】
本発明は、塗料を整合させる、特に車両の塗料を整合させるのに有用である。「車両」は自動車、軽トラック、普通トラック、セミトラック、トラクタ、自動二輪車、トレーラ、ATV(全地形万能車)、ピックアップトラックを含むとともに、自動車車体、自動車下位供給元により製造且つ塗装される任意のおよびすべての品目、フレームレール、飲料器車体、用役車体、生コンクリート配達車両車体、廃棄物運搬車両車体、および消防および救急車両車体を含むがこれに限定されない商業トラックおよびトラック車体、ならびにトレーラハウス、キャンピングカー、コンバージョンバン、バン、娯楽用車両、娯楽船スノーモービル、全地形万能車、水上バイク、オートバイ、ボート、および航空機を含むがこれに限定されないこのようなトラック車体、バス、農業および建設設備、トラックキャップおよびカバー、商業トレーラ、消費者トレーラ、レクリエーション車両への任意の可能な付属品または構成要素を含む。また、工業および商業用施設の新たな建設およびその保守管理、セメントおよび木製床、商業および居住用構造、そのようなオフィスビルおよび家の壁、遊園地施設、コンクリート面、木製基板、船舶表面、橋梁、塔などの屋外構造、コイルコーティング、貨車、機械、OEM工具、看板、ガラスファイバ構造、スポーツグッズ、およびスポーツ用具も含まれる。
【0016】
CIEL*,a*,b*色座標値は、米国特許第4,917,495号明細書に示されている携帯型比色計、またはX Rite Incorporated,Grandeville,Michiganの分光光度計、例えばX Rite SP64分光光度計などの従来の基本測色装置により指示される標準値である。
【0017】
「カラークラスタ」とは同じ塗色の車両群の測定値から得られたL*,a*,b*データ値の集団を指す。
【0018】
「重心」はカラークラスタの中心を意味し、重心から従来の吹付、混合およびシェーディング技術によりカラークラスタ内にある元の塗色に整合可能である塗料配合がコンピュータ実施により算出される。
【0019】
「クラスタ分析」はクラスタを形成するとともに、クラスタのサイズ(直径)および他のクラスタに対する1つのクラスタの関係を決定するのに用いられる手順である。クラスタ分析がN.Bratchellによる解説論文「Cluster Analysis」Chemometrics and Intelligent Laboratory Systems 6(1989年)、105−125頁により十分に記載されており、これを参照により本明細書に援用する。他の有用な文献は、Geoff M.DownおよびJohn M.Barnardによる「Clustering Methods and their uses in Computational Chemistry」、Reviews in Computational Chemistry 18(2002年)、1−40頁であり、これも参照により本明細書に援用する。
【0020】
「全域(gamut)」は特定の色空間内または特定の装置上で再生することができる色の範囲である。
【0021】
「全域ビジュアライザ」は画面上に視覚的にL*,a*,b*色座標値を再生するとともにカラークラスタを示すために利用される装置であり、2004年5月27日に発行された米国特許出願公開第2004/0100643A1号明細書に記載されており、これを参照により本明細書に援用する。
【0022】
塗料の色は視覚的均等色空間の座標であるとともに以下の方程式によるX、YおよびZ三刺激値に関連するL*,a*およびb*値で記載され、International Committee of Illuminationにより規定されている。
L*は明度軸を規定する
L*=116(Y/Y0)1/3−16
a*は赤緑軸を規定する
a*=500[(X/X0)1/3(Y/Y0)1/3]
b*は黄青軸を規定する
b*=200[(Y/Y0)1/3−(Z/Z0)1/3]
ここでX0、Y0およびZ0は所与の発光体に対する完全白色の三刺激値であり、
X、YおよびZはその色に対する三刺激値である。
【0023】
三次元色空間を用いてある色特性または色属性の観点から色を既定することができることは一般的に十分に認められている。L*,a*,b*およびLabとも一般に称されるCIELABは、色が三次元長方形座標系内に配置されている独立した色空間を示す均等デバイスである。三次元は明度(L)、赤色度/緑色度(a)、および黄色度/青色度(b)である。図3.1を参照すると、図でL*である黒/白軸は光度または明度属性のスケールを表わすとともに垂直軸として示されている。赤色/緑色外観のスケールのa*表現である赤/緑軸は図の平面に対して垂直な軸であるとともに、黄色/青色外観のスケールのb*表現である黄/青軸は水平軸である。3つの軸の各々の構成は本明細書に示された図3〜5の各々で同じである。色のa*−b*軸位置の組み合わせに含まれる情報は、色相および彩度として既知の色度属性を表わす。色相はL*軸周囲の位置に関して変動するとともに、彩度はL*軸からの距離とともに変化する。
【0024】
【数1】
【0025】
色相=h=tan-1(b*/a*);これは色相角と称される。
【0026】
そのため、色属性一式または群、もしくはL*,a*,b*色空間の明度(L*)、赤/緑(a*)、および黄/青(b*)を備える座標を規定する属性は色空間に色点または軌跡を十分に規定する。本明細書で一般的に用いられる場合用語「色」は、三次元色空間の三次元または軸すべてを考慮した、1つまたは複数の色属性の一式または群もしくは相当する座標により十分に規定されると理解されるものとする。
【0027】
通常、色は色標準に対して判定され、色測定値はその標準に対する色差として表わされる。
ΔL*=L*サンプル−L*標準
Δa*=a*サンプル−a*標準
Δb*=b*サンプル−b*標準
ΔC*=C*サンプル−C*標準
合計色差は、以下のように表わされる。
【0028】
【数2】
【0029】
色相差は色相角差ではなくメトリック色相差として表わされる。
【0030】
【数3】
【0031】
式中、a*sb*b>a*bb*sである場合には⇒k=1;あるいはk=−1であり、下付き文字sおよびbは標準とサンプルを指す。
【0032】
視覚評価と良好に一致させるためにCIELAB空間の変換が公開されている。一般方程式は
【0033】
【数4】
【0034】
CIE94色空間はパラメータを規定する。
ソリッドカラーに対して、SL=1.0
SL=0.034L*;L*≦29.4である場合には、ゴニオ外観色に対してSL=1.0。
Sc=1+0.045C*ab
ここでC*ab=SQRT(C*標準C*サンプル)
SH=1+0.015C*ab
パラメータ因子KL:KC:KH=1:1:1が概して十分である。
他の一般に用いられる色空間はCMCおよびCIEDE2000である。
【0035】
色をさらに多様な反射角L(θ)、a(θ)、b(θ)で説明することが可能であり、ここでθは正反射方向から測定された特定の反射角である。市販の多角度比色計および分光光度計は広く入手可能であるとともに、一測定でいくつかの角度でL*、a*およびb*値を測定するのに有用である。装置は照明の多数の角度を含む5〜10の角度の測定を可能にすることが多い。整合される色が金属または真珠光沢薄片を含む場合、以下の角度、鏡面角度から測定して15°、45°および110°が用いられることが好適である。ソリッドカラーの場合、45°の角度がすべての角度で反射する光を統合する十分あるいは拡散測定値である。
【0036】
例えば分光光度計、カラーチップ、代替補修色処方を用いて整合する補修塗料配合を開発する上記の従来技術のプロセスは、概して、使用可能であり補修作業者が塗料が整合着色可能なことを保証する任意のレベルを有する塗料配合に整合する最も近い色を選択することを非常に困難にさせる多数の塗料配合を生じた。頻繁なパネル吹付テストランが行われるとともに整合を得ることができなかった場合には、配合を若干調整するかまたは他の配合を選択してより整合を提供した。本発明のプロセスは、概して、選択する色空間で最適化されたいくつかの配合を単に提供するとともに、このプロセスは補修作業者が標準塗布技術を用いて、得られる補修塗料の色が元の塗料に整合可能な色であることを保証する高いレベルを有する塗料配合の選択を可能にする。
【0037】
本発明は、損傷塗装車両基板を補修するもしくは車両全体または自動車フェンダー、ドアパネルまたは他の部分などの一部を再塗装するために用いられる補修塗料の色整合を決定する方法を提供する。自動車またはトラックなどの損傷を受けていない車両の塗料に対する元の塗色多角度データ(CIEL*,a*,b*値)は3つの角度、好適には15°、45°および110°に対して決定される。コンピュータ実施によりそのデータは、整合される具体的な塗色に対して少なくとも30の車両上で同じ角度で測定されたデータから得られるカラークラスタと比較されるとともに位置決めされ、さらにそのカラークラスタの重心に対する補修塗料の塗料配合が特定されるとともに実験室で開発される。その重心に対する配合に従って補修塗料が配合される。当該技術の作業者により吹付塗布される場合の補修塗料は、作業者が標準的吹付、混合およびシェーディング技術を用いて補修塗料を塗布することにより損傷を受けていない元の塗料の色と整合させることを可能にする。薄片含有塗料の場合、薄片の外観、例えばカラーフロップ、薄片光沢およびテクスチャが容認可能であるということを判断するために視覚的比較が通常必要とされる。その後、標準的技術を用いて、塗布された補修塗料を乾燥および硬化させる。
【0038】
本発明のプロセスを実施するために、車両の特定の色に対してカラークラスタデータベースを形成しなければならない。同じ製造設備からでさえおよび異なる製造設備からも色にばらつきがあるため、異なる場所からの異なる時間に製造された少なくとも30の車両に対する色データ(L*,a*,b*値)を得なければならない。海外で製造された車両の場合、測定は大群の組立車両がある通関港、鉄道端末駅および同様な場所で行われる。
【0039】
カラークラスタの量を決定する際、クラスタの重心の配合を用いて従来の混合技術によってクラスタ内のデータ点のすべてが色整合される。クラスタは色の三次元および測定される多数角度を考慮する多次元色空間内にマッピングされる。CIE94などの視覚的均等色空間の利用は色空間の三次元を同等に重み付け可能にする。混合可能な色整合塗料に対するカラークラスタの量を決定する際、顧客の好みに対して測定角度に重み付けすることが望ましい場合がある。測定の多数角度は顧客の好みを考慮するように重み付けされる。例えば車両に近づいて特に水平面上の塗装修理の色容認性を判断する場合、110°角度が最も目立ち最も高く重み付けされなければならない。他方、何人かの顧客は鏡または光源の鏡面または反射角に非常に近づいて見た時の色整合により大きい重要性を置く。このような場合、15°角度に最も高く重み付けしなければならない。
【0040】
図1は、カラークラスタおよびカラークラスタの重心を形成するとともに、その重心に対する整合塗料配合を算出する手順を示すブロック図である。図1の枠11は、所与の色に対してL*,a*,b*CIE色値が上記の比色計または分光光度計などの色測定装置を用いて、少なくとも30の車両上で、車両上の少なくとも2つの異なる箇所、通例ルーフまたはボンネットなどの水平面上およびサイドドアまたはサイドパネルなどの垂直面上で測定されるとともに、3つの異なる角度、好適には15、45および110度で測定されることを示す。
【0041】
図1の枠12は、L*,a*,b*値がコンピュータに入力されるとともに、プログラムが図3.1に示すようなL*,a*,b*座標を有する三次元グラフを提供することを示す。図3.1はL*,a*,b*値の単一のクラスタを示す。図1の枠13は、コンピュータプログラムを用いてカラークラスタが決定されることを示す。典型的なカラークラスタが図4.1〜図4.3に示されている。図1の枠14は、クラスタ分析技術を用いてコンピュータプログラムを用いて各カラークラスタの重心が決定されることを示す。
【0042】
Gamut Visualizerを用いて図3.1〜図3.3、図4.1〜4.3および図5.1〜5.3に示したデータを表示する。
【0043】
コンピュータプログラムはクラスタ分析技術を利用してカラークラスタのサイズ、クラスタの数、クラスタ間の距離および各クラスタの重心を決定する。
【0044】
クラスタ分析技術は、上記のN.Bratchellによる論文「Cluster Analysis」およびGeoff M.DownおよびJohn M.Barnardによる「Clustering Methods and their uses in Computational Chemistry」に詳細に記載されている。これらの論文により、当業者は、カラークラスタ、カラークラスタのサイズおよび直径、カラークラスタ間の距離ならびに各カラークラスタの重心を決定するのに用いられる有用なカラークラスタリング技術を容易に決定することができる。
【0045】
図1の枠15は、各カラークラスタの重心のL*,a*,b*色値に整合する補修塗料配合が算出されることを示す。これらの色値を有する補修塗料が実験室において当業者により配合されるとともに、車両を補修または修理する人が利用できる。
【0046】
新しい車の色が導入される場合補修塗料供給業者は色標準を受け取る。これらの標準を視覚的方法またはDatamatch(登録商標)(Datacolor、Lawrenceville,NJ)などの市販のコンピュータカラーマッチングプログラムにより整合させることができる。そして重心とこの第1の整合との色値間の色差を、同じ市販のソフトウェアまたは1972年9月12日発行されたArmstrongらの米国特許第3,690,771号明細書に開示されているような方法を用いて調整することが可能であり、これを参照により本明細書に援用する。他の市販の色シェーディングプログラムはGretagMacBeth LLC(米国ニューヨーク州のNew Windsor)から入手可能である。
【0047】
本発明の新規のプロセスの重要な点は元の塗色がカラークラスタにある場合には、カラークラスタの重心から直接得られる塗料配合は、標準的吹付、混合およびシェーディング技術を用いて当業者により補修される車両の元の塗料に整合可能である。
【0048】
図2は、カラークラスタおよび形成されたカラークラスタの重心に対する関連の補修塗料配合を用いて車両を修理または再塗装するための色整合補修塗料を得る手順を示す。補修または修理される車両上の元の塗料のL*,a*,b*値が技術者により測定される(図2の枠21)。これらの値が、元の色に関連するカラークラスタの重心に対する塗料配合を含むプログラムが装備されたコンピュータに入力されるとともに、プログラムが元の塗料のL*,a*,b*値に基づいて元の塗料が位置するカラークラスタを決定する(図2の枠22)。コンピュータプログラムを用いてこのカラークラスタの重心に対する塗料配合が決定されるとともに塗料配合が提供され、関連する補修塗料が特定される(図2の枠23)。補修塗料が実験室で開発されて特定されるとともに技術者に提供され、技術者はその後それを修理される車両に塗布する。技術者は、従来の塗料吹付、混合およびシェーディング技術を用いて補修塗料を車両に吹付塗布し、車両の元の色に整合させる(図2の枠24)。その後、従来の技術を用いて塗料を乾燥および硬化させる(図2の枠25)。
【0049】
以下の他の代替方法を用いて再塗装または補修される車両の元の仕上げの色に整合させることができる。
【0050】
上記の手順を用いて重心が形成される。その後、各重心に対して開発された補修塗料の各々に対するカラーチップが作製される。カラーチップは補修塗料が塗布されて乾燥および硬化された基板を備える。修理される車両の元の塗料に整合させるために、技術者はカラーチップを物理的に元の塗料上に置くとともに最も近い色整合を選択し、従来の吹付塗布カラーマッチング技術を用いてその塗料を塗布する。
【0051】
これは、製造業者が代替補修塗料配合に整合する一連のカラーチップを提供する現在のカラーマッチング手順とは異なる。チップは補修される元の塗料領域に近接して配置されるとともに、最も近いチップが選択され、そのチップにより表わされる補修塗料が修理に用いられる。チップの色位置が最適化されていないため、このような修理は利用可能な代替保守塗料配合により元の色に整合する場合もしない場合もある。
【0052】
現在用いられている他の手順は、塗料供給業者が製造の際のOEM塗料の元の色に整合する補修塗料のみに対するチップを提供するとともに、利用可能な補修塗料の代替説明が提供されることである。補修者は、製造の際の元の塗料を表わすチップを置き、整合される車両上の塗料の差を、例えば近い反射角ではより明るくより緑色に近いとともにフロップ角はでより暗いと判断し、その情報を利用可能である代替塗料配合の説明と整合させて最も近い代替物を選択し、その後、修理される車両の色に吹付整合させてみる。このような技術は、補修者の判断および利用可能な代替塗料配合により適正な色整合を提供する場合もしない場合もある。
【0053】
本発明による他の技術は、分光光度計によるカラーマッチングシステム、例えばDuPont ChromaVision(登録商標)を用いることである。補修者は、元の塗料からのL*,a*,b*色値を上記のカラーマッチングシステムに入力するまたは測定するとともに、整合する利用可能補修塗料が元の塗料の色値がある重心に対して提供され、技術者は、従来の吹付カラーマッチング技術を用いてその塗料を塗布する。
【0054】
分光光度計を用いる現在の手順において、補修される車両の色が測定されるとともに、車両の色に整合する最も近い代替塗料配合を見つけるために手動でまたはコンピュータにより検索が行われる。最も近い整合する代替塗料配合を決定する際に所定の顧客の好みと一致するように、各角度における色差測定に異なって重み付けすることが可能である。色位置が最適化されていないため、利用可能な代替塗料配合により容認可能な色整合を達成される場合もされない場合もある。
【0055】
本発明の新規のプロセスを用いて、標準色素性モノコート、クリアコート/色素ベースコートまたは3重コート仕上げを有する車両上の仕上げを整合させることができるとともに、このプロセスを用いてソリッドカラーおよび金属粉または特定の効果付与顔料を含有するコーティングを整合させることができる。
【0056】
本発明はさらに以下の実施例で規定される。なお、この実施例が単に例示として提供されることは理解されよう。上記の説明およびこれらの実施例から、当業者は本発明の基本的特徴を確認することができるとともに、その要旨と範囲とから逸脱することなく本発明の様々な変化および変更を行って本発明を様々な利用および条件に適合させることが可能である。その結果、本発明は本明細書に以下に説明する例示的実施例により限定されるのではなく本明細書に冒頭に含まれる特許請求の範囲により規定される。
【0057】
以下の実施例は本発明を例示する。
【実施例】
【0058】
L*,a*,b*色データ値を、DuPont(E.I.DUPONT DE NEMOURS AND COMPANY,Wilmington,DE)のダークメタリックブルー塗料123で塗装された142の車両に対して決定した。L*,a*,b*色データ値を、X−Rite Incorporated,Grandville,MIにより製作されたX−Rite MA90B Metallic Field Colorimeterを用いて測定した。色データ値を各車両のボンネット上および運転者のサイドドア上で取った。L*,a*,b*色データ値を15°、45°および110°視角で車両上のこれらの2つの箇所で記録した。例えば15°角度で取ったボンネット上の典型的L*,a*,b*色データ値は、L*87.87、a*−4.45、b*−24.32からL*105.06、a*−1.88、b*−22.27の範囲であった。
【0059】
比較例
色データ値のすべてを、Gamut Visualizerに入力するとともに、視角の各々に対して単一のカラークラスタを決定した。これはそれぞれ図3.1、3.2および3.3に示されており、15°、45°および110°における単一カラークラスタがこれらの図に示されている。それぞれのカラークラスタ(15°、45°および110°)の各々について重心を決定した。上記角度の各々におけるL*,a*,b*色値は以下の通りである。
図3.1(15°) L*97.51 a*−3.12 b*−22.93
図3.2(45°) L*49.09 a*−0.76 b*−17.37
図3.3(110°)L*21.36 a*1.69 b*−16.07
【0060】
上記の重心のL*,a*,b*色値に整合する補修塗料配合を開発した。
【0061】
カラークラスタの外周に位置する車両の塗料に整合させるように試みた。車両は以下の元の塗色値:15°角度L*87.87、a*−4.45、b*−24.32、45°角度においてL*50.11、a*−1.84、b*−19.2、110°角度L*23.57、a*1.71、b*−18.10を有していた。カラークラスタに対する重心のL*,a*,b*値に整合するように配合された補修塗料を、標準的塗布カラーシェーディング技術を用いて塗布したが、元の色に整合させることはできなかった。
【0062】
本発明
角度15°、45°および110°の各々に対して上記に決定したL*,a*,b*色値のすべてを、上記の「Cluster Analysis」およびGeoff M.DownおよびJohn M.Barnardによる「Clustering Methods and their uses in Computational Chemistry」に記載されているクラスタ分析技術を用いて評価し、それによりカラークラスタ直径およびカラークラスタ間の距離を設定するとともに、各カラークラスタに対して重心を決定した。図4.1〜4.3はGamut Visulalizer上に表示された角度15°、45°および110°の各々に対する2つのカラークラスタを示す。カラークラスタの各々に対する重心が決定されるとともに、図5.1〜5.3に示されている。重心は以下の通りである。
図5.1(15°) 赤クラスタ L*101.41 a*−2.48 b*−22.53
緑クラスタ L*90.45 a*−4.30 b*−23.62
図5.2(45°) 赤クラスタ L*42.81 a*−0.17 b*−16.28
緑クラスタ L*51.92 a*−1.84 b*−19.26
図5.3(110°)赤クラスタ L*19.49 a*1.77 b*−14.77
緑クラスタ L*24.63 a*1.54 b*−18.32
【0063】
上記の重心の各々のL*,a*,b*値に整合するように、当業者に周知のコンピュータ実施技術を用いてクラスタの各々に対して補修塗料配合を開発した。コンピュータ実施プログラムが上記に測定された元の塗料L*,a*,b*値が緑クラスタにより近いと決定するとともに、車両を補修する際に用いる緑クラスタの重心に対して補修塗料が配合された。従来のカラー吹付およびカラーマッチング技術を用いることにより、補修塗料を車両に吹付塗布し、観察者に気づかれない整合塗料修理を行った。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】カラークラスタおよびカラークラスタに対する重心を形成するステップを示すブロック図である。
【図2】典型的な車両補修または再塗装用色整合塗料を得るためのステップを示すブロック図である。
【図3】近反射角(15°)−図3.1;面角(45°)−図3.2およびフロップ角(110°)−図3.3に対する実施例1のデータの単一のクラスタを示す。
【図4】近反射角(15°)−図4.1;面角(45°)−図4.2およびフロップ角(110°)−図4.3に対する実施例1のデータの2つのクラスタを示す。
【図5】近反射角(15°)−図5.1;面角(45°)−図5.2およびフロップ角(110°)−図5.3に対する実施例1のデータの2つのクラスタに対する重心を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、トラックのような車両またはその部品の修理または補修時に補修塗料の色を元の塗色と整合させる方法に関し、特に、本発明は、カラークラスタリングおよび塗料シェーディングおよび混合技術を利用する塗色を整合させるコンピュータ実施方法に関する。
【背景技術】
【0002】
相手先商標での製品製造(OEM)において用いられる塗料配合の色または塗布条件の僅かな変動により、同じ元の色に車両塗色ばらつきが存在する恐れがある。これらのばらつきは製造場所毎に、または同じ車両モデルに関する所与の色の製作ラン毎に、または特定の製作ランの進行中にさえ発生し得る。これらの差は別々の車両上では気づかないが、同一車両のボンネットおよびフェンダーなどの隣接車体パネル上にある場合、差は視覚的に知覚できる。これらの色のばらつきは自動車修理ステップにおける良好な色整合の達成を困難にする。
【0003】
車の車体が修理される場合、修理領域を通常再塗装しなければならない。修理の色は修理領域が観察者に識別できないように車の残部の色と整合しなければならない。所与のカラーコード内では色が概して車毎にまたは車の部分毎にも変わるため、利用可能な補修塗料は十分に近い色整合を提供しないことが多い。補修者はその後少量の着色ティントを追加することにより塗料の色を調整しなければならず、多くの例では容認可能な色整合を有する塗料を形成するために補修者が数回の繰り返しを行うことが必要である。
【0004】
塗料マッチングのプロセスを自動化するために多数の方法が考案されている。典型的な方法は塗装面の色特徴を測定する装置(例えば分光光度計)を用いるとともにその測定値を以前に開発された塗料配合に関連するコンピュータデータベースで達成されるものと整合させる。この方法ではコンピュータデータベースは修理施設に配置されている。補修または再塗装される車両の塗装面のものに最も近い色特徴を有する塗料配合が選択されるとともに塗料を配合するために用いられ、その後テストパネルに塗布されて補修または再塗装されている車両上の塗料と比較される。通例、この配合された塗料は補修または再塗装されている車両の色に適正に整合せず、色整合が得られるまで手動で調整しなければならない。これはかなり非効率的なプロセスであるとともに、仕上げ手順の人件費に大幅に影響する。
【0005】
関連する方法が米国特許第6,522,977号明細書に示されており、この方法は車両上に用いられている色に関連し得るシリアルナンバーを含むVIN(車両識別番号)を用いるとともに中央コンピュータにそのシリアル番号を提供し、コンピュータは車両上の損傷塗料を補償または修理するための塗料を配合するために用いることができる推奨塗料配合を提供する。この方法は色整合を得るための塗料配合の変更を可能にするようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
他の従来の手法はすべての色および利用可能なこれらの色の代替物のカラーチップを提供することであった。カラーチップは単に色塗装パネルであり、利用可能な塗料または塗料配合を表わす。そして補修者は目標色範囲を選択するとともに、カラーチップのライブラリから最良の整合塗料配合を選択し得る。残念なことに、顧客はカラーチップの代金を支払うつもりがないため、この手法は塗料供給業者にとって非常に費用がかかる。またカラーチップ作製プロセスのばらつきにより、カラーチップは時々ユーザにより吹付けられる実際の目標色とは色特性が異なる。
【0007】
さらなる他の手法は分光光度計によるカラーマッチングシステム(例えばDuPont ChromaVision(登録商標))である。このシステムは整合される塗料の色を測定するとともに、色整合を提供するための配合を算出する。しかし、これら上記のシステムは色整合の適正な視覚的表示を提供しない。カラークラスタ表示の追加が配合者に色整合により大きな自信を持たせることもある。またこれらのシステムが概して高価であるため、多くのユーザはこのような高い代価を支払うことを望まない。
【0008】
米国特許出願公開第2002/0184171A1号明細書は、「System and Method for Organizing Color Values using an Artificial Intelligence Based Cluster Model」について記載している。これはニューラルネットワークおよびファジー理論を始めとする人工知能方法の利用を教示しているが、カラーマッチングを実施するための具体的な方法は教示していない。これは各色群に関連する配合を教示しているが、再塗装される車両の色をカラークラスタの重心に対応する配合に整合させることは提案していない。
【0009】
補修塗料供給業者は所与の車色のすべてのばらつきに整合可能にする代替配合を提供することが多い。また、これらの配合の各々には色の視覚的確認用カラーチップが添付されている場合がある。通例塗料製造業者は多数の車から車の部品を収集するとともに、視覚的にそれらを調べて代替物をどこに位置付けるべきかを決定する。視覚的判断は主観的であるとともに退屈である。代替物が過剰に提供される場合には、補修者が最良の代替物を選択することはややこしく且つ困難である。少なすぎる場合には、すべての車のマッチングを可能にするには適当でない場合がある。補修者が代替物の1つおよび吹付塗布混合技術を用いることによりその色のすべての車が整合され得るように、代替物の数およびそれらの色位置を最適化する客観的方法が必要である。
【0010】
車両またはその一部の補修または再塗装時に最適色整合塗料を選択するための修理施設の補修者を支援するコンピュータ実施方法が必要である。この方法は、例えば異なる製造現場からまたは鉄道端末駅または埠頭のような入国地点から生じる車両の元の色の色ばらつきを特徴付けるために、車両または車両部品上の塗料の、計器による多角度色測定値(標準CIEL*,a*,b*値)を利用しなければならない。このような方法は好適にはコンピュータシステムを用いてこれらの測定値を利用して、塗料に配合される場合に標準塗布技術を用いて塗布できる最適塗料配合を得ることにより、再塗装または補修されている車両または一部の元の色に整合させることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、損傷塗装領域の修理のために用いられる補修塗料を形成するとともに元の塗料の色に整合させるために用いられる色整合可能補修塗料配合を決定するコンピュータ実施方法を用いて車両またはその一部の損傷塗装領域を補修またはそれを再塗装する方法に関し、この方法は、
a)整合される元の塗料の色データ値を決定するステップと、
b)色データ値をカラークラスタデータベースとカラークラスタとを含むコンピュータに入力するステップと、
c)元の塗料の色データ値をコンピュータ実施によりカラークラスタ内に位置決めし、元の塗料の色特徴に近い色特徴を有するカラークラスタの重心に関連する補修塗料配合を特定するとともに、そのような色特徴を有する補修塗料を得るステップと、
d)ステップc)の補修塗料を用いるとともに、従来の吹付、混合およびシェーディング技術を用いて、作業員によって補修塗料を損傷塗装領域に吹付塗布することにより補修塗料の色特徴を車両の損傷していない元の塗料と整合させるとともに、補修塗料を乾燥および硬化させるステップとを含み、
各カラークラスタが重心とカラークラスタの各重心に関連する補修塗料配合とを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の特徴と利点とは以下の詳細な説明を読むことで当業者によってより容易に理解されよう。明瞭化のため、別々の実施形態のコンテクスト内で上記および下記に説明した本発明のそれらの特徴は、単一の実施形態における組み合わせでも設け得ることは評価されよう。逆に簡潔にするため、単一の実施形態のコンテクストで説明した本発明の様々な特徴は、別々にまたは任意の下位の組み合わせでも設け得る。加えてコンテクストが特に注記しない限り、単数形での参照は複数も含み得る(例えば単数形(「a」および「an」)は1つもしくは1つまたは複数を意味し得る)。
【0013】
本出願で特定される様々な範囲の数値の使用は明確に示していない限り、記載された範囲内の最小および最大値が共に単語「約」を前に付した近似値として記されている。このように記載した範囲上下の僅かな変動を用いて、範囲内の値と同じ結果を実質的に達成することができる。またこれらの範囲の開示は、最小値と最大値との間のすべての値を含む連続範囲を意図するものである。
【0014】
本明細書で参照されるすべての特許、特許出願および公報はその全体を参照により本明細書に援用する。
【0015】
本発明は、塗料を整合させる、特に車両の塗料を整合させるのに有用である。「車両」は自動車、軽トラック、普通トラック、セミトラック、トラクタ、自動二輪車、トレーラ、ATV(全地形万能車)、ピックアップトラックを含むとともに、自動車車体、自動車下位供給元により製造且つ塗装される任意のおよびすべての品目、フレームレール、飲料器車体、用役車体、生コンクリート配達車両車体、廃棄物運搬車両車体、および消防および救急車両車体を含むがこれに限定されない商業トラックおよびトラック車体、ならびにトレーラハウス、キャンピングカー、コンバージョンバン、バン、娯楽用車両、娯楽船スノーモービル、全地形万能車、水上バイク、オートバイ、ボート、および航空機を含むがこれに限定されないこのようなトラック車体、バス、農業および建設設備、トラックキャップおよびカバー、商業トレーラ、消費者トレーラ、レクリエーション車両への任意の可能な付属品または構成要素を含む。また、工業および商業用施設の新たな建設およびその保守管理、セメントおよび木製床、商業および居住用構造、そのようなオフィスビルおよび家の壁、遊園地施設、コンクリート面、木製基板、船舶表面、橋梁、塔などの屋外構造、コイルコーティング、貨車、機械、OEM工具、看板、ガラスファイバ構造、スポーツグッズ、およびスポーツ用具も含まれる。
【0016】
CIEL*,a*,b*色座標値は、米国特許第4,917,495号明細書に示されている携帯型比色計、またはX Rite Incorporated,Grandeville,Michiganの分光光度計、例えばX Rite SP64分光光度計などの従来の基本測色装置により指示される標準値である。
【0017】
「カラークラスタ」とは同じ塗色の車両群の測定値から得られたL*,a*,b*データ値の集団を指す。
【0018】
「重心」はカラークラスタの中心を意味し、重心から従来の吹付、混合およびシェーディング技術によりカラークラスタ内にある元の塗色に整合可能である塗料配合がコンピュータ実施により算出される。
【0019】
「クラスタ分析」はクラスタを形成するとともに、クラスタのサイズ(直径)および他のクラスタに対する1つのクラスタの関係を決定するのに用いられる手順である。クラスタ分析がN.Bratchellによる解説論文「Cluster Analysis」Chemometrics and Intelligent Laboratory Systems 6(1989年)、105−125頁により十分に記載されており、これを参照により本明細書に援用する。他の有用な文献は、Geoff M.DownおよびJohn M.Barnardによる「Clustering Methods and their uses in Computational Chemistry」、Reviews in Computational Chemistry 18(2002年)、1−40頁であり、これも参照により本明細書に援用する。
【0020】
「全域(gamut)」は特定の色空間内または特定の装置上で再生することができる色の範囲である。
【0021】
「全域ビジュアライザ」は画面上に視覚的にL*,a*,b*色座標値を再生するとともにカラークラスタを示すために利用される装置であり、2004年5月27日に発行された米国特許出願公開第2004/0100643A1号明細書に記載されており、これを参照により本明細書に援用する。
【0022】
塗料の色は視覚的均等色空間の座標であるとともに以下の方程式によるX、YおよびZ三刺激値に関連するL*,a*およびb*値で記載され、International Committee of Illuminationにより規定されている。
L*は明度軸を規定する
L*=116(Y/Y0)1/3−16
a*は赤緑軸を規定する
a*=500[(X/X0)1/3(Y/Y0)1/3]
b*は黄青軸を規定する
b*=200[(Y/Y0)1/3−(Z/Z0)1/3]
ここでX0、Y0およびZ0は所与の発光体に対する完全白色の三刺激値であり、
X、YおよびZはその色に対する三刺激値である。
【0023】
三次元色空間を用いてある色特性または色属性の観点から色を既定することができることは一般的に十分に認められている。L*,a*,b*およびLabとも一般に称されるCIELABは、色が三次元長方形座標系内に配置されている独立した色空間を示す均等デバイスである。三次元は明度(L)、赤色度/緑色度(a)、および黄色度/青色度(b)である。図3.1を参照すると、図でL*である黒/白軸は光度または明度属性のスケールを表わすとともに垂直軸として示されている。赤色/緑色外観のスケールのa*表現である赤/緑軸は図の平面に対して垂直な軸であるとともに、黄色/青色外観のスケールのb*表現である黄/青軸は水平軸である。3つの軸の各々の構成は本明細書に示された図3〜5の各々で同じである。色のa*−b*軸位置の組み合わせに含まれる情報は、色相および彩度として既知の色度属性を表わす。色相はL*軸周囲の位置に関して変動するとともに、彩度はL*軸からの距離とともに変化する。
【0024】
【数1】
【0025】
色相=h=tan-1(b*/a*);これは色相角と称される。
【0026】
そのため、色属性一式または群、もしくはL*,a*,b*色空間の明度(L*)、赤/緑(a*)、および黄/青(b*)を備える座標を規定する属性は色空間に色点または軌跡を十分に規定する。本明細書で一般的に用いられる場合用語「色」は、三次元色空間の三次元または軸すべてを考慮した、1つまたは複数の色属性の一式または群もしくは相当する座標により十分に規定されると理解されるものとする。
【0027】
通常、色は色標準に対して判定され、色測定値はその標準に対する色差として表わされる。
ΔL*=L*サンプル−L*標準
Δa*=a*サンプル−a*標準
Δb*=b*サンプル−b*標準
ΔC*=C*サンプル−C*標準
合計色差は、以下のように表わされる。
【0028】
【数2】
【0029】
色相差は色相角差ではなくメトリック色相差として表わされる。
【0030】
【数3】
【0031】
式中、a*sb*b>a*bb*sである場合には⇒k=1;あるいはk=−1であり、下付き文字sおよびbは標準とサンプルを指す。
【0032】
視覚評価と良好に一致させるためにCIELAB空間の変換が公開されている。一般方程式は
【0033】
【数4】
【0034】
CIE94色空間はパラメータを規定する。
ソリッドカラーに対して、SL=1.0
SL=0.034L*;L*≦29.4である場合には、ゴニオ外観色に対してSL=1.0。
Sc=1+0.045C*ab
ここでC*ab=SQRT(C*標準C*サンプル)
SH=1+0.015C*ab
パラメータ因子KL:KC:KH=1:1:1が概して十分である。
他の一般に用いられる色空間はCMCおよびCIEDE2000である。
【0035】
色をさらに多様な反射角L(θ)、a(θ)、b(θ)で説明することが可能であり、ここでθは正反射方向から測定された特定の反射角である。市販の多角度比色計および分光光度計は広く入手可能であるとともに、一測定でいくつかの角度でL*、a*およびb*値を測定するのに有用である。装置は照明の多数の角度を含む5〜10の角度の測定を可能にすることが多い。整合される色が金属または真珠光沢薄片を含む場合、以下の角度、鏡面角度から測定して15°、45°および110°が用いられることが好適である。ソリッドカラーの場合、45°の角度がすべての角度で反射する光を統合する十分あるいは拡散測定値である。
【0036】
例えば分光光度計、カラーチップ、代替補修色処方を用いて整合する補修塗料配合を開発する上記の従来技術のプロセスは、概して、使用可能であり補修作業者が塗料が整合着色可能なことを保証する任意のレベルを有する塗料配合に整合する最も近い色を選択することを非常に困難にさせる多数の塗料配合を生じた。頻繁なパネル吹付テストランが行われるとともに整合を得ることができなかった場合には、配合を若干調整するかまたは他の配合を選択してより整合を提供した。本発明のプロセスは、概して、選択する色空間で最適化されたいくつかの配合を単に提供するとともに、このプロセスは補修作業者が標準塗布技術を用いて、得られる補修塗料の色が元の塗料に整合可能な色であることを保証する高いレベルを有する塗料配合の選択を可能にする。
【0037】
本発明は、損傷塗装車両基板を補修するもしくは車両全体または自動車フェンダー、ドアパネルまたは他の部分などの一部を再塗装するために用いられる補修塗料の色整合を決定する方法を提供する。自動車またはトラックなどの損傷を受けていない車両の塗料に対する元の塗色多角度データ(CIEL*,a*,b*値)は3つの角度、好適には15°、45°および110°に対して決定される。コンピュータ実施によりそのデータは、整合される具体的な塗色に対して少なくとも30の車両上で同じ角度で測定されたデータから得られるカラークラスタと比較されるとともに位置決めされ、さらにそのカラークラスタの重心に対する補修塗料の塗料配合が特定されるとともに実験室で開発される。その重心に対する配合に従って補修塗料が配合される。当該技術の作業者により吹付塗布される場合の補修塗料は、作業者が標準的吹付、混合およびシェーディング技術を用いて補修塗料を塗布することにより損傷を受けていない元の塗料の色と整合させることを可能にする。薄片含有塗料の場合、薄片の外観、例えばカラーフロップ、薄片光沢およびテクスチャが容認可能であるということを判断するために視覚的比較が通常必要とされる。その後、標準的技術を用いて、塗布された補修塗料を乾燥および硬化させる。
【0038】
本発明のプロセスを実施するために、車両の特定の色に対してカラークラスタデータベースを形成しなければならない。同じ製造設備からでさえおよび異なる製造設備からも色にばらつきがあるため、異なる場所からの異なる時間に製造された少なくとも30の車両に対する色データ(L*,a*,b*値)を得なければならない。海外で製造された車両の場合、測定は大群の組立車両がある通関港、鉄道端末駅および同様な場所で行われる。
【0039】
カラークラスタの量を決定する際、クラスタの重心の配合を用いて従来の混合技術によってクラスタ内のデータ点のすべてが色整合される。クラスタは色の三次元および測定される多数角度を考慮する多次元色空間内にマッピングされる。CIE94などの視覚的均等色空間の利用は色空間の三次元を同等に重み付け可能にする。混合可能な色整合塗料に対するカラークラスタの量を決定する際、顧客の好みに対して測定角度に重み付けすることが望ましい場合がある。測定の多数角度は顧客の好みを考慮するように重み付けされる。例えば車両に近づいて特に水平面上の塗装修理の色容認性を判断する場合、110°角度が最も目立ち最も高く重み付けされなければならない。他方、何人かの顧客は鏡または光源の鏡面または反射角に非常に近づいて見た時の色整合により大きい重要性を置く。このような場合、15°角度に最も高く重み付けしなければならない。
【0040】
図1は、カラークラスタおよびカラークラスタの重心を形成するとともに、その重心に対する整合塗料配合を算出する手順を示すブロック図である。図1の枠11は、所与の色に対してL*,a*,b*CIE色値が上記の比色計または分光光度計などの色測定装置を用いて、少なくとも30の車両上で、車両上の少なくとも2つの異なる箇所、通例ルーフまたはボンネットなどの水平面上およびサイドドアまたはサイドパネルなどの垂直面上で測定されるとともに、3つの異なる角度、好適には15、45および110度で測定されることを示す。
【0041】
図1の枠12は、L*,a*,b*値がコンピュータに入力されるとともに、プログラムが図3.1に示すようなL*,a*,b*座標を有する三次元グラフを提供することを示す。図3.1はL*,a*,b*値の単一のクラスタを示す。図1の枠13は、コンピュータプログラムを用いてカラークラスタが決定されることを示す。典型的なカラークラスタが図4.1〜図4.3に示されている。図1の枠14は、クラスタ分析技術を用いてコンピュータプログラムを用いて各カラークラスタの重心が決定されることを示す。
【0042】
Gamut Visualizerを用いて図3.1〜図3.3、図4.1〜4.3および図5.1〜5.3に示したデータを表示する。
【0043】
コンピュータプログラムはクラスタ分析技術を利用してカラークラスタのサイズ、クラスタの数、クラスタ間の距離および各クラスタの重心を決定する。
【0044】
クラスタ分析技術は、上記のN.Bratchellによる論文「Cluster Analysis」およびGeoff M.DownおよびJohn M.Barnardによる「Clustering Methods and their uses in Computational Chemistry」に詳細に記載されている。これらの論文により、当業者は、カラークラスタ、カラークラスタのサイズおよび直径、カラークラスタ間の距離ならびに各カラークラスタの重心を決定するのに用いられる有用なカラークラスタリング技術を容易に決定することができる。
【0045】
図1の枠15は、各カラークラスタの重心のL*,a*,b*色値に整合する補修塗料配合が算出されることを示す。これらの色値を有する補修塗料が実験室において当業者により配合されるとともに、車両を補修または修理する人が利用できる。
【0046】
新しい車の色が導入される場合補修塗料供給業者は色標準を受け取る。これらの標準を視覚的方法またはDatamatch(登録商標)(Datacolor、Lawrenceville,NJ)などの市販のコンピュータカラーマッチングプログラムにより整合させることができる。そして重心とこの第1の整合との色値間の色差を、同じ市販のソフトウェアまたは1972年9月12日発行されたArmstrongらの米国特許第3,690,771号明細書に開示されているような方法を用いて調整することが可能であり、これを参照により本明細書に援用する。他の市販の色シェーディングプログラムはGretagMacBeth LLC(米国ニューヨーク州のNew Windsor)から入手可能である。
【0047】
本発明の新規のプロセスの重要な点は元の塗色がカラークラスタにある場合には、カラークラスタの重心から直接得られる塗料配合は、標準的吹付、混合およびシェーディング技術を用いて当業者により補修される車両の元の塗料に整合可能である。
【0048】
図2は、カラークラスタおよび形成されたカラークラスタの重心に対する関連の補修塗料配合を用いて車両を修理または再塗装するための色整合補修塗料を得る手順を示す。補修または修理される車両上の元の塗料のL*,a*,b*値が技術者により測定される(図2の枠21)。これらの値が、元の色に関連するカラークラスタの重心に対する塗料配合を含むプログラムが装備されたコンピュータに入力されるとともに、プログラムが元の塗料のL*,a*,b*値に基づいて元の塗料が位置するカラークラスタを決定する(図2の枠22)。コンピュータプログラムを用いてこのカラークラスタの重心に対する塗料配合が決定されるとともに塗料配合が提供され、関連する補修塗料が特定される(図2の枠23)。補修塗料が実験室で開発されて特定されるとともに技術者に提供され、技術者はその後それを修理される車両に塗布する。技術者は、従来の塗料吹付、混合およびシェーディング技術を用いて補修塗料を車両に吹付塗布し、車両の元の色に整合させる(図2の枠24)。その後、従来の技術を用いて塗料を乾燥および硬化させる(図2の枠25)。
【0049】
以下の他の代替方法を用いて再塗装または補修される車両の元の仕上げの色に整合させることができる。
【0050】
上記の手順を用いて重心が形成される。その後、各重心に対して開発された補修塗料の各々に対するカラーチップが作製される。カラーチップは補修塗料が塗布されて乾燥および硬化された基板を備える。修理される車両の元の塗料に整合させるために、技術者はカラーチップを物理的に元の塗料上に置くとともに最も近い色整合を選択し、従来の吹付塗布カラーマッチング技術を用いてその塗料を塗布する。
【0051】
これは、製造業者が代替補修塗料配合に整合する一連のカラーチップを提供する現在のカラーマッチング手順とは異なる。チップは補修される元の塗料領域に近接して配置されるとともに、最も近いチップが選択され、そのチップにより表わされる補修塗料が修理に用いられる。チップの色位置が最適化されていないため、このような修理は利用可能な代替保守塗料配合により元の色に整合する場合もしない場合もある。
【0052】
現在用いられている他の手順は、塗料供給業者が製造の際のOEM塗料の元の色に整合する補修塗料のみに対するチップを提供するとともに、利用可能な補修塗料の代替説明が提供されることである。補修者は、製造の際の元の塗料を表わすチップを置き、整合される車両上の塗料の差を、例えば近い反射角ではより明るくより緑色に近いとともにフロップ角はでより暗いと判断し、その情報を利用可能である代替塗料配合の説明と整合させて最も近い代替物を選択し、その後、修理される車両の色に吹付整合させてみる。このような技術は、補修者の判断および利用可能な代替塗料配合により適正な色整合を提供する場合もしない場合もある。
【0053】
本発明による他の技術は、分光光度計によるカラーマッチングシステム、例えばDuPont ChromaVision(登録商標)を用いることである。補修者は、元の塗料からのL*,a*,b*色値を上記のカラーマッチングシステムに入力するまたは測定するとともに、整合する利用可能補修塗料が元の塗料の色値がある重心に対して提供され、技術者は、従来の吹付カラーマッチング技術を用いてその塗料を塗布する。
【0054】
分光光度計を用いる現在の手順において、補修される車両の色が測定されるとともに、車両の色に整合する最も近い代替塗料配合を見つけるために手動でまたはコンピュータにより検索が行われる。最も近い整合する代替塗料配合を決定する際に所定の顧客の好みと一致するように、各角度における色差測定に異なって重み付けすることが可能である。色位置が最適化されていないため、利用可能な代替塗料配合により容認可能な色整合を達成される場合もされない場合もある。
【0055】
本発明の新規のプロセスを用いて、標準色素性モノコート、クリアコート/色素ベースコートまたは3重コート仕上げを有する車両上の仕上げを整合させることができるとともに、このプロセスを用いてソリッドカラーおよび金属粉または特定の効果付与顔料を含有するコーティングを整合させることができる。
【0056】
本発明はさらに以下の実施例で規定される。なお、この実施例が単に例示として提供されることは理解されよう。上記の説明およびこれらの実施例から、当業者は本発明の基本的特徴を確認することができるとともに、その要旨と範囲とから逸脱することなく本発明の様々な変化および変更を行って本発明を様々な利用および条件に適合させることが可能である。その結果、本発明は本明細書に以下に説明する例示的実施例により限定されるのではなく本明細書に冒頭に含まれる特許請求の範囲により規定される。
【0057】
以下の実施例は本発明を例示する。
【実施例】
【0058】
L*,a*,b*色データ値を、DuPont(E.I.DUPONT DE NEMOURS AND COMPANY,Wilmington,DE)のダークメタリックブルー塗料123で塗装された142の車両に対して決定した。L*,a*,b*色データ値を、X−Rite Incorporated,Grandville,MIにより製作されたX−Rite MA90B Metallic Field Colorimeterを用いて測定した。色データ値を各車両のボンネット上および運転者のサイドドア上で取った。L*,a*,b*色データ値を15°、45°および110°視角で車両上のこれらの2つの箇所で記録した。例えば15°角度で取ったボンネット上の典型的L*,a*,b*色データ値は、L*87.87、a*−4.45、b*−24.32からL*105.06、a*−1.88、b*−22.27の範囲であった。
【0059】
比較例
色データ値のすべてを、Gamut Visualizerに入力するとともに、視角の各々に対して単一のカラークラスタを決定した。これはそれぞれ図3.1、3.2および3.3に示されており、15°、45°および110°における単一カラークラスタがこれらの図に示されている。それぞれのカラークラスタ(15°、45°および110°)の各々について重心を決定した。上記角度の各々におけるL*,a*,b*色値は以下の通りである。
図3.1(15°) L*97.51 a*−3.12 b*−22.93
図3.2(45°) L*49.09 a*−0.76 b*−17.37
図3.3(110°)L*21.36 a*1.69 b*−16.07
【0060】
上記の重心のL*,a*,b*色値に整合する補修塗料配合を開発した。
【0061】
カラークラスタの外周に位置する車両の塗料に整合させるように試みた。車両は以下の元の塗色値:15°角度L*87.87、a*−4.45、b*−24.32、45°角度においてL*50.11、a*−1.84、b*−19.2、110°角度L*23.57、a*1.71、b*−18.10を有していた。カラークラスタに対する重心のL*,a*,b*値に整合するように配合された補修塗料を、標準的塗布カラーシェーディング技術を用いて塗布したが、元の色に整合させることはできなかった。
【0062】
本発明
角度15°、45°および110°の各々に対して上記に決定したL*,a*,b*色値のすべてを、上記の「Cluster Analysis」およびGeoff M.DownおよびJohn M.Barnardによる「Clustering Methods and their uses in Computational Chemistry」に記載されているクラスタ分析技術を用いて評価し、それによりカラークラスタ直径およびカラークラスタ間の距離を設定するとともに、各カラークラスタに対して重心を決定した。図4.1〜4.3はGamut Visulalizer上に表示された角度15°、45°および110°の各々に対する2つのカラークラスタを示す。カラークラスタの各々に対する重心が決定されるとともに、図5.1〜5.3に示されている。重心は以下の通りである。
図5.1(15°) 赤クラスタ L*101.41 a*−2.48 b*−22.53
緑クラスタ L*90.45 a*−4.30 b*−23.62
図5.2(45°) 赤クラスタ L*42.81 a*−0.17 b*−16.28
緑クラスタ L*51.92 a*−1.84 b*−19.26
図5.3(110°)赤クラスタ L*19.49 a*1.77 b*−14.77
緑クラスタ L*24.63 a*1.54 b*−18.32
【0063】
上記の重心の各々のL*,a*,b*値に整合するように、当業者に周知のコンピュータ実施技術を用いてクラスタの各々に対して補修塗料配合を開発した。コンピュータ実施プログラムが上記に測定された元の塗料L*,a*,b*値が緑クラスタにより近いと決定するとともに、車両を補修する際に用いる緑クラスタの重心に対して補修塗料が配合された。従来のカラー吹付およびカラーマッチング技術を用いることにより、補修塗料を車両に吹付塗布し、観察者に気づかれない整合塗料修理を行った。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】カラークラスタおよびカラークラスタに対する重心を形成するステップを示すブロック図である。
【図2】典型的な車両補修または再塗装用色整合塗料を得るためのステップを示すブロック図である。
【図3】近反射角(15°)−図3.1;面角(45°)−図3.2およびフロップ角(110°)−図3.3に対する実施例1のデータの単一のクラスタを示す。
【図4】近反射角(15°)−図4.1;面角(45°)−図4.2およびフロップ角(110°)−図4.3に対する実施例1のデータの2つのクラスタを示す。
【図5】近反射角(15°)−図5.1;面角(45°)−図5.2およびフロップ角(110°)−図5.3に対する実施例1のデータの2つのクラスタに対する重心を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各カラークラスタが重心と各重心に関連する補修塗料配合とを有する、損傷塗装領域を修理するために用いられる補修塗料を形成するとともに元の塗料の色に整合させるために用いられる色整合可能補修塗料配合を決定するコンピュータ実施方法を用いて車両またはその一部の損傷塗装領域を補修する方法であって、
a)整合される元の塗料の色データ値を決定するステップと、
b)前記色データ値をカラークラスタデータベースとカラークラスタとを含むコンピュータに入力するステップと、
c)前記元の塗料の色データ値をコンピュータ実施によりカラークラスタ内に位置決めし、前記元の塗料の色特徴に近い色特徴を有する前記カラークラスタの重心に関連する補修塗料配合を特定するとともに、前記色特徴を有する補修塗料を得るステップと、
d)前記ステップc)の補修塗料を用いるとともに、従来の吹付、混合およびシェーディング技術を用いて、作業員によって前記補修塗料を損傷塗装領域に吹付塗布することにより前記補修塗料の色特徴を車両の損傷していない元の塗料と整合させるとともに、前記補修塗料を乾燥および硬化させるステップとを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記補修塗料がベースコート/クリアコート仕上げを修理するための修理ベースコートである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補修塗料が色素性モノコート仕上げを補修するための色素性修理モノコートである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
3角度比色計または分光光度計を用いて前記整合される元の塗料の色データ特徴を決定するとともに、前記色データがL*,a*,b*データ値を備える請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カラークラスタデータベースが3つの異なる角度で測定されたL*,a*およびb*値を備え、前記3つの角度が前記元の塗色を測定するために用いられた角度と同等である請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記元の塗料がソリッドカラー顔料、特定の効果顔料、金属粉顔料またはそれらの任意の混合物を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記カラークラスタデータベースが、少なくとも1つの車両製造現場において同じ製造業者により作製された少なくとも30の車両から、車両の異なる領域からの少なくとも3つの測定値から決定された、特定の色に対して少なくとも3つの異なる視角で得られたL*,a*,b*色データ値を備える請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記カラークラスタデータベースの値の各々が、三次元のレイアウトとしてビデオ画面上にプロットされる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記カラークラスタデータベース内のカラークラスタが標準統計技術を用いてコンピュータ実施により決定され、重心が各クラスタに対して決定されるとともに、補修塗料配合がコンピュータ実施により各カラークラスタの重心に対して決定される請求項1または7に記載の方法。
【請求項10】
前記カラークラスタデータベース内のカラークラスタが標準統計技術を用いてコンピュータ実施により決定され、重心が各クラスタに対して決定されるとともに、補修塗料配合がコンピュータ実施により各カラークラスタの重心に対して決定される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
カラークラスタおよび各カラークラスタに対する重心を視認するために色域ビジュアライザが用いられる請求項8に記載の方法。
【請求項12】
各カラークラスタが重心と各重心に関連する補修塗料配合とを有する、損傷塗装領域を修理するために用いられる補修塗料を形成するとともに元の塗料の色に整合させるために用いられる色整合可能補修塗料配合を決定するコンピュータ実施方法を用いて車両またはその一部の損傷塗装領域を補修する方法であって、
a)整合される元の塗料の色データ値を決定するステップと、
b)前記色データ値をカラークラスタデータベースとカラークラスタとを含むコンピュータに入力するステップと、
c)前記ステップb)の補修塗料配合から調製された補修塗料を用いて各重心に対してカラーチップを作製するステップと、
d)前記カラーチップを各々前記元の塗料上またはそれに隣接して配置するとともに、最も近い色整合を視覚的に決定するステップと、
e)前記最も近い色整合としてステップd)で特定された前記カラーチップに関連する補修塗料を用いるとともに、従来の吹付、混合およびシェーディング技術を用いて、作業員によって前記補修塗料を損傷塗装領域に吹付塗布することにより前記補修塗料の色特徴を車両の損傷していない元の塗料と整合させるとともに、前記補修塗料を乾燥および硬化させるステップとを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項1】
各カラークラスタが重心と各重心に関連する補修塗料配合とを有する、損傷塗装領域を修理するために用いられる補修塗料を形成するとともに元の塗料の色に整合させるために用いられる色整合可能補修塗料配合を決定するコンピュータ実施方法を用いて車両またはその一部の損傷塗装領域を補修する方法であって、
a)整合される元の塗料の色データ値を決定するステップと、
b)前記色データ値をカラークラスタデータベースとカラークラスタとを含むコンピュータに入力するステップと、
c)前記元の塗料の色データ値をコンピュータ実施によりカラークラスタ内に位置決めし、前記元の塗料の色特徴に近い色特徴を有する前記カラークラスタの重心に関連する補修塗料配合を特定するとともに、前記色特徴を有する補修塗料を得るステップと、
d)前記ステップc)の補修塗料を用いるとともに、従来の吹付、混合およびシェーディング技術を用いて、作業員によって前記補修塗料を損傷塗装領域に吹付塗布することにより前記補修塗料の色特徴を車両の損傷していない元の塗料と整合させるとともに、前記補修塗料を乾燥および硬化させるステップとを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記補修塗料がベースコート/クリアコート仕上げを修理するための修理ベースコートである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補修塗料が色素性モノコート仕上げを補修するための色素性修理モノコートである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
3角度比色計または分光光度計を用いて前記整合される元の塗料の色データ特徴を決定するとともに、前記色データがL*,a*,b*データ値を備える請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カラークラスタデータベースが3つの異なる角度で測定されたL*,a*およびb*値を備え、前記3つの角度が前記元の塗色を測定するために用いられた角度と同等である請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記元の塗料がソリッドカラー顔料、特定の効果顔料、金属粉顔料またはそれらの任意の混合物を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記カラークラスタデータベースが、少なくとも1つの車両製造現場において同じ製造業者により作製された少なくとも30の車両から、車両の異なる領域からの少なくとも3つの測定値から決定された、特定の色に対して少なくとも3つの異なる視角で得られたL*,a*,b*色データ値を備える請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記カラークラスタデータベースの値の各々が、三次元のレイアウトとしてビデオ画面上にプロットされる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記カラークラスタデータベース内のカラークラスタが標準統計技術を用いてコンピュータ実施により決定され、重心が各クラスタに対して決定されるとともに、補修塗料配合がコンピュータ実施により各カラークラスタの重心に対して決定される請求項1または7に記載の方法。
【請求項10】
前記カラークラスタデータベース内のカラークラスタが標準統計技術を用いてコンピュータ実施により決定され、重心が各クラスタに対して決定されるとともに、補修塗料配合がコンピュータ実施により各カラークラスタの重心に対して決定される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
カラークラスタおよび各カラークラスタに対する重心を視認するために色域ビジュアライザが用いられる請求項8に記載の方法。
【請求項12】
各カラークラスタが重心と各重心に関連する補修塗料配合とを有する、損傷塗装領域を修理するために用いられる補修塗料を形成するとともに元の塗料の色に整合させるために用いられる色整合可能補修塗料配合を決定するコンピュータ実施方法を用いて車両またはその一部の損傷塗装領域を補修する方法であって、
a)整合される元の塗料の色データ値を決定するステップと、
b)前記色データ値をカラークラスタデータベースとカラークラスタとを含むコンピュータに入力するステップと、
c)前記ステップb)の補修塗料配合から調製された補修塗料を用いて各重心に対してカラーチップを作製するステップと、
d)前記カラーチップを各々前記元の塗料上またはそれに隣接して配置するとともに、最も近い色整合を視覚的に決定するステップと、
e)前記最も近い色整合としてステップd)で特定された前記カラーチップに関連する補修塗料を用いるとともに、従来の吹付、混合およびシェーディング技術を用いて、作業員によって前記補修塗料を損傷塗装領域に吹付塗布することにより前記補修塗料の色特徴を車両の損傷していない元の塗料と整合させるとともに、前記補修塗料を乾燥および硬化させるステップとを含む、
ことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【公表番号】特表2008−540089(P2008−540089A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510217(P2008−510217)
【出願日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/017216
【国際公開番号】WO2006/121776
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/017216
【国際公開番号】WO2006/121776
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
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