説明

複合樹脂の溶媒分散体及びその用途

本発明は、熱可塑性エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)の重合体とからなる複合樹脂、及び溶媒からなる複合樹脂の溶媒分散体であって、該熱可塑性エラストマー(A)がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布(Mw/Mn)が3以下であるプロピレン系エラストマーであって、共重合性モノマー(B)が官能基を有しないモノマーを少なくとも1種含有する複合樹脂の溶媒分散体、並びにその用途である。
本発明によれば、ポリオレフィン、合成ゴム、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等からなる各種樹脂の成形品や、鋼板やアルミニウム等の金属に優れた密着性を発現し、塗膜表面にベタツキがなく、低温でのヒートシール性に優れた性能を有する塗料、プライマー、接着剤、添加剤、バインダー、フィルム、ストリッパブルペイント及びトラフィックペイント用プライマーを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、熱可塑性エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)の重合体とからなる複合樹脂、及び溶媒からなる複合樹脂の溶媒分散体、並びにその用途に関するものである。
より詳しくは、塗膜にする事で無処理ポリオレフィン系樹脂フィルムやシート、あるいは成形物等への塗料及びプライマーとして、又は接着剤、添加剤、バインダー、フィルム、ストリッパブルペイント及びトラフィックペイント用プライマー等として有用なポリオレフィン系複合樹脂の溶媒分散体に関するものである。
【背景技術】
従来より、ポリオレフィン系樹脂は一般に生産性がよく各種成形性にも優れ、しかも軽量で防錆、かつ耐衝撃性がある等といった多くの利点があるため、自動車や船舶等の内装や外装、及び家電や家具、雑貨、建築の材料等として広範囲に使用されている。
このようなポリオレフィン系の樹脂成形物は一般に、ポリウレタン系樹脂やポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂及びポリエステル系樹脂等に代表される極性を有する合成樹脂とは異なり、非極性であってかつ結晶性であるため、汎用の樹脂組成物ではこのものへの塗装や接着を行うのが非常に困難である。
このため、ポリオレフィン系樹脂成形物に塗装や接着を行う際は、その表面をプライマー処理したり、あるいは活性化することにより表面への付着性を改良するといったことが行われてきた。例えば、自動車用バンパーではその表面をトリクロロエタン等のハロゲン系有機溶剤でエッチング処理することにより塗膜との密着性を高めたり、又はコロナ放電処理やプラズマ処理、もしくはオゾン処理等の前処理をした後において、目的の塗装や接着を行うといったことがなされてきた。
しかしながら、これら従来に知られる汎用の樹脂組成物を用いた塗装や接着においては多大な設備費がかかるばかりでなく、施行に長時間を要し、更には仕上がりが一様でなく、表面処理状態に差を生じやすい原因となっていた。
そこで従来、上記した問題が改善される塗料組成物として、例えばポリオレフィンにマレイン酸を導入した組成物(特公昭62−21027号公報等)、又は塩素化変性ポリオレフィンを主成分とした組成物(特公昭50−10916号公報等)といったものが提案されてきた。しかしながら、これらはポリオレフィン系成形物等に対する密着性には優れるものの、耐候性に劣るため、通常はプライマー用として、又は耐候性が不要とされる箇所への使用に限られたものとなっている。したがって、これらの組成物を使用し、耐候性が必要とされる箇所への塗装を行うような場合においては通常、操作が煩雑なツーコート仕上げが必要となる。
このため、何らの前処理を施すことなく素材に対して優れた密着性が発現でき、優れた耐候性をも有するワンコート仕上げ処理の可能な塗料の開発が進められており、この分野では例えば、アクリル系単量体と塩素化ポリオレフィンを共重合させて得られる樹脂(特開昭58−71966号公報等)や、水酸基含有アクリル−塩素化ポリオレフィン共重合体とイソシアナート化合物からなる塗料組成物(特開昭59−27968号公報)等が提案されてきた。しかしながら、これらは塩素を含有する為、環境への影響が懸念されている。
また、ポリオレフィン中に不飽和結合を導入する方法(特開平1−123812号及び同2−269109号公報等)、有機過酸化物を導入する方法(特開平1−131220号公報等)、及び2官能性有機過酸化物を用いる方法(特開昭64−36614号公報等)等も提案されており、これらはポリオレフィンとラジカル重合性不飽和モノマーとの反応性を向上させるための工夫である。
しかしながら、上記した樹脂組成物及びその製法においては多くの場合、特に粘性の問題から希薄な濃度で反応させなければならず、ポリオレフィンへのグラフト共重合効率が低く、ラジカル重合性不飽和モノマーのホモポリマーを生じやすいため、得られる樹脂溶液は非常に分離を起こしやすく、通常はそのままのものを即、使用することができないという欠点を持ち、さらにこれらを塗工したものはベタツキを生じるという欠点も持っていた。
また、ポリオレフィンとアルミニウム等の金属との接着においても、変性ポリプロピレンの樹脂分散体(特開昭63−12651号公報等)が提案されている。しかしながら、塗膜のベタツキを低減するため、融点の高い原料を使用しておりヒートシール温度が高いという欠点があった。
[特許文献1]特公昭62−21027号公報
[特許文献2]特公昭50−10916号公報
[特許文献3]特開昭58−71966号公報
[特許文献4]特開昭59−27968号公報
[特許文献5]特開平1−123812号公報
[特許文献6]特開平2−269109号公報
[特許文献7]特開平1−131220号公報
[特許文献8〕特開昭64−36614号公報
[特許文献9]特開昭63−12651号公報
本発明は、従来の上述した問題点を解消する複合樹脂の溶媒分散体を提供するものである。
すなわち、本発明は、樹脂溶液が分離現象を起こすことなくスプレー塗装することが可能で、塗膜にした際には塗膜表面にベタツキがなく、分子内にイソシアナート基を有する硬化剤を用いて得られる塗膜が塩素化変性ポリオレフィン系の塗膜に比し、より優れた耐候性を示すものであって、無処理ポリオレフィン系樹脂フィルムやシート、あるいは成形物等へ優れた密着性を発現し、さらに低温でのヒートシール性に優れている塗料、プライマー、接着剤、添加剤、バインダー、フィルム、ストリッパブルペイント及びトラフィックペイント用プライマーを提供することを目的とするものである。
【発明の開示】
本発明者らは、上記目的の達成の為に鋭意研究及び検討を重ねてきた結果、特定の熱可塑性エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)を原料として得られた樹脂溶液、及び得られた樹脂溶液に分子内にイソシアナート基を有する硬化剤を混合した樹脂を用いることが、上記目的を達成する上で極めて有用なものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の[1]〜[28]の発明からなる。
[1] 熱可塑性エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)の重合体とからなる複合樹脂、及び溶媒からなる複合樹脂の溶媒分散体であって、該熱可塑性エラストマー(A)がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布(Mw/Mn)が3以下であるプロピレン系エラストマーであって、共重合性モノマー(B)が官能基を有しないモノマーを少なくとも1種含有する複合樹脂の溶媒分散体。
[2] 溶媒が有機溶剤及び/又は水である[1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
[3] 溶媒が水で、塩基性物質を含有する[1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
[4] 溶媒が水で、界面活性剤を含有する[1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
[5] 溶媒が有機溶剤及び水である複合樹脂の溶媒分散体から有機溶剤を除去してなり、塩基性物質又は界面活性剤を含有する請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
[6] 請求項3〜5のいずれかに記載の、溶媒が水である複合樹脂の溶媒分散体において、熱可塑性エラストマー(A)と共重合性モノマー(B)が同一粒子内に存在してなる複合樹脂の溶媒分散体。
[7] 熱可塑性エラストマー(A)が、135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.1〜12dl/gであって、(a)プロピレンから誘導される単位を50〜93モル%、(b)α−オレフィンから誘導される単位を5〜50モル%、および(c)エチレンから誘導される単位を2〜40モル%の割合で含有するプロピレン系エラストマー(I)、又は、(a)プロピレンから誘導される単位を50〜95モル%、(b)α−オレフィンから誘導される単位を5〜50モル%を含有するプロピレン系エラストマー(II)である[1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
[8] 熱可塑性エラストマーが、
[i] 下記の式1で表される遷移金属化合物と、

(Mは周期律表第IVb、VbおよびVIb族の遷移金属原子であり、R、R、RおよびRは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基であり、また互いに隣接する基の一部が結合して、それらの基が結合する炭素原子とともに環を形成していてもよく、XおよびXは互いに同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基であり、Yは炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−NR−、−P(R)−、−P(O)(R)−、−BR−または−AlR−[ただしRは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。)
[ii] [ii−1]有機アルミニウム化合物、
[ii−2]有機アルミニウムオキシ化合物、および
[ii−3]遷移金属化合物1と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、プロピレン及びα−オレフィン、或いはプロピレン、α−オレフィン及びエチレンを共重合させて得られる[1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
[9] 熱可塑性エラストマーが、
[i] 下記の式2で表される遷移金属化合物と、

(M、R、R、X、XおよびYは、式[1]の定義と同じであり、R21−R24およびR41〜R44は水素原子、ハロゲン原子、炭素数2〜6のアルキル基または炭素数6〜16のアリール基であり、このアルキル基またはアリール基はハロゲン原子または有機シリル基で置換されていてもよく、また隣接した置換基は環を形成していてもよい。)
[ii] [ii−1]有機アルミニウム化合物、
[ii−2]有機アルミニウムオキシ化合物、および
[ii−3]遷移金属化合物2と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、プロピレン及びα−オレフィン、或いはプロピレン、α−オレフィン及びエチレンを共重合させて得られる[1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
[10] 熱可塑性エラストマーが、
[i] 下記の式3で表される遷移金属化合物と、

(Mは周期律表第IIIb、IVb、Vb、VIb、VIIb及びVIII族の遷移金属原子であり、
mは、1〜3の整数であり、
Qは、窒素原子又は置換基R52を有する炭素原子であり、
Aは酸素原子、イオウ原子、セレン原子、又は置換基R56を有する窒素原子であり、
51〜R56は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基又はスズ含有基であり、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上のときは、R51同士、R52同士、R53同士、R54同士、R55同士、R同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、いずれか1つの配位子に含まれるR51〜R56のうちの1個の基と他の配位子に含まれるR51〜R56のうちの1個の基とが連結されていてもよく、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基又はスズ含有基であり、nが2以上のときは、X同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、X同士が互いに結合して環を形成してもよい。)
からなる重合用触媒の存在下に、プロピレン及びα−オレフィン、或いはプロピレン、α−オレフィン及びエチレンを共重合させて得られる[1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
[11] さらに、
[iii] [iii−1]有機金属化合物、
[iii−2]有機アルミニウムオキシ化合物、および
[iii−3]遷移金属化合物3と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、プロピレン及びα−オレフィン、或いはプロピレン、α−オレフィン及びエチレンを共重合させて得られる[10]に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
[12] α−オレフィンが1−ブテンである[8]〜[11]のいずれかに記載の複合樹脂の溶媒分散体。
[13] (1)有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)と、共重合性モノマー(B)とを重合させるか、(2)有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)と、共重合性モノマー(B)とを重合させたのちラジカルを発生させ反応させるか、又は、(3)有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)と、共重合性モノマー(B)で構成された重合体(C)とをラジカルを発生させ反応させてなる[1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
[14] 熱可塑性エラストマー(A)と、共重合性モノマー(B)が、(A)/(B)=10/90〜90/10の重量比である[1]に記載の複合樹脂組成物。
[15] 熱可塑性エラストマー(A)に、少なくとも一部が官能基で変性されたものを用いた[1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
[16] [1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する塗料。
[17] [1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有するプライマー。
[18] [1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する接着剤。
[19] [1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する添加剤。
[20] [1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有するバインダー。
[21] [1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体より得られるフィルム。
[22] 活性水素及び/又は水酸基を有する[1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を含有する塗料。
[23] 活性水素及び/又は水酸基を有する[1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を含有するプライマー。
[24] 活性水素及び/又は水酸基を有する[1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を含有する接着剤。
[25] 活性水素及び/又は水酸基を有する[1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を含有する添加剤。
[26] 活性水素及び/又は水酸基を有する[1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を含有するバインダー。
[27] 活性水素及び/又は水酸基を有する[1]に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を反応させてなるフィルム。
[28] [16]〜[20]に記載の塗料、プライマー、接着剤、添加剤若しくはバインダーを塗布してなる塗膜、又は、[22]〜[27]に記載の塗料、プライマー、接着剤、添加剤若しくはバインダーを硬化してなる塗膜。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の複合樹脂の溶媒分散体は、熱可塑性エラストマー(A)に、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)と重合開始剤をフィードしながら重合せしめた後、或いは熱可塑性エラストマー(A)とα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)に、重合開始剤をフィードしながら重合せしめた後に、更にラジカルを発生させ反応を行なう方法で製造することができる。また、熱可塑性エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)で構成された重合体(C)とをラジカルを発生させ反応を行なう方法でも製造することができる。さらに、熱可塑性エラストマー(A)の一部が官能基で変性されたものに、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)と重合開始剤をフィードしながら重合せしめた後、或いは熱可塑性エラストマー(A)の一部が官能基で変性されたものとα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)に、重合開始剤をフィードしながら重合せしめる方法、或いはその後に更にラジカルを発生させ反応を行なう方法で製造することができる。また、熱可塑性エラストマー(A)の一部が官能基で変性されたものと、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)で構成された重合体(C)とをラジカルを発生させ反応を行なう方法でも製造することができる。
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー(A)としては、プロピレン系エラストマー(I)、(II)が挙げられる。
<プロピレン系エラストマー(I)、(II)>
本発明で用いられるプロピレン系エラストマー(I)、(II)は、[i]特定の遷移金属化合物と、[ii][ii−1]有機アルミニウム化合物[ii−2]有機アルミニウムオキシ化合物および[ii−3]前記遷移金属化合物[i]と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含むオレフィン重合用触媒の存在下に、プロピレン、1−ブテン及びエチレン、或いはプロピレン及び1−ブテンを共重合させることにより製造される。遷移金属化合物[i]は、式1で示される。


式中のMは周期律表第IVb、VbおよびVIb族の遷移金属原子であり、具体的には、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンであり、好ましくはチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムであり、中でもジルコニウムが特に好ましい。
、R、RおよびRは互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。また、互いに隣接する基の一部が結合して、それらの基が結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。なお、それぞれ2個づつ表示されたR、R、RおよびRは、これらが結合して環を形成する際に同一記号同士の組み合わせで結合することが好ましいことを示しており、例えばRとRとが結合して環を形成することが好ましいことを示している。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、2,3−ジメチルブチル、イソペンチル、t−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、イソヘキシル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシル、ノルボルニル、アダマンチルなどのアルキル基、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニルなどのアルケニル基、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、トリルエチルなどのアリールアルキル基、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、α−またはβ−ナフチル、メチルナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ベンジルフェニル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニリルなどのアリール基などが挙げられ、ハロゲン化炭化水素基としてはこれら炭化水素基がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
これらの炭化水素基が結合して形成する環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アセナフテン環、インデン環などの縮環基および縮環基の水素原子がメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基で置換された基などが挙げられる。さらに炭化水素基がハロゲン原子で置換されていてもよい。
ケイ素含有基としては、メチルシリル、フェニルシリルなどのモノ炭化水素置換シリル、ジメチルシリル、ジフェニルシリルなどのジ炭化水素置換シリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリルなどのトリ炭化水素置換シリル、トリメチルシリルエーテルなどの炭化水素置換シリルのシリルエーテル、トリメチルシリルメチルなどのケイ素置換アルキル基、トリメチルフェニルなどのケイ素置換アリール基などのケイ素含有置換基が挙げられる。
酸素含有基としては、ヒドロキシ基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどのアルコキシ基、フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシなどのアリロキシ基、フェニルメトキシ、フェニルエトキシなどのアリールアルコキシ基などが挙げられる。
イオウ含有基としては、前記含酸素化合物の酸素がイオウに置換したイオウ含有基、メチルスルフォネート、トリフルオロメタンスルフォネート、フェニルスルフォネート、ベンジルスルフォネート、p−トルエンスルフォネート、トリメチルベンジルスルフォネート、トリイソブチルベンゼンスルフォネート、p−クロルベンゼンスルフォネート、ペンタフルオロベンゼンスルフォネートなどのスルフォネート基、メチルスルフィネート、フェニルスルフィネート、ベンゼンスルフィネート、p−トルエンスルフィネート、トリメチルベンゼンスルフィネート、ペンタフルオロベンゼンスルフィネート、トリフルオロメタンスルフィネートなどのスルフィネート基が挙げられる。
窒素含有基としては、アミノ基、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノなどのアルキルアミノ基、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリール基などが挙げられる。
リン含有基としては、ジメチルフォスフィノ、ジフェニルフォスフィノなどのフォスフィノ基などが挙げられる。
としては、水素原子、メチル基、炭素数2〜6の炭化水素基、アリール基などが好ましく、特にメチル基、炭素数2〜6の炭化水素基が好ましい。Rおよび、Rとしては、これらのうち水素原子、炭化水素基が好ましく、特に水素原子が好ましい。Rとしては、ハロゲン原子、ケイ素含有基で置換されていてもよい炭化水素基が好ましく、中でも炭素数3〜20の2級または3級アルキル基、またはアリール基が好ましい。
およびXは互いに同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基またはイオウ含有基である。
具体的な原子または基として、R〜Rで記載したものと同様なものが挙げられる。
Yは炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−NR−、−P(R)−、−P(O)(R)−、−BR−または−AlR−[ただしRは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基]である。
2価の炭化水素基としては、メチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、ジメチル−1,2−エチレン、1,2−トリメチレン、1,4−テトラメチレン、1,2−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレンなどのアルキレン基、ジフェニルメチレン、ジフェニル−1,2−エチレンなどのアリールアルキレン基などが挙げられる。
また、炭素数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基としては、クロロメチレンなど前記炭素数1〜20の2価の炭化水素基をハロゲン化したものなどが挙げられる。
2価のケイ素含有基としては、メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(イソプロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(p−トリル)シリレン、ジ(p−クロロフェニル)シリレンなどのアルキルシリレン、アルキルアリールシリレン、アリールシリレン基、テトラメチル−1,2−ジシリル、テトラフェニル−1,2−ジシリル、などのアルキルジシリル、アルキルアリールジシリル、アリールジシリル基などが挙げられる。
2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基置換基としては、それぞれ前記2価のケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムまたはスズに置換した化合物が挙げられる。
これらのうち、好ましいのは2価のケイ素含有基であり、特に好ましいのは、アルキルシリレン、アルキルアリールシリレン、アリールシリレンである。
次に式1で表される遷移金属化合物[i]を例示する。ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ネオペンチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(1−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(3−メチルシクロペンタジエニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
式1で表される遷移金属化合物[i]のうち、式2で示されるものが好ましい。

M、R、R、X、XおよびYは、式「1」の定義と同じであり、R21〜R24およびR41〜R44は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数2〜6のアルキル基または炭素数6〜16のアリール基であり、このアルキル基またはアリール基はハロゲン原子または有機シリル基で置換されていてもよく、また隣接した置換基は環を形成していてもよい。
具体例として、rac−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジブロミド、rac−エチレンビス(1−インデニル)ジメチルジルコニウム、rac−エチレンビス(1−インデニル)ジフェニルジルコニウム、rac−エチレンビス(1−インデニル)メチルジルコニウムモノクロリド、rac−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、rac−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)、rac−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、rac−エチレンビス{1−(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられ、rac−ジメチルシリレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−イソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−エチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−n−プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−イソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−n−ブチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−s−ブチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−t−ブチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2.7−ジメチル−4−n−ペンチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−n−ヘキシルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−シクロヘキシルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−メチルシクロヘキシルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−フェニルエチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−フェニルジクロルメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−クロロメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−トリメチルシリレンメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−トリメチルシロキシメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられ、rac−ジエチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−イソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジ(イソプロピル)シリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−イソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジ(n−ブチル)シリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−イソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジ(シクロヘキシル)シリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−イソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−メチルフェニルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−イソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−メチルフェニルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−t−ブチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジフェニルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−t−ブチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジフェニルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−イソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジフェニルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−エチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジ(p−トリル)シリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−イソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジ(p−クロロフェニル)シリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−イソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられ、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−イソプロピル−7−エチルインデニル)}ジルコニウムジブロミドrac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−イソプロピルインデニル)}ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−イソプロピルインデニル)}ジルコニウムメチルクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−イソプロピル−1−インデニル)}ジルコニウム(トリフルオロメタンスルホナト)、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2,7−ジメチル−4−イソプロピル−1−インデニル)}ジルコニウムビス(p−フェニルスルフィナト)などが挙げられ、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−フェニル−4−イソプロピル−7−メチル−1−インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−α−アセナフトインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられ、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(α−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(β−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(1−アントラセニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(2−アントラセニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(9−アントラセニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(9−フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられ、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(p−フルオロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(ペンタフルオロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(p−クロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(m−クロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(o−クロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(o,p−ジクロロフェニル)フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(p−ブロモフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(p−トリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(m−トリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(o−トリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(o,o’−ジメチルフェニル)−1−インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(p−エチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(p−イソプロピルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(p−ベンジルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(p−ビフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(m−ビフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(p−トリメチルシリルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−(m−トリメチルシリレンフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−フェニル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられ、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジブロミド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムメチルクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムクロリドSO2Me、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムクロリドOSO2Me、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムモノクロリドモノ(トリフルオロメタンスルフォナート)、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジ(トリフルオロメタンスルフォナート)、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジ(p−トルエンスルフォナート)、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジ(メチルスルフォナート)、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジ(トリフルオロメタンスルフィナート)、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジ(トリフルオロアセテート)、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムモノクロリド(n−ブトキシド)、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジ(n−ブトキシド)、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムモノクロリド(フェノキシド)などが挙げられ、rac−メチレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジクロリド、rac−エチレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジイソプロピルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジ−(n−ブチル)シリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジシクロヘキシルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−メチルフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジ(p−トリル)シリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジ(p−クロロフェニル)シリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルゲルミレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルスタニレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられ、rac−ジメチルシリレン−ビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(α−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(β−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(2−メチル−1−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(5−アセナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(9−アントラセニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(9−フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(o−メチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−m−メチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(p−メチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(2,3−ジメチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(2,4−ジメチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(2,5−ジメチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(2,4,6−トリメチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられ、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(o−クロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(m−クロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(p−クロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(2,3−ジクロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(2,6−ジクロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(3,5−ジクロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(2−ブロモフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(3−ブロモフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(4−ブロモフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられ、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(4−ビフェニリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(4−トリメチルシリレンフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−ロピル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−プロピル−4−(α−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−プロピル−4−(β−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−プロピル−4−(2−メチル−1−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−プロピル−4−(5−アセナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−プロピル−4−(9−アントラセニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−プロピル−4−(9−フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられ、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−イソプロピル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−イソプロピル−4−(α−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−イソプロピル−4−(β−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−イソプロピル−4−2−メチル−1−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−イソプロピル−4−(5−アセナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−イソプロピル−4−(9−アントラセニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−イソプロピル−4−(9−フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられ、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−s−ブチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−s−ブチル−4−(α−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−s−ブチル−4−(β−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−s−ブチル−4−(8−メチル−9−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−s−ブチル−4−(5−アセナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−s−ブチル−4−(9−アントラセニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−s−ブチル−4−(9−フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−ペンチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−ペンチル−4−(α−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−ブチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−ブチル−4−(α−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−ブチル−4−(β−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−ブチル−4−(2−メチル−1−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−ブチル−4−(5−アセナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−ブチル−4−(9−アントラセニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−ブチル−4−(9−フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−イソブチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−イソブチル−4−(α−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−イソブチル−4−(β−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−イソブチル−4−(2−メチル−1−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−イソブチル−4−(5−アセナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−イソブチル−4−(9−アントラセニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−ブチル−4−(9−フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−ネオペンチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−ネオペンチル−4−(α−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−ヘキシル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス{1−(2−n−ヘキシル−4−(α−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられ、rac−メチルフェニルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−メチルフェニルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(α−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−メチルフェニルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(9−アントラセニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−メチルフェニルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(9−アントラセニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジフェニルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(α−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジフェニルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(9−アントラセニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジフェニルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(9−フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジフェニルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(4−ビフェリニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジフェニルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(α−ナフチル)インデニル)}などが挙げられ、rac−メチレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−メチレンビス{1−(2−エチル−4−(α−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−エチレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−エチレンビス{1−(2−n−プロピル−4−(α−ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルゲルミレンエチレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルゲルミレンエチレンビス{1−(2−エチル−4−(α−ナフチル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルゲルミレンエチレンビス{1−(2−n−プロピル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルスタニレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルスタニレンビス{1−(2−エチル−4−(α−ナフチル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルスタニレンビス{1−(2−エチル−4−(9−フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルスタニレンビス{1−(2−n−プロピル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
本発明においては、前記化合物において、ジルコニウムをチタニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンに置き換えた遷移金属化合物[i]を用いることもできる。遷移金属化合物[i]は、通常ラセミ体としてオレフィン重合用触媒成分として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。遷移金属化合物[i]を組み合わせて使用することもできる。
本発明においては、遷移金属化合物[i]を活性化させ得る化合物[ii](以下成分[ii]ともいう)として、[ii−1]有機アルミニウム化合物、[ii−2]有機アルミニウムオキシ化合物、および[ii−3]前記遷移金属化合物[i]と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられる。
本発明において用いられる[ii−1]有機アルミニウム化合物は、例えば下記式4で示される。

(Rは炭素数1〜12の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子または水素原子であり、nは1〜3である。)
式4において、Rは炭素数1〜12の炭化水素基、例えばアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であるが、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などである。
有機アルミニウム化合物[ii−1]としては、具体的には以下のような化合物が挙げられる。トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、イソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。
また、有機アルミニウム化合物[ii−1]として、下記式5で示される化合物を用いることもできる。

(Rは前記と同じであり、Yは−OR基、−OSiR基、−OAlR基、−NR基、−SiR基または−N(R)AlR基であり、nは1〜2であり、R、R、RおよびRはメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、Rは水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、RおよびRはメチル基、エチル基などである。)
具体的には、下記の化合物が例示される。
(1)RAl(OR3−nで表される化合物、例えばジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシドなど、
(2)RAl(OSiR3−nで表される化合物、例えばEtAl(OSiMe)、(iso−Bu)Al(OSiMe)、(iso−Bu)Al(OSiEt)など、
(3)RAl(OAlR3−nで表される化合物、例えば、EtAlOAlEt、(iso−Bu)AlOAl(iso−Bu)など、
(4)RAl(NR3−nで表される化合物、例えば、MeAlNEt、EtAlNHMe、MeAlNHEt、EtAlN(SiMe、(iso−Bu)AlN(SiMeなど、
(5)RAl(SiR3−nで表される化合物、例えば、(iso−Bu)AlSiMeなど、
(6)RAl(N(R)AlR3−nで表される化合物、例えば、EtAlN(Me)AlEt、(iso−Bu)AlN(Et)Al(iso−Bu)などが挙げられ、これらは単独でも、また組み合わせて用いることができる。
これらのうちでは、式RAl、式RAl(OR3−n、RAl(OAlR3−nで示される化合物が好ましく、Rがイソアルキル基である化合物が好ましい。
本発明で用いられる[ii−2]有機アルミニウム化合物では、従来公知のベンゼン可溶性のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
アルミノキサンは、例えば、下記の方法によって製造することができる。
(1)吸着水を含有する化合物あるいは結晶水を含有する塩類、例えば、塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、直接、水や氷や水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
なおアルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された前記のアルミノキサンの溶液から溶媒あるいは未反応有機アルミニウム化合物を蒸留により除去した後、溶媒に再溶解してもよい。
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、前記有機アルミニウム化合物[ii−1]として示したものと同様なものが挙げられる。具体的には、トリアルキルアルミニウムおよびトリシクロヘキシルアルミニウムが特に好ましい。有機アルミニウム化合物[ii−1]を2種以上組み合わせて用いることもできる。
アルミノキサンの製造に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分あるいは前記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物、とりわけ、塩素化物、臭素化物などが挙げられる。その他、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素が好ましい。
また、本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、ベンゼンに対して不溶性あるいは難溶性である。
このような有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼンに対する溶解性は、100ミリグラム原子のAlに相当する有機アルミニウムオキシ化合物を100mlのベンゼンに懸濁した後、攪拌下60℃で6時間混合した後、ジャケット付きG−5ガラス製フィルターを用い、60℃で熱時濾過を行い、フィルター上に分離された固体部を60℃のベンゼン50cmを用いて4回洗浄した後の全濾液中に存在するAl原子の存在量(×ミリモル)を測定することにより求められる(×%)。
本発明において、オレフィン重合用触媒を形成する際に用いられる遷移金属化合物[i]と反応してイオン対を形成する化合物[ii−3]としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、US−547718号公報などに記載されたルイス酸、イオン性化合物およびカルボラン化合物を挙げることができる。
具体的に、ルイス酸としては、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、MgCl、Al、SiO−Alなどが挙げられる。
イオン性化合物としては、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリn−ブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
カルボラン化合物としては、ドデカボラン、1−カルバウンデカボラン、ビスn−ブチルアンモニウム(1−カルバドデカ)ボレート、トリn−ブチルアンモニウム(7,8−ジカルバウンデカ)ボレート、トリn−ブチルアンモニウム(トリデカハイドライド−7−カルバウンデカ)ボレートなどが挙げられる。
これらは2種以上組み合わせて用いることもできる。本発明では、遷移金属化合物[i]を活性化し得る化合物[ii]として、前記のような成分[ii−1]、[ii−2]および[ii−3]を組み合わせて使用することもできる。
オレフィン重合用触媒は、前記の遷移金属化合物[i]および成分[ii]を不活性炭化水素溶媒中またはオレフィン溶媒中で混合することにより調製することができる。
オレフィン重合用触媒の調製に用いられる不活性炭化水素溶媒としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分あるいはこれらの混合物などを用いることができる。
これら各成分から触媒を調製するに際して、遷移金属化合物[i]は、約10−5〜10モル/m(重合容積)、好ましくは10−4〜5×10モル/mの量で用いることが望ましい。
成分[ii]として[ii−1]および/または[ii−2]が用いられる場合には、遷移金属化合物[i]の遷移金属に対する成分[ii]中のアルミニウの原子比(Al/遷移金属)で、通常10〜10000、好ましくは20〜5000の量で用いられる。この[ii−1]と[ii−2]とが併用されるときには、[ii−1]中のアルミニウの原子比[Al−1]と[ii−2]中のアルミニウの原子比[Al−2]の原子比[Al−1]/[Al−2]が0.02〜3、さらに0.05〜1.5となる量で用いられることが望ましい。
また、成分[ii]として[ii−3]が用いられる場合には、遷移金属化合物[i]と成分[ii−3]とのモル比([i]/[ii−3])で、通常0.01〜10、好ましくは0.01〜5の量で用いられる。
前記各成分は、重合器中で接触させてもよいし、予め接触混合してから重合器に添加してもよい。予め接触させる場合には、各成分は、通常−50〜150℃、好ましくは−20〜120℃の温度で、1分〜50時間、好ましくは5分〜25時間接触させることができる。また接触時には、混合温度を変化させてもよい。
本発明で用いられるオレフィン重合用触媒は、前記成分[i]および[ii]の少なくともいずれかが顆粒状ないしは微粒子状固体(担体)に担持された固体状オレフィン重合用触媒であってもよい。
担体は、無機担体であっても有機担体であってもよい。無機担体としては多孔質酸化物が好ましく、例えばSiO、Alなどを用いることができる。有機担体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数2〜14のα−オレフィン、もしくはスチレン、ビニルシクロヘキサンを主成分とする重合体または共重合体などを用いることができる。
また、本発明で用いられるオレフィン重合触媒は、前記の各触媒成分にオレフィンを予備重合させて予備重合触媒を調製してから用いることもできる。予備重合に用いられるオレフィンとしては、プロピレン、エチレン、1−ブテンなどのオレフィン類が用いられるが、これらと他のオレフィンとを組合わせて用いることもできる。
なお本発明では、オレフィン重合用触媒を調製する際して、前記のような各成分以外にもオレフィン重合に有用な他の成分、例えば、触媒成分としての水なども含むことができる。
また、本発明で用いられるプロピレン系エラストマー(I)、(II)は、下記の式3で表される遷移金属化合物からなるオレフィン重合用触媒の存在下に、プロピレン、1−ブテン及びエチレン、或いはプロピレン及び1−ブテンを共重合させることにより製造することができる。

(Mは周期律表第IIIb、IVb、Vb、VIb、VIIb及びVIII族の遷移金属原子であり、
mは、1〜3の整数であり、
Qは、窒素原子又は置換基R52を有する炭素原子であり、
Aは酸素原子、イオウ原子、セレン原子、又は置換基R56を有する窒素原子であり、
51〜R56は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基又はスズ含有基であり、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上のときは、R51同士、R52同士、R53同士、R54同士、R55同士、R同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、いずれか1つの配位子に含まれるR51〜R56のうちの1個の基と他の配位子に含まれるR51〜R56のうちの1個の基とが連結されていてもよく、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基又はスズ含有基であり、nが2以上のときは、X同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、X同士が互いに結合して環を形成してもよい。)
さらに、本発明で用いられるプロピレン系エラストマー(I)、(II)は、
[i] 前記の式3で表される遷移金属化合物と、
[iii] [iii−1]有機金属化合物、
[iii−2]有機アルミニウムオキシ化合物、および
[iii−3]遷移金属化合物3と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、プロピレン、1−ブテン及びエチレン、或いはプロピレン及び1−ブテンを共重合させることによっても製造することができる。
本発明のプロピレン系エラストマー(I)、(II)は、前記のようなオレフィン重合用触媒の存在下にプロピレンと1−ブテンとエチレン、或いはプロピレンと1−ブテンを、最終的に目標とする組成比になるように共重合させることによって製造することができる。
重合は懸濁重合、溶液重合などの液相重合法あるいは気相重合法のいずれによっても実施できる。液相重合法では前述した触媒調製の際に用いた不活性炭化水素溶媒と同じものを用いることができ、プロピレンを溶媒として用いることもできる。
重合を懸濁重合法により実施する際には、−50〜100℃、好ましくは0〜90℃の温度で、また溶液重合により実施する際には、0〜250℃、好ましくは20〜200℃の温度で行なう。気相重合により実施する際には、0〜120℃、好ましくは20〜100℃の温度、常圧〜9.80MPa、好ましくは常圧〜4.9MPaの圧力下で行なう。
重合は、回分式、半連続式、連続式のいずれによっても可能である。さらに、重合条件が異なる2段以上に分けて重合を行なうこともできる。得られるプロピレン系エラストマーの分子量は、重合系に水素を存在させるか、あるいは重合温度、重合圧力を変化させることによって調節することができる。
上記方法で得られるプロピレン系エラストマー(I)、(II)において、下記の物性を示すものを好適に用いることができる。
<プロピレン系エラストマー(I)>
▲1▼組成:(a)プロピレンから誘導される単位を50〜93モル%、好ましくは60〜90モル%、より好ましくは70〜90モル%の割合で、(b)1−ブテンから誘導される単位を5〜50モル%、好ましくは7〜40モル%、より好ましくは10〜35モル%の割合で、(c)エチレンから誘導される単位を2〜40モル%、好ましくは5〜35モル%、より好ましくは7〜30モル%の割合で含有し、かつ1−ブテンから導かれる単位の割合がエチレンから導かれる単位の割合より多い。プロピレン系エラストマー(I)は、前記3成分の他に、さらに別種のオレフィンから誘導される単位を、例えば10モル%以下含んでもよい。
▲2▼極限粘度[η]:135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.1〜12dl/g、好ましくは0.3〜10dl/g、より好ましくは0.5〜8dl/gである。
▲3▼分子量分布(Mw/Mn):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布(Mw/Mn)が3以下であり、好ましくは1.5〜3.0、より好ましくは1.5〜2.5である。
▲4▼融点(Tm):示差走査型熱量計によって求められる融点(Tm)は、好ましくは100℃以下で、より好ましくは90℃以下である。融点が測定できないものであってもよい。
<プロピレン系エラストマー(II)>
▲1▼組成:(a)プロピレンから誘導される単位を50〜95モル%、好ましくは60〜93モル%、より好ましくは70〜90モル%の割合で、(b)1−ブテンから誘導される単位を5〜50モル%、好ましくは7〜40モル%、より好ましくは10〜30モル%の割合で含有する。プロピレン系エラストマー(II)は、前記2成分の他に、さらに別種のオレフィンから誘導される単位を、例えば10モル%以下含んでもよい。
▲2▼極限粘度[η]:135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.41〜12dl/g、好ましくは0.3〜10dl/gである。
▲3▼分子量分布(Mw/Mn):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布(Mw/Mn)が3以下であり、好ましくは1.5〜3.0、より好ましくは1.5〜2.5である。
▲4▼融点(Tm):示差走査型熱量計によって求められる融点(Tm)は、好ましくは140℃以下で、より好ましくは130℃以下である。融点が測定できないものであってもよい。
本発明記載の熱可塑性エラストマー(A)の一部が官能基で変性されたものは、上記記載のプロピレン系エラストマー(I)、(II)、またはこれら2種の混合物に、以下記載の官能基を含有したα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーを反応させて得られるが、一部に反応しないものを含んでも何ら問題ない。
ここで用いられる官能基を含有したα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーとしは、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有ビニル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド等の窒素化合物、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の無水カルボン酸類が挙げられ、これらは単独でも、2種以上でも使用できる。上記官能基を含有したα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーの添加量は、熱可塑性エラストマーの重量の0.5〜20%の範囲、より好ましくは1〜15%である。
本発明に用いられる、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)を以下に挙げる。
α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有ビニル類及びこれらのモノエステル化物、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル類、ビニルイソシアナート、イソプロペニルイソシアナート等のイソシアナート基含有ビニル類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル類、その他アクリロニトリル、メタクリルニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、及びメチロールメタクリルアミド、エチレン、プロピレン、C4〜C20のα−オレフィン等が挙げられる。また、上記単量体、或いはその共重合体をセグメントに有し、末端にビニル基を有するマクロモノマー類等も使用できる。
また、本発明に用いられるその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーとしては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の無水カルボン酸類等が挙げられる。
共重合性モノマー(B)が官能基を有しないモノマーとしては、上記記載のα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)から、同じく上記記載の官能基を含有したα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)を除いたものが挙げられる。
また、ここに記載されたメチル(メタ)アクリレートのような記載は、メチルアクリレート及びメチルメタアクリレートを示す。
これらは、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体を主成分として用いることが好ましい。また、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体を主成分に、その他共重合可能な単量体を併用することもできる。
本発明で用いられる重合体(C)は、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)により構成される。
本発明での熱可塑性エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)或いはこれらの重合体(C)の比率は、重量比で(A)/(B)=10/90〜90/10、或いは(A)/(C)=10/90〜90/10、好ましくは(A)/(B)=10/90〜80/20、或いは(A)/(C)=10/90〜80/20である。
本発明では、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸エチル、n−酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3メトキシブチルアセテート等のエステル系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒等の有機溶剤を用いることができ、これらの2種以上からなる混合物であっても構わない。これらの中でも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素が好適で、更には脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素を好適に用いることができる。有機溶媒の量は、熱可塑性エラストマー(A)を有機溶媒に溶解させたときの不揮発分が5〜60重量%となる範囲で用いることができる。
本発明で用いる重合開始剤としては、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエイト、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタ酸)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオアミド)等のアゾ化合物が挙げられる。これらは、単独或いは2種以上併用して用いることができる。
また、更にラジカルを発生させて反応を行う場合のラジカル発生方法は、例えば、光重合開始剤の存在下に光を照射する方法、又は有機過酸化物を添加する方法等、公知の方法を使用することができる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ジアセチル、ベンジル、ベンゾイン、2−メチルベンゾイン、ω−ブロモアセトフェノン、クロロアセトン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、3,3’−4,4’−テトラ−ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール、メチルベンゾイルホルメート等のカルボニル類、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド類、ベンゾキノン、アントラキノン、クロロアントラキノン、エチルアントラキノン、ブチルアントラキノン等のキノン類、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類等が挙げられるが、これらは単独或いは2種以上併用して用いても良い。又、これらの光重合開始剤には、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ピリジン、キノリン、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等のアミン類、トリフェニルホスフィン等のアリルホスフィン類、β−チオジグリコール等のチオールエーテル類等を併用して用いても良い。
上記光重合開始剤の使用量は、前記熱可塑性エラストマー(A)と、共重合性モノマー(B)或いは重合体(C)との総重量に対し、通常、0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%の範囲で用いる事で安定性に大きな効果が現れる。
また、有機過酸化物としては、分子内にtert−ブチル基及び/又はベンジル基を有する、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエイト、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
本発明では、上記した有機過酸化物のうちでも、ジ−tert−ブチルパーオキサイドやtert−プチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートがより好適に用いられる。すなわち、分子内にtert−ブチル基及び/又はベンジル基を有する有機過酸化物は水素引抜能力が比較的高く、ポリオレフィンとのグラフト率を向上させる効果がある。
上記有機過酸化物の使用量は、熱可塑性エラストマー(A)と、共重合性モノマー(B)或いは重合体(C)との総重量に対し、通常2〜50重量%、より好ましくは3〜30重量%の範囲で用いる事で安定性に大きな効果が現れる。また、この有機過酸化物はなるべく時間をかけ、これを少量ずつ添加することが好ましい。すなわち、これの使用する量にもよるが、少量ずつ時間をかけて、又は多回数に分けて少量ずつ添加していくようにすることが好ましい。
上記樹脂を製造するにあたり、油脂類、油脂類の誘導体、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上を第3成分として用いることができる。
第3成分として用いられる油脂類としては、アマニ油、大豆油、ヒマシ油およびこれらの精製物が挙げられる。
第3成分として用いられる油脂類の誘導体としては、無水フタル酸等の多塩基酸とグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレングリコール等の多価アルコールを骨格としたものを油脂(脂肪酸)で変性した短油アルキッド樹脂、中油アルキッド樹脂、長油アルキッド樹脂等、或いはこれにさらに天然樹脂、合成樹脂および重合性モノマーで変性したロジン変性アルキッド樹脂、フェノール変性アルキッド樹脂、エポキシ変性アルキッド樹脂、アクリル化アルキッド樹脂、ウレタン変性アルキッド樹脂等が挙げられる。
また、第3成分として用いられるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック等をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、ビスフェノールAにプロピレンオキサイド、またはエチレンオキサイドを付加しグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂等を挙げることができる。また、多官能アミンをエポキシ基に付加したアミン変性エポキシ樹脂等を用いても良い。さらに、脂肪族エポキシ樹脂、脂環エポキシ樹脂、ポリエーテル系エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、第3成分として用いられるポリエステル樹脂は、カルボン酸成分とアルコール成分を縮重合したものであり、カルボン酸成分として例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,10−デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フマル酸等の多価カルボン酸およびその低級アルコールエステル、パラオキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸、および安息香酸等の1価カルボン酸等を用いる事ができ、また2種類以上併用する事も可能である。
また、アルコール成分として例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチル−ペンタンジオール、2,2’−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAのエチレノキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等を用いることができ、また2種類以上併用する事も可能である。
また、水酸基を有する上記ポリエステル樹脂に、分子内に重合性不飽和結合を有する無水カルボン酸を付加させることによって得られた分子内に重合性不飽和結合を含有させた樹脂も使用可能である。
上記、第3成分は、1種類でも使用できるし、2種類以上で併用しても何ら構わない。また、反応器中へフィードしながら添加することも、また最初に反応器内に仕込んで使用することも可能である。また第3成分の添加量は、樹脂成分に対し通常0.5〜60重量%、好ましくは2〜40重量%で用いる。
特に、第3成分として油脂類及び油脂類の誘導体を用いた複合樹脂の溶媒分散体は、とりわけ安定性が良く、また他樹脂との相溶性も良好で、ピール強度も格段にアップする。特に、ひまし油を含むものは効果が大きい。
本発明では、溶媒に水を含有する複合樹脂の溶媒分散体も挙げられ、製造方法としては以下に記載の方法が挙げられる。
前記の方法により得られた樹脂或いは樹脂液を、イオン交換水および界面活性剤を一括して混合して乳化させる方法、或いはその後に一部或いは全部の有機溶媒を除去する方法や、親水性有機溶剤で溶解、希釈、或いは合成時の溶剤を一部又は全部置換させた後、塩基性物質を添加して中和を行ない、イオン交換水を添加する方法、或いはその後に一部或いは全部の有機溶媒を除去する方法で製造することができる。
本発明に用いられる界面活性剤としては、同一分子内に疎水基と親水基の両方を有する化合物が挙げられ、例えば、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、その他反応性界面活性剤などが挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を併用することができる。
非イオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル等が挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、オレイン酸カリウム、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート等が挙げられ、特にアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、オレイン酸カリウムが好ましい。
カチオン系界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
この界面活性剤の使用量は、熱可塑性エラストマーとα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)からなる樹脂に対し、0.05〜40重量%程度が好ましく、0.1〜20重量%がさらに好ましく、特に0.1〜10重量%が好ましい。
また、本発明で用いる親水性有機溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−ブチルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル類等が挙げられる。これらは、単独或いは2種以上併用して用いることができる。含有する親水性有機溶剤量は、上記樹脂溶液の全溶剤量の50%以上が好ましく、さらに好ましくは70%以上である。
塩基性化合物としては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジエチレントリアミン、エチルアミノエチルアミン等のアミン類、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属塩およびアルカリ金属塩が挙げられる。添加量は、カルボキシル基の50〜100モル%で中和する。また、これらの2種以上を併用しても構わない。
その他、熱可塑性エラストマー(A)の粒子が水に分散したエマルションの存在下で、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)を重合することによっても製造することができる。
熱可塑性エラストマー(A)が水に分散したエマルションは、乳化剤や分散剤を使用して水中に熱可塑性エラストマー(A)を分散させたもので、その製造方法は、例えば特公平7−008933号、特公平5−039975号等に開示されている。
α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)の重合時に用いられる開始剤としては、一般に乳化重合に使用されるものであれば全て使用することができる。代表的なものを挙げると、過酸化水素;過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;あるいはこれらと鉄イオン等の金属イオン及びナトリウムスルホキシレート、ホルムアルデヒド、ピロ亜硫酸ソーダ、亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤との組み合わせによるレドックス開始剤等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を用いることができる。好ましく使用される開始剤としては、水溶解性が10%以下、更に好ましくは5%以下、最も好ましくは1%以下のものである。
また、必要に応じてt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、アリルスルフォン酸、メタアリルスルフォン酸及びこれ等のソーダ塩等のアリル化合物などを分子量調節剤として使用することも可能である。
さらに、熱可塑性エラストマー(A)のエマルション存在下で、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)を重合する際に、粒子の安定性を向上させるため、通常の乳化重合に使用される界面活性剤を用いることも可能である。界面活性剤としては、前記したアニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、その他反応性界面活性剤などが挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を併用することができる。
界面活性剤の使用量は特に制限されないが、使用量が多くなると、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)のみからなる粒子が生成するため、通常、共重合性モノマー(B)の全重量を基準として0.02〜5重量%で使用される。
尚、第3成分を導入する場合は、共重合性モノマー(B)に混合して用いる方法が好ましい。
本発明での複合樹脂の溶媒分散体は、各種溶媒中に樹脂が分散している状態のものはもちろん、一部に樹脂が溶解した物を含んでも良い。
また本樹脂液は、溶剤を除去した後、任意の溶媒で溶解、および分散させた樹脂液として使用することができ、これらの樹脂を溶解又は分散させた樹脂液、或いは樹脂液に樹脂を分散させた樹脂液も本発明の複合樹脂の溶媒分散体の態様であり本発明に含まれる。
また、反応を有機溶媒中で行ない、得られた、樹脂が溶解又は分散された樹脂液、或いは樹脂液に樹脂が分散された樹脂液も本発明の樹脂の態様であり本発明に含まれる。
本発明の複合樹脂の溶媒分散体のうちで、構成単位としてヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタアクリル酸等を含む、活性水素及び/又は水酸基を持つものは、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を用いることができる。例えば、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤の一つである分子内にイソシアナート基を有する硬化剤と混合することで、ウレタン結合を有する塗料、プライマー及び接着剤として用いることができる。
活性水素及び/又は水酸基と反応可能な分子内にイソシアナート基を有する硬化剤としては、フェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート等の芳香族ジイソシアナート類、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、リジンジイソシアナート等の脂肪族ジイソシアナート類、イソホロンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート等の脂環族ジイソシアナート類、その他イソシアナート化合物の一種又は二種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、キシリレングリコール、ブチレングリコール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の3価アルコール等の多価アルコールを付加物、イソシアナート基と反応可能な官能基を有する低分子量ポリエステル樹脂または水等の付加物、またはビュレット体、ジイソシアナート同士の重合体、さらに低級1価アルコール、メチルエチルケトオキシム等公知のブロック剤でイソシアナート基をブロックしたもの等が使用できる。イソシアナートプレポリマーを使用する場合についても、例えば、ジブチルチンジラウレート、トリエチルアミン等の外部触媒を添加することができる。
また、溶媒に水を含有する系では、イソシアナート基が、オキシム類、ラクタム類、フェノール類等のブロック剤で処理したものが水中に存在するようなタケネートWBシリーズ(三井武田ケミカル(株)製)、エラストロンBNシリーズ(第一工業製薬(株)製)等を用いることができる。
また、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル等の少なくとも1種とホルムアルデヒドから合成される樹脂であって、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコールによってメチロール基の1部または全部をアルキルエーテル化したようなアミノ樹脂も硬化剤として使用することができる。
また、溶媒に水を含有する系では、オキサゾリン化合物を硬化剤として用いることもできる。前記の硬化剤としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン等も硬化剤として用いる事ができる。
本発明の複合樹脂の溶媒分散体と活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤は任意の割合で使用する事ができる。
活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤がイソシアナート基を有する硬化剤である場合の配合割合は、活性水素とイソシアナート基の当量比で0.5:1.0〜1.0:0.5の範囲が好ましく、0.8:1.0〜1.0:0.8の範囲が更に好ましい。
また、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤がアミノ樹脂である場合は、本発明の複合樹脂の溶媒分散体/アミノ樹脂のソリッドの重量比で95/5〜20/80の範囲で用いるのが好ましく、90/10〜60/40の範囲が更に好ましい。
活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤がオキサゾリン化合物である場合は、本発明の組成物/オキサゾリン化合物のソリッドの重量比で95/5〜20/80の範囲で用いるのが好ましく、90/10〜60/40の範囲が更に好ましい。
上記に記載の硬化剤を混合したものは、そのままでも塗工し硬化させることもできるが、必要に応じて反応性触媒を併用することもできる。
上記で得られる本発明の複合樹脂の溶媒分散体、或いは本発明の複合樹脂の溶媒分散体に活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を混合したものは、必要に応じて、アゾ顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料、アゾ染料、アントラキノン系染料等の染料、酸化チタン、モリブデン、カーボンブラック等の無機顔料等の着色剤、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱防止剤等の各種安定剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、防カビ剤、抗菌剤、防腐剤、触媒、充填剤、ワックス、ブロッキング防止剤、可塑剤、レベリング剤等の成分を含有させることができる
本発明の複合樹脂の溶媒分散体、或いは本発明の複合樹脂の溶媒分散体に活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を混合したものの塗布方法は特に限定するものではないが、噴霧塗布により行うのが好適であり、例えば、スプレーガンで被塗装表面に吹きつけ、塗布を行うことができる。塗布は通常、常温にで容易に行なうことができ、また塗布後の乾燥方法についても特に限定はなく、自然乾燥や加熱強制乾燥等、適宜の方法で乾燥することができる。
そして、本発明の複合樹脂の溶媒分散体、或いは本発明の複合樹脂の溶媒分散体に活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を混合したものは、その特徴からポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のオレフィン系共重合体からなる成形品、及びポリプロピレンとゴム成分からなる成形品、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、鋼鈑、電着処理鋼鈑等の上塗り、プライマー、接着剤として好適に用いる事ができる。また、上塗りには、ウレタン塗料、ポリエステル塗料、メラミン塗料、エポキシ塗料を主成分とする塗料を用いる事ができ、各種被塗物表面への付着性を改善するとともに、より鮮映性等に優れる塗膜を形成させる為に使用することもできる。
そして、本発明の複合樹脂の溶媒分散体、或いは本発明の複合樹脂の溶媒分散体に活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を混合したものは、その特徴から、金属同士、ポリオレフィン同士、或いは金属とポリオレフィンとの接着剤やヒートシール剤として、塗膜にベタツキがなく、優れた接着性能および密着性能を発現する。また、ヒートシールにおいては、本発明の複合樹脂の溶媒分散体は低温でその性能を発現する。これらは、PTP包装用接着剤、ラミネート用接着剤としても使用する事ができる。
また、本発明の複合樹脂の溶媒分散体、或いは本発明の複合樹脂の溶媒分散体に活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を混合したものは、その特徴から上記以外にも、溶剤型熱可塑性アクリル樹脂塗料、溶剤型熱硬化性アクリル樹脂塗料、アクリル変性アルキド樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、及びメラミン樹脂塗料等を混合して使用することができる。
上記で得られる本発明の複合樹脂の溶媒分散体、或いは本発明の複合樹脂の溶媒分散体に活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を混合したものは、アゾ顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料、アゾ染料、アントラキノン系染料等の染料、酸化チタン、モリブデン、カーボンブラック等の無機顔料等の着色剤、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、シリカ、チタン酸バリウム等の無機薬品等のバインダー樹脂として用いることができる。
上記で得られる本発明の複合樹脂の溶媒分散体、或いは本発明の複合樹脂の溶媒分散体に活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を混合したものを離型フィルム等に塗工し剥離して得られたフィルムは、柔軟性、耐衝撃性、伸縮性、透明性、光沢、耐ブロッキング性、意匠性に優れるため、衣料、各種包装材、医療用器具、生理衛生用品、各種成形品、表示パネルの表層部材、光学材料等の用途に使用する事ができる。また、伸縮により光の透過性を制御することが可能であり、さらに透過光を散乱させることができるため、遮光フィルムや光量制御フィルム等の光学材料として使用する事もできる。
また、上記で得られる本発明の複合樹脂の溶媒分散体、或いは本発明の複合樹脂の溶媒分散体に活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を混合したものは、ストリッパブルペイント、トラフィックペイント用プライマーとしても使用することができる。
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
プロピレン系エラストマーの製造
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを950cm、1−ブテンを50g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンとエチレンとを供給して全圧0.69MPaGにし、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、rac−ジメチルシリレン−ビス{1−(2−n−プロピル−4−(9−フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリドをZr原子に換算して0.001ミリモル加え、プロピレンとエチレンとをモル比が95:5となるように連続的に供給して全圧を0.69MPaGに保ちながら30分間重合を行った。重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥し、プロピレン系エラストマー(I−1)を28.0g得た。尚、重合活性は56kg・ポリマー/ミリモルZr・hrであった。
複合樹脂の溶媒分散体の製造
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、上記実施例1の方法で得られたプロピレン系エラストマー(I−1)を100重量部と、有機溶剤としてシェルゾールTGを250重量部仕込み、窒素置換しながら130℃に加熱昇温した。次いでこの中に、重合可能な単量体としてメチルメタアクリレート45重量部、イソブチルメタアクリレート20重量部、エチルアクリレート14重量部、プラクセルFM−3を15重量部、ヒドロキシエチルメタアクリレート5重量部、メタクリル酸1重量部と重合開始剤としてジ−tert−ブチルパーオキサイド(以下、PBDと略記する)1重量部の混合液を4時間かけてフィードした。フィード終了より30分後に135℃に昇温し、更に30分後にPBDを0.5重量部添加した。更に1時間後にシェルゾールTGを50重量部添加するとともにPBDを0.5重量部添加した。このPBD添加より1時間後に160℃に昇温するとともにPBDを6重量部添加し、さらに1時間経過後に2重量部、更にそれより1時間経過後に2重量部を添加し反応させた。PBDの添加後より2時間放置して反応させ複合樹脂の溶媒分散体を得た。
なお、上記で使用したシェルゾールTGはシェルジャパン(株)製のイソパライフィン系の有機溶剤、重合可能な単量体として用いたプラクセルFM−3はダイセル化学工業(株)製の不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエーテル修飾イプシロン−カプロラクトンである。
【実施例2】
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時の溶剤を全てメチルシクロヘキサンに、系内の温度を全工程97℃に、重合開始剤をtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(以下、PBOと略記する)に変更した以外は実施例1と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
【実施例3】
複合樹脂の溶媒分散体の製造
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、上記実施例1の方法で得られたプロピレン系エラストマー(I−1)を100重量部と、有機溶剤としてシェルゾールTGを200重量部仕込み、窒素置換しながら130℃に加熱昇温した。次いでこの中に、下記の方法で得られた滴下用樹脂溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後に系内を140℃に昇温するとともに、PBDを6重量部添加した。1時間経過後に2重量部、更にそれより1時間経過後に2重量部を添加し反応させた。PBDの添加後より2時間放置して反応させ複合樹脂の溶媒分散体を得た。
滴下用樹脂溶液
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、キシレン70重量部とアノン30重量部を仕込み、窒素置換しながら100℃に加熱昇温した。次いでこの中に、メチルメタアクリレート45重量部とエチルアクリレート14重量部とイソブチルメタアクリレート20重量部とヒドロキシエチルアクリレート5重量部とプラクセルFM−3を15重量部とメタクリル酸1重量部とPBOを1重量部の混合液を4時間かけてフィードした。フィード終了より30分後に110℃に昇温し、更に30分後にPBOを0.5重量部添加した。このPBO添加より更に1時間後にPBOを0.5重量部添加し、PBOの添加後より2時間放置して反応させ樹脂溶液を得た。
【実施例4】
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時の溶剤を全てメチルシクロヘキサンに、系内の温度を全工程97℃に、重合開始剤をPBOに変更した以外は実施例3と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
【実施例5】
複合樹脂の溶媒分散体の製造
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、上記実施例1の方法で得られたプロピレン系エラストマー(I−1)を100重量部とシェルゾールTGを150重量部仕込み、窒素置換しながら130℃に加熱昇温した。次いでこの中に、官能基を有する重合性モノマーとしてプラクセルFM−3を3重量部添加、分散させた後、PBDを3重量部添加して2時間反応させた。その後、シェルゾールTGを115重量部添加して、熱可塑性エラストマーの一部が官能基で変性された樹脂を得た。次いで、反応器内を130℃に保持したまま、重合可能な単量体としてメチルメタアクリレート45重量部とエチルアクリレート14重量部とイソブチルメタアクリレート20重量部と2−ヒドロキシエチルメタクリレート5重量部とプラクセルFM−3を15重量部とメタクリル酸1重量部とPBD1重量部の混合液を4時間かけてフィードした。フィード終了より30分後に135℃に昇温し、更に30分後にシェルゾールTGを50重量部添加するとともに、PBDを0.7重量部添加し、更に1時間後にPBDを0.7重量部添加した。このPBD添加より30分後に160℃に昇温し、更に1時間放置して反応させ複合樹脂の溶媒分散体を得た。
【実施例6】
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時の溶剤を全てメチルシクロヘキサンに、系内の温度を全工程97℃に、重合開始剤をPBOに変更した以外は実施例5と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
【実施例7】
プロピレン系エラストマーの製造
実施例1のプロピレン系エラストマーの製造において、1−ブテンを60g仕込む以外は、実施例1と同様に、プロピレン、1−ブテンとエチレンの共重合を行ない、プロピレン系エラストマー(I−2)を24.1g得た。尚、重合活性は48kg・ポリマー/ミリモルZr・hrであった。
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時のプロピレン系エラストマーを、上記実施例7で得られたプロピレン系エラストマー(I−2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
【実施例8】
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時のプロピレン系エラストマーを、上記実施例7で得られたプロピレン系エラストマー(I−2)に変更した以外は、実施例3と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
【実施例9】
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時のプロピレン系エラストマーを、上記実施例7で得られたプロピレン系エラストマー(I−2)に変更した以外は、実施例5と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
【実施例10】
プロピレン系エラストマーの製造
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを900cm、1−ブテンを90g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンとエチレンとを供給して全圧0.69MPaGにし、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、rac−ジメチルシリレン−ビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリドをZr原子に換算して0.001ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を0.69MPaGに保ちながら30分間重合を行った。重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥し、プロピレン系エラストマー(II)を39.7g得た。尚、重合活性は79kg・ポリマー/ミリモルZr・hrであった。
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時のプロピレン系エラストマーを、上記実施例10で得られたプロピレン系エラストマー(II)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
【実施例11】
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時のプロピレン系エラストマーを、上記実施例10で得られたプロピレン系エラストマー(II)に変更した以外は、実施例2と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
【実施例12】
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時のプロピレン系エラストマーを、上記実施例10で得られたプロピレン系エラストマー(II)に変更した以外は、実施例3と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
【実施例13】
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時のプロピレン系エラストマーを、上記実施例10で得られたプロピレン系エラストマー(II)に変更した以外は、実施例4と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
【実施例14】
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時のプロピレン系エラストマーを、上記実施例10で得られたプロピレン系エラストマー(II)に変更した以外は、実施例5と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
【実施例15】
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時のプロピレン系エラストマーを、上記実施例10で得られたプロピレン系エラストマー(II)に変更した以外は、実施例6と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
【実施例16〜24】
実施例1、3、5、7〜10、12、14で得られた各複合樹脂の溶媒分散体に、硬化剤としてD−170HN(三井武田ケミカル(株)製、製品名)をそれぞれ混合し樹脂溶液を得た。混合量は、実施例1、3、7、8、10、12については複合樹脂の溶媒分散体100重量部に対して硬化剤を2.6重量部、実施例5、9、14については複合樹脂の溶媒分散体100重量部に対して硬化剤を3.1重量部である。
【実施例25〜33】
実施例1、3、5、7〜10、12、14で得られた各複合樹脂の分散体に、酸化チタン顔料(Tipeqe−CR93(石原産業(株)製、商品名))をそれぞれの樹脂分に対し30重量%添加し、キシレン/トルエン/メチルイソブチルケトン=1/1/1の割合で混合した有機溶剤を40重量部添加し、塗料樹脂を得た。
【実施例34】
実施例6で得られた樹脂液500gとイオン交換水500gとオレイン酸カリウム(関東化学(株)製)5gを、回転数10000rpmで30分間攪拌混合した。次に、ポリアクリル酸1gを加え、攪拌混合して乳化液を得た。得られた乳化液中のメチルシクロヘキサンをエバポレーターで減圧除去し、複合樹脂の溶媒分散体を得た。
【実施例35】
重合可能な単量体をメチルメタアクリレート49部とエチルアクリレート21部とイソブチルメタアクリレート14部と2−ヒドロキシエチルメタクリレート14部とプラクセルFM−3を21部とメタクリル酸21部に変更した以外は実施例6の方法で合成し、樹脂液を得た。得られた樹脂液にブチルセロソルブを300部添加し、溶解させた後、トリエチルアミンで理論上100%となるよう中和を行ない、100℃の加熱下、減圧して溶剤を除去した。これを、不揮発分が40%となるように脱イオン水で調整し、複合樹脂の溶媒分散体を得た。
【実施例36】
実施例1で記載のプロピレン系エラストマー(I−1)100部、塩基性物質によって分散剤として作用する無水マレイン酸グラフトポリエチレン(マレイン酸含量3.3wt%、重量平均分子量2700、密度0.94g/cm)10部、及びオレイン酸5部とを加圧ニーダー中に投入して、140℃で30分間溶融混練した。次に無水マレイン酸グラフトポリエチレンとオレイン酸の全カルボン酸を中和させるのに必要な水酸化カリウム(塩基性物質)を溶解したアルカリ水20部を、ニーダーに接続したポンプを用いて5分間で圧入した。ニーダー内の圧力は3kg/cmGとなった。その後30分間混練を続けた後ニーダーを60℃迄冷却し内容物を取り出した。内容物は白色の固体であった。白色固体10部を10部の水に投じ、タービン翼攪拌機で攪拌した後、100meshの金網で濾過した。残存物は認められなかった。
前記で得られたエマルション140部、脱イオン水152部を反応容器に仕込み、窒素気流下で80℃に昇温した。これとは別に、スチレン15部、アクリル酸2−エチルヘキシル15部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3部、ベンゾイルパーオキサイド0.3部を脱イオン水12部中にドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.12部を使って乳化させた乳化混合物を作り、この乳化混合物を3時間で反応容器に滴下して、その後、更に同温度で4時間保持して重合を完結させ、複合樹脂の溶媒分散体を得た。
比較例1
プロピレン系エラストマーの製造
500cmのフラスコに250cmのn−デカン、1.25ミリモルのトリイソブチルアルミニウム、0.15ミリモルのジフェニルジメトキシシラン、塩化マグネシウムに担持されたチタン触媒をチタン原子に換算して0.025ミリモル加え、70℃に昇温し、10dm/時間のエチレン、120dm/時間のプロピレン、80dm/時間の1−ブテンおよび10dm/時間の水素を常圧下で溶媒中に連続的に導入し、70℃で30分間重合を行なった。重合は溶液状態で進行した。イソブチルアルコールを加えて重合を停止し、大量のメタノール中にポリマーを全量析出させ、120℃で一晩真空乾燥し、プロピレン系エラストマー(III)を15g得た。
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時のプロピレン系エラストマーを、上記比較例1で得られたプロピレン系エラストマー(III)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
比較例2
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時のプロピレン系エラストマーを、上記比較例1で得られたプロピレン系エラストマー(III)に変更した以外は、実施例3と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
比較例3
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時のプロピレン系エラストマーを、上記比較例1で得られたプロピレン系エラストマー(III)に変更した以外は、実施例5と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
比較例4
プロピレン系エラストマーの製造
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを830ml、1−ブテンを100g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧0.69MPaGにし、トリエチルアルミニウム1ミリモル、および塩化マグネシウムに担持されたチタン触媒をチタン原子に換算して0.005ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を0.69MPaGに保ちながら30分間重合を行った。重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥し、プロピレン系エラストマー(IV)を33.7g得た。
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時のプロピレン系エラストマーを、上記比較例4で得られたプロピレン系エラストマー(IV)に変更した以外は、実施例10と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
比較例5
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時のプロピレン系エラストマーを、上記比較例4で得られたプロピレン系エラストマー(IV)に変更した以外は、実施例12と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
比較例6
複合樹脂の溶媒分散体の製造
複合樹脂の溶媒分散体製造時のプロピレン系エラストマーを、上記比較例4で得られたプロピレン系エラストマー(IV)に変更した以外は、実施例14と同様の方法で複合樹脂の溶媒分散体を得た。
<<評価>>
プロピレン系エラストマー(I)、(II)の評価
得られたプロピレン系エラストマー(I)、(II)を下記記載の方法でそれぞれ評価し、結果を表1に示した。
<組成>
13C−NMRを利用して求めた。
<極限粘度[η]>
135℃、デカリン中で測定した。
<分子量分布(Mw/Mn)>
ミリポア社製GPC−150Cを用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSK GNH HTであり、カラムサイズは直径27mm、長さ600mmである。カラム温度を140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業製)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品工業製)0.025重量%を用い、1.0cm/分で移動させた。試料濃度は0.1質量%とし、試料注入量は0.5cmとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンとして、分子量がMw<1000およびMw>4×10の場合は東ソー社製を用い、1000<Mw<4×10の場合はプレッシャーケミカル社製を用いた。
<融点(Tm)>
試料約5mgをアルミパンに詰め、10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、20℃/分で室温まで降温し、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求めた。測定は、パーキンエルマー社製DSC−7型装置を用いた。

得られた複合樹脂の溶媒分散体の評価
得られた複合樹脂の溶媒分散体を下記記載の方法でそれぞれ評価、結果を表2及び表3に示した。
<樹脂溶液の安定性>
実施例1〜15、34〜36、比較例1〜6で得られた樹脂組成物溶液を、室温と40℃、それぞれの条件で1ヶ月静置し、溶液の状態を評価した。1ヶ月の経過後、この樹脂組成物溶液につき、分離および沈殿がともに確認されなかったものを○、分離および/または沈殿の観察されたもので攪拌にて容易に分散できるものを△、分離および/または沈殿の観察された攪拌にて容易に分散できないものを×とした。
<樹脂溶液のスプレー適性>
塗装ガン(岩田塗装機工業(株)製ワイダースプレーガン(商品名;W−88−13H5G))を使用し、霧化圧4kg/cm、ノズル1回転開き、塗装ブース内の温度30℃にて、各々実施例および比較例で得られた樹脂組成物溶液をスプレーし、糸曳きが発生するか否かを観察し、発生しなかったものを○、1本でも発生したものを×とした。
<塗膜評価>
▲1▼ポリプロピレンでの評価
実施例1〜36で得られた樹脂溶液に、製造時と同じ溶剤を添加し、25℃下、フォードカップNo.4での落下秒数が15±2秒となるように調整した。次いで、イソプロピルアルコールで表面を拭いたポリプロピレン製(三井住友ポリオレフィン(株)製、製品名;J700)の角板に、乾燥後の膜厚が10μmとなるように上記溶液を噴霧塗布し、80℃、20分乾燥し、塗膜を得た。この塗膜について、碁盤目剥離と塗膜表面のベタツキを指触にて評価した。更に、上記塗膜に白色の上塗り塗料を乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布し、室温にて10分間放置した後、80℃のオーブンに入れ20分間焼き付け処理を行い塗膜を得た。この塗膜について、碁盤目剥離試験を行った。また、耐候性試験を行い、試験後の光沢保持率と、碁盤目剥離の評価を行った。
また、実施例25〜33については、さらに紫外線吸収剤(TINUVIN327)を樹脂分に対して0.2%、酸化防止剤(IRGANOX1330)を樹脂分に対して0.2%を添加するとともに、硬化剤を実施例16〜24に記載した量混合し、上記方法で塗工して塗膜を作成した。この塗膜について、碁盤目剥離と塗膜表面のベタツキを指触にて評価を行なった。また、耐候性試験を行い、試験後の光沢保持率と、碁盤目剥離の評価を行った。
▲2▼オレフィン系熱可塑性エラストマーでの評価(タフマー)
実施例1〜36で得られた樹脂溶液に、製造時と同じ溶剤を添加し、25℃下、フォードカップNo.4での落下秒数が15±2秒となるように調整した。次いで、イソプロピルアルコールで表面を拭いたオレフィン系熱可塑性エラストマー(三井化学(株)製、製品名;タフマーA4070)の角板に、乾燥後の膜厚が5μmとなるように上記溶液を噴霧塗布し、80℃、20分乾燥し、塗膜を得た。この塗膜について、碁盤目剥離試験を行った。更に、上記塗膜に白色の上塗り塗料を乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、室温にて10分間放置した後、80℃のオーブンに入れ20分間焼き付け処理を行い塗膜を得た。この塗膜について、碁盤目剥離試験を行った。
▲3▼オレフィン系熱可塑性エラストマーでの評価(ミラストマー)
実施例1〜36で得られた樹脂溶液に、製造時と同じ溶剤を添加し、25℃下、フォードカップNo.4での落下秒数が15±2秒となるように調整した。次いで、イソプロピルアルコールで表面を拭いたオレフィン系熱可塑性エラストマー(三井化学(株)製、製品名;ミラストマー8030)の角板に、乾燥後の膜厚が5μmとなるように上記溶液を噴霧塗布し、80℃、20分乾燥し、塗膜を得た。この塗膜について、碁盤目剥離試験を行った。更に、上記塗膜に白色の上塗り塗料を乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、室温にて10分間放置した後、80℃のオーブンに入れ20分間焼き付け処理を行い塗膜を得た。この塗膜について、碁盤目剥離試験を行った。
ここで、上記で使用した上塗り塗料は、オレスターQ186(三井化学(株)製、商品名、不揮発分50%、水酸基価30KOHmg/g)に紫外線吸収剤(TINUVIN327)を樹脂分に対して0.2%、酸化防止剤(IRGANOX1330)を樹脂分に対して0.2%、酸化チタン顔料(Tipeqe−CR93(石原産業(株)製商品名))を樹脂分に対して30%となる様に分散させた主剤と、NCOを含有する硬化剤であるMTオレスターNM89−50G(三井武田ケミカル(株)製、商品名、不揮発分50% NCO%:6%)をOH/NCO=0.95となる様に混合したものを用いた。
碁盤目剥離試験
JIS−K−5400に記載されている碁盤目剥離試験の方法に準じ、碁盤目を付けた試験片を作成し、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)品)を碁盤目上に貼り付けた後、速やかに90°方向に引っ張って剥離させ、碁盤目100個の中、剥離されなかった碁盤目数にて評価した。
また、塗膜評価の▲1▼においては、セロテープ(登録商標)以外にガムテープでも同様の評価を行なった。ガムテープでの碁盤目剥離試験は、同一の場所で10回の剥離試験を行ない、剥離されなかった碁盤目数を評価した。なお、耐侯性試験後の碁盤目剥離試験は、セロテープ(登録商標)のみの試験を行なった。
耐候性試験
JIS−K−5400に記載されている促進耐候性試験の方法に準じ、サンシャインカーボンアーク灯式で評価を行い、500時間後の60度鏡面光沢度(JIS−K−5400)により、その測定値の保持率(%)=(試験後の光沢度/初期の光沢度)×100を算出し、光沢保持率80%以上で変色が認められなかったものを○、60%以上80%未満のものを△、60%未満のものを×とし示した。
<ヒートシール試験>
実施例1〜15、34〜36、比較例1〜6で得られた樹脂溶液に、製造時と同じ溶剤を添加し、不揮発分10%の溶液を調整した。次いで、アルミ箔に、乾燥後の膜厚が2μmとなるように上記溶液をバーコーターで塗布し、風乾した後、200℃にセットしたエアオーブン中で20秒間加熱し、均一透明な塗工箔を作製した。該塗工箔とポリプロピレンシート(東セロ#500T−T)をJISZ1707に準拠した方法により120℃で1秒間、0.098MPaの圧力を懸けてヒートシールし、試料を得た。試験片を幅15mmの短冊状に切り、180°剥離(ピール剥離)試験を常温で行った。ピール強度が1000g/15mm以上のものを○、500以上1000g/15mm未満のものを△、500g/15mm未満のものを×とし示した。


【産業上の利用可能性】
本発明の塗料及びプライマーによれば、樹脂溶液が分離現象を起こすことなくスプレー塗装することが可能であり、さらに、本発明の塗料、プライマーは、塗膜にした際、塗膜表面にベタツキがなく、無処理ポリオレフィン系樹脂フィルムやシート、あるいは成形物等へ優れた密着性を示す。
また、本発明の複合樹脂の溶媒分散体は低温でのヒートシール性に優れるという従来にない作用効果を有する。
さらに、分子内にイソシアナート基を有する硬化剤等の硬化剤を用いることもできる。
さらに、本発明によって得られる塗膜は、塩素化変性ポリオレフィン系の塗膜に比し、より優れた耐候性を示す。
さらには、接着剤、添加剤、バインダー、フィルム、ストリッパブルペイント、トラフィックペイント用プライマーとしても使用することができる。
従って、産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)の重合体とからなる複合樹脂、及び溶媒からなる複合樹脂の溶媒分散体であって、該熱可塑性エラストマー(A)がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布(Mw/Mn)が3以下であるプロピレン系エラストマーであって、共重合性モノマー(B)が官能基を有しないモノマーを少なくとも1種含有する複合樹脂の溶媒分散体。
【請求項2】
溶媒が有機溶剤及び/又は水である請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
【請求項3】
溶媒が水で、塩基性物質を含有する請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
【請求項4】
溶媒が水で、界面活性剤を含有する請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
【請求項5】
溶媒が有機溶剤及び水である複合樹脂の溶媒分散体から有機溶剤を除去してなり、塩基性物質又は界面活性剤を含有する請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載の、溶媒が水である複合樹脂の溶媒分散体において、熱可塑性エラストマー(A)と共重合性モノマー(B)が同一粒子内に存在してなる複合樹脂の溶媒分散体。
【請求項7】
熱可塑性エラストマー(A)が、135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.1〜12dl/gであって、(a)プロピレンから誘導される単位を50〜93モル%、(b)α−オレフィンから誘導される単位を5〜50モル%、および(c)エチレンから誘導される単位を2〜40モル%の割合で含有するプロピレン系エラストマー(I)、又は、(a)プロピレンから誘導される単位を50〜95モル%、(b)α−オレフィンから誘導される単位を5〜50モル%を含有するプロピレン系エラストマー(II)である請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
【請求項8】
熱可塑性エラストマーが、
[i] 下記の式1で表される遷移金属化合物と、


(Mは周期律表第IVb、VbおよびVIb族の遷移金属原子であり、R、R、RおよびRは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基であり、また互いに隣接する基の一部が結合して、それらの基が結合する炭素原子とともに環を形成していてもよく、XおよびXは互いに同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基であり、Yは炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−NR−、−P(R)−、−P(O)(R)−、−BR−または−AlR−[ただしRは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基]である。)
[ii] [ii−1]有機アルミニウム化合物、
[ii−2]有機アルミニウムオキシ化合物、および
[ii−3]遷移金属化合物1と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、プロピレン及びα−オレフィン、或いはプロピレン、α−オレフィン及びエチレンを共重合させて得られる請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
【請求項9】
熱可塑性エラストマーが、
[i] 下記の式2で表される遷移金属化合物と、


(M、R、R、X、XおよびYは、式[1]の定義と同じであり、R21〜R24およびR41〜R44は水素原子、ハロゲン原子、炭素数2〜6のアルキル基または炭素数6〜16のアリール基であり、このアルキル基またはアリール基はハロゲン原子または有機シリル基で置換されていてもよく、また隣接した置換基は環を形成していてもよい。)
[ii] [ii−1]有機アルミニウム化合物、
[ii−2]有機アルミニウムオキシ化合物、および
[ii−3]遷移金属化合物2と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、プロピレン及びα−オレフィン、或いはプロピレン、α−オレフィン及びエチレンを共重合させて得られる請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
【請求項10】
熱可塑性エラストマーが、
[i] 下記の式3で表される遷移金属化合物と、

(Mは周期律表第IIIb、IVb、Vb、VIb、VIIb及びVIII族の遷移金属原子であり、
mは、1〜3の整数であり、
Qは、窒素原子又は置換基R52を有する炭素原子であり、
Aは酸素原子、イオウ原子、セレン原子、又は置換基R56を有する窒素原子であり、
51〜R56は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基又はスズ含有基であり、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上のときは、R51同士、R52同士、R53同士、R54同士、R55同士、R同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、いずれか1つの配位子に含まれるR51〜R56のうちの1個の基と他の配位子に含まれる15〜R56のうちの1個の基とが連結されていてもよく、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基又はスズ含有基であり、nが2以上のときは、X同士は、互いに同一でも異なっていてもよく、X同士が互いに結合して環を形成してもよい。)
からなる重合用触媒の存在下に、プロピレン及びα−オレフィン、或いはプロピレン、α−オレフィン及びエチレンを共重合させて得られる請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
【請求項11】
さらに、
[iii] [iii−1]有機金属化合物、
[iii−2]有機アルミニウムオキシ化合物、および
[iii−3]遷移金属化合物3と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、プロピレン及びα−オレフィン、或いはプロピレン、α−オレフィン及びエチレンを共重合させて得られる請求項10に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
【請求項12】
α−オレフィンが1−ブテンである請求項8〜11のいずれかに記載の複合樹脂の溶媒分散体。
【請求項13】
(1)有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)と、共重合性モノマー(B)とを重合させるか、(2)有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)と、共重合性モノマー(B)とを重合させたのちラジカルを発生させ反応させるか、又は、(3)有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)と、共重合性モノマー(B)で構成された重合体(C)とをラジカルを発生させ反応させてなる請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
【請求項14】
熱可塑性エラストマー(A)と、共重合性モノマー(B)が、(A)/(B)=10/90〜90/10の重量比である請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項15】
熱可塑性エラストマー(A)に、少なくとも一部が官能基で変性されたものを用いた請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体。
【請求項16】
請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する塗料。
【請求項17】
請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有するプライマー。
【請求項18】
請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する接着剤。
【請求項19】
請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する添加剤。
【請求項20】
請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有するバインダー。
【請求項21】
請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体より得られるフィルム。
【請求項22】
活性水素及び/又は水酸基を有する請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を含有する塗料。
【請求項23】
活性水素及び/又は水酸基を有する請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を含有するプライマー。
【請求項24】
活性水素及び/又は水酸基を有する請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を含有する接着剤。
【請求項25】
活性水素及び/又は水酸基を有する請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を含有する添加剤。
【請求項26】
活性水素及び/又は水酸基を有する請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を含有するバインダー。
【請求項27】
活性水素及び/又は水酸基を有する請求項1に記載の複合樹脂の溶媒分散体を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を反応させてなるフィルム。
【請求項28】
請求項16〜20に記載の塗料、プライマー、接着剤、添加剤若しくはバインダーを塗布してなる塗膜、又は、請求項22〜27に記載の塗料、プライマー、接着剤、添加剤若しくはバインダーを硬化してなる塗膜。

【国際公開番号】WO2004/101679
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−567190(P2004−567190)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006316
【国際出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】