説明

複層塗膜形成方法

【課題】金属部材と樹脂部材から構成される自動車外板において、両部材間で色相差が少なく、意匠性及び外観に優れた塗膜を形成し得る塗装方法を提供する。
【解決手段】自動車外板の金属部材に、金属部材用水性メタリックベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装した後、両塗膜を同時に加熱硬化させて金属部材用複層塗膜を形成せしめ、樹脂部材に、樹脂部材用水性メタリックベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装した後、両塗膜を同時に加熱硬化させて樹脂部材用複層塗膜を形成せしめる複層塗膜形成方法において、金属部材用水性メタリックベース塗料及び樹脂部材用水性メタリックベース塗料として同じ塗料を使用し、樹脂部材の温度を金属部材の温度より5〜15℃高くすることを特徴とする自動車外板部の複層塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材と樹脂部材から構成される自動車外板にメタリック塗装する場合に、両部材間で優れたカラーマッチング性(色一致性)を確保することができる複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車外板に塗装される上塗り塗料には、優れた外観を有する上塗り塗膜を形成できることが求められており、主としてメタリック顔料を含有するベース塗料が開発されてきた。
【0003】
一般に、ベース塗料は、上塗り塗膜を複層塗膜によって形成する場合の下層側の塗膜を形成する塗料であり、該ベース塗料によって形成されるベース塗膜上に透明なクリヤー塗膜を形成した複層塗膜を用いることにより、ベース塗膜に由来する優れた意匠性と、クリヤー塗膜に由来する優れた光沢、平滑性の両方を有する塗膜外観に優れた上塗り塗膜を提供することができる。
【0004】
従来、メタリック顔料を含有するベース塗料としては、有機溶剤型塗料が主として用いられていたが、塗装塗膜焼付け時の有機溶剤の揮散による環境負荷のため、最近は、環境負荷の少ない水性メタリックベース塗料の採用が進んでいる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
ところで、自動車車体に用いられる部材は、一般に、金属部材と、いわゆる樹脂部材との二つに分けることができる。これら二つの部材においても、上記水性メタリックベース塗料及びクリヤー塗料による上塗り塗装が行われているが、これら二つの部材には、熱に対する強度や膨張率において大きな差があり、例えば、同時に塗装することができても、金属部の硬化温度を優先すると、樹脂部に変形が発生するため、同時に焼付硬化することができない。また、樹脂部の硬化条件を優先させると、金属部の硬化が十分でないことがある。よって、それぞれの部材に適した水性メタリックベース塗料及びクリヤー塗料を塗装し、個別に焼付硬化させているのが現状である。
【0006】
このため、異なる塗装ラインで塗装して得られる両部材を組み立てて、自動車車体として一体化した場合に、塗装条件の相違により、金属部とプラスチック部との間に色相のズレが発生し、自動車の外観を低下させることがあった。
【0007】
この対策として、例えば、特許文献4には、塗膜形成性樹脂と顔料を含む塗料ペーストを準備し、この塗料ペーストの一部を取り出し、これにメラミン樹脂系硬化剤を添加して高温硬化型塗料を調製し、この塗料を金属部品に塗布したのち加熱硬化させて塗膜を形成させると共に、該塗料ペーストから別途取り出し、それにイソシアネート系硬化剤を添加して低温硬化型塗料を調製し、この塗料を有機材料系部品に塗布したのち乾燥させて塗膜を形成させることからなるカラーマッチング容易な塗装方法が開示されている。しかしながら、この方法では、金属部品に塗布する塗料の硬化剤と有機材料系部品に塗布する塗料の硬化剤が異なるため、結果的に金属部品と有機材料系部品にそれぞれ組成の異なる塗料を用いることとなり、十分なカラーマッチングが得られない場合がある。
【0008】
また、特許文献5には、鋼板から構成されたボデーと該ボデーに装着される樹脂よりなる部品とにユニベースコートを塗装する工程と、自動車ボデーに塗装されたベースコート上にクリアコートを塗装する工程と、これらの塗膜を焼付けする工程と、該部品に塗装さ
れたベースコート上にクリアコートを塗装する工程と、この塗膜をアミン硬化処理する工程とを具備してなる自動車の塗装方法が開示されているが、この方法では、樹脂部品に塗装された塗料が焼付けられないため、十分な塗膜性能が得られないという問題がある。
【0009】
また、特許文献6には、最終的に組付けられる金属製部材とプラスチック製部材とに対して異種材料の樹脂を用いてそれぞれ別ラインでメタリック塗装するカラーマッチング方法であって、実際に金属製部材に塗装された塗膜の塗色を光学的に検出し、次いで該検出値に基づいてプラスチック製部材に吹付ける塗料の微粒化度を制御してプラスチック製部材の塗装を行うことによりカラーマッチングを行う方法が開示されている。しかしながら、この方法では、金属製部材に塗装された塗膜の塗色を光学的に検出する装置や塗装条件の選択及び制御を行う装置が必要である上、塗色によっては十分なカラーマッチングが得られないという問題がある。
【特許文献1】特開平2−99173号公報
【特許文献2】特開平2−115081号公報
【特許文献3】特開平5−68930号公報
【特許文献4】特開昭60−51869号公報
【特許文献5】特開昭63−302979号公報
【特許文献6】特公平6−15064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、金属部材と樹脂部材から構成される自動車外板に、水性メタリックベース塗料及びクリヤー塗料を用いて上塗り塗膜を形成する塗装方法において、金属部材と樹脂部材の両部材間で色相差が少なく、意匠性及び外観に優れた塗膜を形成し得る複層塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、今回、金属部材と樹脂部材から構成される自動車外板の塗装仕上げ方法において、特定の金属部材用クリヤー塗料及び樹脂部材用クリヤー塗料を使用し、且つ塗装時の金属部材と樹脂部材の温度差を特定範囲内とした上で、金属部材用水性メタリックベース塗料と樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)として同じ塗料を使用することにより、金属部材と樹脂部材の両部材間で色相差が少ない、意匠性及び外観に優れた自動車車体を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
かくして、本発明は、金属部材と樹脂部材から構成される自動車外板の金属部材に、金属部材用水性メタリックベース塗料(A)及び金属部材用クリヤー塗料(B)を順次塗装した後、該金属部材用水性メタリックベース塗料(A)及び該金属部材用クリヤー塗料(B)を同時に加熱硬化させて金属部材用複層塗膜を形成せしめ、且つ自動車外板の樹脂部材に、樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)及び樹脂部材用クリヤー塗料(B)を順次塗装した後、該樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)及び該樹脂部材用クリヤー塗料(B)を同時に加熱硬化させて樹脂部材用複層塗膜を形成せしめることからなる自動車外板部の複層塗膜形成方法において、
(i) 金属部材用水性メタリックベース塗料(A)及び樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)として同じ塗料を使用し、
(ii) 金属部材用クリヤー塗料(B)が、水酸基含有アクリル樹脂とメラミン樹脂を含んでなる熱硬化型塗料又はカルボキシル基含有化合物(X)とポリエポキシド(Y)を含んでなる熱硬化型塗料であり、
(iii) 樹脂部材用クリヤー塗料(B)が、水酸基含有アクリル樹脂とポリイソシアネート化合物を含んでなる熱硬化型塗料であり、そして
(iv) 樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)の塗装時の樹脂部材の表面温度(T)が、金属部材用水性メタリックベース塗料(A)の塗装時の金属部材の表面温度(T)より5〜15℃高い
ことを特徴とする金属部材と樹脂部材から構成される自動車外板部の複層塗膜形成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複層塗膜形成方法によれば、金属部材と樹脂部材から構成される自動車外板の塗装仕上げ方法において、金属部材と樹脂部材との両部材間で色相差が少ない、意匠性及び外観に優れた自動車車体を形成せしめることができる。
【0014】
以下、本発明の複層塗膜形成方法について、さらに詳細に説明する。
【0015】
金属部材
本発明において金属部材に使用される金属としては、自動車外板に使用することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等を挙げることができる。
【0016】
また、上記金属部材は、金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、更に、各種電着塗料等の下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成されたものであってもよい。
【0017】
樹脂部材
本発明において樹脂部材に使用される樹脂としては、自動車外板に使用することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、各種のFRP等を挙げることができる。
【0018】
また、上記樹脂部材は、樹脂表面に、プライマー塗膜などが施されていてもよい。
【0019】
金属部材用水性メタリックベース塗料(A
本発明において、金属部材用水性メタリックベース塗料(A)としては、例えば、熱硬化性樹脂成分、メタリック顔料及び水を必須成分として含有し、さらに必要に応じて、有機溶剤、メタリック顔料以外の着色塗料、体質顔料、表面調整剤、沈降防止剤などを含んでなる水性液状塗料を使用することができる。
【0020】
上記熱硬化性樹脂成分としては、水酸基などの架橋性官能基及びカルボキシル基などの親水性官能基を有する、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物などの架橋剤とからなるそれ自体既知の塗料用樹脂組成物を使用することができる。
【0021】
なかでも、上記基体樹脂として、水酸基含有ポリエステル樹脂及び/又は水酸基含有アクリル樹脂を使用し、上記架橋剤として、アミノ樹脂及び/又はブロックポリイソシアネート化合物を使用することが好適である。
【0022】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂は、例えば、多塩基酸と多価アルコールとをそれ自体既知の方法で水酸基過剰の条件下にエステル化反応せしめることによって得ることができる。該多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ピロメリット酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ハイミック酸、コハク酸、ヘット酸及びこれらの無水物などが挙げられ、また、該多価アルコールは1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。ポリエステル樹脂への水酸基の導入は、例えば、多価アルコール成分として、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコールを併用することによって行なうことができる。得られる水酸基含有ポリエステル樹脂は、一般に40〜170mgKOH/g、特に60〜100mgKOH/gの範囲内の水酸基価、一般に0〜100mgKOH/g、特に15〜70mgKOH/gの範囲内の酸価、及び一般に1,000〜50,000、特に2,000〜30,000の範囲内の数平均分子量を有していることが好ましい。
【0023】
前記水酸基含有アクリル樹脂は、例えば、水酸基含有不飽和単量体とアクリル系単量体及びさらに必要に応じてその他の不飽和単量体を共重合せしめることによって製造することができる。該水酸基含有不飽和単量体は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和二重結合をそれぞれ1個以上有する化合物であり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が2〜10のアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸との等モル付加物などが挙げられる。該アクリル系単量体には、(メタ)アクリル酸と炭素数が1〜24のモノアルコールとのモノエステル化物が包含され、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。
【0024】
その他の不飽和単量体には、上記の水酸基含有不飽和単量体及びアクリル系単量体以外の、1分子中に1個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物が包含され、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレートなどのカルボキシル基含有不飽和化合物;グリシジル(メタ)アクリレート,アリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有不飽和化合物;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレ−ト、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどのパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの含窒素アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の重合性アミド類;2−ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリドン、4−ビニルピリジンなどの芳香族含窒素モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の重合性ニトリルなどが挙げられる。
【0025】
水酸基含有アクリル樹脂は、上記の水酸基含有不飽和単量体、アクリル系単量体及びさらに必要に応じてその他の不飽和単量体を、溶液重合などのそれ自体既知の方法により共重合せしめることによって製造することができ、得られる水酸基含有アクリル樹脂は、一般に40〜120mgKOH/g、特に60〜100mgKOH/gの範囲内の水酸基価
、一般に0〜100mgKOH/g、特に15〜50mgKOH/gの範囲内の酸価、及び一般に2000〜100000、特に3000〜50000の範囲内の数平均分子量を有していることが好ましい。
【0026】
水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有アクリル樹脂は、水溶化又は水分散化を容易にするために、それらに含まれることがあるカルボキシル基の一部又はすべてをアミン化合物で中和することが好ましい。アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの3級アミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、モルホリンなどの2級アミン;プロピルアミン、エタノールアミンなどの1級アミンなどが挙げられる。アミンの中和量は、通常、カルボキシル基1当量あたり、0.5〜1当量、好ましくは0.7〜1当量の範囲内とすることができる。
【0027】
また、前記アミノ樹脂としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られる部分もしくは完全メチロール化アミノ樹脂が挙げられ、該アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。この部分もしくは完全メチロール化アミノ樹脂をアルコールによって部分的にもしくは完全にエーテル化したものも使用することができ、エーテル化に用いられるアルコールの例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0028】
上記アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましく、中でも、部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を、メチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルアルコール及びブチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂などのアルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましい。
【0029】
また、上記メラミン樹脂は、通常600〜5,000、特に800〜4,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0030】
また、メラミン樹脂を架橋剤として使用する場合には、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸や、これらの酸とアミンとの塩を触媒として使用することができる。
【0031】
前記ブロック化ポリイソシアネート化合物としては、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をオキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、メルカプタン等のブロック剤でブロックしたものを使用することができる。
【0032】
基体樹脂と架橋剤との配合比率は、これら両者の合計固形分質量に基づき、前者は50〜90%、特に60〜80%、後者は50〜10%、特に40〜20%の範囲内が適している。
【0033】
前記メタリック顔料は、塗膜にキラキラとした光輝感や光干渉性模様を付与することができる顔料であり、具体的には、ノンリーフィング型もしくはリーフィング型アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲
母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母などから選ばれる少なくとも1種の顔料を使用することができる。なかでも、アルミニウム顔料を使用することが特に好適である。
【0034】
上記メタリック顔料はりん片状であることが好ましい。また、メタリック顔料としては、長手方向寸法が1〜100μm、特に5〜40μm、厚さが0.0001〜5μm、特に0.001〜2μmの範囲内にあるものが適している。
【0035】
上記メタリック顔料の配合量は、塗料中の樹脂固形分質量を基準として、通常1〜40質量%、好ましくは5〜35質量%、さらに好ましくは8〜30質量%の範囲内とすることができる。
【0036】
また、前記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ナフトールエローS、ハンザエロー、ピグメントエローL、ベンジジンエロー、パーマネントエロー、パーマネントオレンジ、酸化鉄、アンバー、ベンガラ、パーマネントレッド、キナクリドン系赤顔料、コバルト紫、ファストバイオレット、メチルバイオレットレーキ、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、インジゴ、クロムグリーン、ピグメントグリーンB、フタロシアニングリーンなどが挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0037】
また、前記体質顔料としては、例えば、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、マイカ粉などの体質顔料等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A
本発明では、樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)として、上記金属部材用水性メタリックベース塗料(A)と同じ塗料を使用する。これにより、塗膜状態での色一致性を確保するために従来行われていた樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)の調色工程を省略することができ、さらに塗装に必要な塗料の品種を半減させることができる。
【0039】
金属部材用クリヤー塗料(B
本発明においては、金属部材用クリヤー塗料(B)として、水酸基含有アクリル樹脂とメラミン樹脂の組み合わせ又はカルボキシル基含有化合物とポリエポキシドの組み合わせを熱硬化性樹脂成分として含んでなり、さらに必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有し、さらにまた体質顔料、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤、有機溶剤などを適宜含有する熱硬化型塗料が使用される。
【0040】
上記水酸基含有アクリル樹脂としては、前記金属部材用水性メタリックベース塗料(A)の説明において水酸基などの架橋性官能基を有する基体樹脂として例示した水酸基含有アクリル樹脂などを好適に使用することができる。これらの水酸基含有樹脂は、一般に10〜120mgKOH/g、特に40〜80mgKOH/gの範囲内の水酸基価、一般に0〜100mgKOH/g、特に0〜20mgKOH/g、さらに特に1〜15mgKOH/gの範囲内の酸価、及び一般に1,000〜100,000、特に2,000〜50,000の範囲内の数平均分子量を有していることが好ましい。
【0041】
また、上記メラミン樹脂としては、前記金属部材用水性メタリックベース塗料(A)の説明において例示したメラミン樹脂などを好適に使用することができる。
【0042】
また、上記カルボキシル基含有化合物は、分子中にカルボキシル基を有する化合物であり、通常、酸価が50〜500mgKOH/g、好ましくは80〜300mgKOH/gのものである。
【0043】
上記カルボキシル基含有化合物としては、例えば、下記の重合体(1)〜(3)及び化合物(4)を挙げることができる。
【0044】
重合体(1):分子中に酸無水基をハーフエステル化してなる基を有する重合体。ここで、酸無水基をハーフエステル化してなる基とは、酸無水基に脂肪族モノアルコールを付加せしめて開環させ(即ち、ハーフエステル化し)、得られるカルボキシル基とカルボン酸エステル基とからなる基を意味する。以下、この基を単にハーフエステル基ということがある。
【0045】
重合体(1)は、例えば、ハーフエステル基を有する不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを、常法により共重合させることによって容易に得ることができる。また、ハーフエステル基を有する不飽和モノマーに代えて、酸無水基を有する不飽和モノマーを用いて、同様に共重合させた後、該酸無水基をハーフエステル化することによっても容易に得られる。
【0046】
酸無水基を有する不飽和モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられ、また、ハーフエステル基を有する不飽和モノマーとしては、上記酸無水基を有する不飽和モノマーの酸無水基をハーフエステル化したものなどが挙げられる。なお、ハーフエステル化は、上記のとおり、共重合反応の前後のいずれに行ってもよい。
【0047】
ハーフエステル化に使用される脂肪族モノアルコールとしては、低分子量のモノアルコール類、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、イソブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどが挙げられる。ハーフエステル化の反応は、通常の方法に従い、通常、室温ないし80℃程度の温度で、必要に応じ3級アミンを触媒として用いて行なうことができる。
【0048】
その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、水酸基含有不飽和モノマー、(メタ)アクリル酸エステル類、ビニルエーテル又はアリールエーテル、オレフィン系化合物及びジエン化合物、炭化水素環含有不飽和モノマー、含窒素不飽和モノマー、加水分解性アルコキシシリル基含有アクリル系モノマーなどを挙げることができる。
【0049】
水酸基含有不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸とのモノエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルポリオールと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとのモノエーテル;無水マレイン酸や無水イタコン酸のような酸無水基含有不飽和化合物と、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類とのモノエステル化物又はジエステル化物;ヒドロキシエチルビニルエーテルのようなヒドロキシアルキルビニルエーテル類;アリルアルコールなど;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;α,β−不飽和カルボン酸と、「カージュラE10P」(ジャパンエポキシレジン製、商品名)やα−オレフィンエポキシドのようなモノエポキシ化合物との付加物;グリシジル(メタ)アクリレ
ートと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸、脂肪酸類のような一塩基酸との付加物;上記水酸基含有不飽和モノマーとラクトン類(例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン)との付加物などを挙げることができる。
【0050】
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸メトキシブチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシブチル、メタクリル酸エトキシブチルなどのアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルエステルなどが挙げられる。
【0051】
ビニルエーテル又はアリールエーテルとしては、例えば、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテルなどの鎖状アルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのシクロアルキルビニルエーテル類;フェニルビニルエーテル、トリビニルエーテルなどのアリールビニルエーテル類、ベンジルビニルエーテル、フェネチルビニルエーテルなどのアラルキルビニルエーテル類;アリルエチルエーテルなどのアリルエーテル類などが挙げられる。
【0052】
オレフィン系化合物及びジエン化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。
【0053】
炭化水素環含有不飽和モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェニルプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、p−tert−ブチル−安息香酸と(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとのエステル化物、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0054】
含窒素不飽和モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの含窒素アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの重合性アミド類;2−ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリドン、4−ビニルピリジンなどの芳香族含窒素モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの重合性ニトリル;アリルアミンなどが挙げられる。
【0055】
加水分解性アルコキシシリル基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランなどを挙げることができる。
【0056】
共重合法としては、一般的な不飽和モノマーの重合法を用いることができるが、汎用性やコストなどを考慮して、有機溶剤中における溶液型ラジカル重合法が最も適している。即ち、キシレン、トルエンなどの芳香族溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3−メトキシブチルアセテートなどのエステル系溶剤;n−ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤などの溶剤中で、アゾ系触媒、過酸化物系触媒などの重合開始剤の存在下に、60〜150℃程度の温度で共重合反応を行なうことによって、容易に目的の重合体を得ることができる。
【0057】
ハーフエステル基又は酸無水基を有する不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーの各モノマーの共重合割合は、通常、全モノマー中、次のような割合とするのが適当である。即ち、ハーフエステル基又は酸無水基を有する不飽和モノマーは、硬化性と貯蔵安定性の観点から、5〜40重量%程度、好ましくは10〜30重量%とすることができる。また、その他の重合性不飽和モノマーは、60〜95重量%程度、好ましくは70〜90重量%であるのが適当である。さらに、その他の重合性不飽和モノマーのうちスチレンの使用量は、硬化塗膜の耐候性の観点から、20重量%程度までとするのが適当である。なお、酸無水基を有する不飽和モノマーを使用した場合は、重合後に、ハーフエステル化することができる。
【0058】
重合体(1)は、2,000〜20,000の範囲内の数平均分子量を有するアクリル系重合体であるのが好ましい。該重合体の数平均分子量が2,000より小さいと、硬化塗膜の耐候性が低下する傾向にあり、反対に20,000を越えると、ポリエポキシドとの相溶性が低下する傾向が見られる。
【0059】
重合体(2):分子中にカルボキシル基を有する重合体。
【0060】
重合体(2)は、硬化塗膜の耐候性及びポリエポキシド(B)との相溶性の観点から、通常、2,000〜20,000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましい。
【0061】
重合体(2)は、カルボキシル基含有不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを、前記重合体(1)の場合と同様の方法により共重合させることによって容易に得ることができる。
【0062】
該カルボキシル基含有不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、また、その他の重合性不飽和モノマーとしては、前記重合体(1)で例示した(メタ)アクリル酸エステル類、ビニルエーテル又はアリールエーテル、オレフィン系化合物及びジエン化合物、炭化水素環含有不飽和モノマー、含窒素不飽和モノマーなどを挙げることができる。
【0063】
重合体(3):カルボキシル基含有ポリエステル系重合体。
【0064】
該カルボキシル基含有ポリエステル系重合体は、通常、1,500〜20,000程度
の数平均分子量を有するのが適当である。
【0065】
該カルボキシル基含有ポリエステル系重合体は、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールと、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などの多価カルボン酸との縮合反応によって容易に得ることができる。例えば、多価カルボン酸のカルボキシル基過剰配合の条件下で1段階の反応により、カルボキシル基含有ポリエステル系重合体を得ることができ、また、逆に多価アルコールの水酸基過剰配合の条件下でまず水酸基末端のポリエステル系重合体を合成した後、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸などの酸無水基含有化合物を後付加させることによっても、カルボキシル基含有ポリエステル系重合体を得ることができる。
【0066】
化合物(4):ポリオールと1,2−酸無水物との反応により生成するハーフエステル。
【0067】
該ハーフエステルは、通常、400〜1,00程度の数平均分子量を有することができ、エポキシ基と高い反応性を有しているので高固形分塗料の形成に役立つ。
【0068】
該ハーフエステルは、ポリオールと1,2−酸無水物とを、酸無水物の開環反応が起こり且つ実質上ポリエステル化反応が起こらない条件下で反応することにより得られ、その反応生成物は一般に低分子量でありかつ狭い分子量分布を有している。また、該反応生成物は塗料組成物中において低い揮発性有機物含有量を示し、しかも、形成される塗膜に優れた耐酸性などを付与する。
【0069】
該ハーフエステルは、例えば、ポリオールと1,2−酸無水物とを、不活性雰囲気、例えば窒素雰囲気中で溶媒の存在下に反応させることにより得ることができる。好適な溶媒としては、例えば、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;その他の有機溶媒、例えばジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0070】
反応温度は150℃程度以下の低い温度が好ましく、具体的には、通常70〜150℃程度が好ましく、特に90〜120℃程度が好ましい。反応時間は基本的には反応温度に多少依存して変化するが、通常、10分〜24時間程度とすることができる。
【0071】
酸無水物:ポリオールの当量比は、酸無水物を単官能として計算して、約0.8:1〜1.2:1の範囲内で所望のハーフエステルを最大限に得ることができる。
【0072】
所望のハーフエステルの調製に用いられる酸無水物は、酸部分の炭素原子を除いて炭素数が2〜30の範囲内にあるものである。そのよう酸無水物の例としては、脂肪族酸無水物、環状脂肪族酸無水物、オレフィン系酸無水物、環状オレフィン系酸無水物及び芳香族酸無水物が挙げられる。これらの酸無水物は、当該酸無水物の反応性又は得られたハーフエステルの特性に悪影響を与えない限りにおいて、置換基を有していてもよい。かかる置換基の例としては、クロロ基、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。酸無水物の例としては、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、アルキルヘキサヒドロフタル酸無水物(例えばメチルヘキサヒドロフタル酸無水物)、テトラフルオロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、クロレンド酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、マレイン酸無水物などが挙げられる。
【0073】
上記酸無水物のハーフエステル化のために使用し得るポリオールとしては、炭素数2〜20、特に炭素数2〜10のポリオール、好ましくはジオール類、トリオール類及びそれらの混合物が挙げられる。具体的には、脂肪族ポリオール、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、グリセロール、1,2,3−ブタントリオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ペンタエリスリトール、1,2,3,4−ブタンテトラオールなどが挙げられ、また、芳香族ポリオール、例えば、ビスフェノールA、ビス(ヒドロキシメチル)キシレンなどを用いることもできる。
【0074】
以上に述べたカルボキシル基含有化合物と組み合わせて使用されるポリエポキシド)は、分子中にエポキシ基を有する化合物であり、通常、エポキシ基含有量が0.8〜15ミリモル/g、特に1.2〜10ミリモル/gの範囲内にあるものが好適である。
【0075】
ポリエポキシドとしては、例えば、エポキシ基含有アクリル系重合体;脂環式エポキシ基含有アクリル系重合体;ジグリシジルエーテル、2−グリシジルフェニルグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル化合物;ビニルシクロヘキセンジオキサイド、レモネンジオキサイドなどのグリシジル基及び脂環式エポキシ基含有化合物;ジシクロペンタジエンジオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エポキシシクロヘキセンカルボン酸エチレングリコールジエステル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレートなどの脂環式エポキシ基含有化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0076】
これらのうち、数平均分子量2,000〜20,000の範囲内にあるエポキシ基含有アクリル系重合体又は脂環式エポキシ基含有アクリル系重合体が好適に用いられる。
【0077】
該エポキシ基含有アクリル系重合体又は脂環式エポキシ基含有アクリル系重合体は、エポキシ基含有不飽和モノマー又は脂環式エポキシ基含有不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを、前記重合体(1)の場合と同様の方法により共重合させることによって容易に得ることができる。
【0078】
エポキシ基含有不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどを挙げることができ、また、脂環式エポキシ基含有不飽和モノマーとしては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0079】
その他の重合性不飽和モノマーとしては、前記重合体(1)について例示した水酸基含有不飽和モノマー、(メタ)アクリル酸エステル類、ビニルエーテル又はアリールエーテル、オレフィン系化合物及びジエン化合物、炭化水素環含有不飽和モノマー、含窒素不飽和モノマー、加水分解性アルコキシシリル基含有アクリル系モノマーなどを挙げることができる。
【0080】
前記カルボキシル基含有化合物及びポリエポキシドの配合割合は、塗膜の硬化性などの観点から、カルボキシル基含有化合物のカルボキシル基とポリエポキシドのエポキシ基と
の当量比で1:0.5〜0.5:1、特に1:0.7〜0.7:1の範囲内が好ましい。
【0081】
金属部材用クリヤー塗料(B)には、必要に応じて、硬化触媒を配合することができる。使用し得る硬化触媒としては、カルボキシル基含有化合物中のカルボキシル基とエポキシド中のエポキシ基との間の開環エステル化反応に有効な触媒として、例えば、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルフォスフォニウムブロマイド、トリフェニルベンジルフォスフォニウムクロライドなどの4級塩触媒;トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン化合物などを挙げることができる。これらのうち、4級塩触媒が好適である。さらに、該4級塩に該4級塩とほぼ当量のジブチルリン酸などの酸性リン酸化合物を配合したものは、上記触媒作用を損なうことなく、塗料の貯蔵安定性を向上させ且つ塗料の電気抵抗値の低下によるスプレー塗装適正の低下を防ぐことができる点から好適である。
【0082】
上記硬化触媒を配合する場合のその配合割合は、通常、カルボキシル基含有化合物)及びポリエポキシドの固形分合計量100質量部に対して0.01〜5質量部程度であるのが好ましい。
【0083】
樹脂部材用クリヤー塗料(B
本発明においては、樹脂部材用クリヤー塗料(B)として、水酸基含有アクリル樹脂とポリイソシアネート化合物の組み合わせを熱硬化性樹脂成分として含んでなり、さらに必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有し、さらにまた体質顔料、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤、有機溶剤などを適宜含有する熱硬化型塗料が使用される。
【0084】
上記水酸基含有アクリル樹脂としては、前記金属部材用水性メタリックベース塗料(A)の説明において水酸基などの架橋性官能基を有する基体樹脂として例示した水酸基含有アクリル樹脂などを好適に使用することができる。これらの水酸基含有樹脂は、一般に10〜120mgKOH/g、特に40〜80mgKOH/gの範囲内の水酸基価、一般に0〜100mgKOH/g、特に0〜20mgKOH/g、さらに特に1〜15mgKOH/gの範囲内の酸価、及び一般に1,000〜100,000、特に2,000〜50,000の範囲内の数平均分子量を有していることが好ましい。
【0085】
前記ポリイソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上の遊離(非ブロック)イソシアネート基を有する化合物を使用することができ、具体的には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネートなどの脂肪族系ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−ジイソシアネート、ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロペンタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環式系ジイソシアネート化合物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トルイジンジイソシアネ−ト、ジフェニルエーテルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、ジメチル−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;トリフェニルメタン−トリイソシアネート、トリイソシアナトベンゼン、トリイソシアナトトルエン、ジメチルジフェニルメタン−テトライソシアネートなどの3個以上のイ
ソシアネ−ト基を有するポリイソシアネート化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリアルキレングリコール、トリメチロ−ルプロパン、ヘキサントリオ−ルなどのポリオールの水酸基に対してイソシアネート基が過剰量となる量のポリイソシアネート化合物を反応させてなる付加物;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などのジイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌル環タイプ付加物などが挙げられる。
【0086】
上記樹脂部材用クリヤー塗料(B)において、水酸基含有アクリル樹脂とポリイソシアネート化合物の使用比率は、特に制限されるものではなく、これら成分の種類等に応じて適宜選択することができるが、一般には、両成分の合計固形分比で、水酸基含有アクリル樹脂は50〜90質量%、特に60〜80質量%、ポリイソシアネート化合物は10〜50質量%、特に20〜40質量%の範囲内が好ましい。
【0087】
また、上記樹脂部材用クリヤー塗料(B)は、貯蔵安定性の観点から、上記水酸基含有アクリル樹脂を含有する主剤と、上記ポリイソシアネート化合物を含有する硬化剤とからなる二液型塗料とすることが好ましい。
【0088】
複層塗膜形成方法
本発明においては、金属部材と樹脂部材から構成される自動車外板の金属部材に、以上に述べた金属部材用水性メタリックベース塗料(A)及び金属部材用クリヤー塗料(B)を順次塗装した後、該金属部材用水性メタリックベース塗料(A)及び該金属部材用クリヤー塗料(B)を同時に加熱硬化させることにより金属部材用複層塗膜が形成され、一方、自動車外板の樹脂部材に、以上に述べた樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)及び樹脂部材用クリヤー塗料(B)を順次塗装した後、該樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)及び該樹脂部材用クリヤー塗料(B)を同時に加熱硬化させることにより樹脂部材用複層塗膜が形成される。
【0089】
本発明の複合塗膜形成方法は、樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)のが塗装時の樹脂部材の表面温度(T)を、金属部材用水性メタリックベース塗料(A)の塗装時の金属部材の表面温度(T)より5〜15℃高く、好ましくは8〜14℃高く設定する点に一つの特徴を有するものであり、それによって、金属部材と樹脂部材との間で優れたカラーマッチング性(色一致性)を確保することができる。上記温度の設定は、例えば、樹脂部材を予め加熱することにより、樹脂部材の表面温度(T)を、金属部材用水性メタリックベース塗料(A)が塗装される時の金属部材の表面温度(T)より5〜15℃高くした後、該樹脂部材上に樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)を塗装することによって行うことができる。その際、一般に、金属部材の表面温度(T)は20〜25℃の範囲内そして樹脂部材の表面温度(T)は40℃以下であるのが望ましい。
【0090】
本発明において、樹脂部材の表面温度(T)及び金属部材の表面温度(T)は、各部材の塗装の対象となる領域の表面部分の温度をいい、各部材の表面に1層又は2層以上の塗膜が形成されている場合、該塗膜の表面部分の温度である。
【0091】
金属部材用水性メタリックベース塗料(A)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で5〜40μm、好ましくは10〜30μmの範囲内とすることができる。
【0092】
塗装された金属部材用水性メタリックベース塗料(A)の塗膜は、例えば、プレヒート、エアブローなどにより、約50〜約110℃、好ましくは約60〜約90℃の温度で1〜60分間程度加熱することにより乾燥することができる。
【0093】
上記の如くして形成される金属部材用水性メタリックベース塗料(A)の塗膜上には、さらに、金属部材用クリヤー塗料(B)が塗装される。
【0094】
金属部材用クリヤー塗料(B)は、金属部材用水性メタリックベース塗料(A)の塗膜面に、それ自体既知の方法、例えば、エアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、通常、乾燥膜厚で10〜60μm、好ましくは25〜50μmの範囲内することができる。
【0095】
以上に述べた如くして形成される金属部材用水性メタリック塗膜及び金属部材用クリヤー塗膜からなる複層塗膜は、通常の塗膜の焼付け手段により、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などにより、120〜180℃、好ましくは130〜160℃の温度で約20〜約40分間程度加熱して同時に硬化させることができる。
【0096】
また、樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)の塗装は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で5〜40μm、好ましくは10〜30μmの範囲内とすることができる。
【0097】
塗装された樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)の塗膜は、例えば、プレヒート、エアブローなどにより、約50〜約110℃、好ましくは約60〜約90℃の温度で1〜60分間程度加熱することにより乾燥することができる。
【0098】
上記の如くして形成される樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)の塗膜上には、さらに、樹脂部材用クリヤー塗料(B)が塗装される。
【0099】
樹脂部材用クリヤー塗料(B)は、樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)の塗膜面に、それ自体既知の方法、例えば、エアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、通常、乾燥膜厚で10〜60μm、好ましくは25〜50μmの範囲内とすることができる。
【0100】
以上に述べた如くして形成される金属部材用水性メタリック塗膜及び金属部材用クリヤー塗膜からなる複層塗膜は、通常の塗膜の焼付け手段により、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などにより、50〜140℃、好ましくは60〜120℃、さらに好ましくは90〜120℃の温度で約20〜約40分間程度加熱して同時に硬化させることができる。
【0101】
かくして、本発明の複層塗膜形成方法によれば、金属部材と樹脂部材との両部材間で色相差が無い、意匠性及び外観に優れた自動車車体を形成せしめることができる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0103】
アクリル樹脂エマルションの製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水32.1部及び「NEWCOL 562SF」(商品名、日本乳化剤社製、乳化剤)0.267部を加え、80℃に加温してから、脱イオン水1.110部に溶解した過硫酸アンモニウム0.033部及び下記のプレエマルション1の全量の1%量を投入し、同温度で20分間熟成した。その後、メチルメタクリレート14.45部、n−ブチルメタクリレート7.12部、アリルメタクリレート0.67部、脱イオン水21.63部及び「NEWCOL 562SF」0.267部を混合し、プレエマルション化したもの(プレエマルション1)を2時間かけて反応容器に滴下し、その後、1時間熟成した。
【0104】
ついで、メチルメタクリレート2.29部、n−ブチルメタクリレート2.48部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.98部、メタクリル酸0.78部、脱イオン水9.77部及び「NEWCOL 562SF」0.114部を混合し、プレエマルション化したもの(プレエマルション2)を2時間かけて反応容器に滴下した。また、上記プレエマルション2と同時に過硫酸アンモニウム0.003部を脱イオン水1.110部に溶解したものを2時間かけて滴下した。その後、1時間熟成して、脱イオン水19.53部に2−(ジメチルアミノ)エタノール0.294部を溶解したものを投入し、固形分含有率25%、pH8.5及び粒子径120nmのアクリル樹脂エマルション(AC)を得た。
【0105】
水酸基含有ポリエステル樹脂水溶液の製造
製造例2
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、ネオペンチルグリコール78.75部(0.75モル)、トリメチロールプロパン34.13部(0.25モル)、アジピン酸65.7部(0.45モル)及びイソフタル酸74.7部(0.45モル)を仕込み、3時間を要して150℃から230℃に昇温し、同温度で1.5時間維持して縮合水を系外に流出させながら縮合反応を行なった。その後、トルエン3部を加えて還流させながら、攪拌と脱水を継続して行い、カルボキシル基による酸価が8mgKOH/gになるまで反応せしめ、生成する水をトルエンと共沸させて除去した。その後、温度を170℃に下げてから、無水トリメリット酸6.72部(0.035モル)を投入し、同温度で30分間熟成してから、ジエチレングリコールモノブチルエーテル20部を加え、温度を80℃に下げた。かくして酸価が25mgKOH/g、水酸基価が93mgKOH/g及び数平均分子量が1,700の水溶性ポリエステルを得た。これに2−(ジメチルアミノ)エタノール9部を加えて中和し、脱イオン水で固形分含有率35%の水酸基含有ポリエステル樹脂水溶液(PE)を得た。
【0106】
メタリック顔料濃厚液の製造
製造例3
攪拌混合容器にエチレングリコールモノブチルエーテル35部を入れ、アルミニウム顔料ペースト「GX−180A」(商品名、旭化成メタルズ社製、金属含有量74%)19部、リン酸基含有樹脂溶液(注1)8部及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、メタリック顔料濃厚液(P1)を得た。
【0107】
(注1) リン酸基含有樹脂溶液: 温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、メトキシプロパノール27.5部及びイソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、リン酸基含有重合性モノマー(注2)15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部及びt−ブチルパーオキシオクタノエート
4部からなる混合物121.5部を4時間で上記の混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間で滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分濃度50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。本樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、4−ヒドロキシブチルアクリレートに由来する水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
【0108】
(注2) リン酸基含有重合性モノマー: 温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、モノブチルリン酸57.5部及びイソブタノール41部を入れ、90℃に昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。リン酸基による酸価は285mgKOH/gであった。
【0109】
製造例4
製造例3において、アルミニウム顔料ペースト「GX−180A」(商品名、旭化成メタルズ社製、金属含有量74%)16部を、アルミニウム顔料ペースト「MH−8801」(商品名、旭化成メタルズ社製、金属含有量64%)18部とする以外は、製造例3と同様にしてメタリック顔料濃厚液(P2)を得た。
【0110】
水性メタリックベース塗料の製造
製造例5
製造例1で得たアクリルエマルション(AC)200部、製造例2で得たポリエステル水溶液(PE)57部、製造例3で得たメタリック顔料濃厚液(P1)62部及び「サイメル327」(メラミン樹脂、商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、固形分90%)33部を均一に混合し、更に、脱イオン水及び2−(ジメチルアミノ)エタノールを加えて、pH8.0及び固形分含有率25%の水性メタリックベース塗料(A1)を得た。
【0111】
製造例6
製造例5において、製造例3で得たメタリック顔料濃厚液(P1)62部の代わりに製造例4で得たメタリック顔料濃厚液(P2)64部を用いる以外は、製造例5と同様にして、pH8.0及び固形分含有率25%の水性メタリックベース塗料(A2)を得た。
【0112】
塗膜形成方法
上記製造例4及び5で得た水性メタリックベース塗料(A1)及び(A2)と、下記クリヤー塗料を用いて、以下のようにしてそれぞれ試験板を作製し、評価試験を行なった。
【0113】
クリヤー塗料(B1): マジクロンKINO−1210(商品名、関西ペイント社製、カルボキシル基含有化合物とポリエポキシドを含有する熱硬化型クリヤー塗料)。
【0114】
クリヤー塗料(B2): マジクロンTC−71(商品名、関西ペイント社製、水酸基含有アクリル樹脂とメラミン樹脂を含有する熱硬化型クリヤー塗料)。
【0115】
クリヤー塗料(B3): ソフレックス#7172(商品名、関西ペイント社製、水酸基含有アクリル樹脂とポリイソシアネート化合物を含有する熱硬化型クリヤー塗料)。
【0116】
<試験用被塗物の作製>
りん酸亜鉛処理された冷延鋼板に「エレクロンGT−10」(商品名、関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を乾燥膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させてから、その上に中塗り塗料「アミラックTP−65−2」(商品名、
関西ペイント社製、有機溶剤型中塗り塗料)を乾燥膜厚40μmになるように塗装し、140℃で30分間加熱して硬化させ、金属部材の試験用被塗物とした。
【0117】
また、ポリオレフィン素材「TSOP−1(TC−6)」(商品名、日本ポリケム社製)面に「アスカレックス#2850」(商品名、関西ペイント社製、プライマー塗料)を乾燥膜厚10μmになるようにエアスプレー塗装し、80℃で3分間加熱して乾燥させ、樹脂部材の試験用被塗物とした。
【0118】
実施例1
前記金属部材の試験用被塗物の温度を23℃とした後、製造例4で得た水性メタリックベース塗料(A1)を、回転霧化型のベル型塗装機を用いて、乾燥膜厚15μmとなるように塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、その未硬化のメタリックベース塗面上に上記クリヤー塗料(B1)を乾燥膜厚40μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱してこの両塗膜を同時に硬化させることにより金属部材の試験板(M1)を作製した。
【0119】
実施例2〜6、比較例1〜6
実施例1における水性メタリックベース塗料(A1)を下記表1に示した水性メタリックベース塗料に代え、クリヤー塗料(B1)を下記表1に示したクリヤー塗料に代える以外は、実施例1と同様にして金属部材の試験板(M2)〜(M12)を作製した。
【0120】
【表1】

実施例7
前記樹脂部材の試験用被塗物の温度を30℃とした後、製造例4で得た水性メタリックベース塗料(A1)を、回転霧化型のベル型塗装機を用いて、乾燥膜厚15μmとなるように塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、その未硬化のメタリックベース塗面上に上記クリヤー塗料(B3)を乾燥膜厚40μmとなるように塗装し、7分間放置した後、120℃で30分間加熱してこの両塗膜を同時に硬化させることにより樹脂部材の試験板(R1)を作製した。
【0121】
実施例8〜12、比較例7〜12
実施例7における試験用被塗物の温度を下記表2に示す温度に変更し、水性メタリックベース塗料(A1)を下記表2に示す水性メタリックベース塗料に代える以外は、実施例7と同様にして樹脂部材の試験板(R2)〜(R12)を作製した。
【0122】
【表2】

評価試験
上記実施例1〜12及び比較例1〜12で得られた各試験板(M1)〜(M12)及び(R1)〜(R12)について、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を下記表3に示す。
【0123】
<試験方法>
色一致性: 各試験板について、多角度分光測色計MA−68(商品名、X−Rite社製)を用いて、受光角15度のL値(明度)を測定し、下記表3の組み合わせにおける金属部材の試験板のL値と樹脂部材の試験板のL値の差を算出した。
【0124】
仕上り外観: 各試験板を目視観察し、ツヤビケ、オレンジピール、ハジキ、ヘコミなどの異常発生の有無を以下の基準で評価した。評価結果を下記表3に示す。
【0125】
○:これらの異常発生が全く認められない、
△:これらの異常発生が少し認められた、
×:これらの異常発生が顕著に認められた。
【0126】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材と樹脂部材から構成される自動車外板の金属部材に、金属部材用水性メタリックベース塗料(A)及び金属部材用クリヤー塗料(B)を順次塗装した後、該金属部材用水性メタリックベース塗料(A)及び該金属部材用クリヤー塗料(B)を同時に加熱硬化させて金属部材用複層塗膜を形成せしめ、且つ自動車外板の樹脂部材に、樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)及び樹脂部材用クリヤー塗料(B)を順次塗装した後、該樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)及び該樹脂部材用クリヤー塗料(B)を同時に加熱硬化させて樹脂部材用複層塗膜を形成せしめることからなる自動車外板部の複層塗膜形成方法において、
(i) 金属部材用水性メタリックベース塗料(A)及び樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)として同じ塗料を使用し、
(ii) 金属部材用クリヤー塗料(B)が、水酸基含有アクリル樹脂とメラミン樹脂を含んでなる熱硬化型塗料又はカルボキシル基含有化合物とポリエポキシドを含んでなる熱硬化型塗料であり、
(iii) 樹脂部材用クリヤー塗料(B)が、水酸基含有アクリル樹脂とポリイソシアネート化合物を含んでなる熱硬化型塗料であり、そして
(iv) 樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)の塗装時の樹脂部材の表面温度(T)が、金属部材用水性メタリックベース塗料(A)の塗装時の金属部材の表面温度(T)より5〜15℃高い
ことを特徴とする金属部材と樹脂部材から構成される自動車外板部の複層塗膜形成方法。
【請求項2】
金属部材用水性メタリックベース塗料(A)及び金属部材用クリヤー塗料(B)を130〜180℃で同時に加熱硬化させて金属部材用複層塗膜を形成せしめ、且つ樹脂部材用水性メタリックベース塗料(A)及び樹脂部材用クリヤー塗料(B)を60〜120℃で同時に加熱硬化させて樹脂部材用複層塗膜を形成せしめる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法により塗装された自動車車体。

【公開番号】特開2008−23454(P2008−23454A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198685(P2006−198685)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】