説明

補強材およびこれを使用した既存建物の補強構造

【課題】スラブや壁への設置が容易にできる補強材およびこれを使用した既存建物の補強構造を提供することである。
【解決手段】補強材1は、上端筋2と下端筋3とがラチス筋4で接合されたトラス筋5における下端筋3に、該下端筋3を上下から包み込むようにして取付プレート6が一体形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は補強材およびこれを使用した既存建物の補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の既存建物の補強構造としては、例えば特開2004−324262号公報の発明がある。これは一本の上端筋と二本の下端筋とが波形のラチス筋で接合されてなるトラス筋を既存スラブの上面にプレートで固定し、このトラス筋を覆うようにコンクリートが打設されて増設部が形成されたものである。
【特許文献1】特開2004−324262号公報
【特許文献2】特開2004−324262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の特開2004−324262号公報の発明は、プレートが下端筋に溶接接合されており、この溶接時による熱でトラス筋全体がひずむためスラブや壁への設置が容易にできないという問題があった。
【0004】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、スラブや壁への設置が容易にできる補強材およびこれを使用した既存建物の補強構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための本願発明の補強材は、上端筋と下端筋とがラチス筋で接合されたトラス筋における下端筋に、該下端筋を上下から包み込むようにして取付プレートが一体形成されてなることを特徴とする。またトラス筋は三角形の頂部に配置された一本の上端筋と二本の下端筋とがラチス筋で接合されたものであることを含む。また取付プレートは二本の下端筋にわたって形成されたもの、または二本の下端筋の各筋ごとに形成されたものであることを含む。また取付プレートは上側プレートと下側プレートとからなり、これら上下のプレートが下端筋を挟み込んで接合されたことを含む。
【0006】
また既存建物の補強構造は、上端筋と下端筋とがラチス筋で接合されたトラス筋における下端筋に、該下端筋を上下から包み込むようにして取付プレートが一体形成されてなる補強材が、上記の取付プレートで既存建物のスラブ、または壁のうちの少なくともひとつに取り付けられ、前記補強材を覆うようにしてスラブ、または壁に増し打ちコンクリートが打設されてなることを特徴とする。また取付プレートは接着剤またはアンカーボルトで取り付けられたことを含むものである。
【発明の効果】
【0007】
取付プレートが下端筋を上下から包み込むように、または上下のプレートで挟み込むようにしたことによりトラス筋のひずみを防ぐことができるので、取付プレートを接着剤でスラブまたは壁に設置することができる。また取付プレートが二本の下端筋の各筋ごとに取り付けられたことにより、トラス筋が多少ゆがんでいたとしても、取り付け時において調整が簡単にできる。またトラス筋が取付プレートでスラブ上面または壁面に簡単かつ精度良く設置できるので、既存建物の補強構造が簡単に構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の補強材および、これを使用した既存建物の補強構造(以下補強構造という)の実施の形態を図面に基づいて説明する。はじめに補強材の実施の形態について説明し、その後に補強構造の実施の形態について説明する。また各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成にのみ異なった符号を付して説明する。この補強材は補強が必要なスラブや壁に設置してこれらを補強するものである。
【0009】
図1および図2は第1の実施の形態の補強材1である。この補強材1は、三角形の頂部に配置された一本の上端筋2と二本の下端筋3とが波形のラチス筋4で接合されてなるトラス筋5の下端筋3を挟み込むようにして、取付プレート6が設置されて構成されている。この取付プレート6はコンクリート製の上側プレート7と下側プレート8とから構成され、これらのプレート7、8が下端筋3を上下から挟み込むように、すなわち半円形の設置溝9に下端筋3が挿入されて一体接合されている。これら上下のプレート7、8は接着剤10またはボルトで一体接合され、工場または現場で下端筋3に取り付けるものである。したがって、トラス筋5にひずみを与えることなく、下端筋3の必要な箇所や任意の箇所に任意の数だけ簡単に取り付けることができる。
【0010】
また、図3は第2の実施の形態の補強材11である。この補強材11は取付プレート12が上下で分離したものではなく、一体のものとして二本の下端筋3にわたって取り付けられたものであり、これ以外は第1の実施の形態の補強材1と同じ構成であり、同じ効果を奏するものである。
【0011】
また図4および図5は第3の実施の形態の補強材13である。この補強材13は取付プレート14が二本の下端筋3にわたって取り付けられたのではなく、下端筋3における各筋ごとに取り付けられたものであり、これ以外は第1の実施の形態の補強材1と同じ構成である。これは第1の実施の形態の取付プレート6が中央部で長さ方向に沿って切断されたものであり、それぞれが独立しているため、取り付け時においてトラス筋5に多少のひずみがあったとしても調整が簡単にできる。
【0012】
また上記の第1〜第3の実施の形態における取付プレート6、12、14はコンクリート製であったが、これはコンクリートに限らず、鋼製および合成樹脂製であってもよい。さらにトラス筋5は一本の上端筋2と二本の下端筋3とが波形のラチス筋4で接合されたものであったが、これに限らず、一本の上端筋と一本の下端筋とが波形のラチス筋で接合された、いわゆるシングルトラスであってもよい(図示せず)。
【0013】
次に、第1の実施の形態の補強材1を使用した補強構造15を図6に基づいて説明する。既存のスラブ16の上面に下端筋3における取付プレート6が接着剤10で接着されてトラス筋4が設置されている。このトラス筋4の上端筋2にはスラブの補強筋17が配筋され、これらが配筋された型枠18内に増し打ちコンクリート19が打設されて補強構造15が構成されている。したがって、既存のスラブ16をはつる必要もなければ、トラス筋5のひずみを気にすることもなく、スラブ16の上面に簡単に設置することができ、上端筋2に補強筋17を配筋して型枠18内に増し打ちコンクリート19を打設するだけで補強構造15が簡単に構築できる。
【0014】
また、図7は同じように、第1の実施の形態の補強材1を壁面20に設置した補強構造21であり、トラス筋5をスラブ16から壁面20に変えた以外は上記の補強構造15と同じ構成である。また以上のようにスラブ16または壁面20だけではなく、スラブ16と壁面20との双方に補強材1を設置した補強構造15とすることもできる。
【0015】
また、第1の実施の形態の補強材1だけではなく、第2および第3の実施の形態の補強材11、13を使用した補強構造を構築することもできる。ここにおいて上記の第2および第3の実施の形態における取付プレート6、12、14を鋼製および合成樹脂製にすることもでき、またトラス筋5も一本の上端筋と一本の下端筋とが波形のラチス筋で接合された、いわゆるシングルトラスにすることもできる(図示せず)。また上記の取付プレート6は接着剤の他、アンカーボルトでもスラブなどに取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態の補強材であり、(1)は斜視図、(2)は断面図である。
【図2】第1の実施の形態の補強材の平面図である。
【図3】第2の実施の形態の補強材であり、(1)は斜視図、(2)は断面図である。
【図4】第3の実施の形態の補強材であり、(1)は斜視図、(2)は断面図である。
【図5】第3の実施の形態の補強材の平面図である。
【図6】スラブに補強材を設置した補強構造の断面図である。
【図7】壁面に補強材を設置した補強構造の断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1、11、13 補強材
2 上端筋
3 下端筋
4 ラチス筋
5 トラス筋
6、12、14 取付プレート
7 上側プレート
8 下側プレート
9 設置溝
10 接着剤
15、21 補強構造
16 スラブ
17 補強筋
18 型枠
19 増し打ちコンクリート
20 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端筋と下端筋とがラチス筋で接合されたトラス筋における下端筋に、該下端筋を上下から包み込むようにして取付プレートが一体形成されてなることを特徴とする補強材。
【請求項2】
トラス筋は三角形の頂部に配置された一本の上端筋と二本の下端筋とがラチス筋で接合されたものであることを特徴とする請求項1に記載の補強材。
【請求項3】
取付プレートは二本の下端筋にわたって形成されたもの、または二本の下端筋の各筋ごとに形成されたものであることを特徴とする請求項2に記載の補強材。
【請求項4】
取付プレートは上側プレートと下側プレートとからなり、これら上下のプレートが下端筋を挟み込んで接合されたことを特徴とする請求項3に記載の補強材。
【請求項5】
請求項1〜4の補強材が取付プレートで既存建物のスラブ、または壁のうちの少なくともひとつに取り付けられ、前記補強材を覆うようにしてスラブ、または壁に増し打ちコンクリートが打設されてなることを特徴とする既存建物の補強構造。
【請求項6】
取付プレートは接着剤またはアンカーボルトで取り付けられたことを特徴とする請求項5に記載の既存建物の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−182726(P2007−182726A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2301(P2006−2301)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000228350)日本カイザー株式会社 (14)
【Fターム(参考)】