説明

補強装置

【課題】 自動車のセンタートンネルの横断面の輪郭がU字形状である車両構造のための補強装置に関する。
【解決手段】 本発明による補強装置は、その下側に、横方向支持体とそれらと接続された縦方向支持体とをそれぞれ少なくとも二つ備えたトンネルブリッジから成り、横方向支持体が、センタートンネルの下に延びるとともに、接続手段によって、それぞれ一つの自由端を車両構造と固定することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念にもとづく自動車のセンタートンネルの横断面の輪郭がU字形状である車両構造のための補強装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1により、底部構造がシート横方向支持体を備えたフロアシステムを有し、センタートンネル内のトンネル側壁の間にクロスブリッジを配置した自動車の車両構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許公開第10005245号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、衝突時に、特に、センタートンネルの領域において、車両構造の目的通りの補強を保証する、自動車のセンタートンネルを備えた車両構造のための補強装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本課題は、本発明にもとづき、請求項1の特徴によって解決される。更に別の有利な特徴は、従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明により得られる主な利点は、主として車両構造のBピラーの領域とそれに続く更に別の後方の車両構造領域において、縦方向及び横方向に対する補強が実現されることである。それは、センタートンネルが、その車両構造のフロアプレートの方を向いた下側に、横方向支持体とそれらと接続された縦方向支持体とを少なくとも二つ備えたトンネルブリッジを有し、これらの横方向支持体が、センタートンネルのベント部分の下を車両の横方向に延びて、それぞれ一つの自由端を接続手段により車両構造と固定することができることによって達成される。特に、このトンネルブリッジは、走行方向に見てセンタートンネルの後方の端部において、横方向に置かれたヒールプレート支持体と接続された状態で配置されている。
【0007】
本発明による別の実施形態では、前方に置かれたトンネルブリッジの一方の横方向支持体は、Bピラーの領域においてフロントシート用のシート横方向支持体の間に配置され、後方に有るトンネルブリッジの他方の横方向支持体は、リヤシートのシート横方向支持体の間又はヒールプレート支持体の直前に配置されるものと規定する。
【0008】
このようなトンネルブリッジの実施形態及び配置構成によって、前面での衝突時及び側面での衝突時に、特に、車両構造のBピラーの領域における側面衝突時において、エネルギーを吸収する役割を果たす補強集合体又は結合点が実現され、このことは、センタートンネルを補強すること無く実現することはできない。
【0009】
特に、本発明では、二つの横方向支持体が、センタートンネルの開いた領域を車両の横方向に橋絡しており、縦方向支持体が、センタートンネルの開いた領域内において、互いに間隔を開けて配置されているものと規定する。これらの横方向支持体は、例えば、中空の輪郭を形成する押出成形部材から構成されており、それらの外側には、材料レベルでの固い結合によって横方向支持体と接続することが可能な縦方向支持体の対応する正面側のための収容部を有する。従って、これらの横方向支持体は、ほぼセンタートンネルの両側に配置されたシート横方向支持体の間に配置されることとなり、その結果、後方に向かって開いたセンタートンネルが、側面での衝突時に押し潰されることがなくなり、側方からの衝突力が、それと向き合ったシート横方向支持体に伝達されて、それと一緒に支え合うこととなる。トンネルブリッジの横方向支持体は、輪郭を形成された中空の支持体として大きな断面係数を有し、その結果、側方からの力の影響によって曲がったり、或いは潰されたりすることを防止することができる。縦方向支持体は、センタートンネル内に自由な状態で、即ち、直接固定されていない状態で配置されており、その結果、発生する縦方向の力は、後方又は前方の横方向支持体に、それらに作用する力に応じて直接誘導することが可能である。
【0010】
本発明の更に別の改善構成では、後方に有る横方向支持体は、その上側に、縦方向支持体の延長部分に配置することができる、それぞれセンタートンネルの側壁の内側に有る垂直な支持壁面で支える衝撃対抗部材を有する。特に、これらの衝撃対抗部材は、それらの横断面が三角形に構成されており、一つの固定壁面が、横方向支持体と接続された支持壁面に対して直角に延びている。これらの衝撃対抗部材は、センタートンネル内に突き出ており、側方からの力に対して、自由端に有るセンタートンネルの側壁を支えるように構成されている。
【0011】
このようなトンネルブリッジの構造とその配置構成によって、有利には、側面での衝突時と縦方向又は前面での衝突時の両方において、横方向支持体と縦方向支持体を介した、目的通りエネルギーを吸収する強制的な力の伝達が実現されることとなる。
【0012】
本発明の実施例を図面に図示して、以下において詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】センタートンネルの下の車両の底部領域内におけるトンネルブリッジの平面図
【図2】センタートンネルと接続されたトンネルブリッジの立体図
【図3】トンネルブリッジの立体図
【図4】後方に有る横方向支持体上に衝撃対抗部材が配置されたトンネルブリッジの後方領域の立体図
【図5】横方向支持体上に補強部材が配置されたトンネルブリッジの前方領域の立体図
【発明を実施するための形態】
【0014】
センタートンネル2の横断面の輪郭が下方に対して開いたU字形状である車両構造8のための補強装置は、一つのトンネルブリッジ3から構成されている。本装置は、少なくとも二つの横方向支持体4,5と、それらと接続されて支持フレームを構成する縦方向支持体6,7とを有する。トンネルブリッジ3は、横方向支持体4,5を介して、車両構造8、特に、車両の底部構造と接続されている。トンネルブリッジ3は、走行方向Fに見てセンタートンネル2の後方の端部において、横方向に配置されたヒールプレート支持体10と接続された状態でセンタートンネル2の側壁13,14のベント部分11,12の下に配置されている。
【0015】
走行方向Fに見て前方に有るトンネルブリッジ3の一方の横方向支持体4は、センタートンネル2の両側に配置されたシート横方向支持体15,15aの間において、車両構造8と接続されている。そのために、横方向支持体4の自由端16,17には、横方向支持体4とその上に載せられた補強部品19の穴18を貫通する接続部品、例えば、ねじが配備されている。
【0016】
走行方向Fに見て後方に有る他方の横方向支持体5は、そのセンタートンネル2の領域内における一方の横方向プレート5aによって車両構造8と接続されており、その他方の横方向プレート5bは、車両構造8のヒールプレート支持体10と固定されている。接続は、穴18aへのねじ込み手段によって行われている。別の実施形態において、横方向支持体5は、リヤシートのシート横方向支持体の間に配置することもできる。
【0017】
二つの横方向支持体4,5は、横断面の輪郭がU字形状であるセンタートンネル2の下方に対して開いた領域を橋絡しており、縦方向支持体6,7は、センタートンネル2の下方に対して開いた領域内において、その中又はその下に自由な状態で配置されている。縦方向支持体6,7と横方向支持体4,5との接続は、正面側において、横方向支持体4,5の外側の収容部20,21で行われている。その接続は、例えば、溶接Sによって行うことができる。
【0018】
横方向支持体4,5と縦方向支持体6,7は、補強ブレースを中に入れた中空の形で実現された押出成形部材から構成することができ、外側の収容部20,21は、窪み20a又は単なる置き台21aとして実現することができる。
【0019】
後方に有る横方向支持体5は、その上側に、それぞれ側壁13,14の内側と接する衝撃対抗部材24,25を有する。衝撃対抗部材24,25は、横断面の輪郭が三角形に構成されており、直立した支持壁面26は、それぞれ側壁13,14の内側の方を向いており、それと直角に配置された固定壁面27は、横方向支持体5上に載っており、それと溶接Sによって固定されている。衝撃対抗部材24,25の内部には、それらと関連する傾斜して構成された内壁28に対して平行に延びる補強壁面29が配置されている。
【0020】
特に、図1において矢印で詳しく図示されている通り、走行方向Fに見て左からの側面衝突時には、車両構造8のBピラーの領域において、例えば、シート横方向支持体15を介して、次に、トンネルブリッジ3又は前方の横方向支持体4を介して、センタートンネル2の他方の側に有る別のシート横方向支持体15aへの力の伝達が起こる。左からの側面衝突時には、後方の横方向支持体5の領域において、ヒールプレート支持体10を介して横方向支持体5への力の伝達と、それに続いて、再びヒールプレート支持体10への力の伝達が起こるように、横方向支持体5の横方向プレート5bとヒールプレート支持体10との繋がりが出来上がっている。
【符号の説明】
【0021】
2 センタートンネル
3 トンネルブリッジ
4,5 横方向支持体
5a,5b 横方向プレート
6,7 縦方向支持体
8 車両構造
8a フロアプレート
10 ヒールプレート支持体
11,12 ベント部分
13,14 側壁
15,15a シート横方向支持体
16,16a,17,17a 横方向支持体4の自由端
18,18a 穴
19 補強部品
20,20a,21 収容部
21a 置き台
24,25 衝撃対抗部材
26 支持壁面
27 固定壁面
28 内壁
29 補強壁面
F 走行方向
B Bピラー
S 溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面の輪郭がU字形状である自動車のセンタートンネルは、その側方の側壁のベント部分が車両構造のフロアプレートと接続されており、センタートンネルの両側には、横方向支持体又はシート横方向支持体が配置されて、フロアプレート及び/又はセンタートンネルと接続されている車両構造のための補強装置において、
車両構造(8)のフロアプレート(8a)の方を向いたセンタートンネル(2)下側に配備されたトンネルブリッジ(3)から成り、そのトンネルブリッジが、横方向支持体(4,5)とそれらと接続された縦方向支持体(6,7)とをそれぞれ少なくとも二つ備えており、横方向支持体(4,5)が、センタートンネル(2)のベント部分(11,12)の下を車両の横方向に延びるとともに、穴(18,18a)の中にに置かれた接続手段によって、それぞれ一つの自由端(16,17,16a,17a)を車両構造(8)と固定することが可能であることを特徴とする補強装置。
【請求項2】
トンネルブリッジ(3)は、走行方向(F)に見てセンタートンネル(2)の後方の端部において、横方向を向いたヒールプレート支持体(10)と接続された状態で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の補強装置。
【請求項3】
走行方向(F)に見て前方に有るトンネルブリッジ(3)の一方の横方向支持体(4)が、Bピラー(B)の領域において、フロントシート用のシート横方向支持体(15,15a)の間に配置されており、後方に有るトンネルブリッジ(3)の他方の横方向支持体(5)が、リヤシートのシート横方向支持体の間又は横方向に配置されたヒールプレート支持体(10)の直前に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の補強装置。
【請求項4】
二つの横方向支持体(4,5)が、センタートンネル(2)の開いた領域を橋絡しており、縦方向支持体(6,7)が、センタートンネル(2)の開いた領域の内側又は外側に互いに間隔を開けて配置されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の補強装置。
【請求項5】
横方向支持体(4,5)が、中空の輪郭を形成する押出成形部材から構成されており、これらの外側に、それらと対応する縦方向支持体(6,7)の正面側のための収容部(20,21)を有し、これらの正面側は、材料レベルでの固い結合によって横方向支持体(4,5)と接続されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の補強装置。
【請求項6】
前方に有る横方向支持体(4)は、その上側に、それぞれ横方向支持体(4)の自由端(16,17)に配置された、車両構造(8)と固定するための補強部品(19)を有することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の補強装置。
【請求項7】
走行方向(F)に見て後方に有る横方向支持体(5)が、その上側に、縦方向支持体(6,7)の延長部分に配置された、それぞれ垂直な支持壁面(26)を側壁(13,14)の内側と接する衝撃対抗部材(24,25)を有することを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の補強装置。
【請求項8】
衝撃対抗部材(24,25)は、その横断面を三角形に構成されており、横方向支持体(5)上に有る、横方向支持体(5)と接続された水平な固定壁面(27)が、支持壁面(26)に対して直角に延びていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の補強装置。
【請求項9】
横方向支持体(4,5)は、縦方向支持体(6,7)と共に補強集合体を構成して、前面での衝突時には縦方向支持体(6,7)及び/又は横方向支持体(4,5)を介した強制的な力の伝達を行うことができるように構成されており、側面での衝突時には横方向支持体(4,5)及び/又は縦方向支持体(6,7)を介した強制的な力の伝達を行うことができるように構成されていることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一つに記載の補強装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−36894(P2010−36894A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170812(P2009−170812)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】