説明

複合板

【課題】合成樹脂発泡体と金属板を接合してなる複合板であって、使用後に合成樹脂発泡体と金属板の分別が容易な複合板を提供する。
【解決手段】本発明に用いる合成樹脂発泡体は、連続気泡率が35〜75%であることを特徴とする。この合成樹脂発泡体を芯材として金属板と接合した複合板は、95℃以上の水を主成分とする液体に浸漬することにより、合成樹脂発泡体と金属板を容易に剥離させることができる。すなわち、本発明により得られる複合板はリサイクル性が良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂発泡体と金属板を接合してなる複合板であって、使用後に合成樹脂発泡体と金属板の分別が容易な複合板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂発泡体と金属板を接合してなる複合板を廃棄する場合、産業廃棄物として埋め立て処分していた。環境上の問題から、工業製品のリサイクルによる資源の有効利用が求められており、上記のような複合板についても、使用後に合成樹脂発泡体と金属板を分別しリサイクルすることが望まれる。しかし、合成樹脂発泡体と金属板を無理に剥がすと、金属板に合成樹脂発泡体のカスが残り、十分に分離することができない。金属板に残ったカスを削り取る方法は作業性が悪く実用的でない。
【0003】
そこで、接着剤により合成樹脂発泡体と金属板とを接合することが行われているが、その場合の接着剤を改質することにより剥離性を向上させる試みがなされている。例えば、加熱により発泡する接着剤や熱剥離性接着剤がある。しかし、これらの接着剤は、樹脂や金属板の材質により効果が異なり、接着剤のコストが高いといった問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−069410号公報
【特許文献2】特開2002−129134号公報
【特許文献3】特開2002−103506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、合成樹脂発泡体と金属板を容易に剥離し、リサイクル性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明において使用される合成樹脂発泡体は、連続気泡率が35〜75%であることを特徴とする。この合成樹脂発泡体を金属板と接合した複合板は、熱水に浸漬することにより、容易に剥離させることができる。
【0007】
すなわち本発明は、
(1)連続気泡率が35〜75%である合成樹脂発泡体の少なくとも一面に金属板が接合されたことを特徴とする複合板、
(2)前記合成樹脂発泡体のベース樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする(1)に記載の複合板、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の合成樹脂発泡体を金属板と接合した複合板は、熱水に浸漬することにより、容易に剥離させることができ、リサイクル性が良好である。
本発明の複合板は、壁、屋根、ベランダの目隠し、間仕切りなどの外装材や、天井、床などの内装材、ドア材等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明においては、連続気泡率はASTM D 2856(Standard Test Method for Open Cell Content of Rigid for Cellular Plastics by the Air Pycnometer)に従って、Beckmannの空気比較式比重計の原理に基づき求められる。この方法はエアーピクノメーターにより測定される。エアーピクノメーターは前記ASTMに規定されたものであれば制限されないが、その一例としては空気比較式比重計(東京サイエンス(株)製、1000式)を挙げることができる。
【0010】
合成樹脂発泡体のベース樹脂の材質は、複合板の用途に応じて適宜選定することができるが、優れた断熱性や、クッション性、無害性を有していることから、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂とは低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレンプロピレンブテン三元共重合体等であり、樹脂は一種でも二種以上の混合物でも良い。
【0011】
合成樹脂発泡体の製造方法には、熱分解型化学発泡剤を樹脂に練り込み、組成物となし、該発泡剤の分解温度以上に加熱することにより発泡せしめる化学発泡剤法や、不活性ガスを液化したものまたは揮発性液体を溶融樹脂組成物に圧入した後、低圧域に放出して発泡せしめるガス発泡法が知られている。本発明において所望の連続気泡率が得られれば合成樹脂発泡体の製造方法は適宜選定することができるが、不活性ガスを発泡剤として用いる場合には、不活性ガスは炭酸ガス、窒素ガス、水蒸気等が好ましい。中でも、樹脂への浸透性、安全性を考慮して炭酸ガスが特に好ましい。
【0012】
ベース樹脂は非架橋のまま発泡させても、過酸化物などの化学架橋剤もしくは放射線によって架橋処理したベース樹脂を発泡させても良い。さらに、ベース樹脂中には必要に応じて、各種充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、導電性材料、難燃剤、顔料、結晶核剤、熱老化防止剤、遮光剤、紫外線防止剤、耐候剤、滑剤、架橋剤、架橋助剤、発泡助剤、気泡調節剤、可塑剤、安定剤、消泡剤、増粘剤、減粘剤、乳化剤等を適量配合しても構わない。
【0013】
本発明で用いる金属板の材質は適宜選定することができるが、例えば、アルミ板、鉄、銅、ステンレス、チタン、各種めっき鋼板等を使用できる。これらは耐腐食性を高めるために表面処理を施したものを使用しても良い。
【0014】
本発明において、合成樹脂発泡体と金属板との接合は、熱による融着や接着剤を用いた貼付等により適宜行われる。接着剤の材質は問わないが、例えば、ポリウレタン、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などがある。接着剤は溶剤に溶かして塗布してもラミネートしたフィルムを使用しても良いが、本発明においては、特に無溶剤の2液混合硬化型接着剤が好ましい。
【0015】
連続気泡率が35〜75%である合成樹脂発泡体と金属板を接合した複合板を熱水に浸漬すると、熱水が気泡内を伝わって浸透し、発泡体と金属板の界面の接着性を弱める。ここで、熱水とは95℃以上の水を主成分とする液体で、熱水の温度が高くなるほど浸漬時間が短くても合成樹脂発泡体と金属板を剥離することができる。
【0016】
本発明においては、前記熱水の表面張力を下げることにより、合成樹脂発泡体と金属板の剥離に要する時間を短くすることが可能である。熱水の表面張力を下げる方法は特に限定されないが、例えば、熱水中に水に表面張力を下げる物質を添加する等が挙げられる。表面張力を下げる物質としては、例えば、水酸化ナトリウム溶液などが挙げられる。
本発明においては、発泡体と金属板の剥離に高温高圧の蒸気を使用する必要がないため、高耐圧性能を備えたオートクレーブ等の特殊な設備が不要である。
【0017】
本発明の合成樹脂発泡体において、連続気泡率が35%未満では、発泡体が硬く熱水の浸透も十分でないため合成樹脂発泡体と金属板が剥離しない。一方、75%より大きい場合は、発泡体が軟弱で芯材としてのコシが無いため、本来の芯材としての機能が発揮されない。なお、合成樹脂発泡体と金属板の剥離時間を早めるために、連続気泡率は40〜60%がより好ましい。
【0018】
本発明においては、合成樹脂発泡体の気泡径は特に限定されないが、0.05〜1.5mmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜1.0mmである。気泡径が0.05mmより小さいと、熱水が浸透しにくいため剥離に時間がかかる場合がある。
【0019】
以下に本発明を実施例によって説明する。
(実施例1)
合成樹脂発泡体のベース樹脂にはポリプロピレン(密度900kg/m、MI(230℃、21.18N)2.0g/10分)を用いた。このポリプロピレン100質量部に、気泡核剤としてクエン酸ナトリウム(商品名ポリスレン、永和化成株式会社)1質量部を予めブレンダ−で混合し、その混合物を口径135φmmの発泡押出機に供給し、押出機の中央ゾ−ンで炭酸ガスを注入して発泡させた。押出機の温度は160〜210℃とした。得られた発泡体は見掛け密度310kg/m、発泡倍率3倍、連続気泡率53%、気泡径0.1mmであった。発泡体をJIS K 7161に従って引張速度500mm/minで引張試験をしたところ、引張強度は5MPaとなり、芯材として使用するのに好適な発泡体であった。
この発泡体の両面に厚さ0.12mmのアルミニウム板を接合し複合板とした。接合の際にはポリオールとイソシアネートの2液混合剤で接着した。
得られた複合板を95℃の熱水に浸漬したところ、浸漬後2日で金属板と合成樹脂発泡体芯材の界面から剥離した。金属板には合成樹脂発泡体芯材のカスなどは付着していなかった。
【0020】
以下の実施例および比較例において、合成樹脂発泡体芯材の連続気泡率は押出機の温度を
調整して変化させた。
(実施例2)
合成樹脂発泡体芯材の連続気泡率を72%とした以外は実施例1と同じとした。得られた複合板を95℃の熱水に浸漬したところ、浸漬後1日で金属板と合成樹脂発泡体芯材の界面から剥離した。金属板には合成樹脂発泡体芯材のカスなどは付着していなかった。
【0021】
(実施例3)
合成樹脂発泡体芯材の連続気泡率を38%とした以外は実施例1と同じとした。得られた複合板を95℃の熱水に浸漬したところ、浸漬後8日で金属板と合成樹脂発泡体芯材の界面から剥離した。金属板には合成樹脂発泡体芯材のカスなどは付着していなかった。
【0022】
(実施例4)
複合板を95℃の5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬させた以外は実施例1と同じとした。浸漬後12時間で金属板と合成樹脂発泡体芯材の界面から剥離した。金属板には合成樹脂発泡体芯材のカスなどは付着していなかった。
【0023】
(実施例5)
合成樹脂発泡体の気泡径を0.05mmとした以外は実施例1と同じとした。得られた複合板を95℃の熱水に浸漬したところ、浸漬後8日で金属板と合成樹脂発泡体芯材の界面から剥離した。金属板には合成樹脂発泡体芯材のカスなどは付着していなかった。
【0024】
(実施例6)
合成樹脂発泡体の気泡径を0.75mmとした以外は実施例1と同じとした。得られた複合板を95℃の熱水に浸漬したところ、浸漬後1日で金属板と合成樹脂発泡体芯材の界面から剥離した。金属板には合成樹脂発泡体芯材のカスなどは付着していなかった。
【0025】
(実施例7)
合成樹脂発泡体の気泡径を1.5mmとした以外は実施例1と同じとした。得られた複合板を95℃の熱水に浸漬したところ、浸漬後20時間で金属板と合成樹脂発泡体芯材の界面から剥離した。金属板には合成樹脂発泡体芯材のカスなどは付着していなかった。
【0026】
(実施例8)
合成樹脂発泡体の気泡径を2.0mmとした以外は実施例1と同じとした。得られた複合板を95℃の熱水に浸漬したところ、浸漬後12時間で金属板と合成樹脂発泡体芯材の界面から剥離した。金属板には合成樹脂発泡体芯材のカスなどは付着していなかった。
【0027】
(比較例1)
合成樹脂発泡体芯材の連続気泡率を30%とした以外は実施例1と同じとした。得られた複合板を95℃の熱水に浸漬したところ、金属板と合成樹脂発泡体芯材は剥離しなかった。
【0028】
(比較例2)
合成樹脂発泡体芯材の連続気泡率を77%とした以外は実施例1と同じとした。発泡体の表面が平滑で無いため金属板との接合に多量の接着剤を要した。さらにこの合成樹脂発泡体は軟弱であるため、本来の芯材としての機能が発揮されない。よって熱水への浸漬は行わなかった。
【0029】
(比較例3)
合成樹脂発泡体として連続気泡率が80%ポリウレタンフォームを使用した以外は実施例1と同じとした。この合成樹脂発泡体は軟弱であるため、本来の芯材としての機能が発揮されない。金属板との接合および熱水への浸漬は行わなかった。
【0030】
【表1】

【0031】
注)合成樹脂発泡体芯材の強度
◎:芯材として使用する場合に極めて良好
○:芯材として使用する場合に良好
△:芯材として使用する場合に多少強度が不足
×:芯材としての使用は不適当


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気泡率が35〜75%である合成樹脂発泡体の少なくとも一面に金属板が接合されたことを特徴とする複合板。
【請求項2】
前記合成樹脂発泡体のベース樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の複合板。

【公開番号】特開2006−7757(P2006−7757A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148345(P2005−148345)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】