説明

製品搬送車輌管理システム

【課題】車輌稼働率向上のための安価で保全性のよい車輌運行情報管理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】製品搬送車輌ごとに搭載された車戴システムと、物流拠点に設けられた管理システムとを備えた製品搬送車輌管理システムであって、前記車戴システムおよび前記管理システムのそれぞれに、車輌運行情報を伝送する広域無線通信手段を備え、該前記広域無線通信手段を介して前記車戴システムと前記管理システムとの間で、車輌運行情報を伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所等の大規模な工場敷地内での製品搬送車輌の車輌運行情報管理を行う製品搬送車輌管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、製鉄所内のミルエンド(製造ライン出側の製品ヤード)から倉庫、もしくは、倉庫から倉庫への、製品の搬送作業は、事前に計画を立て、その計画に基づいて行われていた。例えば、1日分の搬送作業計画を作成し、搬送車輌の運転手は、それを紙に打出したものを持って搬送車輌に乗り込み、搬送作業を行うというものであった。このように事前に立てた計画に基づいて車輌運行を行っていたために、実際にミルエンドに行くと、台車等への製品の積込みが終わっておらず、積待ちが発生したり、倉庫に行くと台車等から製品を卸ろし終えておらず、卸し待ちが発生したり、他車輌が作業中であったり、と計画どおりに車輌運行が行われず車輌稼働率が上がらないという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1に記載の技術が開示されている。この技術は、運行管理業務機能と配車管理業務機能を備えた物流管理システムであり、運行管理業務機能にはデジタルMCA無線を、配車管理業務機能には専用狭域通信DSRC(Dedicated Short Range Communication)無線を用いる大掛かりな技術である。
【0004】
また、特許文献2には、ヤードシャーシにデータ表示可能なPHS(Personal Handyphone System)方式の端末を搭載するとともに、配車制御装置と各端末との間で無線基地局を介して搬送指示を行うという技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000−231691号公報
【特許文献2】特開2002−370832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、DSRC無線を用意することが必要であり、建設コストの増加・機器増加による保全負荷の増加、という問題がある。
また、上記特許文献2に記載の方法においては、PHS用アンテナの設置が必要であり、やはり、建設コストの増加・機器増加による保全負荷の増加、という問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、車輌稼働率向上のための安価で保全性のよい車輌運行情報管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、製品搬送車輌ごとに搭載された車戴システムと、物流拠点に設けられた管理システムとを備えた製品搬送車輌管理システムであって、前記車戴システムおよび前記管理システムのそれぞれに、車輌運行情報を伝送する広域無線通信手段を備え、該前記広域無線通信手段を介して前記車戴システムと前記管理システムとの間で、車輌運行情報を伝送することを特徴とする製品搬送車輌管理システムである。
【0008】
また本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の製品搬送車輌管理システムにおいて、前記広域無線通信手段は、デジタルMCA無線機であることを特徴とする製品搬送車輌管理システムである。
【0009】
さらに本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の製品搬送車輌管理システムにおいて、前記車輌運行情報の内、前記車戴システムから前記管理システムに伝送される車輌運行情報には、出発、到着、作業開始、作業終了、現状走行距離、車輌故障、および休憩のいずれかまたはそれらの組合わせに関する情報が含まれることを特徴とする製品搬送車輌管理システムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、車戴情報を広域無線通信手段(デジタルMCA)のみで伝送するようにしたので、車輌と基地とのデータ通信環境構築を、狭域無線不要で安価に実現でき、製品搬送効率向上につなげることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態について、以下に図および表を参照して説明を行う。図1は、本発明に係る製品搬送車輌管理システムの構成例を示すブロック図である。図中、1は上位計算機システム、2は物流拠点、3は管理PC(Personal Computer)、4は無線機X、5は無線基地局、6は製品搬送車輌a、b、c・・・・・・、7は無線機a、b、c・・・・・・、および8は車載PCa、b、c・・・・・・をそれぞれ表す。本システムは、大別して、物流拠点における管理システムと、車輌に搭載された車戴システムとでなり、その相互の間で広域無線通信(デジタルMCA無線通信)手段の無線通信装置により情報交換を行うシステム構成としている。
【0012】
上位計算機システム1は、製鉄所内全体の物流および顧客からのオーダー情報等を管理しているホスト計算機システムである。このシステムは製鉄所内管理センターに設けられており、必要搬送作業と実施可能車輌の情報等より、搬送作業計画の作成といった運行管理業務機能を備えている。
【0013】
物流拠点2は、管制作業員の常駐する物流拠点を示しており、ここに、管理システムとしての管理PC3及び、無線機X4が設置されている。
【0014】
無線基地局5は、製鉄所付近に設置されている公共の設備である。物流拠点2と管理対象である車輌との全てのデータ伝送は、この無線基地局5を介して行われる。
【0015】
符号6は、複数の製品搬送車輌a、b、c・・・・・・をあらわしている。そして、それぞれの車輌6には、符号7の無線機a、b、c・・・・・・と、符号8の車載PCa、b、c・・・・・・が対となって搭載されている。車載PC8から入力されたデータは、無線機7を介して無線基地局5に伝送される。実際には、このような車輌が複数台あり、車輌6内に構成された無線機7と車載PC8を含めた部分を車載システムと呼ぶ。
【0016】
図1に示す符号(1)〜(6)は、データ伝送の流れを表すものであり、(1)、(2)、・・・、(6)の順でデータ伝送が行われる。(1)〜(6)のデータ伝送の内容、および伝送元/先をまとめたものを、表1に示す。なお、伝送手段は、広域無線通信手段を用いるものとし、特にデジタルMCA無線機を用いるようにするとよい。ここで、MCA (Multi−Channel−Access) 無線とは、複数の無線チャンネルを多数の利用者が共有して自動的に空チャンネルに切り替えて通信する無線システムであり、デジタル化することにより電波の有効利用と利便性がより増した無線システムである。このようなデジタルMCA無線を用いることにより、アンテナ設置のための建設費用が不要で、製鉄所等の大規模な工場敷地内のどこであっても通信が可能となる。
【0017】
【表1】

【0018】
車輌のオペレータは、車輌を用いた製品搬送を行うために、どのような搬送作業があるのかを知る必要がある。搬送作業を知るために、車載PC8より、“メニュー要求”を選択する。“メニュー要求”のデータが無線を介して、上位計算機システム1まで伝送されて、上位計算機システム1より最新の搬送作業リストのデータが無線を介して、車輌PC8まで伝送される。車輌PC8ではその搬送作業リストのデータを表示する。オペレータはそれを見ることにより、最新の搬送作業を正確に知ることができる。
【0019】
このようにして、オペレータは常に最新の搬送作業を知ることができるため、工場側の製品搬出状況・倉庫側の製品受入状況・他車輌の搬送状況に応じて、無駄なく効率的に作業を進めることができる。
【0020】
また、車輌PC8にて、上述の伝送状態過程((1)、(2)、・・・、(6)のどの段階であるか)を認識できる機能を加えるようにしても良い。このように搬送台車オペレータの判断要素を増やすことにより、例えば、回線が混んでいるか、管理PC・上位計算機システムが異常であるか、伝送・受信待ち中であるかなど、状況に応じた作業をオペレータに促すことができる。
【0021】
車輌のオペレータは、搬送作業リストの内容に従って、製品の搬送作業を行う。製品搬送開始時“出発”、製品搬送終了時“到着”を車載PC8より入力する。その“出発”・“到着”のデータは上位計算機システム1に上げられる。上位計算機システム1においては、それらのデータを元に、各車輌の搬送状況のリアルタイム認識、後での能率解析等を行うことができる。
【0022】
車載PC8から上位計算機システム1に伝送するデータには、“出発”、“到着”他に、“作業開始”、“作業終了”、“現状走行距離”、“車輌故障”、“休憩”、“その他”等がある。
【0023】
以上説明したように、本発明は、製品搬送車輌に搭載された車戴システムと、物流拠点に設けられた管理システムとにより構築される製品搬送車輌管理システムであって、前記車戴システム及び前記管理システムのそれぞれに、車輌運行情報を伝送する広域無線通信手段を設け、前記車戴システムと前記管理システムとの間で、前記広域無線通信手段を介して車輌運行情報を伝送することを特徴とする。また、本発明は、上記製品搬送車輌管理システムにおいて、広域無線通信手段としてデジタルMCA無線機を用いて構成したことを特徴とする。車輌と物流拠点との間で広域無線通信(デジタルMCA無線通信)手段を使用した情報交換により、車輌効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る製品搬送車輌管理システムの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0025】
1 上位計算機システム
2 物流拠点
3 管理PC
4 無線機X
5 無線基地局
6 製品搬送車輌a、b、c・・・・・・
7 無線機a、b、c・・・・・・
8 車載PCa、b、c・・・・・・

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品搬送車輌ごとに搭載された車戴システムと、物流拠点に設けられた管理システムとを備えた製品搬送車輌管理システムであって、
前記車戴システムおよび前記管理システムのそれぞれに、車輌運行情報を伝送する広域無線通信手段を備え、
該前記広域無線通信手段を介して前記車戴システムと前記管理システムとの間で、車輌運行情報を伝送することを特徴とする製品搬送車輌管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の製品搬送車輌管理システムにおいて、
前記広域無線通信手段は、デジタルMCA無線機であることを特徴とする製品搬送車輌管理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の製品搬送車輌管理システムにおいて、
前記車輌運行情報の内、前記車戴システムから前記管理システムに伝送される車輌運行情報には、出発、到着、作業開始、作業終了、現状走行距離、車輌故障、および休憩のいずれかまたはそれらの組合わせに関する情報が含まれることを特徴とする製品搬送車輌管理システム。

【図1】
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【公開番号】特開2007−226363(P2007−226363A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44601(P2006−44601)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】