補修継手
【課題】管底に段差が生じにくく排水の流れが阻害されにくい補修継手を提供する。
【解決手段】排水管路の破損部分より下流側の下流側管路2と破損部分より上流側の上流側管路4との間に配設する合成樹脂製の補修継手1である。この補修継手1は、下流側管路2に接続可能な下流側接続部材6と、上流側管路4に接続可能な上流側接続部材7と、これら下流側接続部材6および上流側接続部材7に接続するヤリトリ部材8とを備える。下流側接続部材6の一端に周方向に沿って厚みが変化する偏肉パッキン12を嵌合し、偏肉パッキン12を介して下流側接続部材6を下流側管路2の受口3に内挿する。また、上流側接続部材7の一端に周方向に沿って厚みが変化する偏肉パッキン18を嵌合し、偏肉パッキン18を介して上流側接続部材7を上流側管路4の差口5に外挿する。
【解決手段】排水管路の破損部分より下流側の下流側管路2と破損部分より上流側の上流側管路4との間に配設する合成樹脂製の補修継手1である。この補修継手1は、下流側管路2に接続可能な下流側接続部材6と、上流側管路4に接続可能な上流側接続部材7と、これら下流側接続部材6および上流側接続部材7に接続するヤリトリ部材8とを備える。下流側接続部材6の一端に周方向に沿って厚みが変化する偏肉パッキン12を嵌合し、偏肉パッキン12を介して下流側接続部材6を下流側管路2の受口3に内挿する。また、上流側接続部材7の一端に周方向に沿って厚みが変化する偏肉パッキン18を嵌合し、偏肉パッキン18を介して上流側接続部材7を上流側管路4の差口5に外挿する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管底に逆段差が生じにくく排水の流れが阻害されにくい補修継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、破損した陶管、ヒューム管およびコンクリート管等(以下、「陶管等」という。)の排水管路を補修する場合には、同種材料の管に交換する作業が行われていた。
【0003】
ここで、近年、排水管路を施工する際に、陶管等よりも軽量で施工性に優れた塩化ビニル等の合成樹脂管が広く使われるようになってきたことから、陶管等は、需要が減少して生産も少なくなってきた。
【0004】
このような事情から、既設の陶管等の補修に際しては、陶管等そのものの入手が困難であること、および、施工性の観点から、合成樹脂製の管継手に置き換えて補修が行われるケースが多くなっている。
【0005】
しかしながら、陶管と塩化ビニル管とのように、管種が異なると規格寸法も異なるため、呼び径が同一であっても異種管をそのまま接続すると、管内の接続部分に段差が生じてしまう。特に、管内で下流側の管底が上流側の管底より突出した逆段差が生じてしまうと、この逆段差により排水の流れを阻害してしまうことがある。
【0006】
そこで、陶管等と合成樹脂管とを接続する場合であっても、接続部に逆段差が生じて排水の流れを阻害しないように、接続部の管底を合わせるための技術が知られている。
【0007】
具体的には、陶管等と合成樹脂管の管底を合わせるために、陶管等の差口を嵌め込む合成樹脂製の受口の内側に位置決め突起が設けられたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
しかしながら、陶管等は合成樹脂管に比べて寸法公差が大きいため、特許文献1の構成では、陶管等の寸法誤差次第で接続部に無視できないほどの逆段差が生じてしまう可能性が考えられる。
【0009】
そこで、陶管等と合成樹脂管との内側端部同士を当接させ、合成樹脂管の内周面から陶管等の内周面にわたって板片を配置することにより、管底を合わせる方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−239299号公報(第3,4頁、図1)
【特許文献2】特開2008−150845号公報(第3,4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の特許文献2の方法によれば、陶管等と合成樹脂管との管底を合わせることが可能であるが、板片そのものが管内で突出することになるので、板片そのものが排水の流れを阻害する原因になってしまう。また、例えば、生分解製樹脂で板片を形成したとしても、完全に分解されるまでに時間がかかるため、その期間は板片が排水の流れを阻害してしまう。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、管底に逆段差が生じにくく排水の流れが阻害されにくい補修継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載された補修継手は、一方側の一方側管路と他方側の他方側管路との間に配設される合成樹脂製の補修継手であって、前記一方側管路に接続される一方側接続部材と、前記他方側管路に接続される他方側接続部材と、これら一方側接続部材および他方側接続部材に接続されるヤリトリ部材とを備え、前記一方側接続部材は、周方向に沿って厚みが変化する偏肉パッキンが一端に設けられ、一端がこの偏肉パッキンを介して前記一方側管路に接続されるとともに、他端が前記ヤリトリ部材の一端に接続され、前記他方側接続部材は、一端側に位置し前記ヤリトリ部材の他端に摺動自在に嵌合するスライド管部と、他端に設けられ周方向に沿って厚みが変化する偏肉パッキンとを有し、前記スライド管部がヤリトリ部材の他端に内挿されるとともに、他端が偏肉パッキンを介して前記他方側管路の差口に外挿されるものである。
【0014】
請求項2に記載された補修継手は、請求項1記載の補修継手において、一方側接続部材は、一端が偏肉パッキンを介して一方側管路の受口に内挿されるものである。
【0015】
請求項3に記載された補修継手は、請求項1記載の補修継手において、一方側接続部材は、一端が偏肉パッキンを介して一方側管路の差口に外挿されるものである。
【0016】
請求項4に記載された補修継手は、請求項1ないし3のいずれか一記載の補修継手において、スライド管部は、他方側接続部材に一体成形された基端部と、この基端部に取り付けられヤリトリ部材の他端に摺動自在に嵌合する延長部とを有するものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載された発明によれば、一方側接続部材の一端が偏肉パッキンを介して一方側管路に接続されるので、一方側管路に対して一方側接続部材を偏肉パッキンとともに回動させることで一方側管路に対する一方側接続部材の管底の高さを調整でき、また、他方側接続部材の他端が偏肉パッキンを介して他方側管路の差口に外挿されるので、他方側管路に対して他方側接続部材を偏肉パッキンとともに回動させることで他方側管路に対する他方側接続部材の管底の高さを調整できるため、管底に逆段差が生じにくく、管底の逆段差による排水の流れの阻害を防止できる。
【0018】
請求項2に記載された発明によれば、一方側接続部材の一端が偏肉パッキンを介して一方側管路の受口に内挿されるので、一方側管路に対して一方側接続部材を偏肉パッキンとともに回動させることで一方側管路に対する一方側接続部材の管底の高さを調整できるため、管底に逆段差が生じにくく、管底の逆段差による排水の流れの阻害を防止できる。
【0019】
請求項3に記載された発明によれば、一方側接続部材の一端が偏肉パッキンを介して一方側管路の差口に外挿されるので、一方側管路に対して一方側接続部材を偏肉パッキンとともに回動させることで一方側管路に対する一方側接続部材の管底の高さを調整できるため、管底に逆段差が生じにくく、管底の逆段差による排水の流れの阻害を防止できる。
【0020】
請求項4に記載された発明によれば、スライド管部が基端部とこの基端部に取り付けられヤリトリ部材の他端に摺動自在に嵌合する延長部とを有するので、ヤリトリ部材に対する摺動領域を確保しやすく、最適な長さに調整しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る補修継手の構成を示す断面図である。
【図2】同上補修継手における一方側接続部材を示す断面図である。
【図3】同上補修継手における一方側接続部材に設けられた偏肉パッキンを示す平面図である。
【図4】同上補修継手における他方側続部材を示す断面図である。
【図5】(a)は一方側管路と補修継手との管底に逆段差が生じている状態を示す断面図であり、(b)は一方側管路に対する一方側接続部材の管底の高さを調整した状態を示す断面図である。
【図6】(a)は他方側管路と補修継手との管底に逆段差が生じている状態を示す断面図であり、(b)は他方側管路に対する他方側接続部材の管底の高さを調整した状態を示す断面図である。
【図7】補修継手における第2の実施の形態を示す断面図である。
【図8】補修継手における第3の実施の形態を示す断面図である。
【図9】同上補修継手における偏肉パッキンを示す断面図である。
【図10】同上補修継手における偏肉パッキンを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成について図1ないし図4を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1において、1は合成樹脂製の補修継手を示し、この補修継手1は、略円筒状であり、例えば陶管、ヒューム管およびコンクリート管等の排水管路が破損した際に、破損部分と交換するため、排水管路の破損部分より一方側である下流側の一方側管路としての下流側管路2の受口3と、排水管路の破損部分より他方側である上流側の他方側管路としての上流側管路4の差口5との間に配設される。
【0024】
補修継手1は、受口3に内挿されて下流側管路2に水密に接続される一方側接続部材としての下流側接続部材6と、差口5に外挿されて上流側管路4に水密に接続される他方側接続部材としての上流側接続部材7と、これら下流側接続部材6および上流側接続部材7に水密に接続されるヤリトリ部材8とを備える。
【0025】
下流側接続部材6は、外径が下流側管路2の受口3の内径より小径で、かつ、内径がヤリトリ部材8の一端の外径より大径の略円筒状であり、一端が下流側管路2の受口3に内挿され、他端がヤリトリ部材8の一端に外挿されて接続される。
【0026】
図2に示すように、下流側接続部材6は、一端の外周にパッキン取付部10が一体に成形されている。このパッキン取付部10の内側には、周方向に沿って間欠的に配置された間隙11が設けられている。また、下流側接続部材6の一端であるパッキン取付部10の外周面には、偏肉パッキン12が嵌合されている。さらに、下流側接続部材6の一端には、内周面から内側へ突出し、ヤリトリ部材8の一端を係止可能な係止部13が設けられている。
【0027】
図3に示すように、偏肉パッキン12は、パッキン取付部10の外周に嵌合可能な環状に成形され、周方向に沿って厚みが変化している。すなわち、偏肉パッキン12は、周方向の一方側に位置し最も厚みが厚い厚肉部12aと、周方向で厚肉部12aに対向する他方側に位置し最も厚みが薄い薄肉部12bとを有し、厚肉部12aから薄肉部12bに向かって漸次厚みが薄くなっている。また、偏肉パッキン12は、一端側の先端側が他端側より小径に成形され、下流側接続部材6に嵌合された状態にて、下流側管路2の受口3に挿入しやすく成形されている。
【0028】
そして、下流側接続部材6の一端は、偏肉パッキン12がパッキン取付部10に嵌合された状態にて、偏肉パッキン12を介して下流側管路2の受口3に水密に内挿される。
【0029】
なお、下流側管路2の受口3の内周には、固定パッキン3aが嵌合されており、下流側接続部材6の一端が下流側管路2の受口3に内挿された状態では、偏肉パッキン12と固定パッキン3aとが接触するため、下流側接続部材6が下流側管路2に水密に接続される。
【0030】
上流側接続部材7は、略円筒状であり、一端がヤリトリ部材8の他端に内挿され、他端が上流側管路4に外挿される。
【0031】
図4に示すように、上流側接続部材7は、一端側に位置するスライド管部14と、他端側に位置する接続管部15とを有する。
【0032】
スライド管部14は、外径がヤリトリ部材8の他端の内径よりやや小径であり、ヤリトリ部材8の他端に摺動自在に嵌合する。また、スライド管部14の一端側の先端は他端側より小径に成形され、ヤリトリ部材8の他端に嵌合しやすく成形されている。そして、ヤリトリ部材8の他端にスライド管部14を嵌合した状態にて、ヤリトリ部材8に対してスライド管部14を摺動させることにより、ヤリトリ部材8とスライド管部14との重ね合わせ量を変化させて、下流側管路2と上流側管路4との間における補修継手1全体の長さが調整される。
【0033】
接続管部15は、一端側に位置し内径が上流側管路4の差口5の外径より大径の第1管部16と、他端側に位置し第1管部16より大径の第2管部17とを有する。さらに、第2管部17の内周面には、第1管部16と第2管部17との境界部分の段差状の箇所に係止されるように、偏肉パッキン18が嵌合されている。
【0034】
偏肉パッキン18は、第2管部17の内面に嵌合可能な環状に成形され、図3に示す偏肉パッキン12と同様に周方向に沿って厚みが変化している。すなわち、偏肉パッキン18は、最も厚みが厚い厚肉部18aと最も厚みが薄い薄肉部18bとを有し、この厚肉部18aから薄肉部18bに向かって漸次厚みが薄くなっている。また、偏肉パッキン18は、他端側の先端側が一端側より小径に成形され、上流側接続部材7に嵌合された状態にて、上流側管路4の差口5に挿入しやすく成形されている。
【0035】
そして、上流側接続部材7の他端は、偏肉パッキン18が接続管部15に嵌合された状態にて、偏肉パッキン18を介して上流側管路4の差口5に水密に外挿される。
【0036】
なお、上流側管路4の差口5の外周には、固定パッキン5aが嵌合されており、上流側接続部材7の他端が上流側管路4の差口5に外挿された状態では、偏肉パッキン18と固定パッキン5aとが接触するため、上流側接続部材7が上流側管路4に水密に接続される。
【0037】
ヤリトリ部材8は、一端の外径が下流側接続部材6の他端の内径より小径で、かつ、他端の内径が上流側接続部材7の一端であるスライド管部14の外径より大径の略円筒状であり、一端が下流側接続部材6の他端に内挿され、他端がスライド管部14に外挿される。
【0038】
このヤリトリ部材8は、一端側に外径が上流側接続部材7の他端の内径より小径の挿入部21を有している。この挿入部21は、上流側接続部材7に内挿された状態で一端側の先端が係止部13に係止される。
【0039】
また、ヤリトリ部材8は一端から全体の長さの約三分の1の箇所の一側である上側に段差部22が設けられている。さらに、ヤリトリ部材8の段差部22より他端側は、段差部22より一端側より大径であるとともに、内径がスライド管部14の外径よりやや大径であり、スライド管部14が摺動自在に嵌合される。
【0040】
さらに、ヤリトリ部材8の他端側には、ヤリトリ部材8にスライド管部14が挿入された状態にて、ヤリトリ部材8とスライド管部14とを水密に固定する固定手段23が設けられている。
【0041】
この固定手段23は、ヤリトリ部材8とスライド管部14との重ね合わせ量に基づいて、補修継手1全体の長さが調整された状態にて、ヤリトリ部材8とスライド管部14とを固定するものである。
【0042】
次に、上記第1の実施の形態の作用を図5および図6を参照しながら説明する。
【0043】
補修継手1にて例えば陶管等の排水管路を補修するために、下流側管路2と上流側管路4との間に補修継手1を設置する際には、まず、下流側管路2の受口3に下流側接続部材6を挿入して水密に接続する。
【0044】
また、ヤリトリ部材8に対してスライド管部14を摺動させ、ヤリトリ部材8とスライド管部14との重ね合わせ量を変化させて、下流側管路2と上流側管路4との間における補修継手1全体の長さを適した長さに調整するとともに、上流側管路4の差口5に上流側接続部材7を挿入して水密に接続する。
【0045】
さらに、固定手段23にてヤリトリ部材8とスライド管部14とを固定し、ヤリトリ部材8に対して上流側接続部材7を固定し、下流側管路2と上流側管路4との間における適した長さで補修継手1が設置される。
【0046】
下流側管路2に下流側接続部材6を接続する際には、下流側接続部材6の一端を下流側管路2の受口3に内挿する。
【0047】
ここで、補修継手1と陶管等にて形成された排水管路とは管種が異なるため、図5(a)に示すように、下流側管路2の管底と補修継手1の管底との境界部分に逆段差が生じてしまう場合が多い。
【0048】
逆段差が生じた場合には、下流側接続部材6を下流側管路2に対して回動させる。下流側接続部材6を回動させると、下流側接続部材6とともに偏肉パッキン12が下流側管路2に対して回動する。下流側接続部材6とともに偏肉パッキン12が回動することにより、管底側の偏肉パッキン12の厚みの変化にともなって下流側管路2に対する下流側接続部材6の管底の高さが変化し、図5(b)に示すように、下流側管路2の管底と補修継手1の管底との境界部分にほとんど段差が生じていない略平坦な状態に調整できる。
【0049】
上流側管路4に上流側接続部材7を接続する際には、上流側管路4の差口5に上流側接続部材7の他端を外挿する。
【0050】
上流側管路4と上流側接続部材7との接続においても、下流側管路2と下流側接続部材6との接続の場合と同様に、補修継手1と排水管路との管種が異なるため、図6(a)に示すように、上流側管路4の管底と補修継手1の管底との境界部分に逆段差が生じてしまう場合が多い。
【0051】
逆段差が生じた場合には、上流側接続部材7を上流側管路4に対して回動させる。上流側接続部材7を回動させると、上流側接続部材7とともに偏肉パッキン18が上流側管路4に対して回動する。上流側接続部材7とともに偏肉パッキン18が回動することにより、管底側の偏肉パッキン18の厚みの変化にともなって上流側管路4に対する上流側接続部材7の管底の高さが変化し、図6(b)に示すように、上流側管路4の管底と補修継手1の管底との境界部分にほとんど段差が生じていない略平坦な状態に調整できる。
【0052】
このように、補修継手1によれば、下流側接続部材6の一端が偏肉パッキン12を介して下流側管路2の受口3に内挿されているので、下流側管路2に対して下流側接続部材6を偏肉パッキン12とともに回動させることで、下流側管路2に対する下流側接続部材6の管底の高さを調整できる。また、上流側接続部材7の他端が偏肉パッキン18を介して上流側管路4の差口5に外挿されるので、上流側管路4に対して上流側接続部材7を偏肉パッキン18とともに回動させることで上流側管路4に対する上流側接続部材7の管底の高さを調整できる。
【0053】
したがって、補修継手1は、下流側接続部材6および上流側接続部材7を回動させるだけでの管底の高さを容易に調整できるため、管底に逆段差が生じにくく、管底の逆段差による排水の流れの阻害を防止でき、排水管路内に汚物等が堆積することを防止できる。
【0054】
下流側接続部材6は、一端にパッキン取付部10を有するので、下流側接続部材6に対して偏肉パッキン12がより強固に嵌合されて固定されるため、管底を調整する際に下流側接続部材6とともに偏肉パッキン12が回動しやすく、管底の高さを正確に調整できる。
【0055】
上流側接続部材7は、他端の接続管部15が第1管部16および第2管部17を有するので、第2管部17に嵌合された偏肉パッキン18が、第1管部16と第2管部17との境界の段差状の部分に係止され、上流側接続部材7に対して偏肉パッキン18がより強固に固定されるため、管底を調整する際に上流側接続部材7とともに偏肉パッキン18が回動しやすく、管底の高さを正確に調整できる。
【0056】
また、上流側接続部材7が一端側にスライド管部14を有し、ヤリトリ部材8が固定手段23を有することにより、ヤリトリ部材8に対してスライド管部14を摺動させて、ヤリトリ部材8とスライド管部14との重ね合わせ量を変化させることで、下流側管路2と上流側管路4との間における補修継手1の長さを調整できるとともに、調整した状態を固定手段23で固定できるので、補修継手1を容易に設置できる。
【0057】
なお、上記第1の実施の形態では、上流側接続部材7にスライド管部14全体が一体に形成された構成としたが、このような構成には限定されず、図7に示す第2の実施の形態のように、スライド管部25が、上流側接続部材7に一体成形された基端部26と、この基端部26に取り付けられ、ヤリトリ部材8の他端に摺動自在に嵌合される延長部27とを有する構成にしてもよい。
【0058】
この第2の実施の形態では、延長部27は、一端側に位置した摺動部28と、摺動部28より他端側に位置した取付部29とを有している。
【0059】
摺動部28は、外径がヤリトリ部材8の他端の内径より小径であり、ヤリトリ部材8の他端に摺動自在に嵌合可能である。また、取付部29は、内径が基端部26の外径よりやや大径であり、基端部26に水密に嵌合可能である。
【0060】
そして、スライド管部25は、取付部29が基端部26に嵌合されて延長部27が取り付けられた状態にて、摺動部28をヤリトリ部材8に対して摺動させることで、ヤリトリ部材8と摺動部28との重ね合わせ量を変化させて、下流側管路2と上流側管路4との間における補修継手1全体の長さを調整できる。
【0061】
このように、スライド管部25は、基端部26と、この基端部26に取り付けられた延長部27とを有するので、ヤリトリ部材8に対する摺動領域を確保しやすく、補修継手1を最適な長さに調整しやすいため、例えば排水管路の破損箇所が比較的大きい場合などであっても、簡単な構成で容易に破損部分と交換でき、様々な状態の破損に正確に対応できる。
【0062】
次に、本発明の第3の実施の形態を図8ないし図10を参照して説明する。なお、上記実施の形態と同一の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
図8に示すように、補修継手1は、排水管路の破損部分と交換するため、排水管路の破損部分より下流側の下流側管路2の差口31と、排水管路の破損部分より上流側の上流側管路4の差口5との間に配設される。
【0064】
補修継手1は、下流側管路2の差口31に外挿されて接続される一方側接続部材としての下流側接続部材32と、上流側管路4の差口5に外挿されて接続される上流側接続部材7と、これら下流側接続部材32と上流側接続部材7との間に接続されるヤリトリ部材8とを備えている。
【0065】
下流側接続部材32は、下流側管路2側である一端側に位置する受口33を有している。この受口33は、内径が下流側管路2の差口31の外径より大径である。
【0066】
また、下流側接続部材32は、一端が受口33の他端側に連続して形成された略円筒状の円筒部34を有している。この円筒部34は、ヤリトリ部材8の一端と同径であり、受口33とは反対側の他端が、固定筒部材35を介してヤリトリ部材8の一端に接続されている。
【0067】
固定筒部材35は、内径がヤリトリ部材8および円筒部34の外径よりやや大径であり、一端側に円筒部34が内挿され、他端側にヤリトリ部材8の一端が内挿される。
【0068】
上流側接続部材7は、内径が上流側管路4の差口5の外径より大径の接続管部36を有している。
【0069】
下流側接続部材32の受口33および上流側接続部材7の接続管部36には、外側へ突出し内周面が凹んだ取付溝部37が形成されており、この取付溝部37に偏肉パッキン38が嵌合されて取り付けられている。
【0070】
図9および図10に示すように、偏肉パッキン38は、周方向に沿って厚みが変化する偏肉部39と、この偏肉部39から周方向の内側へ向かって突出する突出部40とを有する。
【0071】
偏肉部39は、最も厚みが厚い厚肉部39aと、周方向において厚肉部39aに対向し最も厚みが薄い薄肉部39bとを有し、厚肉部39aから薄肉部39bへ向かって漸次厚みが薄くなっている。また、この偏肉部39には、偏肉パッキン38の止水性や取付溝部37への挿入性を向上させる凹部41が形成されている。
【0072】
突出部40は、基端から先端へ向かって細く形成されており、偏肉部39から傾斜状に突出している。
【0073】
なお、偏肉パッキン38は、突出部40の先端が基端より受口33や接続管部36の基端側に位置するように傾斜して突出した状態で、受口33および接続管部36の内周面に嵌合される。
【0074】
そして、排水管路に補修継手1を配設する際には、下流側接続部材32は、受口33に偏肉パッキン38が嵌合された状態にて偏肉パッキン38を介して下流側管路2の差口31に水密に外挿されるとともに、上流側接続部材7は、接続管部36に偏肉パッキン38が嵌合された状態にて偏肉パッキン38を介して上流側管路4の差口5に水密に外挿される。
【0075】
このような補修継手1によれば、下流側接続部材32の一端である受口33が偏肉パッキン38を介して下流側管路2の差口31に外挿されるので、下流側管路2に対して下流側接続部材32を偏肉パッキン38とともに回動させることで、下流側管路2に対する下流側接続部材32の管底の高さを調整できる。また、上流側接続部材7の他端である接続管部36が偏肉パッキン38を介して上流側管路4の差口5に外挿されるので、上流側管路4に対して上流側接続部材7を偏肉パッキン38とともに回動させることで、上流側管路4に対する上流側接続部材7の管底の高さを調整できる。
【0076】
したがって、補修継手1は、下流側接続部材32および上流側接続部材7を回動させるだけで管底の高さを容易に調整できるため、管底に逆段差が生じにくく、管底の逆段差による排水の流れの阻害を防止でき、排水管路内に汚物等が堆積することを防止できる。
【0077】
また、下流側接続部材32は、受口33を有するので、排水管路の破損分部の下流側近傍に受口33がない場合であっても補修継手1を容易に配設でき、排水管路の補修に際に排水管路の破損範囲に適用しやすい。
【0078】
偏肉パッキン38は、突出部40を有するので、偏肉パッキン38が嵌合された状態の下流側接続部材32の受口33を下流側管路2の差口31に外挿する際に、突出部40が、差口31の外周面に接触するとともに、挿入にともなって受口33の内径と差口31の外径との差に応じて撓む。
【0079】
したがって、下流側管路2の差口31に下流側接続部材32の受口33を外挿しやすいとともに、下流側管路2の差口31と下流側接続部材32の受口33との接続において、偏肉パッキン38による水密性が良好である。
【0080】
上流側管路4と上流側接続部材7との接続の場合も、同様に、偏肉パッキン38が突出部40を有するので、上流側管路4の差口5に上流側接続部材7の接続管部36を外挿しやすいとともに、上流側管路4の差口5と上流側接続部材7の接続管部36との接続において、偏肉パッキン38による水密性が良好である。
【0081】
なお、この第3の実施の形態のように下流側管路2の差口31に下流側接続部材32の受口33を外挿する場合は、偏肉パッキン38を用いる構成には限定されず、第1の実施の形態および第2の実施の形態の上流側接続部材7と同様に偏肉パッキン18を用いてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 補修継手
2 一方側管路としての下流側管路
3 受口
4 他方側管路としての上流側管路
5 差口
6 一方側接続部材としての下流側接続部材
7 他方側接続部材としての上流側接続部材
8 ヤリトリ部材
12 偏肉パッキン
14 スライド管部
18 偏肉パッキン
25 スライド管部
26 基端部
27 延長部
31 差口
32 一方側接続部材としての下流側接続部材
38 偏肉パッキン
【技術分野】
【0001】
本発明は、管底に逆段差が生じにくく排水の流れが阻害されにくい補修継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、破損した陶管、ヒューム管およびコンクリート管等(以下、「陶管等」という。)の排水管路を補修する場合には、同種材料の管に交換する作業が行われていた。
【0003】
ここで、近年、排水管路を施工する際に、陶管等よりも軽量で施工性に優れた塩化ビニル等の合成樹脂管が広く使われるようになってきたことから、陶管等は、需要が減少して生産も少なくなってきた。
【0004】
このような事情から、既設の陶管等の補修に際しては、陶管等そのものの入手が困難であること、および、施工性の観点から、合成樹脂製の管継手に置き換えて補修が行われるケースが多くなっている。
【0005】
しかしながら、陶管と塩化ビニル管とのように、管種が異なると規格寸法も異なるため、呼び径が同一であっても異種管をそのまま接続すると、管内の接続部分に段差が生じてしまう。特に、管内で下流側の管底が上流側の管底より突出した逆段差が生じてしまうと、この逆段差により排水の流れを阻害してしまうことがある。
【0006】
そこで、陶管等と合成樹脂管とを接続する場合であっても、接続部に逆段差が生じて排水の流れを阻害しないように、接続部の管底を合わせるための技術が知られている。
【0007】
具体的には、陶管等と合成樹脂管の管底を合わせるために、陶管等の差口を嵌め込む合成樹脂製の受口の内側に位置決め突起が設けられたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
しかしながら、陶管等は合成樹脂管に比べて寸法公差が大きいため、特許文献1の構成では、陶管等の寸法誤差次第で接続部に無視できないほどの逆段差が生じてしまう可能性が考えられる。
【0009】
そこで、陶管等と合成樹脂管との内側端部同士を当接させ、合成樹脂管の内周面から陶管等の内周面にわたって板片を配置することにより、管底を合わせる方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−239299号公報(第3,4頁、図1)
【特許文献2】特開2008−150845号公報(第3,4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の特許文献2の方法によれば、陶管等と合成樹脂管との管底を合わせることが可能であるが、板片そのものが管内で突出することになるので、板片そのものが排水の流れを阻害する原因になってしまう。また、例えば、生分解製樹脂で板片を形成したとしても、完全に分解されるまでに時間がかかるため、その期間は板片が排水の流れを阻害してしまう。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、管底に逆段差が生じにくく排水の流れが阻害されにくい補修継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載された補修継手は、一方側の一方側管路と他方側の他方側管路との間に配設される合成樹脂製の補修継手であって、前記一方側管路に接続される一方側接続部材と、前記他方側管路に接続される他方側接続部材と、これら一方側接続部材および他方側接続部材に接続されるヤリトリ部材とを備え、前記一方側接続部材は、周方向に沿って厚みが変化する偏肉パッキンが一端に設けられ、一端がこの偏肉パッキンを介して前記一方側管路に接続されるとともに、他端が前記ヤリトリ部材の一端に接続され、前記他方側接続部材は、一端側に位置し前記ヤリトリ部材の他端に摺動自在に嵌合するスライド管部と、他端に設けられ周方向に沿って厚みが変化する偏肉パッキンとを有し、前記スライド管部がヤリトリ部材の他端に内挿されるとともに、他端が偏肉パッキンを介して前記他方側管路の差口に外挿されるものである。
【0014】
請求項2に記載された補修継手は、請求項1記載の補修継手において、一方側接続部材は、一端が偏肉パッキンを介して一方側管路の受口に内挿されるものである。
【0015】
請求項3に記載された補修継手は、請求項1記載の補修継手において、一方側接続部材は、一端が偏肉パッキンを介して一方側管路の差口に外挿されるものである。
【0016】
請求項4に記載された補修継手は、請求項1ないし3のいずれか一記載の補修継手において、スライド管部は、他方側接続部材に一体成形された基端部と、この基端部に取り付けられヤリトリ部材の他端に摺動自在に嵌合する延長部とを有するものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載された発明によれば、一方側接続部材の一端が偏肉パッキンを介して一方側管路に接続されるので、一方側管路に対して一方側接続部材を偏肉パッキンとともに回動させることで一方側管路に対する一方側接続部材の管底の高さを調整でき、また、他方側接続部材の他端が偏肉パッキンを介して他方側管路の差口に外挿されるので、他方側管路に対して他方側接続部材を偏肉パッキンとともに回動させることで他方側管路に対する他方側接続部材の管底の高さを調整できるため、管底に逆段差が生じにくく、管底の逆段差による排水の流れの阻害を防止できる。
【0018】
請求項2に記載された発明によれば、一方側接続部材の一端が偏肉パッキンを介して一方側管路の受口に内挿されるので、一方側管路に対して一方側接続部材を偏肉パッキンとともに回動させることで一方側管路に対する一方側接続部材の管底の高さを調整できるため、管底に逆段差が生じにくく、管底の逆段差による排水の流れの阻害を防止できる。
【0019】
請求項3に記載された発明によれば、一方側接続部材の一端が偏肉パッキンを介して一方側管路の差口に外挿されるので、一方側管路に対して一方側接続部材を偏肉パッキンとともに回動させることで一方側管路に対する一方側接続部材の管底の高さを調整できるため、管底に逆段差が生じにくく、管底の逆段差による排水の流れの阻害を防止できる。
【0020】
請求項4に記載された発明によれば、スライド管部が基端部とこの基端部に取り付けられヤリトリ部材の他端に摺動自在に嵌合する延長部とを有するので、ヤリトリ部材に対する摺動領域を確保しやすく、最適な長さに調整しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る補修継手の構成を示す断面図である。
【図2】同上補修継手における一方側接続部材を示す断面図である。
【図3】同上補修継手における一方側接続部材に設けられた偏肉パッキンを示す平面図である。
【図4】同上補修継手における他方側続部材を示す断面図である。
【図5】(a)は一方側管路と補修継手との管底に逆段差が生じている状態を示す断面図であり、(b)は一方側管路に対する一方側接続部材の管底の高さを調整した状態を示す断面図である。
【図6】(a)は他方側管路と補修継手との管底に逆段差が生じている状態を示す断面図であり、(b)は他方側管路に対する他方側接続部材の管底の高さを調整した状態を示す断面図である。
【図7】補修継手における第2の実施の形態を示す断面図である。
【図8】補修継手における第3の実施の形態を示す断面図である。
【図9】同上補修継手における偏肉パッキンを示す断面図である。
【図10】同上補修継手における偏肉パッキンを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成について図1ないし図4を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1において、1は合成樹脂製の補修継手を示し、この補修継手1は、略円筒状であり、例えば陶管、ヒューム管およびコンクリート管等の排水管路が破損した際に、破損部分と交換するため、排水管路の破損部分より一方側である下流側の一方側管路としての下流側管路2の受口3と、排水管路の破損部分より他方側である上流側の他方側管路としての上流側管路4の差口5との間に配設される。
【0024】
補修継手1は、受口3に内挿されて下流側管路2に水密に接続される一方側接続部材としての下流側接続部材6と、差口5に外挿されて上流側管路4に水密に接続される他方側接続部材としての上流側接続部材7と、これら下流側接続部材6および上流側接続部材7に水密に接続されるヤリトリ部材8とを備える。
【0025】
下流側接続部材6は、外径が下流側管路2の受口3の内径より小径で、かつ、内径がヤリトリ部材8の一端の外径より大径の略円筒状であり、一端が下流側管路2の受口3に内挿され、他端がヤリトリ部材8の一端に外挿されて接続される。
【0026】
図2に示すように、下流側接続部材6は、一端の外周にパッキン取付部10が一体に成形されている。このパッキン取付部10の内側には、周方向に沿って間欠的に配置された間隙11が設けられている。また、下流側接続部材6の一端であるパッキン取付部10の外周面には、偏肉パッキン12が嵌合されている。さらに、下流側接続部材6の一端には、内周面から内側へ突出し、ヤリトリ部材8の一端を係止可能な係止部13が設けられている。
【0027】
図3に示すように、偏肉パッキン12は、パッキン取付部10の外周に嵌合可能な環状に成形され、周方向に沿って厚みが変化している。すなわち、偏肉パッキン12は、周方向の一方側に位置し最も厚みが厚い厚肉部12aと、周方向で厚肉部12aに対向する他方側に位置し最も厚みが薄い薄肉部12bとを有し、厚肉部12aから薄肉部12bに向かって漸次厚みが薄くなっている。また、偏肉パッキン12は、一端側の先端側が他端側より小径に成形され、下流側接続部材6に嵌合された状態にて、下流側管路2の受口3に挿入しやすく成形されている。
【0028】
そして、下流側接続部材6の一端は、偏肉パッキン12がパッキン取付部10に嵌合された状態にて、偏肉パッキン12を介して下流側管路2の受口3に水密に内挿される。
【0029】
なお、下流側管路2の受口3の内周には、固定パッキン3aが嵌合されており、下流側接続部材6の一端が下流側管路2の受口3に内挿された状態では、偏肉パッキン12と固定パッキン3aとが接触するため、下流側接続部材6が下流側管路2に水密に接続される。
【0030】
上流側接続部材7は、略円筒状であり、一端がヤリトリ部材8の他端に内挿され、他端が上流側管路4に外挿される。
【0031】
図4に示すように、上流側接続部材7は、一端側に位置するスライド管部14と、他端側に位置する接続管部15とを有する。
【0032】
スライド管部14は、外径がヤリトリ部材8の他端の内径よりやや小径であり、ヤリトリ部材8の他端に摺動自在に嵌合する。また、スライド管部14の一端側の先端は他端側より小径に成形され、ヤリトリ部材8の他端に嵌合しやすく成形されている。そして、ヤリトリ部材8の他端にスライド管部14を嵌合した状態にて、ヤリトリ部材8に対してスライド管部14を摺動させることにより、ヤリトリ部材8とスライド管部14との重ね合わせ量を変化させて、下流側管路2と上流側管路4との間における補修継手1全体の長さが調整される。
【0033】
接続管部15は、一端側に位置し内径が上流側管路4の差口5の外径より大径の第1管部16と、他端側に位置し第1管部16より大径の第2管部17とを有する。さらに、第2管部17の内周面には、第1管部16と第2管部17との境界部分の段差状の箇所に係止されるように、偏肉パッキン18が嵌合されている。
【0034】
偏肉パッキン18は、第2管部17の内面に嵌合可能な環状に成形され、図3に示す偏肉パッキン12と同様に周方向に沿って厚みが変化している。すなわち、偏肉パッキン18は、最も厚みが厚い厚肉部18aと最も厚みが薄い薄肉部18bとを有し、この厚肉部18aから薄肉部18bに向かって漸次厚みが薄くなっている。また、偏肉パッキン18は、他端側の先端側が一端側より小径に成形され、上流側接続部材7に嵌合された状態にて、上流側管路4の差口5に挿入しやすく成形されている。
【0035】
そして、上流側接続部材7の他端は、偏肉パッキン18が接続管部15に嵌合された状態にて、偏肉パッキン18を介して上流側管路4の差口5に水密に外挿される。
【0036】
なお、上流側管路4の差口5の外周には、固定パッキン5aが嵌合されており、上流側接続部材7の他端が上流側管路4の差口5に外挿された状態では、偏肉パッキン18と固定パッキン5aとが接触するため、上流側接続部材7が上流側管路4に水密に接続される。
【0037】
ヤリトリ部材8は、一端の外径が下流側接続部材6の他端の内径より小径で、かつ、他端の内径が上流側接続部材7の一端であるスライド管部14の外径より大径の略円筒状であり、一端が下流側接続部材6の他端に内挿され、他端がスライド管部14に外挿される。
【0038】
このヤリトリ部材8は、一端側に外径が上流側接続部材7の他端の内径より小径の挿入部21を有している。この挿入部21は、上流側接続部材7に内挿された状態で一端側の先端が係止部13に係止される。
【0039】
また、ヤリトリ部材8は一端から全体の長さの約三分の1の箇所の一側である上側に段差部22が設けられている。さらに、ヤリトリ部材8の段差部22より他端側は、段差部22より一端側より大径であるとともに、内径がスライド管部14の外径よりやや大径であり、スライド管部14が摺動自在に嵌合される。
【0040】
さらに、ヤリトリ部材8の他端側には、ヤリトリ部材8にスライド管部14が挿入された状態にて、ヤリトリ部材8とスライド管部14とを水密に固定する固定手段23が設けられている。
【0041】
この固定手段23は、ヤリトリ部材8とスライド管部14との重ね合わせ量に基づいて、補修継手1全体の長さが調整された状態にて、ヤリトリ部材8とスライド管部14とを固定するものである。
【0042】
次に、上記第1の実施の形態の作用を図5および図6を参照しながら説明する。
【0043】
補修継手1にて例えば陶管等の排水管路を補修するために、下流側管路2と上流側管路4との間に補修継手1を設置する際には、まず、下流側管路2の受口3に下流側接続部材6を挿入して水密に接続する。
【0044】
また、ヤリトリ部材8に対してスライド管部14を摺動させ、ヤリトリ部材8とスライド管部14との重ね合わせ量を変化させて、下流側管路2と上流側管路4との間における補修継手1全体の長さを適した長さに調整するとともに、上流側管路4の差口5に上流側接続部材7を挿入して水密に接続する。
【0045】
さらに、固定手段23にてヤリトリ部材8とスライド管部14とを固定し、ヤリトリ部材8に対して上流側接続部材7を固定し、下流側管路2と上流側管路4との間における適した長さで補修継手1が設置される。
【0046】
下流側管路2に下流側接続部材6を接続する際には、下流側接続部材6の一端を下流側管路2の受口3に内挿する。
【0047】
ここで、補修継手1と陶管等にて形成された排水管路とは管種が異なるため、図5(a)に示すように、下流側管路2の管底と補修継手1の管底との境界部分に逆段差が生じてしまう場合が多い。
【0048】
逆段差が生じた場合には、下流側接続部材6を下流側管路2に対して回動させる。下流側接続部材6を回動させると、下流側接続部材6とともに偏肉パッキン12が下流側管路2に対して回動する。下流側接続部材6とともに偏肉パッキン12が回動することにより、管底側の偏肉パッキン12の厚みの変化にともなって下流側管路2に対する下流側接続部材6の管底の高さが変化し、図5(b)に示すように、下流側管路2の管底と補修継手1の管底との境界部分にほとんど段差が生じていない略平坦な状態に調整できる。
【0049】
上流側管路4に上流側接続部材7を接続する際には、上流側管路4の差口5に上流側接続部材7の他端を外挿する。
【0050】
上流側管路4と上流側接続部材7との接続においても、下流側管路2と下流側接続部材6との接続の場合と同様に、補修継手1と排水管路との管種が異なるため、図6(a)に示すように、上流側管路4の管底と補修継手1の管底との境界部分に逆段差が生じてしまう場合が多い。
【0051】
逆段差が生じた場合には、上流側接続部材7を上流側管路4に対して回動させる。上流側接続部材7を回動させると、上流側接続部材7とともに偏肉パッキン18が上流側管路4に対して回動する。上流側接続部材7とともに偏肉パッキン18が回動することにより、管底側の偏肉パッキン18の厚みの変化にともなって上流側管路4に対する上流側接続部材7の管底の高さが変化し、図6(b)に示すように、上流側管路4の管底と補修継手1の管底との境界部分にほとんど段差が生じていない略平坦な状態に調整できる。
【0052】
このように、補修継手1によれば、下流側接続部材6の一端が偏肉パッキン12を介して下流側管路2の受口3に内挿されているので、下流側管路2に対して下流側接続部材6を偏肉パッキン12とともに回動させることで、下流側管路2に対する下流側接続部材6の管底の高さを調整できる。また、上流側接続部材7の他端が偏肉パッキン18を介して上流側管路4の差口5に外挿されるので、上流側管路4に対して上流側接続部材7を偏肉パッキン18とともに回動させることで上流側管路4に対する上流側接続部材7の管底の高さを調整できる。
【0053】
したがって、補修継手1は、下流側接続部材6および上流側接続部材7を回動させるだけでの管底の高さを容易に調整できるため、管底に逆段差が生じにくく、管底の逆段差による排水の流れの阻害を防止でき、排水管路内に汚物等が堆積することを防止できる。
【0054】
下流側接続部材6は、一端にパッキン取付部10を有するので、下流側接続部材6に対して偏肉パッキン12がより強固に嵌合されて固定されるため、管底を調整する際に下流側接続部材6とともに偏肉パッキン12が回動しやすく、管底の高さを正確に調整できる。
【0055】
上流側接続部材7は、他端の接続管部15が第1管部16および第2管部17を有するので、第2管部17に嵌合された偏肉パッキン18が、第1管部16と第2管部17との境界の段差状の部分に係止され、上流側接続部材7に対して偏肉パッキン18がより強固に固定されるため、管底を調整する際に上流側接続部材7とともに偏肉パッキン18が回動しやすく、管底の高さを正確に調整できる。
【0056】
また、上流側接続部材7が一端側にスライド管部14を有し、ヤリトリ部材8が固定手段23を有することにより、ヤリトリ部材8に対してスライド管部14を摺動させて、ヤリトリ部材8とスライド管部14との重ね合わせ量を変化させることで、下流側管路2と上流側管路4との間における補修継手1の長さを調整できるとともに、調整した状態を固定手段23で固定できるので、補修継手1を容易に設置できる。
【0057】
なお、上記第1の実施の形態では、上流側接続部材7にスライド管部14全体が一体に形成された構成としたが、このような構成には限定されず、図7に示す第2の実施の形態のように、スライド管部25が、上流側接続部材7に一体成形された基端部26と、この基端部26に取り付けられ、ヤリトリ部材8の他端に摺動自在に嵌合される延長部27とを有する構成にしてもよい。
【0058】
この第2の実施の形態では、延長部27は、一端側に位置した摺動部28と、摺動部28より他端側に位置した取付部29とを有している。
【0059】
摺動部28は、外径がヤリトリ部材8の他端の内径より小径であり、ヤリトリ部材8の他端に摺動自在に嵌合可能である。また、取付部29は、内径が基端部26の外径よりやや大径であり、基端部26に水密に嵌合可能である。
【0060】
そして、スライド管部25は、取付部29が基端部26に嵌合されて延長部27が取り付けられた状態にて、摺動部28をヤリトリ部材8に対して摺動させることで、ヤリトリ部材8と摺動部28との重ね合わせ量を変化させて、下流側管路2と上流側管路4との間における補修継手1全体の長さを調整できる。
【0061】
このように、スライド管部25は、基端部26と、この基端部26に取り付けられた延長部27とを有するので、ヤリトリ部材8に対する摺動領域を確保しやすく、補修継手1を最適な長さに調整しやすいため、例えば排水管路の破損箇所が比較的大きい場合などであっても、簡単な構成で容易に破損部分と交換でき、様々な状態の破損に正確に対応できる。
【0062】
次に、本発明の第3の実施の形態を図8ないし図10を参照して説明する。なお、上記実施の形態と同一の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
図8に示すように、補修継手1は、排水管路の破損部分と交換するため、排水管路の破損部分より下流側の下流側管路2の差口31と、排水管路の破損部分より上流側の上流側管路4の差口5との間に配設される。
【0064】
補修継手1は、下流側管路2の差口31に外挿されて接続される一方側接続部材としての下流側接続部材32と、上流側管路4の差口5に外挿されて接続される上流側接続部材7と、これら下流側接続部材32と上流側接続部材7との間に接続されるヤリトリ部材8とを備えている。
【0065】
下流側接続部材32は、下流側管路2側である一端側に位置する受口33を有している。この受口33は、内径が下流側管路2の差口31の外径より大径である。
【0066】
また、下流側接続部材32は、一端が受口33の他端側に連続して形成された略円筒状の円筒部34を有している。この円筒部34は、ヤリトリ部材8の一端と同径であり、受口33とは反対側の他端が、固定筒部材35を介してヤリトリ部材8の一端に接続されている。
【0067】
固定筒部材35は、内径がヤリトリ部材8および円筒部34の外径よりやや大径であり、一端側に円筒部34が内挿され、他端側にヤリトリ部材8の一端が内挿される。
【0068】
上流側接続部材7は、内径が上流側管路4の差口5の外径より大径の接続管部36を有している。
【0069】
下流側接続部材32の受口33および上流側接続部材7の接続管部36には、外側へ突出し内周面が凹んだ取付溝部37が形成されており、この取付溝部37に偏肉パッキン38が嵌合されて取り付けられている。
【0070】
図9および図10に示すように、偏肉パッキン38は、周方向に沿って厚みが変化する偏肉部39と、この偏肉部39から周方向の内側へ向かって突出する突出部40とを有する。
【0071】
偏肉部39は、最も厚みが厚い厚肉部39aと、周方向において厚肉部39aに対向し最も厚みが薄い薄肉部39bとを有し、厚肉部39aから薄肉部39bへ向かって漸次厚みが薄くなっている。また、この偏肉部39には、偏肉パッキン38の止水性や取付溝部37への挿入性を向上させる凹部41が形成されている。
【0072】
突出部40は、基端から先端へ向かって細く形成されており、偏肉部39から傾斜状に突出している。
【0073】
なお、偏肉パッキン38は、突出部40の先端が基端より受口33や接続管部36の基端側に位置するように傾斜して突出した状態で、受口33および接続管部36の内周面に嵌合される。
【0074】
そして、排水管路に補修継手1を配設する際には、下流側接続部材32は、受口33に偏肉パッキン38が嵌合された状態にて偏肉パッキン38を介して下流側管路2の差口31に水密に外挿されるとともに、上流側接続部材7は、接続管部36に偏肉パッキン38が嵌合された状態にて偏肉パッキン38を介して上流側管路4の差口5に水密に外挿される。
【0075】
このような補修継手1によれば、下流側接続部材32の一端である受口33が偏肉パッキン38を介して下流側管路2の差口31に外挿されるので、下流側管路2に対して下流側接続部材32を偏肉パッキン38とともに回動させることで、下流側管路2に対する下流側接続部材32の管底の高さを調整できる。また、上流側接続部材7の他端である接続管部36が偏肉パッキン38を介して上流側管路4の差口5に外挿されるので、上流側管路4に対して上流側接続部材7を偏肉パッキン38とともに回動させることで、上流側管路4に対する上流側接続部材7の管底の高さを調整できる。
【0076】
したがって、補修継手1は、下流側接続部材32および上流側接続部材7を回動させるだけで管底の高さを容易に調整できるため、管底に逆段差が生じにくく、管底の逆段差による排水の流れの阻害を防止でき、排水管路内に汚物等が堆積することを防止できる。
【0077】
また、下流側接続部材32は、受口33を有するので、排水管路の破損分部の下流側近傍に受口33がない場合であっても補修継手1を容易に配設でき、排水管路の補修に際に排水管路の破損範囲に適用しやすい。
【0078】
偏肉パッキン38は、突出部40を有するので、偏肉パッキン38が嵌合された状態の下流側接続部材32の受口33を下流側管路2の差口31に外挿する際に、突出部40が、差口31の外周面に接触するとともに、挿入にともなって受口33の内径と差口31の外径との差に応じて撓む。
【0079】
したがって、下流側管路2の差口31に下流側接続部材32の受口33を外挿しやすいとともに、下流側管路2の差口31と下流側接続部材32の受口33との接続において、偏肉パッキン38による水密性が良好である。
【0080】
上流側管路4と上流側接続部材7との接続の場合も、同様に、偏肉パッキン38が突出部40を有するので、上流側管路4の差口5に上流側接続部材7の接続管部36を外挿しやすいとともに、上流側管路4の差口5と上流側接続部材7の接続管部36との接続において、偏肉パッキン38による水密性が良好である。
【0081】
なお、この第3の実施の形態のように下流側管路2の差口31に下流側接続部材32の受口33を外挿する場合は、偏肉パッキン38を用いる構成には限定されず、第1の実施の形態および第2の実施の形態の上流側接続部材7と同様に偏肉パッキン18を用いてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 補修継手
2 一方側管路としての下流側管路
3 受口
4 他方側管路としての上流側管路
5 差口
6 一方側接続部材としての下流側接続部材
7 他方側接続部材としての上流側接続部材
8 ヤリトリ部材
12 偏肉パッキン
14 スライド管部
18 偏肉パッキン
25 スライド管部
26 基端部
27 延長部
31 差口
32 一方側接続部材としての下流側接続部材
38 偏肉パッキン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側の一方側管路と他方側の他方側管路との間に配設される合成樹脂製の補修継手であって、
前記一方側管路に接続される一方側接続部材と、前記他方側管路に接続される他方側接続部材と、これら一方側接続部材および他方側接続部材に接続されるヤリトリ部材とを備え、
前記一方側接続部材は、周方向に沿って厚みが変化する偏肉パッキンが一端に設けられ、一端がこの偏肉パッキンを介して前記一方側管路に接続されるとともに、他端が前記ヤリトリ部材の一端に接続され、
前記他方側接続部材は、一端側に位置し前記ヤリトリ部材の他端に摺動自在に嵌合するスライド管部と、他端に設けられ周方向に沿って厚みが変化する偏肉パッキンとを有し、前記スライド管部がヤリトリ部材の他端に内挿されるとともに、他端が偏肉パッキンを介して前記他方側管路の差口に外挿される
ことを特徴とする補修継手。
【請求項2】
一方側接続部材は、一端が偏肉パッキンを介して一方側管路の受口に内挿される
ことを特徴とする請求項1記載の補修継手。
【請求項3】
一方側接続部材は、一端が偏肉パッキンを介して一方側管路の差口に外挿される
ことを特徴とした請求項1記載の補修継手。
【請求項4】
スライド管部は、他方側接続部材に一体成形された基端部と、この基端部に取り付けられヤリトリ部材の他端に摺動自在に嵌合する延長部とを有する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の補修継手。
【請求項1】
一方側の一方側管路と他方側の他方側管路との間に配設される合成樹脂製の補修継手であって、
前記一方側管路に接続される一方側接続部材と、前記他方側管路に接続される他方側接続部材と、これら一方側接続部材および他方側接続部材に接続されるヤリトリ部材とを備え、
前記一方側接続部材は、周方向に沿って厚みが変化する偏肉パッキンが一端に設けられ、一端がこの偏肉パッキンを介して前記一方側管路に接続されるとともに、他端が前記ヤリトリ部材の一端に接続され、
前記他方側接続部材は、一端側に位置し前記ヤリトリ部材の他端に摺動自在に嵌合するスライド管部と、他端に設けられ周方向に沿って厚みが変化する偏肉パッキンとを有し、前記スライド管部がヤリトリ部材の他端に内挿されるとともに、他端が偏肉パッキンを介して前記他方側管路の差口に外挿される
ことを特徴とする補修継手。
【請求項2】
一方側接続部材は、一端が偏肉パッキンを介して一方側管路の受口に内挿される
ことを特徴とする請求項1記載の補修継手。
【請求項3】
一方側接続部材は、一端が偏肉パッキンを介して一方側管路の差口に外挿される
ことを特徴とした請求項1記載の補修継手。
【請求項4】
スライド管部は、他方側接続部材に一体成形された基端部と、この基端部に取り付けられヤリトリ部材の他端に摺動自在に嵌合する延長部とを有する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の補修継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−37041(P2012−37041A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250537(P2010−250537)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000201582)前澤化成工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000201582)前澤化成工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
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