説明

複合生物学的分子及びそれらの調製

【課題】複合生物学的分子、ポリエチレングリコールのようなポリマーの化学的に官能化された誘導体、それらの調製された化合物を提供する。
【解決手段】


X及びX’のうち一方はポリマーを表し、他方は水素原子を表し;Qは、連結基を表し;Wは、電子求引部分を表し;Z及びZの各々は、生物学的分子に由来する基を表し、A及びBに2つの求核部分を介して連結される生物学的分子に由来する基を表し;Aは、C1−5アルキレン又はアルケニレン鎖であり;Bは、結合又はC1−4アルキレン又はアルケニレン鎖である、一般式(I)の新規な生物学的活性化合物が、適当なポリマーを適当な生物学的活性分子に求核基を介して結合することにより、処方される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合生物学的分子、及び、ポリエチレングリコールのようなポリマーの新規な化学的に官能化された誘導体からのそれらの調製に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの治療的に活性な分子が、臨床医学用途における効能を達成するために求められる性質を有していない。例えば、治療的に活性なタンパク質及びポリペプチドが、現在生物医薬産業によって又は遺伝子工学によって発見され、製造されている。米国で市販されている少なくとも80のタンパク質ベースの薬剤とともに臨床試験を受けている少なくともさらに350のタンパク質ベースの薬剤が存在し(Harris J, Chess R: Effect of Pegylation on pharmaceuticals. Nature Review Drug Discovery, 2003,2,
214−221)、最もネイティブなタンパク質は、患者への投与の際に、以下を含む幾つかの固有の欠点が存在するので、良い薬剤にならない:(1)タンパク質は、血液又は組織中に存在する多くのエンド−及びエキソペプチダーゼによって消化される、(2)多くのタンパク質は、幾らか免疫原性がある、並びに(3)タンパク質は、腎臓の限外濾過(kidney ultrafiltration)によって速やかに排泄され得る。全身毒性をもつか、又は、最適なバイオアベイラビリティー及び薬物動態学(pharmacokinetics)を欠如している、薬剤における活性な治療剤として使用される他の分子は、毒性により有効量が制限される低分子量分子を含む。このような分子は、悪性腫瘍による炎症及び状態、感染、及び自己免疫疾患を処置するためにルーチンに使用される。水溶性合成ポリマー(特に、ポリアルキレングリコール)が、タンパク質のような治療的に活性な分子を複合体化するために使用される。これらの治療的複合体は、循環時間(circulation time)を延長しクリアランス率を低下させることにより、薬物動態学を好都合に変え、全身毒性を低減し、そしていくらかの場合に、高められた臨床的効能を現すことが示されてきた。ポリエチレングリコール(PEG)を共有結合的に複合体化するこのプロセスは、「ペギレーション(PEGylation)」としてよく知られているが、多くの異なるポリマーが、複合体化ポリマーとして試験されてきた。
【0003】
複合体化のための多くのポリマー試薬は、加水分解的に不安定である化学官能基を複合体化することを包含する。加水分解的に不安定なポリマー複合体化試薬の例は、例えば、ポリアルキレンオキシド−N−スクシンイミドカーボネートを含む活性エステルが挙げられる(Zalipsky US patent No. 5,122, 614)。これらの試薬は、血液又は血漿を含む水性培地中で、比較的短い半減期を有する。このことは、結果的に、大きな化学量論的過剰量(large stoishiometric excesses)の複合体化ポリマー試薬を添加する必要性を生じる。タンパク質複合体化のための化学量論的過剰量の添加を必要とすることは、反応混合物からポリマー−タンパク質複合体を精製するために多大な労力とコストを必要とすることから、試薬の加水分解安定性は重要である。さらに、これらの加水分解的に不安定な試薬は、タンパク質中のアミン化学官能基(amine chemical functionality)との(特に、リシン残基のε−アミンに対する)反応を優先的に受ける傾向がある。関心のあるほとんどのタンパク質は1を超えるリシン残基(しばしば、多くのリシン残基)を有しているため、タンパク質の多くの残基部位で複合体化が起こるから、複合体化は非特異的である傾向がある。複合体化反応混合物を精製して、1種のポリマー分子に複合体化したタンパク質を単離することは可能であるが、妥当なコストでタンパク質上の同じアミン基に複合体化するすべてのポリマー−タンパク質複合体を単離することはできない。非特異
的複合体化は、しばしば、低下したタンパク質機能をもたらす。例えば、リシン残基を介してランダムポリ(アルキレンオキシド)アタッチメント(attachment)を有する抗体及び抗体フラグメントは、低下した親和性、アビディティー(avidity)又は特異性で標的抗原に結合することができる改変された抗体(又は改変された抗体フラグメント)を生じる。さらに、アミン特異的ポリマー複合体化試薬は、タンパク質上のアミンがプロトン化されないことを確実にするよう選択されなければならない複合体化反応条件を必要とする。これらの条件は、適度に高いpH媒体(media)(8−10)を必要とし、これは、アミン部分を、ポリマー複合体化試薬との反応に十分なほど反応性にする。高いpH条件は、しばしば、タンパク質に有害であり、構造変化及び変性をもたらす。これらのプロセスは、結果的に、タンパク質機能の低下をもたらす。アミン特異的ポリマー複合体化試薬は、タンパク質の接近可能なアミン部位に結合する傾向がある。これらの試薬は、キネティック試薬(kinetic reagents)と称され得る。それらは、不安定であり、タンパク質上の最も評価可能なアミノ求核部位との反応を受ける。アミンアシル化によって複合体化するアミン特異的ポリマー複合体化試薬は、結果的に、未複合体化タンパク質のための生理学的条件下において通常存在するタンパク質上のアミノ酸残基のアミン基上の正電荷の喪失をもたらす。アミン特異的ポリマー複合体化試薬のこれらの特徴は、しばしば、タンパク質の機能の部分的な低下をもたらす。タンパク質への複合体化のためにポリマーに組み込まれ、及び、アミン特異的であり且つしばしば加水分解的に不安定である他の複合体化官能基は、イソシアネート(WO94/04193)及びカーボネート(WO90/13540)を含む。
【0004】
最適化された効力について特に関係があり、且つ、投与量ごとの一貫性を確実にすることは、1タンパク質当たりの複合体化ポリマー分子の数が同じであること、及び、各ポリマー分子が各タンパク質分子における同じアミノ酸残基に特異的に共有結合的に複合体化すること、を確実におこなうことである。タンパク質に沿う部位での非特異的な複合体化は、複合体化産物及びしばしば複合体化していないタンパク質の分布をもたらし、精製が困難で、長く(tedious)、且つ高価である複雑な混合物をもたらす。
【0005】
タンパク質に対するチオール特異的ポリマー複合体化試薬が開発され、タンパク質への複合体化に拮抗的な加水分解、タンパク質中の異なるアミノ酸残基での非特異的ポリマー複合体化、及び高pH複合体化反応条件要求を受ける複合体化試薬の性質についての制限に取り組んだ。チオール特異的ポリマー複合体化試薬は、タンパク質のアミノ酸残基上のアミン官能部分がプロトン化され、従ってポリマー複合体化試薬との複合体化反応に効率的に参加することができない中性に近いpH値で利用され得る。前述のアミン特異的試薬よりも比較的加水分解的に安定なチオール特異的ポリマー複合体化試薬は、低い化学量論的過剰量で利用され得、そのためポリマー−タンパク質複合体の精製の間のコストを削減することができる。チオール基に対して広く選択性がある複合体化官能部分としては、ヨードアセトアミド、マレイミド(WO92/16221)、ビニルスルホン(WO95/13312及びWO95/34326)、ビニルピリシン(WO88/05433)及びアクリレート及びメタクリレートエステル(WO99/01469)が挙げられる。これらのチオール選択的複合体化部分は、ポリマーとの間に単一のチオエーテル複合体化結合を生成する。
【0006】
殆どのタンパク質は、遊離スルフヒドラル(sulfhydrals)を有さない。なぜならこれらのスルヒドラルタンパク質内でジスルフィド架橋を伴うスクランブリング反応及び転位を受け、タンパク質機能の低下をもたらすためである。遊離スルフヒドラルを有するタンパク質にとって、これらのスルフヒドラルは、しばしば、タンパク質機能に決定的に重要である。典型的に、タンパク質中では、スルフヒドラル部分の数は、アミン部分(例えば、リシン又はヒスタジン)の数よりも少ない。タンパク質への複合体化は、チオール基で特異的に成され得るため、そして、タンパク質は代表的に遊離チオール基を有
さないため、PEG結合(PEG attachment)のためのチオール部位を導入する突然変異誘発によるタンパク質の部位特異的改変(site−specific modification)の例が存在する。しかしながら、このような改変は、コストをかなり高くする。導入された遊離スルフヒドラルは、タンパク質スクランブリング及びタンパク質二量化のため操作された(engineered)タンパク質において、前述したような同様の制限を有し得る。また、突然変異誘発のプロセス及び細菌源からの改変タンパク質の生産は、しばしば、遊離スルフヒドラルを、例えば、グルタチオンとジスルヒド結合において結合させる。インターロイキン2は、例えば、PEGの部位特異的結合を可能にするようスレオニン残基をシステインにより置換する突然変異誘発により、改変された(Goodson RJ, Katre NV; Bio/Technology (1990)8, 343−346)。
【0007】
当該分野では、複合体化パラメーターは、ポリマー形態学、分子量特性、化学官能性に関して、目的の治療的活性分子と最適に適合しなければならないことが知られている。ポリマータンパク質複合体は、安全で有効な医薬用途に必要とされる多くの好適且つ必要な性質を示し得るけれども、タンパク質の活性及び安定性に及ぼすポリマー複合体の効果は、性能のために極めて重要である。複合体化の位置及び量並びにポリマー特性に関連する複合体化変数(conjugation variables)は、生物学的及び物理化学的性質と最適に相関されなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ここに、タンパク質中の2つのシステイン残基に由来する両方の硫黄原子と複合体化するために特に使用され得る一連の新規試薬を見出し、新規なチオエーテル複合体を提供する。最初の例において本発明は、ネイティブなタンパク質中で自然なジスルフィド架橋を形成する2つの硫黄原子の複合体を対象とする。ジスルフィド結合は、医薬に関係のあるタンパク質、特に、分泌タンパク質、リソソームタンパク質、及び膜タンパク質の外質ドメイン(exoplasmic domain)中で見出される。本技術は、ポリマーをタンパク質に複合体化するための既知の技術を超える明確な利点を提供する。
【0009】
本発明は、下記の一般式の化合物を提供する:
【0010】
【化1】

【0011】
ここで、
X及びX’のうち一方はポリマーを表し、他方は水素原子を表し;
各Qは、独立して、連結基を表し;
Wは、電子求引部分、又は、電子求引部分の還元によって調製可能な部分を表し;
或いは、X’がポリマーを表す場合、X−Q−W−は、一緒になって、電子求引基を表し得;さらに、Xがポリマーを表す場合、X’及び電子求引基Wは、介在する原子とともに環を形成してもよく;
及びZの各々は、独立して、生物学的分子に由来する基を表し、その各々は、
A及びBに求核部分を介して連結され;或いは、Z及びZは、一緒になって、A及びBに2つの求核部分を介して連結される生物学的分子に由来する単一の基を表し;
Aは、C1−5アルキレン又はアルケニレン鎖であり;且つ、
Bは、結合又はC1−4アルキレンもしくはアルケニレン鎖である。
【0012】
ポリマーX又はX’は、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート(例えば、ポリアクリロイルモルホリン)、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド又はポリメタクリルアミド(例えば、ポリカルボキシメタクリルアミド)、又はHPMAコポリマーであり得る。さらに、X又はX’は、酵素的又は加水分解的分解を受けやすいポリマーであってもよい。このようなポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)及びポリアミド(例えば、ポリ(アミノ酸))が挙げられる。ポリマーX又はX’は、ホモポリマー、ランダムコポリマー、又はブロックコポリマーのような構造的に定められたコポリマーであり得る。例えば、X又はX’は、2又はそれ以上のアルキレンオキサイドに由来するか、或いは、ポリ(アルキレンオキサイド)及びポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)又はポリ(アミノ酸)のいずれかに由来するブロックコポリマーであり得る。使用され得る多官能性ポリマーは、ジビニルエーテル−無水マレイン酸とスチレン−無水マレイン酸とのコポリマーが挙げられる。天然に存在するポリマー、例えば、キチン、デキストラン、デキストリン、キトサン、デンプン、セルロース、グリコーゲン、ポリ(シアル酸)(poly(sialylic adic))及びそれらの誘導体のような多糖類もまた使用され得る。ポリグルタミン酸のようなポリマーも使用され得、糖類又はアミノ酸のような天然モノマーとエチレンオキサイド又はメタクリル酸のような合成モノマーとから誘導されたハイブリッドポリマーもどうように使用され得る。
【0013】
ポリマーがポリアルキレングリコールである場合には、これは、好ましくは、C及び/又はCユニットを含むものであり、特にポリエチレングリコールである。ポリマー(特に、ポリアルキレングリコール)は、単一の直線鎖を含んでもよいし、或いは、小さい又は大きい多くの鎖からなる分岐された構造(morphology)を有してもよい。いわゆるプルロニック(登録商標)(Pluronic)は、PEGブロックコポリマーの重要なクラスである。これらは、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドブロックに由来する。置換されたポリアルキレングリコール(例えば、メトキシポリエチレングリコール)が使用され得る。本発明の好ましい実施形態において、単鎖ポリエチレングリコールは、適当な基(例えば、アルコキシ(例えば、メトキシ)、アリールオキシ、カルボキシ又はヒドロキシル基)によって開始され、鎖の他方の末端においてリンカー基Qに連結される。
【0014】
ポリマーX又はX’は、必要に応じて、任意の所望の方法において、誘導体化又は官能化されてもよい。例えば、本発明の主題である複合体化のための2又はそれ以上の化学的部分を有するポリマーは、2又はそれ以上の連結された生体活性分子(linked bioactive molecules)の複合体を生成するために使用される。反応性基は、ポリマー末端又は末端基で、或いは、ペンダントリンカーを介してポリマー鎖に沿って連結され得る;このような場合、ポリマーは、例えば、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、又は無水マレイン酸コポリマーである。1を超える生物学的分子(代表的には、生物学的に活性なポリペプチド又は薬剤)を有するマルチマー複合体は、相乗的又は付加的な利点を生じ得る。所望の場合、ポリマーは、常法を用いて固体支持体にカップリングされ得る。
【0015】
ポリマーの最適分子量は、もちろん目的としている用途に依存する。好ましくは、数平均分子量の範囲は、500g/モル〜約75,000g/モル程度である。一般式Iの化
合物が循環を離れ且つ組織に浸透することを目的とする場合、例えば、悪性腫瘍、感染又は自己免疫疾患によって或いは外傷によって引き起こされる炎症の治療における使用のためには、2000〜30,000g/モルの範囲にある低分子量ポリマーの使用が有利であり得る。一般式Iの化合物が循環に残ることを目的とする用途のためには、より高分子量のポリマー(例えば、20,000〜75,000g/モルの範囲にある)の使用が有利であり得る。
【0016】
使用されるポリマーは、複合体が目的の使用のための溶媒媒体中で可溶性であるように選択されるべきである。生物学的用途、特に、診断用途及び哺乳動物への臨床治療投与のための治療用途のために、該複合体は水性媒体中で可溶性であるだろう。酵素のような多くのタンパク質が、産業における有用性(例えば、化学反応を触媒すること)を有する。このような用途における使用を目的とする複合体については、複合体が水性媒体と有機媒体のいずれか又は両方において可溶性であることが必要かも知れない。ポリマーは、生物学的分子の目的の機能を損なうべきではない。
【0017】
連結基Qは、例えば、直接結合、アルキレン基(好ましくはC1−10アルキレン基)、又は、必要に応じて置換されたアリール又はヘテロアリール基(そのいずれかが、1又はそれ以上の酸素原子、硫黄原子、−NR基(ここでRは、後述される意味を有する)、ケト基、−O−CO−基及び/又は−CO−O−基によって終結又は中断されてもよい)、を表す。好適なアリール基としては、フェニル及びナフチル基が挙げられ、一方好適なヘテロアリール基としては、ピリシン、ピロール、フラン、ピラン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、ピリダジン、ピリミジン(primidine)及
びプリンが挙げられる。ポリマーへの連結は、加水分解的に不安定な結合又は不安定でない(non−labile)結合によるものであり得る。
【0018】
必要に応じて置換されたアリール又はヘテロアリール基上に存在し得る置換基としては、例えば、以下から選択される1又はそれ以上の同じ又は異なる置換基が挙げられる:−CN、−NO、−COR、−COH、−CHOH、−COR、−OR、−OCOR、−OCOR、−SR、−SOR、−SOR、−NHCOR、−NRCOR、−NHCOR、−NR’COR、−NO、−NHOH、−NR’OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR’COR、−N、−N、−NHR、−NR、ハロゲン(例えば、フッ素又は塩素)、−C≡CR、−C=CR及び−C=CHR(ここで、各R又はR’は、独立して、水素原子又はアルキル(好ましくはC1−6アルキル)又はアリール(好ましくはフェニル)基を表す)。電子吸引性置換基の存在が特に好ましい。
【0019】
Wは、例えば、ケト又はアルデヒド基CO、エステル基−O−CO−又はスルホン基−SO−、又は、このような基の還元により得られる基(例えば、CH.OH基、エーテル基CH.OR、エステル基CH.O.C(O)R、アミン基CH.NH、CH.NHR又はCH.NR、或いは、アミドCH.NHC(O)R又はCH.N(C(O)R))を表し得る。X−Q−W−が一緒になって電子吸引基を表す場合には、この基は、例えばシアノ基であり得る。
【0020】
本明細書の以下の部分において、Z及びZは、まとめてZとして表される。Z及びZが一緒になって1の生物学的分子を表すことが、本発明の好ましい実施形態である:
【0021】
【化2】

【0022】
Zは、任意の所望の生物学的分子(例えばタンパク質)に由来し得る。タンパク質は、例えば、ポリペプチド、抗体、抗体フラグメント、酵素、サイトカイン、ケモカイン又はレセプターであり得る。拘束された(constrained)又は環状ポリペプチド(これは、通常ジスルフィド結合を介して環化される)及びエピトープもまた使用され得る。好適な生物学的分子の具体例は、下記に列挙される。
【0023】
好ましくは、A又はBを基Zに連結する求核部分は、チオール基又はアミン基に由来する。2つのチオール基は、天然又は人工的に作られた(engineered)ジスルフィド(システイン)架橋の部分的還元により生成され得る。アミン基は、例えば、リシン残基であり得る。Z及びZが、一緒になって、2のチオール基を介して基A及びBに連結する単一の生物学的分子を形成する場合、式Iの化合物は下記式を有する:
【0024】
【化3】

【0025】
本発明は、また、一般式Iの化合物の調製のための方法を提供し、この方法は、
(i)下記一般式の化合物
【0026】
【化4】

【0027】
(ここで、
X及びX’のうち一方はポリマーを表し、他方は水素原子を表し;
Qは、連結基を表し;
W’は、電子求引基(例えば、ケト基、エステル基−O−CO−又はスルホン基−SO−)を表し; 或いは、X’がポリマーを表す場合、X−Q−W’は、一緒になって、電子求引基を表してもよく;
Aは、C1−5アルキレン又はアルケニレン鎖を表し;
Bは、結合又はC1−4アルキレン又はアルケニレン鎖を表し、そして、
各Lは、独立して、脱離基を表す)、
或いは(ii)下記一般式の化合物
【0028】
【化5】

【0029】
(ここで、
X、X’、Q、W’、A及びLは、一般式IIについて与えられる意味を有し、さらに、Xがポリマーを表す場合、X’及び電子求引基Wは、介在する原子とともに環を形成し得、mは、整数1〜4を表す)
のいずれかを、下記一般式の化合物
Z(Nu) (IV)
(ここで、Zは、上記で与えられる意味を有し、各Nuは独立して求核基(例えば、チオール又はアミン基)を表す)
と反応させることを包含する。
【0030】
及びZが別々の分子である場合、反応は、連続的な分子ZNu及びZNuを用いて2の連続的な工程において行われる。
【0031】
該又は各脱離基Lは、例えば、−SR、−SOR、−OSOR−、−N、−NHR、−NR、ハロゲン、又は−OΦ(ここで、Rは、上記で与えられる意味を有し、Φは、少なくとも1の電子吸引置換基、例えば、:−CN、−NO、−COR、−COH、−CHOH、−COR、−OR、−OCOR、−OCOR、−SR、−SOR、−SOR、−NHCOR、−NRCOR、−NHCOR、−NR’COR、−NO、−NHOH、−NR’OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR’COR、−N、−NHR、−NR、ハロゲン(特に塩素、又は、特にフッ素)、−C≡CR、−C=CR及び−C=CHR(ここで、各R又はR’は、上記で与えられる意味を有する)を含む置換されたアリール(特に、フェニル)基を表す)を表す。
【0032】
W’及びX’が一緒になって環を形成する代表的な構造としては、
【0033】
【化6】

【0034】
(ここで、nは1〜4の整数である)、並びに、
【0035】
【化7】

【0036】
が挙げられる。
【0037】
一般式(IV)の化合物(ここで、各Nuは、チオール基である)は、システイン連結を含むタンパク質、即ち、
【0038】
【化8】

【0039】
の部分的還元により調製され得る。
【0040】
好適には、本発明に従う方法は、in situにおいてタンパク質中の2のシステインアミノ酸に由来するジスルフィド結合を部分的に還元することにより行われ、結果として還元された産物は、式(II)又は(III)の化合物と反応する。ジスルフィドは、例えば、ジチオスレイチオール、メルカプトエタノール、又はトリス−カルボキシエチルホスフィンを用いて常法により還元され得る。この方法は、全ての反応物が可溶性であるような溶媒又は溶媒混合物中で行われ得る。求核基(例えば、タンパク質)を含有する生物学的分子が、水性反応媒体中で一般式II又はIIIの化合物と直接反応し得る。この反応媒体はまた、求核剤のpH要求性に依存して、緩衝化され得る。反応の至適pHは、一般的に約5.5〜約8(例えば、約7.4)であり、好ましくは約6.0〜6.5である。3〜37℃の反応温度が一般的に適している:タンパク質及び他の生物学的分子の分解又は変性が起こり得るような温度で複合体化反応が行われると、タンパク質及び他の生物学的分子は、分解され又は変性して機能を損ない得る。有機媒体中で行われる反応(例えば、THF、エチルアセテート、アセトン)は、典型的に、周囲以下の温度(例えば、0℃以下の温度)で行われ得る。
【0041】
タンパク質は、1又は複数のジスルフィド架橋を含み得る。遊離スルフヒラル(sulfhyral)部分を与える還元が行われ、タンパク質中の1又は複数のジスルフィド架橋が還元さ
れ得る。使用されるポリマー複合体化試薬の化学量論およびジスルフィド還元の程度に応じて、1又は複数のポリマー分子をタンパク質に複合体化することが可能である。ジスルフィドの総数よりも少なく還元することが望ましい場合には、異なる反応条件又は変性剤の添加を用いて部分還元を可能にするような、固定化還元剤が使用され得る。
【0042】
或いは、チオール基のソースは、もともとジスルフィド架橋に由来しないシステイン又はチオールからであってもよい。チオール基のソースがジスルフィド架橋である場合、これは鎖内(intrachanin)又は鎖間(interchain)であり得る。
【0043】
生物学的分子は、多くの先行技術の試薬とは異なり、化学量論的当量又は少しだけ過剰な試薬を用いて、本発明の試薬と効率的に複合体化され得る。しかしながら、本発明の試
薬は、タンパク質を溶媒和するために使用される水性媒体と拮抗的反応を呈さないので、過剰な化学量論の試薬と複合体化反応を行うことも可能である。過剰試薬は、タンパク質のルーチンな精製のあいだに、イオン交換クロマトグラフィーよって容易に除去することができる。
【0044】
式(II)及び(III)の化合物は新規であり、従って、本発明はさらにこれらの化合物自体を提供する。これらの新規の試薬は、複合体化技術におけるブレイクスルーを与え、ポリマー上の化学官能部分は、2個の求核基(特に、タンパク質中の天然ジスルフィド結合に由来する2個のチオール)に選択的なクロス官能基化された(潜在的にクロス複合体化する)ビスアルキル化部分を含有する。
【0045】
本発明に従うプロセスの直接の産物は、Wが電子吸引基である一般式Iの化合物である。このような化合物は、それ自体で有用性を有する;本発明の方法は、適当な条件下において可逆的であり、更に式(I)の化合物(ここで、Wは電子吸引基部分である)は、遊離タンパク質の放出が求められる場合の用途において(例えば、直接的な臨床用途において)有用性をもつからである。しかしながら、電子吸引部分Wは、タンパク質の放出を妨げる部分を与えるように還元されてもよく、そしてこのような化合物も多くの臨床、産業及び診断用途において有用性を有する。
【0046】
従って、例えば、ケト基を含む部分Wは、CH(OH)基を含む部分Wに還元され得;エーテル基CH.ORは、エーテル化剤を用いたヒドロキシ基の反応によって得られ得;エステル基CH.O.C(O)Rは、アシル化剤を用いたヒドロキシ基の反応によって得られ得、アミン基CH.NH、CH.NHRまたはCH.NRは、還元的アミノ化によってケトン又はアルデヒドから調製され得;或いはアミドCH.NHC(O)R又はCH.N(C(O)R)はアミンのアシル化によって形成され得る。シアノ基である基X−Q−Wは、アミン基に還元され得る。
【0047】
一般式(II)の化合物(ここで、Xはポリマーを表す)は、下記の一般式の化合物:
【0048】
【化9】

【0049】
(ここで、Q’、W、A、B及びLは前述の意味を有する)を、
下記一般式のポリマー:
【0050】
【化10】

【0051】
(ここで、Xは、ポリマーを表し;Q’及びVは、(VI)と(VII)の化合物が共に反応して式(II)の所望の化合物を与えるように選択される基である)
と反応させることによって調製され得る。
【0052】
或いは、下記式の化合物:
【0053】
【化11】

【0054】
が、下記式のポリマー:
【0055】
【化12】

【0056】
と反応され得る。
【0057】
一般式(III)の化合物は、一般式(II)の化合物からの1つの脱離基Lの塩基媒介放出(base mediated elimination)によって調製され得る。
【0058】
一般式Iの化合物は、in vivoにおける化合物の追跡(tracking)を可能にするため、造影剤(例えば、放射性ヌクレオチド)を含み得る。好適には、放射性ヌクレオチド又は造影剤Iは、基Wを介して結合され得、例えば、下記のタイプの化合物を与える:
【0059】
【化13】

【0060】
これは、例えば、下記のタイプの試薬から調製され得る:
【0061】
【化14】

【0062】
例えば:
【0063】
【化15】

【0064】

【0065】
一般式Iの化合物は、多くの用途を有する。それらは、例えば、患者への直接的な臨床用途のために使用され得、従って、本発明はさらに一般式Iの化合物及び薬学的に許容される担体を含有する薬学的組成物を提供する。本発明は、さらに、薬剤としての使用のための一般式Iの化合物、並びに、本発明に従う式Iの化合物又は薬学的組成物の薬学的有効量を患者に投与することを包含する患者の治療方法を提供する。任意の所望の薬学的効果(例えば、外傷治療、酵素置換、毒物除去、抗炎症、抗感染、免疫調節、ワクチン化(vaccination)又は抗癌)が、生物学的分子の適当な選択により得られ得る。
【0066】
一般式Iの化合物は、非臨床用途においても使用され得る。例えば、多くの生理活性物質(例えば、酵素)が、有機溶媒中で反応を触媒することができ、一般式Iの化合物は、このような用途において使用され得る。さらに、一般式Iの化合物は、診断ツールとして使用され得る。
【0067】
以下、所望の用途に応じて、本発明において有用性を有し得る幾つかの特定の生物学的分子を与える。酵素としては、炭水化物特異的酵素、タンパク質分解酵素などが挙げられる。一般的に産業的(有機ベースの反応)及び生物学的用途、特に治療用途のために、意図される酵素としては、US4,179,337に開示されるオキシドリダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、及びリガーゼが挙げられる。具体的な意図される酵素としては、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、スーパーオキサイドディスムターゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、リパーゼ、ウリカーゼ、ビリルビンオキシダーゼ(bilirubin osidase)、グルコースオキシダーゼ
、グルクロニダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセルブロシダーゼ、グルクロニダーゼ、グルタミナーゼが挙げられる。
【0068】
本発明の一般式Iの化合物において使用される生物学的活性分子としては、例えば、第8因子、インシュリン、ACTH、グルカゴン(glucagen)、ソマトスタチン、ソマトトロピン、チモシン、副甲状腺ホルモン、色素ホルモン(pigmentaryhormones)、ソマトメ
ジン、エリスロポエチン、黄体化ホルモン、視床下部性放出因子(hypothalamic releasingfactors)、抗利尿ホルモン、プロラクチン、インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子、ヘモグロビン、サイトカイン、抗体、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン及び組織プラスミノーゲンアクチベータが挙げられる。
【0069】
インターロイキン、インターフェロン、及びコロニー刺激因子のような上記タンパク質のうちあるものは、また、通常、組換えタンパク質技術による調製の結果グリコシル化されていない形態で存在している。非グリコシル化バージョンが本発明において使用され得る。
【0070】
例えばインターフェロンに関して、本発明は、複合体化されていないインターフェロンと比較して生物学的活性が保持されている複合体の調製を可能にする。この最も驚く結果
は、既知の複合体化技術を用いた場合、可能ではなかった。
【0071】
目的の他のタンパク質は、Dreborg et all Crit. Rev. Therap. Drug Carrier Syst. (1990) 6 315 365に、ポリマー(例えば、ポリ(アルキレンオキシド))と複合体化した
ときに低減されたアレルゲン性を有し、結果的に寛容誘発因子としての使用に適していると開示されるアレルゲンタンパク質である。アレルゲンの中には、ブタクサ(Ragweed)
抗原E、蜜蜂毒、ダニアレルゲンなどが開示されている。
【0072】
グリコポリペプチド(例えば、イムノグロブリン、オボアルブミン、リパーゼ、グルコセレブロシダーゼ、レクチン、組織プラスミノーゲンアクチベータ、及び、グリコシル化されたインターロイキン、インターフェロン及びコロニー刺激因子)も対象であり、イムノグロブリンとしては、例えばIgG、IgE、IgM、IgA、IgD及びそのフラグメントである。
【0073】
特に、診断及び治療目的のための医薬において使用される抗体及び抗体フラグメントが目的とされる。
【0074】
抗体は、単独で使用されてもよいし、他の原子又は分子(例えば、放射性物質又はサイトトキシン/抗感染薬)と共有結合的に複合体化されて(「負荷されて(loaded)」)いてもよい。エピトープがワクチンのために使用され、免疫原性ポリマー−タンパク質複合体が製造されてもよい。
【0075】
本発明の方法の重要な特徴は、α−メチレン脱離基及び二重結合が、マイケル活性化部分としてはたらく電子吸引官能基とクロス複合体化されていることである。脱離基が、直接的な転位に対してよりもむしろクロス官能化試薬において除去されやすく、且つ、電子吸引基がマイケル反応について適した活性化部分である場合には、逐次的な分子内ビスアルキル化が、連続的なマイケル及び逆マイケル反応によって起こり得る。脱離部分は、最初のアルキル化が起こった後まで暴露されない潜在的な共役二重結合をマスクするように働き、また、ビスアルキル化は、J. Am. Chem. Soc. 1979, 101, 3098-3110及びJ.Am. Chem. Soc. 1988, 110, 5211-5212に記載されるように、逐次的且つ相互作用的マイケル及び逆マイケル反応から生じる。電子吸引基及び脱離基は、ビスアルキル化が逐次的マイケル及び逆マイケル反応によって起こり得るように最適に選択される。
【0076】
J. Am. Chem. Soc. 1988,110, 5211-5212に記載されるように、クロス官能性アルキル
化剤を、二重結合と共役する更なる多重結合を用いて、或いは、脱離基と電子吸引基との間に調製することもできる。
【0077】
前述のタイプのクロス官能基化されたビスアルキル化試薬は、マイケル−逆マイケル平衡によって制御されるアルキル化を受けるため、また、三次元構造をかなり保持する(significantly retaining)制御された方法でタンパク質中の1から1より多くのジスルフ
ィド結合を部分的に還元することが可能であるため、所定のジスルフィド結合のシステインからの2個のスルフヒドラル(sulfhydral)を交差してビスアルキル化を起こさせることが可能である。このような一連の反応は、ビスアルキル化試薬を用いたジスルフィド架橋の再アニーリングをもたらす。
【0078】
式Iの化合物を与えるための複合体化の際に形成されたチオ−ルエーテル結合は、概して、水溶液中で加水分解的に安定である。試薬自体も加水分解的に安定である。この文脈において、化合物が生理的pH及び45℃までの温度において実質的な変性を受けない場合に、その化合物は加水分解的に安定であると見なされる。8時間に渡ってこれらの条件下における50%未満の分解が、実体がない(insubstantial)と考えられる。
【0079】
本発明が、どちらかの末端において又はポリマーの主鎖に沿ったペンダント鎖上にクロス官能基化されたビスアルキル化官能性を有するポリマー試薬の製造を可能にすることが、理解される。
【0080】
本発明に従う新規複合体の幾つかの例として、以下のものが挙げられる:
【0081】
【化16】

【0082】
及び
【0083】
【化17】

【0084】
本発明に従う新規試薬の幾つかの例を以下に挙げる:
【0085】
【化18】

【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施例7から得られた結果を示す。
【図2】実施例7から得られた結果を示す。
【図3】実施例7から得られた結果を示す。
【図4】実施例7から得られた結果を示す。
【図5】実施例7から得られた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下の実施例は、本発明を説明する。図1〜5は、実施例7から得られた結果を示す。
【実施例1】
【0088】
ポリマー複合体化試薬の合成
p−ニトロ−3−ピペリジノプロピオフェノンヒドロクロライド:C1419ClN
一口250ml丸底フラスコに、p−ニトロアセトフェノン(16.5g)、パラホルムアルデヒド(4.5g)、ピペリジンヒドロクロライド(12.1g)、無水エタノール(100mL)及び磁気撹拌バーを添加した。この攪拌された不均質混合物に、塩酸(水中37wt%、1mL)を添加し、その溶液を加熱し、窒素下において還流させた。1−2h後、さらなるパラホルムアルデヒド(3.0g)を添加した。この溶液を約18h還流させ、その間さらなるパラホルムアルデヒドを添加した(3.0g)。この反応溶液を冷却させた後、さらなる還流の際に溶解しないであろう結晶性の固体を沈殿させた(settled)。その固体を濾過により分離し、非常に熱いメタノールを用いて再結晶化し、大きな黄色結晶を得た(10.9g)。
【0089】
【数1】

【0090】
3−(2−ヒドロキシエチルチオール)−p−ニトロプロピオフェノン:
p−ニトロ−3−ピペリジノプロピオフェノンヒドロクロライド(30g、0.1mol)及びメルカプトエタノール(9.5g、0.12mol)の95%エタノール(200ml)攪拌溶液を、均質になるまでゆっくり加熱した。ピペリシン(1.0ml)を添加し、その反応混合物を加熱し、2h還流させた。冷却後、溶媒の大部分を回転蒸発させ、エチルアセテート(200ml)を添加し、固体を濾過した。エチルアセテート溶液を、10%HCl水溶液、5%NaHCO及びブラインで連続的に抽出し、次いでNaSO上で乾燥させ、次にエチルアセテートを留去してオイルとし、これは結晶化して23.2gの所望の産物を得、これはエチルアセテート−エチルエーテル中で再結晶化された。
【0091】
2,2−ビス(p−トリルチオールメチル)−p−ニトロアセトフェノン:C2423NO
100ml一口丸底フラスコに、p−ニトロ−3−ピペリジノプロピオフェノンヒドロクロライド(10.0g)、4−メチルベンゼンチオール(8.2g)、ホルムアルデヒド(37%w/w 水溶液、10ml、過剰)、メタノール(40ml)及び磁気攪拌バーを添加した。この攪拌された不均質混合物を、黄色の均質溶液が形成されるまで加熱した(2〜3分、50〜60℃にて)。次いで5滴のピペリシンを添加し、反応溶液を加熱して還流させた。15分以内に、反応物は、幾らかの白/黄色固体の存在に起因して不均質になり、2時間後この固体は濃いオレンジ色を呈した。その後還流を停止し、反応物を一晩室温まで冷却した。次いで反応混合物を更なるホルムアルデヒド(37%w/w 水溶液、10ml、過剰)と共に還流下で再び加熱した。約30分間の還流後、オレンジ色のオイルが見え、固体が無くなった。攪拌を停止すると、オイルはフラスコの底に沈んだ。さらに7hの還流の後、混合物を一晩冷却した結果、沈んだオイルが結晶化した。添加
された数滴のアセトンを含む非常に熱いメタノールから、再結晶化によって結晶化固体を単離及び精製し、黄色結晶を得た(10.0g)。
【0092】
【数2】

【0093】
2−2−ビス(p−トリルスルホニルメチル)−p−ニトロアセトフェノン:C2423NO
250ml丸底フラスコ中で、1:1 メタノール:水(100ml)中の2−2−ビス(p−トリルチオールメチル)−p−ニトロアセトフェノン(2.5g)及びオキソン(Oxone)(18.4g)の懸濁液を16h攪拌した。これは白色固体の懸濁液を与え、これにクロロホルム(100ml)を添加し、得られた有機相を分液漏斗を用いて分離し、水相中に白色固体の懸濁液を残した。均質な溶液が形成するまで、更なる水を水相に添加し、次いでクロロホルム(100ml)で再び洗浄した。有機相を合わせ、ブラインで洗浄し(50ml×2)、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を除去し、真空中で乾燥させた後、オフホワイト色の粗製固体生成物を得た(2.5g)。生成物をアセトンから再結晶化し、白色結晶を得た。
【0094】
【数3】

【0095】
2−(2−ヒドロキシエチルスルホニルメチル)−p−ニトロ−2(Z),4−ペンタ−ジエノフェノン
アルゴンでパージし且つサーモメーター及び滴下漏斗を取り付けた火炎乾燥丸底フラスコに、3−(2−ヒドロキシエチルチオール)−p−ニトロプロピオフェノン(0.5g、2.0mmol)及び無水テトラヒドロフラン(50.0ml)を添加した。溶液を攪拌し、ドライアイス−アセトン浴により冷却し、次いでTiCl(0.23ml、2.1mmol)をシリンジにより添加した。氷浴を取り外し、次いで溶液を周囲温度まで温め、次に溶液を−40℃まで冷却し、さらにジイソプロピルエチルアミン(1.1ml)をシリンジにより添加した。冷却浴を取り外し、反応混合物を−15℃〜0℃まで温めたところ、赤色に変化した。次いで、反応混合物を3〜5分間かけて25℃まで温め、アクロレイン(0.14g、2.1mmol)の無水テトラヒドロフラン(20ml)溶液を滴下漏斗により30〜40分間かけて添加した。この発熱反応が反応混合物の温度を30〜40℃まで上昇させ、この溶液を、アルデヒドの添加後であってエチルアセテート(75ml)の添加前に更に20分間攪拌した。薄層クロマトグラフィーを用いて、出発3−2−ヒドロキシエチルチオール)−p−ニトロプロピオフェノンの消失及び所望の2−(2−ヒドロキシエチルチオメチル)−p−ニトロ−2(Z),4ペンタジエノフェノン(R〜0.38−0.45)の形成を確認した。少量の産物(E−アイソマー)を0.29−0.34の範囲において低いR値で観察することができた。エチルアセテート反応混合物を、10%水性HCl及びブラインで抽出した。水相を合わせ、エチルアセテートで2回抽出し、全てのエチルアセテートフラクションを合わせ、次いで10%水性HCl
、5%水性NaHCO及びブラインで2回洗浄し、次いで固体NaSO上で乾燥させた。エチルアセテートを回転蒸発させ、オイルとして、粗製2−(2−ヒドロキシエチルチオメチル)−p−ニトロ−2(Z),4ペンタ−ジエノフェノンを得、2,2−ビス[(p−トリルスルホニルメチル)]−p−ニトロアセトフェノンの合成に関して、これは直ぐに酸化され、固体として、2−(2−ヒドロキシエチルスルホニルメチル)−p−ニトロ−2(Z),4−ペンタジエノフェノン(これは、カラムクロマトグラフィー又はエチルアセテートもしくはメタノール中での再結晶により精製され、次に本明細書の他の箇所に記載されるように、アミノ末端化されたポリ(エチレングリコール)に共有結合された。
【0096】
上記の一連の反応は、アセアルデヒド(acetaldehyde)、メタクロレイン、エタクロレイン、ブトリアルデヒド(butryaldehyde)、クロトンアルデヒド、2,4−ペンタジエニア
ール、ソルブアルデヒド、トルアルデヒド、シンナムアルデヒド、メチル−シンナムアルデヒド、クロロ−シンナムアルデヒド、5−フェニル−2,4ペンタジエナール及び7−フェニル−2,4,6−ヘプタトリエナールを含む、多くのアルデヒドを用いて行われた。この一連の反応は、3−(p−トリルチオメチル)−m−ニトロアセトフェノン、3−(2−ヒドロキシエチルチオ)−m−ニトロプロピオフェノン、3−(エチルチオメチル)−m−ニトロプロピオフェノン、3−(ジメチルアミノエチルチオ)−m−ニトロプロピオフェノン、3−(2−ヒドロキシエチルチオ)−3−フェニルプロピオフェノン、3(2−ヒドロキシエチルチオール)−5−フェニル−4(E)−ペンテノフェノン、3(エチルチオメチル−o−ニトロプロピオフェノン、3−(エチルチオ)−プロピオフェノン、3−(2−ヒドロキシエチルスルホニル)プロピオフェノン、2−(3−(2−ヒドロキシエチルチオ)−1−プロペニル)−m−2(E)−4−ペンタジエノフェノンを含む、多くのアリールケト誘導体を用いて行われた。この一連の反応は、また、4−(エチルチオ)−2−ブタノン、4−(−p−トリルチオ)−2−ブタノン、4−(4−ニトロフェニルチオ)−2−ブタノン、4−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−ブタノン、及びメチル−3−(2−ヒドロキシエチルチオール)−プロパノエートを含む脂肪族ケト誘導体を用いて行われた。これらの前駆体に対する前述した反応の最終産物は、本明細書の他の箇所に記載されるように、ポリ(エチレングリコール)に共有結合され得る。
【0097】
2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]−p−アミノアセトフェノンヒドロクロライドC2426ClNO
100ml丸底フラスコに2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]−p−ニトロアセトフェノン(2g)、エタノール(25mL)、塩酸(水中37wt.%、8mL)及び磁気攪拌バーを添加した。得られた不均質な混合物に、次いで、塩化スズ(II)二水和物を添加し、その混合物をオイルバス中で45℃にて2h加熱した。次いで、これ以上の水を添加したら沈殿が起こり得るとみられる点まで形成されていた均質な黄色水溶液に、水を添加した。その均質な溶液を室温まで冷却し、結果的に結晶化/沈殿している黄色化合物を得、これを真空下において濾過により分離した。次いで、分離した産物を、アセトン及びメタノール(約90:10v/v)の加熱した混合物と混合した。不溶性の固体を、真空下の濾過によって分離し、真空オーブンにおいて恒量まで乾燥させた(1.4g)。
【0098】
【数4】

【0099】
2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]−p−アミノアセトフェノンのα−メトキシ−ω−アミノポリ(エチレングリコール)へのカップリング
滴下漏斗及び窒素ラインを取り付けた一口100mL丸底フラスコに、窒素雰囲気下でトリホスゲン(23mg)、2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]−p−アミノアセトフェノンヒドロクロライド(125mg)、無水トルエン(2.5mL)及び磁気攪拌バーを加えた。滴下漏斗を、別々に無水トリエチルアミン(68μL)及び無水トルエン(2.5mL)で満たした。丸底フラスコの下にアセトン/ドライアイス浴を設置し、内容物を冷却した。次いで、5−10分かけて攪拌しながらトリエチルアミン溶液をトリホスゲン溶液に滴下した。フラスコ及びドライアイス浴を数時間かけて室温まで温め、室温になったら、なお窒素雰囲気下において反応混合物を更に約2h攪拌した。次いで、O−(2−アミノエチル)−O’−メチルポリ(エチレングリコール)2,000(490mg)及び無水トリエチルアミン(68μL)の無水トルエン溶液を、室温にて反応混合物に滴下した。得られた混合物を、室温にて一晩攪拌した(合計約20h)。次いで、反応混合物を雰囲気に対して開放し、フィルターとして機能するような非吸水性のコットンウール片を用いて、5mLディスポーザブルシリンジを通して重力下で濾過した。均質な溶離液を100mL分液漏斗に移し、次いで脱イオン水(30mL及び次に10mL)で二回洗浄した。水相を合わせて、次いでジエチルエーテル(約25mL)で洗浄した。次いで、水相を凍結乾燥し、オフホワイト色の固体産物(160mg)を得た。産物はジエチルエーテル及びトルエン相においても見られた。
【0100】
【数5】

【0101】
実施例2
ポリマー複合体化試薬の合成
p−カルボキシ−3−ピペリジノプロピオフェノンヒドロクロライド
250mL一口丸底フラスコにp−アセチル安息香酸(10g)及びピペリシンヒドロクロライド(7.4g)、100mLの無水エタノール及び磁気攪拌バーを加えた。攪拌された不均質混合物に、濃塩酸(1mL)を添加し、次いでその溶液を窒素下において加熱し、還流させた。パラホルムアルデヒド(3.7g)をフラスコに添加し、次いで約1.5h還流を続けた。均質溶液が形成され、これにさらにパラホルムアルデヒド(3.7g)を添加した。加熱を約6h続け、その間さらにパラホルムアルデヒドを添加した(3.7g)。この反応溶液を室温まで冷却し、1週間放置した。冷却した反応混合物の濾過により、白色固体を分離した。非常に熱いメタノール中で溶解した後、その固体を結晶化することを試みた。不溶性産物(1.96g)を濾過により分離し、第二産物(second product)(0.88g)を濾液から結晶化した。両方の産物は、赤外線分光法及び真空中で乾燥させた後の薄層クロマトグラフィー分析により同一であるようであったので、それらを合わせて続く反応に使用した。ATR−FT−IR 1704,1691,1235,760。
【0102】
4−[2,2−ビス[(p−トリルチオ)メチル]アセチル]安息香酸: C2524
50mL一口丸底フラスコにp−カルボキシ−3−ピペリジノプロピオフェノンヒドロクロライド(2.5g)、4−メチルベンゼンチオール(2.1g)、ホルムアルデヒド(37% w/w 水溶液、2.5mL)、エタノール(10mL)、磁気攪拌バー及びピペリシン(約10滴)を添加した。次いで冷却器をフラスコに取り付け、反応溶液を加
熱し、還流させた。次いでメタノール(5mL)を添加した。約2h後、更なるホルムアルデヒド(2.5mL)を添加し、さらに2h加熱を続けた。次に反応フラスコを室温まで冷却し、そこで反応溶液をジエチルエーテル(約150mL)で希釈した。次いで、生じた有機相を水(1N 塩酸を用いてpH 2−3に酸性化した;50mLx2)、水(50mL)及びブライン(75mL)で洗浄し、次に硫酸マグネシウム上で乾燥させた。濾過後、回転エバポレーターで揮発性物質を除去し、固体残渣を得た。その固体を、加熱しながら、主にメタノール及びアセトンの最少容量の混合液中に溶解した。次いで、均質な溶液を一晩フリーザー中に置いてオフホワイト色の結晶を得、これを、真空下での濾過によって分離し、フレッシュなアセトンで洗浄し、次に真空オーブン中で恒量になるまで乾燥した(2.5g)。
【0103】
【数6】

【0104】
4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]アセチル]安息香酸 C2524
250mL丸底フラスコ中で4−[2,2−ビス[(p−トリルチオ)メチル]アセチル]安息香酸(2g)及びオキソン(16.9g)の1:1 v/v メタノール: 水(100mL)懸濁液を16h攪拌した。これにより白色固体懸濁液が得られ、それにクロロホルム(100mL)を添加し、生じた有機相を分液漏斗を用いて分離し、水相を有する白色固体懸濁液を放置した。不均質な水相に、更なる水を均質になるまで添加し(約170mL)、次いで、水相をクロロホルム(75mL)で洗浄した。有機相を合わせ、水(50mLx2、数滴の1N塩酸で酸性化された)及びブライン(50mL)で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして回転エバポレーターを用いて溶媒を取り除き、オフホワイト色の粗製固体産物(2.2g)を得た。非常に熱いエチルアセテート、アセトン及びヘキサンからの再結晶化により、(産物中の1gについて)更なる精製を行い、0.6gの産物を得た:
【0105】
【数7】

【0106】
4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]アセチル]安息香酸とα−メトキシ−ω−アミノPEG(2000g/mol)のカップリング
一口50mLシュレンクフラスコに4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)−メチル]アセチル]安息香酸(100mg)及び磁気攪拌バーを加えた。フラスコを密閉し、強いバキューム(vacuum)を約15分間適用した。アルゴン雰囲気をフラスコ中に導入し、攪拌しながらシリンジによりチオニルクロライド(1mL)を添加した。生じた混合物を50℃にて2h加熱した。次に揮発性液体を真空中で取り除き、黄色のフォームを得た。アルゴン雰囲気をフラスコ中に再び導入し、無水ジクロロメタン(5mL)をシリンジにより添加し、均質な溶液を得た。次いで揮発性液体を真空中で再び取り除い
た。溶媒添加/除去工程を、白色残渣が残るまで繰り返した。無水ジクロロメタン(5mL)を再びシュレンクフラスコに添加し、均質な溶液を形成させた。セプタム及び磁気攪拌バーを備えた25mL丸底フラスコ中で、別々に、O−(2−アミノエチル)−O’−メチルポリ(エチレングリコール)(2,000g/mol)(0.2g)及び無水トリエチルアミン(30μL)をアルゴン雰囲気下において無水ジクロロメタン(5mL)中に溶解した。ビス[(p−トリルスルホニル)−メチル]アセチル]安息香酸を含む反応溶液を、ポリ(エチレングリコール)溶液を含むフラスコ中に一滴ずつ(dropwise fashion)注入すると、すぐに白色気体の発生が起こった。生じた溶液を室温にて一晩中攪拌し、そこでさらなるトリエチルアミン(28μL)を添加した。さらに1h後、反応溶液を、ガラスピペットを通じて素早く攪拌されているジエチルエーテル中に滴下した。沈殿を達成するためには、ジエチルエーテル溶液にヘキサンを添加し、氷浴中でフラスコを静置させることが必要であった。得られた沈殿物を遠心によって分離し、さらに真空オーブン中で恒量になるまで乾燥させ、オフホワイト固体産物(230mg)を得た。更なる精製は、第一に産物をジクロロメタン中に溶解すること及び冷却した攪拌ジエチルエーテル溶液に添加することによる沈殿によって達成された。
【0107】
【数8】

【0108】
4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]アセチル]安息香酸のα−メトキシ−ω−アミノPEG (20,000g/mol)へのカップリング
一口50mLシュレンクフラスコに4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)−メチル]アセチル]安息香酸(100mg)及び磁気攪拌バーを加えた。フラスコを密閉し、強いバキュームを約15分間適用した。アルゴン雰囲気をフラスコ中に導入し、攪拌しながらシリンジによりチオニルクロライド(1mL)を添加した。生じた混合物を50℃にて2h加熱した。フラスコを室温まで冷却した後、揮発性液体を真空中で取り除き、黄色のフォームを得た。アルゴン雰囲気をフラスコ中に再び導入し、無水ジクロロメタン(5mL)をシリンジにより添加し、均質な溶液を得た。次いで揮発性液体を真空中で再び取り除いた。溶媒添加−除去工程を、白色残渣が残るまで繰り返した。最後に、無水ジクロロメタン(5mL)をアルゴン下でフラスコに添加し、均質な溶液を形成させた。
【0109】
別の50mLシュレンクフラスコ中で、O−(2−アミノエチル)−O’−メチルポリ(エチレングリコール)(20,000g/mol)(0.5g)を、アルゴン雰囲気において4mLの無水トルエン中に溶解し、次いでその溶液を真空中で乾燥するまで蒸発させた。得られた白色残渣を、3h真空中で保ち、次いでアルゴン雰囲気中で無水ジクロロメタン(5mL)中に溶解した。
【0110】
ポリ(エチレングリコール)溶液(これは、攪拌され、氷水浴中で冷却されている)にビス[(p−トリルスルホニル)−メチル]アセチル]安息香酸の反応溶液をゆっくり滴下した。添加が完了した後、40μLの乾燥トリエチルアミンを、得られた溶液中にゆっくり滴下した。トリエチルアミンを添加したら、生じた溶液を一晩攪拌し、室温まで温めた。
【0111】
次いで反応溶液を、0.45μmフィルターを通して濾過し、揮発性液体を溶離液から取り除き、僅かに黄色/オレンジ色の残渣を得、これを温かいアセトン(10mL)に再溶解させた。得られた均質溶液を含有するフラスコを氷水浴中に置き、攪拌下に沈殿を生
じた。白色沈殿物を、no.3焼結ガラス漏斗で分離し、冷却したフレッシュなアセトン(約30mL)で洗浄した。分離した固体を真空中で乾燥させ、0.4gの白色固体を得た。
【0112】
【数9】

【0113】
α−メトキシ−ω−4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)−メチル]アセチル]ベンズアミド ポリ(エチレングリコール)複合体化試薬(20,000g/mol)(0.4g)を、アセトニトリル:水(24:1v/v,2mgヒドロキノン)の10mLのアルゴンパージされた混合物中に溶解し、その溶液を0.45μmPPフィルターを通して濾過した。溶離液を丸底フラスコ中でアルゴン下に置き、トリエチルアミン(50μL)を攪拌しながら添加した。次いでフラスコを、攪拌しながら20h、30℃油浴中に置き、その後フラスコを室温まで冷却し、揮発性液体を真空中で取り除いた。得られた残渣を温かいアセトン(10mL)中に溶解し、均質になったら溶液を氷水浴中に置き、そこで溶液を攪拌しながら沈殿を生じた。白色沈殿物をno.3焼結ガラス漏斗で分離し、冷却したフレッシュなアセトン(約30mL)で洗浄した。分離した固体を真空下で乾燥させ、0.3gの白色固体を得た。
【0114】
【数10】

【実施例2】
【0115】
4−メチルベンゼンチオールとα−メトキシ−ω−4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]アセチル]ベンズアミド ポリ(エチレングリコール)の反応
ポリマー複合体化試薬、α−メトキシ−ω−4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]アセチル]ベンズアミド ポリ(エチレングリコール)(2000g/mol)(30mg,12.1μmol,1eq.)及び4−メチルベンゼンチオール(3mg,24.2mmol,2eq.)を重水素化されたクロロホルム(約0.75mL)中に溶解した。次いで、均質な溶液にトリエチルアミン(1.7μL,12.1μmol,1eq.)を添加した。反応混合物を攪拌し、H−NMRスペクトルを得た。得られたスペクトルから、4−メチルベンゼンチオールのポリマー複合体化試薬への付加が起こっていることが確認された。同様の反応が、プロパントリオールを用いて行われた。
【実施例3】
【0116】
リボヌクレアーゼAへのポリマー複合体化
15mL遠心チューブ中のリボヌクレアーゼA(30mg)に3mLの8M尿素水溶液、次いで2−メルカプトエタノール(60μL)を添加した。得られた溶液のpHを、10%メチルアミン水溶液でpH8.5に調整した。次いで、反応溶液を約30分間窒素でバブリングした。窒素でのパージングをしつつ、チューブを37℃で5h加熱した。次いで、反応混合物を氷塩水浴中で冷却し、1N HCl:無水エタノール(1:39v/v)の10mLのアルゴンパージされた冷却溶液を反応溶液に添加した。沈殿が生じ、沈殿物を遠心により分離し、次いでさらに10mL分のHCl:無水エタノール混合物で三回
洗浄し、窒素パージされた冷却ジエチルエーテル(2x10mL)で二回洗浄した。各洗浄の後、沈殿物を遠心により分離した。次いで、洗浄した沈殿物を窒素パージされた脱イオン水に溶解し、凍結乾燥し、乾燥固体を得た。リボヌクレアーゼAの部分的還元が確認され、Ellman’s Testを用いて定量した(これにより、タンパク質1分子当たり5.9の遊離チオールが与えられた)。
【0117】
エッペンドルフ中で、部分的に還元されたリボヌクレアーゼA(10.9mg)をアルゴンパージされたpH8アンモニア溶液(500μL)に溶解した。別のエッペンドルフ中で、ポリマー複合体化試薬、ポリ(エチレン)グリコール(2000g/mol)(5mg)から誘導されたα−メトキシ−ω−4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)−メチル]アセチル]ベンズアミドを、また、アンモニア溶液(250μL)に溶解し、得られた溶液をリボヌクレアーゼA溶液に添加した。PEGエッペンドルフを250μLのフレッシュなアンモニア溶液で洗浄し、これをまた主たる反応エッペンドルフに加えた。次に反応エッペンドルフをアルゴン下で密閉し、37℃にて約24h加熱し、次いで室温まで冷却した。次いで冷却した反応溶液を、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分析した。SDS−PAGE実験は、ペギレートされた(pegylated)4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]アセチル]−安息香酸とリボヌクレアーゼAとの反応物と矛盾しなかった。
【実施例4】
【0118】
マウスIgG抗体Fabフラグメントへのポリマー複合体化
0.15M 塩化ナトリウム及び0.005M EDTAを含有するアルゴンパージされた0.02Mリン酸ナトリウムpH6緩衝液中のマウスIgG抗体Fabフラグメント(Abcam Cat. No. AB6668)(0.4mg/mL溶液、240μL)に、室温で、1mMセレノシスタミンジヒドロクロライドのアルゴンパージされた水溶液(4μL)を添加し、続いてトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロライド(TCEP)のアルゴンパージされた水溶液(12μl)を添加した。得られた溶液を直ぐに数秒間ボルテックスし、次いで室温で6min静置した。還元されたFabフラグメントを含有する溶液の2個の5μlサンプルを、更なる分析のために取っておき、残りの溶液を氷水浴中で4min静置した。ポリ(エチレングリコール)(20,000g/mol)(1.6μL、50mg/ml、0.15M塩化ナトリウム、0.005M EDTA及び0.23mMヒドロキノンを含有するアルゴンパージされた0.02Mリン酸ナトリウムpH6緩衝液)から誘導されたα−メトキシ−ω−4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]アセチル]ベンズアミドの氷水浴冷却された溶液を、直ぐにFab溶液に添加し;その溶液を数秒間ボルテックスし、次いで氷水浴中に戻した。さらに1.6μLの複合体化試薬溶液を、全部で6.4μLを添加するまで、2分おきに類似の様式で添加した。全て添加した後、反応溶液を冷蔵庫(<5℃)内に2h置いた。次いで反応溶液のサンプルを、SDS PAGEによる分析のために取っておいた。
【0119】
反応混合物をSEC−HPLC(100μl注入, superpose 12−24
ml column, Amersham biosciences; 溶離剤: 20mM Naホスフェート, 0.15M NaCl pH7.0; 0.25ml/minのフローで100分の定組成溶離; UV検出,210nm)により分析したところ、同じコントロールの反応混合物中には存在していなかったFab−ポリ(エチレングリコール)複合体が示された。SEC−HPLCクロマトグラフィーから分離された画分をSDS−PAGEにより分析し、モノポリ(エチレングリコール)複合体が観察された。
【実施例5】
【0120】
アスパラギナーゼへのポリマー複合体化
pH6.5のアスパラギナーゼ(Sigma)の5mg/ml溶液の100μlサンプ
ルを、900μlの20mMリン酸緩衝液(pH6、0.15M NaCl及び5mM EDTAを含む)で希釈した。次いでDL−ジチオレイトール(DTT、15.4mg)を添加し、得られた溶液を室温にて放置した。2h放置した後、その溶液を、20mMリン酸緩衝液(pH6、0.15M NaCl及び5mM EDTAを含む)で平衡化したPD−10カラム(Sephadex(登録商標)G−25M、Pharmacia Biotech)で精製した。カラムを1ml分のフレッシュな緩衝液で溶出した。還元されたタンパク質を含有する2の画分を、280nmにおけるUV分光法を用いて同定した。これらの画分を遠心濾過装置(MWCO 3,000;Microcon)を用いて約270μlの体積まで濃縮し、次いで、フレッシュなpH6のリン酸緩衝液(更に、0.23mMのヒドロキノンを含有する)で1mlまで希釈した。2個の5μlサンプルをSDS PAGEによる後の分析のために取っておいた。別に、ポリ(エチレングリコール)(20,000g/mol)から誘導されたα−メトキシ−ω−4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]アセチル]ベンズアミドの複合体化試薬溶液の50mg/ml溶液を同じリン酸緩衝液で調製し、5分間タンパク質溶液と共に氷水浴中に置いた。次いで該タンパク質溶液に58μlの複合体化試薬溶液を添加し、数秒間のボルテックス後、反応溶液を冷蔵庫(<5℃)に置いた。コントロール反応は、また、同じ条件下及びスケールにおいて行ったが、還元されていないアスパラギナーゼを用いた。成功したポリ(エチレングリコール)のアスパラギナーゼへの複合体化は、2h後反応溶液から採ったサンプルを用いて行ったSDS PAGE(コロイドブルー染色を用いる4−12%Bis−Tris Gel)により確認された。アスパラギナーゼをDTTと反応させなかったコントロール反応液から採ったサンプルについては、SDS PAGEによって、複合体化バンドが観察されなかった。
【実施例6】
【0121】
インターフェロンへのポリマー複合体化
150μlの緩衝液(リン酸ナトリウム0.02M;NaCl 0.15M;EDTA
0.005M;アルゴンパージされた脱イオン水中pH6.0)で希釈された100μlインターフェロンα−2b(Shantha Biotechnics)(1mg/ml)の溶液を、セレノシスタミン(アルゴンパージされた脱イオン水中1mM、2当量)及びTCEP(アルゴンパージされた脱イオン水中1mM、5当量)の添加によって、部分的に還元した。タンパク質溶液を4℃まで冷却した。ポリ(エチレングリコール)(20,000g/mol)から誘導された複合体化試薬α−メトキシ−ω−4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]アセチル]ベンズアミドを緩衝液(50mg/ml)に溶解し、4℃に冷却し、16μlをタンパク質溶液に添加した。反応混合物をボルテックスし、4℃にて2hインキュベートした。反応混合物の非イオン性成分を、カチオン交換クロマトグラフィー(Hitrap SP FF 1ml colum, Amersham biosciences)によって、以下の2つの緩衝液を使用して除去した:(A)25mM Naアセテート pH4.0及び(B)25mM Naアセテート+0.7M NaCl pH4.0。カラムを緩衝液A(5.0ml)、次いで緩衝液B(5.0ml)で洗浄し(1ml/min)、次いで10mlの緩衝液A(10ml)で平衡化した。複合体をカラムにロードし(200μl)、次いで緩衝液A(500μl)とローディング画分(0.5ml)を回収した。カラムを5mlの緩衝液Aで洗浄し、画分を回収した。サンプルを緩衝液B(10ml)でカラムから溶出し、画分を回収した。分光法(UV、280nm)を用いてタンパク質を含む画分を決定し、次いでこれらの画分を、サイズ排除クロマトグラフィー(100μl注入, superose 12−24 ml column, Amersham biosciences; 溶離剤:
20mM Naホスフェート, 0.15M NaCl pH7.0; 0.25ml/minのフローで100分間の定組成溶離; UV検出,210nm)により、分離された画分に精製した。これらの精製条件から、ネイティブなインターフェロンからのポリ(エチレングリコール)インターフェロン複合体の分離のためのベースライン分解能(r
esolution)が得られた。ポリ(エチレングリコール)複合体の複合体化反応及び精製は、SDS−PAGEによって確認された;12%Bis−Trisゲル(SilverQuest Silver Staining; Colloidal Blue
Staining及び過塩素酸0.1M/ BaCl 5%及びI 0.1M 染色)。60μlのリン酸ナトリウム0.02M(NaCl 0.15M、EDTA 0.005M、アルゴンパージされた水中でpH6.0)中のインターフェロン(1mg/ml)溶液(40μl)を、ポリ(エチレングリコール)(20,000g/mol)から誘導された複合体化試薬α−メトキシ−ω−4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]アセチル]ベンズアミドと混合し、緩衝液(50mg/ml)中に溶解し、4℃まで冷却し、16μlをタンパク質溶液に添加した場合には、複合体が観察されなった。この反応混合物をボルテックスし、4℃で2hでインキュベートした。
【0122】
ポリ(エチレングリコール)インターフェロン複合体の各精製画分の濃度を、酵素イムノアッセイによって測定した。同アッセイは、複合体化されているネイティブなインターフェロン、及び、インターフェロンの国際標準NIBSC(UK)サンプルの濃度を測定するためにも利用された。前述したインターフェロンの全フォームについて得られた、再現性があり且つ正確な標準曲線を図1に示す。A549(ヒト肺線維芽細胞)細胞を、96ウェル平底組織培養プレート中に15,000細胞/ウェルでプレーティングした。次いで、NIBSC(UK)からのインターフェロン、複合体化されたネイティブなインターフェロン、及びポリ(エチレングリコール)インターフェロン複合体を別々に細胞に添加し(これを3組作成)、プレートを37℃(5% CO)にて24hインキュベートした。翌日、−80℃にて保存していたストックウイルスから、DMEM/2% FCS中でEMCV(脳心筋炎ウイルス(encephalomyocarditis virus))の希釈標準溶液(working solution)を調製した。インターフェロン又はポリ(エチレングリコール)インターフェロン複合体を含有する培地を除去し、EMCVを含有する培地で置換した。次いで組織培養プレートを37℃にて1hインキュベートし、その後ウイルスを取り除いた。100マイクロリットルのDMEM/10% FCS培地を添加し、プレートを27℃にて16−24hインキュベートした。16h以降、細胞死が開始するときを確認するため、プレートを定期的に読んだ。次いで培地を吸引し、細胞を100μlのリン酸緩衝液で洗浄した。その後、室温にて30分間、50μlのメチルバイオレット溶液[即ち、メチルバイオレット(4%ホルムアルデヒド、0.05%メチルバイオレット2B(Sigma−Aldrich))を添加した。次いで、プレートを100μlの水で洗浄し、空気中で乾燥させた。プレートリーダーを用いて、分光光度測定法による吸光度を570nmにて測定した。図2より、複合体化に使用されたインターフェロンが国際標準NIBSC(UK)インターフェロンと同等の活性を有していることが確認できる。図3から、複合体化に使用されたネイティブなインターフェロンが、ポリ(エチレングリコール)複合体化試薬での暴露を除く全ての化学及び精製プロセスにかけられた後も、同等の生物学的活性を維持していたことが確認される。図4から、複合体に使用されたネイティブなインターフェロン及び精製ポリ(エチレングリコール)インターフェロン複合体が、同等の生物学的活性を維持していたことが確認される。
【0123】
インターフェロン−α 2bによる2’5’−オリゴアデニレートシンテターゼ(2’,5’−OAS)及びプロテインキナーゼR(PRKR)mRNAの誘導を測定した。精製ポリ(エチレングリコール)インターフェロン複合体及びネイティブなインターフェロン−α 2bのサンプルを評価した。200万のMOLT4細胞/ウェルを、37℃にて24h、酵素イムノアッセイを用いて測定された5000pgの各インターフェロンサンプルを含む24ウェル組織培養プレート中で、インキュベートした。全RNAを抽出し(RNA II Isolation kit, Macheray−Nagel)、次いで200ngを最終容量20μLで逆転写に供した(Sigma, AMV reverse transcription kit)。サンプルを水で4倍に希釈し、2μLの
各サンプルを20μLのreal−time PCR quantitation mix (Sigma SybrGreen ReadyMix)中で増幅させた。
【0124】
使用されたプライマーは、以下であった:
【0125】
【数11】

【0126】
2’,5’−OAS増幅については、94℃にて5分間酵素活性化の後、94℃にて5秒間の変性、60℃にて2秒間のアニーリング、及び72℃にて8秒間の伸長を48サイクル行った。PRKR増幅については、サンプルを94℃にて5分間活性化した後、94℃にて5秒間の変性、59℃にて2秒間のアニーリング、及び72℃にて8秒間の伸長を48サイクル行った。増幅の最後に、生成物の融解曲線分析を行った。下記式を用いて、コントロールの未処理細胞と比較して、誘導されたmRNAレベルの定量を行った:−
相対増加量=2−(Ctサンプル−Ctコントロール)
ここで、Ctは閾値交差値(threshold cross-over value)である。
図5、図5(a)は、インターフェロンで誘導可能な2’5’−オリゴアデニレートシンテターゼ(2’,5’−OAS)遺伝子のリアルタイム定量的RT−PCR(2段階)分析を示し、図5(b)は、インターフェロンで誘導可能なプロテインキナーゼR(PRKR)遺伝子のリアルタイム定量的RT−PCR(2段階)分析を示す。結果から、ポリ(エチレングリコール)インターフェロン−α2b複合体が、ネイティブなペギレーションされていないインターフェロン−α 2bと同様のレベルにまで、2’5’−オリゴアデニレートシンテターゼ(2’,5’−OAS)及びプロテインキナーゼR(PRKR)mRNA合成を刺激していることが確認される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

ここで、
X及びX’のうち一方はポリマーを表し、他方は水素原子を表し;
各Qは、独立して、連結基を表し;
Wは、電子求引部分、又は、電子求引部分の還元によって調製可能な部分を表し;
或いは、X’がポリマーを表す場合、X−Q−W−は、一緒になって、電子求引基を表し得;さらに、Xがポリマーを表す場合、X’及び電子求引基Wは、介在する原子とともに環を形成してもよく;
及びZの各々は、独立して、生物学的分子に由来する基を表し、その各々は、A及びBに求核部分を介して連結され;或いは、Z及びZは、一緒になって、A及びBに2つの求核部分を介して連結される生物学的分子に由来する単一の基を表し;
Aは、C1−5アルキレン又はアルケニレン鎖であり;且つ、
Bは、結合又はC1−4アルキレンもしくはアルケニレン鎖である、
の化合物。
【請求項2】
ポリマーX又はX’が、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド又はポリメタクリルアミド、HPMAコポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアミド、ジビニルエーテル−無水マレイン酸又はスチレン−無水マレイン酸のコポリマー、ポリサッカライド、或いは、ポリグルタミン酸である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
各連結基Qは、独立して、直接結合、アルキレン基、又は、必要に応じて置換されたアリールもしくはヘテロアリール基(そのいずれかが、1又はそれ以上の酸素原子、硫黄原子、−NR基(ここで、Rは、アルキル又はアリール基を表す)、ケト基、−O−CO−基及び/又は−CO−O−基により終結又は中断されてもよい)を表す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
Wは、ケト又はアルデヒド基CO、エステル基−O−CO−又はスルホン基−SO−、又は、このような基の還元により得られる基を表し、或いは、X−Q−W−は、一緒になって、シアノ基を表す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
及びZは、一緒になって、単一の生物学的分子を表す、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
及びZの各々、或いは、Z及びZが一緒になってタンパク質を表す、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
該又は各タンパク質が、チオール基を介してA及びBに連結している請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記チオール基が、ジスルフィド架橋の部分還元によって生成されたものである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物の調製方法であって、
(i)下記一般式の化合物
【化2】

(ここで、
X及びX’のうち一方はポリマーを表し、他方は水素原子を表し;
Qは、連結基を表し;
W’は、電子求引基(例えば、ケト基、エステル基−O−CO−又はスルホン基−SO−)を表し; 或いは、X’がポリマーを表す場合、X−Q−W’は、一緒になって、電子求引基を表してもよく;
Aは、C1−5アルキレン又はアルケニレン鎖を表し;
Bは、結合又はC1−4アルキレンもしくはアルケニレン鎖を表し、そして、
各Lは、独立して、脱離基を表す)、
或いは(ii)下記一般式の化合物
【化3】

(ここで、
X、X’、Q、W’、A及びLは、一般式IIについて与えられる意味を有し、さらに、Xがポリマーを表す場合、X’及び電子求引基Wは、介在する原子とともに環を形成し、mは、整数1〜4を表す)
のいずれかを、一般式ZNu又はZNuの化合物、或いは、式Z(Nu)の化合物(ここで、Zは生物学的分子を表し、各Nuは独立して求核基を表す)と反応させることを包含する、方法。
【請求項11】
該又は各脱離基Lは、−SR、−SOR、−OSOR−、−N、−NHR、−NR、ハロゲン、又は−OΦ(ここで、Rは、アルキル又はアリール基を表し、Φは、少なくとも1の電子吸引置換基を含む置換アリール基を表す)を表す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項10又は請求項11のいずれかに記載される、一般式II又はIIIの化合物。
【請求項13】
薬学的に許容される担体とともに、請求項1〜9のいずれか1項に記載される生理学的に
許容される化合物を含有する、薬学的組成物。
【請求項14】
薬剤としての使用のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−21003(P2012−21003A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−170597(P2011−170597)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【分割の表示】特願2006−518372(P2006−518372)の分割
【原出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(503332293)ポリセリックス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】