説明

複素環化合物及び光学記録材料

【課題】 短波長の記録光及び再生光を用いる光学記録媒体に合致した化合物、及び該化合物を含有してなる光学記録材料を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(I)で表される複素環化合物。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な複素環化合物、及び該複素環化合物を含有してなる光学記録材料に関する。該複素環化合物は、光学記録剤として好適なほか、光吸収剤、光増感剤、紫外線吸収剤等としても有用である。
【背景技術】
【0002】
光学記録媒体は、一般に、記録容量が大きく、記録及び再生が非接触で行われる等、優れた特徴を有することから、広く普及している。WORM、CD−R、DVD−R等の追記型の光ディスクでは、光学記録層の微少面積にレーザを集光させ、光学記録層の性状を変えて記録し、未記録部分との反射光量の違いによって再生を行っている。
【0003】
現在、上記の光ディスクにおいては、記録及び再生に用いる半導体レーザの波長は、CD−Rでは750〜830nmであり、DVD−Rでは620〜690nmであるが、更なる容量の増加を実現すべく、短波長レーザを使用する光ディスクが検討されており、例えば、記録光に380〜420nmの光を用いるものが検討されている。
【0004】
これらの短波長用の光学記録媒体の光学記録層には、光学記録材料としてインドール誘導体が検討されている。インドール誘導体としては、例えば、特許文献1にはモノメチンシアニン化合物が報告されており、特許文献2にはインドール化合物が報告されている。
【0005】
光学記録材料には、吸収波長の極大(λmax)が、記録光及び再生光に適することが必要である。また、吸収強度の大きいものが、記録感度や記録速度の点で優位である。上記の化合物は、その吸収波長特性が短波長レーザに必ずしも適合するものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−237233号公報
【特許文献2】国際公開第01/44374号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、短波長の記録光及び再生光を用いる光学記録媒体に合致した化合物、及び該化合物を含有してなる光学記録材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定の構造を有する複素環化合物が、380〜420nmのレーザ光を用いる光学記録媒体の光学記録層に用いられる光学記録材料に適することを知見し、本発明に到達した。
【0009】
即ち、本発明は、下記一般式(I)で表される複素環化合物、及び基体上に光学記録層が形成された光学記録媒体の該光学記録層に用いられる、該複素環化合物を含有してなる光学記録材料を提供するものである。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、短波長の記録光及び再生光を用いる光学記録媒体に合致した化合物、及び該化合物を含有してなる光学記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記一般式(I)において、Aで表されるベンゼン環又はナフタレン環の置換基である炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられる。上記置換基である炭素数1〜8のハロゲン置換アルキル基としては、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロブチル等が挙げられる。上記置換基である炭素数1〜8のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第二ブトキシ、第三ブトキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ等が挙げられる。上記置換基である炭素数1〜8のハロゲン置換アルキル基としては、クロロメチルオキシ、ジクロロメチルオキシ、トリクロロメチルオキシ、ブロモメチルオキシ、ジブロモメチルオキシ、トリブロモメチルオキシ、フルオロメチルオキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2,2,2−トリフルオロエチルオキシ、パーフルオロエチルオキシ、パーフルオロプロピルオキシ、パーフルオロブチルオキシ等が挙げられる。上記置換基であるスルホニル基又はスルフィニル基が有する炭素数1〜12の炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル等のアルキル基、ビニル、1−メチルエテン−1−イル、プロペン−1−イル、プロペン−2−イル、プロペン−3−イル、ブテン−1−イル、ブテン−2−イル、2−メチルプロペン−3−イル、1,1−ジメチルエテン−2−イル、1,1−ジメチルプロペン−3−イル等のアルケニル基、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4,5−トリメチルフェニル等のアリール基、ベンジル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル、2,4−ジメチルベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアラルキル基が挙げられる。上記置換基であるアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基が有する炭素数1〜8のアルキル基としては、上記に例示の炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。上記置換基である炭素数1〜8のアミド基を構成するアシル基としては、アセチル、プロピオニル、オクタノイル、アクリロイル、メタクリロイル、ベンゾイル等が挙げられる。上記置換基であるハロゲン基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0014】
上記一般式(I)において、Ra及びRbで表される炭素数1〜12の炭化水素基としては、上記のスルホニル基が有する炭素数1〜12の炭化水素基が挙げられ、RaとRbとが連結して形成される3〜6員環としては、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル、2,4−ジメチルシクロブタン−1,1−ジイル、3−ジメチルシクロブタン−1,1−ジイル、シクロペンタン−1,1−ジイル、シクロヘキサン−1,1−ジイルが挙げられる。Yで表される炭素数1〜30の有機基は、特に制限を受けるものではないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ペプタデシル、オクタデシル等のアルキル基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、1−フェニルプロペン−3−イル等のアルケニル基;フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、シクロヘキシルフェニル等のアルキルアリール基;ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基、並びにこれらの炭化水素基がエーテル結合及び/又はチオエーテル結合で中断されたもの、例えば、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、2−ブトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3−メトキシブチル、2−フェノキシエチル、2−メチルチオエチル、2−フェニルチオエチルが挙げられ、更にこれらの基は、アルコキシ基、アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0015】
上記一般式(I)において、R1及びR2で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチルが挙げられ、R1及びR2で表される炭素数7〜18のアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、スチリル、シンナミル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル等が挙げられる。R3及びR4で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、R1及びR2で例示の基が挙げられ、R3とR4とが連結して形成する多重結合を含まない複素環としては、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、チアゾリジン環、イソチアゾリジン環、オキサゾリジン環、イソオキサゾリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)において、Y1で表される炭素数1〜30の有機基としては、上記Yで例示の基が挙げられる。
【0017】
また、上記一般式(I)において、Anq-で表されるアニオンとしては、例えば、一価のものとして、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、フッ素アニオン等のハロゲンアニオン;過塩素酸アニオン、塩素酸アニオン、チオシアン酸アニオン、六フッ化リンアニオン、六フッ化アンチモンアニオン、四フッ化ホウ素アニオン等の無機系アニオン;ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ジフェニルアミン−4−スルホン酸アニオン、2−アミノ−4−メチル−5−クロロベンゼンスルホン酸アニオン、2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸アニオン等の有機スルホン酸アニオン;オクチルリン酸アニオン、ドデシルリン酸アニオン、オクタデシルリン酸アニオン、フェニルリン酸アニオン、ノニルフェニルリン酸アニオン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸アニオン等の有機リン酸系アニオン等が挙げられ、二価のものとして、ベンゼンジスルホン酸アニオン、ナフタレンジスルホン酸アニオン等が挙げられる。また、励起状態にある活性分子を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有するクエンチャーアニオンや、シクロペンタジエニル環にカルボキシル基、ホスホン酸基、スルホン酸基等のアニオン性基を有するフェロセン、ルテオセン等のメタロセン化合物アニオン等も、必要に応じて用いることができる。
【0018】
上記のクエンチャーアニオンとしては、例えば、下記一般式(A)又は(B)で表されるもの、特開昭60−234892号公報、特開平5−43814号公報、特開平6−239028号公報、特開平9−309886号公報、特開平10−45767号公報等に記載されたようなアニオンが挙げられる。
【0019】
【化3】

【0020】
また、上記一般式(I)におけるY1を表す上記一般式(II)において、R5〜R13で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチルが挙げられる。これらのアルキル基がハロゲン原子で置換されたものとしては、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロブチル等が挙げられ、鎖中のメチレン基が−O−で置換されたものとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第二ブトキシ、第三ブトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メトキシエチル、クロロメチルオキシ、ジクロロメチルオキシ、トリクロロメチルオキシ、ブロモメチルオキシ、ジブロモメチルオキシ、トリブロモメチルオキシ、フルオロメチルオキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2,2,2−トリフルオロエチルオキシ、パーフルオロエチルオキシ、パーフルオロプロピルオキシ、パーフルオロブチルオキシ等が挙げられ、鎖中のメチレン基が−CO−で置換されたものとしては、アセチル、プロピオニル、モノクロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル、プロパン−2−オン−1−イル、ブタン−2−オン−1−イル等が挙げられる。
【0021】
上記一般式(II)において、Zで表される炭素数1〜8のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、1,3−ジメチルプロピレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、4−メチルブチレン、2,4−ジメチルブチレン、1,3−ジメチルブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロプロパン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル、シクロブタン−1,2−ジイル、シクロペンタン−1,1−ジイル、シクロペンタン−1,2−ジイル、シクロペンタン−1,3−ジイル、シクロヘキサン−1,1−ジイル、シクロヘキサン−1,2−ジイル、シクロヘキサン−1,3−ジイル、シクロヘキサン−1,4−ジイル、メチルシクロヘキサン−1,4−ジイル等が挙げられる。また、これらのアルキレン基中のメチレン基が−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換されたものについては、その置換の位置及び数は任意である。
【0022】
上記一般式(I)で表される複素環化合物の中でも、下記一般式(I')で表されるものは、製造コストが小さく、その光学的特性が380〜420nmのレーザ光を用いる光学記録媒体の光学記録層に用いる光学記録材料に特に適するので好ましい。
【0023】
【化4】

【0024】
【化5】

【0025】
上記一般式(I')において、Eで表される炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のハロゲン置換アルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のハロゲン置換アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜12の炭化水素基を有するスルホニル基、炭素数1〜12の炭化水素基を有するスルフィニル基、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、炭素数1〜8のアミド基としては、上記一般式(I)のAの置換基として例示した基が挙げられる。R'a及びR'bで表される連結して3〜6員環を形成してもよい炭素数1〜12の炭化水素基としては、上記一般式(I)のRa及びRbで例示の基が挙げられる。R'1で表される炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数7〜18のアラルキル基としては、上記一般式(I)のR1で例示の基が挙げられる。R'3及びR'4で表される炭素数1〜4の炭化水素基又は連結して複素環を形成する基としては、上記一般式(I)のR3及びR4で例示の基が挙げられる。Y'1で表される炭素数1〜30の有機基としては、上記一般式(I)のYで例示の基が挙げられる。Y'1が炭素数1〜30の有機基である場合は、Y'1基の導入が容易であり、光学特性に大きな影響を与えず、複素環化合物の製造コストが低いものが好ましい。このようなY'1としては、O原子により中断されてもよい炭素数1〜12の炭化水素基が挙げられる。
【0026】
また、上記一般式(II')において、R'5〜R'13で表される水素原子、又はハロゲン原子で置換されてもよく鎖中のメチレン基が−O−若しくは−CO−で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキル基としては、上記一般式(II)のR5〜R13で例示の基が挙げられ、Z'で表される炭素原子数1〜8のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン等が挙げられる。
【0027】
上記一般式(I')で表される複素環化合物の中でも、Y'1が上記一般式(II')で表される基である複素環化合物は、特に耐光性に優れる特徴があり、光学記録材料に特に好適である。
【0028】
本発明の複素環化合物の好ましい具体例としては、下記化合物No.1〜66が挙げられる。なお、以下の例示では、アニオンを省いたシアニンカチオンで示している。
【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
【化10】

【0034】
【化11】

【0035】
【化12】

【0036】
上記一般式(I)で表される本発明の複素環化合物は、その製造方法は特に限定されず、周知一般の反応を利用した方法で得ることができる。例えば、上記一般式(I')で表される複素環化合物は、下記〔化13〕に示す合成ルートにより、2−メチル複素環誘導体とホルムアミド誘導体とをオキシ塩化リン等の反応剤により反応させ、必要に応じてアニオン交換をすることにより得ることができる。
【0037】
【化13】

【0038】
なお、上記2−メチル複素環誘導体におけるY'1は、インドール環のNHと反応するY' 1−D(Dは、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン基;フェニルスルホニルオキシ、4−メチルフェニルスルホニルオキシ、4−クロロフェニルスルホニルオキシ等のスルホニルオキシ基を表す)により導入することができる。
【0039】
上述した本発明の複素環化合物は、380〜420nmの範囲の光に対する光学要素として好適である。光学要素とは、特定の光を吸収することにより機能を発揮する要素のことであり、具体的には、光吸収剤、光学記録剤、光増感剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。例えば、光学記録剤は、光ディスク等の光学記録媒体における光学記録層に用いられ、光吸収剤は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置用の光学フィルターに用いられ、紫外線吸収剤は、高分子化合物、合成樹脂、コーティング材、塗料等に耐候性を付与するために用いられる。
【0040】
本発明の複素環化合物は、その光学特性から、光学記録材料に用いられる光学記録剤として特に好適である。本発明の光学記録材料は、基体上に光学記録層が形成された光学記録媒体の該光学記録層に用いられ、本発明の複素環化合物を含有してなるもので、前記一般式(I)で表される本発明の複素環化合物そのもの並びに該複素環化合物と後述する有機溶媒及び/又は各種化合物との混合物を包含する。
【0041】
本発明の光学記録材料を用いた光学記録媒体の光学記録層の形成方法については、特に制限を受けない。一般には、メタノール、エタノール等の低級アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、2,2,2−トリフルオロエタノール、パーフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、パーフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等の有機溶媒に本発明の複素環化合物を溶解した溶液を、基体上にスピンコート、スプレー、ディッピング等で塗布する湿式塗布法が用いられる。その他の方法としては蒸着法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0042】
上記光学記録層の厚さは、通常、0.001〜10μであり、好ましくは0.01〜5μの範囲である。
【0043】
また、本発明の複素環化合物を光学記録媒体の光学記録層に含有させる際の該光学記録層における使用量は、好ましくは25〜100質量%である。このような複素環化合物の含有量の光学記録層を形成するために、本発明の光学記録材料は、本発明の複素環化合物を、本発明の光学記録材料に含まれる固形分基準で25〜100質量%含有するのが好ましい。
【0044】
また、上記光学記録層は、前記の一般式(I)で表される本発明の複素環化合物のほかに、必要に応じて、シアニン系化合物、アゾ系化合物、アゾメチン系化合物、フタロシアニン系化合物、オキソノール系化合物、スクアリリウム系化合物、スチリル系化合物、カルボスチリル系化合物、ナフチリジン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポルフィセン系化合物、アントラキノン系化合物、ホルマザン金属錯体、ピロメテン金属錯体、フラーレン色素化合物等の光学記録層に用いられる化合物;ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート等の樹脂類を含有してもよく、界面活性剤;帯電防止剤;滑剤;難燃剤;ヒンダードアミン等のラジカル捕捉剤;フェロセン誘導体等のピット形成促進剤;分散剤;酸化防止剤;架橋剤;耐光性付与剤等を含有してもよい。さらに、上記光学記録層は、一重項酸素等のクエンチャーとして芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、ビスイミニウム化合物、遷移金属キレート化合物等を含有してもよい。これらの各種化合物は、上記光学記録層において、好ましくは0〜75質量%の範囲で使用される。そのためには、本発明の光学記録材料において、これらの各種化合物の含有量は、本発明の光学記録材料に含まれる固形分基準で0〜75質量%とするのが好ましい。
【0045】
このような光学記録層を設層する上記基体の材質は、書き込み(記録)光及び読み出し(再生)光に対して実質的に透明なものであれば特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の樹脂、ガラス等を用いることができる。また、その形状は、用途に応じ、テープ、ドラム、ベルト、ディスク等の任意の形状とすることができる。
【0046】
また、上記光学記録層上に、金、銀、アルミニウム、銅等を用いて蒸着法あるいはスパッタリング法により反射膜を形成することもできるし、アクリル樹脂、紫外線硬化性樹脂等による保護層を形成することもできる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例によって何ら制限を受けるものではない。
【0048】
[実施例1]複素環化合物の製造
以下に示す合成方法を用いて、化合物No.1、2、6、8、15、16、17、18、19、22、23、31の六フッ化リン塩をそれぞれ合成した(実施例1−1〜1−12)。得られた化合物についての収率及び分析結果を表1及び2に示す。得られた化合物は、表1及び2に示したIR及びH1−NMRの結果から、いずれも目的物であることを確認した。
なお、表1において、光学特性(λmax及びε)は、9.22×10-6モル/リットル濃度のクロロホルム溶液で測定した結果であり、融点は、10℃/分の昇温速度における示差熱分析のDTAの融点吸収ピークの開始温度である。
【0049】
(合成方法)
反応フラスコに、クロロホルム30ml及びホルムアミド誘導体103ミリモルを仕込み、4℃でオキシ塩化リン15ミリモルを加えた後、4℃で1時間攪拌した。2−メチル複素環誘導体12.7ミリモルを4℃で加えた後、70℃に昇温して2時間攪拌した。この反応溶液を、六フッ化リンカリウム14.0ミリモルを200mlの水に溶かした溶液に注ぎ、これにクロロホルム200mlを加えよく攪拌した後に水層を廃棄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、脱溶媒を行って残渣を得た。得られた残渣をトルエンで晶析し、析出した粗結晶についてアセトンとトルエンとの混合溶媒を用いて再結晶を行い、目的の複素環化合物を得た。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
[実施例2]複素環化合物の評価1
直径12cmのポリカーボネートディスク基板上に、上記実施例1で得た複素環化合物(表3参照)を、濃度1.0質量%の2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール溶液によるスピンコーティング法(2000rpm、60秒)にて塗布して、複素環化合物からなる光学記録層を形成して光学記録媒体を得た(実施例2−1〜2−6)。これらの光学記録媒体について、透過UVスペクトル及び入射角5°の反射光UVスペクトルの測定を行った。それらの結果を表3に記す。
尚、反射光スペクトルは、光学記録媒体の再生特性と関連がある。再生モードでは、レーザ光を光学記録媒体に反射させた反射光について、レーザ波長の光量の差で記録の有無を検出するので、反射光の吸収スペクトルの極大が、使用される再生光の波長に近いものほど好ましい。
【0053】
【表3】

【0054】
上記表2から、本発明の複素環化合物を用いた光学記録媒体は、405nmのレーザ光に対して好適であることが確認できた。
【0055】
[実施例3]複素環化合物の評価2
表4に示す複素環化合物を用い上記実施例2と同様の操作により得た光学記録媒体に、55000ルクスの光を48時間照射した。λmaxにおける照射後のUV吸収強度の残存率を表4に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
上記表4から、本発明の複素環化合物の中でも、N側鎖にフェロセン誘導基を有する化合物(実施例3−4)は、特に優れた光安定性を有することが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される複素環化合物。
【化1】

【化2】

【請求項2】
下記一般式(I')で表される複素環化合物。
【化3】

【化4】

【請求項3】
上記一般式(I')において、Y'1で表される基が、O原子により中断されてもよい炭素数1〜12の炭化水素基である請求項2に記載の複素環化合物。
【請求項4】
上記一般式(I')において、Y'1で表される基が、上記一般式(II')で表される基である請求項2に記載の複素環化合物。
【請求項5】
基体上に光学記録層が形成された光学記録媒体の該光学記録層に用いられる、請求項1〜4のいずれかに記載の複素環化合物を含有してなる光学記録材料。

【公開番号】特開2006−89434(P2006−89434A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279314(P2004−279314)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】