説明

複数の記録媒体を備えた記録装置

【課題】 複数のメモリカードを備えたデジタルビデオカメラの場合、誤って映像データを記録中のメモリカードを抜き取ってしまう場合が考えられる。特に、記録中のメモリカード以外は自由に抜き差し可能なホットスワップ機能を搭載した製品においては、そういった事態が起こる可能性が高く、記録中の映像データが消失する恐れがある。
【解決手段】 上記課題を解決するために、本発明では、複数の記録媒体を備えた記録装置において、記録媒体が格納されている記録媒体格納室の記録媒体保護蓋の開放を検知することによって、記録媒体が抜き取られる前に、ストリームデータを記録する記録媒体を変更することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル映像データ等のストリームデータを記録媒体に記録するデジタルビデオカメラ等の記録装置、記録装置におけるストリームデータの記録制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルビデオカメラで撮影した映像データの記録媒体としてはテープ媒体が一般的であった。しかし、近年の半導体技術の進歩により、コンパクトなメモリカードに数ギガバイト程度のデータを記録することが可能になっており、メモリカードは映像データの記録媒体として実用に耐える記録媒体となっている。すでに市場にはメインの記録媒体にメモリカードを採用したデジタルビデオカメラが市販されており、メモリカードは映像データの記録媒体として一般的な存在になりつつある。また、業務用途においては複数のメモリカードを備えたデジタルビデオカメラが開発されており、複数のメモリカードに順次映像データを記録することで、長時間の連続撮影も可能となっている。このような複数のメモリカードを備えた製品は、今後一般コンシューマ向け製品でも登場する可能性がある。
【0003】
複数のメモリカードを備えている場合、誤って映像データを記録中のメモリカードを抜き取ってしまう場合が考えられる。特に業務用途を想定したデジタルビデオカメラの場合には、記録中のメモリカード以外は自由に抜き差し可能なホットスワップ機能を搭載した製品が存在し、このような製品においては特にそういった事態が起こる可能性が高く、記録中の映像データが消失する恐れがある。映像データを記録中にメモリカードを抜き取られた場合の対処として、バッファメモリに一時的に映像データを記録しておく方法(特許文献1、特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−212707号公報
【特許文献2】特開2003−298997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バッファメモリの記録容量はメモリカードと比較して少ないのが通常であり、それほど長時間の映像データを記録することはできない。仮に長時間の映像データを記録できる大容量のバッファメモリを搭載するとなると、大幅なコスト増大となってしまい現実的ではない。また、特許文献2においては、再度メモリカードが挿された場合にバッファメモリに蓄えていた映像データをメモリカードに記録再開する方法が提案されているが、上述したように、この方法を実現するにあたっては大容量のバッファメモリを搭載する必要があり、これもまたコスト増大の要因となってしまう。また、特許文献2では静止画データを主な対象としているが、映像データを対象とした場合は記録再開時にあたって、撮影動作と並行してバッファメモリから多大なデータをまとめて外部記録媒体へ記録するため、内部動作が複雑になる恐れがあり、製品開発時の負荷が増大する要因ともなる。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、複数のメモリカードを備えたデジタルビデオカメラ等において、撮影中に誤って記録中のメモリカードを抜き取ってしまった場合、バッファメモリを用いない簡易な方法で、映像データの記録を継続する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、複数の外部記録媒体を持ち、映像データや音声データなどのストリームデータを上記外部記録媒体に順次記録する記録手段と、上記複数の外部記録媒体を保護する複数の記録媒体保護部材と、上記複数の記録媒体保護部材の変移を検知する検知手段と、上記検知手段の判定に基づいて上記複数の外部記録媒体への記録動作を制御する記録制御手段とを備えた記録装置であって、上記ストリームデータが上記複数の外部記録媒体のうちの一つに上記記録手段によって記録されている最中に、上記ストリームデータを記録中の上記外部記録媒体を保護している上記記録媒体保護部材の状態が変移したことを、上記検知手段によって検知した場合、上記記録制御手段は上記ストリームデータを記録中の上記外部記録媒体に対して記録動作の中断の指示を行うと共に、上記ストリームデータの記録先を他の記録可能な上記外部記録媒体に変更して記録動作の開始の指示を行うことを特徴とする。
【0008】
また、上記ストリームデータを記録中の上記外部記録媒体の上記記録媒体保護部材の状態が変移したことを上記検知手段によって検知したとき、他の記録可能な上記外部記録媒体が複数ある場合、上記記録制御手段は、最も空き容量の大きな上記外部記録媒体を次の記録先として選択する点に特徴を有する。
【0009】
また、上記ストリームデータを記録中の上記外部記録媒体の上記記録媒体保護部材の状態が変移したことを上記検知手段によって検知したとき、上記記録制御手段は、次の記録先となる他の上記外部記録媒体に新たなファイルを生成すると共に上記ストリームデータを記録中のファイルを閉じ、上記新たなファイルに上記ストリームデータの記録を開始する点に特徴を有する。
【0010】
また、上記記録媒体保護部材の状態が変移したことによって、上記ストリームデータを記録する上記外部記録媒体が上記記録制御手段によって変更された場合、上記記録装置の使用者に上記ストリームデータの記録先の変更を通知する通知手段を持つ点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように本発明によれば、複数の外部記録媒体を備えた記録装置において、ストリームデータを記録している外部記録媒体の記録媒体保護部材の変移を検知した場合、記録媒体保護部材の変移が検知された外部記録媒体への記録を中断し、直ちに他の外部記録媒体へと記録先を変更することにより、誤って記録中の外部記録媒体が抜き取られた場合でもストリームデータの消失を防止することができる。さらに、本発明によれば、ストリームデータの記録先を切り換えるにあたって、バッファメモリにストリームデータを蓄える必要がないため、大容量のバッファメモリを搭載する必要がなく製品のコストに影響しない上、簡易なプログラムで記録先の外部記録媒体を変更することができるため、製品開発にあたっての負荷も小さいと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のデジタルビデオカメラの基本構成を示したブロック図である。
【図2】本実施形態のデジタルビデオカメラの処理動作を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態のデジタルビデオカメラを背面から見た図である。
【図4】本実施形態のデジタルビデオカメラの記録媒体収納室付近を拡大した図である。
【図5】本実施形態のデジタルビデオカメラのLCD表示を示した図である。
【図6】本実施形態のデジタルビデオカメラのLCD表示を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例)
図1は本実施形態において説明するデジタルビデオカメラのハードウェアモジュールを表した図である。デジタルビデオカメラを構成するハードウェアモジュールは、撮像用レンズ1、絞り2、シャッター3、撮像素子4、撮像回路5、画像処理回路6、信号処理回路7、メイン制御回路8、操作部9、LCD制御回路10、LCD11、外部記録媒体制御回路12、外部記録媒体13、保護蓋検知スイッチ14、アクセスランプ15、映像出力回路16、記録媒体保護蓋17である。本実施形態で説明するデジタルビデオカメラは撮影モードと再生モードを備えている。撮影モードでは撮像素子4で撮影した映像信号を信号処理回路7で圧縮してデジタル映像データとし、外部記録媒体13へ記録する。一方、再生モードでは外部記録媒体13に圧縮して記録された映像データを信号処理回路7で伸張して再生し、LCD11に映し出して閲覧することができる。
【0014】
撮像用レンズ1で捉えられた被写体像は撮像素子4上に結像する構成となっており、絞り2、シャッター3の動作によって撮像素子4への露光量が決定される。撮像素子4にはCCDやCMOS等の撮像素子が使用される。デジタルビデオカメラが撮影モードのときは、撮像素子4で生成された映像信号は撮像回路5に入力されてサンプリングされ、A/D変換される。画像処理回路6では撮像回路5から入力される映像信号に対して、毎フレームごとにホワイトバランス、露出調整、ガンマ補正等の処理が施される。この映像信号は信号処理回路7で圧縮されてデジタル映像データとなり、外部記録媒体制御回路12を介して外部記録媒体13に動画ファイルとして記録される。信号処理回路7における映像信号の圧縮方法としては、MPEG2やMPEG4等を用いることができる。信号処理回路7には数十フレーム分の映像データを保持できるバッファメモリが備えられており、外部記録媒体13への記録レートが変動しても安定した記録を行うことができる。また、映像信号処理回路7はLCD11に表示する映像信号も生成しており、LCD11には撮影中および再生中の映像が表示されると共に、タイムコードや各種撮影情報がオーバーレイ表示される。メイン制御回路8はマイコン等を内臓し、全体の動作シーケンスを司っており、各スイッチの状態検出、撮像及び映像再生・記録に関わる構成部材の駆動を制御する。本デジタルビデオカメラは複数の外部記録媒体13a、13b、13cを備えているため、メイン制御回路8は外部記録媒体制御回路12に対して外部記録媒体13a、13b、13cのうちどれに映像データを格納するか、また、格納済みの映像データをどこから取り出すかの指示を行う。外部記録媒体13は、SDカードやCFカード等の着脱可能な記録媒体である。保護蓋検知スイッチ14a、14b、14cはそれぞれ外部記録媒体13a、13b、13cを収納する記録媒体収納室の媒体挿入開口部に備えられており、記録媒体保護蓋17の開閉を検知することができる。アクセスランプ15は外部記録媒体13に書込みが行われているとき、および外部記録媒体13から読み出しを行っているときに点灯する。映像出力回路16は、外部機器に映像信号を出力するための映像出力端子を備えており、信号処理回路7から得たデジタル映像信号を、NTSC方式やPAL方式のアナログ信号や、HDMI等に対応したデジタル信号に変換して、TV等の外部機器に映像信号を出力することができる。(「HDMI」は登録商標)
図2は映像データを記録中に記録媒体保護蓋17が開放された場合の動作を示したフローチャートである。ステップS201において、メイン制御回路8は操作部9によって撮影の開始が指示されたかどうかを判断し、撮影開始の指示があった場合はステップS202に処理を進める。ステップS202では、メイン制御回路8は外部記録媒体制御回路12にアクセスして、記録可能な外部記録媒体13があるかどうかを判断する。このとき、保護蓋検知スイッチ14の状態も同時にチェックされ、外部記録媒体13に空き容量があり、且つ保護蓋検知スイッチ14の状態が「閉」の場合に記録可能であると判断される。
【0015】
記録可能な外部記録媒体13があった場合はステップS203、ステップS204を介してステップS205に進み、外部記録媒体13上に新しい動画ファイルを生成して映像データの記録を開始する。すでに記録を開始している場合は、記録中の動画ファイルに映像データを継続して記録する。ステップS203では保護蓋検知スイッチ14の状態を監視しており、記録中の外部記録媒体13の記録媒体保護蓋17が開放されたことを検知した場合、メイン制御回路8は他に記録可能な外部記録媒体13があるかどうかを、外部記録媒体制御回路12にアクセスして調べる(ステップS206)。上記ステップS203において保護蓋検知スイッチ14によって記録媒体保護蓋17の開放を検知するまでは、映像データはステップS205において外部記録媒体13に記録され、映像データの記録中は図3に示すように記録先の外部記録媒体13に対応するアクセスランプ15が点灯される(ステップS204)。
【0016】
ステップS206において、他に記録可能な外部記録媒体13があったと判断された場合は、まず記録可能な外部記録媒体13の中で、最も空き容量の多い媒体を探して新たな動画ファイルを生成し、映像データの記録を開始する(ステップS207)。次に旧記録先の動画ファイルを保存して閉じ(ステップS208)、図4に示すように記録媒体保護蓋17が開放された外部記録媒体13のアクセスランプ15を消灯する(ステップS209)。そして最後に、図6に示すようにLCD11に、映像データを記録する外部記録媒体13が変更された旨を一定時間表示する(ステップS210)。
【0017】
一方、ステップS206において、他に記録可能な外部記録媒体13がないと判断された場合は、信号処理回路7のバッファメモリに格納されている映像信号全てが外部記録媒体13に記録されるまで記録動作を行ったのち、記録先の動画ファイルを保存して閉じると共に(ステップS211)、図5に示すようにLCD11に記録が中断された旨を一定時間表示する(ステップS212)。
【0018】
操作部9によって撮影の終了が指示された場合は、メイン制御回路8がこれを検知し(ステップS213)、ステップS214においてアクセスランプ15を消灯して撮影を終了する。
【符号の説明】
【0019】
1 撮像用レンズ
2 絞り
3 シャッター
4 撮像素子
5 撮像回路
6 画像処理回路
7 信号処理回路
8 メイン制御回路
9 操作部
10 LCD制御回路
11 LCD
12 外部記録媒体制御回路
13 外部記録媒体
14 保護蓋検知スイッチ
15 アクセスランプ
16 映像出力回路
17 記録媒体保護蓋
S201〜S214 図2に示すフローチャートの各ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外部記録媒体を持ち、ストリームデータを上記外部記録媒体に順次記録する記録手段と、上記複数の外部記録媒体を保護する複数の記録媒体保護部材と、上記複数の記録媒体保護部材の変移を検知する検知手段と、上記検知手段の判定に基づいて上記複数の外部記録媒体への記録動作を制御する記録制御手段とを備えた記録装置であって、上記ストリームデータが上記複数の外部記録媒体のうちの一つに上記記録手段によって記録されている最中に、上記ストリームデータを記録中の上記外部記録媒体を保護している上記記録媒体保護部材の状態が変移したことを、上記検知手段によって検知した場合、上記記録制御手段は上記ストリームデータを記録中の上記外部記録媒体に対して記録動作の中断の指示を行うと共に、上記ストリームデータの記録先を他の記録可能な上記外部記録媒体に変更して記録動作の開始の指示を行うことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
上記ストリームデータを記録中の上記外部記録媒体の上記記録媒体保護部材の状態が変移したことを上記検知手段によって検知したとき、他の記録可能な上記外部記録媒体が複数ある場合、上記記録制御手段は、最も空き容量の大きな上記外部記録媒体を次の記録先として選択することを特徴とする、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
上記ストリームデータを記録中の上記外部記録媒体の上記記録媒体保護部材の状態が変移したことを上記検知手段によって検知したとき、上記記録制御手段は、次の記録先となる他の上記外部記録媒体に新たなファイルを生成すると共に上記ストリームデータを記録中のファイルを閉じ、上記新たなファイルに上記ストリームデータの記録を開始することを特徴とする、請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
上記記録媒体保護部材の状態が変移したことによって、上記ストリームデータを記録する上記外部記録媒体が上記記録制御手段によって変更された場合、上記記録装置の使用者に上記ストリームデータの記録先の変更を通知する通知手段を持つことを特徴とする、請求項1に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−18204(P2011−18204A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162480(P2009−162480)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】