説明

複数の放射エレメント及びエレメントの接触手段を有する接触型超音波トランスデューサ

本発明は、複数の放射エレメント及びこれら放射エレメントの押付け手段を備える接触型超音波トランスデューサに関するものである。本発明のトランスデューサは特に非破壊検査に適している。本発明は、放射エレメント(2)を検査対象物(6)に押付ける手段(8、10)と、前記押付け手段を用いて検査対象物に対する前記エレメントの位置を決定する手段(26、28、34−40)とを有し、これにより、エレメントの励起パルスに適用される遅延規則を確立し、集束超音波ビーム(F)等を形成する。


【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
技術分野
本発明は、複数の放射エレメントを有する接触型超音波トランスデューサに関する。
本発明は、医療用、及び機械部材の非破壊検査に用いられ、特に、研磨又は材料の局所的追加等により生じる複雑な形状又は不規則な表面形状を有する部品に対して適用可能である。
【0002】
先行技術
一部の部品の超音波試験では、表面形状(幾何学的形状)が材料に応じて領域ごとに変化する材料の上に超音波トランスデューサが配置される。
このような場合、材料とトランスデューサの前面との音響結合は最適ではなく、伝播する超音波ビームの音響特性は維持されない。このような場合、検査品質は低下する。
【0003】
従来技術では、形状が変化する部品を完全に検査することはできない。
例えば、配管分野においては、エルボ又は分岐等の形状変化は珍しくない。しかしながら、形状変化の大きい部品は、大きな機械的ストレスに耐えなければなないことが多く、従って頻繁な検査が必要となる。
【0004】
このような領域に対する検査を最適化するため、不定形状の部品に適合する超音波トランスデューサが開発された。
【0005】
第一のステップは、トランスデューサと部品表面との結合を最適化することであった。これを達成するため、モノリシックトランスデューサを、独立した基本トランスデューサの組み合わせに置き換えた。このセットは、部品の表面と接触すると変形できる。これにより、トランスデューサと検査対象物表面との接触性が改善された。
基本トランスデューサが、複数のエレメントを有する一つのアレーを形成しており、これらエレメントの異なる音響特性を定めることが必要であることに注意されたい。
【0006】
次のステップでは、検査に必要な特性(屈折角及び部品内の焦点深度)を有する超音波を検査箇所に送る。次のステップでは、適切な電子手段を用いて、トランスデューサのエレメントに対し放射遅延を課し、よって必要な超音波ビームを形成する。
トランスデューサに装着された超音波センサから出力された電気信号は、その後統合される。これらの超音波センサは、基本超音波受信器として使用される上述のエレメントでもよい。
【0007】
トランスデューサの電子制御手段に組込まれたシミュレーションソフトは、検査対象物の形状及び構成材料に依存する遅延時間、並びに超音波ビームに必要な特性を計算し、基本的なエミッタ励起信号を構築するために使用される。
また、部品表面の形状を把握しなければならない(先験的に不明)。これは、検査対象物の局所的な形状を決めるために使用できるデータを出力することができる手段を、トランスデューサ内に設けることによって行われる。これらのデータは、トランスデューサの制御手段にリアルタイムで入力され、対応する遅延規則を再計算する。この結果、「インテリジェント」と考えられる適応的トランスデューサが実現される。
【0008】
このようなトランスデューサは、特許文献1に既知である。
また、フレキシブルな超音波トランスデューサは、特許文献2及び3に既知である。
【特許文献1】WO00/33292A "Transducteur ultrasonore de contact, a element multiples"(US6424597Aに対応)
【特許文献2】US5913825A "Ultrasonic probe and ultrasonic survey instrument"(JP10042395Aに対応)
【特許文献3】US5680863A "Flexible ultrasonic transducers and related systems" しかしながら、特許文献1〜3に記載のトランスデューサは、特にこれらトランスデューサがこのような部品の表面上に配置されたときは、複雑な部品との結合を最適な状態で維持することができない。
【0009】
発明の開示
本発明の目的は、このような不都合を解消することである。
この目的を達成するため、本発明は、複数のエレメントを備えた接触型超音波トランスデューサを提案する。本トランスデューサは、検査対象物の表面に前記エレメントを接触させる手段と、このエレメント接触手段を用いて、検査対象物に対するエレメントの位置を決める手段を備えること、及び各エレメントは少なくとも超音波エミッタであり、これら放射エレメントは剛性で、互いに機械的に組み立てられて関節構造を形成することを特徴とする。
【0010】
特許文献1〜3のいずれにおいても、このような手段の組み合わせは開示又は提案されていない。
特に、特許文献1に開示されたトランスデューサにおいては、トランスデューサが検査中に移動する際に、検査対象部とエレメントの接触を保ち、検査対象物との結合を確保する方法が何ら開示されていない。
【0011】
トランスデューサの複数のエレメントが剛性の放射エレメントであり、互いに機械的に組み立てられて関節構造を形成することにより、エミッタ間の結合が単純化及び改善され、1つのエミッタに隣接する別のエミッタが欠損した場合もこの結合が維持されるので、信頼性が向上する。
好適には、本トランスデューサは検査対象物に対し移動可能であり、エレメントの第一の表面によって形成された変形可能な放射面を有し、放射面は検査対象物の表面と接触し、放射面から検査対象物に超音波が放射され、放射エレメントの励起パルスを生成する制御手段が設けられ、トランスデューサの移動中に、検査対象物に対する超音波放射エレメントの位置が決定手段によって決定される。
【0012】
処理手段が設けられ、この処理手段は、
− 上記のようにして求めた位置から、放射エレメントが集束超音波ビームを生成するために使用する、検査対象物に応じて特性が制御された遅延規則を決定し、且つ
− 前記遅延規則を励起パルスに適用する。
場合によっては放射エレメントから構成される超音波受信エレメントが設けられ、このエレメントは、検査対象物に関する画像を形成するために使用される信号を供給する。
前記接触手段は、検査対象物の表面に放射エレメントを接触させ、前記決定手段は、前記放射エレメントを接触させる手段を利用して、検査対象物に対する放射エレメントの位置を決定する。
【0013】
本発明によるトランスデューサの好適な一実施形態によれば、検査対象物の表面に放射エレメントを接触させる手段は、それぞれがトランスデューサの剛性部分に対して自由に移動できる部分を含む複数の機械エレメントを備え、この可動部の第一端部は放射エレメントを検査対象物の表面に押し付けることができ、
検査対象物に対する放射エレメントの位置を決める手段は、
− 放射面の変形を測定する事によって、トランスデューサの剛性部分に対する放射エレメントの位置を決定し、このようにして求めた位置を表す信号を出力する第一の手段であって、
・各機械エレメントの可動部の第二端部とトランスデューサの剛性部分の領域との距離を測定する距離測定手段、及び
・このようして求めた距離を使用して、トランスデューサの剛性部分に対する放射エレメントの位置を決める補助処理手段
を備える第一の手段、
− 検査対象物に対する前記剛性部分の位置及び方向を決定し、このようにして求めた位置及び方向を表す信号を出力する第二の手段、並びに
− 第一の手段及び第二の手段によって出力された信号を使用して、検査対象物に対する放射エレメントの位置を出力する第三の手段
を備える。
好ましくは、各可動部の第一端部には丸みをつける。
【0014】
本発明の好適な一実施形態によれば、トランスデューサの剛性部分は、各可動部がそれぞれ自由に内部でスライドできる互いに平行な複数の穴を有し、各機械エレメントはまた、この機械エレメントに対応する可動部の第一端部を剛性部分の反対側に向かって加圧できる弾性手段を備える。
好適には、各機械エレメントは、対応する穴の内部に、各機械エレメントの可動部が低摩擦で自由にスライドすることを可能にする手段(例えば、ボールブッシング)を有する。
【0015】
本発明によるトランスデューサの好適な一実施形態によれば、各機械エレメントの可動部の第二端部と剛性部分の一領域との距離を光学的に測定する距離測定手段が設けられ、この手段は、
− 剛性部分に固定されて、光を反射できるこの第二端部に向かって光を放射する光放射手段、及び
− 剛性部分に固定されて、前述の反射光を受信し、前記第二端部とこれに対応する領域との間の距離を表す信号を出力することができる受光手段
を備える。
【0016】
本発明によるトランスデューサの第一の特殊な実施形態においては、光放射手段と受光手段はそれぞれ、第二端部に対向する剛性部分に固定された、光電子エミッタ及び光検出器を含む。
本発明によるトランスデューサの第二の特殊な実施形態においては、光放射手段は、光を伝送し、第二端部に光を伝送する第一の光ファイバーを有し、受光手段は、第二端部によって反射された光を伝送する第二の光ファイバーを有含む。
【0017】
光学的距離測定手段は、連続的な光ビームを使用することができる。
一変形例として、光学的距離測定手段は、不連続な光ビーム、特に光波列を使用することもできる。
【0018】
本発明による特殊な一実施形態によれば、放射エレメントを接触させる手段はまた、放射エレメントの第二面を覆うブレードを含み、各機械エレメントの可動部の第一端部は、このブレードを介して放射エレメントを検査対象物の表面に押し付けることができ、このブレードにより、可動エレメントによって印加された圧力が放射エレメントに分散される。
別の特殊な実施形態においては、放射エレメントは、超音波に対し不活性なフレキシブルな基板に封入された剛性の圧電エレメントである。
【0019】
この場合、トランスデューサは、放射エレメントの数と同数のストリップを有することが好ましい。これらストリップは、機械エレメントと正対する位置にあるフレキシブルな基板の表面に固定される。各ストリップは、機械エレメントの内の1つの可動部に対向し、これらのストリップを介して、可動部の第一端部は、放射エレメントを検査対象物の表面に押付けることができる。
以降は、添付図面を参照し、本発明の例示的実施形態を説明する。これらの説明は、純粋に説明を目的としており、如何なる意味でも限定的なものではない。
【実施例】
【0020】
特定の実施形態の詳細な説明
図1を参照して説明する本発明の超音波トランスデューサは、フレキシブルトランスデューサであり、複雑な形状を有するために、全表面への到達が困難な小型部品の検査に適した手段を備えている。
このトランスデューサは、トランスデューサと検査対象物を接触状態にする手段と、形状測定手段(起伏センサ)とを備えている。
【0021】
接触状態にする手段は、検査対象物の走査に際し、本トランスデューサの放射エレメントと検査対象物の音響結合を確実に維持し、一方、個々の光学センサは、トランスデューサに装着されたスプリングピストンの位置を測定する。この測定結果は、検査対象部品の形状を論理的に推定するために使用され、この部分に適合する遅延規則を決定する。
トランスデューサ全体の大きさを出来るだけ小さくし、把持し易くするために、接触状態にする手段及び部品と接触する放射エレメント群の変形量を測定する手段は一体化される。これらの手段を一体化することにより、トランスデューサの限定された容積の中に、必要な数の光学センサ及び適合する電子手段を組み込むことができる。
【0022】
図1は、特許文献1の第図4と互換性を有する。
図1の実施例では、直線状ストリップ形式のトランスデューサが使用されており、このトランスデューサは、超音波の入射面、即ち図1の(x、z)平面内の変形にのみ対応する。
【0023】
本トランスデューサは、弾性及び柔軟性を有する手段4を介して接続された超音波の送受信器エレメント2を備えており、これらのエレメントはフレキシブルなアセンブリを形成している。
エレメント2と、これらのエレメントから構成されるフレキシブルなアセンブリとの機械的な密着性を提供する手段4は、例えば、
− 2次元のフレキシブルトランスデューサの場合は、ケーブル、又は
− 3次元のフレキシブルトランスデューサの場合は、ポリマー樹脂の基板
とすることができる。
【0024】
一般的には、特許文献1に記載されているように、
− フレキシブルな圧電ポリマーのストリップ、及び金属析出法によって形成された互いに隣接して配置される電極アレー、
− 超音波に不活性なフレキシブル基板に埋め込まれた剛性の圧電エレメントの組、又は
− 関節構造を形成する機械的に組み立てられた剛性の超音波エレメントの組
を使用することも可能である。
図1に示す実施例においては、変形可能な既知の直線状多エレメントストリップが使用されており、このストリップに対し、圧電エレメント2は台形の形状を有している。
【0025】
本トランスデューサは、スプリングピストン8及び金属性のホイル10を有し、このホイルはストリップ状のスプリングを構成し、圧電エレメント2と検査対象物6との接触を保持している。このストリップ状スプリングはエレメント2の組の背面上に位置し、このエレメントの各々は、前面、即ち、検査対象物6の表面と接触する活性面を有し、この活性面の組が変形可能な放射面を形成している。
金属ホイル10は、スプリングピストンによって印加された鉛直方向の力を分散し、ピストン8に妨げられることなく、エレメント2を水平方向に傾斜させることができる。
【0026】
また、図1に示すトランスデューサは剛性のボックス12を備えており、多エレメントストリップがこのボックスに固定されている。ボックス12は、同一平面に属する互いに平行な穴の組14を有しており、穴の数はスプリングピストンの数に等しい。
各スプリングピストン8は、対応する穴の中でスライドできる可動部16と、スプリング18とを有し、可動部16はスプリング内を通過し、スプリングは、ボックス12と、エレメント2に近い方の可動部の端部20との間に挿入されている。
【0027】
端部20の幅は、可動部の他の部分よりも広く、これによってスプリング18の脱落が防止される。金属ホイル10を介してエレメント2の裏面に印加される圧力を最適化するため、端部20は丸みを帯びた形状で、好ましくは図1に示すような半球状である。
トランスデューサを検査対象物6に接触させると、スプリング18は圧縮されてボックス12の端部20をボックスとは反対側へ向かって加圧するので、エレメント2は検査対象物6と接触された状態に維持される。
【0028】
各穴14の内部には穴と同軸のボールブッシング22が設けられ、穴の内部で、この穴に対応するピストンの可動部16が自由にスライドできる。ボールブッシング22は、穴内部での可動部の移動性を向上させて、移動時の摩擦を減らし、可動部と穴の間の隙間を排除するために設けられている。
トランスデューサが移動する際の、検査対象物6に対するエレメント2の位置は、スプリングピストンにより求められる。
【0029】
このために、ボックス12の上部には(剛性の)プレート24が設けられており、このプレートは、穴14の上端部を封鎖し、エレメント2の位置を測定するための形状基準面を構成する。各穴14の中には、プレート24の領域29に対応する位置に、発光ダイオード26及び光検出器28が取り付けられている。領域29は、この穴に対応するピストンの可動部16の、他方の端部30と正対している。
この他端部30は、穴14と可動部16に共通なX軸と垂直であり、他端部は研磨されているか、又は研磨等による反射体に作製され、ミラーを形成している。このミラーは発光ダイオード26から放射された光ビームの一部を反射する。反射光のエネルギーの量は、可動部と発光ダイオード26の間の距離に反比例する。
【0030】
ミラーによって反射された光ビームは、ダイオード26に隣接して設置される光検出器28によって捕獲される。次いで、この光検出器は、可動部16の他端部30と光検出器(つまりプレート24)の間の距離に応じた光電流、即ち剛性部品12に対するエレメント2の位置を出力する(可動部16の長さは既知である)。
プログラム可能な電子手段32が設けられ、発光ダイオード26の制御、各光検出器28から出力された光電流の符号化、及び光電流の移動距離への変換を行う。
【0031】
しかしながら、光電流の関数である移動距離の変異曲線は線形でないので、較正が必要である。
この較正作業は、各ピストン8の可動部16の複数の較正位置における光電流を測定する取得段階において実施され、前記較正位置は、このピストンの範囲全体、即ちこのピストンが移動可能な全域に亘る。
【0032】
各光検知器の較正の終了後、測定された光電流を移動距離へ変換することができる。
エレメント2の背面に対する各光検知器の位置は既知であるので、エレメントの背面によって表現される形状を、内挿補間法を用いて再構築することができる。次いで、投影作業により検査対象物6の表面の座標値が得られる。
【0033】
具体的には、手段32はまた、剛性のボックス12に対するエレメント2の背面位置を決定するように設計されている。
補助処理手段34は、このようにして求めた背面位置の関数として、ボックスに対するエレメント2の活性面の位置を決定する(特許文献1参照)。
【0034】
トランスデューサの位置と方向を、検査対象物6の固定座標系において得るため、関節式の機械アーム36が使用される。参照特許文献1に示されているように、関節式アーム36に取り付けられたセンサ38を使用して、空間内におけるトランスデューサの位置を決定し、検査対象物6に対してトランスデューサが移動する間の、その方向を計測する。
図1はまた、手段34から出力された位置に基づき、且つセンサ38から出力された位置及び方向の関数として、検査対象物6に対するトランスデューサの位置を決定する手段40を示す。
【0035】
図1には更に、制御及び処理手段42が示されており、この手段42は、
− エレメント2の励起パルスを生成し、
− 前述のようにして求めた位置を使用して遅延規則を決定し、検査対象物6に関して制御される集束超音波ビームFをエレメント2が生成できるようにし、且つ
−これらの遅延規則を励起パルスに適用する。
次いで、エレメント2は手段42に信号を送り、手段42はまたこれらの信号を使用して検査対象物6の画像を形成する。
これらの画像は、スクリーン44上に描画される。
【0036】
特許文献1に記載されているように、慣性センサを使用して、トランスデューサの位置と方向を得ることもできる。
発光ダイオードを制御して、連続光ビーム又は不連続光ビーム、特に光パルスを放射することができる。
対応する発光ダイオードを制御することにより、必要とする光検出器28を検索するように、プログラマブルな電子手段32を設計することも可能である。
【0037】
図1に示すトランスデューサの一変形例の部分概略図を図2に示す。本変形例では、光ファイバーを使用して、対応するピストンの可動部の第二端に光を伝送し、これら第二端で反射された光を伝送する。
図2の実施例では、手段32が、光学カプラー50を介して光ファイバー48の端部に光を伝送する光源46を制御しており、ファイバーの数はピストンの数に等しい。図2に示すように、光ファイバー48の他方の端部は穴14内に開いており、可動部16の反射端30を「照射」することができる。
【0038】
光ファイバー毎に1つの光源を使用することもできる。
光ファイバーの他端のそれぞれは、プレート24の領域29に固定されており、これらの領域は対応する端部30に正対している。
【0039】
更に、ファイバー48と同数の別の光ファイバー52が設けられており、その端部は、光ファイバー48の端部と隣接して穴14内に開いており、対応する反射端30に正対する領域29に固定されている。
ファイバー52は、可動部16の反射端30によって反射された光を回収し、この光を対応する光検出器54に伝送する。次いで、これらの光検出器は光電流を生成し、これを手段32に送る。
【0040】
上述した本発明の実施例においては、特にピストンの移動量を検出するために使用される距離測定手段が光学的手段から構成されているので、ピストンの移動を光学的に測定することが可能である。
しかしながら、これらの光学的手段を電磁手段で置換することも可能である。
【0041】
図示しない一実施例では、図1に示す発光ダイオード26と光検出器28の組は、ホール効果センサで置換することが可能であり、対応するピストンの可動部の端部30に磁石が取付けられる。
この方式において、ホール効果センサは、このセンサと磁石との間の距離に基づく信号を出力することができる。従って、図1に示す手段32を、このセンサを制御し、このセンサから出力される信号を処理する適切な手段で置き換えることにより、必要とされる距離を測定することができる。
【0042】
この実施例の一変形例(図示せず)では、対応する穴14内において、プレートの、ホール効果センサに隣接する位置に磁石を固定し、各ピストンの可動部の少なくとも端部30は鋼等の磁性材で作る。
このとき、各センサによって検知される磁界は対応する端部30によって妨害され、センサはまた、この端部30とセンサとの間の距離に基づく信号を出力する。
【0043】
更に、上述した本発明の実施例において、超音波送受信エレメントを使用する。当業者であれば、これらの実施例を、送信専用の超音波エレメント及び受信専用の超音波エレメントを含むトランスデューサに適用することができる。
更に、これらの実施例においては、直線状のストリップ形式の超音波エレメントを有するトランスデューサが使用されているが、本発明はこのようなトランスデューサに限定されるものではない。特許文献1に記載されているように、当業者であれば、これらの実施例をマトリックス型トランスデューサに適用することができる。
【0044】
この場合、平行なスプリングピストンの列と、マトリックス型トランスデューサとを関連付けることが必要となる。上述のようなスプリングピストンの列は、図1に示した種類のものであり、トランスデューサに取付けられたエレメントの背面上の金属性ホイルを含む。
次に、図3を参照して本発明の別の実施例を説明する。本実施例は、特に超音波エレメントが1列ではなくマトリックスを形成する場合に有用である。
【0045】
図3の断面図に示すように、本発明によるトランスデューサは、フレキシブルな樹脂基板58の内部に埋め込まれた、マトリックス状の超音波送受信エレメント56を備え、この基板は超音波に対して不活性である。
圧電エレメント56を、図3の実施例において凸状に示す検査対象物と接触させた状態で維持するため、本トランスデューサは、スプリングピストンから構成されるマトリックスアセンブリ62及び剛性のボックス64を備えている。ボックス64には、フレキシブル基板58が後述する方法で固定される。
【0046】
ボックス64は、互いに平行に配置された穴66から構成されるマトリックスアセンブリを有し、各穴はそれぞれ、スプリングピストンと対応する。各スプリングピストンは、対応する穴の内部でスライド可能な可動部68、及びスプリング70を有し、可動部16はスプリングの内部を通って移動し、スプリングはボックス64とエレメント56に近い方の可動部の端部72との間に挿入されている。この端部72は丸みを帯びた形状であり、好ましくは図1に示すような半球状である。
図3に示すように、この実施例においてもボールブッシング74が設けられ、よって対応する穴68の内部における可動部68の移動性が向上している。
【0047】
図3の実施例において、検査対象物60に対するエレメント56の位置は、トランスデューサが移動する間に、スプリングピストンによって測定される。このために、各ピストンは、図1の実施例に示すように位置センサ76に接続される。
図3に示す実施例においても、ピストンに向かって光を放射する光放射器と、このピストンの可動部68の後端部によって反射された光を受信する受光器とを有する光学センサが使用されている。尚、ピストン可動部の後端部は、この目的のために反射機能を有するように作られている。
【0048】
好適には、フレキシブル基板58の上部表面にストリップ78が取付けられて、ピストンの半球状端部72に対向し、よってマトリックスアセンブリを形成する。これらストリップは、スプリングピストンによって印加される圧力を分散するために使用される。これらストリップは、半球状端部の直径と等しい直径を有する薄い金属性の円盤を形成することが好ましい。
図3に示すトランスデューサは更に、例えば、互いに90度の角度を形成する4つの支持部80を備える。図3では、これら支持部の2つだけを見ることができる。各支持部は、支持部に関節結合されているロッド82を介してフレキシブル基板58に取り付けられている。ロッド82は、樹脂製のフレキシブル基板の内部に埋め込まれたインサート84の内部でスライド可能である。
【0049】
各支持部80はまた、軸86の一方の端部に固定されている。軸86の他方の端部は、図3に示すように、剛性のボックスを貫通する穴88の内部でスライド可能である。穴88は、ピストン可動部がその内部でスライドする穴66と平行である。
インサート84の内部でスライド可能なロッド82を使用することにより、基板58を断裂させる恐れのある横方向の張力の発生を抑えることができる。
【0050】
更に、支持部80、ロッド82、インサート84、及び軸86を有する本機械システムは、フレキシブル基板58の回転を抑えることが可能であり、従ってエレメント56の組の回転も抑止できる。
必要に応じて、ボックス64に対するフレキシブルな基板58の移動を、検知器76のような位置検出器90を用いて測定することができ、位置検出器90は、フレキシブル基板を保持するために使用される軸86の移動距離の測定に使用できる。
【0051】
図3はまた、ロッド82が貫通するスプリング91を示し、このスプリングは、支持部80と剛性のボックス64との間に挿入されている。
これらロッド82の各々はまた、ボールブッシング94を介して剛性のボックス64の内部でスライド可能な、支持部80に固定された別のロッド92に接続できる。図3に示すように、この場合、この支持部80と剛性ボックス64間にはスプリング96が設けられ、この中をロッド92が通過する。
【0052】
剛性のボックス64は、トランスデューサのハンドルとしても使用できる電子ボックス98に取付けることができる。この電子ボックス98の上部に示すエレメント100を通して電気ケーブル類(図示せず)が配置される。これらのケーブルは、トランスデューサ及び位置センサ76から出力された信号を伝送するために使用される。
電気ボックス98の底部には基盤102を設け、個々の超音波エレメント56から引き出された電気コネクタ(図示せず)を保持し、これらのコネクタを電子ボックス98内の、エレメント56を制御し、エレメントから出力された信号を処理するために使用される電子手段に接続することができる。
ボールブッシング94とスプリング96を伴うロッド92は、支持部80に固定された、剛性のボックス64内にこのために設けられた穴の中でスライド可能な簡単なアングルに置き換えることができる。
【0053】
図面の簡素化のため、図3に示すトランスデューサに必要な種々の電気的接続は図示しない。
同様に、本トランスデューサの動作に必要な種々の信号制御手段及び処理手段を図示しない。マトリックス型トランスデューサに対応するこれらの手段は、当業者であれば、図1で説明した線形トランスデューサの手段に類似のものを用いることにより、決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】光放射器及び光検出器を用いた、本発明によるトランスデューサの特定の実施形態の概略図である。
【図2】光ファイバーを用いた別の特定の実施形態の部分概略図である。
【図3】本発明によるマトリックス型超音波トランスデューサの概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエレメント(2)を有する接触型超音波トランスデューサであって、エレメントを検査対象物(6)の表面に接触させる手段(8、10)、及びエレメントを接触させる手段を用いて、検査対象物に対するエレメントの位置を決める手段(26、28、34、36、38、40)を備えること、及び、各エレメント(2)が少なくとも超音波の放射体であり、この放射エレメント(2)が剛性であり、互いに機械的に組み立てられて関節構造を形成していることを特徴とする、トランスデューサ。
【請求項2】
トランスデューサは、検査対象物(6)に対し移動可能で、エレメントの第一の表面によって形成された変形可能な放射面を有し、この放射面は検査対象物の表面と接触して検査対象物に超音波を放射するもので、放射エレメントの励起パルスを生成する制御手段(42)を備え、位置決定手段(26、28、34、36、38、40)は、トランスデューサが移動する間に、検査対象物に対する超音波放射エレメントの位置を決めるもので、
− このようにして求めた位置から、検査対象物に応じて特性が制御された集束超音波ビーム(F)を生成するために、放射エレメントによって使用される遅延規則を決定し、且つ
− このような遅延規則を励起パルスに適用する
処理手段を備え、
放射エレメント(2)から構成することもできる超音波受信エレメントが、検査対象物の影像を構築するために使用される信号を供給し、
接触させる手段(8、10)は、検査対象物の表面に放射エレメントを接触させるために設けられ、位置決定手段は、放射エレメントを接触させる手段を利用して、検査対象物に対する放射エレメントの位置を決定するために設けられている、請求項1に記載のトランスデューサ。
【請求項3】
検査対象物の表面に放射エレメントを接触させる手段が複数の機械エレメント(8)を備え、各機械エレメントは、トランスデューサの剛性部分(12)に対して自由に移動できる部分(16)を含み、この可動部(16)の第一端部は、検査対象物の表面に放射エレメントを押し付けることができ、
検査対象物に対する放射エレメントの位置を決める手段は、
− 放射表面の変形を測定する事によって、トランスデューサの剛性部分(12)に対する放射エレメントの位置を決定し、且つこのようにして求めた位置を表す信号を出力する第一の手段(26、28、34、48、52)
を備える第一の手段であって、
・ 各機械エレメント(8)の可動部(16)の第二端部(30)とトランスデューサの剛性部分(12)の一領域(29)との間の距離を測定する距離測定手段(26、28、48、52)、及び
・ このようして求めた距離を使用して、トランスデューサの剛性部分に対する放射エレメントの位置を決める補助処理手段(34)
を備える第一の手段、
− 検査対象物に対する剛性部分(12)の位置及び方向を決定し、且つこのようにして求めた位置及び方向を表す信号を出力する第二の手段(36、38)、並びに
− 第一の手段及び第二の手段から出力された信号を使用して、検査対象物に対する放射エレメントの位置を出力する第三の手段(40)
を備える、請求項2に記載のトランスデューサ。
【請求項4】
各可動部(16)の第一端部(20)が丸みを帯びた形状を有する、請求項3に記載のトランスデューサ。
【請求項5】
トランスデューサの剛性部分(12)が、内部で各可動部(16)が自由にスライドできる互いに平行な複数の穴(14)を備え、各機械エレメントが更に、この機械エレメントに対応する可動部の第一端部を剛性部分から遠ざけることができる弾性手段(18)を含む、請求項3又は4に記載のトランスデューサ。
【請求項6】
各機械エレメントが更に、対応する穴の内部に、この機械エレメントの可動部を低摩擦で自由にスライドさせる手段(22)を備える、請求項5に記載のトランスデューサ。
【請求項7】
距離測定手段(26、28、48、52)は、各機械エレメント(8)の可動部(16)の第二端部(30)と剛性部分の一領域(29)との間の距離を光学的に測定するために提供されており、
− 剛性部分に固定され、放射光を反射することができる第二端部に向かって光を放射する光放射手段(26、48)、及び
− 剛性部分に固定され、反射された光を受信する受光手段(28、52)
を備え、受光手段は、第二端部とこれに対応する領域間の距離を表す信号を出力することができる、請求項3ないし6のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項8】
光放射手段及び受光手段がそれぞれ、第二端部(30)に正対する剛性部分に取り付けられた光放射器(26)及び光検出器(28)を含む、請求項7に記載のトランスデューサ。
【請求項9】
光放射手段が、光を伝送し、この光を第二端部(30)に送る第一の光ファイバー(48)を含み、受光手段が、この第二端部によって反射された光を伝送する第二の光ファイバー(52)を含む、請求項7に記載のトランスデューサ。
【請求項10】
光学的距離測定手段(26、28、48、52)が連続的な光ビームを使用する、請求項7ないし9のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項11】
光学的距離測定手段(26、28、48、52)が不連続な光ビーム、及び特に光波列を使用する、請求項7ないし9のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項12】
放射エレメントを接触させる手段が更に、放射エレメントの第二の面を覆うブレード(10)を有し、各機械エレメントの可動部の第一端部は、このブレードを介して放射エレメントを検査対象物(6)の表面に押付けることができ、可動部によって放射エレメントに印加された圧力がブレードを介して分散される、請求項3ないし11のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項13】
放射エレメントが、超音波に対して不活性なフレキシブルな基板に封入された剛性の圧電エレメントである、請求項3ないし11のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項14】
放射エレメントの数と同数のストリップを更に有し、これらストリップが機械エレメントに正対して位置するフレキシブルな基板の表面に固定され、各ストリップが、機械エレメントの一つの可動部と正対し、可動部の第一端部が、可動部と正対するストリップを介して、放射エレメントを検査対象物の表面に押付けることができる、請求項13に記載のトランスデューサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−511970(P2007−511970A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540555(P2006−540555)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050589
【国際公開番号】WO2005/050617
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(501402671)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (23)
【出願人】(506166505)
【Fターム(参考)】