説明

複合シリコーンゴム粉末、その製造方法、塗料、および化粧料

【課題】 塗料や化粧料への分散性が優れ、塗料の艶消し性や化粧料の使用感を向上できる複合シリコーンゴム粉末、これを効率よく製造する方法、艶消し性の優れた塗膜を形成する塗料、および使用感の良好な化粧料を提供する。
【解決手段】 (A)平均粒子径が0.1〜500μm、JIS K 6253に規定のタイプAデュロメータ硬さが少なくとも15であるシリコーンゴム粉末の表面が(B)BET比表面積10m2/g以上の無機質微粉末で被覆され、さらにこれらの表面が(C)ケイ素原子結合の加水分解性基を有する有機ケイ素化合物あるいはその部分加水分解物で処理されていることを特徴とする複合シリコーンゴム粉末、前記(A)成分と前記(B)成分を混合し、次いで、前記(C)成分を混合することを特徴とする複合シリコーンゴム粉末の製造方法、前記複合シリコーンゴム粉末を含有することを特徴とする塗料および化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴム粉末の表面が無機質微粉末で被覆されてなる複合シリコーンゴム粉末、その製造方法、それを含有する塗料、およびそれを含有する化粧料に関し、詳しくは、塗料や化粧料への分散性が優れ、塗料の艶消し性を向上させたり、化粧料の使用感を向上できる複合シリコーンゴム粉末、これを効率よく製造する方法、艶消し性の優れた塗膜を形成できる塗料、および使用感の良好な化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料、化粧料、インキ、熱硬化性有機樹脂、熱可塑性有機樹脂等へのシリコーンゴム粉末の分散性を向上させるため、その表面が無機質微粉末で被覆されてなる複合シリコーンゴム粉末を用いることは公知である。例えば、平均粒子径が0.1〜200μmであるシリコーンゴム粉末の表面が金属酸化物微粉末で被覆されてなる複合シリコーンゴム粉末(特許文献1参照)、平均粒子径が0.1〜200μmであるシリコーンゴム粉末の表面に、表面のシラノール基密度が2個/100Å2以上であり、かつ平均粒子径が1μm以下である非晶質シリカ微粉末を固着してなる複合シリコーンゴム粉末(特許文献2参照)が知られており、その製造方法としては、シリコーンゴム粉末の水分散液と金属酸化物ゾルを混合し、次いで、該混合物から水分を除去する方法(特許文献1参照)、シリコーンゴム粉末の水分散液に非晶質シリカ微粉末を添加し、次いで、加熱し、水を除去する方法(特許文献2参照)が知られている。
【0003】
しかし、このような複合シリコーンゴム粉末といえども、塗料や化粧料への分散性が十分ではなく、塗料の艶消し性や、化粧料の使用感を十分に向上できるものではなかった。
【特許文献1】特開平4−348143号公報
【特許文献2】特開平7−102075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、塗料や化粧料への分散性が優れ、塗料の艶消し性を向上させたり、化粧料の使用感を向上できる複合シリコーンゴム粉末、これを効率よく製造する方法、艶消し性の優れた塗膜を形成できる塗料、および使用感の良好な化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の複合シリコーンゴム粉末は、(A)平均粒子径が0.1〜500μmであり、JIS K 6253に規定のタイプAデュロメータ硬さが少なくとも15であるシリコーンゴム粉末の表面が(B)BET比表面積が10m2/g以上である無機質微粉末により被覆された複合シリコーンゴム粉末であって、該複合シリコーンゴム粉末の表面が(C)ケイ素原子結合の加水分解性基を含有する有機ケイ素化合物あるいはその部分加水分解物により処理されていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の複合シリコーンゴム粉末の製造方法は、(A)平均粒子径が0.1〜500μmであり、JIS K 6253に規定のタイプAデュロメータ硬さが少なくとも15であるシリコーンゴム粉末と(B)BET比表面積が10m2/g以上である無機質微粉末を混合し、次いで、(C)ケイ素原子結合の加水分解性基を有する有機ケイ素化合物あるいはその部分加水分解物を混合することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の塗料は、上記の複合シリコーンゴム粉末を含有することを特徴とし、本発明の化粧料は、上記の複合シリコーンゴム粉末を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複合シリコーンゴム粉末は、塗料や化粧料への分散性が優れ、塗料の艶消し性を向上させたり、化粧料の使用感を向上できるという特徴があり、本発明の製造方法は、このような複合シリコーンゴム粉末を効率よく製造できるという特徴があり、本発明の塗料は、艶消し性の優れた塗膜を形成できるという特徴があり、また、本発明の化粧料は、使用感が良好であるという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
はじめに、本発明の複合シリコーンゴム粉末について詳細に説明する。
(A)成分のシリコーンゴム粉末は、その平均粒子径が0.1〜500μmの範囲内であり、好ましくは、0.1〜200μmの範囲内であり、さらに好ましくは、0.1〜100μmの範囲内であり、特に好ましくは、0.1〜50μmの範囲内である。これは、平均粒子径が上記範囲の下限未満であるシリコーンゴム粉末は、その調製が難しく、また、その表面を無機質微粉末で被覆することが困難であり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる複合シリコーンゴム粉末の塗料や化粧料に対する分散性が低下するからである。この平均粒子径は、例えば、シリコーンゴム粉末の水分散液あるいはエタノール分散液を市販のレーザー回折式粒度分布測定器(例えば、株式会社堀場製作所製のLA−500)により測定し、そのメジアン径(累積分布の50%に相当する粒径、50%粒径)で表すことができる。また、(A)成分の形状は特に限定されないが、塗料や化粧料への分散性が著しく優れ、塗料の艶消し性や化粧料の使用感を著しく向上できることから、球状あるいは略球状であることが好ましい。また、(A)成分のJIS K 6253に規定するタイプAデュロメータ硬さは少なくとも15であり、好ましくは、15〜90の範囲内であり、さらに好ましくは、15〜80の範囲内であり、特に好ましくは、15〜50の範囲内である。これは、タイプAデュロメータ硬さが上記範囲の下限未満であると、得られる複合シリコーンゴム粉末の流動性が低下し、また、これを塗料に配合した場合に、良好な艶消し性を有する塗膜を形成しにくくなり、一方、上記範囲の上限を超えると、化粧料の使用感を向上することが難しくなるからである。このタイプAデュロメータ硬さは、(A)成分を形成するためのシリコーンゴム組成物をシート状に硬化させ、このゴムシートの硬さを測定することにより求めることができる。
【0010】
(A)成分を形成するシリコーンゴム組成物としては、例えば、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、および白金系化合物から少なくともなる付加反応硬化型シリコーンゴム組成物;一分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合する水酸基またはアルコキシ基、オキシム基、アセトキシ基、アミノキシ基等の加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン、一分子中に少なくとも3個のケイ素原子に結合するアルコキシ基、オキシム基、アセトキシ基、アミノキシ基等の加水分解性基を有するシラン系架橋剤、および有機錫化合物、有機チタン化合物等の縮合反応触媒から少なくともなる縮合反応硬化型シリコーンゴム組成物;一分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、および有機過酸化物から少なくともなる有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物が例示され、特に、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物、または縮合反応硬化型シリコーンゴム組成物であることが好ましい。
【0011】
(A)成分を形成する方法としては、例えば、上記のシリコーンゴム組成物を硬化させて得られたシリコーンゴムをグラインダー等の粉砕機により粉砕する方法;上記のシリコーンゴム組成物をスプレードライヤー等の噴霧機により噴霧して硬化させる方法;上記のシリコーンゴム組成物を水または界面活性剤水溶液中に分散させて硬化させる方法が挙げられ、特に、塗料や化粧料への分散性が優れる球状もしくは略球状のシリコーンゴム粉末を調製できることから、シリコーンゴム組成物を水または界面活性剤水溶液中に分散させて硬化させる方法であることが好ましい。シリコーンゴム組成物の水系分散液を調製するためには、例えば、ホモジナイザー、コロイドミル等の撹拌装置や超音波振動機等の混合装置を用いることができる。この際、シリコーンゴム組成物の水系分散液を調製する前に、シリコーンゴム組成物を予め冷却して、その硬化性を制御することが好ましい。この水分散液中のシリコーンゴム組成物を硬化させ、次に、この水系分散液から水を除去することにより、シリコーンゴム粉末を調製することができる。この水系分散液から水を除去する方法としては、例えば、真空乾燥機、熱風循環式オーブン、スプレードライヤーを用いて乾燥する方法が挙げられる。
【0012】
水系分散液中でシリコーンゴム組成物を粒子状として安定させるためには界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンソルビタンエステル、ポリエチレングライコール、ポリプロピレングライコール、ジエチレングライコールトリメチルノナノールのエチレンオキサイド付加物等のノニオン系界面活性剤;ヘキシルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、セチルベンゼンスルホン酸、ミリスチルベンゼンスルホン酸やそのナトリウム塩等のアニオン系界面活性剤;オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、デシルジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ヤシ油トリメチルアンモニウムヒドロキシド等のカチオン系界面活性剤、これらの界面活性剤の2種以上の組合せが挙げられる。
【0013】
シリコーンゴム組成物の水系分散液を調製する際、界面活性剤の添加量は、シリコーンゴム組成物100質量部に対して0.1〜20質量部の範囲内であることが好ましく、0.5〜10質量部の範囲内であることがより好ましく、0.5〜5質量部の範囲内であることが特に好ましい。また、水の添加量は、シリコーンゴム組成物100質量部に対して40〜2,000質量部の範囲内であることが好ましく、特に、40〜1,000質量部の範囲内であることが好ましい。これは、水の添加量が上記範囲の下限未満であると、均一なシリコーンゴム組成物の水系分散液を形成することが困難であり、一方、上記範囲の上限を超えると、シリコーンゴム粉末の生産性が著しく悪化するためである。
【0014】
また、(A)成分に有機官能性基を導入するために、上記のシリコーンゴム組成物に、アリルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド等のアルケニル基含有エポキシ化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等の有機ケイ素化合物を添加してもよい。
【0015】
また、(A)成分は、非架橋のオイルを含有していてもよい。この非架橋のオイルは、(A)成分中に単に含まれており、自然に滲み出たり、また、有機溶剤により抽出可能なオイルのことである。この非架橋のオイルとしては、例えば、非架橋のシリコーンオイル、非架橋の有機オイルが例示される。この非架橋のシリコーンオイルは、(A)成分を形成するための硬化反応に関与しなかったシリコーンオイルであり、この分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、分岐鎖状が挙げられ、特に、直鎖状であることが好ましい。これらの非架橋のオイルは液状であり、この25℃における粘度は、例えば、1〜100,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、さらには、5〜50,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特には、5〜10,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。これは、粘度が上記範囲の下限未満であるオイルでは、揮発性があり、得られる複合シリコーンゴム粉末に継続的な撥水性を付与しにくく、一方、上記範囲の上限を超えるオイルでは、シリコーンゴム粉末を形成しにくく、またシリコーンゴム粉末に含浸しにくくなるからである。このような非架橋のオイルとしては、シリコーンゴム粉末との親和性が優れ、継続的な撥水性を複合シリコーンゴム粉末に付与できることから、シリコーンオイルであることが好ましい。
【0016】
非架橋のシリコーンオイルとしては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、このジメチルポリシロキサンのメチル基の一部をメチル基以外のアルキル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基に置換したポリシロキサン等の非反応性シリコーンオイルが一般的である。付加反応でシリコーンゴム粉末を形成するためのシリコーンゴム組成物中に、非架橋のシリコーンオイルを予め含ませておく場合には、非架橋のシリコーンオイルとしては、上記の非反応性シリコーンオイル以外に、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン、このジメチルポリシロキサンのメチル基の一部をメチル基以外のアルキル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基に置換したポリシロキサン等のシリコーンオイル、さらには、この付加反応に関与し得るが、未反応として残った分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、これらのポリシロキサンのメチル基の一部をメチル基以外のアルキル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基に置換したポリシロキサン等のシリコーンオイルが例示される。また、縮合反応でシリコーンゴム粉末を形成するためのシリコーンゴム組成物中に、非架橋のシリコーンオイルを予め含ませておく場合には、非架橋のシリコーンオイルとしては、上記の非反応性シリコーンオイル以外に、この非反応性シリコーンオイルのメチル基の一部をアルケニル基に置換したポリシロキサン等のシリコーンオイル、さらには、この縮合反応に関与し得るが、未反応として残った分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン、このジメチルポリシロキサンのメチル基の一部をメチル基以外のアルキル基、アルケニル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基に置換したシリコーンオイルが例示される。また、シリコーンゴム粉末に非架橋のシリコーンオイルを含浸する場合には、このシリコーンオイルの種類は特に限定されない。
【0017】
また、非架橋の有機オイルとしては、流動パラフィン、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル、オレイン酸2−オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アボガド油、アルモンド油、オリブ油、カカオ油、ホホバ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、スクワラン、パーシック油、ヒマシ油、ミンク油、綿実油、ヤシ油、卵黄油、ポリプロピレングリコールモノオレート、ネオペンチルグリコール−2−エチルヘキサノエート等のグリコールエステル油;イソステアリン酸トリグリセライド、椰子油脂肪酸トリグリセライド等の多価アルコールエステル油;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル等のポリオキシアルキレンエーテル油が例示される。これらの有機オイルは、シリコーンゴム粉末を形成するためのシリコーンゴム組成物中に予め含ませておいてもよく、シリコーンゴム粉末に含浸してもよい。
【0018】
(A)成分中の非架橋のオイルの含有量は、例えば、(A)成分中、80質量%以下であることが好ましく、特に、10〜50質量%の範囲内であることが好ましい。これは、この(A)成分中の非架橋のオイルの含有量が上記範囲の上限を超えると、(A)成分の機械的強度が低下したり、得られる複合シリコーンゴム粉末から非架橋のオイルが常態においても滲み出てしまうためであり、一方、上記範囲の下限未満であると、得られる複合シリコーンゴム粉末に十分な親水性を付与しにくいからである。
【0019】
さらに、(A)成分は、これを調製する過程で用いた界面活性剤を含有してもよい。この界面活性剤としては、前記と同様の界面活性剤が例示される。この界面活性剤の含有量は、(A)成分中0.01〜10質量%の範囲内であることが好ましく、特に、0.01〜5質量%の範囲内であることが好ましい。
【0020】
(A)成分中の非架橋のオイルや界面活性剤の含有量は、例えば、(A)成分100gにトルエン1000gを加えて分散液を調製し、この分散液を攪拌機、例えば、ホモディスパーを用いて1000rpmで10分間、さらに500rpmで10分間攪拌した後、これを室温で12時間静置した後、再びホモディスパーを用いて500rpmで10分間攪拌し、この分散液を濾紙により濾過して濾液を採取し、濾紙上に残ったシリコーンゴム粉末にトルエン750gを加えて分散液を調製し、この分散液をホモディスパーを用いて1000rpmで10分間攪拌し、この分散液を濾紙により濾過して濾液を採取し、この濾液を先に採取した濾液と合わせて、エバポレータを用いて80℃で70mmHgの条件下でトルエンを留去することにより得られたオイルあるいは界面活性剤の質量を測定することにより求めることができる。また、このオイルあるいは界面活性剤をプロトン核磁気共鳴スペクトル分析、ゲルパーミエーションクロマトグラフ分析、赤外分光分析等で同定することができる。
【0021】
(B)成分の無機質微粉末は、(A)成分の表面を被覆して、その凝集を抑え、得られる複合シリコーンゴム粉末の流動性、分散性を向上させるための成分であり、そのBET比表面積は10m2/g以上であり、好ましくは、50m2/g以上であり、特に好ましくは、10m2/g以上である。また、(B)成分は、(A)成分の表面を被覆できれば、その平均粒子径は特に限定されないが、具体的には、(A)成分の平均粒子径の1/10以下であることが好ましい。なお、本発明の複合シリコーンゴム粉末において、(B)成分は、少なくともその一部が(A)成分の表面に付着した状態で存在するものである。すなわち、(A)成分の表面全体を(B)成分が被覆しているか、または(A)成分の表面の一部を(B)成分が被覆し、一部の(B)成分は(A)成分の表面から脱落した状態であってもよい。
【0022】
(B)成分としては、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン等の金属酸化物微粉末;窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物微粉末;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物微粉末;炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;ニッケル、コバルト、鉄、銅、金、銀等の金属微粒子;その他、硫化物微粉末、塩化物微粉末が挙げられ、これらの表面を、予めオルガノアルコキシシラン、オルガノクロロシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により疎水化処理した無機質微粉末であってもよい。特に、入手が容易であることから、金属酸化物微粉末であることが好ましく、特に、シリカ微粉末であることが好ましい。
【0023】
(C)成分の有機ケイ素化合物またはその部分加水分解物は、本発明の複合シリコーンゴム粉末の分散性を向上させるための成分であり、この有機ケイ素化合物中のケイ素原子結合の加水分解性基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;メチルエチルケトキシム基等のオキシム基;アセトキシ基、アミノキシ基、クロロ基が例示され、特に、アルコキシ基であることが好ましい。この有機ケイ素化合物は、(B)成分の表面に親和性が高く、また、一部ではその表面と反応しやすくなることから、さらに、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−グリシドキシプロピル基、2,3−エポキシプロピル基等のエポキシ基;3−アミノプロピル、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基等のアミノ基;3−(メタ)アクリロキシプロピル基等の(メタ)アクリル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ノナフルオロブチルエチル基等のフッ化アルキル基;ビニル基、アリール基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;オクチル等の長鎖アルキル基等を有することが好ましい。また、この有機ケイ素化合物には、上記以外の基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等の一価炭化水素基を有していてもよい。
【0024】
このような有機ケイ素化合物としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有アルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン等のアルケニル基含有アルコキシシラン;3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(フェニル)ジエトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(フェニル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリメトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基含有アルコキシシランが例示される。
【0025】
次に、本発明の複合シリコーンゴム粉末の製造方法を詳細に説明する。
本方法では、(A)成分と(B)成分を混合し、次いで、(C)成分を混合することを特徴とする。これは、(A)成分と(B)成分を混合し、次いで、得られた複合シリコーンゴム粉末に(C)成分を加えて、これらを混合することにより、(A)成分の表面を(B)成分で被覆した複合シリコーンゴム粉末の分散性を向上することができる。本方法において、これらの成分を混合する装置は限定されず、例えば、ヘンシェルンミキサー、スーパーミキサーが挙げられる。
【0026】
本方法における、(B)成分の添加量は、(A)成分の表面を被覆するに十分な量であればよく、また、(A)成分に含有されている非架橋のオイルの含有量によっても異なるが、通常、(A)成分100質量部に対して0.1〜100質量部であることが好ましく、特に、1〜50質量部であることが好ましい。また、(C)成分の添加量は、得られる複合シリコーンゴム粉末に十分な親水性を付与する量であればよく、また、(A)成分に添加される(B)成分の配合量によっても異なるが、通常、(A)成分100質量部に対して0.1〜100質量部であることが好ましく、特に、0.5〜50質量部であることが好ましい。これは、(B)成分や(C)成分の処理量が、上記範囲外であると、得られる複合シリコーンゴム粉末の流動性が悪化したり、分散性が向上しにくくなるからである。
【0027】
また、これら成分を混合する際の温度は、特に限定されず、例えば、室温下で行うこともできる。また、混合時間は、流動性の乏しい(A)成分が、この表面に(B)成分が付着することにより流動性を示すようになるので、この状態の変化を観察することにより適宜決定することが必要である。
【0028】
次に、本発明の塗料について詳細に説明する。
本発明の塗料は、上記の複合シリコーンゴム粉末を含有することを特徴とする。この塗料としては、常温硬化型、常温乾燥型、加熱硬化型が例示され、また、その性状により、水性、油性、粉状が例示され、さらに、ビヒクルの樹脂により、ポリウレタン樹脂塗料、ブチラール樹脂塗料、長油性フタル酸樹脂塗料、アルキッド樹脂塗料、アミノ樹脂とアルキッド樹脂からなるアミノアルキッド樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、フェノール樹脂塗料、シリコーン変性エポキシ樹脂塗料、シリコーン変性ポリエステル樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料が例示される。
【0029】
この塗料において、上記の複合シリコーンゴム粉末は、塗料中の樹脂と親和性あるいは反応性を有することが好ましく、例えば、エポキシ樹脂をビヒクルとする塗料においては、エポキシ基あるいはアミノ基を有する複合シリコーンゴム粉末であることが好ましく、ポリウレタン樹脂あるいはアミノ樹脂をビヒクルとする塗料においては、アミノ基を有する複合シリコーンゴム粉末であることが好ましい。
【0030】
この塗料において、上記の複合シリコーンゴム粉末の含有量は限定されないが、得られる塗膜に均一で柔らかな艶消し性を付与するためには、塗料の固形分100質量部に対して、0.1〜150質量部の範囲内であることが好ましく、さらに、0.1〜100質量部の範囲内であることが好ましく、特に、0.1〜50質量部の範囲内であることが好ましい。
【0031】
この塗料には、上記の複合シリコーンゴム粉末の他、メタノール、エタノール等のアルコール;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のオレフィン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の有機溶剤;顔料、高分子化合物からなる増粘剤、難燃剤、耐候性付与剤を含有してもよい。
【0032】
次に、本発明の化粧料について詳細に説明する。
この化粧料は、上記の複合シリコーンゴム粉末を含有することを特徴とする。この化粧料としては、石鹸、ボディシャンプー、洗顔クリーム等の洗浄用化粧料;化粧水、クリーム・乳液、パック等の基礎化粧品;おしろい、ファンデーション等のベースメークアップ化粧料;口紅、ほほ紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ等の眉目化粧料;マニキュア等のメークアップ化粧料;シャンプー、ヘアリンス、整髪料、育毛剤、養毛剤、染毛剤等の頭髪用化粧料;香水、オー・デ・コロン等の芳香性化粧料;歯磨き;浴用剤;脱毛剤、髭剃り用ローション、制汗・消臭剤、日焼け防止剤等の特殊化粧料が例示される。また、この化粧料の剤形としては、水性液状、油性液状、乳液状、クリーム状、フォーム状、半固形状、固形状、粉状が例示される。また、この化粧料をスプレーにより用いることもできる。
【0033】
この化粧料において、上記の複合シリコーンゴム粉末の含有量は、化粧料中の0.5〜99.0質量%の範囲内であることが好ましく、特に、1.0〜95質量%の範囲内であることが好ましい。これは、上記の複合シリコーンゴム粉末の含有量が上記の範囲の上限を超える場合には、化粧料としての効果が失われるからであり、また、上記範囲の下限未満であると、化粧料の使用感等が改善されにくくなるからである。
【0034】
この化粧料には、上記の複合シリコーンゴム粉末以外の化粧料原料として、例えば、アボガド油、アルモンド油、オリブ油、カカオ脂、ゴマ油、小麦胚芽油、サフラワー油、シアバター、タートル油、椿油、パーシック油、ヒマシ油、ブドウ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、卵黄油、モクロウ、ヤシ油、ローズヒップ油、硬化油等の油脂;オレンジラフィー油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ホホバ油、モンタンロウ、ミツロウ、ラノリン等のロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等の炭化水素;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン酸、合成脂肪酸等の高級脂肪酸;エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール等のアルコール;コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトステロール等のステロール;リノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、イソオクタン酸セチル、パルミチン酸セチル、トリミリスチン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソオクタン酸グリセリン、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル等の脂肪酸エステル;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、d,l−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム等の保湿剤;高級脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル塩、N−アシルグルタミン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型、レシチン等の両性界面活性剤、多価アルコールエステル型、酸化エチレン縮合型等の非イオン界面活性剤等の界面活性剤;酸化鉄等の有色顔料、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジリコニウム等の白色顔料、マイカ、タルク、セリサイト等の体質顔料等の顔料;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルテトラシクロシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル;精製水;カラギーナン、アルギン酸、アラビアゴム、トラガント、ペクチン、デンプン、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレングリコール等の増粘剤、さらには、紫外線吸収剤、抗菌剤、坑炎症剤、制汗剤、防腐剤、香料、酸化防止剤、pH調節剤、噴射剤を含有してもよい。
【実施例】
【0035】
本発明の複合シリコーンゴム粉末、その製造方法、塗料、および化粧料を実施例、比較例により詳細に説明する。なお、実施例中の物性は25℃における値である。また、シリコーンゴム粉末および複合シリコーンゴム粉末の特性は次のようにして測定した。
[(複合)シリコーンゴム粉末の流動性]
シリコーンゴム粉末または複合シリコーンゴム粉末を、アルパイン社製エアジェットシーブふるい機を使用して、100メッシュ(目開き=150μm)にてメッシュオンした、これらの粉末の質量%を測定することにより評価した。
[(複合)シリコーンゴム粉末のシリコーンオイルへの分散性]
20mlのシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製SH200、10mPa・s)にシリコーンゴム粉末または複合シリコーンゴム粉末0.5gを添加し、30mlガラスビンでシェイク10回後に10分静置して状態を観察した。
○:微粒子状で沈降し、シェイクすると均一分散する。
×:○と同様に沈降するが、大粒であり、シェイクすると大粒が浮遊している。
【0036】
また、塗料については、次の評価を行った。
[油性塗料の皮膜外観と表面反射率]
デンタルミキサーにて、10質量部の市販の長油性フタル酸樹脂塗料(固形分65質量%:株式会社カンペハピオ製1回塗りハウスペイントそら色)に複合シリコーンゴム粉末2質量部を20秒間混合して、塗料を調製した。この塗料をアルミ板(6cm×15cm)の両端に粘着テープを貼り付けて塗装時の厚さを制御して、ガラス棒で塗布した。次いで、塗装板を室温、ドラフト内で2日間、風乾して塗膜を形成した。この塗膜をBYK−Gardner社製マイクロ−トリ−グロス光沢計(JIS Z 8741準拠)を用い、入射光角度を20度、60度、85度に変化させて塗膜の反射率を測定した。
【0037】
また、実施例、比較例で調製した複合シリコーンゴム粉末の原料を表1に示した。
【表1】

【0038】
[実施例1〜6]
表2に示した質量比で、スーパーミキサー(ヘンシェル型ミキサー、カワタ社製V−20、内容積20L)にシリコーンゴム粉末を投入し、室温で回転数2000回転で約2分間攪拌して、ブロック状の塊を粉砕した。次に、無機質微粉末を投入して室温で回転数2000回転で3分間混合し、流動性のある複合シリコーンゴム粉末とした後、さらに有機ケイ素化合物を投入して、室温で回転数2000回転で2分間混合した。得られた複合シリコーンゴム粉末の特性、および油性塗料の特性を評価し、それらの結果を表2に示した。
【0039】
[比較例1]
シリコーンゴム粉末(A−1)の特性、および油性塗料の特性を評価し、それらの結果を表2に示した。
【0040】
[比較例2]
実施例1において、有機ケイ素化合物(C−1)を配合しない以外は、実施例1と同様にして複合シリコーンゴム粉末を調製した。この複合シリコーンゴム粉末の特性、および油性塗料の特性を評価し、それらの結果を表2に示した。
【0041】
[比較例3]
シリコーンゴム粉末(A−2)の特性、および油性塗料の特性を評価し、それらの結果を表2に示した。
【0042】
[比較例4]
表2に示した質量比で、スーパーミキサー(ヘンシェル型ミキサー、カワタ社製V−20、内容積20L)にシリコーンゴム粉末(A−3)を投入し、室温で回転数2000回転で約2分間攪拌して、ブロック状の塊を粉砕した。次に、無機質微粉末(B−1)を投入して室温で回転数2000回転で3分間混合し、流動性のある複合シリコーンゴム粉末とした後、さらに有機ケイ素化合物(C−4)を投入して、室温で回転数2000回転で2分間混合した。得られた複合シリコーンゴム粉末の特性、および油性塗料の特性を評価し、それらの結果を表2に示した。
【0043】
【表2】

【0044】
[比較例5]
粘度70mPa・sの分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン100質量部、3−アミノプロピルトリメトキシシラン10質量部、ノニオン系界面活性剤(日本油脂株式会社製のノニポール95)4質量部と水50質量部を乳化機にかけて、水系エマルジョンを調製し、平均粒子径が2μmであり、JIS K 6253規定のタイプAデュロメータ硬さが3であるシリコーンゴム粉末のサスペンジョンを調製した。このサスペンジョン100質量部にシリカゾル(粒子径40〜50μm、シリカ含有量20質量%のシリカゾル:日産化学工業株式会社製のスノーテックス20L)50質量部を混合し、次いで3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を混合した。このスラリーを小型スプレードライヤー(アシザワニロ社製)で乾燥し、平均粒子径が12μmである複合シリコーンゴム粉末を得た。この複合シリコーンゴム粉末の特性、および油性塗料の特性を評価し、それらの結果を表3に示した。
【0045】
【表3】

【0046】
[実施例7]
実施例6で調製した複合シリコーンゴム粉末25質量%、ジメチルポリシロキサンにより表面処理したセリサイト15質量%、ジメチルポリシロキサンにより表面処理したタルク14質量%、ジメチルポリシロキサンにより表面処理したマイカ30質量%、ベンガラ1.0質量%、黄色酸化鉄2.5質量%、および黒色酸化鉄0.2質量%をヘンシェルミキサーにより均一に混合した後、予め調製した6mPa・sのジメチルポリシロキサン10質量%とミツロウ2質量%の加熱混合物、防腐剤0.2質量%、および香料0.1質量%を滴下して均一に混合した後、これをプレス成形してパウダーファンデーションを調製した。このパウダーファンデーションをパネラーの顔に施して、その官能評価を次のように評価し、それらの結果を表4に示した。
[パウダーファンデーションの官能評価]
10人のパネラーによりパウダーファンデーションののびおよびのり、使用感等の官能評価を行い、8人以上が良いと判断した場合を○、4〜7人が良いと判断した場合を△、4人未満が良いと判断した場合を×として評価した。
【0047】
[比較例6]
実施例7において、実施例6で調製した複合シリコーンゴム粉末の代わりに、シリコーンゴム粉末(A−2)を用いた以外は実施例7と同様にしてパウダーファンデーションを調製した。このパウダーファンデーションの官能評価を実施例7と同様に行い、それらの結果を表4に示した。
【0048】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の複合シリコーンゴム粉末は、塗料や化粧料への分散性が優れるので、これらの原料として利用可能であり、また、熱硬化性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物等の添加剤、あるいはプラスチックフィルムの表面潤滑剤に利用可能である。また、本発明の複合シリコーンゴム粉末を塗料に配合した場合には、艶消し性の優れる塗膜を形成することができるので、プラスチック製品あるいは金属製品に高級感を付与することができる。また、本発明の複合シリコーンゴム粉末を化粧料に配合した場合には、その感触を向上させることができるので、皮膚化粧料、メークアップ化粧料等に使用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均粒子径が0.1〜500μmであり、JIS K 6253に規定のタイプAデュロメータ硬さが少なくとも15であるシリコーンゴム粉末の表面が(B)BET比表面積が10m2/g以上である無機質微粉末により被覆された複合シリコーンゴム粉末であって、該複合シリコーンゴム粉末の表面が(C)ケイ素原子結合の加水分解性基を有する有機ケイ素化合物あるいはその部分加水分解物により処理されていることを特徴とする複合シリコーンゴム粉末。
【請求項2】
(B)成分が金属酸化物微粉末である、請求項1記載の複合シリコーンゴム粉末。
【請求項3】
(B)成分がシリカ微粉末である、請求項1記載の複合シリコーンゴム粉末。
【請求項4】
(C)成分中の加水分解性基がアルコキシ基である、請求項1記載の複合シリコーンゴム粉末。
【請求項5】
(A)平均粒子径が0.1〜500μmであり、JIS K 6253に規定のタイプAデュロメータ硬さが少なくとも15であるシリコーンゴム粉末と(B)BET比表面積が10m2/g以上である無機質微粉末を混合し、次いで、(C)ケイ素原子結合の加水分解性基を有する有機ケイ素化合物あるいはその部分加水分解物を混合することを特徴とする、請求項1記載の複合シリコーンゴム粉末を製造する方法。
【請求項6】
(B)成分が金属酸化物微粉末である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
(B)成分がシリカ微粉末である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
(C)成分中の加水分解性基がアルコキシ基である、請求項5記載の方法。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合シリコーンゴム粉末を含有することを特徴とする塗料。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合シリコーンゴム粉末を含有することを特徴とする化粧料。


【公開番号】特開2006−188592(P2006−188592A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1014(P2005−1014)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】