説明

補強シートおよび薄板の補強方法

【課題】良好な保存安定性を確保できながら、低温でかつ短時間で補強することのできる補強シート、および、その補強シートを用いる薄板の補強方法を提供すること。
【解決手段】エチレン共重合体と充填剤と粘着付与剤とを含む、熱融着性の樹脂層2と、樹脂層2に積層される拘束層3とを備える補強シート1を、薄板5に貼着して、樹脂層2を低温かつ短時間で加熱および加圧する。これにより、樹脂層2を熱融着させて、熱融着層4を形成して、薄板5を補強する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強シートおよび薄板の補強方法、詳しくは、補強シートおよびこの補強シートを用いて各種産業製品に用いられる薄板を補強する補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種産業製品に用いられる薄板では、薄板において補強が必要な部位に補強シートを設けて、当該部位の強度を向上させることが知られている。
このような補強シートとしては、例えば、変性エポキシ樹脂、充填剤、硬化剤および発泡剤を含む熱硬化性樹脂未硬化組成物層が、ガラスクロスに積層形成された薄板補強用融着シートが提案されている(例えば、特許文献1および2参照。)。そして、このような薄板補強用融着シートを、自動車の外板鋼板や家電製品の薄板鋼板などに取り付けて、これらを180℃で30分間加熱して、熱硬化性樹脂未硬化組成物層を硬化および発泡させれば、外板鋼板および薄板鋼板を補強することができる。
【特許文献1】特開平8−267665号公報
【特許文献2】特開平9−226061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、薄板の補強においては、近年の省エネルギー化および生産効率の向上の観点から、低温および短時間で補強したいとの要望がある。また、低価格化および軽量化の観点から、薄板としてFRP(繊維強化プラスチック)や合成樹脂が用いられている場合にも、これらを高温に加熱できないことから、低温および短時間での補強が要望される。
しかし、特許文献1および2に記載の薄板補強用融着シートでは、比較的高温かつ長時間で加熱するので、かかる要望に応えるには不十分である。
【0004】
さらに、特許文献1および2を含む従来の補強シートの樹脂層は熱硬化性樹脂からなるので、保存安定性と低温反応性との両立が困難である。すなわち、反応性が低い硬化剤を用いると、硬化剤が低温で分解しにくいので、保存安定性が向上されるものの、低温かつ短時間での補強が困難である。一方、反応性が高い硬化剤を用いると、硬化剤が低温で分解し易いので、低温かつ短時間で補強できるものの、保存安定性が低下する。そのため、良好な保存安定性を確保できつつ、低温かつ短時間での補強が困難となる。
【0005】
本発明の目的は、良好な保存安定性を確保できながら、低温でかつ短時間で補強することのできる補強シート、および、その補強シートを用いる薄板の補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の補強シートは、熱融着性の樹脂層と、前記樹脂層に積層される拘束層とを備え、前記樹脂層が、エチレン共重合体と充填剤と粘着付与剤とを含むことを特徴としている。
また、本発明の補強シートでは、前記樹脂層が、さらに、ブチルゴムを含むことが好適である。
【0007】
また、本発明の補強シートでは、樹脂層は、23℃におけるヤング率が1.0×107N/m2以上であることが好適である。
また、本発明の補強シートでは、拘束層が、ガラスクロスであることが好適である。
また、本発明の補強シートは、薄板の補強に用いられることが好適である。
また、本発明の薄板の補強方法は、上記した補強シートを、薄板に配置して、樹脂層を加熱および加圧することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の補強シートおよび薄板の補強方法によれば、薄板において補強が必要な部位に樹脂層を配置して加熱および加圧すれば、樹脂層が薄板および拘束層と密着性よく熱融着する。そのため、薄板の剛性を確保して当該部位の強度を向上させることができる。
また、本発明の補強シートおよび薄板の補強方法によれば、良好な保存安定性を確保できながら、低温かつ短時間で加熱することにより補強することができる。その結果、補強シートの確実な使用を確保できながら、低温かつ短時間で確実な補強を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の補強シートは、熱融着性の樹脂層と、樹脂層に積層される拘束層とを備えている。
本発明において、樹脂層は、熱融着性の樹脂組成物(以下、熱融着性樹脂組成物という。)をシート状に成形することにより、形成されている。
熱融着性樹脂組成物は、樹脂層を低い温度範囲(例えば、60〜120℃)で熱融着させる観点から、エチレン共重合体と充填剤と粘着付与剤とを含んでいる。
【0010】
エチレン共重合体は、エチレンと、エチレンと共重合可能なモノマーとの共重合体からなる熱可塑性樹脂であって、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体などが挙げられる。
エチレン・酢酸ビニル共重合体は、例えば、エチレンと酢酸ビニルとの、ランダムまたはブロック共重合体、好ましくは、ランダム共重合体である。
【0011】
このようなエチレン・酢酸ビニル共重合体は、その酢酸ビニルの含有量(MDP法に準拠、以下同じ。)が、例えば、12〜50重量%、好ましくは、14〜46重量%であり、メルトフローレート(MFR:JIS K 6730に準拠。以下単にMFRという。)が、1〜30g/10min、好ましくは、1〜15g/10minであり、硬度(JIS K7215)が、例えば、60〜100度、好ましくは、70〜100度であり、軟化温度が、例えば、35〜70℃であり、融点が、例えば、70〜100℃である。
【0012】
エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、例えば、エチレンと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの、ランダムまたはブロック共重合体、好ましくは、ランダム共重合体である。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステルであって、より具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル部分が炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキルである)エステルなどが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独または併用することができる。
【0013】
好ましくは、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体(EBA)が挙げられる。
エチレン・アクリル酸エチル共重合体は、そのアクリル酸エチルの含有量(EA含有量、MDP法)が、例えば、9〜35質量%、好ましくは、9〜25質量%であり、MFRが、例えば、0.5〜25g/10min、好ましくは、0.5〜20g/10minであり、硬度(ショアA、JIS K7215(1986))が、例えば、60〜100度、好ましくは、70〜100度であり、軟化温度(ビカット、JIS K7206(1999))が、例えば、35〜70℃であり、融点(JIS K7121(1987))が、例えば、70〜100℃であり、ガラス転移温度(DVE法)が、例えば、−40℃〜−20℃である。
【0014】
エチレン・アクリル酸ブチル共重合体は、そのアクリル酸ブチルの含有量(EB含有量、デュポン法)が、例えば、7〜35質量%、好ましくは、15〜30質量%であり、MFRが、例えば、1〜6g/10min、好ましくは、1〜4g/10minであり、硬度(ショアA、ISO 868、または、JIS K7215)が、例えば、75〜100度、好ましくは、80〜95度であり、軟化温度(ビカット軟化点、JIS K7206、または、ISO 306)が、例えば、35〜70℃、好ましくは、40〜65℃であり、融点(JIS K7121、または、ISO 3146)が、例えば、80〜120℃、好ましくは、90〜100℃である。
【0015】
熱融着性樹脂組成物がエチレン共重合体を含有することにより、熱融着性樹脂組成物の融点を、例えば、60〜120℃、好ましくは、70〜100℃に設定することができ、このような温度範囲(低温)で熱融着させることができる。なお、上記した温度範囲は、熱硬化性樹脂および硬化剤を含有する補強シートの使用温度(硬化温度、すなわち、硬化剤が分解する温度であって、例えば、150〜200℃。)に比べて、低く設定されている。
【0016】
充填剤としては、例えば、補強剤であって、より具体的には、炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、白艶華など)、タルク、マイカ、クレー、雲母粉、ベントナイト(オルガナイトを含む。)、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、酸化チタン、カーボンブラック、アセチレンブラック、アルミニウム粉、ガラス粉(パウダ)などが挙げられる。これら充填剤は、単独使用あるいは併用してもよく、その配合割合は、エチレン共重合体100重量部に対して、例えば、1〜300重量部、補強性、重量(軽量化)、経済性の観点から、好ましくは、10〜200重量部である。
【0017】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂(例えば、テルペン−芳香族系液状樹脂など)、クマロンインデン系樹脂(クマロン系樹脂)、石油系樹脂(例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、C5/C6系石油樹脂など)、フェノール系樹脂などが挙げられる。これら粘着付与剤は、単独使用あるいは併用することができる。
【0018】
粘着付与剤の融点は、エチレン共重合体の種類、配合割合、融点にもよるが、例えば、50〜150℃である。
粘着付与剤の配合割合は、エチレン共重合体100重量部に対して、例えば、1〜200重量部、補強性、熱融着性(接着性)の観点から、好ましくは、5〜100重量部である。
【0019】
また、熱融着性樹脂組成物は、さらに、ブチルゴムを含有することができる。ブチルゴムを含有させることにより、補強性とともに、制振性を向上させることができる。
ブチルゴムは、イソブテン(イソブチレン)と少量のイソプレンとの共重合により得られる合成ゴムであり、その不飽和度が、好ましくは、0.8〜2.0であり、また、ムーニー粘度が、好ましくは、30〜90(ML1+8、at125℃)である。
【0020】
ブチルゴムは単独使用または物性などの異なる2種以上を併用することができる。
ブチルゴムの配合割合は、エチレン共重合体およびブチルゴムの総量100重量部に対して、例えば、10〜40重量部、好ましくは、20〜40重量部である。ブチルゴムの配合割合が上記した範囲に満たないと、制振性の向上が不十分となる場合がある。また、ブチルゴムの配合割合が上記した範囲を超える場合には、制振性が向上するものの、ヤング率が低下して、補強性の向上が不十分となる場合がある。
【0021】
また、上記した熱融着性樹脂組成物は、上記成分に加えて、必要に応じて、例えば、揺変剤(例えば、モンモリロナイトなど)、滑剤(例えば、ステアリン酸など)、顔料、スコーチ防止剤、安定剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、防カビ剤、難燃剤などの公知の添加剤を、適宜の割合で含有することもできる。
一方、本発明において、熱融着性樹脂組成物は、樹脂層を低温で熱融着させる観点から、エポキシ樹脂などの硬化性樹脂、架橋剤および発泡剤は、いずれも含まれない。
【0022】
そして、熱融着性樹脂組成物は、上記した各成分を、上記した配合割合において配合することにより得ることができ、特に制限されないが、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダ、押出機などによって混練して、混練物として調製することができる。
その後、得られた混練物を、特に制限されないが、例えば、60〜150℃で、例えば、カレンダー成形、押出成形あるいはプレス成形などによって、シート形状に圧延して、樹脂層を形成する。
【0023】
なお、圧延された樹脂層の厚さは、例えば、0.2〜3.0mm、好ましくは、0.5〜2.5mmである。
また、本発明において、上記のように圧延して形成された樹脂層は、23℃(常温)におけるヤング率が、例えば、1.0×107N/m2以上、好ましくは、5.0×107N/m2以上、通常、1.0×1010N/m2以下である。樹脂層のヤング率が1.0×107N/m2未満であると、十分な補強性が得られない場合がある。
【0024】
なお、ヤング率は、例えば、0.8mm厚さに圧延して形成した樹脂層を、10mm幅×100mm長さに裁断し、これを万能試験機によって、50mmチャック間で、5mm/分の速度における、引張強度を測定することにより、算出される。
本発明において、拘束層は、加熱および加圧により熱融着する樹脂層を拘束して加熱後における熱融着層を保形し、かつ熱融着層に靭性を付与して強度の向上を図るものである。また、拘束層は、シート状をなし、軽量および薄膜で、熱融着層と密着一体化できる材料から形成されている。そのような材料として、例えば、ガラスクロス、金属箔、合成樹脂不織布、カーボンファイバーなどが挙げられる。
【0025】
ガラスクロスは、ガラス繊維を布にしたものであって、公知のガラスクロスが用いられる。また、ガラスクロスには、樹脂含浸ガラスクロスが含まれる。樹脂含浸ガラスクロスは、上記したガラスクロスに、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの合成樹脂が含浸処理されているものであって、公知のものが用いられる。なお、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル樹脂、EVA・塩化ビニル樹脂共重合体などが挙げられる。また、上記した熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂は、それぞれ、単独使用または併用することができ、また、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂と(例えば、メラミン樹脂と酢酸ビニル樹脂と)を混合することもできる。
【0026】
金属箔としては、例えば、アルミニウム箔やスチール箔などの公知の金属箔が挙げられる。
これらのなかでは、重量、密着性、強度およびコストを考慮すると、ガラスクロスが、好ましく用いられる。
また、拘束層の厚さは、例えば、0.05〜2mm、好ましくは、0.1〜1.0mmである。
【0027】
そして、本発明の補強シートは、上記した樹脂層と拘束層とを、貼り合わせることにより、得ることができる。樹脂層と拘束層との厚さの合計は、例えば、0.3〜5mm、好ましくは、0.6〜3.5mmである。
なお、得られた補強シートには、必要により、樹脂層の表面(拘束層が貼着されている裏面に対して反対側の表面)に、実際に使用するまでの間、セパレータ(離型紙)を貼着しておくこともできる。
【0028】
そして、本発明の補強シートは、特に限定されないが、例えば、薄板の補強に用いられる。
薄板としては、補強が必要な薄板であれば、特に限定されず、例えば、各種産業製品に用いられる薄板が挙げられる。このような薄板を形成する材料は、特に限定されず、例えば、金属または樹脂(FRPや合成樹脂を含む。)などである。このような薄板としては、具体的には、自動車のピラー、ルーフ、フェンダー、フード、トランク、クォーターパネル、ドア、ドア把手、ドアミラーなどが挙げられる。また、薄板としては、例えば、電気機器や家電製品などの筐体(ケーシング)、より具体的には、コンピュータ、コンピュータディスプレイ、テレビ、携帯電話、ゲーム機器、冷蔵庫、掃除機の筐体などが挙げられる。
【0029】
図1は、本発明の補強シートを、薄板に配置して、樹脂層を加熱および加圧することにより補強する、本発明の薄板の補強方法の一実施形態を示す説明図であって、(a)は、補強シートを用意して、離型紙を剥がす工程、(b)は、補強シートを薄板に配置する工程、(c)は、樹脂層を加熱および加圧する工程を示す。
次に、図1を参照して、本発明の補強シートを、薄板に配置して、樹脂層を加熱および加圧することにより補強する、本発明の薄板の補強方法の一実施形態について説明する。
【0030】
まず、この方法では、図1(a)に示すように、補強シート1を用意する。
補強シート1は、樹脂層2と拘束層3とが貼り合わされ、樹脂層2の表面(拘束層3が貼着されている裏面に対して反対側の表面)に必要により離型紙6が貼着されている。
次いで、この方法では、補強シート1を薄板5に配置する。
薄板5は、上記した各種産業製品に用いられるものであって、例えば、外観に現れる外面と、内部に向き、外観に現れない内面とを備えている。
【0031】
補強シート1を薄板5に配置するには、図1(a)の仮想線で示すように、まず、樹脂層2の表面から離型紙6を剥がして、次いで、図1(b)に示すように、その樹脂層2の表面を、正面視略矩形状の薄板5の内面に貼着(仮止め、もしくは、仮固定)する。
その後、図1(c)に示すように、補強シート1を加熱および加圧する。加熱温度は、エチレン共重合体の融点、軟化温度にもよるが、例えば、60〜120℃、好ましくは、70〜100℃である。そして、この加熱と同時または加熱の後に、補強シート1を、例えば、熱融着性樹脂組成物が貼着位置から流れ出ない程度の圧力で、具体的には、プレスを用いて、例えば、0.15〜10MPaの圧力で、加圧する。
【0032】
また、加圧では、補強シート1および薄板5を加熱すると同時にまたは加熱した後に、例えば、ラミネーターロール、ハンドロール(ローラー)、へらなどで、例えば、速度5〜500mm/分、圧力0.05〜0.5MPaで、樹脂層2を薄板5側に向かって圧着させる。
すると、上記した加熱によって、樹脂層2が熱融着層4となり、さらに、加圧されることによって、熱融着層4が薄板5および拘束層3と密着性よく熱融着(接着)する。そのため、熱融着層4の熱融着により、薄板5の強度を向上させることができる。
【0033】
しかも、樹脂層2は硬化性樹脂、硬化剤および架橋剤のいずれも含まないため、樹脂層2の良好な保存安定性を確保できながら、上記した低温かつ短時間で加熱および加圧することにより薄板5を補強することができる。その結果、樹脂層2を備える補強シート1を確実に製造して、その補強シート1の確実な使用を確保できながら、低温かつ短時間の加熱および加圧によって、薄板5の確実な補強を図ることができる。
【0034】
また、薄板5において、振動が発生し易く、それに起因する振動音などを防止する必要がある場合には、樹脂層2に、ブチルゴムを含有させれば、補強性とともに、制振性を向上させることができる。
なお、上記した加熱および加圧の後に、さらに、加熱することもできる。このような加熱では、例えば、薄板5が自動車のピラーなどであって、ピラーに対する塗装後の乾燥に用いられる塗装乾燥炉に、薄板5および補強シート1を投入する。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。
A.補強シートの作製
表1に示す配合処方において、各成分を重量部基準で配合し、これをミキシングロールで混練することにより、混練物を調製した。
【0036】
この調製において、実施例1および2では、エチレン共重合体、充填剤および粘着付与剤を、100℃で混練した。また、実施例3および4では、エチレン共重合体、ブチルゴム、充填剤および粘着付与剤を、100℃で混練した。また、比較例1では、まず、充填剤、粘着付与剤および熱硬化性樹脂を混練した後、冷却後、この混練物に、さらに硬化剤を加えて、80℃で混練した。
【0037】
次いで、調製した混練物を、カレンダーロールにて厚さ0.8mmおよび1.8mmにそれぞれ圧延して樹脂層を形成した。次いで、この樹脂層に、拘束層として、厚さ0.2mmのガラスクロスを、100℃にて、貼り合わせることにより、厚さ1.0mmおよび2.0mm補強シートをそれぞれ作製した。また、拘束層のみからなる補強シート(つまり、樹脂層を備えない補強シート)を、比較例2の補強シートとして供した。
B.評価
得られた各実施例および各比較例の補強シートについて、ヤング率、補強性および制振性を次のように評価した。その結果を表1に示す。
1)ヤング率
実施例1〜4および比較例1において圧延して形成した厚さ0.8mmの樹脂層のみを、10mm幅×100mm長さに裁断し、これを万能試験機によって、50mmチャック間で5mm/分の速度において、引張強度を測定することにより、ヤング率を算出した。
2)補強性試験a
実施例1〜4および比較例1の補強シート(厚さ1.0mmおよび2.0mm)と、比較例2の補強シート(厚さ0.2mm)とを25mm幅×150mm長さに裁断し、これを、0.5mm厚さ×25mm幅×150mm長さのアルミニウム薄板(品番:A5052)に、20℃雰囲気下でそれぞれ貼着した。
【0038】
次いで、実施例1〜4においては、アルミニウム薄板および補強シートを100℃で5分加熱した。その後、補強シートを、2kgローラー(ハンドロール)で300mm/分の速度にて加圧することにより、補強シートをアルミニウム薄板に熱融着させた。これにより、試験片を得た。
また、比較例1においては、補強シートを、室温で、2kgローラーで300mm/分の速度にて加圧することにより、補強シートをアルミニウム薄板に貼着した。これにより、試験片を得た。
【0039】
そして、加圧直後の試験片について、補強性を評価した。
補強性の評価では、アルミニウム薄板が上向きとなる状態で、各試験片をスパン100mmで支持し、その長手方向中央において、テスト用バーを垂直方向上方から圧縮速度5mm/分にて降下させた。そして、アルミニウム薄板に接触してから熱融着層(比較例2では、拘束層)が1mm変位したときの曲げ強度および2mm変位したときの曲げ強度を、補強性試験aとしてそれぞれ評価した。
3)補強性試験b
加圧直後の試験片を、さらに、100℃で10分間加熱したこと以外は補正性試験aと同様にして、試験片を得て、これを、補強性試験bとして評価した。
4)補強性試験c
加圧直後の試験片を、さらに、180℃で30分間加熱したこと以外は補正性試験aと同様にして、試験片を得て、これを、補強性試験cとして評価した。
5) 制振性試験(損失係数)
実施例1〜4および比較例1の補強シートを、10mm幅×250mm長さの大きさに切り出し、これを、0.8mm厚さ×10mm幅×250mm長さの大きさの鋼板に貼り付けた。次いで、これらを、実施例1〜4では、100℃で10分間、比較例1では、180℃で30分間、それぞれ加熱して、試験片を得た。
【0040】
その後、試験片の、20℃で、周波数200Hzにおける2次共振点の損失係数を、中央加振法にて測定した。
【0041】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の補強シートを、薄板に配置して、樹脂層を加熱および加圧することにより補強する、本発明の薄板の補強方法の一実施形態を示す説明図であって、(a)は、補強シートを用意して、離型紙を剥がす工程、(b)は、補強シートを薄板に配置する工程、(c)は、樹脂層を加熱および加圧する工程を示す。
【符号の説明】
【0043】
1 補強シート
2 樹脂層
3 拘束層
5 薄板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱融着性の樹脂層と、前記樹脂層に積層される拘束層とを備え、
前記樹脂層が、エチレン共重合体と充填剤と粘着付与剤とを含むことを特徴とする、補強シート。
【請求項2】
前記樹脂層が、さらに、ブチルゴムを含むことを特徴とする、請求項1に記載の補強シート。
【請求項3】
樹脂層は、23℃におけるヤング率が1.0×107N/m2以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の補強シート。
【請求項4】
拘束層が、ガラスクロスであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の補強シート。
【請求項5】
薄板の補強に用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の補強シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の補強シートを、薄板に配置して、樹脂層を加熱および加圧することを特徴とする、薄板の補強方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−247028(P2008−247028A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58329(P2008−58329)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】