説明

複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造

【課題】 ガスケットの複層ガラス類の取付溝に浸入することのある雨水等をスピーディかつ確実に排出すること。
【解決手段】 構造ガスケット1に、排水溝6及び排水孔7aを構成し、かつPC外壁板Kに排水孔7aに連通する排水孔7bを形成し、下辺の排水溝6及び排水孔7a並びにこれに連通する排水孔7bに排水ロープ8を装入したものである。排水溝6は取付溝2の底部に形成した溝構造である。排水孔7aは下辺の排水溝6の両端近傍から分岐垂下させ、結合手段3の下端に開口させてPC外壁板Kの排水孔7bの上端に連通させる。排水孔7bは、上部を排水孔7aの下端に繋がる垂直部に、途中を下向き傾斜する傾斜部に、下部を側部の開口部に向かって延びる水平部にする。排水ロープ8は、排水溝6に長さ方向に沿って装入し、両端を排水孔7a、7aから排水孔7b、7bの途中まで延長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラス類を構造ガスケットを用いて建物の開口部等に取り付けた場合に、該構造ガスケットのガラス取付溝に浸入することのある雨水等を除去するために機能する複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の窓等の開口部にはガラス板を配することは極めて一般的に行われている。このようなガラス板として、断熱性や防音性の高い複層ガラス、耐風圧性・安全性の高い合わせガラス又は防火対策の観点から網入りガラス(この三種のガラスを、この明細書及び特許請求の範囲では複層ガラス類と称する)が使用されることも多い。またガラス板を建物開口部等に取り付けるための部材の一つとして構造用ガスケットが採用されている。
【0003】
前記複層ガラスは、四辺をシール材でシールしながらその間隔を保持しているものであるが、前記構造ガスケットでこれを建物開口部等に取り付ける場合は、そのガラス取付溝に浸入することのある雨水等の影響によりシール材が剥離するとか、該シール材の剥離部を通じて雨水がガラス構造内に入り込み内部を曇らせてしまう等の問題の発生が危惧されている。また前記網入りガラスでは、雨水が小口から滲入し、内部の網が錆びて錆び割れや熱割れを引き起こす虞がある。更に合わせガラスでは雨水が小口から滲入し、中間膜の白濁現象を呈する虞がある。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために排水機構を備えたガスケットが提案されている。
その1は、取付溝にセッティングブロックを配した上でガラス板を支持したH型ガスケットの例であり、この例では、排水手段として、該取付溝の底部から該ガスケットを支持する下方のフレームを通じてその下方に連通するウイープホールが示されている(非特許文献1、2)。ウイープホールは、セッティングブロックを避けて開口すべきこととされ、セッティングブロックを二つ配した場合にその間とそれぞれの外側とに配した例が示されている。ウイープホールは、この他の容認できる例として、フレーム中に形成したそれを途中から斜め外方に延長して外部に開口する構成とし、そのウイープホールの途中に連泡のウレタンパッドを装入した例が示されている。更にまた容認できる最低の例として、ウイープホールをガスケットにのみ形成することとし、その取付溝の底側部から斜め外方に延長して外部に開口する構成とした例が示されている。
【0005】
その2は、トップライトに利用したH型ガスケットの例であり、この例では、排水手段として、ガラス板及び駆体側の支持部を装入した両側の取付溝の底側部に構成した排水溝が示されている(非特許文献1)。この排水溝は、いずれかの部分で外部に開口しているものと思われる。
【0006】
その3は取付溝にセッティングブロックを配した上でガラス板を支持したY型ガスケットの例であり、この例では、排水手段として、該取付溝の底部から該ガスケット中を最下部まで延長するウイープホールと、これに連通し、斜め外方に延びて外部に開口するコンクリート駆体中のウイープホールが示されている(非特許文献1)。ウイープホールは、他の代替例として、前記取付溝の底側部から該ガスケット中を斜め下方に延長して外部に開口するように構成した例も示されている。
【0007】
その4は、Y型ガスケットの他の例及びC型ガスケットの例であり、この例では、排水手段として、取付溝の底部にその長さ方向に沿って付設した排水溝であって、ガラス板の各辺を支持する相互を連通させた排水溝と、該排水溝の内、ガラス板の下辺を支持する取付溝に付設した排水溝から外部に連通させた排水口とを構成した例が示されている(非特許文献1)。なおC型ガスケットを格子状に配してガラス板を支持する場合は、縦方向に延びる排水溝を最下部で外部に開口させることが可能であるため、排水口を省略した構成も示されている。
【0008】
【非特許文献1】「建築用構造ガスケット設計・施工に関する技術マニュアル」、建築ガスケット工業会、2000年3月20日、p.28−29
【非特許文献2】「外壁接合部の水密設計および施工に関する技術指針(案)・同解説」、社団法人日本建築学会、2000年7月1日、p.200−202
【0009】
以上の非特許文献1、2に示された技術は、ガラス板を取り付ける取付溝に浸入した雨水等の水を排除しようとする構成であり、これが構成されていないものと比較すれば、ある程度の効果が認められるものであることは確かであるが、その効果は十分とは言えないのが実情である。一度浸入した水の多くは、前記ウイープホール、排水溝又は排水溝及び排水口を通じて外部に排出されるが、若干の水が必ずウイープホールや排水口を塞ぐ水膜状となり、或いは排水溝の隅部を覆う水膜となって残留し、長く残る結果となっている。これらの残留する水は、少量ではあるが、前記したように、長い間に、ガスケットで支持する複層ガラス類に対して悪影響を与え、シール材の剥離を引き起こしたり、ガラス構造内に湿気を及ぼす等の原因となることが危惧される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を解決し、複層ガラス類の取付溝に浸入することのある雨水等を確実に排出し、支持される複層ガラス類に発生する悪影響を確実に回避することのできる複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造を提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1は、複層ガラス類の上辺、両側辺及び下辺の各々を支持する取付溝と、直接又は間接に建物の駆体に結合するための結合手段とを備えた複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造であって、
前記取付溝の内の少なくとも前記複層ガラス類の下辺を支持する取付溝の底部にその長さ方向に沿って排水溝を付設し、該排水溝の両端付近に該排水溝中の水分を溝外に排除する排水孔を構成し、更に前記排水溝中に排水ロープを配置し、かつ該排水ロープの両端を両側の排水孔内まで延長して構成した複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造である。
【0012】
本発明の2は、本発明の1の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造に於いて、前記排水孔を直接に外部に開口させ又は他の部材の排水孔に連結して外部に開口させた場合は、前記排水ロープの両端部をそれぞれそれらの開口端の近傍まで延長することとしたものである。
【0013】
本発明の3は、本発明の1又は2の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造に於いて、前記排水ロープとして組紐を採用したものである。
【0014】
本発明の4は、本発明の1、2又は3の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造に於いて、前記排水ロープの材質としてポリエステル又はポリプロピレンを採用するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の1の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造によれば、複層ガラス類を取り付けた取付溝中に雨水等が浸入した場合に、その雨水等が取付溝の下方の排水溝に流下し、更に排水溝に流下した雨水等は排水ロープに浸透し、これを通じて毛管現象により確実に導かれて溝外に移動することとなる。そのため取付溝中の雨水等は短時間の内に除去され、複層ガラス類のシール材に悪影響を与えたり、その剥離を招いたり、ガラス構造内に湿気を及ぼしたりする虞を生じさせない。
【0016】
本発明の2の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造によれば、排水ロープの作用によりガスケット外への雨水等の誘導排出を良好に行うことができる。
前記排水孔は、構造ガスケットを単独の複層ガラス類を取り付けるべく四辺形枠体に構成した場合は、下辺の排水溝から直接に又は間接にガスケット外に開口すべきものである。間接に開口する例としては、該構造ガスケットを支持するフレームに前記排水孔に連通する排水孔を別に構成しておき、これを介して外部に開口させるものや、該構造ガスケットを支持するプレキャストコンクリート外壁板に同様の排水孔を開口しておき、これを介して外部に開口させるものなどである。
いずれの場合も、先に述べたように、ガスケット外への雨水等の誘導排出を良好に行うことができる。
【0017】
また前記排水孔は、構造ガスケットを、それぞれの枠内に複層ガラス類を取り付けるべく格子状に構成した場合は、全格子枠の下辺の取付溝からガスケット外に開口すべく構成するのではなく、例えば、高さ方向の一段おきずつガスケット外に開口させ、その間の段では下段の格子枠の取付溝に於ける排水孔に連通するように構成することができる。外部に開口部が現れるのを少なくしようとする趣旨である。
【0018】
このような場合は、ガスケット外に開口していない段では、その排水溝に流れ込んだ雨水等は、その排水孔を通じてその下の段の上辺又は側部の取付溝に流下することになる。これらに流入した雨水は、これらを通じて、下辺の取付溝に付設した排水溝に流下し、更にその排水孔を通じてガスケット外に良好に排出されることになるわけである。なお側部にも排水溝を形成しておくこととすれば、雨水はそれを通じて下段の排水溝に流下することができる。
【0019】
本発明3の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造によれば、取付溝中に浸入した水を除去するためにより高い排水速度を獲得することができる。
【0020】
本発明4の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造によれば、容易に入手できる素材でより高い排水速度を獲得できる組紐を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造は、複層ガラス類の上辺、両側辺及び下辺の各々を支持する取付溝と、直接又は間接に建物の駆体に結合するための結合手段とを備えた複層ガラス類用構造ガスケットに構成するものであり、
前記取付溝の内の少なくとも前記複層ガラス類の下辺を支持する取付溝の底部にその長さ方向に沿って排水溝を付設し、該排水溝の両端付近に該排水溝中の水分を溝外に排除するための排水孔を構成し、更に該排水溝中に排水ロープを装入し、かつ該排水ロープの両端を該排水溝の両端の排水孔中まで延長してなるものである。
【0022】
複層ガラス類用構造ガスケットとしては、上下又は左右に取付溝を備えたH型、上部又は下部に取付溝を備え、これとは逆に下部又は上部に結合手段を備えたY型、上下又は左右に取付溝を備え、残った左右の一方又は上下の一方に結合手段を備えたHC型等のいずれのそれも適用対象となる。また複層ガラス類の取付態様としては、単独のそれをその枠内に取り付けるべく四辺形枠状に構成したタイプも、格子状に配して多数の複層ガラス類をそれぞれの枠内に配するように構成したタイプも適用対象である。
【0023】
前記排水溝は、前記のように、該取付溝の底部にその長さ方向に沿って配するものであるが、底部中央のラインに沿ってこれを僅かに越える長さに配するのが適当である。その深さ及び幅は、該取付溝より狭くかつ浅くても良いが、水膜で覆われにくくする趣旨からは、いずれも8mm以上で、小型化の観点を加味してこれより余り大きくならないように、例えば、10mm程度以下に構成するのが適当である。前記排水孔の径も同様に8mm以上の寸法で、できるだけ小さな寸法とするのが適当である。
【0024】
前記排水溝は、前記のように、複層ガラス類の上辺や両側辺を支持する取付溝には必ずしも構成する必要はない。これらの部位には雨水等が浸入する可能性が低いためである。もっとも同一の要素部材を成形して、これを四辺形又は格子状に結合して構成する一般的な技法を用いる場合は、その都合上、すべての辺の取付溝に排水溝を付設し、かつ下辺の排水溝に排水孔を構成するものとしても不都合はない。
【0025】
特に四辺形枠体を構成して単体の複層ガラス類単体を支持するタイプの構造ガスケットの場合は、上辺や両側辺に排水溝を構成する意義は少ないが、格子状に構成し、複数の格子枠に対応する数の複層ガラス類を取り付けるタイプの構造ガスケットで、排水孔の下端開口部を上下方向の一段おきの格子枠ごとに外部に開口するように構成し、外部に開口しない排水孔を下段の排水溝に連通させるように構成する場合には、特に両側辺の排水溝は、上段の格子枠の排水溝から下段の排水溝に雨水等を流下させる通路としての観点から有効である。
【0026】
前記排水孔は、前記排水溝の両端付近で該溝外に延びるそれとして構成する。原則としてガスケット外に延長開口させるべきであるが、前記したように、構造ガスケットそれ自体を格子状に構成し、複数の格子枠で複数の複層ガラス類を支持しようとする場合は、同様に前記したように、上下方向のすべての段の格子枠の排水溝からガスケット外に延長開口させる必要はない。上下方向の一段ごと程度に外部に開口させれば良い。外部に開口させない排水孔は下段の排水溝に連通することで、それが付設された排水溝外に排水するようにするわけである。
【0027】
また前記排水孔は、構造ガスケットそれ自体中に構成して、直接に外部に開口させるほか、構造ガスケットそれ自体からの開口部は、直接には外部に開口させず、これを支持するフレーム又は建物のプレキャストコンクリート外壁板等に向かって開口させ、該フレーム又は建物のプレキャストコンクリート外壁板に該当する部位から外部に開口する他の排水孔を構成し、該構造ガスケットそれ自体の排水孔の開口部を該他の排水孔に連通させ、該他の排水孔を通じて外部に開口させることもできる。
【0028】
前記排水ロープは、前記のように、排水溝中に配し、その両端を該排水溝の両端付近に配した排水孔中に延長するものであるが、その両端は、それを配した排水孔が外部に開口している場合は、その外部開口端近傍までその両端を延長するのが適当である。フレーム又はプレキャストコンクリート外壁板等の排水孔を介して間接に開口している場合もそのように配するのが好ましいが、該排水ロープは途中までに配することとしても特に不都合はない。
【0029】
前記排水ロープは、良好な毛管現象を生じる種々のそれを自由に採用可能である。このような観点で、組紐を採用するのが好ましい。
【0030】
また前記排水ロープは、その材質としてポリエステル又はポリプロピレンを採用することができる。その他の材質も必要に応じて自由に採用することができる。
【0031】
従って本発明の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造によれば、複層ガラス類を取り付けた取付溝中に雨水等の水が浸入した場合に、その水が取付溝の下方の排水溝に流下し、更にその雨水等は排水ロープに浸透し、その毛管現象により確実に導かれて溝外に移動することとなる。そのため取付溝中の雨水等は短時間の内に除去され、複層ガラス類のシール材等に悪影響を与えて、その剥離を招いたり、ガラス構造内に湿気を及ぼして曇らせる等の虞を生じさせない。
【0032】
構造ガスケットを格子状に構成し、上下方向一段おき等にのみ排水孔を外部に開口させた場合には、直接には開口させた段でのみ雨水等は外部に排出されるが、前記のように、その間の段の排水溝も直接に開口させた段の排水溝に連通させることができるため、雨水等は、これを通じて、速やかに外部に排出されることになる。いずれにしても排水ロープにより排水溝の水は溝外に排出され、上記のように直接に外部に排除されるか、他の排水溝及び排水孔を通じて外部に排出されることになるわけである。
【0033】
前記排水ロープとして、組紐を採用すれば、その毛管現象による排水性が十分であるため、スピーディかつ確実に取付溝中の水を除去することができる。
【0034】
排水ロープを構成する材質として、ポリプロピレン又はポリエステルを採用すれば、容易に入手できる素材でより高い排水速度を獲得できることとなる。その他の適当な材質を採用した場合も相応の高い排水速度を獲得することができる。
【実施例1】
【0035】
この実施例1の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造は、図1〜図3に示すように、Y型のガスケット部材を四辺形の辺に沿って配して相互を結合した構造ガスケット1に構成したものである。
【0036】
初めにこの構造ガスケット1の構成を略述する。
この構造ガスケット1を構成する要素部材はY型のガスケット部材であり、特に図3に示すように、下辺を構成するそれは、上部中央に複層ガラス類を取り付けるための取付溝2を備え、下部に結合手段3が垂下している。この結合手段3は両側に複数枚の鍔体3a、3a…、3b、3b…を重畳させて突出させたものである。また一方の側部にはジッパー溝4がその長さ方向に沿って形成してあり、そのジッパー溝4にはジッパー5が嵌脱自在に嵌合してあるものである。
【0037】
このような要素部材であるY型のガスケット部材は、上辺を構成するそれも両側辺を構成するそれも全く同一の構成であり、同一部材を用いる。上辺を構成するそれは、以上に説明したものを上下反転させて用い、左右側辺を構成するそれは、以上に説明したものの上側をそれぞれ右又は左側を向けて使用するものである。なおこのような要素部材であるY型のガスケット部材の構成は一般的なものである。
【0038】
複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造は、図1〜図3に示すように、以上に説明した構造ガスケット1に、排水溝6及び排水孔7aを構成し、他方、PC外壁板K中に、該排水孔7aに上端で連通し、下端で外部に開口する排水孔7bを構成し、該構造ガスケット1の下辺に位置する排水溝6、排水孔7a及びPC外壁板K中の排水孔7bに排水ロープ8を装入したことを基本とするものである。
【0039】
前記排水溝6は、図3に示すように、取付溝2の底部中央に更に下方に掘り下げた状態に構成した溝構造であり、図1に示すように、該取付溝2の全長さ方向に沿って構成する。該排水溝6は、下辺のそれは、文字通り、取付溝2の底部中央の下方に掘り下げた状態に構成するものであるが、上辺では、逆向きであるから取付溝2の天井部中央に堀り上げた状態に構成することになる。両側辺では取付溝2の最奥側面を掘り進んだ状態に構成することとなる。上辺の排水溝2は特に必要性があるわけではないが、前記したように、四辺のいずれの部位も全く同一に構成したY型のガスケット部材を用いて作成する都合上、排水溝6の構成までは、全辺で同一の構成となる。また前記排水溝6は、その幅及び深さを10mmに設定することとする。
【0040】
前記構造ガスケット1中の排水孔7aは、図1及び図2に示すように、下辺の排水溝6の両端近傍に構成し、図3に示すように、該排水溝6のそれぞれの部位から垂直下向きに開口させたものである。そのため各排水孔7a、7aの下端は構造ガスケット1の結合手段3の下端に開口することとなる。また前記PC外壁板K中の排水孔7bは、図1〜図3に示すように、該排水孔7aの下端と連通する上端開口部を備え、下端に該PC外壁板Kの側部から外部に開口する下端開口部を備えた構成のものである。該排水孔7bは、従って、図1〜図3に示すように、その上部は前記排水孔7aの下端に一致する上端開口部から垂下する垂直部となっており、途中は下向き傾斜する部分円弧状の傾斜部となっており、更に下部は、水平部となって、側部でPC外壁板K外に開口する下端開口部に接続している。なお該排水孔7a、7bはいずれもその径を8mmに形成する。
【0041】
前記排水ロープ8は、この実施例1では、直径が3mmで、16打のポリエステル製組紐を採用した。前記し、図1〜図3に示すように、この排水ロープ8を、排水溝6中に装入し、その両端側をそれぞれ排水孔7aを通じてPC外壁板K中の排水孔7b中に導き、更にその外端を該排水孔7bの途中にまで延長したものである。
【0042】
このような排水構造を持った複層ガラス類用ガスケットは、PC外壁板Kの開口部に設置して使用するもので、図3に示すように、該開口部に構成してある固定溝M中に前記結合手段3を装入して該開口部に取り付けることができる。このようなガスケットの取り付けはその弾性変形を利用して行うことができる。
【0043】
このように複層ガラス類用ガスケットをPC外壁板Kの開口部に取り付けた後、その下辺の取付溝2中に二つのセッティングブロック9、9を配した上で複層ガラス10を取り付ける。なおセッティングブロック9、9は取付溝2の両側部から1/4の位置に配する。該複層ガラス10の取り付けも該ガスケットの弾性変形を利用して行う。この後は、前記ジッパー5を前記ジッパー溝4に嵌め込んで該複層ガラス10の取付状態を固定する。
【0044】
以上の複層ガラス類用ガスケットの取付手順及び複層ガラス類の取付手順は従来の一般的なそれと全く同様である。
【0045】
従ってこの実施例1の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造によれば、複層ガラス10を取り付けた取付溝2中に雨水等の水が浸入した場合に、その水が該取付溝2の下方の排水溝6に流下し、更に該排水溝6に流下した雨水等は排水ロープ8に浸透し、その毛管現象により確実に導かれ、順次構造ガスケット1中の排水孔7a及びPC外壁板K中の排水孔7bを流下して後者の下端開口部付近に至り、いずれその下端開口部から外部に流下し、若しくは蒸発することにより外部に放出されることとなる。
【0046】
そのため取付溝2中の雨水等は短時間の内に除去され、複層ガラス10のシール材に悪影響を与えて、その剥離を招いたり、ガラス構造内に湿気を及ぼして曇らせる等の虞を生じさせない。
【0047】
なおこの実施例1の複層ガラス類用構造ガスケットの下辺の取付溝2に水250ccを注入して排水性能の試験をした。なおこの実施例1の複層ガラス類用ガスケットの下辺の取付溝2の長さは1000mm、排水溝6の深さ及び幅は、既述のように、10mm、排水孔7a、7bの径も、既述のように、8mmである。前記水250ccは、該複層ガラス類用構造ガスケットの下辺中央部に注水用の孔をあけて取付溝2に注入したものである。試験時の温度は21℃であった。
【0048】
他方、この実施例1の複層ガラス類用構造ガスケットと全く同一であり、排水ロープ8のみを用いていないものを比較例1として別に用意し、これにも取付溝2に同様の手順で水250ccを注入した。
【0049】
それぞれ排水時間を目視観察によって判定した。取付溝2内を観察すると、実施例1の複層ガラス類用ガスケットでは注入から1分後には完全に排水されていた。他方、比較例1では、取付溝2の隅部に水滴が残留しており、20分後でもこれは除去されていなかった。
【0050】
従ってこの実施例1の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造によれば、短時間の内に組紐製の排水ロープ8の良好な毛管現象により、スピーディかつ確実に取付溝2中の水を除去することができることが分かる。
【実施例2】
【0051】
この実施例2の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造は、図4〜図6に示すように、中桟用ガスケット部材を縦横に配置して相互を結合し、正面から見て格子状に構成した構造ガスケット21に構成したものである。
【0052】
初めにこの構造ガスケット21の構成を略述する。
この構造ガスケット21を構成する要素部材は中桟用ガスケット部材であり、特に図6に示すように、横向きの辺を構成する部分は、上下の中央ラインに沿ってそれぞれ取付溝22を備え、背面となる一側部には結合手段23が構成してある。この結合手段23は上下に結合スリット23a、23bを形成して構成したものである。正面となる他側部にはジッパー溝24がその長さ方向に沿って形成してあり、そのジッパー溝24にはジッパー25が嵌脱自在に嵌合してある。
【0053】
このような要素部材である中桟用ガスケット部材は、横向きの辺を構成するそれも縦向きの辺を構成するそれも全く同一の構成であり、同一部材を用いる。縦向きの辺を構成するそれは、以上に説明したものを90度回転させた状態で用いるものである。なおこのような要素部材である中桟用ガスケット部材の構成は一般的なものである。
【0054】
この複層ガラス類用構造ガスケット21は、各格子枠を構成する部位の上下及び両側の取付溝22、22…を各端部で相互に結合し、各格子枠ごとに取付溝22、22…は四辺形の辺に沿って結合した状態としておくものとする。
【0055】
この実施例2の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造は、図4〜図6に示すように、以上に説明した構造ガスケット21に、排水溝26、外部に開口する排水孔27a及び下方の排水溝26に連通する排水孔27bを構成し、各格子枠の内の下辺を構成することとなる排水溝26及び排水孔27a、27bに排水ロープ28を装入したことを基本とするものである。
【0056】
前記排水溝26は、図6に示すように、上方の取付溝22に於いては、その底部中央のラインに沿って更に下方に掘り下げた状態に構成した溝構造であり、図4に示すように、該取付溝22の全長さ方向に沿って構成する。以上の上方の取付溝22は、格子枠中では下辺を構成するものであり、排水溝26は、文字通り、取付溝22の底部中央の下方に掘り下げた状態に構成するものであるが、下方の取付溝22は、格子枠中では上辺を構成し、この場合は、下辺の場合と逆向きであるから取付溝22の天井部中央に堀り上げた状態に構成することになる。格子枠の側辺を構成する取付溝22では、排水溝26は、該取付溝22の最奥側面を掘り進んだ状態に構成することとなる。
【0057】
この場合も実施例1と同様に、格子枠の上辺の排水溝22は特に必要性があるわけではないが、前記したように、格子の縦横の枠のいずれの部位も全く同一に構成した中桟用ガスケット部材を用いて作成する都合上、排水溝26の構成までは、全辺で同一の構成となる。また前記排水溝26は、その幅及び深さを10mmに設定することとする。
【0058】
前記排水孔27aは、図4に示すように、最下部及び最下部から一段おきの上方の各格子枠の下辺に構成する。該排水孔27aは、図4及び図5(b)に示すように、該当する各格子枠の下辺の排水溝26の両端近傍から分岐させ、そこから、図6に示すように、斜め下方に向けて延長し、ガスケット部材自体の側部に開口させる。また前記排水溝27bは、図4に示すように、排水孔27a、27aを構成した段の間の段の格子枠及び最上段の格子枠の下辺に構成する。該排水孔27bは、図4及び図5(a)に示すように、該当する各格子枠の下辺の排水溝26の両端から分岐垂下させ、下方の格子枠の側辺の排水溝26、26に結合連通させる。なおこれらの排水孔27a、27a、27b、27bはそれらの径をいずれも8mmに形成する。
【0059】
前記排水ロープ28は、この実施例2では、直径が3mmで、16打のポリエチレン製組紐を採用した。前記し、図4〜図6に示すように、この排水ロープ28を、各格子枠の下辺の排水溝26中にその長さ方向に沿って装入し、かつその両端を、最下段の格子枠及びそこから一段おきの上方の格子枠では、それぞれその排水溝26の両端近傍に構成した排水孔27a、27a中に装入し、その間の段の格子枠では、それぞれその排水溝26の両端に構成した排水孔27b、27b中に装入したものである。排水孔27a、27aに装入した該排水ロープ28の両端は、特に図4及び図5(b)に示すように、それぞれその外端開口部近傍まで延長してあり、排水孔27b、27bに装入した該排水ロープ28の両端は、特に図4及び図5(a)に示すように、それぞれ下方の格子枠の側辺の排水溝26の上部途中まで延長してあるものである。
【0060】
このような排水構造を持った複層ガラス類用ガスケットは、建物のPC外壁板の開口部に設置して使用するもので、図6に示すように、背面側の結合手段23の結合スリット23a、23bに建物駆体から延長したフレームの結合片C、Cを装入して、これを取り付けることができる。
【0061】
このように複層ガラス類用ガスケットを建物の開口部に取り付けた後、各格子枠には、それぞれの下辺の取付溝22中に各々二つのセッティングブロック29、29を配した上で複層ガラス20を取り付ける。なおセッティングブロック29、29は各取付溝22の両側部から1/4の位置に配する。該複層ガラス20の取り付けは該ガスケットの弾性変形を利用して行う。この後は、前記ジッパー25を前記ジッパー溝24に嵌め込んで該複層ガラス20の取付状態を固定する。
【0062】
なお以上の複層ガラス類用ガスケットの取付手順及び複層ガラス類の取付手順はこのような場合の従来一般的なそれと全く同様である。
【0063】
従ってこの実施例2の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造によれば、複層ガラス20を取り付けた各格子枠の取付溝22中に雨水等の水が浸入した場合に、その水は該取付溝22の下方の排水溝26に流下し、最下段及びそこから一段おき上方の格子枠では、更にその雨水等は排水ロープ28に浸透し、その毛管現象により確実に導かれ、排水孔27a、27aの外端近傍に至り、いずれここから外部に流下し、若しくは蒸発することにより外部に放出されることとなる。またその間の格子枠では、排水溝26に流下した雨水等は排水ロープ28に浸透し、その毛管現象により確実に導かれ、排水孔27b、27bを通じて下方の格子枠側辺の排水溝26、26中に流入し、更にここを流下する。その後は、該側辺の排水溝26、26から下辺の排水溝26中に流入し、引き続いて、先に述べたように、該下辺の排水溝26中で、排水ロープ28に浸透し、その毛管現象により確実に導かれ、該排水溝26の両端近傍の排水孔27a、27aを通じて流下し、下端開口部から外部に放出されることになる。
【0064】
そのため取付溝22中の雨水等は短時間の内に除去され、複層ガラス20のシール材に悪影響を与えて、その剥離を招いたり、ガラス構造内に湿気を及ぼして曇らせる等の虞を生じさせない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】表示上の都合により結合手段の図示を省略した実施例1の複層ガラス類用構造ガスケットの概略正面図。
【図2】表示上の都合により結合手段の図示を省略した実施例1の複層ガラス類用構造ガスケットの左下部の拡大正面図。
【図3】実施例1の複層ガラス類用構造ガスケットの下辺中央部の拡大断面図。
【図4】表示上の都合によりジッパーの図示を省略した実施例2の複層ガラス類用構造ガスケットの部分の概略正面図。
【図5】(a)は図4のA部拡大図、(b)は図4のB部拡大図。
【図6】実施例2の複層ガラス類用構造ガスケットの上方の格子枠の下辺及下方の格子枠の上辺を構成する横格子片の中央部の拡大断面図。
【符号の説明】
【0066】
1、21 構造ガスケット
2、22 取付溝
3 結合手段
3a、3b 鍔体
4、24 ジッパー溝
5、25 ジッパー
6、26 排水溝
7a ガスケット中の排水孔
7b 建物駆体中の排水孔
8、28 排水ロープ
9、29 セッティングブロック
10、20 複層ガラス
23 結合手段
23a、23b 結合スリット
C 結合片
K PC外壁板
M 固定溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複層ガラス類の上辺、両側辺及び下辺の各々を支持する取付溝と、直接又は間接に建物の駆体に結合するための結合手段とを備えた複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造であって、
前記取付溝の内の少なくとも前記複層ガラス類の下辺を支持する取付溝の底部にその長さ方向に沿って排水溝を付設し、該排水溝の両端付近に該排水溝中の水分を溝外に排除する排水孔を構成し、更に前記排水溝中に排水ロープを配置し、かつ該排水ロープの両端を両側の排水孔内まで延長して構成した複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造。
【請求項2】
前記排水孔を直接に外部に開口させ又は他の部材の排水孔に連結して外部に開口させた場合は、前記排水ロープの両端部をそれぞれそれらの開口端の近傍まで延長することとした請求項1の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造。
【請求項3】
前記排水ロープとして組紐を採用した請求項1又は2の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造。
【請求項4】
前記排水ロープの材質としてポリエステル又はポリプロピレンを採用した請求項1、2又は3の複層ガラス類用構造ガスケットの排水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−104872(P2006−104872A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296046(P2004−296046)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(390026480)富双ゴム工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】