複合有機粉末とそれを用いた製品
【課題】高い彩度を持ちながら、大きな反射角領域において明度を向上させ、立体物の輪郭の強調効果や、デザイン上の優れた色彩効果が得られる複合有機粉末と、その配合化粧料、樹脂、塗料、インキを提供すること。特に化粧料において毛穴の目立ちを押さえ、化粧崩れした際に汚く崩れにくいことを特徴とする化粧料を提供すること。
【解決手段】半球状〜略半球状の形態を有する有機粉末の表面を、一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素と結合剤とで被覆したことを特徴とする複合有機粉末。
【解決手段】半球状〜略半球状の形態を有する有機粉末の表面を、一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素と結合剤とで被覆したことを特徴とする複合有機粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半球状〜略半球状の形態を有する有機粉末の表面を、一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素と結合剤とで被覆することによって、高い彩度を持ちながら、大きな反射角領域において明度を向上させることができるため、立体物の輪郭の強調効果や、デザイン上の優れた色彩効果が得られる複合有機粉末、それを配合した樹脂組成物や製品、化粧料、塗料及びインキ等に関する。また、特に本発明の複合有機粉末を化粧料に使用したときには、光学的な効果以外に毛穴を目立たせない均一感のある化粧塗膜が得られ、化粧崩れした場合でも汚くなく、きれいな崩れ方をする化粧料が得られる。
【背景技術】
【0002】
従来、半球状〜略半球状の形態を持った有機粉末が開発され、上市されている(特許文献1〜3)。また、最近では、特許文献4のように粉末中に無機粒子等を含有したものも合成できるようになっている。また、天然物において一部の澱粉粒子は、半球状の形態を有しており、半球状の形態を有する粉末は既に良く知られている。また、半球状の形態は、一種のレンズのような効果を持つことから、光学的な効果を発揮することも着目されており、例えば、半球状の樹脂粒子を原料として、樹脂粒子の表面を油剤成分に、多価アルコール、有機酸エステル系油剤、イソステアリルアルコール等の高級アルコール、流動パラフィン等の炭化水素、アルキル変性オルガノポリシロキサン、末端変性オルガノポリシロキサン等に適宜粘度調節剤を併用して被覆した結合樹脂粒子とすることによって光学的に特徴のある化粧料を得ることも知られている(特許文献5)。
しかしながら、上記従来技術にあるように単に表面を無機酸化物処理や色素処理しただけの場合、半球状粒子が表面に並ぶことによる光の拡散効果を利用した光学的に特徴のある化粧料は容易に得られるものの、光の方向性をコントロールするような技術については全く見いだされていない。このため、特許文献5の技術では、処理された粒子の光学的特性が不明確であり、光の走行方向が一定しない上に、粒子の処理条件によっては光学特性がでないなどの問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−278746号公報
【特許文献2】WO01/070826号公報
【特許文献3】特開2004−27008号公報
【特許文献4】特開2004−196859号公報
【特許文献5】特開2005−126406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、化粧品は、勿論、樹脂組成物、製品、塗料やインキ等においても、角度によっては本来の色素の色よりもより強く着色された光を放出する。これにより輪郭部の色が強調される効果を有し、かつ、高い彩度を持ちながら、大きな反射角領域において明度が向上し、立体物の輪郭の強調効果やデザイン上の優れた色彩効果が得られる効果を発揮する製品が求められていた。このような化粧品であれば、毛穴を目立たせない均一感のある化粧塗膜が得られ、さらに化粧崩れした場合でも汚くなく、きれいな崩れ方をする化粧料が得られる可能性が高いが、未だそのような製品は製品化されていなかった。
上述するように従来の樹脂球体又は半球体を使用した場合では、その表面を単に顔料や色素で被覆しても、その効果が弱かったり、球面であるために被覆がうまくいかなかったり、反射効果が不十分である等の問題があった。
【0005】
例えば、引用文献5では、上述するように半球形状の樹脂粒子を所定粘度を有する油剤で被覆し、このような表面処理を施すことによって樹脂粒子に光学的な特徴を付与したものであるが、このような固形粉末化粧料を付着させて皮膚に沿って擦ると、樹脂粒子又は/及び結合樹脂粒子が崩壊して生成する樹脂粒子がその球面部を外方に向けて配向するので、外用剤中に含有させて用いることにより、樹脂粒子の球面部によって皮膚上に凸レンズの連続構造を形成することができ、この凸レンズの連続構造によって肌に入射する光を効果的に反射、拡散させて、皮膚の凹凸や小皺を見えにくくして肌をきめ細かく明るく見せて、肌を美しく整えることは可能であるが、その光学効果は、あくまで凸レンズの連続構造によって肌に入射する光を効果的に反射、拡散させて皮膚の凹凸や小皺を見えにくくして肌をきめ細かく明るく見せて、肌を美しく整えることができる効果であって、これらの効果は光の拡散にともなう光学現象のみであって、光が粒子内に入って反射・回折することは考慮されていない。
【0006】
これに対して、本発明では、再帰反射における光学効果をさらに引き出すために種々の検討を実施し、顔料や色素を用いて特定の処理手段を半球体に施すことにより、光学効果を大幅に改善することを課題とする。
すなわち、本発明では、有機粉末と顔料や色素等とボールミルを使用した機械的な混合被覆により有機粉末の表面に顔料や色素を被覆することによって、粒子内の光の反射・回折を利用して、図16に示すように光の放出方向をコントロールすることにより、引用文献5では想定されていない新しい光学効果を見出したものである。さらに、ボールミルとして、アトライタを使用し、結合材としてアクリル系樹脂、シラン系化合物、有機チタネート系化合物のような結合材を用いて顔料及び/又は結合材を有機粉末表面に被覆する場合に特に効果的なことを見出したのである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、これらの問題に鑑み、効果的に光学効果を引き出すための検討を実施した結果、その内部に顔料や色素を含有していてもいなくてもよい半球状〜略半球状の形態を有する有機粉末の表面を、一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素で被覆したことで、高い彩度を持ちながら、大きな反射角領域において明度を向上させることにきわめて優れた特性を有する複合顔料を開発した。
【0008】
上記明度を向上させることについて、さらに言及すると、従来の上記公知技術の顔料は、例えば入射角0度の条件で光を照射した場合、受光角が大きくなるにつれて明度、彩度共に減少するのが一般的であり、これだと化粧料においては、光学的には顔の輪郭や鼻などの凹凸がぼやける方向に進んでしまう。そのため、低次酸化チタン被覆雲母などを用いて輪郭部をより暗く強調する技法などが開発された。本複合顔料は逆に受光角が大きくなるに従って、特に高受光角領域において明度と彩度が逆に上昇する特性を持つことから、輪郭部の発色性を強くすることで輪郭を強調する機構を持つ。
【0009】
すなわち、本発明で得られる複合有機粉末顔料は、立体物に塗布された場合、輪郭部分をより強調する特性を有することを見いだした。この特性は、例えば化粧料においては、口唇の輪郭を明確にする、顔や鼻の輪郭を強調してはっきりさせる等の効果を有し、さらに塗料や樹脂においても光の入射角に対して70〜80度程度離れた角度の明度が強調されることから、より意匠性に優れた製品を得ることができる。これらの特性は、有機粉末原料に対して結合剤を併用することによって顕著に表れることを見出した。
【0010】
インキにおいては、見る角度によって、雲母チタン等のパール剤とは異なった、色相ではなく、明度変化を起こすインキとしても活用することができる。
また、インキの外に、樹脂組成物や製品、化粧料、塗料、繊維等にも配合することによって同様の効果を発揮させることができる。また、本発明の複合有機粉末によって、毛穴を目立たせない均一感のある化粧塗膜が得られ、化粧崩れした場合でも汚くなく、きれいな崩れ方をする化粧料が得られる。
【0011】
本願に記載された発明は、基本的には以下の構成よりなる。
〔1〕平均一次粒子径が1〜1000μmの半球状〜略半球状の有機粉末の表面を一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素で被覆するときに、結合剤を併用することによって被覆したことを特徴とする複合有機粉末。
〔2〕上記被覆が、機械的被覆であることを特徴とする〔1〕に記載の複合有機粉末。
〔3〕上記機械的被覆が、ボールミルを用いた被覆であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の複合有機粉末。
〔4〕ボールミルを用いた機械的被覆が、乾式アトライタを用いた被覆であることを特徴とする〔3〕に記載の複合有機粉末。
〔5〕上記被覆が、噴霧乾燥被覆を用いた被覆であることを特徴とする〔1〕に記載の複合有機粉末。
【0012】
〔6〕半球状〜略半球状の形態を有する有機粉末100質量部の各粉末表面に対して、一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素5〜500質量部と結合剤0.1〜100質量部とを被覆したことを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の複合有機粉末。
〔7〕結合剤が、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、シラン系化合物、有機チタネート系化合物及び反応性シリコーンから選ばれたものであることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の複合有機粉末。
〔8〕複合有機粉末を5〜12.5質量%の濃度で透明樹脂に分散させたフィルムを用い、村上色彩技術研究所製変角分光測色システムGCMS−3B型による変角分光測色システムを用いて、入射角0度、フィルムの背景に白色プレートを使用する条件で測定した場合に、受光角70〜80度の範囲においてL*値の低下が見られないことを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の複合有機粉末。
【0013】
〔9〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の複合有機粉末を配合したことを特徴とする樹脂組成物又は樹脂製品。
〔10〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の複合有機粉末を配合したことを特徴とする化粧料、塗料又はインキ。
〔11〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の複合有機粉末を配合したことを特徴とする繊維製品。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、その内部に顔料や色素を含有していてもいなくてもよい半球状〜略半球状の形態を有する有機粉末の表面を、一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素を結合剤を用いて被覆したことで、高い彩度を持ちながら、大きな反射角領域において明度を向上させることができるため、立体物の輪郭の強調効果や、デザイン上の優れた色彩効果が得られることを特徴とする複合有機粉末と、その特性を生かした樹脂組成物や樹脂製品、あるいは化粧料、塗料及びインキ等が得られる。
また、化粧料に用いた場合には、本発明の複合有機粉末を使用することによって、毛穴を目立たせない均一感のある化粧塗膜が得られ、さらに化粧崩れした場合でも汚くなく、透明感、毛穴の目立ちにくさ、化粧の崩れ方のきれいさ等が優れ、従来の原料粒子では到底得られなかった立体的意匠効果を有する化粧料を製品化することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
すなわち、本発明の処理半球粒子による反射は、鏡と球体レンズを用いて入射光を反射させる点では従来技術と共通するものの、図16に示すように従来技術の再帰反射ではなく、球体自体が半球状であるから、球体レンズの下半分をカットした形となっている。そのため、底面での光の反射角が変わることで、光を入射方向でなく、略横方向に曲げているので、光は半球状粉末の周囲に加工された色素成分から色情報を受け取り、角度によっては本来の色素の色よりもより強く着色された光を放出する。これにより輪郭部の色が強調される効果が生まれる。
【0016】
また、母体の半球状粉体も、透明樹脂素材のものであれば、もともと下方向から入射された光を全方向に拡散させる目的でディスプレー用途に開発されたもので、マイクロレンズ特性を有しているので、本発明で使用するとさらに反射効果を活用することができる。
【0017】
このように本発明者の開発した複合有機粉末は、化粧料に限られることなく、樹脂組成物や製品、塗料やインキ等においても高い彩度を持ちながら、大きな反射角領域において明度を向上、立体物の輪郭の強調効果やデザイン上の優れた色彩効果が得られる効果を発揮することができる。また、本発明の複合粒子におけるように、複合化によって、肌面の毛穴を目立たせない均一感のある化粧塗膜が得られ、さらに化粧崩れした場合でも汚くなく、きれいな崩れ方をする化粧料が得られることとなった。
【0018】
また、自動車塗料に応用した場合には、ベースコート層に光輝性粉体を配合し、ミドルコート層に半球状粉体を配合したときは、塗膜がスリガラス状の光学特性を示してしまい、塗装の印象がボケた感じになるが、本複合有機粉末を用いた場合はこのようなことが起こらず、エッジが強調される特徴を有している。特に本発明の複合有機粉末を使用したときには、塗装面が角になっておらず、局面の組み合わせで形成されているような造形物の場合、種々の目視角度から色の変化が観察されるメリットがある。
【0019】
まず、本発明で用いる有機粉末は、平均一次粒子径が1〜1000μmの範囲にあり、略レンズ状の形態を含む半球状〜略半球状の形態を有するものであれば、特に限定はないが、その内部には顔料や色素を含有していてもいなくてもよく、合成、天然を問わず、例えば工業的に供給されている積水化成品工業社製の非球状微粒子ポリマーLMX等が知られており(http://www.tech-p.com/product/development/biconvex.html参照。2005年4月29日検索)、また、小麦澱粉、タピオカ澱粉も同様の形態を持ち有用である。
なお、本発明で言う平均一次粒子径とは、レーザー光を用いて粒度分布を測定した際の(体積)平均粒子径や電顕写真から粒子径を実測したもの等を用いて測定したものを意味する。
また、本発明で用いる半球状粉体は、その粒子径が後に処理される一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素よりも大きいことが必要である。半球状粉体が後に処理される一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素よりも小さいと本発明の目的とする光学効果が得られない問題がある。
【0020】
本発明では、用途に応じて非球状有機粉末の粒子径を変えることが好ましい。
例えば、化粧料では、平均一次粒子径が1〜20μmの範囲に入るものが好ましい。20μmを超えると、肌への付着性が悪くなる問題がある。一般的には、粒子径が大きくなりすぎると、発色にムラがでる傾向があるため、一般工業用途においても1〜50μmの範囲がより好ましい。また、本発明の非球状有機粉末は、半球状〜略半球状の形態を有するものであれば、特に限定はなく、その内部には顔料や色素を含有していてもいなくてもよいが、その内部に顔料や色素を含有する場合、顔料や色素はそれぞれ用途向けの法令に合わせたものが使用されている限り限定はないが、もとの樹脂粒子よりも大きな粒子径を持つものは好ましくない。
なお、これらの顔料や色素の例については、有機粉末の被覆剤とほぼ類似しているため、後述することとする。
【0021】
本発明で用いる粒子は、前述するように半球状〜略半球状の粒子形状を持つことが必須であり、内部に空洞等を有していてもいなくても構わないし、その内部には顔料や色素を含有していてもいなくてもよいが、円又は楕円状の底面は平滑な平面である方が光学特性が優れているメリットがある。
【0022】
本発明では、前記有機粉末の表面を、一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素と結合剤とで被覆するか、半球状の構造を壊さない程度に機械的に処理することが基本的な構成である。
本発明の半球状の有機粉末として、樹脂粉末を使用するときには、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂のようなビニル系樹脂等の合成樹脂から形成されたものを使用することができるが、その外に小麦澱粉やタピオカ澱粉を使用することができるが、有機粉末として小麦澱粉、タピオカ澱粉を用いる場合では、小麦澱粉、タピオカ澱粉は熱水中の安定性に欠け、形状が変化してしまう問題があるため、小麦澱粉、タピオカ澱粉については機械的に被覆する方法を用いることが好ましい。また、これら澱粉を用いる場合では事前にその表面をシラン化合物などで撥水化処理しておくことが好ましい。
【0023】
本発明における顔料及び/又は有機色素としては、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ等;有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロースパウダー、シルクパウダー、12ナイロンや6ナイロン等のナイロンパウダー、ポリアクリルパウダー、ポリアクリルエラストマー、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末、ラウロイルリジン等;界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等;有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γー酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成有機粉末等;パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母、酸化チタン・酸化鉄被覆マイカ等;金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダー等;タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等;天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等から選ばれる顔料が挙げられる。
【0024】
本発明では、上記の各顔料及び/又は有機色素を使用することが可能であるが、好ましい光学効果を得るためには一定の条件が必要である。本発明で用いる複合有機粉末が優れた光学特性を示す理由は、半球状有機粉末の形状に起因した光の再帰反射様原理の変形例である。
従来の再帰反射は図15に示したように、球体レンズの下半分に反射膜をコーティングして、光が入射した方向に光を戻すものであるが、原理としては球体レンズ内部で3〜4回光を曲げることことにより得られる特性である。これに対して、本発明の複合有機粉末は図16に示したように球状レンズの下半分が無く、それに伴って、再帰反射モデルと比べて光の放出方向がレンズの横方向に変化していることが、本発明の複合有機粉末が特徴的な光学特性を示す原因であると推察される。
【0025】
そのため、原理的に、光は半球状有機粉末の内部に入り、反射、散乱することが必要と考えられる。従って、例えば可視光域における光隠蔽性の高い顔料を高濃度で均一に半球状有機粉末に被覆した場合、光は半球状有機粉末の内部には入らず、複合有機粉末の表面で散乱と反射するだけとなり、その光学特性は透明感がなくなり、立体的意匠効果は失われてしまう。すなわち、光が半球状有機粉末の中に入り込めるように、顔料及び/又は有機色素の処理濃度もしくは処理の均一性は決定される必要がある。しかしながら、比較的高濃度でも透明性のある有機色素は別にして、無機顔料については顔料の凝集、偏在状態、比表面積、結晶形、処理方法などによっても光の透過性は大きく異なってしまうため、一概に規定することは難しい。そこで、本発明では、得られた複合有機粉末を用いて再帰反射に起因すると思われる光学特徴を利用することで、被覆状態が可視光を透過できる状態にあるのか否かを判断している。
【0026】
光学特徴を利用する例としては、例えば複合有機粉末を5〜12.5質量%の濃度で透明樹脂中に分散させたフィルムを用いて、村上色彩技術研究所製の変角分光測色システムGCMS−3B型変角分光測色システムを用いて、入射角0度、フィルムの背景に白色プレートを使用する条件で測定した場合、受光角70〜80度の範囲においてL*値(国際照明委員会CIE L*a*b*で言うところのL*値と同じものである)の低下が見られないか、70度から80度にかけて上昇する傾向が見られると、本発明の複合樹脂粉末に求められる光学特性が得られていると判断できる。通常の顔料や色素の場合、この受光角領域では、受光角70度に対して80度でのL*値は低下しているのが一般的である。
【0027】
また、これらの顔料は、撥水化や親水化等の表面処理がなされていても構わない。撥水化表面処理の例としては、例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン処理、シリコーンレジン処理、シリコーンガム処理、アクリルシリコーン処理、フッ素化シリコーン処理等のオルガノシロキサン処理、ステアリン酸亜鉛処理等の金属石鹸処理、シランカップリング剤処理、アルキルシラン処理等のシラン処理、有機チタネート処理、有機アルミネート処理、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩、パーフルオロポリエーテル処理等のフッ素化合物処理、N-ラウロイル-L-リジン処理等のアミノ酸処理、スクワラン処理等の油剤処理、アクリル酸アルキル処理等のアクリル処理等が挙げられ、これらの1種以上を組み合わせて使用することが可能である。
【0028】
上記顔料の内、雲母等板状の形状を有する粉末を用いたい場合は、事前に粒子径が5μm以下になるように粉砕を行っておくことが必要である。粒子径が5μmを超えてくると、母粒子の有機粉末の大きさがたとえ大きくても、有機粉末表面に顔料を固定できず、光学効果がうまくでない問題がでてくる。また、前述したが、これらの顔料は有機粉末中に包含されていても構わない。また、用いる顔料は5μm以下であれば構わないが、超微粒子化すると、複合顔料の光学特性や感触が変わるため、使用目的に合わせて適宜粒子径を1nm〜5μmの範囲で選択することが好ましい。
【0029】
本発明で用いる有機粉末に対する上記顔料の被覆量としては、例えば有機粉末100質量部に対して、上記顔料(及び有機色素の合計)が5〜500質量部の範囲にあることが好ましい。この範囲であれば、本発明の目的とする光学効果が得られやすい。
【0030】
本発明で用いる結合剤は、母材となる有機粉末の上に前記顔料を固定化もしくは均一に処理するために使用するものであり、樹脂、粘着剤、反応性有機化合物等が使用される。結合剤は、油溶性、水溶性は特に問わないが、油溶性もしくは母材上で重合、硬化などの反応をするものが好ましい。結合剤に重合、硬化するものを用いた場合、顔料表面をシランカップリング剤等の反応性材料で被覆することも好ましい。また、触媒を添加することも可能である。結合剤を使用することにより、前記顔料はその後の製剤を作成する際の混合工程や粉砕工程を通ってもその形状を維持することができ、また、前記顔料を母材となる有機粉末の上に均一に被覆できる効果にも優れる。また、用いる顔料の種類や凝集状態によっては結合剤を用いないと光が複合粒子表面で乱反射してしまう場合があるが、結合剤を用いることで乱反射が抑制され、より優れた光学特性を得ることができるメリットもある。
結合剤の使用量は、有機粉末100質量部に対して、0.05〜200質量部、好ましくは0.1〜100質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0031】
結合剤の好ましい例としては、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などの樹脂、シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機化アルミニウム、反応性シリコーン等が挙げられるが、特にシリコーン樹脂、シラン系化合物、反応性シリコーンが好ましい。樹脂としては、各種の工業用樹脂が使用可能であるが、特にシリコーン樹脂としては、トリメチルシロキシケイ酸やフッ素化シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂などが挙げられる。
【0032】
反応性シリコーンの例としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体、エポキシ変性シリコーン、オレフィン変性シリコーン等が挙げられ、シラン系化合物としてはアルキルシランやフッ素化シラン等の各種シランカップリング剤やテトラエトキシシラン等が挙げられる。有機チタネート系化合物としては、テトライソプロポキシチタン等の有機化チタンや、長鎖カルボン酸型のアルキルチタネートとして、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられ、ピロリン酸型アルキルチタネートとして、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート等が挙げられ、亜リン酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられ、アミノ酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等の1種以上が挙げられる。有機化アルミニウムとしては、アルミニウムカップリング剤などが挙げられる。これらの内、特にアルキルトリアルコキシシランは、ボールミルを用いた複合化を行う際に用いると母粒子の表面に子粒子が均一に被覆される傾向が強くなるため有用である。
【0033】
他の結合剤としては、固形油やガム状物を用いる方法もあるが、固定化が不十分になる場合があり、ワックスやシリコーンガム等の固形油やガム状物を用いる場合には、上記反応性の化合物等と組み合わせて使用することが好ましい。
【0034】
本発明の複合有機粉末を得るには、溶剤中に各成分を混合してから溶剤を留去して被覆し、場合によって加熱する方法、水-アルコール溶媒等水系溶媒中に有機粉末を分散した中に、撥水化した顔料と結合剤を投入し、有機粉末表面に被覆した後、乾燥する方法、各成分の混合物をスプレードライヤーや流動造粒乾燥機等を用いて乾燥する方法、ボールミルなどの磨砕装置等を用いる方法等が挙げられる。品質安定性的にアトライタなどボールミルを用いたものや、スプレードライヤー処理品が好ましい。また、一度粉末として得られた複合有機粉末をさらに前述のような各種の表面処理をしたり、加熱処理したり、分級したりすることも可能である。
【0035】
以下ボールミル(乾式アトライタ)を用いた場合の試作例を示す。
アトライタの回転速度は毎分300回転に設定した。回転速度が遅いと複合化がうまくいかず、時間がかかる問題があり、回転速度が速いと、半球状〜略半球状の有機粉末が砕かれて形状が維持できなくなり、本発明の光学効果が失われる問題がでる。回転数は用いるビーズ(撹拌媒体)の粒子径、材質、充填率によっても変化するので、回転速度を設定する際は電子顕微鏡観察によりどの程度の回転数で半球状の形状が崩れだすのかを確認する必要がある。次に、ビーズはアルミナ製の直径5.5mmを使用した(材質はジルコニアなどでも問題なく、特に限定されない)。ビーズは直径が大きいと複合化効率が落ちる一方で、直径が小さくなると製造後に目的の複合有機粉末とビーズの分離が難しくなる問題があり、直径5mm前後のものが使いやすい。充填は粉体原料0.5Kg、ビーズ7.7Kgを用いた。この割合は用いる粉体原料の体積によって調整することが好ましい。このような条件で10〜20分間撹拌を実施すると、母粒子の上に子粒子が複合化した粉末が得られる。さらに長時間実施することも可能であるが、顔料の形状が崩れだすことと、生産効率が悪くなる割に、目的の光学特性はあまり向上しないことが多い。この際に粉体原料と共にオクチルトリエトキシシランのような結合剤にあたる化合物を同時に添加して処理するとより均一な処理ができる上、母粒子と子粒子がより強固に固定化される結果、次に述べる各種製剤に本発明の複合有機粉末を配合した際の製造に、母粒子から子粒子が剥離する原料を抑制することが可能となる。尚、結合剤を用いた場合は、さらに加熱処理などを実施しても構わない。
【0036】
こうして得られた本発明の複合有機粉末は、さらに各種の表面処理をしてもしなくても構わない。表面処理の例としては前述の表面処理の例が挙げられる。
【0037】
本発明の複合有機粉末は、化粧料、塗料、樹脂組成物や樹脂製品、インキに用いると、光学特性に優れたものが得られる。これらの製剤に対する配合量としては、いずれも製剤中の顔料配合量の内の1〜100質量%の範囲が挙げられるが、特に限定されるものではない。1質量%未満では、光学特性が得られ難い問題がある。
【0038】
本発明の処理半球粒子による反射は、上述するように従来技術の再帰反射ではなく、球体自体が半球状であるから、球体レンズの下半分をカットした形となっている。そのため、底面での反射角が変わることで、光を入射方向でなく、略横方向に曲げているので、光は半球状粉末の周囲に加工された色素成分から色情報を受け取り、角度によっては本来の色素の色よりもより強く着色された光を放出する。これにより輪郭部の色が強調される効果が生まれる。また、母体の半球状粉体も、透明樹脂素材のものであれば、もともと下方向から入射された光を全方向に拡散させる目的でディスプレー用途に開発されたものもあり、マイクロレンズ特性を有しているので、本発明で使用するとさらに反射効果を活用することができる。
【0039】
このように本発明者の開発した複合有機粉末は、化粧料に限られることなく、樹脂組成物や製品、塗料やインキ、自動車塗装等においても高い彩度を持ちながら、大きな反射角領域において明度を向上、立体物の輪郭の強調効果やデザイン上の優れた色彩効果が得られる効果を発揮することができ、複合化によって、毛穴を目立たせない均一感のある化粧塗膜が得られ、さらに化粧崩れした場合でも汚くなく、きれいな崩れ方をする化粧料が得られる。
【0040】
そして、本発明の化粧料、塗料、樹脂組成物又は樹脂製品、インキ等では、上記複合有機粉末以外に、従来、これらの製剤に配合されている各種の顔料、紫外線吸収剤、油剤、界面活性剤、フッ素化合物、樹脂、粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、重合開始剤、可塑剤、生理活性成分、触媒又は増粘剤等の成分を使用することができる。特に光学特性を有する雲母チタン等のパール剤、アルミニウムフレーク等の光輝性顔料と組み合わせて用いると、より特徴のある製剤を得ることができるメリットがある。
【0041】
以下、各製剤で想定されるメリットについて述べる。
まず、化粧料において、本発明の複合顔料を含むものを使用したときには、元の未処理顔料のものよりも明度、彩度が高い特徴を生かすことができ、メイクアップ化粧品において、より明るく、透明感があり、くすみにくい肌色をつくることができる。
また、本複合顔料のもう一つの特徴である入射光に対して70度以上離れた角度の反射光が強くなる現象を生かして鼻や口唇、顔全体の輪郭強調が可能であり、サンスクリーン剤等のボディ化粧料用途では身体の輪郭をより強調できる製剤等が作成可能となる。塗料においては、車や造形物の輪郭強調が可能であり、意匠性の向上が期待できる。
さらに、本発明の複合顔料は、彩度が高いことから、色の美しさをより引き出すことが可能である。次に、樹脂組成物や樹脂製品では、原料ペレットに本複合顔料を練りこんだものを配合する等の方法で容易に導入することが可能であり、その際、製品としては、より透明感に優れ、深みのあるものが得られる。
また、インキでは、彩度の向上と、見る角度によって、パール顔料とは違った色の濃淡を強調した製品が得られる。さらに、塗料においても同様の製品が得られる。
さらに、樹脂製品の一例である繊維の場合、本複合顔料を取り込んだ組成物を原料として得られる繊維は、見る角度によって色の濃淡が変わる等、色彩、意匠性に優れた製品とすることができる。
【0042】
本発明の化粧料としては、ファンデーション、頬紅、白粉、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、フェイスパウダー、ネイルカラー等のメイクアップ化粧料や、ボディパウダー、ボディミルク又はボディローション等の全身用化粧料、サンスクリーン、化粧下地、乳液、クリーム等の基礎化粧料、染毛料、ヘアマニキュア又はヘアスプレー等の頭髪化粧料等が挙げられるが、特にファンデーション、頬紅、アイシャドウ、ネイルカラー又は全身用化粧料が本複合顔料の意匠効果が得られやすいメリットがある。
【0043】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明する。
また、実施例及び比較例で用いた各種特性に対する評価方法を以下に示す。
【0044】
変角分光測色
村上色彩技術研究所製変角分光測色システムGCMS−3B型を用い、試料を入射角0度、受光角15〜80度の範囲で測定を行った。測定データは国際照明委員会CIE L*a*b*としてデータ化し、比較試料との比較を実施した。
【実施例1】
【0045】
半球状有機粉末(積水化成品工業製テクポリマー 平均一次粒子径10μm、架橋ポリメタクリル酸メチル)70質量部に、有機色素の一種である赤色201号(粒子径0.1μm)30質量部を結合剤としてシリコーン樹脂(トリチメルシロキシケイ酸)10質量部とジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体3質量部を用いて下記の方法により固定した。
なお、シリコーン樹脂は溶質30質量%のデカメチルシクロペンタシロキサン溶液を使用した。
図1には、本実施例の走査型電子顕微鏡写真の例を示す。
また、後述するが、本品は受光角70〜80度の範囲においてL*値が上昇する傾向が認められた。
【0046】
製造方法;イソプロピルアルコール2000質量部にシリコーン樹脂溶液66.6質量部とジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体6質量部を溶解させた。この溶液をホモミキサーで撹拌しながら、あらかじめミキサーを用いて混合しておいた半球状有機粉末140質量部と赤色201号60質量部の混合物をゆっくりと投入した。全体が均一になったのを確認した後、スプレードライヤーを用いて送風出口温度200℃にて噴霧し、回収した。
得られた粉体は、濃い赤色の粉末であった。
【実施例2】
【0047】
実施例1の赤色201号の代わりに、平均粒子径0.3μmの黄色酸化鉄を用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
尚、本品は受光角70〜80度の範囲においてL*値が上昇する傾向が認められた。
【実施例3】
【0048】
実施例1の赤色201号の代わりに、平均粒子径0.1μmのベンガラを用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
尚、本品は受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められた。
【実施例4】
【0049】
実施例1の赤色201号の代わりに、平均粒子径0.1μmの黒色酸化鉄を用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
尚、本品は受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められた。
【実施例5】
【0050】
実施例1の赤色201号の代わりに、平均粒子径0.3μmの酸化チタンを用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
尚、本品は受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められた。
【実施例6】
【0051】
実施例1の半球状有機粉末の代わりに、平均一次粒子径45μmの半球状有機粉末を用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
尚、本品は受光角70〜80度の範囲においてL*値が上昇する傾向が認められた。
【0052】
〔比較例1〕
実施例1で用いたものと同じ赤色201号単体を以って比較例とした。
【0053】
〔比較例2〕
実施例1において結合剤を用いなかった以外は全て実施例1と同様にして製品を得た。
【0054】
〔比較例3〕
実施例1において赤色201号の代わりに平均粒子径15μmの赤色雲母チタンを用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
【0055】
〔比較例4〕
実施例5において半球状有機粉末の代わりに平均一次粒子径10μmの真球状ポリメタクリル酸メチルパウダーを用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
【実施例7】
【0056】
化粧料(ファンデーション)
表1の処方と製造方法に従ってファンデーションを作成した。
なお、表中の単位は質量%である。
【0057】
【表1】
【0058】
成分Aをミキサーを用いて混合した。一方、成分Bを80℃で均一に混合した。成分Aに成分Bを加え、よく撹拌、粉砕した後、60メッシュを通し、金型を用いて金皿に打型して製品を得た。
得られたファンデーションをパネラーに使用させたところ、明度が高く、透明感があり、色があざやかで、鼻や顔の輪郭がはっきりする特性を有していた。また、良好な使用感を有しており、その上毛穴が目立ちにくい特性を持っていた。
さらに、本ファンデーションを混合肌の女性に朝9時に使用を開始してもらい、12時まで日常生活をしてもらってから、その崩れ方を評価したところ、皮脂が多い鼻、額部分においても崩れ方はきれいであった。
【0059】
〔比較例5〕
表2の処方と製造方法に従ってファンデーションを作成した。なお、表中の単位は質量%である。
【0060】
【表2】
【0061】
成分Aをミキサーを用いて混合した。一方、成分Bを80 ℃で均一に混合した。成分Aに成分Bを加え、よく撹拌、粉砕した後、60メッシュを通し、金型を用いて金皿に打型して製品を得た。本ファンデーションは止まりが悪く、使用感が悪い問題があった。肌へのつき方にムラがあり、毛穴が目立ち、化粧塗膜が美しくない問題を有していたため、実施例1のような美しい塗膜を形成せず、光学的な特徴も認められなかった。また化粧崩れした場合、ヨレが目立ち、汚かった。
【0062】
〔比較例6〕
実施例7で用いた複合有機粉末の代わりに、シリコーン樹脂(トリチメルシロキシケイ酸)10質量部とジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体3質量部を用いてそれぞれの構成粉体を実施例1の方法に準じて表面処理して得られる複合化していない原料粉体をそのまま用いた他は全て実施例7と同様にして製品を得た。
【0063】
〔比較例7〕
比較例6で用いたシリコーン樹脂(トリチメルシロキシケイ酸)10質量部とジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体3質量部で表面処理した半球状有機粉末の代わりに、同じ表面処理をしたセリサイトを用いた他は全て比較例6と同様にして製品を得た。
【0064】
〔比較例8〕
実施例7で用いた複合有機粉末の代わりに、結合剤であるシリコーン樹脂(トリチメルシロキシケイ酸)とジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体を用ない他は全て実施例1の製造方法に準じて製造した複合粉体を用い、他は実施例7と同様にして製品を得た。
【0065】
ここで、実施例7と比較例6、7、8との特性の違いをパネラー5名を用いて評価した結果を示す。
各パネラーは、0〜5点の持ち点を持ち、点数がよい程評価項目の品質に優れていることを示す。
以下では、各パネラーの平均点を以って評価結果とした。
なお、点数が高い程性能が優れていることを示す。
【0066】
【表3】
【0067】
表3の結果から、本発明の実施例のものは、比較例各例のものと比べて明らかに輪郭強調効果、発色のきれいさ、透明感、毛穴の目立ちにくさ、化粧の崩れ方のきれいさに優れていることがわかる。比較例6は、複合化をせず、それぞれの複合有機粉末の成分を単独で配合した場合であるが、評価の絶対値としてはまあまあ優れた結果を示しているものの、複合化した場合と比べるとやや性能が落ちている。比較例7は半球状有機粉末以外の粉体と複合化した場合の例であるが、性能はかなり落ちており、このことから本発明の複合有機粉末の効果はスプレードライヤーを用いることによる造粒効果によるものではないことがわかる。比較例8は複合有機粉末製造時に結合剤を用いない場合であるが、かなり良好な効果が得られるものの、実施例と比べるとその性能はやや劣っており、本発明で用いた半球状有機粉末の特性を充分には引き出していないことがわかる。このことから、結合剤を用い、適度な粒子径を選択して製造された複合有機粉末は、半球状有機粉末の光学特性を特に引き出す効果に優れ、さらに毛穴の目立ち、経時での使用特性に優れていることがわかる。
【実施例8】
【0068】
実施例1の複合有機粉末を用い、表4の処方と製造方法に従って頬紅を作成した。
【0069】
【表4】
【0070】
各成分を混合、粉砕、ふるいがけした後、容器に充填して製品とした。
【0071】
本製品は、顔が明るく、自然な印象の化粧膜を形成しながら、光の当たる角度により、輪郭が強調され、従来にない光学特性を有していた。
【実施例9】
【0072】
実施例1及び5の複合有機粉末を用い、表5の処方と製造方法に従ってボディミルクを作成した。
【0073】
【表5】
【0074】
成分Aと成分Bをそれぞれ70℃にて均一に混合した。成分Aをホモミキサーを用いて撹拌しながら成分Bを加え、均一に乳化した後、脱気、ろ過、冷却し、容器に充填して製品とした。
【0075】
本製品は、使用感に優れ、肌を明るく美しく見せる効果に優れていた。また、ボディを細くスマートに見せる効果も有していた。
【実施例10】
【0076】
インキ;実施例1の複合有機粉末15質量%とスチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩 7質量%とポリオキシエチレンオキシプロピレントリオール67質量%とスチレン−アクリル酸−αメチルスチレン共重合体6質量%とトリエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量%をプロペラ撹拌機にて混合し赤色インキを得た。
得られたインキは、光反射の異方性に優れ、明度も高かった。
【0077】
〔比較例9〕
インキ;実施例8の複合有機粉末の代わりに比較例3の複合有機粉末を用いた他は全て実施例8と同様にして製品を得た。
得られたインキは、雲母チタンの光学特性を有していたものの、それ以上の特性は観察できなかった。
【実施例11】
【0078】
塗料;アクリル樹脂溶液(固型分50質量%)42質量部と実施例1の複合有機粉末20質量部とメラミン樹脂溶液11.6質量部と分散剤 1.5質量部と紫外線吸収剤 1質量部をキシレン、エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶剤23.9質量部を混合し、撹拌して塗料を得た。
得られた塗料を塗布した塗板は、明度、彩度が高く、反射光の異方性を有していた。
【0079】
〔比較例10〕
塗料;実施例9の複合有機粉末の代わりに比較例2の複合有機粉末を用いた他は全て実施例9と同様にして製品を得た。
得られた塗料は、実施例9と類似の光学特性を有していたものの、実施例9と比べてその効果は明確でなく弱いものであった。
【実施例12】
【0080】
樹脂製品;ポリプロピレン樹脂80質量部と実施例6の複合粉末20質量部をエクストルーダーを用いて混練し、樹脂製品を得た。
得られた樹脂製品は、彩度の高い特徴があった。
【0081】
[光学特性評価結果]
前記評価方法に基づいて実施例1の複合有機粉末及び比較例1の光学特性の評価を実施した。試料の測定条件としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムに測定試料10質量部をエチルアルコール40質量部と混合し、それをクリアラッカー160質量部と混ぜた後、超音波で5分粉砕したものをスリット幅0.1mmのアプリケーターを用いて塗工したものを用いた。
図2に実施例1の角度別明度変化のグラフを示す。
図3に比較例1の角度別明度変化のグラフを示す。
図2と図3の比較から、本発明の実施例は、比較例と比べて全角度領域において明度が大変高いことがわかる。また、比較例は、受光角が大きくなるに従って明度が下がるのに対して、実施例では受光角70度以上において逆に明度が向上する特性が示されている。
以上から、本発明の実施例は比較例と比べて明らかに明度の角度依存性があり、さらに特徴ある光学効果を有していることがわかる。
次に図4に実施例1の角度別色相・彩度変化のグラフを示す。
図5に比較例1の角度別色相・彩度変化のグラフを示す。
図4と図5の比較から、実施例、比較例共に彩度の変化は見られるものの、実施例が角度依存的に色相が変化するのに対して、比較例は色相がほぼ同じであり、外観的に色の変化が感じられない特性を有していた。これらから実施例は比較例と比べて色味の角度変化が見られる。
【0082】
次に、図6に上記光学特性を評価した実施例1の塗膜の走査型電子顕微鏡写真を、また図7に同じく比較例1の電子顕微鏡写真を示す。
図6から、塗膜中でも塗工されたものでは、本発明の複合有機粉末は球面が横を向かず、表又は裏を向く配向性があるように観察されている。このことがより効果的な光学特性を示すことに繋がっていると考えられる。
【0083】
次に、上記乾式アトライタを用いた場合の例を示す。
【実施例13】
【0084】
乾式アトライタに半球状有機粉末(積水化成品工業製テクポリマー 平均一次粒子径10μm、架橋ポリメタクリル酸メチル)35質量部に、有機色素の一種である赤色201号(粒子径0.1μm)15質量部と、直径5.5mmのアルミナビーズ750質量部を入れ、毎分300回転の速度で10分間撹拌し、複合有機粉末を得た。この粒子の走査型電子顕微鏡写真の例を図8に、下記条件で測定した場合の光学特性評価結果を図9、図10に示す。図9の結果から、本実施例では受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められている。
試料の測定条件としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムに測定試料2質量部をエチルアルコール20質量部と混合し、それをクリアラッカー40質量部と混ぜた後、超音波で5分粉砕したものをスリット幅0.1mmのアプリケーターを用いて塗工したものを用いた。
【実施例14】
【0085】
乾式アトライタに半球状有機粉末(積水化成品工業製テクポリマー 平均一次粒子径10μm、架橋ポリメタクリル酸メチル)35質量部に、有機色素の一種である赤色202号15質量部と、オクチルトリエトキシシラン2.5質量部と直径5.5mmのアルミナビーズ750質量部を入れ、毎分300回転の速度で10分間撹拌し、複合有機粉末を得た。本実施例は受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められた。
【実施例15】
【0086】
乾式アトライタに半球状有機粉末(積水化成品工業製テクポリマー 平均一次粒子径10μm、架橋ポリメタクリル酸メチル)35質量部に、平均一次粒子径35nmのシリカ・アルミナ処理ルチル型微粒子酸化チタン10質量部と直径5.5mmのアルミナビーズ750質量部を入れ、毎分300回転の速度で10分間撹拌した。ついで、ここに、有機色素の一種である赤色201号15質量部とオクチルトリエトキシシラン4質量部を加え、さらに10分間毎分300回転の速度で撹拌し、複合有機粉末を得た。この複合有機粉末は油や水に接触した際の色変化が少ない傾向が認められた。また、本実施例は受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められた。
【実施例16】
【0087】
実施例15のシリカ・アルミナ処理ルチル型微粒子酸化チタン10質量部の代わりに平均一次粒子径30nmのシリコーン・シリカ処理微粒子酸化亜鉛12質量部を用いた他は全て実施例14と同様にして製品を得た。この複合有機粉末は、油や水に接触した際の色変化が少ない傾向が認められた。
また、本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められた。
【実施例17】
【0088】
実施例13の赤色201号の代わりに赤色202号を用いた他は全て実施例13と同様にして製品を得た。本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が上昇する傾向が認められた。実施例13と同じ条件で測定した場合の光学特性評価結果を図11、図12に示す。
この結果から、本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められた。
また、参考までに赤色202号の色相・彩度変化の例を図13に示す。
図13では色相は変化していないのに対して、図12では色相が動いていることが判る。本発明の複合有機粉末は必ず特徴ある明度変化を伴うが、素材によってはこのように色相が変化するものも認められる。
【実施例18】
【0089】
実施例14の赤色202号の代わりに赤色226号を用いた他は全て実施例14と同様にして製品を得た。
本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が大きく上昇する傾向が認められた。
【実施例19】
【0090】
実施例14の赤色202号の代わりに黄色4号を用いた他は全て実施例14と同様にして製品を得た。
本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が大きく上昇する傾向が認められた。
【実施例20】
【0091】
実施例14の赤色202号の代わりに黄色5号を用いた他は全て実施例14と同様にして製品を得た。
本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が大きく上昇する傾向が認められた。
【実施例21】
【0092】
実施例14の赤色202号の代わりに青色1号を用いた他は全て実施例14と同様にして製品を得た。
本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が上昇する傾向が認められた。
【実施例22】
【0093】
実施例14の半球状有機粉末の代わりに粒子径5〜30μmの範囲にある粒子を含む小麦澱粉を用いた他は全て実施例14と同様にして製品を得た。
本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が上昇する傾向が認められた。
なお、用いた半球状の形態を持つ小麦澱粉の走査型電子顕微鏡写真の例を図14に示す。
さらに、小麦澱粉に代えて、2〜40μmの粒子径を持つタピオカ澱粉を使用した場合においても、小麦澱粉と同様に受光角70〜80度の範囲においてL*値が上昇する傾向が認められた。
【0094】
実施例13〜21について、塗擦により色素が剥離するか否かの検討を実施した。試験方法としては、走査型電子顕微鏡を用い、塗擦前後の状態を観察することで実施した。その結果いずれの試料においても塗擦前後で子粒子である色素の大きな剥離は観察されなかった。また、同時に処理に伴い半球形状の形態が維持されているか否かの確認を実施したが、図8にも示したように半球状の形状は維持されていた。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】実施例1の走査型電子顕微鏡写真の例
【図2】実施例1の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の光学特性を変角分光測色システム(ゴニオフォトメーター、村上色彩技術研究所製GCMS−3B型、入射角0度、受光角15〜80度)を用いて測定した場合の明度変化の結果
【図3】実施例1と同様に比較例1の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の明度変化の結果
【図4】実施例1の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の色相・彩度変化の結果
【図5】実施例1と同様に比較例1の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の色相・彩度変化の結果
【図6】実施例1の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の表面の状態の走査型電子顕微鏡写真の例
【図7】比較例1の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の表面の状態の走査型電子顕微鏡写真の例
【図8】実施例13の走査型電子顕微鏡写真の例
【図9】実施例13の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の明度変化の結果
【図10】実施例13の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の色相・彩度変化の結果
【図11】実施例16の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の明度変化の結果
【図12】実施例16の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の色相・彩度変化の結果
【図13】赤色201号をフィルムに塗工した時の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の色相・彩度変化の結果
【図14】小麦澱粉の走査型電子顕微鏡写真の例
【図15】従来の再帰反射の応用時の反射光の態様
【図16】本発明の反射光の態様
【技術分野】
【0001】
本発明は、半球状〜略半球状の形態を有する有機粉末の表面を、一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素と結合剤とで被覆することによって、高い彩度を持ちながら、大きな反射角領域において明度を向上させることができるため、立体物の輪郭の強調効果や、デザイン上の優れた色彩効果が得られる複合有機粉末、それを配合した樹脂組成物や製品、化粧料、塗料及びインキ等に関する。また、特に本発明の複合有機粉末を化粧料に使用したときには、光学的な効果以外に毛穴を目立たせない均一感のある化粧塗膜が得られ、化粧崩れした場合でも汚くなく、きれいな崩れ方をする化粧料が得られる。
【背景技術】
【0002】
従来、半球状〜略半球状の形態を持った有機粉末が開発され、上市されている(特許文献1〜3)。また、最近では、特許文献4のように粉末中に無機粒子等を含有したものも合成できるようになっている。また、天然物において一部の澱粉粒子は、半球状の形態を有しており、半球状の形態を有する粉末は既に良く知られている。また、半球状の形態は、一種のレンズのような効果を持つことから、光学的な効果を発揮することも着目されており、例えば、半球状の樹脂粒子を原料として、樹脂粒子の表面を油剤成分に、多価アルコール、有機酸エステル系油剤、イソステアリルアルコール等の高級アルコール、流動パラフィン等の炭化水素、アルキル変性オルガノポリシロキサン、末端変性オルガノポリシロキサン等に適宜粘度調節剤を併用して被覆した結合樹脂粒子とすることによって光学的に特徴のある化粧料を得ることも知られている(特許文献5)。
しかしながら、上記従来技術にあるように単に表面を無機酸化物処理や色素処理しただけの場合、半球状粒子が表面に並ぶことによる光の拡散効果を利用した光学的に特徴のある化粧料は容易に得られるものの、光の方向性をコントロールするような技術については全く見いだされていない。このため、特許文献5の技術では、処理された粒子の光学的特性が不明確であり、光の走行方向が一定しない上に、粒子の処理条件によっては光学特性がでないなどの問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−278746号公報
【特許文献2】WO01/070826号公報
【特許文献3】特開2004−27008号公報
【特許文献4】特開2004−196859号公報
【特許文献5】特開2005−126406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、化粧品は、勿論、樹脂組成物、製品、塗料やインキ等においても、角度によっては本来の色素の色よりもより強く着色された光を放出する。これにより輪郭部の色が強調される効果を有し、かつ、高い彩度を持ちながら、大きな反射角領域において明度が向上し、立体物の輪郭の強調効果やデザイン上の優れた色彩効果が得られる効果を発揮する製品が求められていた。このような化粧品であれば、毛穴を目立たせない均一感のある化粧塗膜が得られ、さらに化粧崩れした場合でも汚くなく、きれいな崩れ方をする化粧料が得られる可能性が高いが、未だそのような製品は製品化されていなかった。
上述するように従来の樹脂球体又は半球体を使用した場合では、その表面を単に顔料や色素で被覆しても、その効果が弱かったり、球面であるために被覆がうまくいかなかったり、反射効果が不十分である等の問題があった。
【0005】
例えば、引用文献5では、上述するように半球形状の樹脂粒子を所定粘度を有する油剤で被覆し、このような表面処理を施すことによって樹脂粒子に光学的な特徴を付与したものであるが、このような固形粉末化粧料を付着させて皮膚に沿って擦ると、樹脂粒子又は/及び結合樹脂粒子が崩壊して生成する樹脂粒子がその球面部を外方に向けて配向するので、外用剤中に含有させて用いることにより、樹脂粒子の球面部によって皮膚上に凸レンズの連続構造を形成することができ、この凸レンズの連続構造によって肌に入射する光を効果的に反射、拡散させて、皮膚の凹凸や小皺を見えにくくして肌をきめ細かく明るく見せて、肌を美しく整えることは可能であるが、その光学効果は、あくまで凸レンズの連続構造によって肌に入射する光を効果的に反射、拡散させて皮膚の凹凸や小皺を見えにくくして肌をきめ細かく明るく見せて、肌を美しく整えることができる効果であって、これらの効果は光の拡散にともなう光学現象のみであって、光が粒子内に入って反射・回折することは考慮されていない。
【0006】
これに対して、本発明では、再帰反射における光学効果をさらに引き出すために種々の検討を実施し、顔料や色素を用いて特定の処理手段を半球体に施すことにより、光学効果を大幅に改善することを課題とする。
すなわち、本発明では、有機粉末と顔料や色素等とボールミルを使用した機械的な混合被覆により有機粉末の表面に顔料や色素を被覆することによって、粒子内の光の反射・回折を利用して、図16に示すように光の放出方向をコントロールすることにより、引用文献5では想定されていない新しい光学効果を見出したものである。さらに、ボールミルとして、アトライタを使用し、結合材としてアクリル系樹脂、シラン系化合物、有機チタネート系化合物のような結合材を用いて顔料及び/又は結合材を有機粉末表面に被覆する場合に特に効果的なことを見出したのである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、これらの問題に鑑み、効果的に光学効果を引き出すための検討を実施した結果、その内部に顔料や色素を含有していてもいなくてもよい半球状〜略半球状の形態を有する有機粉末の表面を、一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素で被覆したことで、高い彩度を持ちながら、大きな反射角領域において明度を向上させることにきわめて優れた特性を有する複合顔料を開発した。
【0008】
上記明度を向上させることについて、さらに言及すると、従来の上記公知技術の顔料は、例えば入射角0度の条件で光を照射した場合、受光角が大きくなるにつれて明度、彩度共に減少するのが一般的であり、これだと化粧料においては、光学的には顔の輪郭や鼻などの凹凸がぼやける方向に進んでしまう。そのため、低次酸化チタン被覆雲母などを用いて輪郭部をより暗く強調する技法などが開発された。本複合顔料は逆に受光角が大きくなるに従って、特に高受光角領域において明度と彩度が逆に上昇する特性を持つことから、輪郭部の発色性を強くすることで輪郭を強調する機構を持つ。
【0009】
すなわち、本発明で得られる複合有機粉末顔料は、立体物に塗布された場合、輪郭部分をより強調する特性を有することを見いだした。この特性は、例えば化粧料においては、口唇の輪郭を明確にする、顔や鼻の輪郭を強調してはっきりさせる等の効果を有し、さらに塗料や樹脂においても光の入射角に対して70〜80度程度離れた角度の明度が強調されることから、より意匠性に優れた製品を得ることができる。これらの特性は、有機粉末原料に対して結合剤を併用することによって顕著に表れることを見出した。
【0010】
インキにおいては、見る角度によって、雲母チタン等のパール剤とは異なった、色相ではなく、明度変化を起こすインキとしても活用することができる。
また、インキの外に、樹脂組成物や製品、化粧料、塗料、繊維等にも配合することによって同様の効果を発揮させることができる。また、本発明の複合有機粉末によって、毛穴を目立たせない均一感のある化粧塗膜が得られ、化粧崩れした場合でも汚くなく、きれいな崩れ方をする化粧料が得られる。
【0011】
本願に記載された発明は、基本的には以下の構成よりなる。
〔1〕平均一次粒子径が1〜1000μmの半球状〜略半球状の有機粉末の表面を一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素で被覆するときに、結合剤を併用することによって被覆したことを特徴とする複合有機粉末。
〔2〕上記被覆が、機械的被覆であることを特徴とする〔1〕に記載の複合有機粉末。
〔3〕上記機械的被覆が、ボールミルを用いた被覆であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の複合有機粉末。
〔4〕ボールミルを用いた機械的被覆が、乾式アトライタを用いた被覆であることを特徴とする〔3〕に記載の複合有機粉末。
〔5〕上記被覆が、噴霧乾燥被覆を用いた被覆であることを特徴とする〔1〕に記載の複合有機粉末。
【0012】
〔6〕半球状〜略半球状の形態を有する有機粉末100質量部の各粉末表面に対して、一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素5〜500質量部と結合剤0.1〜100質量部とを被覆したことを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の複合有機粉末。
〔7〕結合剤が、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、シラン系化合物、有機チタネート系化合物及び反応性シリコーンから選ばれたものであることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の複合有機粉末。
〔8〕複合有機粉末を5〜12.5質量%の濃度で透明樹脂に分散させたフィルムを用い、村上色彩技術研究所製変角分光測色システムGCMS−3B型による変角分光測色システムを用いて、入射角0度、フィルムの背景に白色プレートを使用する条件で測定した場合に、受光角70〜80度の範囲においてL*値の低下が見られないことを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の複合有機粉末。
【0013】
〔9〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の複合有機粉末を配合したことを特徴とする樹脂組成物又は樹脂製品。
〔10〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の複合有機粉末を配合したことを特徴とする化粧料、塗料又はインキ。
〔11〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の複合有機粉末を配合したことを特徴とする繊維製品。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、その内部に顔料や色素を含有していてもいなくてもよい半球状〜略半球状の形態を有する有機粉末の表面を、一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素を結合剤を用いて被覆したことで、高い彩度を持ちながら、大きな反射角領域において明度を向上させることができるため、立体物の輪郭の強調効果や、デザイン上の優れた色彩効果が得られることを特徴とする複合有機粉末と、その特性を生かした樹脂組成物や樹脂製品、あるいは化粧料、塗料及びインキ等が得られる。
また、化粧料に用いた場合には、本発明の複合有機粉末を使用することによって、毛穴を目立たせない均一感のある化粧塗膜が得られ、さらに化粧崩れした場合でも汚くなく、透明感、毛穴の目立ちにくさ、化粧の崩れ方のきれいさ等が優れ、従来の原料粒子では到底得られなかった立体的意匠効果を有する化粧料を製品化することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
すなわち、本発明の処理半球粒子による反射は、鏡と球体レンズを用いて入射光を反射させる点では従来技術と共通するものの、図16に示すように従来技術の再帰反射ではなく、球体自体が半球状であるから、球体レンズの下半分をカットした形となっている。そのため、底面での光の反射角が変わることで、光を入射方向でなく、略横方向に曲げているので、光は半球状粉末の周囲に加工された色素成分から色情報を受け取り、角度によっては本来の色素の色よりもより強く着色された光を放出する。これにより輪郭部の色が強調される効果が生まれる。
【0016】
また、母体の半球状粉体も、透明樹脂素材のものであれば、もともと下方向から入射された光を全方向に拡散させる目的でディスプレー用途に開発されたもので、マイクロレンズ特性を有しているので、本発明で使用するとさらに反射効果を活用することができる。
【0017】
このように本発明者の開発した複合有機粉末は、化粧料に限られることなく、樹脂組成物や製品、塗料やインキ等においても高い彩度を持ちながら、大きな反射角領域において明度を向上、立体物の輪郭の強調効果やデザイン上の優れた色彩効果が得られる効果を発揮することができる。また、本発明の複合粒子におけるように、複合化によって、肌面の毛穴を目立たせない均一感のある化粧塗膜が得られ、さらに化粧崩れした場合でも汚くなく、きれいな崩れ方をする化粧料が得られることとなった。
【0018】
また、自動車塗料に応用した場合には、ベースコート層に光輝性粉体を配合し、ミドルコート層に半球状粉体を配合したときは、塗膜がスリガラス状の光学特性を示してしまい、塗装の印象がボケた感じになるが、本複合有機粉末を用いた場合はこのようなことが起こらず、エッジが強調される特徴を有している。特に本発明の複合有機粉末を使用したときには、塗装面が角になっておらず、局面の組み合わせで形成されているような造形物の場合、種々の目視角度から色の変化が観察されるメリットがある。
【0019】
まず、本発明で用いる有機粉末は、平均一次粒子径が1〜1000μmの範囲にあり、略レンズ状の形態を含む半球状〜略半球状の形態を有するものであれば、特に限定はないが、その内部には顔料や色素を含有していてもいなくてもよく、合成、天然を問わず、例えば工業的に供給されている積水化成品工業社製の非球状微粒子ポリマーLMX等が知られており(http://www.tech-p.com/product/development/biconvex.html参照。2005年4月29日検索)、また、小麦澱粉、タピオカ澱粉も同様の形態を持ち有用である。
なお、本発明で言う平均一次粒子径とは、レーザー光を用いて粒度分布を測定した際の(体積)平均粒子径や電顕写真から粒子径を実測したもの等を用いて測定したものを意味する。
また、本発明で用いる半球状粉体は、その粒子径が後に処理される一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素よりも大きいことが必要である。半球状粉体が後に処理される一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素よりも小さいと本発明の目的とする光学効果が得られない問題がある。
【0020】
本発明では、用途に応じて非球状有機粉末の粒子径を変えることが好ましい。
例えば、化粧料では、平均一次粒子径が1〜20μmの範囲に入るものが好ましい。20μmを超えると、肌への付着性が悪くなる問題がある。一般的には、粒子径が大きくなりすぎると、発色にムラがでる傾向があるため、一般工業用途においても1〜50μmの範囲がより好ましい。また、本発明の非球状有機粉末は、半球状〜略半球状の形態を有するものであれば、特に限定はなく、その内部には顔料や色素を含有していてもいなくてもよいが、その内部に顔料や色素を含有する場合、顔料や色素はそれぞれ用途向けの法令に合わせたものが使用されている限り限定はないが、もとの樹脂粒子よりも大きな粒子径を持つものは好ましくない。
なお、これらの顔料や色素の例については、有機粉末の被覆剤とほぼ類似しているため、後述することとする。
【0021】
本発明で用いる粒子は、前述するように半球状〜略半球状の粒子形状を持つことが必須であり、内部に空洞等を有していてもいなくても構わないし、その内部には顔料や色素を含有していてもいなくてもよいが、円又は楕円状の底面は平滑な平面である方が光学特性が優れているメリットがある。
【0022】
本発明では、前記有機粉末の表面を、一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素と結合剤とで被覆するか、半球状の構造を壊さない程度に機械的に処理することが基本的な構成である。
本発明の半球状の有機粉末として、樹脂粉末を使用するときには、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂のようなビニル系樹脂等の合成樹脂から形成されたものを使用することができるが、その外に小麦澱粉やタピオカ澱粉を使用することができるが、有機粉末として小麦澱粉、タピオカ澱粉を用いる場合では、小麦澱粉、タピオカ澱粉は熱水中の安定性に欠け、形状が変化してしまう問題があるため、小麦澱粉、タピオカ澱粉については機械的に被覆する方法を用いることが好ましい。また、これら澱粉を用いる場合では事前にその表面をシラン化合物などで撥水化処理しておくことが好ましい。
【0023】
本発明における顔料及び/又は有機色素としては、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ等;有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロースパウダー、シルクパウダー、12ナイロンや6ナイロン等のナイロンパウダー、ポリアクリルパウダー、ポリアクリルエラストマー、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末、ラウロイルリジン等;界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等;有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γー酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成有機粉末等;パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母、酸化チタン・酸化鉄被覆マイカ等;金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダー等;タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等;天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等から選ばれる顔料が挙げられる。
【0024】
本発明では、上記の各顔料及び/又は有機色素を使用することが可能であるが、好ましい光学効果を得るためには一定の条件が必要である。本発明で用いる複合有機粉末が優れた光学特性を示す理由は、半球状有機粉末の形状に起因した光の再帰反射様原理の変形例である。
従来の再帰反射は図15に示したように、球体レンズの下半分に反射膜をコーティングして、光が入射した方向に光を戻すものであるが、原理としては球体レンズ内部で3〜4回光を曲げることことにより得られる特性である。これに対して、本発明の複合有機粉末は図16に示したように球状レンズの下半分が無く、それに伴って、再帰反射モデルと比べて光の放出方向がレンズの横方向に変化していることが、本発明の複合有機粉末が特徴的な光学特性を示す原因であると推察される。
【0025】
そのため、原理的に、光は半球状有機粉末の内部に入り、反射、散乱することが必要と考えられる。従って、例えば可視光域における光隠蔽性の高い顔料を高濃度で均一に半球状有機粉末に被覆した場合、光は半球状有機粉末の内部には入らず、複合有機粉末の表面で散乱と反射するだけとなり、その光学特性は透明感がなくなり、立体的意匠効果は失われてしまう。すなわち、光が半球状有機粉末の中に入り込めるように、顔料及び/又は有機色素の処理濃度もしくは処理の均一性は決定される必要がある。しかしながら、比較的高濃度でも透明性のある有機色素は別にして、無機顔料については顔料の凝集、偏在状態、比表面積、結晶形、処理方法などによっても光の透過性は大きく異なってしまうため、一概に規定することは難しい。そこで、本発明では、得られた複合有機粉末を用いて再帰反射に起因すると思われる光学特徴を利用することで、被覆状態が可視光を透過できる状態にあるのか否かを判断している。
【0026】
光学特徴を利用する例としては、例えば複合有機粉末を5〜12.5質量%の濃度で透明樹脂中に分散させたフィルムを用いて、村上色彩技術研究所製の変角分光測色システムGCMS−3B型変角分光測色システムを用いて、入射角0度、フィルムの背景に白色プレートを使用する条件で測定した場合、受光角70〜80度の範囲においてL*値(国際照明委員会CIE L*a*b*で言うところのL*値と同じものである)の低下が見られないか、70度から80度にかけて上昇する傾向が見られると、本発明の複合樹脂粉末に求められる光学特性が得られていると判断できる。通常の顔料や色素の場合、この受光角領域では、受光角70度に対して80度でのL*値は低下しているのが一般的である。
【0027】
また、これらの顔料は、撥水化や親水化等の表面処理がなされていても構わない。撥水化表面処理の例としては、例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン処理、シリコーンレジン処理、シリコーンガム処理、アクリルシリコーン処理、フッ素化シリコーン処理等のオルガノシロキサン処理、ステアリン酸亜鉛処理等の金属石鹸処理、シランカップリング剤処理、アルキルシラン処理等のシラン処理、有機チタネート処理、有機アルミネート処理、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩、パーフルオロポリエーテル処理等のフッ素化合物処理、N-ラウロイル-L-リジン処理等のアミノ酸処理、スクワラン処理等の油剤処理、アクリル酸アルキル処理等のアクリル処理等が挙げられ、これらの1種以上を組み合わせて使用することが可能である。
【0028】
上記顔料の内、雲母等板状の形状を有する粉末を用いたい場合は、事前に粒子径が5μm以下になるように粉砕を行っておくことが必要である。粒子径が5μmを超えてくると、母粒子の有機粉末の大きさがたとえ大きくても、有機粉末表面に顔料を固定できず、光学効果がうまくでない問題がでてくる。また、前述したが、これらの顔料は有機粉末中に包含されていても構わない。また、用いる顔料は5μm以下であれば構わないが、超微粒子化すると、複合顔料の光学特性や感触が変わるため、使用目的に合わせて適宜粒子径を1nm〜5μmの範囲で選択することが好ましい。
【0029】
本発明で用いる有機粉末に対する上記顔料の被覆量としては、例えば有機粉末100質量部に対して、上記顔料(及び有機色素の合計)が5〜500質量部の範囲にあることが好ましい。この範囲であれば、本発明の目的とする光学効果が得られやすい。
【0030】
本発明で用いる結合剤は、母材となる有機粉末の上に前記顔料を固定化もしくは均一に処理するために使用するものであり、樹脂、粘着剤、反応性有機化合物等が使用される。結合剤は、油溶性、水溶性は特に問わないが、油溶性もしくは母材上で重合、硬化などの反応をするものが好ましい。結合剤に重合、硬化するものを用いた場合、顔料表面をシランカップリング剤等の反応性材料で被覆することも好ましい。また、触媒を添加することも可能である。結合剤を使用することにより、前記顔料はその後の製剤を作成する際の混合工程や粉砕工程を通ってもその形状を維持することができ、また、前記顔料を母材となる有機粉末の上に均一に被覆できる効果にも優れる。また、用いる顔料の種類や凝集状態によっては結合剤を用いないと光が複合粒子表面で乱反射してしまう場合があるが、結合剤を用いることで乱反射が抑制され、より優れた光学特性を得ることができるメリットもある。
結合剤の使用量は、有機粉末100質量部に対して、0.05〜200質量部、好ましくは0.1〜100質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0031】
結合剤の好ましい例としては、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などの樹脂、シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機化アルミニウム、反応性シリコーン等が挙げられるが、特にシリコーン樹脂、シラン系化合物、反応性シリコーンが好ましい。樹脂としては、各種の工業用樹脂が使用可能であるが、特にシリコーン樹脂としては、トリメチルシロキシケイ酸やフッ素化シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂などが挙げられる。
【0032】
反応性シリコーンの例としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体、エポキシ変性シリコーン、オレフィン変性シリコーン等が挙げられ、シラン系化合物としてはアルキルシランやフッ素化シラン等の各種シランカップリング剤やテトラエトキシシラン等が挙げられる。有機チタネート系化合物としては、テトライソプロポキシチタン等の有機化チタンや、長鎖カルボン酸型のアルキルチタネートとして、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられ、ピロリン酸型アルキルチタネートとして、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート等が挙げられ、亜リン酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられ、アミノ酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等の1種以上が挙げられる。有機化アルミニウムとしては、アルミニウムカップリング剤などが挙げられる。これらの内、特にアルキルトリアルコキシシランは、ボールミルを用いた複合化を行う際に用いると母粒子の表面に子粒子が均一に被覆される傾向が強くなるため有用である。
【0033】
他の結合剤としては、固形油やガム状物を用いる方法もあるが、固定化が不十分になる場合があり、ワックスやシリコーンガム等の固形油やガム状物を用いる場合には、上記反応性の化合物等と組み合わせて使用することが好ましい。
【0034】
本発明の複合有機粉末を得るには、溶剤中に各成分を混合してから溶剤を留去して被覆し、場合によって加熱する方法、水-アルコール溶媒等水系溶媒中に有機粉末を分散した中に、撥水化した顔料と結合剤を投入し、有機粉末表面に被覆した後、乾燥する方法、各成分の混合物をスプレードライヤーや流動造粒乾燥機等を用いて乾燥する方法、ボールミルなどの磨砕装置等を用いる方法等が挙げられる。品質安定性的にアトライタなどボールミルを用いたものや、スプレードライヤー処理品が好ましい。また、一度粉末として得られた複合有機粉末をさらに前述のような各種の表面処理をしたり、加熱処理したり、分級したりすることも可能である。
【0035】
以下ボールミル(乾式アトライタ)を用いた場合の試作例を示す。
アトライタの回転速度は毎分300回転に設定した。回転速度が遅いと複合化がうまくいかず、時間がかかる問題があり、回転速度が速いと、半球状〜略半球状の有機粉末が砕かれて形状が維持できなくなり、本発明の光学効果が失われる問題がでる。回転数は用いるビーズ(撹拌媒体)の粒子径、材質、充填率によっても変化するので、回転速度を設定する際は電子顕微鏡観察によりどの程度の回転数で半球状の形状が崩れだすのかを確認する必要がある。次に、ビーズはアルミナ製の直径5.5mmを使用した(材質はジルコニアなどでも問題なく、特に限定されない)。ビーズは直径が大きいと複合化効率が落ちる一方で、直径が小さくなると製造後に目的の複合有機粉末とビーズの分離が難しくなる問題があり、直径5mm前後のものが使いやすい。充填は粉体原料0.5Kg、ビーズ7.7Kgを用いた。この割合は用いる粉体原料の体積によって調整することが好ましい。このような条件で10〜20分間撹拌を実施すると、母粒子の上に子粒子が複合化した粉末が得られる。さらに長時間実施することも可能であるが、顔料の形状が崩れだすことと、生産効率が悪くなる割に、目的の光学特性はあまり向上しないことが多い。この際に粉体原料と共にオクチルトリエトキシシランのような結合剤にあたる化合物を同時に添加して処理するとより均一な処理ができる上、母粒子と子粒子がより強固に固定化される結果、次に述べる各種製剤に本発明の複合有機粉末を配合した際の製造に、母粒子から子粒子が剥離する原料を抑制することが可能となる。尚、結合剤を用いた場合は、さらに加熱処理などを実施しても構わない。
【0036】
こうして得られた本発明の複合有機粉末は、さらに各種の表面処理をしてもしなくても構わない。表面処理の例としては前述の表面処理の例が挙げられる。
【0037】
本発明の複合有機粉末は、化粧料、塗料、樹脂組成物や樹脂製品、インキに用いると、光学特性に優れたものが得られる。これらの製剤に対する配合量としては、いずれも製剤中の顔料配合量の内の1〜100質量%の範囲が挙げられるが、特に限定されるものではない。1質量%未満では、光学特性が得られ難い問題がある。
【0038】
本発明の処理半球粒子による反射は、上述するように従来技術の再帰反射ではなく、球体自体が半球状であるから、球体レンズの下半分をカットした形となっている。そのため、底面での反射角が変わることで、光を入射方向でなく、略横方向に曲げているので、光は半球状粉末の周囲に加工された色素成分から色情報を受け取り、角度によっては本来の色素の色よりもより強く着色された光を放出する。これにより輪郭部の色が強調される効果が生まれる。また、母体の半球状粉体も、透明樹脂素材のものであれば、もともと下方向から入射された光を全方向に拡散させる目的でディスプレー用途に開発されたものもあり、マイクロレンズ特性を有しているので、本発明で使用するとさらに反射効果を活用することができる。
【0039】
このように本発明者の開発した複合有機粉末は、化粧料に限られることなく、樹脂組成物や製品、塗料やインキ、自動車塗装等においても高い彩度を持ちながら、大きな反射角領域において明度を向上、立体物の輪郭の強調効果やデザイン上の優れた色彩効果が得られる効果を発揮することができ、複合化によって、毛穴を目立たせない均一感のある化粧塗膜が得られ、さらに化粧崩れした場合でも汚くなく、きれいな崩れ方をする化粧料が得られる。
【0040】
そして、本発明の化粧料、塗料、樹脂組成物又は樹脂製品、インキ等では、上記複合有機粉末以外に、従来、これらの製剤に配合されている各種の顔料、紫外線吸収剤、油剤、界面活性剤、フッ素化合物、樹脂、粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、重合開始剤、可塑剤、生理活性成分、触媒又は増粘剤等の成分を使用することができる。特に光学特性を有する雲母チタン等のパール剤、アルミニウムフレーク等の光輝性顔料と組み合わせて用いると、より特徴のある製剤を得ることができるメリットがある。
【0041】
以下、各製剤で想定されるメリットについて述べる。
まず、化粧料において、本発明の複合顔料を含むものを使用したときには、元の未処理顔料のものよりも明度、彩度が高い特徴を生かすことができ、メイクアップ化粧品において、より明るく、透明感があり、くすみにくい肌色をつくることができる。
また、本複合顔料のもう一つの特徴である入射光に対して70度以上離れた角度の反射光が強くなる現象を生かして鼻や口唇、顔全体の輪郭強調が可能であり、サンスクリーン剤等のボディ化粧料用途では身体の輪郭をより強調できる製剤等が作成可能となる。塗料においては、車や造形物の輪郭強調が可能であり、意匠性の向上が期待できる。
さらに、本発明の複合顔料は、彩度が高いことから、色の美しさをより引き出すことが可能である。次に、樹脂組成物や樹脂製品では、原料ペレットに本複合顔料を練りこんだものを配合する等の方法で容易に導入することが可能であり、その際、製品としては、より透明感に優れ、深みのあるものが得られる。
また、インキでは、彩度の向上と、見る角度によって、パール顔料とは違った色の濃淡を強調した製品が得られる。さらに、塗料においても同様の製品が得られる。
さらに、樹脂製品の一例である繊維の場合、本複合顔料を取り込んだ組成物を原料として得られる繊維は、見る角度によって色の濃淡が変わる等、色彩、意匠性に優れた製品とすることができる。
【0042】
本発明の化粧料としては、ファンデーション、頬紅、白粉、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、フェイスパウダー、ネイルカラー等のメイクアップ化粧料や、ボディパウダー、ボディミルク又はボディローション等の全身用化粧料、サンスクリーン、化粧下地、乳液、クリーム等の基礎化粧料、染毛料、ヘアマニキュア又はヘアスプレー等の頭髪化粧料等が挙げられるが、特にファンデーション、頬紅、アイシャドウ、ネイルカラー又は全身用化粧料が本複合顔料の意匠効果が得られやすいメリットがある。
【0043】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明する。
また、実施例及び比較例で用いた各種特性に対する評価方法を以下に示す。
【0044】
変角分光測色
村上色彩技術研究所製変角分光測色システムGCMS−3B型を用い、試料を入射角0度、受光角15〜80度の範囲で測定を行った。測定データは国際照明委員会CIE L*a*b*としてデータ化し、比較試料との比較を実施した。
【実施例1】
【0045】
半球状有機粉末(積水化成品工業製テクポリマー 平均一次粒子径10μm、架橋ポリメタクリル酸メチル)70質量部に、有機色素の一種である赤色201号(粒子径0.1μm)30質量部を結合剤としてシリコーン樹脂(トリチメルシロキシケイ酸)10質量部とジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体3質量部を用いて下記の方法により固定した。
なお、シリコーン樹脂は溶質30質量%のデカメチルシクロペンタシロキサン溶液を使用した。
図1には、本実施例の走査型電子顕微鏡写真の例を示す。
また、後述するが、本品は受光角70〜80度の範囲においてL*値が上昇する傾向が認められた。
【0046】
製造方法;イソプロピルアルコール2000質量部にシリコーン樹脂溶液66.6質量部とジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体6質量部を溶解させた。この溶液をホモミキサーで撹拌しながら、あらかじめミキサーを用いて混合しておいた半球状有機粉末140質量部と赤色201号60質量部の混合物をゆっくりと投入した。全体が均一になったのを確認した後、スプレードライヤーを用いて送風出口温度200℃にて噴霧し、回収した。
得られた粉体は、濃い赤色の粉末であった。
【実施例2】
【0047】
実施例1の赤色201号の代わりに、平均粒子径0.3μmの黄色酸化鉄を用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
尚、本品は受光角70〜80度の範囲においてL*値が上昇する傾向が認められた。
【実施例3】
【0048】
実施例1の赤色201号の代わりに、平均粒子径0.1μmのベンガラを用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
尚、本品は受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められた。
【実施例4】
【0049】
実施例1の赤色201号の代わりに、平均粒子径0.1μmの黒色酸化鉄を用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
尚、本品は受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められた。
【実施例5】
【0050】
実施例1の赤色201号の代わりに、平均粒子径0.3μmの酸化チタンを用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
尚、本品は受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められた。
【実施例6】
【0051】
実施例1の半球状有機粉末の代わりに、平均一次粒子径45μmの半球状有機粉末を用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
尚、本品は受光角70〜80度の範囲においてL*値が上昇する傾向が認められた。
【0052】
〔比較例1〕
実施例1で用いたものと同じ赤色201号単体を以って比較例とした。
【0053】
〔比較例2〕
実施例1において結合剤を用いなかった以外は全て実施例1と同様にして製品を得た。
【0054】
〔比較例3〕
実施例1において赤色201号の代わりに平均粒子径15μmの赤色雲母チタンを用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
【0055】
〔比較例4〕
実施例5において半球状有機粉末の代わりに平均一次粒子径10μmの真球状ポリメタクリル酸メチルパウダーを用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
【実施例7】
【0056】
化粧料(ファンデーション)
表1の処方と製造方法に従ってファンデーションを作成した。
なお、表中の単位は質量%である。
【0057】
【表1】
【0058】
成分Aをミキサーを用いて混合した。一方、成分Bを80℃で均一に混合した。成分Aに成分Bを加え、よく撹拌、粉砕した後、60メッシュを通し、金型を用いて金皿に打型して製品を得た。
得られたファンデーションをパネラーに使用させたところ、明度が高く、透明感があり、色があざやかで、鼻や顔の輪郭がはっきりする特性を有していた。また、良好な使用感を有しており、その上毛穴が目立ちにくい特性を持っていた。
さらに、本ファンデーションを混合肌の女性に朝9時に使用を開始してもらい、12時まで日常生活をしてもらってから、その崩れ方を評価したところ、皮脂が多い鼻、額部分においても崩れ方はきれいであった。
【0059】
〔比較例5〕
表2の処方と製造方法に従ってファンデーションを作成した。なお、表中の単位は質量%である。
【0060】
【表2】
【0061】
成分Aをミキサーを用いて混合した。一方、成分Bを80 ℃で均一に混合した。成分Aに成分Bを加え、よく撹拌、粉砕した後、60メッシュを通し、金型を用いて金皿に打型して製品を得た。本ファンデーションは止まりが悪く、使用感が悪い問題があった。肌へのつき方にムラがあり、毛穴が目立ち、化粧塗膜が美しくない問題を有していたため、実施例1のような美しい塗膜を形成せず、光学的な特徴も認められなかった。また化粧崩れした場合、ヨレが目立ち、汚かった。
【0062】
〔比較例6〕
実施例7で用いた複合有機粉末の代わりに、シリコーン樹脂(トリチメルシロキシケイ酸)10質量部とジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体3質量部を用いてそれぞれの構成粉体を実施例1の方法に準じて表面処理して得られる複合化していない原料粉体をそのまま用いた他は全て実施例7と同様にして製品を得た。
【0063】
〔比較例7〕
比較例6で用いたシリコーン樹脂(トリチメルシロキシケイ酸)10質量部とジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体3質量部で表面処理した半球状有機粉末の代わりに、同じ表面処理をしたセリサイトを用いた他は全て比較例6と同様にして製品を得た。
【0064】
〔比較例8〕
実施例7で用いた複合有機粉末の代わりに、結合剤であるシリコーン樹脂(トリチメルシロキシケイ酸)とジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体を用ない他は全て実施例1の製造方法に準じて製造した複合粉体を用い、他は実施例7と同様にして製品を得た。
【0065】
ここで、実施例7と比較例6、7、8との特性の違いをパネラー5名を用いて評価した結果を示す。
各パネラーは、0〜5点の持ち点を持ち、点数がよい程評価項目の品質に優れていることを示す。
以下では、各パネラーの平均点を以って評価結果とした。
なお、点数が高い程性能が優れていることを示す。
【0066】
【表3】
【0067】
表3の結果から、本発明の実施例のものは、比較例各例のものと比べて明らかに輪郭強調効果、発色のきれいさ、透明感、毛穴の目立ちにくさ、化粧の崩れ方のきれいさに優れていることがわかる。比較例6は、複合化をせず、それぞれの複合有機粉末の成分を単独で配合した場合であるが、評価の絶対値としてはまあまあ優れた結果を示しているものの、複合化した場合と比べるとやや性能が落ちている。比較例7は半球状有機粉末以外の粉体と複合化した場合の例であるが、性能はかなり落ちており、このことから本発明の複合有機粉末の効果はスプレードライヤーを用いることによる造粒効果によるものではないことがわかる。比較例8は複合有機粉末製造時に結合剤を用いない場合であるが、かなり良好な効果が得られるものの、実施例と比べるとその性能はやや劣っており、本発明で用いた半球状有機粉末の特性を充分には引き出していないことがわかる。このことから、結合剤を用い、適度な粒子径を選択して製造された複合有機粉末は、半球状有機粉末の光学特性を特に引き出す効果に優れ、さらに毛穴の目立ち、経時での使用特性に優れていることがわかる。
【実施例8】
【0068】
実施例1の複合有機粉末を用い、表4の処方と製造方法に従って頬紅を作成した。
【0069】
【表4】
【0070】
各成分を混合、粉砕、ふるいがけした後、容器に充填して製品とした。
【0071】
本製品は、顔が明るく、自然な印象の化粧膜を形成しながら、光の当たる角度により、輪郭が強調され、従来にない光学特性を有していた。
【実施例9】
【0072】
実施例1及び5の複合有機粉末を用い、表5の処方と製造方法に従ってボディミルクを作成した。
【0073】
【表5】
【0074】
成分Aと成分Bをそれぞれ70℃にて均一に混合した。成分Aをホモミキサーを用いて撹拌しながら成分Bを加え、均一に乳化した後、脱気、ろ過、冷却し、容器に充填して製品とした。
【0075】
本製品は、使用感に優れ、肌を明るく美しく見せる効果に優れていた。また、ボディを細くスマートに見せる効果も有していた。
【実施例10】
【0076】
インキ;実施例1の複合有機粉末15質量%とスチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩 7質量%とポリオキシエチレンオキシプロピレントリオール67質量%とスチレン−アクリル酸−αメチルスチレン共重合体6質量%とトリエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量%をプロペラ撹拌機にて混合し赤色インキを得た。
得られたインキは、光反射の異方性に優れ、明度も高かった。
【0077】
〔比較例9〕
インキ;実施例8の複合有機粉末の代わりに比較例3の複合有機粉末を用いた他は全て実施例8と同様にして製品を得た。
得られたインキは、雲母チタンの光学特性を有していたものの、それ以上の特性は観察できなかった。
【実施例11】
【0078】
塗料;アクリル樹脂溶液(固型分50質量%)42質量部と実施例1の複合有機粉末20質量部とメラミン樹脂溶液11.6質量部と分散剤 1.5質量部と紫外線吸収剤 1質量部をキシレン、エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶剤23.9質量部を混合し、撹拌して塗料を得た。
得られた塗料を塗布した塗板は、明度、彩度が高く、反射光の異方性を有していた。
【0079】
〔比較例10〕
塗料;実施例9の複合有機粉末の代わりに比較例2の複合有機粉末を用いた他は全て実施例9と同様にして製品を得た。
得られた塗料は、実施例9と類似の光学特性を有していたものの、実施例9と比べてその効果は明確でなく弱いものであった。
【実施例12】
【0080】
樹脂製品;ポリプロピレン樹脂80質量部と実施例6の複合粉末20質量部をエクストルーダーを用いて混練し、樹脂製品を得た。
得られた樹脂製品は、彩度の高い特徴があった。
【0081】
[光学特性評価結果]
前記評価方法に基づいて実施例1の複合有機粉末及び比較例1の光学特性の評価を実施した。試料の測定条件としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムに測定試料10質量部をエチルアルコール40質量部と混合し、それをクリアラッカー160質量部と混ぜた後、超音波で5分粉砕したものをスリット幅0.1mmのアプリケーターを用いて塗工したものを用いた。
図2に実施例1の角度別明度変化のグラフを示す。
図3に比較例1の角度別明度変化のグラフを示す。
図2と図3の比較から、本発明の実施例は、比較例と比べて全角度領域において明度が大変高いことがわかる。また、比較例は、受光角が大きくなるに従って明度が下がるのに対して、実施例では受光角70度以上において逆に明度が向上する特性が示されている。
以上から、本発明の実施例は比較例と比べて明らかに明度の角度依存性があり、さらに特徴ある光学効果を有していることがわかる。
次に図4に実施例1の角度別色相・彩度変化のグラフを示す。
図5に比較例1の角度別色相・彩度変化のグラフを示す。
図4と図5の比較から、実施例、比較例共に彩度の変化は見られるものの、実施例が角度依存的に色相が変化するのに対して、比較例は色相がほぼ同じであり、外観的に色の変化が感じられない特性を有していた。これらから実施例は比較例と比べて色味の角度変化が見られる。
【0082】
次に、図6に上記光学特性を評価した実施例1の塗膜の走査型電子顕微鏡写真を、また図7に同じく比較例1の電子顕微鏡写真を示す。
図6から、塗膜中でも塗工されたものでは、本発明の複合有機粉末は球面が横を向かず、表又は裏を向く配向性があるように観察されている。このことがより効果的な光学特性を示すことに繋がっていると考えられる。
【0083】
次に、上記乾式アトライタを用いた場合の例を示す。
【実施例13】
【0084】
乾式アトライタに半球状有機粉末(積水化成品工業製テクポリマー 平均一次粒子径10μm、架橋ポリメタクリル酸メチル)35質量部に、有機色素の一種である赤色201号(粒子径0.1μm)15質量部と、直径5.5mmのアルミナビーズ750質量部を入れ、毎分300回転の速度で10分間撹拌し、複合有機粉末を得た。この粒子の走査型電子顕微鏡写真の例を図8に、下記条件で測定した場合の光学特性評価結果を図9、図10に示す。図9の結果から、本実施例では受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められている。
試料の測定条件としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムに測定試料2質量部をエチルアルコール20質量部と混合し、それをクリアラッカー40質量部と混ぜた後、超音波で5分粉砕したものをスリット幅0.1mmのアプリケーターを用いて塗工したものを用いた。
【実施例14】
【0085】
乾式アトライタに半球状有機粉末(積水化成品工業製テクポリマー 平均一次粒子径10μm、架橋ポリメタクリル酸メチル)35質量部に、有機色素の一種である赤色202号15質量部と、オクチルトリエトキシシラン2.5質量部と直径5.5mmのアルミナビーズ750質量部を入れ、毎分300回転の速度で10分間撹拌し、複合有機粉末を得た。本実施例は受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められた。
【実施例15】
【0086】
乾式アトライタに半球状有機粉末(積水化成品工業製テクポリマー 平均一次粒子径10μm、架橋ポリメタクリル酸メチル)35質量部に、平均一次粒子径35nmのシリカ・アルミナ処理ルチル型微粒子酸化チタン10質量部と直径5.5mmのアルミナビーズ750質量部を入れ、毎分300回転の速度で10分間撹拌した。ついで、ここに、有機色素の一種である赤色201号15質量部とオクチルトリエトキシシラン4質量部を加え、さらに10分間毎分300回転の速度で撹拌し、複合有機粉末を得た。この複合有機粉末は油や水に接触した際の色変化が少ない傾向が認められた。また、本実施例は受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められた。
【実施例16】
【0087】
実施例15のシリカ・アルミナ処理ルチル型微粒子酸化チタン10質量部の代わりに平均一次粒子径30nmのシリコーン・シリカ処理微粒子酸化亜鉛12質量部を用いた他は全て実施例14と同様にして製品を得た。この複合有機粉末は、油や水に接触した際の色変化が少ない傾向が認められた。
また、本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められた。
【実施例17】
【0088】
実施例13の赤色201号の代わりに赤色202号を用いた他は全て実施例13と同様にして製品を得た。本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が上昇する傾向が認められた。実施例13と同じ条件で測定した場合の光学特性評価結果を図11、図12に示す。
この結果から、本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が低下しない傾向が認められた。
また、参考までに赤色202号の色相・彩度変化の例を図13に示す。
図13では色相は変化していないのに対して、図12では色相が動いていることが判る。本発明の複合有機粉末は必ず特徴ある明度変化を伴うが、素材によってはこのように色相が変化するものも認められる。
【実施例18】
【0089】
実施例14の赤色202号の代わりに赤色226号を用いた他は全て実施例14と同様にして製品を得た。
本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が大きく上昇する傾向が認められた。
【実施例19】
【0090】
実施例14の赤色202号の代わりに黄色4号を用いた他は全て実施例14と同様にして製品を得た。
本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が大きく上昇する傾向が認められた。
【実施例20】
【0091】
実施例14の赤色202号の代わりに黄色5号を用いた他は全て実施例14と同様にして製品を得た。
本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が大きく上昇する傾向が認められた。
【実施例21】
【0092】
実施例14の赤色202号の代わりに青色1号を用いた他は全て実施例14と同様にして製品を得た。
本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が上昇する傾向が認められた。
【実施例22】
【0093】
実施例14の半球状有機粉末の代わりに粒子径5〜30μmの範囲にある粒子を含む小麦澱粉を用いた他は全て実施例14と同様にして製品を得た。
本実施例は、受光角70〜80度の範囲においてL*値が上昇する傾向が認められた。
なお、用いた半球状の形態を持つ小麦澱粉の走査型電子顕微鏡写真の例を図14に示す。
さらに、小麦澱粉に代えて、2〜40μmの粒子径を持つタピオカ澱粉を使用した場合においても、小麦澱粉と同様に受光角70〜80度の範囲においてL*値が上昇する傾向が認められた。
【0094】
実施例13〜21について、塗擦により色素が剥離するか否かの検討を実施した。試験方法としては、走査型電子顕微鏡を用い、塗擦前後の状態を観察することで実施した。その結果いずれの試料においても塗擦前後で子粒子である色素の大きな剥離は観察されなかった。また、同時に処理に伴い半球形状の形態が維持されているか否かの確認を実施したが、図8にも示したように半球状の形状は維持されていた。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】実施例1の走査型電子顕微鏡写真の例
【図2】実施例1の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の光学特性を変角分光測色システム(ゴニオフォトメーター、村上色彩技術研究所製GCMS−3B型、入射角0度、受光角15〜80度)を用いて測定した場合の明度変化の結果
【図3】実施例1と同様に比較例1の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の明度変化の結果
【図4】実施例1の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の色相・彩度変化の結果
【図5】実施例1と同様に比較例1の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の色相・彩度変化の結果
【図6】実施例1の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の表面の状態の走査型電子顕微鏡写真の例
【図7】比較例1の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の表面の状態の走査型電子顕微鏡写真の例
【図8】実施例13の走査型電子顕微鏡写真の例
【図9】実施例13の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の明度変化の結果
【図10】実施例13の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の色相・彩度変化の結果
【図11】実施例16の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の明度変化の結果
【図12】実施例16の複合有機粉末をフィルムに塗工した時の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の色相・彩度変化の結果
【図13】赤色201号をフィルムに塗工した時の光学特性を変角分光測色システムを用いて測定した場合の色相・彩度変化の結果
【図14】小麦澱粉の走査型電子顕微鏡写真の例
【図15】従来の再帰反射の応用時の反射光の態様
【図16】本発明の反射光の態様
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半球状〜略半球状の有機粉末の表面を一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素で被覆するときに、結合剤を併用することによって被覆したことを特徴とする複合有機粉末。
【請求項2】
上記被覆が、機械的被覆であることを特徴とする請求項1に記載の複合有機粉末。
【請求項3】
上記機械的被覆が、ボールミルを用いた被覆であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合有機粉末。
【請求項4】
ボールミルを用いた機械的被覆が、乾式アトライタを用いた被覆であることを特徴とする請求項3に記載の複合有機粉末。
【請求項5】
上記被覆が、噴霧乾燥被覆を用いた被覆であることを特徴とする請求項1に記載の複合有機粉末。
【請求項6】
半球状〜略半球状の形態を有する有機粉末100質量部の各粉末表面に対して、一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素5〜500質量部と結合剤0.1〜100質量部とを被覆したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合有機粉末。
【請求項7】
結合剤が、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、シラン系化合物、有機チタネート系化合物及び反応性シリコーンから選ばれたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合有機粉末。
【請求項8】
複合有機粉末を5〜12.5質量%の濃度で透明樹脂に分散させたフィルムを用い、村上色彩技術研究所製変角分光測色システムGCMS−3B型による変角分光測色システムを用いて、入射角0度、フィルムの背景に白色プレートを使用する条件で測定した場合に、受光角70〜80度の範囲においてL*値の低下が見られないことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の複合有機粉末。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の複合有機粉末を配合したことを特徴とする樹脂組成物又は樹脂製品。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の複合有機粉末を配合したことを特徴とする化粧料、塗料又はインキ。
【請求項1】
半球状〜略半球状の有機粉末の表面を一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素で被覆するときに、結合剤を併用することによって被覆したことを特徴とする複合有機粉末。
【請求項2】
上記被覆が、機械的被覆であることを特徴とする請求項1に記載の複合有機粉末。
【請求項3】
上記機械的被覆が、ボールミルを用いた被覆であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合有機粉末。
【請求項4】
ボールミルを用いた機械的被覆が、乾式アトライタを用いた被覆であることを特徴とする請求項3に記載の複合有機粉末。
【請求項5】
上記被覆が、噴霧乾燥被覆を用いた被覆であることを特徴とする請求項1に記載の複合有機粉末。
【請求項6】
半球状〜略半球状の形態を有する有機粉末100質量部の各粉末表面に対して、一次粒子径が5μm未満である顔料及び/又は有機色素5〜500質量部と結合剤0.1〜100質量部とを被覆したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合有機粉末。
【請求項7】
結合剤が、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、シラン系化合物、有機チタネート系化合物及び反応性シリコーンから選ばれたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合有機粉末。
【請求項8】
複合有機粉末を5〜12.5質量%の濃度で透明樹脂に分散させたフィルムを用い、村上色彩技術研究所製変角分光測色システムGCMS−3B型による変角分光測色システムを用いて、入射角0度、フィルムの背景に白色プレートを使用する条件で測定した場合に、受光角70〜80度の範囲においてL*値の低下が見られないことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の複合有機粉末。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の複合有機粉末を配合したことを特徴とする樹脂組成物又は樹脂製品。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の複合有機粉末を配合したことを特徴とする化粧料、塗料又はインキ。
【図15】
【図16】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図1】
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【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−348266(P2006−348266A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362487(P2005−362487)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】
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