説明

複合部品

【課題】インダクタ部と静電気対策部とを備えながら、インダクタ部の性能の低下を低減する複合部品を得ることを目的としている。
【解決手段】本発明は、下部積層部25と、インダクタ部26と、上部積層部27とを備え、インダクタ部26を構成する第1、第2のコイル16、18の軸は積層方向に一致し、下部積層部25は、一対の電極間に通常は絶縁体として機能し所定以上の電圧が印加されると通電する下部静電気通過部12を有し、上部積層部27は、一対の電極間に通常は絶縁体として機能し所定以上の電圧が印加されると通電する上部静電気通過部23を有し、下部静電気通過部12と上部静電気通過部23は積層方向から透視した際に同じ位置に形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器や電気回路等に用いられる複合部品であって、ノーマルモードノイズフィルタやコモンモードノイズフィルタ等のインダクタ部品と、静電気対策部品などのように過電圧から被保護部品を保護する機能を有するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気回路の高周波化によるノイズ対策が重要になるとともに、電子部品の小型化により静電気に対する耐性が低下し静電気などの過電圧に対する保護が重要になってきた。そのような状況の下、コモンモードノイズフィルタと、このコモンモードノイズフィルタまたはその他の電子部品を静電気から保護するための静電気対策部品とを一つの部品にした複合部品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−294724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の複合部品では、コモンモードノイズフィルタなどのインダクタ部の性能を向上させるためにインダクタ部においては基本的に磁性体層を用い、この磁性体層中を磁束が通過し易くなるようにしている。一方、静電気対策部においては、中空部を形成している。この構成により、空気の透磁率は低いため、この中空部が磁束に影響を与え、インダクタ部の性能が低下してしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するもので、インダクタ部と静電気対策部とを備えながら、インダクタ部の性能の低下を低減する複合部品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0007】
請求項1に記載の発明は、下部静電気対策部が形成された下部積層部と、前記下部積層部上に積層されたインダクタ部と、前記インダクタ部上に積層され上部静電気対策部が形成された上部積層部とを備え、前記インダクタ部を構成するコイルの軸は積層方向に一致し、前記下部静電気対策部は、一対の電極間に通常は絶縁体として機能し所定以上の電圧が印加されると通電する下部静電気通過部を有し、前記上部静電気対策部は、一対の電極間に通常は絶縁体として機能し所定以上の電圧が印加されると通電する上部静電気通過部を有し、前記下部静電気通過部と前記上部静電気通過部は積層方向から透視した際に同じ位置に形成されたものである。
【0008】
請求項1に記載の発明は、この構成により、インダクタ部の性能の低下を減少させながら、静電気対策部を備える複合部品を得ることができるという作用効果を有する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、特に、前記下部静電気通過部および前記上部静電気通過部はともにコイルの軸上に配置されたものである。請求項2に記載の発明は、この構成により、第1の静電気通過部または第2の静電気通過部の存在によるインダクタ部の性能の低下をより減少させることができるという作用効果を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、インダクタ部の性能の低下を減少させながら、静電気対策部を備える複合部品を得ることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における複合部品の分解斜視図
【図2】(a)本発明の実施の形態1における複合部品の正面断面図、(b)本発明の実施の形態1における複合部品の側面断面図
【図3】本発明の実施の形態1における複合部品の電気接続図
【図4】本発明の実施の形態1におけるバリエーション例の複合部品の正面断面図
【図5】比較例における複合部品の正面断面図
【図6】本発明の実施の形態2における複合部品の分解斜視図
【図7】本発明の実施の形態2における複合部品の電気接続図
【図8】本発明の実施の形態3における複合部品の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明の実施の形態1における複合部品の分解斜視図、図2(a)は本発明の実施の形態1における複合部品の正面断面図、図2(b)は本発明の実施の形態1における複合部品の側面断面図、図3は本発明の実施の形態1における複合部品の電気接続図である。
【0013】
絶縁シート1、絶縁シート2、絶縁シート3、絶縁シート4、絶縁シート5、絶縁シート6、絶縁シート7、絶縁シート8、絶縁シート9および絶縁シート10は、シート状のセラミックを焼成して得られた絶縁性能を有するシートである。これらは、全て同じ材質を用いた物であってもよいが、必要に応じて、一部を磁性体とし、残りを非磁性体としてもよい。
【0014】
絶縁シート1の上面側には絶縁シート2が配置され、絶縁シート2上には下部グランド電極11が配置されている。下部グランド電極11は長方形である絶縁シート2の上面における長辺の端部まで延伸している。
【0015】
絶縁シート2の上面側には絶縁シート3が配置され、この絶縁シート3の略中央部には開口部である下部静電気通過部12が形成されている。さらに絶縁シート3上には第1の下部放電電極13と、第2の下部放電電極14とが配置されている。第1の下部放電電極13および第2の下部放電電極14の先端は下部静電気通過部12上に位置しており、下部静電気通過部12を介して下部グランド電極11と面で対向している。第1の下部放電電極13および第2の下部放電電極14は、長方形である絶縁シート3の短辺までそれぞれ延伸している。
【0016】
絶縁シート3の上面側には絶縁シート4が配置され、絶縁シート4上には第1の引出電極15が配置されている。第1の引出電極15は長方形である絶縁シート4の短辺の端部まで延伸しており、その延伸している部分は、第1の下部放電電極13の絶縁シート3の短辺までの延伸部と積層方向で平面視した際に同じ位置に存在している。
【0017】
絶縁シート4の上面側には絶縁シート5が配置され、絶縁シート5上には渦巻き形状の第1のコイル16が配置されている。この第1のコイル16のコイル軸は積層方向に一致している。第1のコイル16の外側の端部は、長方形である絶縁シート5の上面における短辺の端部まで延伸しており、その延伸している部分は、第2の下部放電電極14の絶縁シート3の短辺までの延伸部と積層方向で平面視した際に同じ位置に存在している。また、絶縁シート5の中央部にはビア電極としての接続電極17が形成され、第1のコイル16と第1の引出電極15とを電気的に接続している。
【0018】
絶縁シート5の上面側には絶縁シート6が配置され、この絶縁シート6上には渦巻き形状の第2のコイル18が配置されている。この第2のコイル18のコイル軸は積層方向に一致している。第2のコイル18の外側の端部は、長方形である絶縁シート6の上面における短辺の端部まで延伸している。
【0019】
絶縁シート6の上面側には絶縁シート7が配置され、この絶縁シート7の中央部にはビア電極としての接続電極19が形成され、第2のコイル18の内側の端部と電気的に接続している。さらに、絶縁シート7上には第2の引出電極20が配置され、この第2の引出電極20は接続電極19と電気的に接続している。第2の引出電極20は長方形である絶縁シート7の上面における短辺の端部まで延伸している。
【0020】
絶縁シート7の上面側には絶縁シート8が配置され、この絶縁シート8には第1の上部放電電極21および第2の上部放電電極22が配置されている。第1の上部放電電極21は長方形である絶縁シート8の上面における短辺の端部まで延伸しており、その延伸している部分は、第2のコイル18の絶縁シート6の短辺までの延伸部と積層方向で平面視した際に同じ位置に存在している。同様に、第2の上部放電電極22は長方形である絶縁シート8の上面における短辺の端部まで延伸しており、その延伸している部分は、第2の引出電極20の絶縁シート7の短辺までの延伸部と積層方向で平面視した際に同じ位置に存在している。
【0021】
絶縁シート8の上面側には絶縁シート9が配置され、この絶縁シート9の略中央部には開口部である上部静電気通過部23が形成されている。さらに絶縁シート9上には上部グランド電極24が配置されている。上部グランド電極24は長方形である絶縁シート9の上面における長辺の端部まで延伸している。
【0022】
絶縁シート9の上面側には絶縁シート10が配置されている。
【0023】
絶縁シート1、絶縁シート2、絶縁シート3、下部グランド電極11、下部静電気通過部12、第1の下部放電電極13および第2の下部放電電極14により下部積層部25を構成している。また、絶縁シート4、絶縁シート5、絶縁シート6、絶縁シート7、第1の引出電極15、第1のコイル16、接続電極17、第2のコイル18、接続電極19および第2の引出電極20によりインダクタ部26を構成している。また、インダクタ部26を構成する第1のコイル16および第2のコイル18の軸は積層方向である。本実施の形態においては、このインダクタ部26はコモンモードノイズフィルタを構成している。また、絶縁シート8、絶縁シート9、絶縁シート10、第1の上部放電電極21、第2の上部放電電極22、上部静電気通過部23および上部グランド電極24により上部積層部27を構成している。
【0024】
図2に示すように、下部静電気通過部12と上部静電気通過部23とは、正面断面図および側面断面図において、それぞれ上下方向で異なるものの左右方向で同じ場所に位置している。即ち、積層方向で平面視した際に、同じ位置に形成されている。
【0025】
第1の端子28は第1の下部放電電極13および第1の引出電極15と電気的に接続しており、第2の端子29は第2の引出電極20および第1の上部放電電極21と電気的に接続しており、第3の端子30は第2の下部放電電極14および第1のコイル16と電気的に接続しており、第4の端子31は第2の上部放電電極22および第2のコイル18と電気的に接続している。
【0026】
また、下部グランド電極11と上部グランド電極24とは、複合部品の積層方向で平面視した際の長辺側の端部に形成されたグランド端子(図示せず)によって電気的に接続されている。
【0027】
第1の下部静電気対策部32は下部グランド電極11、下部静電気通過部12および第1の下部放電電極13で構成されている。第1の端子28に静電気による過電圧が印加された場合に、第1の下部放電電極13と下部グランド電極11間で放電が生じ、これにより過電圧による電流が第1のコイル16に流れることを防止することができる。
【0028】
第1の上部静電気対策部33は第1の上部放電電極21、上部静電気通過部23および上部グランド電極24で構成され、第2の端子29に静電気による過電圧が印加された場合に、第1の上部放電電極21と上部グランド電極24間で放電が生じ、これにより過電圧による電流が第2のコイル18に流れることを防止することができる。
【0029】
第2の上部静電気対策部34は第2の上部放電電極22、上部静電気通過部23および上部グランド電極24で構成され、第4の端子31に静電気による過電圧が印加された場合に、第2の上部放電電極22と上部グランド電極24間で放電が生じ、これにより過電圧による電流が第2のコイル18に流れることを防止することができる。
【0030】
第2の下部静電気対策部35は下部グランド電極11、下部静電気通過部12および第2の下部放電電極14で構成され、第3の端子30に静電気による過電圧が印加された場合に、第2の下部放電電極14と下部グランド電極11間で放電が生じ、これにより過電圧による電流が第1のコイル16に流れることを防止することができる。
【0031】
このように、第1の下部静電気対策部32、第1の上部静電気対策部33、第2の上部静電気対策部34および第2の下部静電気対策部35は、静電気による電流が第1のコイル16または第2のコイル18に流れることを防止する機能を有している。また、実施の形態1の複合部品は、図3に示す電気接続図からも明らかな通り、所謂π型と言われるものである。
【0032】
ここで、図2において、第1のコイル16および第2のコイル18による磁束を二点鎖線で示している。本実施の形態においては、インダクタ部26はコモンモードノイズフィルタであるので、第1のコイル16と第2のコイル18との磁気的な結合である結合係数が高い方が好ましい。そのためには第1のコイル16と第2のコイル18とを磁気的に結合させる磁束が回り易いようにすることが好ましく、具体的にはこの磁束が回る部分の透磁率を高くするとよい。しかしながら、下部静電気通過部12および上部静電気通過部23は空洞であるので、この部分の透磁率は低くなる。この透磁率が低くなる部分がインダクタ部26の上下にそれぞれ存在する場合において、積層方向に平面視した場合に同じ場所に位置するようにしたのが本実施の形態である。さらに本実施の形態においては、下部静電気通過部12および上部静電気通過部23を共に、第1のコイル16および第2のコイル18の中心軸上に配置させることで、第1のコイル16と第2のコイル18とを磁気的に結合させる磁束に与える影響を少なくするようにしている。
【0033】
図4は本発明の実施の形態1におけるバリエーション例の複合部品の正面断面図、図5は比較例における複合部品の正面断面図である。図4の本発明の実施の形態1におけるバリエーション例の複合部品は、図1〜3に示す実施の形態1における複合部品の下部静電気通過部12と上部静電気通過部23の位置をずらし、下部積層部25内に下部静電気通過部40、上部積層部27内に上部静電気通過部41を形成したものであり、下部静電気通過部40と上部静電気通過部41は積層方向から平面視した際に同一の場所に位置している。一方、図5に示す比較例における複合部品は、図1〜3に示す実施の形態1における複合部品の下部静電気通過部12を紙面右方向にずらして下部静電気通過部42とし、上部静電気通過部23を紙面左方向にずらして上部静電気通過部43としたものである。従って、図5に示す比較例の複合部品においては、積層方向に平面視した際に、下部静電気通過部42と上部静電気通過部43とは異なる場所に位置している。
【0034】
ここで、図4に示す複合部品の磁束について検討すると、下部静電気通過部40および上部静電気通過部41がないとしたときに、下部静電気通過部40が形成される場所を通過する磁束は上部静電気通過部41も通過する磁束である。従って、下部静電気通過部40を設けることによって影響を受ける第1のコイル16と第2のコイル18とを磁気的に結合させる磁束と、上部静電気通過部41を設けることによって影響を受ける第1のコイル16と第2のコイル18とを磁気的に結合させる磁束とは同じである。
【0035】
一方、図5に示す比較例の磁束について検討すると、下部静電気通過部42および上部静電気通過部43がないとしたときに、下部静電気通過部42が形成される場所を通過する磁束と上部静電気通過部43が形成される場所を通過する磁束とは異なる。従って、図4に示す複合部品に比べ、下部静電気通過部42および上部静電気通過部43のような空洞部をつくることにより影響を受けてしまう磁束が増え、コモンモードノイズフィルタとしての結合係数は悪化する。従って、図4に示す複合部品のように下部静電気通過部40および上部静電気通過部41を積層方向で平面視した際に同じ場所に位置させると、インダクタ部26の特性の低下を抑えることができる。
【0036】
(実施の形態2)
以下、図6および図7を用いて、本発明の実施の形態2における複合部品について説明する。図6は本発明の実施の形態2における複合部品の分解斜視図、図7は本発明の実施の形態2における複合部品の電気接続図である。
【0037】
実施の形態2における複合部品が実施の形態1における複合部品と異なる点は、実施の形態1における複合部品がコモンモードノイズフィルタが1組で、これを構成するコイルの両端に静電気対策部が接続される所謂π型であるのに対し、実施の形態2における複合部品は、コモンモードノイズフィルタを2組備える所謂アレイタイプであり、これを構成するコイルの片側にのみ静電気対策部部が接続される所謂L型である点である。さらに、実施の形態1において静電気通過部が空洞であったのに対し、実施の形態2においては空洞ではなく電圧可変抵抗体である点でも相違している。
【0038】
以下、実施の形態2における複合部品について、詳細に説明する。
【0039】
絶縁シート51〜絶縁シート70は、実施の形態1と同様の絶縁シートである。絶縁シート51の上面側には絶縁シート52が配置され、この絶縁シート52の上面には下部グランド電極71が配置されている。この絶縁シート52の上面側には絶縁シート53が配置されている。絶縁シート53には2箇所に開口部が形成され、そのうちの一方が第1の下部静電気通過部74、他方が第2の下部静電気通過部75である。第1の下部静電気通過部74には、通常の電圧では高抵抗で絶縁体として機能し、過電圧が印加されると低抵抗になって過電圧に起因する電流を流すことができる第1の下部電圧可変抵抗体72が充填されている。同様に、第2の下部静電気通過部75には第2の下部電圧可変抵抗体73が充填されている。第1の下部電圧可変抵抗体72および第2の下部電圧可変抵抗体73に用いられる材料としては、例えば、バリスタに用いられる組成のものや、樹脂中に導体分を分散させたもの、あるいは、絶縁体中に空孔を形成したものなどが挙げられる。
【0040】
絶縁シート53の上面で第1の下部静電気通過部74に一部が臨むように第1の下部放電電極76が配置されている。第1の下部放電電極76は、第1の下部電圧可変抵抗体72と接触し、第1の下部電圧可変抵抗体72は、下部グランド電極71と接触する構成になっている。従って、過電圧の印加時には第1の下部放電電極76と下部グランド電極71間で過電圧に起因する電流が流れる。
【0041】
同様に、絶縁シート53の上面で第2の下部静電気通過部75に一部が臨むように第2の下部放電電極77が配置されており、過電圧の印加時には第2の下部放電電極77と下部グランド電極71間で過電圧に起因する電流が流れる。
【0042】
絶縁シート53の上面側には絶縁シート54〜絶縁シート59が下から順に配置されている。
【0043】
絶縁シート59の上面には第1の引出電極78および第2の引出電極79が配置されている。
【0044】
絶縁シート59の上面側には絶縁シート60が配置されており、この絶縁シート60の上面には渦巻状の第1のコイル80と第2のコイル81とが並んで配置されている。第1のコイル80の内側端部は絶縁シート60に形成されたビア(図示せず)により第1の引出電極78と電気的に接続している。同様に、第2のコイル81の内側端部は第2の引出電極79と電気的に接続している。
【0045】
絶縁シート60の上面側には絶縁シート61が配置され、この絶縁シート61には渦巻状の第3のコイル82および第4のコイル83が並んで配置されている。
【0046】
絶縁シート61の上面側には絶縁シート62が配置され、この絶縁シート62には第3の引出電極84および第4の引出電極85が配置されている。第3の引出電極84は絶縁シート62に形成されたビアにより第3のコイル82の内側端部と電気的に接続し、同様に第4の引出電極85は第4のコイル83の内側端部と電気的に接続している。
【0047】
絶縁シート62の上面側には絶縁シート63〜絶縁シート67が配置されている。
【0048】
絶縁シート67の上面には第1の上部放電電極86および第2の上部放電電極87が配置されている。第1の上部放電電極86は、本複合部品の表面に形成された第3の端子電極(図示せず)により第3のコイル82と電気的に接続している。同様に、第2の上部放電電極87は、第4の端子電極(図示せず)により、第4のコイル83と電気的に接続している。
【0049】
絶縁シート67の上面側には絶縁シート68が配置されている。この絶縁シート68には開口部が2箇所形成され、その一方が第1の上部静電気通過部88であり、他方が第2の上部静電気通過部89である。第1の上部静電気通過部88には、第1の上部電圧可変抵抗体90が充填され、第2の上部静電気通過部89には、第2の上部電圧可変抵抗体91が充填されている。第1の上部電圧可変抵抗体90および第2の上部電圧可変抵抗体91は、第1の下部電圧可変抵抗体72および第2の下部電圧可変抵抗体73と同様の材料からなり、同様の機能を有する。また、第1の上部電圧可変抵抗体90は第1の上部放電電極86と接触し、第2の上部電圧可変抵抗体91は第2の上部放電電極87と接触している。
【0050】
絶縁シート68の上面側には上部グランド電極92が形成され、上部グランド電極92は第1の上部電圧可変抵抗体90および第2の上部電圧可変抵抗体91と接触して形成されている。従って、第1の上部放電電極86に過電圧が印加されると第1の上部放電電極86と上部グランド電極92間で過電圧に起因した電流が流れる。同様に、第2の上部放電電極87に過電圧が印加されると第2の上部放電電極87と上部グランド電極92間で過電圧に起因した電流が流れる。
【0051】
絶縁シート68の上面側には下から順に絶縁シート69および絶縁シート70が配置されている。
【0052】
絶縁シート51〜絶縁シート54、下部グランド電極71、第1の下部電圧可変抵抗体72、第2の下部電圧可変抵抗体73、第1の下部静電気通過部74、第2の下部静電気通過部75、第1の下部放電電極76および第2の下部放電電極77により下部積層部93を構成し、絶縁シート55〜絶縁シート66、第1の引出電極78、第2の引出電極79、第1のコイル80、第2のコイル81、第3のコイル82、第4のコイル83および第3の引出電極84によりインダクタ部94を構成し、絶縁シート67〜絶縁シート70、第1の上部放電電極86、第2の上部放電電極87、第1の上部静電気通過部88、第2の上部静電気通過部89、第1の上部電圧可変抵抗体90、第2の上部電圧可変抵抗体91および上部グランド電極92により上部積層部95を構成している。
【0053】
第1の下部静電気対策部96は下部グランド電極71、第1の下部電圧可変抵抗体72、第1の下部静電気通過部74および第1の下部放電電極76で構成されている。
【0054】
第1の上部静電気対策部97は第1の上部放電電極86、第1の上部静電気通過部88、第1の上部電圧可変抵抗体90および上部グランド電極92で構成されている。
【0055】
第2の下部静電気対策部98は下部グランド電極71、第2の下部電圧可変抵抗体73、第2の下部静電気通過部75および第2の下部放電電極77で構成されている。
【0056】
第2の上部静電気対策部99は第2の上部放電電極87、第2の上部静電気通過部89、第2の上部電圧可変抵抗体91および上部グランド電極92で構成されている。
【0057】
また、第1のコイル80の外側の端部と第1の下部放電電極76は、第1の端子(図示せず)により電気的に接続し、第2のコイル81の外側の端部と第2の下部放電電極77は、第2の端子(図示せず)により電気的に接続し、第3のコイル82の外側の端部と第1の上部放電電極86は、第3の端子(図示せず)により電気的に接続し、第4のコイル83の外側の端部と第2の上部放電電極87は、第4の端子(図示せず)により電気的に接続している。
【0058】
以上のような構成により、第1の下部放電電極76に静電気による過電圧が印加された場合には、第1の下部電圧可変抵抗体72の抵抗値が大幅に減少して、静電気に起因する電流は第1のコイル80ではなく第1の下部電圧可変抵抗体72を流れるので、第1のコイル80の保護、あるいは、第1のコイル80と直列に接続される電子部品等の保護を行うことができる。即ち、第1の下部静電気対策部96により第1のコイル80等を静電気から保護することができる。
【0059】
第1の上部静電気対策部97、第2の下部静電気対策部98および第2の上部静電気対策部99についても同様である。
【0060】
(実施の形態3)
以下、図8を用いて、本発明の実施の形態3における複合部品について説明する。図8は本発明の実施の形態3における複合部品の分解斜視図である。
【0061】
実施の形態3における複合部品が実施の形態1における複合部品と異なる点は、実施の形態1における複合部品の静電気通過部はインダクタ部の上下に一個ずつの合計2個であったのに対し、実施の形態3における複合部品は上下に2個ずつの合計4個有する点が異なっている。また、実施の形態1において静電気通過部が空洞であったのに対し、実施の形態3における複合部品は実施の形態2における複合部品と同様に空洞ではなく電圧可変抵抗体である点でも相違している。
【0062】
一方、実施の形態3における複合部品は、コモンモードノイズフィルタが1組で、これを構成するコイルの両端に静電気対策部が接続される所謂π型であり、この点は実施の形態1の複合部品と共通する。
【0063】
以下、簡単に実施の形態3における複合部品の説明をする。
【0064】
絶縁シート101〜絶縁シート120は、実施の形態1、2と同様の材質からなるものである。
【0065】
絶縁シート101の上面側には絶縁シート102が配置され、絶縁シート102の上面には下部グランド電極121が配置されている。絶縁シート102の上面側に配置された絶縁シート103には、2つの開口部が形成され、その一方が第1の下部静電気通過部124、他方が第2の下部静電気通過部125である。第1の下部静電気通過部124および第2の下部静電気通過部125には、それぞれ第1の下部可変抵抗体122、第2の下部可変抵抗体123が充填されており、これらはともに下部グランド電極121と接触している。また、絶縁シート103の上面には、第1の下部可変抵抗体122と一部が接触するように第1の下部放電電極126が配置され、さらに第2の下部可変抵抗体123と一部が接触するように第2の下部放電電極127が配置されている。
【0066】
絶縁シート103の上面側には、下から順に絶縁シート104〜絶縁シート109が配置され、絶縁シート109の上面には第1の引出電極128が形成されている。
【0067】
絶縁シート109の上面側には絶縁シート110が配置され、絶縁シート110の上面には第1のコイル129が配置されている。第1のコイル129の内側の端部は、絶縁シート110に形成されたビア電極(図示せず)によって第1の引出電極128の先端部と電気的に接続している。
【0068】
絶縁シート110の上面側には絶縁シート111が配置され、絶縁シート111の上面には第2のコイル130が配置されている。絶縁シート111の上面側には絶縁シート112が配置されて、絶縁シート112の上面には第2の引出電極131が配置されている。第2の引出電極131の先端部は絶縁シート112に形成されたビア電極(図示せず)によって第2のコイル130の内側の端部と電気的に接続している。
【0069】
絶縁シート112の上面側には、下から順に絶縁シート113〜絶縁シート117が配置され、絶縁シート117の上面には第1の上部放電電極132および第2の上部放電電極133が配置されている。絶縁シート117の上面側には、開口部である第1の上部静電気通過部134および第2の上部静電気通過部135が形成された絶縁シート118が配置され、第1の上部静電気通過部134および第2の上部静電気通過部135には、それぞれ第1の上部可変抵抗体136および第2の上部可変抵抗体137が充填されている。絶縁シート118の上面には上部グランド電極138が配置され、第1の上部可変抵抗体136は第1の上部放電電極132および上部グランド電極138と接触し、第2の上部可変抵抗体137は第2の上部放電電極133および上部グランド電極138と接触している。絶縁シート118の上面側には、絶縁シート119および絶縁シート120が配置されている。
【0070】
絶縁シート101〜絶縁シート104、下部グランド電極121、第1の下部可変抵抗体122、第2の下部可変抵抗体123、第1の下部静電気通過部124、第2の下部静電気通過部125、第1の下部放電電極126および第2の下部放電電極127によって下部積層部139が構成され、絶縁シート105〜絶縁シート116、第1の引出電極128、第1のコイル129、第2のコイル130および第2の引出電極131によってインダクタ部140が構成され、絶縁シート117〜絶縁シート120、第1の上部放電電極132、第2の上部放電電極133、第1の上部静電気通過部134、第2の上部静電気通過部135、第1の上部可変抵抗体136、第2の上部可変抵抗体137および上部グランド電極138によって上部積層部141が構成されている。
【0071】
以上の構成の実施の形態3における複合部品も実施の形態1、2における複合部品と同様の効果を有する。
【0072】
なお、実施の形態1〜3において、インダクタ部をコモンモードノイズフィルタとしたが、コモンモードノイズフィルタに限らず、コモンモードノイズとノーマルモードノイズの両方を程よく除去する2モードノイズフィルタや、ノイズフィルタ以外のインダクタであってもよい。この場合においても、静電気通過部の存在により磁束が乱れてしまい、インダクタ部の特性を劣化させるので、本実施の形態のように、インダクタ部の上下の静電気通過部の位置を積層方向で平面視した際に同じ位置になるようにすると、劣化を抑えることができる。
【0073】
また、絶縁シートは基本的に磁性材料を用いることで、インダクタ部の特性を向上させることができるが、例えば、コモンモードノイズフィルタの場合には、2つのコイルを磁気的に結合させる磁束が通過する部分には磁性材料を用い、磁気的な結合をさせない磁束が通過する部分には非磁性材料を用いると特性が向上するように、具体的なインダクタ部の機能や構成に応じて、非磁性材料を用いればよい。この場合において、1枚の磁性体からなる絶縁シートの一部分のみ非磁性体で形成してもよい。
【0074】
さらに、実施の形態1〜3に示したように、本発明は、所謂π型やL型の構造のもののそれぞれに対し、単品或いはアレイの構成を組み合わせたものに適用することができる。即ち、π型で単品のもの、π型でアレイのもの、L型で単品の物、L型でアレイのものへの展開が可能である。また、それぞれの構成のものに対し、静電気通過部を空洞にすることもできるし、バリスタ等の過電圧が印加されると抵抗値が低下する電圧可変抵抗材料を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、インダクタ機能と静電気対策機能を備えた複合部品に適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 絶縁シート
2 絶縁シート
3 絶縁シート
4 絶縁シート
5 絶縁シート
6 絶縁シート
7 絶縁シート
8 絶縁シート
9 絶縁シート
10 絶縁シート
11 下部グランド電極
12 下部静電気通過部
13 第1の下部放電電極
14 第2の下部放電電極
15 第1の引出電極
16 第1のコイル
17 接続電極
18 第2のコイル
19 接続電極
20 第2の引出電極
21 第1の上部放電電極
22 第2の上部放電電極
23 上部静電気通過部
24 上部グランド電極
25 下部積層部
26 インダクタ部
27 上部積層部
28 第1の端子
29 第2の端子
30 第3の端子
31 第4の端子
32 第1の下部静電気対策部
33 第1の上部静電気対策部
34 第2の上部静電気対策部
35 第2の下部静電気対策部
40 下部静電気通過部
41 上部静電気通過部
42 下部静電気通過部
43 上部静電気通過部
51 絶縁シート
52 絶縁シート
53 絶縁シート
54 絶縁シート
55 絶縁シート
56 絶縁シート
57 絶縁シート
58 絶縁シート
59 絶縁シート
60 絶縁シート
61 絶縁シート
62 絶縁シート
63 絶縁シート
64 絶縁シート
65 絶縁シート
66 絶縁シート
67 絶縁シート
68 絶縁シート
69 絶縁シート
70 絶縁シート
71 下部グランド電極
72 第1の下部電圧可変抵抗体
73 第2の下部電圧可変抵抗体
74 第1の下部静電気通過部
75 第2の下部静電気通過部
76 第1の下部放電電極
77 第2の下部放電電極
78 第1の引出電極
79 第2の引出電極
80 第1のコイル
81 第2のコイル
82 第3のコイル
83 第4のコイル
84 第3の引出電極
85 第4の引出電極
86 第1の上部放電電極
87 第2の上部放電電極
88 第1の上部静電気通過部
89 第2の上部静電気通過部
90 第1の上部電圧可変抵抗体
91 第2の上部電圧可変抵抗体
92 上部グランド電極
93 下部積層部
94 インダクタ部
95 上部積層部
96 第1の下部静電気対策部
97 第1の上部静電気対策部
98 第2の下部静電気対策部
99 第2の上部静電気対策部
101 絶縁シート
102 絶縁シート
103 絶縁シート
104 絶縁シート
105 絶縁シート
106 絶縁シート
107 絶縁シート
108 絶縁シート
109 絶縁シート
110 絶縁シート
111 絶縁シート
112 絶縁シート
113 絶縁シート
114 絶縁シート
115 絶縁シート
116 絶縁シート
117 絶縁シート
118 絶縁シート
119 絶縁シート
120 絶縁シート
121 下部グランド電極
122 第1の下部可変抵抗体
123 第2の下部可変抵抗体
124 第1の下部静電気通過部
125 第2の下部静電気通過部
126 第1の下部放電電極
127 第2の下部放電電極
128 第1の引出電極
129 第1のコイル
130 第2のコイル
131 第2の引出電極
132 第1の上部放電電極
133 第2の上部放電電極
134 第1の上部静電気通過部
135 第2の上部静電気通過部
136 第1の上部可変抵抗体
137 第2の上部可変抵抗体
138 上部グランド電極
139 下部積層部
140 インダクタ部
141 上部積層部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部静電気対策部が形成された下部積層部と、
前記下部積層部上に積層されたインダクタ部と、
前記インダクタ部上に積層され上部静電気対策部が形成された上部積層部とを備え、
前記インダクタ部を構成するコイルの軸は積層方向に一致し、
前記下部静電気対策部は、一対の電極間に通常は絶縁体として機能し所定以上の電圧が印加されると通電する下部静電気通過部を有し、
前記上部静電気対策部は、一対の電極間に通常は絶縁体として機能し所定以上の電圧が印加されると通電する上部静電気通過部を有し、
前記下部静電気通過部と前記上部静電気通過部は積層方向から透視した際に同じ位置に形成されている複合部品。
【請求項2】
前記下部静電気通過部および前記上部静電気通過部はともにコイルの軸上に配置されている請求項1記載の複合部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−187676(P2011−187676A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51383(P2010−51383)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】