説明

複合体粒子の製造法

本発明の対象は、α)一般式(RO)nSiR14-n(1)〔式中、Rは、1〜20個の炭素原子を有する、場合によっては置換されたアルキル基またはアリール基、または水素原子を表わし、R1は、場合によっては置換された炭化水素基または水素原子を表わし、およびnは、1〜4の値である〕で示される1つ以上の珪素化合物、またはβ)式(1)の珪素化合物の1つ以上の縮合生成物を溶剤または多数の溶剤の混合物中で1つ以上の可溶性重合体の存在下で縮合させ、この場合、可溶性重合体は、カルボン酸基またはその誘導体、シラン基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスフェート基、ホスホネート基、イソシアネート基、アミン基、第4アミン基、ヒドラジン基、エポキシ基、エーテル基、ヒドロキシ基またはCO基から選択された1個以上の他の官能基を有する、a)1つ以上のエチレン系不飽和モノマーおよび1〜15個のC原子を有するカルボン酸のビニルエステル、1〜15個のC原子を有する、カルボン酸と非分枝鎖状または分枝鎖状のアルコールとのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル、オレフィンおよびジエン、ビニル芳香族化合物およびビニルハロゲン化物を含む群から選択された、b)1つ以上のエチレン系不飽和モノマーのラジカル的に開始される重合によって得られ、その際、この場合に形成された、珪素化合物α)の縮合生成物または縮合生成物β)、またはこれらの縮合生成物は、1つ以上の可溶性ポリマー上に固定されることを特徴とする、複合体粒子の製造法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、可溶性有機重合体および珪素化合物を基礎とする複合体粒子の製造法、該方法により得られた製品ならびに例えば異なる使用のための添加剤、結合剤または補助結合剤としての該製品の使用である。
【0002】
複合体粒子は、有機ドメインおよび無機ドメイン、例えば有機重合体マトリックスおよびそれに固定された無機粒子を含有し、通常、4〜5000nmの直径を有する。
【0003】
複合体粒子を製造するための通常の方法において、有機単量体は、乳化重合により、無機粒子の水性分散液中で重合され、この場合には、例えばDong-Ming Qi, J. of Applied Polym. Sei., 2006, Vol. 99,第3425〜3432頁; Tsutomu Mizutani, J. of Applied. Polym. Sei., 3006, Vol. 99,第659〜669頁; Frank Bauer, Macromol. Mater. Eng., 2006291,第493〜498頁またはドイツ連邦共和国特許出願公開第102004010155号明細書、米国特許第3544500号明細書、米国特許第4421660号明細書またはWO−A2006/072464の記載と同様に、有機ドメインは、無機粒子の表面上に固定されている。
【0004】
しかし、複合体粒子の有機ドメインおよび無機ドメインの固定ならびに安定した複合体粒子の準備は、問題を引き起こす。なぜならば、無機粒子またはその出発物質および有機単量体または有機重合体マトリックスは、大抵異なる極性を有し、互いに分離するかまたはそれぞれ乱雑に凝集する傾向にあるからである。
【0005】
この種の凝集は、複合体粒子の製造前または製造中に起こり、即ち例えば凝集された無機粒子は、有機単量体の重合の進行中に有機重合体マトリックスによってカプセル化され、したがって、有機重合体マトリックス上での無機粒子の均一な固定は、全く起こらず、ひいては最終的に化学的に単一に有機ドメインおよび無機ドメインから形成された複合体粒子は、全く生じない。相応する混合物は、溶剤中にコロイド状一次粒子としては存在しない。むしろ、無機粒子および有機重合体マトリックスは、混合物として同時に存在することが発生しうる。
【0006】
しかし、また、画一的に無機ドメインおよび有機ドメインから形成されている複合体粒子においては、無機ドメインまたは有機ドメインの凝集を生じる可能性があり、このことは、殊に溶解されたか、乳化されたか、または分散された複合体粒子の不十分な貯蔵安定性をまねき、ゲル化または斑点形成(Stippenbildung)によって現れる。殊に、よりいっそう高い温度、例えば40℃から、この種の凝集が起こる。同様に、専ら無機建築用石材から形成された粒子、例えばコロイド状シリカまたはオルガノポリシロキサンは、よりいっそう高い温度、例えば70℃で、またはむしろ既に室温で凝集の傾向がある。
【0007】
凝集された複合体粒子は、もはや望ましい使用技術的性質を有しないかまたはむしろ全く使用不可能である。例えば、複合体粒子の安定した水性分散液を準備するために、通常、乳化剤、保護コロイドまたは安定剤としての特殊な添加剤、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第102004010155号明細書中で推奨されているヒドロキシ基含有アルキルアミノ化合物が添加される。
【0008】
本発明の課題は、上記欠点が回避され、殊に分散液の形でも貯蔵安定であり、理想的には安定剤の使用なしでも複合体粒子が入手可能である、複合体粒子の製造法を提供することであった。
【0009】
この課題は、意外なことに、加水分解可能な基またはOH基を含有する珪素化合物を可溶性重合体の存在で縮合する方法で解決され、この場合無機粒子は、可溶性重合体上に固定された。
【0010】
エチレン系不飽和有機単量体および例えば欧州特許出願公開第1620271号明細書中で提案されたエチレン系不飽和シロキサンのようなエチレン系不飽和無機粒子によって得られる複合体粒子は、公知である。
【0011】
WO−A 2007/057382には、ポリビニルアルコールの存在でエチレン系不飽和のシラン含有単量体のラジカル的に開始される重合によって得られる、シラン変性されたポリビニルアルコールが記載されている。
【0012】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102007038333号明細書の記載から、珪素化合物をポリビニルアルコールの存在で縮合させることによって製造された組成物は、公知であり、しかし、この場合には、その際に生じた無機粒子は、ポリビニルアルコール上に固定されるのではなく、このポリビニルアルコールと共に組成物中に混合物として存在した。
【0013】
欧州特許出願公開第1243619号明細書には、有機ドメイン、例えばポリアクリル酸、および無機ドメイン、例えば珪酸ナトリウムまたはコロイド状珪酸からなる複合体材料が開示されており、この場合有機ドメインおよび無機ドメインは、2価金属カチオンとのイオン性相互作用によって結合されており、したがってこの複合体材料は、重合体ドメインの凝集体としてゲルの形で存在する。
【0014】
本発明の対象は、
α)一般式
(RO)nSiR14-n (1)
〔式中、
Rは、1〜20個の炭素原子を有する、場合によっては置換されたアルキル基またはアリール基、または水素原子を表わし、
1は、場合によっては置換された炭化水素基または水素原子を表わし、および
nは、1〜4の値である〕で示される1つ以上の珪素化合物、または
β)式(1)の珪素化合物の1つ以上の縮合生成物を溶剤または多数の溶剤の混合物中で1つ以上の可溶性重合体の存在下で縮合させ、
この場合、可溶性重合体は、カルボン酸基またはその誘導体、シラン基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスフェート基、ホスホネート基、イソシアネート基、アミン基、第4アミン基、ヒドラジン基、エポキシ基、エーテル基、ヒドロキシ基またはCO基から選択された1個以上の他の官能基を有する、a)1つ以上のエチレン系不飽和単量体および1〜15個のC原子を有するカルボン酸のビニルエステル、1〜15個のC原子を有する、カルボン酸と非分枝鎖状または分枝鎖状のアルコールとのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル、オレフィンおよびジエン、ビニル芳香族化合物およびビニルハロゲン化物を含む群から選択された、b)1つ以上のエチレン系不飽和単量体のラジカル的に開始される重合によって得られ、
その際、この場合に形成された、珪素化合物α)の縮合生成物または縮合生成物β)、またはこれらの縮合生成物は、1つ以上の可溶性重合体上に固定されることを特徴とする、複合体粒子の製造法である。
【0015】
式(1)の珪素化合物において、基Rは、特に置換されていない。特に有利には、式(1)の基Rは、メチル、エチルまたはプロピル、シクロヘキシル、フェニルを表わし、最も有利には、メチルまたはエチルを表わす。
【0016】
特に、基R1は、アルキル基またはアリール基を表わし、特に有利には、メチル、エチル、プロピル、シクロヘキシル、イソオクチルまたはフェニルを表わし、最も有利には、メチルまたはエチルを表わす。
【0017】
特に、基R1は、基R2が1〜20個の炭素原子、有利に1〜6個の炭素原子を有する、場合によっては置換されたアルキレン基を表わす基R2Xも表わし、この場合互いに隣接していないメチレン単位は、基−O−によって置換されていてよく、
Xは、1個の共有結合により基R2に結合されており、アミノ基、NHR3、エポキシ基CR4(O)CR56、ウレタン基NR3−C(=O)OR3、尿素基NR3−C(=O)NR34、燐酸基P(=O)(OH)2、無水物基C(=O)O(O=)CR3またはカルボン酸基を表わし、この場合
3は、水素原子または1〜10個の炭素原子を有する、場合によっては置換されたアルキル基、アリール基またはアミノアルキル基を表わし、
4、R5、R6は、水素原子または1〜10個の炭素原子を有する、場合によっては置換されたアルキル基またはアリール基を表わし、
この場合それぞれの基R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ互いに独立にそれぞれの値を取り、この場合基R2Xは、基R2の炭素原子により式(1)の珪素原子に結合されている。
【0018】
好ましくは、基R2Xの基R2は置換されていない。特に有利には、R2は、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基を表わし、最も有利には、メチレン、エチレンまたはプロピレンを表わす。
【0019】
特に、R3は、水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル−、アリール−またはアミノアルキル基、特に有利に水素原子、2−アミノエチル、フェニル、シクロヘキシル、メチル、エチル、プロピルまたはブチルを表わす。
【0020】
基R4、R5、R6は、特に水素原子を表わす。
【0021】
特に、nは、2〜4の値を取り、特に有利には、3または4の値を取る。
【0022】
式(1)の珪素化合物の個々の基R、R1、R2、R3、R4、R5、R6またはXおよび値Nは、それぞれ互いに独立した意味を有する。式(1)の全ての実施態様において、珪素原子は、それぞれ4価である。
【0023】
式(1)のシランの例は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、(シクロヘキシル)メチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランまたはフェニルトリエトキシシランである。式(1)の好ましいシランは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシランまたはフェニルトリエトキシシランである。特に好ましいのは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランである。
【0024】
更に、式(1)のシランの例は、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)(3−アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、N−シクロヘキシルアミノメチルメチルジエトキシシラン、N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)−メチルウレタン、N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)−メチルウレタン、N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)−尿素、N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)−尿素、(3−グリシドオキシプロピル)トリエトキシシランおよび(3−グリシドオキシプロピル)−トリメトキシシランである。また、好ましいのは、(3−アミノプロピル)トリエトキシシランまたは(3−グリシドオキシプロピル)トリエトキシシランである。
【0025】
特に、複合体粒子を製造する場合には、nが1〜3の値を取る、式(1)の少なくとも1つの珪素化合物が使用され、即ちこの場合には、珪素原子は、まさしくアルコキシ基、アリールオキシ基またはヒドロキシ基で置換されていない。
【0026】
場合によっては、複合体粒子を製造するための縮合の際には、付加的に一般式(2)R7SiR80-2(OR91-3の1つ以上のエチレン系不飽和珪素化合物が使用されてよく、上記式中、R7は、CH2=CR10−(CH20-1またはCH2=CR10CO2(CH21-3を意味し、R8は、C1〜C3アルキル基、C1〜C3アルコキシ基またはハロゲン、特にClまたはBrを意味し、R9は、1〜12個のC原子、特に1〜3個のC原子を有する、非分枝鎖状または分枝鎖状の場合によっては置換されたアルキル基を表わし、この場合R9は、場合によってはエーテル基によって中断されていてよく、およびR10は、HまたはCH3を表わす。
【0027】
式(2)の好ましいエチレン系不飽和珪素化合物は、γ−アクリル−もしくはγ−メタクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シラン、α−メタクリルオキシメチルトリ(アルコキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジ(アルコキシ)シラン;ビニルシラン、例えばビニルアルキル−ジ(アルコキシ)シランおよびビニルトリ(アルコキシ)シランであり、この場合には、アルコキシ基として、例えばメトキシ基、エトキシ基、メトキシエチレン基、エトキシエチレン基、メトキシプロピレングリコールエーテル基もしくはエトキシプロピレングリコールエーテル基が使用されてよい。式(2)の好ましい不飽和珪素化合物の例は、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス−(1−メトキシ)−イソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリス−(2−メトキシエトキシ)シラン、トリスアセトキシビニルシラン、アリルビニルトリメトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルアセトキシシラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルトリシソプロピルオキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリヘキシルオキシシラン、ビニルメトキシジヘキシルオキシシラン、ビニルトリオクチルオキシシラン、ビニルジメトキシオクチルオキシシラン、ビニルメトキシジオクチルオキシシラン、ビニルメトキシジラウリルオキシシラン、ビニルジメトキシラウリルオキシシランならびにポリエチレングリコール変性されたビニルシランである。
【0028】
式(2)のエチレン系不飽和珪素化合物として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス−(1−メトキシ)−イソプロポキシシラン、メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシランおよびメタクリルオキシメチルトリメトキシシランならびにこれらの混合物が特に好ましい。
【0029】
付加的に、前記複合体粒子を製造するための縮合の場合には、一般式(3)CH2=CR11−CO−NR12−R13−SiR14−(R153-mの1つ以上のエチレン系不飽和珪素化合物が使用され、上記式中、nは、0〜4であり、mは、0〜2であり、R11は、Hまたはメチル基であり、R12は、Hまたは1〜5個のC原子を有するアルキル基であり、R13は、1〜5個のC原子を有するアルキレン基または2価の有機基であり、この場合、炭素鎖は、O原子またはN原子によって中断されており、R14は、1〜5個のC原子を有するアルキル基であり、R15は、1〜40個のC原子を有するアルコキシ基であり、このアルコキシ基は、さらにヘテロ環で置換されてよい。2個以上の基R11またはR15が現れる、式(3)の珪素化合物において、これらの基は、同一でも異なっていてもよい。
【0030】
式(3)の珪素化合物の例は、次の通りである:
3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、3−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−2−メチルエチルトリメトキシシラン、N−(2−(メタ)アクリルアミド−エチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリアセトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−エチル−トリメトキシシラン、1−(メタ)アクリルアミド−メチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルジメチルメトキシシラン、3−(N−メチル−(メタ)アクリルアミド)−プロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−プロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチル−N−トリメトキシシリルプロピル−3−(メタ)アクリルアミド−プロピルアンモニウムクロリドおよびN,N−ジメチル−N−トリメトキシシリルプロピル−2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルアンモニウム−クロリド。
【0031】
本発明による方法で使用される縮合生成物β)は、特に、一般式
1xSi(OR)y(4-x-y)/2 (4)
〔式中、
xは、0、1、2または3であり、yは、0、1または2であり、但し、総和は、x+y≦3であるものとし、
1は、同一でも異なっていてもよく、式(1)の上記の意味を取ることができ、Rは、同一でも異なっていてもよく、式(1)の上記の意味を取ることができる]で示される単位から構成されているオルガノポリシロキサンである。
【0032】
基RまたはR1としては、式(1)に相応して上記されたのと同一の基が好ましく、特に好ましく、および最も有利である。
【0033】
オルガノポリシロキサンの粒度は、特に4〜900nm、特に有利に4〜40nm、最も有利には4〜30nmである(トランス電子顕微鏡検査法(Transelektronen-mikroskopie)を用いて測定した;Zeiss社の機器Libra 120を用いた)。
【0034】
以下、珪素化合物α)、縮合生成物β)ならびに式(2)および(3)の珪素化合物は、共通して珪素成分とも呼称される。
【0035】
前記複合体粒子を製造する場合、珪素成分の割合は、それぞれ可溶性重合体および珪素成分の全体で使用した量の乾燥質量に対して、特に2〜97質量%、特に有利に20〜95質量%、最も有利には40〜65質量%である。
【0036】
珪素化合物α)または縮合生成物β)は、総じて複合体粒子の製造の際に、それぞれ全体で使用された量の珪素成分の乾燥質量に対して特に20〜100質量%、特に有利に60〜80質量%が使用される。
【0037】
式(2)または(3)の珪素化合物は、それぞれ互いに独立に、それぞれ全体で使用された量の珪素成分の乾燥質量に対して特に0〜40質量%が使用される。
【0038】
珪素成分は、市販製品であるか、または通常の方法で製造しうる、例えばNoll, Chemie und Technologie der Silikone, 第2版, 1968, Weinheim、またはHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第E20卷, Georg Thieme Verlag, Stuttgart (1987)に記載されたものである。
【0039】
本発明による方法のための溶剤として、水または場合によっては水と組み合わせた有機溶剤、または場合によっては水と組み合わせた多数の有機溶剤からなる溶剤混合物は、使用されてよい。溶剤として、または溶剤混合物の成分としての水の使用は、必ずしも必要ではない。それというのも、商業的に入手可能な出発材料を含有する残留水は、本発明による方法の実施にとって十分であるからである。
【0040】
適した有機溶剤は、例えば1〜6個のC原子を有するアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノールまたはイソプロパノール、ケトン、例えばアセトンまたはメチルエチルケトン、エステル、例えばメチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテートまたはブチルアセテートである。好ましい溶剤は、水またはイソプロパノールである。
【0041】
好ましい溶剤は、水またはイソプロパノールである。
【0042】
可溶性重合体は、それぞれの本発明による溶剤または溶剤混合物中で1〜100℃、特に20〜60℃の温度範囲内の任意の温度および2〜12の任意のpH値で、特に溶剤または溶剤混合物1リットル当たり少なくとも1gが溶解している。10質量%の可溶性重合体の固体含量を有する本発明による溶液は、特に600EBCの混濁度を有する(Metrisa GmbH社のモデルTA6FS/モデル251の濁度測定器で測定した、DIN 38404に記載のホルマジン標準による)。前記の溶解度の性質のために、可溶性重合体の分離および凝集は、複合体粒子の製造の進行中に停止される。
【0043】
カルボン酸基の誘導体は、例えばエステル、アミド、ニトリルまたは無水物である。
【0044】
単量体a)の好ましい官能基は、カルボン酸基またはその誘導体、例えばエステル、アミド、ニトリルまたは無水物、シラン基、スルホン酸基、エポキシ基、エーテル基、ヒドロキシ基またはCO基を含む群から選択される。
【0045】
通常、単量体a)は、2〜15個のC原子を有する。
【0046】
単量体a)の例は、エチレン系不飽和モノカルボン酸およびエチレン系不飽和ジカルボン酸、特にアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸およびマレイン酸;エチレン系不飽和カルボン酸アミドおよびエチレン系不飽和カルボン酸ニトリル、特にアクリルアミドおよびアクリルニトリル;フマル酸およびマレイン酸のモノエステルおよびジエステル、例えばジエチルエステルおよびジイソプロピルエステル、ならびに無水マレイン酸、エチレン系不飽和スルホン酸またはその塩、特にビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、エチレン系不飽和エポキシド、例えばグリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレート;エチレン系不飽和シラン、例えば上記式(2)または(3)の珪素化合物、例えばアクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)−シランまたはメタクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)−シラン、ビニルトリアルコキシシランまたはビニルメチルジアルコキシシラン、この場合アルコキシ基として、例えばメトキシ−、エトキシ−およびエトキシプロピレングリコールエーテル基を含有していてよく;エチレン系不飽和ヒドロキシ−またはケト化合物、例えばメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルおよびアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、例えばヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−またはヒドロキシブチルアクリレートまたは−メタクリレートならびにジアセトンアクリルアミドおよびアセチルアセトキシエチルアクリレートまたは−メタクリレートのような化合物;またはビニルエーテル、例えばメチル−、エチル−またはイソブチルビニルエーテルである。
【0047】
特に好ましい単量体a)は、エチレン系不飽和モノカルボン酸、例えば殊にメタクリル酸またはアクリル酸、ビニルトリアルコキシシラン、例えば殊にビニルトリエトキシシラン、ヒドロキシエチル−またはヒドロキシプロピルアクリレートまたは−メタクリレートである。
【0048】
可溶性重合体の製造のために、全体的に可溶性重合体を製造するための重合の際に使用される単量体の全質量に対して、単量体a)が特に0.1〜30質量%、特に有利に3〜30質量%、最も有利には6〜15質量%使用される。
【0049】
単量体a)としてエチレン系不飽和シランを使用する場合には、このシランは、可溶性重合体を製造するための重合の際に全体的に使用される単量体の全質量に対して特に0.1〜5質量%、特に有利に0.3〜2質量%が使用される。
【0050】
単量体b)の中で有利なビニルエステルは、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニル−2−エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、1−メチルビニルアセテート、ビニルピバレート、および5〜15個のC原子を有するα位で分枝したモノカルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa9またはVeoVa10R(Shell社の商品名)である。酢酸ビニルが特に好ましい。
【0051】
アクリル酸エステルの好ましいメタクリル酸エステルは、1〜15個のC原子を有する非分枝鎖状または分枝鎖状のアルコール、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノルボルニルアクリレートである。特に好ましいのは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートである。
【0052】
好ましいオレフィンまたはジエンは、エチレン、プロピレンおよび1,3−ブタジエンである。好ましいビニル芳香族化合物は、スチレンおよびビニルトルエンである。1つの好ましいビニルハロゲン化物は、塩化ビニルである。
【0053】
即ち、好ましい単量体b)は、単量体a)を含まない。
【0054】
適した可溶性重合体の例は、それぞれカルボン酸基またはその誘導体、例えばエステル、アミド、ニトリルまたは無水物、シラン基、スルホン酸基、エポキシ基、エーテル基、ヒドロキシ基またはCO基を含む群から選択された1つ以上の他の官能基を有する1つ以上の異なる単位の単量体a)を含有する、(メタ)アクリレート重合体、スチレン−(メタ)アクリレート重合体、ビニルエステル重合体である。
【0055】
可溶性重合体として、エチレン系不飽和カルボン酸、アクリル酸またはメタクリル酸6〜15質量%および場合によってはエチレン系不飽和シラン、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメトキシジメトキシシランまたはビニルメチルジエトキシシラン、エチレン系不飽和シラン、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランまたはビニルメトキシジエトキシシラン0.3〜2質量%を有するビニルエステル、殊にビニルアセテートの重合体を有するビニルエステル、殊にビニルアセテートの重合体が好ましく、この場合質量%での記載は、それぞれ100質量%にまで加算される。
【0056】
可溶性重合体としては、エチレン系不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸またはメタクリル酸6〜15質量%、および場合によってはエチレン系不飽和シラン、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランまたはビニルメチルジエトキシシラン0.3〜2質量%を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体;エチレン系不飽和シラン、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランまたはビニルメチルジエトキシシラン0.3〜2質量%を有する(メタ)アクリル酸エステル、例えばメチル(メタ)アクリレートおよび/またはn−ブチル(メタ)アクリレートの重合体も好ましく、この場合質量%での記載は、それぞれ100質量%にまで加算される。
【0057】
この場合、単量体の選択またはコ単量体の全質量分の選択は、一般に−50℃〜+50℃、特に−30℃〜+40℃のガラス転移温度Tgが生じるように行なわれる。前記重合体のガラス転移温度Tgは、公知方法で示差走査熱分析(DSC)により測定されることができる。このTgは、フォックス方程式(Fox-Gleichung)により近似的に見積もることもできる。Fox T. G., Bull. Am. Physics Soc. 1,3, 第123頁(1956)の記載によれば、次のものが適用される:1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+...+xn/Tgn、この場合xnは、単量体nの質量分数を表わし、Tgnは、単量体nのホモ重合体のケルビンでのガラス転移温度である。ホモ重合体のTg値は、Polymer Handbook 第2版, J. Wiley & Sons, New York (1975)に記載されている。
【0058】
単量体a)およびb)を基礎とする可溶性重合体は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第102006050336号明細書に記載されているように、当業者に公知の懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法または特に乳化重合法により製造されることができる。乳化重合法は、特に3〜6のpH値で実施される。
【0059】
単量体a)およびb)を基礎とする可溶性重合体に加えて、本発明による方法において官能化された、部分鹸化または完全鹸化されたポリビニルアルコールを使用することができ、このポリビニルアルコールは、単量体単位b)が専らまたは部分的にビニルエステルに由来する可溶性重合体を鹸化することによって得られる。官能化された、部分鹸化または完全鹸化されたポリビニルアルコールは、常法により、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10140131号明細書の記載と同様にビニルエステル単位を含有する可溶性重合体をアルコール性溶液中で鹸化することによって製造される。
【0060】
単量体a)およびb)を基礎とする可溶性重合体に加えて、本発明による方法においてシラン変性されたポリビニルアルコールが使用されてもよく、このポリビニルアルコールは、ビニルアルコール重合体を式(2)または(3)の1つ以上の珪素化合物で、高められた温度、例えば30℃≧または特に50℃〜100℃で処理することによって得られる。特に、ビニルアルコール重合体の質量に対して式(2)または(3)の珪素化合物1〜25質量%が使用される。この種のシラン変性されたポリビニルアルコールおよびその製造は、WO−A2007/057382に記載されている。シラン変性されたポリビニルアルコールの製造に使用されるビニルアルコール重合体は、単量体b)で列挙された1つ以上のビニルエステル、特にビニルアセテートを基礎とするビニルエステル、ならびに場合によってはビニルエステルとは異なる1つ以上の他の単量体b)および場合によっては1つ以上の単量体a)を鹸化することによって得られる。
【0061】
シラン変性されたポリビニルアルコールを製造するためのビニルアルコール重合体の処理にかけるためには、縮合反応に対しても相応して上記された、式(2)または(3)の同一の珪素化合物が有利である。好ましい官能化された、部分鹸化または完全鹸化されたポリビニルアルコールは、例えばビニルアルコール重合体をビニルトリメトキシシランまたはビニルトリエトキシシランで処理することによって得られる。
【0062】
シラン変性されたポリビニルアルコールを製造するのに適した、官能化された、部分鹸化または完全鹸化されたポリビニルアルコールまたはビニルアルコール重合体は、特に50モル%〜99.99モル%、特に有利に70モル%〜99モル%、最も有利には96モル%以上のビニルエステル単位の加水分解度を有する。この場合、加水分解度が96モル%以上である重合体は、完全鹸化された重合体と呼称される。部分鹸化されたビニルエステル重合体とは、加水分解度が50モル%超で96モル%未満である重合体を表わす。
【0063】
単量体a)およびb)を基礎とする可溶性ポリマーに加えて、本発明による方法において、官能化されたポリビニルアセタールも使用されてよく、この官能化されたポリビニルアセタールは、官能化された、部分鹸化または完全鹸化されたポリビニルアルコールを部分的または完全にアセタール化することによって得られる。官能化されたポリビニルアセタールは、常法により、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10140131号明細書の記載と同様に、前記ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することによって製造される。
【0064】
1〜15個のC原子を有する脂肪族アルデヒドの群からの好ましいアルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドおよび最も有利にはブチルアルデヒド、またはブチルアルデヒドとアセトアルデヒドとからなる混合物である。芳香族アルデヒドとしては、例えばベンズアルデヒドまたはその誘導体を使用することができる。
【0065】
官能化されたアセトアルデヒドのアセタール化は、アルデヒドの使用される量によって調節されることができる。それというのも、アセタール化は、殆んど完全な変換率で進行するので、添加量は、簡単な化学量論的計算によって定めることができる。
【0066】
単量体a)およびb)を基礎とする可溶性重合体に加えて、天然の重合体または化学的または物理的に変性された天然の重合体を使用することもできる。天然の重合体の例は、セルロース、澱粉、キサンタンまたはポリラクチドである。
【0067】
前記複合体粒子を製造する場合、可溶性重合体の割合は、それぞれ可溶性重合体および珪素成分の全体で使用した量の乾燥質量に対して、特に3〜98質量%、特に有利に5〜80質量%、最も有利には35〜60質量%である。
【0068】
本発明による方法において、珪素成分ならびに可溶性重合体は、純粋な形で使用されてもよいし、または溶剤中で使用されてもよい。珪素成分ならびに可溶性重合体は、縮合のために溶剤中に完全に装入されていてよい。他の選択可能な方法によれば、珪素成分の一部分ならびに可溶性重合体は、縮合のために装入されていてよく、珪素成分および可溶性重合体の残存する残基は、縮合中に添加されてよい。珪素成分を全部または一部分装入し、可溶性重合体を時間的に後に添加する場合には、珪素成分は、予め縮合することができ、その後にその際に形成された粒子は、可溶性重合体上に固定される。特に、可溶性重合体は、溶剤中または溶剤混合物中に装入され、珪素成分は、純粋な形で全部または一部分が縮合中に添加される。
【0069】
縮合中の温度は、特に1〜100℃、特に有利に10〜80℃、最も有利には20〜60℃である。縮合の反応時間は、特に4〜24時間、特に有利に5〜12時間である。
【0070】
複合体粒子を製造するための方法は、特に2〜12のpH値、特に有利に7〜12のpH値、最も有利には8〜10のpH値で実施される。1個以上のエポキシ基を有する、式(1)の珪素化合物が使用される場合には、複合体粒子は、4〜7のpH値で製造される。
【0071】
pH値は、公知方法で有機酸または無機酸、塩基または緩衝液によって、例えば塩酸、アンモニウムまたはアルカリ金属水酸化物、例えば苛性ソーダ液の添加によって調節されることができる。記載された珪素化合物がアミノ基、アンモニウム基、カルボン酸基または燐酸基を有する限り、pH値は、式(1)の珪素化合物および場合によっては式(3)の珪素化合物によっても調節されることができる。特に、多価イオン、例えば多荷電金属イオン、例えばアルカリ土類金属イオンが酸、塩基または緩衝液として複合体粒子中に導入され、それというのも、この種のイオンは、複合体粒子の凝集、ひいては複合体粒子のゲル化を導きうるからである。
【0072】
記載された酸、塩基または緩衝液は、式(1)の珪素化合物および場合によっては式(2)および(3)の縮合のための触媒として使用されてもよい。
【0073】
縮合中、乳化剤を使用することができる。縮合を乳化剤の存在下で実施する場合には、この乳化剤の量は、固体含量に対して特に1〜5質量%である。適当な乳化剤は、アニオン性、カチオン性ならびに非イオン性の乳化剤、例えばアニオン性乳化剤、例えば8〜18個のC原子を有するアルキルスルフェート、疎水性基中に8〜18個のC原子および40個までのエチレンオキシド単位またはプロピレンオキシド単位を有するアルキルスルフェートまたはアルキルアリールスルフェート、8〜18個のC原子を有するアルキルスルホネートまたはアルキルアリールスルホネート、スルホコハク酸と1価のアルコールまたはアルキルフェノールとのエステルおよび半エステル、または非イオン性界面活性剤、例えば8〜40個のエチレンオキシド単位を有するアルキルポリグリコールエーテルまたはアルキルアリールポリグリコールエーテルである。特に、縮合前、縮合中または縮合後には、乳化剤は、添加されない。
【0074】
こうして得られた複合体粒子は、分散液の形で存在し、特に10〜65質量%、特に有利に10〜50質量%、殊に有利に20〜40質量%、最も有利には、25〜35質量%の固体含量を有する。
【0075】
縮合反応の終結後、副生成物、未反応の出発物質、溶剤またはその他の揮発性物質は、蒸留により、特に減圧下で、および場合によっては連行ガス、例えば空気、窒素または水蒸気の導通下または通過下に除去されることができる。
【0076】
前記複合体粒子を粉末の形で製造するために、複合体粒子の分散液は、場合によっては乾燥助剤としての保護コロイドの添加下に乾燥される。適した乾燥方法は、例えば渦動床乾燥法、ロール乾燥法、凍結乾燥法または噴霧乾燥法である。適した乾燥助剤は、例えば上記の可溶性重合体である。特に、ポリビニルアルコールは、乾燥助剤として使用される。特に、水性混合物は、噴霧乾燥される。この場合、噴霧乾燥は、通常の噴霧乾燥装置中で行なわれ、その際に噴霧は、一物質流ノズル、二物質流ノズルまたは多物質流ノズルを用いて行なうことができるか、または回転円板を用いて行なうことができる。出口温度は、一般に45℃〜120℃の範囲内、有利に60℃〜90℃で選択される。
【0077】
乾燥の場合、しばしば、重合体成分に対して1.5質量%までの含量の消泡剤は、有利であることが判明した。ブロッキング安定性の改善による貯蔵能力の向上のために、殊に、低いガラス転移温度を有する粉末の場合には、得られる粉末は、ブロッキング防止剤(Antibackmittel)を、重合体成分の全質量に対して特に30質量%まで備えていてよい。ブロッキング防止剤の例は、特に10nm〜100μmの範囲内の粒度を有する炭酸Caもしくは炭酸Mg、タルク、石膏、珪酸、例えば高分散性珪酸、カオリン、メタカオリン、か焼されたカオリン、珪酸塩である。
【0078】
噴霧すべき分散液の粘度は、固体含量に関して、1500mPa・s未満の値(20回転および23℃でのブルックフィールド粘度)、有利に500mPa・s未満が得られるように調節される。
【0079】
使用技術的性質を改善するために、複合体粒子には、他の添加剤が添加されてよい。前記複合体粒子の好ましい実施態様において含まれる他の成分は、例えば結合剤、顔料、充填剤、例えばゼオライト、気泡安定剤、疎水性化剤または気泡形成剤である。特に、前記添加剤は、乾燥中または乾燥後に分散液に添加される。
【0080】
こうして得られた、粉末の形での複合体粒子は、引続く粉砕および/または再分散によって水、有機溶剤または反応性希釈剤中に望ましい形でもたらすことができる。反応性希釈剤としては、例えば単量体a)または単量体b)の項目に上記されたエチレン系不飽和物質種およびエチレン系不飽和化合物が適している。好ましい反応性希釈剤は、エチレン系不飽和芳香族化合物、例えばスチレン、(メタ)アクリレート、例えばエチレングリコールジメチルアクリレート、またはエポキシドである。
【0081】
更に、本発明の対象は、
α)一般式
(RO)nSiR14-n (1)
〔式中、Rは、1〜20個の炭素原子を有する、場合によっては置換されたアルキル−、アリール−またはアルコキシアルキル基または水素原子を表わし、
1は、1〜12個の炭素原子を有する、場合によっては置換された炭化水素基または水素原子を表わし、および
nは、2〜4の値である〕で示されるα)1つ以上の珪素化合物、または
β)式(1)の珪素化合物の1つ以上の縮合生成物を溶剤中または複数の溶剤の混合物中で1つ以上の可溶性重合体の存在下で縮合させることによって得られる複合体粒子であり、
この場合、可溶性重合体は、カルボン酸基またはその誘導体、シラン基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスフェート基、ホスホネート基、イソシアネート基、アミン基、第4アミン基、ヒドラジン基、エポキシ基、エーテル基、ヒドロキシ基またはCO基から選択された1個以上の他の官能基を有する、a)1つ以上のエチレン系不飽和単量体、および
1〜15個のC原子を有するカルボン酸のビニルエステル、1〜15個のC原子を有する、カルボン酸と非分枝鎖状または分枝鎖状のアルコールとのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル、オレフィンおよびジエン、ビニル芳香族化合物およびビニルハロゲン化物を含む群から選択された、b)1つ以上のエチレン系不飽和モノマーのラジカル的に開始される重合によって得られ、
その際、この場合に形成された、珪素化合物α)の縮合生成物または縮合生成物β)、またはこれらの縮合生成物は、1つ以上の可溶性重合体上に固定される。
【0082】
殊に、可溶性重合体の単量体単位a)の官能基は、無機粒子の固定を導く。この場合、この固定は、本質的に化学的相互作用、例えば共有結合、または物理的相互作用、例えばイオン結合または水素架橋結合に基づく。無機粒子は、本質的にランダムな分布でそれぞれの複合体粒子の可溶性重合体の重合体鎖上に固定されている。
【0083】
複合体粒子は、特に20〜2000mPasの粘度を有する(水中の25%溶液としての25℃でのブルックフィールド粘度)。
【0084】
10質量%の固体含量を有する水性分散液の形の複合体粒子は、特に700EBC以下、特に有利に600EBC以下、殊に有利に400EBC以下、最も有利には200EBC以下の濁度を有する(Metrisa GmbH社の濁度測定器:TA6FS/モデル251を用いての室温でのDIN 38404に記載のホルマジン標準による測定)。
【0085】
複合体粒子の無機ドメインは、特に5nm〜800nm、特に有利に5nm〜50nm、最も有利には5nm〜30nmの平均粒度を有する(トランス電子顕微鏡検査法(Transelektronen-mikroskopie)を用いて測定した;Zeiss社の機器Libra 120を用いた)。
【0086】
本発明による縮合の進行中に、記載された珪素化合物の加水分解可能または縮合可能な結合の全体数に対して、式(1)および場合によっては式(2)および(3)の珪素化合物の加水分解可能な結合または縮合可能な結合の特に30%以上、特に有利に40%以上、最も有利に70〜80%は、可溶性重合体または使用された珪素化合物、またはこれらの縮合生成物と結合される。加水分解可能な結合は、殊に式(1)のアルコキシ基ROまたは式(2)のアルコキシ基OR9である。縮合可能な結合は、殊に珪素原子に結合したOH基である。
【0087】
本発明による複合体粒子は、有機溶剤、反応性希釈剤または水中で安定であるか、または粉末の形で安定であり、また、安定剤、乳化剤または保護コロイドの添加なしで安定である。
【0088】
複合体粒子は、結合剤、補助結合剤または種々の生成物の使用技術的性質を改善させるための添加剤として適している。被覆剤または接着剤中での複合体粒子の使用によって、例えばこれら被覆剤または接着剤の熱安定性または耐引掻性は、向上されうる。その上、複合体粒子を含有する接着剤は、しばしば改善された流れ挙動ならびに高められた温度で安定したE弾性率を示し、塗布後に、例えば剥ぎ取り可能な接着剤被膜を生じる。複合体粒子を含有する被覆剤を用いると、被覆に艶消し効果を装備することができる。同様に、例えばプラスチック材料、複合体建築部材または包装材料を製造するため、粉末塗料、プラスチック材料および複合体材料のための配合物中への複合体粒子の使用は、好ましい。複合体粒子は、合成材料または天然材料、例えば繊維または粒子、例えば特に岩石、木材、皮革、紙、繊維、プラスチック、例えばプラスチックフィルムのための表面処理に適している。この場合、複合体粒子は、例えば付着強化のためのプライマー、バリヤー層、耐蝕層または防汚性のもとして作用する。防汚性の効果は、殊にカーペットまたは陳列製品への相応する使用の際に有利に利用されることができる。複合体粒子を用いると、木材、プラスチック、皮革および紙のための燃焼困難な被覆が製造されてもよい。岩石は、固結されていてもよいし、調製されていてもよい。包装産業の製品において、複合体粒子の添加によってガスバリヤーが形成されていてよい。
【0089】
次の実施例は、本発明の詳細な説明に使用されるが、決してこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0090】
実施例:
可溶性重合体の製造:
重合体1:
3リットルの容積を有する反応器中に、脱イオン化水839.4g、ナトリウムラウリルスルフェート3.1g、カリウムペルオキシドスルフェート0.93gを窒素雰囲気中で装入し、撹拌下に40℃に加熱する。この温度の場合、次の組成の混合物が反応器中に供給された:
ビニルトリエトキシシラン0.7g、
メタクリル酸11.9g、
ブチルアクリレート66.8g、
ドデシルメルカプタン1.0g、
メチルメタクリレート69.0g。
【0091】
引続き、温度を80℃に上昇させた。この温度の達成後、開始剤溶液(水98g中のカリウムペルオキソジスルフェート0.93g)を3時間で供給し、同時に別個に2.5時間で次の組成を有する溶液を反応器中に供給した:
ビニルトリエトキシシラン:2.3g
メタクリル酸:37.6g
ブチルアクリレート:211.5g
ドデシルメルカプタン:3.3g
メチルメタクリレート:218.5g。
【0092】
供給の終結後、80℃で2時間および85℃で1時間攪拌した。引続き、重合体分散液を水で希釈し、アンモニア水溶液(12.5%の)でpH値を9に調節した。20質量%の固体含量を有する重合体溶液を得た。水中の重合体の10質量%の溶液は、室温で600EBC未満の濁度を有していた(DIN 38404に記載のホルマジン標準による;Metrisa GmbH社のモデルTA6FS/モデル251の濁度測定器で測定した)。
【0093】
重合体2:
実施例と同様であるが、しかし、ビニルトリエトキシシランは使用しなかった。水中の重合体の10質量%の溶液は、室温で600EBC未満の濁度を有していた(DIN 38404に記載のホルマジン標準による;Metrisa GmbH社のモデルTA6FS/モデル251の濁度測定器で測定した)。
【0094】
重合体3:
装入液を窒素雰囲気下で攪拌しながら(100rpm)還流温度(75℃〜80℃)に加熱した。還流温度を達成してから15分後に、第三ブチルペルオキシピバレート1.5g(PPV)を添加した。還流温度を達成してから45分後に、溶液1と溶液2を別々にそれぞれ225分間で反応器中に計量供給した。
装入液:イソプロパノール707.5g、
ビニルアセテート71.7g、
ビニルトリエトキシシラン0.35g、
PPV0.84g。
溶液1:ビニルアセテート671.6g、
ビニルトリエトキシシラン3.35g。
溶液2:イソプロパノール36.4g、
PPV8.4g。
【0095】
計量供給が終結してから30分後に、PPV2.0gを添加し、なおさらに2時間、還流時に攪拌した。室温への冷却後、50質量%の固体含量を有する重合体溶液を得た。イソプロパノール中の重合体の10質量%の溶液は、室温で600EBC未満の濁度を有していた(DIN 38404に記載のホルマジン標準による;Metrisa GmbH社のモデルTA6FS/モデル251の濁度測定器で測定した)。
【0096】
ポリシロキサンの製造:
ポリシロキサン1:
水500gとテトラエトキシシラン200gとからなる混合物を撹拌下に30℃で製造し、pH値をアンモニアで9に調節した。2時間後に、澄明な溶液が生じた。この溶液を30℃でさらに8時間攪拌した。引続き、揮発性成分および水の一部分を減圧下で60℃で留去し、分散液を室温に冷却し、濾過した(目開き70μm)。こうして得られた分散液は、安定であり、均一であり、かつ斑点不含であった。
【0097】
ポリシロキサン2:
水500gとテトラエトキシシラン200gとトリメチルエトキシシラン30gとからなる混合物を撹拌下に30℃で製造し、pH値をアンモニアで9に調節した。2時間後に、澄明な溶液が生じた。この溶液を30℃でさらに8時間攪拌した。引続き、揮発性成分および水の一部分を減圧下で60℃で留去し、分散液を室温に冷却し、濾過した(目開き70μm)。こうして得られた分散液は、安定であり、均一であり、かつ斑点不含であった。
【0098】
水性分散液の形の複合体粒子の製造
実施例1:
二重ジャケット反応器中に室温で撹拌下に重合体1の20%の重合体水溶液900gを装入し、水197gを供給し、pH値を(12.5%の)アンモニア水溶液で9に調節した。この重合体水溶液を35℃に加熱し、10分間の攪拌後、メチルトリエトキシシラン255gおよびトリメチルエトキシシラン35gを20分間で供給した。この重合体水溶液を35℃で4時間攪拌し、引続き60℃で2時間攪拌した。最終的に、この反応混合物の揮発性成分および水の一部分を20ミリバールの圧力および60℃の温度で留去した。複合体粒子の安定した、均一な斑点不含の分散液が得られた。複合体粒子は、120mPasの粘度を有していた(水中の25%溶液としての25℃でのブルックフィールド粘度)。水中の10質量%の固体含量を有する複合体粒子の分散液は、室温で600EBC未満の濁度を有していた(DIN 38404に記載のホルマジン標準による;Metrisa GmbH社のモデルTA6FS/モデル251の濁度測定器で測定した)。複合体粒子の無機ドメインは、20nm未満の平均粒度を有していた(Zeiss社の機器トランス電子顕微鏡(Transelektronenmikroskop)Libra 120を用いて測定した)。
【0099】
実施例2:
実施例1と同様ではあるが、しかし、メチルトリエトキシシランおよびトリメチルエトキシシランの代わりにメチルトリエトキシシラン261gおよび(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン29gを使用した。
【0100】
複合体粒子の安定した、均一な斑点不含の分散液が得られた。複合体粒子は、190mPasの粘度を有していた(水中の25%溶液としての25℃でのブルックフィールド粘度)。水中の10質量%の固体含量を有する複合体粒子の分散液は、室温で600EBC未満の濁度を有していた(DIN 38404に記載のホルマジン標準による;Metrisa GmbH社のモデルTA6FS/モデル251の濁度測定器で測定した)。複合体粒子の無機ドメインは、20nm未満の平均粒度を有していた(Zeiss社のトランス電子顕微鏡(Transelektronenmikroskop)Libra 120を用いて測定した)。
【0101】
実施例3:
実施例1と同様ではあるが、しかし、メチルトリエトキシシランおよびトリメチルエトキシシランの代わりにメチルトリエトキシシラン261gおよび(3−グリシドオキシプロピル)トリエトキシシラン29gを使用した。複合体粒子の安定した、均一な斑点不含の分散液が得られた。
【0102】
複合体粒子は、2000mPasの粘度を有していた(水中の30%溶液としての25℃でのブルックフィールド粘度)。水中の10質量%の固体含量を有する複合体粒子の分散液は、室温で600EBC未満の濁度を有していた(DIN 38404に記載のホルマジン標準による;Metrisa GmbH社のモデルTA6FS/モデル251の濁度測定器で測定した)。複合体粒子の無機ドメインは、20nm未満の平均粒度を有していた(Zeiss社のトランス電子顕微鏡(Transelektronenmikroskop)Libra 120を用いて測定した)。
【0103】
実施例4:
実施例1と同様ではあるが、しかし、重合体1の重合体水溶液の代わりに重合体2の重合体水溶液を使用した。複合体粒子の安定した、均一な斑点不含の分散液が得られた。
【0104】
複合体粒子は、250mPasの粘度を有していた(水中の30%溶液としての25℃でのブルックフィールド粘度)。水中の10質量%の固体含量を有する複合体粒子の分散液は、室温で600EBC未満の濁度を有していた(DIN 38404に記載のホルマジン標準による;Metrisa GmbH社のモデルTA6FS/モデル251の濁度測定器で測定した)。複合体粒子の無機ドメインは、20nm未満の平均粒度を有していた(Zeiss社のトランス電子顕微鏡(Transelektronenmikroskop)Libra 120を用いて測定した)。
【0105】
実施例5:
二重ジャケット反応器中に撹拌下にイソプロパノール中の重合体3の50%の溶液400gを装入し、イソプロパノール400gを添加し、60℃に加熱した。60℃で10分間の攪拌後、メチルトリエトキシシラン110gおよびα−メタクリラトメト−トリメトキシシラン35gを20分間で供給した。供給の終結後、60℃でさらに14時間攪拌した。引続き、揮発性成分およびイソプロパノールの一部分を20ミリバールの圧力および60℃の温度で留去した。複合体粒子の安定した、均一な斑点不含の分散液が得られた。複合体粒子は、280mPasの粘度を有していた(水中の30%溶液としての25℃でのブルックフィールド粘度)。複合体粒子の無機ドメインは、30nm未満の平均粒度を有していた(Zeiss社のトランス電子顕微鏡(Transelektronenmikroskop)Libra 120を用いて測定した)。
【0106】
比較例6:
安定性試験:ポリシロキサン1の分散液50gを75℃で15分間維持し、引続き鏡検下で凝集に関連して検査した。粒子の強力な凝集が確認された。
【0107】
比較例7:
安定性試験:ポリシロキサン2の分散液50gを75℃で15分間維持し、引続き鏡検下で凝集に関連して検査した。粒子の強力な凝集が確認された。
【0108】
実施例8:
二重ジャケット反応器中にポリシロキサン1の分散液500g(FG=40質量%)および重合体1の20%の水溶液1500gを装入し、pH値をアンモニアで9に調節し、撹拌下に50℃に加熱した。50℃で6時間後、揮発性成分および水の一部分を減圧下で60℃で留去し、分散液を室温に冷却し、濾過した(目開き70μm)。複合体粒子の安定した、均一な斑点不含の分散液が得られた。
【0109】
複合体粒子は、900mPasの粘度を有していた(水中の30%溶液としての25℃でのブルックフィールド粘度)。複合体粒子の無機ドメインは、20nm未満の平均粒度を有していた(Zeiss社のトランス電子顕微鏡(Transelektronenmikroskop)Libra 120を用いて測定した)。
【0110】
熱安定性の試験のために、得られた分散液50gを75℃で30分間維持し、引続き鏡検下で複合体粒子の凝集に関連して試験した。凝集物の形成は、全く起こらなかった。
【0111】
実施例9:
二重ジャケット反応器中にポリシロキサン2の分散液500g(FG=40質量%)および重合体1の20%の水溶液1500gを装入し、pH値をアンモニアで9に調節し、撹拌下に50℃に加熱した。50℃で6時間後、揮発性成分および水の一部分を減圧下で60℃で留去し、分散液を室温に冷却し、濾過した(目開き70μm)。
【0112】
複合体粒子の安定した、均一な斑点不含の分散液が得られた。複合体粒子は、1200mPasの粘度を有していた(水中の30%溶液としての25℃でのブルックフィールド粘度)。複合体粒子の無機ドメインは、20nm未満の平均粒度を有していた(Zeiss社のトランス電子顕微鏡(Transelektronenmikroskop)Libra 120を用いて測定した)。熱安定性の試験のために、得られた分散液50gを75℃で30分間維持し、引続き鏡検下で複合体粒子の凝集に関連して試験した。凝集物の形成は、全く起こらなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合体粒子の製造法において、
α)一般式
(RO)nSiR14-n (1)
〔式中、
Rは、1〜20個の炭素原子を有する、場合によっては置換されたアルキル基またはアリール基、または水素原子を表わし、
1は、場合によっては置換された炭化水素基または水素原子を表わし、および
nは、1〜4の値である〕で示される1つ以上の珪素化合物、または
β)式(1)の珪素化合物の1つ以上の縮合生成物を溶剤または多数の溶剤の混合物中で1つ以上の可溶性重合体の存在下で縮合させ、
この場合、可溶性重合体は、カルボン酸基またはその誘導体、シラン基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスフェート基、ホスホネート基、イソシアネート基、アミン基、第4アミン基、ヒドラジン基、エポキシ基、エーテル基、ヒドロキシ基またはCO基を含む群から選択された1個以上の他の官能基を有する、a)1つ以上のエチレン系不飽和モノマーおよび
1〜15個のC原子を有するカルボン酸のビニルエステル、1〜15個のC原子を有する、カルボン酸と非分枝鎖状または分枝鎖状のアルコールとのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル、オレフィンおよびジエン、ビニル芳香族化合物およびビニルハロゲン化物を含む群から選択された、b)1つ以上のエチレン系不飽和モノマーのラジカル的に開始される重合によって得られ、
その際、この場合に形成された、珪素化合物α)の縮合生成物または縮合生成物β)、またはこれらの縮合生成物は、1つ以上の可溶性ポリマー上に固定されることを特徴とする、複合体粒子の製造法。
【請求項2】
縮合生成物として、一般式
1xSi(OR)y(4-x-y)/2 (4)
〔式中、
xは、0、1、2または3であり、yは、0、1または2であり、但し、総和は、x+y≦3であるものとし、
1は、同一でも異なっていてもよく、場合によっては置換された炭化水素基または水素原子を表わし、
Rは、同一でも異なっていてもよく、1〜20個の炭素原子を有する、場合によっては置換されたアルキル−またはアリール基、または水素原子を表わす〕で示される単位から構成されているβ)オルガノポリシロキサンを使用する、請求項1記載の複合体粒子の製造法。
【請求項3】
基R1は、基R2が1〜20個の炭素原子、有利に1〜6個の炭素原子を有する、場合によっては置換されたアルキレン基を表わす基R2Xを表わし、この場合互いに隣接していないメチレン単位は、基−O−によって置換されていてよく、
Xは、1個の共有結合により基R2に結合されており、アミノ基、NHR3、エポキシ基CR4(O)CR56、ウレタン基NR3−C(=O)OR3、尿素基NR3−C(=O)NR34、燐酸基P(=O)(OH)2、無水物基C(=O)O(O=)CR3またはカルボン酸基を表わし、この場合
3は、水素原子または1〜10個の炭素原子を有する、場合によっては置換されたアルキル基、アリール基またはアミノアルキル基を表わし、
4、R5、R6は、水素原子または1〜10個の炭素原子を有する、場合によっては置換されたアルキル基またはアリール基を表わし、
この場合それぞれの基R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ互いに独立にそれぞれの値を取り、この場合基R2Xは、基R2の炭素原子により式(1)の珪素原子に結合されている、請求項1または2記載の複合体粒子の製造法。
【請求項4】
式(1)の珪素化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、(シクロヘキシル)メチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)(3−アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、N−シクロヘキシルアミノメチルメチルジエトキシシラン、N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)−メチルウレタン、N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)−メチルウレタン、N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)−尿素、N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)−尿素、(3−グリシドオキシプロピル)トリエトキシシランまたは(3−グリシドオキシプロピル)−トリメトキシシランを使用する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の複合体粒子の製造法。
【請求項5】
付加的に式(2)R7SiR80-2(OR91-3の1つ以上のエチレン系不飽和珪素化合物が使用されてよく、上記式中、R7は、CH2=CR10−(CH20-1またはCH2=CR10CO2(CH21-3を意味し、R8は、C1〜C3アルキル基、C1〜C3アルコキシ基またはハロゲンを意味し、R9は、1〜12個のC原子を有する、非分枝鎖状または分枝鎖状の場合によっては置換されたアルキル基であり、この場合R9は、場合によってはエーテル基によって中断されていてよく、およびR10は、HまたはCH3を表わす、請求項1から4までのいずれか1項に記載の複合体粒子の製造法。
【請求項6】
溶剤として、水、有機溶剤、水と組み合わせた有機溶剤、多数の有機溶剤からなる溶剤混合物または水と組み合わせた、多数の有機溶剤からなる溶剤混合物を使用する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の複合体粒子の製造法。
【請求項7】
可溶性重合体として、エチレン系不飽和カルボン酸6〜15質量%および場合によってはエチレン系不飽和シラン0.3〜2質量%を有するビニルエステルの重合体;エチレン系不飽和シラン0.35〜2質量%を有するビニルステルの重合体;エチレン系不飽和カルボン酸6〜15質量%および場合によってはエチレン系不飽和シラン0.3〜2質量%を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体;エチレン系不飽和シラン0.3〜20質量%を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体を使用し、この場合質量%での記載は、それぞれ100質量%にまで加算される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の複合体粒子の製造法。
【請求項8】
付加的にビニルアルコール重合体を式(2)R7SiR80-2(OR91-3〔式中、R7は、CH2=CR10−(CH20-1またはCH2=CR10CO2(CH21-3を意味し、R8は、C1〜C3アルキル基、C1〜C3アルコキシ基またはハロゲンを意味し、R9は、1〜12個のC原子を有する、非分枝鎖状または分枝鎖状の場合によっては置換されたアルキル基、または2〜12個のC原子を有するアシル基であり、この場合R9は、場合によってはエーテル基によって中断されていてよく、およびR10は、HまたはCH3を表わす〕で示される1つ以上のエチレン系不飽和珪素化合物で高められた温度で処理することによって得られる、シラン変性されたポリビニルアルコールを使用する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の複合体粒子の製造法。
【請求項9】
α)一般式
(RO)nSiR14-n (1)
Rは、1〜20個の炭素原子を有する、場合によっては置換されたアルキル基、アリール基またはアルコキシアルキル基、または水素原子を表わし、
1は、1〜12個の炭素原子を有する、場合によっては置換された炭化水素基または水素原子を表わし、および
nは、2〜4の値である〕で示される1つ以上の珪素化合物、または
β)式(1)の珪素化合物の1つ以上の縮合生成物を溶剤または多数の溶剤の混合物中で1つ以上の可溶性重合体の存在下で縮合させることによって得られた複合体粒子であって、
この場合、可溶性重合体は、カルボン酸基またはその誘導体、シラン基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスフェート基、ホスホネート基、イソシアネート基、アミン基、第4アミン基、ヒドラジン基、エポキシ基、エーテル基、ヒドロキシ基またはCO基から選択された1個以上の他の官能基を有する、a)1つ以上のエチレン系不飽和モノマーおよび1〜15個のC原子を有するカルボン酸のビニルエステル、1〜15個のC原子を有する、カルボン酸と非分枝鎖状または分枝鎖状のアルコールとのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル、オレフィンおよびジエン、ビニル芳香族化合物およびビニルハロゲン化物を含む群から選択された、b)1つ以上のエチレン系不飽和モノマーのラジカル的に開始される重合によって得られ、
その際、この場合に形成された、珪素化合物α)の縮合生成物または縮合生成物β)、またはこれらの縮合生成物は、1つ以上の可溶性ポリマー上に固定される、上記の複合体粒子。
【請求項10】
粉末塗料、被覆剤、接着剤のための結合剤、補助結合剤または添加剤として、またはプラスチック材料または複合体材料のための配合物中への請求項9記載の複合体粒子の使用。
【請求項11】
合成材料または天然材料、例えば岩石、木材、皮革、紙、織物またはプラスチックを表面処理するための請求項9記載の複合体粒子の使用。
【請求項12】
カーペットまたは陳列製品を製造する際の請求項9記載の複合体粒子の使用。
【請求項13】
バリヤー層を形成させるための請求項9記載の複合体粒子の使用。

【公表番号】特表2011−516629(P2011−516629A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550127(P2010−550127)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/052249
【国際公開番号】WO2009/112370
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】