説明

複合発電システム

【課題】既存の発電プラントをそのまま利用して、且つ燃料電池との複合発電システム
を構成し、発電プラントの効率を向上させる。
【解決手段】複合発電システムは、燃料電池2と発電プラント3とを有する。発電プラント3は、少なくともタービン本体、コンプレッサ部から成るガスタービン部5と、ガスタービンに高温・高圧の燃焼ガスを供給する燃焼部7と、燃料電池に燃料ガスを分配して供給する燃料ガス分配部8と、コンプレッサ部から加圧された酸化剤ガスを分配して燃料電池2に供給する酸化剤ガス分配部10を有する。燃料ガス分配部8および酸化剤ガス分配部10による分配の割合を制御する制御部100であって、発電プラント3と燃料電池2の運転条件に基づいて燃料ガス分配部8における分配量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合発電システムに関し、特に他の発電装置と共に複合発電を行う燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、単独で運転する場合でも高効率運転が可能である。しかし、通常は、発生する熱や排ガスを利用するコジェネレーションシステムを組むことにより、より高効率なシステムとしての利用が考えられている。動作温度の低い固体高分子型やリン酸型の燃料電池では、発生する熱を利用する空調システムや給湯システムを一緒に組む例が、一般的である。一方、動作温度の高い溶融炭酸塩型や固体電解質型の燃料電池では、発生する高温(高圧)の排ガスを用いたガスタービンや蒸気タービンと組み合わせたシステムが提案されており研究が進んでいる。
【0003】
一方で、溶融炭酸塩型や固体電解質型を用いる発電システムは、実績が非常に少ない。そのため、火力発電プラントのように広く普及するまでには至っていない。また、コジェネレーションシステムについては、他の発電方式のシステムの利用が始まった段階であり、燃料電池を利用したシステムの普及には時間がかかる状況に有る。そして、発電プラントの新設はコストが高くつくため、施設の増強(増設)の需要はあっても、新設の需要は少ない。そして、溶融炭酸塩型や固体電解質型を用いる新型プラントの設置は、技術リスクを伴うため、全くの新規設置の需要は少ない。
【0004】
複合発電システムに関連する技術が、特開2000−331698号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−331698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、既存の発電プラントをそのまま利用して、燃料電池との複合発電を構成することが可能な複合発電システムを提供することである。
【0007】
また、本発明の別の目的は、既存の発電プラントの効率を向上させることが可能な複合発電システムを提供することである。
【0008】
また、本発明の別の目的は、既存の発電プラントの信頼性を損なうことなく、燃料電池を併設し、複合発電を行なうことが可能な複合発電システムを提供することである。
【0009】
更に、本発明の別の目的は、低コストで、複合発電を構成することが可能な複合発電システムを提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、既存プラント、あるいは、燃料電池のみを単独で運転することも可能である複合発電システムを提供することである。
【0011】
更に、本発明の他の目的は、発電を停止することなく継続的に行うことが可能である複合発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下に、[発明の実施の形態]で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明の実施の形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0013】
従って、上記課題を解決するために、本発明の複合発電システムは、予め決められた第1の運転条件に最適化されていて、供給される燃料ガスを用いて発電する既設の発電プラント(3、53)と、前記第1の運転条件に影響を与えることなく運転可能で、また予め決められた第2の運転条件で最適化されていて、供給される燃料ガスを用いて発電し、残余の燃料ガスを前記既設の発電プラント(3、53)に供給する新設の燃料電池(4、52)を含む燃料電池部(2、51)と、前記燃料電池部(2、51)と前記発電プラント(3、53)に燃料ガスを供給可能な燃料ガス分配部(8、55)と、前記第1の運転条件と前記第2の運転条件とに基づいて前記燃料電池部(2、51)と前記発電プラント(3、53)に供給される前記燃料ガスの量を決定し、その決定に基づいて前記燃料ガス分配部(8、55)を制御する制御部(100、101)とを具備する。
【0014】
また、本発明の複合発電システムは、前記燃料電池部(2、51)と前記発電プラント(3、53)に酸化剤ガスを供給可能な酸化剤ガス分配部(10、57)を更に具備し、前記制御部(100、101)は、前記第1の運転条件と前記第2の運転条件とに基づいて前記燃料電池部(2、51)と前記発電プラント(3、53)に供給される前記酸化剤ガスの量を決定し、その決定に基づいて前記酸化剤ガス分配部(10、57)を制御する。
【0015】
また、本発明の複合発電システムは、前記発電プラントは、ガスタービン(5)を具備する。
【0016】
更に、本発明の複合発電システムは、前記発電プラントは、更に、排熱回収ボイラ(41)を具備する。
【0017】
更に、本発明の複合発電システムは、前記発電プラントは、ボイラ(54)を具備する。
【0018】
更に、本発明の複合発電システムは、前記燃料電池(4、52)は、固定電解質型燃料電池である。
【発明の効果】
【0019】
発明により、既存の発電プラントをそのまま利用して、且つ燃料電池との複合発電システムを構成し、発電プラントの効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明である複合発電システムの第1の実施の形態の構成を示す図である。
【図2】本発明である複合発電システムにおけるベースプラントの効率と燃料電池トッピングシステムを追設した場合の最大効率との関係を示すグラフである。
【図3】本発明である複合発電システムの第1の実施の形態の他の構成を示す図である。
【図4】本発明である複合発電システムの第2の実施の形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明である複合発電システムの実施の形態に関して、添付図面を参照して説明する。
本実施例において、ガスタービンとの複合発電に使用される複合発電システムを例に示して説明するが、燃料電池との組合せで複合的に発電が可能な他の発電プラントにおいても、適用可能である。
【0022】
(実施例1)
図1は、本発明である複合発電システムの第1の実施の形態の構成を示す構成図である。
図1は、既設のガスタービン関連設備あるいはそれらの改造したものと、新設の燃料電池トッピングシステムとからなる。
新設の燃料電池トッピングシステムは、燃料ガス分配部8、燃料ガスバイパスライン23、燃料電池部2、酸化剤ガス分配部A9、酸化剤ガスバイパスラインA27、酸化剤ガス分配部B10、燃焼ガスバイパスライン30、燃焼ガス混合部11及び制御部100を具備する。ここで、燃料電池部2は、電池用燃料ガスライン22−1〜22−2と電池用酸化剤ガスライン26−1〜26−2と燃料電池本体4とを有する。
【0023】
また、既設のガスタービン関連設備あるいはそれらの改造したものは、燃料ガス供給管21、酸化剤ガス供給管24、ガスタービン部3、酸化剤ガスバイパスラインB28、燃焼部7、燃焼ガスライン31を具備する。ここで、ガスタービン部3は、タービン用酸化剤ガスライン25−1〜25−2とタービン用燃焼ガスライン29−1〜29−2とガスタービン本体5と発電機6とを有する。そして、ガスタービン本体5は、タービン部5−1とコンプレッサ部5−2と駆動軸5−3を含む。
【0024】
従来、燃料電池と、ガスタービンのような既存発電プラントとを組み合わせる複合発電システムは、どちらも設備を新設し、且つ同時に組み合わせて運転することが前提である。従って、装置の設計は、同時運転を前提として最適な設計が成される。
しかし、本発明の複合発電システムにおいては、単独運転を前提として設計されている既設のガスタービン(ガスタービン部3)や蒸気タービンのような発電プラントが対象である。そして、それら既存設備に対して、新規に燃料電池(燃料電池部2)を併設し、高効率な複合発電システムとして運用可能にする点が、従来技術と大きく異なる点である。
【0025】
本発明の複合発電システムは、主に、燃料電池部2及び既存設備への対応機器からなる。そして、燃料電池トッピングシステムを既存の発電システムに付加する(トッピングする)ことにより、既設のガスタービンや蒸気タービンのような発電プラントの発電効率を向上させることが可能となる。また、既存の発電プラントのみの運転又は燃料電池のみの運転が可能であり、継続的な発電を行うことが可能である。加えて、既設の発電プラントに対する改良工事が少なく設置が容易である。
【0026】
図1の各構成について説明する。
燃料ガス供給管21は、燃料ガス分配部8に接続している。そして、図示しない燃料供給部より燃料ガスを燃料ガス分配部8へ供給する配管である。
燃料ガス分配部8は、燃料ガス供給管21と燃料ガスバイパスライン23と電池用燃料ガスライン22−1とに接続している。そして、燃料ガス供給管21から供給された燃料ガスを、燃料電池部2向けとガスタービン部3向け(=燃焼部7向け)とに分配し送出する。分配の割合(量)は、制御部100により制御される。
燃料ガスバイパスライン23は、一端部を燃料ガス分配部8に、他端部を燃焼部7に接続している。そして、燃料ガス分配部8から送出された燃料ガスを燃焼部7へ送る配管である。
【0027】
酸化剤ガス供給管24は、酸化剤ガス分配部A9に接続している。そして、図示しない酸化剤供給部より酸化剤ガスを酸化剤ガス分配部A9へ供給する配管である。
酸化剤ガス分配部A9は、酸化剤ガス供給管24と酸化剤ガスバイパスラインA27とタービン用酸化剤ガスライン25−1とに接続している。そして、酸化剤ガス供給管24から供給された酸化剤ガスを、燃料電池部2向け(但し、ガスタービン部3が停止中の場合)とガスタービン部3向けとに分配し送出する。分配の割合(量)は、制御部100により制御される。
酸化剤ガスバイパスラインA27は、一端部を酸化剤ガス分配部A9に、他端部を酸化剤ガス分配部B10に接続している。そして、酸化剤ガス分配部A9から送出された酸化剤ガスを酸化剤ガス分配部B10に送る配管である。これは、ガスタービン部3が停止し、且つ燃料電池部3が稼動中に、燃料電池へ酸化剤ガスを送るための管である。
【0028】
酸化剤ガス分配部B10は、酸化剤ガスバイパスラインA27とタービン用酸化剤ガスライン25−2と電池用酸化剤ガスライン26−1と酸化剤ガスバイパスラインB28とに接続している。そして、ガスタービン部3が稼動中の場合、タービン用酸化剤ガスライン25−2からの加圧された酸化剤ガスを電池用酸化剤ガスライン26−1へ供給し、運転状況に応じて、一部を燃焼部7へ直接供給する。ガスタービン部3が停止中であって燃料電池部2が動いている場合、酸化剤ガスバイパスラインA27からの酸化剤ガスを電池用酸化剤ガスライン26−1へ供給する。分配の割合(量)は、制御部100により制御される。
酸化剤ガスバイパスラインB28は、酸化剤ガス分配部B10と燃焼部7とに接続されている。そして、酸化剤ガス分配部B10からの酸化剤ガスを燃焼部7へ送る配管である。
【0029】
燃焼部7は、電池用燃料ガスライン22−2と、電池用酸化剤ガスライン26−2と、酸化剤ガスバイパスラインB28と、燃料ガスバイパスライン23とタービン用燃焼ガスライン29−1と燃焼ガスバイパスライン30とに接続している。燃料電池部2からの使用済みの燃料ガスである排燃料ガス(電池用燃料ガスライン22−2経由)、使用済みの酸化剤ガスである排酸化剤ガス(電池用酸化剤ガスライン26−2経由)、酸化剤ガス分配部B10からの酸化剤ガス(酸化剤ガスバイパスラインB28経由、但し、運転状況に応じて)、燃料ガス分配部8からの燃料ガス(燃料ガスバイパスライン23経由、但し、運転状況に応じて)の供給を受けて、それらを燃焼する燃焼装置である。燃焼により形成される高温・高圧の燃焼ガスはガスタービン部3(タービン用燃焼ガスライン29−1経由)へ送出される。ガスタービン部3が停止中の場合には、燃焼ガス混合部11(燃焼ガスバイパスライン30経由)へ送出される。燃焼の制御は、制御部100により行なわれる。
【0030】
燃焼ガスバイパスライン30は、一端部を燃焼部7に、他端部を燃焼ガス混合部11に接続している。そして、燃料電池部2の単独運転時には、燃焼部7で生成した燃焼ガスを燃焼ガス混合部11へ送る配管である。
燃焼ガス混合部11は、燃焼ガスバイパスライン30とタービン用燃焼ガスライン29−2とが接続されている。それらから供給された燃焼ガスをまとめて、燃焼ガスライン31へ送出する。
燃焼ガスライン31は、一端部を燃焼ガス混合部11に接続されている。そこから供給された燃焼ガスを外部あるいは他の設備へ送出するための管である。
【0031】
制御部100は、発電プラント(本実施例では、ガスタービン部3)の運転条件(第1の運転条件)と、燃料電池部2の運転条件(第2の運転条件)とに基づいて、燃料電池部2とガスタービン部3に供給される燃料ガス及び酸化剤ガスの量を決定する。そして、その決定に基づいて燃料ガス分配部8における燃料ガスの分配の制御を行なう。それと共に、酸化剤ガス分配部B10における高温高圧の酸化剤ガスの分配の制御を行なう。また、ガスタービン部3の運転条件に基づいて、燃焼部7の燃焼を制御する。そして、既設のガスタービンの運転と、燃料電池の運転とが、効率良く運転できるように制御を行なう。
【0032】
燃料電池部2は、燃料ガス及び酸化剤ガスにより、電気化学作用で発電を行う燃料電池である。溶融炭酸塩型や固体電解質型の燃料電池である。本実施例では、固体電解質型である。後述の第2の運転条件により、最適な運転(高効率運転)が可能である。
ここで、燃料電池部2の燃料電池本体4は、電池用燃料ガスライン22−1を経由して燃料ガスを供給され、且つ電池用酸化剤ガスライン26−1経由で酸化剤ガスを供給される。そして、燃料電池本体4は、燃料ガス及び酸化剤ガスを用いた電気化学反応により発電を行なう。発電後、使用済みの排燃料ガスを電池用燃料ガスライン22−2経由で、使用済みの排酸化剤ガスを電池用酸化剤ガスライン26−2経由で、それぞれ燃焼部7へ送出する。
【0033】
また、ガスタービン部3は、タービン用酸化剤ガスライン25−1から酸化剤ガスを供給される。そして、コンプレッサ部5−2の回転力により酸化剤ガスを圧縮し高圧とし、タービン用酸化剤ガスライン25−2へ送出する。また、燃焼部7で生成された高温高圧の燃焼ガスを、タービン用燃焼ガスライン29−1経由で供給され、タービン部5−1が回転する。その回転力は駆動軸5−3により、発電機6及びコンプレッサ部5−2へ伝達され、コンプレッサ部5−2が回転し、発電機6が発電する。タービン部5−1から排出された排燃焼ガスは、タービン用燃焼ガスライン29−2経由で燃焼ガス混合部11へ送出される。設計時に、最適な運転条件(あるいは運転範囲:第1の運転条件)が決定されており、それに基づいて運転することにより、最適な運転(高効率運転)が可能である。
【0034】
酸化剤ガスは、酸素を含むガスである。本実施例では、空気である。
燃料ガスは、水素を含むガスや、LNG及びLPGのような炭化水素を含む可燃性のガスである。本実施例では、メタンガスである。
【0035】
ここで、本発明おける燃料の制御の考え方について説明する。
本発明においては、ベースとなる発電プラントに、燃料電池トッピングシステムを追加する。本実施例では、図1に示すように、発電(ベース)プラントとして、ガスタービン(ガスタービンコンバインドサイクル、GTCCのガスタービン)、燃料電池トッピングシステムとして、固体電解質型の燃料電池(以下、「SOFC」という)を追加する。
【0036】
図1を参照して、発電(ベース)プラントであるガスタービン部3で使用している燃料ガスを、通常と同量SOFCへ投入すると、SOFCの出力WSO(W)の分の熱量が、下流側のガスタービン部3で不足する。従って、燃料ガス分配部8へ投入する燃料ガスを増量し、ガスタービン部3において燃料ガスが不足し無いようにする。ガスタービン部3へ(タービン用燃焼ガスライン29−1経由で)投入する燃料(燃焼ガス)の単位時間あたりの発熱量をQとすると、燃料ガス分配部8へ供給される燃料ガスの単位時間あたりの発熱量は、Q=Q+WSO となる。
燃料ガスは、全量をSOFCへ供給しても良いが、SOFCの容量が小さく、充分な燃料ガス流量を確保できない場合を考慮し、SOFCで使用しない分の内、必要に応じて適当な量の燃料ガスを燃料ガスバイパスライン23により燃焼部7へバイパスさせる。そして、排燃料ガス及び排酸化剤ガスの燃焼の追い焚き燃料として用いる。
SOFCに供給する酸化剤ガス(空気)は、ベースプラントであるガスタービン部3の燃焼部7投入前の空気である。SOFCの最大容量はベースプラントが供給可能な空気量で定まる。
なお、概数で述べれば、通常のボイラの場合、投入空気量は理論空気量の1〜1.2倍程度、ガスタービンでは、2〜2.5倍程度であり、SOFCの場合は、現状の研究用モジュールで6.7倍、実証プラントで3.3倍程度である。
【0037】
複合発電システムの効率は、以下の通り計算される。
発電(ベース)プラントの投入発熱量:Q(W)
発電プラントの出力:
=η (1)
発電プラントの発電効率 :η
発電プラントの空気比 :λ
SOFCの出力 :WSO(W)
SOFCの単体効率 :ηSO
SOFCの空気比 :λSO
SOFCの発電プラントに対する出力比:
φ=WSO/W (2)
プラント全体への投入燃料:
Q=Q+WSO (3)
プラント全体の出力 :W+WSO
プラント全体の効率:
η=(W+WSO)/(Q+WSO
=η(1+φ)/(1+φη) (4)
単位燃料発熱量あたりの理論燃焼空気量をmA0((Nm/Hr)/(W))とする。
発電プラントの消費空気量 :λA0(Nm/Hr)
SOFCの消費空気量 :λSOA0SO(Nm/Hr)
SOFCの最大出力容量 :WSO,max(W)
SOFCの最大出力容量時は、発電プラントの空気量を全て使用するので、
λA0=λSOA0SO,max/ηSO (5)
SOFCの最大出力比:
φmax=WSO,max/W
=ηSOλ/ηλSO (6)
従って複合発電システムの最大効率は次式で示される。
プラントの最大効率:
ηmax=(ηλSO+ηSOλ)/(λSO+ηSOλ
(7)
【0038】
図2に、以上をまとめて、発電プラントの発電効率と燃料電池トッピングシステムの追加により得られる最大発電効率の関係を示す。図2は、縦軸は最大発電効率ηmaxであり、横軸は、Base(ベース、発電)プラントの効率ηである。また、グラフ上の曲線の内、実線は発電プラントの空気比λ=3、破線はλ=2、点線はλ=1の場合の曲線である。一点鎖線はη=ηmax(燃料電池トッピングシステムの追設無し)を示す。なお、SOFCの空気比λSO=3.3(実証プラントベース)としている。ボイラの空気比は概略1程度で、発電効率は40%程度、ガスタービンは、2〜3程度で、GTCCの発電効率は、現状最大の50%として、それぞれプロットしている。ボイラへの燃料電池トッピングシステムの追設(実施例2)で約9%、GTCCへの追設(実施例1)で、13〜17%の発電効率の向上を図ることが出来る。
【0039】
SOFCの運転条件(第2の運転条件)でのSOFCの出力(WSO)と、発電プラントの運転条件(第1の運転条件)に必要な投入発熱量(Q)とから求められる上記式(3)の条件(Q=Q+WSO)を満足する、すなわち、(3)式に基づいて、燃料ガスの供給あるいは運転を制御する。そうすると、発電プラントのヒートバランスの変化は無く、発電プラントは運転制御に制限を受けない。すなわち、SOFCの運転条件(第2の運転条件)と、発電プラントの運転条件(第1の運転条件)とが同時に満足されることになる。そして、トッピングSOFCの追設により既存プラントは出力の増大及び効率の向上を果たすことが出来る。
また、プラントの発電効率は、SOFCの出力が増大するにつれて増加するが、最大値は式(6)で規定される。
【0040】
次に、本発明である複合発電システムの第1の実施の形態における動作について、図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、起動の動作について説明する。
1)ガスタービンの起動
燃料ガス:
(i)燃料ガスを、燃料ガス供給管21経由で燃料ガス分配部8へ供給する。供給量は、ガスタービンの従来の起動に際し、初期に供給される燃料ガスの量である。
(ii)燃料ガス分配部8において、全ての燃料ガスを、燃料ガスバイパスライン23を経由して燃焼部7へ供給するように設定する。
酸化剤ガス:
(iii)一方、酸化剤ガスを、酸化剤ガス供給管24経由で酸化剤ガス分配部A9へ供給する。供給量は、ガスタービンの従来の起動に際し、初期に供給される酸化剤ガスの量である。
(iv)酸化剤ガス分配部A9において、すべての酸化剤ガスを、タービン用酸化剤ガスライン25−1経由でガスタービン部3のコンプレッサ部9へ供給するように設定する。
(v)また、コンプレッサ部9を経由した全ての酸化剤ガスを、タービン用酸化剤ガスライン25−2経由で酸化剤ガス分配部B10に送出した後、酸化剤ガス分配部B10において、酸化剤ガスバイパスラインB28を経由して燃焼部7へ供給するように設定する。
以上のように、燃料ガス及び酸化剤ガスについて、100%SOFCをバイパスさせ、発電プラントであるガスタービンへ供給するように設定して、ガスタービンを起動する。100%のバイパスなので、燃料電池を設置していないのと同じである。よって、ガスタービンの起動は、ガスタービンの従来の起動動作を踏襲することが出来る。
2)ガスタービン起動後のSOFCの起動
(vi)酸化剤ガス分配部B10において、SOFCをバイパスする酸化剤ガスの量(酸化剤ガスバイパスラインB28を経由する酸化剤ガス)を少しずつ減少すると共に、SOFCへ供給する酸化剤ガス(電池用酸化剤ガスライン26−1を経由する酸化剤ガス)を徐々に増加させる。
(vii)それに合わせて、燃料ガス分配部8へ供給する燃料ガスの量を少しずつ増加し、増加分をSOFCへ向けて、電池用燃料ガスライン22−1へ送出する。
以上のように、SOFCの起動は、燃料ガス及び酸化剤ガスを除々に増加させて行なう。この起動プロセス自体は、従来のSOFCの起動プロセスと同様に行うことが出来る。すなわち、ガスタービンの運転にほとんど影響を与えることなく、SOFCを起動することが出来る。
【0041】
3)SOFCのみの起動
燃料ガス:
(i)燃料ガスを、燃料ガス供給管21経由で燃料ガス分配部8へ供給する。供給量は、燃料電池の従来の起動に際し、初期に供給される燃料ガスの量である。
(ii)燃料ガス分配部8において、全ての燃料ガスを、電池用燃料ガスライン22−1を経由して燃料電池本体4へ供給するように設定する。
酸化剤ガス:
(iii)一方、酸化剤ガスを、酸化剤ガス供給管24経由で酸化剤ガス分配部A9へ供給する。供給量は、燃料電池の従来の起動に際し、初期に供給される酸化剤ガスの量である。
(iv)酸化剤ガス分配部A9において、すべての酸化剤ガスを、酸化剤ガスバイパスラインA27経由で酸化剤ガス分配部B10へ供給するように設定する。
(v)また、酸化剤ガス分配部B10を経由した全ての酸化剤ガスを、電池用酸化剤ガスライン26−1経由で燃料電池本体4へ供給するように設定する。
排燃料ガス及び排酸化剤ガス:
(vi)燃焼部7に供給された排燃料ガス及び排酸化剤ガスは、燃焼後、全て燃焼ガスバイパスライン30を経由して、燃焼ガス混合部11を介して燃焼ガスライン31経由で外部へ排出する。
以上のように、燃料ガス及び酸化剤ガスについて、100%ガスタービンをバイパスさせ、SOFCへ供給するように設定して、SOFCを起動する。100%のバイパスなので、ガスタービンを設置していないのと同じである。よって、SOFCの起動は、SOFCの従来の起動動作を踏襲することが出来る。
【0042】
4)ガスタービンとSOFCの定常運転
上述の式(3)を満足するように、投入燃料ガスを制御して運転する。すなわち、Q=Q+WSOにおいて、ガスタービンの運転についてはQを制御し、燃料電池の運転についてはWSOを制御する。この制御は、外部から供給する燃料ガスの量、燃料ガス分配部8での燃料ガスの分配、外部から供給する酸化剤ガスの量、酸化剤ガス分配部B10での酸化剤ガスの分配などにより行なわれる。
そうすることにより、ガスタービンは燃料電池トッピングシステムを追設していない場合と同様に、運転の制御に制約を受けず、そのパフォーマンスを十分に発揮することが出来る。燃料電池についても同様に、運転の制約を受けず、燃料電池本来の効率を発揮することが出来る。
【0043】
なお、停止方法については、起動方法の逆を行なえば良いので、その説明を省略する。
【0044】
本発明においては、既存のガスタービンに対して、燃料電池トッピングシステムを導入することにより、ガスタービンの運転制御に影響を与えることなく、容易に発電規模及び発電効率を向上させることが可能となる。
燃料電池の単独運転を考慮し無い場合(ガスタービンの単独運転は考慮)には、図1において、燃料電池部2及びその周辺機器(燃料ガス分配部8、燃料ガスバイパスライン23、酸化剤ガス分配部B10、及び制御部100)の新設(追加)、及び、酸化剤ガスバイパスラインB28(本来ガスタービンの圧縮機−燃焼部勘の配管)、燃焼部7(本来ガスタービンの燃焼部)の改造により、実施可能である。
【0045】
また、図3に示すように、燃焼ガスライン31の先に、排熱回収ボイラ41を設置し、その排燃焼ガスのエネルギーの有効利用を図ることも可能である。
図3において、排熱回収ボイラシステム40は、排熱回収ボイラ41と、蒸気循環ライン47−1〜47−4、蒸気タービン42、発電機43、復水器44、循環ポンプ45、排気塔46からなる。
【0046】
燃焼ガスライン31経由で送出された排燃焼ガスは、排熱回収ボイラ41において、水と熱交換して水蒸気を発生させる。熱交換後の排燃焼ガスは、排気塔46から排気される。
排熱回収ボイラ41で生成した蒸気は、蒸気循環ライン47−1を経由して、蒸気タービン42へ供給される。蒸気タービン42は、供給された蒸気のエネルギーを回転エネルギーとして受け取る。そして、その回転エネルギーを利用して、発電機43を回転させて発電を行なう。
蒸気タービン42を出た蒸気は、蒸気循環ライン47−2を介して、復水器44にて液体の水となる。その後、循環ポンプ45により、蒸気循環ライン47−3から吸い出され、蒸気循環ライン47−4を経由して、排熱回収ボイラ41へ送りこまれる。
【0047】
(実施例2)
次に、本発明である複合発電システムの第2の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図4には、本発明である複合発電システムの第2の実施の形態の構成を示す構成図である。本実施例では、燃料電池トッピングシステムを、火力発電システムに組み合わせる。すなわち、既設の火力発電部53のボイラ部54及びその関連設備に、新設の燃料電池トッピングシステムを組み合わせている。
【0048】
図4を参照して、新設の燃料電池トッピングシステムは、燃料ガス分配部55、燃料ガスバイパスライン62、燃料電池部51、燃料ガス混合部56、酸化剤ガス分配部57、酸化剤ガスバイパスライン65、酸化剤ガス混合部58、より構成されている。また、燃料電池部51は、電池用燃料ガスライン60−1〜60−2、燃料電池本体52、電池用酸化剤ガスライン61−1〜61−2及び制御部101を具備する。
【0049】
一方、既設の火力発電部53のボイラ部54及びその関連設備あるいはそれらを改造したものは、ガス供給管59、ボイラ用燃焼ガスライン63、酸化剤ガス供給管64、ボイラ用酸化剤ガスライン66及び、火力発電部53を具備する。そして、火力発電部53は、ボイラ部54を有する。
【0050】
燃料ガス供給管59は、燃料ガス分配部55に接続している。そして、図示しない燃料供給部より燃料ガスを燃料ガス分配部55へ供給する配管である。
燃料ガス分配部55は、燃料ガス供給管59と燃料ガスバイパスライン62と電池用燃料ガスライン60−1とに接続している。そして、燃料ガス供給管59から供給された燃料ガスを、燃料電池部51向けと火力発電部53向け(=燃焼ガス混合部56向け)とに分配し送出する。分配の割合(量)は、制御部101により制御される。
燃料ガスバイパスライン62は、一端部を燃料ガス分配部55に、他端部を燃焼ガス混合部56に接続している。そして、燃料ガス分配部55から送出された燃料ガスを燃焼ガス混合部56へ送る配管である。
燃料ガス混合部56は、燃料ガスバイパスライン62と、電池用燃料ガスライン60−2と、ボイラ用燃焼ガスライン63に接続されている。そして、燃料ガス分配部55と燃料電池部51とから供給された燃料ガスを混合し、ボイラ用燃焼ガスライン63へ送出する。
ボイラ用燃焼ガスライン63は、一端部を燃料ガス混合部56に、他端部をボイラ部54に接続されている。そして、燃料ガス混合部56からの燃料ガスをボイラ部54へ供給する。
【0051】
酸化剤ガス供給管64は、酸化剤ガス分配部57に接続している。そして、図示しない酸化剤供給部より酸化剤ガスを酸化剤ガス分配部57へ供給する配管である。
酸化剤ガス分配部57は、酸化剤ガス供給管64と酸化剤ガスバイパスライン65と電池用酸化剤ガスライン61−1とに接続している。そして、酸化剤ガス供給管64から供給された酸化剤ガスを、燃料電池部51向けと火力発電部53向けとに分配し送出する。分配の割合(量)は、制御部101により制御される。
酸化剤ガスバイパスライン65は、一端部を酸化剤ガス分配部57に、他端部を酸化剤ガス混合部58に接続している。そして、酸化剤ガス分配部57から送出された酸化剤ガスを酸化剤ガス混合部58に送る配管である。これは、燃料電池部51が停止し、且つ火力発電部53が稼動中に、ボイラ部54へ酸化剤ガスを送るための管である。
酸化剤ガス混合部58は、酸化剤ガスバイパスライン65と電池用酸化剤ガスライン61−2とボイラ用酸化剤ガスライン66とに接続している。そして、火力発電部53が稼動中の場合、酸化剤ガスバイパスライン65及び/又は電池用酸化剤ガスライン61−2からの酸化剤ガスをボイラ用酸化剤ガスライン66へ供給する。
ボイラ用酸化剤ガスライン66は、一端部を酸化剤ガス混合部58に、他端部をボイラ部54に接続している。酸化剤ガス混合部58からの酸化剤ガスを、ボイラ部54へ供給する。
【0052】
燃料電池部51は、燃料ガス及び酸化剤ガスにより、電気化学作用で発電を行う燃料電池である。溶融炭酸塩型や固体電解質型の燃料電池である。本実施例では、固体電解質型である。実施例1で説明した第2の運転条件(式(3))により、最適な運転(高効率運転)が可能である。
燃料電池部51の燃料電池本体52は、電池用燃料ガスライン60−1を経由して燃料ガスを供給され、且つ電池用酸化剤ガスライン61−1経由で酸化剤ガスを供給される。そして、燃料電池本体52は、燃料ガス及び酸化剤ガスを用いた電気化学反応により発電を行なう。発電後、使用済みの排燃料ガスを電池用燃料ガスライン60−2経由で燃料ガス混合部56へ、使用済みの排酸化剤ガスを電池用酸化剤ガスライン61−2経由で酸化剤ガス混合部58へ、それぞれ送出する。設計時に、最適な運転条件(あるいは運転範囲:第1の運転条件)が決定されており、それに基づいて運転することにより、最適な運転(高効率運転)が可能である。
【0053】
火力発電部53は、蒸気により蒸気タービンを回転させて発電機を回転し、発電する発電施設である。図4においては、そのうちのボイラ部54のみを示している。
ボイラ部54は、火力発電の蒸気タービンを回転させるための蒸気を生成する施設である。図中では、ボイラの外形のみを示している。
【0054】
制御部101は、発電プラント(本実施例では、火力発電部53のボイラ部54)の運転条件(第1の運転条件)と、燃料電池部51の運転条件(第2の運転条件)とに基づいて、燃料電池部51と火力発電部53のボイラ部54に供給される燃料ガス及び酸化剤ガスの量を決定する。そして、その決定に基づいて燃料ガス分配部55における燃料ガスの分配の制御を行なう。それと共に、酸化剤ガス分配部57における酸化剤ガスの分配の制御を行なう。そして、既設のボイラの運転と、燃料電池の運転とが、効率良く運転できるように制御を行なう。
【0055】
本発明においては、ベースとなる発電プラントに、燃料電池トッピングシステムを追加する。本実施例では、図4に示すように、発電(ベース)プラントとして、ボイラ(火力発電部53の蒸気タービンを駆動する蒸気を生成するためのボイラ)、燃料電池トッピングシステムとして、SOFCを追加する。
発電(ベース)プラントであるボイラ部54で使用している燃料ガスを、通常と同量SOFCへ投入すると、SOFCの出力WSO(W)の分の熱量が、下流側のボイラ部54で不足する。従って、燃料ガス分配部55へ投入する燃料ガスを増量し、ボイラ部54において燃料ガスが不足し無いようにする。ボイラ部54へ(ボイラ用燃焼ガスライン63経由で)投入する燃料(燃焼ガス)の単位時間あたりの発熱量をQとすると、燃料ガス分配部55へ供給される燃料ガスの単位時間あたりの発熱量は、Q=Q+WSO となる。
燃料ガスは、全量をSOFCへ供給しても良いが、SOFCの容量が小さく、充分な燃料ガス流量を確保できない場合を考慮し、SOFCで使用しない分の内、必要に応じて適当な量の燃料ガスを燃料ガスバイパスライン62により燃料ガス混合部56へバイパスさせる。そして、ボイラ部54の燃焼用の燃料ガスとして用いる。
SOFCに供給する酸化剤ガス(空気)は、ベースプラントのボイラ部54へ投入前の空気である。SOFCの最大容量はベースプラントが供給可能な空気量で定まる。
なお、概数で述べれば、通常のボイラの場合、投入空気量は理論空気量の1〜1.2倍程度であり、SOFCの場合は、現状の研究用モジュールで6.7倍、実証プラントで3.3倍程度である。
【0056】
複合発電システムの効率は、実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【0057】
図2のグラフ及び、既述の図2の説明で示したように、SOFCの空気比λSO=3.3(実証プラントベース)の場合、ボイラ(空気比は概略1程度で、発電効率は40%程度)への燃料電池トッピングシステムの追設で約9%の発電効率の向上を図ることが出来る。
【0058】
SOFCが、上記式(3)の条件を満足すれば、ベースプラントのヒートバランスの変化は無く、ベースプラントは運転制御に制限を受けず、トッピングSOFCの追設により既存プラントは出力の増大及び効率の向上を果たすことが出来る。また、プラントの発電効率は、SOFCの出力が増大するにつれて増加するが、最大値は式(6)で規定される。
【0059】
次に、本発明である複合発電システムの第2の実施の形態の動作について、図面を参照して説明する。
まず、起動の動作について説明する。
1)火力発電部(ボイラ部)の起動
燃料ガス:
(i)燃料ガスを、燃料ガス供給管59経由で燃料ガス分配部55へ供給する。供給量は、ボイラ部54の従来の起動に際し、初期に供給される燃料ガスの量である。
(ii)全ての燃料ガスを、燃料ガス分配部55、燃料ガスバイパスライン62、燃料ガス混合部56及びボイラ用燃焼ガスライン63経由でボイラ部54へ供給するように設定する。
酸化剤ガス:
(iii)一方、酸化剤ガスを、酸化剤ガス供給管64経由で酸化剤ガス分配部57へ供給する。供給量は、ボイラ部54の従来の起動に際し、初期に供給される酸化剤ガスの量である。
(iv)全ての酸化剤ガスを、酸化剤ガス分配部57、酸化剤ガスバイパスライン65、酸化剤ガス混合部58及びボイラ用酸化剤ガスライン66経由でボイラ部54へ供給するように設定する。
以上のように、燃料ガス及び酸化剤ガスについて、100%SOFCをバイパスさせ、ベースプラントであるボイラ部54へ供給するように設定して、ボイラ部54を起動する。100%のバイパスなので、燃料電池を設置していないのと同じである。よって、ボイラ部54の起動は、従来の起動動作を踏襲することが出来る。
2)ボイラ部54を起動後のSOFCの起動
(v)酸化剤ガス分配部57において、SOFCをバイパスする酸化剤ガスの量(酸化剤ガスバイパスライン65を経由する酸化剤ガス)を少しずつ減少すると共に、SOFCへ供給する酸化剤ガス(電池用酸化剤ガスライン61−1を経由する酸化剤ガス)を徐々に増加させる。
(vi)それに合わせて、燃料ガス分配部55へ供給する燃料ガスの量を少しずつ増加し、増加分をSOFCへ向けて、電池用燃料ガスライン60−1へ送出する。この時の燃料は、
以上のように、SOFCの起動は、燃料ガス及び酸化剤ガスを除々に増加させて行なう。この起動プロセス自体は、従来のSOFCの起動プロセスと同様に行うことが出来る。すなわち、ボイラ部54の運転にほとんど影響を与えることなく、SOFCを起動することが出来る。
【0060】
3)SOFCのみの起動
燃料ガス:
(i)燃料ガスを、燃料ガス供給管59経由で燃料ガス分配部55へ供給する。供給量は、燃料電池の従来の起動に際し、初期に供給される燃料ガスの量である。
(ii)燃料ガス分配部55において、全ての燃料ガスを、電池用燃料ガスライン60−1を経由して燃料電池本体52へ供給するように設定する。
酸化剤ガス:
(iii)一方、酸化剤ガスを、酸化剤ガス供給管64経由で酸化剤ガス分配部57へ供給する。供給量は、燃料電池の従来の起動に際し、初期に供給される酸化剤ガスの量である。
(iv)酸化剤ガス分配部57において、すべての酸化剤ガスを、電池用酸化剤ガスライン61−1経由で燃料電池本体52へ供給するように設定する。
排燃料ガス及び排酸化剤ガス:
(v)燃料電池本体52で使用された排燃料ガス及び排酸化剤ガスは、それぞれ電池用燃料ガスライン60−2及び電池用酸化剤ガスライン61−2を経由して、燃料電池本体52から排出される。図4中には示していないが、電池用燃料ガスライン60−2及び電池用酸化剤ガスライン61−2の途中に外部へ排燃料ガス及び排酸化剤ガスを排出するラインを設けておく。そうすることにより、そのラインを経由して、全ての排燃料ガス及び排酸化剤ガスを外部へ排出できる。
以上のように、燃料ガス及び酸化剤ガスについて、100%ボイラ部54に供給されないようにして、SOFCへ供給するように設定して、SOFCを起動する。この場合、ボイラ部54を設置していないのと同じである。よって、SOFCの起動は、SOFCの従来の起動動作を踏襲することが出来る。
【0061】
4)ガスタービンとSOFCの定常運転
上述(実施例1)の式(3)を満足するように、投入燃料ガスを制御して運転する。すなわち、Q=Q+WSOにおいて、ボイラ部54の運転についてはQを制御し、燃料電池の運転についてはWSOを制御する。この制御は、外部から供給する燃料ガスの量、燃料ガス分配部55での燃料ガスの分配、外部から供給する酸化剤ガスの量、酸化剤ガス分配部57での酸化剤ガスの分配などにより行なわれる。
そうすることにより、ボイラ部54すなわち火力発電部53は燃料電池トッピングシステムを追設していない場合と同様に、運転の制御に制約を受けず、そのパフォーマンスを十分に発揮することが出来る。燃料電池についても同様に、運転の制約を受けず、燃料電池本来の効率を発揮することが出来る。
【0062】
なお、停止方法については、起動方法の逆を行なえば良いので、その説明を省略する。
【0063】
本発明においては、既存のガスタービンに対して、燃料電池トッピングシステムを導入することにより、ガスタービンの運転制御に影響を与えることなく、容易に発電規模及び発電効率を向上させることが可能となる。
燃料電池の単独運転を考慮し無い場合(火力発電部の単独運転は考慮)には、図4において、燃料電池2及びその周辺機器(燃料ガス分配部55、燃料ガスバイパスライン62、酸化剤ガス分配部57、酸化剤ガスバイパスライン65、ボイラ用酸化剤ガスライン66、燃料ガス混合部56、酸化剤ガス混合部58及び制御部100)の追加により、実施可能である。
【符号の説明】
【0064】
2 燃料電池部
3 ガスタービン部
4 燃料電池本体
5 ガスタービン本体
5−1 タービン部
5−2 コンプレッサ部
5−3 駆動軸
6 発電機
7 燃焼部
8 燃料ガス分配部
9 酸化剤ガス分配部A
10 酸化剤ガス分配部B
11 燃焼ガス混合部
21 燃料ガス供給管
22−1 電池用燃料ガスライン
22−2 電池用燃料ガスライン
23 燃料ガスバイパスライン
24 酸化剤ガス供給管
25−1 タービン用酸化剤ガスライン
25−2 タービン用酸化剤ガスライン
26−1 電池用酸化剤ガスライン
26−2 電池用酸化剤ガスライン
27 酸化剤ガスバイパスラインA
28 酸化剤ガスバイパスラインB
29−1 タービン用燃焼ガスライン
29−2 タービン用燃焼ガスライン
30 燃焼ガスバイパスライン
31 燃焼ガスライン
40 排熱回収ボイラシステム
41 排熱回収ボイラ
42 蒸気タービン
43 発電機
44 復水器
45 循環ポンプ
46 排気塔
47−1 蒸気循環ライン
47−2 蒸気循環ライン
47−3 蒸気循環ライン
47−4 蒸気循環ライン
51 燃料電池部
52 燃料電池本体
53 火力発電部53
54 ボイラ部54
55 燃料ガス分配部
56 燃料ガス混合部
57 酸化剤ガス分配部
58 酸化剤ガス混合部
59 燃料ガス供給管
60−1 電池用燃料ガスライン
60−2 電池用燃料ガスライン
61−1 電池用酸化剤ガスライン
61−2 電池用酸化剤ガスライン
62 燃料ガスバイパスライン
63 ボイラ用燃焼ガスライン
64 酸化剤ガス供給管
65 酸化剤ガスバイパスライン
66 ボイラ用酸化剤ガスライン
100 制御部
101 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、発電プラントとを有する複合発電システムであって、
発電プラントは少なくともタービン本体、コンプレッサ部から成るガスタービン部と、
前記ガスタービンに高温・高圧の燃焼ガスを供給する燃焼部と、
前記燃料電池に燃料ガスを分配して供給する燃料ガス分配部と、
前記コンプレッサ部から加圧された酸化剤ガスを分配して前記燃料電池に供給する酸化剤ガス分配部を有し、
前記燃料ガス分配部および前記酸化剤ガス分配部による分配の割合を制御する制御部であって、前記発電プラントと前記燃料電池の運転条件に基づいて前記燃料ガス分配部における分配量を制御することを特徴とする複合発電システム。
【請求項2】
前記燃焼部は、前記燃料ガス分配部から燃料ガスの供給を受け、前記酸化剤ガス分配部から酸化剤ガスの供給を受け、前記燃料電池から排燃料ガスおよび排酸化剤ガスの供給を受けることを特徴とする請求項1に記載の複合発電システム。
【請求項3】
前記排燃料ガスは、電池用燃料ガスラインを経由して前記燃焼部に供給され、前記排酸化剤ガスは、電池用酸化剤ガスラインを経由して前記燃焼部に供給されることを特徴とする請求項1に記載の複合発電システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記燃料ガス分配部から燃料ガスバイパスラインを経由して前記燃焼部に燃料ガスを送出し、前記酸化剤ガス分配部から酸化剤ガスバイパスラインを経由して前記燃焼部に燃料ガスを送出するように制御していることを特徴とする請求項1乃至3に記載の複合発電システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記発電プラントの運転条件と前記燃料電池の運転条件に基づいて、前記発電プラントおよび前記燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスの量を決定し、前記燃料ガス分配部および前記酸化剤ガス分配部に対して分配の制御を実施することを特徴とする請求項1乃至4に記載の複合発電システム。
【請求項6】
前記制御部は、単位時間当たりの前記発電プラントの発熱量Qに単位時間当たりの前記燃料電池の発熱量WSOを加えて供給することを特徴とする請求項1乃至4に記載の複合発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−40611(P2013−40611A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−208864(P2012−208864)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【分割の表示】特願2001−220492(P2001−220492)の分割
【原出願日】平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【Fターム(参考)】