説明

複層皮膜形成方法

【課題】 アルミニウム又はアルミニウム合金において、耐候性、白色度、密着性及びダイスマーク隠蔽性に優れる塗装物品を提供する。
【解決手段】陽極酸化処理する工程、硫酸水溶液又はリン酸水溶液に浸漬した後、水洗する工程、カルボキシル基含有樹脂、架橋剤及び顔料を含有するアニオン電着塗料を電着塗装する工程、及び加熱乾燥して硬化皮膜を形成する工程よりなり、該アニオン電着塗料中の顔料濃度が、樹脂固形分の、6〜18質量%の範囲にあり、かつ、該アニオン電着塗料中の顔料が、平均粒子径1〜3μmの範囲の顔料を分散した顔料分散ペースト(a)と平均粒子径3μmを越え、かつ、10μm以下の範囲の顔料を分散した顔料分散ペースト(b)の合計の質量に対して、(a)を5〜50質量%の割合で混合してなり、形成された被層皮膜のJIS Z 8729に規定されるL***表色系に基づく明度(L*値)が85〜95の範囲にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性や白色度に優れ、さらに密着性やダイスマーク隠蔽性に優れるアルミニウム又はアルミニウム合金の複層皮膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アルミニウム又はアルミニウム合金においては、その用途等によって種々の表面処理が施される。例えば住宅建材等に用いられるアルミニウム又はアルミニウム合金にあっては、陽極酸化処理による表面処理が実施されることによってその表面上に陽極酸化皮膜が形成され、湯洗が行なわれた後、アニオン電着塗料を用いた電着塗装が行なわれている。
【0003】
このことによってアルミニウム又はアルミニウム合金の表面に、陽極酸化皮膜と電着塗膜の複合皮膜を形成して耐候性と意匠性及び密着性に優れた皮膜が得られる。最近の意匠性における傾向として、より白色度の高い塗膜を要求されている。その為に、例えばアニオン電着塗料中の白色顔料の顔料濃度を上げると耐候性が低下し、一方、耐候性を確保するために顔料濃度を下げると意匠性やダイスマーク隠蔽性が不十分であった。
【0004】
従来、陽極酸化処理したアルミニウム又はアルミニウム合金を、リン酸水溶液又は硫酸水溶液に浸漬し、水洗後に電着塗装して乳白色の複合皮膜を形成することを特徴とするアルミニウム材の表面処理方法が開示されている(特許文献1)。
他に、アルカリでアルミニウム材料の表面を清浄化した後、塩酸及び硫酸を含む混合酸液を用いた酸エッチング処理によりアルミニウム材料の表面に多数のピットを生成し、次いでアルカリエッチング処理によりピットを拡大してアルミニウム材料表面の凹凸を大きくして白色度を調整し、その皮膜上に電着塗装を施す発明が開示されている(特許文献2)。上記、特許文献1や特許文献2では、耐候性、白色度、密着性及びダイスマーク隠蔽性に優れた複層皮膜を得るには、不十分であった。
【特許文献1】特開2000−226694号公報
【特許文献2】特開2001−59200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、アルミニウム又はアルミニウム合金において、耐候性、白色度、密着性及びダイスマーク隠蔽性に優れる塗装物品を製造可能な複層皮膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、順次下記工程(1)〜工程(4):
工程(1):アルミニウム又はアルミニウム合金に通電して陽極酸化処理し、陽極酸化皮膜を形成する工程、
工程(2):硫酸水溶液槽(a1)又はリン酸水溶液槽(a2)の酸溶液槽(A)に浸漬した後、水洗する工程、
工程(3):カルボキシル基含有樹脂、架橋剤及び顔料を含有するアニオン電着塗料(B)を電着塗装して電着塗膜を形成する工程、及び
工程(4):加熱乾燥して硬化皮膜を形成する工程よりなり、該アニオン電着塗料中の顔料濃度が、アニオン電着塗料の樹脂固形分質量(b1)に対する顔料の質量(b2)の百分率として、6〜18質量%の範囲にあり、かつ、該アニオン電着塗料中の顔料が、平均粒子径1〜3μmの範囲の顔料を分散した顔料分散ペースト(a)と平均粒子径3μm
を越え、かつ、10μm以下の範囲の顔料を分散した顔料分散ペースト(b)とを、顔料分散ペースト(a)及び(b)の固形分合計の質量に対して、顔料分散ペースト(a)を固形分として5〜50質量%の割合で混合してなり、形成された複層皮膜のJIS Z 8729に規定されるL***表色系に基づく明度(L*値)が85〜95の範囲にあることを特徴とする複層皮膜形成方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の複層皮膜形成方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金に陽極酸化を施した後、酸溶液槽(A)に浸漬し、特定の電着塗料(B)により電着塗装を行うことを特徴とする。得られた複層皮膜は、耐候性、意匠性(白色度)、密着性及びダイスマーク隠蔽性に優れる。
上記のような効果が得られる理由としては、酸溶液槽(A)に浸漬することによって陽極酸化皮膜のセル壁が溶解して皮膜表面が凹凸に富む皮膜構造となり、拡散反射が促進される為に白色度に優れた皮膜となり、さらに顔料濃度を調整したアニオン電着塗料によって、耐候性、密着性及びダイスマーク隠蔽性に優れた複層皮膜が得られるものと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の複層皮膜形成方法は、下記の工程(1)〜工程(4)よりなるものである。以下、工程順に説明する。
[複層皮膜形成方法]
工程(1)で用いられるアルミニウム又はアルミニウム合金としては、素材の表面から、異物、不純物、変質(異常)層等を除去するための前処理を行ったものを好適に使用できる。具体的には、この前処理として、主に素材表面の脱脂を行なう化学的前処理と、素材表面の不均一な酸化皮膜や変質層を除去するためのエッチング処理、更には中和処理を実施することが一般的である。
【0009】
工程(1):アルミニウム又はアルミニウム合金に通電して陽極酸化処理を施す工程である。陽極酸化処理は、アルミニウム合金の表面に多孔質の陽極酸化皮膜を形成するのが目的で、従来と同様な陽極酸化処理に従って実施され、アルミニウム又はアルミニウム合金の使用目的等に応じて、硫酸法やシュウ酸法、クロム酸法、あるいはその他有機酸法等の陽極酸化方法を用いることができる。
【0010】
具体的には、電解液としては、硫酸、シュウ酸、クロム酸、リン酸ナトリウム、芳香族スルホン酸が挙げられる。電圧としては、直流又は交流又はパルス波形にて10〜150Vにて電解される。電解液の温度と処理時間は、10〜60℃程度で5分間〜60分間程度で処理を行う。膜厚は、1〜30μm程度である。
工程(2):工程(1)を経たアルミニウム又はアルミニウム合金を、リン酸水溶液槽(a1)又は硫酸水溶液槽(a2)の酸溶液槽(A)に浸漬する工程である。これらの酸溶液槽に浸漬することによって、電着塗装後の複層皮膜においてより白色度の高い複層皮膜が形成される。
【0011】
より白色度が増す理由としては、酸溶液槽に浸漬することによって陽極酸化皮膜の表層が溶解して皮膜表面が凹凸に富む皮膜構造となり、拡散反射が促進される為に白色度に優れた複層皮膜になるものである。陽極酸化皮膜は10〜20nmの厚さの障壁層と1〜30μmの厚さを持つ多孔質層から構成されている。酸溶液槽に浸漬すると表層部だけでな
く多孔質の内壁が短時間に化学的溶解をおこすことが知られている。さらに多孔質の内壁を含めると見かけの表面積より実際の表面積が大きいためにこの化学的溶解による凹凸形成の効果が大きいのである。化学的溶解であるから、酸溶液槽の温度が高いほど、浸漬時間は長いほど効果は大きくなるが実用的には、酸溶液槽(A)の温度としては、10℃〜
35℃、好ましくは15〜25℃、浸漬時間としては10秒間〜30分間、好ましくは1分間〜15分間程度が、白色度と生産性の面から好ましい。
【0012】
また、酸溶液槽(A)が硫酸水溶液槽(a2)である場合には、工程(1)と同一の硫酸水溶液を用いることができる。このことは、新たに溶解槽を設けることなく、工程(1)における通電後の状態でそのままアルミニウム又はアルミニウム合金を一定時間浸漬することによって処理を施すことができるである。
リン酸水溶液槽(a1)においては、濃度5〜300g/lのリン酸水溶液が使用される。リン酸水溶液の液温は、10〜35℃、好ましくは15〜35℃の範囲、浸漬時間としては10秒間〜30分間、好ましくは1分間〜15分間程度である。
【0013】
硫酸水溶液槽(a2)においては、濃度20〜500g/lの硫酸水溶液が使用される。硫酸水溶液の液温は、10〜35℃、好ましくは15〜35℃の範囲、浸漬時間としては10秒間〜30分間、好ましくは1分間〜15分間程度である。
次いで、湯洗を施し又は湯洗を施すことなく、表面に付着している酸液等を水洗除去した後、電着塗装工程に送られる。上記湯洗は、表面に付着している酸液等をさらに除去するだけでなく、アルミニウム又はアルミニウム合金に形成された皮膜を封孔して複層皮膜の密着性を高めることができる。温度70〜90℃の脱イオン水を使用し、処理時間は、0.5〜5分間程度である。
【0014】
工程(3):工程(2)で得た被塗物に、カルボキシル基含有樹脂、架橋剤及び顔料を含有するアニオン電着塗料(B)を電着塗装して電着塗膜を形成する工程である。
工程(3)において、該アニオン電着塗料中の顔料濃度は、アニオン電着塗料の樹脂固形分質量(b1)に対する顔料の質量(b2)の百分率として、6〜18質量%、好ましくは8〜17質量%、さらに好ましくは10〜16質量%の範囲にあることが好ましい。
【0015】
(注1)顔料濃度:上記顔料濃度は、下記の式(1)で表される。
顔料濃度(質量%)=(アニオン電着塗料中の顔料の質量(b2)/アニオン電着塗料中の樹脂固形分質量(b1))×100・・・式(1)
例えば、後記製造例8におけるアニオン電着塗料No.1では、顔料の質量(b2)は6.6部×0.818=5.4部であり、アニオン電着塗料中の樹脂固形分質量(b1)=100部+6.6部(1−0.818)となり、よって顔料濃度(%)は5.3質量%となる。式中、6.6部はアニオン電着塗料の配合における顔料分散ペーストの質量であり、0.818は後記表1に記載された顔料分散ペースト中の顔料(質量%)である。
【0016】
上記顔料濃度が6質量%未満では、白色度ダイスマーク隠蔽性が不十分となり、18質量%を越えると、耐候性が不十分となって好ましくない。
工程(3)において、該アニオン電着塗料中の顔料は、平均粒子径1〜3μmの範囲の顔料を分散した顔料分散ペースト(a)と平均粒子径3μmを越え、かつ、10μm以下の範囲の顔料を分散した顔料分散ペースト(b)とを、顔料分散ペースト(a)及び(b)の固形分合計の質量に対して、顔料分散ペースト(a)を固形分として5〜50質量%の割合で混合してなるものが好ましい。
【0017】
アニオン電着塗料中の顔料濃度が、6〜18質量%の範囲である場合において、顔料分散ペースト中に分散された顔料の平均粒子径が1.0μm未満になると透明性が発現し、複層皮膜の白色度が低下する。
顔料分散ペースト中の顔料の平均粒子径が10μmを越えると、塗膜の光沢度や塗料安定性が損なわれる。
【0018】
また、2種類の顔料分散ペーストを混合したとしても、一方の顔料分散ペーストが上記
範囲をはずれると、白色度や光沢度や塗料安定性のいずれかに不具合が生じる。
平均粒子径1〜3μmの顔料の顔料分散ペースト(a)と、平均粒子径3μmを越えてかつ10μm以下の顔料の顔料ペースト(b)を混合することにより、顔料の細密充填が図れ複層皮膜の白色度が増し、かつ光沢度、耐候性や塗料安定性の良好な塗料が得られる。
【0019】
また、顔料としては、例えば、二酸化チタン、べんがら、カーボンブラック、黄色酸化鉄(オーカー)、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等の着色顔料;例えば、アルミニウムフレーク、蒸着アルミニウム薄膜、酸化アルミニウムフレーク、雲母フレーク、酸化チタン被覆雲母フレーク、酸化鉄被覆雲母フレーク等の光輝性顔料;例えば、クレー(カオリン)、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム等の体質顔料が挙げられる。
【0020】
なお上記の顔料は、耐候性や白色度及びダイスマーク隠蔽性などの皮膜性能に応じて、顔料の種類や使用量を調整し、適宜に、顔料分散用樹脂、界面活性剤、水を加えて、攪拌機によって十分に攪拌すること又はボールミルやサンドミル等を用いて分散することによって顔料分散ペーストを製造することができる。この顔料分散ペーストを、下記に詳細に述べるカルボキシル基含有樹脂や架橋剤を水分散してなるエマルションとともにアニオン電着塗料(B)の製造に用いることができる。
【0021】
カルボキシル基含有樹脂:カルボキシル基含有樹脂は、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有するものであり、さらに好ましくは少なくとも1個の水酸基を有する樹脂である。具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂が挙げられ、この中でも耐候性の面からアクリル樹脂が好適である。
【0022】
上記のアクリル樹脂は、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体、必要に応じて水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体、及びその他のラジカル重合性不飽和単量体を共重合せしめることによって製造することができる。
上記カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の単量体が挙げられる。水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びこれ以外にプラクセルFM1(ダイセル化学社製、商品名、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類)、プラクセルFM2(同左)、プラクセルFM3(同左)、プラクセルFA1(同左)、プラクセルFA2(同左)、プラクセルFA3(同左)等が挙げられる。
【0023】
上記その他のラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有不飽和単量体;例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸のC1
〜C18のアルキル又はシクロアルキルエステル類、スチレンなどの芳香族ビニルモノマー類、(メタ)アクリル酸アミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド及びその誘導体類、(メタ)アクリロニトリル化合物類等が挙げられる。
【0024】
アクリル樹脂としては通常、上記のカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体、必要に応じて水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体、及びその他のラジカル重合性不飽和単量体を溶媒中にて重合開始剤によりラジカル重合反応して得られる。この重合反応に際し、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体が1〜20質量%、好ましくは4〜10質量%、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体が0〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、その他のラジカル重合性不飽和単量体が40〜99質量%、好ましくは60〜91質量%の範囲が好適である。
【0025】
重合反応に使用する溶媒としては、例えば、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−イソプロパノキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングルコールモノブチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類などが好適に使用できる。
【0026】
これ以外にも必要に応じて、例えば、キシレン、トルエンなどの芳香族類;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類も併用することができる。
【0027】
ラジカル共重合に用いるラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンザンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウリルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物、α,α'−
アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。
【0028】
上記アクリル樹脂の重量平均分子量(注2)は、5,000〜150,000、好ましくは20,000〜100,000の範囲が好適である。
(注2)重量平均分子量:JIS K 0124−83に準じて行ない、分離カラムにTSK GEL4000HXL+G3000HXL+G2500HXL+G2000HXL(東ソー社製)を用いて40℃で流速1.0ml/分、溶離液にGPC用テトラヒドロフランを用いて、RI屈折計で得られたクロマトグラフとポリスチレンの検量線から計算により求めた。
【0029】
カルボキシル基含有樹脂の中和に用いる塩基性化合物は、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン;ジエチルアミジエタノールアミン、ジ−n−またはジ−iso −プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミンがある。
【0030】
アニオン電着塗料(B)における塩基性化合物の配合割合は、中和当量として0.1〜1.2当量の範囲が好ましく、カルボキシル基含有樹脂、架橋剤の固形分の総合計量に対して塩基性化合物が0.01〜10質量%の範囲、好ましく0.05〜5質量%である。
架橋剤:架橋剤は、従来から公知の化合物を使用することができ、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂、該メチロール化アミノ樹脂のアルキルエーテル化物及びブロックポリイソシアネート化合物があげられる。
【0031】
上記メチロール化アミノ樹脂としては、メチロール化メラミン樹脂が好適であり、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基の一部もしくは全部がメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等の1種もしくは2種以上の1価アルコールで変性されたメラミン樹脂を使用することができる。
上記のメラミン樹脂の市販品としては、例えば、ユーバン20SE−60、ユーバン225(以上、いずれも三井化学社製、商品名)、スーパーベッカミンG840、スーパーベッカミンG821(以上、いずれも大日本インキ化学工業社製、商品名)などのブチルエーテル化メラミン樹脂;スミマールM−100、スミマールM−40S、スミマールM−55(以上、いずれも住友化学社製、商品名)、サイメル232、サイメル303、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370(以上、いずれも日本サイテックインダストリーズ社製、商品名)、ニカラックMS17、ニカラックMX15、ニカラックMX430、ニカラックMX600、(以上、いずれも三和ケミカル社製、商品名)、レジミン741(モンサント社製、商品名)等のメチルエーテル化メラミン樹脂;サイメル235、サイメル202、サイメル238、サイメル254、サイメル272、サイメル1130(以上、いずれも三井サイテック社製、商品名)、スマミールM66B(住友化学社製、商品名)等のメチル化とイソブチル化との混合エーテル化メラミン樹脂;サイメルXV805(三井サイテック社製、商品名)、ニカラックMS95(三和ケミカル社製、商品名)等のメチル化とn−ブチル化との混合エーテル化メラミン樹脂などを挙げることができる。
【0032】
ブロックポリイソシアネート化合物は、従来から公知のポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化剤でブロックしたものを使用することができる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートもしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネートもしくは4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート類の如き有機ジイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ジイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した如き各有機ジイソシアネート同士の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等が挙げられる。
【0033】
ブロックポリイソシアネート化合物の市販品の例としては、バーノックD−750、−800、DN−950、−970もしくは15−455、(以上、大日本インキ化学工業社製、商品名)、デスモジュールL、N、HL、ILもしくはN3390(以上、バイエル社製品社製)、タケネートD−102、−202、−110Nもしくは123N(武田薬品工業社製、商品名)、コロネートL、HL、EHもしくは203(日本ポリウレタン工業社製、商品名)またはデュラネート24A−90CX(旭化成工業社製、商品名)等が挙げられる。
【0034】
カルボキシル基含有樹脂と架橋剤の水分散化は、カルボキシル基含有樹脂に、架橋剤、
塩基性化合物、脱イオン水を加え、ディスパーなどで攪拌しながらエマルションを得ることができる。
本発明の複層皮膜形成方法に用いるアニオン電着塗料(B)は、顔料分散ペースト、カルボキシル基含有樹脂、架橋剤、塩基性化合物のほかに、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒を加えることができる。
【0035】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4−[6(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと2−[4−[6(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンの混合物、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−iso−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン系の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0036】
例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−(1,1−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジ−イソアミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0037】
光安定剤としては、ヒンダードアミン誘導体を用いることができ、具体的には、ビス−(2,2′,6,6′−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバテート、4−ベンゾイルオキシ−2,2′,6,6′−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
硬化触媒としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などの高級アルキルアリールスルホン酸類及びこれらの塩類(例えば、アミン化合物、アンモニアなど)等のスルホン酸系化合物;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、N−ペンタメチルジエチレントリアミン、2−メチル−1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン等の3級アミン等のアミン化合物;ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ベンゾエートオキシ、ジブチル錫ベンゾエートオキシ、ジオクチル錫ジベンゾエート、ジブチル錫ジベンゾエートなどのジアルキル錫の脂肪族または芳香族カルボン酸塩等の有機錫化合物が挙げられる。
【0038】
前記のアニオン電着塗料を用いてなる塗膜の形成は、アニオン電着塗料を電着槽に入れて電着浴とし、この浴中に該アルミニウム基材を浸漬した後、通常、浴温約15〜約35℃に調整して負荷電圧100〜400Vの条件で行うことができる。
工程(4):加熱乾燥して硬化皮膜を形成する工程である。焼付け条件は、通常、約130〜200℃、好ましくは150〜180℃で、約15〜50分間、好ましくは15〜30分間である。電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、乾燥塗膜に基づいて10〜40μm、特に15〜35μmの範囲内が好ましい。
【0039】
本発明の複層皮膜形成方法を用いると、L値(注3)が85〜95、好ましくは87〜94で、さらに好ましくは89〜93の白色度に優れた塗膜が得られる。
(注3)L値:JIS Z 8729に規定されるL***表色系に基づく明度(L*値)である。塗膜の明度(L*値)を、色彩計、例えばスガ試験機社製「カラーコンピュー
タSM−7」を用いて測定した値である。
【0040】
上塗りクリヤ塗膜の形成:
工程(1)〜工程(4)で得られた複層皮膜上には、さらに上塗りクリヤ塗料を塗り重ねることができる。上塗りクリヤ塗料の基体樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂及びこれらの変性物などに、アミノ樹脂、(ブロック化)ポリイソシアネート化合物を配合してなる上塗りクリヤ塗料が挙げられる。
【0041】
該塗料のタイプとしては、有機溶剤を媒体とした溶液型塗料、非水ディスパージョン塗料、水を媒体とした水溶性及び/又はエマルジョン塗料及び粉体塗料等のいずれのタイプであってもよい。
上塗りクリヤ塗料は、アニオン電着塗膜表面に、通常の塗装手段、例えば刷毛塗り塗装、スプレー塗装、浸漬塗装、流し塗装、ローラー塗装、静電塗装などの方法で塗布し、次いで乾燥(加熱も含む)をおこなうことによって塗膜が形成できる。塗布する膜厚は要求される性能などによって異なるが、通常、乾燥膜厚で約10〜100μmの範囲である。また、乾燥は、室温もしくは加熱によりおこなえるが、塗料のタイプにより適宜適した条件を設定することが望ましい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を示す。
製造例1 アクリル樹脂溶液No.1の製造
反応容器中に混合溶剤(注4)21部を仕込み85℃に保持した中へ以下の「混合物(A)」を3時間掛けて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル3部を添加し、85℃で4時間保持して反応を行って、混合溶剤(注4参照)にて固形分を調整し、固形分70質量%のアクリル樹脂溶液No.1を製造した。
【0043】
「混合物(A)」
スチレン 5部
メチルメタクリレート 36.0部
エチルアクリレート 37.5部
2−エチルヘキシルメタクリレート 4.0部
アクリル酸 5.5部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 12.0部
KBM−503(注5) 1.2部
アゾビスジメチルバレロニトリル 2.1部
(注4)混合溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル/イソプロピルアルコール/n−ブチルアルコール/エチレングリコールモノブチルエーテル=4.2部/42部/42部/84部
(注5)KBM−503:信越化学社製、商品名、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
製造例2 エマルションNo.1の製造
上記の製造例1で得た70%のアクリル樹脂溶液No.1を92.7部(固形分65部)、サイメル232(注6)35部(固形分35部)、トリエチルアミン1.9部(0.4中和当量分)、水164部を加えて分散し、固形分を調整して34%のエマルションN
o.1を得た。
(注6)サイメル232:三井サイテック社製、商品名、メチル・ブチル混合エーテル化メラミン樹脂)
【0044】
製造例3 エマルションNo.2の製造
上記の製造例1で得た70%のアクリル樹脂溶液No.1を92.7部(固形分65部)、サイメル232(注6参照)35部(固形分35部)、チヌビン328(注7)2部、チヌビン292(注8)1部、トリエチルアミン1.9部(0.4中和当量分)、水170.4部を加えて分散し、固形分を調整して34%のエマルションNo.2を得た。
(注7)チヌビン328:チバガイギー株式会社製、商品名、紫外線吸収剤
(注8)チヌビン292:チバガイギー株式会社製、商品名、光安定剤
製造例4 顔料分散ペーストの製造例
60%アミン中和アクリル樹脂系顔料分散樹脂(重量平均分子量36,000、水酸基価70mgKOH/g、酸価56mgKOH/g)9.6部(固形分5.8)、CR−97(注9)25部、トダカラーKN−O(注10)0.1部、TAROX LL50(注11)0.9部、脱イオン水22.2部を仕込み、ボールミルで48時間分散し、平均粒子径(注)2μm、固形分55%の顔料分散ぺースト(a)を得た。配合内容を表1に示す。
【0045】
製造例5 顔料分散ペーストの製造例
60%アミン中和アクリル樹脂系顔料分散樹脂(重量平均分子量36,000、水酸基価70mgKOH/g、酸価56mgKOH/g)9.6部(固形分5.8)、CR−97(注9)25部、トダカラーKN−O(注10)0.1部、TAROX LL50(注11)0.9部、脱イオン水22.2部を仕込み、ボールミルで8時間分散し、平均粒子径(注)8μm、固形分55%の顔料分散ぺースト(b)を得た。配合内容を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
(注)平均粒子径は、BI−DCP(Brookheven Instruments Corporation、粒度分析計)
を用いて測定した。
(注9)CR−97:石原産業社製、商品名、チタン白
(注10)トダカラーKN−O:戸田工業社製、商品名、べんがら
(注11)TAROX LL50:チタン工業社製、商品名、黄色酸化鉄
製造例6 アニオン電着塗料No.1の製造
上記、固形分34%のエマルションNo.1を294部(固形分100部)、固形分55%の顔料分散ペーストを12.0部(固形分6.6部)、脱イオン水760部で希釈して固形分10%のアニオン電着塗料No.1を得た。
【0048】
製造例7〜19 アニオン電着塗料No.2〜No.14の製造
表2の配合内容とする以外は、製造例6と同様にして、アニオン電着塗料No.2〜No.14を得た。
【0049】
【表2】

【0050】
試験板の作成
アルミニウム材(シルバー:大きさは150mm×70mm×0.5mm)として、A
6063−T5材を使用した。アルミニウム材を25℃、100g/lの硫酸水溶液に5分間浸漬することにより脱脂した後、50℃、50g/lの水酸化ナトリウム水溶液で4分間エッチングし、25℃、100g/lの硫酸水溶液に3分間浸漬することにより中和して試験板として用いた。
実施例1 複層皮膜No.1
工程1:試験板を20℃の180g/lの硫酸水溶液に浸漬し、15Vで30分間電解
し、膜厚10μmの陽極酸化皮膜を生成させた。
【0051】
工程2:工程1と同様の硫酸水溶液に5分間浸漬した後、水洗を施した。
工程3:次いで湯洗を行い、アニオン電着塗料No.2を用いて、乾燥膜厚が17μmとなるように電着塗装を行った。
工程4:180℃で20分間焼付け乾燥して複層皮膜No.1を得た。
実施例2〜10 複層皮膜No.2〜No.10
表3に示す工程とする以外は、実施例1と同様にして、複層皮膜No.2〜No.10を得た。併せて、塗膜性能を示す。
【0052】
【表3】

【0053】
比較例1 複層皮膜No.11
工程1:試験板を20℃の硫酸水溶液に浸漬し、15Vで30分間電解し、膜厚10μmの陽極酸化皮膜を生成させた。
工程2:工程1と同様の硫酸水溶液に5分間浸漬した後、水洗を施した。

工程3:次いで湯洗を行い、アニオン電着塗料No.1を用いて、乾燥膜厚が17μmとなるように電着塗装を行った。
【0054】
工程4:180℃で20分間焼付け乾燥して艶あり複層皮膜No.11を得た。
比較例2〜13
表4に示す工程とする以外は、比較例1と同様にして、複層皮膜No.12〜No.23を得た。併せて、塗膜性能を示す。
【0055】
【表4】

【0056】
(注12)白色度:
各複層皮膜を、測色計(商品名「カラーコンピュータSM−7」、スガ試験機(株)製
)を用いてJIS Z 8729に規定されるL***表色系に基づくL*値を測定した。
(注13)耐候性:
各複層皮膜の光沢を、JIS H 8602 5.12(1992)に準拠(水スプレ
ー時間12分間、ブラックパネル温度60℃)し、カーボンアーク灯式促進耐候性試験機サンシャインウェザオメーターを使用して測定して、暴露試験前の光沢に対する光沢保持率が80%を割る時間を測定した。さらに塗膜表面を目視により観察した。
【0057】
◎は、光沢保持率が80%を割る時間が2,500時間を越える
○は、光沢保持率が80%を割る時間が2,000時間以上、かつ2,500時間未満
○△は、光沢保持率が80%を割る時間が1,500時間以上、かつ2,000時間未満
△は、光沢保持率が80%を割る時間1,000時間以上、かつ1,500時間未満、
×は、光沢保持率が80%を割る時間1,000時間未満
(注14)60度鏡面光沢度:
各複層皮膜の光沢を、JIS K−5400 7.6(1990)の60度鏡面光沢度に
従い、入射角と受光角とがそれぞれ60度のときの反射率を測定して、鏡面光沢度の基準面の光沢度を100としたときの百分率で表した。
(注15)密着性:各複層皮膜を40℃の温水に240時間浸漬した後に、カッターナイフでクロスカットをいれて、セロテープ(登録商標)を貼り付けて瞬時に剥離した。
【0058】
○は、異常のないもの
△は、塗膜の一部が剥離したもの
×は、塗膜が剥離したもの
(注16)ダイスマーク隠蔽性:
各複層皮膜のダイスマークの状態を目視で評価した。
○は、ダイスマーク隠蔽性が良好、
△は、ダイスマーク隠蔽性が劣る、
×は、ダイスマーク隠蔽性が著しく劣る。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の複層皮膜形成方法によって、耐候性、白色度、密着性及びダイスマーク隠蔽性に優れる塗装物品を提供することである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次下記工程(1)〜工程(4):
工程(1):アルミニウム又はアルミニウム合金に通電して陽極酸化処理し、陽極酸化皮膜を形成する工程、
工程(2):硫酸水溶液槽(a1)又はリン酸水溶液槽(a2)の酸溶液槽(A)に浸漬した後、水洗する工程、
工程(3):カルボキシル基含有樹脂、架橋剤及び顔料を含有するアニオン電着塗料(B)を電着塗装して電着塗膜を形成する工程、及び
工程(4):加熱乾燥して硬化皮膜を形成する工程よりなり、該アニオン電着塗料中の顔料濃度が、アニオン電着塗料の樹脂固形分質量(b1)に対する顔料の質量(b2)の百分率として、6〜18質量%の範囲にあり、かつ、該アニオン電着塗料中の顔料が、平均粒子径1〜3μmの範囲の顔料を分散した顔料分散ペースト(a)と平均粒子径3μmを越え、かつ、10μm以下の範囲の顔料を分散した顔料分散ペースト(b)とを、顔料分散ペースト(a)及び(b)の固形分合計の質量に対して、顔料分散ペースト(a)を固形分として5〜50質量%の割合で混合してなり、形成された複層皮膜のJIS Z 8729に規定されるL***表色系に基づく明度(L*値)が85〜95の範囲にあることを特徴とする複層皮膜形成方法。
【請求項2】
アニオン電着塗料(B)が、紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を含有する請求項1に記載の複層皮膜形成方法。
【請求項3】
該複層塗膜が、艶消し複層皮膜である請求項1又は2に記載の複層皮膜形成方法。

【公開番号】特開2007−246932(P2007−246932A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67595(P2006−67595)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【出願人】(592186803)日軽形材株式会社 (9)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】