説明

複合チューブ容器

【課題】 金属チューブ容器の打痕の付き易さを解消することにより、完全な遮光性およびガスバリヤー性を維持した状態で、使用感および表面強度の優れたチューブ容器を得ることを目的とする。
【解決手段】 軟質金属材料製の金属チューブ素体2を、頭部3と、胴部8の形成部分である金属材内層9とから構成し、胴部8を、金属材内層9に、打痕が残り難いと共に、柔軟で保形性に富んだ材料製フィルムである保護外層10を被覆固定して構成し、金属チューブ素体2で完全な遮光性とガスバリヤー性とを得、保護外層10で優れた表面強度および使用感を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、完全な遮光性を発揮すべく、アルミニウム等の軟質金属材料と、打痕が付き難く、柔軟で保形性に富んだ材料とを組合せて構成した複合チューブ容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収納した内容物に対する優れた収納保存性を発揮するチューブ容器としては、大別してアルミニウム等の軟質金属材料製の金属チューブ容器と、アルミ箔等の金属箔と合成樹脂製のフィルムとの積層物を主体として構成された金属ラミネートチューブ容器とがある。
【0003】
金属チューブ容器は、一般に、衝撃押出し成形法によって成形されるが、アルミニウム等の軟質金属材料が、通気性がないと共に、非透光性であることから、優れたガスバリヤー性と完全な遮光性とを発揮し、これにより内容物を長期間にわたり、安全に保存するのに適している、と云う利点がある。
【特許文献1】特開2003−001350号公報
【0004】
また、金属ラミネートチューブ容器は、金属箔が発揮する優れたガスバリヤー性と遮光性とにより、内容物の優れた保存性を発揮すると共に、樹脂フィルムが発揮する柔軟性と保形性とにより、他の物品との衝突による打痕が残り難いと共に、良好な使用感を得ることができる、と云う利点がある。
【特許文献2】特開2001−315809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の内、金属チューブ容器にあっては、完全な遮光性およびガスバリヤー性を発揮することができるのであるが、他の物品との衝突により打痕が付き易く、場合によっては、この打痕が破断孔となって、容器としての機能を喪失することがある、と云う問題があった。
【0006】
また、上記従来技術の内、金属ラミネートチューブ容器にあっては、打痕の付き難い、高い表面強度を発揮すると共に、良好な使用感を得ることができるのであるが、完全な遮光性とガスバリヤー性とを得ることはできず、このため充分な内容物に対する保存性を発揮することができず、例えばクスリ等の高い保存性を要求される内容物に対しては使用できない、と云う問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、金属チューブ容器の打痕の付き易さを解消することを技術的課題とし、もって完全な遮光性およびガスバリヤー性を維持した状態で、使用感および表面強度の優れたチューブ容器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の複合チューブ容器である容器本体は、アルミニウム等の軟質金属材料の一体成形物である金属チューブ素体と、この金属チューブ素体の胴部形性部分である金属材内層に、被覆状に外装組付けされる、保護外層とから構成されている。
【0009】
金属チューブ素体は、一体設した天板片で開口部を閉鎖した頭部と、胴部の形成部分である筒状の金属材内層とから構成されており、この金属チューブ素体の金属材内層に外装組付きする保護外層は、打痕が残り難いと共に、柔軟で保形性に富んだ材料製フィルムで構成されている。
【0010】
このように、容器本体は、その内表面側全域を金属チューブ素体で形成しているので、金属材料が持つ完全な遮光性およびガスバリヤー性を発揮することになる。
【0011】
また、容器本体は、胴部の外表面全域を保護外層で覆っているので、打痕が残り難い高い表面強度を発揮すると共に、柔軟な触感と良好な保形性とを発揮するものとなる。
【0012】
なお、胴部を構成する金属材内層は、保護外層の柔軟性および保形性が、有効に発揮されるように、できる限り薄く成形されており、また金属チューブ素体の内周面全域は、耐内容物性の確保を目的として、保護被膜が被覆されていることは云うまでもない。
【0013】
本発明の別の構成は、頭部を、天板片を有して、金属材内層の上端に連設された金属材殻層と、胴部の保護外層と接着結合し、天板片を除く金属材殻層の外表面を覆って固定された合成樹脂製の樹脂外殻層とから構成したことにある。
【0014】
頭部を、金属材殻層と樹脂外殻層とから構成したものにあっては、頭部に設けられるキャップの着脱機能部を、樹脂外殻層に形成することができるので、このキャップ着脱機能部の成形を無理なく簡単に行うことができ、また金属材殻層の肉厚を充分に薄くすることができるので、金属チューブ素体を成形するのに要する金属材料量を、大幅に小さくすることができる。
【0015】
また、本発明の別の構成は、樹脂外殻層を、天板片を除く金属材殻層の全外表面と、保護外層の上端部が位置する胴部上端部とを成形型面の一部として成形される、インサート成形品としたことにある。
【0016】
樹脂外殻層を、インサート成形品としたものにあっては、溶融している樹脂外殻層成形材料の熱により、樹脂外殻層の成形と同時に、金属材殻層および保護外層との強固な接着が達成される。
【0017】
また、本発明の別の構成は、頭部との境界部である胴部上端部に位置する金属材内層の外表面に、保護外層の上端が位置して、胴部外表面を平滑に成形可能とする境界段部を設けたことにある。
【0018】
金属材内層の上端部外表面に境界段部を設けたものにあっては、金属材内層に被覆状に外装固定される保護外層の上端面を、境界段部により直接、または境界段部に位置する樹脂外殻層の一部により覆い、これにより保護外層の上端面が露出しないようにして、胴部外表面を平滑にすることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の複合チューブ容器にあっては、金属材料が持つ完全な遮光性およびガスバリヤー性を発揮することができるので、内容物に対する優れた保存性を得ることができると共に、打痕が残り難い高い表面強度と柔軟な触感と適正な保形性とを発揮することができるので、安全で良好な使用感を得ることができる。
【0020】
頭部を、金属材殻層と樹脂外殻層とから構成したものにあっては、所望するキャップ着脱機能部を簡単に成形することができるので、使い勝手の良いチューブ容器を得ることができ、また金属チューブ素体を成形するのに要する金属材料量を、大幅に小さくすることができるので、高価な金属材料の省資源化と、材料費の低減化とを得ることができる。
【0021】
樹脂外殻層を、インサート成形品としたものにあっては、樹脂外殻層の成形と同時に、金属材殻層および保護外層との強固な接着が達成されるので、組合せ強度の大きい複合チューブ容器を、安定して確実に得ることができる。
【0022】
金属材内層の上端部外表面に境界段部を設けたものにあっては、保護外層の上端面が露出しないようにして、胴部外表面を平滑にすることが可能となるので、外観体裁の良い複合チューブ容器を得ることができると共に、保護外層が、上端面を他物品に引っ掛けて金属材内層から剥離する、と云う不都合の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態例を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1〜図4は、本発明による複合チューブ容器である容器本体1の第1の実施形態例を示すもので、金属材殻層4だけで構成された頭部3に、肉薄筒状の金属材内層9を垂下連設した金属チューブ素体2と、この金属チューブ素体2の金属材内層9に、被覆状に外装組付けされる保護外層10とから構成されている。
【0025】
金属チューブ素体2は、アルミニウムや亜鉛等の軟質金属材料またはその合金で成形されており、この金属チューブ素体2の金属材殻層4で形成された頭部3(図4参照)は、外周面にキャップ12の着脱機能部である螺条を刻設し、かつ上端開口部を一体設した肉薄な天板片7で閉鎖した口筒部の下端に、下方に急角度で拡径したテーパー筒状の肩部を連設して構成されている。
【0026】
この頭部3を形成する金属材殻層4の下端に、肉薄な筒状に垂下連設された金属材内層9(図4参照)は、頭部3との境界部分である上端部外周面に、下向きの境界段部11を形成しており、この境界段部11は、金属材内層9に外装される保護外層10の厚みと等しい段部幅を有している。
【0027】
金属材内層9に外装組付きして胴部8を構成する保護外層10は、打痕が付き難いように表面強度が大きく、またチューブ容器として、好ましい使用状態を得ることができるように適当な保形性を有し、さらには好ましい触感や優れた印刷性が得られるように、紙、またはポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂材料製フィルム、さらにはこれ等を組合せた積層フィルムで成形される。
【0028】
この保護外層10の金属材内層9に対する外装組付けは、短冊状に成形されたフィルム片である保護外層10を、金属材内層9に巻回接着する方法や、金属材内層9の外径と等しい内径の肉薄筒片状に成形された保護外層10を、金属材内層9に外嵌接着する方法で達成される。
【0029】
この第1の実施形態例にあっては、金属チューブ素体2の衝撃押出し成形により、金属材殻層4がそのまま頭部3に成形されるので、頭部3の成形が単純であり、その分、容器本体1を成形する手間が簡単となる。
【0030】
なお、図1において、符号12は、容器本体1に組付けられるキャップの一例を示すもので、頭部3の口筒部に着脱自在に螺合外装するキャップ12は、有頂円筒片構造をしていて、その天板の下面に、キャップ12の螺着動作により天板片7を切断する切断刃13を垂下設している。
【0031】
図5〜図10は、本発明による容器本体1の第2の実施形態例を示すもので、先に説明した本発明の第1の実施形態例に対して、頭部3の構造および境界段部11の構造が異なっている。
【0032】
金属チューブ素体2(図7、図8参照)は、頭部3の内表面側を形成すると共に、天板片7を一体設した肉薄な金属材殻層4と、この金属材殻層4の下端から垂下連設された、肉薄筒状の金属材内層9とから構成されている。
【0033】
金属材殻層4との境界部である金属材内層9の上端部は、段状に縮径して、そのまま金属材殻層4に連設しており、段状に縮径することにより、外表面に境界段部11を形成しているが、この境界段部11の段部幅は、保護内層10の厚みよりも充分に大きいものとなっている。
【0034】
この金属チューブ素体2に対して保護外層10を、(以下、図9、図10参照)巻回接着もしくは外嵌接着等の手段により、保護外層10の上端部が、境界段部11に対向位置するように、外装組付けする。
【0035】
金属チューブ素体2に対して保護外層10を組付け固定したならば、(以下、図5、図6参照)天板片7を除く金属材殻層4の全外表面と、境界段部11に位置した保護外層10の上端部を成形型面の一部として、金属材殻層4と組合さって頭部3を構成する合成樹脂製の樹脂外殻層5をインサート成形する。
【0036】
この際、境界段部11に位置していた保護外層10の上端部は、合成樹脂材料の射出圧により、金属材内層9に押付けられ、この保護外層10の上端部を金属材内層9に押付けた合成樹脂材料は、そのまま境界段部11に位置して、外表面を保護外層10の外表面と面一とした裾片6に成形される。
【0037】
なお、保護外層10の上端部の、射出された合成樹脂材料による、金属材内層9への押付けを確実にするため、予め保護外層10の上端を金属材内層9側に傾斜させて、この保護外層10の上端部と樹脂外殻層5の成形型面との間に、充分な隙間を形成しておくのが良い。
【0038】
この第2の実施形態例にあっては、頭部3のキャップ着脱機能部を、合成樹脂材料製の樹脂外殻層5に形成するので、このキャップ着脱機能部の簡単で良好な成形を得ることができ、また金属材殻層4の充分な肉薄化が可能であるので、高価な軟質金属材料の消費量の大幅な削減を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】は、本発明の第1実施形態例の、半縦断した全体正面図である。
【図2】は、図1に示した実施形態例の、要部拡大縦断面図である。
【図3】は、第1実施形態例の金属チューブ素体の、半縦断した全体正面図である。
【図4】は、図3に示した実施形態例の、要部拡大縦断面図である。
【図5】は、本発明の第2実施形態例の、半縦断した全体正面図である。
【図6】は、図5に示した実施形態例の、要部拡大縦断面図である。
【図7】は、第2実施形態例の金属チューブ素体の、半縦断した全体正面図である。
【図8】は、図7に示した実施形態例の、要部拡大縦断面図である。
【図9】は、第2実施形態例の金属チューブ素体と保護外層との組合せ物の、半縦断した全体正面図である。
【図10】は、図9に示した実施形態例の、要部拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ; 容器本体
2 ; 金属チューブ素体
3 ; 頭部
4 ; 金属材殻層
5 ; 樹脂外殻層
6 ; 裾片
7 ; 天板片
8 ; 胴部
9 ; 金属材内層
10; 保護外層
11; 境界段部
12; キャップ
13; 切断刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質金属材料の一体成形物である金属チューブ素体を、一体設した天板片で開口部を閉鎖した頭部と、胴部の形成部分である筒状の金属材内層とから構成し、前記胴部を、前記金属材内層に、打痕が残り難いと共に、柔軟で保形性に富んだ材料製フィルムである保護外層を被覆固定して構成した複合チューブ容器。
【請求項2】
頭部を、天板片を有して、金属材内層の上端に連設された金属材殻層と、胴部の保護外層と接着結合し、前記天板片を除く金属材殻層の外表面を覆って固定された合成樹脂製の樹脂外殻層とから構成した請求項1記載の複合チューブ容器。
【請求項3】
樹脂外殻層を、天板片を除く金属材内殻層の全外表面と、保護外層の上端部が位置する胴部上端部とを成形型面の一部として成形される、インサート成形品とした請求項2記載の複合チューブ容器。
【請求項4】
頭部との境界部である胴部上端部に位置する金属材内層の外表面に、保護外層の上端が位置して、前記胴部外表面を平滑に成形可能とする境界段部を設けた請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合チューブ容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−7178(P2008−7178A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180930(P2006−180930)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】