説明

複合構造物形成システム及び形成方法

【課題】 エアロゾルを停止することなく原料の補充が可能な複合構造物形成システム及び形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材に衝突させて前記微粒子の構成材料からなる構造物と前記基材との複合構造物を形成する複合構造物形成システムであって、前記微粒子を収容する収容機構と、前記微粒子をガス中に分散させてエアロゾルを形成するエアロゾル化機構と、前記収容機構から前記エアロゾル化機構に前記微粒子を供給する供給機構と、前記収容機構と前記エアロゾル化機構との間のガスの流れを遮断する圧力遮断機構と、前記エアロゾル化機構に前記ガスを供給するガス供給機構と、前記エアロゾルを前記基材に向けて噴射する吐出口と、を備えたことを特徴とする複合構造物形成システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合構造物形成システム及び形成方法に関し、より詳細には、脆性材料の微粒子をガス中に分散させた「エアロゾル」を基材に吹き付け、微粒子の構成材料からなる構造物を基材上に形成させる複合構造物の形成システム及び形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材の表面に脆性材料からなる構造物を形成させる方法として、「エアロゾルデポジション法」がある(例えば、特許文献1及び特許文献2)。これは、脆性材料を含む微粒子をガス中に分散させた「エアロゾル」をノズルから基材に向けて噴射し、金属やガラス、セラミックスやプラスチックなどの基材に微粒子を衝突させ、この衝突の衝撃により脆性材料微粒子に変形や破砕を起させしめてこれらを接合させ、基材上に微粒子の構成材料からなる膜状構造物をダイレクトに形成させる方法である。この方法によれば、特に加熱手段などを必要とせず、常温で膜状構造物が形成が可能であり、焼成体と比較して同等以上の機械的強度を有する膜状構造物を得ることができる。また、微粒子を衝突させる条件や微粒子の形状、組成などを制御することにより、構造物の密度や機械強度、電気特性などを多様に変化させることが可能である。
【特許文献1】特許第3348154号公報
【特許文献2】特開2000−212766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エアロゾルデポジション法により膜状構造物を形成する際には、できるだけ長期間にわたり安定してエアロゾルを発生させことが望ましい。特に、量産化のためには、エアロゾルの発生を停止することなく、原料となる粉体を補充できるシステムであることが望ましい。しかし、多くの場合、エアロゾルデポジション装置の内部は、動作状態において減圧あるいは加圧状態とされる。このため、原料となる粉体を補充するために蓋を開けると外気が吸い込まれたりガスが逆流して、装置内部の圧力を変動させてしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、エアロゾルを停止することなく原料の補充が可能な複合構造物形成システム及び形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、
微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材に衝突させて前記微粒子の構成材料からなる構造物と前記基材との複合構造物を形成する複合構造物形成システムであって、
前記微粒子を収容する収容機構と、
前記微粒子をガス中に分散させてエアロゾルを形成するエアロゾル化機構と、
前記収容機構から前記エアロゾル化機構に前記微粒子を供給する供給機構と、
前記収容機構と前記エアロゾル化機構との間のガスの流れを遮断する圧力遮断機構と、
前記エアロゾル化機構に前記ガスを供給するガス供給機構と、
前記エアロゾルを前記基材に向けて噴射する吐出口と、
を備えたことを特徴とする複合構造物形成システムが提供される。
【0006】
上記構成によれば、収容機構とエアロゾル化機構との間のガスの流れを圧力遮断機構により遮断することによって、エアロゾル化機構におけるエアロゾルの形成を停止することなく収容機構への微粒子原料の補充が可能な複合構造物形成システムを提供できる。
【0007】
また、本発明の他の一態様によれば、
微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材に衝突させて前記微粒子の構成材料からなる構造物と前記基材との複合構造物を形成する複合構造物形成システムであって、
前記微粒子を収容する収容機構と、
前記微粒子をガス中に分散させてエアロゾルを形成するエアロゾル化機構と、
前記収容機構から前記エアロゾル化機構に前記微粒子を供給する供給機構と、
前記エアロゾル化機構に前記ガスを供給するガス供給機構と、
前記エアロゾルを前記基材に向けて噴射する吐出口と、
を備え、
前記収容機構と前記エアロゾル化機構とを連通する経路に前記微粒子を押し固めた圧粉体を充填することにより前記ガスの流れを遮断することを特徴とする複合構造物形成システムが提供される。
【0008】
上記構成によれば、収容機構とエアロゾル化機構とを連通する経路に微粒子を押し固めた圧粉体を充填することによりガスの流れを遮断するものとすれば、微粒子の搬送と圧力の遮断を同時に実現でき、簡潔な構成で確実な搬送動作と圧力遮断動作を実施させることができる。すなわち、微粒子を押し固めた圧粉体を充填することにより、収容機構とエアロゾル化機構とを連通する経路のクリアランスを非常に小さくすることができる。その結果として、収容機構とエアロゾル化機構との間の圧力損失を大きくしてガスの流れを阻止し、圧力を遮断できる。
【0009】
ここで、前記エアロゾル化機構は、前記圧粉体を解きほぐす解砕手段を有するものとすれば、圧力遮断のために押し固められて凝集した微粒子を解きほぐして粒度の揃ったエアロゾルを形成することが容易となる。
【0010】
また、前記エアロゾルを形成している状態において、前記エアロゾル化機構の圧力は大気圧よりも高い状態または低い状態にあり、前記収容機構の圧力は大気圧に略等しいものとすれば、エアロゾル化機構におけるエアロゾルの形成に際して、加圧状態であっても減圧状態であっても、収容機構を大気に開放して原料となる微粒子を補充することができる。
【0011】
また、前記収容機構に前記微粒子を補充可能な予備収容機構をさらに備えたものとれば、いわゆる「ロードロック」としての作用が得られ、例えば、吸湿性の高い微粒子や化学的に不安定な微粒子などを大気に晒すことなく収容機構に補充できる。
【0012】
また、前記収容機構に収容された前記微粒子にバインダを添加するバインダ添加機構をさらに備えたものとすれば、粉体を確実且つ容易に押し固めた状態にすることができ、確実な搬送動作と圧力遮断動作を実施させることができる。
【0013】
またさらに、前記微粒子に添加されたバインダを除去する除去手段をさらに備えたものとすれば、粉体からバインダを除去することにより、エアロゾル化を確実且つ容易に実行させ、構造物へのバインダの混入も防ぐことができる。
【0014】
また、前記吐出口と前記基材とを収容する構造物作製室と、前記構造物作製室の内部空間を大気圧よりも減圧状態に維持可能とした排気手段と、をさらに備えたものとすれば、吐出口の上流側と構造物作製室との間に使用ずる差圧によりエアロゾルを加速させ高速で基材に衝突させることにより膜状構造物を確実に形成することができる。また、余剰の微粒子を構造物作製室内に閉じこめて回収することも可能となり、周囲への飛散などの問題を解消できる。
【0015】
また、前記エアロゾル中の前記微粒子の濃度を定量化する定量機構をさらに備えたものとすれば、エアロゾルに含有される微粒子の濃度を安定させることができる複合構造物形成システムを提供することができる。
【0016】
ここで、「定量化機構」とは、単位時間あたりに供給されるエアロゾル中の微粒子の濃度を調節し、所定の濃度を継続維持させる働きをする機構である。定量性を決定するための単位時間は、要求される構造物の精度によって適宜設定することができ、数10秒オーダー以下(10〜50秒以下)の単位時間で定量性を維持するものであってもよく、より好ましくは、数秒オーダー(1〜5秒以下)程度の単位時間で定量性を維持するものであってもよい。
【0017】
また、前記エアロゾルに含有される前記微粒子の濃度を検知する計量機構をさらに備えたものとすれば、エアロゾルの濃度を検知しその結果に基づき各種の制御が可能となる。
【0018】
例えば、前記計量機構により検知された情報に基づき前記定量機構を制御するものとすれば、エアロゾルの濃度を所定値に維持でき、膜厚や膜質を均一化することができる。
【0019】
またここで、前記計量機構は、前記エアロゾル化機構または前記エアロゾル化機構と前記定量機構との間に設けられたものすれば、いわゆるフィードフォワード制御が可能となり、膜厚の均一性が高くなる。
【0020】
また、前記エアロゾルに含まれる前記微粒子を解砕する解砕機構をさらに備えたものすれば、エアロゾル中に含まれる凝集粒や粗大粒などを解砕して粒径を揃えることが可能となる。
【0021】
また、前記エアロゾルに含まれる前記微粒子の粒度を選別する分級機構をさらに備えたものとすれば、より均一な粒子を含むエアロゾルが得られ膜厚や膜質の均一性をさらに高めた構造体を形成できる。
また、前記エアロゾルの流束を加速させる加速機構と、前記エアロゾルの流束を均一化させる整流機構の少なくともいずれかをさらに備えたものとすれば、均一なエアロゾルのビームを形成し、またエアロゾルを高速で基材に衝突させ緻密な構造物を確実に形成できる。
【0022】
一方、本発明の他の一態様によれば、
収容機構とエアロゾル化機構との間のガスの流れを遮断しつつ前記収容機構から前記エアロゾル化機構に微粒子を搬送する工程と、
前記搬送された前記微粒子をガス中に分散させてエアロゾルを形成する工程と、
前記エアロゾルを前記基材に向けて噴射することにより前記微粒子の構成材料からなる構造物と前記基材との複合構造物を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする複合構造物形成方法が提供される。
【0023】
上記構成によれば、エアロゾル化機構におけるエアロゾルの形成を停止することなく収容機構への微粒子原料の補充が可能な複合構造物形成方法を提供できる。
【0024】
なお、本願明細書において「微粒子」とは、緻密質粒子である場合は、粒度分布測定や走査型電子顕微鏡などにより同定される平均粒径が50マイクロメータ以下のものをいう。
【0025】
また、本願明細書において「エアロゾル」とは、ヘリウム、窒素、アルゴン、酸素、乾燥空気、これらを含む混合ガスなどのガス中に前述の微粒子を分散させたものであり、これら微粒子が単独でガス中に分散している状態と、これら微粒子が凝集した凝集粒がガス中に分散した状態を含む。エアロゾルのガス圧力と温度は任意であるが、ガス中の微粒子の濃度は、ガス圧を1気圧、温度を摂氏20度に換算した場合に、吐出口から噴射される時点において0.0003mL/L〜0.06mL/Lの範囲内であることが膜状構造物の形成にとって望ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、圧力遮断機構を設けることにより、エアロゾル化機構におけるエアロゾルの形成を停止することなく収容機構への微粒子原料の補充が可能な複合構造物形成システムを提供できる。その結果として、長時間に亘る連続的な成膜が可能となり、厚みのある膜状構造物や、大面積の膜状構造物などを安定的に形成できる点で産業上のメリットは多大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる複合構造物形成システムの基本構成を例示する模式図である。すなわち、同図は、エアロゾルデポジション装置の構成を例示する概念図である。
【0028】
本具体例のエアロゾルデポジション装置は、収容機構1と、供給機構2と、ガス供給機構3と、エアロゾル化機構4と、圧力遮断機構5と、吐出口6と、を有する。収容機構1には、エアロゾルを形成するための粉体(微粒子)が収容される。供給機構2は、収容機構1に収容された粉体を、後段のエアロゾル化機構4に供給する。エアロゾル化機構4には、ガス供給機構3が接続されている。エアロゾル化機構4の圧力と収容機構1の圧力とは、圧力遮断機構5により遮断されている。そして、エアロゾル化機構4の後段には吐出口6が接続され、エアロゾル化機構4により生成されたエアロゾルが、基材7に向けて噴射される。
【0029】
収容機構1には、予め乾燥・粉砕処理された例えば酸化アルミニウム粉末などの粉体が充填されており、供給機構2の回転動作などによってエアロゾル化機構4へと微量ずつ供給される。エアロゾル化機構4にはガス供給機構3によってヘリウムなどのガスが導入され、供給された粉体はここでエアロゾル化される。生成されたエアロゾルはガスの流れに乗って吐出口6から基材7に向けて噴射され、基材7上に原料微粒子からなる膜状構造物が形成される。すなわち、基材7とその上に形成された膜状構造物と、からなる複合構造物が形成される。この時、ガス供給機構3から加圧ガスを供給すると、ガス流によりエアロゾルが形成されやすく、また基材7に向けて十分な速度でエアロゾルを噴射させることができる。
【0030】
エアロゾルデポジションのプロセスは、通常は常温で実施され、微粒子材料の融点より十分に低い温度、すなわち摂氏数100度以下で膜状構造物の形成が可能であるところにひとつの特徴がある。
【0031】
また、収容機構1に収容される粉体を構成する微粒子は、セラミックスや半導体などの脆性材料を主体とし、同一材質の微粒子を単独であるいは粒径の異なる微粒子を混合させて用いることができるほか、異種の脆性材料微粒子を混合させたり、複合させて用いることが可能である。また、金属材料や有機物材料などの微粒子を脆性材料微粒子に混合したり、脆性材料微粒子の表面にコーティングさせて用いることも可能である。これらの場合でも、膜状構造物の形成の主となるものは、脆性材料である。
【0032】
この手法によって形成される複合構造物において、結晶性の脆性材料微粒子を原料として用いる場合、複合構造物の膜状構造物の部分は、その結晶粒子サイズが原料微粒子のそれに比べて小さい多結晶体であり、その結晶は実質的に結晶配向性がない場合が多い。また、脆性材料結晶同士の界面には、ガラス層からなる粒界層が実質的に存在しない。また多くの場合、複合構造物の膜状構造物部分は、基材7の表面に食い込む「アンカー層」を形成する。このアンカー層が形成されている膜状構造物は、基材7に対して極めて高い強度で強固に付着して形成される。
【0033】
エアロゾルデポジション法により形成される膜状構造物は、微粒子同士が圧力によりパッキングされ物理的な付着で形態を保っている状態のいわゆる「圧粉体」とは明らかに異なり、十分な強度を保有している。
【0034】
エアロゾルデポジション法において、飛来してきた脆性材料微粒子が基材7の上で破砕・変形を起していることは、原料として用いる脆性材料微粒子と、形成された脆性材料構造物の結晶子サイズとをX線回折法などで測定することにより確認できる。すなわち、エアロゾルデポジション法で形成された膜状構造物の結晶子サイズは、原料微粒子の結晶子サイズよりも小さい。微粒子が破砕や変形をすることで形成される「ずれ面」や「破面」には、もともとの微粒子の内部に存在し別の原子と結合していた原子が剥き出しの状態となった「新生面」が形成される。表面エネルギーが高く活性なこの新生面が、隣接した脆性材料微粒子の表面や同じく隣接した脆性材料の新生面あるいは基材7の表面と接合することにより膜状構造物が形成されるものと考えられる。
【0035】
また、エアロゾル中の微粒子の表面に水酸基がほどよく存在する場合は、微粒子の衝突時に微粒子同士や微粒子と構造物との間に生じる局部のずれ応力などにより、メカノケミカルな酸塩基脱水反応が起き、これら同士が接合するということも考えられる。外部からの連続した機械的衝撃力の付加は、これらの現象を継続的に発生させ、微粒子の変形、破砕などの繰り返しにより接合の進展、緻密化が行われ、脆性材料からなる膜状構造物が成長するものと考えられる。
【0036】
そして、本実施形態によれば、圧力遮断機構5を設けることにより、収容機構1の圧力とエアロゾル化機構4の圧力とを遮断している。このようにすれば、エアロゾル化機構4の圧力の高低に拘わらず、収容機構1の圧力を大気圧に維持できる。例えば、本具体例の場合、ほぼ大気圧の雰囲気中に配置された基材7に向けて吐出口6からエアロゾルを噴射することにより、膜状構造物を形成することができる。この場合、エアロゾル化機構4の中の圧力は、ガス供給機構3から加圧ガスの供給を受けて大気圧よりも高い圧力とされている。このような場合でも、圧力遮断機構5を設けることにより、収容機構1の圧力とエアロゾル化機構4の圧力とを遮断して、収容機構1の圧力を大気圧に維持できる。つまり、エアロゾル化機構4を大気圧よりも高い圧力に維持しエアロゾルを発生させながら、収容機構1を大気圧に開放して原料となる粉体の補充が可能となる。その結果として、原料粉体を適宜補充しつつ、エアロゾルによる膜状構造物の形成を連続的に実行することが可能となり、量産性に優れたシステムを実現できる。圧力遮断機構5の具体的な構造については、後に具体例を参照しつつ詳述する。
【0037】
なお、本発明における圧力遮断機構5は、収容機構1の圧力とエアロゾル化機構4の圧力とを必ずしも完全に遮断するものである必要はない。すなわち、エアロゾルデポジションのプロセスを実行可能となるように、収容機構1の圧力とエアロゾル化機構4の圧力との間に差を設けられればよい。例えば、エアロゾル化機構4の圧力が大気圧よりも高い状態でエアロゾルデポジションを実施する場合、収容機構1を大気圧に開放してエアロゾル化機構4から収容機構1にある程度のガスのリークが生じても、エアロゾルデポジションを実行可能であればよい。また、エアロゾル化機構4の圧力が大気圧よりも低い状態でエアロゾルデポジションを実施する場合、収容機構1を大気圧に開放して収容機構1からエアロゾル化機構4にある程度のリークが生じても、エアロゾルデポジションを実行可能であればよい。
つまり、圧力遮断機構5は、エアロゾルデポジションを実行できるように、収容機構1の圧力とエアロゾル化機構4の圧力との間に圧力差を設けるものであればよい。
【0038】
図2は、本実施形態のエアロゾルデポジション装置の第2の具体例を表す模式図である。図2以降の図面については、既出の図面に関して説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
本具体例においては、収容機構1が大気に開放されている。すなわち、本発明においては、圧力遮断機構5を設けることより、収容機構1とエアロゾル化機構4の圧力を遮断できるので、エアロゾル化機構4の圧力が大気圧よりも高い状態(あるいは低い状態)を維持しつつ、収容機構1を大気に開放することができる。このようにすれば、原料となる粉体30を常に補充することが可能となり、生産性に極めて優れたエアロゾルデポジション装置を実現できる。
【0040】
図3は、本実施形態のエアロゾルデポジション装置の第3の具体例を表す模式図である。
【0041】
本具体例においては、構造物作製室8が設けられ、吐出口6の少なくとも先端部と基材7とが、構造物作製室8の中に配置されている。構造物作製室8の内部空間は、排気機構9によって減圧状態が維持可能とされている。排気機構9としては、例えば、ロータリーポンプなどを用いることができ、構造物作製室8の内部を大気圧よりも低い減圧雰囲気に維持できる。
【0042】
エアロゾル化機構4において生成されたエアロゾルは、吐出口6から基材7に向けて噴射され、基材7上には原料微粒子からなる膜状構造物が形成される。この時、構造物作製室8内が負圧環境にあるために、エアロゾルは圧力差により加速されて基材7に衝突する。その結果として、強固な膜状構造物を形成することができる。また、構造物作製室8を減圧状態に維持することにより、エアロゾルが基材7に衝突して形成される「新生面」がより長い時間、活性状態を維持でき、膜状構造物の緻密性や強度を上げることが可能となる。
【0043】
本具体例の場合、エアロゾル化機構4の内部空間は、吐出口6を介して構造物作製室8と連通しており、排気機構9により排気される。従って、ガス供給機構3から加圧ガスを供給してエアロゾルを生成している状態でも、エアロゾル化機構4の内部空間は大気圧よりも低い圧力となる場合がある。このような場合でも、圧力遮断機構5を設けることにより、エアロゾル化機構4の圧力を大気圧よりも低い減圧状態に維持したまま、収容機構1を大気圧に開放できる。
なお、本具体例において、第2具体例に関して前述した如く、収容機構1を大気に開放してもよい。このようにすれば、原料となる粉体30を常に補充することが可能となり、生産性に極めて優れたエアロゾルデポジション装置を実現できる。
【0044】
図4は、本実施形態のエアロゾルデポジション装置の第4の具体例を表す模式図である。 すなわち、本具体例においては、第3具体例の構成に、予備収容機構10が付加されている。予備収容機構10は、いわゆる「ロードロック」として作用し、収容機構1が大気に晒されることを防ぎつつ粉体30の補充を可能とする。すなわち、収容機構1に収容されている原料の粉体30が減少したら、予備収容機構10に収容されている粉体30を収容機構1に補充できる。例えば、原料の粉体30の吸湿性が高い場合や、化学的に不安定な場合などは、粉体30をできるだけ大気に晒さないことが望ましい。このような場合には、粉体を収容機構1と予備収容機構10とにそれぞれ収容し、これらの内部空間を、乾燥希ガスで充填したり、減圧状態などに維持し、収容室1の粉体30が減少した時に、予備収容機構10の粉体30を収容機構1に補充すればよい。
【0045】
本具体例においても、圧力遮断機構5を設けることにより、収容機構1の圧力や雰囲気ガスをエアロゾル化機構4の圧力や雰囲気ガスとは異なる状態に維持できる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の全体構成について説明した。
次に、本発明において設けることができる圧力遮断機構5の具体的な構造について説明する。
【0047】
図5は、エアロゾル発生器の具体例を表す模式図である。
すなわち、収容機構1の鉛直下方に供給機構2及び圧力遮断機構5が設けられている。供給機構2から排出された粉体は、エアロゾル化機構4においてガス供給機構3から供給されるガスの流れに乗って、エアロゾルを形成し、吐出口6から基材7に向けて噴射される。この時、圧力遮断機構5によって収容機構1の圧力とエアロゾル化機構4の圧力とが遮断されているので、収容機構1をいつでも大気圧に開放して粉体30を補充することができる。
【0048】
このような構造のエアロゾル発生器において、圧力遮断の手段として、収容機構1とエアロゾル化機構4との間で粉体30を押し固める方法を用いることができる。
【0049】
図6は、粉体30を押し固めることによる圧力遮断機構の原理を説明するための模式図である。
すなわち、この具体例においては、収容室101の下方に圧縮手段214が設けられ、収容室101の中に収容されている粉体30を圧縮して、圧粉体30Pが形成される。この圧粉体30Pは、圧縮手段214による圧力により下方に押し出され、解砕手段414により解砕される。解砕手段414としては、例えば、振動体などを用いることができる。つまり、圧粉体30Pに振動を与えることにより、凝集した粉体を解きほぐすことができる。
【0050】
解砕された粉体は、エアロゾル化室401において、ガス供給機構3により供給されるガス流に混合してエアロゾルが生成される。本具体例においては、圧縮手段214により圧粉体30Pを形成することによって、収容室101の圧力と、エアロゾル化室401の圧力と、を遮断できる。すなわち、粉末を押し固めた圧粉体30Pを充填することにより、収容室101とエアロゾル化室401とを連通する経路のクリアランスを非常に小さくすることにより圧力損失を大きくしてガスの流れを阻止できる。その結果として、エアロゾル化室401を大気圧よりも高い状態あるいは低い状態に維持してエアロゾルを生成させながら、収容室101を大気圧に開放して粉体30を補充でき、長時間に亘って連続的な膜状構造物の作製が可能となる。
【0051】
図7は、圧粉体による圧力遮断機構の第2の具体例を表す模式図である。
すなわち、本具体例においては、収容室101に収容された粉体30を偏平形状のローラ215により押し固める。押し固められた圧粉体30Pは、ベルトコンベア状の搬送機構216により下方に向けて搬送される。圧粉体30Pの下方には、解砕ローラ415が設けられている。すなわち、略円筒形の解砕ローラ415は、その円周表面に所定の凹凸が形成されている。解砕ローラ415を矢印の方向に回転させ、粉体が凝集した圧粉体30Pを当接させると圧粉体30Pが解きほぐされる。このようにして解きほぐされた粉体は、ガス供給機構3から供給されるガスの流れに混合されてエアロゾルが形成され、ガス流に沿って流れる。
【0052】
本具体例においても、圧粉体30Pを形成することにより、収容室101とエアロゾル化室401との間を遮断できる。すなわち、粉末を押し固めた圧粉体30Pを充填することにより、収容室101とエアロゾル化室401とを連通する経路のクリアランスを非常に小さくすることにより圧力損失を大きくしてガスの流れを阻止できる。その結果として、エアロゾル化室401を大気圧よりも高い状態あるいは低い状態に維持してエアロゾルを生成させながら、収容室101を大気圧に開放して粉体30を補充でき、長時間に亘って連続的な膜状構造物の作製が可能となる。
【0053】
図8は、圧粉体による圧力遮断機構の第3の具体例を表す模式図である。
すなわち、本具体例においては、収容室101に収容された粉体30をプロペラ状の加圧手段217により押し固める。押し固められた圧粉体30Pは、加圧手段217の回転に応じて、同図に矢印で表したように回転しながら下方に向けて押し出される。圧粉体30Pの下方には、解砕手段416が設けられている。解砕手段416は、例えば、その表面に所定の凹凸が形成された板状体とすることができる。このような解砕手段415に圧粉体30Pが回転しながら押しつけられると、表面の凹凸によって圧粉体30Pが解きほぐされる。このようにして解きほぐされた粉体は、エアロゾル化室401において、ガス供給機構3から供給されるガスの流れに混合されてエアロゾルが形成され、ガス流に沿って流れる。
なお、本具体例における解砕手段416としては、図6に関して前述したような振動体を用いてもよい。
【0054】
本具体例においても、圧粉体30Pを形成することにより、収容室101とエアロゾル化室401との間を遮断できる。すなわち、粉末を押し固めた圧粉体30Pを充填することにより、収容室101とエアロゾル化室401とを連通する経路のクリアランスを非常に小さくすることにより圧力損失を大きくしてガスの流れを阻止できる。その結果として、エアロゾル化室401を大気圧よりも高い状態あるいは低い状態に維持してエアロゾルを生成させながら、収容室101を大気圧に開放して粉体30を補充でき、長時間に亘って連続的な膜状構造物の作製が可能となる。
【0055】
図9は、圧粉体による圧力遮断機構の第4の具体例を表す模式図である。
すなわち、本具体例においては、収容室101に収容された粉体30をピストン218により押し固める。すなわち、ピストン218は矢印で表したように上下に反復運動し、粉体30を下方に押し固めて圧粉体30Pを形成する。押し固められた圧粉体30Pは、ベルトコンベア状の搬送機構216により下方に向けて搬送される。なお、搬送機構216を設けずに、ピストン218による圧力で圧粉体30Pを下方に移動させるようにしてもよい。圧粉体30Pの下方には、解砕手段417が設けられている。解砕手段417は、例えば、図6に関して前述したものと同様に振動体とすることができる。解砕手段417を振動させ、粉体が凝集した圧粉体30Pを当接させると、圧粉体30Pが解きほぐされる。このようにして解きほぐされた粉体は、ガス供給機構3から供給されるガスの流れに混合されてエアロゾルが形成され、ガス流に沿って流れる。
【0056】
本具体例においても、圧粉体30Pを形成することにより、収容室101とエアロゾル化室401との間を遮断できる。すなわち、粉末を押し固めた圧粉体30Pを充填することにより、収容室101とエアロゾル化室401とを連通する経路のクリアランスを非常に小さくすることにより圧力損失を大きくしてガスの流れを阻止できる。その結果として、エアロゾル化室401を大気圧よりも高い状態あるいは低い状態に維持してエアロゾルを生成させながら、収容室101を大気圧に開放して粉体30を補充でき、長時間に亘って連続的な膜状構造物の作製が可能となる。
【0057】
次に、溝の中に粉体を押し固めることにより圧力遮断する具体例について説明する。
図10は、本具体例のエアロゾル発生ユニットの具体的な構造を例示する模式図である。
【0058】
本具体例においては、供給機構2としての役割を有する回転テーブル201の上に、収容機構を構成する収容室101と、エアロゾル化機構を構成するエアロゾル化室401とが設けられている。収容室101の中には粉体30が収容されている。回転テーブル201の水平な上面には円環状の溝203が形成され、収容室101とエアロゾル化室401とを結ぶ循環式の搬送コンベアとして作用する。すなわち、収容室101内の粉体30は、粉体30の自重や機械的動作、例えば特開平5−239627号に記載されているように攪拌体を使用したり、収容室101に振動を与えるなどの手段を利用して、回転テーブル201上に設けられた溝203の中へと供給される。
そして溝203内の粉体30は、回転テーブル201の回転によってエアロゾル化室401に送られ、ここでエアロゾルが生成される。溝203の大きさを変更したり駆動手段にて回転速度を変更したりすることによって、粉体輸送量を調節することが可能である。
【0059】
図11は、本具体例におけるエアロゾル化機構の構造を例示する一部断面図である。
また、図12は、図11のA−A線断面図である。
【0060】
本具体例のエアロゾル化室401は、ジョイント405を介してガス供給機構と接続され、ガス供給機構から供給される搬送ガスを溝203内に落とし込まれた粉体30へ吹き付けるためのガス導入口403と、溝203内で押し込められた粉体30を解して掻き出すための粉体解砕ピン402と、エアロゾル導出口404を備えている。このエアロゾル導出口404は、ジョイント406から構造物作製室8を経由して排気機構9と接続され、排気機構9及び搬送ガスが排出されるときに発生する吸引力によってエアロゾル化した粉体30を吸い出す。粉体解砕ピン402のサイズは、図12に表したように溝203の幅よりも小さく、粉体解砕ピン402と溝203の側面との間には隙間が形成されるようにしてもよい。この隙間を介してガス導入口403からの空気がエアロゾル導出口404方向へと流れる。
【0061】
あるいは、粉体解砕ピン402は、溝203と同等の形状のものを使用して溝203内に固着した粉体30をすべて掻き出すようにしてもよい。また、粉体解砕ピン402自体を可動式にして掻き出し効果を高めることができる。例えば、粉体解砕ピン402に圧電素子に取り付けて電圧を与えて振動させると効率よく掻き出しできる。また、粉体解砕ピン402をエアロゾル化室401本体に固定するのではなく可動式にして、粉体解砕ピン402にモータや錘やバネなどを付け、常に溝203の底面に粉体解砕ピン402の先端が必ず接触するようにすると、粉体30を溝203に残すことなく解し掻き出すことが可能となる。
【0062】
また、図11に表した具体例の場合には、粉体30の移動方向に対して、一番目にエアロゾル導出口404が配置され、次に粉体解砕ピン402が配置され、最後にガス導入口403を配置されているが、これらの配置の順番は本具体例に限定されない。例えば、ガス導入口403をエアロゾル導出口404よりも上流側に配置した場合には、固着した粉体がエアロゾル導出口404に入り込むおそれがないが、多少の粉体がエアロゾル導出口404よりも下流側に流れ、逆に図示のようにガス導入口403をエアロゾル導出口404よりも下流側に配置した場合には、若干の固着した粉体がエアロゾル導出口404に入り込むおそれがあるが、粉体がエアロゾル導出口404よりも下流側に流れてしまう無駄がない。
図13は、図10乃至図12に関して前述したエアロゾル発生ユニットの模式断面図である。
すなわち、収容室101の中に、加圧手段102が設けられている。加圧手段102は、回転テーブル201の溝203の中に、粉体30を圧粉化させた状態で押し込める役割を有する。
【0063】
図14は、加圧手段22の平面図である。
また、図15は、加圧手段の作用を説明するための模式図である。
【0064】
加圧手段102は、例えば、回転可能なプロペラ状などの形態を有し、回転テーブル201との接触部には、ゴムなどの弾性体からなる圧接体103が設けられている。この加圧手段102が回転すると、収容室101内の粉体30が溝203の中に向けて掃き出され、図15に例示した如く、圧接体103の圧力により溝203に中に押し固められて圧粉化した状態の圧粉体30Pが形成される。なお、図15に矢印で例示した如く、回転テーブル201の回転による溝103の走行方向Aと、加圧手段102の掃引方向Bとを互いに略逆方向とすると、粉体30を効率的に溝203の中に押し固めることができる。
【0065】
このように溝203の中に押し固められた圧粉体30Pは、回転テーブル201の回転によってエアロゾル化室401に供給される。
図16は、エアロゾル化室の構造を表す模式図である。
本具体例においては、エアロゾル化室401には、圧力遮断手段の一部としての気密シール408が付設されている。気密シール408としては、例えば、回転テーブル201に接触するゴムなどの弾性体を用いることができる。つまり、回転テーブル201の回転動作を許容しつつ、回転テーブル201とエアロゾル化室401との「隙間」を解消し、収容室101の圧力とエアロゾル化室401の圧力とを遮断できるようにされている。また、本具体例においては、溝203に粉体30が圧粉化された状態で押し固められているので、その圧粉体30Pの表面をゴムなどの気密シール408により圧接することで、気密が維持されて、圧力を遮断できる。
【0066】
なお、本具体例においては、図11及び図12に関して前述したように、粉体解砕ピン402が設けられ、回転テーブルの溝203の中に圧粉化された状態で押し固められていた粉体30が解されて掻き出される。このようにして溝203から掻き出された粉体に、ガス導入口403からガスが吹き付けられてエアロゾルが生成される。生成されたエアロゾルは、エアロゾル導出口404を介して構造物作製室8に供給される。
【0067】
またさらに、エアロゾル化室401に設けられた圧力遮断手段408は、回転テーブルの溝201を封止する溝封止部409を有する。
図17は、溝封止部409を説明するための概念図である。
すなわち、本具体例においては、溝203の中に押し固められた圧粉体30Pは、エアロゾル化室401において、粉体解砕ピン402により掻き出され、ガス流によって排出される。従って、粉体30が取り出された後の溝203は、空の状態となる。溝封止部409は、この空の状態の溝203を塞ぐ役割を有する。溝203を塞ぐことにより、エアロゾル化室401の気密が維持され、収容室101との間で確実に圧力遮断できる。溝封止部409としては、例えば、溝203の形状に合わせたゴムやプラスチックなどの成形体を用いることができる。圧粉体30Pが排出されて空になった溝203をこのような成形体で埋めることにより、エアロゾル化室401の気密を維持し圧力を遮断できる。
【0068】
図10乃至図17に表した具体例によれば、加圧手段102により回転テーブル201の溝203の中に粉体30を圧粉化させた状態で押し固め、さらにエアロゾル化室401に気密シール408(溝封止部409)を設けることにより、収容室101の圧力と、エアロゾル化室401の圧力と、を確実に遮断できる。その結果として、構造物作製室8の圧力を加圧あるいは減圧状態に維持したまま、収容室101を大気圧に開放して粉体30を補充でき、長時間に亘って連続的な膜状構造物の作製が可能となる。
【0069】
以上、本発明において設けることができる圧力遮断機構の具体的な構造について説明した。
さて、本発明においては、以上説明したように粉体30を押し固めて圧粉体30Pを形成し、収容機構1とエアロゾル化機構4との間の搬送路を遮断するなどしてこれらの圧力を遮断することができる。ところが、原料として用いる粉体30の性質によっては、押し固めて圧粉体30Pを形成することが容易でない場合もあり得る。
このような場合に、粉体30にバインダを添加することにより圧粉化を促進させることができる。
図18は、このようなバインダ添加プロセスを導入したエアロゾルデポジション装置の動作を例示するフローチャートである。
すなわち、ステップS101において、収容機構1に収容されている粉体30にバインダを添加する。バインダは、液体でも固体でもよい。バインダは、粉体30と化学的に過度な反応を起こさず、均一に添加でき、不純物として悪影響を及ぼさず、除去も容易であるものであることが望ましい。バインダとして液体を用いる場合、例えば、水やアルコール、あるいはその他の揮発性有機溶剤など、各種のものを用いることが可能である。また、バインダとして固体を用いる場合には、粉体30に添加して圧粉化を容易にするような材料からなる粉末を用いることができる。
これらバインダは、収容機構1において粉末30に添加してもよく、また予め粉体30に添加した状態で収容機構1に充填してもよい。
【0070】
次に、ステップS102において、バインダを添加した粉体を圧粉化する。その方法としては、例えば、図6〜図9、図14、図15に関して前述したような各種のものを採用できる。
次に、圧粉化した圧粉体をステップS103において収容機構1からエアロゾル化機構4に搬送する。
次に、ステップS104において、圧粉体を解砕し、必要に応じてバインダを除去する。圧粉体の解砕の方法としては、例えば、図6〜図9、図11、図12に関して前述したような解砕手段、解砕ローラ、解砕ピンをはじめとした各種のものを用いることかできる。
【0071】
また、バインダを除去する場合、その方法としては、加熱、減圧、乾燥、洗浄などの各種のものを用いることができる。例えば、バインダとして水やアルコールを用いた場合、ヒータで加熱したり、減圧排気手段により減圧することにより蒸発させて粉体から除去することができる。また、加熱したガスを吹き付けて粉体を乾燥させてもよい。
このようにして解砕し、バインダを適宜除去した粉体は、エアロゾル化機構4においてエアロゾル化される。
【0072】
図19は、図18に例示したプロセスを実行可能なエアロゾルデポジション装置の構成を例示する模式図である。
すなわち、本具体例の場合、収容機構1と供給機構2との間に、バインダ添加機構42が設けられている。バインダ添加機構42は、収容機構1に収容されている粉体30に液体や固体のバインダを適宜添加する役割を有する。このようにしてバインダが添加された粉体は、押し固められて圧粉化され、供給機構2によって、解砕・除去機構44に搬送される。圧粉体を形成することにより、収容機構1の圧力とエアロゾル化機構4の圧力とが遮断(圧力遮断機構5)され、両者の間の圧力差が所定の範囲内に維持される。解砕・除去機構44に搬送された圧粉体は、図18のステップS104に関して前述したように、解きほぐされ、バインダが適宜除去されて粉体の状態に戻される。この粉体は、エアロゾル化機構4においてエアロゾル化される。
【0073】
以上説明したように、本具体例においては、バインダ添加機構42と解砕・除去機構44とを設けることにより、圧粉体を形成しにくい粉体30を用いた場合でも、確実且つ容易に押し固めて圧粉体を形成することができる。そして、圧粉体を充填することにより、収容機構1とエアロゾル化機構4とを連通する経路のクリアランスを非常に小さくすることにより圧力損失を大きくしてガスの流れを阻止できる。その結果として、収容機構1の圧力とエアロゾル化機構4の圧力とを確実に遮断し、収容機構1への粉体30の補充を随時行うことができる。
【0074】
なお、図19は一例に過ぎない。これ以外にも、本発明においては、例えば、バインダを予め添加した粉体30を収容機構1に充填してもよい。また、バインダ添加機構42は、収容機構1の一部として設けてもよく、または供給機構2の一部あるいは圧力遮断機構5の一部として設けてもよい。同様に、解砕・除去機構44は、供給機構2の一部として設けてもよく、または圧力遮断機構5の一部あるいはエアロゾル化機構4の一部として設けてもよい。
【0075】
以上、本発明において設けることができる圧力遮断機構の具体的な構造について説明した。
以下、このような圧力遮断機構を備えたエアロゾルデポジション装置の具体例について説明する。
【0076】
図20は、本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第5の具体例の構成を例示する概念図である。
【0077】
本具体例においては、エアロゾル化機構4の後段に、エアロゾルの微粒子濃度を制御する定量機構25が設けられている。後に詳述するように、定量化機構5には、希釈用ガスの導入管508やエアロゾル排出用の1次排出管512などを適宜設けることができる。定量機構25の後段には吐出口6が接続され、定量機構25により定量化されたエアロゾルが、基材7に向けて噴射される。
【0078】
エアロゾル化機構4にはガス供給機構3によってヘリウムなどのガスが導入され、供給された粉体はここでエアロゾル化される。生成されたエアロゾルはガスの流れに乗って定量機構25へと搬送され、定量機構25においてエアロゾルの濃度が調節される。後に詳述するように、例えば、定量機構25にはある程度過剰にエアロゾルを供給し、その一部を排出させながら微粒子の濃度を調節するようにしてもよい。定量機構25によって定量化されたエアロゾルは、吐出口6から基材7に向けて噴射され、基材7上に原料微粒子からなる膜状構造物が形成される。
【0079】
本具体例においても、圧力遮断機構5を設けることにより、収容機構1の圧力や雰囲気ガスをエアロゾル化機構4の圧力や雰囲気ガスとは異なる状態に維持できる。
そして、本実施形態によれば、さらに定量機構25を設けることにより、吐出口6から噴射されるエアロゾル中の微粒子の濃度を制御し、基材7上に形成される膜状構造物の膜厚や膜質を確実に制御できる。この場合、エアロゾル中の微粒子濃度を終始一定に維持することにより、膜状構造物の堆積速度を一定にして正確な厚みの膜状構造物を形成できる。また、膜質も均質にできる。
【0080】
またさらに、図20に矢印で例示した如く、定量機構25により定量する過程において余剰となった微粒子を1次排出管512を介して取り出して収容機構1に戻すことも可能となる。このようにすれば、微粒子(粉体)の利用効率を上げて、長時間に亘る連続的な成膜が可能となる。
図21は、定量機構25の構造を例示する模式図である。
すなわち、定量機構25は、定量化室502の中に可変絞り機構504を設けた構造とすることができる。可変絞り504は、エアロゾルを通過させる流路の抵抗を変化させる流路抵抗可変手段として作用する。可変絞り機構504の1次側には、搬入管506が接続され、エアロゾル発生ユニットASGからエアロゾルが供給される。また、可変絞り機構504の2次側には、ガス導入管508が接続され、ガス供給機構3から希釈用のガスが供給される。また、可変絞り機構504の2次側には、排出管510が接続され、定量されたエアロゾルが構造物作製室8に向けて供給される。
【0081】
図22は、可変絞り機構504の平面構造を例示する模式図である。
すなわち、可変絞り機構504は、相対的な配置関係が可変とされた複数の絞り板504Sを有する。そして、これら絞り板504Sにより形成される開口504Aのサイズが可変とされている。なお、絞り板504Sの形状やサイズ、数、配置関係などは図22に例示したものに限定されず、その他各種の変型例を同様に用いることができる。要は、エアロゾルが通過する開口504Aのサイズあるいはコンダクタンスが可変とされていればよい。
【0082】
本発明によれば、このような可変絞り機構504を設けた定量機構25を採用することにより、エアロゾルの濃度を所定の範囲に制御し、高い精度及び再現性で基材の表面に膜状構造物を形成することができる。
【0083】
図23は、定量機構25の第2の具体例を表す模式図である。
本具体例においても、定量機構25は、定量化室502の中に可変絞り機構504が設けられた構造を有する。ただし、可変絞り機構504の1次側には、搬入管506とともに、1次排出管512が接続され、可変絞り機構504の1次側からエアロゾルを排出可能とされている。
【0084】
この場合、排出管510から出力されるエアロゾルの流量は、搬入管506から供給されるエアロゾルの流量と、ガス導入管508から導入される希釈用ガスの流量と、の和から、1次排出管512からのエアロゾルの流出量を差し引いた値となる。従って、主に、エアロゾル発生ユニットASGから搬入管506に供給するエアロゾルの流量と、ガス供給機構3からガス導入管508に導入するガスの流量と、1次排出管512からの流出量と、を適宜制御することにより、エアロゾルの流量と濃度が決定されることとなる。
このような1次排出管512を設けると、エアロゾルの定量制御の自由度が広がる。
【0085】
図24は、本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第6の具体例を表す模式図である。
本具体例においては、エアロゾル化機構4から搬送管10を介して定量機構25へエアロゾルが搬出される。また、定量機構25の先には加速機構11が設けられ、さらにその先には整流機構12を介して吐出口6が設けられている。
加速機構11においては、流路径に差を設けることにより得られるジェット気流や圧縮効果などを利用して、エアロゾルの流速が加速される。
【0086】
図25及び図26は、加速機構の構造を例示する模式図である。
すなわち、加速機構11としては、図25に表したように、流路径の狭い部分1102と、流路径の広い部分1104とを設けることにより形成されるジェット気流を利用することができる。
【0087】
また、図26に表したように、流路1106を徐々に狭めることにより得られる圧縮効果を利用してもよい。
【0088】
一方、整流機構12においては、エアロゾルを等方拡散させたり、撹拌させることにより、微粒子濃度を均一にすることができる。すなわち、均一な濃度のエアロゾルのビームを得ることができる。
【0089】
図27及び図28は、整流機構の構造を例示する模式図である。
すなわち、整流機構12としては、図27に表したように、流路1202の径を徐々に広げることによるエアロゾルの等方拡散効果を利用することができる。
【0090】
また、図28に表したように、流路に障害物1204を適宜設けることによりエアロゾルを撹拌し、均一な流れを得ることもできる。
【0091】
これら要素のうちで、少なくとも吐出口6は、構造物作製室8の内側に配置されている。
【0092】
一方、図24に表したエアロゾルデポジション装置の場合、構造物作製室8の中には、支持走査機構13に支持された基材7が配置される。支持走査機構13は、基材7を支持し、吐出口6に対する基材7の相対的な位置関係をXYZθ方向の少なくともいずれかに適宜相対変位させる役割を有する。すなわち、支持走査機構13により基材7を適宜走査しつつエアロゾルを吹き付けることにより、吐出口6から噴射されるエアロゾルのビームサイズよりも大面積の基材7の表面に膜状構造物を堆積できる。そして、定量機構25でエアロゾルの濃度を定量することにより、大面積に亘り均一な膜状構造物を形成することができる。すなわち、吐出口6と基材7とを相対的に走査させて大面積の基材7の表面に膜状構造物を堆積する場合において、エアロゾル中の微粒子濃度を一定に維持すれば、大面積に亘り膜厚や膜質を均一にできる。
そして、本具体例においても、圧力遮断機構5を設けることにより、収容機構1の圧力や雰囲気ガスをエアロゾル化機構4の圧力や雰囲気ガスとは異なる状態に維持できる。
【0093】
図29は、本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第7の具体例を表す模式図である。
【0094】
本具体例においては、吐出口6が支持走査機構17により支持され、XYZθの少なくともいずれかの方向に移動可能とされている。すなわち、基材7に対して吐出口6を相対的に変位させつつエアロゾルを噴射させることにより、基材7上に大面積に亘り均一な膜状構造物を形成できる。なおこの場合、例えば、定量機構25と加速機構11との間に、変形可能な配管18を設けることにより、支持走査機構17による吐出口6の変位を吸収させることができる。つまり、定量機構25や構造物作製室8などを静止させた状態のままで、吐出口6を支持走査機構17により移動させることができる。変形可能な配管18としては、例えば、ゴムなどの弾性材料からなる配管や、ベローズ(じゃばら)などの配管を用いることができる。
そして、本具体例においても、圧力遮断機構5を設けることにより、収容機構1の圧力や雰囲気ガスをエアロゾル化機構4の圧力や雰囲気ガスとは異なる状態に維持できる。
【0095】
図30は、本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第8の具体例を表す模式図である。
本具体例においても、定量機構25により定量化されたエアロゾルは、加速機構11、整流機構12を介して吐出口6から基材7に向けて噴射される。基材7は、支持走査機構13の上に支持され、XYZθ方向の少なくともいずれかに適宜変位させながら膜状構造物を形成できる。
さらに、本具体例においては、吐出口6と基材7との間に、エアロゾルの濃度を計量する計量機構14が配置されている。計量機構14は、吐出口6から噴射されるエアロゾルに含まれる微粒子の濃度を検知する。
図31は、本発明において用いることができる計量機構を例示する模式図である。
すなわち、計量機構14は、例えば、レーザ1402と、その光をモニタする受光器1404などにより構成できる。例えば、エアロゾルにレーザ1402からの光を照射し、その透過量をモニタすることにより、エアロゾルの濃度を計量できる。
【0096】
また、図32に例示した如く、レーザなどの投光手段1402からエアロゾルに光を照射し、その反射光をCCDなどの受光器1404によりモニタしてもよい。
【0097】
また、図33に表したように、センサ1406を設け、ここに到達するエアロゾルの微粒子濃度を機械的あるいは電気的に計量してもよい。例えば、センサ1406として高感度の圧電素子を用い、エアロゾルが衝突する際の衝撃力を計量することによりその濃度を計量可能である。また、センサ1406として、水晶振動子を用い、その表面に堆積した膜状構造物の重量による振動数の変動に基づいてエアロゾルの濃度を計量することも可能である。
【0098】
またさらに、図34に例示した如く、所定の体積のエアロゾルをサンプリングし、その重量を重量測定手段1408よりモニタすることによっても、エアロゾルの濃度を計量可能である。
【0099】
構造物作製室8内に計量機構14を設けることにより吐出後のエアロゾルの濃度の揺らぎや経時変化に関する情報を検知して、定量機構25にフィードバックすることで、エアロゾルの濃度や噴出速度などの安定化を図ることができる。その結果として、均一な膜厚で均一な膜質の膜状構造物を形成できる。なお、計量機構14を構造物作製室8の内部に設ける代わりに、例えば、定量機構25と加速機構11との間に設けても、同様のフィードバック制御が可能である。
そして、本具体例においても、圧力遮断機構5を設けることにより、収容機構1の圧力や雰囲気ガスをエアロゾル化機構4の圧力や雰囲気ガスとは異なる状態に維持できる。
【0100】
図35は、本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第9の具体例を表す模式図である。
【0101】
本具体例においては、エアロゾル化機構4の内部にエアロゾルの濃度を計量する計量機構14が設けられている。すなわち、定量機構25に導入される前のエアロゾルの濃度を検知して、その結果を定量機構25へとフィードフォワードし濃度を調節することによって、基材7に対して安定した濃度のエアロゾルを供給することができる。なお、計量機構14をエアロゾル化機構4の内部に設ける代わりに、例えば、搬送管10に設けても、同様のフィードフォワード制御が可能である。
そして、本具体例においても、圧力遮断機構5を設けることにより、収容機構1の圧力や雰囲気ガスをエアロゾル化機構4の圧力や雰囲気ガスとは異なる状態に維持できる。
【0102】
図36は、本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第10の具体例を表す模式図である。
【0103】
本具体例においては、エアロゾル化機構4の後段に解砕機構15及び分級機構16が設けられ、搬送管10を介して定量機構25が配置されている。解砕機構15は、エアロゾルに含まれる粗大粒や微粒子の凝集体などを破壊し、粒子サイズを小さくする役割を有する。一方、分級機構16は、エアロゾルに含まれる微粒子のうちで所定の範囲の粒径のもののみを選別する役割を有する。
図37は、解砕機構15の構造を例示する模式図である。
すなわち、解砕機構15は、エアロゾルを噴出するノズル1502と、その前方に設けられた衝撃板1504と、を有する。ノズル1502から噴出されたエアロゾルに含まれる粉体30は、衝撃板1504に衝突した時に、衝撃力を受ける。この衝撃力により、凝集した微粒子が分解したり、粗大な微粒子が破壊されて微細な微粒子に分裂する。本発明においては、図6乃至図19に関して前述したように、粉体を圧粉体30Pにすることにより収容室とエアロゾル化室の圧力を遮断するので、圧粉体30の解砕が不十分であると、微粒子の凝集体がエアロゾルに含まれることがある。このような場合に、解砕機構15を用いることが有効である。
【0104】
また、衝撃板1504を回転させ、その回転による衝突点の運動ベクトルが、エアロゾルの噴射の運動ベクトルと略対向するようにすると、微粒子に対する衝撃力を増加でき効果的である。
【0105】
図38は、解砕機構の第2の具体例を表す模式図である。
すなわち、エアロゾルの流路に、流路径の大きい箇所1506と小さい箇所1508とを交互に設ける。このようにすると、流路径の小さい箇所1508においてはガスが圧縮され、流路径の大きい箇所1506においてはガスが膨張する。このような圧縮と膨張とを繰り返すと、エアロゾルに含まれる微粒子あるいは粉体に剪断力が作用する。この剪断力により、凝集した微粒子が分解したり、粗大な微粒子が破壊されて微細な微粒子に分裂する。
【0106】
次に、分級機構16について説明する。
図39は、本発明において用いることができる分級機構の構造を例示する模式図である。
【0107】
すなわち、分級機構として、エアロゾルの流路にバッフル1602、1604を適宜配置することができる。同図において、下方は鉛直下方に対応する。鉛直下方からエアロゾルを供給すると、バッフル1602、1604により屈曲した流路が形成される。この時、質量が小さい微粒子は、屈曲した流路に沿って分級機構16を通過し、後段に供給される。ところが、質量が大きい微粒子の凝集体や粗大な粒子などは慣性力が強く働くために直進しやすく、バッフル1602、1604に衝突する確率が高くなる。これら粒子がバッフル1602、1604に衝突すると、運動エネルギーに損失が生じ、重力によって下方に落下したり、また、衝突の衝撃によって微細粒子に分解あるいは分裂する。下方に落下した粒子は分級機構16を通過することなく、また、分解あるいは分裂した微細な微粒子はエアロゾルの流れに乗って分級機構16を通過し、後段に供給される。
【0108】
すなわち、このようなバッフル1602、1604を設けることにより、微粒子の凝集体や粗大な粒子などを分離して微細な粒子のみを取り出すことができる。また、バッフル1602、1604の位置をそれぞれ制御することで分級精度も調整することができる。
【0109】
再び図36に戻って説明を続けると、エアロゾル化機構4において生成されたエアロゾルは、解砕機構15に導入され、エアロゾル中に含まれる凝集粒などは解砕機構15によって解砕される。そして、一部の解砕不十分な粗大粒子などは分級機構16によって取り除かれ、より均一な粒子を含むエアロゾルのみが後工程である定量機構25へと搬送される。
【0110】
本具体例によれば、解砕機構15と分級機構16とを設けることにより微粒子径が所定の範囲内に調整されたエアロゾルを基材7に噴射することができ、膜厚や膜質の均一性をさらに高めた構造体を形成できる。
そして、本具体例においても、圧力遮断機構5を設けることにより、収容機構1の圧力や雰囲気ガスをエアロゾル化機構4の圧力や雰囲気ガスとは異なる状態に維持できる。本発明においては、図6乃至図19に関して前述したように、粉体を圧粉体30Pにすることにより収容室とエアロゾル化室の圧力を遮断するので、解砕機構15や分級機構16を用いることが特に有効である。
【0111】
また、本具体例においては、計量機構14を構造物作製室8内に設け、定量機構25をフィードバック制御することにより、吐出口6から噴射されるエアロゾルの流量や濃度をさらに精密に制御できる。
【0112】
図40は、本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第11の具体例を表す模式図である。
【0113】
本具体例においても、解砕機構15と分級機構16とが設けられ、微粒子径が所定の範囲内に調整されたエアロゾルを基材7に噴射することができる。
また、計量機構14が構造物作製室8内に設けられ、吐出口6から噴射されたエアロゾルの濃度を計量機構14により計測して定量機構25にフィードバックすることができる。そして、本具体例においても、圧力遮断機構5を設けることにより、収容機構1の圧力や雰囲気ガスをエアロゾル化機構4の圧力や雰囲気ガスとは異なる状態に維持できる。
【0114】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
例えば、以上の示したいずれの本発明における実施の形態においても、粉体の圧縮手段としては、楕円系の回転軸を利用して圧縮する方式、ピストン方式、プロペラ方式、ガス圧縮、振動、超音波などを利用した方式などの各種の方式を用いることができる。
また、本発明における実施の形態において粉体の供給機構としては、ベルト搬送方式、螺旋駆動方式、振動、超音波などを利用した方式などでも良い。
【0115】
また、本発明における実施の形態において解砕機構としては、摩擦方式、超音波振動、アークプラズマを利用する方法、振動摩擦、ヒーターによる熱分解を利用した方式なども有効である。
【0116】
本発明において使用される粉体は酸化アルミニウムだけでなく、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化珪素、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛等の酸化物の他、窒化物、ホウ化物、炭化物、フッ化物などの脆性材料、脆性材料を主成分とした金属や樹脂との複合材料等でも良い。
【0117】
本発明において使用される搬送ガスは窒素、酸素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスの他、メタン、エタン、エチレン、アセチレンなどの有機ガス、また、フッ素ガスなどの腐食性のあるガス等でも良く、これらの必要に応じてこれらの混合ガスを使用しても良い。
【0118】
その他、本発明のエアロゾルデポジション装置及び方法に関して当業者が適宜設計変更して採用したものも、本発明の要旨を有する限りにおいて本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の実施の形態にかかる複合構造物の形成システムの全体構成を例示する模式図である。
【図2】定量機構25により定量する過程において余剰となった微粒子を収容機構1に戻すシステムを例示する模式図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第2の具体例を表す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第3の具体例を表す模式図である。
【図5】エアロゾル発生器の具体例を表す模式図である。
【図6】粉体30を押し固めることによる圧力遮断機構の原理を説明するための模式図である。
【図7】圧粉体による圧力遮断機構の第2の具体例を表す模式図である。
【図8】圧粉体による圧力遮断機構の第3の具体例を表す模式図である。
【図9】圧粉体による圧力遮断機構の第4の具体例を表す模式図である。
【図10】本具体例のエアロゾル発生ユニットの具体的な構造を例示する模式図である。
【図11】エアロゾル化機構の構造を例示する一部断面図である。
【図12】図11のA−A線断面図である。
【図13】図10乃至図12に関して前述したエアロゾル発生ユニットの模式断面図である。
【図14】加圧手段22の平面図である。
【図15】加圧手段の作用を説明するための模式図である。
【図16】エアロゾル化室の構造を表す模式図である。
【図17】溝封止部409を説明するための概念図である。
【図18】バインダ添加プロセスを導入したエアロゾルデポジション装置の動作を例示するフローチャートである。
【図19】図18に例示したプロセスを実行可能なエアロゾルデポジション装置の構成を例示する模式図である。
【図20】本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第5の具体例の構成を例示する概念図である。
【図21】定量機構25の構造を例示する模式図である。
【図22】可変絞り機構504の平面構造を例示する模式図である。
【図23】定量機構25の第2の具体例を表す模式図である。
【図24】本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第6の具体例を表す模式図である。
【図25】加速機構の構造を例示する模式図である。
【図26】加速機構の構造を例示する模式図である。
【図27】整流機構の構造を例示する模式図である。
【図28】整流機構の構造を例示する模式図である。
【図29】本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第7の具体例を表す模式図である。
【図30】本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第8の具体例を表す模式図である。
【図31】本発明において用いることができる計量機構を例示する模式図である。
【図32】レーザなどの投光手段1402からエアロゾルに光を照射し、その反射光をCCDなどの受光器1404によりモニタするシステムを例示する模式図である。
【図33】センサ1406を設け、ここに到達するエアロゾルの微粒子の数を計測するシステムを例示する模式図である。
【図34】エアロゾルの重量をモニタするシステムを例示する模式図である。
【図35】本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第9の具体例を表す模式図である。
【図36】本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第10の具体例を表す模式図である。
【図37】解砕機構15の構造を例示する模式図である。
【図38】解砕機構の第2の具体例を表す模式図である。
【図39】本発明において用いることができる分級機構の構造を例示する模式図である。
【図40】本発明の実施の形態にかかるエアロゾルデポジション装置の第11の具体例を表す模式図である。
【符号の説明】
【0120】
1 収容機構
2 供給機構
3 ガス供給機構
4 エアロゾル化機構
5 圧力遮断機構
6 吐出口
7 基材
8 構造物作製室
9 排気機構
10 予備収容機構
11 加速機構
12 整流機構
13 支持走査機構
14 計量機構
15 解砕機構
16 分級機構
17 支持走査機構
18 配管
22 加圧手段
25 定量機構
30 粉体
30P 圧粉体
42 バインダ添加機構
44 解砕・除去機構
73 溝
74 エアロゾル化室
101 収容室
102 加圧手段
103 圧接体
201 回転テーブル(回転体)
201、203 溝
205 ベルトコンベア
206、207 プーリ
210 供給管
212 振動発生手段
214 圧縮手段
216 供給管
217 搬送手段
218 搬送管
401 エアロゾル化室
402 粉体解砕ピン
403 ガス導入口
404 エアロゾル導出口
405、406 ジョイント
408 気密シール
409 溝封止部
412 揺動機構
414 解砕手段
416 ガス供給管
502 定量化室
504 可変絞り
504A 開口
504S 板
506 搬入管
508 ガス導入管
510 排出管
512 次排出管
1106 流路
1202 流路
1204 障害物
1402 レーザ(投光手段)
1404 受光器
1406 センサ
1408 重量測定手段
1502 ノズル
1504 衝撃板
1602 バッフル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材に衝突させて前記微粒子の構成材料からなる構造物と前記基材との複合構造物を形成する複合構造物形成システムであって、
前記微粒子を収容する収容機構と、
前記微粒子をガス中に分散させてエアロゾルを形成するエアロゾル化機構と、
前記収容機構から前記エアロゾル化機構に前記微粒子を供給する供給機構と、
前記収容機構と前記エアロゾル化機構との間のガスの流れを遮断する圧力遮断機構と、
前記エアロゾル化機構に前記ガスを供給するガス供給機構と、
前記エアロゾルを前記基材に向けて噴射する吐出口と、
を備えたことを特徴とする複合構造物形成システム。
【請求項2】
微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材に衝突させて前記微粒子の構成材料からなる構造物と前記基材との複合構造物を形成する複合構造物形成システムであって、
前記微粒子を収容する収容機構と、
前記微粒子をガス中に分散させてエアロゾルを形成するエアロゾル化機構と、
前記収容機構から前記エアロゾル化機構に前記微粒子を供給する供給機構と、
前記エアロゾル化機構に前記ガスを供給するガス供給機構と、
前記エアロゾルを前記基材に向けて噴射する吐出口と、
を備え、
前記収容機構と前記エアロゾル化機構とを連通する経路に前記微粒子を押し固めた圧粉体を充填することにより前記ガスの流れを遮断することを特徴とする複合構造物形成システム。
【請求項3】
前記エアロゾル化機構は、前記圧粉体を解きほぐす解砕手段を有することを特徴とする請求項2記載の複合構造物形成システム。
【請求項4】
前記エアロゾルを形成している状態において、前記エアロゾル化機構の圧力は大気圧よりも高い状態または低い状態にあり、前記収容機構の圧力は大気圧に略等しいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の複合構造物形成システム。
【請求項5】
前記収容機構に前記微粒子を補充可能な予備収容機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の複合構造物形成システム。
【請求項6】
前記収容機構に収容された前記微粒子にバインダを添加するバインダ添加機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の複合構造物形成システム。
【請求項7】
前記微粒子に添加されたバインダを除去する除去手段をさらに備えたことを特徴とする請求項6記載の複合構造物形成システム。
【請求項8】
前記吐出口と前記基材とを収容する構造物作製室と、
前記構造物作製室の内部空間を大気圧よりも減圧状態に維持可能とした排気手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の複合構造物形成システム。
【請求項9】
前記エアロゾル中の前記微粒子の濃度を定量化する定量機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の複合構造物形成システム。
【請求項10】
前記エアロゾルに含有される前記微粒子の濃度を検知する計量機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の複合構造物形成システム。
【請求項11】
前記計量機構により検知された情報に基づき前記定量機構を制御することを特徴とする請求項10記載の複合構造物形成システム。
【請求項12】
前記計量機構は、前記エアロゾル化機構または前記エアロゾル化機構と前記定量機構との間に設けられたことを特徴とする請求項10記載の複合構造物形成システム。
【請求項13】
前記エアロゾルに含まれる前記微粒子を解砕する解砕機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の複合構造物形成システム。
【請求項14】
前記エアロゾルに含まれる前記微粒子の粒度を選別する分級機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の複合構造物形成システム。
【請求項15】
前記エアロゾルの流束を加速させる加速機構と、前記エアロゾルの流束を均一化させる整流機構の少なくともいずれかをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の複合構造物形成システム。
【請求項16】
収容機構とエアロゾル化機構との間のガスの流れを遮断しつつ前記収容機構から前記エアロゾル化機構に微粒子を搬送する工程と、
前記搬送された前記微粒子をガス中に分散させてエアロゾルを形成する工程と、
前記エアロゾルを前記基材に向けて噴射することにより前記微粒子の構成材料からなる構造物と前記基材との複合構造物を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする複合構造物形成方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2006−206976(P2006−206976A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22049(P2005−22049)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】