説明

複合粒子及びその製造方法、並びに、それを用いた発光デバイス

【課題】従来にない新規な複合粒子を提供する。
【解決手段】複合粒子は、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素の存在下で、蛍光体粒子と超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解する有機化合物とを接触させた後、該超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を除去して製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体粒子と有機化合物との複合粒子及びその製造方法、並びに、それを用いた発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体粒子に表面処理を施すことは公知である。
【0003】
特許文献1には、例えばフッ化物の物理蒸着によって蛍光体粒子を被覆するようにフッ素含有プレコーティングを形成し、得られたコーティング付き蛍光体粒子をペースト状にして基板上の隣接するリブの間に塗布して蛍光体層を形成することによりプラズマディスプレイパネル(PDP)を製造すること、並びに、蛍光体粒子の表面の少なくとも一部にフッ素添加シリコン酸化物及びシリコン酸化膜を順次堆積させることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、支持体、及び、その上に設けられた輝尽性蛍光体とこれを含有支持する結合剤とからなる輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルであって、輝尽性蛍光体層がシリコーン系カップリング剤により予め表面処理された輝尽性蛍光体を含有するものが開示されている。
【0005】
特許文献3には、支持体と、この上に設けられた輝尽性蛍光体の粒子を分散状態で含有支持する結合剤からなる蛍光体層とを有する放射線像変換パネルであって、輝尽性蛍光体粒子がシリコーンオイルにより表面処理され、次いで酸素存在下で加熱されることにより形成されたシロキサン結合を主骨格とする重合物により被覆されているものが開示されている。
【0006】
特許文献4には、輝尽性蛍光体を結合剤中に分散してなる蛍光体層を有する放射線画像変換パネルであって、輝尽性蛍光体は、アスペクト比が1以上5以下で、かつ、フッ素を含む化合物で表面処理された輝尽性蛍光体粒子として、層中に含有されているものが開示されている。
【0007】
特許文献5には、フッ素を含む化合物とシランカップリング剤とで輝尽性蛍光体粒子を表面処理することが開示されている。
【0008】
特許文献6には、プラズマディスプレイに用いられる蛍光体層において、青色蛍光体のBa原子を含有する層(Ba−O層)側面に選択的に酸化物あるいは弗素を含有する酸化物をコーティングすることが開示されている。
【0009】
特許文献7には、ZnO:Zn蛍光体の表面に、低速電子線が通過して蛍光体に到達しうる厚さに設定されたSiO2 によりAuコロイド粒子が分散した状態で固着された白色発光蛍光体が開示されている。
【0010】
特許文献8には、蛍光体表面の一部もしくは全体にアルギン酸塩、スターチもしくはセルロースが架橋されたアルキノールアミン塩を有するポリマーを水溶性バインダを介して被覆してなるものが開示されている。
【0011】
以上に開示されている蛍光体粒子の表面処理は、PVD法、CVD法或いは溶剤を用いた方法によるものである。
【0012】
特許文献9には、M1-XAl24-X(−0.33≦X≦0.60)で表される組成の化合物で、Mがカルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素からなる化合物を母結晶とした蓄光性蛍光顔料であって、その顔料粒子の表面をシリカでコートすることが開示されている。
【0013】
特許文献10には、アルカリ土類金属酸化物に希土類酸化物をドープさせてなる蓄光性蛍光体を、リン酸塩と混合またはリン酸塩溶液中で接触させた後、加熱処理することが開示されている。
【0014】
特許文献11には、 本発明は、反応器に不活性ガスを導入し、この反応器に蛍光体粒子を装填し、次いでこの反応器を反応温度に加熱し、被覆用前駆体を、蛍光体粒子を前駆体で飽和させるのに充分な時間導入し、その後反応器に前駆体を酸素/オゾン混合物と共に導入し続け、不活性ガス流、酸素/オゾン混合物流及びさらなる前駆体を、蛍光体粒子を被覆するのに充分な時間供給する蛍光体粒子の被覆方法が開示されている。
【0015】
特許文献12には、蛍光体粒子で充填された反応容器中に不活性ガスを導入し、その反応容器を反応温度に加熱し、限定的反応を避けるように反応容器中に窒化物先駆物質を導入し、反応容器中に共反応体を導入し、不活性ガス流、共反応体流および先駆物質の供給を、蛍光体粒子を耐湿性にするに十分の時間維持するエレクトロルミネセンス蛍光体耐湿性粒子の製造方法が開示されている。
【0016】
特許文献13には、各蛍光体粒子が多酸化物被覆を含んでいる実質的に透明な酸化アルミニウムによってカプセル化されたものが開示されている。
【0017】
蛍光体粒子の開示はないが、特許文献14には、容器内で超臨界二酸化炭素の存在下に、超臨界二酸化炭素に溶解しない無機微粒子及び有機微粒子から選ばれた微粒子と有機化合物を接触させた後、容器内を減圧させる、容器内での微粒子と有機化合物の複合化粒子の製造法であって、容器内で超臨界二酸化炭素の存在下に微粒子と有機化合物を接触させた後、容器内を減圧させる際の容器内の温度を二酸化炭素の臨界温度以上に調整することが開示されている。
【0018】
なお、特許文献15には、製造工程中で、一時的に無機蛍光体原料混合物を超臨界流体と接触させる無機蛍光体の製造方法が開示されている。しかしながら、これは、超臨界流体を利用して反応残渣として残る有機物を少なくすることを目的とするものである。
【特許文献1】特開2005−100954号公報
【特許文献2】特開2000−105298号公報
【特許文献3】特公平5−52919号公報
【特許文献4】特開2005−3436号公報
【特許文献5】特開2004−359942号公報
【特許文献6】特開2003−82343号公報
【特許文献7】特開2005−29724号公報
【特許文献8】特開2002−12145号公報
【特許文献9】特開平9−316443号公報
【特許文献10】特開平10−273654号公報
【特許文献11】特開2000−96044号公報
【特許文献12】特開2001−139941号公報
【特許文献13】特表2002−507235号公報
【特許文献14】特許第3457655号公報
【特許文献15】特開2002−20741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本出願の目的は、従来にない新規な複合粒子及びその製造方法、並びに、それを用いた発光デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成する本発明は、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素の存在下で、蛍光体粒子と超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解する有機化合物とを接触させた後、該超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を除去して製造される複合粒子である。
【0021】
そして、この本発明の複合粒子を含んで形成された発光部と、その発光部中の蛍光体粒子に対して蛍光体粒子を発光させる刺激を与える発光刺激源と、を備えることで本発明の発光デバイスが構成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素の存在下で、蛍光体粒子と超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解する有機化合物とを接触させた後、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を除去して製造される、従来にない新規な複合粒子であり、発光デバイスや蓄光性蛍光体に適用した場合に優れた発光特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、実施形態について説明する。
【0024】
本実施形態に係る複合粒子は、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素の存在下で、蛍光体粒子と有機化合物とを接触させた後、その超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を除去して製造されるものである。そして、この複合粒子は、蛍光体粒子と有機化合物とが複合したものであって、蛍光体粒子の表面に有機化合物が存在する構成、具体的には、蛍光体粒子の表面の一部が有機化合物で被覆されたもの、或いは、蛍光体粒子の表面の全部が有機化合物で被覆されて内包されたものである。
【0025】
この複合粒子は、用途等によって異なるが、一般的には、平均粒径が2nm〜1000μmであるのが好ましく 、2nm〜500μmであるのがより好ましく 、2nm〜100μmであるのがさらに好ましい。
【0026】
この複合粒子は、蛍光体粒子と有機化合物とが複合したものであるが、有機化合物1質量部に対して、蛍光体粒子が0.001〜1000質量部であることが好ましく、0.005〜500質量部であることがより好ましく、0.7〜500質量部であることがさらに好ましい。
【0027】
この複合粒子に含まれる蛍光体粒子としては、超臨界二酸化炭素や液化二酸化炭素に溶解しないものであって、例えば、特許第2927279号公報に開示されている(RE1-xSmx3(AlyGa1-y512:Ce蛍光体(但し、0≦x<1、0≦y≦1、REは、Y及びGdから選択される少なくとも一種)、特開平10−163535号公報に開示されている(Zn,Cd)S:Ag,Cl蛍光体、(Zn,Cd)S:Ag,Al蛍光体、(Zn,Cd)S:Cu,Al蛍光体、(Zn,Cd)S:Cu,Cl蛍光体、(Zn,Cd)S:Cu,Au,Al蛍光体、(Y,Gd)3 (Al,Ga)512:Ce,Eu蛍光体の他、機能材料 シーエムシー出版発行 機能材料2004年12月号、特開2001−313417号公報、特開2001−143869号公報、特開2000−244021号公報、特開2000−208822号公報等に開示されている蛍光体の粒子が挙げられる。
【0028】
また、黄色発光する蛍光体粒子としては、例えば、Y3(Al0.8,Ga0.2512:Ce3+、(Y0.8Gd0.23Al512:Ce3+等の蛍光体の粒子が挙げられる。
【0029】
赤色発光する蛍光体粒子としては、例えば、La22S:Eu3+、LiEuxSm1-x28、CaCO3:Ce3+,Mn2+、(ZnCd)S:Ag,Cl、SCESN:Sr−Ca−Si−N:Eu、(Y,Gd)BO3:Eu、Y(P,V)O4:Eu等の粒子が挙げられる。
【0030】
緑色発光する蛍光体粒子としては、例えば、ZnS:Cu,Al,(Au)、(Ba,Mg)Al1017:Eu2+,Mn2+、CaCO3:Ce3+,Tb2+、LiTbW28、Zn2SiO4:Mn、(Ba,Sr,Mg)O・aAl23Mn、(Y,Gd)BO3:Tb等の蛍光体の粒子が挙げられる。
【0031】
青色発光する蛍光体粒子としては、例えば、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu2+、(Ba,Mg)Al1017W:Eu、SrCl(PO43:Eu、CaCO3:Eu2+、BaMgAl1017:Eu等の蛍光体の粒子が挙げられる。
【0032】
蛍光体粒子は、これらのうち単独又は2種以上により構成される。
【0033】
蛍光体粒子は、粒子単独では、平均粒径が2nm〜500μmであるのが好ましく 、2nm〜100μmであるのがより好ましく 、2nm〜50μmであるのがさらに好ましい。
【0034】
この複合粒子に含まれる有機化合物は、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解、分散或いは可塑化するものである。ここで、かかる有機化合物のうち、蛍光体粒子への均一付着の観点から、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解するものが好ましい。また、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解する有機化合物であっても、溶解しない処理温度及び圧力下で用いる場合は、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に分散或いは可塑化する有機化合物となりうる。
【0035】
具体的には、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解する有機化合物としては、例えば、シリコーン系有機化合物、シラン系有機化合物、フッ素系有機化合物等が挙げられる。
【0036】
シリコーン系有機化合物としては、例えば、特開2002−210356号公報や特開2004−82089号公報等に開示されているメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ポリエーテル変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、高級アルコキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、シリコーン変性アクリル樹脂等が挙げられる。
【0037】
シリコーン系有機化合物は、二酸化炭素への溶解が容易であるという観点から、重量平均分子量が500〜500000であることが好ましく、1000〜300000であることがより好ましい。
【0038】
シラン系有機化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0039】
シラン系有機化合物は、二酸化炭素への溶解が容易であるという観点から、重量平均分子量が500〜500000であることが好ましく、1000〜300000であることがより好ましい。
【0040】
フッ素系有機化合物としては、例えば、特開2002−210356号公報や特開2004−82089号公報等に開示されているパーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル含有オリゴマー、パーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩、フルオロシリコーン、パーフルオロアルキル基を有するアクリレート又はメタクリレートの単独重合体又は共重合体、パーフルオロポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらのうち、二酸化炭素への溶解が容易であるという観点から、フルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体、フルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル−長鎖アルキル(メタ)アクリレート共重合体が好ましい。また、二酸化炭素への溶解が容易であると共に蛍光体粒子への吸着が容易であるという観点から、炭素数4以上のパーフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、又は、パーフルオロポリエーテル基を有する(メタ)アクリレートの単独重合体、或いは、この化合物と炭素数8〜22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとの共重合体が最も好ましい。
【0041】
フッ素系有機化合物は、フッ素原子の質量組成比が9〜80質量%であるのが好ましく、20〜70質量%であるのがより好ましく、40〜65質量%であるのがさらに好ましい。また、フッ素系有機化合物は、二酸化炭素への溶解が容易であって、25℃において固体であるという観点から、重量平均分子量が3000〜500000で有ることが好ましく、5000〜300000で有ることがより好ましい。
【0042】
超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に分散或いは可塑化する有機化合物としては、上記のシリコーン系有機化合物、シラン系有機化合物、フッ素系有機化合物の他、例えば、ガラス転移温度(Tg)が72〜105℃であるポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル樹脂、融点(Tm)が108〜136℃であるポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ガラス転移温度(Tg)が80〜100℃であるポリスチレン樹脂、ガラス転移温度(Tg)が70〜87℃であるポリ塩化ビニル樹脂、ガラス転移温度(Tg)が69℃であるポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ガラス転移温度(Tg)が145〜150℃であるポリカーボネート樹脂、ナイロンなどのポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらのうち、ガラス転移温度(Tg)或いは融点(Tm)が50〜150℃であるものが好ましく、50〜130℃であるものがさらに好ましい。なお、上記物性は工業調査会発行「プラスチックス」Vol.51,No.12によるものであり、ガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)はいずれもJIS K 7121:1987の「プラスチックの転移温度測定方法」に基づいた測定結果である。
【0043】
有機化合物が超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素の存在下で蛍光体粒子に対して吸着能を有するものであれば、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を容器内から排出する際の有機化合物の容器内からの漏出、有機化合物の単体粒子の形成、及び、有機化合物の容器壁面等への析出や付着が抑制される。
【0044】
そのような吸着能を有する有機化合物は、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解或いは分散すると共に、蛍光体粒子の表面に吸着を開始し、溶解或いは分散する温度及び圧力を保持して溶解度の変化がない条件下においても蛍光体粒子の表面への吸着が進行する。
【0045】
かかる吸着能を有する有機化合物としては、例えば、分子内に親水基と疎水基とを有する物質、疎水・疎油基及び親水基、又は、疎水・疎油基及び親油基を分子内に有する界面活性物質等が挙げられる。これらの物質は、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素と蛍光体粒子との界面に存在容易なものである。疎水・疎油基としては、例えば、炭化フッ素基などフッ素原子を1つ以上有する基等が挙げられる。
【0046】
界面活性物質としては、例えば、公知の陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子乳化分散剤、その他極性有機化合物等が挙げられる。
【0047】
陰イオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、半硬化牛脂肪酸ナトリウム、半硬化牛脂肪酸カリウム、オレイン酸カリウム、ヒマシ油カリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ソーダ、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルリン酸ジエタノールアミン、アルキルリン酸カリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0048】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロリド、ステアリルアミンオレエート、ステアリルアミンアセテート、ステアリルアミン酸等が挙げられる。
【0049】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0050】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、レシチン、ラウリルアミノプロピオン酸、アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。
【0051】
高分子乳化分散剤としては、例えば、アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸系共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール或いはその誘導体、ポリアクリルアミド、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物の酸化エチレン付加物などの合成高分子化合物、グアヤガム、カラヤガム、トラガントガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、カゼインなどの天然高分子化合物等が挙げられる。
【0052】
また、蛍光体粒子への吸着能を有する有機化合物としては、例えば、上記に列挙したシリコーン系有機化合物やフッ素系有機化合物、エーテル−カルボネート共重合体等の高分子化合物も挙げられる。シリコーン系有機化合物やフッ素系有機化合物は、複合粒子製造時に、助溶媒が不要であるか、或いは、少量の使用でよいので、複合粒子への助溶媒の残存が無い、或いは、極めて少なくなるので好ましい。
【0053】
有機化合物は、これらのうち単独又は2種以上により構成される。
【0054】
有機化合物は、蛍光体粒子の表面上での厚さが0.1nm〜500μmであることが好ましく、0.5nm〜100μmであることがより好ましく、1nm〜50μmであることがさらに好ましい。
【0055】
この複合粒子は、その他の任意成分として、有機又は無機の顔料或いは光散乱粒子等が含まれていてもよい。
【0056】
次に、この複合粒子の製造方法について説明する。
【0057】
この複合粒子は、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素の存在下で、蛍光体粒子と有機化合物とを接触させた後、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を除去することにより製造することができる。
【0058】
ここで、超臨界二酸化炭素とは、温度が臨界温度(Tc)以上で且つ圧力が臨界圧力(Pc)以上である超臨界流体の二酸化炭素をいう。超臨界二酸化炭素は、僅かな圧力変化によって密度が急変するという性質を有する。なお、二酸化炭素の臨界温度(Tc)は304.2K、臨界圧力(Pc)は7.38MPaである。
【0059】
一般に、二酸化炭素との親和性が高い例えばシリコーン系有機化合物やフッ素系有機化合物は高圧の二酸化炭素に溶解するが、これを溶質とした場合、温度及び圧力が臨界温度(Tc)及び臨界圧力(Pc)を僅かに越えた状態から圧力を上昇させると、気相の密度が急増して臨界圧力(Pc)を越えた領域で溶質の溶解度が急激に高くなる。これとは逆に、圧力を低下させると、溶質の溶解度が急激に低くなる。従って、減圧操作を行うのみで、溶質を溶解させた超臨界二酸化炭素を、溶質と気体の二酸化炭素とに分離することが可能となる。
【0060】
また、超臨界二酸化炭素に溶解しない有機化合物であっても、温度及び圧力が臨界温度(Tc)及び臨界圧力(Pc)を僅かに越えた状態から圧力を上昇させると、二酸化炭素が有機化合物に溶解或いは吸着することにより有機化合物が膨潤し、その結果、大気圧下におけるガラス転移温度(Tg)以下或いは融点(Tm)以下の温度であっても、有機化合物の可塑性が大幅に増大する。このため、超臨界二酸化炭素に溶解しない有機化合物であっても、超臨界二酸化炭素によって溶融或いは可塑化する。これとは逆に、二酸化炭素の圧力を低下させると、有機化合物に対する二酸化炭素の溶解度を急激に低くなるので、減圧操作を行うのみで、有機化合物と二酸化炭素とを分離することが可能となる。
【0061】
さらに、有機化合物が溶解、分散或いは可塑化可能であれば、超臨界二酸化炭素の代わりに液化二酸化炭素を用いることもできる。但し、有機化合物が溶解する場合には溶質である有機化合物の溶解度を高くすることができる、有機化合物が可塑化する場合には有機化合物への二酸化炭素の溶解度を高くすることができる、また、二酸化炭素の密度を高くすることにより蛍光体粒子の流動性を向上させることができるという観点から、液化二酸化炭素を用いるよりも超臨界二酸化炭素を用いることが好ましい。
【0062】
この複合粒子は、上記の超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を利用した原理を用いて製造されるものである。以下、ステップを追って具体的に説明する。
【0063】
まず、容器内に蛍光体粒子と有機化合物とを仕込む。有機化合物が超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解も分散もしない場合には、例えば、高速流動型混合機等で蛍光体粒子と有機化合物とを予め混合しておき、その攪拌力により有機化合物を蛍光体粒子に物理的に付着させておくことが好ましい。
【0064】
ここで、仕込量は、蛍光体粒子1質量部に対して、有機化合物が0.0001〜500質量部であることが好ましく、0.001〜200質量部であることがより好ましく、0.002〜100質量部であることがさらに好ましい。また、容器は、使用する温度及び圧力に耐えることができ且つ減圧操作を行うためのバルブ等の排気機構を有しているものであればよく、形状や大きさが特に限定されるものではない。但し、容器は超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に蛍光体粒子を分散させると共に有機化合物を溶解、分散或いは可塑化させるための攪拌機構を有するものが好ましい。具体的には、容器としては、例えば、オートクレーブや耐圧セル等が挙げられる。
【0065】
次いで、容器内に二酸化炭素を注入すると共に、有機化合物が溶解或いは分散する温度及び圧力となるまで容器内を昇温及び昇圧し、所定時間その状態を保持する。なお、容器内に気体或いは液体の二酸化炭素を注入供給した後、容器内を所定の温度及び圧力に設定することにより超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を生じさせても、また、所定の温度及び圧力に設定した容器内に超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を注入してもいずれでもよい。有機化合物が超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解も分散もしない場合には、二酸化炭素の存在下で且つ有機化合物のガラス転移温度(Tg)以下或いは融点(Tm)以下の温度条件下で蛍光体粒子が良好な流動状態となるまで容器内に二酸化炭素を導入した後、有機化合物が溶融或いは可塑化する温度まで昇温し、所定時間その状態を保持する。このとき、容器内では、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に蛍光体粒子が分散すると共に有機化合物が溶解、分散或いは可塑化した状態となり、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素中で蛍光体粒子の表面に有機化合物が接触する。
【0066】
ここで、容器内で、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に有機化合物を溶解、分散或いは可塑化させるのを促進するために可塑剤を共存させてもよい(可塑剤は予め仕込んでおく)。そのような可塑剤としては、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解或いは乳化可能であるものが好ましく、例えば、p-メトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、二価アルコールエステル、オキシ酸エステル等が挙げられる。
【0067】
また、有機化合物が二酸化炭素による可塑化を受けにくい場合には、可塑化を促進するためにエントレーナとして人体に無害な助溶媒を共存させてもよい(助溶媒は予め仕込んでおく)。助溶媒としては、極性溶媒が好ましく、例えば、アルコール、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水等が挙げられる。アルコールでは、エタノール、1-プロパノールが好ましく、これらのうちエタノールがより好ましい。
【0068】
超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素と蛍光体粒子と有機化合物との混合物における蛍光体粒子の濃度は、0.01〜70質量%とすることが好ましく。0.01〜40質量%とすることがより好ましく、0.1〜40質量%とすることがさらに好ましく、0.1〜30質量%とすることが最も好ましい。保持温度は、超臨界二酸化炭素を用いる場合、308.15〜473.15Kとすることが好ましく、313.15〜423.15Kとすることがより好ましく、液化二酸化炭素を用いる場合、283.15〜304.15Kとすることが好ましく、293.15〜303.15Kとすることがより好ましい。また、保持圧力は、超臨界二酸化炭素を用いる場合、7.5〜50MPaとすることが好ましく、10〜40MPaとすることがより好ましく、液化二酸化炭素を用いる場合、4〜50MPaとすることが好ましく、10〜40MPaとすることがより好ましい。さらに、保持時間は、1分〜20時間とすることが好ましく、5分〜5時間とすることがより好ましい。
【0069】
容器内は継続して攪拌することが好ましい。これにより蛍光体粒子や複合粒子の流動状態が良好となり、粒子の凝集を抑制することができる。
【0070】
続いて、排気機構を開いて超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を除去して複合粒子を得る。超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を除去して複合粒子を得る方法としては、例えば、容器内を減圧して超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を容器外に排出し、複合粒子を容器内に残留させて得る方法、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素と複合粒子との混合物の全てを容器外に排出し、二酸化炭素が気化して分離することで複合粒子を得る方法が挙げられる。
【0071】
前者の方法では、排気機構(バルブ)を開放して容器内の圧力を大気圧まで減圧し、それによって超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を容器から排出除去されると、有機化合物が吸着能を有する場合には、蛍光体粒子の表面に有機化合物が吸着した複合粒子が容器内にそのまま得られ、有機化合物が吸着能を有さない場合には、蛍光体粒子の表面に有機化合物が沈着或いは固着して複合化した複合粒子が容器内に粉体で得られる。
【0072】
ここで、有機化合物が超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解も分散もしない場合には、粒子の凝集を抑制する観点から、二酸化炭素の存在下での有機化合物のガラス転移温度(Tg)以下或いは融点(Tm)以下の温度に冷却した後に減圧することが好ましい。また、容器内の圧力を大気圧まで減圧するのに要する時間は、装置に依存するが2秒〜20時間が好ましく、5秒〜10時間がより好ましい。なお、減圧過程で二酸化炭素の液相を経由しても、また、経由しなくてもいずれでもよい。但し、蛍光体粒子の平均粒径が20μm以下の場合には、毛細管力による凝集を抑制する観点から、液相を経由しないことが好ましい。二酸化炭素の液相の経由を避けるためには、減圧時の温度を二酸化炭素の臨界温度(Tc=304.2K)以上とすればよく、具体的には、305〜474Kとするのが好ましく、306〜424Kとするのがより好ましい。
【0073】
後者の方法では、排気機構(バルブ)を開放して容器内の圧力を大気圧まで減圧し、それによって混合物を容器から排出すると、瞬時に超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素が気化して除去され、有機化合物が超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素で可塑化する場合には、減圧前の冷却や減圧時の断熱膨張作用による冷却で有機化合物のガラス転移温度(Tg)以下或いは融点(Tm)以下になると蛍光体粒子の表面に有機化合物が固着して複合化した複合粒子が容器外に凝集することなく粉体で得られる。
【0074】
ここで、混合物排出時の容器内の温度及び圧力が臨界温度(Tc)以上で且つ臨界圧力(Pc)以上であり、しかも、混合物が排出される容器外の温度が有機化合物のガラス転移温度(Tg)以下或いは融点(Tm)以下であることが好ましい
以上のように、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を利用した複合粒子の製造では、低温で操作を行うことができるために操作が容易であると共に、二酸化炭素が無害であるために危険性がなく、また、熱処理等を施さなくてもよいために安価であって、製造コストを削減することができるという利点がある。
【0075】
上記複合粒子は、白色LEDやプラズマディスプレイ等の発光デバイスの発光材料として用いられたり、或いは、塗料等に混合される蓄光性蛍光体として用いられる。
【0076】
次に、この複合粒子を用いた発光デバイスについて説明する。
【0077】
発光デバイスは、この複合粒子を含んで形成された発光部と、その発光部中の蛍光体粒子に対して蛍光体粒子を発光させる刺激を与える発光刺激源とを備えて構成される。具体的には、蛍光体粒子の表面に有機化合物が存在するように形成された複合粒子が発光デバイスとしての白色LEDやプラズマディスプレイの発光材料として用いられる。
【0078】
以下、白色LED及びプラズマディスプレイのそれぞれについて説明する。
【0079】
(白色LED)
図1は、白色LED10を示す。
【0080】
この白色LED10は、外形を構成する透明モールド21と電源接続用の第1及び第2リード12,13とを備えている。
【0081】
透明モールド11は、円柱の上面に同外径の半球が載ったような形状の透明樹脂で形成されている。
【0082】
第1及び第2リード12,13は、金属線材で形成されており、透明モールド11内に相互に間隔をおいて軸方向に並行に延びるように埋設され透明モールド11の円柱部分の下面側から外部へと延びている。
【0083】
第1リード12は、透明モールド11内の先端部分がΓ形状に形成されており、その上面に開口側に行くに従って口径が広く形成された有底の凹部14が形成されている。そして、凹部14の底面には、例えば、GaInN活性層をもつGaN系の青色を発光するLEDチップ15が固定されている。また、その凹部14は、LEDチップ15をすっぽり埋設するように黄色発光する蛍光体層(発光部)16が充填されてLEDチップ15が封止されている。
【0084】
LEDチップ15は、上面にアノード電極及びカソード電極を有しており、これらがワイヤ17,18により第1及び第2リード12,13に電気的に接続されている。
【0085】
蛍光体層16は、黄色発光する蛍光体粒子の表面に、例えばシリコーン系有機化合物やフッ素系有機化合物等の有機化合物が存在するように形成された複合粒子が所定濃度に分散した樹脂で形成されている。
【0086】
蛍光体層16を形成するマトリクス樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂を有するポリジメチルシロキサン誘導体、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂等が挙げられる。蛍光体層16は、これらのうち単独又は2種以上の混合物でマトリクスが構成される。蛍光体層16は、蛍光体粒子の表面の有機化合物とマトリクス樹脂とが同一であることが好ましい。
【0087】
黄色発光する蛍光体粒子としては、例えば、(Y,Gd)3(Al,Ga)512:Ce3+、Y3(Al0.8,Ga0.2512:Ce3+、及び、(Y0.8Gd0.23Al512:Ce3+等の粒子が挙げられる。蛍光体粒子は、これらのうち単独又は2種以上の混合物で構成される。
【0088】
この白色LED10では、アノード電極及びカソード電極に順電圧が印加されると、LEDチップ15が青色に発光する。その青色光は、一部が蛍光体層16を透過し、残りは蛍光体層16に含まれる蛍光体粒子に吸収される。青色光を吸収して励起された蛍光体粒子は、より波長の長い黄色に発光する。そして、蛍光体層16を透過した青色光と蛍光体粒子が発光した黄色光とが重なって混合された白色光が外部に出射される。従って、LEDチップ15が蛍光体層16中の蛍光体粒子に対して蛍光体粒子を発光させる刺激を与える発光刺激源を構成している。
【0089】
また、LEDチップ15が紫外光を発するものであり、蛍光体層16が、上記の黄色発光する複合粒子と同様の構成を有する赤色発光する複合粒子、緑色発光する複合粒子、及び、青色発光する複合粒子が分散した樹脂で形成されたものであっても白色LED10が構成される。
【0090】
赤色発光する蛍光体粒子としては、例えば、La22S:Eu3+、LiEuxSm1-x28、CaCO3:Ce3+,Mn2+、(ZnCd)S:Ag,Cl、及び、SCESN:Sr−Ca−Si−N:Eu等の粒子が挙げられる。赤色発光する蛍光体粒子は、これらのうち単独又は2種以上で構成される。
【0091】
緑色発光する蛍光体粒子としては、例えば、ZnS:Cu,Al,(Au)、(Ba,Mg)Al1017:Eu2+,Mn2+、CaCO3:Ce3+,Tb2+、及び、LiTbW28等の粒子が挙げられる。緑色発光する蛍光体粒子は、これらのうち単独又は2種以上で構成される。
【0092】
青色発光する蛍光体粒子としては、例えば、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu2+、(Ba,Mg)Al1017W:Eu、SrCl(PO43:Eu、及び、CaCO3:Eu2+等の粒子が挙げられる。青色発光する蛍光体粒子は、これらのうち単独又は2種以上で構成される。
【0093】
このタイプの白色LED10では、アノード電極及びカソード電極に順電圧が印加されると、LEDチップ15が紫外光を発光する。その紫外光は、蛍光体層16に含まれる蛍光体粒子に吸収される。紫外光を吸収して励起された蛍光体粒子は、赤色、緑色或いは青色に発光する。そして、蛍光体粒子が発光した赤色光、緑色光及び青色光が重なって混合された白色光が外部に出射される。従って、LEDチップ15が蛍光体層16中の蛍光体粒子に対して蛍光体粒子を発光させる刺激を与える発光刺激源を構成している。
【0094】
この白色LED10は、公知の方法により製造することができる。
【0095】
白色LEDでは、色ムラや輝度ムラを抑えて安定した品質の製品を製造するには、蛍光体層中の蛍光体材料の濃度管理が極めて重要な要素である。ところが、樹脂に蛍光体粒子を混練して分散させた材料で蛍光体層を形成した場合、樹脂への蛍光体粒子の分散が不均一となるために、蛍光体層中の蛍光体粒子の含有量及び濃度管理が困難であり、その結果、発色に色度バラツキが生じるという問題がある。この樹脂への蛍光体粒子の不均一な分散は、樹脂の硬化前に蛍光体粒子が沈降することが主要因である。特に、LEDチップが紫外光を発光し、それを蛍光体層に含まれる赤色発光する蛍光体粒子、緑色発光する蛍光体粒子、及び、青色発光する蛍光体粒子のそれぞれが吸収して発光し、それらの光を混合して出射するタイプの白色LEDでは、蛍光体粒子自体が遮光材となって光の混合が適正に行われず、色ムラや輝度ムラといった不具合が顕著である。
【0096】
しかしながら、上記構成の白色LED10では、蛍光体層16が樹脂に上記複合粒子が分散して形成されており、その複合粒子が蛍光体粒子の表面にシリコーン系有機化合物やフッ素系有機化合物等の有機化合物が存在するものであるので、それと樹脂との相互作用により樹脂への蛍光体材料である複合材料の均一で安定な分散状態が得られ、さらにチキソ剤の増粘効果と相俟って凝集が抑制されてよく再分散し、その結果、色ムラ、輝度ムラ、及び、色度バラツキが有効に抑制されることとなる。
【0097】
(プラズマディスプレイ)
図2は、AC型のプラズマディスプレイ20を示す。
【0098】
このプラズマディスプレイ20は、各々、相互に対向するように設けられた例えばガラス基板で構成された背面側及び前面側透明基板21B,21Fを備えた三電極面放電構造のものである。
【0099】
背面側透明基板21Bには、基板内側に、相互に並行に延びるように電極材料で形成された複数のアドレス電極22が設けられていると共に、それらの複数のアドレス電極22を覆うように絶縁材料で形成された誘電体層23が設けられている。誘電体層23の上には、アドレス電極22間を仕切るように絶縁材料で形成された複数の隔壁24が設けられており、各一対の隔壁24がセルを区画構成している。各セルには、例えばネオンやキセノンからなる放電ガスが充填されている。また、各セルには、一対の隔壁24間に露出した絶縁層表面(アドレス電極22対応部)及び両隔壁24の側面を覆うように蛍光体層(発光部)25R,25G,25Bが設けられている。
【0100】
蛍光体層25R,25G,25Bは、アドレス電極22の配設方向に赤色の蛍光体層25R、緑色の蛍光体層25G、青色の蛍光体層25Bの順に繰り返されるように設けられている。赤色、緑色及び青色の蛍光体層25R,25G,25Bのそれぞれは、単一層で構成されたものであっても、また、表面コーティング層と内部層とを含む複数層で構成されたものであってもよい。そして、各蛍光体層25R,25G,25B或いは少なくともその表面コーティング層は、それぞれの色を発光する蛍光体粒子の表面に例えばシリコーン系有機化合物やフッ素系有機化合物等の有機化合物が存在するように形成された複合粒子で形成されている。
【0101】
赤色発光する蛍光体粒子としては、例えば、(Y,Gd)BO3:Eu、及び、Y(P,V)O4:Eu等の粒子が挙げられる。赤色発光する蛍光体粒子は、これらのうち単独又は2種以上の混合物で構成される。
【0102】
緑色発光する蛍光体粒子としては、例えば、Zn2SiO4:Mn、(Ba,Sr,Mg)O・aAl23Mn、及び、(Y,Gd)BO3:Tb等の粒子が挙げられる。緑色発光する蛍光体粒子は、これらのうち単独又は2種以上の混合物で構成される。
【0103】
青色発光する蛍光体粒子としては、例えば、BaMgAl1017:Eu等の粒子が挙げられる。青色発光する蛍光体粒子は、これらのうち単独又は2種以上の混合物で構成される。
【0104】
前面側透明基板21Fには、基板内側に、アドレス電極22と直交する方向に延びるITO等の透明電極材料で形成された走査電極26及び放電維持電極27が一組となって複数設けられている。また、前面側透明基板21Fには、走査電極26及び放電維持電極27を覆うように絶縁材料で形成された誘電体層28が、さらに、その誘電体層28を被覆するように例えばMgOで形成された保護層29がそれぞれ設けられている。
【0105】
そして、背面側透明基板21Bの赤色、緑色、青色の順に連続した三組の蛍光体層25R,25G,25B及びアドレス電極22と、前面側透明基板21Fの一組の走査電極26及び放電維持電極27との交差部分で一つの画素が規定される。また、各画素は、各々、一組の蛍光体層25R,25G,25B及びアドレス電極22と一組の走査電極26及び放電維持電極27との交差部分で規定される赤色、緑色、青色の三つのサブピクセルで構成されている。
【0106】
このプラズマディスプレイ20では、各サブピクセルにおいて、アドレス電極22にアドレス電流が流されると、走査電極26との間でアドレス放電が起こった後、走査電極26と放電維持電極27との間で維持放電が起こり、放電ガスがプラズマとなって紫外線を発する。その紫外線は、蛍光体層25R,25G,25Bに吸収される。紫外線を吸収した蛍光体層25R,25G,25B中の蛍光体粒子を含む蛍光体材料は、励起されて、赤色、緑色或いは青色に発光する。従って、アドレス電極22等による放電機構が蛍光体層25R,25G,25B中の蛍光体粒子に対して蛍光体粒子を発光させる刺激を与える発光刺激源を構成している。各画素は、赤色、緑色及び青色の各サブピクセルの発光量が制御され、それらが重なって混合された色を発色する。そして、プラズマディスプレイ20は、全画素の発光によって画像を表示する。
【0107】
このプラズマディスプレイ20は、公知の方法により製造することができる。
【0108】
プラズマディスプレイでは、蛍光体層の水分、酸素及びプラズマに対する耐性と共に、紫外線を効率よく発光に活用するために紫外線の高透過性が要求される。
【0109】
上記構成のプラズマディスプレイ20では、蛍光体層25R,25G,25B或いは少なくともその表面コーティング層が上記複合粒子で形成されており、その複合粒子が蛍光体粒子の表面に有機化合物が存在するように形成されたものであるので、蛍光体粒子が有機化合物で保護されて水分等による劣化が起こりにくい。また、屈折率が低い有機化合物であると、蛍光体層25R,25G,25B表面で反射する紫外線の比率が低く高い紫外線透過性が得られ、その結果、紫外線が高効率で蛍光体粒子に吸収されて発光に活用されることとなる。
【実施例】
【0110】
(試験評価サンプル)
図3は、試験評価サンプルを作製するために用いた複合粒子作製装置30を示す。
【0111】
この複合粒子作製装置30は、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素の存在下で、蛍光体粒子と有機化合物とを接触させた後、その超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を除去して複合粒子を製造するためのものである。そして、この複合粒子作製装置30は、そのためのオートクレーブ31(内容量500mL,(株)AKICO社製)を備えている。このオートクレーブ31には、内部を攪拌するための攪拌機32、内部の圧力を計測する内部圧力計33、内部が過圧したときに減圧するための安全弁34、内部の温度を計測する温度計35、及び、内部の温度調節のためのカートリッジヒータ36がそれぞれ設けられている。カートリッジヒータ36は、温度調節器37に電気的に接続されている。
【0112】
オートクレーブ31には、CO2ボンベ38から延びるCO2供給管39が結合している。CO2供給管39には、CO2ボンベ38側からフィルタ40、コンデンサ41、昇圧ポンプ42、第2バルブV2、予熱器43及び第3バルブV3が順に介設されている。CO2供給管39の昇圧ポンプ42と第2バルブV2との間の部位とフィルタ40とコンデンサ41との間の部位は第1バルブV1が介設された圧力調節管44で連結されている。また、CO2供給管39の昇圧ポンプ42と第2バルブV2との間で管が分岐してCO2圧力計45が取り付けられている。さらに、CO2供給管39の第2バルブV2と予熱器43との間で管が分岐して安全弁46が設けられている。また、コンデンサ41に近接してクーラー47が設けられており、クーラー47、コンデンサ41、及び、昇圧ポンプ42の順に循環するように連結した冷媒循環管48が設けられ、その冷媒循環管48を−5℃の冷媒がそれらを循環している。
【0113】
そして、この複合粒子作製装置30では、第2バルブV2を開くと、CO2ボンベ38の二酸化炭素は、CO2供給管39を流通して、まずフィルタ40でゴミ等が除去された後、コンデンサ41で凝縮され、次いで、ポンプヘッドが冷却された昇圧ポンプ42で昇圧され、続いて、予熱器43で予熱され、そして、第3バルブV3を開くと、蛍光体粒子と有機化合物とが予め仕込まれたオートクレーブ31に流入供給されるようになっている。また、昇圧ポンプ42で昇圧され二酸化炭素の圧力はCO2圧力計45で計測でき、その圧力は第1バルブV1の開閉によって調節できるようになっている。さらに、二酸化炭素が過圧したときには安全弁46が開いて減圧するようになっている。なお、気体或いは液体の二酸化炭素をオートクレーブ31に注入供給した後に内部を所定の温度及び圧力に設定することで超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を生じさせることも、また、所定の温度及び圧力に設定したオートクレーブ31内に超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を注入供給することもいずれも可能である。
【0114】
オートクレーブ31からは第1CO2排出管49が延びてバグフィルタ50に結合している。この第1CO2排出管49には、第4バルブV4が介設されていると共に外側を覆うようにヒータ51が設けられている。
【0115】
そして、この複合粒子作製装置30では、オートクレーブ31内において超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素の存在下で蛍光体粒子と有機化合物とを接触させた後、第4バルブV4を開くと、オートクレーブ31内部の超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素が第1CO2排出管49を介して排出されて除去され、オートクレーブ31内に蛍光体粒子と有機化合物との複合粒子が残留して得られるようになっている。また、二酸化炭素の排出に伴って漏出する若干の複合粒子がバグフィルタ50で捕捉されるようになっている。さらに、ヒータ51で加熱することにより第1CO2排出管49の凍結を防止するようになっている。
【0116】
なお、複合粒子作製装置30は、オートクレーブ31から第2CO2排出管52が延びて粒子回収容器53に結合した構造も有している。この第2CO2排出管52には、第5バルブV5が介設されていると共に、外側を覆うようにヒータ54が設けられている。また、第2CO2排出管52には、粒子回収容器53側の先端部に温度計55が設けられていると共に、その先端にノズル56が取り付けられている。
【0117】
そして、この複合粒子作製装置30では、オートクレーブ31内において超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素の存在下で蛍光体粒子と有機化合物とを接触させた後、第5バルブV5を開くと、オートクレーブ31内部の超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素と複合粒子との混合物が第2CO2排出管52を介して排出され、瞬時に超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素が気化して除去され、ノズル56を介して粒子回収容器53内に蛍光体粒子と有機化合物との複合粒子が回収されて得られるようにもなっている。また、温度計55で排出される混合物の温度を計測し、ヒータ54で加熱することにより第2CO2排出管52の凍結を防止するようになっている。
【0118】
なお、以下の実施例に用いた有機化合物が実施例の条件で二酸化炭素に溶解することは事前に確認した。
【0119】
<実施例1>
上記の複合粒子作製装置30のオートクレーブ31内に、蛍光体粒子として、平均粒径が5μmの(Y,Gd)3(Al,Ga)512:Ce3+(以下、「蛍光体粒子1」という。)を10.0gと、有機化合物として、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサンとγ−アミノプロピルメチルシロキサンとの共重合体(以下、「シリコーン系有機化合物1」という。)を0.5gとを仕込んだ。
【0120】
次いで、オートクレーブ31内に二酸化炭素を流入供給し、内部の温度及び圧力をそれぞれ318K及び25MPaに調節して超臨界二酸化炭素を生じさせた後、攪拌機32を250r/minで回転させながら30分間その状態を保持した。
【0121】
その後、攪拌機32の回転数を100r/minに下げ、超臨界二酸化炭素を排出することにより、オートクレーブ31内を13分間かけて大気圧まで減圧した。このとき、二酸化炭素の液相を経由しないように内部の温度調節を行った。具体的には、減圧途中の内部圧力7MPa時のオートクレーブ31内の温度が318Kであり、減圧終了時の温度が308Kであった。
【0122】
そして、以上の操作によりオートクレーブ31内に得られた複合粒子を実施例1とした。
【0123】
<実施例2>
蛍光体粒子1を15.0g仕込み、有機化合物として、熱硬化性シリコーン樹脂(信越化学工業(株)製 商品名:KJR−9032)(以下、「シリコーン系有機化合物2」という。)を0.47g仕込んだ以外実施例1と同様にして作製した複合粒子を実施例2とした。なお、減圧時間は12分間であり、減圧途中の内部圧力7MPa時のオートクレーブ31内の温度が311Kであり、減圧終了時の温度が306Kであった。
【0124】
<実施例3>
蛍光体粒子として、平均粒径5μmの(Ba,Eu)MgAl1017(以下、「蛍光体粒子2」という。)を15.0g仕込み、有機化合物として、シリコーン系有機化合物1を0.45g仕込んだ以外実施例1と同様にして作製した複合粒子を実施例3とした。なお、減圧時間は12分間であり、減圧途中の内部圧力7MPa時のオートクレーブ31内の温度が306Kであり、減圧終了時の温度が303Kであった。
【0125】
<実施例4>
蛍光体粒子2を10.0g仕込み、有機化合物として、シリコーン系有機化合物2を0.30g仕込んだ以外実施例3と同様にして作製した複合粒子を実施例4とした。なお、減圧時間は13分間であり、減圧途中の内部圧力7MPa時のオートクレーブ31内の温度が310Kであり、減圧終了時の温度が300Kであった。
【0126】
<実施例5>
蛍光体粒子として、粒径2〜60μmのSrAl24:Eu,Dy(以下、「蛍光体粒子3」)を3.0g仕込み、有機化合物として、ステアリルメタクリレート・2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート共重合体(質量比2:8)(以下、「フッ素系有機化合物1」という。)を0.09g仕込んだ以外実施例1と同様にして作製した複合粒子を実施例5とした。なお、減圧時間は13分間であり、減圧途中の内部圧力7MPa時のオートクレーブ31内の温度が315Kであり、減圧終了時の温度が308Kであった。
【0127】
<実施例6>
有機化合物として、シリコーン系有機化合物1を0.09g仕込んだ以外実施例5と同様にして作製した複合粒子を実施例6とした。なお、減圧時間は16分間であり、減圧途中の内部圧力7MPa時のオートクレーブ31内の温度が311Kであり、減圧終了時の温度が302Kであった。
【0128】
<実施例7>
蛍光体粒子3を7.0g仕込み、シリコーン系有機化合物1を1.40g仕込んだ以外実施例6と同様にして作製した複合粒子を実施例7とした。なお、減圧時間は14分間であり、減圧途中の内部圧力7MPa時のオートクレーブ31内の温度が316Kであり、減圧終了時の温度が308Kであった。
【0129】
<実施例8>
蛍光体粒子3を7.0g仕込み、フッ素系有機化合物1を1.40g仕込んだ以外実施例5と同様にして作製した複合粒子を実施例8とした。なお、減圧時間は12分間であり、減圧途中の内部圧力7MPa時のオートクレーブ31内の温度が308Kであり、減圧終了時の温度が308Kであった。
【0130】
<実施例9>
蛍光体粒子3を7.0g仕込み、シリコーン系有機化合物2を0.52g仕込んだ以外実施例5と同様にして作製した複合粒子を実施例9とした。なお、減圧時間は11分間であり、減圧途中の内部圧力7MPa時のオートクレーブ31内の温度が310Kであり、減圧終了時の温度が308Kであった。
【0131】
<実施例10>
蛍光体粒子3を8.0g仕込み、有機化合物として、パーフルオロポリエーテル(AUSIMONT社製 商品名:Fomblin HC)(フッ素系有機化合物2)を0.53g仕込んだ以外実施例5と同様にして作製した複合粒子を実施例10とした。なお、減圧時間は13分間であり、減圧途中の内部圧力7MPa時のオートクレーブ31内の温度が312Kであり、減圧終了時の温度が304Kであった。
【0132】
<実施例11>
有機化合物として、ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業(株)社製 商品名:KF96−1000cs)(シリコーン系有機化合物3)を0.52g仕込んだ以外実施例10と同様にして作製した複合粒子を実施例11とした。なお、減圧時間は14分間であり、減圧途中の内部圧力7MPa時のオートクレーブ31内の温度が314Kであり、減圧終了時の温度が308Kであった。
【0133】
<比較例1>
蛍光体粒子1を20.0gとシリコーン系有機化合物2を0.63gとを内容量0.3Lの高速流動型混合機スーパーミキサー((株)カワタ社製、商品名:ピッコロSMP−2)に仕込み、これを3000r/minで回転させて10分間混合することにより得られた混合粉体を比較例1とした。
【0134】
(試験評価方法)
<撥水性>
蛍光体粒子1〜3及び実施例1〜11の複合粒子のそれぞれの撥水性について以下のように試験評価した。
【0135】
蛍光体粒子又は複合粒子約0.3gを錠剤成形持具((株)堀場製作所社製:7mmダイセット)に添加し、オイルミニプレス((株)堀場製作所社製)を用いて圧力約20MPaでペレット化し、これをテストピースとした。そして、各テストピースと水(水滴径約1.5mm)との接触角を接触角測定装置(協和界面科学(株)製:CA−A型)を用いて測定した。それぞれについて測定を3回繰り返し、その平均値を代表値とした。
【0136】
<分散性>
実施例2の複合粒子、比較例1の混合粉体、及び、蛍光体粒子1のそれぞれのシリコーン樹脂に対する分散性を以下のように試験評価した。
【0137】
容量50mLのカップにシリコーン系有機化合物2を20.0gと試料である複合粒子、混合粉体、又は、蛍光体粒子を1.75gとを採り、ペンシルミキサー(アズワン(株)製 攪拌棒3型)で2分間混合した。そして、その混合物をスポイトに採ってアルミカップに塗布した後、150℃で2時間の条件でシリコーン系有機化合物2を硬化させ、その形態観察により分散性を評価した。
【0138】
(試験評価結果)
<撥水性>
表1は、撥水性の評価結果を示す。
【0139】
【表1】

【0140】
これによると、蛍光体粒子1〜3単体では、水との接触角が0°であって撥水性を示さないのに対し、シリコーン系有機化合物又はフッ素系有機化合物による処理を行った実施例1〜11では、いずれも水との接触角が100°以上であって撥水性を示しているのが分かる。
【0141】
<分散性>
図4(a)は実施例2の複合粒子、図4(b)は比較例1の混合粉体、及び、図4(c)は蛍光体粒子1のそれぞれについて、シリコーン樹脂に混合してシリコーン樹脂を硬化させた後の形態を示す。
【0142】
これらによれば、蛍光体粒子1を混合したものや比較例1の混合粉体を混合したものでは凝集物がみられるのに対し、実施例2の複合粒子を混合したものでは凝集物がみられず、複合粒子の分散状態が良好であることが分かる。
【0143】
<蛍光体粒子の性状>
原体蛍光体粒子1〜3に比較して、実施例1〜11の複合粒子は凝集粒子の増加が認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は、蛍光体粒子と有機化合物との複合粒子及びその製造方法、並びに、それを用いた発光デバイスについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】(a)白色LED及び(b)その要部の断面図である。
【図2】プラズマディスプレイの構造を示す斜視図である。
【図3】複合粒子作製装置の構成を示す図である。
【図4】(a)は実施例2の複合粒子、(b)は比較例1の混合粉体、及び、(c)は蛍光体粒子1のそれぞれについて、シリコーン樹脂に混合してシリコーン樹脂を硬化させた後の形態を示す観察写真である。
【符号の説明】
【0146】
10 白色LED
15 LEDチップ(発光刺激源)
16 蛍光体層(発光部)
20 プラズマディスプレイ
25R,25G,25B 蛍光体層(発光部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素の存在下で、蛍光体粒子と超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解する有機化合物とを接触させた後、該超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を除去して製造される複合粒子。
【請求項2】
上記蛍光体粒子と有機化合物との接触を、超臨界二酸化炭素の存在下で行うと共に、上記超臨界二酸化炭素の除去を、二酸化炭素の臨界温度以上の温度下で減圧することにより行うことで製造される請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
白色LEDの発光材料として用いられる請求項1又は2に記載の複合粒子。
【請求項4】
プラズマディスプレイの発光材料として用いられる請求項1又は2に記載の複合粒子。
【請求項5】
蓄光性蛍光体として用いられる請求項1又は2に記載の複合粒子。
【請求項6】
超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素の存在下で、蛍光体粒子と超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解する有機化合物とを接触させるステップと、
上記超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を除去するステップと、
を備えた複合粒子の製造方法。
【請求項7】
超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素の存在下で、蛍光体粒子と超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解する有機化合物とを接触させた後、該超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を除去して製造される複合粒子を含んで形成された発光部と、
上記発光部中の蛍光体粒子に対して該蛍光体粒子を発光させる刺激を与える発光刺激源と、
を備えた発光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−112945(P2007−112945A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307634(P2005−307634)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】