説明

複製タンパク質Aを阻害する物質および方法ならびにその使用

少なくとも1種の試薬を用いて、制御されない細胞増殖およびDNAを損傷する化学療法薬への耐性を標的とすることは、癌治療において有意義な可能性を有する。真核細胞1本鎖(ss)DNA結合タンパク質である複製タンパク質Aは、DNA複製および修復の両方における役割により、ゲノム維持および安定性のため不可欠である。本明細書に報告されるのは、RPAのインビトロ、インビボおよび細胞でのssDNA結合活性を阻害し、それにより、真核細胞の細胞周期を乱し、細胞毒性を誘発する小分子であり、また、DNAを損傷させかつ/またはDNA複製および/または機能を乱す化学療法薬の効力を増大させる小分子である。これらの結果は、染色体維持および安定性におけるRPA−ssDNA相互作用の機序への新たな洞察を提供する。これは、分子標的の真核細胞DNA結合阻害剤を提起し、細胞周期を研究し、癌治療のための治療戦略をもたらす手段としてタンパク質−DNA相互作用を標的とすることの有用性を実証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、参照によりその全体を本明細書に組み込まれている2010年2月5日出願の米国仮特許出願第61/301,778号の利益を主張する。
【0002】
政府権利の申告
本発明の進展の間、研究の一部は、許可番号CA82741のもとに合衆国国立衛生研究所(NIH)からの政府援助により行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本発明のいくつかの態様は、複製タンパク質A(Replication Protein A)の活性を少なくとも部分的に阻害する分子を特定することに関し、またこれらの分子を使用して、癌を含む過剰増殖性疾患を治療することができる。
【背景技術】
【0004】
複製タンパク質A(RPA)は、70、34および14kDaサブユニットから構成されるヘテロ三量体1本鎖DNA(ssDNA)結合タンパク質である(1)。RPAのssDNA結合活性は、DNA複製、組換えおよび修復を含むいくつかのDNA代謝経路について必要とされる。DNAとの高親和性相互作用は、3つのサブユニットのそれぞれの上に存在する数多くのオリゴ糖/オリゴヌクレオチド結合(OB)−フォールド(fold)によって維持される(2、3)。単一のOB−フォールドのDNA結合ポケットは、ssDNAの塩基3〜4個を収容する(4、5)。主なOB−フォールド、すなわちDNA結合ドメインAおよびB(DBD−AおよびDBD−B)は、p70サブユニットの中心領域に存在し、RPA−ssDNA相互作用のための結合エネルギーの大部分をもたらしている(2)。個々のOB−フォールドは、疎水性および塩基性アミノ酸と一緒に存在する、こぢんまりとしたモジュールドメインである。これらの構造的特徴により、OB−フォールドは、DNA結合活性の小分子阻害剤(SMI)を開発するための魅力的な標的となっている。細胞の成長およびDNA修復におけるRPAの中心的役割を考慮すれば、RPAは、その活性を妨げることができる化合物を開発するための魅力的な標的である。本発明のいくつかの態様は、RPAと相互作用する化合物、ならびにその化合物を使用して、細胞成長および細胞死に影響を及ぼす方法を包含する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の種々の態様は、複製タンパク質Aの活性を低下させる方法および化合物、真核細胞の増殖、真核細胞の細胞周期に影響を及ぼす方法および化合物、ならびに/または癌を治療する方法および化合物であって、複製タンパク質Aを、下記のコア構造:
【0006】
【化1】

を含む化合物Aまたはその代謝産物(metabolite)などの化合物と接触させるステップによる方法および化合物を包含する。
【0007】
いくつかの実施形態において、このコア構造を含む化合物またはその代謝産物と接触させた真核細胞をさらに、DNAを直接損傷させる、またはトポイソメラーゼIIを阻害する少なくとも1つの化合物と接触させる。このような化合物には、シスプラチン、エトポシド、ブスルファン、ベンダムスチン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ダウノルビシン、デシタビン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、オキサリプラチン、テモゾロミド、トポテカンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0008】
本発明のいくつかの態様は、複製タンパク質Aの活性を低下させる方法であって、化合物Aを提供するステップであって、この化合物Aは複製タンパク質Aに結合する、または、代謝されて複製タンパク質Aに結合する化学物質(chemical)となり、化合物は下記の式:
【0009】
【化2】

(式中、Rは、5−(7−クロロ−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g]キノリン−8−イル)、5−(キノキサリン−6−イル)および6−クロロ−[1,3]ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−イルを含む、置換キノリン、チオフェンおよびフェニルからなる群から選択され;Rは、水素、ハロゲン、メチル基、ニトロ基からなる群から選択され、ここで、化合物A、または化合物Aの代謝産物が複写タンパク質Aに結合し;Rは、ケト酪酸および
【0010】
【化3】

からなる群から選択され、式中、n=1、2、3、4または5である)を有するステップを含む方法を包含する。いくつかの実施形態において、化合物A中のキノリンまたはフェニルは、ハロゲン、メチル基、エチル基、アミノ基およびピラゾールからなる群から選択される少なくとも1つの部分で置換されている。いくつかの実施形態において、化合物A中のRは、2−クロロ−7−エトキシキノリン、5(キノキサリン−6−イル)、2−クロロ−6,7−ジメトキシキノリン、2−クロロ−6−エトキシキノリン、4−ブロモフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、2−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、4−エチルフェニル、4−ジエチルアミノフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、チオフェン、4−メトキシフェニル、p−トリル、2,5−ジメトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、4−エチルフェニルおよび1−フェニル−3−p−トリル−1H−プリアゾール(pryazole)からなる群から選択され、化合物A中のRは、4−ブロモ、4−クロロ、4−ニトロ、4−メチル、4−メトキシ、H、3,4−ジメチルからなる群から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態において、複製タンパク質Aに結合する分子は、化合物Aの誘導体またはその代謝産物である。またいくつかの実施形態において、複製タンパク質Aに結合する分子は、化合物TDLR−505、化合物TDLR−506またはそれらの代謝産物である。
【0012】
さらに他の実施形態において、化合物Aまたはその代謝産物のいずれかと複製タンパク質Aの少なくとも1つのアイソフォーム(isoform)とを接触させるステップは、インビボ(in vivo)で行われる。さらに他の実施形態において、化合物Aまたはその代謝産物と、複製タンパク質Aの少なくとも1つのアイソフォームとを接触させるステップは、インビトロ(in vitro)で行われる。
【0013】
本発明の他の態様は、真核細胞の細胞周期進行(cycle-progression)を変化させることにより細胞増殖を阻害する方法であって、真核細胞の細胞周期進行を妨げる化合物A、または代謝されて真核細胞の細胞周期進行を妨げる化学物質となる化合物Aを提供するステップであって、化合物Aが、下記の式:
【0014】
【化4】

(式中、Rは、5−(7−クロロ−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g]キノリン−8−イル)、5−(キノキサリン−6−イル)および6−クロロ−[1,3]ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−イルを含む、置換キノリン、チオフェンおよびフェニルからなる群から選択され;Rは、水素、ハロゲン、メチル基、ニトロ基からなる群から選択され、ここで、化合物A、または化合物Aの代謝産物は複製タンパク質Aに結合し;Rは、ケト酪酸および:
【0015】
【化5】

からなる群から選択され、式中、n=1、2、3、4または5である)を有するステップを含む方法を包含する。いくつかの実施形態において、化合物A中のキノリンまたはフェニルは、ハロゲン、メチル基、エチル基、アミノ基およびピラゾールからなる群から選択される少なくとも1つの部分で置換されている。いくつかの実施形態において、化合物A中のRは、2−クロロ−7−エトキシキノリン、5(キノキサリン−6−イル)、2−クロロ−6,7−ジメトキシキノリン、2−クロロ−6−エトキシキノリン、4−ブロモフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、2−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、4−エチルフェニル、4−ジエチルアミノフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、チオフェン、4−メトキシフェニル、p−トリル、2,5−ジメトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、4−エチルフェニル、および1−フェニル−3−p−トリル−1H−プリアゾール(pryazole)からなる群から選択され;および化合物A中のRは、4−ブロモ、4−クロロ、4−ニトロ、4−メチル、4−メトキシ、H、3,4−ジメチルからなる群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態において、真核細胞の細胞周期進行を少なくとも部分的に妨げる化合物は、化合物Aまたはその代謝産物である。さらに他の実施形態において、真核細胞の細胞周期進行を妨げる化合物は、化合物TDLR−505、TDLR−506またはそれらの代謝産物である。いくつかの実施形態において、化合物Aまたはその代謝産物と複製タンパク質Aとの間での接触させるステップは、インビボで行われる。
【0017】
さらに他の実施形態は、ヒトまたは動物の患者を治療する方法であって、少なくとも1つの治療的に活性な量の、RPAの活性を阻害する少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を供給または提供するステップを含む方法を包含する。いくつかの実施形態は、ある用量のその化合物を患者に投与するステップであって、その用量が、その患者の体重1kg−1当たり前記化合物約50mg、またはその患者の体重1kg−1当たり前記化合物約100mg、またはその患者の体重1kg−1当たり前記化合物約200mgであるステップを包含する。
【0018】
さらに他の実施形態において、前記化合物Aまたはその代謝産物と、複製タンパク質Aとを接触させるステップは、インビトロで行われる。本発明のさらに他の態様は、癌の治療方法であって、化合物を提供するステップであって、その化合物は癌細胞の細胞周期を妨げ、またはその化合物は代謝されて癌細胞の細胞周期を妨げる化学物質となり、またその化合物は、下記の式:
【0019】
【化6】

(式中、Rは、置換キノリン、チオフェンおよびフェニルからなる群から選択され、化合物AにおいてRは、ハロゲン、メチル基、ニトロ基からなる群から選択される)を有し、ここで、化合物Aは複製タンパク質Aに結合するステップと;前記化合物Aを、少なくとも1の癌細胞と接触させるステップとを含む方法を包含する。いくつかの実施形態において、化合物A中のキノリンまたはフェニルは、ハロゲン、メチル基、エチル基、アミノ基およびピラゾールからなる群から選択される少なくとも1つの部分で置換されている。いくつかの実施形態において、化合物A中のRは、2−クロロ−7−エトキシキノリン、5(キノキサリン−6−イル)、2−クロロ−6,7−ジメトキシキノリン、2−クロロ−6−エトキシキノリン、4−ブロモフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、2−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、4−エチルフェニル、4−ジエチルアミノフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、チオフェン、4−メトキシフェニル、p−トリル、2,5−ジメトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、4−エチルフェニル、および1−フェニル−3−p−トリル−1H−プリアゾール(pryazole)からなる群から選択され;および化合物A中のRは、4−ブロモ、4−クロロ、4−ニトロ、4−メチル、4−メトキシ、H、3,4−ジメチルからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、癌細胞と接触させる化合物は、化合物Aまたはその代謝産物である。またいくつかの実施形態において、癌細胞と接触させる化合物は、化合物TDLR−505、TDLR−506またはそれらの代謝産物である。いくつかの実施形態において、前記化合物またはその代謝産物と癌細胞との間での接触させるステップは、インビボで行われる。またさらに他の実施形態において、前記化合物Aまたはその代謝産物と癌細胞との間での接触させるステップは、インビトロで行われる。いくつかの実施形態において、この癌細胞は、肺癌、非小細胞、小細胞、上皮性卵巣癌(epithelial ovarian cancer)、子宮頸癌、大腸(colon)癌および乳癌からなる群から選択される固形腫瘍中に見出される。本発明のいくつかの実施形態は、癌細胞を、直接DNAと結合するかもしくはDNAを損傷させる、またはトポイソメラーゼIIの活性を低下させる少なくとも1つの化学療法試薬と接触させるステップをさらに包含する。いくつかの実施形態において、この化学療法試薬は、シスプラチンおよびエトポシドからなる群から選択されるが、これらに限定されない。このような化合物には、ブスルファン、ベンダムスチン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ダウノルビシン、デシタビン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、オキサリプラチン、テモゾロミド、トポテカンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】化合物3の図である。
【図1B】DNAへのRPA結合を阻害する化合物3のEMSAの図である。
【図1C】DNAへのRPA結合を阻害する化合物3のEMSAデータをプロットした図である。
【図2A】化合物Aのケト酪酸誘導体の図である。
【図2B】化合物TDLR−505の図である。
【図2C】DNAへのRPA結合を阻害する化合物TDLR−505のEMSAの図である。
【図2D】DNAへのRPA結合を阻害するTDRL−505のEMSAデータをプロットした図である。
【図3】DNAへのRPA結合を阻害する化合物TDLR−506のEMSAの図である。
【図4A】TDRL−505により誘発された細胞死を測定する、アネキシンV/PIにより染色したH460細胞を点プロットした図である。
【図4B】化合物TDLR−505の種々の濃度で測定した細胞死データをプロットした図である。
【図4C】抗RPA抗体により試験し(probed)、AlexaFluor抗体により視覚化した、RPAによる細胞局在の免疫蛍光検査の図である。
【図4D】化合物TDRL−505処理の関数としてのRPAのp34サブユニットのウエスタンブロットを示す図である。
【図5A】化合物TDLR−505で処理したH460 NSCLC細胞の細胞周期分布の図である。
【図5B】ノコダゾールで処理し、次いで化合物TDLR−505で4、8または12時間処理したH460細胞の細胞周期分布の図である。
【図6】化合物TDLR−505と、シスプラチン(白丸)またはエトポシド(黒丸)のいずれかとにより同時処理したH460細胞における相乗作用の解析を示す図である。
【図7A】マウス異種移植モデルにおける非小細胞肺癌に対するTDRL−505のインビボ抗癌活性を示す図である。腫瘍体積を測定し、時間に対しプロットした。データは平均±S.E(n=5)として表される。
【図7B】異種移植モデルにおいて評価した個々のマウスにおける非小細胞肺癌に対するTDRL−505のインビボの抗癌活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
新規技術の原理の理解を進める目的で、ここで、その好ましい実施形態を参照し、それを記述するため特定の用語が使用されるであろう。しかし、それにより、新規技術の範囲を何ら制約するものではないことが意図され、新規技術の原理のこのような変更、修正およびさらなる適用が、新規技術に関連する当業者に通常起こるものと企図される点が理解されるであろう。
【0022】
特にまたは暗黙のうちに言及しない限り、本明細書において使用される用語「約」は、±10パーセントを意味する。例えば、「約1.0」は、0.9〜1.1の範囲を包含する。
【0023】
治療有効用量は、患者の健康または快適さへの単一のまたは累積された有益な効果を有する生物学的に活性な化合物の量である。
【0024】
RPA−DNA相互作用の阻害は、癌細胞における数多くの特異的に制御される経路に強い影響を与える可能性がある。DNA複製において、RPA阻害を用いて、S期の細胞の大きな個体数によって特徴付けられる癌細胞の高度に増殖的な特性を利用することができる。RPAはまた、ヌクレオチド除去修復(NER)を含む、細胞におけるいくつかのDNA修復経路においても不可欠である。種々の癌治療において使用される一般的化学療法薬であるシスプラチンは、主としてNER経路によって修復される鎖内共有結合DNA付加体(adduct)の形成により、その細胞毒性効果を誘発する(6)。したがって、シスプラチン治療は、RPA ssDNA結合活性の低下と同時に、シスプラチン−DNA付加体の細胞修復効率の低下をもたらし、細胞毒性を増加させると期待される。こうして、RPAを標的とすることは、単一薬剤の活性についての可能性だけではなく、シスプラチン、エトポシドおよび電離放射線(IR)などの、DNA損傷および遺伝子不安定性を誘発する治療に対して癌細胞を増感する可能性をも有する。ブスルファン、ベンダムスチン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ダウノルビシン、デシタビン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、オキサリプラチン、テモゾロミド、トポテカンなどである。
【0025】
本明細書において開示されるように、RPAのssDNA結合活性を阻害する小分子が特定されている。細胞RPAの阻害は、S期に入る能力の欠如、細胞死の誘発ならびに化学療法試薬シスプラチンおよびエトポシドとの相乗的活性をもたらす。RPAのssDNA結合活性を阻害することができるこれらの小分子は、癌細胞を殺すために、単剤として、また一般に使用される化学療法薬と併用してのいずれでも活性である。インビボにおいて、これらの化合物は、明らかな毒性の兆候なしにIPおよび強制経口投与により200mg/mgまでマウスに安全に投与することができ、マウス異種移植(xenograft)モデルにおいてヒト非小細胞肺癌に対する抗癌活性を有する。
【0026】
材料および方法
TDRL505誘導体の合成
ここでスキーム1を参照する。市販の、1などのケトンおよび2などのアルデヒドをクライゼン−シュミット縮合に掛けて、3などのエノンを生成し、これを、ヒドラジンなどの試薬を使用して環化して、4などのH1ピラゾールを生成することができる。5などの種々の酸によりアミド結合の化学作用を用いて、このピラゾールのN1位を修飾して、6の例示的化合物TDRL−505などの化合物を形成する。
【0027】
【化7】

【0028】
TDRL506誘導体の合成
ここでスキーム2を参照する。TDRL−505および3−モルホリノプロパン−1−アミン(2)から、EDCカップリングによりTDRL−506を調製した。
【0029】
【化8】

【0030】
インビトロ解析
小分子阻害剤をChemDivから得て、DMSO中に再懸濁させた。化合物TDLR−505を独立に合成し、質量分析解析により構造を確認した。以前に記述した大腸菌(E. coli)過剰発現系を使用して、ヒトRPAを精製した(7)。以前に記述したように、25nM RPA、25nM 5’[32P]標識34塩基対DNAを含有する20μL反応物中でEMSAを行った(7)。DMSOの最終濃度は1%であった。
【0031】
フローサイトメトリー
H460細胞のアポトーシスは、アネキシン(Annexin)V−FITCヨウ化プロピジウム(PI)Vybrantアポトーシスアッセイキット(Invitrogen)を使用して製造業者の取扱説明書に従って解析した。細胞を、1cm当たり1×10個の細胞密度で平板培養し、24時間付着させ、次いで化合物TDLR−505で48時間処理した。上述のH460細胞の平板培養および処理に続いて、付着および非付着細胞を収集し、処理し、BD FACScanフローサイトメーターで解析した。WinMDIソフトウエア(http://facs.scripps.edu/software.html)を使用してデータを解析した。細胞周期解析は、PI染色により行った。簡単に言うと、細胞を平板培養し、化合物で処理し、収集し、次いで1%BSAを補ったPBS−EDTAで2回洗浄した。渦流中で細胞を−20℃において70%EtOH中に固定し、続いて氷上で30分間インキュベートした。次いで細胞を収集し、PI溶液(1%BSAを補ったPBS−EDTA中、10μg/mLのPIおよび25μg/mLのRNaseA)で染色した。細胞を、Becton Dickinson FACScanフローサイトメーターで解析した。細胞はゲートをかけ、FL2−Aパラメーターに対してプロットした結果のヒストグラムについて解析した。ModFitソフトウエアを使用し、細胞周期分布を解析した。0.8μg/mLノコダゾールによる処理によって12時間のG2停止を誘発した(10)。次いで、細胞をPBSで洗浄し、媒体(vehicle)または化合物TDLR−505(100μM)のいずれかで処理した。細胞を収穫し、上述の細胞周期分布について解析した。
【0032】
間接免疫蛍光検査
H460細胞を、上述のようにチャンバースライド(LabTek)上で平板培養した。次いで、示したように50μMの化合物TDLR−505または媒体のいずれかで細胞を3時間処理し、処理に続いて、細胞を25℃において4%パラホルムアルデヒド中で3分間固定し、続いて4℃において0.2%Triton X−100中で2分間洗浄した。次いで、スライドをPBS中15%のFBS中において25℃で1時間ブロックし、次いで、15%FBS中における希釈1:500で抗RPA34一次抗体(Neomarkers)と共に1時間インキュベートした。次いで、スライドを15%FBSで10分ずつ3回洗浄し、次いで希釈1:300でAlexa Fluor−594ヤギ抗マウス二次抗体(Invitrogen)と共に1時間インキュベートした。スライドを再び洗浄し、PBS−EDTA中に希釈した300nM DAPIで5分間染色した。次いで、スライドを装着し、Zeiss蛍光顕微鏡を使用して画像を捕え、そしてRPA染色を視覚化するテキサスレッドおよびDNAを視覚化するDAPI用フィルターを使用して画像を捕えた。スライドを視覚化し、ImageJソフトウエアを使用して画像を解析し、定量した。
【0033】
ウエスタンブロット解析
H460細胞を平板培養し、25μMエトポシドの存在下または不在下において媒体または100μMの化合物TDLR−505のいずれかで6時間処理し、次いでRIPA溶解および抽出手順を使用しウエスタンブロット解析のため処理した。抗RPA p34抗体(Neomarkers)およびヤギ抗マウスHRP二次抗体(Santa Cruz)によりRPAを検出した。化学発光検出を使用して、バンドを視覚化した。
【0034】
インビボ解析
NOD/SCIDマウス(8週齢)に、化合物TDLR−505を、200mg/kgで1週当たり2回2週間IP注入投与した。明らかな毒性の兆候についてマウスを監視し、また1週当たり3回体重を測定した。マウスを犠牲にして、全身死体解剖を行って、臓器重量を調べ、毒性の兆候を試験した。TDLR−505を約200mg/mgの投与量レベルでマウスに経口投与した場合、TDLR−505に毒性がある兆候はなかった。次いで、NOD/SCIDマウスに、0.2mlの50%Matrigel中のH460細胞5×10個を皮下に移植した。腫瘍を7日間成長させ、またTDRL−505を1週当たり2回強制経口投与により1週間投与した。腫瘍の幅および長さを測定し、これらの測定値を式:体積=l×w/2で使用することにより、腫瘍の体積を計算した。
【0035】
薬物動態解析。TDRL−505をipまたはpoのいずれかでマウスに200mg/kg投与し、処理後1、2、4、8、24および48時間に、血液を採取した。TDRL−505の血清濃度を、HPLC MS/MSプロトコルを使用して測定し、またオンコンパートメント(on-compartment)解析を用いPKパラメーター解析を行った。
【0036】
結果
RPAの小分子阻害剤の特定
以前の研究から、RPAのDNA結合活性を阻害するが、細胞活性(cellular activity)を示さないNCIライブラリーからの一連の小分子が特定された(8)。さらなる研究は、最初のアッセイ法に蛍光偏光(FP)修正を加えたものを使用して、ChemDivライブラリーのスクリーニングを企てた。ここに図1A、BおよびCを参照すると、ハイスループットスクリーニングから化合物3が特定され、かつ二次アッセイにおいて電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を使用して解析し、阻害性を確認した。図1Bおよび1Cにより示されるように、EMSA解析によりRPA DNA結合の著しい阻害が観察され、データの定量化がこの阻害性の証拠となっている。
【0037】
ここに図2AおよびBを参照する。化合物Aのコア構造において化合物を使用して観察された高レベルのインビトロRPA阻害性を考慮して、このコア構造を、N1位置に4−オキソブタン酸およびC3にフェニル置換基を有するジヒドロピラゾールで置換して、構造活性相関(SAR)の解析を開始し、また細胞活性を有する他の化合物を探究した。ChemDivライブラリーから、フェニル環(R)外に種々の置換を有し、またジヒドロピラゾール環(R)のC5位置に種々の置換基を有する81個の類似体が特定され、得られた(データは示さない)。解析した化合物の中で、化合物TDRL−505(図2B)が、試験された最も効力のあるRPA阻害剤であり、IC50値13μMを有していた(表1)。二次スクリーニングにおいて、TDRL 518およびTDRL 520〜523を含むいくつかの化合物も、インビトロRPA阻害活性を有するとして、または、RPA活性を阻害することが見出された小分子と同様の化学的特性を有するとして特定された。さらに表1を参照すると、表1のそれぞれの化合物は、インビボで、またはインビトロの細胞でRPAに対し滴定して、そのIC50値を測定した。表1に示すように、これらの化合物は、RPA−ssDNA相互作用を阻害する異なる能力を示した(表1)。それぞれの化合物の細胞活性を測定するために、H460 NSCLC細胞株における細胞死の誘発を測定し、48時間曝露後のそれぞれの化合物のIC50値を測定した。これらのデータは、表1にも示されており、インビトロ活性と細胞活性との間の相関性を明らかにしており、これらは細胞のRPA阻害性と一致し、またRPA阻害の特異性を示している。しかし、インビトロにおいて最小のRPA−ssDNA相互作用阻害性を示した化合物523も、わずかに細胞活性を呈していた。このことは、細胞がこの化合物を代謝して、より効果的なRPA阻害剤を生成した結果である可能性がある。化合物3類似体についての細胞およびインビトロ阻害活性の解析は、化合物TDLR−505が、最も低いインビトロIC50値を示し、また細胞で試験したもののうち最も効力のある化合物であることを示した。したがって、この化合物は、広範な一連のインビトロの、細胞に基づく、およびインビボアッセイ法を使用する、その作用機序ならびに、RPA−ssDNA相互作用の阻害からもたらされる細胞効果の検討を含む、さらなる検討のため選択された。
【0038】
ここで表1を参照すると、インビトロIC50は、図1Aに示したようにEMSA解析により測定した。細胞IC50値は、H460細胞を、示した化合物で処理し、方法で記述したようにアネキシンV/PI染色物を解析することにより測定した。インビトロおよび細胞データを、標準的4パラメーターロジスティック曲線を使用して解析した。この解析からIC50値および適合の標準誤差を決定した。
【0039】
ここで表2を参照する。表2における化合物は市販され、インビトロでRPA−DNA結合活性を阻害することが実証されてもいる。簡単に言うと、「m」は、オキソペンタン酸修飾およびキノリン外でのジオキシノール置換を有し;「n」は、オキソペンタン酸修飾およびキノリンのキノキサリン−イル置換を有し;「r」は、ブタン酸およびキノリン外でのジオキソロ置換を有する。
【0040】
酪酸およびモルホリノ誘導体を含む、化合物mおよびnの誘導体を作製する。フェニル環上でp−メチルがp−ブロモで置き換えられる。Br−フェニル基およびモルホリノ基を有する「r」の誘導体も作製される。本明細書において記述したSARデータは、酪酸をより長くすると(例えばペンタン酸)幾分活性を損なうように見え、しかし側鎖全体を除去するとRPA阻害活性を実質的に失う結果になることを示している。したがって、より少ない炭素スペーサーを有する、より短いモルホリノ誘導体が望ましいものである。
【0041】
RPAの70kDaサブユニットにおけるDBD−AおよびBを標的とする、RPAのDNA結合活性のインビトロ阻害
ここで図2C、DおよびE、化合物TDLR−505のEMSA解析を参照する。簡単に言うと、34塩基ssDNA基質を使用して、濃度の増加する化合物TDRL−505をRPAと一緒に前インキュベートし、EMSAにより、DNA結合活性を評価した。ここで図2Dを参照すると、図2C中に存在するゲルの定量化を示している。ここで図2Dを参照すると、各点の平均および標準偏差を表している。データは、N=4を有する標準的4パラメーターロジスティック曲線に適合させた。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
TDRL−505の修飾;TDRL−506の解析
ここでスキーム2を参照する。TDRL−506を合成し、精製し、インビトロRPA阻害活性について評価した。図3を参照すると、TDRL−506は、完全長RPAヘテロ三量体レーン1〜7およびDBD−A/Bコンストラクト(レーン8〜12)の両方に対するRPA阻害活性について評価した。使用した濃度は、TDRL−506の25、50、75および100□Mであった。データは、モルホリノ修飾を含有するTDRL−506化合物が、完全にRPA阻害活性を保有することを実証している。
【0045】
TDRL−505による癌細胞死の誘発
ここで、図4A、4B、4Cおよび4Dを参照すると、H460 NSCLC細胞株における細胞死および細胞周期進行の誘発に対する化合物TDRL−505の効果を測定した。簡単に言うと、H460細胞を化合物TDRL−505で48時間処理し、アネキシンV/PIによる染色によって細胞生存能について分析し、点プロットとして示した(図3Aを参照されたい)。ここで図4Bを参照すると、図4Aからのデータを定量化し、生存細胞を示すアネキシン−/PI−細胞(四分の一区分の左下)の百分率を計算した。平均±SD(N=4)を示し、データを4パラメーターロジスティック曲線に適合させた。これらのデータは、TDRL−505が、NSCLC細胞中に細胞死を誘発することが可能であることを実証している。細胞生存能への化合物TDLR−505の影響の独立した測定値としてクリスタルバイオレット染色アッセイを使用し、IC50値64μMをもたらした(データは示さない)。化合物TDLR−505によるA549 NSCLC細胞株の処理においても、同様な結果が観察されたが、一方で新たに単離した末梢血単核細胞(PBMC)を使用した解析では、最小限の細胞毒性活性を示した(データは示さない)。これらの実験において、化合物TDLR−505は、NSCLC細胞株において顕著な細胞毒性効果を示すが、非癌性細胞ではほんのわずかな活性しか示さず、これらの分子についての治療処置の窓領域が存在することを示している。
【0046】
化合物TDLR−505による処理後に見られるこれらの細胞効果は、RPAがDNAと相互作用できないことと相関し、これにより、次いで、細胞内におけるRPAの分解または再分布を含む数多くの可能性をもたらし得るであろう。間接免疫蛍光検査を使用して、RPA結合の阻害が細胞の局在にどのように影響するかを評価した。ここで図4Cを参照すると、H460細胞を化合物TDLR−505または媒体で3時間処理し、RPA発現および局在について、Alexa Fluor594二次抗体(赤色)を使用し間接免疫蛍光検査により解析した。スライドをDAPI(青色)で対比染色し、画像を併合させた。箱で囲んだ細胞の拡大図を、低倍率の画像の下方に示している。簡単に言うと、化合物TDLR−505で3時間処理した後、細胞は、全体として細胞内局在に変化のない媒体で処理した対照と比較して、RPA染色強度の低下を示した(図4C)。染色強度の定量化により、媒体で処理した細胞の染色強度は、23%が、最大値の70%を超える強度を示すが、化合物で処理した細胞では、その値を超える染色強度を示すのは15%に過ぎないことが明らかになった。これらのデータは、TDRL−505による細胞の処理が、細胞内でDNAに結合したRPAの量を減少させることを実証している。ここに図4Dを参照すると、図に示すように、H460細胞を、エトポシドなしでまたはエトポシド(25μM)と共に媒体または100μMの化合物TDLR−505で処理した。RPA発現を、p34サブユニットについて試験し、ウエスタンブロット解析により評価した。レーン1は、大腸菌(E.coli)発現系から精製したRPAによる陽性対照である。非リン酸化RPA p34および高リン酸化RPA p34の位置が、矢印によって示される。これらのデータは、TDRL−505処理の関数として、RPAが分解されないか、または発現性が低下しないことを実証している。
【0047】
化合物TDLR−505はH460細胞株におけるG1停止を誘発する
細胞周期進行への化合物TDLR−505の影響を評価するため、化合物TDLR−505を試験した。siRNAによるRPAのノックダウンは、S期のDNA複製の開始におけるRPAの本質的役割に一致して、G1細胞周期停止を誘発することが実証されている(19)。このことが、化合物TDLR−505が示す作用機序と同一のものであるかどうか確かめるために、H460細胞周期進行へのその影響を測定した。図5に提供されるデータによって例示されるように、同調された(synchronized)H460細胞は、TDRL−505で処理した場合、S期に再入する能力が無くなることが示される。
【0048】
ここで図5Aを参照する。H460 NSCLC細胞を、0および75μMの化合物TDLR−505で48時間処理し、次いで、フローサイトメトリーを用い細胞周期分布について解析した。図5Bでは、H460細胞を、0.8μg/mLのノコダゾールで12時間処理し、洗浄し、次いで媒体または100μMTDLR−505のいずれかで4、8および12時間処理した。次いで細胞を収穫し、フローサイトメトリーを用い細胞周期分布について解析した。
【0049】
非同調(asynchronous)培養についての化合物TDRL−505の解析を試験し、TDRL−505による処理に応答して、G1期における細胞の割合の増加が観察された(図5A)。化合物TDLR−505で処理した細胞で、S期に入るのが阻害されるかどうか確かめるため、細胞を、ノコダゾールによりG2/Mに同調させ、次いでG2停止から解放し、また媒体または化合物TDLR−505のいずれかを補った完全培地を再供給した。ここで図5Bを参照すると、ノコダゾールを除去した後、対照および処理した細胞の両方が急速に有糸分裂を経てG1に進行した。媒体だけで処理した細胞は、4時間の時点で見られるようにG1に入り、また8時間の時点でS期中への進行は明らかであり、12時間の時点でG2への進行は明らかである。化合物TDLR−505で処理した細胞は、ノコダゾールからの解放後、細胞周期のG1期に進行したが、解放後12時間でもS相に入らなかった。これらのデータは、TDRL−505が、肺癌細胞において、G1細胞周期停止を誘発することを実証している。
【0050】
DNA修復および複製におけるRPAの役割の阻害
DNA複製におけるその本質的役割の他に、かさのあるDNA付加体ならびに、種々の型の外因性および内因性因子によって誘発されるDNA切断(break)の修復のためRPAが必要とされる。ssDNAとのRPAの会合は、全てのこれらの経路の重要な特徴であり、この活性の阻害は、DNA損傷により誘発される細胞毒性効果を増加させるであろう。シスプラチンへの細胞感受性に対するRPA阻害の効果を確かめるため、併用指数(CI)(20)を測定した。ここで図6を参照する。この実験で例示されるように、化合物TDLR−505は、H460細胞内においてシスプラチンおよびエトポシドの両方と相乗的に作用する。H460細胞を、シスプラチンまたはエトポシドのいずれかのIC50濃度の分率を増加させながら、化合物TDLR−505と共に48時間処理した。処理後、細胞を収穫し、アネキシンV/PIフローサイトメトリーにより解析した。白丸は、TDLR−505とのシスプラチンのCI解析を示し、黒丸は、TDLR−505とのエトポシドのCI解析を表す。併用指数解析は、以前に記述したように行った(20)。データは、平均±SD(N=3から)として表される。シスプラチンと化合物TDLR−505とを組み合わせて使用する場合、細胞生存能は、いずれかの薬剤単独で誘発されるものを超えるレベルまで低下し、2種の化合物間の相乗作用をもたらし、また影響を受けた細胞の最高の割合(fraction)においてCI 0.4をもたらした。影響を受けた細胞のより低い割合では、相互作用は相加的であり、次いで拮抗的(CI値が1を超えることから明らかになった)となった。これらの結果は、化合物TDLR−505が、H460細胞におけるシスプラチンの効果を増強することができ、またNERにおいてRPAの細胞活性を阻害する点で一致することを実証している。エトポシドと相乗作用するTDLR−505の能力も検討した。エトポシドは、複製フォークの停止およびDNA損傷応答を誘発し、両方ともRPAを必要とする細胞過程である(21)。シスプラチンについて上述したのと同じ解析を使用して、化合物TDLR−505は、影響を受けた細胞の全ての割合においてエトポシドとの相乗作用活性を示した(図6)。様々な細胞系において、RPA p34が、エトポシド処理に応答して高リン酸化されることが示されている(21、22)。興味深いことに、ウエスタンブロット解析によりRPA p34の高リン酸化を解析すると、TDLR−505との同時処理によって変化せず、また全体的なRPA発現に劇的な変化がないことが明らかになった(図4D)。このデータは、TDLR−505による処理がエトポシド依存性のDNA損傷シグナル伝達応答には劇的に影響を及ぼさず、またRPAの高リン酸化が存在する状態で、相乗作用が観察されることを実証している。
【0051】
化合物TDLR−505のインビボ解析
ここで表3を参照する。TDRL−505がNSCLCに対し妥当なIC50値を示していることが、肺癌腫瘍成長へのRPA阻害の効果のインビボ評価を促した。未処理マウスにおけるTDRL−505投与の安全性を測定した。さらなるデータは、NOD/SCIDマウスへの、0.75%のツウィーン80(Tween 80)における25%DMSO製剤における化合物TDLR−505のIP投与が、400mg/kgまで十分に許容されることを実証した。0.1%ツウィーン80/メチルセルロースにおける経口投与も、800mg/kgまで十分に許容された。
【0052】
ヒトNSCLC腫瘍細胞を移植したマウスに経口投与療法を受けさせた。腫瘍を100mm3まで成長させ、その後TDLR−505または媒体による処理を開始した。図7において示される結果は、TDRL−505で処理したマウスにおいて、媒体による対照と比較して腫瘍成長が低減することを実証した。図7Bを参照すると、個々のマウスの解析は、媒体で処理した対照と比較した腫瘍成長の著しい低減を明らかにしている。
【0053】
TRL−505のインビボ抗癌活性に基づいて、ipおよびpo投与療法の両者について薬物動態パラメーターの比較を行った。未処理マウスに1回投与を行い、表3において記述されるように、種々の時間間隔で血液を採取し、この化合物向けに開発されたHPCL/MSMSプロトコルによりTRDL−505濃度を測定した。データは、poと比較して、ip投与についてのほぼ全てのパラメーターにおいて著しくより良好なPKパラメーターを実証している。これらのデータは、ip投与が著しく大きな生体適合性をもたらし、またより一層大きな抗癌活性に導く、増大した効力をもたらすであろうことを示唆している。さらに、TDRL−506において用いられたモルホリノ修飾は、その経口生体適合性を向上させ、それによりTDRL−506についてのより効果的な経口投与療法をもたらすはずである。
【0054】
【表3】

【0055】
ハイスループットスクリーニングおよび化学物質ライブラリーにおける進歩は、推定上の癌標的およびそれらの阻害剤の急激な増加を招いている。今日まで、大部分のこれらの標的となる酵素活性は、特定のタンパク質に関連していた。本明細書において例示されるように、非酵素的なRPAのDNA結合活性を標的とすることは、全く新たな部類の、推定上の相互作用を切り開くことである。化合物TDLR−505は、細胞がS期に入ることを阻害し、かつ細胞毒性/細胞増殖抑制応答をもたらし、その結果は、DNA複製の開始におけるRPAの役割を阻害することと一致し、またこの過程は、複雑な一連の相互作用を包含する可能性があり、その1つは、RPAをS期のCDK依存性過程中の複製開始点へ投入することである(19、23)。これらのデータは、DNA合成についてはっきりと実証するものではないが、RPAが化合物TDLR−505で処理した細胞の開始点に投入し得るかどうかを確かめることが残っている。TDLR−505の存在において細胞がS期から出てG2に入ることは、伸長においてDBD−Aおよび−B DNA相互作用があまり重要ではない可能性を示唆し、この場合RPAが主としてラギング鎖DNA合成に関与する(24)。DNA複製の初期段階におけるRPAの役割は、本発明者らが観察したS期内停止とは対照的に、G1停止を予測するものであろう。しかし、化合物TDLR−505で処理したS期細胞でRPA結合が低減し、したがって、後で複製フォークの伸長およびファイヤリング(firing)を阻害する可能性を除外することはできない。このことは、化合物TDLR−505によって死滅する細胞は、それらのDNAを活発に複製する細胞であり、この複製を妨げることが、観察された細胞毒性の原因である可能性を提供する。しかし、G1停止を継続すると、時間的期間が延びた後に細胞死を誘発する可能性もあり、これは、処理48時間後の細胞死の程度が、S期中に存在する細胞数を超える理由を説明するものである。このことは、RPAの細胞活性を阻害するSMIを使用する癌治療の状況において、活発に分裂する細胞を専ら標的とする治療の窓領域が存在することを例示するものである。
【0056】
DNA修復におけるRPAの役割も、その活性を阻害することが、併用療法と関連して、DNA損傷を誘発する現在の化学療法の効力増進を可能としている。DNA修復を阻害することは、持続性のDNA損傷を招き、それが細胞毒性を増加させると予想される。NERの認識および確認ステップにおけるRPAの不可欠な役割は十分に特徴付けされており、またさらにRPAは、損傷したオリゴヌクレオチドの除去に続く再合成ステップに関与している(25)。先行研究は、低下したレベルのNERタンパク質を有する細胞が、シスプラチン処理への感度増加を呈することを示している(26)。これと一致して、本発明者らのデータは、影響を受ける細胞の高い割合での、化合物TDLR−505とシスプラチンとの間の相乗的相互作用を明らかにしている。興味深いことは、影響を受ける細胞の低い割合では、拮抗的相互作用が、併用指数が1を超えることと組み合わせて観察される。これはおそらく相互作用が、修復レベルの相互作用ではなく、シグナル伝達レベルの相互作用である結果であろう。シスプラチンはG2チェックポイントの活性化をもたらし、G2停止の延長からアポトーシスを誘発するので、化合物TDLR−505がG1で細胞をブロックするという発見は、より少ない細胞が、シスプラチンが誘発するG2停止に曝されるであろうことを示している。同様に、化合物TDLR−505の毒性がG1停止の延長に由来するならば、シスプラチンにより誘発されるG2チェックポイントでは、処理の結果として、より少ない細胞死がもたらされるであろう。高い濃度では、この効果が、DNA修復のレベルにおけるRPA阻害との相互作用によって軽減されて、シスプラチンの毒性を増大させており、また拮抗的なシグナル伝達の相互作用を克服している。
【0057】
DNA複製再開始および崩壊した複製フォークの処理におけるRPAの役割も、併用療法のための機会を提供する(27、28)。興味深いことに、化合物TDLR−505とのエトポシドの活性の併用指数解析では、影響を受ける細胞の全ての割合で相乗作用的活性を示した。エトポシドは、トポイソメラーゼII(トポII)の酵素活性を阻害し、DNAとの持続的な共有結合切断錯体をもたらし、これが複製フォーク停止ならびに1本および2本鎖の切断につながる(29)。RPAがこれらの型の破壊およびDNA中間体に応答して、修復することが実証されており、この活性を阻害すると、本発明者らの解析において観察されるトポIIの阻害により見られる効果(21)を増強すると予想される。第二に、これらの細胞の非同調特性のため、任意の所与の時間には、複製を受ける細胞は、複製ファイヤリングの種々の段階にあると予想される。RPAは、初期の複製ファイヤリングにおいて必要とされ、一方トポIIはその後の段階の複製事象に必要とされることが示されている(30)。したがって、複製進行の両段階を阻害することは、このステップのいずれか一方を個別に阻害するよりも、大きな効果を示すと予想され、このことは、化合物TDLR−505とエトポシドの間の相乗的関係を意味するであろう。RPA活性の阻害および経路機能の抑止は、癌治療における幅広い利用のための可能性を有する。いくつかの他の修理経路におけるRPAの役割は、RPA阻害剤を使用する併用療法への他の機会を開くものである。例えば、分子標的のRPA阻害を放射線療法と組み合わせると、非相同DNAの末端結合または相同DNA組換え(いずれの修復もRPAを必要とすることが示されている)によるDNA2本鎖の切断の修復を阻害することによって、腫瘍細胞中の細胞毒性を増大させることにつながる可能性がある(31〜33)。
【0058】
小分子によってタンパク質の酵素活性を標的とすることも十分許容されるが、本明細書において提供される結果は、非酵素タンパク質−DNA相互作用を標的とすることの実現性および有用性を実証している。これらの化合物は、RPAについての小分子阻害剤(SMI)であって、これらはインビトロ活性および細胞活性の両方で能力発揮する。癌化学療法のためにRPAを標的とするこの取組みは、RPA活性の消失を防止するのに必要な効率的なバックアップ系の不在からもたらされる、冗長性欠如を含む、いくつかの特有の利点を有する。RPAを阻害することは幅広い有用性を有するであろう。なぜなら、細胞増殖を増加させまた化学療法によるDNA損傷剤を修復するためにRPAに依存することは、どんな単一の癌に対しても固有ではないからである。本明細書において開示される小さな薬剤様の分子によって、RPAのDNA結合活性を標的とする場合、この部類のタンパク質を標的として、治療用化合物を作り出すことができることを例示している。
【0059】
新規な技術が例示され、図面および上記の記述において詳細に記述されているが、このものは、特性において例示的であって、限定的ではないとみなすべきである。好ましい実施形態のみが示されかつ記述されており、また新規な技術の精神の範囲内となる全ての変更および修正が保護されるべきと所望されていると理解される。同様に、新規な技術が特定の例、理論的議論、説明および図を使用し例示されたが、これらの図およびそれに伴う考察は、決してこの技術を限定すると解釈されるべきではない。本出願において参照した全ての特許、特許出願、および本文への参考文献、科学的論文、出版物などは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
(参考文献)






【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質の活性を低下させる方法であって、
化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩を提供するステップであって、前記化合物Aは複製タンパク質Aに結合するか、または代謝されて複製タンパク質Aに結合する化学物質となり、前記化合物Aは下記の式:
【化9】

(式中、Rは、5−(7−クロロ−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g]キノリン−8−イル);5−(キノキサリン−6−イル);および6−クロロ−[1,3]ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−イルを含む、置換キノリン、チオフェンおよびフェニルからなる群から選択され;
は、水素、ハロゲン、メチル基、ニトロ基からなる群から選択され、ここで、化合物Aまたは化合物Aの代謝産物は複製タンパク質Aに結合し;および
は、ケト酪酸および
【化10】

からなる群から選択され、式中、n=1、2、3、4または5である)を有するステップと、
前記化合物Aを複製タンパク質Aの少なくとも1つのアイソフォームと接触させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記化合物A中の前記キノリンまたは前記フェニルが、ハロゲン、メチル基、エチル基、アミノ基およびピラゾールからなる群から選択される少なくとも1つの部分で置換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物A中のRが、5−(7−クロロ−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g]キノリン−8−イル)、5−(キノキサリン−6−イル)および6−クロロ−[1,3]ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−イルを含む、2−クロロ−7−エトキシキノリン、5(キノキサリン−6−イル)、2−クロロ−6,7−ジメトキシキノリン、2−クロロ−6−エトキシキノリン、4−ブロモフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、2−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、4−エチルフェニル、4−ジエチルアミノフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、チオフェン、4−メトキシフェニル、p−トリル、2,5−ジメトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、4−エチルフェニルおよび1−フェニル−3−p−トリル−1H−プリアゾール(pryazole)からなる群から選択され、および
前記化合物A中のRが、4−ブロモ、4−クロロ、4−ニトロ、4−メチル、4−メトキシ、H、3,4−ジメチルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複製タンパク質Aに結合する前記化合物が、化合物TDLR−506もしくはその薬学的に許容可能な塩またはその代謝産物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複製タンパク質Aに結合する前記化合物が、化合物TDLR−505もしくはその薬学的に許容可能な塩またはその代謝産物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物Aまたはその代謝産物のいずれかと複製タンパク質Aの少なくとも1つのアイソフォームとの間での前記接触させるステップが、インビボで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物Aまたはその代謝産物のいずれかと複製タンパク質Aの少なくとも1つのアイソフォームとの間での前記接触させるステップが、インビトロで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
真核細胞の細胞周期進行を変化させる方法であって、
真核細胞の細胞周期進行を妨げる化合物A、または真核細胞の細胞周期進行を妨げる化学物質に代謝される化合物Aを提供するステップであって、前記化合物Aは、下記の式:
【化11】

(式中、Rは、5−(7−クロロ−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g]キノリン−8−イル);5−(キノキサリン−6−イル);および6−クロロ−[1,3]ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−イルを含む、置換キノリン、チオフェンおよびフェニルからなる群から選択され;
は、ハロゲン、メチル基、ニトロ基からなる群から選択され、および
は、ケト酪酸および
【化12】

からなる群から選択され、式中、n=1、2、3である)を有するステップと、
前記化合物Aを、少なくとも1つの真核細胞と接触させるステップと
を含む方法。
【請求項9】
前記化合物A中の前記キノリンまたは前記フェニルが、ハロゲン、メチル基、エチル基、アミノ基およびピラゾールからなる群から選択される少なくとも1つの部分で置換されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物A中のRが、2−クロロ−7−エトキシキノリン、5(キノキサリン−6−イル)、2−クロロ−6,7−ジメトキシキノリン、2−クロロ−6−エトキシキノリン、4−ブロモフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、2−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、4−エチルフェニル、4−ジエチルアミノフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、チオフェン、4−メトキシフェニル、p−トリル、2,5−ジメトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、4−エチルフェニル;および1−フェニル−3−p−トリル−1H−プリアゾール(pryazole);5−(7−クロロ−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g]キノリン−8−イル);5−(キノキサリン−6−イル);および6−クロロ−[1,3]ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−イルからなる群から選択され、および
前記化合物A中のRが、4−ブロモ、4−クロロ、4−ニトロ、4−メチル、4−メトキシ、H、3,4−ジメチルからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
真核細胞の細胞周期進行を妨げる前記化合物が、化合物TDLR−506もしくはその薬学的に許容可能な塩またはその代謝産物である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
真核細胞の細胞周期進行を妨げる前記化合物が、化合物TDLR−505もしくはその薬学的に許容可能な塩またはその代謝産物である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物Aまたはその代謝産物と複製タンパク質Aとの間での前記接触させるステップが、インビボで行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物Aまたはその代謝産物と複製タンパク質Aとの間での前記接触させるステップが、インビトロで行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
癌を治療する方法であって、
化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩を提供するステップであって、前記化合物Aは癌細胞の細胞周期を妨げるか、または代謝されて癌細胞の細胞周期を妨げる化学物質となり、前記化合物Aは、下記の式:
【化13】

(式中、Rは、5−(7−クロロ−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g]キノリン−8−イル)、5−(キノキサリン−6−イル)および6−クロロ−[1,3]ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−イルを含む、置換キノリン、チオフェンおよびフェニルからなる群から選択され、
は、ハロゲン、メチル基、ニトロ基からなる群から選択され、および
は、ケト酪酸および
【化14】

からなる群から選択され、式中、n=1、2、3である)を有し;Aは下記の式:
(式中、Rは、5−(7−クロロ−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g]キノリン−8−イル)、5−(キノキサリン−6−イル)および6−クロロ−[1,3]ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−イルを含む、置換キノリン、チオフェンおよびフェニルからなる群から選択され、および
は、ハロゲン、メチル基、ニトロ基からなる群から選択される)を有し、ここで、化合物Aは複製タンパク質Aに結合するステップと、
前記化合物Aを少なくとも1つの癌細胞と接触させるステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記化合物A中の前記キノリンまたは前記フェニルが、ハロゲン、メチル基、エチル基、アミノ基およびピラゾールからなる群から選択される少なくとも1つの部分で置換されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物A中のRが、5−(7−クロロ−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g]キノリン−8−イル);5−(キノキサリン−6−イル);および6−クロロ−[1,3]ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−イルを含む、2−クロロ−7−エトキシキノリン、5(キノキサリン−6−イル)、2−クロロ−6,7−ジメトキシキノリン、2−クロロ−6−エトキシキノリン、4−ブロモフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、2−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、4−エチルフェニル、4−ジエチルアミノフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、チオフェン、4−メトキシフェニル、p−トリル、2,5−ジメトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、4−エチルフェニルおよび1−フェニル−3−p−トリル−1H−プリアゾール(pryazole)からなる群から選択され、
前記化合物A中のRが、4−ブロモ、4−クロロ、4−ニトロ、4−メチル、4−メトキシ、H、3,4−ジメチルからなる群から選択され、および
が、ケト酪酸および
【化15】

からなる群から選択され、式中、n=1、2、3である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
癌細胞と接触させる前記化合物が、化合物TDLR−506もしくはその薬学的に許容可能な塩またはそれらの代謝産物である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
癌細胞と接触させる前記化合物が、化合物TDLR−505もしくはその薬学的に許容可能な塩またはそれらの代謝産物である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物Aまたはその代謝産物と癌細胞との間での前記接触させるステップが、インビボで行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記化合物Aまたはその代謝産物と癌細胞との間での前記接触させるステップが、インビトロで行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項22】
前記癌細胞が、肺癌、非小細胞、小細胞、上皮性卵巣癌、子宮頸癌、大腸癌および乳癌からなる群から選択される固形腫瘍中に見出される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記癌細胞を、トポイソメラーゼIIの活性を低下させる少なくとも1つの化学療法試薬と接触させるステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
トポイソメラーゼIIの活性を低下させる前記化学療法試薬が、限定はされないが、シスプラチンおよびエトポシドからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
RPAの阻害のための化合物であって、
【化16】

(式中、
n=1、2または3であり、
は、5−(7−クロロ−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g]キノリン−8−イル);5−(キノキサリン−6−イル);および6−クロロ−[1,3]ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−イルを含む、置換キノリン、チオフェンおよびフェニルからなる群から選択され、および
は、水素、ハロゲン、メチル基、ニトロ基からなる群から選択され、ここで、化合物Aまたは化合物Aの代謝産物は複製タンパク質Aに結合する)を含む化合物。
【請求項26】
前記化合物中のRが、5−(7−クロロ−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g]キノリン−8−イル);5−(キノキサリン−6−イル);および6−クロロ−[1,3]ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−イルを含む、2−クロロ−7−エトキシキノリン、5(キノキサリン−6−イル)、2−クロロ−6,7−ジメトキシキノリン、2−クロロ−6−エトキシキノリン、4−ブロモフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、2−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、4−エチルフェニル、4−ジエチルアミノフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、チオフェン、4−メトキシフェニル、p−トリル、2,5−ジメトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、4−エチルフェニルおよび1−フェニル−3−p−トリル−1H−プリアゾール(pryazole)からなる群から選択され、および
前記化合物中のRが、4−ブロモ、4−クロロ、4−ニトロ、4−メチル、4−メトキシ、H、3,4−ジメチルからなる群から選択される、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
疾患の治療方法であって、
請求項25に記載の少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を与えるステップを含み、前記化合物が少なくとも1つの疾患を治療するのに有効である方法。
【請求項28】
前記化合物が、患者に投与するのに適している、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物が、患者に投与するのに適している、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物が、経口的に患者に投与するのに適している、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記化合物が、製剤中に存在し、かつ前記製剤がメチルセルロースを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物が、患者に腹腔内投与するのに適している、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記化合物が、製剤中に存在し、かつ前記製剤がTween−80を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
患者の治療方法であって、
請求項1に記載の少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供するステップを含み、前記化合物は、ヒトまたは動物の患者を治療するために製剤されている方法。
【請求項35】
前記化合物の治療有効量の少なくとも1つの用量を患者に投与するステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記患者が、直接DNAを損傷させるか、またはトポイソメラーゼIIを阻害する少なくとも1つの化合物の治療有効用量によっても治療される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記患者が、シスプラチン、エトポシド、ブスルファン、ベンダムスチン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ダウノルビシン、デシタビン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、オキサリプラチン、テモゾロミドおよびトポテカンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物の治療有効用量によっても治療される、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記用量が、患者の体重1kg−1当たり前記化合物約50mgである、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記用量が、患者の体重1kg−1当たり前記化合物約100mgである、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記用量が、患者の体重1kg−1当たり前記化合物約200mgである、請求項35に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2013−518906(P2013−518906A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552130(P2012−552130)
【出願日】平成23年2月5日(2011.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2011/023838
【国際公開番号】WO2011/097545
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(301046787)インディアナ・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・テクノロジー・コーポレーション (24)
【Fターム(参考)】